説明

現像装置および画像形成装置

【課題】
現像剤の帯電量が大きい現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】
現像装置14Yにおいて、トナーおよび磁性体を含む現像剤を収容する現像剤容器140と、回転軸および回転軸1431の回りに設けられた螺旋状の羽根1432を有し、現像剤容器140内に、現像剤容器140の内壁1403と羽根1432との間に隙間Gをあけて配置され、回転することにより現像剤容器140内の現像剤を撹拌しながらこの回転軸の延伸方向に搬送する搬送部材143と、現像剤容器140の、延伸方向に広がる外壁1402に対向して配置された、現像剤容器140内の現像剤を磁力で引き付ける磁石144と、磁石を外壁に沿って延伸方向に移送する移送機構145とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、非磁性トナーと磁性キャリアからなる現像剤を現像剤撹拌スクリューで撹拌して帯電させる現像装置において、帯電を促進するため、現像剤容器の外側に、現像剤撹拌スクリューの長手方向に延びたマグネットローラを配置した構成が示されている。
【0003】
また、特許文献2には、現像槽内に撹拌部材が配置された現像装置において、現像槽に電磁石を固定し、トナー供給時には、撹拌部材を高速で回転させるとともに電磁石に通電する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−227392号公報
【特許文献2】特開2010−164651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現像剤の帯電量が大きい現像装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る現像装置は、
トナーおよび磁性体を含む現像剤を収容する現像剤容器と、
回転軸およびこの回転軸の回りに設けられた螺旋状の羽根を有し、上記現像剤容器内に、この現像剤容器の内壁とこの羽根との間に隙間をあけて配置され、回転することによりこの現像剤容器内の現像剤を撹拌しながらこの回転軸の延伸方向に搬送する搬送部材と、
上記現像剤容器の、上記延伸方向に広がる外壁に対向して配置された、この現像剤容器内の現像剤を磁力で引き付ける磁石と、
上記磁石を上記外壁に沿って上記延伸方向に移送する移送機構とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る現像装置は、上記磁石が、上記外壁の面と交わる軸を中心として回転するものであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る現像装置は、上記羽根が磁性体材料からなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る画像形成装置は、
静電潜像が表面に形成されこの静電潜像がトナーで現像される被現像体と、
上記被現像体をトナーで現像する現像装置とを備え、
上記現像装置が、トナーおよび磁性体を含む現像剤を収容する現像剤容器と、
回転軸およびこの回転軸の回りに設けられた螺旋状の羽根を有し、上記現像剤容器内に、この現像剤容器の内壁とこの羽根との間に隙間をあけて配置され、回転することによりこの現像剤容器内の現像剤を撹拌しながらこの回転軸の延伸方向に搬送する搬送部材と、
上記現像剤容器の、上記延伸方向に広がる外壁に対向して配置された、この現像剤容器内の現像剤を磁力で引き付ける磁石と、
上記磁石を上記外壁に沿って上記延伸方向に移送する移送機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る現像装置および請求項4に係る画像形成装置は、本構成を有していない場合と比較して現像剤の帯電量が大きい。
【0011】
請求項2に係る現像装置は、磁石が回転しない場合と比較して、現像剤の帯電量がさらに大きい。
【0012】
請求項3に係る現像装置は、羽根が非磁性体材料からなる場合と比較して、現像剤の帯電量がさらに大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す現像装置を上方から見た透視図である。
【図3】現像装置の側面図である。
【図4】現像装置の縦断面図である。
【図5】トナー帯電量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す構成図である。
【0016】
図1に示す画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および、ブラック(K)の各色毎に画像形成部10Y,10M,10C,10Kを並列的に配置してなるタンデム型のカラープリンタであり、単色の画像をプリントすることができるほか、4色のトナー像からなるフルカラーの画像をプリントすることができる。画像形成装置1には、CMYK各色のトナーを収容するトナーカートリッジ18Y,18M,18C,18Kが備えられている。
【0017】
4つの画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、ほぼ同様の構成を有しているため、これらを代表してイエローに対応する画像形成部10Yを取り上げて説明する。画像形成部10Yは、感光体11Y、帯電器12Y、露光器13Y、現像装置14Y、一次転写器15Y、および感光体クリーナ16Yを備えている。
【0018】
感光体11Yは円筒状の基板上に感光体の層を有しており、表面に形成される像を保持して円筒の軸周りである矢印A方向に回転する。帯電器12Y、露光器13Y、現像装置14Y、一次転写器15Y、および感光体クリーナ16Yは、感光体11Yの周囲に順次配置されている。
【0019】
帯電器12Yは、感光体11Yの表面を帯電させる。帯電器12Yは、感光体11Yの表面に接触する帯電ロールである。帯電ロールには、現像装置14Yにおけるトナーと同極性の電圧が印加されており、接触する感光体11Yの表面を帯電させる。なお、帯電器12Yとしては、帯電ロールの他に感光体11Yに非接触のコロナ放電器も採用され得る。
【0020】
露光器13Yは、画像形成装置1外部から供給される画像信号に基づくレーザ光を発光する発光器と、レーザ光で感光体11Yを走査するための回転多面鏡とを有しており、感光体11Yにレーザ光を照射することで、感光体11Yの表面を露光する。
【0021】
現像装置14Yは、トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を用いて感光体11Yの表面を現像する。現像装置14Yにはトナーカートリッジ18Yからトナーが供給される。トナーは現像装置14Y内の磁性キャリアと混合される。磁性キャリアは、例えば鉄粉の表面に樹脂コーテイングを施したものである。また、トナー粒子は、例えば結着樹脂、着色剤、および離型剤を有する。現像装置14Yは、磁性キャリアの粒子とトナーの粒子とが混合された現像剤を撹拌することでトナーおよび磁性キャリアを帯電し、帯電したトナーで感光体11Y表面を現像する。磁性キャリアが、本発明にいう磁性体の一例に相当する。
【0022】
一次転写器15Yは、中間転写ベルト30を挟んで感光体11Yに対向したロールである。一次転写器15Yは、表面に導電性の弾性層を有しており、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加されることで、感光体11Y上のトナー像を中間転写ベルト30に静電吸引させる。感光体クリーナ16Yは、感光体11Y表面に接触する清掃ブレードを有しており、転写後に感光体11Yの表面を清掃する。
【0023】
画像形成装置1には、中間転写ベルト30、定着装置60、用紙搬送部80、および、画像形成装置1の各部を制御する制御部1Aも備えられている。中間転写ベルト30は、帯電防止剤を含んだ樹脂材料からなる無端のベルトである。中間転写ベルト30は、ベルト支持ロール31〜35に架け渡されており、画像形成部10Y,10M,10C,10K、および、二次転写器50を経由する矢印Bに示す方向に循環移動する。中間転写ベルト30には、画像形成部10Y,10M,10C,10Kから各色のトナー像が転写される。中間転写ベルト30は、これら各色のトナー像を保持して移動する。
【0024】
二次転写器50は、ベルト支持ロール31〜35の一つであるバックアップロール34との間に中間転写ベルト30および用紙を挟んで回転するロールである。二次転写器50は、表面に導電性の弾性層を有し、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加されることで、中間転写ベルト30上のトナー像を用紙に静電吸引させる。ベルトクリーナ70は、中間転写ベルト30にブレードを接触させて中間転写ベルト30上のトナーを掻き取る。
【0025】
定着装置60は、トナーを用紙に定着する。定着装置60は、加熱ロール61および加圧ロール62を備えており、加熱ロール61には加熱器が内蔵されている。加熱ロール61および加圧ロール62は、定着前のトナー像が形成された用紙を挟んで通過させることによりトナー像を用紙上に定着させる。
【0026】
用紙搬送部80は、用紙収容器Tに収容された用紙を取り出す取出ロール81、取り出された用紙を捌く捌きロール82、用紙を搬送する搬送ロール83、用紙を二次転写器50に搬送するレジストレーションロール84、および、用紙を外部に排出する排出ロール86を備えている。用紙搬送部80は、二次転写器50および定着装置60を経由する用紙搬送路Rに沿って搬送する。
【0027】
図1に示す画像形成装置1の基本動作を説明すると、イエローの画像形成部10Yでは、感光体11Yが矢印A方向に回転駆動され、感光体11Yの表面に帯電器12Yによって電荷が付与される。露光器13Yは、感光体11Yに、画像信号中の各色に対応するデータに応じた露光光をそれぞれ照射する。露光器13Yは、外部から供給される画像信号のうちのイエローに対応する画像信号に基づく露光光を感光体11Yの表面に照射することで、感光体11Yの表面に静電潜像を形成する。現像装置14Yには、トナーカートリッジ18Yからイエローのトナーが供給される。現像装置14Yは、静電潜像をトナーで現像することで、トナー像を形成する。感光体11Yは、表面に形成されたイエローのトナー像を保持して回転する。感光体11Yの表面に形成されたトナー像は、一次転写器15Yによって中間転写ベルト30に転写される。転写後、感光体11Yに残留したトナーは、感光体クリーナ16Yによって回収・除去される。
【0028】
中間転写ベルト30は、支持ロール31〜35架け渡され矢印B方向に巡回移動されておいる。イエロー以外の色に対応する画像形成部10M,10C,10Kは、画像形成部10Yと同様にしてそれぞれの色に対応するトナー像を形成し、中間転写ベルト30に、画像形成部10Yで転写されたトナー像に重ねて、それぞれの色のトナー像を転写していく。
【0029】
用紙収容器Tからは、用紙Pが取出ロール81によって取り出される。用紙Pは、搬送ロール83、およびレジストレーションロール84によって、用紙搬送路Rを二次転写器50に向かう矢印C方向に搬送される。レジストレーションロール84は、用紙Pを、中間転写ベルト30上にトナー像が転写されるタイミングに基づいて二次転写器50に送り込む。二次転写器50は、中間転写ベルト30と用紙Pとの間に転写用の電位を付与することによって、中間転写ベルト30のトナー像を用紙Pに転写する。トナー像が転写された用紙Pは二次転写器50から定着装置60に搬送され、用紙上に転写されたトナー像が定着される。このようにして、用紙上に画像が形成される。画像が形成された用紙は排出ロール86によって画像形成装置1の外部に排出される。二次転写器50による転写後、中間転写ベルト30に残留したトナーは、ベルトクリーナ70によって除去される。
【0030】
[現像装置]
図2は、図1に示す現像装置の平面図である。また、図3は、現像装置の側面図であり、図4は、現像装置の縦断面図である。図には、イエローについての現像装置14Yが示されているが、他の色についての現像装置14M〜14Kも現像装置14Yと同様の構造を有する。
【0031】
現像装置14Yは、現像剤容器140、現像剤ロール141、第1撹拌搬送部材142、第2撹拌搬送部材143、撹拌用磁石144、および、移送機構145を備えている。なお、図2では、現像剤容器140のカバーと現像ロール141とを除いた状態が示されており、現像剤容器140の位置が破線で示されている。
【0032】
現像剤容器140は現像剤を収容している。現像剤容器140の内部は、現像ロール141に並行して延びた仕切壁1401によって第1収容室140aと第2収容室140bとに仕切られている。第1収容室140aは現像ロール141に隣り合っており、第2収容室140bは第1収容室140aを挟んで現像ロール141の反対側に配置されている。第1収容室140aには第1撹拌搬送部材142が配備され、第2収容室140bには第2撹拌搬送部材143が配備されている。
【0033】
2つの撹拌搬送部材142,143は、画像形成装置1における前後方向DEすなわち、現像ロール141が延びる延伸方向に延びている。撹拌搬送部材142,143は、それぞれ、現像ロール141に並行して延びる回転軸1421,1431と回転軸1421,1431の周囲に設けられた螺旋状の螺旋羽根1422,1432とを備えている。第2撹拌搬送部材143の螺旋羽根1432は、磁性材料で形成されている。具体的には、2つの撹拌搬送部材142,143の回転軸1421,1431および螺旋羽根1422,1432が磁性材料で形成されている。ここで磁性材料とは、磁石を近づけるとこの磁石との間に引力を生じる材料であり、常磁性または強磁性を有する材料である。磁性材料は、例えば、鉄または鉄の合金である。
【0034】
第1撹拌搬送部材142および第2撹拌搬送部材143は、それぞれの回転軸1421,1431の両端部分が回転自在に支持されている。ここで、第2撹拌搬送部材143は、螺旋羽根1432の外周縁と、第2収容室140bの内壁1403のとの間に、現像剤が通過する程度の隙間Gを有するように配置されている。隙間Gは、通過する現像剤のトナーと磁性キャリアとが接触し帯電量が最大となる程度に狭められている。隙間Gの寸法は1mm以下である。回転軸1421,1431の一端は、図示しないモータからの駆動力を伝達するギア146に接続されている。現像ロール141および2つの撹拌搬送部材142,143は、図示しないモータの駆動を受けて回転する。
【0035】
第1撹拌搬送部材142は、回転軸1421の軸回りに回転することによって、第1収容室140aの現像剤を第1搬送方向Dに搬送する。第2撹拌搬送部材143は、回転軸1431の軸回りに第1撹拌搬送部材142と同じ方向に回転することによって、第2収容室140bの現像剤を第1搬送方向とは逆の第2搬送方向Eに搬送する。第1撹拌搬送部材142および第2撹拌搬送部材143が現像剤を搬送する搬送速度は、第1撹拌搬送部材142および第2撹拌搬送部材143の回転速度と、螺旋羽根1422,1432のピッチの積に基づいている。第1収容室140aと第2収容室140bとを仕切る仕切壁1401には、排出窓1401a,1401bが設けられており、現像剤容器140に収容されている現像剤は排出窓1401a,1401bを経由して仕切壁1401の周囲を循環する。
【0036】
現像ロール141は、第1収容室140aから、トナーおよび磁性キャリアを含む現像剤を感光体11Y(図1参照)の表面に搬送する。現像ロール141は、円筒状であり、現像ロール141の内部には、磁石1411が配置されている。この磁石1411は現像剤容器140に固定されており、トナー粒子が付着した磁性キャリアを現像ロール141に吸着させるためのピックアップ磁極や、現像剤を現像領域で穂立ちさせる磁極を有する。また、現像ロール141には、現像ロール141上のトナー粒子に対して静電気力が作用するように電圧が印加されている。
【0037】
内部にマグネットロールが配備された円筒状の現像ロール141は、その表面に現像剤を保持して現像剤を感光体11Yの表面に搬送するものであり、本発明にいう現像剤搬送部の一例に相当する。また、感光体11Yが、本発明にいう被現像体の一例に相当する。なお、感光体11Yに吸着されなかったトナーや磁性キャリアは、第1収容室140aに戻る。また、トナーカートリッジ18Yからは、消費された量に応じた量のトナーが現像剤容器140に供給されてくる。
【0038】
現像剤に含まれるトナーと磁性キャリアとは、第1撹拌搬送部材142および第2撹拌搬送部材143によって撹拌されることで、互いに逆の極性に帯電する。ここで、トナーの帯電量が不足した場合には、トナーが感光体11Yの静電的な潜像に付着せずクラウドとなるおそれがある。また、クラウドとなって浮遊したトナーが、感光体11Yの静電潜像における背景部分に付着する、かぶりが生じるおそれがある。本実施形態における撹拌用磁石144および移送機構145は、現像剤の撹拌量を増大する。
【0039】
[撹拌用磁石]
撹拌用磁石144は、現像剤容器140の、前後方向DEに広がる外壁1402に対向して配置された永久磁石である。撹拌用磁石144は、スピン用モータ1441に接続されており、外壁1402の面と交わる軸を中心として回転する。より詳細には、撹拌用磁石144は軸を中心として自転する。撹拌用磁石144は、本発明にいう磁石の一例に相当する。
【0040】
移送機構145は、リードスクリュー1451、スライダ1452、およびスライド用モータ1453を備えている。リードスクリュー1451は、現像剤容器140の外壁1402に沿って延びた丸棒であり、周面にねじが形成されている。リードスクリュー1451は、第1撹拌搬送部材142および第2撹拌搬送部材143の回転軸と並行して延び、現像剤容器140に回転自在に支持されている。スライダ1452は、リードスクリュー1451とねじ係合し、リードスクリュー1451に支持されている。より詳細には、スライダ1452には、雌ネジが形成された穴が設けられており、この穴をリードスクリュー1451が貫通している。スライダ1452には、撹拌用磁石144が取り付けられたスピン用モータ1441が固定されている。スライド用モータ1453は制御部1A(図1参照)の制御に応じてリードスクリュー1451を回転駆動する。スライド用モータ1453がリードスクリュー1451を正逆に回転させることで、スライダ1452を往復移動させる。これによって、スライダ1452は、撹拌用磁石144を現像剤容器140の外壁1402に沿って、第2撹拌搬送部材143が延びる前後方向DEに移送する。撹拌用磁石144は、第2撹拌搬送部材143のほぼ全長に亘って往復する。
【0041】
スピン用モータ1441は、移動の向きに応じて回転速度を変えることで、撹拌用磁石144の移送速度を変える。撹拌用磁石144は往復移動の双方の向きにおいて、第2撹拌搬送部材143の回転による現像剤の搬送速度に対する相対速度が、同じとなるように移送される。つまり、第2撹拌搬送部材143による搬送速度がVの場合、撹拌用磁石144が第2撹拌搬送部材143による搬送の向き、すなわち第2搬送方向Eに移送される場合(正方向)の速度をV+αとする。また、撹拌用磁石144が第2撹拌搬送部材143による搬送の向きと逆向きすなわち第1搬送方向Dに移送される場合(逆方向)の速度をV−αとする。例えば、第2撹拌搬送部材143による搬送速度が25mm/sの場合には、撹拌用磁石144の正方向の速度を75mm/sとし、逆方向の速度を25mm/sとする。この場合、第2撹拌搬送部材143の搬送に対する相対速度αは、正逆双方向ともに50mm/sとなる。
【0042】
現像剤容器140の外壁1402に対向した撹拌用磁石144は、磁力によって現像剤容器140内の現像剤を引き付ける。現像剤容器140の内壁1403のうち、撹拌用磁石144に相応する位置では、撹拌用磁石144の磁力によって磁性キャリアが穂立ち状態、すなわち内壁1403に数珠つなぎに繋がって立ち上がった状態となる。
【0043】
撹拌用磁石144が移送されると、撹拌用磁石144は現像剤容器140で穂立ち状態に集まった磁性キャリアを引き連れて移動する。撹拌用磁石144は、第2撹拌搬送部材143の搬送速度に対し先に説明した予め定めた相対速度で移送されるため、撹拌用磁石144に引き連れられた磁性キャリアの穂立ちが、第2撹拌搬送部材143の螺旋羽根1432に当たって崩れ、磁性キャリアが近傍のトナーを巻き込みながら、螺旋羽根1432と内壁1403との間の隙間Gを通り抜ける。このとき、磁性キャリアとトナーが撹拌され互いに逆極性に帯電する。
【0044】
撹拌用磁石144は、前後方向DEに移送されることにより、現像剤容器140内の磁性キャリアおよびトナーを螺旋羽根1432に当て、隙間Gを強制的に通過させる。このため、仮に、撹拌用の磁石が、前後方向に延びる軸を中心として回転する構成の場合と比較して、磁性キャリアとトナーとの摩擦が大きく、磁性キャリアとトナーの帯電量が増大する。
【0045】
また、撹拌用磁石144は、スピン用モータ1441に接続されており、外壁1402の面と交わる軸を中心として自転する。ため、撹拌用磁石144に引き付けられた磁性キャリアも同じ軸を中心として回転するように移動する。このことによって、磁性キャリアが近傍のトナーとさらに撹拌される。したがって、撹拌用磁石144が自転しない場合と比較して、帯電量が増大する。
【0046】
また、螺旋羽根1432は、磁性材料で形成されているため、撹拌用磁石144が近づくのに従い、磁性を帯びる。このため、磁性キャリアが螺旋羽根1432からの引力を受ける。隙間G近傍では、螺旋羽根1432に引かれる磁性キャリアと撹拌用磁石144に引かれる磁性キャリアとの間に、トナーを巻き込んで強い摩擦を生じる。したがって、帯電量が、螺旋羽根1432が磁性材料で形成されていない場合と比較して増大する。
【0047】
[実施例]
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
まず、上記実施形態で説明した現像装置において、現像ロール141は停止した状態で、第1撹拌搬送部材142、第2撹拌搬送部材143、および移送機構145を動作させ、トナーの帯電量を測定した。なお、スピン用モータ1441については停止状態とした。なお、第1撹拌搬送部材142および第2撹拌搬送部材143による搬送速度は、25mm/sとした。また、移送機構145による撹拌用磁石144の移送速度は、正方向において75mm/s、逆方向において25mm/sとした。この場合、第2撹拌搬送部材143の搬送に対する撹拌用磁石144の相対速度は、正逆双方向ともに50mm/sとなる。
【0049】
ここで、第2収容室140bの内壁1403と螺旋羽根1432との間の隙間Gが、0.2mm,0.4mm,0.6mm,1mm,1.5mm,2mm,3mmとなる、複数種類の第2撹拌搬送部材のそれぞれについて帯電量を測定した。また、撹拌用磁石144の種類についても、2200ガウス,3200ガウス,4200ガウスのそれぞれについて帯電量を測定した。
【0050】
トナーの帯電量の測定では、現像装置を動作させた後、現像剤を一部取り出し、帯電測定器によって、単位質量あたりの帯電量TV[μC/g]、および、現像剤中のトナー割合Tnを測定する。次に、トナー帯電量ATを下式
AT = (トナー割合Tn*100 + α)*TV
によって算出した。ここで、αは、現像剤の種類ごとに異なる帯電量TVの測定値のずれを補正する係数である。本実施形態ではα=4として算出した。下表にトナー帯電量を示す。また、図5は、トナー帯電量を示すグラフである。
【0051】
【表1】

【0052】
表に示すように、内壁1403と螺旋羽根1432との間の隙間Gの寸法が同じであれば、撹拌用磁石144の磁力が強い方が、トナー帯電量が大きい。また、隙間Gの寸法が小さいほどトナー帯電量が増加する傾向がある。ただし、いずれの磁力でも、隙間Gの寸法が1mm以下では、トナー帯電量の増加が飽和する。すなわち、いずれの磁力でも、隙間Gの寸法が1mm以下で、トナー帯電量が最大値となる。
【0053】
特に、撹拌用磁石144の磁力が4200ガウス以上では、隙間Gの寸法が1mm以下で、トナー帯電量が450以上となる。
【0054】
[画像評価]
次に、上記実施形態で説明した構成の画像形成装置において、用紙上に画像を形成した場合の画質を評価した。また、現像装置内の現像剤におけるトナー帯電量を測定した。画質の評価は、用紙上の、本来はトナーが存在ない背景部分において、トナーがどの程度付着しているか、すなわち「かぶり」の程度を検査した。
【0055】
現像装置については、撹拌用磁石の磁力が4200ガウスの場合について、内壁と螺旋羽根との間の隙間Gが、1mm,1.5mm,3mm,0.5mm,0.2mのものを、実施例1〜5とし、磁力が3200ガウスの場合について、内壁と螺旋羽根との間の隙間Gが、1mm,1.5mmのものを、実施例6,7とした。またさらに、撹拌用磁石を取り除いた比較例1(0ガウス)についても評価を行った。
【0056】
下表にトナー帯電量および「かぶり」の評価結果を示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表に示すように、撹拌用磁石を有する実施例1〜5は、撹拌用磁石を取り除いた比較例1に比べ、高いトナー帯電量が得られた。また、比較例1では、画像形成装置の画質基準に照らして実用上問題となるカブリが認められたが、実施例1〜5では、実用上問題となるカブリは視認されなかった。特に、撹拌用磁石144の磁力が4200ガウス以上、かつ、隙間Gの寸法が1mm以下の場合である、実施例1,4,5では、いずれもトナー帯電量が450であり、また、カブリは視認されなかった。
【0059】
なお、上述した実施形態では、本発明にいう撹拌用磁石の例として、永久磁石が示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、撹拌用磁石は、例えば、電磁石であってもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、本発明にいう画像形成装置の例としてタンデム型のカラープリンタを示したが、本発明にいう画像形成装置はこれに限られず、例えば、中間転写ベルトを有しないモノクロ専用プリンタであってもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、本発明にいう画像形成装置の例としてプリンタを示したが、本発明にいう画像形成装置はプリンタに限られず、例えば、画像読取装置で読み取られたデータに基づいて画像を形成する複写機やファクシミリであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
11Y 感光体
14Y 現像装置
140 現像剤容器
1402 外壁
1403 内壁
141 現像ロール
142,143 撹拌搬送部材
1431 回転軸
1432 羽根
144 撹拌用磁石
1441 スピン用モータ
145 移送機構
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーおよび磁性体を含む現像剤を収容する現像剤容器と、
回転軸および該回転軸の回りに設けられた螺旋状の羽根を有し、前記現像剤容器内に、該現像剤容器の内壁と該羽根との間に隙間をあけて配置され、回転することにより該現像剤容器内の現像剤を撹拌しながら該回転軸の延伸方向に搬送する搬送部材と、
前記現像剤容器の、前記延伸方向に広がる外壁に対向して配置された、該現像剤容器内の現像剤を磁力で引き付ける磁石と、
前記磁石を前記外壁に沿って前記延伸方向に移送する移送機構とを備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁石が、前記外壁の面と交わる軸を中心として回転するものであることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記羽根が磁性体材料からなることを特徴とする請求項1または2記載の現像装置。
【請求項4】
静電潜像が表面に形成され該静電潜像がトナーで現像される被現像体と、
前記被現像体をトナーで現像する現像装置とを備え、
前記現像装置が、トナーおよび磁性体を含む現像剤を収容する現像剤容器と、
回転軸および該回転軸の回りに設けられた螺旋状の羽根を有し、前記現像剤容器内に、該現像剤容器の内壁と該羽根との間に隙間をあけて配置され、回転することにより該現像剤容器内の現像剤を撹拌しながら該回転軸の延伸方向に搬送する搬送部材と、
前記現像剤容器の、前記延伸方向に広がる外壁に対向して配置された、該現像剤容器内の現像剤を磁力で引き付ける磁石と、
前記磁石を前記外壁に沿って前記延伸方向に移送する移送機構とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64938(P2013−64938A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204543(P2011−204543)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】