説明

環境的に安定なセンサおよびそれを使用する方法

環境的に安定なバイオセンサが開示され、それはリガンド結合時の蛍光共鳴エネルギー移動の検出および測定を可能にするドナーおよび蛍光部分に結合する好熱性生物由来のリガンド結合ドメインを含む。かかるバイオセンサは、中温生物由来のタンパク質ドメインを用いて構築されたセンサと比較して酸、熱および化学安定性が高いことを示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年3月4日出願の米国仮特許出願第60/658,142号の優先権を主張するものであり、その全体が本明細書中に含まれる。
【0002】
本出願は、米国仮特許出願第60/643,576号、米国仮特許出願第60/658,141号、米国仮特許出願第60/657,702号、PCT出願[代理人整理番号第056100−5053号、「Phosphate Biosensors and Methods of Using the Same」]、PCT出願[代理人整理番号第056100−5054号、「Methods of Reducing Repeat−Induced Silencing of Transgene Expression and Improved Fluorescent Biosensors」]およびPCT出願[代理人整理番号第056100−5055号、「Sucrose Biosensors and Methods of Using the Same」]にも関連しており、それらの全体が引用により本明細書中に含まれる。
【0003】
[連邦政府によって後援された研究または開発に関する声明]
本発明は、デューク大学(Duke University)からのNIHの外注契約(外注契約番号SPSID 126632)およびヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(Human Frontier Science Program)助成金(契約番号RGP0041/2004C)を含む2つの助成金を通じて資金提供を受けた。したがって、米国政府は本発明に対して特定の権利を有する。
【0004】
[発明の分野]
本発明は、一般に、環境的に安定なバイオセンサの構築ならびに蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて代謝産物レベルにおける変化を測定および検出するための方法についての分野に関する。
【背景技術】
【0005】
本明細書中のすべての出版物および特許は、あたかも各々の出版物および特許出願が引用により含まれることを意図して具体的かつ個別に示されるのと同程度に、引用により含まれる。
【0006】
本出願の出願日に先立ち、本明細書中で考察される出版物は、あくまでそれらの開示を目的として提供される。本明細書においては、先行発明に照らして本発明にかかる出版物に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべき点は全くない。
【0007】
高度好熱性生物、すなわち水の沸点付近の温度(高圧で有意に100℃を超える場合がある)で成長する生物は、主に地熱泉近傍の深海に見出されるが、多数の他の自然および人工環境下でも発生する。これらの細菌は高温環境下で生存することから、消化および呼吸などの生命過程の維持に不可欠なそれらの酵素は、かかる極限温度条件下で機能できなければならない。一般的な中温性細菌(すなわち、全生物において高温および低温の極限に対する中間の温度で成長可能な生物)内の酵素は、典型的にはこれらの高温で機能しなくなる。
【0008】
多数の生物が極限環境から単離されている。これらの生物は研究対象とされ、特定の有用な化合物が同定されている。例えば、熱安定性DNAポリメラーゼがサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)から得られている。プロテアーゼが、サーマス・アクアティカス(T.aquaticus)、デスルフロコッカス(Desulfurococcus)種、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、スルホロバス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)、サーモコッカス・ステッテリ(Thermococcus stetteri)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、およびパイロバクラム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum)を含む好熱菌から単離されている。しかし、極限微生物の培養が困難であることから、特徴づけられているこれらの微生物の数ならびにそれらから単離される有用な化合物の数が限定されている(ブレナン(Brennan)、Chemical and Engineering News、1996年10月14日)。メタゲノムクローニングの新たな実施により、将来におけるこれらの培養上の問題が回避されうる(リー J.K.(Rhee J.K.)ら、「New thermophilic and thermostable esterase with sequence similarity to the hormone−sensitive lipase family,cloned from a metagenomic library」、Appl.Environ.Microbiol.71(2):817−825頁)。
【0009】
ステッター(Stetter)らは、100℃を超える温度で成長する、イタリアのブルカノ島(Vulcano Island)の、温泉に由来する微生物を同定した(ステッター K.O.(Stetter K.O.) 「Microbial Life in Hyperthermal Environments」、ASM News 61:285−290頁、1995年、ステッター K.O.(Stetter K.O.)、フィアラ G.(Fiala G.)、ヒューバー R.(Huber R.)およびセグレ A.(Segerer A.) 「Hyperthermophilic Microorganisms」、FEMS Microbiol.Rev.75:117−124頁、1990年)。長年にわたり60℃で最適に成長する好熱性生物が知られている一方、高度好熱性(または極めて好熱性)の微生物は、古細菌(Archaea)と称される新たな進化したクラスに属する(ウース C.R.(Woese C.R.)、カンドラー O.(Kandler O.)およびホイーリス M.L.(Wheelis M.L.) 「Towards a Natural System of Organisms:Proposal for the Domains Archaea,Bacteria,and Eucarya」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:4576−4579頁、1990年)。古細菌は、地球が冷却された期間にあたる10億年より前に発生していたと考えられている。その結果、温泉および深海熱水孔の環境内でそれらの進化的発生が生じた。この新しい集団の1つのメンバーがパイロコッカス・フリオサスである。
【0010】
パイロコッカス・フリオサスなどの高度好熱性生物は、進化して顕著に高い温度で生存してきた。これを実現するには、細菌タンパク質、特にペリプラスム空間(環境との接触が最も感じられる場所)内で発現されるものがこれらの条件に十分に適合しなければならない。パイロコッカス・フリオサスは、最高約103℃の温度で、タンパク質および澱粉を含む高分子基質上で成長可能な偏性従属栄養生物(obligate heterotroph)である。パイロコッカス・フリオサスから調製されるタンパク質分解酵素を含有する製剤については、過去に米国特許第5,242,817号および米国特許第5,391,489号に記載されている。例えば、ブルメンタルズ、イルセ I.(Blumentals,Ilse I.)、ロビンソン、アン S.(Robinson,Anne S.)、ケリー、ロバート M.(Kelly,Robert M.)、「Characterization of Sodium Dodecyl Sulfate−Resistant Proteolytic Activity in the Hyperthermophilic Archaebacterium Pyrococcus furiosus.」 Applied and Environmental Microbiology、56、7:1992−1998頁、(1990年)、エゲン、リック(Eggen,Rik)、ギアリング、アンス(Geerling,Ans)、ワッツ、ジェニファー(Watts,Jennifer)およびデヴォス、ウィレム M.(de Vos,Willem M.)、「Characterization of pyrolysin,a hyperthermoactive serine protease from the archaebacterium Pyrococcus furiosus.」 FEMS Microbiology Letters、71:17−20頁(1990年)、フォールホルスト(Voorhorst)、ウィルフリード G.B.(Wilfried G.B.)、エゲン、リック I.L.(Eggen,Rik I.L.)、ギアリング、アンス C.M.(Geerling,Ans C.M.)、プラチュー、クライスト(Platteeuw,Christ)、ジーゼン、ローランド J.(Siezen,Roland J.)、デヴォス、ウィレム M.(de Vos,Willem M.)、「Isolation and Characterization of the Hyperthermostable Serine Protease,Pyrolysin,and Its Gene from the Hyperthermophilic Archaeon Pyrococcus furiosus.」 Journal of Biological Chemistry、271、34:20426−20431頁(1996年)も参照のこと。
【0011】
過去数年にわたり、同様に、極めて低いpHおよび重金属が多い環境下、20〜80℃の温度勾配において成長するポンペイワーム(Pompeii worm)のアルビネラ・ポンペヤーナ(Alvinella pompejana)を例とする数種類の好熱真核生物が発見されている。別の好熱好酸性種であるアリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)は、進化して高温および極めて低いpHにて生存している。このため、この生物由来のタンパク質(特に、極限環境条件のあらゆる負荷に暴露されたペリプラスムタンパク質)がかかる環境下でセンサとして機能する能力があり、細胞のかかる部分において局所的に液胞として認められうると考えられる。
【0012】
近年における数が増加し続ける高度好熱性種の発見と同時に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の使用によるイオンおよび代謝産物のインビボ測定が十分に利用されている。例えば、FRET技術を利用し、CFP、YFP、およびカルモデュリンおよびM13ペプチドよりなる認識ドメインを融合させることにより、カルシウム濃度変化が測定されている(チャン J.(Zhang J.)、キャンベル R.E.(Campbell R.E.)、ティン A.Y.(Ting A.Y.)、およびツィエン R.Y.(Tsien R.Y.)(2002a)「Creating new fluorescent probes for cell biology.」 Nat Rev Mol Cell Biol 3、906−918頁、チャン J.(Zhang J.)、キャンベル R.E.(Campbell R.E.)、ティン A.Y.(Ting A.Y.)、およびツィエン R.Y.(Tsien R.Y.)(2002b)「Creating new fluorescent probes for cell biology.」 Nature Reviews Molecular Cell Biology 3、906−918頁)。カルシウムのカルモデュリンへの結合はキメラの広範囲にわたる構造的再編成を引き起こし、それによりドナーおよびアクセプター蛍光部分に媒介されてFRET強度に変化が生じる。基質結合時に2つのローブのハエトリソウ様(Venus flytrap−like)の閉鎖を受ける多数の細菌のペリプラスム結合タンパク質が、最近、代謝産物ナノセンサ用の足場としての使用が成功している(フェー M.(Fehr M.)、フロマー W.B.(Frommer W.B.)およびラロンド S.(Lalonde S.)(2002年) 「Visualization of maltose uptake in living yeast cells by fluorescent nanosensors.」 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99、9846−9851頁、フェー M.(Fehr M.)、ラロンド S.(Lalonde S.)、ラガー I.(Lager I.)、ウォルフ M.W.(Wolff M.W.)、およびフロマー W.B.(Frommer W.B.)(2003年) 「In vivo imaging of the dynamics of glucose uptake in the cytosol of COS−7 cells by fluorescent nanosensors.」 J.Biol.Chem.278、19127−19133頁、ラガー I.(Lager I.)、フェー M.(Fehr M.)、フロマー W.B.(Frommer W.B.)、およびラロンド S.(Lalonde S.)(2003年) 「Development of a fluorescent nanosensor for ribose.」 FEBS Lett 553、85−89頁)。
【0013】
FRETバイオセンサが生物内の代謝産物レベルの研究において必須のツールであることが判明しているが、中温性リガンド結合タンパク質を用いるバイオセンサの構築はそれ自体の限界を有している。限界の1つは、タンパク質工学を介し、変異がタンパク質に一旦導入されると、リガンド結合タンパク質が不安定化状態になり、例えばリガンド結合の特異性が変化するかまたはセンサシグナルが増強される可能性がある。例えば、推定上の乳酸塩結合タンパク質Lac.G2(ルーガー(Looger)ら、Nature、423(6936):185−190頁)がFLIP−mglB.Ecの変異により作製され、それは乳酸塩結合の証拠を示したが、FRETシグナルの温度依存的低下から明らかなように顕著に不安定化された。したがって、タンパク質工学のためのより強固な足場を提供しうる、改善された熱安定性、化学安定性、および酸安定性を有する環境的に安定なバイオセンサを開発することが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、容易に作製可能な改善された環境的に安定なバイオセンサに対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[発明の概要]
本発明は、好熱性タンパク質がΔGfoldに対して好ましいエンタルピーおよびエントロピーの寄与を有すると見られるという概念に基づいており、ナノセンサの構築および設計におけるより堅牢なプラットフォームを提供しうる。これらの高度に進化したタンパク質は、より耐久性のあるセンサの認識因子をほぼ確実にもたらすことになり、さらにより高度な変異誘発に適合する一方、依然としてフォールディングされた安定なタンパク質を提供しうる。この後者の特性は、これらのタンパク質を他のリガンドに結合させるという再設計において有用なものとなる。それはループが挿入されたFLIPコンストラクトの構築においても役立つことになり、それは典型的には線状の末端融合物に対してより高いシグナル対ノイズ比を有するが、相対的に不安定化されるのも典型的である。
【0016】
本出願に記載のFRETバイオセンサは、実施を目的とするこの概念を最初に還元したものである。例えば、本明細書に記載のパイロコッカス・フリオサスmalEまたはアリシクロバチルス・アシドカルダリウスmalEを使用して構築されたFRETバイオセンサは、想定されるマルトース結合、良好なシグナル変化、塩酸グアニジン変性に対する強固な耐性、および大腸菌(Escherichia coli)malEを用いて調製された中温性タンパク質FLIP−malE.EcコンストラクトよりもpHに対して安定なシグナルを示す。例えばパイロコッカス・フリオサス、アリシクロバチルス・アシドカルダリウスまたは他の好熱性生物由来の他の好熱性タンパク質の結合ドメインを含むバイオセンサはまた、本明細書に記載の方法を用いて作製可能である。
【0017】
したがって、本発明は、代謝産物濃度における変化を検出および測定することを目的とする、高度好熱性および好熱性タンパク質を利用した、酸変性、熱変性および化学変性に耐性を示す環境的に安定なバイオセンサを提供する。特に、本発明は、好熱性生物由来のリガンド結合タンパク質部分、リガンド結合タンパク質部分と共有結合されたドナー蛍光団部分、およびリガンド結合タンパク質部分に共有結合されたアクセプター蛍光団部分を含む環境的に安定な蛍光指示薬をコード化する単離された核酸配列を提供し、ここで、ドナー部分が励起されかつリガンドがリガンド結合タンパク質部分に結合すると、ドナー部分とアクセプター部分の間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が変化する。本発明の核酸を含む、発現ベクターを含むベクター、および宿主細胞、ならびに該核酸によってコード化されるバイオセンサのタンパク質もまた提供される。かかる核酸、ベクター、宿主細胞およびタンパク質は、リガンド結合および分析物のレベルにおける変化を検出する方法、ならびにリガンド結合を調節する化合物を同定する方法において使用されうる。
【0018】
[図面の簡単な説明]
図1は、図1aおよび1bを含み、10mMマルトースの存在下または非存在下でのmalE_PfおよびmalE_Aaのナノセンサのシグナル変化を示す。
図2は、図2aおよび2bを含み、malE_PfおよびmalE_Aaナノセンサについての滴定曲線を描いたものである。
図3は、熱変性に対するmalE_Pf、MalE_AaおよびMalE_Ecナノセンサの耐性を比較したものである。
図4は、塩酸グアニジン(GuHCL)変性に対するmalE_Pf、MalE_AaおよびMalE_Ecナノセンサの耐性を比較したものである。
図5は、高度好熱性FLIP−malE_Pfおよび中温性FLIP−malE_EcナノセンサのpH安定性を示す。
図6は、様々なpHでのmalE_Pf、malE_AaおよびmalE_Ecナノセンサの蛍光シグナルの安定性を示す。
【0019】
[発明の詳細な説明]
以下の説明は、本発明の理解において有用でありうる情報を含む。本明細書中に提供される情報のいずれかが先行技術であるかまたは今回特許請求される発明に関連していること、あるいは具体的もしくは暗黙的に参照される任意の出版物が先行技術であることは承認されたことではない。
【0020】
本発明の他の目的、利点および特徴は、当業者にとっては本明細書中に提供される明細書および図面をレビューする際に明白なものになる。したがって、本発明のさらなる目的および利点は、以下の記載から明白なものになる。
【0021】
バイオセンサ
本発明は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて標的の生体代謝産物濃度中の変化を検出および測定することを目的とした、高度好熱性および中等度好熱性タンパク質を利用する環境的に安定なバイオセンサを提供する。本明細書中で用いられる「好熱性」は、さらに下記のようにタンパク質および生物における高度好熱性(または超好熱性)と中等度好熱性の双方を示す。本発明の文脈において「環境的に安定な」とは、バイオセンサが酸変性、熱変性および/または化学変性に耐性であることを示すのに用いられる。例えば、かかる酸はHClを含むがこれに限定されない場合がある。耐性温度は、50、60、70、80、90、100、または110℃を超える場合がある。かかる化学変性剤は、塩酸グアニジン、尿素、トリトン(Triton)X−100、およびドデシル硫酸ナトリウムを含むがこれらに限定されない場合がある。
【0022】
一実施形態では、特に本発明は、高度好熱性生物由来のリガンド結合タンパク質を含む蛍光指示薬、特にパイロコッカス・フリオサスまたはアリシクロバチルス・アシドカルダリウスのマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質由来のマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分を含む指示薬を提供する。しかし、本発明は、特定のリガンド結合タンパク質、あるいはいずれかの特定の高度好熱性生物または好熱性生物によるものに限定されない。むしろ、本発明は、高度好熱性生物または中等度好熱性生物を含む好熱性生物内で同定可能な任意のリガンド結合タンパク質を含むFRETバイオセンサを含む。
【0023】
本明細書中で用いられる「高度好熱性」または「超好熱性」は、約65〜約115℃の範囲内に含まれる成長の温度範囲を有する生物に対する一般用語を示す。高度好熱性は、高度好熱性生物によって生成される酵素を示すためにも本明細書中で用いられる場合がある。例えばS.ソルファタリクス(S.solfataricus)は、約65℃〜約91℃の成長の温度範囲を有する。好適な高度好熱性生物は、例えばサーマス・アクアティカス、サーマス・サーモフィラス、サーマス・ブロキアナス(Thermus brockianus)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーモクリニス・ルーバー(Thermocrinis ruber)、サーマトガ・マリチマ(Thermatoga maritima)、サーマトガ・サーマラム(Thermatoga thermarum)、サーマトガ・ネアポリターナ(Thermatoga neapolitana)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、パイロコッカス・フリオサス、パイロコッカス・ウーゼイ(Pyrococcus woesii)、パイロロバス・フマリイ(Pyrolobus fumarii)を含む、サーマス(Thermus)、サーモクリニス(Thermocrinis)、サーマトガ(Thermatoga)、サーモプラズマ(Thermoplasma)、サーモコッカス(Thermococcus)、サーモアクチノマイセス(Thermoactinomyces)、アキフェックス(Aquifex)、アエロパイレム(Aeropyrem)、アーケオグロブス(Archeoglobus)、パイロコッカス(Pyrococcus)、パイロロバス(Pyrolobus)、アシディアヌス(Acidianus)およびスルホロバス(Sulfolobus)の細菌種を含むがこれらに限定されない。また、アルビネラ・ポンペヤーナ(Alvinella pompejana)およびシアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)を含むがこれらに限定されない好熱性の真核生物も含まれる。
【0024】
本明細書中で用いられる「中等度好熱菌」は、約45〜65℃の範囲内に含まれる成長の温度範囲を有する微生物に対する一般用語を示す。好適な中等度好熱性生物は、例えば、アシディチオバチルス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)(旧チオバチルス・カルダス(Thiobacillus caldus))、アシジミクロビウム・フェロオキシダンス(Acidimicrobium ferrooxidans)、スルホバチルス・アシドフィルス(Sulfobacillus acidophilus)、スルホバチルス・ジスルフィドオキシダンス(Sulfobacillus disulfidooxidans)、スルホバチルス・サーモスルフィドオキシダンス(Sulfobacillus thermosulfidooxidans)、フェロプラズマ・アシダルマヌス(Ferroplasma acidarmanus)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、およびアリシクロバチルス・アシドカルダリウスを含む、例えば、アシディチオバチルス(Acidithiobacillus)、アシジミクロビウム(Acidimicrobium)、スルホバチルス(Sulfobacillus)、フェロプラズマ(Ferroplasma)、サーモプラズマおよびアリシクロバチルス(Alicyclobacillus)の種よりなる群から選択されうる。アリシクロバチルス・アシドカルダリウスは、熱安定性および酸安定性の両方を有する。その熱および酸に安定性を有する(thermoacidostable)マルトース結合タンパク質の構造はX線により解明されており、かつタンパク質は低いpHに耐性であることが示されている(ハルスマン(Hulsmann)ら、(2000年)。好熱好酸性グラム陽性細菌アリシクロバチルス・アシドカルダリウスにおけるマルトースおよびマルトデキストリンの輸送は、低いpHに耐性を示すマルトース結合タンパク質を含む高親和性輸送糸により仲介される。J.Bacteriol.182、6292−6301頁、シャファー(Schafer)ら、(2004年)。好熱好酸性の細菌アリシクロバチルス・アシドカルダリウスのマルトース−マルトデキストリン結合タンパク質のX線構造は、タンパク質の酸安定性への洞察をもたらす。J.Mol.Biol.335、261−274頁。
【0025】
したがって、本発明は、高度好熱性および好熱性生物に由来するタンパク質リガンド結合部分を含む好熱性のリガンド結合部分を用いて構成される蛍光指示薬をコード化する単離された核酸を提供する。一実施形態は、特に、マルトース/マルトデキストリンと結合する蛍光指示薬をコード化する単離された核酸であり、該指示薬は高度好熱性または好熱性生物に由来するマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分、マルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分に共有結合されたドナー蛍光団部分、およびマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分に共有結合されたアクセプター蛍光団部分を含み、ここで、ドナー部分が励起されかつマルトースまたはマルトデキストリンがマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分に結合すると、ドナー部分とアクセプター部分の間のFRETが変化する。好ましいマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分は、高度好熱菌パイロコッカス・フリオサスおよび好熱好酸菌アリシクロバチルス・アシドカルダリウス由来のマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分である。
【0026】
本明細書中で用いられる「共有結合される」は、ドナーおよびアクセプター蛍光部分が、リガンド結合タンパク質部分、例えば該リガンド結合タンパク質部分内の選択されたアミノ酸に化学結合を介して結合されうることを意味する。共有結合されるとは、ドナーおよびアクセプター部分がリガンド結合タンパク質部分に、リガンド結合タンパク質部分がドナーおよびアクセプター部分を含む融合タンパク質として発現されるように遺伝的に融合されうることも意味する。
【0027】
ドナー蛍光団部分またはアクセプター蛍光団部分あるいはこれら双方は、前記リガンド結合タンパク質部分の内部部位に融合されうる。ドナーおよびアクセプター部分は同じタンパク質ドメイン上またはローブ上に含まれうるが、好ましくは、ドナーおよびアクセプター部分はタンデムに融合されない。ドメインは、特定の機能を果たし、かつ典型的には少なくとも約40〜約50アミノ酸長であるタンパク質の一部である。単一のタンパク質にはいくつかのタンパク質ドメインが含まれうる。本発明に記載の「リガンド結合タンパク質部分」は、完全な天然タンパク質配列、またはその少なくとも1つもしくは複数のリガンド結合部分でありうる。好ましい実施形態では、特に、本発明のリガンド結合部分は、少なくとも約40〜約50アミノ酸長であるか、少なくとも約50〜約100アミノ酸長であるか、または約100アミノ酸長よりも長い。
【0028】
好ましいリガンド結合タンパク質部分は、特に、パイロコッカス・フリオサス(ATCC43587)malEタンパク質由来のマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分である。パイロコッカスmalEのDNA配列(配列番号1)およびそのタンパク質配列(配列番号2)は、当該技術分野で既知である。別の好ましいリガンド結合タンパク質部分は、アリシクロバチルス・アシドカルダリウスmalEタンパク質由来のマルトース/マルトデキストリン結合タンパク質部分である。アリシクロバチルスmalEのDNA配列(配列番号3)およびそのタンパク質配列(配列番号4)も当該技術分野で既知である。マルトース/マルトデキストリン結合領域をコード化するmalE DNA配列のいずれの部分も、本発明の核酸において用いられうる。他の好熱性および高度好熱性生物由来のmalEまたはそのホモログのいずれかのマルトース/マルトデキストリン結合部分は、本明細書に記載のベクターにクローニングされ、活性について開示されたアッセイに従いスクリーニングされうる。
【0029】
測定可能なマルトース/マルトデキストリンの結合機能を維持する部位特異的変異、欠失または挿入を含む人工的に設計された変異体、ならびに大きさがマルトースまたはマルトデキストリンに類似した別の低分子、および例えばショ糖またはオーキシンもしくはセロトニンを例とする異なるものといった化学物質に結合するように意図的に設計される誘導体に加え、malEの天然種変異体も使用可能である。本発明の核酸コンストラクトにおける使用に適する変異核酸配列は、好ましくはmalEの遺伝子配列に対して少なくとも70、75、80、85、90、95、または99%の類似性または同一性を有することになる。適切な変異核酸配列はまた、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でmalEの遺伝子にハイブリダイズしうる。高度にストリンジェントな条件は当該技術分野で既知であり、例えばマニアティス(Maniatis)ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、1989年、およびShort Protocols in Molecular Biology、アウスベル(Ausubel)ら編(双方とも本明細書において引用により含まれる)を参照のこと。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、かつ異なる環境下で異なることになる。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な手引きは、ティッセン(Tijssen)、Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993年)(引用により本明細書中に含まれる)において見出される。一般にストリンジェントな条件は、所定のイオン強度、pHで特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5〜10℃低いように選択される。Tmは、(標的配列がTmで過剰に存在し、プローブの50%が平衡時に占有される際に)標的に対して相補的なプローブの50%が平衡時に標的配列にハイブリダイズする(所定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下での)温度である。ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的にはpH7.0〜8.3で約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)、ならびに温度が短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃および長いプローブ(例えば50ヌクレオチドより長い)について少なくとも約60℃という条件となる。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって得られる場合がある。
【0030】
開示されたナノセンサにより測定可能なリガンド濃度の範囲を拡大するために、本発明の好ましい人工変異体が、リガンドに対する低い親和性を示すように設計される場合がある。リガンドに対する結合親和性の低下または増大を示すさらなる人工変異体は、ランダムまたは部位特異的変異誘発および他の既知の変異誘発技術によって構築され、本明細書に記載のベクターにクローニングされ、活性について開示されたアッセイに従いスクリーニングされうる。開示されたバイオセンサの結合特異性はまた、バイオセンサによって認識されるリガンドを改変するように変異誘発によって改変されうる。例えば、ルーガー(Looger)ら、Nature、423(6936):185−190頁を参照のこと。
【0031】
本発明のセンサはまた、FRETに適合する蛍光タンパク質のドナー/アクセプター対とは異なるレポーター要素を用いて設計されうる。例えば、センサのリガンド結合部分は、活性が特異的リガンドにより調節される、アロステリック制御される酵素を生成するような方法で酵素と融合されうる(グンタス(Guntas)およびオスターマイヤー(Ostermeier)、2004年、J.Mol.Biol.336(1):263−73頁)。さらに、かかるアロステリック制御されるレポータードメインは、2つもしくはそれより多くの分離した補完的部分、例えばβ−ラクタマーゼ(ガラヌー(Galarneau)ら、2002年、Nature Biotechnol.20:619−622頁)またはGFP(カバントゥー(Cabantous)ら、2005年、Nature Biotechnol.23:102−107頁)の補完的断片に分かれる可能性がある。いかなるレポーター要素断片も、末端間方式でリガンド結合部分と融合されるか(例えば典型的な融合タンパク質)またはリガンド結合部分の配列に内部挿入される可能性がある(例えば、本明細書に記載のようなループが挿入された蛍光タンパク質)。
【0032】
本発明の単離された核酸は、FRETにおけるドナーおよびアクセプター部分として協働可能なあらゆる適切なドナーおよびアクセプター蛍光団部分を組み込んでいてもよい。好ましいドナーおよびアクセプター部分は、GFP(緑色蛍光タンパク質)、CFP(シアン蛍光タンパク質)、BFP(青色蛍光タンパク質)、YFP(黄色蛍光タンパク質)、およびこれらの強化された変異体よりなる群から選択され、ここでは特に好ましい実施形態が、CFPドナー/改善されたpH耐性および成熟期間を有するYFPの変異体であるYFP−Venus(ナガイ T(Nagai T)、イバタ K.(Ibata K.)、パーク E.S.(Park E.S.)、クボタ M.(Kubota M.)、ミコシバ K.(Mikoshiba K.)、およびミヤワキ A.(Miyawaki A.)(2002年) 「A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell−biological applications.」 Nat.Biotechnol.20、87−90頁)アクセプターの対によって提供される。それ以外として、より高いpH安定性およびより大きいスペクトル分離を有するMiCy/mKO対が挙げられる(カラサワ S.(Karasawa S.)、アラキ T.(Araki T.)、ナガイ T.(Nagai T.)、ミズノ H.(Mizuno H.)、ミヤワキ A.(Miyawaki A.) 「Cyan−emitting and orange−emitting fluorescent proteins as a donor/acceptor pair for fluorescence resonance energy transfer.」 Biochem J.2004年、381:307−12頁)。さらに、ドナーまたはアクセプターとして適するものに、ディスコソマ(Discosoma)種に由来する天然DsRed、別属に由来するDsRedのオルソログ、または最適化された特性を有する天然DsRedの変異体(例えば、K83M変異体またはDsRed2(クロンテック(Clontech)から入手可能))が挙げられる。ドナーおよびアクセプター蛍光部分を選択する場合に考慮すべき基準は、例えば米国特許第6,197,928号(その全体が引用により本明細書中に含まれる)に開示のように当該技術分野で既知である。
【0033】
本発明者らは、最近、バイオセンサの蛍光団が類似または関連配列のストレッチを含む場合、遺伝子サイレンシングが特定の細胞内および特に生物全体内でのバイオセンサの発現に不利に作用しうることを発見している。かかる場合には、蛍光団の核酸配列が修飾されてもコード化されたアミノ酸配列は変化しないように、蛍光団のコーディング配列を各蛍光団のコドンの1つもしくは複数の縮重またはゆらぎ位置で修飾することが可能である。あるいは蛍光団の機能に不利に作用しない、1つもしくは複数の保存的置換もまた取り込まれる場合がある。PCT出願[代理人整理番号第056100−5054号、「Methods of Reducing Repeat−Induced Silencing of Transgene Expression and Improved Fluorescent Biosensors」](その全体が引用により本明細書中に含まれる)を参照のこと。
【0034】
本明細書中で用いられる「変異体」という用語は、天然蛍光分子に対し、少なくとも80%、90%、95%またはより高い同一性を含む、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも75%の同一性を有するポリペプチドを示すことが意図されている。多数のかかる変異体は、当該技術分野で既知であるか、または天然蛍光分子のランダムまたは特異的変異誘発により容易に調製可能である(例えば、フラドコフ(Fradkov)ら、FEBS Lett.479:127−130頁(2000年)を参照)。いくつか挙げると、TOTO色素(ライブ(Laib)およびシーガー(Seeger)、2004年、J Fluoresc.14(2):187−91頁)、Cy3およびCy5(チャーチマン(Churchman)ら、2005年、Proc Natl Acad Sci USA.102(5):1419−23頁)、テキサスレッド(Texas Red)、フルオレセイン、およびテトラメチルローダミン(TAMRA)(アンルー(Unruh)ら、Photochem Photobiol.2004年10月1日)、AlexaFluor 488を含むがこれらに限定されない色素、ならびに蛍光タグ(例えば、ホフマン(Hoffman)ら、2005年、Nat.Methods 2(3):171−76頁を参照)を、単独で使用するかまたは上掲の蛍光団と併用することも可能である。
【0035】
FRETにおいては、センサがナノ粒子の表面に結合され、ラマン分光により検出がなされる、表面増強ラマン散乱を含む(ハエス(Haes)およびヴァン・ダイン(Van Duyne)、2004年、Expert Rev.Mol.Diagn.4(4):527−37頁)、発光量子ドット(QD)またはペブル共役(pebble−coupled)アプローチ(クラップ(Clapp)ら、2005年、J.Am.Chem.Soc.127(4):1242−50頁、メディンツ(Medintz)ら、2004年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(26):9612−17頁、バック(Buck)ら、2004年、Curr.Opin.Chem.Biol.8(5):540−6頁)を用いることも可能である。
【0036】
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)をインビトロおよびインビボ測定の双方で用いることも可能であり、それは蛍光励起の結果を伴わずにFRETの利点を提供する。BRETは自然現象である。例えば、光タンパク質イクオリンがクラゲのアエクオレア(Aequorea)から精製される場合、それはGFPの非存在下で青色光を放射するが、GFPとイクオリンがインビボにおけるように結合される場合、GFPはイクオリンからエネルギーを受け取り、緑色光を放射する。BRETでは、FRET技術におけるドナー蛍光団の代わりにルシフェラーゼが用いられる。基質の存在下で、ルシフェラーゼからの生物発光により、上記と同じフェルスター(Foerster)の共鳴エネルギー移動機構を通じてアクセプター蛍光団が励起される。したがって、ルシフェラーゼ/GFP変異体または他の蛍光団の組合せの使用によりBRETを、タンパク質相互作用をインビボとインビトロの双方で測定するのに利用できる(クス(Xu)ら、1999年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:151−56頁を参照、引用により本明細書中に含まれる)。
【0037】
本発明は、本明細書に記載のバイオセンサのポリペプチドをコード化する単離された核酸分子を含むベクターをさらに提供する。例示的なベクターは、バクテリオファージ、バキュロウイルスまたはレトロウイルスなどのウイルス由来のベクター、ならびにコスミドまたはプラスミドなど、細菌あるいは細菌の配列と他の生物由来の配列の組み合わせに由来するベクターを含む。かかるベクターは、バイオセンサをコードする核酸配列に作動可能に連結される発現制御配列を含む発現ベクターを含む。ベクターは、大腸菌(E.coli)もしくは他の細菌などの原核細胞内、または酵母および動物細胞を含む真核細胞内での機能に適合されうる。例えば、本発明のベクターは、一般に、対象とする宿主細胞に適合する複製起点、対象とする宿主細胞に適合する1つもしくは複数の選択可能なマーカーおよび1つもしくは複数のマルチクローニングサイトなどの要素を含むことになる。ベクター内に含めることを意図した特定の要素の選択は、例えば誘導または調節可能なプロモーター、ベクターの所望のコピー数、所望の選択系などの使用を通じ、対象とする宿主細胞、インサートのサイズ、挿入配列の調節された発現が望ましいか否かなどの因子に依存することになる。異なる用途における宿主細胞とベクターの間の適合性を保証することに関連する因子は、当該技術分野で周知である。
【0038】
本発明での使用を目的とする好ましいベクターは、ドナーおよびアクセプター蛍光分子をコード化する核酸間のリガンド結合ドメインまたは受容体のクローニングを可能にし、ドナーおよびアクセプター蛍光分子に共有結合されたリガンド結合ドメインを含むキメラまたは融合タンパク質の発現をもたらすことになる。例示的なベクターは、フェー(Fehr)ら、(2002年)(「Visualization of maltose uptake in living yeast cells by fluorescent nanosensors.」 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99、9846−9851頁、その全体が引用により本明細書中に含まれる)に開示された細菌のpRSET−FLIP誘導体を含む。融合タンパク質を発現するような正しいフレームで核酸をベクターにクローニングする方法は、当該技術分野で周知である。
【0039】
本発明のキメラ核酸は、好ましくは、ドナーとアクセプターの間のFRETにおける変化がリガンド結合時に検出されうるような方法で、ドナーおよびアクセプター蛍光部分のコーディング配列がリガンド結合ドメインの別の末端に融合されるように構築される。蛍光ドメインは、所望により、1つもしくは複数の柔軟なリンカー配列によりリガンド結合ドメインから分離されうる。かかるリンカー部分は、好ましくは約1〜50アミノ酸残基長、およびより好ましくは約1〜30アミノ酸残基長である。リンカー部分およびそれらの用途は当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5,998,204号および米国特許第5,981,200号ならびにニュートン(Newton)ら、Biochemistry 35:545−553頁(1996年)において記載されている。あるいは、本明細書に記載の蛍光団のいずれかの短縮バージョンが使用されうる。
【0040】
蛍光部分が末端ではなくバイオセンサ内部の位置から発現および提示されるように、蛍光分子のコーディング配列の一方もしくは双方をリガンド結合タンパク質のオープンリーディングフレーム内に挿入することも、リガンド結合ドメインの性質および大きさに応じて可能となる。かかるセンサは、米国特許出願番号[代理人整理番号第5046号](その全体が引用により本明細書中に含まれる)に概ね記載されている。malEまたは他のマルトース/マルトデキストリン結合ドメインをコード化する配列などのリガンド結合配列を、タンデム分子間ではなく、単一の蛍光団のコーディング配列、すなわちGFP、YFP、CFP、BFPなどをコード化する配列内に挿入することも可能となる。米国特許第6,469,154号および米国特許第6,783,958号(これら各々はその全体が引用により本明細書中に含まれる)の開示によると、かかるセンサは、蛍光団の活性に影響するタンパク質内部での検出可能な変化をもたらすことにより応答する。
【0041】
本発明はまた、大腸菌もしくは他の細菌などの原核細胞、または酵母細胞もしくは動物細胞などの真核細胞を含む、本発明のベクターまたは発現ベクターが形質移入された宿主細胞を含む。別の態様では、本発明は、環境的に安定なバイオセンサの発現をコードする核酸配列の発現に特徴づけられる表現型を有するトランスジェニック非ヒト動物を特徴とする。表現型は、動物の体細胞内および胚細胞内に含有される導入遺伝子によって授けられ、(a)環境的に安定なバイオセンサをコード化するDNAコンストラクトを含む導入遺伝子を動物の接合体に導入するステップと、(b)接合体を偽妊娠した動物に移植するステップと、(c)接合体の出産までの発達を可能にするステップと、(d)導入遺伝子を含む少なくとも1つのトランスジェニック子孫を同定するステップと、により生成されうる。導入遺伝子を胚に導入するステップは、導入遺伝子を含む胚性幹細胞を胚に導入するか、または胚を導入遺伝子を含むレトロウイルスに感染させることにより実施可能である。本発明のトランスジェニック動物は、トランスジェニック線虫(C.elegans)、トランスジェニックマウスおよび他の動物を含む。
【0042】
本発明は、本明細書に記載の特性を有する単離された環境的に安定なバイオセンサ分子、特に高度好熱性および中等度好熱性タンパク質を用いて構築された結合蛍光指示薬も包含する。かかるポリペプチドは、本明細書に記載の核酸コンストラクトを用いて組み換え発現されうるか、または成分ドメインの一部もしくは全部の化学的結合により生成されうる。発現されたポリペプチドを、所望により、当該技術分野で既知の生化学的および/または免疫学的精製方法により、転写−翻訳系において生成しかつ/またはそれから単離するか、あるいは組み換え細胞から産生してもよい。本発明のポリペプチドを、細胞膜抽出物などの脂質二重層、あるいは人工脂質二重層(例えばリポソーム小胞)またはナノ粒子に導入してもよい。
【0043】
分析物を検出する方法
本発明の核酸およびタンパク質は、リガンド結合を検出し、かつインビトロと動物の双方での分析物のレベルにおける変化を測定するのに有用である。一実施形態では、本発明は、細胞の試料内での分析物のレベルにおける変化を検出する方法であって、(a)本明細書に記載の環境的なバイオセンサをコード化する核酸を発現する細胞および細胞の試料を提供するステップと、(b)ドナー蛍光団部分とアクセプター蛍光団部分の間のFRETにおける変化を検出するステップと、を含む方法を含み、ここで、ドナー蛍光団部分とアクセプター蛍光団部分の各々がリガンドまたは分析物の結合ドメインに共有結合されており、ドナー部分とアクセプター部分との間のFRETの変化が、細胞の試料中の分析物のレベルの変化を示す。
【0044】
FRETは、当該技術分野で既知の種々の技術を用いて測定されうる。例えば、FRETを測定するステップは、アクセプター蛍光団部分から放射される光を測定するステップを含みうる。あるいは、FRETを測定するステップは、ドナー蛍光団部分から放射される光を測定するステップと、アクセプター蛍光団部分から放射される光を測定するステップと、ドナー蛍光団部分から放射される光とアクセプター蛍光団部分から放射される光の比を計算するステップと、を含みうる。FRETを測定するステップは、ドナー部分の励起状態寿命または異方性変化を測定するステップも含みうる(スクワイア A.(Squire A.)、バーバー PJ.(Verveer PJ.)、ロックス O.(Rocks O.)、バスティアンズ PI.(Bastiaens PI.)、J.Struct Biol.2004年 147(1):62−9頁、「Red−edge anisotropy microscopy enables dynamic imaging of homo−FRET between green fluorescent proteins in cells.)。かかる方法は、当該技術分野で既知であり、米国特許第6,197,928号に概ね記載されており、これはその全体が引用により本明細書中に含まれる。
【0045】
細胞の試料中のリガンドまたは分析物の量については、FRETの度合いを測定することにより判定可能である。まずセンサを試料中に導入しなければならない。分析物濃度における変化については、試料と蛍光指示薬の間の接触後における第1の時間および第2の時間にFRETをモニターし、かつFRETの度合いにおける差異を測定することによって判定可能である。試料中の分析物の量を、例えば滴定により確定された較正曲線を用いて定量可能である。
【0046】
本発明の方法によって分析されるべき細胞試料は、例えば細胞表面上でのリガンド輸送の測定においてはインビボに、またはリガンドの流出は細胞培養において測定されうるインビトロに含有される場合がある。あるいは、細胞または組織由来の流体抽出物は試料として使用される場合があり、それからリガンドが検出または測定される。
【0047】
本明細書に開示されるように分析物レベルを検出するための方法を用い、分析物の濃度およびリガンド結合の調節に使用可能な化合物をスクリーニングおよび同定することが可能である。一実施形態では、特に、本発明は、リガンド結合を調節する化合物を同定する方法であって、(a)本明細書に開示されるように環境的に安定なバイオセンサを発現する細胞および細胞の試料を含む混合物を、1つもしくは複数の試験化合物に接触させるステップと、(b)該接触させるステップ後に、ドナー蛍光ドメインとアクセプター蛍光ドメインの間のFRETを測定するステップと、を含む、方法を含み、ここで該接触させるステップ後のFRETの増大または低下は、該試験化合物がリガンド結合活性を調節する化合物であることを示す。
【0048】
この実施形態における「調節する」という用語は、かかる化合物がリガンド結合活性を増大または低下させうることを意味する。リガンド結合活性を増大させる化合物は、上記のように、異常なリガンド活性に関連した疾患の治療的介入および治療のための標的でありうる。リガンド結合活性を低下させる化合物は、リガンド結合活性に関連した疾患の治療のための治療用生成物へと開発されうる。
【0049】
本発明の方法は、ハイスループットおよびハイコンテント薬剤スクリーニングのためのツールとしても使用されうる。例えば、本発明のバイオセンサを含む固体支持体またはマルチウェルディッシュを用い、複数の有望な候補薬剤を同時にスクリーニングすることが可能である。したがって、本発明は、受容体へのリガンドの結合を調節する化合物を同定するハイスループットな方法であって、(a)本発明の少なくとも1つのバイオセンサまたは本発明のバイオセンサの核酸を発現する少なくとも1つの細胞を含む固体支持体を、リガンドおよび複数の試験化合物と接触させるステップと、(b)該接触させるステップ後に、ドナー蛍光ドメインとアクセプター蛍光ドメインの間のFRETを測定するステップと、を含む、方法を含み、ここで該接触させるステップ後のFRETの増大または低下は、特定の試験化合物がリガンド結合を調節する化合物であることを示す。
【0050】
センサの原形質膜の外葉への標的化は、有望な用途の一つの実施形態にすぎない。それはナノセンサが特定の区画に標的化されうることを示す。あるいは、他の標的化配列を用いることで、センサは小胞、ER、液胞などの他の区画にて発現されうる。
【0051】
以下の実施例は、本発明を説明および例示するために提供される。そのようなものとして、それらが本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、多数の他の実施形態も上文や特許請求の範囲に記載のような本発明の範囲内に含まれることを十分に理解するであろう。
【実施例】
【0052】
実施例1 センサの構築
最初に、好熱性生物に由来するナノセンサのコンストラクトをパイロコッカス・フリオサスから得た。それは例えばマルトース結合タンパク質(malE)センサ(malE_Pf)である。いくつかのさらなる好熱性生物に由来するセンサも構築した(サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のmalE、サーマス・サーモフィラス由来のmalE(malE_Tt)、サーマス・サーモフィラス由来のmglB、サーマス・サーモフィラス由来のq72hc2(分岐アミノ酸結合タンパク質)、サーマス・サーモフィラス由来の2609(アミノ酸結合タンパク質)、サーマス・サーモフィラス由来の1033(グルタミン酸塩結合タンパク質)、およびアリシクロバチルス・アシドカルダリウス由来のmalE(malE_Aa))。
【0053】
アリシクロバチルス・アシドカルダリウス由来のマルトース結合タンパク質(malE)を、その既知の熱安定性および酸耐性故に、ナノセンサの構築における優先度の高い標的として選択した。malE遺伝子をPCRによりゲノムDNAから単離し、最近開発されたGATEWAY_FLIPクローニング方法を用いてFLIP形式にした。同方法をmalE_Pfナノセンサの構築にも適用した。
【0054】
図1aは、malE−Pfセンサにおける基質誘導されたFRET変化を示す。図1bは、malE_Aaセンサにおける基質誘導されたFRET変化を示す。図面は、malE_PfとmalE_Aaのセンサ双方について10mMマルトースの存在下および非存在下におけるスペクトルが約510nmで等吸収点(isobestic point)を有することを示す。約100nMのタンパク質濃度を有するpH7.9の10mMトリス緩衝液中でスペクトルを得た。励起フィルタは433/−12nm、CFPおよびYFP放射についての放射フィルタはそれぞれ481/−12および526/−12nmであった。
【0055】
図2aおよび2bでは、malE_PfおよびmalE_Aaナノセンサについてのインビトロでの基質の滴定曲線を、マルトース依存性の比の変化を計算することにより得た。マルトースを添加した結果、CFP放射が低下しかつYFP放射が増大した(YFP/CFP比における増加の正味効果)。非線形回帰により、malE_PfのKが4μMであると判定した。単色光分光器のマイクロプレートリーダー、サファイア(Safire)(テカン(Tecan)、オーストリア)を使用し、放射スペクトルおよび基質の滴定曲線を得た。励起フィルタは433/−12nm、CFPおよびYFP放射についての放射フィルタはそれぞれ481/−12および526/−12nmであった。すべての分析を、約100nMのタンパク質濃度を有するpH7.9の10mMトリス緩衝液中で行った。
【0056】
遺伝的にコード化されたFLIPセンサ形式は、種々の環境条件下でのセンサの安定性および応答についてのアッセイおよびスクリーニングに対して容易に利用可能である。FLIPにおける蛍光タンパク質(FP)群の超安定性は、安定な結合タンパク質(BP)の存在下でFLIPセンサが堅牢になることを保証する。本発明者らは、熱、化学(塩酸グアニジン)および酸という3つの形態の変性に対する、malE_PfおよびmalE_Aa(および対照比較については大腸菌由来のmalE_Ecセンサ)の安定性についてアッセイした。
【0057】
実施例2 温度耐性
3つのナノセンサを高温(60℃〜95℃)に5分間暴露し、次いで室温に再び低下させ、蛍光計にて速やかに分析した。すべてのセンサが、60℃への暴露からの悪影響を全く示さなかった。malE_Aaタンパク質は70℃への暴露に対していくらかの感受性を示し、85℃により不安定化した。malE_Ecナノセンサは、70℃に対してわずかに低い感受性を示したが、その後まもなく不安定化した。malE_Pfセンサは最大80℃の温度まで感受性を示さず、FPが約85℃でほどけることにより、この領域内で3つの全センサのシグナルの崩壊が生じる可能性が高い(図3)。蛍光シグナルが部分的に不安定化する時に増大することが、先に観察されており、それは溶融球状態の形成に起因する可能性がある。
【0058】
実施例3 化学変性剤耐性
3つのセンサを様々な濃度の化学変性剤GuHCl(塩酸グアニジン)にも暴露し、蛍光スペクトルを記録した。再び極限条件がナノセンサのBP部分とFP部分の双方に作用し、その上GuHCl溶液中の高塩化物濃度がFP、特にYFPにいくらかのクエンチングをもたらす。これにもかかわらず、異なるセンサ間の傾向を観察することは可能である。malE_Pfセンサは、中性pHでのGuHCl変性に対して抜群の耐性を示す。この後、malE_Ec、次いで最後にmalE_Aaセンサが続く。低いpH(4.1)への暴露時でも、malE_Pfセンサはやはり最も安定であるが、不安定化した。これに続くのはmalE_Aaセンサであり、中性pHに対していくらか不安定化した。malE_Ecは、強酸pHへの暴露により顕著に不安定化した(図4)。
【0059】
実施例4 FLIP−malEナノセンサのpH耐性
図5は、異なるpH値での高度好熱性FLIP−malE_Pfナノセンサおよび中温性FLIP−malE_Ecナノセンサの安定性を比較したものである。pH5.5〜8.5の20mMリン酸塩緩衝液中で実験を行った。FLIP−malE_Pfセンサは、pHの変化に対する耐性がより高く、ここでのシグナル変動がFLIP−malE_Ecセンサよりもはるかに小さいことが判明した。
【0060】
実施例5 pH変化時での蛍光シグナルの安定性
ナノセンサは、極限条件下で安定である上、特にもしこの新しい環境(例えば細胞内部)下での較正が困難である場合、正常な機能性を保持する必要がある。3つのナノセンサをpH2.3〜7.0の範囲に暴露し、蛍光シグナルを20mM MOPS緩衝液中、飽和リガンド(100μMマルトース)の非存在下および存在下で測定した。malE_Pfセンサは、pH2.7まで低下させたpH作用に対して完全に耐性を示し、pH2.3での作用は極めてわずかであった。malE_Ecセンサは、pH3.5未満において感受性であった。malE_Aaセンサは、酸不安定化に対して最も耐性を示すにもかかわらず、pH変化により最も作用を受け、それ故、極めて低いpHで信頼性の高いマルトースセンサとして機能するまでにさらなる設計を加える必要があることになる(図6)。
【0061】
本明細書中て考察されるすべての出版物、特許および特許出願は、引用により本明細書中に含まれる。本発明がその特定の実施形態に関連して記載されている一方、そのさらなる改良を可能とし、さらに本出願が、一般に本発明の原理に従い、本発明が関係する当該技術分野内での既知のまたは習慣的な実施の枠内に収まり、上記の本質的な特徴に適用可能で、かつ添付の特許請求の範囲の範囲内に従うように、本開示からのかかる逸脱を含む、本発明の任意の変数、使用、または適応を網羅するように意図されることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、図1aおよび1bを含み、10mMマルトースの存在下または非存在下でのmalE_PfおよびmalE_Aaのナノセンサのシグナル変化を示す。
【図2】図2は、図2aおよび2bを含み、malE_PfおよびmalE_Aaナノセンサについての滴定曲線を描いたものである。
【図3】図3は、熱変性に対するmalE_Pf、MalE_AaおよびMalE_Ecナノセンサの耐性を比較したものである。
【図4】図4は、塩酸グアニジン(GuHCL)変性に対するmalE_Pf、MalE_AaおよびMalE_Ecナノセンサの耐性を比較したものである。
【図5】図5は、高度好熱性FLIP−malE_Pfおよび中温性FLIP−malE_EcナノセンサのpH安定性を示す。
【図6】図6は、様々なpHでのmalE_Pf、malE_AaおよびmalE_Ecナノセンサの蛍光シグナルの安定性を示す。
【図1−a】

【図1−b】

【図2−a】

【図2−b】

【図3−1】

【図3−2】

【図3−3】

【図3−4】

【図4−1】

【図4−2】

【図4−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境的に安定な蛍光指示薬をコード化する単離された核酸であって、前記指示薬が、
好熱性生物由来のリガンド結合タンパク質部分と、
前記リガンド結合タンパク質部分に共有結合されたドナー蛍光団部分と、
前記リガンド結合タンパク質部分に共有結合されたアクセプター蛍光団部分と、
を含み、ここで前記ドナー部分が励起されかつリガンドが前記リガンド結合タンパク質部分に結合すると、前記ドナー部分と前記アクセプター部分の間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が変化する、核酸。
【請求項2】
前記指示薬が好酸性生物由来のリガンド結合タンパク質部分をさらに含む請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
前記ドナーおよびアクセプター部分が前記リガンド結合タンパク質部分に遺伝的に融合している請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項4】
前記ドナーおよびアクセプター部分が前記リガンド結合タンパク質部分の末端に遺伝的に融合している請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項5】
前記ドナーおよびアクセプター部分の一方または両方が前記リガンド結合タンパク質部分の内部位置に遺伝的に融合している請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項6】
前記好熱性生物が高度好熱菌または中等度好熱菌である請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項7】
前記高度好熱菌が、パイロコッカス(Pyrococcus)、サーマス(Thermus)、サーモクリニス(Thermocrinis)、サーマトガ(Thermatoga)、サーモプラズマ(Thermoplasma)、サーモコッカス(Thermococcus)、サーモアクチノマイセス(Thermoactinomyces)、アキフェックス(Aquifex)、アエロパイレム(Aeropyrem)、アーケオグロブス(Archeoglobus)、パイロロバス(Pyrolobus)、アシディアヌス(Acidianus)、スルホロバス(Sulfolobus)、アルビネラ(Alvinella)、およびシアニジウム(Cyanidium)の種よりなる群から選択される請求項6に記載の単離された核酸。
【請求項8】
前記中等度好熱菌が、例えば、アシディチオバチルス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)(旧チオバチルス・カルダス(Thiobacillus caldus))、アシジミクロビウム・フェロオキシダンス(Acidimicrobium ferrooxidans)、スルホバチルス・アシドフィルス(Sulfobacillus acidophilus)、スルホバチルス・ジスルフィドオキシダンス(Sulfobacillus disulfidooxidans)、スルホバチルス・サーモスルフィドオキシダンス(Sulfobacillus thermosulfidooxidans)、フェロプラズマ・アシダルマヌス(Ferroplasma acidarmanus)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、およびアリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)を含む、アシディチオバチルス(Acidithiobacillus)、アシジミクロビウム(Acidimicrobium)、スルホバチルス(Sulfobacillus)、フェロプラズマ(Ferroplasma)、サーモプラズマおよびアリシクロバチルス(Alicyclobacillus)の種よりなる群から選択される請求項6に記載の単離された核酸。
【請求項9】
前記生物がパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)である請求項7に記載の単離された核酸。
【請求項10】
前記生物がアリシクロバチルス・アシドカルダリウスである請求項8に記載の単離された核酸。
【請求項11】
前記リガンド結合タンパク質部分がマルトース結合タンパク質である請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項12】
前記マルトース結合タンパク質がパイロコッカス・フリオサス由来のmalEである請求項11に記載の単離された核酸。
【請求項13】
前記マルトース結合タンパク質部分が配列番号2の配列を含む請求項11に記載の単離された核酸。
【請求項14】
前記マルトース結合タンパク質がアリシクロバチルス・アシドカルダリウス由来のmalEである請求項11に記載の単離された核酸。
【請求項15】
前記マルトース結合タンパク質部分が配列番号4の配列を含む請求項11に記載の単離された核酸。
【請求項16】
前記ドナー蛍光団部分がGFP、CFP、BFP、YFP、dsRED、CoralHue Midoriishi−Cyan(MiCy)および単量体CoralHue Kusabira−Orange(mKO)よりなる群から選択される請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項17】
前記アクセプター蛍光団部分がGFP、CFP、BFP、YFP、dsRED、CoralHue Midoriishi−Cyan(MiCy)および単量体CoralHue Kusabira−Orange(mKO)よりなる群から選択される請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項18】
前記ドナー蛍光団部分がCFPであり、かつ前記アクセプター蛍光団部分がYFP Venusである請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項19】
少なくとも1つのリンカー部分をさらに含む請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項20】
前記蛍光指示薬が化学変性に耐性を示す請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項21】
変性剤が塩酸グアニジンである請求項20に記載の単離された核酸。
【請求項22】
前記化学変性剤が尿素、トリトンX−100、およびドデシル硫酸ナトリウムよりなる群から選択される請求項20に記載の単離された核酸。
【請求項23】
前記蛍光指示薬が熱変性に耐性を示す請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項24】
前記蛍光指示薬が50℃を超える温度に耐性を示す請求項23に記載の単離された核酸。
【請求項25】
前記蛍光指示薬が60℃を超える温度に耐性を示す請求項23に記載の単離された核酸。
【請求項26】
前記蛍光指示薬が70℃を超える温度に耐性を示す請求項23に記載の単離された核酸。
【請求項27】
前記蛍光指示薬が80℃を超える温度に耐性を示す請求項23に記載の単離された核酸。
【請求項28】
前記蛍光指示薬が90℃を超える温度に耐性を示す請求項23に記載の単離された核酸。
【請求項29】
前記蛍光指示薬が100℃を超える温度に耐性を示す請求項23に記載の単離された核酸。
【請求項30】
前記蛍光指示薬が110℃を超える温度に耐性を示す請求項23に記載の単離された核酸。
【請求項31】
前記蛍光指示薬が酸変性に耐性を示す請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項32】
前記酸変性がリン酸塩緩衝液のpHをHPOおよびNaOHで滴定することによって行われる請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項33】
請求項1に記載の核酸を発現する細胞。
【請求項34】
請求項1に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項35】
請求項34に記載のベクターを含む細胞。
【請求項36】
原核細胞内の機能に適合している請求項34に記載の発現ベクター。
【請求項37】
真核細胞内の機能に適合している請求項34に記載の発現ベクター。
【請求項38】
原核生物である請求項35に記載の細胞。
【請求項39】
真核細胞である請求項35に記載の細胞。
【請求項40】
酵母細胞である請求項39に記載の細胞。
【請求項41】
動物細胞である請求項39に記載の細胞。
【請求項42】
請求項1に記載の核酸を発現するトランスジェニック動物。
【請求項43】
線虫(C.elegans)である請求項42に記載のトランスジェニック動物。
【請求項44】
前記リガンド結合タンパク質部分のそのリガンドに対する親和性を低下させる1つもしくは複数の核酸置換をさらに含む請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項45】
前記リガンド結合の特異性またはセンサの他の特性を改変するための1つもしくは複数の核酸置換をさらに含む請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項46】
請求項1に記載の核酸によってコード化されるリガンドと結合する蛍光指示薬。
【請求項47】
細胞の試料中のリガンドのレベルにおける変化を検出する方法であって、
(a)請求項1に記載の核酸を発現する細胞を提供するステップと、
(b)前記ドナー蛍光団部分と前記アクセプター蛍光団部分の間のFRETにおける変化を検出するステップと、
を含み、前記ドナー部分とアクセプター部分との間のFRETにおける変化が、細胞の試料中のリガンドのレベルにおける変化を示す、方法。
【請求項48】
FRETを測定するステップが前記アクセプター蛍光団部分から放射される光を測定するステップを含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
FRETを測定するステップが、前記ドナー蛍光団部分から放射される光を測定するステップと、前記アクセプター蛍光団部分から放射される光を測定するステップと、前記ドナー蛍光団部分から放射される光と前記アクセプター蛍光団部分から放射される光の比を計算するステップと、を含む請求項47に記載の方法。
【請求項50】
FRETを測定するステップが前記ドナー部分の励起状態寿命を測定するステップを含む請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞の試料がインビボで含められる請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞の試料がインビトロで含められる請求項47に記載の方法。
【請求項53】
リガンドのその受容体への結合を調節する化合物を同定する方法であって、
(a)リガンドの存在下で請求項1に記載の核酸を発現する細胞を1つもしくは複数の試験化合物と接触させるステップと、
(b)接触させるステップ後、ドナー蛍光ドメインとアクセプター蛍光ドメインの間のFRETを測定するステップと、
を含み、ここで前記接触させるステップ後におけるFRETの増減は、前記試験化合物がリガンド結合を調節する化合物であることを示す方法。

【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【公表番号】特表2008−531048(P2008−531048A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557993(P2007−557993)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/036954
【国際公開番号】WO2006/096214
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(500026234)カーネギー インスチチューション オブ ワシントン (25)
【Fターム(参考)】