説明

現像方法

【課題】小粒径トナーを用いた非磁性一成分接触現像において使用温度による画像濃度変化が少なく現像スジやカブリが良好で高精細な画像が得られる現像方法を提供すること。
【解決手段】現像ローラに担持させたトナーで感光ドラムの表面に形成された静電潜像を現像する工程を有する現像方法であり該現像ローラは導電性軸芯体と該導電性軸芯体の外周面上に弾性層と被覆層とを含み該弾性層はMnが300以上30000以下である直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素化合物を15質量%以上50質量%以下と明細書中に定義される式1で表されるアミノ酸誘導体を該飽和炭化水素化合物100質量部に対し0.6質量部以上10質量部以下とゴムとを含有し該トナーの体積平均粒径が5.0μm以上6.5μm以下である現像方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザープリンターなどの電子写真方式を用いた画像形成装置に使用される現像方法として、非磁性一成分接触現像方法が知られている。
【0003】
非磁性一成分接触現像とは、非磁性一成分トナーを現像ローラ上にトナー規制ブレード等で均一にコーティングし、現像ローラと感光ドラムとが接触した状態で電圧を印加してトナーを感光ドラム上の静電潜像に転移させて現像を行う方法である。
【0004】
上記非磁性一成分トナーを用いる画像形成装置において、現像ローラは、トナーへのストレスを軽減するためと、感光ドラムやトナー規制ブレードとの安定した当接幅を確保するために適度な柔軟性が求められる。また現像ローラに求められる特性として、使用環境差による画像濃度変化の低減が要求される。
【0005】
特許文献1には、現像ローラを柔軟にする手法として、弾性体を発泡ゴムで構成する方法が開示され、特許文献2には可塑剤を多量に配合する方法が開示されている。
【0006】
一方、特許文献3には、使用環境の温度の変動に起因する画像濃度の変化の低減について、現像ローラ表面層の比誘電率を規定することで使用温度差による画像濃度変化の低減する提案がされている。一方、近年、トナーの小粒径化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−134071号公報
【特許文献2】特開2007−240742号公報
【特許文献3】特開2000−293032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、小粒径のトナーは、その流動性が低いため、現像ローラ表面上に長時間存在することで、繰り返し摺擦をうけ、劣化しやすいことがある。また、低温低湿環境や高温高湿環境といった使用温度差により画像濃度の変化が大きくなる場合がある。
【0009】
このような背景から、小粒径のトナーと組み合わせる現像ローラに対しては、トナーへのストレスを低減するために、より低硬度な表面を有することが求められている。
【0010】
そこで本発明の目的は、小粒径トナーを用いた非磁性一成分接触現像において、良好な電子写真画像の形成を行うことできる現像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願によれば、現像ローラに担持させたトナーで感光ドラムの表面に形成された静電潜像を現像する工程を有し、
該現像ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の外周面上に弾性層と、該弾性層の外周面上に被覆層とを含み、
該弾性層は、数平均分子量Mnが300以上30000以下である直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素化合物を15質量%以上50質量%以下と、式1で表されるアミノ酸誘導体を該飽和炭化水素化合物100質量部に対し0.6質量部以上10質量部以下と、ゴムと、を含有し、
該トナーは、その体積平均粒径が、5.0μm以上6.5μm以下である現像方法が提供される。
【0012】
【化1】

【0013】
1およびR2は、各々独立に炭素数3以上10以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、R3は、炭素数7以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。nは1または2を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小粒径トナーを用いた場合であっても、現像スジやカブリが抑制された高精細な電子写真画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】現像ローラの一例を説明するための図である
【図2】本発明を適用可能な電子写真画像形成装置の一例を説明するための図である。
【図3】本発明を適用可能な電子写真プロセスカートリッジの一例を説明するための図である。
【図4】本発明を適用可能なプラズマCVD装置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、小粒径トナーを用いた非磁性一成分接触現像において、使用温度による画像濃度変化が少なく、現像スジやカブリが良好で高精細な画像が得られる現像方法及び現像ローラの製造方法を提供することに関し鋭意検討を行った。その結果、特定のアミノ酸誘導体を用いることにより現像ローラの弾性層中に含まれる飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性を抑制することで、課題を解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る第一の発明によれば、小粒径トナーを用いた非磁性一成分接触現像において、使用温度による画像濃度変化が少なく、現像スジやカブリが良好な現像方法を提供することが可能となる。
【0017】
<現像方法>
本発明の現像方法は、少なくとも現像ローラとトナー供給ローラと感光ドラムとを用いる。また、本発明の現像方法は、感光ドラム表面に直接またはトナーを介して、現像ローラを接触させ、現像ローラが担持するトナーによって感光ドラム表面上の静電潜像を現像する。以下にこの現像方法に用いる現像ローラおよびトナーについて説明する。
【0018】
<現像ローラ>
本発明の現像方法に用いられる現像ローラは、図1に示すように導電性軸芯体1と、導電性軸芯体1の外周面上に弾性層2と、弾性層2の外周面上に被覆層3とを含む構成となっている。また、現像ローラは、プライマー処理層およびUVやコロナ処理等による表面改質を施した層を含むことができる。
【0019】
(導電性軸芯体)
現像ローラの導電性軸芯体としては、従来から画像形成装置の現像ローラに用いられているものが使用可能であり、その材料は、十分な強度を有し、かつ導電性を有するものを用いることができる。導電性軸芯体を作製する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、鉄などの金属や、複数の金属からなる合金鋼、炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の剛直で導電性を示す材料が挙げられる。合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。その中でも特に強度の観点から、合金製のものが好ましい。更に防錆対策として軸芯体材料にめっきを施すことができる。導電性軸芯体の形状としては棒状体またはパイプ状体のものが使用できる。また、弾性層との密着性を向上させる目的で、必要に応じて、導電性軸芯体の表面にプライマー処理層を形成してもよい。導電性軸芯体の外径は通常直径4mm以上直径20mm以下の範囲が好ましい。
【0020】
(弾性層)
前記弾性層は、後述する飽和炭化水素化合物と、式1で表されるアミノ酸誘導体と、ゴムとを含有する。以下にこれらの材料について説明する。
【0021】
<ゴム>
現像ローラを構成する弾性層2に用いられるゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン‐プロピレンゴム(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)。
これらのゴムの中でも、飽和炭化水素化合物との親和性からEPDMやEPM、BR、IRが好適である。その中でも特にEPM及びEPDMは主鎖が飽和炭化水素であるため、前記飽和炭化水素化合物との相溶性が優れ、軟化効果が特に大きく、また良好な耐オゾン性を容易に得ることができるため特に好ましい。なお、異なるゴムを2種以上混合して用いても良い。
【0022】
本発明に使用されるEPDMは、工業的に実用されているものなら使用可能で、特に制限されるものではない。例えば、EPDMの第三成分であるジエンモノマーとして、エチリデンノルボルネン、ヘキサジエン、オクタジエンが用いられているポリマーを使用することができる。なかでも、エチリデンノルボルネンを第三成分とするEPDMが、架橋速度が特に速く、しかも物性のバランスが非常に良い点において好適に用いられる。また、本発明におけるEPDMのジエン量(質量%)は、飽和炭化水素化合物の分散性及び弾性層の弾性の観点から、3質量%以上20質量%以下のものが適している。なお、ジエン量の異なる2種以上のEPDMを混合して用いてもよい。
【0023】
また、本発明に用いるEPDMは、加工性を向上させる目的で油展したもの、非油展のいずれをも用いることができる。ここでいう油展とは、飽和炭化水素化合物が添加されていることを意味する。油展EPDMの場合、EPDMの質量とは、油展EPDMから飽和炭化水素化合物を除いたゴム分のみの質量を指す。つまり油展EPDM中に含まれる飽和炭化水素化合物の質量は、本発明における飽和炭化水素化合物の質量に含める。また、EPDMを目的に合わせて2種以上混合して用いることも可能である。混合したEPDMに油展EPDMが含まれる場合以下のように判断する。すなわち、その油展EPDM中のEPDMの質量、および飽和炭化水素化合物の質量はそれぞれ、弾性層中のEPDMの質量、および飽和炭化水素化合物の質量に含める。
【0024】
工業的に実用されているEPDMとしては、以下のものが挙げられる。エスプレン 201、301、305、400、501A、502、505、505A、512F、514F、522、524、532、552、553、567、582F、586、600F、601F、606、670F、671F、673、5214、5754、6506S、6182F(全て商品名、住友化学工業株式会社製)、
JSR EP912P、EP01P、EP02P、EP941P、EP961SP、EP07P、EP57P、EP181SP、EP11、EP43、EP93、EP24、EP27、EP21、EP132、EP22、EP25、EP33、EP35、EP37C/F、EP65、EP51、EP57C/F、EP75F、EP86、EP96、EP98、EP103AF、EP106EF、EP107F、EP801E、EP001DE(全て商品名、JSR株式会社製)
NORDEL 1040、1070、1145、1320、1440、1470、1660、2522、2722/P、2744/P、2760/P(全て商品名、デュポン社製)、
Epsyn 40−A、70−A、55、2308、2506、4506、4906、5206、5508、5805、7506、E801、N557、N597、N997、P557、P558、P597、MDE239、MDE248(全て商品名、コポリマー・ラバー・アンド・ケミカル・コーポレーション社製)、
POLYSAR 227、306、345、585、487XP、865、965、5465、5672X、5875、6463(全て商品名、ポリサー・ラバー・コーポレーション社製)。
【0025】
<飽和炭化水素化合物>
本発明に用いられる飽和炭化水素化合物は、パラフィンオイルのような直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン構造を持つ化合物、及びそれらを主要成分とするパラフィン系オイルを用いることが好ましい。
これらの飽和炭化水素化合物を用いた場合、環状の飽和炭化水素化合物であるナフテンオイルや芳香環構造を有するアロマティックオイル等に比べ、アミノ酸誘導体添加による粘度の温度依存性を抑制する効果が特に大きく得られやすい。これは飽和炭化水素化合物の分子鎖が長いため、アミノ酸誘導体の繊維状構造体の効果を受けやすいためと考えられる。それゆえ粘度の温度依存性が強く抑制されるため、使用温度差による濃度の変化がより少なくなる。本発明において想定される現像ローラの使用温度は、15℃以上30℃以下であり、最大使用温度差は15℃である。
【0026】
また直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和炭化水素化合物を添加した架橋ゴムは、ナフテンオイルやアロマティックオイルを添加した架橋ゴムに比べ、圧縮永久変形などのゴム物性においても優れる。現像ローラは常にトナー規制ブレードと接触している。ゆえにトナー規制ブレードと長期間同じ位置で接触した場合、現像ローラは圧縮永久変形を起こす傾向がある。圧縮永久変形が生じた後、画像を出力すると、現像ローラピッチで横スジが発生してしまう。小粒径トナーの場合、流動性が低下している場合があるので、現像ローラの圧縮永久変形した部分にトナーを均一に塗布することがより難しくなる。その結果、横スジが従来のトナーに比べ、よりはっきり見えやすくなる。ゆえに圧縮永久変形性の低下が少ない飽和炭化水素化合物を使用することが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる飽和炭化水素化合物の弾性層中における含有量は、15質量%以上50質量%以下である。飽和炭化水素化合物の弾性層中における含有量が15質量%未満では、弾性層を低硬度化する効果が安定して得られず、高硬度現像ローラとなるためローラとして他部材に接触させた際の適切な接触幅を得ることが出来ず画像弊害を引き起こす。50質量%よりも多い場合には、使用温度による硬度変化を抑えきれない。
【0028】
本発明に用いる飽和炭化水素化合物の数平均分子量Mnは、300以上30000以下である。飽和炭化水素化合物の数平均分子量は300以上であれば、飽和炭化水素化合物の分子鎖が十分長くなり、アミノ酸誘導体が形成する繊維状構造体による飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性抑制効果が得られる。その結果、使用温度による画像濃度変化を抑制できる。さらに、飽和炭化水素化合物の数平均分子量は、1000以上であることが好ましい。1000以上であれば、現像ローラの弾性層の硬度変化に起因する画像濃度変化をより抑制することが可能となる。また数平均分子量が30000以下の場合、飽和炭化水素化合物がゴム中に入り込み易く、低硬度の現像ローラとなり、ローラとして他部材に接触させた際の適切な接触幅を得ることが出来る。
【0029】
本発明に用いる飽和炭化水素化合物としては、例えば以下のものを挙げることができる。
・エチレンとα−オレフィンとのコオリゴマー(商品名:ルーカントHC−40、100、600、2000、三井化学社製)、
・流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトP−40、55、60、70、80、100、120、150、200、260、300、350P、松村石油研究所製)、
・水素添加イソプレン系液状ゴム(商品名:クラプレンLIR−200、クラレ社製)、
・水素添加型PB樹脂(商品名:NISSO−PBBI−2000、3000、日本曹達社製)、
・パラフィン系オイル(商品名:ダフニーオイルKP−68、100、ダプロセスオイルPW−32、90、150、380、出光興産社製)。
【0030】
<アミノ酸誘導体>
本発明に用いられるアミノ酸誘導体を式1に示す。
【0031】
【化2】

【0032】
なお、式1中のR1およびR2は、各々独立に炭素数3以上10以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す。アミノ酸誘導体は、その構造中に含まれるアミド基が分子間で水素結合することにより自己集合すると考えられる。R1およびR2の炭素数が3以上10以下であればアルキル鎖の立体障害が少ないため、分子間でのアミド基同士の水素結合が阻害されづらい。それゆえアミノ酸誘導体が自己集合しやすくなり可逆的な繊維構造を形成しやすくなり、飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性を抑制する効果が良好となる。
【0033】
また、R1およびR2は、それぞれ独立に炭素数3以上5以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表すことが好ましい。R1およびR2の炭素数が3以上5以下の範囲であれば、アルキル鎖の立体障害がより少なくなると同時に、良好な溶解性や分散性を容易に得ることができるため、アミノ酸誘導体がさらに自己集合しやすく、容易に可逆的な繊維構造を形成することができる。その結果、飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性を抑制する効果を容易に得ることができ、低硬度を維持したまま粘度の温度依存性抑制効果が優れる。
【0034】
式1中のR3は、炭素数7以上20以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す。アミノ酸誘導体は、可逆的な繊維構造全体で飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性を抑制すると同時に、R3のアルキル鎖と飽和炭化水素化合物間で働くファンデルワールス力でも飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性を抑制していると考えられる。R3の炭素数が7以上20以下であれば、R3のアルキル鎖と飽和炭化水素化合物との間にファンデルワールス力が得られ、飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性を抑制が良好になる。
【0035】
また、R3は、炭素数7以上11以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表すことが好ましい。R3の炭素数が7以上11以下の範囲であれば、R3のアルキル鎖と飽和炭化水素化合物との間にファンデルワールス力が容易に得られる上、アミド基同士の水素結合による自己集合を、R3のアルキル鎖の立体障害により阻害することがより少なくなる。さらに、飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性を抑制する効果を容易に得ることができ、低硬度を維持したまま粘度の温度依存性抑制効果が優れている。
【0036】
式1中のn(メチレン基の個数)は1または2を表す。メチレン基の個数nが1または2であれば、アミノ酸誘導体の原料であるグルタミン酸またはアスパラギン酸を安価に得ることができる。また、メチレン基の個数nは2であることが好ましい。nが2であれば、R1及びR2のアルキル基間に適度な距離を容易に生じさせることができ、アミド基の自己集合がより起こりやすく、また溶解性や分散性もより良くなる。このため、飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性の抑制効果を容易に得ることができる。
【0037】
式1で表されるアミノ酸誘導体は、R1、R2、R3の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があるが、このような不斉炭素に基づく光学異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体、任意の立体異性体の混合物、あるいはラセミ体を用いてもよい。さらに2種以上のアミノ酸誘導体を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記アミノ酸誘導体は、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒下で、グルタミン酸またはアスパラギン酸と、脂肪酸ハライドとをショッテン・バウマン反応で反応させることによりN−アシル化グルタミン酸またはN−アシル化アスパラギン酸を得る。ついで、このN−アシル化グルタミン酸またはN−アシル化アスパラギン酸のカルボキシル基をエステル、酸ハライド、酸無水物等の反応性の高い活性基に変換した後、アミンと反応させる。この方法により、式1で表されるアミノ酸誘導体を得ることが出来る。また、この他にも、N−アシルアミノ酸とアミンを加熱脱水することにより直接アミド化する方法でも得ることができる。
【0039】
弾性層における、アミノ酸誘導体の添加部数は、前記飽和炭化水素化合物100質量部に対し0.6質量部以上10質量部以下である。0.6質量部未満では、アミノ酸誘導体が形成する繊維状構造体が足りず飽和炭化水素化合物の粘度の温度依存性抑制が不十分であり、使用温度での硬度変化が大きく、画像濃度変化抑制の効果が得られない。10質量部よりも多い場合、弾性層のアミノ酸誘導体の分散性が低下し、現像ローラに硬度ムラが生じ、画像弊害を発生させる。
【0040】
被覆層を含む現像ローラのJIS−A硬度は、30°以上60°以下が好ましい。硬度が30°以上である場合、圧縮永久変形による画像弊害をより少なくすることができる。また60°以下である場合、トナー劣化が特に少ないが故に、現像スジおよびカブリなどといった弊害をより少なくすることができ、良好な画像形成性を容易に得ることができる。
【0041】
・各種添加剤
さらに、前記弾性層には、必要に応じて導電剤、充填剤、増量剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤又は加工助剤等の各種添加剤を使用することができる。
【0042】
本発明において、飽和炭化水素化合物とアミノ酸誘導体とを混練する場合、他の添加剤と同時にゴム中に飽和炭化水素化合物とアミノ酸誘導体とを混練してもよい。より好ましくは、飽和炭化水素化合物とアミノ酸誘導体とを加熱混合することで溶解させ、冷却した混合物をゴム中に混練すると良い。これは、あらかじめ飽和炭化水素化合物とアミノ酸誘導体とを加熱混合し冷却して用いた場合、飽和炭化水素化合物中のみにアミノ酸誘導体の繊維状構造体が形成され、飽和炭化水素化合物の温度による粘度変化がより抑制されるためである。
【0043】
アミノ酸誘導体は、水素結合やファンデルワールス力など弱い力により繊維状構造体を形成する。それ故に、予め加熱混練および冷却した混合物を用いることで、飽和炭化水素化合物とアミノ酸誘導体との混合物をゴム中に混合する際に、加熱することにより、水素結合などの弱い結合が切れてしまう可能性を容易に防ぐことができる。なお、冷却すればアミノ酸誘導体は、再び繊維状構造体を形成するが、ゴムのような粘度の高い物体中ではアミノ酸誘導体は自己集合しづらい傾向がある。さらに一度ばらばらになったアミノ酸誘導体が飽和炭化水素化合物中ではなく、ゴム中に繊維状構造体を形成する可能性があり、飽和炭化水素化合物中に繊維状構造体を形成した場合と比べて、飽和炭化水素化合物の温度による粘度変化の抑制が弱くなる場合がある。
【0044】
また、他の添加剤と同時にゴム中に加熱混練する場合、ゴムのような粘度の高い物体中ではアミノ酸誘導体は自己集合しづらい傾向がある。さらにアミノ酸誘導体が原料ゴム中に可逆的な繊維構造を形成してしまう可能性がある。これにより飽和炭化水素化合物中に形成されるアミノ酸誘導体由来の繊維状構造体が少なくなり、予め加熱混練および冷却した混合物を用いた場合と比べて、飽和炭化水素化合物の温度による粘度変化の抑制効果が低下する場合がある。またアミノ酸誘導体が飽和炭化水素化合物に溶解されず十分な可逆的な繊維構造を形成されない場合がある。
【0045】
なお弾性層を架橋する際の加熱により、アミノ酸誘導体由来の繊維状構造体が一部ばらばらになる可能性が考えられる。しかし前述したようにゴムのような高粘度の物体中では、ばらばらとなったアミノ酸誘導体は拡散しづらく、近傍に集中して存在するため容易に再凝集し、繊維状構造体を形成しやすいと考えられる。
【0046】
このように、以下の工程を含む現像ローラの製造方法により、現像ローラを得ることが好ましい。
(1)式1で表されるアミノ酸誘導体、および数平均分子量Mnが300以上30000以下である直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素化合物を加熱混合することで溶解させ冷却する工程。
(2)工程(1)により得られる混合物をゴムと混練し、架橋を行い、弾性層を形成する工程。
なお、工程(1)および(2)は、以下の条件で行うことが好ましい。即ち、アミノ酸誘導体、および飽和炭化水素化合物を加熱混合し、溶解させる際の温度は、飽和炭化水素化合物の分解の観点から180℃以下が好ましく、さらにその溶解させた混合物を冷却する際の温度は、温度調整が容易かつ、アミノ酸誘導体が飽和炭化水素化合物中で可逆的な繊維構造を形成できるという観点から室温(23℃)が好ましい。
【0047】
本発明における前記弾性層の成形方法は、従来から知られている押出成形法、射出成形法などの成型方法を用いることができる。本発明の効果を得られる範囲で層構成は必要に応じて選択することができ、2層以上からなる弾性層とすることもできる。この場合、その2層以上の弾性層のいずれか一つ以上が本発明に記載された弾性層の条件を満たす。弾性層の厚みとしては、本発明の効果を得られる範囲で適宜選択することができ、1mm以上5mm以下とすることが好ましい。1mm以上5mm以下であれば他部材と適切な接触幅がより得られやすく、成形加工性が特に安定しており、画像弊害がより生じにくい。
本発明においては弾性層2の外周上にさらに被覆層3を有している。被覆層を形成する時、弾性層と被覆層との剥離が生じないようにより密着性を向上させるために、弾性層の外周上をコロナ処理、フレーム処理、エキシマUV処理の表面改質方法にて改質してもよい。
【0048】
(被覆層)
本発明における被覆層の種類としては、有機系および無機系の被覆層を用いることができる。なお、被覆層とは、弾性層の外周面上に単層或いは複数にわたり存在する層を意味する。
【0049】
有機系の被覆層としては、例えば、以下の樹脂で形成された被覆層が挙げられる。ポリアミド樹脂;フッ素樹脂;スチレン系樹脂;ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂のポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂。
【0050】
無機系の被覆層としては、例えば酸化ケイ素膜や炭素膜が挙げられる。特に本発明においては酸化ケイ素膜が好ましい。これは、酸化ケイ素膜はトナー離形成に優れるため現像ローラ表面にトナーが特に融着しづらく、それ故、現像スジなどの画像弊害が特に起こりづらいためである。さらに、本発明に用いる酸化ケイ素膜は、構造中にケイ素原子と化学結合している炭素原子を含むこと、即ち構造中にSi−O及びSi−Cの化学結合を有することが好ましい。また、酸化ケイ素膜において、ケイ素原子と化学結合している酸素原子のケイ素原子に対する存在比(O/Si)が、0.65以上1.95以下であることが好ましい。存在比O/Siが0.65以上であると、膜表面に粘着が発生することを容易に防ぐことができる。これにより、トナーの離型性が低下することを容易に防ぎ、トナー融着の発生を容易に防ぐことができる。また1.95以下では、酸化ケイ素膜自体が硬くなること、ヒビ割れが生じることを容易に防ぎ、現像ローラとして使用した際、得られた画像に、ヒビに起因するスジが発生することを容易に防ぐことができる。
【0051】
また、構造中にSi−C結合を有する酸化ケイ素膜において、ケイ素原子と化学結合を形成している炭素原子のケイ素原子に対する存在比(C/Si)が、0.05以上1.65以下であることが好ましい。存在比C/Siが0.05以上であると、酸化ケイ素の膜と弾性層表面との密着性が低下することを容易に防ぎ、均一かつ適正な表面層、すなわち被覆層を容易に得ることができる。また存在比C/Siが1.65以下では、膜表面に粘着が発生することを容易に防ぎ、トナー融着が発生することを容易に防ぎ、現像スジが生じることを容易に防ぐことができる。
【0052】
本発明において酸化ケイ素膜等の被覆層を弾性層の上に形成する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。ディップコート、スプレーコート、ロールコート、リングコートなどの湿式コート法;真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理的気相成長(PVD)法;プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDなどの化学的気相成長(CVD)法等。また、多層押出成形やチューブ被覆などの方法も挙げられる。
【0053】
中でも、弾性層と被覆層(特に構造中にSi−C結合を含む酸化ケイ素膜)との密着性や処理時間及び処理温度、装置の簡便性、得られる表面層の均一性を考慮すると、プラズマCVD法が好ましい。
なお、構造中にSi−C結合を有する酸化ケイ素膜の各元素の存在比率は次のようにして求める。
【0054】
X線光電子分光装置「Quantum2000」(商品名、アルバック・ファイ株式会社製)を用い、X線源をAlKαとして、酸化ケイ素膜のSiの2p軌道、O及びCの1s軌道の結合エネルギーに起因するピークを測定する。それぞれのピークから各原子の存在比を算出し、得られた存在比よりO/Si及びC/Siを求める。
【0055】
構造中にSi−C結合を有する酸化ケイ素膜の化学結合については、フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)装置「SpectrumOne」(商品名、株式会社パーキンエルマージャパン製)により、酸化ケイ素膜を構成するSiOx膜の表面のIR測定にて確認する。すなわち、Si−O振動ピーク(450cm-1)、Si−C伸縮ピーク(800−820cm-1)の存在により、Si−O及びSi−Cの化学結合の存在を確認する。
【0056】
被覆層として用いる炭素膜としては、例えば、高硬度、電気絶縁性、赤外線透過性を持つカーボン薄膜のダイヤモンドライクカーボン(DLC)が挙げられる。前記DLCの構造はCを主骨格とし、かつ若干のHを含有し、ダイヤモンド結合(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造である。
【0057】
これら被覆層の厚みは、形成される被覆層の種類や形成方法により適宜選択することができる。
有機系の被覆層の場合には、被覆層の厚みは、3μm以上100μm以下とすることが好ましい。3μm以上では弾性層の削れ、および磨耗が生じることを容易に防ぐことができ、100μm以下の場合、現像ローラの体積抵抗ムラの原因となることを容易に防ぐことができる。
無機系の被覆層の厚みは、0.01μm以上3μm以下が好ましい。0.01μm以上では、弾性層への被覆が容易であり、弾性層の削れ、および磨耗が生じることを優れて防ぐことができ、3μm以下であると、被覆層の種類によらず、被覆層の割れが生じることを容易に防ぐことができる。
また、被覆層の構成としては、本発明の効果を得られる範囲で必要に応じて選択でき、1層あるいは2層以上の構成とすることができる。
【0058】
<トナー>
本現像方法で用いられるトナーの体積平均粒径は、5.0μm以上6.5μm以下である。トナーの体積平均粒径が5.0μm以上6.5μm以下である時、静電潜像の再現性及び階調再現性が良好なため、高品位な画像が得られる。さらに本発明記載の現像ローラを用いれば、使用温度差による画像濃度変化が少なく、トナー劣化も少ないが故に現像スジやカブリなどの現象も生じにくい。
【0059】
トナーの体積平均粒径が6.5μmより大きい場合、静電潜像の再現性及び階調再現性を十分に満たさない場合がある。またトナーの体積平均粒径が5.0μm未満である場合、トナー間での凝集力が高まり、現像ローラ表面上に均一にトナーを塗布することが難しい。また体積平均粒子径が5.0μm未満のトナーは、電荷が高まりやすいが故に、現像ローラ表面とのクーロン力により現像ローラ上に強固に付着しやすい。その結果、摺擦回数が増え、トナー劣化を引き起こし、現像ローラ表面へのトナー融着が多くなり、現像スジやカブリなどの現象が生じやすくなる。
【0060】
ここで、トナーの体積平均粒径は、精密粒度分布測定装置(商品名:マルチサイザー(Multisizer)2:ベックマン・コールター社製)を用いて測定することができる。以下に測定方法を詳しく説明する。
まず、この精密粒度分布測定装置に、個数分布及び体積分布を出力するインターフェース(日科機バイオス社製)並びにパーソナルコンピューターを接続する。
続いて、電解液として、一級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製する。電解液としては、アイソトン(ISOTON) R−II:商品名、ベックマン・コールター社製などを使用してもよい。前記電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。測定試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理する。前記超音波処理された電解液を測定サンプルに用いる。そして、100μmのアパーチャーを採用する前記コールターマルチサイザーにより、1.59μm以上64.00μm以下の範囲で16チャンネルの体積粒度分布を測定する。測定された50%D径を本発明におけるトナーの体積平均粒径とする。
【0061】
本発明で用いられるトナーの平均円形度は、0.940以上0.995以下であることが好ましい。トナーの平均円形度が0.940以上0.995以下である時、トナーにかかる機械的ストレスが容易に均一化され、局部的に大きなストレスが一層かからず、トナー劣化が容易に抑えられる。またトナーの良好な帯電性を容易に得ることができ、高温高湿環境下における画像濃度の変化やカブリがより少なくなる。
トナーの平均円形度が0.940以上の場合、トナー割れが発生することを容易に防ぐことができる。その結果、トナー帯電量がブロードになることを容易に防ぎ、高温高湿環境下における画像濃度の変化やカブリが生じることを容易に防ぐことができる。またトナーの平均円形度が0.995以下の場合は、容易に製造することができ、現像後に感光ドラムに残ってしまったトナーのクリーニング不良が起こることを容易に防ぐことができる。
【0062】
ここで、トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(商品名:FPIA−1000:東亜医用電子社製)を用いて測定することができる。
具体的には、界面活性剤が約0.1mg溶解している水10mlに、トナー5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5千個/μl以上2万個/μl以下として前記装置により測定を行う。そして3μm以上の円相当径の粒子群の平均円形度及びモード円形度を求める。
【0063】
本発明における平均円形度は、トナーの凹凸度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
【0064】
本発明の現像方法において使用されるトナーは以下のような方法で製造することができるが、以下の方法に限定されるものではない。
1)特公昭36−10231号公報、特開昭59−53856号公報、特開昭59−61842号公報、特開2006−106198号公報等に記載されている懸濁重合法を用いて直接トナーを生成する方法。
2)モノマーに可溶かつ水溶性である重合開始剤の存在下で直接モノマーを重合させてトナーを生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合法。
3)マイクロカプセル製法のような界面重合法。
4)in site重合法による方法。
5)コアセルベーション法による方法。
6)特開昭62−106473号公報や特開昭63−186253号公報等に開示されている少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ、所望の粒径のトナーを得る会合重合法による方法。
7)単分散を特徴とする分散重合法による方法。
8)非水溶性有機溶媒に必要な樹脂類を溶解させた後、水中でトナーを得る乳化分散法による方法。
9)以下の工程を含む破砕法。
加圧ニーダーやエクストルーダー、又はメディア分散機等を用いてトナー成分を混練、均一に分散させる工程。その後、冷却し、混練物を機械的又はジェット気流下でターゲットに衝突させて所望のトナー粒径に微粉砕する工程。その後、更に粒度分布をシャープにする分級工程。
10)粉砕法で得られたトナーを溶媒中で加熱等により球形化処理し、トナーを得る方法。
【0065】
なかでも、懸濁重合法、会合重合法、乳化分散法によるトナーの製造が好ましく、より好ましくは小粒径かつ高円形度のトナーが容易に得られる懸濁重合方法である。
【0066】
<画像形成装置>
図2、図3は本発明を用いることができる電子写真画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジの概略構成を示す模式図の一例である。
【0067】
感光ドラム4が矢印方向に回転し、感光ドラム4を帯電処理するための帯電ローラ11によって一様に帯電され、感光ドラム4に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光10により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム4に対して接触配置される現像装置9によってトナー7を付与されることにより現像され、トナーが付着した像として可視化される。
【0068】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム4上のトナー像は、転写部材である転写ローラ16によって記録媒体である紙21に転写される。なお紙21は、給紙ローラ22により電子写真画像形成装置内に取り込まれ、吸着ローラ23により転写搬送ベルト19上に供給される。転写搬送ベルト19は、駆動ローラ15及び従動ローラ20及びテンションローラ18により支持されており、紙21を搬送する。トナー像を転写された紙21は、定着装置14により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。なお符号17はバイアス電源である。
【0069】
一方、転写されずに感光ドラム4上に残存したトナーは、感光ドラム表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード13により掻き取られ廃トナー容器12に収納され、クリーニングされた感光ドラム4は上述作用を繰り返し行う。
現像装置9は、一成分トナーとして非磁性トナーを収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム4と対向設置された現像ローラ5とを備え、感光ドラム4上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0070】
電子写真プロセスカートリッジは、図3に示すように、現像ローラ5とトナー規制ブレード8、現像装置9、帯電ローラ11を有し、その他トナー塗布部材6、感光ドラム4も組みこんでもよい。電子写真プロセスカートリッジは、これらの部材が一体的に保持されてなるものであり、画像形成装置に着脱可能に設けられる。
【0071】
トナー塗布部材6の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や導電性軸芯体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ5へのトナー供給および未使用トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、導電性軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmのローラをトナー塗布部材として用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明する。また原材料に特に記載がない場合においては、市販の高純度品を使用した。
【0073】
〔飽和炭化水素化合物の分子量の測定〕
本発明における各飽和炭化水素化合物の数平均分子量の測定は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー法によって行った。ゲルパーミネーションクロマトグラフィー法の測定方法とは以下の方法である。すなわち、40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定した。試料の分子量測定に当っては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。また各飽和炭化水素化合物の数平均分子量を表3に示す。
【0074】
〔現像ローラのJIS−A硬度測定〕
被覆層を含む現像ローラのJIS−A硬度は、常温常湿(温度23℃/湿度55%RH)の環境中に12時間以上放置した後、現像ローラの長手方向の中心及び両端部から2cm内側の3点を、JIS−A硬度計で測定したその平均の値である。
【0075】
[アミノ酸誘導体Aの合成]
水酸化ナトリウム20gを180gの水に溶解した後、グルタミン酸ナトリウム一水和物95.5g(0.5モル)とアセトン100gを加え溶液とした。その後、溶液を5℃に冷却し、ラウロイルクロライド109.4g(0.5モル)と20質量%水酸化ナトリウム水溶液105gを同時に2時間かけて滴下し反応液を得た。
反応液を80gの水で希釈し10℃に冷却し、95質量%硫酸63gを加え、得られた溶液の水層を除去し有機層を減圧濃縮して油状物質を得た。この油状物質をメタノール740gに溶解し、95質量%硫酸6.3gを加え10時間還流させた後、20℃まで冷却し、n−ブチルアミン8.9g(0.12モル)を加えメタノールを減圧濃縮し、濃縮物質を得た。この濃縮物質をトルエン643gと、n−ブチルアミン271g(3.7モル)を加えて、80℃で10時間加熱撹拌し、冷却後これに水500g、95質量%硫酸130gを加えて、水層を除去し化合物Aが存在する有機層を得た。化合物Aが存在する有機層に水1000gを加えて、常圧で溶媒を除去し、析出した白色固体を吸引ろ過した。得られた白色個体を50℃で真空乾燥してアミノ酸誘導体Aを得た。
【0076】
なお各例に使用するアミノ酸誘導体の構造を、以下に示す。なお、アミノ酸誘導体O〜Sは、本発明に用いるアミノ酸誘導体の条件を満たしていない。アミノ酸誘導体B〜Sは、それぞれの構造に対応した原料を使用してアミノ酸誘導体Aと同様の方法にて合成した。
【0077】
【化3】

【0078】
【化4】

【0079】
【化5】

【0080】
【化6】

【0081】
【化7】

【0082】
【化8】

【0083】
【化9】

【0084】
【化10】

【0085】
【化11】

【0086】
【化12】

【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
【化17】

【0092】
【化18】

【0093】
【化19】

【0094】
【化20】

【0095】
【化21】

【0096】
上記アミノ酸誘導体A〜Sについて、式1中のnの数、および、R1乃至R3の炭素数を下記表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
[トナーの作製]
下記の手順に従って重合法によりトナーを作製した。
60℃に加温したイオン交換水900質量部に、リン酸三カルシウム4質量部を添加し、これをTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)により10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を作製した。
次に、下記の組成物をTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)に投入し、60℃に加温した後、9,000rpmにて攪拌して溶解、分散した。
・スチレン 160質量部
・n−ブチルアクリレート 40質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 14質量部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
(商品名:ボントロンE−88、オリエント化学社製)
・ポリエステル樹脂 7質量部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg(ガラス転移温度)=65℃、Mw(重量平均分子量)=10000、Mn=6000)
・ステアリン酸ステアリルワックス(DSCのメインピーク60℃) 20質量部
・ジビニルベンゼン 0.2質量部
これに、重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート20質量部(10時間半減期温度:54.6℃、分子量:174)を溶解し、重合性単量体系組成物を調製した。
【0099】
調整した重合性単量体組成物を、前記水系媒体中に投入し、60℃,窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーを用いて9,000rpmで攪拌して懸濁させた。
【0100】
その後、プロペラ式攪拌装置に移して攪拌しつつ、3時間かけて70℃に昇温し、さらに4時間後、昇温速度40℃/hrで80℃まで昇温し、80℃で5時間反応を行い、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、前記粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍量の水で洗浄し、ろ過した後、6.67×10-1kPaの圧力下、40℃で48時間乾燥し、分級によって粒子径をそれぞれ調整された重合体粒子を得た。
【0101】
上記粒子径を調整されたそれぞれの重合粒子100質量部に対して、流動性向上剤として、シリコーンオイルで処理され、トナーと同極性(負極性)に帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:10nm、BET比表面積:170m2/g)1.5質量部を、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)で5分間混合して体積平均粒子径および円形度が異なるトナーを得た。得られたそれらのトナーの、体積平均粒径および平均円形度を、前記した方法により測定した。これらの測定結果を表2に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
続いて、以下に現像ローラ1〜52の製造方法を示す。なお、現像ローラ40〜52は、本発明の現像方法に用いる現像ローラの条件を満たしていない。
【0104】
[現像ローラ1の作製]
[弾性層の作製]
飽和炭化水素化合物(商品名:ルーカントHC−2000三井化学社製、Mn:3400)58質量部にアミノ酸誘導体A0.58質量部を加熱混練し、溶解させ冷却した。これにEPDMとしてエスプレン505(商品名、住友化学工業株式会社製)100質量部、ステアリン酸亜鉛2質量部、MTカーボンブラックのサーマックスフローフォームN990(商品名、CANCAB社製)30質量部を加えた。その後これらの材料をニーダーにて混練した。然る後、そこに硫黄1質量部、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)1質量部をオープンロールにて混合し、弾性層のゴム組成物を得た。
次にクロスヘッドを備えたベント式ゴム押出機(直径50mmベント押出機 L/D=16 EM技研社製)を用いて、SUS(ステンレス鋼)製の直径6.0mmで長さ252.0mmの導電性軸芯体の同軸状にゴム組成物を押出した。導電性軸芯体端部の余分なゴムを切り離し、導電性軸芯体上のゴム組成物の長さを242.0mmにした後、熱風乾燥炉中160℃で1時間架橋させた。この架橋後のローラの両端部のゴムを切り離し、ゴム部分の長さを232mmとした後、ゴム部分をGC80の砥石を使用して回転研磨機にて研磨加工し、直径12mmの弾性体層(弾性体層の厚み:3mm)を有するローラを得た。
【0105】
[被覆層の作製]
ポリオール(商品名:ニッポラン5033、日本ポリウレタン社製)と、イソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)とを合わせて固形分として100質量部とした。その比率は、[NCO]/[OH]のモル比の値が1.2となるようにした。さらに、そこに、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製)を30質量部添加し、原料混合液を作製した。
この原料混合液に有機溶剤を加え、被覆層の膜厚が20μmとなるように固形分20質量%以上30質量%以下の範囲で調整した。その後、これに、ウレタン樹脂粒子(商品名:CFB−101−40、大日本インキ化学工業社製)を5質量部加え、分散させて被覆層の原料液とした。この樹脂原料液中に、得られた現像ローラを浸漬してコーティングした後乾燥させ、熱風乾燥炉中で160℃にて20分間加熱処理することで、厚さ20μmの被覆層を弾性層の外周に設けた現像ローラ1を作製した。
【0106】
[現像ローラ2の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物を、モレスコホワイトP−70(商品名、松村石油研究所製、Mn:300)に変え、その添加量を23.5質量部とした。また、アミノ酸誘導体Aの添加量を0.141質量部に変更した。その他は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ2を作製した。
【0107】
[現像ローラ3の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物を上記モレスコホワイトP−70に置き換え、その添加量を133量部とし、さらにアミノ酸誘導体Aの添加量を0.798質量に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ3を作製した。
【0108】
[現像ローラ4の作製]
現像ローラ2の作製で用いたモレスコホワイトP−70の添加量を24質量部に変更し、アミノ酸誘導体Aの添加量を2.4質量部に変更した。それ以外は現像ローラ2と同様の方法にて現像ローラ4を作製した。
【0109】
[現像ローラ5の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物をモレスコホワイトP−70(商品名、松村石油研究所製)に置き換え、その添加量を150質量部とした。また、アミノ酸誘導体Aの添加量を15.0質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ5を作製した。
【0110】
[現像ローラ6の作製]
クラプレンLIR―50(商品名、クラレ社製)をシクロヘキサン溶媒中でパラジウム−炭素を触媒として2MPaの水素雰囲気下で水素添加を行い、飽和炭化水素化合物としてLIR−50水添物(Mn:30000)を得た。現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物をルーカントHC−2000からこのLIR−50水添物に置き換え、その添加量を23.5質量部とし、さらにアミノ酸誘導体Aの添加量を0.141質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ6を作製した。現像ローラ6の処方を表3に示す。
【0111】
[現像ローラ7の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物をLIR−50水添物に換え、その添加量を133質量部とし、さらに、アミノ酸誘導体Aの添加量を0.798質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ7を作製した。
【0112】
[現像ローラ8の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物をLIR−50水添物に換え、その添加量を24質量部とし、さらにアミノ酸誘導体Aの添加量を2.4質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ8を作製した。
【0113】
[現像ローラ9の作製]
現像ローラ5の作製で用いた飽和炭化水素化合物をLIR−50水添物に換え、その添加量を150質量部とし、さらにアミノ酸誘導体Aの添加量を15質量部に変更した。それ以外は現像ローラ5と同様の方法にて現像ローラ9を作製した。
【0114】
[現像ローラ10の作製]
現像ローラ2の作製で用いた飽和炭化水素化合物をルーカントHC−40(商品名、三井化学社製、Mn:1000)に換え、その添加量を23.5質量部とした。さらに、アミノ酸誘導体の添加量を0.141質量部に変更した。それ以外は現像ローラ2と同様の方法にて現像ローラ10を作製した。現像ローラ10の処方を表3に示す。
【0115】
[現像ローラ11の作製]
現像ローラ3の作製で用いた飽和炭化水素化合物をルーカントHC−40に換え、その添加量を133質量部とし、アミノ酸誘導体Aの添加量を0.798質量部に変更した。それ以外は現像ローラ3と同様の方法にて現像ローラ11を作製した。現像ローラ11の処方を表3に示す。
【0116】
[現像ローラ12の作製]
現像ローラ4の作製で用いた飽和炭化水素化合物をルーカントHC−40に換え、その添加量を23.5質量部とし、アミノ酸誘導体Aの添加量を2.35質量部に変更した。それ以外は現像ローラ4と同様の方法にて現像ローラ12を作製した。
【0117】
[現像ローラ13の作製]
現像ローラ5の作製で用いた飽和炭化水素化合物をルーカントHC−40に換え、その飽和炭化水素化合物の添加量を150質量部とし、アミノ酸誘導体Aの添加量を15質量部に変更した。それ以外は現像ローラ5と同様の方法にて現像ローラ13を作製した。現像ローラ13の処方を表3に示す。
【0118】
[現像ローラ14の作製]
現像ローラ1の作製で用いたEPDMを、BR(商品名:BR−150、宇部興産社製)に換えた以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ14を作製した。
【0119】
[現像ローラ15の作製]
現像ローラ1の作製で用いたEPDMを、SBR(商品名:ニポールNS116R;結合スチレン量21%、日本ゼオン社製)に換えた以外は現像ローラ1と同様にして現像ローラ15を作製した。
【0120】
[現像ローラ16の作製]
現像ローラ1の作製で用いたEPDMを、イソプレンゴム(商品名:ニポールIR2200、日本ゼオン社製)に換えた以外は現像ローラ1と同様にして現像ローラ16を作製した。
【0121】
[現像ローラ17の作製]
現像ローラ1の作製で用いたEPDMを、ブチルゴム(商品名:ブチル065、日本ブチル社製)に換えた以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ17を作製した。
【0122】
[現像ローラ18の作製]
現像ローラ1の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Bに変更した以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ18を作製した。
【0123】
[現像ローラ19、27の作製]
現像ローラ2の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Bまたはアミノ酸誘導体Iに変更した以外は現像ローラ2と同様の方法にて現像ローラ19、27を作製した。
【0124】
[現像ローラ20、28の作製]
現像ローラ3の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Bまたはアミノ酸誘導体Jに変更した以外は現像ローラ3と同様の方法にて現像ローラ20、28を作製した。
【0125】
[現像ローラ21、29の作製]
現像ローラ4の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Cまたはアミノ酸誘導体Kに変更した以外は現像ローラ4と同様の方法にて現像ローラ21、29を作製した。
【0126】
[現像ローラ22、30の作製]
現像ローラ5の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Dまたはアミノ酸誘導体Lに変更した以外は現像ローラ5と同様の方法にて現像ローラ22、30を作製した。
【0127】
[現像ローラ23、31の作製]
現像ローラ6の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Eまたはアミノ酸誘導体Mに変更した以外は現像ローラ6と同様の方法にて現像ローラ23、31を作製した。
【0128】
[現像ローラ24、32の作製]
現像ローラ7の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Fまたはアミノ酸誘導体Nに変更した以外は現像ローラ7と同様の方法にて現像ローラ24、32を作製した。
【0129】
[現像ローラ25の作製]
現像ローラ8の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Gに変更した以外は現像ローラ8と同様の方法にて現像ローラ25を作製した。
【0130】
[現像ローラ26の作製]
現像ローラ9の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体Hに変更した以外は現像ローラ9と同様の方法にて現像ローラ26を作製した。
【0131】
[現像ローラ33の作製]
現像ローラ1のアミノ酸誘導体AをルーカントHC−2000(商品名、三井化学社製)に溶解させずに、他の材料と同時にニーダーにて加熱混練し、弾性層の未架橋ゴム組成物を得た。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ33を作製した。
【0132】
[現像ローラ34の作製]
現像ローラ3の被覆層を、以下に示す、構造中にケイ素原子と炭素原子との化学結合(Si−C結合)を含む酸化ケイ素膜に変更した。それ以外は、現像ローラ3と同様の方法にて現像ローラ34を作製した。
【0133】
[酸化ケイ素膜の作製]
被覆層形成前の現像ローラを図4に示したプラズマCVD装置内に設置した。その後、真空ポンプ28を用いて真空チャンバ24内を1Paまで減圧にした。その後、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン蒸気1.0sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)、酸素1.5sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)及びアルゴンガス22.5sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)の混合ガスを真空チャンバ24内に導入した。その時真空チャンバ内の圧力は25.3Paとした。圧力が一定になった後、高周波供給手段29より、周波数13.56MHz、120Wの電力を平板電極25に供給し、電極間にプラズマを発生させた。真空チャンバ内に設置した被覆層形成前の現像ローラをモータ30により24rpmで回転させて、3分間処理した。処理終了後電力供給を停止し、真空チャンバ内に残留している原料ガスを排気し、空気を真空チャンバ内に大気圧になるまで導入した。その後、表面層が形成された現像ローラを取り出した。なお26は原料ガスボンベ及び原料液体タンク、27は原料供給手段である。なお、酸化ケイ素膜の厚みは、0.9μmであった。
【0134】
X線光電子分光装置で、得られた現像ローラ34の表面の存在比O/Si及び存在比C/Siを求めたところ、それぞれ1.54、0.35であった。
【0135】
[現像ローラ35の作製]
現像ローラ34の弾性層を現像ローラ5の弾性層に変更した。次に酸化ケイ素膜の形成において条件を以下のように変更した。原料ガス組成を1、1、3、3−テトラメチルジシロキサン蒸気1.0sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)、酸素2.5sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)及びアルゴンガス22.5sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)に変更した。さらにチャンバ内圧力を50.6Pa、及び高周波電源を13.56MHz、200Wに変え、プラズマCVD処理の時間を1分間に変更した。それ以外は現像ローラ34と同様にして現像ローラ35を作製した。X線光電子分光装置で、得られた現像ローラ35表面の存在比O/Si及び存在比C/Siを求めたところ、それぞれ1.95、0.05であった。
【0136】
[現像ローラ36の作製]
現像ローラ34の弾性層を現像ローラ8の弾性層に変更した。次に酸化ケイ素膜の形成において条件を以下のように変更した。原料ガス組成としてヘキサメチルジシロキサン蒸気20sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)を真空チャンバ内に導入し、真空チャンバ内の圧力を6Paに変更した。さらに高周波電源により150Wの電力を平行平板電極に供給し、5分間処理した。それ以外は現像ローラ34と同様にして現像ローラ36を作製した。X線光電子分光装置で、得られた現像ローラ36表面の存在比O/Si及び存在比C/Siを求めたところ、それぞれ0.65、1.65であった。
【0137】
[現像ローラ37の作製]
現像ローラ36の弾性層を現像ローラ9の弾性層に変更した。次に酸化ケイ素膜の形成において条件を以下のように変更した。原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン蒸気10sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)及びトルエン蒸気10sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)の混合ガスを真空チャンバ内に導入し、真空チャンバ内の圧力を6Paに変更した。それ以外は現像ローラ36と同様にして現像ローラ37を作製した。X線光電子分光装置で、得られた現像ローラ37表面の存在比O/Si及び存在比C/Siを求めたところ、それぞれ1.95、0.65であった。
【0138】
[現像ローラ38の作製]
現像ローラ37の弾性層を現像ローラ19の弾性層に変更した。次に酸化ケイ素膜の形成において条件を以下のように変更した。原料ガスとしてヘキサメチルシロキサン蒸気3sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)を真空チャンバ内に導入し、真空チャンバ内の圧力を2Paに変更した。さらに高周波電源により200Wの電力を平行平板電極に供給した。それ以外は現像ローラ37と同様にして現像ローラ38を作製した。X線光電子分光装置で、得られた現像ローラ38表面の存在比O/Si及び存在比C/Siを求めたところ、それぞれ0.65、0.05であった。
【0139】
[現像ローラ39の作製]
現像ローラ38の弾性層を現像ローラ21の弾性層に変更した。次に酸化ケイ素膜の形成において条件を以下のように変更した。原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン蒸気10sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)及びトルエン蒸気20sccm(0℃、101.3kPaでのml/min)の混合ガスを真空チャンバ内に導入し、真空チャンバ内圧力を8Paに変更した。さらに高周波電源により30Wの電力を平行平板電極に供給した。それ以外は現像ローラ38と同様にして現像ローラ39を作製した。X線光電子分光装置で、得られた現像ローラ39表面の存在比O/Si及び存在比C/Siを求めたところ、それぞれ1.90、1.65であった。
【0140】
[現像ローラ40の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物であるルーカントHC−2000をモレスコP−40(商品名、松村石油研究所製、Mn:250)に置き換えた。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ40を作製した。
【0141】
[現像ローラ41の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物であるルーカントHC−2000をクラプレンLIR−200(商品名、クラレ社製、Mn:32000)に置き換えた。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ41を作製した。
【0142】
[現像ローラ42の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物であるルーカントHC−2000の添加量を15質量部に変更し、アミノ酸誘導体Aの添加量は0.15質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ42を作製した。なお、弾性層中の飽和炭化水素化合物の含有量は、10質量%であった。
【0143】
[現像ローラ43の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物であるルーカントHC−2000の添加量を203質量部に変更し、アミノ酸誘導体Aの添加量は2.03質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ43を作製した。なお、弾性層中の飽和炭化水素化合物の含有量は、60質量%であった。
【0144】
[現像ローラ44の作製]
現像ローラ1の作製で用いたアミノ酸誘導体Aの添加量を0.058質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ44を作製した。現像ローラ44の処方を表3に示す。なお、弾性層中の飽和炭化水素化合物100質量部に対する、アミノ酸誘導体の含有量は、0.1質量部であった。
【0145】
[現像ローラ45の作製]
現像ローラ1の作製で用いたアミノ酸誘導体Aの添加量を、6.96質量部に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ45を作製した。なお、弾性層中の飽和炭化水素化合物100質量部に対する、アミノ酸誘導体の含有量は、12質量部であった。
【0146】
[現像ローラ46の作製]
現像ローラ1の作製で用いたアミノ酸誘導体Aを添加せず、その他のアミノ酸誘導体Aも添加しなかった。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ46を作製した。
【0147】
[現像ローラ47〜51の作製]
現像ローラ1の作製で用いたアミノ酸誘導体Aをアミノ酸誘導体O、P、Q、RまたはSに変更した以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ47〜51を作製した。
【0148】
[現像ローラ52の作製]
現像ローラ1の作製で用いた飽和炭化水素化合物であるルーカントHC−2000をナフテンオイルであるダイアナプロセスオイルNM300(商品名、出光興産社製)に変更した。それ以外は現像ローラ1と同様の方法にて現像ローラ52を作製した。
以上作製した現像ローラ1から52の処方を表3に示す。
【0149】
【表3】

【0150】
以上により得られた現像ローラとトナーとを、表4〜6に示す実施例1〜39、および表7に示す比較例1〜15に記載した組み合わせで用いて、各例の画像濃度、カブリ、現像スジおよび解像度の評価をそれぞれ行った。
【0151】
[画像濃度変化]
得られたトナー及び現像ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込みこんだ。そしてこの電子写真プロセスカートリッジをLBP5400本体に取り付け、高温高湿環境下(30℃、80%RH(相対湿度))に1日放置した。1日放置後、この高温高湿環境にて印字率1%濃度の画像を500枚出力した後、印字率100%濃度のベタ画像を出力した。その後、マシンごと常温常湿(23℃、60%RH)環境下に1日放置した。更にマシンごと低温低湿環境(15℃、10%RH)下で1日放置した。1日放置後、この低温低湿環境にて印字率1%濃度の画像を500枚出力した後、印字率100%濃度のベタ画像を出力した。各環境で出力したベタ画像について、マクベス株式会社製のマクベス濃度計「マクベスカラーチェッカー RD−1255」(商品名)にて濃度測定した。各環境での濃度差(低温低湿環境でのベタ画像濃度−高温高湿環境でのベタ画像濃度)を以下の基準で評価した。それぞれの結果を表4〜7に示す。
A:0.02未満、
B:0.02以上0.05未満、
C:0.05以上0.08未満、
D:0.08以上。
【0152】
[カブリ]
得られたトナー及び現像ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込みこんだ。そしてこの電子写真プロセスカートリッジをLBP5400本体に取り付け、高温高湿環境下(30℃、80%RH)に1日放置した。1日放置後、高温高湿環境にて印字率1%濃度の画像を4000枚出力した後、白ベタ画像を出力し、その出力中にプリンターを停止した。停止後感光ドラム上に付着したトナーを粘着テープで剥がし取り、粘着テープの粘着面の反射率を測定した。粘着テープのみの反射率とトナーが付着した粘着テープの反射率より、カブリを評価した。なお、反射率の測定には、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電色社製)を用いた。それぞれの結果を表4〜7に示す。
A:反射率の低下が2%未満、
B:反射率の低下が2%以上4%未満、
C:反射率の低下が4%以上6%未満、
D:反射率の低下が6%以上。
【0153】
[現像スジ]
得られたトナー及び現像ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込みこんだ。そしてこの電子写真プロセスカートリッジをLBP5400本体に取り付け、低温低湿環境(15℃、10%RH)環境下で1日放置した。1日放置後、低温低湿環境にて印字率1%濃度の画像を4000枚出力した後、ベタ画像を出力した。そのベタ画像を以下の基準で評価した。それぞれの結果を表4〜7に示す。
A:現像スジの発生が認められない。
B:極軽微な現像スジの発生が認められる。
C:画像に影響を及ぼす現像スジの発生が認められる。
D:画像に大きな影響を及ぼす現像スジの発生が認められる。
【0154】
[解像度]
得られたトナー及び現像ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込みこんだ。そしてこの電子写真プロセスカートリッジをLBP5400本体に取り付け、600dpiにおける小径孤立1ドットの再現性によって評価した。
A:100個中の欠損が5個以下、
B:100個中の欠損が6個以上10未満、
C:100個中の欠損が10個以上20未満、
D:100個中の欠損が20個以上。
【0155】
【表4】

【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
【表7】

【0159】
以上説明したように、本発明によれば小粒径トナーを用いた非磁性一成分接触現像において、使用温度による画像濃度変化が少なく、現像スジやカブリが良好で高精細な現像方法及び現像ローラの製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0160】
1 ・・・導電性軸芯体
2 ・・・弾性層
3 ・・・被覆層
4 ・・・感光ドラム
5 ・・・現像ローラ
6 ・・・トナー塗布部材
7 ・・・トナー
8 ・・・トナー規制ブレード
9 ・・・現像装置
10 ・・・レーザー光
11 ・・・帯電ローラ
12 ・・・廃トナー容器
13 ・・・クリーニングブレード
14 ・・・定着装置
15 ・・・駆動ローラ
16 ・・・転写ローラ
17 ・・・バイアス電源
18 ・・・テンションローラ
19 ・・・転写搬送ベルト
20 ・・・従動ローラ
21 ・・・紙
22 ・・・給紙ローラ
23 ・・・吸着ローラ
24 ・・・真空チャンバ
25 ・・・平板電極
26 ・・・原料ガスボンベ及び原料液体タンク
27 ・・・原料供給手段
28 ・・・真空ポンプ
29 ・・・高周波供給手段
30 ・・・モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像ローラに担持させたトナーで感光ドラムの表面に形成された静電潜像を現像する工程を有する現像方法であって、
該現像ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の外周面上に弾性層と、該弾性層の外周面上に被覆層とを含み、
該弾性層は、数平均分子量Mnが300以上30000以下である直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素化合物を15質量%以上50質量%以下と、下記式1で表されるアミノ酸誘導体を該飽和炭化水素化合物100質量部に対し0.6質量部以上10質量部以下と、ゴムと、を含有し、
該トナーは、その体積平均粒径が、5.0μm以上6.5μm以下であることを特徴とする現像方法:
【化1】

(R1およびR2は、各々独立に炭素数3以上10以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、R3は炭素数7以上20以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す。nは1または2を表す)。
【請求項2】
前記式1で示されるアミノ酸誘導体が、上記式1におけるR1およびR2が各々独立に炭素数3以上5以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、R3が炭素数7以上11以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、nが2であるものである請求項1に記載の現像方法。
【請求項3】
前記ゴムがエチレン‐プロピレン‐ジエンゴムである請求項1又は2に記載の現像方法。
【請求項4】
前記飽和炭化水素化合物の数平均分子量Mnが、1000以上、30000以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の現像方法。
【請求項5】
前記トナーの平均円形度が、0.940以上0.995以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の現像方法。
【請求項6】
前記被覆層が、構造中にケイ素原子と炭素原子との化学結合(Si−C結合)を含む酸化ケイ素膜である請求項1から5のいずれか1項に記載の現像方法。
【請求項7】
導電性軸芯体の外周面上に弾性層を形成する現像ローラの製造方法であって、
(1)下記式1で表されるアミノ酸誘導体、および数平均分子量Mnが300以上30000以下である直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素化合物を加熱混練することで溶解させ冷却する工程と、
(2)工程(1)により得られる混合物をゴムと混練し、架橋を行い、該弾性層を形成する工程と、を含むことを特徴とする現像ローラの製造方法:
【化2】

(式(1)中、R1およびR2は、各々独立に炭素数3以上10以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、R3は、炭素数7以上20以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、nは1または2を表す)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11813(P2013−11813A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145769(P2011−145769)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】