説明

現像処理装置

【課題】処理液中に不活性ガスを効率良く溶け込ませて処理液の酸化を効果的に抑制することが可能な現像処理装置を提供する。
【解決手段】写真プリントシステム1では、プロセッサ部50bにおいて、発色現像槽55aと、ガス供給部70と、マイクロバブル発生部71と、を備えている。マイクロバブル発生部71は、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液中に、ガス供給部70から供給される窒素ガスを含むマイクロバブルを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光材料に対して現像処理を行なう現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、処理液、例えば、現像処理液を使用して感光材料に対して、画像データ等に基づき現像処理を行なう現像処理装置がある。
このような現像処理装置に用いられる処理液は、処理液の表層部分や処理液中に溶け込んでいる酸素によって酸化される。そして、酸化により劣化した処理液は、適宜新しい処理液に交換する必要がある。そのため、現像処理装置の中には、脱酸素処理した空気や酸化作用の少ない気体、例えば、窒素ガスを利用して処理液の酸化を抑制するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、処理槽において貯留されている処理液に対して窒素ガスを注入して溶け込ますことによって、処理液中に溶け込んでいる酸素を追い出して処理液の酸化を抑制する現像処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−182652号公報(昭和63年7月27日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の現像処理装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された現像処理装置では、処理槽において、処理液中に窒素ガスを効率良く溶け込ませることが難しいため、処理液の酸化を効果的に抑制することができないという問題があった。
そこで、本発明の課題は、処理液中に不活性ガスを効率良く溶け込ませて処理液の酸化を効果的に抑制することが可能な現像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る現像処理装置は、処理槽と、ガス供給部と、マイクロバブル発生部と、を備えている。処理槽は、現像処理に用いる処理液を貯留する。ガス供給部は、不活性ガスを供給する。マイクロバブル発生部は、処理液中に、ガス供給部から供給された不活性ガスを含むマイクロバブルを発生させる。
ここでは、現像処理装置において、不活性ガスを含むマイクロバブルを処理液中に発生させるマイクロバブル発生部を備えている。
【0006】
ここで、マイクロバブルとは、発生時の直径が約50μm以下の微細な気泡である。また、マイクロバブルは、単位体積あたりの表面積が通常の気泡よりも大きいため、例えば、水中を浮遊する過程で自然収縮して最終的に内部の気体を完全に溶解させるといった性質を有している。さらに、現像処理には、感光材料を現像するために行なう処理、例えば、現像、漂白、定着、洗浄、安定処理が含まれる。
【0007】
通常、感光材料に対する現像処理に用いられる処理液は、処理液の表層部分と接する空気に含まれる酸素や処理液に溶け込んでいる酸素によって酸化される。そのため、このような現像処理を行なう処理槽において、貯留されている処理液に対して窒素ガス(不活性ガス)を供給して溶け込ませることで、処理液中に溶け込んでいる酸素を追い出して処理液の酸化を抑制するものがある。
【0008】
しかし、このような処理液に窒素ガスを溶け込ませて処理液の酸化を抑制する場合において、処理液に窒素ガスを効率良く溶け込ませることが難しいという問題があった。
そこで、本発明の現像処理装置の備えるマイクロバブル発生部は、ガス供給部から供給される不活性ガスを含むマイクロバブルを処理液中において発生させる。
これにより、処理槽に貯留されている処理液に対して、不活性ガスを多く含むマイクロバブルを供給することができる。
このため、マイクロバブルによって不活性ガスを効率良く処理液に溶け込ませて、処理液中に溶け込んでいる酸素を追い出して処理液中の酸素濃度を低下させることができる。
この結果、処理液の酸化を効果的に抑制することができる。
【0009】
第2の発明に係る現像処理装置は、第1の発明に係る現像処理装置であって、処理槽において処理液を循環させるとともに、マイクロバブル発生部に対して処理液を供給するポンプ部をさらに備えている。
【0010】
ここでは、ポンプ部は、処理槽において処理液を循環させるとともに、マイクロバブル発生部に対して処理液を供給する。
通常、このような現像処理装置の備える処理槽において、処理槽内の処理液を循環させる経路が設けられている。
そのため、処理槽において、上述のマイクロバブル発生部に対して処理液を供給する経路をさらに設ける場合には、処理液の経路を2つ設けることになる。このため、ポンプ等の装置が2つずつそれぞれ必要になるので、装置のコストが増加するおそれがある。
【0011】
そこで、本発明の現像処理装置の備えるポンプ部は、処理槽において、処理液を循環させるとともに、マイクロバブル発生部に対して処理液を供給する。
これにより、処理液の循環とマイクロバブル発生部に対する処理液の供給とを、ポンプ部を共用して行なうことができる。
この結果、現像処理装置において、マイクロバブル発生部に処理液を供給する経路を新たに設けることによって生じる装置のコストの増加を抑制することができる。
【0012】
第3の発明に係る現像処理装置は、第2の発明に係る現像処理装置であって、ガス供給部によって供給される不活性ガスの供給量と、ポンプ部によって供給される処理液の供給量と、をそれぞれ制御する制御部をさらに備えている。制御部は、不活性ガスの供給量と処理液の供給量とをそれぞれ3つのモードに応じて切り換える。
ここでは、制御部は処理液の供給量と不活性ガスの供給量とをそれぞれ3つのモードに応じて切り換える。ここで、3つのモードには、処理液だけを供給する第1のモードと、処理液と不活性ガスとを供給してマイクロバブルを発生させる第2のモードと、処理液の供給量と不活性ガスの供給量とのうち少なくとも一方の供給量を第2のモードよりも増加させて供給する第3のモードと、が含まれる。なお、マイクロバブルは、例えば、水中の壁面等に衝突して潰れる際に衝撃を発生させるという性質を有しており、この衝撃を利用して処理槽等の汚れを洗浄することができる。
【0013】
これにより、例えば、現像処理装置において、現像処理を行なっている間は、第1のモードによって不活性ガスの供給を停止して処理液だけを供給する。また、現像処理を開始する場合と現像処理を停止する場合とにおいては、第2のモードによってマイクロバブルを含む処理液を処理槽に対して供給して処理液の酸化の進行を抑制する。さらに、処理槽の洗浄を行なう場合においては、第3のモードによって処理槽の洗浄に適した循環量のマイクロバブルを含む処理液を供給して処理槽を洗浄する。
【0014】
この結果、現像処理装置において、例えば、現像処理の状況に応じて、第1〜第3のモードを使い分けて処理液を処理槽に対して供給することができる。
【0015】
第4の発明に係る現像処理装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る現像処理装置であって、不活性ガスは、窒素ガスである。
ここでは、不活性ガスとして、窒素ガスを用いている。
これにより、処理槽において貯留されている処理液に窒素ガスを供給して、処理液の酸化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明に係る現像処理装置によれば、処理液の酸化を効果的に抑制することができる。
第2の発明に係る現像処理装置によれば、マイクロバブル発生部に処理液を供給する経路を新たに設けることによって生じる装置のコストの増加を抑制することができる。
第3の発明に係る現像処理装置によれば、例えば、現像処理の状況に応じて、第1〜第3のモードを使い分けて処理液を処理槽に対して供給することができる。
【0017】
第4の発明に係る現像処理装置によれば、処理槽において貯留されている処理液に窒素ガスを供給して、処理液の酸化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る写真プリントシステム1について、図1〜図4を用いて説明すれば以下の通りである。
[写真プリントシステム1の構成]
本発明の一実施形態に係る写真プリントシステム1は、図1に示すように、いわゆるデジタルミニラボと呼ばれる写真プリントシステムである。
【0019】
写真プリントシステム1は、操作部20と、プリント装置50と、を備えている。
操作部20は、現像された写真フィルムFやデジタルカメラ等で撮影されたデジタル画像データが保存されたメモリカード等のメディアから画像データを取り込んでプリントデータを作成し、プリント装置50に対して送信する。
プリント装置50は、操作部20から受信したプリントデータに基づいて、印画紙P(図2参照)に対して露光処理および現像処理を行なって写真プリント画像や、セットアップ用テストプリントを形成する。
【0020】
[操作部20の構成]
操作部20は、図1に示すように、モニタ21と、キーボード22と、マウス23と、コンピュータユニット30と、メディアリーダ31と、フィルムスキャナ40と、を有している。
コンピュータユニット30は、モニタ21、キーボード22、マウス23と接続されており、フィルムスキャナ40およびプリント装置50に含まれる各部の動作や画像処理および画像データの入出力等の制御を行なう。
【0021】
モニタ21には、各種制御のためのGUI(Graphical User Interface)や処理対象の画像が表示される。
メディアリーダ31は、本写真プリントシステム1のコントローラとして機能するコンピュータユニット30に搭載されており、デジタルカメラ等で撮影された画像のデジタルデータをメモリカードや各種半導体メモリ、CD−R等のメディアから取り込む。
【0022】
フィルムスキャナ40は、写真フィルムFに現像された撮影コマに対応する画像をデジタル画像データとして取り込む。
[プリント装置50の構成]
プリント装置50は、図2に示すように、印画紙Pに対して露光処理を行なうプリント部50aと、露光処理された印画紙Pに対して現像処理を行なうプロセッサ部(現像処理装置)50bと、を有しており、操作部20から受信したプリントデータに基づいて写真プリント画像を形成する。
【0023】
プリント部50aは、図2に示すように、内部に2つの印画紙マガジン51と、シートカッター52と、バックプリント部53と、プリント露光部54と、圧接搬送ローラ対57aと、チャッカー式搬送ユニット58と、を有している。
圧接搬送ローラ対57aと、チャッカー式搬送ユニット58とは、プリント部50aにおいて、印画紙マガジン51に収容されたロール状の印画紙Pを引き出すとともに、プリントサイズ等に切断された印画紙Pを、印画紙Pに対して行われる様々な処理に対応した搬送速度で搬送する。圧接搬送ローラ対57aは、2つのローラを組み合わせて構成されており、2つのローラの間の隙間に印画紙Pを圧接して回転することで印画紙Pを下流側へと搬送する。チャッカー式搬送ユニット58は、プリントサイズ等に切断された印画紙Pの下流側(先端側)の端部を搬送方向における両側からつまむようにして搬送する。
【0024】
2つの印画紙マガジン51は、プリント部50aにおいてロール状の印画紙Pを1個ずつ収納しており、圧接搬送ローラ対57aによって適宜必要な量の印画紙Pが引き出される。
シートカッター52は、印画紙マガジン51から印画紙Pを引き出す複数の圧接搬送ローラ対57aの下流側に配置されており、印画紙マガジン51から引き出された印画紙Pを所望のサイズに切断する。
【0025】
バックプリント部53は、シートカッター52の下流側に配置されており、プリントサイズ等所望のサイズに切断された印画紙Pの裏面側に、色補正情報やコマ番号等のプリント処理情報を印刷する。
プリント露光部54は、バックプリント部53の下流側におけるチャッカー式搬送ユニット58に隣接するように配置されており、プリントサイズやテストプリントサイズに切断された印画紙Pの表面に対して、プリントする撮影画像の露光を行なう。
【0026】
プロセッサ部50bは、処理槽ユニット55と、圧接搬送ローラ対57bと、乾燥部60と、コンベア56と、ソータ(図示せず)と、マイクロバブル供給装置61と、を有している。
圧接搬送ローラ対57bは、プロセッサ部50bにおいて、印画紙Pに対して行われる現像処理等の処理に応じた搬送速度で印画紙Pを搬送する。圧接搬送ローラ対57bは、複数のローラを組み合わせて構成されており、2つのローラの間の隙間に印画紙Pを圧接して回転することで印画紙Pを下流側へと搬送する。
【0027】
処理槽ユニット55は、プリント露光部54の下流側に配置された複数の圧接搬送ローラ対57bによって形成される搬送経路に沿って配置されており、発色現像処理液(処理液)を貯留する発色現像槽(処理槽)55a、漂白定着処理液(処理液)を貯留する漂白定着槽(処理槽)55bおよび安定処理液(処理液)を貯留する安定処理槽(処理槽)55cを有している。そして、露光後の印画紙Pが、これらの各処理槽55a〜55cをこの順で経由しながら搬送されることで、所望の写真プリント画像が印画紙Pの表面に形成される。ここで、図2に示すように、各処理槽55a〜55cの底部近傍に後段にて詳述するマイクロバブル発生部71がそれぞれ配置されている。
【0028】
乾燥部60は、処理槽ユニット55の下流側に配置されており、現像処理された印画紙Pを乾燥するために設けられている。
コンベア56は、写真プリント画像が表面に形成されて乾燥処理後に乾燥部から排出された印画紙Pをソータ(図示せず)の方向へ搬送する。
ソータは、プリント装置50の前面側に鉛直方向に複数のトレイを並べた状態で配置されており、コンベア56によって搬送されるプリント済の印画紙Pを、例えば、オーダー単位で各トレイに振り分ける。
【0029】
マイクロバブル供給装置61は、図2に示すように、各処理槽55a〜55cとその近傍とにおいて、各処理槽55a〜55cにそれぞれ対応するように配置されており、各処理槽55a〜55cに貯留されている各処理液に対してマイクロバブルの供給等を行なう。なお、マイクロバブル供給装置61については、後段にて詳述する。
(マイクロバブル供給装置61)
マイクロバブル供給装置61は、各処理槽55a〜55cにおいて貯留されている各処理液中に窒素ガス(不活性ガス)を混合したマイクロバブルを発生させて供給するとともに、各処理槽55a〜55cにおいて貯留されている各処理液をそれぞれ循環させる。
【0030】
ここで、マイクロバブルとは、発生時の直径が約50μm以下の微細な気泡である。また、マイクロバブルは、単位体積当たりの表面積が通常の気泡よりも大きく、例えば、水中に浮遊している間に内部に含まれる気体を通常の気泡よりも効率良く水に溶け込ませるといった性質を有している。
なお、各処理槽55a〜55cにおいて、それぞれ配置されているマイクロバブル供給装置61は、ほぼ同じ構成を有する装置である。このため、以下においては、発色現像槽55aにおいて配置されているマイクロバブル供給装置61を例に挙げて装置の構成を説明する。
【0031】
マイクロバブル供給装置61は、図3および図4に示すように、ガス供給部70と、マイクロバブル発生部71と、循環ポンプ(ポンプ部)72と、サブタンク72aと、パイプ72bと、パイプ72cと、制御部73と、窒素タンク59と、を有している。
窒素タンク59は、図2に示すように、各処理槽55a〜55cの下方に配置されており、発色現像槽55aに配置されたマイクロバブル発生部71(後段にて詳述)にガス供給部70(図3参照)(後段にて詳述)を介して窒素ガスを供給する。なお、窒素タンク59は、漂白定着槽55bと、安定処理槽55cと、において配置されているマイクロバブル発生部71に対しても窒素ガスを供給する共通の窒素タンクである。
【0032】
これにより、各処理槽55a〜55cにおいて貯留されている各処理液に対して窒素ガスを供給して、各処理液の酸化を抑制することができる。
ガス供給部70は、図3および図4に示すように、調整弁70aと、パイプ70bと、を有しており、各処理槽55a〜55cの下方に配置された窒素タンク59と、発色現像槽55a内に配置されたマイクロバブル発生部71(後段にて詳述)と、を接続するように配置されている。そして、ガス供給部70は、供給経路aに沿って、窒素ガスを窒素タンク59からパイプ70bを介してマイクロバブル発生部71(後段にて詳述)に供給する。
【0033】
調整弁70aは、図3および図4に示すように、パイプ70bに取り付けられており、マイクロバブル発生部71に対してパイプ70bを介して供給される窒素ガスの供給量を調節する。
サブタンク72aは、図3および図4に示すように、発色現像槽55aの側面部に配置されており、発色現像槽55aと接する側の側面部において発色現像槽55aから発色現像処理液を取り込む吸液口が設けられている。そして、サブタンク72aは、吸液口を介して発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液の一部を取り込んで貯留する。また、サブタンク72aの内部には、貯留されている発色現像処理液を濾過するフィルタ72dが設置されており、フィルタ72dによって濾過された発色現像処理液を循環経路bに沿って下流側のパイプ72bへ適宜供給する。なお、サブタンク72aの内部には、図示しない温度センサ等がさらに設置されおり、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液の温度管理を行なう。
【0034】
パイプ72bは、図3および図4に示すように、発色現像槽55aの側面部において、サブタンク72aと循環ポンプ72とを接続するように配置されており、発色現像処理液を循環経路bに沿って下流側に供給する。
循環ポンプ72は、図3および図4に示すように、発色現像槽55aの下部側面部に配置されており、循環経路bに沿って上流側から供給される発色現像処理液を下流側へ送り出す。そして、循環ポンプ72によって送り出された発色現像処理液は、下流側のパイプ72cを介してマイクロバブル発生部71に供給される。
【0035】
これにより、循環ポンプ72を、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液の循環と、マイクロバブル発生部71に対する発色現像処理液の供給と、を行なうポンプとして兼用することができる。
パイプ72cは、図3および図4に示すように、循環ポンプ72とマイクロバブル発生部71とを接続するように配置されており、発色現像処理液を循環経路bに沿って下流側のマイクロバブル発生部71へ供給する。
【0036】
マイクロバブル発生部71は、図3および図4に示すように、発色現像槽55aの底部近傍に配置されており、循環経路bに沿って上流側から供給される発色現像処理液中に、供給経路aに沿って上流側から供給される窒素ガスを混合して、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液中にマイクロバブルを発生させる。
これにより、窒素ガスを多く含むマイクロバブルを、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液に対して供給することができる。
【0037】
制御部73は、図4に示すように、発色現像槽55a下部近傍に配置されており、循環ポンプ72を制御して発色現像槽55aに対して供給される発色現像処理液の循環量と、調整弁70aを制御して発色現像槽55aに対して供給される窒素ガスの供給量と、をそれぞれ3つのモードに応じて切り換える。ここで、3つのモードには、発色現像処理液だけを供給する循環モードと、発色現像処理液と窒素ガスとを供給するマイクロバブル発生モード(以下、MB発生モード)と、MB発生モードよりも発色現像処理液の供給量と窒素ガスの供給量とを増加させる洗浄モードと、が含まれる。
【0038】
以下、循環モードと、MB発生モードと、洗浄モードと、における制御部73の調整弁70aと循環ポンプ72とに対する制御について、具体的に説明する。
制御部73は、循環モードにおいて、調整弁70aを閉じてマイクロバブル発生部71に対する窒素ガスの供給を停止する一方、循環ポンプ72に対してマイクロバブル発生部71へ発色現像処理液を供給するように制御する。これにより、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液を循環させることができる。
【0039】
MB発生モードにおいて、制御部73は、調整弁70aを開いて窒素ガスを供給させる一方、循環ポンプ72に対してマイクロバブル発生部71へ発色現像処理液を供給するように制御する。これにより、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液に対して、窒素ガスを含むマイクロバブルを効率よく供給して効果的に酸化を抑制することができる
洗浄モードにおいて、制御部73は、MB発生モードよりも、窒素ガスの供給量が増加するように調整弁70aの開度を大きくするとともに、循環ポンプ72に対して発色現像処理液の供給量が増加するように制御する。これにより、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液に対して、多量の窒素ガスを含むマイクロバブルを供給して発色現像槽55aの洗浄を行なうことができる。
【0040】
ここで、制御部73は、写真プリントシステム1において現像処理を行なっている場合には、循環モードによって、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液を循環させる。また、制御部73は、写真プリントシステム1において現像処理を開始、または終了する場合には、MB発生モードによって発色現像槽55aに対して窒素ガスを含むマイクロバブルを供給して発色現像処理液の酸化を抑制する。さらに、制御部73は、写真プリントシステム1において発色現像槽55aを洗浄する場合には、洗浄モードによって発色現像槽55aに対して多量のマイクロバブルを供給する。
【0041】
これにより、プロセッサ部50bにおいて、現像処理の状況に応じて3つのモードを使い分けて発色現像処理液を発色現像槽55aに対して供給することができる。
[写真プリントシステム1の特徴]
(1)
本実施形態の写真プリントシステム1では、図3に示すように、プロセッサ部50bにおいて、発色現像槽55aと、ガス供給部70と、マイクロバブル発生部71と、を備えている。マイクロバブル発生部71は、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液中に、ガス供給部70から供給される窒素ガスを含むマイクロバブルを発生させる。
【0042】
通常、印画紙に対する現像処理に用いられる現像処理液等の処理液は、空気中に含まれる酸素や、処理液に溶け込んでいる酸素によって酸化される。そのため、現像処理を行なう処理槽において、貯留されている処理液に窒素ガスを供給して溶け込ませて、処理液中に溶け込んでいる酸素を追い出して処理液の酸化を抑制するものがある。しかし、窒素ガスを処理液中に溶け込ませる場合において、窒素ガスを処理液に効率良く溶け込ませることが難しいという問題があった。
【0043】
そこで、本実施形態の写真プリントシステム1の備えるプロセッサ部50bでは、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液中に、ガス供給部70から供給される窒素ガスを含むマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生部71を備えている。
これにより、窒素ガスを多く含むマイクロバブルを発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液に対して供給することができる。
【0044】
このため、マイクロバブルによって不活性ガスを効率良く発色現像処理液に溶け込ませて、発色現像処理液中に溶け込んでいる酸素を追い出して発色現像処理液中の酸素濃度を低下させることができる。この結果、発色現像処理液の酸化を効果的に抑制することができる。
(2)
本実施形態の写真プリントシステム1では、図3に示すように、プロセッサ部50bにおいて、循環ポンプ72をさらに備えている。循環ポンプ72は、発色現像槽55aにおいて、貯留されている発色現像処理液を循環させるとともに、マイクロバブル発生部71に対して発色現像処理液を供給する。
【0045】
通常、このような写真プリントシステムでは、処理槽内の処理液を循環させる循環経路が設けられている。
そのため、上述したマイクロバブル発生部に対して処理液を供給する供給経路をさらに設ける場合には、各処理槽において、処理液を循環させる経路と、マイクロバブル発生部に対して処理液を供給する供給経路と、をそれぞれ設けることになる。そのため、この2つの経路において、それぞれ処理液を送り出すためのポンプ等の装置が必要となるので、装置のコストが増加するおそれがある。
【0046】
そこで、本実施形態の写真プリントシステム1の備えるプロセッサ部50bにおいて、循環ポンプ72は、発色現像槽55aにおいて貯留されている発色現像処理液を循環させるとともに、マイクロバブル発生部71に対して発色現像処理液を供給する。
これにより、発色現像処理液の循環とマイクロバブル発生部71に対する発色現像処理液の供給とを循環ポンプ72によって兼用することができる。
【0047】
この結果、写真プリントシステム1において、マイクロバブル発生部71に発色現像処理液を供給する経路を新たに設けることによって生じる装置のコストの増加を抑制することができる。
(3)
本実施形態の写真プリントシステム1では、図4に示すように、プロセッサ部50bにおいて、制御部73をさらに備えている。発色現像槽55aにおいて、制御部73は、ガス供給部70によって供給される窒素ガスの供給量と循環ポンプ72によって供給される発色現像処理液の供給量とを、それぞれ制御して3つのモードに応じて切り換える。
【0048】
これにより、制御部73は、写真プリントシステム1において現像処理を行なっている場合には、循環モードによって、発色現像槽55aにおいて発色現像処理液を循環させることができる。また、制御部73は、写真プリントシステム1において、現像処理を開始する際と現像処理を終了する際には、MB発生モードによって発色現像槽55aに対して窒素ガスを含むマイクロバブルを供給して発色現像処理液の酸化を抑制することができる。さらに、制御部73は、写真プリントシステム1において発色現像槽55aを洗浄する場合には、洗浄モードによって発色現像槽55aに対して多量のマイクロバブルを供給することができる。
【0049】
この結果、写真プリントシステム1において、現像処理の状況に応じて3つのモードを使い分けて、発色現像処理液を発色現像槽55aに対して供給することができる。
(4)
本実施形態の写真プリントシステム1では、プロセッサ部50bにおいて、不活性ガスとして、窒素ガスを用いている。
【0050】
これにより、図2に示す各処理槽55a〜55cにおいて貯留されている処理液に対して不活性な窒素ガスを供給して、処理液の酸化を抑制することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
(A)
上記実施形態では、循環ポンプ72を、発色現像槽55aにおける処理液の循環と発色現像処理液に配置されているマイクロバブル発生部71に対する処理液の供給とを行なうポンプとして兼用する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
例えば、処理液を循環させる経路と、マイクロバブル発生部71に対して処理液を供給する経路とを別々に設ける場合には、それぞれの経路に別々に処理液を送り出すためのポンプを設けてもよい。なお、上記のように別々に処理液を送り出すためのポンプを設ける例としては、事後的に、従来の現像処理装置が備える処理槽に対して、ポンプを備えたマイクロバブル供給装置を取り付ける場合が考えられる。
【0053】
この場合にも、上記実施形態に係る写真プリントシステム1と同様の効果を得ることができる。
但し、この場合には、それぞれの経路において、ポンプが必要となるので装置のコストが増加するおそれがある。そのため、上記実施形態のように、循環ポンプ72を兼用して用いる方がより好ましい。
【0054】
(B)
上記実施形態では、写真プリントシステム1は、各処理槽55a〜55cにおいて、マイクロバブル供給装置61を備えている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、各処理槽55a〜55cにおいて、酸化しやすい処理液を貯留している処理槽にだけマイクロバブル供給装置61を設けてもよい。
【0055】
この場合には、マイクロバブル供給装置61を酸化しやすい処理液が貯留されている処理槽にだけ設けつつ、マイクロバブル供給装置61の設置個数を減らすことができるので装置のコストを削減することができる。
(C)
上記実施形態では、制御部73は、処理液の循環量と窒素ガスの供給量とを、それぞれ3つのモードに応じて切り換える例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
例えば、制御部73は、処理液の循環量と窒素ガスの供給量とを、3つのモードに応じて段階的に切り換える代わりに、それぞれの供給量を連続的に切り換えるように制御してもよい。
この場合には、写真プリントシステム1の使用状況や、処理液の特性、または処理槽の大きさ等に応じて、適宜、処理液の循環量と窒素ガスの供給量とを調整することができる。
【0057】
(D)
上記実施形態では、不活性ガスとして、窒素ガスを用いる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、不活性ガスとしてアルゴンガスや、ヘリウムガス、ネオンガス、または脱酸素処理を行なった空気を用いてもよい。
【0058】
この場合にも、上記実施形態に係る写真プリントシステム1と同様の効果を得ることができる。
(E)
上記実施形態では、図2に示すように、マイクロバブル発生部71が、各処理槽55a〜55cの底部近傍に配置されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
例えば、各処理槽55a〜55cにおいて、各処理液の酸化を問題なく抑制することができる場合には、各処理槽55a〜55cの側面部にマイクロバブル発生部71を配置してもよい。
この場合にも、上記実施形態に係る写真プリントシステム1と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、例えば、各処理槽55a〜55cにおいて貯留されている各処理液の液面近傍にマイクロバブル発生部71を配置してもよい。
この場合には、空気中の酸素と触れて処理液の酸化が進みやすい処理液の表層部に対して、窒素ガスを含むマイクロバブルをさらに効率良く供給して処理液の表層部における処理液の酸化をさらに効果的に抑制することができる。
【0061】
但し、マイクロバブル発生部71を、各処理槽55a〜55cの底部近傍に配置した方が各処理槽55a〜55cにおいて貯留されている各処理液をそれぞれ効率的に循環させつつ、マイクロバブルを供給して各処理液の酸化を抑制することができるので、なるべく上記実施形態のように、底部近傍にマイクロバブル発生部71を配置する方が好ましい。
(F)
上記実施形態では、図2に示すように、窒素タンク59が、各処理槽55a〜55cの下方に配置されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
例えば、窒素タンク59は、設置することができる場合には、印画紙マガジン51近傍や、他の場所に配置してもよい。
この場合にも、上記実施形態に係る写真プリントシステム1と同様の効果を得ることができる。
また、例えば、窒素タンク59は、写真プリントシステム1の内部ではなく、外側に配置してもよい。
【0063】
この場合には、写真プリントシステム1内に窒素タンク59を配置するスペースを確保する必要がなく、また、窒素タンク59のメンテナンス作業等も容易になる。
(G)
上記実施形態では、図3に示すように、循環ポンプ72によって、発色現像槽55aの上部に配置されたサブタンク72aに設けられた吸液口から取り込まれた発色現像処理液をパイプ72b・72cを介して、処理槽の底部に配置されているマイクロバブル発生部71に供給する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
例えば、処理槽において処理液を充分循環させることができる場合には、マイクロバブル発生部71内部に処理液を吸い込むためのポンプを内蔵させて、マイクロバブル発生部71近傍の処理液を取り込ませてもよい。
この場合には、各処理槽55a〜55cにおいて、循環ポンプ72とサブタンク72aとパイプ72bとパイプ72cとを設ける必要がなくなり、装置のコストを削減することができる。
【0065】
(H)
上記実施形態では、図3に示すように、不活性ガスとして窒素ガスを窒素タンク59から供給する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、処理液の酸化を抑制する効果が充分得られる場合には、写真プリントシステム1付近の空気を取り込んで、含まれる酸素を取り除く処理を行なった後で、除酸素空気(すなわち、窒素ガスの占める割合の高い空気)として窒素ガスの代わりに用いてもよい。
【0066】
この場合には、窒素タンク59が不要となるので設置スペースが不要となり写真プリントシステム1の小型化を図ることができる。
(I)
上記実施形態では、制御部73は、洗浄モードにおいて、MB発生モードよりも各処理槽55a〜55cに対して、供給する各処理液の供給量と窒素ガスの供給量とを増加させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
例えば、制御部73は、各処理槽55a〜55cにおける洗浄効果が充分得られる場合には、MB発生モードよりも各処理液の供給量だけを増加させるように制御してもよいし、反対に、MB発生モードよりも各処理槽55a〜55cに対する窒素ガスの供給量だけを増加させるように制御してもよい。
これらの場合にも、上記実施形態に係る写真プリントシステム1と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(J)
上記実施形態では、写真プリントシステム1において、ガス供給部70と、マイクロバブル発生部71と、を備えている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、写真プリントシステム1の代わりに、フィルムプロセッサや、現像処理に用いる処理液を貯留する処理槽を備えている現像処理装置において、ガス供給部70と、マイクロバブル発生部71と、を備えてもよい。
【0069】
この場合にも、上記実施形態に係る写真プリントシステム1と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の現像処理装置は、処理液の酸化を効果的に抑制するという効果を奏することから、現像処理液等の処理液を用いて現像処理を行なう現像処理装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る写真プリントシステムの外観図。
【図2】図1の写真プリントシステムの構成を示す図。
【図3】図2に含まれる断面Aにおける矢視断面図。
【図4】図3に含まれる、循環経路と供給経路との近傍における構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0072】
1 写真プリントシステム
20 操作部
21 モニタ
22 キーボード
23 マウス
30 コンピュータユニット
31 メディアリーダ
40 フィルムスキャナ
50 プリント装置
50a プリント部
50b プロセッサ部(現像処理装置)
51 印画紙マガジン
52 シートカッター
53 バックプリント部
54 プリント露光部
55 処理槽ユニット
55a 発色現像槽(処理槽)
55b 漂白定着槽(処理槽)
55c 安定処理槽(処理槽)
56 コンベア
57a 圧接搬送ローラ対
57b 圧接搬送ローラ対
58 チャッカー式搬送ユニット
59 窒素タンク
60 乾燥部
61 マイクロバブル供給装置
70 ガス供給部
70a 調整弁
70b パイプ
71 マイクロバブル発生部
72 循環ポンプ(ポンプ部)
72a サブタンク
72b パイプ
72c パイプ
72d フィルタ
73 制御部
P 印画紙
F 写真フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像処理に用いる処理液を貯留する処理槽と、
不活性ガスを供給するガス供給部と、
前記処理液中に、前記ガス供給部から供給された前記不活性ガスを含むマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生部と、
を備えている現像処理装置。
【請求項2】
前記処理槽において前記処理液を循環させるとともに、前記マイクロバブル発生部に対して前記処理液を供給するポンプ部をさらに備えている、
請求項1に記載の現像処理装置。
【請求項3】
前記ガス供給部によって供給される前記不活性ガスの供給量と、前記ポンプ部によって供給される前記処理液の供給量と、をそれぞれ制御する制御部をさらに備えており、
前記制御部は、前記不活性ガスの前記供給量と前記処理液の前記供給量とをそれぞれ3つのモードに応じて切り換える、
請求項2に記載の現像処理装置。
【請求項4】
前記不活性ガスは、窒素ガスである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の現像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate