説明

珪酸塩蛍光体、発光装置及び該発光装置を用いた表示装置

【課題】PDP、ランプなどの蛍光体を用いて構成される発光装置及び表示装置において蛍光体発光輝度を向上することにより輝度特性を向上させる。
【解決手段】Br、Sr、Caのうちの1種以上と、MgとZnのうちの1種以上と、Siとから構成される母体がEuで付活されてなる珪酸塩蛍光体の母体中にCu、Ga、Ge、As、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Au、Hg、Tl、Pb、Biの内の1種以上の元素を含有させて高輝度の蛍光体を得、この蛍光体を使用してPDPやランプ等の発光装置及び表示装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、特に真空紫外領域の紫外線により励起され発光する珪酸塩蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TVやパソコンモニターに代表される表示装置に対して場所を取らない薄型化への要望が高まりを見せ、薄型化対応の可能な装置としてプラズマディスプレイ(PDP)装置や電界放射型ディスプレイ(FED)装置、バックライトと薄い液晶パネルとを組み合わせて表示装置を構成した液晶表示装置などの開発が盛んに行われている。
【0003】
プラズマディスプレイ装置は、希ガスを含む微小放電空間での負グロー領域で発生する紫外線(希ガスとしてキセノンを使用した場合は、147nmおよび172nmの波長域にある)を励起源として該微小放電空間内に配設した蛍光体を励起し、該蛍光体から発光を発生させることにより可視領域での発光を得て、この発光を表示に使用する装置である。
【0004】
また、液晶表示装置は上記したようにバックライトと液晶パネルを組み合わせて構成されており、バックライトから発生する光の量または色をパネル側で制御して所望の表示を行う装置である。そして、現状バックライトには内壁に蛍光体材料の塗布された直管型白色蛍光ランプが使用されている。
本発明に関連する蛍光体については、特許文献1、2と非特許文献1に記載があり、これらを用いた発光装置、表示装置については、特許文献3、4に記載がある。
【0005】
【特許文献1】特開昭64-6087
【0006】
【特許文献2】特開平01-167394
【特許文献3】特開2003-132803
【特許文献4】特開2003-142004
【非特許文献1】蛍光体同学会編「蛍光体ハンドブック」オーム社1987年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラズマディスプレイ装置やFED装置、そして液晶表示装置の使用されるバックライトの高性能化が望まれているが、これら特性改善はそれぞれの装置に使用される蛍光体に依存する部分が大きい。
現行のPDP装置の蛍光体には青色蛍光体として一般にアルミン酸塩蛍光体(BaMgAl10O17:Eu、以下「BAM」と称する)が使用されているが、長寿命化、さらなる高輝度化などが望まれている。
【0008】
また、ランプや液晶表示装置用バックライトに関しては表示表面の輝度向上及び環境上の問題から水銀レス化の要請もあり、液晶表示装置用バックライトについては対策として平面型希ガス放電蛍光ランプなどの開発も進められている。希ガス放電蛍光ランプには通常、真空紫外線で励起され発光が可能な蛍光体が使用されており、真空紫外線励起条件下で効率よく発光して高い輝度を示し、かつ、長寿命の蛍光体が求められている。
PDP装置や希ガス放電ランプに使用可能で、例えば従来青色発光蛍光体であるBAMに比べ長寿命の青色蛍光体として珪酸塩系蛍光体が提案されているが、輝度特性が十分とは言えず、実用化にはもう一段の改善が必要とされている。
【0009】
以上より、本発明が解決しようとする問題点は、PDP装置などに真空紫外線励起条件下で使用される従来蛍光体、特に青色蛍光体が寿命、輝度特性等の点で十分ではないことであり、その結果、それら蛍光体を使用する発光装置の寿命(通常使用が可能な期間)と輝度特性が十分でないことであり、ひいては該発光装置を使用する表示装置の寿命と輝度特性が十分ではないことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、もともと寿命特性に優れているとされる、バリウム(Br)とストロンチウム(Sr)とカルシウム(Ca)とからなる群より選択された1種以上の元素と、マグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)とからなる群より選択された1種以上の元素と、珪素(Si)とを含んで構成される蛍光体母体がユーロピウム(Eu)で付活されてなる珪酸塩蛍光体において、該母体中に銅(Cu)とガリウム(Ga)とゲルマニウム(Ge)と砒素(As)と銀(Ag)とカドミウム(Cd)とインジウム(In)とスズ(Sn)とアンチモン(Sb)と金(Au)と水銀(Hg)とタリウム(Tl)と鉛(Pb)とビスマス(Bi)とからなる群から選択された少なくとも1種の元素を添加元素として含有させ、新規な珪酸塩蛍光体を提供することを特徴とする。
そして、該新規な珪酸塩蛍光体を用いて新規な発光装置を構成することを特徴とする。
更に、該新規な発光装置を使用して新規な表示装置を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる珪酸塩蛍光体は、添加の元素として添加される銅(Cu)とガリウム(Ga)とゲルマニウム(Ge)と砒素(As)と銀(Ag)とカドミウム(Cd)とインジウム(In)とスズ(Sn)とアンチモン(Sb)と金(Au)と水銀(Hg)とタリウム(Tl)と鉛(Pb)とビスマス(Bi)とからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素を含有することで添加元素による増感作用により蛍光体全体の発光性能が向上するという利点があり、長寿命である珪酸塩蛍光体の発光を高輝度にすることができるという利点がある。
【0012】
よって、本発明にかかる発光装置は、本発明の珪酸塩蛍光体を用いることにより、より高い輝度での発光が可能となる利点がある。
そして、本発明に係る表示装置は本発明の発光装置を用いることにより、より高い輝度での表示が可能となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、長寿命であるとされる、バリウム(Br)とストロンチウム(Sr)とカルシウム(Ca)とからなる群より選択された1種以上の元素と、マグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)とからなる群より選択された1種以上の元素と、珪素(Si)とを含んで構成される所謂蛍光体の母体がユーロピウム(Eu)で付活されてなる珪酸塩蛍光体について、発光性能を向上させて高輝度と長寿命を両立するという目的を、銅(Cu)とガリウム(Ga)とゲルマニウム(Ge)と砒素(As)と銀(Ag)とカドミウム(Cd)とインジウム(In)とスズ(Sn)とアンチモン(Sb)と金(Au)と水銀(Hg)とタリウム(Tl)と鉛(Pb)とビスマス(Bi)とからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素を添加元素として含有させ、蛍光体を構成することにより、それら添加元素が蛍光体中で発揮しうる増感作用を該蛍光体内で発揮させて、他に別段の煩雑さを伴うことなく実現した。
このとき、上記添加元素が添加されうるEuで付活された珪酸塩蛍光体の母体の一般式は下記式(I)で表される。
【0014】
(M1a-b・Eu)・(M2)・Si (I)
[式中、M1はBrとSrとCaとからなる群より選択された1種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群より選択された1種以上の元素であり、a、b、c、x、yはそれぞれ0.9≦a≦4、0.001≦b≦0.2、0<c≦1.2、0.8≦x≦3、3≦y≦10である。]
そして、本発明において使用可能なEuで付活される珪酸塩蛍光体母体のより具体的な組成式を以下に示す。
【0015】
BaMgSiO4, CaMgSiO4, SrMgSiO4, BaMgSiO6, CaMgSiO6, SrMgSiO6, Ba2MgSi2O7, Ca2MgSi2O7, Sr2MgSi2O7, Ba3MgSi2O8, Ca3MgSi2O8, Sr3MgSi2O8, Ba2ZnSi2O7, Ca2ZnSi2O7, Sr2ZnSi2O7等である。
【0016】
このとき、上記組成式から若干組成がずれて、含有されるBa,Ca,Sr,Mg,Zn,Si,Oそれぞれの元素が上記組成式の示す比率の1.2倍までの過剰であったり、0.8倍までの過少であったりして、それに伴い他の構成元素の含有量が上記組成式の示す比率より過少となったり過剰となったりした蛍光体母体も上記組成に実質的に含まれると意図しており、本実施形態の一部と見なして同様に使用可能である。
【0017】
また、上記組成の構成元素の一部を他の元素で置き換えたものも使用可能であり、具体的には、上記組成式それぞれの中のBa組成比の半分以下をCa及び/又はSrで、Ca組成比の半分以下をBa及び/またはSrで、Sr組成比の半分以下をBa及び/またはCaで置換したものも使用可能であり、同様にMg組成比の半分以下をZnで置換したもの、Zn組成比の半分以下をMgで置換したものも使用可能である。
【0018】
次に、上記Euで付活される珪酸塩蛍光体母体に添加される上記添加元素の蛍光体中での作用、特に本発明に利用される増感作用については以下のように説明できると考えている。
すなわち、珪酸塩蛍光体母体に添加され使用可能な上記添加元素はイオンとなって蛍光体中に存在する。そして、それらのイオンはns型イオンと総称され、基底状態がns2の電子配置をとり、励起状態はs2電子が1個p軌道に移ったnsnpの電子配置となる。何れのイオンも独立に蛍光体中に分散されて発光中心ともなりうるものである。
そして、添加元素未添加の場合は、真空紫外線により蛍光体母体が励起された後、その励起エネルギーの一部が発光中心であるEu2+に移動し、Eu2+が励起され、励起状態のEu2+が失活する際に発光する。
【0019】
それに対し、添加元素を添加した場合は、蛍光体母体励起後、Eu2+に伝達されず熱的に失活してしまい無駄となっている蛍光体母体の励起エネルギーの一部が、添加元素のイオンの励起に用いられて添加元素のイオンの励起状態を形成させ、励起状態の添加元素のイオンから励起エネルギーがEu2+に移動するという通常のエネルギー移動パスと並行するバイパス経路が新たに形成されて、その新経路分Eu2+の励起効率が向上して、結果的に発光強度が高まるものと考えている。
【0020】
従って、所謂濃度消光の観点から、付活剤であるEu2+の母体構成元素を基準とした最適な濃度が先ず有り、それに対応してEu量を基準とした最適な添加元素濃度、すなわち、もともとのEu2+励起経路を妨害しないで結果的にEu2+の励起効率を向上させる添加元素濃度が存在すると推察し、実験検討を重ねた結果、Euで付活される珪酸塩蛍光体母体に添加される上記添加の構成元素は、Euに対するモル比率で1以下となる量で含有されることが好ましいことがわかった。
【0021】
また、より高い蛍光体輝度特性を得るためには、Euに対するモル比率で半分程度、すなわちモル比率で0.6以下となる量で含有されることがより好ましいことがわかった。
以下、本発明を実施するための最良の形態に対応する珪酸塩蛍光体、発光装置及び表示装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明にかかる第一の実施例である珪酸塩蛍光体は、ストロンチウム(Sr)とマグネシウム(Mg)と珪素(Si)とを含んで母体が構成され、該母体が発光中心として作用するユーロピウム(Eu)で付活されて組成式(II)に示す組成を有し、添加の元素としてBiをEuの含有量の実質的に二分の一のモル量となる量(Euに対するモル比率で0.5となる量)で含有する。
【0023】
Sr2.97Eu0.03MgSi28 (II)
そして、次のようにして合成を行った。
【0024】
SrCO3を4.385g(29.70mmol)、MgCO3を0.962g(10.00mmol)、SiO2を1.202g(20.00mmol)、Eu2O3を0.0528g(0.15mmol)、Bi2O3を0.0349g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.392g(4.00mmol) それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した後、この混合物を耐熱容器に充填し、還元雰囲気下1250℃で3時間焼成した。
得られた焼成物は粉砕後、水洗、乾燥を行い珪酸塩蛍光体を得た。
【0025】
次に、本発明に係る比較例として、上記添加の元素であるBiを含有しない珪酸塩蛍光体比較対象サンプルを、Bi2O3を加えずその他上記と同様の方法で合成することにより得た。このBiを含有しない比較対照サンプルを合成するために使用した原料及びその量は次の通りである。
【0026】
SrCO3が4.386g(29.71mmol)、MgCO3が0.962g(10.00mmol)、SiO2が1.202g(20.00mmol)、Eu2O3が0.0533g(0.151mmol)、そして熔融助剤であるNH4Brが0.392g(4.00mmol)である。
その後、147nm真空紫外線励起下での本発明にかかる第一の実施例である珪酸塩蛍光体の発光特性と発光輝度を評価した。発光特性評価により、発光極大の波長が460nmである青色の発光を確認した。
【0027】
次に発光輝度について評価した。評価方法は、比較例であるBiを含有しない比較対照サンプルの147nm真空紫外線励起下での発光輝度を100%とした場合の相対発光輝度として評価した。
図1は、本発明に係る第一の実施例である珪酸塩蛍光体の発光輝度を比較例である珪酸塩蛍光体と相対比較して示す図である。尚、図1では便宜的に次に説明する本発明に係る第二の実施例である珪酸塩蛍光体の発光輝度のデータも併せて表示している。
評価結果は、図1に示すとおり、Biを含有しない比較対照サンプルの147nm真空紫外線励起下での発光輝度を100%とした場合、第一の実施例である珪酸塩蛍光体の発光輝度は106%であった。
【0028】
従って、添加の元素であるBiを添加した珪酸塩蛍光体サンプルの場合、Biを添加しない珪酸塩蛍光体サンプルより真空紫外線励起条件下、発光輝度が高いことがわかった。
以上より、珪酸塩蛍光体の発光輝度における添加の元素の増感効果を確認できた。
【実施例2】
【0029】
本発明にかかる第二の実施例である珪酸塩蛍光体は、ストロンチウム(Sr)とマグネシウム(Mg)と珪素(Si)とを含んで母体が構成され、該母体が発光中心として作用するユーロピウム(Eu)で付活されて上記の組成式(II)に示す組成を有し、添加の元素としてBiをEuの含有量と実質的同じモル量となる量で含有する。
そして、本発明にかかる第一の実施例である珪酸塩蛍光体と同様の方法で以下のようにして合成を行った。
【0030】
SrCO3を4.385g(29.7mmol)、MgCO3を0.961g(10.0mmol)、SiO2を1.202g(20.0mmol)、Eu2O3を0.0534g(0.15mmol)、Bi2O3を0.069g(0.15mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.393g(4.0mmol) それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した後、この混合物を耐熱容器に充填し、還元雰囲気下1250℃で3時間焼成した。
得られた焼成物は粉砕後、水洗、乾燥を行い珪酸塩蛍光体を得た。
【0031】
その後、147nm真空紫外線励起下での本発明にかかる第二の実施例である珪酸塩蛍光体の発光特性と発光輝度を評価した。発光特性評価により、発光極大の波長が460nmである青色の発光を確認した。次に発光輝度について、上記第一の実施例である珪酸塩蛍光体のBiを含有しない比較対照サンプルの147nm真空紫外線励起下での発光輝度を100%とした場合の相対発光輝度として評価した。
評価結果は、図1に示す通り、Biを含有しない第一実施例の比較対照サンプルの147nm真空紫外線励起下での発光輝度を100%とした場合、第二の実施例である珪酸塩蛍光体の発光輝度はほぼ同じ値である99%であった。
【0032】
従って、添加の元素であるBiの添加量を第一の実施例の場合より多くし、添加の元素BiをEuの含有量と実質的同じモル量となる量で添加した珪酸塩蛍光体サンプルの場合、第一実施例である添加の元素BiをEuの含有量より少なくして半分程度とした珪酸塩蛍光体サンプルより真空紫外線励起条件下、発光輝度が低下することがわかった。
【0033】
そして、添加元素Biを添加しない珪酸塩蛍光体サンプルとほぼ同じ発光輝度となることがわかった。すなわち、珪酸塩蛍光体の発光輝度における添加の元素の増感効果が実質的に現れなくなることが確認できた。
よって、珪酸塩蛍光体において発光輝度を高めるため増感効果を期待して添加の元素を含有させる場合、その含有量は付活成分であるEu量以下の量で含有されることが望ましいことがわかった。
【実施例3】
【0034】
青色蛍光膜を構成する青色蛍光体として本発明にかかる第一実施例であるBiを含有するユ−ロピウム(2価)付活の珪酸塩蛍光体を用いて発光装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)を作製した。
図2は、本発明にかかる第一実施例であるBiを含有するユ−ロピウム(2価)付活の珪酸塩蛍光体を用いて構成された発光装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)の画素部分の分解斜視図である。
【0035】
本発明の実施例であるプラズマディスプレイパネル100は、所謂面放電型に対応するための構造を有しており、間隔をあけて対向配置された一対の基板1,6と、該一対の基板間1,6に設けられ該一対の基板間の間隔を保持する隔壁7と、該一対の基板間に形成された空間内に封入され放電により紫外線を発生する放電ガス(図示せず)と、該一対の基板の対向面上にそれぞれ配置された表示電極2とアドレス電極9とを備え、上記したEu付活珪酸塩蛍光体が、該一対の基板の内の一方の基板6の上及び隔壁7の表面で蛍光体層10を構成し、放電により該放電ガスから発生する紫外線により蛍光体層10を構成するEu付活珪酸塩蛍光体が励起され発光するよう構成されたことを特徴とする。
尚、図2中で示された符合3のラインは電極2(表示電極)と一体となって電極抵抗を低下させるために設けられた銀若しくはCu-Crからなるバスライン3であり、符合4,8の層は誘電体層4,8であり、符合5の層は電極保護のために設けられた保護膜5である。
【0036】
本実施例のような面放電型カラーPDPのPDPでは,例えば,表示電極(一般に,走査電極と呼ぶ。)に負の電圧を,アドレス電極と表示電極に正の電圧(表示電極に印加される電圧に比して正の電圧)を印加することにより放電が発生し,これにより,表示電極と表示電極との間で放電を開始するための補助となる壁電荷が形成される(これを「書き込み」と称する。)。この状態で表示電極と表示電極との間に,適当な逆の電圧を印加すると,誘電体(及び保護層)を介して,両電極の間の放電空間で放電が発生する。
【0037】
放電終了後,表示電極と表示電極とに印加する電圧を逆にすると,新たに放電が発生する。これを繰り返すことにより継続的に放電が発生する(これを維持放電又は表示放電と呼ぶ。)。
本実施例であるPDPの製造については,背面基板上に,銀などで構成されているアドレス電極と,ガラス系の材料で構成される誘電体層を形成した後,同じくガラス系の材料で構成される隔壁材を厚膜印刷し,ブラストマスクを用いて,ブラスト除去により,隔壁を形成する。
【0038】
次に,この隔壁上に,赤,緑,青の各蛍光体層を該当する隔壁間の溝面を被覆する形で,順次ストライプ状に形成する。
ここで,各蛍光体層は,赤,緑,青に対応し,赤蛍光体粒子40重量部(ビヒクル60重量部),緑蛍光体粒子35重量部(ビヒクル65重量部),青蛍光体粒子35重量部(ビヒクル65重量部)とし,それぞれビヒクルと混ぜて蛍光体ペーストとし,スクリーン印刷により塗布したあと,乾燥及び焼成工程により蛍光体ペースト内の揮発成分の蒸発と有機物の燃焼除去を行って形成する。なお,本実施例で用いた蛍光体層は,中央粒径が略3μmの各蛍光体粒子で構成されている。
【0039】
また,青色以外の各蛍光体の材料については,赤蛍光体は(Y,Gd)BO3:Eu蛍光体とY2O3:Eu蛍光体1:1の混合物であり,緑蛍光体はZn2SiO4:Mn蛍光体である。
次に,表示電極,バス電極,誘電体層,保護層を形成した前面基板と,背面基板をフリット封着し,パネル内を真空排気した後放電ガスを注入し封止する。本実施例に係るPDPは,そのサイズが3型で一画素のピッチが1000μm×1000μmである。
【0040】
次に,本発明に係る第一の実施例である珪酸塩蛍光体を用いた上記PDPを使用し,表示装置であるプラズマディスプレイ装置を作製した。
図3は、本発明にかかる第一実施例であるBiを含有するユ−ロピウム(2価)付活の珪酸塩蛍光体を使用して構成された発光装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)を用いたプラズマディスプレイ表示装置を備えた画像表示システムの例を示すブロック図である。
【0041】
本実施例であるプラズマディスプレイ表示装置102は、プラズマディスプレイパネル100とそれを駆動する駆動回路101とからなる。そして、プラズマディスプレイ表示装置102は、映像源103を伴い、駆動回路101が映像源103からの表示画面の信号を受け取り、駆動信号に変換してプラズマディスプレイパネル100を駆動することにより画像表示システム104を構成する。
【0042】
この本実施例に係るプラズマディスプレイ表示装置は、高輝度で長寿命を有するものであった。
また,この実施例では赤及び緑の蛍光体に関して,詳細な検討については示していないが,以下に示す各組成の蛍光体でも同様にPDPを作製することができる。
【0043】
赤蛍光体では,(Y,Gd)BO3:Eu,(Y,Gd)2O3:Eu,(Y,Gd)(P,V)O4:Euのいずれか一種以上の蛍光体を含む場合が可能である。また,緑蛍光体は, Zn2SiO4:Mn,(Y,Gd,Sc)2SiO5:Tb,(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Tb,(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce,(Y,Gd)B3O6:Tb,(Y,Gd)PO4:Tbの群から選ばれた一種以上の蛍光体を含む場合が可能である。さらに,ここに示していない蛍光体との組合せも適用できる。
【実施例4】
【0044】
青色蛍光体として本発明にかかる第一実施例であるBiを含有するユ−ロピウム(2価)付活の珪酸塩蛍光体を用いて発光装置である希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプを作製した。
図4は、本発明にかかる第一実施例であるBiを含有するユ−ロピウム(2価)付活の珪酸塩蛍光体を用いて構成された発光装置である希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプの構造を示す横断面図である。
【0045】
本発明に係る発光装置である希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプ110は、気密に保たれたガラス管111と、ガラス管111の内部に封入されたキセノンガス(図示せず)と、ガラス管111の内面に塗布された蛍光体112と、ガラス管111の両端に設けられた電極113とからなる。そして、両電極間の放電により電気エネルギーが放電ガスであるキセノンガスを用いて紫外放射に変換され、この紫外放射がガラス管壁上の蛍光体を励起して、蛍光体から可視光を発光させる。
【0046】
尚、上記の蛍光体112は、本発明に係る第一実施例である珪酸塩蛍光体(青色蛍光体)のほかに、緑色蛍光体として2価マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体を,そして赤色蛍光体には3価ユ−ロピウム付活酸化イットリウム・ガドリニウム蛍光体を用い、それらを白色発光可能なよう混合して構成されており、希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプ110の製造に用いられた。
【0047】
このランプは高発光効率かつ長寿命を有するものであった。
また、本実施例のランプをバックライトとし、別に準備した液晶ディスプレイパネルと組み合わせることにより、表示装置として、液晶表示装置120を製造した。
図5は、本発明にかかる第一実施例であるBiを含有するユ−ロピウム(2価)付活の珪酸塩蛍光体を使用して製造された発光装置である希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプを用いて構成された液晶表示装置の構造を示す分解斜視図である。
【0048】
本実施例の希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプ110を複数本使用し、筐体123内に配置した。液晶テレビなど高輝度を求められる液晶表示装置では蛍光ランプを複数本平面的に並べて配置する方式、所謂直下方式を採用することが多い。
筐体123と蛍光ランプ110との間には、蛍光ランプ110から筐体123側に出射した光を効率良く利用するための反射板124を配設した。また、液晶表示装置における輝度の面内分布を小さくするため、蛍光ランプ110の直上に拡散板126を配置した。
【0049】
さらに、液晶表示装置における輝度を向上させるため、プリズムシート127A,127B、偏光反射板128を配設した。
蛍光ランプ110にはインバータ129を接続し、蛍光ランプ110の点灯制御が必要な場合はインバータの駆動によって点灯制御可能となるように構成した。尚、希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプ110、筐体123、反射板124、拡散板126、プリズムシート127A,127B、偏光反射板128、インバータ129をまとめてバックライトユニット121と以下で称する。
【0050】
バックライトユニット121の直上にはバックライトユニット121からの光の透過量を調整し、画素毎に赤色、緑色、青色に光を分光するカラーフィルタを備える液晶パネル122を配置した。液晶パネル122には画素毎に電極及び薄膜トランジスタ(TFT)を設けており、画素毎にTFTを制御してカラー表示を可能とした。すなわち、画素毎に電圧を供給し、この電圧印加により画素毎の液晶を配向変化させて画素毎の屈折率を変化させることでバックライトユニット121からの光の透過量を調整し、その調整された量の光をカラーフィルタで分光してカラー表示を行う構成とした。
【0051】
本実施例においては液晶パネルに横電界方式、所謂IPSモード液晶パネルを用いた。しかし、他のモードの液晶パネル、例えばTNモード、VAモード、OCBモード等の液晶パネルも使用可能である。
最後に、バックライトユニット121と液晶パネル122とを重ね合わせ、筐体130でカバーすることにより液晶表示装置を得た。
この本実施例に係る液晶表示装置は、高輝度であり、明るい表示が可能な表示装置であった。
【実施例5】
【0052】
青色蛍光体として本発明にかかる第一の実施例であるBiを含有する2価ユ−ロピウム付活珪酸塩蛍光体を用いて平面型希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプを製作した。
青色蛍光体以外の蛍光体については、緑色蛍光体として2価マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体を,そして赤色蛍光体には3価ユ−ロピウム付活酸化イットリウム・ガドリニウム蛍光体を用いた。
【0053】
このランプは高輝度かつ長寿命を有するものであった。
また、本実施例の平面型希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプを1つ使用して、上記実施例5の欄で説明したものと同様のバックライトユニットを構成し、やはり同様の液晶パネルを同様に配設して液晶表示装置を製造した。
表示装置として、明るい表示が可能な液晶表示装置を製作することができた。
【実施例6】
【0054】
青色蛍光膜を構成する青色蛍光体として本発明にかかる第一実施例であるBiを含有するユ−ロピウム(2価)付活の珪酸塩蛍光体を用いて発光装置である電界放射型ディスプレイ(FED)を作製した。
ここでは,まず蛍光膜を形成するガラス基板の内面に均一な透明電極を形成した。次に、青色蛍光膜を構成する青色蛍光体として本発明にかかる第一実施例である2価ユ−ロピウム付活の珪酸塩蛍光体を,緑色蛍光膜を構成する緑色蛍光体として2価マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体を,そして赤色蛍光膜を構成する赤色蛍光体として3価ユ−ロピウム付活酸化イットリウム・ガドリニウム蛍光体を順次形成した。
【0055】
このガラス基板と微少な電子線源が作り込んであるもう一つのガラス基板を合わせて封着し,真空排気後に10型の電界放射型ディスプレイ(FED)パネルを製作した。
このFEDパネルは高効率,かつ長寿命の特性を示した。
このパネルを用いて,表示装置を構成し,テレビ,ビデオ,自動車などのディスプレイシステムとして使用したところ,高輝度の良好な表示品質が得られることを確認した。
【0056】
上述の通り、真空紫外領域紫外線、更に低速電子線励起となる条件下において高輝度の青色蛍光体[本実施例である添加元素含有の2価ユ−ロピウム付活の珪酸塩蛍光体]を希ガス放電発光装置,希ガス放電表示装置、液晶表示装置または電界放射型ディスプレイ(FED)装置に用いることにより,高輝度化と長寿命化を実現できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の珪酸塩蛍光体を大型発光装置に組み込むことにより、長期間にわたる点灯が求められ、高輝度が必要かつ長寿命が不可欠な大型の家庭用平面表示装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明にかかる第一の実施例である珪酸塩蛍光体の発光輝度を比較例である珪酸塩蛍光体と相対比較して示す図である。
【図2】本発明にかかる第一実施例である珪酸塩蛍光体を用いて構成された発光装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)の画素部分の分解斜視図である。
【図3】本発明にかかる第一実施例である珪酸塩蛍光体を使用して構成された発光装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)を用いたプラズマディスプレイ表示装置を備えた画像表示システムの例を示すブロック図である。
【図4】本発明にかかる第一実施例である珪酸塩蛍光体を用いて構成された発光装置である希ガス(キセノンガス)放電白色蛍光ランプの構造を示す横断面図である。
【図5】本発明にかかる第一実施例である珪酸塩蛍光体を使用して製造された発光装置である希ガス放電白色蛍光ランプを用いて構成された液晶表示装置の構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1,6基板
2,9 電極
3 バスライン
4,8誘電体層
5 保護膜
7 隔壁
10 蛍光体層
100 プラズマディスプレイパネル
101 駆動回路
102 プラズマディスプレイ表示装置
103 映像源
104 画像表示システム
110 希ガス放電白色ランプ
111 ガラス管
112 蛍光体
113 電極
120 液晶表示装置
121 バックライトユニット
122 液晶パネル
123,130 筐体
124 反射板
126 拡散板
127A,B プリズムシート
128 偏光反射板
129 インバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム(Br)とストロンチウム(Sr)とカルシウム(Ca)とからなる群より選択された1種以上の元素と、マグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)とからなる群より選択された1種以上の元素と、珪素(Si)とを含んで構成される蛍光体母体がユーロピウム(Eu)で付活されてなる珪酸塩蛍光体において、
該母体中に銅(Cu)とガリウム(Ga)とゲルマニウム(Ge)と砒素(As)と銀(Ag)とカドミウム(Cd)とインジウム(In)とスズ(Sn)とアンチモン(Sb)と金(Au)と水銀(Hg)とタリウム(Tl)と鉛(Pb)とビスマス(Bi)とからなる群から選択された少なくとも1種の元素を添加元素として含有することを特徴とする珪酸塩蛍光体。
【請求項2】
請求項1記載の珪酸塩蛍光体において、
上記Euで付活された蛍光体母体の一般式が下記式(I)で表され、上記添加元素は該Euの含有量以下の量で含有されることを特徴とする珪酸塩蛍光体。
(M1a-b・Eu)・(M2)・Si (I)
[式中、M1はBrとSrとCaとからなる群より選択された1種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群より選択された1種以上の元素であり、a、b、c、x、yはそれぞれ0.9≦a≦4、0.001≦b≦0.2、0<c≦1.2、0.8≦x≦3、3≦y≦10である。]
【請求項3】
請求項1または2のいずれか記載の珪酸塩蛍光体を用い、該珪酸塩蛍光体からの発光を利用するよう構成されたことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3記載の発光装置において、
間隔をあけて対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に形成された空間内に封入され放電により紫外線を発生する放電ガスと、該一対の基板の対向面にそれぞれ配置された電極と、該一対の基板の内の一方に請求項1または2のいずれか記載の珪酸塩蛍光体を用いて構成された蛍光体層とからなり、該放電ガスから発生する紫外線により該珪酸塩蛍光体から発生する発光を利用するよう構成されたことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項3または4のいずれか記載の発光装置と、該発光装置から発生する光の量または色を制御する光制御素子とからなり画像表示を行うよう構成されたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−70187(P2006−70187A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256416(P2004−256416)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】