説明

現像装置の梱包方法

【課題】細長い開口部を有するケーシングと、開口部から一部が露出する現像ローラと、ケーシング内に充填された現像剤とを備えた現像装置を、外部衝撃が加わったときでも現像装置から現像剤が漏れ出すことがなく、且つケーシング等がクリープ変形することがないように梱包する方法を提供する。
【解決手段】カバー部材2で開口部12を覆った状態で現像装置1を梱包箱3に収納し、カバー部材2と梱包箱3との間に押圧部材4a,4bを介装する。そして、カバー部材2の凸部21と、押圧部材4a,4bの凹部43とが係合した状態とする。外部から衝撃が加わると、現像装置1が移動してカバー部材2の凸部21が押圧部材4の側端部に載り上げる。すると、カバー部材2は現像装置1の方向に押圧されて、ケーシング11の開口部12を確実に封止し、現像装置1からの現像剤の漏れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像装置の梱包方法に関し、より詳細には現像ローラの露出部分をカバー部材で覆って梱包する現像装置の梱包方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンター、複写機及びこれらの機能を合わせ持つ複合機などの電子写真方式の画像形成装置では、感光体ドラムなどの静電潜像担持体の表面に静電潜像が形成された後、現像装置からトナーを供給して静電潜像を可視像化する。そして、このトナー像を用紙等の記録媒体に転写した後、加熱・加圧して記録媒体に溶融定着させている。
【0003】
現像装置は、感光体ドラムに対して離隔対向する現像ローラを備え、かかる現像ローラの表面に現像剤を担持させて、感光体ドラム表面の静電潜像にトナーを供給する。現像方式は一成分系現像方式と二成分系現像方式に大別される。一成分系現像方式は、現像剤としてトナーのみを用い、現像ローラにトナーを担持させて感光体ドラム表面の静電潜像にトナーを供給する方式である。二成分系現像方式は、キャリアとトナーとからなる現像剤を用い、現像ローラ表面にキャリア粒子が穂状に連なった磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを感光体ドラム表面に接触させて磁気ブラシ表面に付着しているトナーを静電潜像に供給する方式である。
【0004】
このような現像装置を輸送・保管する場合、例えば図10に示すように、現像ローラ13が露出している開口部12をカバー部材2’で覆い、現像装置1の長手方向両端部に発泡スチロールなどの緩衝部材5a,5bを嵌め入れて梱包箱3に収納していた。
【0005】
ところが、輸送中などに誤って梱包箱1を落下させた場合など梱包箱1に大きな衝撃が加わった場合、現像装置1から現像剤が漏れ出すことがあった。
【0006】
そこで、例えば特許文献1では、巻回した帯状体によって弾性部材を介してケーシングを押圧して、ケーシングの下顎部のがたつきを抑制し、現像ローラとリカバリーフィルムと間に隙間が生じないようにして、現像剤の漏れを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-47918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記提案技術では外部衝撃の有無にかかわらずケーシングに押圧力が常に付与されているので、ケーシングがクリープ変形するおそれがある。
【0009】
本発明は、外部衝撃が加わったても現像装置から現像剤が漏れ出すことがなく、しかもケーシング及びカバー部材がクリープ変形することがない現像装置の梱包方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、細長い開口部を有するケーシングと、前記開口部から一部が露出する現像ローラと、ケーシング内に充填された現像剤とを備えた現像装置の梱包方法であって、前記開口部をカバー部材で覆った状態で梱包箱に収納し、前記梱包箱と前記カバー部材との間に押圧部材を介装すると共に、前記カバー部材及び前記押圧部材の一方に凹部を形成し、他方に凸部を形成して、両者を係合させることを特徴とする現像装置の梱包方法が提供される。
【0011】
現像装置からの現像剤の漏れを一層効果的にする観点からは、前記押圧部材の介装位置を前記カバー部材の少なくとも長手方向両端部とするのが好ましい。
【0012】
また、外部衝撃が加わった時のみ、押圧部材によってカバー部材に押圧力がかかるようにする観点からは、前記凸部の形状を、先端に向かって断面積が連続して減少する形状とするのが好ましい。より具体的には凸部の形状を四角錐台又は円錐台とするのが好ましい。さらに、前記押圧部材として弾性を有する部材を用いるのが好ましい
【0013】
そしてまた、前記押圧部材を前記梱包箱の内面に固定するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る現像装置の梱包方法によれば、通常はカバー部材に力は加わらず、外部から衝撃を受けたときのみケーシングの開口部を封鎖する方向の力がカバー部材に加わるので、現像装置から現像剤が漏れ出すことがなく、しかもカバー部材及びケーシングがクリープ変形することもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】現像装置の梱包手順を示す斜視図である。
【図2】図1の梱包方法に用いる押圧部材の斜視図である。
【図3】梱包箱内の現像装置の梱包状態を示す斜視図である。
【図4】凸部と凹部との係合状態を示す図である。
【図5】梱包箱に外部衝撃が加わったときの現像装置の動き及び凸部と凹部との係合状態を示す図である。
【図6】凸部の他の形状例を示す斜視図である。
【図7】現像装置の他の梱包方法を示す図である。
【図8】図7の梱包方法に用いる押圧部材の斜視図である。
【図9】梱包箱に外部衝撃が加わったときの凸部と凹部との係合状態を示す図である。
【図10】従来の現像装置の梱包手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る現像装置の梱包方法について図に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0017】
図1に現像装置の梱包手順を示す斜視図を示す。現像装置1は、細長い開口部12を有するケーシング11と、開口部12から一部が露出する回転自在の現像ローラ13と、ケーシング11内に充填された現像剤(不図示)とを備える。ケーシング11の開口部12の全体を覆うように装着されるカバー部材2は、その外側面の長手方向に離隔した2箇所に上下2段に上面視略三角形状の4つの凸部21a,21b,21c,21d(以下、総称して「凸部21」と記すことがある)を有する。なお、凸部21の長手方向の形成位置は、カバー部材2の長手方向の両端部の他、中央部などに形成してももちろん構わないが、現像装置1から現像剤が漏れ出すのを防止する観点からは、少なくともカバー部材2の長手方向両端部に形成することが推奨される。また、凸部21の短手方向の形成位置は、カバー部材2を現像装置1に装着したときに、上下2段の凸部21aと凸部21bとの間及び凸部21cと凸部21dとの間に現像ローラ13の回転軸が位置するように形成するのが好ましい。梱包箱3は、現像装置1よりも若干大きい容積を有し、現像装置1を収納したときに、カバー部材2の凸部21と対向する位置に2つの押圧部材4a,4b(以下、総称して「押圧部材4」と記すことがある)が固着されている。
【0018】
図2に示すように、押圧部材4は、基部41と、基部41の向かい合う両端部から延出した延出部42a,42bとを有し、側面視において略コ字状を呈する。そして、延出部42a,42bの先端辺の略中央部には、上面視において略三角形状の凹部43a,43b(以下、総称して「凹部43」と記することがある)が形成されている。押圧部材4の材質に特に限定はないが、後述するように、外部衝撃が加わって凸部21と凹部43との係合が外れた後、凸部21と凹部43とが元の状態に復帰しやすくする観点からは、ゴム材などの弾性を有するものの使用が望ましい。
【0019】
図1に示すように、現像装置1を梱包箱3に収納する際は、ケーシング11の開口部12にカバー部材2を取り付ける。そして、現像装置1の長手方向の両端部に発泡スチロールからなる緩衝部材5a,5bを嵌め入れた後、押圧部材4の凹部43の直上にカバー部材2の凸部21が位置するように現像装置1を配置し、現像装置1を下方に移動させて梱包箱3に収納する。なお、緩衝部材5a,5bは、発泡スチロールの他、段ボールなど従来公知のものが使用できる。
【0020】
図3に、現像装置1を梱包箱3に収納した状態を示す斜視図を示す。なお、この図では、本発明の構成を理解しやすいように梱包箱3を省略している。現像装置1を梱包箱3に収納すると、カバー部材2の凸部21が押圧部材4の凹部43に係合する。図4に、カバー部材2の凸部21と押圧部材4の凹部43とが係合した状態図を示す。凸部21と凹部43とは、若干の隙間をもって係合しているか、又は軽く接触する程度に係合している。したがって、押圧部材4からカバー部材2に大きな力が加わることがなく、カバー部材2がクリープ変形するおそれはない。凹部43及び凸部21の傾斜面の角度θ1及びθ2としては15°〜30°の範囲が好ましい。また、凹部43の深さd1及び凸部21の突出量d2は5mm〜10mmの範囲が好ましい。
【0021】
以上のようにして現像装置1を収納した梱包箱3に対して、外部から衝撃が加わった場合の現像装置1の状態について説明する。図5(a)は通常状態の梱包箱であって、前述のように、カバー部材2の凸部21と押圧部材4の凹部43とが係合した状態である。図5(b)に示すように、左方向から梱包箱3に衝撃が加わると、梱包箱3内で現像装置1は左方向に移動し緩衝部材5bが変形する。また同時に、現像装置1が移動すると、カバー部材2の凸部21が押圧部材4の凹部43の傾斜面に沿って移動し押圧部材4の側端部に載り上げ、カバー部材2は凸部21を介して現像装置1の方向に押圧される。これによってカバー部材2と現像装置1とが強く接触して、カバー部材2がケーシング11の開口部12を確実に封止し現像装置1からの現像剤の漏れが防止される。押圧部材4によるカバー部材2の押圧力は、凹部43及び凸部21の傾斜角度θ1,θ2や、凹部43の深さd1、凸部21の突出量d2により調整でき、好適範囲としては上述のとおりである。
【0022】
そして、外部から衝撃があった後は、図5(c)に示すように、緩衝部材5bが弾性力で元の状態に戻り、カバー部材2の凸部21と押圧部材4の凹部43とは再び係合した状態に戻る。これにより、現像装置1の方向への押圧部材4によるカバー部材2の押圧は解除され、長時間にわたって押圧されることによるカバー部材2の変形が回避される。このとき、押圧部材4が弾性を有していると、凸部21と凹部43とが再び係合した状態に戻りやすくなり好ましい。
【0023】
カバー部材2に形成する凸部の形状としては、先端に向かって断面積が連続して減少する形状、すなわち先端に向かって傾斜する面を有する形状が好ましい。より詳細には、衝撃が加わるおそれのある方向に傾斜面が形成された形状が好ましい。例えば、二方向から衝撃が加わるおそれがある場合には、前記実施形態のように上面視において三角形状の凸部21とすればよい。また、衝撃が加わる方向が特定できない場合には、各方向に傾斜面を有する形状とするのがよい。例えば図6(a)に示すような四角錐台22や、同図(b)に示すような円錐台23とすればよい。これら凸部の傾斜面の角度や突出量の好適範囲は前記と同じである。なお、押圧部材4に形成する凹部43の形状は、凸部の形状に合わせた形状とする。
【0024】
図7に、本発明に係る梱包方法の他の実施形態を示す。この図に示す現像装置の梱包方法が前記実施形態の梱包方法と異なる点は、カバー部材2に凹部24を形成し、押圧部材6に凸部63を形成した点にある。その他の構成については前記実施形態の梱包方法と同じであるのでここでは説明は省略する。
【0025】
カバー部材2の凹部24は、前記実施形態と同様に、長手方向の両端部に上下2段に形成されている。一方、押圧部材6は、図8に示すように、基部61と、基部61の向かい合う両端部から延出した延出部62a,62bとを有し、側面視において略コ字状を呈する。そして、延出部62a,62bの先端辺の略中央部には、上面視において略三角形状の凸部63a,63bが形成されている。押圧部材6の材質に特に限定はないが、ゴム材などの弾性を有するものが望ましい。
【0026】
図9に示すように、現像装置1が梱包されたこのような梱包箱3に対して衝撃が加わると、梱包箱3内で現像装置1が移動して、カバー部材2の凹部24と押圧部材6の凸部63との係合状態が解除されて、押圧部材6の凸部63がカバー部材2に当接し、カバー部材2は現像装置1の方向に押圧される。これによって、前記実施形態と同様に、カバー部材2と現像装置1とが強く接触して、カバー部材2がケーシング11の開口部12を確実に封止し現像装置1からの現像剤の漏れが防止される。押圧部材6によるカバー部材2の押圧力は、凹部24及び凸部63の傾斜角度や、凹部24の深さ、凸部63の突出量により調整できることは前記実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る現像装置の梱包方法によれば、現像装置から現像剤が漏れ出すことがなく、しかもカバー部材及びケーシングがクリープ変形することもなく有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 現像装置
2 カバー部材
3 梱包箱
4 押圧部材
6 押圧部材
11 ケーシング
12 開口部
13 現像ローラ
21,22,23 凸部
21a,21b,21c,21d 凸部
24 凹部
43,43a,43b 凹部
63,63a,63b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い開口部を有するケーシングと、前記開口部から一部が露出する現像ローラと、ケーシング内に充填された現像剤とを備えた現像装置の梱包方法であって、
前記開口部をカバー部材で覆った状態で梱包箱に収納し、前記梱包箱と前記カバー部材との間に押圧部材を介装すると共に、前記カバー部材及び前記押圧部材の一方に凹部を形成し、他方に凸部を形成して、両者を係合させることを特徴とする現像装置の梱包方法。
【請求項2】
前記押圧部材の介装位置を前記カバー部材の少なくとも長手方向両端部とする請求項1記載の現像装置の梱包方法。
【請求項3】
前記凸部の形状を、先端に向かって断面積が連続して減少する形状とする請求項1又は2記載の現像装置の梱包方法。
【請求項4】
前記凸部を四角錐台又は円錐台とする請求項3記載の現像装置の梱包方法。
【請求項5】
前記押圧部材として弾性を有する部材を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の現像装置の梱包方法。
【請求項6】
前記押圧部材を前記梱包箱の内面に固定する請求項1〜5のいずれかに記載の現像装置の梱包方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−93569(P2012−93569A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241154(P2010−241154)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】