説明

球形状農産物の定数排出装置

【課題】装置の大型化を招くことなく複数の貯留レーンを設けることができ、キンカンなどの球形状農産物を所定個数ずつ排出できる定数排出装置の提供。
【解決手段】振動コンベア14で搬送されるキンカン1を傾斜姿勢の傾動台11に設けた複数の貯留レーン23に送り込む。貯留レーン23に送り込まれた先頭のキンカン1はホッパー30に取り付けられたストッパー31に当接し、後続するキンカン1が貯留される。エアーシリンダー装置27を駆動して傾動台11を更に傾斜させると、傾動台11の後端に設けたシャッター32が振動コンベア14の搬送先端を塞ぎ、またストッパー31から先頭のキンカン1が外れて貯留していた全てのキンカンを落下排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キンカン等の球形状の農産物をパック詰又は箱詰するために所定の個数を排出する球形状農産物の定数排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
球形状をなす農産物を例えば包装袋にパック詰めするために一定の個数を排出する場合、同一仕分区分に選別された球形状農産物を傾動可能に傾斜配置された農産物貯留レーン上に落下供給するようにした構成の排出装置が提案されている。
【0003】
このような排出装置は、傾斜姿勢で待機している農産物貯留レーンに対して球形状農産物を連続的に供給し、供給した球形状農産物が所定個数あるいは所定重量に達すると、この農産物貯留レーンをシーソーのように傾斜姿勢の向きを反対に傾動させることにより該農産物貯留レーンの傾斜下端側から球形状農産物を排出させる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−180605公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した農産物の定数排出装置において、特許文献1では農産物貯留レーンと直交する方向に延びるコンベアにより球状農産物を連続的に該農産物貯留レーンに供給するようにしているが、これでは定数排出装置全体の大型化を招くことになる。また、農産物貯留レーンを複数条配置することも難しい。
【0005】
そこで、本願発明はこのような観点に鑑みなされたもので、装置全体の小型化が図れ、また農産物貯留レーンを複数条配置可能とし、球形状農産物を所定個数ずつ排出できる球形状農産物の定数排出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を実現する球形状農産物の定数排出装置の第1の構成は、請求項1に記載のように、傾斜姿勢に配置されていて、傾斜上面に一列又は複数列の球形状農産物の貯留レーンを形成し、傾斜下端側を該球形状農産物の排出側とすると共に傾斜上端側を該球形状農産物の供給側とし、農産物供給手段により球形状農産物の供給を受ける貯留位置と貯留した農産物を排出する排出位置との間を装置本体に対して傾動可能な傾動台と、前記傾動台を傾動するための傾動手段と、
前記貯留レーンに貯留される先頭の球形状農産物と当接して該先頭の球形状農産物の停止位置を決める装置本体に対して固定されているストッパーと、前記傾動台の傾斜上端側に取り付けられ、前記貯留位置から前記排出位置への該傾動台の傾動により前記農産物供給手段の供給端側を塞ぐシャッターと、を有し、前記傾動台が前記貯留位置から前記排出位置へ傾動すると、前記貯留レーンの先頭に位置する球形状農産物は前記ストッパーとの当接から外れて排出することを特徴とする。
【0007】
本発明の目的を実現する球形状農産物の定数排出装置の第2の構成は、請求項2に記載のように、傾斜姿勢に配置されていて、傾斜上面に一列又は複数列の球形状農産物の貯留レーンを形成し、傾斜下端側を該球形状農産物の排出側とすると共に傾斜上端側を該球形状農産物の供給側とし、農産物供給手段により球形状農産物の供給を受ける装置本体に固定されている固定台と、前記固定台に対して傾動可能な傾動フレームと、前記傾動フレームを傾動するための駆動手段と、前記貯留レーンに貯留される先頭の球形状農産物と当接して該先頭の球形状農産物の停止位置を決める前記傾動フレームの先端側に取り付けられたストッパーと、前記傾動フレームの後端側に取り付けられ、前記貯留位置から前記排出位置への該傾動フレームの傾動により前記農産物供給手段の供給端側を塞ぐシャッターと、を有し、前記ストッパーが前記貯留レーンの先頭に位置する球形状農産物との当接から外れる方向に前記傾動フレームを傾動させると、前記シャッターが前記農産物供給手段の供給端側を塞ぐことを特徴とする。
【0008】
本発明の目的を実現する球形状農産物の定数排出装置の第3の構成は、請求項3に記載のように、上記いずれかの構成において、前記農産物供給手段は、振動コンベアであることを特徴とする。
【0009】
本発明の目的を実現する球形状農産物の定数排出装置の第4の構成は、請求項4に記載のように、上記いずれかの構成において、前記ストッパーは前記貯留レーンに貯留される先頭の農産物の停止位置を調整可能としていることを特徴とする。
【0010】
本発明の目的を実現する球形状農産物の定数排出装置の第5の構成は、請求項5に記載のように、上記いずれかの構成において、前記農産物供給手段には、外径が略同一の球形状農産物が供給されることを特徴とする。
【0011】
本発明の目的を実現する球形状農産物の定数排出装置の第6の構成は、請求項6に記載のように、上記いずれかの構成において、前記貯留レーンには、貯留している球形状農産物の個数を確認できる確認センサーを設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、貯留レーンに所定個数の球形状農産物が貯留されると、傾動台をその勾配をさらに大きくする方向に傾動させて貯留されている先頭の球形状農産物に対するストッパーの当接を外すと共に、シャッターがせり上がり、農産物供給手段の供給端側がこのシャッターにより塞がれるため、農産物供給手段からの球形状農産物の送り込みが停止されると共に貯留レーン内に貯留されている所定個数の球形状農産物が排出される。また、排出後に傾動台を元の貯留位置に戻すと、シャッターが下がって農産物供給手段からの農産物の送り込みが行われ、ストッパーに対して先頭の球形状農産物が当接し、球形状農産物の貯留が開始される。
【0013】
したがって、傾動台を傾動させるだけで球形状農産物の排出と貯留を交互に繰り返し行うことができる。また、傾動台の傾斜上端から農産物供給手段により球形状農産物を供給しているため、農産物供給手段から貯留レーンに至る球形状農産物の搬送経路を略一直線とすることができ、貯留レーンを複数列設けても装置全体の大型化を招くことはない。
【0014】
また、請求項2に係る発明によれば、固定台に対する球形状農産物の貯留と排出は傾動フレームの傾動動作により行うようにしていることから、傾動フレームの駆動負荷が小さく、傾動フレームをステップモータ等のモータで駆動でき、小型化が図れ、またモータ駆動による傾動フレームの制御が容易に行える。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、球形状農産物を振動コンベアで傾動台あるいは固定台の貯留レーンに送り込むようにしているので、振動コンベア上の球形状農産物がシャッターにより前進が阻まれても、当該球形状農産物が大きな力を受けることがない。したがって、振動コンベアで待機している球形状農産物が傷むことがない。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、ストッパーにより貯留レーンに貯留される先頭の農産物の停止位置を調整可能としているので、ストッパーを大きく調整することにより貯留レーンに貯留される球形状農産物の貯留個数を変更でき、結果として排出する球形状農産物の定数を調整することができる。また、貯留する球形状農産物のサイズ(外径)によっては所定個数の球形状農産物を貯留レーンに貯留した状態において、最後尾の球形状農産物が貯留レーンの後端縁に一致しないという寸法差が生じることがあるので、この場合、ストッパーの位置を調整してこの寸法差を解消することができる。このため、貯留レーンに余分に球形状農産物が送り込まれることが防げ、逆に貯留レーンに貯留する球形状農産物の個数が少なくなるということが未然に防げる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、キンカン、ミニトマト、プラム、枇杷、梅等の比較的小振りサイズの球形状農産物を選別の対象とし、その外径を評価項目の一つとして仕分排出された同一外径(仕分区分)の球形状農産物を所定個数ずつ箱詰、袋詰などを行う選別包装装置において、仕分排出された球形状農産物を箱詰、包装する包装部に本装置を用いることができ、従来の選別包装装置にそのまま利用することができる。また、仕分区分(階級)に応じて箱詰個数が異なっていても容易に対応することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、確認センサーの検知結果に基づいて前記駆動手段を自動的に駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1実施例
図1〜図3は本発明の第1実施例を示す。図1は、本実施例による球形状農産物の定数排出装置を備えた農産物選別装置の概略構成を示す平面図、図2は図1に示す球形状農産物の定数排出装置の平面図、図3は図2のA−A矢視図である。
【0020】
図1に示す農産物の選別装置は、球形状農産物の中でキンカン、ミニトマト、プラム、枇杷、梅等の比較的小振りサイズの球形状農産物を選別対象(以下の説明ではキンカンを例にする)とし、生産者から持ち込まれたキンカン1はベルトコンベアで構成される農産物供給コンベア2上をランダムに搬送される。
【0021】
農産物供給コンベア2の搬送端には、ローラコンベアで構成されている整列コンベア3が接続されている。整列コンベア3は、搬送方向に向かって左右のローラ3aを逆ハの字形状に形成し、農産物供給コンベア2からランダムに供給されたキンカン1を幅方向中央に移動させながら一列に整列させる。その際、整列コンベア3の搬送速度を農産物供給コンベア2の搬送速度よりも速くすることにより、整列コンベア3に供給されるキンカン1の間隔を広くしている。
【0022】
整列コンベア3上を適度な間隔を有して一列に整列して搬送されるキンカン1は選別コンベア4に供給される。選別コンベア4は、仕分区分毎に設けた排出位置で搬送する農産物を選別コンベア4から排出できればよく、本実施例では鍵盤式コンベア(以下PK(Piano Key)コンベアと称す)により構成している。PKコンベアは、ピアノのキーのような細長い多数本の支持片を無端回動するチェーンに等ピッチで取り付け、各支持片を水平姿勢に維持した状態で農産物を搬送する。図示しないが各支持片は、例えば係合レバー部材の先端部に形成した係合フックが該支持片の係合ピンに係合した状態で水平姿勢が維持されており、この係合レバー部材の係合フックを該係合ピンから外れる係合解除方向に係合レバー部材を回動させると、該支持片が傾倒し、支持していた農産物が下方に落下排出する。この係合レバー部材を係合解除方向に回動させる手段として、電磁ソレノイドの駆動により進退動作するプッシュロッドにより構成される排出装置5が例示できる。この排出装置5は、前記プッシュロッドが進出して前記係合レバー部材の他端部を押し込むことで該係合レバー部材を係合解除方向に向けて回動させる。なお、PKコンベアを構成する支持片の隣接する複数本で1個のキンカンを支持するため、排出装置5によりこれらの該当する複数本の支持片を連続して傾倒するようにしている。
【0023】
選別コンベア4の搬送路上には、農産物の内部品質を検査する内部品質センサー6と、農産物の汚れ、傷、形状、サイズ等の外観を検査する外観センサー7とを配置しており、各センサー6、7で得られた検査データは不図示の管理装置に入力され、等階級などの仕分区分が判定される。
【0024】
選別コンベアであるPKコンベア4は、搬送速度が一定であるため、例えば支持片が連結されている無端チェーンが掛け回されているスプロケットの回転軸にエンコーダパルス板を設け、該エンコーダパルス板によって得られるパルスに基づいて管理装置は農産物の特定を行う。すなわち、内部品質センサー6を農産物が通過した時点を基準として上記パルスをカウントすると、この内部品質センサー6を通過した農産物が外観センサー7に到達する時刻は外観センサー7と内部品質センサー6との距離により一義的に決まる。したがって、前記管理装置には、内部品質センサー6からの検査データが順次記録され、当該農産物に対する外観センサー7からの検査データも記録される。そして、これらの検査データに基づいて仕分区分が判定される。
【0025】
選別コンベア4には、外観センサー7の搬送方向下流側に仕分区分に応じて仕分排出位置が複数設定されており、該仕分排出位置には排出装置5がそれぞれ設けられている。また、前記仕分排出位置には、前記選別コンベア4に直交してベルトコンベアで構成される引出コンベア8が配置されている。
【0026】
前述したように、前記管理装置に記憶されている各農産物は、例えば内部センサー6から各仕分排出位置までの距離が予め設定されていれば、選別コンベア4に搬送されて各仕分排出位置に到達する時刻が一義的に決まる。このため、前記管理装置は該当する仕分排出位置の排出装置5に対し、決定された時刻に仕分排出信号を出力する。
【0027】
排出装置5は前記管理装置から仕分排出信号が入力されると、前記電磁ソレノイドへ所定時間通電して前記プッシュロッドを進出させ、前記支持片を傾倒させて支持しているキンカン1を下方の引出コンベア8に落下排出する。
【0028】
上述のようにして仕分区分毎に仕分されたキンカン1は、引出コンベア8から定数排出装置10へ供給される。
【0029】
定数排出装置10は、傾動台11に貯留している所定個数のキンカン1を傾動動作により包装袋、パック又は小箱などの製品ボックス12に向けて排出する傾動排出装置13と、引出コンベア8からのキンカン1を傾動排出装置13に向けて供給する供給装置14とにより構成しており、本実施例において供給装置14は振動コンベアを用いていることから、供給装置14と引出コンベア8との間に隙間を設けると共に上下方向に段差を設け、その間に供給装置14とは非接触としている滑り台9を配置し、引出コンベア8からのキンカン1を滑り台9上を滑落させて供給装置14へ排出している。
【0030】
振動コンベアで構成される供給装置14は、基台15に対して振動搬送台16を板バネ17を介して搬送方向前方に向けて若干の下り傾斜勾配に取り付け、また基台15に取り付けた振動発生機18により振動搬送台16に搬送方向に沿った振動を与える。振動搬送台16の搬送面上には、搬送方向に向けて傾斜する多数本の突起(不図示)が上方に向けて形成されたゴムマット19が敷き詰められており、この突起により搬送方向に沿って振動する振動搬送台16の搬送面上の農産物であるキンカン1が搬送方向に向けて移動する。また、振動搬送台16の幅方向両側には側壁20が設けられ、搬送面上を移動するキンカン1がはみ出ないようにしている。
【0031】
本実施例において、振動搬送台16は、その搬送方向下流側が二股に分かれており、二股に分かれた各分岐搬送路21、21には、ランダムに搬送されてきたキンカン1を一列に整列させる整列レーン22を仕切り壁22a及び側壁22bにより複数レーン(本実施例では3レーン)並設している。振動コンベアは、振動搬送台16の振動によりゴムマット19の傾斜した突起が搬送方向前方に向けて移動する際に農産物であるキンカン1が該突起に押されて搬送方向前方に移動し、振動搬送台16が搬送方向後方に向けて移動する際には突起の傾斜により突起のみが搬送方向後方に移動し、次に搬送方向前方に向けて移動する際に再びキンカン1を前方に押し、これを繰り返すことでキンカン1を搬送方向前方に向けて移動させる。その際、キンカン1の前面側で何らかの部材を当接させてキンカン1の前進を阻んでも、キンカン1には傾斜した突起の前進方向成分の力が作用するだけなので、キンカン1の前進駆動力がさほど大きくないため、キンカン1は簡単に前進が停止し、またキンカン1を傷めることがない。
【0032】
振動搬送台16の各分岐搬送路21に対応してその搬送端には、各傾動排出装置13の傾動台11を若干の隙間を有して配置している。傾斜姿勢で配置されている各傾動台11は、分岐搬送路21に設けている3列の整列レーン22に合わせて仕切り壁23aおよび側壁23bにより3列の貯留レーン23を並設し、整列レーン22から貯留レーン23に至る搬送経路を略一直線としている。
【0033】
各傾動台11は、基台15から延びる製品箱載置台24に固定された側壁板25の間に配置され、該対向する一対の側壁板25の間に取り付けられた支軸26を支点として傾動可能としている。また、各傾動台11の傾動動作は、基台15と傾動台11との間に取り付けたエアーシリンダー装置27を駆動することにより、図2中実線で示す貯留状態と2点鎖線で示す排出状態との間を傾動可能としている。
【0034】
一対の側壁板25間の前方上部には、板部材で形成された前部ホッパー部材28と後部ホッパー部材29とによりホッパー30が形成され、傾動台11の各貯留レーン23に貯留されている所定個数のキンカン1が該ホッパー30に向けて排出され、このホッパー30に案内されて、製品箱載置台24上に各傾動台11に対応して載置されている包装袋又は小箱などの製品ボックス12に落下排出される。すなわち、傾動台11に形成された3つの貯留レーン23に貯留されている所定個数のキンカン1が一つの製品ボックス12に箱詰される。
【0035】
傾動台11の貯留状態における傾斜位置では、傾動台11の各貯留レーン23の後端が供給装置14の各整列レーン22の先端と略同レベル又は若干下がったレベルに位置し、各整列レーン22の搬送先端から送り出されたキンカン1が傾動台11の貯留レーン23の後端側から送り込まれる。傾動台1の貯留レーン23の後端側から送り込まれたキンカン1は、傾動台11の貯留レーン23を前方に向かって滑落する。
【0036】
傾動台11における各貯留レーン23の先端は開口して塞がれていない構造としている。したがって、このままでは貯留レーン23の傾斜上端側である後端側から送り込まれたキンカン1は貯留レーン23の先端側から飛び出てしまう。そこで、傾動台11が貯留状態の傾斜位置に停止している場合、傾動台11の各貯留レーン23の先端部にストッパー31を位置させている。これらの各ストッパー31は前部ホッパー部材28の上板部28aに取り付けられている。各ストッパー31は、先端部をR形状に形成した矩形平板状に形成されると共に、長さ方向に延びる個数調整用の長孔31aが形成されている。前部ホッパー部材28の上板部28aには、各ストッパー31に対応してナット部材28bをそれぞれ固定し、長孔31aを通して固定ボルト28cをこのナット部材28bにねじ込むことにより、ストッパー31を固定している。
【0037】
図2に示すように、傾動台11の貯留状態における傾斜位置に保持されている場合、傾動台11の各貯留レーン23を滑り落ちる先頭のキンカン1がストッパー31に当接して停止する。したがって、その後に当該貯留レーン23に送り込まれたキンカン1は先頭のキンカン1の後に連なって停止し貯留され、貯留個数が増加する。貯留レーン23の長さ方向におけるストッパー31の設定位置によって、貯留される先頭のキンカン1の停止位置が異なるため、貯留レーン23の後端まで貯留されるキンカン1の個数が調整可能となる。ストッパー31の設定位置の調整は、固定ボルト28cを緩めて長孔31aの位置を変更することにより行える。
【0038】
本実施例では、傾動排出装置13の有する全ての貯留レーン23(本実施例では3レーン)に所定個数のキンカン1が貯留されるのを待ってエアーシリンダー装置27を駆動して傾動台11をキンカン1の排出のために傾動させるが、その間に既に所定個数のキンカン1が貯留されている貯留レーン23にあっては、最後尾のキンカン1が供給装置14の整列レーン22に整列している先頭のキンカン1と当接することになる。
【0039】
しかし、供給装置14を上述のように振動コンベアで構成しているため、整列レーン22の先頭のキンカン1に付与される搬送力は小さい。したがって、貯留レーン23の最後尾のキンカン1と整列レーン22の先頭のキンカン1とが当接しても押し付け合う力が小さく、これらのキンカン1が傷むことがない。
【0040】
上述のように、傾動排出装置13の全ての貯留レーン23に所定個数のキンカン1が貯留されると、例えばこれを目視により確認した作業者がエアーシリンダー装置27を操作して傾動台11を貯留状態の傾斜位置から排出状態の傾斜位置へと傾斜角度を大きくし、図2において傾動台11を支軸26を中心として反時計方向に回動させる。
【0041】
傾動台11が図2に実線で示す貯留状態の位置から反時計方向に回動すると、傾動台11の先端側が下方に下がるため、貯留レーン23の先頭に位置するキンカン1はストッパー31の先端部との当接状態から外れ、貯留レーン23の先端から下方に排出されることとなり、各貯留レーン23に一列に整列して貯留されていた所定個数のキンカン1がホッパー30に投入され、該ホッパー30の下部排出口30aからその真下に配置した製品ボックス12内に箱詰される。
【0042】
一方、傾動台11が貯留している所定個数のキンカン1を排出のために傾動すると、供給装置14の各整列レーン22の先頭に位置するキンカン1の前進を阻止していた貯留コンベア23の最後尾のキンカン1との当接が外れ、傾動台11の後端部の上方への移動により、整列レーン22上のキンカン1が整列レーン22の先端から飛び出てしまう。
【0043】
そこで、本実施例では傾動台11の後端に後方に向かって凸に湾曲したシャッター32を取り付けており、このシャッター32は傾動台11の上面から下方に向けて下がっている。
【0044】
したがって、傾動台11が貯留状態としている傾斜位置において、シャッター32は供給装置14の整列レーン22から傾動台11の貯留レーン23にわたる搬送路上に存在しない。しかし、傾動台11がこの貯留状態の傾斜位置から反時計方向に向かって傾動を開始すると、傾動台11の後端側が上方に持ち上がるので、シャッター32が供給装置14の整列レーン22の先端前方を塞ぐようにせりあがってくる。このため、整列レーン22の先端に位置しているキンカン1はこのシャッター32によって前進が阻止されることになる。なお、シャッター32は整列レーン22の先端と干渉せずに僅かな隙間を有して上下方向に回動できるようにしている。
【0045】
傾動台11が傾動したときに、整列レーン22の先頭に位置するキンカン1が貯留レーン23の後端側に若干入り込んでいた場合でも、この湾曲したシャッター32が先頭のキンカン1に当接しながら当該キンカン1を整列レーン22側に押し返すようにせり上がるので、先頭のキンカン1が傾動台11の後端を乗り越えて貯留レーン23に余分に送り込まれ、また整列レーン22から飛び出てしまうことを阻止できる。
【0046】
また、シャッター32によりキンカン1の前進を確実に阻止するためには、傾動台11が反時計方向に回動した際、キンカン1の高さと略同レベルとなる位置まで上方へ移動できることが望ましい。
【0047】
傾動台11を排出位置まで傾斜させ、傾動排出装置13の有する全ての貯留レーン23(本実施例では3レーン)のキンカン1が全て排出されたことを作業員が目視により確認すると、エアーシリンダー装置27を操作してそのピストンロッドを縮める方向に駆動することにより、傾動台11は後端側が下方に向けて下がる方向である時計回り方向に回動する。そうすると、傾動台11の後端に取り付けられているシャッター32も下方に降り、整列レーン22の先頭に位置するキンカン1との当接が解除されることで当該キンカン1の前進が可能となる。
【0048】
そして、傾動台11が貯留状態となる傾斜位置まで回動すると、供給装置14の整列ライン22上のキンカン1が空の貯留レーン23の後端から所定個数となるまで送り込まれることになる。
【0049】
上記した実施例において、振動コンベアで構成される供給装置14に2つの分岐搬送路21を形成し、この2つの分岐搬送路21に対応して別々に駆動される傾動排出装置13を配置しているが、分岐搬送路21を3もしくはそれ以上設け、これに合わせて傾動排出装置13を設けるようにしても良く、また供給装置14には分岐搬送路を設けずに搬送路を一列とし、これに合わせて傾動排出装置13も一つとしても良い。
【0050】
また、上述の説明は、各貯留レーン23に貯留するキンカン1の所定個数は全て同数としているが、キンカン1の階級によってキンカン1の外径が異なる。このため、各仕分区分における傾動排出装置13を同一規格のものを使用する場合、ストッパー31の設定位置を同じ位置としていると、階級によっては貯留レーン23に所定個数のキンカン1を貯留した状態において、貯留レーン23に貯留されている最後尾のキンカン1の後端面(キンカン1の外形後端)位置が、貯留レーン23の後端縁位置に一致する場合もあれば、一致しない場合もある。一致しない場合には、整列レーン22の先頭のキンカン1が貯留レーン23の後端縁よりも貯留レーン23側に入り込む場合と、貯留レーン23の最後尾のキンカン1が該貯留レーン23の後端縁よりも整列レーン22側に入り込む場合とがある。いずれの場合でも貯留レーン23について所定個数のキンカン1を確実に貯留して排出できるとは限らない。
【0051】
そこで、図4(a)に示すように、各階級に合わせてストッパー31の停止位置を調整することで、キンカン1が貯留レーン23に所定の個数貯留された状態において、最後尾のキンカン1を貯留レーン23の後端縁に一致させることができる。このように階級によって外径が異なる場合でも、所定個数のキンカン1を確実に貯留して排出できる。
【0052】
また、図4(a)では、傾動排出装置13における3つの貯留レーン23に対してそれぞれ5個のキンカン1を貯留し、合計15個のキンカン1を定数として製品ボックス12に投入するようにしているが、合計14個のキンカン1を定数とする場合には、図4(b)に示すように、3つの貯留レーン23の中の一つの貯留レーン23に対して(本実施例では真ん中の貯留レーン)ストッパー31の位置をキンカン1の1個分だけ後方にずらし、当該貯留レーン23に貯留するキンカン1の数を4個とすることにより定数14を確保することができる。
【0053】
同様に、定数13とする場合には、図4(c)に示すように、3つの貯留レーン23の中の2つの貯留レーン23に対して(本実施例では両側の貯留レーン)ストッパー31の位置をキンカン1の1個分だけ後方にずらし、残りの一つの貯留レーン23に貯留するキンカン1の数を5個とするようにストッパー31の一を設定することにより定数13を確保することができる。
【0054】
このように、複数の貯留レーン23におけるキンカン1の貯留個数をストッパー31の停止位置により調整し、排出するキンカン1の定数を変更することができ、各貯留レーン23の貯留個数が同数とする場合だけではなく、各貯留レーン23の貯留個数が異なる千鳥状の貯留配列態様とすることにより、細かな個数設定を容易に行うことができる。
【0055】
また、階級(仕分区分)によってそれぞれ異なる貯留個数(例えば、S階級を15個、M階級を14個、L階級を13個)で箱詰する場合には、各傾動排出装置13の貯留個数を階級に応じてそれぞれ変更する必要がある。
【0056】
本実施例ではこの変更についても、同一規格の傾動排出装置13を選別装置の各仕分排出位置に対応してそれぞれ配置し、各階級に応じてストッパー31の位置を調整するだけで極めて簡単に行うことができ、一つの傾動排出装置13が複数の階級に共通して使用できるという汎用性の高い装置を提供することができる。
【0057】
このように本装置を従来の選別装置に用いて、農産物の種類や階級(外径)に応じた様々な箱詰態様に対応して所定個数のキンカン1を排出することが容易に行える。
【0058】
また、本実施例では、傾動排出装置13における全ての貯留レーン23にキンカン1が満杯になったことを作業者が目視により確認してエアーシリンダー装置27を操作するようにしているが、自動的にエアーシリンダー装置27を駆動制御するようにしてもよい。各貯留レーン23の後端部(供給装置14からキンカン1が送り込まれる入り口側)にキンカン1が貯留レーン23に送り込まれたことを確認する確認センサー36を設け、これらの確認センサー36からの情報を管理装置(不図示)に出力する。前記管理装置は、各貯留レーン23に貯留しているキンカン1が設定した貯留個数に達すると満杯と判断し、全ての貯留レーン23が満杯になったと判断すると、エアーシリンダー装置27を駆動する。例えば傾動台11を排出位置に所定時間傾動維持後、エアーシリンダー装置27を駆動して再び傾動台11を貯留位置に戻す。
【0059】
なお、確認センサー36としては、機械式のマイクロスイッチ,あるいは発光素子と受光素子とからなり、キンカン1が通過すると該発光素子からの光が反射して該受光素子に入射し、検出信号を出力する光スイッチなどが例示できる。
【0060】
製品ボックス12に定数のキンカン1が収納されると、荷送りコンベア33上に製品ボックス12を載せ、作業者Wの脇に配置した積層パック置き場34から空の製品ボックス12を取り出し、ホッパー30の排出口30aの真下に配置する。なお、製品ボックス12を位置決め板35に宛がうことにより、製品ボックス12を所定位置に配置できるようにしている。
【0061】
第2実施例
図5は本発明の第2実施例を示す。
【0062】
上記した第1実施例では、傾動排出装置13は、傾動台11を貯留位置から排出位置へ傾動することにより、貯留レーン23の先頭に位置するキンカン1に対するストッパー31の当接を解除し、同時に傾動台11の後端縁に設けたシャッター32がせり上がって供給装置14の整列レーン22の先端を塞ぎ、貯留レーン23に貯留したキンカン1の排出時に供給装置14から貯留レーン23にキンカン1が送り込まれないようにしている。
【0063】
これに対し、本実施例では傾動台11に代えて単に傾斜した傾動不能の固定台51の上面に第1実施例と同様に3条の貯留レーン52とし、この傾斜した固定台51の上方に矩形枠状の傾動フレーム53を固定台51の上方に軸受54に軸支された支軸55を中心として傾動可能に配置する。この傾動フレーム53の前部には、3条の貯留レーン52を跨いで平行な2つの桟部材56、57が取り付けられている。桟部材56、57には、選択的にストッパー58を下向きに配置し、後部にシャッター59を上向きに配置している。ストッパー58は貯留レーン52毎に設けられ、シャッター59は3条の貯留レーン52を1枚の部材でカバーしている。傾動フレーム53を実線で示す貯留位置から二点鎖線で示す排出位置に傾動させることにより、ストッパー58が貯留レーン52を塞ぐ位置から上方に移動するとシャッター59が上方から整列レーン22の前面を塞ぐ位置に下がる。
【0064】
ストッパー58は、貯留個数を5個とする場合には第1の桟部材56にボルト締めし、貯留個数を4個とする場合には第2の桟部材57にボルト締めを行う。第1の桟部材56、第2の桟部材57には各貯留レーン52に対応してボルトの通し孔60が形成され、ボルト61をこの通し孔60及びストッパー58の長孔58aを挿通し、ナット62で締付けてストッパー58を固定する。また、ボルト61を緩めてストッパー58を前後方向に移動させることにより、第1実施例と同様に、所定個数を貯留した際に、最後尾のキンカン1が固定台51の後端に位置するように調整することができる。
【0065】
また、ストッパー58は、ボルト・ナット61,62により桟部材56,57に取り付けられる基部63と、この基部63に対して上下方向に位置調整可能にボルト・ナット64,65によりストッパー本体66を取り付けている。このため、貯留する農産物であるキンカン1の外径が階級により異なっても、このストッパー本体66を上下させることにより貯留レーン52に貯留される先頭位置のキンカン1と最適位置で当接できるようにしている。本実施例において、ストッパー本体66には、キンカン1と当接する球面状の突起部67が設けられ、この突起部67がキンカン1の赤道よりも少し上方の位置で当接するようにしている。
【0066】
これは第1実施例と同様に、ストッパー本体66が上方にせりあがる途中でキンカン1と当接することがないようにし、またできるだけ先頭位置のキンカン1に対して突起部67から大きな当接力が作用しないようにしている。
【0067】
また、上述の第1実施例では、傾動台11に複数個のキンカン1が貯留されるため、これを傾動させるにはある程度の力が必要であり、迅速に傾動台11を傾動させるにはエアーシリンダー装置27が好適である。これに対し、本実施例において、傾動フレーム53は、ストッパー58とシャッター59が取り付けられているだけで、キンカン1を満載した傾動台11に比べて非常に軽量であるため、ステップモータなどのモータ(不図示)を駆動源として支軸55に直結して使用することができ、装置のコンパクト化及び制御の容易性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明による球形状農産物の定数排出装置の第1実施例を備えた農産物選別装置の概略構成を示す平面図。
【図2】図1に示す球形状農産物の定数排出装置の平面図。
【図3】図2のA−A矢視図。
【図4】貯留レーンとストッパーとの位置関係を示し、(a)は各貯留レーンにおける所定の貯留数を5個とし、最後尾の球形状農産物が貯留レーンの後端位置に一致するように位置合わせした状態を示す。(b)は5+4+5個=14個の貯留状態、(c)は4+5+4個=13個の貯留状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例を示し、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【符号の説明】
【0069】
W 作業者
1 キンカン
2 農産物供給コンベア
3 整列コンベア
3a ローラ
4 選別コンベア
5 排出装置
6 内部品質センサー
7 外観センサー
8 引出コンベア
9 滑り台
10 定数排出装置
11 傾動台
12 製品ボックス
13 傾動排出装置
14 供給装置
15 基台
16 振動搬送台
17 板バネ
18 振動発生機
19 ゴムマット
20 側壁
21 分岐搬送路
22 整列レーン
22a 仕切り壁 22b 側壁
23 貯留レーン
23a 仕切り壁 23b側壁
24 製品箱載置台
25 側壁板
26 支軸
27 エアーシリンダー装置
28 前部ホッパー部材
28a 上板部 28b ナット部材 28c 固定ボルト
29 後部ホッパー部材
30 ホッパー
30a 排出口
31 ストッパー
31a 長孔
32 シャッター
33 荷送りコンベア
34 積層パック置き場
35 位置決め板
51 固定台
52 貯留レーン
53 傾動フレーム
54 軸受
55 支軸
56,57 桟部材(第1桟部材、第2桟部材)
58 ストッパー
58a 長孔
59 シャッター
60 通し孔
61 ボルト
62 ナット
63 基部
64 ボルト
65 ナット
66 ストッパー本体
67 突起部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜姿勢に配置されていて、傾斜上面に一列又は複数列の球形状農産物の貯留レーンを形成し、傾斜下端側を該球形状農産物の排出側とすると共に傾斜上端側を該球形状農産物の供給側とし、農産物供給手段により球形状農産物の供給を受ける貯留位置と貯留した農産物を排出する排出位置との間を装置本体に対して傾動可能な傾動台と、
前記傾動台を傾動するための傾動手段と、
前記貯留レーンに貯留される先頭の球形状農産物と当接して該先頭の球形状農産物の停止位置を決める装置本体に対して固定されているストッパーと、
前記傾動台の傾斜上端側に取り付けられ、前記貯留位置から前記排出位置への該傾動台の傾動により前記農産物供給手段の供給端側を塞ぐシャッターと、
を有し、
前記傾動台が前記貯留位置から前記排出位置へ傾動すると、前記貯留レーンの先頭に位置する球形状農産物は前記ストッパーとの当接から外れて排出することを特徴とする球形状農産物の定数排出装置。
【請求項2】
傾斜姿勢に配置されていて、傾斜上面に一列又は複数列の球形状農産物の貯留レーンを形成し、傾斜下端側を該球形状農産物の排出側とすると共に傾斜上端側を該球形状農産物の供給側とし、農産物供給手段により球形状農産物の供給を受ける装置本体に固定されている固定台と、
前記固定台に対して傾動可能な傾動フレームと、
前記傾動フレームを傾動するための駆動手段と、
前記貯留レーンに貯留される先頭の球形状農産物と当接して該先頭の球形状農産物の停止位置を決める前記傾動フレームの先端側に取り付けられたストッパーと、
前記傾動フレームの後端側に取り付けられ、前記貯留位置から前記排出位置への該傾動フレームの傾動により前記農産物供給手段の供給端側を塞ぐシャッターと、
を有し、
前記ストッパーが前記貯留レーンの先頭に位置する球形状農産物との当接から外れる方向に前記傾動フレームを傾動させると、前記シャッターが前記農産物供給手段の供給端側を塞ぐことを特徴とする球形状農産物の定数排出装置。
【請求項3】
前記農産物供給手段は、振動コンベアであることを特徴とする請求項1または2に記載の球形状農産物の定数排出装置。
【請求項4】
前記ストッパーは前記貯留レーンに貯留される先頭の農産物の停止位置を調整可能としていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の球形状農産物の定数排出装置。
【請求項5】
前記農産物供給手段には、外径が略同一の球形状農産物が供給されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の球形状農産物の定数排出装置。
【請求項6】
前記貯留レーンには、貯留している球形状農産物の個数を確認できる確認センサーを設けていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の球形状農産物の定数排出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−37483(P2008−37483A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217030(P2006−217030)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000137328)株式会社マキ製作所 (48)
【Fターム(参考)】