説明

環境試験システム

【課題】環境試験システムのピーク電力消費量を低減する。
【解決手段】環境試験システム1は、複数の環境試験装置3とマスターコントローラ2とを備えている。各環境試験装置3は、試験を制御する試験制御部3bを備えており、マスターコントローラ2は、複数の環境試験装置3のそれぞれの電力消費量の合計値である総電力消費量を所定時間ごとに検知する検知部2bと、複数の試験制御部3bを制御する制御部2cとを備えている。制御部2cは、検知部2bで検知される所定時間ごとの総電力消費量が上限値を超えないように複数の試験制御部3bを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の環境試験装置を備える環境試験システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料の温度変化に対する特性、耐久性などをテストするために環境試験装置が用いられている。例えば特許文献1に記載の環境試験装置(調温調湿装置)は、試料が配置される試験室と、この試験室と連通する空調室とを有しており、空調室には、試験室内に供給される気体の温度および湿度を目標温度および目標湿度となるように調整する冷凍機と加熱器と加湿器が配置されている。
【0003】
このような環境試験装置には、装置のピーク電力消費量を低減できるように工夫されたものがある。例えば特許文献1の環境試験装置では、加熱器と加湿器の出力を制御することでピーク電力消費量を低減している。加熱器と加湿器は、目標温度または目標湿度に応じた周期でオン状態とオフ状態とを繰り返すようになっており、特許文献1では、加熱器と加湿器のオン状態が重複しないように、一方または両方のオン状態の時間を短くして、加熱器と加湿器を交互にオン状態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2928162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境試験装置は1つの事業所に複数台設置される場合がある。複数台の環境試験装置を備えたシステムでは、システムの総電力消費量のピークを低減することが求められる。しかしながら、各装置の電力消費量に基づいて各装置を個別に制御するだけでは、システム全体の電力ピークにムラの多い運転状況となり、システムの総電力消費量を十分に低減することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、環境試験システムのピーク電力消費量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
第1の発明に係る環境試験システムは、複数の環境試験装置を備える環境試験システムであって、前記複数の環境試験装置による試験をそれぞれ制御する複数の第1制御手段と、前記複数の環境試験装置のそれぞれの電力消費量の合計値である総電力消費量を所定時間ごとに検知する検知手段と、前記複数の第1制御手段を制御する第2制御手段とを備え、前記第2制御手段は、前記検知手段で検知される所定時間ごとの前記総電力消費量が上限値を超えないように前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0008】
この構成によると、第2制御部は、複数の環境試験装置の総電力消費量に基づいて、複数の環境試験装置による試験を連動して制御するため、複数の環境試験装置による総電力消費量を確実に低減できる。そのため、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
【0009】
第2の発明に係る環境試験システムは、第1の発明において、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の環境試験装置のうちの少なくとも2つの環境試験装置における電力消費量のピークとなるタイミングが一致しないように、前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0010】
この構成によると、少なくとも2つの装置における電力消費量のピークとなるタイミングをずらすことで、所定時間あたりの少なくとも2つの装置の電力消費量の合計値を低減することができ、その結果、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
【0011】
第3の発明に係る環境試験システムは、第1または第2の発明において、前記検知手段が、前記複数の環境試験装置における試験条件に基づいて所定時間ごとの前記総電力消費量を予測するものであって、前記第2制御手段は、前記検知手段で予測された前記総電力消費量に基づいて、前記総電力消費量が前記上限値を超えないように前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0012】
この構成によると、総電力消費量の予測値に基づいて試験を制御するため、環境試験システムのピーク電力消費量を確実に低減できる。
【0013】
第4の発明に係る環境試験システムは、第3の発明において、前記第2制御手段は、前記検知手段で予測された前記総電力消費量が前記上限値を超える所定時間がある場合に、その所定時間の前記総電力消費量のうち前記上限値を超える分の電力消費量が他の所定時間において消費されるように、前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0014】
この構成によると、上限値を超える分の総電力消費量を他の所定時間において消費するように制御するため、総電力消費量が上限値を超えないようにできる。
【0015】
第5の発明に係る環境試験システムは、第1〜第4のいずれかの発明において、前記第2制御手段は、前記複数の環境試験装置のうちの少なくとも1つの環境試験装置における試験条件を変更することなく、前記総電力消費量が前記上限値を超えないように前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0016】
この構成によると、試験条件を変更することなく、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。なお、試験条件の変更とは、試験結果に影響を及ぼす試験条件の変更(例えば、冷熱衝撃試験の場合、さらし状態の時間や繰り返し回数の変更)のことである。
【0017】
第6の発明に係る環境試験システムは、第1〜第5のいずれかの発明において、前記複数の環境試験装置が、複数のグループに振り分けられており、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないように、グループごとに前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0018】
この構成によると、グループに含まれる環境試験装置に対して同一の制御を行うため、複数の環境試験装置に対してそれぞれ異なる制御を行う場合に比べて、第2制御手段による制御を簡易化できる。なお、グループごとに制御するとは、グループに含まれる複数の環境試験装置に対して同じ制御を行うことである。
【0019】
第7の発明に係る環境試験システムは、第1〜第6のいずれかの発明において、前記複数の環境試験装置が、試料が配置される試験室と、前記試験室に供給する所定温度の低温気体を生成するための冷凍機および第1加熱器を有する低温室と、前記試験室に供給する前記所定温度より高い高温気体を生成するための第2加熱器を有する高温室とを備え、前記試験室に前記低温室から低温気体を供給して試料を低温雰囲気にさらす低温さらし状態と、前記低温さらし状態の後において前記試験室に前記高温室から高温気体を供給して試料を高温雰囲気にさらす高温さらし状態とを含む冷熱サイクル動作が繰り返される冷熱衝撃試験が行われる冷熱衝撃試験装置を含むことを特徴とする。
【0020】
この構成によると、冷熱衝撃試験装置を備えた環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
【0021】
第8の発明に係る環境試験システムは、第7の発明において、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、高温さらし状態が終了した後、次の冷熱サイクル動作を開始する前に、前記冷凍機、前記第1加熱器および前記第2加熱器のうちの少なくとも1つを停止させて冷熱衝撃試験の中断を開始するように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0022】
この構成によると、検知される総電力消費量に基づいた適切なタイミングで試験を中断することにより、中断期間の総電力消費量が低減するため、環境試験システムのピーク電力消費量を低減させることができる。
また、さらし状態の途中で試験を中断すると試験条件を変更することになるが、本発明では、高温さらしの終了後、次のさらし状態が開始する前に試験を中断するため、試験条件を変更することなく試験を中断できる。
また、低温さらしの後で試験を中断した場合には試料に結露が生じて試験結果に影響を及ぼすが、本発明では、高温さらし状態の後で試験を中断するため、結露を防止できる。
【0023】
第9の発明に係る環境試験システムは、第7または第8の発明において、前記複数の環境試験装置が、複数の冷熱衝撃試験装置を含んでおり、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の冷熱衝撃試験装置のうちの2つの冷熱衝撃試験装置による高温さらしまたは低温さらしの開始のタイミングが一致しないように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0024】
この構成によると、1つの冷熱サイクル動作中に電力消費量は変動するため、2つの冷熱衝撃試験装置の高温さらしまたは低温さらしの開始のタイミングをずらすことで、タイミングが一致する場合よりも環境試験システムのピーク電力消費量を低減させることができる。
また、試験のタイミングを制御するだけであるため、試験条件を変更することなく、ピーク電力消費量を低減できる。
【0025】
第10の発明に係る環境試験システムは、第9の発明において、前記複数の環境試験装置が、2つのグループに分けられた複数の冷熱衝撃試験装置を含んでおり、前記複数の冷熱衝撃試験装置による冷熱サイクル動作が互いに同じであって、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記2つのグループによる高温さらしまたは低温さらしの開始または終了のタイミングが一致しないように、グループごとに前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0026】
この構成によると、グループに含まれる冷熱衝撃試験装置に対して同一の制御を行うため、第2制御部による制御を簡易化できる。
【0027】
第11の発明に係る環境試験システムは、第7〜第10のいずれかの発明において、前記第1加熱器と前記第2加熱器が、所定の周期でオン状態とオフ状態とを繰り返すものであって、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、2つの加熱器の少なくとも一方のオン時間を、目標温度に応じて設定されるオン時間よりも短くして、前記第1加熱器と前記第2加熱器とが交互にオン状態となるように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0028】
この構成によると、第1加熱器と第2加熱器が同時にオン状態とならないように、少なくとも一方のオン時間を短くするため、装置単体の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
また、この制御では、目標温度までの到達時間が長くなる場合があるものの、試験条件を変更することなく、ピーク電力消費量を低減できる。
また、第1加熱器と第2加熱器とが交互にオン状態となるため、重複してオン状態となる場合に比べて、2つの加熱器による電力消費量の変動を抑えることができる。
【0029】
第12の発明に係る環境試験システムは、第7〜第11のいずれかの発明において、前記第1加熱器または前記第2加熱器が、複数の加熱手段で構成され、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の加熱手段のうちの一部の加熱手段を停止させて加熱運転を行うように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0030】
この構成によると、複数の加熱手段の一部の加熱手段を停止させて残りの加熱手段で加熱運転を行うことで、冷熱衝撃試験装置単体の加熱運転時の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
また、目標温度が低い場合には、試験条件を変更することなく、ピーク電力消費量を低減できる。
【0031】
第13の発明に係る環境試験システムは、第1〜第12のいずれかの発明において、前記複数の環境試験装置が、試料が配置される試験室と、前記試験室に供給される気体の温度および湿度を調整するための加熱器、冷凍機および加湿器を有する空調室とを備え、前記試験室内の温度および湿度を、設定温度および設定湿度に維持する恒温恒湿試験が行われる調温調湿装置を含むことを特徴とする。
【0032】
この構成によると、調温調湿装置を備えた環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
【0033】
第14の発明に係る環境試験システムは、第13の発明において、前記調温調湿装置が、前記試験室内の温度を低温設定温度から高温設定温度まで上昇させる昇温状態と、前記試験室の温度を前記高温設定温度から前記低温設定温度まで下降させる降温状態とを含む温度サイクル動作が繰り返される温度サイクル試験を実施可能であることを特徴とする。
【0034】
この構成によると、昇温、高温維持、降温、低温維持を含む温度サイクル試験を行う調温調湿装置を備えた環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
【0035】
第15の発明に係る環境試験システムは、第13または第14の発明において、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記加熱器、前記冷凍機、および前記加湿器のうちの少なくとも1つを停止させて恒温恒湿試験または温度サイクル試験を停止するように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0036】
この構成によると、検知される総電力消費量に基づいた適切なタイミングで試験を停止することにより、停止期間の総電力消費量が低減するため、環境試験システムのピーク電力消費量を低減させることができる。
【0037】
第16の発明に係る環境試験システムは、第14の発明において、前記調温調湿装置の前記温度サイクル動作は、昇温状態の後、前記試験室内の温度を前記高温設定温度に設定された時間維持する高温維持状態と、降温状態の後、前記試験室内の温度を前記低温設定温度に設定された時間維持する低温維持状態とを含み、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記低温維持状態の設定時間が経過したときに昇温状態を開始せずに、低温維持状態を継続するように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0038】
この構成によると、加熱器による電力消費量は昇温状態のときに最大となるため、昇温状態を開始するタイミングを遅らせることで、環境試験システムのピーク電力消費量を低減させることができる。
また、室内の温度を低温設定温度に維持するため、試験条件を変更するものの、その影響が小さくて済む。また、冷凍機、加熱器、および加湿器を停止させないため、待機状態が終了したとき、予熱や予冷を行うことなく昇温状態を開始することができる。
【0039】
第17の発明に係る環境試験システムは、第14または第16の発明において、前記複数の環境試験装置が、複数の調温調湿装置を含んでおり、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の調温調湿装置のうちの2つの調温調湿装置による昇温状態または降温状態の開始のタイミングが一致しないように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0040】
加熱器による電力消費量は昇温状態のときに最大となり、冷凍機による電力消費量は降温状態のときに最大となるため、2つの調温調湿装置の昇温状態または降温状態の開始のタイミングをずらすことで、タイミングが一致する場合よりも環境試験システムのピーク電力消費量を低減させることができる。
また、試験のタイミングを制御するだけであるため、試験条件を変更することなく、ピーク電力消費量を低減できる。
【0041】
第18の発明に係る環境試験システムは、第13〜第17のいずれかの発明において、前記加熱器と前記加湿器が、所定の周期でオン状態とオフ状態とを繰り返すものであって、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記加熱器と前記加湿器の少なくとも一方のオン時間を、目標温度または目標湿度に応じて設定されるオン時間よりも短くして、前記加熱器と前記加湿器とが交互にオン状態となるように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0042】
この構成によると、加熱器と加湿器が同時にオン状態とならないように、少なくとも一方のオン時間を短くするため、、装置単体の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
また、この制御では、目標温度または目標湿度までの到達時間が長くなる場合があるものの、試験条件を変更することなく、ピーク電力消費量を低減できる。
また、加熱器と加湿器とが交互にオン状態となるため、重複してオン状態となる場合に比べて、加熱器と加湿器による電力消費量を変動を抑えることができる。
【0043】
第19の発明に係る環境試験システムは、第13〜第18のいずれかの発明において、前記加熱器が、複数の加熱手段で構成され、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の加熱手段のうちの一部の加熱手段を停止させて加熱運転を行うように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0044】
この構成によると、複数の加熱手段の一部の加熱手段を停止させて残りの加熱手段で加熱運転を行うことで、調温調湿装置単体の加熱運転時の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
また、目標温度が低い場合には、試験条件を変更することなく、ピーク電力消費量を低減できる。
【0045】
第20の発明に係る環境試験システムは、第13〜第19のいずれかの発明において、前記調温調湿装置の前記冷凍機が、低温側冷凍機と高温側冷凍機とを備える二元冷凍機であって、前記低温側冷凍機が、前記空調室内の気体を冷却する第1蒸発器を有し、前記高温側冷凍機が、前記空調室内の気体を冷却する第2蒸発器を有すると共に、前記高温側冷凍機と熱交換器を介して接続され、前記第2蒸発器に冷媒を流さないで前記熱交換器に冷媒を流す二元運転状態と、前記熱交換器に冷媒を流さないで前記第2蒸発器に冷媒を流す一元運転状態とに切り換え可能であって、前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記高温側冷凍機を前記二元運転状態から前記一元運転状態に切り換えると共に、前記低温側冷凍機を停止させるように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする。
【0046】
この構成によると、低温側冷凍機を停止させることにより、調温調湿装置単体の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る環境試験システムの概略図である。
【図2】図1の冷熱衝撃試験装置の装置本体の概略断面図である。
【図3】加熱器の構成図である。
【図4】2ゾーン試験時の温度と冷凍機等の出力の変化を示すグラフである。
【図5】3ゾーン試験時の温度と冷凍機等の出力の変化を示すグラフである。
【図6】(a)は2ゾーン試験の間引運転時の冷熱サイクル動作を示す図であり、(b)は3ゾーン試験の間引運転時の冷熱サイクル動作を示す図である。
【図7】(a)は間引運転をしない場合の装置単体の電力消費量と総電力消費量を示すグラフであって、(b)は間引運転をした場合の装置単体の電力消費量と総電力消費量を示すグラフである。
【図8】位相ずらし運転の冷熱サイクル動作の例を示す図である。
【図9】グループごとに同一の位相ずらし運転を行う場合の冷熱サイクル動作を示す図である。
【図10】位相ずらし運転の開始時を説明するための図である。
【図11】(a)は位相ずらし運転をしない場合の装置単体の電力消費量と総電力消費量を示すグラフであって、(b)は位相ずらし運転をした場合の装置単体の電力消費量と総電力消費量を示すグラフである。
【図12】(a)は加熱クロスアウト運転をしない場合の第1加熱器と第2加熱器の出力を示すグラフであって、(b)は加熱クロスアウト運転をした場合の第1加熱器と第2加熱器の出力を示すグラフである。
【図13】(a)は加熱電力セーブ運転をしない場合の加熱器の出力を示すグラフであって、(b)は加熱電力セーブ運転をした場合の加熱器の出力を示すグラフである。
【図14】本発明の第2実施形態に係る環境試験システムの概略図である。
【図15】図14の調温調湿装置の装置本体の概略断面図である。
【図16】温度サイクル試験時の温度と冷凍機等の出力の変化を示すグラフである。
【図17】昇温待機運転時の温度サイクル動作を示す図である。
【図18】(a)は昇温待機運転をしない場合の装置単体の電力消費量と総電力消費量を示すグラフであって、(b)は昇温待機運転をした場合の装置単体の電力消費量と総電力消費量を示すグラフである。
【図19】調温調湿装置の装置本体の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る環境試験システム1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の環境試験システム1は、複数の冷熱衝撃試験装置3と、マスターコントローラ2と備えている。
【0049】
複数の冷熱衝撃試験装置3は、全て同じ構成である。各冷熱衝撃試験装置3は、装置本体3aと、後述する冷熱衝撃試験を制御する試験制御部(第1制御手段)3bとを備えている。試験制御部3bは、マスターコントローラ2の制御部2cから送信される信号に基づいて冷熱衝撃試験を制御する。
【0050】
図2に示すように、装置本体3aは、試料Wが配置される試験室30と、試験室30の下側に設けられた低温室40と、試験室30の上側に設けられた高温室50とを有する。試験室30の側壁には、試料Wを出し入れするための開閉自在な扉部31と、開閉自在な2つの外気ダンパ32(図2では手前側のみを表示)が設けられている。なお、外気ダンパ32は設けなくてもよい。
【0051】
低温室40には、低温気体を生成するための冷却器41と、除霜と温度調整のための第1加熱器42と、蓄冷器43と、送風機44とが配置されている。低温室40と試験室30とを仕切る壁には、開閉自在なダンパ45、46が設けられている。冷却器41は、冷凍機(図示省略)の一部を構成する蒸発器が用いられている。また、図3に示すように、第1加熱器42は、2つの電気ヒータ(加熱手段)で構成されている。通常の加熱運転では2つの電気ヒータを使用する。
【0052】
高温室50には、高温気体を生成するための第2加熱器51と、送風機52とが配置されている。高温室50と試験室30とを仕切る壁には、開閉自在なダンパ53、54が設けられている。第2加熱器51は、第1加熱器42と同様に、並列接続された2つの電気ヒータで構成されている。
【0053】
冷熱衝撃試験装置3は、試料Wを低温雰囲気(例えば−70〜0℃)にさらす低温さらしの後、試料を高温雰囲気(例えば60〜200℃)にさらす高温さらしを行う冷熱サイクル動作を所定回数繰り返す冷熱衝撃試験(以下、2ゾーン試験という。図4参照)と、低温さらしの後で、試料Wを常温雰囲気にさらす常温さらしを行い、その後、高温さらし、常温さらしを順に行う冷熱衝撃試験(以下、3ゾーン試験という。図5参照)を行えるようになっている。1つの冷熱サイクル動作における低温さらしの時間は例えば30分間であり、高温さらしの時間は低温さらしの時間と同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
低温さらしを行う際には、ダンパ45、46が開かれて、低温室40内の低温気体が試験室30内に供給される。高温さらしを行う際には、ダンパ53、54が開かれて、高温室50内の高温気体が試験室30内に供給される。また、常温さらしを行う際には、外気ダンパ32が開かれて、試験室30に常温気体が導入される。
【0055】
図4および図5に示すように、試験中は、冷凍機、第1加熱器42、および第2加熱器51は、常に稼動している。但し、図13(a)に示すように、第1加熱器42と第2加熱器51は、それぞれ、所定の周期(例えば3秒〜10秒)で、オン状態とオフ状態とを繰り返すようになっている。通常、オン状態の時間(オン時間)は、試験室内温度と目標温度との差と、目標温度などに基づいて設定される。なお、本実施形態では、試験中、冷凍機、第1加熱器42、および第2加熱器51は、常に稼動しているが、高温さらし時の一定期間、冷凍機や第1加熱器42を停止させてもよく、また、低温さらし時の一定期間、第2加熱器51を停止させてもよい。
【0056】
また、本実施形態の環境試験システム1では、通常モードとピーク電力カットモードのいずれかを選択できるようなっている。通常モードは、環境試験システム1の総電力消費量に関わらず試験を行うモードであって、ピーク電力カットモードは、環境試験システム1における所定時間ごとの総電力消費量が所定の上限値Aを超えないように試験を行うモードである。所定時間は例えば30分であるが、それ以上であっても、それ以下であってもよい。
【0057】
マスターコントローラ2は、記憶部2aと、検知部(検知手段)2bと、制御部(第2制御手段)2cとを備えている。記憶部2aは、複数の冷熱衝撃試験装置3のそれぞれの試験条件を記憶する。
【0058】
検知部2bは、ピーク電力カットモード時に、環境試験システム1における所定時間ごとの総電力消費量の予測を行う。環境試験システム1における所定時間ごとの総電力消費量とは、複数の冷熱衝撃試験装置3のそれぞれの電力消費量の合計値である。各装置3の電力消費量の予測値は、記憶部2aに記憶された試験条件に基づいて算出される。検知部2bは、全ての試験の全試験期間における所定時間ごとの総電力消費量を予測する。
【0059】
制御部2cは、複数の冷熱衝撃試験装置3の試験制御部3bを制御する。ピーク電力カットモード時には、制御部2cは、総電力消費量が上限値Aを超えないように、複数の試験制御部3bを制御する。総電力消費量が上限値Aを超えないようにするための制御をピーク電力カット制御という。検知部2bは、制御部2cがピーク電力カット制御を決定するために、ピーク電力カット制御をしない場合の総電力消費量の予測値を導出し、制御部2cは検知部2bによって導出された総電力消費量の予測値に基づいてピーク電力カット制御を行う。
【0060】
ピーク電力カット制御は、複数の冷熱衝撃試験装置3のうち少なくとも1つの装置3について、間引運転、位相ずらし運転、加熱クロスアウト運転、および加熱電力セーブ運転を単独または2つ以上組み合わせて試験を行う制御である。各運転の詳細は後述するが、間引運転と位相ずらし運転は、複数の冷熱衝撃試験装置3のうちの少なくとも2つの冷熱衝撃試験装置3における電力消費量のピークとなるタイミングが一致しないようにする運転である。また、この2つの運転は、総電力消費量の予測値が上限値Aを超える所定時間がある場合に、その所定時間の総電力消費量のうち上限値Aを超える分の電力消費量が他の所定時間において消費されるようにするための運転でもある。制御部2cは、総電力消費量の予測値と試験条件とを用いて、どの冷熱衝撃試験装置3に対して、上記4つの運転のうちどの運転を行うかを決定する。
【0061】
また、ピーク電力カットモード中に、ユーザーの操作またはエラー等によって途中終了または中断した装置があった場合には、検知部2bは改めて総電力消費量の予測値を算出し、制御部2cはこの予測値に基づいてピーク電力カット制御を行う。また、ピーク電力カットモード中に、試験を開始する装置3があった場合にも、改めて算出された総電力消費量の予測値に基づいてピーク電力カット制御を行う。
【0062】
<間引運転>
図6に示すように、間引運転は、冷熱衝撃試験装置3による試験を中断する運転である。中断時には、冷凍機、第1加熱器42および第2加熱器51を停止させる。そのため、中断開始後は、試験室30内の温度は常温に近づく。
【0063】
図6(a)に示すように、2ゾーン試験の場合には、高温さらし状態が終了した後、次の冷熱サイクル動作を開始する前に、試験の中断を開始する。また、図6(b)に示すように、3ゾーン試験の場合には、実施中の冷熱サイクル動作の高温さらし状態が終了した後、常温さらしを開始する前に、試験の中断を開始する。
【0064】
また、2ゾーン試験、3ゾーン試験とも、試験を再開する際には、冷凍機、第1加熱器42および第2加熱器51の運転を再開させて、低温室40の予冷と高温室50の予熱とを所定時間行ってから、低温さらしを開始する。したがって、3ゾーン試験の場合には、高温さらし後の常温さらしを省略して低温さらしから試験を再開する。
【0065】
図7(a)は、ある装置3の試験期間(予冷予熱期間を含む)に総電力消費量が上限値Aを超える場合の電力消費量の一例を示しており、図7(b)は図7(a)で総電力消費量が上限値Aを超えるタイミングで、間引運転を行った場合の電力消費量の一例を示している。なお、図7中、1本の棒グラフは、所定時間当たりの電力消費量の合計を示している。後述する図11についても同様である。図7(a)で総電力消費量が上限値Aを超える期間T1について、図7(b)に示すように間引運転を行うことによって、図7(a)の期間T1での装置単体の電力消費量が、他の時間T2において消費されるようになっている。
【0066】
間引運転では、総電力消費量に基づいた適切なタイミングで試験を中断することにより、中断期間の総電力消費量が低減するため、環境試験システム1のピーク電力消費量を低減させることができる。また、低温さらし状態または高温さらし状態の途中で試験を中断した場合、試験条件を変更することになり、試験結果に影響を及ぼすが、本実施形態では、高温さらしの終了後、次のさらし状態が開始する前に試験を中断しているため、試験条件を変えることなく試験を中断できる。また、低温さらしの後で試験を中断した場合には試料Wに結露が生じて試験結果に影響を及ぼすが、本実施形態では、高温さらし状態の後で試験を中断するため、結露を防止できる。
【0067】
<位相ずらし運転>
位相ずらし運転は、2つ以上の冷熱衝撃試験装置3による高温さらしの開始のタイミングをずらす運転である。2つの試験で高温さらしの開始のタイミングをずらす例としては、例えば、図8(a)に示すように、一方が高温さらし状態のときに他方が低温さらし(または常温さらし)となるようにしてもよい。また、図8(b)および図8(c)に示すように、一方が高温さらし状態の途中に、他方が高温さらしを開始するようにしてもよい。
【0068】
位相ずらし運転の対象となる複数の冷熱衝撃試験装置3による冷熱サイクル動作が互いに同じ場合には、図9に示すように、複数の冷熱衝撃試験装置3を2つ以上のグループに振り分けて、グループごとに制御してもよい。グループごとに制御するとは、グループに含まれる複数の環境試験装置3に対して同じ制御を行うことである。グループ分けは、各装置3の試験条件(設定温度など)に基づいて行われる。グループごとに制御することによって、制御部2cによる制御を簡易化できる。なお、図9では、冷熱サイクル動作の高温さらし時間と低温さらし時間とが同じ場合の例であって、一方のグループが高温さらし状態のときに、他方のグループが低温さらし状態となるようにタイミングをずらしているが、タイミングのずらし方はこれに限定されない。
【0069】
また、位相ずらし運転の対象となる複数の冷熱衝撃試験装置3の冷熱サイクル動作が互いに異なる場合には、全試験期間において電力重複が最も少なくなるタイミングを予測算出して制御する。冷熱サイクル動作が互いに異なる場合には、全試験期間にわたって全ての高温さらし(または低温さらし)の開始のタイミングがずれていなくてもよい。つまり、一部の高温さらしの開始のタイミングが一致していてもよい。
【0070】
また、図10(a)に示すように、位相ずらし運転を、ピーク電力カットモードの開始後に開始する試験に対して行う場合には、試験開始の操作に基づいて決定されるタイミングで試験を開始するのではなく、他の試験の冷熱サイクル動作に応じた適切なタイミングで試験を開始する。なお、図10(a)では、試験開始操作後に予冷予熱を開始して、予冷予熱が完了した後、試験開始まで待機しているが、試験開始操作後、所定時間待機してから予冷予熱を開始してもよい。
【0071】
また、図10(b)に示すように、位相ずらし運転を、ピーク電力カットモードの開始時に既に行われている試験に対して行う場合には、試験を一旦停止して適切なタイミングで試験を再開させる。この場合の中断は、冷凍機、第1加熱器42および第2加熱器51を停止してもしなくてもよい。また、上述の間引運転による中断から復帰するとき、または、デフロスト運転(除霜運転)のための中断から復帰するときに、位相ずらし運転を開始してもよい。
【0072】
図4および図5に示すように、2ゾーン試験、3ゾーン試験とも、高温さらしを開始した直後に、試験室30内の温度を設定温度まで上昇させるため、第2加熱器51の出力(電力消費量)は最大となる。また、図4および図5に示すように、2ゾーン試験、3ゾーン試験とも、低温さらし終了前は、試料Wの温度が低下しているため、冷凍機の出力は低下し、低温さらしが終了した後は、低温室40内の温度を予冷温度まで降下させるため、冷凍機の出力は再び高くなる。したがって、冷凍機の出力は、低温さらし終了前後以外のときに最大となる。
そのため、図11に示すように、2つの冷熱衝撃試験装置3の高温さらしの開始のタイミングをずらすことで、タイミングが一致する場合よりも環境試験システム1のピーク電力消費量を低減させることができる。また、この位相ずらし運転では、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システム1のピーク電力消費量を低減できる。
【0073】
<加熱クロスアウト運転>
加熱クロスアウト運転は、冷熱衝撃試験装置3の2つの加熱器42、51の少なくとも一方のオン時間を、目標温度に応じて設定されるオン時間よりも短くして、第1加熱器42と前記第2加熱器51とが交互にオン状態となるようにする運転である。図12(a)は加熱クロスアウト運転をしない場合の2つの加熱器42、51の出力の一例を示しており、図12(b)は、第1加熱器42を優先させて加熱クロスアウト運転をした場合の2つの加熱器42、51の出力の一例を示している。図12(a)では、第1加熱器42と第2加熱器51のオン時間が5秒と7秒で合計12秒となり、周期である10秒から2秒オーバーするため、図12(b)に示すように、非優先である第2加熱器51のオン時間を7秒から2秒差し引いた5秒に変更するとともに、第1加熱器42と第2加熱器51とが交互にオン状態となるようにする。なお、図12(b)では、第2加熱器51のみのオン時間を短くしているが、第1加熱器42のみのオン時間を短くしてもよく、第1加熱器42と第2加熱器51の両方のオン時間を短くしてもよい。
【0074】
加熱クロスアウト運転では、第1加熱器42と第2加熱器51が同時にオン状態とならないように、少なくとも一方のオン時間を短くするため、装置単体の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システム1のピーク電力消費量を低減できる。また、この加熱クロスアウト運転では、目標温度までの到達時間が長くなる場合があるものの、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システム1のピーク電力消費量を低減できる。また、第1加熱器42と第2加熱器51とが交互にオン状態となるため、重複してオン状態となる場合に比べて、2つの加熱器による電力消費量の変動を抑えるることができる。
【0075】
<加熱電力セーブ運転>
図13(b)に示すように、加熱電力セーブ運転は、第1加熱器42または第2加熱器51により加熱運転を行う際に、加熱器を構成する2つの電気ヒータ(図3参照)の一方を停止させて、他方のヒータのみをオン状態とする運転である。
【0076】
加熱電力セーブ運転では、第1加熱器42または第2加熱器51の電力消費量を低減することで、装置単体の加熱運転時の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システム1のピーク電力消費量を低減できる。また、目標温度が低い場合、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システム1のピーク電力消費量を低減できる。
【0077】
本実施形態の環境試験システム1によると、制御部2cは、環境試験システム1の総電力消費量に基づいて、複数の冷熱衝撃試験装置3による試験を連動して制御するため、環境試験システム1のピーク電力消費量を確実に低減できる。また、本実施形態では、総電力消費量の予測値に基づいて試験を制御するため、環境試験システム1のピーク電力消費量をより確実に低減できる。
【0078】
また、環境試験システム1のピーク電力消費量を低減することにより、冷熱衝撃試験装置3から排出される排熱量のピーク値を抑えることができるため、排熱を冷却するための設備に必要な所定時間当たりのエネルギーも低減できる。
【0079】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る環境試験システム201について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0080】
図14に示すように、本実施形態の環境試験システム201は、複数の調温調湿装置6と、マスターコントローラ202とを備えている。
【0081】
複数の調温調湿装置6は、全て同じ構成である。各調温調湿装置6は、装置本体6aと、後述する温度サイクル試験と恒温恒湿試験を制御する試験制御部(第1制御手段)6bとを備えている。試験制御部6bは、マスターコントローラ202の制御部202cから送信される信号に基づいて温度サイクル試験と恒温恒湿試験を制御する。
【0082】
図15に示すように、装置本体6aは、試料Wが配置される試験室60と、空調室70とを有する。試験室60と空調室70は仕切り壁で仕切られており、上下2箇所で連通している。
【0083】
空調室70には、送風機75と、試験室60に供給される気体の温度および湿度を調整するための冷却除湿器71、72、加熱器74、および加湿器73が配置されている。この調温調湿装置6では、送風機75の駆動により、試験室60内の気体が試験室60の下部から空調室70に吸い込まれる。吸い込まれた気体は、加湿器73、冷却除湿器71、72、加熱器74を順に通過して、目標の温度および湿度に調整された後、空調室70の上部から試験室60に戻される。なお、図5では、空調室70を下から上に空気が流れるようになっているが、逆方向に流れる構成であってもよい。また、冷却除湿器71、72、加熱器74、および加湿器73の配置順序も、図5に示す順に限定されるものではない。
【0084】
冷却除湿器71、72は、冷凍機80の一部を構成する蒸発器が用いられており、内部を流れる冷媒によって気体を冷却すると共に、気体中の水蒸気を凝縮させて除湿する。冷却除湿器71、72は、何れか一方のみが、冷却除湿器として機能する。冷凍機80は、熱交換器81を介して接続された低温側冷凍機80Aと高温側冷凍機80Bとを備える二元冷凍機で構成されている。
【0085】
低温側冷凍機80Aは、冷媒が循環する冷媒回路を有しており、この冷媒回路には、第1蒸発器(冷却除湿器)71と、熱交換器81と、圧縮機82と、熱交換器83と、膨張弁84とが設けられている。熱交換器83は、低温側冷凍機80Aを流れる冷媒を冷却するためのものであるが、設けなくてもよい。高温側冷凍機80Bは、冷媒が循環する冷媒回路を有しており、この冷媒回路には、熱交換器81と、圧縮機85と、凝縮器86と、膨張弁87と、2つの切換弁88と、第2蒸発器(冷却除湿器)72が設けられている。切換弁88は、熱交換器81に冷媒を流す二元運転状態と、第2蒸発器72に冷媒を流す一元運転状態とを切り換えるものである。通常は、切換弁88は二元運転状態となっており、空調室70内の気体は冷却除湿器71によって冷却除湿される。二元運転状態のとき、熱交換器81は、低温側冷凍機80Aにおいては凝縮器として機能し、高温側冷凍機80Bにおいては蒸発器として機能する。
【0086】
加熱器74は、第1実施形態の加熱器42、51と同様に、2つの電気ヒータ(加熱手段)で構成されている。通常の加熱運転では2つの電気ヒータを使用する。
【0087】
加湿器73は、水が収容される加湿皿(図示省略)と、加湿皿内に配置される電気ヒータ(図示省略)とを備えており、加湿皿の水を電気ヒータで加熱して蒸発させることにより加湿を行う。
【0088】
調温調湿装置6は、恒温恒湿試験と温度サイクル試験とを行えるようになっている。恒温恒湿試験は、試験室60内の温度および湿度を、設定温度および設定湿度に設定された時間維持する試験である。図16に示すように、温度サイクル試験は、試験室60内の温度を低温設定温度から高温設定温度まで上昇させる昇温状態と、試験室60内の温度を高温設定温度に設定された維持する高温維持状態と、試験室60の温度を高温設定温度から低温設定温度まで下降させる降温状態と、試験室60内の温度を低温設定温度に設定された時間維持する低温維持状態とを含む温度サイクル動作を、所定回数繰り返す試験である。温度サイクル試験では、試験室60内の湿度をほぼ一定に保つ場合と、温度サイクル動作と同じ周期で変化させる場合がある。調温調湿装置6で設定可能な温度範囲は、例えば−70〜+185℃である。また、昇温時および降温時の温度変化は、例えば5℃/分〜15℃/分である。また、温度サイクル動作の各状態の時間は、例えば1〜3時間である。
【0089】
なお、図16の加熱器74の出力のグラフは簡略的に表示したものであって、加熱器74は、第1実施形態の加熱器42、51と同様に、所定の周期でオン状態とオフ状態とを繰り返すようになっており、通常、オン状態の時間は、試験室内温度と目標温度との差と、目標温度などに基づいて設定される。
【0090】
また、加湿器73の電気ヒータも、加熱器74と同様に、オン状態とオフ状態とを繰り返すようになっており、通常、オン状態の時間は、試験室内湿度と目標湿度との差と、目標湿度などに基づいて設定される。
【0091】
また、本実施形態の環境試験システム201では、第1実施形態の環境試験システム1と同様に、通常モードとピーク電力カットモードのいずれかを選択できるようなっている。
【0092】
マスターコントローラ202は、記憶部202aと、検知部(検知手段)202bと、制御部(第2制御手段)202cとを備えている。記憶部202aは、複数の調温調湿装置6のそれぞれの試験条件を記憶する。検知部202bは、第1実施形態の検知部2bと同様に、環境試験システム201における所定時間ごとの総電力消費量の予測を行う。
【0093】
制御部202cは、第1実施形態の制御部2cと同様に、複数の調温調湿装置6の試験制御部6bを制御するものであって、ピーク電力カットモード時には、総電力消費量の予測値と試験条件に基づいて、総電力消費量が上限値Aを超えないようにピーク電力カット制御を行う。
【0094】
本実施形態のピーク電力カット制御は、複数の調温調湿装置6のうち少なくとも1つの装置6について、間引運転、昇温待機運転、位相ずらし運転、加熱加湿クロスアウト運転、加熱電力セーブ運転、冷却電力セーブ運転を単独または2つ以上組み合わせて試験を行う制御である。各運転の詳細は後述するが、間引運転と昇温待機運転と位相ずらし運転は、複数の調温調湿装置6のうちの少なくとも2つの調温調湿装置6における電力消費量のピークとなるタイミングが一致しないようにする運転である。また、この3つの運転は、総電力消費量の予測値が上限値Aを超える所定時間がある場合に、その所定時間の総電力消費量のうち上限値Aを超える分の電力消費量が他の所定時間において消費されるようにするための運転でもある。恒温恒湿試験、温度サイクル試験でそれぞれ実施可能な運転は、表1に示すとおりである。
【0095】
【表1】

【0096】
<間引運転>
間引運転は、調温調湿装置6による恒温恒湿試験または温度サイクル試験を停止して、その後、試験を最初からやり直しもしくは途中から再開する運転である。試験停止時には、冷凍機80、加熱器74および加湿器73を停止させる。そのため、停止後は、試験室60内の温度は常温に近づく。
【0097】
停止時間が所定の時間よりも長い場合は、試験を最初からやり直す。また、停止時間が所定の時間よりも短い場合には、試験を再開する。恒温恒湿試験、温度サイクル試験とも、試験を一旦停止すると、試験条件を変更することになるが、中断時間が短い場合にはその影響は小さくて済む。
【0098】
間引運転では、総電力消費量に基づいた適切なタイミングで試験を停止することにより、停止期間の総電力消費量が低減するため、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減させることができる。
【0099】
<昇温待機運転>
図17に示すように、昇温待機運転は、温度サイクル試験において、低温維持状態の設定時間が経過したときに昇温状態を開始せずに、低温維持状態を継続し、その後、昇温状態を開始する運転である。低温維持状態の設定時間が経過してから昇温状態を開始するまでの時間を、昇温待機時間とする。温度サイクル試験において昇温待機運転を行うと、試験条件を変更することになるが、昇温待機時間が短い場合には、その影響は小さくて済む。
【0100】
図16に示すように、加熱器74の出力(電力消費量)は昇温状態のときに最大となる。そのため、図18に示すように、昇温状態を開始するタイミングを遅らせることで、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減させることができる。また、昇温待機運転では、試験室60内の温度を低温設定温度に維持するため、試験条件を変更するものの、その影響が小さくて済む。また、冷凍機80、加熱器74、および加湿器73を停止させないため、待機状態が終了したとき、予熱や予冷を行うことなく昇温状態を開始することができる。
【0101】
<位相ずらし運転>
位相ずらし運転は、2つ以上の調温調湿装置6による昇温状態の開始のタイミングまたは降温状態の開始のタイミングをずらす運転である。2つの試験で昇温状態の開始のタイミングをずらす例としては、例えば、一方が昇温状態のときに、他方が降温状態、低温維持状態、高温維持状態のいずれかになるようにしてもよい。また、一方が昇温状態の途中に、他方が昇温状態を開始するようにしてもよい。
【0102】
位相ずらし運転の対象となる複数の調温調湿装置6による温度サイクル動作が互いに同じ場合には、複数の調温調湿装置6を2つ以上のグループに振り分けて、グループごとに制御してもよい。また、位相ずらし運転の対象となる複数の調温調湿装置6の温度サイクル動作が互いに異なる場合には、全試験期間において電力重複が最も少なくなるタイミングを予測算出して制御する。温度サイクル動作が互いに異なる場合には、全試験期間にわたって全ての昇温状態(または降温状態)の開始のタイミングがずれていなくてもよい。つまり、一部の昇温状態の開始のタイミングが一致していてもよい。
【0103】
また、位相ずらし運転を、ピーク電力カットモードの開始後に開始する試験に対して行う場合には、試験開始の操作に基づいて決定されるタイミングで試験を開始するのではなく、他の試験の温度サイクル動作に応じた適切なタイミングで試験を開始する。また、位相ずらし運転を、ピーク電力カットモードの開始時に既に行われている試験に対して行う場合には、試験を一時停止して適切なタイミングで試験を再開させる。
【0104】
図16に示すように、加熱器74の出力(電力消費量)は昇温状態のときに最大となり、冷凍機80の出力(電力消費量)は降温状態のときに最大となる。そのため、2つの調温調湿装置6の昇温状態または降温状態の開始のタイミングをずらすことで、タイミングが一致する場合よりも環境試験システム201のピーク電力消費量を低減させることができる。また、この位相ずらし運転では、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減できる。
【0105】
<加熱加湿クロスアウト運転>
加熱加湿クロスアウト運転は、加熱器74と加湿器73の少なくとも一方のオン時間を、目標温度または目標湿度に応じて設定されるオン時間よりも短くして、加熱器74と加湿器73とが交互にオン状態となるようにする運転である。具体的には、冷熱衝撃試験装置の加熱クロスアウト運転とほぼ同じである。
【0106】
加熱加湿クロスアウト運転では、加熱器74と加湿器73が同時にオン状態とならないように、少なくとも一方のオン時間を短くするため、装置単体の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減できる。また、この加熱加湿クロスアウト運転では、目標温度または目標湿度までの到達時間が長くなる場合があるものの、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減できる。
【0107】
<加熱電力セーブ運転>
加熱電力セーブ運転は、加熱器74による加熱運転を行う際に、加熱器74を構成する2つの電気ヒータの一方を停止させて、他方のヒータのみをオン状態とする運転である。
【0108】
加熱電力セーブ運転では、加熱器74の電力消費量を低減することで、装置単体の加熱運転時の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減できる。また、目標温度が低い場合、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減できる。
【0109】
<冷却電力セーブ運転>
冷却電力セーブ運転は、切換弁88を一元運転状態に切り換えると共に、低温側冷凍機80Aを停止させて、高温側冷凍機80Bの冷却除湿器(第2蒸発器)72で冷却・除湿運転を行う運転(一元運転)である。
【0110】
冷却電力セーブ運転では、低温側冷凍機80Aを停止させることにより、装置6単体の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減できる。また、低温設定温度が高い場合には、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システム201のピーク電力消費量を低減できる。
【0111】
本実施形態の環境試験システム201では、第1実施形態と同様に、制御部202cが、環境試験システム201の総電力消費量に基づいて、複数の調温調湿装置6による試験を連動して制御するため、環境試験システム201のピーク電力消費量を確実に低減できる。
【0112】
以上、本発明の好適な実施形態として、第1および第2実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0113】
上記第1実施形態の3ゾーン試験では、低温さらしの後と高温さらしの後に、それぞれ常温さらしを行っているが、2つの常温さらしの一方または両方を省略してもよい。この3ゾーン試験で間引運転を行う場合には、試験の中断を開始するタイミングは、高温さらしが終了した後、次の冷熱サイクルを開始する前とすることが好ましい。
【0114】
上記第2実施形態の温度サイクル試験は、高温維持状態と低温維持状態を含んでいるが、高温維持状態と低温維持状態の一方または両方を省略してもよい。
【0115】
上記第1実施形態の間引運転では、冷凍機、第1加熱器42および第2加熱器51を全て停止させているが、冷凍機、第1加熱器42および第2加熱器51のうちの1つまたは2つだけを停止させてもよい。また、上記第2実施形態の間引運転においても同様に、冷凍機80、加熱器74、加湿器73のうちの1つまたは2つだけを停止させてもよい。なお、電力消費量を低減する観点からは、冷熱衝撃試験装置、調温調湿装置とも、少なくとも冷凍機を停止することが好ましい。
【0116】
上記第1実施形態の間引運転では、高温さらし状態が終了した後、次の冷熱サイクル動作を開始する前に、中断を開始しているが、中断を開始するタイミングはこれ以外であってもよい。
【0117】
上記第1実施形態の3ゾーン試験の間引運転では、試験を再開する際、高温さらし後の常温さらしを省略して、低温さらし状態から試験を再開しているが、常温さらしを省略せずに、常温さらし状態から試験を再開してもよい。
【0118】
上記第2実施形態の位相ずらし運転では、高温さらしを開始するタイミングをずらしているが、高温さらしを終了するタイミングをずらしてもよい。また、低温さらしを開始または終了するタイミングをずらしてもよい。また、これらを組み合わせてもよい。
【0119】
上記第1実施形態では、間引運転、位相ずらし運転、加熱クロスアウト運転、および加熱電力セーブ運転の4つの運転によって、ピーク電力カット制御を行っているが、ピーク電力カット制御を行うための運転方法は、上記4つの運転に限定されない。上記4つの運転以外の運転を選択枝に含んでいてもよい。例えば、試験開始の操作に基づいて決定されるタイミングで試験を開始するのではなく、検知される総電力消費量に基づいたタイミングで運転を開始する運転を選択枝に含めてもよい。また、上記4つの運転のうちの1〜3つの運転だけを選択枝として、ピーク電力カット制御を行ってもよい。
【0120】
また、上記第2実施形態では、間引運転、昇温待機運転、位相ずらし運転、加熱加湿クロスアウト運転、加熱電力セーブ運転、冷却電力セーブ運転の6つの運転によって、ピーク電力カット制御を行っているが、ピーク電力カット制御を行うための運転方法は、上記6つの運転に限定されない。上記6つの運転以外の運転を選択枝に含んでいてもよい。例えば、試験開始の操作に基づいて決定されるタイミングで試験を開始するのではなく、検知される総電力消費量に基づいたタイミングで運転を開始する運転を選択枝に含めてもよい。また、上記6つの運転のうちの1〜5つの運転だけを選択枝として、ピーク電力カット制御を行ってもよい。
【0121】
上記第1および第2実施形態では、位相ずらし運転を行う場合に、複数の環境試験装置を2つのグループに振り分けてグループごとに制御を行うことを述べたが、ピーク電力カット制御の位相ずらし運転以外の各運転を行う場合についても同様に、2以上のグループに振り分けてグループごとに制御してもよい。
【0122】
上記第1および第2実施形態では、検知部は、環境試験システムの総電力消費量を予測するものであるが、計測するものであってもよい。この場合、制御部(第2制御手段)は、検知された総電力消費量が、上記実施形態の上限値Aよりも小さい所定値Bを上回ったときに、上記実施形態と同様のピーク電力カット制御を行う。これにより、総電力消費量が上限値Aを超えないようにできる。
【0123】
また、上記第1および第2実施形態では、検知部は、各環境試験装置の試験条件に基づいて算出された各装置の電力消費量の予測値を合計することで、環境試験システムの総電力消費量の予測値を導出しているが、環境試験システムの総電力消費量の予測値の導出方法はこれに限定されない。例えば、予測する時間帯の直前に計測された電力消費量に基づいて導出した値であってもよい。
【0124】
上記第1および第2実施形態では、所定時間当たりの総電力消費量の合計値(所定時間ごとの総電力消費量)に基づいて試験を制御しているが、所定時間における総電力消費量の平均値に基づいて制御を行ってもよい。つまり、総電力消費量の平均値が、上限値Aを所定時間で割った値を超えないように制御してもよい。
【0125】
上記第1および第2実施形態では、加熱器42、51、71は、2つの電気ヒータで構成されているが、3つ以上の電気ヒータで構成されていてもよい。また、加熱器は、1つの電気ヒータで構成されていてもよい。但し、この場合、加熱電力セーブ運転はできなくなる。
【0126】
上記第2実施形態の二元冷凍機80に代えて、図19に示す二元冷凍機380を用いてもよい。二元冷凍機380は、熱交換器381を介して接続された低温側冷凍機380Aと高温側冷凍機380Bとを備えており、低温側冷凍機380Aは、蒸発器(冷却除湿器)371と、熱交換器381と、圧縮機382と、熱交換器383と、膨張弁384とを有し、高温側冷凍機380Bは、熱交換器381と、圧縮機385と、凝縮器386と、膨張弁387とを有する。なお、熱交換器383は、設けなくてもよい。
【0127】
この二元冷凍機380の場合、冷却電力セーブ運転として、高温側冷凍機380Bを停止させて、低温側冷凍機380Aのみを稼動させる運転を行ってもよい。熱交換器381による熱交換が停止しても、熱交換器383によって低温側冷凍機380Aを流れる冷媒を冷却できるため、冷却除湿器371の冷却・除湿能力が低下するのを抑制できる。高温側冷凍機380Bを停止させるため、装置6単体の電力消費量を低減でき、その結果、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。また、低温設定温度が高い場合には、試験結果に影響を及ぼすような試験条件の変更をすることなく、環境試験システムのピーク電力消費量を低減できる。
【0128】
上記第2実施形態では、冷凍機80は、二元冷凍機で構成されているが、三元冷凍機で構成されていてもよい。また、一元冷凍機であってもよい。但し、一元冷凍機の場合、冷却電力セーブ運転はできなくなる。
【0129】
第1実施形態の冷凍機は、二元冷凍機または三元冷凍機で構成されていてもよい。これにより、冷却電力セーブ運転が可能となる。
【0130】
上記第2実施形態の加湿器73は、加湿皿の水を電気ヒータで加熱して蒸発させることにより加湿を行うものであるが、加湿器73の構成は、これに限定されない。但し、ヒーターを用いない加湿方式の場合、加熱加湿クロスアウト運転はできなくなる。
【0131】
上記第2実施形態の装置6は、加湿器73を有しない調温装置であってもよい。この場合、加熱加湿クロスアウト運転はできなくなる。
【0132】
上記第1実施形態の冷熱衝撃試験装置3は、2ゾーン試験と3ゾーン試験の両方を行える装置であるが、2ゾーン試験専用または3ゾーン試験専用の装置であってもよい。
【0133】
上記第2実施形態の調温調湿装置6は、恒温恒湿試験と温度サイクル試験の両方を行える装置であるが、恒温恒湿試験専用または温度サイクル試験専用の装置であってもよい。
【0134】
上記第1実施形態では、環境試験システム1が備える複数の冷熱衝撃試験装置3は全て同じ構成であるが、異なっていてもよい。第2実施形態についても同様に、環境試験システム201が備える複数の調温調湿装置6の構成は異なっていてもよい。
【0135】
環境試験システムは、マスターコントローラと複数の環境試験装置を含むものであれば、上記第1および第2実施形態の構成に限定されない。例えば、冷熱衝撃試験装置と調温調湿装置の両方を含んでいてもよい。また例えば、冷熱衝撃試験装置や調温調湿装置以外の環境試験装置を含んでいてもよい。また例えば、複数の環境試験装置に加えて、環境試験装置以外の装置も含んでいてもよい。また、環境試験システムは、工場や研究所などの事業所全体のシステムであっても、事業所内の特定の実験室や研究室のシステムであってもよい。
【0136】
上述した変更形態のように、環境試験システムが環境試験装置以外の装置を含む場合、環境試験システムの総電力消費量は、複数の環境試験装置の電力消費量の合計値に他の装置の電力消費量を加えた値となる。この場合、環境試験システムの制御部は、環境試験システムの総電力消費量が上限値Xを超えないように、複数の第1制御部を制御する。具体的には、複数の環境試験装置のそれぞれの電力消費量の合計値が、上限値Xに基づいて決定される上限値A(A<X)を超えないように制御する。したがって、この場合の制御部による制御は、本発明における第2制御手段による制御(複数の環境試験装置のそれぞれの電力消費量の合計値である総電力消費量が上限値を超えないように複数の第1制御手段を制御する)に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1、201 環境試験システム
2、202 マスターコントローラ
2a、202a 記憶部
2b、202b 検知部(検知手段)
2c、202c 制御部(第2制御手段)
3 冷熱衝撃試験装置
3b 試験制御部(第1制御手段)
6 調温調湿装置
6b 試験制御部(第1制御手段)
30 試験室
40 低温室
50 高温室
41 冷却器(冷凍機)
42 第1加熱器
51 第2加熱器
60 試験室
70 空調室
71 冷却除湿器(第1蒸発器)
72 冷却除湿器(第2蒸発器)
73 加湿器
74 加熱器
80 冷凍機(二元冷凍機)
80A 低温側冷凍機
80B 高温側冷凍機
81 熱交換器
W 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の環境試験装置を備える環境試験システムであって、
前記複数の環境試験装置による試験をそれぞれ制御する複数の第1制御手段と、
前記複数の環境試験装置のそれぞれの電力消費量の合計値である総電力消費量を所定時間ごとに検知する検知手段と、
前記複数の第1制御手段を制御する第2制御手段とを備え、
前記第2制御手段は、前記検知手段で検知される所定時間ごとの前記総電力消費量が上限値を超えないように前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする環境試験システム。
【請求項2】
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の環境試験装置のうちの少なくとも2つの環境試験装置における電力消費量のピークとなるタイミングが一致しないように、前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の環境試験システム。
【請求項3】
前記検知手段が、前記複数の環境試験装置における試験条件に基づいて所定時間ごとの前記総電力消費量を予測するものであって、
前記第2制御手段は、前記検知手段で予測された前記総電力消費量に基づいて、前記総電力消費量が前記上限値を超えないように前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の環境試験システム。
【請求項4】
前記第2制御手段は、前記検知手段で予測された前記総電力消費量が前記上限値を超える所定時間がある場合に、その所定時間の前記総電力消費量のうち前記上限値を超える分の電力消費量が他の所定時間において消費されるように、前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の環境試験システム。
【請求項5】
前記第2制御手段は、前記複数の環境試験装置のうちの少なくとも1つの環境試験装置における試験条件を変更することなく、前記総電力消費量が前記上限値を超えないように前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項6】
前記複数の環境試験装置が、複数のグループに振り分けられており、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないように、グループごとに前記複数の第1制御手段を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項7】
前記複数の環境試験装置が、
試料が配置される試験室と、前記試験室に供給する所定温度の低温気体を生成するための冷凍機および第1加熱器を有する低温室と、前記試験室に供給する前記所定温度より高い高温気体を生成するための第2加熱器を有する高温室とを備え、前記試験室に前記低温室から低温気体を供給して試料を低温雰囲気にさらす低温さらし状態と、前記低温さらし状態の後において前記試験室に前記高温室から高温気体を供給して試料を高温雰囲気にさらす高温さらし状態とを含む冷熱サイクル動作が繰り返される冷熱衝撃試験が行われる冷熱衝撃試験装置を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項8】
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、高温さらし状態が終了した後、次の冷熱サイクル動作を開始する前に、前記冷凍機、前記第1加熱器および前記第2加熱器のうちの少なくとも1つを停止させて冷熱衝撃試験の中断を開始するように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の環境試験システム。
【請求項9】
前記複数の環境試験装置が、複数の冷熱衝撃試験装置を含んでおり、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の冷熱衝撃試験装置のうちの2つの冷熱衝撃試験装置による高温さらしまたは低温さらしの開始のタイミングが一致しないように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項7または8に記載の環境試験システム。
【請求項10】
前記複数の環境試験装置が、2つのグループに分けられた複数の冷熱衝撃試験装置を含んでおり、前記複数の冷熱衝撃試験装置による冷熱サイクル動作が互いに同じであって、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記2つのグループによる高温さらしまたは低温さらしの開始または終了のタイミングが一致しないように、グループごとに前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項9に記載の環境試験システム。
【請求項11】
前記第1加熱器と前記第2加熱器が、所定の周期でオン状態とオフ状態とを繰り返すものであって、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、2つの加熱器の少なくとも一方のオン時間を、目標温度に応じて設定されるオン時間よりも短くして、前記第1加熱器と前記第2加熱器とが交互にオン状態となるように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項12】
前記第1加熱器または前記第2加熱器が、複数の加熱手段で構成され、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の加熱手段のうちの一部の加熱手段を停止させて加熱運転を行うように、冷熱衝撃試験装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項13】
前記複数の環境試験装置が、
試料が配置される試験室と、前記試験室に供給される気体の温度および湿度を調整するための加熱器、冷凍機および加湿器を有する空調室とを備え、前記試験室内の温度および湿度を、設定温度および設定湿度に維持する恒温恒湿試験が行われる調温調湿装置を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項14】
前記調温調湿装置が、前記試験室内の温度を低温設定温度から高温設定温度まで上昇させる昇温状態と、前記試験室の温度を前記高温設定温度から前記低温設定温度まで下降させる降温状態とを含む温度サイクル動作が繰り返される温度サイクル試験を実施可能であることを特徴とする請求項13に記載の環境試験システム。
【請求項15】
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記加熱器、前記冷凍機、および前記加湿器のうちの少なくとも1つを停止させて恒温恒湿試験または温度サイクル試験を停止するように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項13または14に記載の環境試験システム。
【請求項16】
前記調温調湿装置の前記温度サイクル動作は、昇温状態の後、前記試験室内の温度を前記高温設定温度に設定された時間維持する高温維持状態と、降温状態の後、前記試験室内の温度を前記低温設定温度に設定された時間維持する低温維持状態とを含み、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記低温維持状態の設定時間が経過したときに昇温状態を開始せずに、低温維持状態を継続するように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項14に記載の環境試験システム。
【請求項17】
前記複数の環境試験装置が、複数の調温調湿装置を含んでおり、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の調温調湿装置のうちの2つの調温調湿装置による昇温状態または降温状態の開始のタイミングが一致しないように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項14または16に記載の環境試験システム。
【請求項18】
前記加熱器と前記加湿器が、所定の周期でオン状態とオフ状態とを繰り返すものであって、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記加熱器と前記加湿器の少なくとも一方のオン時間を、目標温度または目標湿度に応じて設定されるオン時間よりも短くして、前記加熱器と前記加湿器とが交互にオン状態となるように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項19】
前記加熱器が、複数の加熱手段で構成され、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記複数の加熱手段のうちの一部の加熱手段を停止させて加熱運転を行うように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載の環境試験システム。
【請求項20】
前記調温調湿装置の前記冷凍機が、低温側冷凍機と高温側冷凍機とを備える二元冷凍機であって、
前記低温側冷凍機が、前記空調室内の気体を冷却する第1蒸発器を有し、
前記高温側冷凍機が、前記空調室内の気体を冷却する第2蒸発器を有すると共に、前記高温側冷凍機と熱交換器を介して接続され、前記第2蒸発器に冷媒を流さないで前記熱交換器に冷媒を流す二元運転状態と、前記熱交換器に冷媒を流さないで前記第2蒸発器に冷媒を流す一元運転状態とに切り換え可能であって、
前記第2制御手段は、前記総電力消費量が前記上限値を超えないようにするために、前記高温側冷凍機を前記二元運転状態から前記一元運転状態に切り換えると共に、前記低温側冷凍機を停止させるように、調温調湿装置に対応する前記第1制御手段を制御することを特徴とする請求項13〜19のいずれかに記載の環境試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−57421(P2013−57421A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194645(P2011−194645)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】