説明

現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法

【課題】現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分を容易かつ効率的に破砕可能な破砕方法を提供する。
【解決手段】現場打ちされたコンクリート杭1Aの杭頭部における余盛コンクリート部分1の破砕方法は、孔の内壁が現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分1に形成された自由面と対向するジャッキ設置用の孔2を余盛コンクリート部分1に形成し、ジャッキ100を孔2内に設置した後に、ジャッキの押圧面で孔の内壁を押圧するようにジャッキを作動させて余盛コンクリート部分を破砕することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分を効率的に破砕可能な破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現場打ちコンクリート杭の鉄筋の上部に鉄板袋を設け、現場打ちされたコンクリート杭の鉄板袋の上方に形成された余盛コンクリート部分(不良コンクリート部分)を、鉄板袋内に圧力を加えて鉄板袋を変形させることによって破砕する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−325607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記破砕方法では、鉄筋を通す孔を設けたリング状の鉄板袋、つまり、特殊な装置が必要となるとともに、鉄板袋の孔に鉄筋を通して鉄板袋を鉄筋に固定しなければならないので、作業が煩雑になる。また、余盛コンクリートを打設する前に鉄板袋を設置するため、鉄板袋の上に設けられる余盛コンクリート部分の厚さが厚くなったような場合には、余盛コンクリート部分を効率的に破砕できない。
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分を容易かつ効率的に破砕可能な破砕方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法は、孔の内壁が現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分に形成された自由面と対向するジャッキ設置用の孔を余盛コンクリート部分に形成し、ジャッキを孔内に設置した後に、ジャッキの押圧面で孔の内壁を押圧するようにジャッキを作動させて余盛コンクリート部分を破砕することを特徴とする。
自由面が余盛コンクリート部分の上端面により形成され、孔が余盛コンクリート部分の外周面からコンクリート杭の中心軸の方向に延長して形成されたことも特徴とする。
自由面が余盛コンクリート部分の外周面により形成され、孔が余盛コンクリート部分の上端面からコンクリート杭の延長方向に沿って延長して形成されたことも特徴とする。
余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を複数個形成して、複数個の孔内のそれぞれにジャッキを1つずつ設置してこれら複数個のジャッキを同時に作動させたことも特徴とする。
余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を形成して当該孔内にジャッキを設置してジャッキを作動させる破砕処理を行った後に、当該破砕処理で破砕されずに残った余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を形成して当該孔内にジャッキを設置してジャッキを作動させることも特徴とする
余盛コンクリート部分に放電用の孔を形成し、ジャッキ設置用の孔の孔内にジャッキを設置するとともに放電用の孔の孔内に電極の放電部と放電部を取り囲む圧力伝達媒体とを設けた後に、ジャッキを作動させた状態で電極に電圧を印加して放電部で放電させたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、孔の内壁が余盛コンクリート部分に形成された自由面と対向するジャッキ設置用の孔を余盛コンクリート部分に形成したので、ジャッキを孔内に設置してジャッキを作動させることによって、孔の内壁と自由面との間に亀裂が生じやすくなり、余盛りコンクリート部分を容易かつ効率的に破砕できる。
自由面が余盛コンクリート部分の上端面により形成され、孔が余盛コンクリート部分の外周面からコンクリート杭の中心軸の方向に延長して形成されたので、余盛コンクリート部分の上端面側から余盛コンクリート部分を効率的に破砕できる。
自由面が余盛コンクリート部分の外周面により形成され、孔が余盛コンクリート部分の上端面からコンクリート杭の延長方向に沿って延長して形成されたので、余盛コンクリート部分の外周面側から余盛コンクリート部分を効率的に破砕できる。
余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を複数個形成し、複数個の孔内のそれぞれにジャッキを1つずつ設置してこれら複数個のジャッキを同時に作動させることで、余盛コンクリート部分の広範囲にわたって亀裂を生じさせることができ、余盛コンクリート部分を効率的に破砕できる。
余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を形成して当該孔内にジャッキを設置してジャッキを作動させる破砕処理を行った後に、当該破砕処理で破砕されずに残った余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を形成して当該孔内にジャッキを設置してジャッキを作動させれば、余盛コンクリート部分の破砕状況を見ながら以後のジャッキ設置用の孔を形成するのに最適な場所を決めることができるので、破砕作業の効率化が図れ、余盛コンクリート部分を効率的に破砕できる。
余盛コンクリート部分に放電用の孔を形成し、ジャッキ設置用の孔の孔内にジャッキを設置するとともに放電用の孔の孔内に電極の放電部と放電部を取り囲む圧力伝達媒体を設けた後に、ジャッキの押圧面で孔の内壁を押圧するようにジャッキを作動させた状態で電極に電圧を印加して放電部で放電させれば、ジャッキによる押圧だけでは余盛コンクリート部分に亀裂が生じないような場合においてもジャッキによる押圧と電極による放電とによって余盛コンクリート部分を効率的に破砕できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1;図2は最良の形態1を示し、図1(a)はジャッキ設置用の孔内にジャッキが設置された余盛りコンクリート部分を上から見て示し、図1(b)は図1(a)のA−A断面を示し、図2はジャッキを一部断面で示す。
【0007】
まず、図2を参照し、現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法に使用するジャッキ100の構造を説明する。ジャッキ100は、反力台101に複数の上下動機構102を一方向に列状に並ぶように設けた構成である。上下動機構102は、ピストン構成体103とシリンダケース104とからなる油圧シリンダにより形成される。ピストン構成体103は、ピストンロッド105とピストン106と押圧体107とを備える。ピストン106は、ピストンロッド105のシリンダケース104の内部に位置する下端部に設けられる。ピストン106の外周面108には外周面108を取り囲むようにピストンリング109が設けられる。ピストンリング109はゴムのような弾性体により形成されてシリンダケース104の内周壁110と密着する。押圧体107は、ピストンロッド105のシリンダケース104から上方に突出した上端部に設けられる。押圧体107はピストンロッド105の上端面よりも面積の広い押圧面111を備える。シリンダケース104は2つの接続口112;113を備える。一方の接続口112は、シリンダケース104の内部におけるピストン106で区分された上室114に貫通する。他方の接続口113は、シリンダケース104の内部におけるピストン106で区分された下室115に貫通する。2つの接続口112;113には、図外の油圧源と切換弁と油圧管116;117とからなる油圧給排機構が接続される。
【0008】
そして、切換弁が一方に切り替えられると、油圧源から吐出された作動油118が油圧管116を経由して一方の接続口112に供給される。この一方の接続口112に供給された作動油118が上室114に供給されてピストン106を押し下げる。これに伴い、下室115の作動油118がピストン106で押されるのに伴い他方の接続口113から油圧管117及び切換弁を経由して油圧源の吸引口の方に戻る。また、切換弁が他方に切り替えられると、油圧源から吐出された作動油118が油圧管117を経由して他方の接続口113に供給される。この他方の接続口113に供給された作動油118が下室115に供給されてピストン106を押し上げる。これに伴い、上室114の作動油118がピストン106で押されるのに伴い一方の接続口112から油圧管116及び切換弁を経由して油圧源の吸引口の方に戻る。
【0009】
図1を参照し、現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分を破砕する方法を説明する。尚、余盛コンクリート部分1とは、コンクリート杭1Aの構築において、杭孔掘削時に不純物がまじったり、安定液(泥水)に晒されて劣化したコンクリート部分のことであり、コンクリート杭のコンクリートの硬化後に除去される部分である。
まず、余盛りコンクリート部分1にジャッキ設置用の孔2を形成する。この孔2は、孔2の内壁2aが余盛りコンクリート部分1に形成された自由面としての上端面1aと対向するとともに余盛りコンクリート部分1の外周面1bからコンクリート杭1Aの中心線1cの位置する方向に延長するよう形成される。例えば、4個のジャッキ設置用の孔2を、余盛りコンクリート部分1の外周面1bにおいてコンクリート杭1Aの中心線1cを中心として互いに90°離れた位置からそれぞれ中心線1cの位置する方向に形成する。さらに、この4個のジャッキ設置用の孔2とコンクリート杭1Aの杭頭仕上げ位置1dとの間に、余盛りコンクリート部分1の外周面1bからコンクリート杭1Aの柱の中心線1cの位置する方向に延長するジャッキ設置用の孔3を、上記4個のジャッキ設置用の孔2の1つ1つと平行に位置するように4個形成する。即ち、4個のジャッキ設置用の孔2と孔3とが余盛りコンクリート部分1の上下に2段に形成される。孔2や孔3は、孔の内壁を押圧するジャッキ100の力によって孔と自由面との間に亀裂を生じさせる位置に形成する。例えば、孔2は上端面1aから30cm〜50cm程度離れた位置に形成し、孔3は孔2から30cm〜50cm程度離れた位置に形成する。また、孔2;3の径は使用するジャッキ100の大きさによって決める。例えば、ジャッキ100は、ピストン106が最下点に位置する場合の上下高さが45mm程度、図2の左右の長さが650mm程度、押圧体の上下ストロークが15mm程度、上下動機構102を18個備え、最大押圧力が4.5ton×18=81tonのものを使用する場合、直径50mm程度、深さ700mm程度の孔2を形成すればよい。
【0010】
次に、余盛りコンクリート部分1の上段に位置する4個の孔2のうち、余盛りコンクリート部分1の外周面1bにおいて中心線1cを中心として互いに180°離れた位置から中心線1cの位置する方向に延長するように形成された2つの孔2(2X);2(2X)内にそれぞれジャッキ100を1つずつ設置する。つまり、図2に示したジャッキ100の左端から孔2内に挿入して設置する。この際、ジャッキ100の複数の押圧面111と余盛りコンクリート部分1の自由面としての上端面1aとが互いに平行に向かい合うようにジャッキ100を設置する。
【0011】
そして、ジャッキ100の押圧面111で孔2の内壁2aを押圧するように2つのジャッキ100;100を同時に作動させることによって、ジャッキ設置用の孔2(2X)の内壁2aと余盛りコンクリート部分1の上端面1a(自由面)との間に亀裂を生じる。さらに、上記と同様に、上段の残りの2つのジャッキ設置用の孔2(2Y);2(2Y)内にそれぞれジャッキ100を設置して、この2つのジャッキ100;100を同時に作動させることによって、孔2(2Y)の内壁2aと余盛りコンクリート部分1の上端面1a(自由面)との間に亀裂を生じる。
【0012】
同様に、余盛りコンクリート部分1の下段に位置する4個の孔3のうち、余盛りコンクリート部分1の外周面1bにおいて中心線1cを中心として互いに180°離れた位置から中心線1cの位置する方向に延長するように形成された2つの孔3(3X);3(3X)内にそれぞれジャッキ100を1つずつ設置する。そして、ジャッキ100の押圧面111で孔3(3X)の内壁3aを押圧するように2つのジャッキ100;100を同時に作動させることによって、孔3(3X)の内壁2aと余盛りコンクリート部分1の残余の上面(自由面)との間に亀裂を生じる。さらに、上記と同様に、下段の残りの2つのジャッキ設置用の孔3(3Y);3(3Y)内にそれぞれジャッキ100を設置して、この2つのジャッキ100;100を同時に作動させることによって、孔3(3Y)の内壁3aと余盛りコンクリート部分1の残余の上面(自由面)との間に亀裂を生じる。
【0013】
以上により、コンクリート杭1Aの杭頭仕上げ位置1dの近傍まで余盛りコンクリート部分1を効率的に破砕できて除去できるので、ドリルのような機械で余盛りコンクリート部分1をはつって除去するような長い時間騒音を発生する作業を行うことなく、コンクリート杭1Aの杭頭部に形成される余盛りコンクリート部分1を効率的に除去できる。
【0014】
最良の形態1によれば、余盛りコンクリート部分1に、孔2の内壁2aが余盛りコンクリート部分1に形成された自由面となる上端面2aと対向するジャッキ設置用の孔2を形成したので、ジャッキ100を孔2内に設置してジャッキ100を作動させることによって、孔2の内壁2aと上端面2aとの間に亀裂が生じやすくなり、余盛りコンクリート部分1を容易かつ効率的に破砕さできるという効果が得られる。
最良の形態1によれば、余盛りコンクリート部分1の外周面1bから中心軸1cの方向に延長する孔2を形成したので、余盛りコンクリート部分1の上端面1a側から余盛りコンクリート部分1を効率的に破砕できる。
最良の形態1によれば、余盛りコンクリート部分1にジャッキ設置用の孔2を複数個形成して、複数個の孔2内のそれぞれにジャッキ100を1つずつ設置してこれら複数個のジャッキ100を同時に作動させたことにより、余盛りコンクリート部分1の広範囲にわたって亀裂を生じさせることができて、コンクリート部分1を効率的に破砕できる。
【0015】
最良の形態2
余盛りコンクリート部分1に縦孔によるジャッキ設置用の孔2を形成してもよい。即ち、図3に示すように、余盛りコンクリート部分1の上端面1aからコンクリート杭1Aの延長方向に沿って延長するとともに、孔2の内壁2aが余盛りコンクリート部分1に形成された自由面としての外周面1bと対向するジャッキ設置用の孔2を複数個形成する。この場合も、孔2は、孔2の内壁を押圧するジャッキ100の力によって孔2と自由面との間に亀裂を生じさせる位置に形成する。図3に示すように、例えば外周面1bから30cm〜50cm程度離れた外周面1bに比較的近い位置に形成された複数の孔2内にジャッキ100を1つずつ設置してこれらジャッキ100の押圧面111で孔2の内壁2aを押圧するように複数のジャッキ100;100を同時に作動させる。
最良の形態2によれば、余盛りコンクリート部分1の外周面1b側から余盛りコンクリート部分1を効率的に破砕できる。
【0016】
最良の形態3
余盛りコンクリート部分1にジャッキ設置用の孔2を1個形成してこの孔2内にジャッキ100を設置してジャッキ100の押圧面111で孔2の内壁2aを押圧するようにジャッキ100を作動させることでジャッキ設置用の孔2の内壁2aと自由面としての上端面1aや外周面1bとの間に亀裂を生じさせるという一連の破砕作業を余盛りコンクリート部分1に対して複数回繰り返してもよい。つまり、一連の破砕作業を1回終えた後に、残った余盛りコンクリート部分1に対して孔2を形成してこの孔2内でジャッキ100を作動させる一連の破砕作業を行うというように、余盛りコンクリート部分1のほぼ全体が破砕されるまで、上記一連の破砕作業を繰り返してもよい。
最良の形態3によれば、余盛りコンクリート部分1の破砕状況を見ながら以後のジャッキ設置用の孔2を形成するのに最適な場所を決めることができるので、破砕作業の効率化が図れ、余盛りコンクリート部分1を効率的に破砕できる。
【0017】
最良の形態4
図4に示すように、余盛りコンクリート部分1に放電用の孔4を形成し、ジャッキ設置用の孔2の孔内にジャッキ100を設置するとともに放電用の孔4の孔内に電極40の放電部46と放電部46を取り囲むゲルや水のような圧力伝達媒体5を設けた後に、ジャッキ100の押圧面111で孔2の内壁2aを押圧するようにジャッキ100を作動させた状態で電極40に電圧を印加して放電部46で放電させる。
【0018】
図5;6を参照し、最良の形態4の電極40を備えた放電破砕装置の構造を詳細に説明する。図5に示すように、放電破砕装置の電源装置8は、昇圧装置12、パルスパワー出力装置13を備える。昇圧装置12は、電源電圧入力部14A、図外の変圧器を備えた昇圧回路15、出力部14を備える。昇圧回路15は、電源電圧入力部14Aに接続された電源ケーブル14C経由で三相交流200V電源電圧を入力して例えば直流22kVの電圧を生成し、直流22kVの電圧を出力部14より出力する。出力部14は、正極端子14aと負極端子14bとを備える。パルスパワー出力装置13は、入力端子16、充電回路17、出力部としての電極接続部18を備える。入力端子16は、正極端子16aと負極端子16bとを備える。電極接続部18は、正極端子18aと負極端子18bとを備える。充電回路17は、正極線17a、負極線17b、コンデンサ装置19、コンデンサ装置接続部20、スイッチ21;22を備える。正極線17aには、スイッチ21とスイッチ22とが直列に接続される。正極線17aの一端が入力端子16の正極端子16aに接続され、正極線17aの他端が電極接続部18の正極端子18aに接続される。負極線17bの一端が入力端子16の負極端子16bに接続され、負極線17bの他端が電極接続部18の負極端子18bに接続される。コンデンサ装置接続部20は、正極線17aにおけるスイッチ21とスイッチ22との間に並列に接続された複数の正極接続端子20aと、負極線17bに並列に接続された複数の負極接続端子20bとを備える。1対の正極接続端子20aと負極接続端子20bとによりコンデンサ装置19を1つ接続するためのコンデンサ装置接続端子20Aが形成される。即ち、コンデンサ装置接続部20は、複数のコンデンサ装置接続端子20Aを備えるため、昇圧装置12及び電極接続部18に複数のコンデンサ装置19を接続可能である。コンデンサ装置接続部20は、例えば6個のコンデンサ装置接続端子20Aを備え、1個から6個までの任意の数のコンデンサ装置19を接続可能である。即ち、コンデンサ装置19を1個から6個まで任意に増減可能な電源装置8を得ることができる。スイッチ21はコンデンサ装置19に昇圧装置12から供給された電圧を充電させるためのスイッチ、スイッチ22はコンデンサ装置19に充電された電荷を放電させて電極接続部18経由で電極装置9に出力させるためのスイッチである。図示しないが、充電回路17は接地(アース)されている。
【0019】
放電破砕装置の電極装置9は、接続コード部31、電極部32を備える。接続コード部31は、電源装置8の電極接続部18の正極端子18a及び負極端子18bの各々に接続される正極端子35a及び負極端子35bを備えた入力側コネクタ35と、電極部32の電極接続コネクタ36に接続される出力側コネクタ37と、入力側コネクタ35と出力側コネクタ37とを接続する電気接続コード38とを備える。電極部32は、出力側コネクタ37と接続される電極接続コネクタ36と、電極40とを備える。つまり、電極部32は、接続コード部31の出力側コネクタ37に着脱可能な電極接続コネクタ36を備え、電極接続コネクタ36が電線43を着脱自在に接続できる図外の電線取付部を備えるため、ワイヤ電極41と同軸電極42との交換を容易にできる。
【0020】
電極40としては、例えば、ワイヤ電極41を用いる。ワイヤ電極41は、電線43が切断され、電線43の切断面と電線43の切断面との間が間隔保持材45によって一定の放電間隔(ギャップ)に維持されたことによって放電部46が形成された構成である。電線43は、例えば線径2mm〜3mm程度の銅線のような導体線の周囲がビニル樹脂などの樹脂で被覆された線径4mm〜5mm程度の、いわゆる被覆線により形成される。ワイヤ電極41は放電部46を1つ以上備える。
【0021】
図6に示すように、間隔保持材45は、筒状に形成され、筒孔の両端部により形成された電線固定部61;62と、筒孔の中央部により形成された間隔維持部63とを備える。電線固定部61;62の孔径は電線43が嵌合する寸法の径に形成される。間隔維持部63の孔径は電線固定部61;62の径よりも小さい径に形成される。電線固定部61、電線固定部62、間隔維持部63の中心軸は同一である。間隔維持部63と電線固定部61;62との段差部である段差面によりストッパとしての電線端面突当面64;65が形成される。電線固定部61;62に嵌合された電線43;43の端面がそれぞれ電線端面突当面64;65に突き当てられた状態で、間隔保持材45と電線43とが図外の接着テープや接着剤などで互いに固定されることによって、間隔維持部63が電線43と電線43との間に放電ギャップgを形成する。即ち、間隔維持部63が電線固定部61;62に固定された電線43の端面と電線43の端面との間に放電ギャップとしての間隔gを維持するので、放電部46の放電ギャップを簡単かつ正確に設定できる。尚、絶縁ビニル粘着テープ、締結バンド、ゴムバンド、専用の接続具などを間隔保持材45として使用してもよい。
【0022】
電極40として同軸電極42を使用してもよい。図5に示すように、同軸電極42は、例えば、+電極のような一方電極としての棒状の内部導体73と、内部導体73の外周囲を被覆する筒状の絶縁体74と、絶縁体74の外周囲に設けられた−電極のような他方電極としての外部導体75とにより構成される。外部導体75は、内部導体73の中心線に沿った方向に間隔を隔てて設けられた複数の浮遊電極76を構成する。浮遊電極76とは、電源装置8と電気的に絶縁された電極のことである。絶縁体74の先端74tより突出して露出する内部導体73の先端部により形成された先端電極73tとこの先端電極73tに最も近い浮遊電極76である先端側浮遊電極76tとの間で先端側放電ギャップ77が形成され、互いに対向する浮遊電極76同士の端部76sと端部76sとの間で中間側放電ギャップ78が形成される。中間側放電ギャップ78は複数形成される。先端側放電ギャップ77を隔てて配置された先端電極73tと先端側浮遊電極76tとによって放電部が形成される。中間側放電ギャップ78を隔てて配置された浮遊電極76と浮遊電極76とによって放電部が形成される。即ち、同軸電極42は、複数の放電部を備える。この場合、電極部32は、出力側コネクタ37と接続される電極接続コネクタ36と、同軸電極42とを備えるので、出力側コネクタ37に対する電極接続コネクタ36の着脱により同軸電極42を容易に交換できる。
【0023】
最良の形態4にすれば、放電によるエネルギーによって押圧された圧力伝達媒体5が放電部46の周囲の孔4の内壁を押圧して内壁と自由面との間に亀裂を生じさせたり、放電によるエネルギーによって圧力伝達媒体5の一部が気化することで体積膨張して放電部46の周囲の孔4の内壁を押圧して内壁と自由面との間に亀裂を生じさせる。よって、ジャッキ100による押圧だけでは余盛りコンクリート部分1に亀裂が生じないような場合においてもジャッキ100による押圧と電極40による放電とによって余盛りコンクリート部分1を効率的に破砕できる。
【0024】
尚、図1で示した孔2(2Y)及び孔3(3Y)を図4に示すように放電用の孔4として使用してもよいし、図1;図4で示した孔3を放電用孔として使用してもよい。図3の孔2を放電用の孔4として使用してもよいし、放電用の孔4を新たに形成してもよい。
【0025】
最良の形態5
上記ジャッキ設置用の孔2;3や放電用の孔4とは別に、孔の内壁が上記自由面を形成する図外の孔を余盛りコンクリート部分1に形成すれば、余盛りコンクリート部分1をさらに効率的に破砕できる。例えば、ジャッキ設置用の孔2;3や放電用の孔4の近傍に自由面を形成する内壁を備えた孔を形成すれば、ジャッキ100による押圧や電極40による放電によって生じる亀裂を多くでき、より効率的に余盛りコンクリート部分1を破砕できる。
【0026】
最良の形態6
余盛りコンクリート部分1に、最良の形態1で説明した孔2(横孔)及び最良の形態2で説明した孔2(縦孔)の両方を形成して、最良の形態3や最良の形態4や最良の形態5で説明した方法を用いて余盛りコンクリート部分1を破砕することにより、効率的に余盛りコンクリート部分1を破砕できる。
【0027】
尚、最良の形態1;2において、余盛りコンクリート部分1に、孔2の内壁2aが余盛りコンクリート部分1に形成された自由面と平行に対向するジャッキ設置用の孔2を形成すれば、孔2の内壁2aと自由面との間の距離が孔2のどの位置においても等しくなるため、ジャッキ100を孔2内に設置してジャッキ100を作動させることによって、孔2の内壁2aと自由面との間に亀裂が生じやすくなり、余盛りコンクリート部分1を効率的に破砕できるという効果が得られる。
また、最良の形態5において、自由面を形成する孔として、ジャッキ設置用の孔2;3や放電用の孔4の内壁と平行な内壁を備えた孔を形成すれば、自由面を形成する孔とジャッキ設置用の孔2;3や放電用の孔4との間に多くの亀裂を生じさせることが可能となり、効果的である。
【0028】
最良の形態7
図7に示すように、コンクリート杭1Aの構築においては杭主筋51が配筋されるので、杭孔内にコンクリートを打設する前に、この杭主筋51に、コンクリート打設後に孔となる例えばプラッチックや紙などのようにジャッキや放電で簡単に壊れるような筒52を取り付けるとともに、筒52の筒孔内に筒52の筒孔内へのコンクリートの浸入を防止するための詰め物53を詰め込んでおき、コンクリート打設後に詰め物53を取り除くことにより、筒52による筒孔によって、余盛りコンクリート部分1の外周面1bから余盛りコンクリート部分1の内部に延長する孔2;3や、余盛りコンクリート部分1の上端面1aから余盛りコンクリート部分1の内部に延長する孔2を形成できる。よって、コンクリート打設後に孔を形成する作業を省略でき、作業手間を少なくできる。
【0029】
最良の形態8
図7で示した筒52の代わりに、杭主筋51に、簡単に削れるような例えば発泡スチロール製の棒体を取付けておき、この棒体でコンクリート打設後の孔位置を確保する。そして、コンクリート打設後に棒体を削って除去することにより、余盛りコンクリート部分1の外周面1bから余盛りコンクリート部分1の内部に延長する孔2;3や、余盛りコンクリート部分1の上端面1aから余盛りコンクリート部分1の内部に延長する孔2を形成できる。よって、コンクリート打設後に孔を形成する作業を省略でき、作業手間を少なくできる。
【0030】
最良の形態9
図8に示すように、余盛りコンクリート部分1における杭主筋51の位置の外周側で、かつ、コンクリート杭1Aの杭頭仕上げ位置1dよりも上方位置において、余盛りコンクリート部分1の周面に沿って形成されたリング状の溝56を設けることで、破砕によって生じたひび割れが杭頭仕上げ位置1dを越えてコンクリート杭1Aまで波及するのをリング状の溝56で防止できる。
【0031】
最良の形態10
図8で示したリング状の溝56の代わりに、縁切りリングを設置してもよい。つまり、縁切りリングが、余盛りコンクリート部分1における杭主筋51の位置の外周側で、かつ、コンクリート杭1Aの杭頭仕上げ位置1dよりも上方位置に設置されるように、縁切りリングを、杭孔内にコンクリートを打設する前に杭主筋51に取り付けた後、杭孔内にコンクリートを打設する。この場合は、破砕によって生じたひび割れが杭頭仕上げ位置1dを越えてコンクリート杭1Aまで波及するのを縁切りリングによって防止できる。
【0032】
最良の形態11
図9に示すように、コンクリート杭1Aの杭頭仕上げ位置1dよりも上方位置において格子状に設置されるように、棒材や板材のような桟材57を杭孔内にコンクリートを打設する前に杭主筋51に取り付けて、杭頭仕上げ位置1dよりも上方位置に格子状の縁切り体58を設ける。この縁切り体58を備えたことによって、コンクリート杭1Aの上面の中央部も含むコンクリート杭1Aの上面全体に対して、破砕によって生じたひび割れの杭頭仕上げ位置1dを越えたコンクリート杭1Aまでの波及が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
ジャッキ100として、孔の延長方向に対応する長尺な1つの押圧面を有した押圧体を1個のピストンロッドの先端に備えたり、あるいは、孔の延長方向に対応する長尺な1つの押圧面を有した押圧体を複数個のピストンロッドの先端に跨るように備えたジャッキを用いてもよい。また、円形や四角形の押圧面を有した押圧体を備えた上下移動機構102を1つだけ備えたジャッキを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)はジャッキ設置用の孔内にジャッキが設置された余盛りコンクリート部分の平面図、(b)は(a)のA−A断面図(最良の形態1)。
【図2】ジャッキの構成を一部断面で示す図(最良の形態1)。
【図3】(a)はジャッキ設置用の孔内にジャッキが設置された余盛りコンクリート部分の平面図、(b)は(a)のA−A断面図(最良の形態2)。
【図4】(a)はジャッキ設置用の孔内にジャッキが設置された余盛りコンクリート部分の平面図、(b)は(a)のA−A断面図(最良の形態4)。
【図5】放電破砕装置を示す構成図(最良の形態4)。
【図6】ワイヤ電極の放電間隔保持構造を示す断面図(最良の形態4)。
【図7】(a)は筒が設置された余盛りコンクリート部分の平面図、(b)は(a)のA−A断面図(最良の形態7)。
【図8】(a)は縁切り溝が形成された余盛りコンクリート部分の平面図、(b)は(a)のA−A断面図(最良の形態9)。
【図9】(a)は縁切り体が形成された余盛りコンクリート部分の平面図、(b)は(a)のA−A断面図(最良の形態11)。
【符号の説明】
【0035】
1 余盛りコンクリート部分、1a 上端面(自由面)、1b 外周面(自由面)、
2;3 ジャッキ設置用の孔、4 放電用の孔、5 圧力伝達媒体、40 電極、
46 放電部、100 ジャッキ、111 押圧面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔の内壁が現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分に形成された自由面と対向するジャッキ設置用の孔を余盛コンクリート部分に形成し、ジャッキを孔内に設置した後に、ジャッキの押圧面で孔の内壁を押圧するようにジャッキを作動させて余盛コンクリート部分を破砕することを特徴とする現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法。
【請求項2】
自由面が余盛コンクリート部分の上端面により形成され、孔が余盛コンクリート部分の外周面からコンクリート杭の中心軸の方向に延長して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法。
【請求項3】
自由面が余盛コンクリート部分の外周面により形成され、孔が余盛コンクリート部分の上端面からコンクリート杭の延長方向に沿って延長して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法。
【請求項4】
余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を複数個形成して、複数個の孔内のそれぞれにジャッキを1つずつ設置してこれら複数個のジャッキを同時に作動させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法。
【請求項5】
余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を形成して当該孔内にジャッキを設置してジャッキを作動させる破砕処理を行った後に、当該破砕処理で破砕されずに残った余盛コンクリート部分にジャッキ設置用の孔を形成して当該孔内にジャッキを設置してジャッキを作動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法。
【請求項6】
余盛コンクリート部分に放電用の孔を形成し、ジャッキ設置用の孔の孔内にジャッキを設置するとともに放電用の孔の孔内に電極の放電部と放電部を取り囲む圧力伝達媒体とを設けた後に、ジャッキを作動させた状態で電極に電圧を印加して放電部で放電させたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の現場打ちされたコンクリート杭の杭頭部における余盛コンクリート部分の破砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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