説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】層規制部材の動作時にも真直度を維持できるとともに、磁性体と非磁性体との段差や浮きの懸念が無く、簡易な工程で製造することが可能な現像装置、及びこれを備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、キャリアとトナーとからなる現像剤を収容するハウジング110と、ハウジング110に回転自在に設けられた円筒状の現像スリーブ123と、先端面が現像スリーブ123の周面に対して所定の間隔をおいて位置するようにハウジング110に配設された層規制部材160と、を備え、層規制部材160は、基材となる非磁性体層161と、キャリアによるトナーの帯電を補助する樹脂層165と、現像剤の穂切りを規制する磁性体層163とを積層した構造を有する、現像装置100が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式により2成分現像剤を用いて静電潜像を可視化する現像装置、及び、この現像装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、静電潜像を担持した潜像担持体にトナーとキャリアからなる2成分現像剤を搬送し、現像剤担持体にて現像を行う現像装置がある。このような現像装置には、現像剤担持体上の現像剤量を規制する層規制部材が設けられているが、この層規制部材は、非磁性体の基材に磁性体を溶接やビス等で貼り付けることにより形成されることが多い(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、層規制部材は、現像剤担持体表面の現像剤の薄層を如何に安定して形成するかを基準として開発されており、層規制部材を形成する際には、現像剤担持体上に安定した層厚を維持できるように、層規制部材の真直度や磁性体と非磁性体との段差や浮き等の度合いが厳しく規定されている。一方で、前述したように、層規制部材を非磁性体の基材に磁性体を溶接やビス等で貼り付けることにより形成した場合、溶接歪みや締め付け歪み等が原因で高い真直度を実現しにくいことが、従来から問題として挙げられていた。
【0004】
このような問題、すなわち、非磁性体に磁性体を溶接等で張り付ける技術により発生する層規制部材の真直度の低さの問題を改善するために、基材となる非磁性体として熱可塑性樹脂を使用して磁性体をインサート成型したり、非磁性体の先端に磁性体(フェライト微粒子)を含有したコーティング剤によりマスキングした領域のみをコーティングしたりすることにより、非磁性体と磁性体とを一体化させた層規制部材を形成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2では、インサート成型またはコーティングにより非磁性体と磁性体とを一体的に関連させることにより、真直度の改善を図ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−98738号公報
【特許文献2】特開2006−184451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の技術では、非磁性体として熱可塑性樹脂を使用しているため、静的な(層規制部材が動作していない状態での)真直度は改善できるが、現像剤担持体上の現像剤層の厚みを規制する際に、非磁性体として使用した樹脂の強度不足により、層規制部材の撓みが発生する、という問題があった。そして、この層規制部材の撓みにより、現像剤層の層厚にばらつきが生じ、形成された画像における画像濃度のムラ等も誘発していた。
【0007】
また、特許文献2には、非磁性体の基材に対し、現像ローラの対向部にマスキングして磁性体をコーティングしたものも挙げられているが、マスキング等により製造工数が大幅に増加し、さらには、コーティング剤の経時劣化により現像剤の層厚の維持性が低下したり、非磁性体から剥離したコーティング剤が現像剤に混入し、画像形成時にリークによる画質欠陥等が発生するなどの問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、層規制部材の動作時にも真直度を維持できるとともに、磁性体と非磁性体との段差や浮きの懸念が無く、簡易な工程で製造することが可能な現像装置、及びこれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、キャリアとトナーとからなる現像剤を収容するハウジングと、前記ハウジングに回転自在に設けられた円筒状の現像スリーブと、先端面が前記現像スリーブの周面に対して所定の間隔をおいて位置するように前記ハウジングに配設された層規制部材と、を備え、前記層規制部材は、基材となる非磁性体層と、前記キャリアによる前記トナーの帯電を補助する樹脂層と、前記現像剤の穂切りを規制する磁性体層とを積層した構造を有する、現像装置が提供される。
【0010】
このように、本発明に係る層規制部材は、樹脂層を有しているため、層規制部材の動作時の真直度を維持できるだけでなく、樹脂層にキャリアによるトナーの帯電補助機能を持たせることができる。従って、帯電レベルの低いトナーの飛散量を低減できる。
【0011】
ここで、前記現像装置において、前記樹脂層が、前記キャリアの表面を被覆するコート材料と同じ材料からなることが好ましい。このように、樹脂層がキャリアのコート材料と同材料からなることにより、キャリアと同程度の帯電量をトナーに付与することができる。
【0012】
また、前記現像装置において、前記樹脂層が、前記層規制部材を構成する層のうち、前記現像剤の搬送方向の最上流側に位置することが好ましい。このように、樹脂層が、現像剤の搬送方向の最上流側に位置することにより、樹脂層とトナーとの接触面積が広くなるため、より多くの帯電量をトナーに付与することができる。
【0013】
また、前記現像装置において、前記層規制部材が、前記現像剤の搬送方向の下流側から、前記非磁性体層、前記磁性体層、前記樹脂層の順に積層された3層構造を有することが好ましい。このように、層規制部材が、現像剤の搬送方向の下流側から、非磁性体層、磁性体層、樹脂層の順に積層された3層構造を有することにより、樹脂層とトナーとの接触面積が広くなるとともに、層規制部材の形成の際のプレス加工の加工性をより向上させることができる。
【0014】
また、前記現像装置において、前記樹脂層が、前記キャリアの平均粒径以上の厚みを有することが好ましい。このように、樹脂層がキャリアの平均粒径以上の厚みを有することにより、樹脂層によるキャリアへの帯電付与をより確実に行うことができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、前述した現像装置を備える、画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非磁性体層と磁性体層と樹脂層とを接着してプレス加工して層規制部材を形成することで、層規制部材の動作時にも真直度を容易に維持できるとともに、磁性体と非磁性体との段差や浮きの懸念が無く、簡易な工程で製造することが可能な現像装置、及びこれを備える画像形成装置を提供することができる。また、本発明によれば、樹脂層に、現像剤の帯電を補助する機能を持たせることができる。
【0017】
従って、本発明に係る層規制部材が設けられた現像装置、及びこれを備える画像形成装置によれば、現像剤層の層厚を安定して維持できるとともに、帯電が不足したトナーが現像装置内で飛散することによる装置内汚染やかぶり等の現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】同実施形態に係る現像ユニットの構成を示す説明図である。
【図3A】同実施形態に係る層規制部材の構成例を示す説明図である。
【図3B】同実施形態に係る層規制部材の構成例を示す説明図である。
【図3C】同実施形態に係る層規制部材の構成例を示す説明図である。
【図4】同実施形態における樹脂層の厚みに対する現像剤の帯電量の変化の一例を示すグラフである。
【図5】同実施形態におけるトナー/キャリア混合比とトナー飛散量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
まず、図1に基づいて、本発明の好適な実施形態に係る現像装置の一例としての現像ユニット100を備える画像形成装置1の概略構成及び動作について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す説明図である。
【0021】
<1.画像形成装置の概略構成及び動作>
(1−1.画像形成装置の概略構成)
本実施形態に係る現像ユニット100は、例えば、図1に示すようなタンデム方式の画像形成装置に設けることができる。画像形成装置1は、図1に示すように、筐体5内に設けられた、記録媒体搬送ユニット10と、中間転写体として転写ベルト20を備える転写ユニットと、静電潜像を担持する感光体ドラム30と、感光体ドラム30上に形成された静電潜像を現像する現像ユニット100と、定着ユニット40とから構成される。
【0022】
記録媒体搬送ユニット10は、最終的に画像が形成される記録媒体を収容するとともに、記録媒体を記録媒体搬送路上に搬送する。記録媒体は例えば用紙Pであり、カセットに積層して収容される。記録媒体搬送ユニット10は、用紙Pに転写されるトナー像が形成されて二次転写領域に到達するタイミングで、用紙Pを二次転写領域に到達させる。
【0023】
転写ユニットは、後述する現像ユニット100により形成されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写領域に搬送する。転写ユニットは、転写ベルト20と、転写ベルト20を懸架する懸架ローラ20a、20b、20c、20dと、感光体ドラム30とともに転写ベルト20を挟持する一次転写ローラ22と、懸架ローラ20dとともに転写ベルト20を挟持する二次転写ローラ24とからなる。
【0024】
転写ベルト20は、懸架ローラ20a、20b、20c、20dにより循環移動される無端状のベルトである。一次転写ローラ22は、転写ベルト20の内周側から感光体ドラム30を押圧するように設けられる。一方、二次転写ローラ24は、転写ベルト20の外周側から懸架ローラ20dを押圧するように設けられる。また、図1には示していないが、転写ユニットは、転写ベルト20に付着したトナーを除去するベルトクリーニング装置などをさらに備えていてもよい。
【0025】
感光体ドラム30は、周面に画像が形成される静電潜像担持体であり、例えばOPC(Organic PhotoConductor)からなる。本実施形態に係る画像形成装置1は、カラー画像を形成可能な装置であり、例えばマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの各色に対応して、4つの感光体ドラム30が転写ベルト20の回転方向に設けられている。各感光体ドラム30の周上には、図1に示すように、帯電ローラ32と、露光ユニット34と、現像ユニット100と、クリーニングユニット38とが設けられている。
【0026】
帯電ローラ32は、感光体ドラム30の表面を所定の電位に均一に帯電する。露光ユニット34は、帯電ローラ32により帯電した感光体ドラム30の表面を形成する画像に応じて露光する。これにより、感光体ドラム30の表面のうち露光ユニット34により露光された部分の電位が変化し、静電潜像が形成される。現像ユニット100は、トナータンク36(36M、36Y、36C、36B)により供給されたトナーで感光体ドラム30に形成された静電潜像を現像し、トナー像を生成する。なお、現像ユニット100の詳細な構成については後述する。
【0027】
クリーニングユニット38は、感光体ドラム30上に形成されたトナー像が転写ベルト20に一次転写された後に、感光体ドラム30上に残存するトナーを回収する。クリーニングユニット38としては、例えばクリーニングブレードを設け、感光体ドラム30の周面にクリーニングブレードを当接させることにより、感光体ドラム30上の残トナーを削ぎ落とすようにすることができる。なお、感光体ドラム30の周上には、感光体ドラム30の回転方向において、クリーニングユニット38と帯電ローラ32との間に、感光体ドラム30の電位をリセットする除電ランプ(図示せず。)を配置することもできる。
【0028】
定着ユニット40は、転写ベルト20から記録媒体へ二次転写されたトナー像を記録媒体に付着させ、定着させる。定着ユニット40は、例えば、加熱ローラ42と、加圧ローラ44とから構成される。加熱ローラ42は、回転軸周りに回転可能な円筒状の部材であり、その内部には例えばハロゲンランプなどの熱源が設けられている。加圧ローラ44は、回転軸周りに回転可能な円筒状の部材であり、加熱ローラ42を押圧するように設けられる。加熱ローラ42および加圧ローラ44の外周面には、例えばシリコンゴム等の耐熱弾性層が設けられる。定着ユニット40は、加熱ローラ42と加圧ローラ44との接触領域である定着ニップ部に記録媒体を通過させることにより、トナー像を記録媒体に溶融定着させる。
【0029】
また、画像形成装置1には、定着ユニット40によりトナー像が定着された記録媒体を装置外部へ排出するための排出ローラ52、54が設けられている。
【0030】
(1−2.画像形成装置の動作)
このような画像形成装置1は、まず、画像形成装置1が操作されると、被記録画像の画像信号が制御部(図示せず。)に送信される。次いで、制御部は、受信した画像信号に基づいて、帯電ローラ32により感光体ドラム30の表面を所定の電位に均一に帯電させた後、露光ユニット34により感光体ドラム30の表面にレーザ光を照射して静電潜像を形成する。
【0031】
一方、現像ユニット100では、トナーとキャリアとを混合攪拌して十分に帯電させた後、現像ローラ(図1の符号110)に現像剤を担持させる。そして、現像ローラ120の回転により現像剤が感光体ドラム30と対向する領域まで搬送されると、現像ローラ120に担持された現像剤のうちのトナーが、感光体ドラム30の周面上に形成された静電潜像に移動し、静電潜像を現像する。こうして形成されたトナー像は、感光体ドラム30と転写ベルト20とが対向する領域において、感光体ドラム30から転写ベルト20へ一次転写される。転写ベルト20には、4つの感光体ドラム30上に形成されたトナー像が順次積層されて、1つの積層トナー像が形成される。そして、積層トナー像は、懸架ローラ20dと二次転写ローラ24とが接触する領域において、記録媒体搬送ユニット10から搬送された記録媒体に二次転写される。
【0032】
積層トナー像が二次転写された記録媒体は、定着ユニット40へ搬送される。記録媒体を加熱ローラ42と加圧ローラ44との間で熱および圧力が加えながら通過させることにより、積層トナー像が記録媒体に溶融定着する。その後、記録媒体は、排出ローラ52、54により画像形成装置1の外部へ排出される。一方、転写ベルト20は、ベルトクリーニング装置を備える場合、積層トナー像が記録媒体へ二次転写された後、転写ベルト20に残存するトナーがベルトクリーニング装置により除去される。
【0033】
なお、図1に示したタンデム方式の画像形成装置1は、本実施形態係る現像ユニット100を使用した画像形成装置の一例であり、本実施形態に係る現像ユニット100は、種々の方式の画像形成装置に適用することができる。
【0034】
以上、本実施形態に係る現像ユニット100を備える画像形成装置1の概略構成について説明した。本実施形態に係る現像ユニット100は、規制部材の動作時にも真直度を容易に維持できるとともに、現像剤の帯電を補助する機能を有する層規制部材160を備えることを特徴とする。以下、図2、図3A、図3Bおよび図3Cに基づいて、本実施形態に係る現像ユニット100の構成および層規制部材160の構成について説明する。なお、図2は、本実施形態に係る現像ユニット100の構成を示す説明図である。図3A、図3Bおよび図3Cは、本実施形態に係る層規制部材160の構成例を示す説明図である。
【0035】
<2.現像ユニットの構成>
本実施形態にかかる現像ユニット100は、図2に示すように、ハウジング110と、現像ローラ120と、第1攪拌搬送部材130と、第2攪拌搬送部材140と、(以下、第1攪拌搬送部材130と第2攪拌搬送部材140とを合わせて、攪拌搬送部と称する場合もある。)層規制部材160と、を主に備える。
【0036】
(2−1.ハウジング)
ハウジング110は、トナーとキャリアとからなる現像剤(2成分現像剤)を収容する筐体であり、その内部に、後述する現像ローラ120、第1攪拌搬送部材130、第2攪拌搬送部材140、層規制部材160等が設けられている。
【0037】
(2−2.現像ローラ)
現像ローラ120は、感光体ドラム30の周面上に形成された静電潜像に対してトナーを供給する現像剤担持体である。現像ローラ120は、現像スリーブ123と、現像スリーブ123の内部に配置されたマグネット121と、からなる。現像スリーブ123は、ハウジング110に回転自在に設けられた非磁性の金属からなる円筒状の部材である。現像ローラ120では現像スリーブ123のみが回転し、現像スリーブ123内に配置されたマグネット121はハウジング110に固定されている。また、現像ローラ120には、現像バイアスを印加する現像バイアス印加部(図示せず。)が設けられている。
【0038】
マグネット121は、複数の磁極を有しており、例えば感光体ドラム30と対向する領域、すなわち感光体ドラム30に形成された静電潜像を現像する領域までおよび現像領域から第1攪拌搬送部材130と対向する位置までは、異なる磁極を交互に配置して設けることができる。これは、現像剤を現像スリーブ123上で磁気力により搬送するためである。また、現像領域では、現像剤の磁気ブラシの穂を起てて、当該磁気ブラシを感光体ドラム30の静電潜像に接触または近接させるため、現像領域に極位置または極間を配置することもできる。一方、現像ローラ120が第1攪拌搬送部材130と対応する位置には、同極性の磁極を周方向に隣接するように配置する。この同極性の磁極により極間では当該現像スリーブ123の回転方向に対する接線方向および法線方向の磁力が小さくなる。このため、現像剤は、現像スリーブ123の回転に伴って、現像ローラ120と第1攪拌搬送部材130とが対向する位置で現像スリーブ123から剥離される。
【0039】
(2−3.攪拌搬送部材)
攪拌搬送部は、現像剤を構成する磁性体のキャリアと非磁性体または弱磁性体のトナーとを攪拌して、キャリアとトナーとを帯電させる領域である。攪拌搬送部は、第1攪拌搬送部材130と第2攪拌搬送部材140とを備える。
【0040】
第1攪拌搬送部材130は、現像ローラ120と略垂直方向に対向して配置されており、混合攪拌された現像剤を現像ローラ120へ供給する。第1攪拌搬送部材130は、第1支持軸131と、第1攪拌翼133とからなる。第1支持軸131は、ハウジング110の内壁にベアリングを介して回転可能に設けられる。第1攪拌翼133は、第1支持軸131の外周面に設けられ、第1支持軸131の長手方向に配置された螺旋状の傾斜面からなる。
【0041】
第2攪拌搬送部材140は、現像剤を混合攪拌して現像剤を十分に帯電させる役割を担っており、帯電した現像剤を第1攪拌搬送部材130へ搬送する。第2攪拌搬送部材140は、第1攪拌搬送部材130と同様に、第2支持軸141と、第2攪拌翼143とからなる。第2支持軸141は、ハウジング110の内壁にベアリングを介して回転可能に設けられる。第2攪拌翼143は、第2支持軸141の外周面に設けられ、第2支持軸143の長手方向に配置された螺旋状の傾斜面からなる。
【0042】
第1攪拌搬送部材130と第2攪拌搬送部材140とは、第1支持軸131と第2支持軸141とが略平行となるように、例えば略水平方向(現像ローラ120と第1攪拌搬送部材130とが隣接する方向に対して略直交する方向)に並んで配置される。第1攪拌搬送部材130と第2攪拌搬送部材140との間には仕切り壁102(図1を参照)が設けられている。仕切り壁102は、第1攪拌搬送部材130と第2攪拌搬送部材140とが各攪拌搬送部材の両端において連通するように設けられている。
【0043】
第2攪拌搬送部材140によって攪拌しながら搬送された現像剤は、第1攪拌搬送部材130により攪拌、搬送されながら現像ローラ120の周面に移行する。第2攪拌搬送部材140には、トナー濃度を検出するためのトナー濃度センサ(図示せず。)が設けられており、搬送路内のトナー濃度が低下するとトナータンク36から現像剤供給部150を介して搬送路内に現像剤が供給される。
【0044】
(2−4.層規制部材)
層規制部材160は、現像ローラ120の現像スリーブ123と感光体ドラム30とが対向する位置を基準として現像スリーブ123の回転方向上流側に、その先端面が現像スリーブ123の周面に対して所定の間隔をおいて位置するようにハウジング110に配設されている。層規制部材160は、現像スリーブ123の周面上に付着した現像剤を均一な厚さの層に均す、すなわち、現像剤の穂切りを規制する役割を有し、基材となる非磁性体層と、樹脂層と、現像剤の穂切りを規制する磁性体層とを積層した構造を有する。本実施形態に係る現像ユニット100は、層規制部材160が、その動作時にも真直度を容易に維持できるとともに、現像剤の帯電を補助する機能を有することを特徴としているが、そのための構成を以下で詳細に説明する。
【0045】
<3.層規制部材の構成>
図3A、図3Bおよび図3Cに示すように、層規制部材160は、基材となる非磁性体層161と、現像剤の穂切りを規制する磁性体層163と、キャリアによるトナーの帯電を補助する樹脂層165と、積層した構造を有する。前述したように、層規制部材160は、その先端面が現像スリーブ123の周面に対して所定の間隔をおいて位置しているが、この所定の間隔は、現像スリーブ123の周面上の現像剤層を所望の層厚とできるような間隔であり、現像条件に応じて適宜設定することができる。
【0046】
非磁性体層161は、基材となる非磁性体の金属板であり、層規制部材160の剛性を保つ機能を有する。非磁性体層161の材質としては、非磁性体であれば特に限定はされないが、例えば、アルミ材やSUS材の300番台などを使用することができる。また、非磁性体層161は、その剛性を保つという機能を実現するために、磁性体層160よりも厚く形成され、現像ローラ120の回転方向の下流側に配置される。
【0047】
磁性体層163は、非磁性体層161に対して現像ロール120の回転方向の上流側に配置された磁性体の板であり、現像剤の穂切りを規制する機能を有する。磁性体層163の材質としては、磁性体であれば特に限定はされないが、例えば、SUS430等のSUS材の400番台を使用することができる。
【0048】
樹脂層165は、トナーと接触してトナーを摩擦帯電させることにより、キャリアによるトナーの帯電を補助する機能を有し、本実施形態に係る層規制部材160の特徴的な構成である。一般的に、2成分現像剤を使用する場合、キャリアによる帯電のみでは、トナーの帯電レベルが低いことが多い。そのため、十分に帯電していないトナーが現像スリーブ123の周面上に到達せずに、現像ユニット100内を飛散して、装置内の汚染やかぶり等の現象を引き起こすことがある。これに対して、本実施形態に係る層規制部材160では、樹脂層165にキャリアによるトナーの帯電を補助する機能を持たせることにより、帯電レベルの低いトナーの数を減らし、トナーの飛散を抑制している。
【0049】
この樹脂層165は、キャリアと同等の帯電性をトナーに付与するために、現像剤のキャリアの表面を被覆するコート材料と同じ材料からなることが好ましい。キャリアのコート材料としては、一般的には、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂共重合体、シリコーン樹脂などが使用されているが、本実施形態に係る現像剤では、トナーに帯電性を付与できるものであれば特に限定はされず、他の樹脂を使用してもよい。
【0050】
また、樹脂層165は、キャリアによるトナーの帯電を補助する機能をより十分に発揮させるため、現像剤のキャリアの平均粒径以上の厚みを有することが好ましい。樹脂層165の厚みがキャリアの平均粒径よりも大きければ、トナーに十分な帯電性を付与することができる。一方、樹脂層165の厚みの上限は特に規定しないが、樹脂層165の厚みが厚過ぎると、層規制部材160全体の厚みも大きくなるため、層規制部材160を形成する際のプレス加工の加工性が低下する可能性があるため、この点を考慮して樹脂層165の厚みを設定することが好ましい。なお、本実施形態におけるキャリアの平均粒径は、1次粒子の数平均直径のことであり、Laser回折法により測定された値である。
【0051】
本実施形態に係る層規制部材160は、前述した非磁性体層161、磁性体層163および樹脂層165を、エポキシ樹脂系の接着剤等を用いて接着して積層させ、複数層を有する板状の複合材料とした後に、プレス加工して所望の形状にすることにより形成される。このように、各層を接着して複合材料を形成した後に、プレス加工を施して層規制部材160を形成することにより、非磁性体と磁性体との間の段差や浮きの懸念が無く、層規制部材160の真直度を容易に向上させることができる。また、複合材料は、各層を接着剤により接着させるため、従来用いられていた溶接等とは異なり、非磁性体層161や磁性体層163を構成する金属と、樹脂層165を構成する樹脂との接合が可能となるので、層規制部材160の樹脂層165に現像剤の帯電補助機能を持たせることが可能となる。このように、本実施形態に係る層規制部材160によれば、真直度の維持は勿論のこと、現像剤の帯電補助機能をも併せて付与することができる。なお、層規制部材160は、その強度を確保するために、通常、略L字形状に加工されるが、本実施形態では、積層した複合材料を単にプレス加工するだけで、容易に所望の形状に加工することができる。
【0052】
また、層規制部材160における非磁性体層161、磁性体層163、樹脂層165の配置の順序は、現像ローラ120の回転方向の最下流側、言い換えると、現像剤の搬送方向の最下流側に、基材となる非磁性体層161を配置することを除けば、特に規定するものではない。例えば、図3Aに示すように、現像剤の搬送方向の最下流側に非磁性体層161を配置し、現像剤の搬送方向の上流側に樹脂層165を、さらに上流側に磁性体層163を配置してもよい。また、図3Bに示すように、現像剤の搬送方向の最下流側に非磁性体層161を配置し、現像剤の搬送方向の上流側に磁性体層163を、さらに上流側に樹脂層165を配置してもよい。さらに、図3Cに示すように、現像剤の搬送方向の最下流側に非磁性体層161を配置し、現像剤の搬送方向の上流側に樹脂層165を、さらに上流側に磁性体層163を、そのさらに上流側に樹脂層165をもう一層配置してもよい。
【0053】
以上のような各層の配置のいずれでも、本実施形態に係る層規制部材160の機能を発揮することはできるが、樹脂層165の帯電補助機能をより十分に発揮させるためには、図3Bや図3Cに示すように、樹脂層165が、層規制部材165を構成する層のうち、現像剤の搬送方向の最上流側に位置することが好ましい。このように、樹脂層165が現像剤の搬送方向の最上流側に位置することにより、図3Aに示すような配置よりも、樹脂層165とトナーとの接触面積が大きくなり、摩擦帯電の効果が向上するためである。
【0054】
さらに、層規制部材160を形成する際のプレス加工の加工性を考慮すると、図3Bに示すように、層規制部材160が、現像剤の搬送方向の下流側から、非磁性体層161、磁性体層163、樹脂層165の順に積層された3層構造を有することがさらに好ましい。図3Cに示すように、層規制部材160が4層以上の構造であると層規制部材160全体の厚みが大きくなるため、図3Bに示すような3層構造の場合と比べると、若干加工性が低下する傾向にある。
【0055】
<4.層規制部材の効果>
従来の層規制部材には、安定した現像スリーブ上の現像剤層の層厚規制のみを追求するものが多いが、以上述べたような本実施形態に係る層規制部材160は、主機能である層厚規制の安定性は勿論のことながら、現像剤の帯電補助機能を持つことで、帯電レベルの低いトナーの現像ユニット100外への吐き出し量や装置内汚染を低減することができる。以下、図4および図5を参照しながら、本実施形態に係る層規制部材160の効果について説明する。なお、図4は、樹脂層165の厚みに対する現像剤の帯電量の変化を示すグラフである。図5は、トナー/キャリア混合比(T/D)とトナー飛散量との関係を示すグラフである。
【0056】
図4は、本実施形態に係る層規制部材を適用し、樹脂層の厚みを変更した際の現像剤の帯電量を示したものである。図4に示した現像剤の帯電量の評価方法は以下の通りである。
【0057】
初期のT/Dを7%に設定した現像ユニットを準備し、その現像ユニットのトナー補給口にトナーを1g投入した。その後、現像ユニットを1分空転した後の現像スリーブの周面上の現像剤を採取し、電界飛翔式帯電量測定装置(DIT社製)にて現像剤の帯電量=Q/M(単位:μC/g)の測定を行った。上記一連の作業を樹脂層の厚みを変更した層規制部材(ドクターブレード)を交換しながら繰り返し行い、プロットした結果、図4に示すように、従来例の樹脂層が存在しない層規制部材と比較し、樹脂層の厚みに対して比例的に現像剤の帯電量の上昇を実現できることがわかった。なお、本評価における層規制部材の構造としては、図3Bに示した構造と同様のものを用いた。
【0058】
図5は、T/Dを変更した際のトナー飛散量を測定した結果を、本実施形態に係る層規制部材を適用した本発明例と、非磁性体に磁性体のみを貼り付けた(樹脂層の存在しない)層規制部材を適用した従来例とで比較したものである。図5に示したトナー飛散量の評価方法は以下の通りである。
【0059】
トナー飛散量の測定方法は、現像ユニット内の現像剤のT/Dを任意の値に設定し、飛散トナー採取用のシリコーンチューブ(内径Φ4mm、外径Φ6mm)を現像スリーブの回転方向下流側で、かつ、現像剤搬送領域の両端部、および現像ユニットの長手方向の中央位置の3箇所に設置し、現像ユニットが30秒駆動した際の飛散トナー量をTSI社製のDust Trak Model8520(吸入量:1.7L/min)を使用して測定した。上記の作業をT/Dを変更しながら繰り返し行い、現像ユニットの長手方向に沿った3箇所の測定位置における平均トナー飛散量の合計値をプロットした結果を図5に示した。なお、本評価における層規制部材の構造としては、図3Bに示した構造と同様のものを用いた。
【0060】
図5に示すように、いずれの例においても、T/Dの値が大きくなる、すなわち、トナーの配合比が多くなると帯電量が少なくなるので、トナーの飛散量は増加したが、トナー帯電補助機能を有する樹脂層が設けられた層規制部材を使用した本発明例は、樹脂層を有しない従来例と比べ、T/Dの増加に対するトナー飛散量が遥かに低減されていることがわかる。
【0061】
以上、図4および図5に示した評価結果からわかるように、本実施形態に係る層規制部材を使用すると、層厚規制の安定性は勿論のこと、トナーの飛散量を低減させることができるため、帯電レベルの低いトナーの現像ユニット100外への吐き出し量や装置内汚染を低減することができる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1 画像形成装置
100 現像ユニット(現像装置)
110 ハウジング
120 現像ローラ
121 マグネット
123 現像スリーブ
130 第1攪拌搬送部材
140 第2攪拌搬送部材
160 層規制部材
161 非磁性体層
163 磁性体層
165 樹脂層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアとトナーとからなる現像剤を収容するハウジングと、
前記ハウジングに回転自在に設けられた円筒状の現像スリーブと、
先端面が前記現像スリーブの周面に対して所定の間隔をおいて位置するように前記ハウジングに配設された層規制部材と、
を備え、
前記層規制部材は、基材となる非磁性体層と、前記キャリアによる前記トナーの帯電を補助する樹脂層と、前記現像剤の穂切りを規制する磁性体層とを積層した構造を有することを特徴とする、現像装置。
【請求項2】
前記樹脂層が、前記キャリアの表面を被覆するコート材料と同じ材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記樹脂層が、前記層規制部材を構成する層のうち、前記現像剤の搬送方向の最上流側に位置することを特徴とする、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記層規制部材が、前記現像剤の搬送方向の下流側から、前記非磁性体層、前記磁性体層、前記樹脂層の順に積層された3層構造を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記樹脂層が、前記キャリアの平均粒径以上の厚みを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置を備える、画像形成装置。




【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−133031(P2012−133031A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283663(P2010−283663)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】