説明

球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法及びそれによって得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子並びにそれを用いて得られる球状炭素粒子及び球状活性炭粒子

【課題】反応系に超音波を照射することなく、また原料に有害なアルデヒド類を用いることもなく、フルフリルアルコールのみを単独で用いて、樹脂化、硬化させることにより、微細な球状のフルフリルアルコール樹脂粒子を有利に製造する方法を提供すること。
【解決手段】フルフリルアルコールを、保護コロイドの存在下に、pKaが1.5未満の酸触媒を用いて自己縮合反応させて樹脂化せしめ、更に加熱して硬化させることにより、球状のフルフリルアルコール樹脂粒子を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法と、それによって得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子、並びにそれを焼成して炭素化し、更に賦活して得られる球状炭素粒子や球状活性炭粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、球状樹脂粒子は、その性質を利用して、充填材、難燃剤、研磨材、気孔材、スペーサ、炭素材料前躯体等の各種の分野で使用されてきている。そして、そのような球状樹脂粒子の一つである、原料にフラン類を用いて得られる球状フラン樹脂粒子は、特開2007−66669号公報等に明らかにされている如く、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとを反応させて製造されており、電池の電極材料等としての利用が検討されているのであるが、そこでは、原料に有害物質となるホルムアルデヒドを使用する必要があり、そのために、フルフリルアルコールとの反応条件を考慮しなければならない他、作業環境等にも注意を払わなければならない等という問題を内在するものであった。
【0003】
また、特開2007−63377号公報においては、フルフリルアルコールに加えて、かかるホルムアルデヒドを用いたフラン樹脂の製造に際して、球状で且つ粒子径がナノオーダーの樹脂粒子を得るべく、反応系に超音波を照射しながら、付加縮合反応をさせる手法が明らかにされているが、そこでも、ホルムアルデヒドを用いることによる問題に加えて、反応系に超音波を照射しなければならないという問題があり、そのために、特別な製造装置を使用しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−66669号公報
【特許文献2】特開2007−63377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、反応系に超音波を照射することなく、そして、原料に有害なアルデヒド類を用いることもなく、フルフリルアルコールのみを単独で用いて、樹脂化、硬化させることにより、微細な球状のフルフリルアルコール樹脂粒子を有利に製造する方法を提供することにあり、また、そのようにして得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を提供すること、更にはそのような樹脂粒子を焼成したり、賦活したりして得られる球状の炭素粒子や活性炭粒子をも、その課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、本発明者は、上記した課題を克服するために鋭意検討を行なった結果、フルフリルアルコールを、pKa値が1.5未満の酸触媒及び保護コロイドの存在下において、自己縮合反応させて樹脂化せしめ、更に硬化させることにより、従来の如く反応系に超音波を照射することなく、また、原料に有害なアルデヒド類を用いることもなく、平均粒子径が0.01μmから1000μmまでの球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造することが出来ることを見出し、そして、かかる知見を基にして更に研究を重ねて、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
従って、そのような知見を基にして完成された本発明の要旨とするところは、フルフリルアルコールを、保護コロイドの存在下に、pKaが1.5未満の酸触媒を用いて自己縮合反応させて樹脂化せしめ、更に加熱して硬化させることにより、球状のフルフリルアルコール樹脂粒子を得ることを特徴とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法にある。
【0008】
なお、かかる本発明に従う球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法の望ましい態様の一つによれば、前記酸触媒は、アルキルベンゼンスルホン酸であり、特に、炭素数が10以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸であることが望ましく、そしてそこでは、反応媒体として、フルフリルアルコールに対して0.5質量倍〜25質量倍の水が、有利に用いられることとなるのである。
【0009】
また、本発明によれば、平均粒子径が0.01μm〜1000μmであるフルフリルアルコール樹脂の球状粒子が有利に得られ、また、そのような球状の樹脂粒子を焼成することにより、球状炭素粒子が得られ、更に、その得られた球状炭素粒子を賦活処理することによって、効果的に球状活性炭粒子とすることが出来るのである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、反応系に超音波を照射するような特別な装置を使用することなく、また、原料に有害なアルデヒド類を用いることもなく、平均粒子径が0.01μmから1000μmまでの球状フルフリルアルコール樹脂粒子を容易に製造することが出来ることとなったのであり、以て、フルフリルアルコール樹脂からなる微細な球状の粒子を、工業的に有利に提供し得ることとなったのである。
【0011】
しかも、本発明にあっては、フルフリルアルコールの単独系にて、それを自己縮合させて樹脂化し、更にフラン環の開裂が進むことによる3次元架橋(硬化)せしめることによって、微細な球状粒子を得るものであるところから、工業的に有利にフルフリルアルコール樹脂粒子が提供され得ることとなるのであり、また、そのような球状樹脂粒子を炭素化したり、賦活したりして得られる炭素粒子や活性炭粒子にあっても、各種の用途に有利に用いられ得るのである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ところで、本発明に従って、目的とするフルフリルアルコール樹脂からなる微細な球状粒子を製造するには、先ず、フルフリルアルコールが、水を反応媒体として、保護コロイドの存在下、pKa値が1.5未満の酸触媒を用いて自己縮合反応させられて、樹脂化せしめられ、更に、加熱して硬化させられることとなるのであり、そしてその後、形成された樹脂粒子を含む反応生成液を濾過、洗浄することによって、平均粒子径が0.01μm〜1000μmの微細な球状粒子として、取り出されることとなる。
【0013】
そこにおいて、そのようなフルフリルアルコールの反応系に存在せしめられる保護コロイドは、生成したフルフリルアルコール樹脂を微細な球状粒子の形態にて得る目的で添加されるものであって、その種類としては、特に限定されるものではなく、従来より公知の各種の保護コロイドを使用することが出来る。ここで、本発明の目的をより一層有利に達成せしめるものとしては、アラビアゴム、ガッチゴム、ヒドロキシアルキルグアルゴム、部分加水分解ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することが出来、それらの中でも、特に、アラビアゴムが好適に用いられ得る。
【0014】
なお、このような保護コロイドは、単独で用いることも、又は2種以上を組み合わせて用いることも、可能である。また、かかる保護コロイドと共に、適当な界面活性剤を併用することも、可能である。更に、その使用量は、用いられる保護コロイドの種類等に応じて適宜に決定されることとなるが、一般的には、フルフリルアルコールに対して0.1〜10質量%程度の割合となるように、好ましくは0.5〜5質量%程度の割合となるように、更に好ましくは1〜3質量%程度の割合となるような量において、使用されることとなる。
【0015】
そして、本発明においては、上記した保護コロイドと共に、フルフリルアルコールの自己縮合反応(樹脂化)や硬化のための触媒として、pKa値が1.5未満の酸触媒が用いられ、これによって、生成するフルフリルアルコール樹脂の微細化が効果的に実現せしめられ得て、平均粒子径が0.01μm〜1000μmの球状微粒子が、有利に形成され得るのである。なお、そのような酸触媒のpKa値が1.5以上となると、フルフリルアルコールの自己縮合反応(樹脂化)や硬化を充分に進行させ得なくなったり、生成する樹脂粒子の有効な微細化が困難となったりする等の問題を惹起する。
【0016】
ここで、そのような酸触媒としては、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸等を挙げることが出来、そしてこれらが、単独で又は組み合わせて、用いられることとなるが、それらの中でも、有利には、アルキルベンゼンスルホン酸、特に、炭素数が10以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸が、好適に用いられ得、更に望ましくは、経済性や入手容易性、そして触媒機能等の観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸の使用が、特に推奨される。
【0017】
なお、かかる酸触媒は、フルフリルアルコールの反応条件、更には、保護コロイドの種類等により、その使用量が適宜に決定されることとなるが、一般に、フルフリルアルコールに対して、0.1〜10質量%程度の割合において、好ましくは0.5〜7質量%程度の割合において、更に好ましくは1〜5質量%程度の割合において、用いられる。この酸触媒の使用量が少なくなると、本発明の目的を充分に達成し難くなる恐れがあるからであり、また、その使用量が多くなると、反応途中に多量に泡が発生し均一攪拌が困難となり、1μm以下の粒子が出来なくなる等という問題を惹起するようになる。
【0018】
また、フルフリルアルコールを自己縮合反応(樹脂化)せしめ、更に硬化反応を進行させるために用いられる、反応媒体としての水の量にあっても、反応条件等に応じて、適宜に選定されることとなるが、一般に、仕込みフルフリルアルコール量に対して、0.5質量倍〜25質量倍程度、好ましくは1質量倍〜20質量倍程度、更に好ましくは5質量倍〜15質量倍程度の割合において、用いられることが、望ましい。なお、この水の使用量が、仕込みフルフリルアルコールに対して、0.5質量倍よりも少なくなると、反応生成物が塊状化する等の問題が惹起されるようになるからであり、また、25質量倍よりも多くなると、反応時間が長くなり過ぎて、経済的でない等の問題が惹起されるようになる。
【0019】
そして、本発明に従うフルフリルアルコールの自己縮合反応(樹脂化)や硬化(架橋)の反応に際して採用される反応温度としては、反応効率の観点から、一般に、50℃以上の温度が選定され、好ましくは70℃以上の温度、より好ましくは80℃以上の温度において反応せしめられて、生成する樹脂の微粒子化が図られることとなる。なお、かかる自己縮合反応(樹脂化)と硬化(架橋)の反応は、それぞれ別個の工程において実施することも可能ではあるが、本発明においては、有利には、自己縮合反応に続いて、連続的に硬化反応が進行せしめられることとなり、また、それら2つの反応工程は、同一の温度にて行なわれ得る他、自己縮合反応(樹脂化)に採用される温度よりも高い温度において、硬化(架橋)反応を進行せしめるようにすることも、有利に採用されるのである。更に、反応時間は、それら反応温度や反応系の含水量、生成物の縮合状況や硬化の状況等を考慮しながら、適宜に決定されるものであるが、それら2つの反応に必要とされる合計の反応時間としては、一般的には、1〜50時間程度が採用されることとなる。
【0020】
そして、本発明に従う球状フルフリルアルコール樹脂粒子は、上述の如くしてフルフリルアルコールを反応せしめることによって生じた樹脂粒子を含む反応生成液を、濾過、洗浄することによって、その平均粒子径が0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、上限が1000μm以下となる球状の樹脂粒子として、取り出されるのである。
【0021】
また、このようにして取り出された、本発明に従う球状フルフリルアルコール樹脂粒子は、公知の各種の手法に従って焼成されて、微細な球状炭素粒子を有利に与えるものである。例えば、そのような樹脂粒子を、ロータリー式外熱炉等を用いて、窒素雰囲気下において、400〜850℃で炭素化することにより、目的とする微細な球状炭素粒子が有利に得られるのである。
【0022】
さらに、そのような球状炭素粒子には、適当な賦活処理が施されることによって、目的とする球状活性炭粒子が形成されることとなる。なお、そのような球状炭素粒子の賦活処理は、常法に従って実施することが出来、例えば、ガス賦活や薬品賦活の何れかを採用して、500〜1000℃の温度で賦活処理を実施することにより、目的とする活性炭粒子が有利に形成せしめられ得るのである。また、この賦活工程は、上記した炭素化工程に引き続いて、連続して行なうことが出来る他、別個の工程として独立して実施することも、可能である。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下において得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の平均粒子径及び残炭率、球状活性炭粒子の比表面積は、それぞれ、以下に示す方法に従って、評価されたものである。
【0024】
(1)平均粒子径
日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置:MT3200IIを用いて、体積平均粒子径(D50)として測定した。
(2)残炭率
外熱式ロータリーキルンを用いて、それぞれの球状フルフリルアルコール樹脂粒子を炭素化したときの重量変化量より、残炭率を算出した。
(3)比表面積
日本ベル株式会社製BELSORP−miniを用いて、比表面積を測定した。
【0025】
(実施例1)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の147.75質量部、アラビアゴムの0.5質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸(pKa=−2.0)の10%水溶液の2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で5時間反応させた(硬化反応)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とするフルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた樹脂粒子が球状であることを、SEM写真で確認すると共に、更にこの球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0026】
さらに、かかる得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で30分間加熱することにより、炭素化した。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素、水蒸気中、900℃で4時間賦活して、球状活性炭粒子を得た。そして、用いた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の残炭率及び球状活性炭粒子の比表面積を測定して、それらの結果を、下記表1に併せ示した。
【0027】
(実施例2)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の147.75質量部、アラビアゴムの0.05質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で5時間反応させた(硬化)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0028】
さらに、かかる得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下、800℃で30分間加熱することにより、炭素化した。更に続いて、その得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素、水蒸気中、900℃で5時間賦活して、球状活性炭粒子を得た。用いた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の残炭率及び球状活性炭粒子の比表面積を測定して、それらの結果を、下記表1に併せ示した。
【0029】
(実施例3)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の72.75質量部、アラビアゴムの0.5質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で5時間反応させた(硬化)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0030】
さらに、かかる得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下、650℃で30分間加熱することにより、炭素化した。更に続いて、その得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素、水蒸気中、900℃で5時間賦活して、球状活性炭粒子を得た。用いた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の残炭率及び球状活性炭粒子の比表面積を測定して、それらの結果を、下記表1に併せ示した。
【0031】
(実施例4)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の97.75質量部、アラビアゴムの0.08質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で5時間反応させた(硬化)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0032】
さらに、かかる得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下、650℃で30分間加熱することにより、炭素化した。更に続いて、その得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素、水蒸気中、800℃で17時間賦活して、球状活性炭粒子を得た。用いた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の残炭率及び球状活性炭粒子の比表面積を測定して、それらの結果を、下記表1に併せ示した。
【0033】
(実施例5)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の97.75質量部、ヒドロキシエチルセルロースの1質量部及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で5時間反応させた(硬化)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0034】
さらに、かかる得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下、500℃で30分間加熱することにより、炭素化した。更に続いて、その得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素、水蒸気中、800℃で9時間賦活して、球状活性炭粒子を得た。用いた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の残炭率及び球状活性炭粒子の比表面積を測定して、それらの結果を、下記表1に併せ示した。
【0035】
(実施例6)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の291質量部、アラビアゴムの1質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の10質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら100℃まで加熱して、7時間反応させ、連続的に自己縮合と硬化の反応を進行せしめた。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0036】
さらに、かかる得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下、650℃で30分間加熱することにより、炭素化した。用いた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の残炭率を測定して、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0037】
(実施例7)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の973質量部、アラビアゴムの2質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の30質量部を仕込んだ後、実施例6と同様にして、内容物を攪拌混合しながら100℃まで加熱し、7時間反応させた。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0038】
(実施例8)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の473質量部、アラビアゴムの2質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の30質量部を仕込んだ後、実施例6と同様にして、内容物を攪拌混合しながら100℃まで加熱し、7時間反応させた。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0039】
(実施例9)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の300質量部、アラビアゴムの1質量部、及びパラトルエンスルホン酸(pKa=−2.8)の1質量部を仕込んだ後、実施例6と同様にして、内容物を攪拌混合しながら100℃まで加熱し、7時間反応させた。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄、乾燥することにより、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。そして、この得られた球状樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0040】
さらに、かかる得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下、650℃で30分間加熱することにより、炭素化した。用いた球状フルフリルアルコール樹脂粒子の残炭率を測定して、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0041】
(比較例1)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の500質量部、アラビアゴムの3質量部、及び89%リン酸(pKa=2.2)の2質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら100℃まで加熱し、7時間反応させた。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却したが、反応物は未硬化であった。
【0042】
(比較例2)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの100質量部、水の147.75質量部、ノニオン界面活性剤(竹本油脂株式会社製、パイオニンD409)の1質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液の2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら80℃まで加熱し、2時間反応させた。その後、100℃まで反応させている途中に、内容物が塊状化した。
【0043】
【表1】

【0044】
かかる表1の結果から明らかな如く、本発明手法に従う実施例1〜9において得られた球状フルフリルアルコール樹脂粒子は、何れも、体積平均粒子径(D50)が1000μm以下の粒径のものであり、特に、触媒としてのドデシルベンゼンスルホン酸や保護コロイドとしてのアラビアゴムを多く使用した実施例7においては、1μmよりも小さな粒径の球状フルフリルアルコール樹脂粒子を得ることが出来た。これに対して、ドデシルベンゼンスルホン酸を添加せずに、触媒として89%リン酸水溶液を用いた比較例1や、保護コロイドとしてのアラビアゴムやヒドロキシエチルセルロースを用いない比較例2においては、未硬化の樹脂粒子となったり、塊状化した樹脂となったりして、目的とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子を得ることが出来なかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフリルアルコールを、保護コロイドの存在下に、pKaが1.5未満の酸触媒を用いて自己縮合反応させて樹脂化せしめ、更に加熱して硬化させることにより、球状のフルフリルアルコール樹脂粒子を得ることを特徴とする球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記酸触媒が、アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項1に記載の球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記酸触媒が、炭素数が10以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
平均粒子径が、0.01μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
フルフリルアルコールに対して0.5質量倍〜25質量倍の水が、反応媒体として用いられる請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の球状フルフリルアルコール樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の製造方法によって得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂粒子を焼成することで得られる球状炭素粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の球状炭素粒子を賦活することで得られる球状活性炭粒子。


【公開番号】特開2011−157463(P2011−157463A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19946(P2010−19946)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】