説明

現像剤供給装置

【課題】 現像剤の供給状態を可及的に均一にすること。
【解決手段】 本発明の現像剤電界搬送基板は、主走査方向に沿った長手方向を有する複数の搬送電極を備えている。搬送電極は、主走査方向と交差する現像剤搬送経路に沿って配列されている。現像剤電界搬送基板は、複数の搬送電極への多相交流電圧の印加に伴って発生する電界により、現像剤搬送経路に沿って、帯電した粉末状の現像剤を搬送するように構成されている。本発明の特徴は、搬送されている現像剤が衝突して当該現像剤の搬送方向が少なくとも主走査方向に沿って変化することで、当該主走査方向における現像剤の搬送量を均一化するように、現像剤搬送経路に面する表面である現像剤搬送面に設けられた、複数の突起を備えたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電した粉末状の現像剤を、電界搬送する(複数の搬送電極への多相交流電圧の印加に伴って発生する電界によって搬送する)ように構成された、現像剤電界搬送基板に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特開昭60−115962号公報、特開平11−84862号公報、特開2001−209246号公報、特開2002−287495号公報、特開2003−98826号公報、特開2008−233382号公報、等に開示されているものが知られている。かかる装置は、現像剤搬送方向に沿って配列された複数の搬送電極を備えていて、これら複数の搬送電極に対する駆動電圧の印加により発生する電界によって前記現像剤を搬送するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の装置において、前記現像剤の搬送状態にムラが生じると、形成画像濃度ムラ等の不具合が生じる。よって、良好な画像形成動作を行うためには、前記現像剤の搬送状態を可及的に均一にすることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<構成>
本発明の対象となる現像剤電界搬送基板は、主走査方向(現像剤搬送方向と直交し且つ後述する現像剤搬送面の法線方向とも直交する方向)に沿った長手方向を有する複数の搬送電極を備えている。前記搬送電極は、前記主走査方向と交差する現像剤搬送経路に沿って配列されている。この現像剤電界搬送基板は、複数の前記搬送電極への多相交流電圧の印加に伴って発生する(進行波状の)電界により、前記現像剤搬送経路に沿って、帯電した粉末状の現像剤を搬送するように構成されている。
【0005】
本発明の特徴は、搬送されている前記現像剤が衝突して当該現像剤の搬送方向が少なくとも前記主走査方向に沿って変化することで、当該主走査方向における前記現像剤の搬送量を均一化するように、前記現像剤搬送経路に面する表面である現像剤搬送面に設けられた、複数の突起を備えたことにある。かかる突起は、前記現像剤の粒子径の2倍よりも大きな高さを有している。そして、複数の前記突起が、前記主走査方向に沿って前記粒子径の2倍よりも大きなギャップを隔てて配列されている。
【0006】
ここで、前記ギャップが前記粒子径の500倍よりも小さくなるように、複数の前記突起が設けられ得る。また、前記突起は、前記高さが200μm以上に形成され得る。
【0007】
前記突起は、前記粒子径よりも大きな粒子から構成され得る。この場合、前記粒子は、バインダーにより前記現像剤搬送面に固定され得る。
【0008】
<作用>
かかる構成においては、前記現像剤搬送面上を搬送中の前記現像剤が、前記主走査方向に沿って多数設けられた前記突起と衝突する。すると、当該現像剤の搬送方向が、少なくとも前記主走査方向に沿って変化する。これにより、当該主走査方向について、前記現像剤が良好に分散する。なお、前記現像剤の凝集体が前記突起と衝突した場合には、当該凝集体が良好に解砕されることもあり得る。
【0009】
ここで、前記主走査方向についての分散作用や、前記凝集体の解砕作用をより効果的に奏するためには、前記現像剤は、搬送速度がより高い状態で前記突起と衝突することが好ましい。この点、前記現像剤の搬送速度のピークは、前記現像剤搬送面から若干浮き上がった位置(具体例として、前記搬送電極の前記現像剤搬送方向における幅が100μm、電極間隔が100μmである場合、前記現像剤搬送面から約200μm程度浮き上がった位置)に生じる。よって、前記突起の高さは、前記現像剤の粒子径よりも充分に大きく(上述の例では200μm以上に)設定されることが好ましい。
【0010】
他方、前記突起同士の間隔が狭すぎると、前記現像剤が良好に搬送されなくなるおそれがある。そこで、複数の前記突起同士のギャップの、前記主走査方向に沿った幅が、前記粒子径の2倍よりも大きくなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を備えた、本発明の現像剤電界搬送基板によれば、前記現像剤の搬送状態のムラの発生が、可及的に抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像形成装置としてのレーザープリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示されているトナー供給装置を拡大した側断面図である。
【図3A】図2に示されている搬送基板を拡大した側断面図である。
【図3B】図2に示されている搬送基板を拡大した側断面図である。
【図4】図3Aに示されている各電源回路の出力波形の一例を示すグラフである。
【図5】図2に示されているトナー供給装置の一変形例の構成を示す側断面図である。
【図6】図2に示されているトナー供給装置の他の変形例の構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において取り敢えず出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0015】
<レーザープリンタの構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像形成装置であるレーザープリンタ1の概略構成を示す側面図である。
【0016】
図1を参照すると、レーザープリンタ1は、用紙搬送機構2と、感光体ドラム3と、帯電器4と、スキャナーユニット5と、トナー供給装置6と、を備えている。
【0017】
レーザープリンタ1内に備えられた、図示しない給紙トレイには、シート状の用紙Pが積み重ねられた状態で収容されている。用紙搬送機構2は、用紙Pを所定の用紙搬送経路PPに沿って搬送し得るように構成されている。
【0018】
感光体ドラム3の周面には、静電潜像担持面LSが形成されている。静電潜像担持面LSは、主走査方向(図中z軸方向)と平行な円筒面として形成されている。この静電潜像担持面LSは、電位分布による静電潜像が形成されるとともに、当該静電潜像に対応した位置にて本発明の現像剤としてのトナーT(図2参照)を担持するように構成されている。
【0019】
感光体ドラム3は、前記主走査方向と平行な中心軸Cを中心として、図中矢印で示されている方向(図1における時計回り)に回転駆動され得るように構成されている。すなわち、静電潜像担持面LSが、前記主走査方向と直交する副走査方向に沿って移動し得るように、感光体ドラム3が構成されている。
【0020】
帯電器4は、静電潜像担持面LSと対向するように配置されている。この帯電器4は、コロトロン型あるいはスコロトロン型の帯電器であって、静電潜像担持面LSを一様に正帯電させ得るように構成されている。
【0021】
スキャナーユニット5は、画像データに基づいて変調されたレーザービームLBを生成するように構成されている。すなわち、スキャナーユニット5は、画素の有無によって発光のON/OFFが制御された、所定の波長帯域のレーザービームLBを生成するように構成されている。
【0022】
また、スキャナーユニット5は、生成されたレーザービームLBを、静電潜像担持面LSにおけるスキャン位置SPにて結像させる(露光する)ように構成されている。ここで、スキャン位置SPは、帯電器4よりも、感光体ドラム3の回転方向(図1における矢印で示されている方向:図中時計回り)における下流側の位置に設けられている。
【0023】
さらに、スキャナーユニット5は、静電潜像担持面LS上にてレーザービームLBが結像される位置を、前記主走査方向に沿って等速度にて移動させる(走査する)ことで、静電潜像担持面LS上に静電潜像を形成し得るように構成されている。
【0024】
トナー供給装置6は、感光体ドラム3と対向するように、感光体ドラム3の下方に配置されている。トナー供給装置6は、現像位置DPにて、トナーを帯電した状態で静電潜像担持面LSに供給し得るように構成されている。ここで、現像位置DPとは、トナー供給装置6が静電潜像担持面LSと対向する位置である。このトナー供給装置6の詳細な構成については後述する。
【0025】
次に、レーザープリンタ1の各部の具体的な構成について、より詳細に説明する。
【0026】
用紙搬送機構2は、一対のレジストローラ21と、転写ローラ22と、を備えている。
【0027】
レジストローラ21は、用紙Pを所定のタイミングにて感光体ドラム3と転写ローラ22との間に向けて送り出し得るように構成されている。
【0028】
転写ローラ22は、感光体ドラム3の外周面である静電潜像担持面LSと、転写位置TPにて、用紙Pを挟んで対向するように配置されている。また、転写ローラ22は、図中矢印で示されている方向(反時計回り)に回転駆動され得るように構成されている。
【0029】
転写ローラ22は、図示しないバイアス電源回路に接続されている。すなわち、転写ローラ22と感光体ドラム3との間で、静電潜像担持面LS上に付着したトナー(現像剤)を用紙Pに転写させるための所定の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0030】
<<トナー供給装置>>
図2は、図1に示されているトナー供給装置6を拡大した側断面図である。図2を参照すると、トナー供給装置6は、帯電したトナーTを、電界により、前記主走査方向と直交するトナー搬送経路TTPに沿って搬送しつつ、感光体ドラム3に対して供給するように構成されている。
【0031】
トナー供給装置6のケーシングをなすトナーボックス61は、側断面視にて長円状に形成された箱状部材であって、その長手方向が上下方向(図中y軸方向)と平行となるように配置されている。トナーボックス61の内部には、粉末状の乾式現像剤としてのトナーTが収容されている。すなわち、トナーTは、トナーボックス61の内側の空間における底部の、略半円筒状の部分である、トナー貯留部61a内に貯留されている。なお、本実施形態においては、トナーTは、正帯電性、非磁性1成分の、黒色トナーである。
【0032】
トナーボックス61の頂部であって、感光体ドラム3と対向する位置には、開口部61bが形成されている。すなわち、開口部61bは、感光体ドラム3に向けて上方に開口するように設けられている。なお、本実施形態においては、開口部61bは、トナーボックス61の内側の空間の、奥行き方向(主走査方向及び上下方向と直交する方向:図中x軸方向)における全幅分にわたって形成されている。
【0033】
現像ローラ62は、円柱面状の周面であるトナー担持面62aを有するローラ状の部材であって、感光体ドラム3と対向するように設けられている。すなわち、トナー担持面62aが現像位置DPにて感光体ドラム3における静電潜像担持面LSと近接しつつ所定間隔(500μm程度)のギャップを介して対向するように、現像ローラ62が配置されている。
【0034】
現像ローラ62は、トナーボックス61における、開口部61bが形成された上端部にて、回動可能に支持されている。本実施形態においては、現像ローラ62は、主走査方向と平行な回転中心軸がトナーボックス61の内側に位置することで、トナー担持面62aのほぼ半分がトナーボックス61の外側の露出するように、トナーボックス61に収容されている。
【0035】
トナーボックス61の内部には、トナー搬送経路TTPに沿って、搬送基板63が設けられている。搬送基板63は、トナーボックス61の内壁面に固定されている。本実施形態においては、搬送基板63は、底部搬送基板63aと、上方搬送基板63bと、回収基板63cと、を備えている。なお、搬送基板63(底部搬送基板63a、上方搬送基板63b、及び回収基板63c)の内部構成の詳細については後述する。
【0036】
底部搬送基板63aは、トナー貯留部61aの底面を構成するように、トナーボックス61の内側の空間における底部に配置されている。底部搬送基板63aは、搬送基板63の底部の、側断面視にて半円筒形状に屈曲された凹状の曲面状の部分であって、上方搬送基板63bの下端部と滑らかに接続されている。この底部搬送基板63aは、トナー貯留部61a内のトナーTを、上方搬送基板63bの下端部に向けて搬送するように、当該下端部と接続されている。
【0037】
上方搬送基板63bは、平板状に形成されていて、底部搬送基板63aと接続された下端部からトナーTを垂直上方に搬送するように立設されている。
【0038】
本実施形態においては、上方搬送基板63bの上端部は、現像ローラ62の中心とほぼ同じ高さに(当該中心よりも若干上方まで)設けられている。この上端部は、現像ローラ62における円柱面状のトナー担持面62aと対向するように設けられている。この上方搬送基板63bの上端部とトナー担持面62aとが最も近接しつつ対向するトナー担持位置TCPにて、両者の間には、所定間隔(300μm程度)のギャップが設けられている。
【0039】
すなわち、上方搬送基板63bは、底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTを、トナー担持位置TCPに向けて、トナー搬送方向TTDに搬送するように構成されている。
【0040】
回収基板63cは、上方搬送基板63bの上端部と現像ローラ62を挟んだ反対側にて、現像ローラ62と対向するように設けられている。すなわち、回収基板63cは、トナーボックス61の開口部61bよりもトナー搬送方向TTDにおける下流側に配置されている。本実施形態においては、回収基板63cのトナー搬送方向TTDにおける終端部は、現像ローラ62の下端に対応する位置に設けられている。
【0041】
回収基板63cは、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収するとともに、この回収されたトナーTを下方のトナー貯留部61aに向けて搬送するように構成されている。具体的には、本実施形態においては、回収基板63cは、平板状に形成されている。そして、回収基板63cは、現像ローラ62と所定間隔(現像位置DPにおける感光体ドラム3と現像ローラ62とのギャップの間隔よりも狭い間隔:300μm程度)のギャップを隔てて対向しつつ、トナーTを垂直下方に搬送するように設けられている。
【0042】
搬送基板63における底部搬送基板63a及び上方搬送基板63bは、搬送電源回路64と電気的に接続されている。回収基板63cは、回収電源回路65と電気的に接続されている。現像ローラ62は、現像バイアス電源回路66と電気的に接続されている。
【0043】
搬送電源回路64、回収電源回路65、及び現像バイアス電源回路66は、トナーTをトナー搬送経路TTPに沿ってトナー搬送方向TTDに循環させる(トナー貯留部61a内のトナーTを現像ローラ62に一旦担持させつつ現像位置DPまで供給し、現像位置DPにて静電潜像担持面LS上の静電潜像をトナーTにより良好に現像するとともに、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収して下方のトナー貯留部61aに還流させる)ために必要な電圧を出力するようになっている。
【0044】
<<<搬送基板>>>
本発明の現像剤電界搬送基板としての搬送基板63は、薄板状の部材であって、フレキシブルプリント配線基板と同様の構成を有している。
【0045】
図3Aは、図2に示されている搬送基板63(上方搬送基板63b)を拡大した側断面図である。図3Bは、図3Aに示されている搬送基板63(上方搬送基板63b)の前記主走査方向における一部分を示す平面図である。図3Aを参照すると、具体的には、搬送基板63は、搬送電極631と、搬送電極支持フィルム632と、電極カバー層633と、コーティング層634と、から構成されている。
【0046】
搬送電極631は、前記主走査方向と平行な(すなわち前記副走査方向と直交する)長手方向を有する線状の配線パターンであって、銅箔によって形成されている。複数の搬送電極631は、トナー搬送経路TTPに沿って配列されていて、互いに平行に配置されている。
【0047】
本実施形態においては、搬送電極631は、そのトナー搬送方向TTDにおける幅が100μmとなるように形成されている。また、本実施形態においては、複数の搬送電極631が、200μmのピッチで形成されている。
【0048】
複数の搬送電極631は、搬送電極支持フィルム632の表面上に形成されている。搬送電極支持フィルム632は、可撓性のフィルムであって、ポリイミド樹脂等の絶縁性の合成樹脂から構成されている。
【0049】
電極カバー層633は、絶縁性の合成樹脂から構成されている。この電極カバー層633は、搬送電極支持フィルム632における搬送電極631が設けられている表面、及び搬送電極631を覆うように設けられている。
【0050】
電極カバー層633の上には、コーティング層634が設けられている。すなわち、上述の電極カバー層633は、コーティング層634と搬送電極631との間に形成されている。
【0051】
トナー搬送経路TTPに沿った搬送基板63(上方搬送基板63b)の表面であるトナー搬送面TTSには、複数の突起635が設けられている。本実施形態における突起635は、トナーTの粒子径(例えばレーザー回折型粒度分布測定装置における個数平均粒子径:典型的には6〜10μm程度)の2倍よりも充分大きな高さに形成されている。具体的には、この突起635は、その高さが200μm以上となるように形成されている。
【0052】
本実施形態においては、突起635は、搬送基板63における、上方搬送基板63bに対応する部分にのみ設けられている。この突起635は、トナーTの粒子径よりも大きな粒子635aをコーティング層634によって固定することによって形成されている。すなわち、コーティング層634を構成する合成樹脂バインダーに粒子635aを分散したものを電極カバー層633上に塗布することによって、突起635が形成されている。
【0053】
図3Bを参照すると、突起635は、前記主走査方向(図中上下方向)に沿って離散的に多数配置されている。すなわち、突起635は、前記主走査方向について、ほぼ均一になるように配置されている。また、隣り合う2つの突起635間には、前記主走査方向に沿って、ギャップが形成されている。
【0054】
このギャップは、トナー搬送方向TTDに搬送されているトナーTが突起635に衝突してトナーTの搬送方向が横方向に(すなわち前記主走査方向に沿って)変化することで、トナーTの搬送性が保たれつつ、当該主走査方向におけるトナーTの搬送量が均一化される程度の幅(具体的にはトナーTの粒子径の2倍よりも充分大きく500倍よりも小さい幅)となるように形成されている。このようなギャップの幅は、粒子635aを分散したコーティング層634の形成時における分散量や粘度を適宜調整することによって容易に設定可能である。
【0055】
トナー搬送経路TTPに沿って多数配列された各搬送電極631は、3本置きに同一の電源回路に接続されている。すなわち、電源回路VAに接続された搬送電極631,電源回路VBに接続された搬送電極631,電源回路VCに接続された搬送電極631,電源回路VDに接続された搬送電極631,電源回路VAに接続された搬送電極631,電源回路VBに接続された搬送電極631,電源回路VCに接続された搬送電極631・・・が、トナー搬送経路TTPに沿って順に配列されている(なお、これらの電源回路VAないしVDは、図2における搬送電源回路64や回収電源回路65の構成要素である。)。
【0056】
ここで、図4は、図3Aに示されている各電源回路VAないしVDの出力波形の一例を示すグラフである。本実施形態においては、図4に示されているように、各電源回路VAないしVDは、ほぼ同一波形の交流電圧である駆動電圧を出力し得るように構成されている。また、各電源回路VAないしVDが発生する電圧の波形における位相が、90°ずつ異なるように、各電源回路VAないしVDが構成されている。すなわち、電源回路VAから電源回路VDに向かう順に、電圧の位相が90°ずつ遅れるようになっている。
【0057】
このように、搬送基板63は、各搬送電極631に対して上述のような駆動電圧が印加されて、トナー搬送経路TTPに沿った進行波状の電界が発生することで、正帯電したトナーTをトナー搬送方向TTDに搬送するように構成されている。
【0058】
<レーザープリンタの動作説明>
次に、上述のように構成されたレーザープリンタ1による動作の概要を、実施形態の構成による作用・効果とともに、図面を適宜参照しつつ説明する。
【0059】
<<給紙動作>>
まず図1を参照すると、図示しない前記給紙トレイ上に積載された用紙Pの先端が、レジストローラ21まで送られる。このレジストローラ21にて、用紙Pの斜行が補正されるとともに、搬送タイミングが調整される。その後、用紙Pは、転写位置TPまで給送される。
【0060】
<<潜像形成面上へのトナー像の担持>>
上述のように用紙Pが転写位置TPに向けて搬送されている間に、感光体ドラム3の周面である静電潜像担持面LS上に、以下のようにしてトナーTによる像が担持される。
【0061】
<<<静電潜像の形成>>>
感光体ドラム3の静電潜像担持面LSは、まず、帯電器4によって、正極性に一様に帯電される。
【0062】
帯電器4によって帯電された静電潜像担持面LSは、感光体ドラム3の図中矢印で示されている方向(時計回り)の回転により、スキャナーユニット5と対向する(正対する)位置であるスキャン位置SPまで、前記副走査方向に沿って移動する。
【0063】
このスキャン位置SPにて、画像情報に基づいて変調されたレーザービームLBが、前記主走査方向に沿って走査されつつ、静電潜像担持面LSに照射される。このレーザービームLBの変調状態に応じて、静電潜像担持面LS上の正電荷が消失する部分が生じる。これにより、静電潜像担持面LS上に、正電荷のパターン(画像状分布)による静電潜像が形成される。
【0064】
静電潜像担持面LSに形成された静電潜像は、感光体ドラム3の図中矢印で示されている方向(時計回り)の回転により、トナー供給装置6と対向する現像位置DPに向かって移動する。
【0065】
<<<帯電トナーの搬送・供給>>>
図2及び図3Aを参照すると、トナーボックス61内に貯留されているトナーTは、底部搬送基板63aにおけるコーティング層634との接触や摩擦等により帯電する。底部搬送基板63aにおけるコーティング層634と接触あるいは近接している、帯電したトナーTは、搬送電極631に対する印加電圧によって発生する電界により、トナー搬送方向TTDに搬送され、上方搬送基板63bに受け渡される。
【0066】
ここで、本実施形態においては、底部搬送基板63aのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部、すなわち、上方搬送基板63bとの接続部が、曲面状に形成されている。これにより、上方搬送基板63bの下端部における、底部搬送基板63aからのトナーTの受け渡しが、スムーズに行われ得る。
【0067】
上方搬送基板63bは、その下端部にて底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTを、垂直上方に搬送する。ここで、底部搬送基板63aから上方搬送基板63bに受け渡されたトナーTには、帯電状態が不良なもの(逆極性すなわち負極性に帯電したものや、低帯電あるいは無帯電のもの、等。)が混入している。
【0068】
もっとも、本実施形態の構成においては、上方搬送基板63bによってトナー担持位置TCPに向けて垂直上方に搬送されている際や、上方搬送基板63bと現像ローラ62との間に形成された電界によって正帯電のトナーTがトナー担持位置TCPにて現像ローラ62に担持される際に、帯電状態が不良なトナーTは、重力や上述の電界の作用により、トナー搬送経路TTPから逸脱し、上方搬送基板63bから下方に落下する。
【0069】
これにより、帯電状態が良好なトナーTのみが選択的に、トナー担持位置TCPまで搬送される。すなわち、上方搬送基板63bにて、トナーTにおける、帯電状態が良好なものと不良なものとが、良好に選別される。
【0070】
図2、図3A、及び図3Bを参照すると、上方搬送基板63bによって上方に搬送中のトナーTは、前記主走査方向に沿って離散的に多数配置された突起635と衝突することで、当該主走査方向に沿って、搬送方向が変えられる。また、トナーTの凝集体は、この衝突によって解砕される。これにより、当該主走査方向について良好に分散した状態で、トナーTがトナー搬送方向TTDに電界搬送される。
【0071】
ところで、本実施形態の構成においては、トナーTの搬送速度のピークは、トナー搬送面TTSから200μm程度浮き上がった位置に生じる(これは計算機シミュレーションや実験によって確認可能である)。この点、本実施形態においては、突起635は、このような搬送速度のピークに対応する高さでトナーTが良好に衝突するように設けられている。
【0072】
また、隣り合う突起635間の、前記主走査方向におけるギャップは、トナーTの衝突により当該主走査方向におけるトナーTの搬送量が均一化される程度に狭く、且つトナーTの搬送性が保たれる程度に広い幅となるように形成されている。
【0073】
したがって、本実施形態においては、トナー担持位置TCPまで搬送される間に、前記主走査方向におけるトナーTの搬送量が、良好に均一化される。
【0074】
図2を参照すると、上述のようにして、正帯電のトナーTは、トナー担持位置TCPまで搬送されると、当該トナー担持位置TCPにて、トナー担持面62aに担持される。そして、現像ローラ62の回転駆動により、トナー担持面62a上のトナーTが現像位置DPまで移動することで、トナーTが現像位置DPに供給される。
【0075】
この現像位置DPの近傍にて、静電潜像担持面LSに形成された静電潜像が、トナーTによって現像される。すなわち、静電潜像担持面LS上であって、静電潜像における正電荷が消失した部分に、トナーTが付着する。これにより、トナーTによる画像(以下、「トナー像」と称する。)が、静電潜像担持面LS上に担持される。
【0076】
現像位置DPを通過した(現像位置DPにて消費されなかった)トナー担持面62a上のトナーTは、上述の回収バイアスの作用で、回収基板63c側に移行する。すなわち、かかるトナーは、回収基板63cによってトナー担持面62aから回収される。
【0077】
トナー担持面62aから回収基板63c側に移行したトナーTは、下方のトナー貯留部61aに向けて搬送される。回収基板63cの下端部にて、トナーTは、垂直下方に搬送される。このとき、トナーTには、重力と同方向の慣性が作用する。そして、回収基板63cの下端部よりも下方においては、トナーTは、重力と、この重力と同方向の慣性の作用で、トナー貯留部61aに落下する。よって、回収基板63cがトナー貯留部61aに達するまで設けられていなくても、トナーTがトナー貯留部61aに良好に還流する。
【0078】
<<潜像形成面から用紙へのトナー像の転写>>
図1を参照すると、上述のようにして感光体ドラム3の静電潜像担持面LS上に担持されたトナー像は、当該静電潜像担持面LSが図中矢印で示されている方向(時計回り)に回転することにより、転写位置TPに向けて搬送される。そして、この転写位置TPにて、トナー像が、静電潜像担持面LSから用紙P上に転写される。
【0079】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0080】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0081】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0082】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0083】
(1)本発明の適用対象は、単色のレーザープリンタに限定されない。例えば、本発明は、カラーのレーザープリンタや、単色及びカラーの複写機等の、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に対して、好適に適用され得る。このとき、感光体の形状は、上述の実施形態のようなドラム状でなくてもよい。例えば、平板状や無端ベルト状等であってもよい。また、露光光源としては、レーザースキャナ以外のもの(LED、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、蛍光体、等)が好適に用いられ得る。点光源をアレイ状に配列した露光光源(LEDアレイ等)の場合、その配列方向が主走査方向となる。また、帯電器4として、いわゆる帯電ローラが用いられ得る。
【0084】
あるいは、本発明は、上述の電子写真方式以外の方式(例えば、感光体を用いないトナージェット方式、イオンフロー方式、マルチスタイラス電極方式、等)の画像形成装置に対しても、好適に適用され得る。
【0085】
(2)図4を参照すると、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の波形は、矩形波状以外にも、正弦波状や三角波状等の任意のものが用いられ得る。
【0086】
また、上述の実施形態においては、4つの電源回路VA〜VDが設けられるとともに、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の位相が90°ずつ異なっていた。もっとも、本発明はこれに限定されず、例えば、3つの電源回路が備えられるとともに、各電源回路が発生する電圧の位相が120°ずつ異なるようになっていてもよい。
【0087】
(3)現像ローラ62への印加電圧は、直流成分(接地を含む)のみであってもよい。
【0088】
(4)感光体ドラム3と現像ローラ62とは、接触していてもよい。
【0089】
(5)図5は、図2に示されているトナー供給装置6の一変形例の構成を示す側断面図である。
【0090】
図5に示されているように、上方搬送基板63bや回収基板63cの最上端部には、現像ローラ62の円筒形状に倣った形状の屈曲部が形成されていてもよい(この場合でも上方搬送基板63bは実質的に「平板状」と称され得る。)。この場合、開口部61bは、トナーボックス61の内側の空間の、奥行き方向(主走査方向及び上下方向と直交する方向:図中x軸方向)における全幅分よりも、狭い範囲で形成されることとなる。
【0091】
また、この場合、上方搬送基板63bの最上端部は、現像ローラ62の中心よりも上方まで、具体的には、開口部61bに達する位置まで設けられている。この最上端部は、現像ローラ62における円柱面状のトナー担持面62aと一定間隔(300μm程度)のギャップを隔てて対向するように、凹状の曲面状に屈曲されている。
【0092】
また、この場合、回収基板63cの上部は、現像ローラ62と一定間隔(現像位置DPにおける感光体ドラム3と現像ローラ62とのギャップの間隔よりも狭い間隔:300μm程度)のギャップを隔てて対向するように、凹状の曲面状に屈曲されている。そして、回収基板63cの下部は、トナーTを垂直下方に搬送するように設けられている。
【0093】
(6)搬送基板63の構成は、上述の実施形態のものに限定されない。
【0094】
例えば、上方搬送基板63bは、実質的に上下方向に沿って立設していればよく、多少傾いていてもよい。同様に、回収基板63cも、多少傾いていてもよい。
【0095】
底部搬送基板63aの中央部は、平坦であってもよい。すなわち、底部搬送基板63aにおける曲面状の部分は、上方搬送基板63bの下端部との接続部のみであってもよい。
【0096】
回収基板63cのトナー搬送方向TTDにおける終端部は、底部搬送基板63aと接続されていてもよい。
【0097】
コーティング層634は、省略され得る。
【0098】
突起635は、底部搬送基板63aや回収基板63cに設けられていても差し支えない。また、突起635のサイズや形状についても、特段の限定はない。具体的には、例えば、上述の実施形態における突起635を構成する粒子635aは、一次粒子であってもよいし、微粒子の集合体(凝集体)であってもよい。また、突起635は、円柱形、円錐形、多角柱形、多角錐形等、様々な形状をとり得る。
【0099】
図6は、図3Aに示されている搬送基板63(上方搬送基板63b)の一変形例の構成を示す側断面図である。例えば、図6に示されているように、突起635は、コーティング層634と一体に形成されていてもよい。この場合、突起635は、トナーTを滞りなくトナー搬送方向TTDに搬送するという観点からは、円柱あるいは円錐状に形成されることが好ましい。
【0100】
(7)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
【0101】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0102】
1 … レーザープリンタ
2 … 用紙搬送機構
3 … 感光体ドラム
4 … 帯電器
5 … スキャナーユニット
6 … トナー供給装置
61 … トナーボックス
62 … 現像ローラ
63 … 搬送基板(現像剤電界搬送基板)
64 … 搬送電源回路
65 … 回収電源回路
66 … 現像バイアス電源回路
631 … 搬送電極
632 … 搬送電極支持フィルム
633 … 電極カバー層
634 … コーティング層(バインダー)
635 … 突起
635a … 粒子
DP … 現像位置
LS … 静電潜像担持面
P … 用紙
PP … 用紙搬送経路
SP … スキャン位置
T … トナー(現像剤)
TTD … トナー搬送方向
TTP … トナー搬送経路(トナー搬送経路)
TTS … トナー搬送面(現像剤搬送面)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開昭60−115962号公報
【特許文献2】特開平11−84862号公報
【特許文献3】特開2001−209246号公報
【特許文献4】特開2002−287495号公報
【特許文献5】特開2003−98826号公報
【特許文献6】特開2008−233382号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿った長手方向を有していて前記主走査方向と交差する現像剤搬送経路に沿って配列された複数の搬送電極を備え、これらの搬送電極への多相交流電圧の印加に伴って発生する電界により、前記現像剤搬送経路に沿って、帯電した粉末状の現像剤を搬送するように構成された、現像剤電界搬送基板において、
搬送されている前記現像剤が衝突して当該現像剤の搬送方向が少なくとも前記主走査方向に沿って変化することで、当該主走査方向における前記現像剤の搬送量を均一化するように、前記現像剤搬送経路に面する表面である現像剤搬送面に設けられていて、前記現像剤の粒子径の2倍よりも大きな高さを有し、前記主走査方向に沿って前記粒子径の2倍よりも大きなギャップを隔てて配列された、複数の突起を備えたことを特徴とする、現像剤電界搬送基板。
【請求項2】
請求項1に記載の、現像剤電界搬送基板であって、
複数の前記突起は、前記ギャップが前記粒子径の500倍よりも小さくなるように設けられたことを特徴とする、現像剤電界搬送基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の、現像剤電界搬送基板であって、
前記突起は、前記高さが200μm以上に形成されたことを特徴とする、現像剤電界搬送基板。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の、現像剤電界搬送基板であって、
前記突起は、前記粒子径よりも大きな粒子からなることを特徴とする、現像剤電界搬送基板。
【請求項5】
請求項4に記載の、現像剤電界搬送基板であって、
前記粒子は、バインダーにより前記現像剤搬送面に固定されていることを特徴とする、現像剤電界搬送基板。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−22375(P2011−22375A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167564(P2009−167564)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】