説明

現状態を有するオブジェクトを編集する方法

【課題】現状態を有するオブジェクトを編集する方法。
【解決手段】入力デバイスの第1のレベルが、そのオブジェクトを編集するという意図を示すためにアクティブにされ、第1のレベルをアクティブにするのに応答して、現状態が記憶される。そのオブジェクトは編集されて次状態になる。次状態は、第1のレベルを非アクティブにし、現状態に戻すことにより拒否される。次状態は、入力デバイスの第2のレベルをアクティブにし、現状態を次状態で置き換えることにより受け入れられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的にはグラフィカルユーザインターフェースに関し、より詳細には、マルチレベル入力デバイスを用いた編集操作に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンピュータは、多くの場合に、ディスプレイデバイス上のポインタを制御するために、ポインティングデバイスを備える。典型的なポインティングデバイスは、マウス、スタイラスあるいはトラックボールを含む。タッチセンシティブ表面を用いて、指のようなポインティングデバイスを検出することができる。ポインタをグラフィカルユーザインターフェースとともに用いて、位置を設定すること、ウインドウを操作すること、ツールバーとやりとりすること、メニューを開いてメニューアイテムを選択すること、スクロールすること、および編集可能なアプリケーションにおいてテキストあるいは幾何学的なオブジェクトを操作すること、たとえば、オブジェクトをドラッグすること、あるいはオブジェクトの形状を変更することを含む、多数の操作を実行することができる。
【0003】
アンドゥ(やり直し)は、いずれのコンピュータアプリケーションにおいても重要な機能であり、その機能によれば、ユーザが変更を行ったときに、その結果に不満足である場合には、その変更を取り消すことができる。
【0004】
アンドゥ機能を頻繁に使用すること、およびソフトウエア開発者によるアンドゥ機能の実装が一貫していないことに起因して問題が生じる。
【0005】
アンドゥ機能は、多くの場合に、メニュー、たとえば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)アプリケーションの編集メニューを通して、アイコンを通して、あるいはキーボードコマンドを通して提供される。編集可能なアプリケーション、たとえば、テキストあるいは図面ドキュメント内のオブジェクトをマウスあるいはスタイラスで操作しているユーザは、編集されているテキストオブジェクトあるいは図面オブジェクトからカーソルを離して、アプリケーションのメニューまで動かし、コマンドを発行しなければならないか、あるいはマウスから完全に手を離して、キーボードコマンドを発行しなければならないかのいずれかである。コマンドを発行した後に、ユーザは、以前に編集していたオブジェクトに戻り、最初に、アンドゥ操作が無事に完了していることを確認し、その後、そのドキュメントの作業を続ける。アンドゥコマンドを発行する際に多少の不便があると、使用頻度が高くなるにつれ、ますます不便になる。それゆえ、少しでもアンドゥコマンドの発行を改善することが望ましい。
【0006】
一例の従来技術の編集操作100を図1に示す。この例では、ユーザは、入力デバイスとしてマウスを用いている。編集操作100によって、ユーザは、編集可能なオブジェクト、たとえば、GUIのボリュームコントロールスライダ、あるいは図面アプリケーションの幾何学的形状の現在の状態(以下、現状態とする)101を変更できるようになる。編集の次の状態(以下、次状態とする)141がユーザにとって不満足である場合には、ユーザは、その編集をアンドゥすることができる(160)。
【0007】
マウスを用いる場合、通常、オブジェクトの上にポインタを配置し、マウスボタンを押下する(110)ことにより、編集するための1つのオブジェクトが選択される。オブジェクトの現状態101は、そのドキュメントの他の前の状態(以下、前状態とする)126を含むメモリ125、たとえば「アンドゥスタック」内に最新の前状態121として記憶される(120)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現状態が記憶されたとき(120)、ユーザは、マウスを動かして(135)、オブジェクトの現状態を編集する(130)ことができる。たとえば、ボタンを押下しながら、ユーザは、ボリュームスライダを異なる位置に動かして、ボリュームレベルを変更することができるか、あるいは幾何学的形状のサイズあるいは位置を変更することができる。ユーザがマウスボタンを放すと(140)、編集結果を含む次状態141が現状態101として記憶される(150)。ユーザが編集による変更に不満がある場合には、ユーザは、アンドゥコマンドを発行して(160)、メモリ125内の最新の前状態121を現状態101として戻すことができる(170)。しかしながら、ユーザは、カーソルをオブジェクトから離して、あるいはキーボードを用いてアンドゥコマンドを発行しなければならない。それにより、ユーザは、気が散り、時間を無駄にする。
【0009】
また、アンドゥは、ソフトウエア開発者によって対応が一貫していない。図1に関して先に説明された例では、多くの編集操作の場合に、ステップ120を除外する開発者もいる。たとえば、大部分のペイントアプリケーションでは、ユーザは、そのアプリケーションにおける1回のブラシ動作の結果、あるいは1つの要素の色の変更をアンドゥできるが、ユーザが、ペイントするための新たな色を選択した結果をアンドゥできるアプリケーションは、少ないであろう。同様に、オペレーティングシステムGUIでは、ユーザは、ファイルを削除する動作をアンドゥできるが、画面上でウインドウを動かす動作をアンドゥすることはできない。テキスト編集アプリケーションでは、ユーザは、テキストの一部を編集した結果をアンドゥできるが、そのドキュメントの異なる部分にスクロールした結果をアンドゥすることはできないので、そのテキストの以前の場所に戻ることが難しい。
【0010】
Zeleznik等は、「Pop through Mouse Button interactions」(Proceedings of the 14th annual ACM symposium on User interface software and technology, pp. 195-196, 2001)において、2状態「ポップスルー」マウスボタンによって、マウスを用いてやりとりすることができる範囲について述べている。そのようなマウスでは、ユーザは、ボタンを軽く押したときに第1のクリックを感じ、その後、ユーザがさらに強く押し続けると、第2のクリックが感じられる。この付加的な状態だけでもマウスの入力バンド幅が広がるが、その状態を意味のあるものとして用いれば、その付加的な状態によって、コンピュータが固有に物理的に結び付けられる動作を伴う表現の一形態を感知できるようになるので、ユーザが経験する質的な効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0011】
Ramos等は、「Pressure widgets」(Proceedings of the 2004 conference on Human factors in computing systems, pp. 487-494, 2004)において、多状態オブジェクトを操作するための連続感圧式スタイラスについて述べている。この論文において、連続的な圧力は、ポインタの視覚的な特性に反映され、たとえば、圧力が高くなると、メニュー選択のリストの下方にカーソルが動くようになり、あるいはオブジェクトの見え方を変更することに反映され、たとえば、圧力に応じてオブジェクトが大きくまたは小さくなる。Ramosは、編集中にオブジェクトの前状態に戻るために従来技術の方法を用いるので、ユーザは、オブジェクトからカーソルを動かす必要がある。
【0012】
それゆえ、アンドゥ操作中にディスプレイ上の異なる場所にポインタを配置し直すことなく、オブジェクトを制御し続けながら、ユーザが変更を行い、保存し、その変更をアンドゥできるようにする、オブジェクトを編集する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、現状態を有するオブジェクトを編集する方法を提供する。入力デバイスの第1のレベルが、そのオブジェクトを編集するという意図を示すためにアクティブにされ、第1のレベルをアクティブにするのに応答して、現状態が記憶される。そのオブジェクトは、編集されて次状態になる。次状態は、第1のレベルを非アクティブにし、現状態に戻すことにより拒否される。次状態は、入力デバイスの第2のレベルをアクティブにし、現状態を次状態で置き換えることにより受け入れられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、グラフィカルユーザインターフェース上に表示されるオブジェクトを編集する方法を提供する。その方法は、操作を実行しながら、ユーザがポインタで選択されたオブジェクトの制御を保持できるようにすることで、その操作を実行するのに必要とされる時間を短縮し、それにより編集操作中にユーザがグラフィカルユーザインターフェースでやりとりする効率および品質を改善する。
【0015】
本発明は、マルチレベル入力デバイスを用いる。たとえば、その入力デバイスは、異なる第1および第2の圧力レベルを検出することができるタッチセンシティブ表面である。また、その入力デバイスには、上記のような、2つのレベルのクリック操作が可能なマウスを用いることができる。
【0016】
図2に示される編集操作200において見られるように、グラフィカルユーザインターフェース上に表示される選択されたオブジェクト202は、現状態201を有する。入力デバイスの第1のレベルをアクティブにする(210)のに応答して、現状態がメモリ225に記憶される(220)。第1のレベルは、オブジェクトを編集するという意図を示す。
【0017】
この時点で、ユーザは、入力デバイスを第1のレベルに保持しながら、従来のようにディスプレイ上のポインタを動かすことにより、オブジェクト202を次状態211に編集することができる(230)。その編集は、ヌル操作であってもよい。
【0018】
編集が終了すると、ユーザは、その編集を拒否する(241)か、あるいは受け入れる(242)ことができる。ユーザが、ボタンを放すことによって、あるいはタッチ表面から指を離すことによって、入力デバイスの第1のレベルを非アクティブにする場合には、オブジェクト202の現状態201に戻す(250)ことにより、その編集は「アンドゥ」される。
【0019】
ユーザが第2のレベルをアクティブにする場合には、次状態211がオブジェクト202の現状態201になる。
【0020】
対照的に、従来技術では、ユーザが変更を保存し、メニューコマンド、すなわち「アンドゥ」アイコン上にポインタを置く必要があるか、あるいはマウスを放して、キーボードコマンドを発行し、変更前の元の状態にオブジェクトを戻す必要がある。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明は、多状態入力デバイスとしてタッチセンシティブ表面を用いる。その全体を参照して本明細書に援用される、2002年12月24日にDietz等に対して付与された「Multi-user touch surface」という名称の米国特許第6,498,590号を参照願いたい。入力デバイスの各レベルは、タッチセンシティブ表面によって生成される信号強度の範囲に関連付けられる。
【0022】
また、入力デバイスには感圧式スタイラスを用いることもでき、その場合には、入力デバイスのレベルは、感圧式スタイラスの信号強度の範囲に関連付けられる。
【0023】
実施例
本発明を用いて、グラフィカルオブジェクトの位置、向きおよびスケールを変更することなどの、既知の編集操作を実行することができる。他の実施例を以下に記載する。
【0024】
色選択
グラフィカルオブジェクトの色を編集する場合、ユーザは、ツールを以前の色に戻す能力を保持しながら、第1のレベルの入力を用いて色変更の効果をプレビューすることができる。第2のレベルの入力は、オブジェクトおよびツールの色の変化を確定するであろう。
【0025】
ボリュームコントロール
本発明によれば、ユーザは、GUIボリュームコントロールを用いて新たなボリュームレベルをプレビューし、正確に設定された値に迅速に戻ることができる。
【0026】
拡大ツール
本発明によれば、ユーザは、オブジェクトの種々の拡大レベルをプレビューし、その後、新たなレベルに留まるか、あるいは以前のレベルに戻るかを選択できる。たとえば、そのオブジェクトには、ディスプレイデバイスで表示される地図の選択された領域を用いることができる。
【0027】
ウインドウコントロール
第1のレベルの入力を用いて、ウインドウを一時的に動かしたり、ウインドウのサイズを一時的に変更したりすることができる。これは、GUIの重なり合うウインドウにおいて、ディスプレイデバイスを永久に編成することなく、ユーザが前景ウインドウの下を確認したい場合に有用である。
【0028】
スクロールバー
本発明によれば、ユーザは、長いドキュメントの別の部分に迅速に目を通し、その後、第2のレベルの入力でそのスクロールを確認するか、あるいはその入力を解除することにより以前の場所に戻ることができる。
【0029】
本発明は、特定の用語および実施例を用いて説明される。本発明の精神および範囲内で種々の他の適合および変更を行うことができることは理解されたい。それゆえ、添付の特許請求の範囲の目的は、本発明の真の精神および範囲に入るような全てのそのような変形および変更を網羅することである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来技術の編集操作のブロック図である。
【図2】本発明による編集操作のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現状態を有するオブジェクトを編集する方法であって、
入力デバイスの第1のレベルをアクティブにして、前記オブジェクトを編集するという意図を示すとともに、該第1のレベルをアクティブにするのに応答して前記現状態を記憶することと、
前記オブジェクトを編集して次状態にすることと、
前記第1のレベルを非アクティブにし、前記オブジェクトを前記現状態に戻すことにより前記次状態を拒否することと、
前記入力デバイスの第2のレベルをアクティブにし、前記オブジェクトの前記現状態を前記次状態で置き換えることにより前記次状態を受け入れることと
を含む現状態を有するオブジェクトを編集する方法。
【請求項2】
前記入力デバイスは、多状態マウスである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力デバイスは、タッチセンシティブ表面である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記入力デバイスは、感圧式スタイラスである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
信号強度の範囲が各入力レベルに関連付けられる請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記オブジェクトの前記現状態は、前記オブジェクトの1つの色を含み、前記次状態は、異なる色を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オブジェクトの前記現状態は、前記オブジェクトの1つの位置を含み、前記次状態は、異なる位置を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記オブジェクトの前記現状態は、前記オブジェクトの1つの向きを含み、前記次状態は、異なる向きを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記オブジェクトの前記現状態は、前記オブジェクトの1つのスケールを含み、前記次状態は、異なるスケールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記オブジェクトの前記現状態は、前記オブジェクトの1つの拡大レベルを含み、前記次状態は、異なる拡大レベルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記オブジェクトの前記現状態は、前記オブジェクトの1つのボリュームを含み、前記次状態は、異なるボリュームを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記オブジェクトの前記現状態は、前記オブジェクトの1つの領域を含み、前記次状態は、異なる領域を含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−92531(P2006−92531A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−260669(P2005−260669)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.
【Fターム(参考)】