説明

現像方法、現像装置及び記憶媒体

【課題】レジストが塗布され、露光された後の基板を現像するにあたり、安定して基板に現像液を供給すること。
【解決手段】基板を保持する基板保持部を介して前記基板を鉛直軸の周りに回転させながら、第1の現像液ノズルから現像液を帯状にかつその帯状領域の一端側が基板の中央に向くように基板の表面における中央部及び周縁部の一方に供給し、現像液の供給位置を移動させることにより、基板の表面に現像液の液膜を形成する工程と、前記現像液の液膜の乾燥を防止するために、第2の現像液ノズルから前記基板の中心部に円形状または第1の現像液ノズルから供給される現像液よりも長さが短い帯状に現像液を供給すると共に前記基板保持部を介して基板を鉛直軸の周りに回転させて、その現像液を遠心力により基板の周縁部に展伸させる工程と、を実施して、処理に応じて現像液ノズルを使い分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面にレジストが塗布され、露光された後の基板を現像する現像方法、現像装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にレジストを塗布し、このレジストを所定のパターンで露光した後に現像してレジストパターンを形成している。このような処理は、一般にレジストの塗布、現像を行う塗布、現像装置に、露光装置を接続したシステムを用いて行われる。
【0003】
従来の現像処理としては、例えば先ず基板保持部上にウエハを水平に保持し、このウエハの表面から僅かに浮かせた位置に細孔の吐出孔を有する現像液ノズルを配置する。その後ウエハを鉛直軸回りに回転させると共に、前記現像液ノズルから現像液を吐出しながらウエハの回転半径方向に当該現像液ノズルを移動させることにより、ウエハの表面に螺旋状に現像液を液盛りする。そしてそのように現像液が液盛りされた状態で所定の現像時間が経過するまでウエハを静止状態に保ち、然る後リンス液をウエハに供給して現像液を洗い流す方法が知られており、この現像処理はパドル方式現像と呼ばれている。
【0004】
しかし前記パドル方式現像には使用する現像液の量が多いという欠点がある。そこでこのパドル方式に代わり、特許文献1に記載されるような、基板を回転させながら当該基板に現像液を吐出して現像処理する方式を行うことが検討されている。図14(a)、(b)を参照しながらこの現像処理について簡単に説明する。先ず基板保持部であるスピンチャック11を介してウエハWを鉛直軸回りに回転させると共に図中矢印で示すようにウエハWの周縁部側から中央部側に伸びるスリット状の吐出口12を備えた現像液ノズル13をウエハWの周縁部側から中央部側に向かって移動させながら、吐出口12から帯状に現像液14を吐出させて、ウエハWの表面に螺旋状に現像液14を供給し、その表面全体を現像液14の液膜15で被覆する。現像液ノズル13がウエハWの中心部上に移動し、ウエハW全体を現像液14で覆った後も、前記液膜15の乾燥を防ぐためにそのウエハWの中心部に現像液ノズル13は現像液14を供給し続ける。しばらくしてウエハW表面のレジストにレジストパターンが現像されると、不図示のリンスノズルによりリンス液を吐出してウエハW表面の現像液14を洗い流すことで現像処理が終了される。
【0005】
上記の基板を回転させながらノズルから当該基板に現像液を吐出して現像処理する方式においてウエハWに現像液14の液膜15を形成するにあたっては、上記のパドル方式現像において液盛りを行うことに比べて現像液ノズル13の移動速度を大きく設定することで現像処理の短縮化を図ることができ、またパドル方式で液盛りを行う場合よりもウエハW表面の現像液14の膜厚が小さくなるので現像液14の省液化が図れるとされている。しかしレジスト材料によっては現像欠陥の発生を抑えようとすると共に良好なCD(レジストパターンの線幅)の均一性を得ようとすると、プロセスマージンが狭くなってしまい、その結果として現像時間及び使用する現像液量を十分に低下させて処理を行えない場合がある。従ってこれら現像時間及び現像液量を低下させることは依然として現像処理を行う上での検討事項となっている。
【0006】
ところで、上記の現像方式において現像後形成されるレジストパターンの形状を安定させるためには、ウエハW全体を液膜15で覆ってから前記リンス液によりその液膜15を除去するまで10秒〜20秒の時間が必要であり、その間は既に形成された液膜15が乾燥しない程度の少ない流量で現像液を供給すればよく、上記のように液膜15を形成する場合と同じ流量で現像液14を供給し続けると、現像液14の省液化が十分に図れなくなってしまう。
【0007】
そこで現像液供給管16から現像液ノズル13への現像液供給量を自在に変化できるように構成して、ウエハ表面全体に液膜15を形成した後は前記吐出口12からの吐出流量を低下させることが考えられるが、現像液ノズル13は所定の流量の現像液が供給されることで吐出口12の長さ方向の各部において吐出される現像液の流速と供給圧とが一定になり、上記のようにウエハWに安定して帯状に供給されるため、現像液ノズル13への現像液の供給量がその所定の流量よりも低下すると、吐出口12からの現像液14の吐出が不安定になり、その結果として正常な現像が行われなくなり、現像欠陥が発生したりレジストパターンがばらついたりするおそれがある。
【0008】
特許文献1には複数回基板への現像液の供給を行う記載があるが、上記の問題を解決できるものではない。
【0009】
【特許文献1】特開2005−210059(段落0044及び図5など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、レジストが塗布され、露光された後の基板を現像するにあたり、安定して基板に現像液を供給することができる現像方法、現像装置及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の現像方法によれば、レジストが塗布され、露光された後の基板を基板保持部に水平に保持する工程と、
前記基板保持部を介して前記基板を鉛直軸の周りに回転させながら、第1の現像液ノズルから現像液を帯状にかつその帯状領域の一端側が基板の中央に向くように基板の表面における中央部及び周縁部の一方に供給する工程と、
続いて前記現像液の帯状領域の一端側が基板の中央に向いた状態で、前記現像液の供給位置を基板の表面における中央部及び周縁部の一方から他方に移動させることにより、基板の表面に現像液の液膜を形成する工程と、
しかる後、前記現像液の液膜の乾燥を防止するために、第2の現像液ノズルから前記基板の中心部に円形状または第1の現像液ノズルから供給される現像液よりも長さが短い帯状に現像液を供給すると共に前記基板保持部を介して基板を鉛直軸の周りに回転させて、その現像液を遠心力により基板の周縁部に展伸させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の現像装置は、レジストが塗布され、露光された後の基板を水平に保持する基板保持部と、
基板を保持した基板保持部を鉛直軸回りに回転させる回転駆動機構と、
基板の表面に現像液を中央部側から周縁部側に向かう帯状にかつその帯状領域の一端側が基板の中央に向くように供給して現像液の液膜を形成するための第1の現像液ノズルと、
前記帯状領域の一端側が基板の中央に向いた状態で、現像液の供給位置を基板の表面における中央部及び周縁部の一方から他方に移動させるように第1の現像液ノズルを移動させる駆動機構と、
基板の中心部に円形状または第1の現像液ノズルから供給される現像液よりも長さが短い帯状に現像液を供給して、現像液の液膜の乾燥を防止する第2の現像液ノズルと、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
例えば第1の現像液ノズルを横方向に移動させることで、基板の周縁部側から中央部側に向かって現像液の供給位置を移動させてもよく、また例えば第2の現像液ノズルから供給される現像液の流量は、第1の現像液ノズルから供給される現像液の流量よりも小さい。例えば第1の現像液ノズルは、扁平状に開口した第1の吐出口を備えており、また第2の現像液ノズルは、略円形に開口した第2の吐出口を備えている。また第1の現像液ノズル及び第2の現像液ノズルは、前記駆動機構に設けられた共通のアームに設けられていてもよい。
【0014】
本発明の記憶媒体は、レジストが塗布され、露光された後の基板に対する現像を行う現像装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし6のいずれか一に記載の現像方法を実施するためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板に現像液の液膜を形成する工程を、基板表面に現像液を帯状にかつその帯状領域の一端側が基板の中央に向くように供給する第1の現像液ノズルを用いて行い、現像液の液膜の乾燥を防止するために現像液を供給する工程を基板に円形状または第1の現像液ノズルから供給される現像液よりも長さが短い帯状に現像液を供給する第2の現像液ノズルを用いて行っている。このように処理に応じて現像液ノズルを使い分けることにより、例えば第1の現像液ノズルのみを用いて、そのノズルからの吐出量を変化させて基板に現像液を供給する場合に比べて、その基板への現像液の供給が不安定になることが抑えられる。また各ノズルごとにその吐出される現像液の形状に合わせて、基板への現像液の供給量を調整することができるので、基板へ供給する現像液の省液化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の現像装置2について図1及び図2を参照しながら説明する。この現像装置2は筐体21を備えており、筐体21内に基板例えばウエハWの裏面側中央部を吸引吸着して水平姿勢に保持するための基板保持部であるスピンチャック22が設けられている。スピンチャック22は回転軸23を介して回転駆動機構である駆動機構24と接続されており、スピンチャック22の回転軸上にウエハWの中心が位置するように設定されている。またスピンチャック22は、駆動機構24を介してウエハWを保持した状態で鉛直軸回りに回転及び昇降可能なように構成されており、現像処理中におけるその回転速度は駆動機構24が後述の制御部からの制御信号を受けることにより制御される。
【0017】
スピンチャック22上のウエハWを囲むようにして上方側が開口するカップ体31が設けられている。このカップ体31は、上部側が四角状であり下部側が円筒状の外カップ32と、上部側が内側に傾斜した筒状の内カップ33とからなり、外カップ32の下端部に接続された昇降部34により外カップ32が昇降し、更に内カップは外カップ32の下端側内周面に形成された段部に押し上げられて昇降可能に構成されている。
【0018】
またスピンチャック22の下方側には円形板35が設けられており、この円形板35の外側には、断面が凹部状に形成された液受け部36が全周に亘って設けられている。液受け部36の底面にはドレイン排出口37が形成されており、ウエハWからこぼれ落ちるか、あるいは振り切られて液受け部36に貯留された現像液やリンス液はこのドレイン排出口37を介して装置の外部に排出される。また円形板35の外側には断面山形のリング部材38が設けられている。なお、図示は省略するが、円形板35を貫通する例えば3本の基板支持ピンである昇降ピンが設けられており、この昇降ピンと図示しない基板搬送手段との協働作用により筐体21の側壁に開口した搬送口24を介して筐体21内に搬送されたウエハWはスピンチャック22に受け渡される。
【0019】
続いて図3も参照しながら現像装置2に設けられた複合ノズル部4について説明する。この複合ノズル部4は第1の現像液ノズル41、第2の現像液ノズル51及び純水ノズル61により構成されている。第1の現像液ノズル41の下端面42にはスリット状の吐出口43が形成されており、スピンチャック22に保持されたウエハWに向けて斜め下方に、帯状に現像液を吐出するようになっている。ところでこの吐出口43は帯状に吐出できればよいため、扁平開口部例えば扁平円、扁平四角であればよい。この吐出口43の長さ方向は前記ウエハWの周縁部から中央部側に向かうように形成されており、その長さ方向の大きさL1は例えば5mm〜15mmであり、幅方向の大きさL2は例えば0.1mm〜1mmである。第1の現像液ノズル41には現像液供給管44の一端が接続され、現像液供給管44の他端はバルブやマスフローコントローラなどにより構成される流量制御部45を介して現像液供給源46に接続されており、流量制御部45が制御部100からの制御信号に基づいて吐出口43からウエハWへの現像液の給断を制御する。
【0020】
続いて第2の現像液ノズル51について説明する。第2の現像液ノズル51の下端面には斜め下方に向けて略円形の細孔である吐出口53が開口している。この吐出口53は円であってもよいが、四角、三角に開口していてもよい。吐出口53の口径の大きさL3は例えば0.1〜10mmである。第2の現像液ノズル51には現像液供給管54の一端が接続され、現像液供給管54の他端はバルブやマスフローコントローラなどにより構成される流量制御部55を介して現像液供給管43に合流し、現像液供給源46に接続されている。流量制御部55は制御部100からの制御信号に基づいて吐出口53からウエハWへの現像液の給断を制御する。
【0021】
純水ノズル61の下端面62には細孔である吐出口63が開口している。純水ノズル61には純水供給管64の一端が接続され、純水供給管64の他端はバルブやマスフローコントローラなどにより構成される流量制御部65を介して純水供給源66に接続されている。流量制御部65が制御部100からの制御信号に基づいて吐出口63からウエハWへの純水の給断を制御する。この純水は現像液を供給する前にウエハWに塗布し、現像液の濡れ性を向上させるためのプリウエット処理用の液として、また現像液供給後にウエハWに供給して現像液を除去するためのリンス液として用いられる。
【0022】
複合ノズル部4は支持部材であるノズルアーム25の一端側に支持されており、このノズルアーム25の他端側は図示しない昇降機構を備えた移動基体26に接続されている。移動基体26は、制御部からの制御信号を受けて例えば横方向に伸びるガイド部材27に沿って移動し、ノズルアーム25を例えばガイド部材27の伸長方向と直交する前後方向に駆動させることができるように構成されている。
【0023】
上記のようにノズルアーム25及び移動基体26が構成されることにより、図4に示すように第1の現像液ノズル41における吐出口43のスピンチャック22に載置されたウエハWへの投影領域47の一端がウエハWの中心Pに向き、そのウエハWの直径上を周縁部側から中心Pへと移動して、ウエハWの直径に沿って現像液を供給できるようになっている。また第2の現像液ノズル51における吐出口53の前記ウエハWへの投影領域57が、前記吐出口43の投影領域47に重なるようにウエハWの周縁部から中心Pへと移動し、その中心Pに現像液を供給できるようになっている。また図示は省略しているが、純水ノズル61の吐出口63の前記ウエハWへの投影領域は、第2の現像液ノズル51の吐出口53の前記ウエハWへの投影領域57と重なるように移動し、吐出口53からウエハWの中心Pに純水を供給できるようになっている。
【0024】
第1の現像液ノズル41の吐出口43、第2の現像液ノズル51の吐出口53、純水ノズル61の吐出口63から夫々液がウエハWに吐出されるとき、これら吐出口43,53,63のウエハWの表面からの高さは例えば5mm〜20mmである。また図2中28は、複合ノズル部4の待機部であり、外カップ22の外側に設けられている。
【0025】
続いて制御部100について説明する。制御部100は、例えばコンピュータからなり、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、後述の作用で説明する現像処理が行われるように命令が組まれた例えばソフトウエアからなるプログラムが格納され、このプログラムが制御部100に読み出されることで制御部100はウエハの回転速度、ノズルの移動、ウエハへの現像液及び純水の供給などを制御する。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0026】
続いて、この現像装置2によりウエハWに一連の現像処理を行う手順について図5及び図6を参照しながら説明する。図5、図6は夫々各工程、各工程におけるウエハW表面の状態を示しており、これら図5及び図6では図示の便宜上各ノズル41,51及び61が互いに重なり合わないように、図1などに示した構成と異なり、ノズル41の前記吐出口43の長さ方向に一列に展開して配列されているように示している。
(ステップ1:ウエハWの搬入)
先ず不図示の基板搬送手段により、その表面にレジストRが塗布され、そのレジストRが露光処理を受けたウエハWが搬送口24を介して筐体21内に搬入されると、この基板搬送手段と図示しない昇降ピンとの協働作用によりウエハWはスピンチャック22に受け渡され、次いで、外カップ32及び内カップ33が上昇位置に設定される。続いてスピンチャック22が1100〜1500rpm例えば1500rpmで回転し、移動基体26を介して複合ノズル部4が待機部28からウエハW上に移動し、複合ノズル部4の純水ノズル61がウエハWの中心上に位置する(図5(a))。
【0027】
(ステップ2:純水の供給)
純水ノズル61がウエハWの中心部上に移動すると、純水ノズル61からウエハWの中心部に純水Fが吐出され、吐出された純水Fは遠心力により展伸するいわゆるスピンコーティングによってウエハWの中心部から周縁部に広げられ、純水Fの液膜が形成されるプリウエット処理が行われる(図5(b))。
【0028】
(ステップ3:現像液ノズルの移動)
純水Fの吐出から所定の時間が経過すると、純水ノズル61から純水Fの吐出が停止し、その後複合ノズル部4がウエハWの外側へ移動して、第1の現像液ノズル41が、例えばウエハWの外縁から僅かに外側で且つウエハWよりも例えば15mm程度高い位置に移動する。(図5(c))。
【0029】
(ステップ4:第1の現像液ノズルからの現像液の供給)
然る後、ウエハWの回転速度が例えば1000rpm〜1500rpmとなり、第1の現像液ノズル41の吐出口43から現像液Dを所定の流量例えば100mL/分〜1000mL/分例えば600mL/分で帯状に吐出しながら図5(d)に示すように第1の現像液ノズル41がウエハWの外縁から中心部側に向かって径方向に沿って移動し、現像液DはウエハWに螺旋状に供給され、現像液Dは回転しているウエハWの遠心力の作用により純水F表面を外側に濡れて広がる(図6(a))。
【0030】
(ステップ5:第2の現像液ノズルからの現像液の供給)
第1の現像液ノズル41がウエハWの中心部側へ移動を続け、その吐出口43のウエハWへの投影領域内に図6(b)に示すように図中鎖線で示す中心線Mが位置し、ウエハW中心部に現像液Dが供給されてウエハW表面全体に現像液Dの液膜が形成されると共に、第2の現像液ノズル51の吐出口53のウエハWへの投影領域が図中鎖線で示すウエハWの中心線M上に位置すると、図7のタイムチャートで示すように、吐出口43からの現像液Dの供給が停止すると同時に、第2の現像液ノズル51の吐出口53から、流量100ml/分〜1000ml/分で現像液Dが供給される(図5(e))。この第2の現像液ノズル51からの現像液の供給中、ウエハWは例えば500rpm〜1500rpmで回転し、第2の現像液ノズル51から供給された現像液Dは遠心力により、既に形成された現像液Dの液膜表面をウエハWの周縁側へと広がる(図6(c))。
【0031】
(ステップ6:リンス処理)
第2の現像液ノズル51からの現像液Dの吐出が開始されてから所定の時間例えば10秒〜20秒が経過すると、第2の現像液ノズル51からの現像液Dの吐出が停止し、続いてウエハW状の現像液Dが乾燥する前に速やかに純水ノズル61がウエハWの中心部上に移動して、純水Fを吐出する。吐出された純水Fは回転するウエハWの遠心力の作用により表面に沿って外側に広がり、ウエハW表面のレジスト溶解成分を含む現像液を洗い流し、これによりウエハWの表面が洗浄される(図5(f))。
【0032】
(ステップ7:乾燥処理)
純水Fが吐出されてから所定の時間が経過すると、純水Fの吐出が停止し、複合ノズル部4が待機部28へ移動し、続いてウエハWが例えば2000rpmで回転して、ウエハW表面の液を振り切るスピン乾燥がなされる(図5(g))。しかる後、ウエハWの回転が停止し、外カップ22及び内カップ23が下降して、図示しない基板搬送手段によりウエハWが搬出され、現像処理が終了する。
【0033】
上記の現像装置2によれば、ウエハWに帯状に現像液を供給する第1の現像液ノズル41と、その帯状領域よりも狭い円形領域に現像液を供給する第2の現像液ノズル51とが設けられ、第1の現像液ノズル41をウエハWの周縁部側から中心部側に移動させながらウエハWに現像液を供給して、現像液の液膜を成膜した後、その液膜が乾燥するのを防ぐために、第2の現像液ノズル51から現像液をウエハWの中心に供給している。このようにウエハWに供給する現像液の流量に応じて現像液を吐出するノズルを使い分けることで、第1の現像液ノズル51からの現像液の供給流量を少なくして、前記現像液膜の乾燥を防ぐために現像液を供給する場合に比べて現像液の吐出を安定させ、現像欠陥が発生することが抑えられる。そして第2の現像液ノズル51からの流量を、第1の現像液ノズル41からの流量よりも小さくすることで、ウエハWへ供給する現像液の量の低下を図ることができ、従って現像処理のコストが上昇することを抑えることができる。
【0034】
第1の現像液ノズル41からの現像液がウエハWに帯状に供給されれば、吐出口43をスリット状に形成することに限られず、例えば複数の円形の孔が第1の現像液ノズル41の移動方向に連なるような形状の吐出口を設けてもよい。また例えば複数の円形の孔が第1の現像液ノズル41の移動方向に連なるような形状の吐出口を設けてもよく、ノズルの長さ方向に長径が伸びる楕円上に形成してもよいし、ノズルの長さ方向に対角線が伸びる菱形状に形成してもよい。また第2の現像液ノズル51の吐出口53から現像液がウエハWに安定して供給されれば、吐出口53が上記のように略円形に形成されなくても本発明の権利範囲に含まれる。例えば吐出口53は、ウエハWに吐出口43の長さ方向の大きさよりもその長さ方向の大きさが小さいスリット状に形成され、ウエハWに帯状に現像液を供給するようになっていてもよく、また吐出口53は正円であってもよい。また吐出口53のウエハWへの投影領域が円形や矩形状になっていなくてもよい。また第2の現像液ノズル51が複数の吐出口を備えていてもよい。
【0035】
上記実施形態において、第2の現像液ノズル51から現像液を供給するタイミングとしては、第1の現像液ノズル41によりウエハWに供給された現像液が乾燥する前であればよく、図8のタイムチャートに示すように第1の現像液の供給を停止する時間t1と第2の現像液の供給を開始する時間t2との間にずれがあってもよく、例えば時間t1と時間t2とのずれ量は例えば2秒以下である。
【0036】
上記実施形態において、第1の現像液ノズル41はその吐出口43の投影領域47にウエハWの中心Pが収まる位置に移動しているが、例えば図9(a)に示すようにその投影領域47がウエハWの中心Pに接する位置まで動かすようにしてもよい。また図9(b)に示すように投影領域47の進行方向の端部が中心Pに到達する前に第1の現像液ノズル41の移動を停止し、現像液のウエハW上における濡れ広がりを利用して現像液をウエハWの中心P上に供給してもよく、その場合、第1の現像液ノズル41が移動を停止したときの前記投影領域47の端部と中心Pとの距離L4は10mm以下である。これらのような構成とすればウエハWの中心部において現像液を重ね塗りすることが抑えられ、使用する現像液を抑えることができるので好ましい。また第2の現像液ノズル51も現像液の濡れ広がりにより、ウエハWの中心にその現像液が供給されればこの第1の現像液ノズル41と同様にその投影領域57中にウエハWの中心Pが含まれていなくてもよい。
【0037】
また第1の現像液ノズル41によりウエハWに現像液を供給するにあたっては、隣り合う帯状の現像液が重なり合っていても、隙間なく敷き詰められても、あるいはわずかに隙間があっても基板に供給された現像液がウエハW上を広がり、ウエハW全体に現像液の液膜が形成されればよい。なおステップ4において第1の現像液ノズル41をウエハW中心部側から周縁部側に移動させて現像液の液膜を形成した後、その現像液膜が乾燥する前に第2の現像液ノズル42を移動させてウエハW中心に現像液を供給するようにしてもよい。また上記実施形態においては現像液よりも先にウエハWに純水を供給している。これによって現像液の濡れ性を高めて、現像液の液量を少なくしてもウエハWの表面に現像液をより確実に行き届かせることができるため好ましい。
【0038】
また例えば純水を上記のようにウエハWに供給後、ウエハWの中心に第1の現像液ノズル41または第2の現像液ノズル51により現像液を供給して、スピンコーティングにより現像液をウエハWの周縁部へと展伸させた後、上記のステップ4を実施し、現像液を供給しながら第1の現像液ノズル41をウエハWの周縁部から中心部へと移動させて、ウエハWに現像液を供給してもよく、この場合純水供給後にウエハW中心に供給された現像液は、純水がレジストの撥水性によりはじかれて十分に供給されていない箇所に行き届くので、ステップ4で現像液をウエハWの周縁部から中心部に供給するときにその現像液のウエハWへの濡れ性が高くなり、当該現像液がウエハWに十分に濡れ広がり、現像欠陥が抑えられ、またレジストパターンの高い均一性が得られるため好ましい。つまりこの場合は純水で第1のプリウエット処理を行った後、現像液で第2のプリウエット処理を行っているといえる。
【0039】
なお各ノズル41,51,61の吐出口43,53,63のウエハWへの投影領域は互いに重なるように構成することに限られず、例えば移動基体26によりアーム体25を前後方向(ガイド25の伸長方向と直交する方向)に移動させることで、各ノズル41,51,61の吐出口43,53,63のウエハWへの投影領域が順次ウエハWの中心部上へと移動するように構成してもよい。
【0040】
図10、図11は現像装置2の変形例である現像装置7の縦断側面、横断平面を夫々示したものである。この現像装置7は、ノズルアーム25の他にもう一つのノズルアーム71を備え、ノズルアーム25の一端側には前記第1の現像ノズル41が、ノズルアーム71の一端側に第2の現像ノズル51、純水ノズル61及びN2ガスノズル81が夫々設けられており、各アーム25及び71が独立してその他端に設けられた移動基体26,72により、ガイド部材27に沿って夫々移動自在に構成されると共に不図示の昇降機構により、昇降自在に構成されている。N2ガスノズル81は、ガス供給管84を介してN2ガス供給源86に接続されており、図中85は制御部100からの制御信号によりN2ガスノズル81からウエハWへのガスの給断を制御する流量制御部である。そしてノズルアーム71に設けられた各ノズル51,61及び81は夫々ウエハWの中心上に移動し、その中心に各液またはガスを供給する。図中29はこれらノズル51,61及び81の待機部である。
【0041】
この現像装置7も現像装置2と同様の手順によりウエハWに現像処理が行われ、現像装置2と同様の効果が得られる。ただし上記ステップ7におけるウエハWの乾燥工程は、ウエハWを既述のように回転させながらウエハWの中心部にN2ガスノズル81からレジストに対して化学反応を起こさない不活性ガスであるN2ガスを供給するように行われ、カップ31内の排気とそのガス供給とによりウエハWの中心から外周へと向かう気流が形成されることで、ウエハWの乾燥時間を短縮している。なお現像装置2にこのN2ガスノズル81のような不活性ガスを供給するノズルを設けてもよい。
【0042】
続いて上述の現像装置2が組み込まれた塗布、現像装置の構成の一例について図12及び図13を参照しながら簡単に説明する。図中B1は基板であるウエハWが例えば25枚密閉収納されたキャリアC1を搬入出するためのキャリアブロックであり、キャリアC1を複数個載置可能な載置部90aを備えたキャリアステーション90と、このキャリアステーション90から見て前方の壁面に設けられる開閉部91と、開閉部91を介してキャリアC1からウエハWを取り出すための受け渡し手段A1とが設けられている。
【0043】
キャリアブロックB1の奥側には筐体92にて周囲を囲まれる処理ブロックB2が接続されており、この処理ブロックB2には手前側から順に加熱・冷却系のユニットを多段化した棚ユニットU1,U2,U3と、後述する塗布・現像ユニットを含む各処理ユニット間のウエハWの受け渡しを行う主搬送手段A2,A3とが交互に配列して設けられている。即ち、棚ユニットU1,U2,U3及び主搬送手段A2,A3はキャリアブロックB1側から見て前後一列に配列されると共に、各々の接続部位には図示しないウエハ搬送用の開口部が形成されており、ウエハWは処理部B1内を一端側の棚ユニットU1から他端側の棚ユニットU3まで自由に移動できるようになっている。また主搬送手段A2,A3は、キャリアブロックB1から見て前後方向に配置される棚ユニットU1,U2,U3側の一面部と、後述する例えば右側の液処理ユニットU4,U5側の一面部と、左側の一面をなす背面部とで構成される区画壁93により囲まれる空間内に置かれている。また図中94、95は各ユニットで用いられる処理液の温度調節装置や温湿度調節用のダクト等を備えた温湿度調節ユニットである。
【0044】
液処理ユニットU4,U5は、例えば図13に示すように塗布液(レジスト液)や現像液といった薬液供給用のスペースをなす収納部96の上に、塗布ユニットCOT、本発明に係る現像装置1に対応する現像ユニットDEV及び反射防止膜形成ユニットBARC等を複数段例えば5段に積層した構成とされている。また上述の棚ユニットU1,U2,U3は、液処理ユニットU4,U5にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための各種ユニットを複数段例えば10段に積層した構成とされており、ウエハWを加熱(ベーク)する加熱ユニット、ウエハWを冷却する冷却ユニット等が含まれる。
【0045】
処理ブロックB2における棚ユニットU3の奥側には、例えば第1の搬送室97及び第2の搬送室98からなるインターフェイスブロックB3を介して例えば上述の液浸露光を行う露光装置B4が接続されている。インターフェイスブロックB3の内部には処理ブロックB2と露光装置B4との間でウエハWの受け渡しを行うための2つの受け渡し手段A4、A5及び棚ユニットU6が設けられている。
【0046】
この装置におけるウエハの流れについて一例を示すと、先ず外部からウエハWの収納されたキャリアC1が載置台90に載置されると、開閉部91と共にキャリアC1の蓋体が外されて受け渡し手段A1によりウエハWが取り出される。そしてウエハWは棚ユニットU1の一段をなす受け渡しユニット(図示せず)を介して主搬送手段A2へと受け渡され、棚ユニットU1〜U3内の一の棚にて、塗布処理の前処理として例えば反射防止膜形成処理、冷却処理が行われ、しかる後塗布ユニットCOTにてレジスト液が塗布される。
【0047】
続いてウエハWは棚ユニットU1〜U3の一の棚をなす加熱ユニットで加熱(ベーク処理)され、更に冷却された後棚ユニットU3の受け渡しユニットを経由してインターフェイスブロックB3へと搬入される。このインターフェイスブロックB3においてウエハWは例えば受け渡し手段A4→棚ユニットU6→ 受け渡し手段A5という経路で露光装置B4へ搬送され、露光が行われる。露光後、ウエハWは逆の経路で主搬送手段A2まで搬送され、現像ユニットDEVにて現像されることでレジストパターンを備えたレジストマスクが形成される。しかる後ウエハWは載置台90上の元のキャリアC1へと戻される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る現像の縦断側面図である。
【図2】前記現像装置の横断平面図である。
【図3】前記現像装置の複合ノズル部の斜視図である。
【図4】前記現像装置に設けられた各現像ノズルの投影領域が移動する様子を示す説明図である。
【図5】前記現像装置による現像処理の各工程を示す説明図である。
【図6】前記現像処理において、現像液がウエハWに供給される様子を示した説明図である。
【図7】各現像液ノズルからの現像液の吐出及び停止のタイミングを示したタイムチャートである。
【図8】前記現像液の吐出及び停止のタイミングの他の例を示したタイムチャートである。
【図9】各現像液ノズルの投影領域とウエハWの中心との位置関係を示した説明図である。
【図10】他の実施形態である現像装置の縦断側面図である。
【図11】前記現像装置の横断平面図である。
【図12】本発明の現像装置が適用された塗布、現像装置の上面図である。
【図13】前記塗布、現像装置の斜視図である。
【図14】従来の現像装置による現像方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0049】
W ウエハ
D 現像液
2 現像装置
22 スピンチャック
24 駆動機構
26 移動基体
4 複合ノズル部
41 現像液ノズル
51 純水ノズル
61 現像液
100 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストが塗布され、露光された後の基板を基板保持部に水平に保持する工程と、
前記基板保持部を介して前記基板を鉛直軸の周りに回転させながら、第1の現像液ノズルから現像液を帯状にかつその帯状領域の一端側が基板の中央に向くように基板の表面における中央部及び周縁部の一方に供給する工程と、
続いて前記現像液の帯状領域の一端側が基板の中央に向いた状態で、前記現像液の供給位置を基板の表面における中央部及び周縁部の一方から他方に移動させることにより、基板の表面に現像液の液膜を形成する工程と、
しかる後、前記現像液の液膜の乾燥を防止するために、第2の現像液ノズルから前記基板の中心部に円形状または第1の現像液ノズルから供給される現像液よりも長さが短い帯状に現像液を供給すると共に前記基板保持部を介して基板を鉛直軸の周りに回転させて、その現像液を遠心力により基板の周縁部に展伸させる工程と、を含むことを特徴とする現像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−70002(P2012−70002A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279879(P2011−279879)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【分割の表示】特願2007−197889(P2007−197889)の分割
【原出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】