説明

現像ロール

【課題】
良好なトナー搬送性を維持し、長期間に亘りトナーフィルミングを発生しない電子写真複写装置等に用いる現像ロールを提供する。
【解決手段】
炭化水素化合物、又は、組成中に酸素原子を有するが該酸素原子はエステル結合を構成しない炭化水素系化合物であって、25℃、1気圧下で液状である有機化合物を滴下液として測定した、現像ロール表面のぬれ性を示す接触角が60度以上である現像ロールを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式により画像形成を行う複写機、プリンター、ファクシミリなどの画像形成装置に用いられる現像ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機等の画像形成部にあって、現像ロールはトナーを坦持し、その坦持したトナーを感光体に受け渡す役割を担うため、良好なトナー搬送性と耐トナーフィルミング性が要求される、そのためには現像ロール表面の粗面化の制御と、現像ロール表面とトナーとの離型性の制御とが重要である。
【0003】
現像ロールは、一般に 導電性の芯金外周にベースゴム層を形成したベースロールの表面に、直接もしくは中間弾性層を介して表面コーティング層を形成して構成されている。
【0004】
ロール表面が均一に粗面化された現像ロールを得るには、芯金外周に形成されたベースゴム層の外周面に、研磨等を施すことなどにより所定の表面粗さを形成し、さらにそのベースゴム層の外周面に、粗さ形成用の充填材が分散された表面コーティング層形成のためのコーティング液を塗工する方法が主流である。
【0005】
このように現像ロール表面粗さを高度に制御することにより、良好なトナー搬送性を付与して、画像濃度の調整を可能にしている。
【0006】
一方、現像ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を抑えるためには、現像ロールの表面コーティング層をトナー材料と離型性の良い材料で構成する手法が用いられ、そのような材料としては、一般にシリコーン系樹脂材料、フッ素系樹脂材料、ウレタン系樹脂材料等が表面コーティング層として用いられている。
【0007】
しかし、表面コーティング層にシリコーン系樹脂材料やフッ素系樹脂材料を用いた場合、耐トナーフィルミング性は改善されるが画像濃度が低下してしまうという問題があった。一方、ウレタン系樹脂材料を表面コーティング層とすると画像濃度は良好になるが、耐トナーフィルミング性が十分でなくなることがあった。
【0008】
さらに、トナーフィルミングの問題は現像ロールの硬度、表面粗さ、使用するトナー成分との組合わせによっても、発生頻度や発生の程度に違いを生じるため、それら組合せの如何を問わず良好な耐トナーフィルミング性を有する現像ロールの出現が待たれていた。
【0009】
これらの対策として特開平10−186834号公報によれば、トナー中で結着材料として使用されている成分に着目し、それと類似した構造を有する液状化合物を滴下液として測定した現像ロール表面層の接触角をトナー離型性の尺度として、接触角を35度以上とすることで、フィルミング発生を防止している手法が提案されている。
(特許文献1を参照のこと)。
【0010】
特開2004−109206号公報では特定の液状ポリエステルを滴下液として測定した現像ロール表面層の接触角を38度未満にすることで、良好な画質を得ることが出来るという手法を提案している。 (特許文献2を参照のこと)。
【特許文献1】特開平10−186834号公報
【特許文献2】特開2004−109206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1,2で提案される手法による現像ロールでは、ある程度のトナーフィルミングの改善はなされるが、性能を十分満たすものではなく、印刷枚数の増加と共にトナーフィルミングが発生するという問題がある。現状では、良好なトナー搬送性を維持しつつ、長期に亘り安定的にフィルミング発生を防止する手法は未だ充分とはいえず、困難な課題である。
【0012】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題点を解決するため鋭意検討を重ねた結果、トナー成分中のワックス類がトナーフィルミング発生に影響していることを見出し、その知見に基づき さらに研究を重ねた結果、上記従来技術の問題点を解決し、請求項記載の炭化水素化合物、又は炭化水素系化合物を滴下液として測定した接触角が60度以上である現像ロールは、トナー組成中のワックス成分に対する離型性に優れ、係る現像ロールは、良好な画像濃度を実現しつつ、長期間使用しても耐トナーフィルミング性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、トナーは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、着色剤、充填材、ワックス荷電制御剤、導電性調整剤、流動性向上剤等の配合物であるが、それら成分のうちのワックス類がトナーフィルミングの主な原因物質であるということを見出し、ワックス成分の離型性に優れる現像ロールを提供することで、以て良好なトナー搬送性を確保しつつ、長期間トナーフィルミングの発生しない現像ロールを提供することができるものである。
【0014】
工業用配合剤として広く流通しているワックスは、a)ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のエチレン由来の炭化水素系合成ワックス、b)フィッシャー・トロプシュワックスと呼ばれる一酸化炭素と水素の反応から作られる炭化水素系合成ワックス、c)パラフィンワックスと呼ばれる直鎖状炭化水素化合物(ノルマルパラフィン)、d)マイクロクリスタリンワックスと呼ばれる分岐炭化水素化合物(イソパラフィン)、e)飽和環状炭化化合物(シクロパラフィン)を多く含む石油由来のワックス、またf)カーボワックスと呼ばれるポリエチレングリコールワックスなどがある。これらは大量生産が可能で、安価であり、組成が単純で化学的に安定していて、精製をすれば人体にも無害である等の理由で工業用配合剤として広く用いられ、高級脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類ワックス、水素硬化油等と代替される。
【0015】
前記の合成ワックス、パラフィンワックス、石油ワックスは炭素と水素から構成される鎖式炭化水素化合物あるいは環式炭化水素化合物であり、カーボワックスは酸素原子を組成中に含有する炭化水素系化合物であるが、酸素原子は水酸基等の形で炭素骨格外に存在している。
【0016】
そこで上記ワックスとは分子量が異なるが類似の示性式又は構造式を有する液状の炭化水素化合物、又は炭化水素系化合物を滴下液として、現像ロール表面層の接触角を測定し、トナーフィルミング発生との関係を調べたところ、液状炭化水素化合物、又は炭化水素系化合物の滴下液で測定された接触角とトナーフィルミングの発生程度とは密接に関係することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記に詳述した課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、炭化水素化合物、又は、組成中に酸素原子を有するが該酸素原子はエステル結合を構成しない炭化水素系化合物であって、25℃、1気圧下で液状である有機化合物を滴下液として測定した、現像ロール表面のぬれ性を示す接触角が60度以上である現像ロールとしたことを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明は、C〜C17のn−パラフィン、C〜C17のイソパラフィン、C〜C17のシクロアルカン、C〜C12のn−パラフィンアルコール、C〜C12のイソパラフィンアルコール、C〜C12のシクロアルカノール、C〜Cのアルカンジオール、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ベンゼンメタノール、ベンゼンエタノール、ベンゼンジメタノール、ナフタレンメタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールの中から選ばれた一の有機化合物を滴下液として測定した、現像ロール表面のぬれ性を示す接触角が60度以上である現像ロールとしたことを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の滴下液の粘度が25℃、1気圧下で500cSt以下であるものを使用したことを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記現像ロール表面層を構成する物質の主成分がポリウレタンである現像ロールとしたことを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記現像ロール表面層に粒子の平均粒径が5〜40μmの範囲の粒子が分散されており、現像ロール表面の画像形成領域の十点平均粗さ(Rz)が3≦Rz≦7である現像ロールとしたことを特徴としている。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の現像ロールを用いた電子写真複写機その他の画像形成装置としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1又は2に記載の現像ロールによれば、ワックス類に対する離型性が優れる、トナーフィルミングの発生しにくい現像ロールが提供できる。
【0024】
請求項3に記載の現像ロールによれば、接触角の測定をより精密に行うことができるので、請求項1又は2に記載の現像ロールの効果に加え、より対ワックス離型性の優れた、長期使用しても良好な現像ロールが提供できる。
【0025】
請求項4に記載の現像ロールによれば、請求項1乃至3の何れか一つに記載の現像ロールの効果に加え、現像ロールの表面コーティング層を構成する物質の主成分をポリウレタン樹脂としたので、トナー搬送性に優れ良好な画像濃度を有する現像ロールが提供できる。
【0026】
請求項5に記載の現像ロールによれば、請求項1乃至4の何れか一つに記載の現像ロールの効果に加え、表面粗さを高度に制御できるため、良好なトナー搬送性を有し画像濃度の階調性に優れた、長期間使用しても画質が極めて良好な現像ロールが提供できる。
【0027】
請求項6に記載の電子写真複写機その他の画像形成装置によれば、請求項1乃至5の何れか一つに記載の現像ロールを使用しているので、長期間使用しても画質の劣化が少ない電子写真複写機その他の画像形成装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
滴下液として使用可能な有機化合物は、炭素原子と水素原子から成る、25℃、1気圧下で液状の有機化合物であり、炭素原子は互いに結合して鎖状や環状の炭素骨格を構成し、炭素骨格を形成する各炭素原子の余剰原子価に水素原子が結合した化合物であれば使用できる。
【0030】
また組成中にさらに酸素原子を含有する有機化合物も使用することができる、この場合、酸素原子は炭素骨格の中には存在せず、水素原子が結合していた位置に、酸素原子は水酸基又はカルボニル基を構成して存在する有機化合物が好ましく使用できる。
【0031】
上記有機化合物を例示すると、直鎖式化合物では、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、が挙げられる。分岐鎖式化合物では、イソペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、等が好ましく用いられる。脂肪族環式化合物ではシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、等が好ましく用いられる。芳香族炭化水素では、トルエン、ベンゼン、キシレン、が好ましく用いられる。またエチルベンゼンのようなアルキル基がベンゼン環に結合したものでもよいが、これらに限られるものではない。
【0032】
また組成中に酸素原子を含有する化合物を例示すると、上述した鎖式化合物の1価アルコールである、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等が挙げられる。またイソプロピルアルコール等の第二級アルコール、t−ブチルアルコール等の第三級アルコールも用いることができる。2価アルコールのエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルカンジオールも好ましく用いることができる。またシクロヘキサノールのような脂環式アルコールも用いることができる。更にベンゼンメタノール、ベンゼンエタノール、ベンゼンジメタノール、ナフタレンメタノール等の芳香族アルコールも用いることができる。またヘキサノンやシクロヘキサノンのような飽和ケトンを用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0033】
なお、滴下液は粘度が高くなると、例えば高分子量の化合物などでは、接触角測定の際に粘度の影響で角度の判別が難しくなり、角度測定の誤差による影響を受けるので、滴下液は25℃、1気圧下で、500cSt以下の粘度のものが好ましい。
を構成する有機化合物中の酸素原子が存在する部分の構造式又は示性式が、エーテル結合やエステル結合を構成している化合物は、おそらく親和性が合成ワックスあるいは石油ワックスと違いすぎるための影響と推定されるが、ワックス類と現像ロールとの離型性を適正に評価することができず、接触角が60度以上でもトナーフィルミング性の低下が生じ、良好な現像ロールが得られない。
【0034】
接触角は、CA−D型(協和界面科学株式会社製)を用い、滴下液を液滴調整器から現像ロール表面に所定量滴下した後、現像ロールの側面方向から光学鏡にて接触角を読み取り、測定値とした。
【0035】
次に、本発明の現像ロールの実施の形態について図を用いて詳細に説明する。
【0036】
図1乃至3に示すように、本発明の実施形態の半導電性ロール10は、導電性軸体11の周囲に半導電性弾性体層12を設け、その外周に表面コーティング層13が設けられたものである。
【0037】
導電性軸体11は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金、真鍮等の金属製の芯金、あるいは熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に導電性付与剤等を配合して形成された導電性を有する軸体である。
【0038】
半導電性弾性体層12は半導電性弾性体組成物を導電性軸体11と同時に押し出し成形して架橋・加硫し、ロール状に形成したものである。
【0039】
成形方法は弾性体の架橋・加硫反応に必要な十分な熱をかけられる方法であればよく、またその成形法も押出成形による連続加硫、プレス成形、射出成形、注型成形等、特に制限されるものではない。
【0040】
また成形後、必要に応じギヤオーブン等で一定時間二次加硫しても良い。
【0041】
次に、円筒研削盤にて所望の外径値に表面研削して、導電性軸体11の外周面に半導電性弾性体層12が設けられた半導電体ロール10を得る。
【0042】
本発明の半導電性弾性体組成物は、シリコーンゴム、ポリウレタン、クロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等のいずれか一種または二種以上を組み合わせたものに必要に応じて煙霧質シリカ、沈降性シリカ等の補強充填材を添加してベースコンパウンドとしたものに、導電性付与剤であるファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、および導電性補助剤である導電性酸化亜鉛、導電性酸化チタン、導電性酸化アルミニウムなどの導電性金属酸化物を添加した後、パーオキサイド、白金触媒存在下でハイドロジェンシロキサン、イソシアネート等の加硫硬化に必要な加硫剤や増量剤を添加して作成したものである。
【0043】
導電性付与剤の添加量はベースコンパウンド100質量部に対して、5〜40質量部が好ましい。添加量が5質量部未満もしくは40質量部を超えると所望の半導電領域の抵抗値が得られない。
【0044】
導電性補助剤である導電性金属酸化物の添加量はベースコンパウンド100質量部に対して、1〜80質量部が好ましい。添加量が1質量部未満では抵抗値安定化の効果が得られず、80質量部を超えると半導電領域での抵抗値制御が困難となる。
【0045】
上記したゴム、導電性付与剤、導電性補助剤、加硫剤等の成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)などのゴム混練り機を用いて均一に混合することにより半導電性弾性体組成物コンパウンドとし、上記した成形方法で加熱して架橋・加硫反応させることで、本発明のための半導電性弾性体層12を得た。
【0046】
本発明の現像ロールは、導電性軸体11の外周面に沿って設けられた半導電性弾性体層12の外周に表面コーティング層が形成され構成されている。表面コーティング層13は単層もしくはそれ以上でもよく、必要に応じて、接着性を高める目的で、半導電性弾性層と表面コーティング層の間に、接着剤、プライマー等を使用してもよい
【0047】
表面コーティング層のマトリックス(基材)材料としては、シリコーン系材料、シラン系材料、フッ素系材料、ウレタン系材料、エピクロルヒドリンゴム、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、EPDM、等が用いられる。使用するトナーとの相性にもよるが、シリコーン系材料、ウレタン系材料が好ましく用いられるが、半導電性弾性体層12の組成を工夫することにより、表面コーティング層は必ずしも用いなくともよい。
【0048】
表層の粗さ形成材料としては、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩等、ポリアミド系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、エポキシ系樹脂粒子、オレフィン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、エステル系樹脂粒子、フッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子等を使用することができるが、これらに特に制限するものではない。
【0049】
上記表面層の粗さ形成のための充填剤としては、粒径が5〜40μmの範囲に設定されたものを用いることが好ましく、より好ましくは粒径10〜20μmである。この範囲を外れると、所望の表面粗さの最外層が得られなくなる傾向がみられるからである。また、粒子形状が真球状ではなく楕円球状等のように一律に粒径が定まらない場合は、最長径と最短径との単純平均値をその粒子の粒径とし、その平均値を求めて平均粒径とする。
【0050】
表面粗さは(Rz)は、20μm以下になるよう設定する必要があり、好ましくは7μmで以下である。すなわち、上記表面粗さ(Rz)が20μmを越えると、繊細な画質が得られなくなったり、感光体と表面で接触しない部分が生じるからである。また、表面粗さが3μm以下の場合は、表面が平滑になりすぎ、トナー搬送性が低下するためトナーの供給量が不足し、画像濃度がでなくなったりする。なお、上記表面粗さ(Rz)は、JIS B 0601に定義されるの表面粗さのなかの十点平均粗さに準拠して測定した値である
【0051】
また、この表面コーティング層形性材料には上記材料に加えて、導電剤を配合することができる。
【0052】
そのような材料としては、グラファイト、カーボンブラック、イオン導電剤、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、金属粉等を使用することができる。
【0053】
表面コーティング層を構成する材料には、上記材料以外の添加剤を必要に応じて適宜に配合することができ、安定剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、離型剤、オイル、酸化防止剤等があげられる。
【0054】
そして、表面コーティング層の形成材料は、上記各成分をボールミルやロール等で混練し、この混合物に溶剤を加えて混合攪拌することにより調製する。
【0055】
次に、導電性軸体11の外周に導電性弾性層12が形成されたロールの外周面に表面コーティング層13を設ける工程について説明する。
【0056】
導電性弾性層12の外周面に、前記のようにして調製した表面コーティング層形成材料を塗工し、乾燥処理(100〜180℃×10〜60分)を行い表面コーティング層を形成する。上記塗工法は、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来公知の塗工法を適用でき、特に制限するものではない。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げてこの発明をより具体的に説明するが、この発明の主旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
【0058】
導電性軸体11として、SUM22に無電解ニッケルメッキした直径12mm、長さ250mmの金属軸体を用い、これにシリコーン系プライマーNo.16(商品名、信越化学工業(株)製)を塗布して、ギヤオーブン中で150℃、10分間の焼き付け処理をした。
【0059】
半導電性弾性体層12用の組成物として、シリコーン生ゴムであるKE−78VBS(商品名、信越化学工業(株)製)100質量部に、カーボンブラックであるサーマルブラック(商品名、旭カーボン(株)製)10質量部、煙霧質シリカ系充填材であるアエロジル200(商品名、日本アエロジル(株)製)25質量部、シリコーンパウダーであるKMP598(商品名、信越化学工業(株)製)50質量部、有機過酸化物加硫剤であるC−8(商品名、信越化学工業(株)製)2質量部を添加してミキシングロールで混合し、円筒形キャビティーからなる圧縮成型金型にて、175℃、10分間、導電性軸体11の外周上へ加硫接着成形した。その後、ギヤオーブン中で200℃、7時間、二次加硫を行い、円筒研削盤で表面研削して、直径20mmの半導電性弾性層12が形成された半導電性ロール10を得た。
【0060】
表面コーティング層13を構成するコーティング材の母剤である二液タイプのウレタン系塗料のダイプラコートOS(商品名、大日精化工業(株)製)のプレポリマー液100質量部に、処理カーボンブラックを5質量部添加し、ビーズミルにて分散後、イソシアネート液と混合し、スプレー法で半導電性ロール10へ膜厚20μmで塗工し、ギアオーブン中で200℃、30分間乾燥硬化させて、ウレタン樹脂の表面コーティング層13を設けた半導電性ロール10を得た。
【0061】
前記のような構成として得られた現像ロールを、市販の負帯電トナーを用いた電子写真式プリンターの現像ロールとして装着し、室温25℃、湿度60%RHの条件下で10,000枚の連続印字を行った後、その現像ロールについて、a.プロピレングリコールを滴下液として接触角の測定、b.印字試験開始時の初期画像と連続印字後の画像状態比較評価、c.現像ロール表面の光学顕微鏡観察の3項目について評価した。評価結果を「表1」に示す。
【0062】
初期画像と連続印字後の画像状態比較評価の基準をより詳しく説明すると、印字評価用画像パターンを黒ベタで印字し、初期画像及び連続印字後の画像を観察し、白抜けの有無を四段階で評価した。
【0063】
白抜けが全く見られないものは◎、ごくわずか白抜けが見られるが、実用上は全く問題が無い画像を○、白抜けが見られ実用上も画質に問題ありとなる画像を△、画像全体に相当数白抜けが見られる画像を×と評価した。
【0064】
現像ロール表面の顕微鏡観察評価の基準をより詳しく説明すると、連続印字を行った後の現像ロール表面を光学顕微鏡にて観察し、トナーの固着度合いを四段階で評価した。
【0065】
トナーが全く固着していないものは◎、やや固着しているものは○、表面積の半分以上にトナーが固着しているものは△、表面全体にトナーが固着しているものは×と評価した。
[実施例2]
【0066】
実施例1の表面コーティング層の基材を構成するウレタン樹脂を、ダイプラコートOSのプレポリマー液100質量部に代えて、ニッポラン5199(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部とコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)5質量部とした以外、実施例1と同様にして現像ロールを得た。
【0067】
前記現像ロールで連続印字を行い、その後、実施例1と同様の方法で同様の評価を行った。滴下液はプロピレングリコールを用いた。評価結果を「表1」に示す。
[実施例3]
【0068】
実施例1の表面コーティング層の基材を構成するダイプラコートOSのプレポリマー液100質量部に代えて、シラン系材料のKBM503(信越化学工業(株)製)100質量部を使用した以外、実施例1と同様にして現像ロールを得た。
【0069】
前記現像ロールで連続印字を行い、その後、実施例1と同様の方法で同様の評価を行った。滴下液はn-オクタンを用いた。評価結果を「表1」に示す。
[実施例4]
【0070】
実施例1の表面コーティング層の基材を構成するダイプラコートOSのプレポリマー液100質量部に代えて、シラン系材料のKBM403(信越化学工業(株)製)100質量部を使用した以外、実施例1と同様にして現像ロールを得た。
【0071】
前記現像ロールで連続印字を行い、その後、実施例1と同様の方法で同様の評価を行った。滴下液はn-オクタンを用いた。評価結果を「表1」に示す。
[比較例1]
【0072】
実施例1の表面コーティング層の基材を構成するウレタン樹脂を、ダイプラコートOSのプレポリマー液100質量部に代えて、ニッポラン3022(日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部とコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)5質量部とした以外、実施例1と同様にして現像ロールを得た。
【0073】
前記現像ロールで連続印字を行い、その後、実施例1と同様の方法で同様の評価を行った。滴下液はプロピレングリコールを用いた。評価結果を「表1」に示す。
[比較例2]
【0074】
実施例1の表面コーティング層の基材を構成するダイプラコートOSのプレポリマー液100質量部に代えて、水添ニトリルゴム(H−NBR)のZetpol(日本ゼオン(株)製)100質量部を使用した以外、実施例1と同様にして現像ロールを得た。
【0075】
前記現像ロールで連続印字を行い、その後、実施例1と同様の方法で同様の評価を行った。滴下液はプロピレングリコールを用いた。評価結果を「表1」に示す。
[比較例3]
【0076】
実施例1の表面コーティング層の基材を構成するダイプラコートOSのプレポリマー液100質量部に代えて、シラン系材料のKBM703(信越化学工業(株)製)100質量部を使用した以外、実施例1と同様にして現像ロールを得た。
【0077】
前記現像ロールで連続印字を行い、その後、実施例1と同様の方法で同様の評価を行った。滴下液はn-オクタンを用いた。評価結果を「表1」に示す。
[比較例4]
【0078】
実施例1の表面コーティング層の基材を構成するダイプラコートOSのプレポリマー液100質量部に代えて、シラン系材料のKA1003(信越化学工業(株)製)100質量部を使用した以外、実施例1と同様にして現像ロールを得た。
【0079】
前記現像ロールで連続印字を行い、その後、実施例1と同様の方法で同様の評価を行った。滴下液としては本発明所定の滴下液によらない、分子の構造式にエステル結合が存在する酢酸エチルを用いた。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例1乃至4の結果から、本発明所定の滴下液であるプロピレングリコールやn-オクタンで測定した接触角度が60度以上である現像ロールは、初期画像の画質が10,000枚の連続印刷後も概ね維持されており、現像ロール表面の光学顕微鏡によるトナー固着状況の観察においても、トナーは全く固着していないか、固着が見られても極わずかである。
【0082】
比較例1乃至3の結果から、本発明所定の滴下液であるプロピレングリコールやn-オクタンで測定した接触角度が60度未満である現像ロールは、初期画像の画質に対して、10,000枚の連続印刷後の画質の劣化、白抜けの発生頻度の増加が激しく、現像ロール表面の光学顕微鏡によるトナー固着状況の観察においても、トナーの固着が顕著に見られる。
【0083】
比較例4の結果から、本発明の滴下液によらない、分子の構造式にエステル結合を有する酢酸エチルで測定した場合、接触角度が71度と大きいにもかかわらず、連続印刷後の画像劣化、白抜け発生の増加が激しく、トナー固着も顕著に見られる。本発明の滴下液によらなければトナーフィルミングの発生しない現像ロールを選択し得ないといえる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の現像ロール実施の形態の斜視図である。
【図2】本発明の現像ロール実施の形態の縦断面図である。
【図3】本発明の現像ロール実施の形態の横断面図である。
【符号の説明】
【0085】
10 半導電性ロール
11 導電性軸体
12 半導電性弾性体層
13 表面コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素化合物、又は、組成中に酸素原子を有するが該酸素原子はエステル結合を構成しない炭化水素系化合物であって、25℃、1気圧下で液状である有機化合物を滴下液として測定した、現像ロール表面のぬれ性を示す接触角が60度以上であることを特徴とする現像ロール。
【請求項2】
〜C17のn−パラフィン、C〜C17のイソパラフィン、C〜C17のシクロアルカン、C〜C12のn−パラフィンアルコール、C〜C12のイソパラフィンアルコール、C〜C12のシクロアルカノール、C〜Cのアルカンジオール、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ベンゼンメタノール、ベンゼンエタノール、ベンゼンジメタノール、ナフタレンメタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールの中から選ばれた一の有機化合物を滴下液として測定した、現像ロール表面のぬれ性を示す接触角が60度以上であることを特徴とする現像ロール。
【請求項3】
前記滴下液の粘度が25℃、1気圧下で500cSt以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像ロール。
【請求項4】
現像ロール表面層を構成する物質の主成分がポリウレタンであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の現像ロール。
【請求項5】
前記現像ロール表面層に粒子の平均粒径が5〜40μmの範囲の粒子が分散されており、現像ロール表面の画像形成領域の十点平均粗さ(Rz)が3≦Rz≦7であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の現像ロール。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の現像ロールを用いたことを特徴とする電子写真複写機その他の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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