説明

環境調和型再生可能還元剤或いは再生還元剤を用いた鉄の生産

鉄鉱石から金属鉄を生産するため、鉄鉱石粒子及び還元剤粒子の混合物から形成される物質の塊状物を含む組成物が用いられ、その還元剤は微粒子型のバイオマス物質或いは微粒子型のプラスチック樹脂物質である組成物が用いられる。還元剤はバイオマス物質及びいかなる比率の樹脂であってもよい。物質の塊状物はペレット、ブリケット、小片或いは小塊等の製錬に適した形状を有する1以上の物体を有する。ペレットは形成された形を維持するのに十分な粘着性を有する。本発明はまた、鉱石から鉄を精錬するための新たな方法を提供し、この方法は鉱石を分割し選択された大きさの粒子にし、分割した鉱石の粒子をバイオマス物質の粒子或いはプラスチック樹脂物質の粒子或いはそれらの混合物と混合させ、混合物の塊状物を、溶鉱炉内で製錬するのに適した所定の形状を有する1以上の物体を成形し、成形した塊状物を溶鉱炉内に配置し、塊状物を組成物の温度を上昇させるのに十分な熱にさらし、溶鉱炉内の鉄を精錬温度にし、それにより鉱石から金属鉄を直接生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年3月13日出願の同一の発明の名称を有する米国仮特許出願番号第60/781,796号の利益を主張するものであり、これを参照することによって本発明に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は鉱石の製錬に関する。さらに詳細には、金属鉄を鉄鉱石から生産する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
古代より、鉄鉱石から鉄を生産するために、石炭や木炭等の燃料が利用された。この燃料は、熱を生み出す遊離炭素、鉱石の還元に必要な還元ガスを含む。木材のみではあまり多くの熱を生み出さず、石炭(12,000から15,000BTU/lB)及びコークス(約12,000-15,000BTU/lB)と比較して、約6,000から8,000BTU/lb程度と少ない。初期の頃は小さな溶鉱炉及び簡単な空気吹き出し装置を用いていたので、炭化鉄を形成するのに十分な高温が得られなかった。その為、最初に形成された鉄はほとんど価値を有さず、製鉄業者は火が燃え尽き、「鋼片(ブルーム)」を取り出すまで待たなければならなかった。この鋼片は、25から50ポンドの鉄の塊状物で、鍛えて武器にすることができる炭素をほとんど有さない。木炭はおよそ1860年頃まで利用され、その後、石炭から生産されるコークスが鉱石製錬に用いられる標準的な燃料になった。石炭は大部分が遊離炭素からなるものである。無煙炭は約6%の揮発物を含有し、瀝青炭はいくらかより多い量の揮発物を含有する。コークスはより多くの遊離炭素を有する。コークスは、石炭を少量の酸素で燃焼させて、また温度を約1000度から1300度に維持して巨大分子をひび割れさせ、石炭から出た揮発性物質を排除することにより作られる。このコークスは、より高い機械的強度を有し、約85から90%の遊離炭素を含有し、鉱石製錬に必要な高温をもたらす。現代の溶鉱炉においては、鉄鉱石、石灰石及び石炭が交互に配された層が設置されている。コークスは所望の熱をもたらすと共に、鉱石を金属鉄に変換するのに必要な還元ガスをもたらす。そのため、典型的な溶鉱炉において、鉄鉱石(FeO)2000トン、コークス500トン及び石灰石400トンから、銑鉄が一日で1000トン生産される。これと同様にスラグ500トン及び大量の可燃性ガスが生産される。
この2、3年の間、鉄の直接生産として知られている方法が開発されている。また、粒鉄を鉄鉱石から生産する方法も言及されており、以下の文献における例において説明される。
【0004】
【非特許文献1】Kobayashi I., Tanigahi Y. and Uragami A, A New Process to produce Iron Directly From Fine Ore and Coal, Iron and Steelmaker, Vol.28, No.9, 2001, pp.19-22
【非特許文献2】Negami T., 2001, ITMK3 Premium Ironmaking Process for the New Millenium, Direct from Midrex 1st Quarter 2001.
【非特許文献3】Tsuge O., Kikukuchi S., and Tokuda K., Successful Iron Nugget Production at ITmk3 Pilot Plant, 61st Ironmaking Proceedings, Nashville, Tennessee, 2002.
【非特許文献4】Anameric B. and Kawatra S.K., Laboratory Study Related to the Production and Properties of Pig Iron Nuggets, Minerals and Metallurgical Processing, Vol.23, No1, February 2006 (a), pp.52-56.
【非特許文献5】Anameric B., Rundman K.B. and Kawatra S.K., Carburization Effects on Pig Iron Nugget Making, Minerals and Metallurgical Processing, Vol.23, No.3, March 2006, pp.139-151.
【非特許文献6】Anameric B. and Kawatra S.K., Pig Iron Nuggets Versus Blast Furnace Pig Iron, Presented at TMS Fall Extraction and Processing Meeting, Proceedings of the Sohn International Symposium, San Diego, California, Vol.5, 2006 (b), pp.136-156.
【非特許文献7】Anameric B. and Kawatra S.K., Conditions for Making Direct Reduced Iron, Transition Direct Reduced Iron and Pig Iron Nuggets in a Laboratory Furnace - Temperature Time Transformations, Submitted for publication in Minerals and Metallurgical Processing, May 2006 (c), Preprint no MMP-06-027.
【非特許文献8】Anameric B. and Kawatra S.K., Microstructural Investigation of the Pig Iron Nuggets Produced at Laboratory Conditions, ISIJ International, No1, January 2007 (a).
【非特許文献9】Anameric B. and Kawatra S.K., Laboratory Scale Investigations on the Formation of Pig Iron Nuggets, Submitted for publications in ISIJ International, January 2007 (b).
【非特許文献10】Anameric B. and Kawatra S.K., Transformation Mechanisms of Self Reducing Fluxing Dried Greenballs into Pig Iron Nuggets, Presented at 2007 SME Annual Meeting, 2007 (c).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら鉄の直接生産において、石炭は金属酸化物の還元剤として用いられている。本発明が発明されるまで、商用の直接粒鉄製錬技術は、還元剤として石炭に依存していた。必要とする熱を生み出すために、従来の製鉄技術は溶鉱炉に用いるコークス或いは直接還元鉄に用いる天然ガスの両方が必要であった。化石燃料として、石炭及び天然ガスは無限の資源ではないので長期で考えた場合有用ではなく、また、大気中の二酸化炭素量を増大させるものである。したがって、本発明の前に、少なくとも石炭と同量のエネルギーを有する燃料のみが、酸化鉄を金属粒鉄に還元するのに必要な熱及び還元ガスを生産することが可能であるとされていた。結果として、遊離炭素を大量に含む石炭或いはコークス等の従来の物質のみが、製錬工程において依存されてきた。しかしながら、限られた再生不能資源であることに加えて、石炭の燃焼は環境問題を引き起こす原因となっている。このような環境問題は、例えば水銀といった重金属が放出され環境へ排出されることが原因である。また、望ましくないものとして広く認知されている温室効果ガスを生み出している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術におけるこれら及び他の欠点の観点から見て、金属鉄を鉱石から生産する新たな組成物及び方法を提供することは本発明の一つの目的である。この方法において、木炭、石炭或いはコークスは必要とされず、さらに金属は鉱石から直接生産することができる。そのため、金属鉄製品は、例えば鉱山にごく近接近して生産可能であるので、従来の鉄生産の溶鉱炉処理を通さずに、金属は多数の鉄屑再溶融業者又は他の鉄鉱メーカーと直接売買することができる。
【0007】
その他の目的は、金属鉄を再生可能或いは再利用可能な物質を用いて鉱石から生産することである。この時、木炭の生産等の再生可能物質の前処理等は必要とされない。
【0008】
さらに他の目的は、鉱石から金属鉄を生産するための直接製鉄方法を提供することであり、環境的に持続可能な産業を構築するものである。
【0009】
さらなる特定の目的は、直接製鉄のための組成物及び方法を提供することであり、還元剤自身が結合剤として作用して物質の塊状物を結合させることができ、この目的のために添加剤を必要としない。
【0010】
本発明のさらなる他の目的は、鉱石から金属鉄を製造する新たな組成物及び方法を提供することであり、これにより最終生成物への混入が避けられ、スラグの量を少なくすることができる。
【0011】
さらなる他の目的は、スラグが生産された金属鉄からすぐに分離されるという記載された手順の種類をもたらすことである。
【0012】
さらなる他の目的は、金属鉄の生産のための改良された方法及び組成物を提供することである。この金属鉄は腐食に強く、輸送に好都合である。またこの金属鉄は、電子高炉内での再溶融による製鉄用の供給原料、或いは酸素転炉内の鉄屑の代替物としての製鉄用の供給原料に好適である。また、この金属鉄はすぐに利用可能な幅広い種類の原料を利用することができる。同様に、金属鉄は以下の説明から明らかになる他の長所及び利点を有する。
【0013】
これら及び他のさらなる詳細及び特定の本発明の目的は、付随する明細書、請求の範囲、及び図面を考慮することにより明らかになる。これらは一例として説明されるが、添付の請求の範囲内において、本発明中の様々な方法のいくつかは達成可能である。
【0014】
本発明の一つの態様は、ある組成物を使用する鉱石から金属鉄を生産することに関する。この組成物は、鉄鉱石粒子及び還元剤粒子の混合物から形成される物質の塊状物を含む。この還元剤は微粒子型のバイオマス物質或いは微粒子型のプラスチック樹脂物質の粒子である。この還元剤はまた、これら二つの物質のいかなる比率の混合物であってもよい。物質がいかなる好適な大きさの小片であってよい一方、還元剤同様鉄も微粒子型であることが好ましい。また、物質の塊状物は粘性塊であることが好ましく、この粘性塊はペレット、小片或いは小塊等の選択された形状に形成され、製錬用に適している。また、組成物は、塊状物が形成された形状に維持するための十分な粘性を有する。「粘性塊」という用語は物質の塊状物を表し、少なくともその形状、すなわち全体を維持するのに十分な粘性を有することを意味する。
【0015】
本発明のその他の態様は、鉱石から鉄を精錬するための新たな方法を提供することである。この方法は以下のことを含む。すなわち、鉱石を分割し選択された大きさの粒子にする。次に、分割した鉱石の粒子をバイオマス物質の粒子或いはプラスチック樹脂物質の粒子或いはそれらの混合物と混合させる。そして混合物の塊状物を、溶鉱炉内で製錬するのに適した所定の形状に成形する。そして、成形した塊状物を溶鉱炉内に配置し、塊状物を組成物の温度を上昇させるのに十分な熱にさらし、溶鉱炉内の鉄を精錬温度にし、それにより鉱石から金属鉄を直接生産する。熱はいかなる便利な方法で生産されてもよく、電気加熱、放射、或いは気体、液体或いは固形燃料を溶鉱炉内で燃焼することにより生産される。混合物中に配された還元剤中に事実上遊離炭素がない場合、本発明における方法は、鉱石の精錬に非常に効果的である。したがって、石炭、コークス、木炭或いはいかなる他の従来の高エネルギー燃料を必要としない。高エネルギー燃料は従来商業的方法に用いられ、鉄の製錬に必要な所望の高温や還元ガスをもたらした。本発明のさらなる特徴は、付随する図面及び本発明をほんの一例として説明する以下の明細書と関連して、さらに詳細が述べられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
出発原料としての酸化鉄鉱は、いかなる適切な商業的に利用可能な微粒子型で用いられてもよく、好適には粉体で用いられる。この酸化鉄鉱は通常、タコナイト、ヘマタイト或いはリモナイトである。直径0.25インチ或いはそれ以上の大きさの粒子が用いられると、処理時間は不必要に長くなり、粒子は粘性塊状になるという役割を果たさない。結果として、小さい粒子が用いられることが好適であり、最も好適とされるのは粉末状の粒子であることである。「粉末状」とは、粒子の90%が少なくとも75マイクロメートルの目を有する篩を通過する場合を意味し、最も好適なのは粒子の90%が50マイクロメートルの目を有する篩を通過する場合である。非常に良い結果が得られるのは、鉱石の粒子の90%が25マイクロメートルの目を有する篩を通過する場合である。他の微粒子状酸化鉄鉱が、商業的に入手可能な粒度で利用されてもよい。粉末状の粒子を用いることにより、収量及び処理時間は最適化される。また鉱石は、以下で説明されるようなペレット、ブリケット或いは小塊等の粘性塊状に形成されるよう十分に適合される。例えば、タコナイト鉱石は選鉱工場から商業的に入手可能なものである。この選鉱工場で鉱石は縮小され粒子になる。この粒子の90%は25マイクロメートルの網目を通過する。また粒子の95%はFeO、5%はシリカで構成されている。一般に、粒子がより細かいほど、より容易に粘性塊状に形成することができ、処理時間をより早めることができる。結合剤を用いることは、本発明の操作を成功させるのに必ず必要ではない。なぜなら粒子を圧縮して圧縮塊にするのに、いかなる方法が用いられてもよいからである。
【0017】
本発明の手順を始めるにあたり、酸化鉄粒子は還元剤と混合される。この還元剤は遊離炭素をほぼ有さない。適切な還元剤として、バイオマス物質或いはプラスチック樹脂物質のいずれかとすることができる。このプラスチック樹脂物質とは例えば、合成樹脂、特に再生或いは再生可能なプラスチック樹脂物質を微粒子型或いはいかなる比率で混ぜられたその混合物などである。「バイオマス」という用語はMcGraw Hill Chemical Encyclopedia of Science and Technology 2005において、「葉、根、種及び茎等の植物により生産された有機物」と定義されている。ある場合においては、微生物及び動物の代謝廃棄物もバイオマスと考えられる。バイオマスという用語は直接食品或いは商業製品に用いられることがなく、工業用に代替利用される物質のことを示すことが意図されている。バイオマスによく用いられる資源として、1)トウモロコシの茎、藁、及び殻或いは肥料等の農業廃棄物、2)木質物質、木材、樹皮、おがくず及び工場廃棄物、3)古紙、廃棄物ガラス、枯葉及び木や花を切り落とした時に出るごみ等の都市ごみ、4)ポプラ、柳、スイッチグラス、アルファルファ、ウシクサ(prairie bluestem)、コーンスターチ及び大豆油などのエネルギー作物等が挙げられる。
【0018】
しかし、本明細書に用いられる「バイオマス」という用語は、有機高分子物質(尚、遊離炭素を有さない或いはほぼ有さない)を含む有機物、特に植物或いは動物に関する前述の定義或いは意味において、より広範囲に用いられることを意図している。バイオマス物質に加えて、本発明は合成高分子物質を還元剤として用いることも可能である。この合成高分子物質は遊離炭素を有さない或いはほぼ有さない。この合成高分子物質は例えば、かつて埋立地に堆積していた再生或いは再生可能なプラスチック等である。バイオマス物質は、石炭、木炭或いはコークスとは全く異なるものである。この石炭、木炭或いはコークスは、上記の従来の製錬工程及び直接製鉄工程においてかつて用いられていた。この後者の石炭、木炭或いはコークスは高エネルギー燃料を含んでおり、この燃料は遊離炭素の大部分或いはほぼ全体を占めるため、バイオマス物質とは異なるとされるのである。それとは対象的に、バイオマス物質は、本発明で定義されるように、遊離炭素をほとんど有さない。存在する炭素は、木材の場合、多糖、セルロース、でんぷん及びリグニン等の有機高分子中にある。木材は、70%から80%のセルロース、有機多糖高分子化合物及び20%から30%のリグニン、非多糖有機重合物質からなる。さらに、本発明の木片或いは木材パルプ、おがくず等は、幅広い種類の非木材バイオマス物質を利用することができる。非木材バイオマス物質とは、草、穀物、茎等であって、それらの大部分はセルロース及び他のサッカリド重合体からなるものである。
【0019】
簡単に上記したように、石炭、コークス或いは木炭は、以前は必要な量の還元ガスを生産するために依存されていた。また従来は、高い発熱量を有する燃料のみが価値があるという一般的な考えもあった。例えば木材は、石炭の約半分程度の発熱量のみ、及びコークスの半分以下の発熱量しか有さない。そのため、木材は製錬前に別の方法で木炭に加工された。したがって、商業慣行が十分に確立されていたため、酸化鉄の製錬のためにバイオマス物質を還元剤として用いられることがなかった。本明細書中における有用なバイオマス物質は、炭水化物やその他の有機高分子化合物、及び石炭、コークス或いは木炭以外の炭化水素を含む。例として、紙、製紙用パルプ、セルロース紙製紙工場の余剰汚泥、砕木、小麦粉、コーンミール、乾燥ビートパルプの余剰分、刈り取った草、葉及び茎、刻んだ藁、とうもろこしの茎、おがくず、使用済み乾燥有機性廃棄物、乾燥汚泥、泥炭、でんぷん、グルテン、リグニン、乾燥蒸留かす、及びアルコール生成物、糖液(液体)、スイッチグラス及び他のバイオマス穀物から得られる他の固形残存物等があげられる。再生或いは再生可能プラスチック樹脂はまた、無漂白のプラスチック樹脂であることが最も好適とされる。
【0020】
鉱石の粒子と還元剤が混合された後、その物質は粘性塊状に形成される。この塊状物は小片或いは小塊からなり、その大きさはペレット、ブリケット或いは他の塊状物にするのに最も有用ないかなる大きさであってよい。ペレット、ブリケット或いは他の塊状物では、粒子同士は、還元剤自身の効用を下げるような結合剤により結合するか、或いは塊状物に加えられた結合剤により結合する。当業者にとって明らかである様々な方法により、結合及び密着が達成される。その一方、酸化鉄及び還元剤混合物に水を加えることにより、特に有機物物質がバイオマス由来のものである場合、練り粉を都合よく形成することができる。或いは、有機樹脂プラスチック物質が熱可塑性物質である場合、これを溶かして酸化鉄粒子物質に形成することにより、練り粉を都合よく形成することができる。還元剤が最初に接着特性を有していた場合、水を加える必要はない。バイオマス自身は通常、接着剤としての役割をすることにより接着性をもたらす。この接着性により粘性塊中の鉄鉱及びバイオマス物質の混合物は維持される。粘性塊とはすなわち、物質をさらに加工できるような凝集形状である。穀粉等のでんぷんが豊富なバイオマスは結合剤としてよく機能する。利用されている砕木等の主なバイオマスがほとんど結合能力を有さない場合、穀物から作られる少量の穀粉を加え結合剤として利用することが可能であり、また結合剤としてよく機能することがわかった。水分が加えられた鉄鉱の約1重量%から2重量%の量の穀粉を加えることにより、結合剤として優れた結果が得られることがわかった。接着特性を有するリグニン、グルテン及び他の有機物物質はまた、天然の接着特性を有する還元剤として好適であり、結合剤として使用することも可能である。
【0021】
鉄鉱の塊状物及び還元剤物質はいかなる好適な大きさであってよいが、十分小さいペレット或いはブリケットの小片が好適にもたらされる。これにより、熱は各小片の内部へ急速に到達する。もっとも有用な直径は4から8cm以下である。また直径約0.25cmから直径約4cmの範囲であることが好適である。もっとも好適なのは、直径約2分の1cmから直径2.5cmの範囲である。粘性塊をほぼ丸型のペレット状に形成すると使いやすい。これは周知のいかなる方法によりなされることが可能である。例えば、鉱石用ペレタイザが用いられる。このペレタイザは回転表面を有し、その上に混合物が支持され、その混合物に水が霧状ミストとして吹き付けられる。或いは、当業者に周知の他のいかなる好適なペレタイザを用いてもよい。形成された小片或いはペレットが水分を含んでいた場合、これらは好適には、少なくともペレットが自立できるまで乾燥されるが、最も好適なのはペレットが倒れずに深さ約6インチの土台内に配置されることができる堅さになるまで乾燥させることである。
【0022】
鉱石及び還元剤は重量を量られた後、十分に混合される。混合はニーダーミキサ等のいかなる好適な商業的に入手可能な型であってよい。混合は塊状物が僅かに湿り気を帯びている間中続けられ、混合物が塊状物になり始めるまで混合は続けられる。ある好適な方法において、塊状物は圧延され、押圧され、或いはボール又はペレット状に形成される。このボール又はペレットは例えば、それぞれ鉄精鉱25g、および還元剤7.5gを含むものである。そして塊状物は、例えば約105度にてバッチ内で乾燥される、或いは継続的に乾燥される。形成された物質の粘性塊は硬くなり、自立できる十分な固さを有し、ペレット或いは塊状物、ブリケットの土台の中に配置される。この土台は、工業用炉中に通常約6から8インチの深さを有する。しかしながら、土台の深さは重要ではない。試験目的の小さいバッチの量は1以上のいかなる数のペレット或いは小片からなるものであってよい。
【0023】
溶鉱炉は周知のいかなる方法で、溶鉱炉中に配置された物質の装入物と別々に熱せられることが可能である。例えば、天然ガス、プロパン或いは燃料油等の固体或いは液体燃料を燃焼することにより、溶鉱炉は電気抵抗ヒータを用い電気的に熱せられる。実験運転用に用いるある好適な溶鉱炉は、Thermolyne F46128CM型高温電気加熱炉である。いかなる種類の工業規模の溶鉱炉が用いられてもよい。
【0024】
次に本発明を詳述する図面を参照し、さらに例を用いることとする。図1は、試験目的に用いられる電気加熱炉の垂直断面図である。溶鉱炉(10)は、溶鉱炉チャンバ(14)を有する耐火性筐体(12)と、耐火物から形成された炉床板(16)、及び坩堝(18)を有する。熱は、(20)及び(22)で示す2組の電機加熱要素により供給される。熱電対は(23)である。粘土及び黒鉛から形成される坩堝(18)は、耐火性保持土台(24)を有する。この土台(24)は化学反応或いは製錬工程には関わらないが、鉄鉱ペレット(26)を炉内の適所で保持し、また生産された金属鉄を受ける役割をする。本明細書中の「耐火物」という用語は、製錬用溶鉱炉の温度にさらされた時に物質の形及び化学的同一性を維持するようにされた物質を意味し、また、鉄鉱の還元に化学的に関与しないものを意味する。20分程度で完了する焼成プロセスの間、ペレット(26)内の還元剤を組成する有機物物質は分解される。これが酸化鉄を金属鉄に還元する有機物の分解物質である。不純物がスラグ物質として溶解物から放出される一方、金属鉄は溶融される。不純物が放出される時、1以上の液滴(28)及び(30)が残る。この液滴(28)及び(30)は、冷却時に製鋼時の使用に好適な金属鉄の小片として凝固される。製錬工程の間、金属鉄は有機物物質から出た過剰な炭素を吸収する。過剰な炭素は鉄に組み込まれるようになり、それにより鉄は低温(約1200度)で溶融されることが可能である。この温度は約1539度で純鉄が溶融する温度よりも低い。
【0025】
酸化カルシウム或いは炭酸カルシウム等の他の物資は溶剤として添加され、溶融及び金属鉄からのスラグ分離を向上させることが可能である。最終的な塊状物或いは他の物質の粘性塊は、周知の商業的に入手可能な種類の分離機で金属鉄を分離及び採取するため、さらなる処理が行われる。
【0026】
上記のことから推察できるように、本発明は、有機物の木炭生産或いは有機物を製錬工程のために準備するという第1の手順を行わずに、再生可能及び再利用可能な有機物が還元剤として用いられるという利点を有する。したがって、再生可能及び再利用可能な有機物は、原料のまま用いることができる。また、この有機物のほとんどが余剰或いは廃棄物とされるものであるので、製錬工程はしばしば低コストで実施可能である。さらに、再利用可能な有機物からの鉄の生産は、環境的に持続可能な産業の鉄の生産において重要である。本発明の他の利点として、バイオマス物質或いは他の有機物はペレットの結合剤として作用し、反応が完了するまでペレットを結合している。これにより、ベントナイト粘土等の結合剤をさらに使用する必要はなくなる。個々の結合剤を排除することにより、生産物への汚染がほとんどなくなり、スラグの量がより少なくなり、またスラグ特性の制御が容易になる。
【0027】
生産された粒鉄(28)及び(30)の大きさは、耐火性土台上にペレットを保持することにより制御される。このペレットは好適には、溶融金属により湿らされない粒子からなる。これにより、液滴は耐火性保持溶剤と区別され、また分離されることができる。図3は製錬後の粒鉄を示す。生産された鉄の小片の大きさは、鉄鉱の粘性塊及び還元剤(26)を保持することにより制御されるということがわかった。還元剤(26)は耐火性粒子の土台(24)上にあり、この粒子は特に、溶融金属(28)及び(30)により湿らされることのない微粒子である。ペレット(26)或いは他の物体は金属粒鉄(28)及び(30)に変換されると、鉄塊は溶融して流出し、ペレットの下の耐火性土台内のポケットに集められる。鉄塊のこれらの液滴のいくらかは融合するが、大部分は、分離した状態の液適(28)及び(30)のままである。この液適(28)及び(30)は冷却時、独立した金属体或いは粒鉄を形成する。様々な耐火性物質を用いることが可能である。好適な耐火物の例として、窒化ホウ素と混合したアルミナ(AlO)、或いはジルコニア(ZiO)と混合したムライト(シリマナイト)(2SiO:3AlO)が挙げられる。その他利用可能である好適な耐火物は、例えば石油コークス等の黒鉛粉末或いは炭素粒子である。図示される如く、金属鉄のサンプル量の生産において、坩堝をほぼ満たす、粉末状の石油コークスの土台からなる耐火物が用いられる。耐火性物質は消費されず、溶融時に塊状物を保持するのみである。そして、ペレット(26)或いは他の鉄鉱の塊状物及びバイオマス材料が、耐火性物質(24)の粘着性のない土台上にある一方、耐火性物質は遊離金属鉄を形成する。
【0028】
次に図4を参照する。本発明に従った工業用製錬溶鉱炉を用いた製錬操作を図示している。この溶鉱炉は、工業用規模の鉄の製錬用のものである。この場合、コンベアを設置したものが例として図示されている。しかし、本発明は多様な溶鉱炉に適用可能であり、例えば、とりわけ回転式炉床炉、高炉或いは鉄浴式製錬炉等である。符号(32)で示された溶鉱炉は耐火性物質からほぼ形成されており、溶鉱炉チャンバ(34)を含む。この溶鉱炉チャンバ(34)は入口部(36)及びコンベアを設置した運搬装置を有する。この運搬装置は一部のみが、鉄鉱運搬装置(38)を有する形で示されている。運搬装置(38)は、溶鉱炉に入ると予め形成された物質(26)の層で満たされる。予め形成された物質(26)は、上述の鉱石及び還元剤を含むものであり、いかなる所望の深さにまで積み重ねることが可能である。或いは、物質(26)のうちの一つのみの高さと等しい単一層に配置することができる。これにより、凝集体(26)のそれぞれは運搬装置(38)の上向きの耐火性表面に保持される。この表面は、固形耐火物であっても、いかなる好適な商業的に入手可能な粉末形状の粘着性のない粒子を含むものであってもよい。製錬操作が溶鉱炉(32)内で完了した後、運搬装置(38)から積載物が取り除かれ、金属鉄は残存スラグから分離される。結果として得られた鉄の小片或いは粒鉄は、輸送に適しており、腐食に対し安定しており、及び酸素転炉内で用いられる鉄くずの代替物として、或いは鉄を製造する時に用いられる電気炉内での再溶融に用いられることが可能である。
【0029】
製錬は、本発明を用いて比較的低温で実施可能であることがわかっている。粒鉄はバイオマス還元剤を用いて生産される。その際、温度は1350度から1450度、処理時間は約20分から約40分までである。利用可能な溶鉱炉の最も高い温度は、溶鉱炉の性能によってのみ制限される。金属鉄は本発明を用いて製造可能である。その際、温度は1350度よりやや低く、例えば1300度である。また、この金属鉄の製造時、バイオマス物質や合成樹脂に含まれる炭素が金属内に拡散し、融点を下げる時間が発生する。工業実装において、前述の如く、所望の温度に達することが可能ないかなる熱源も好適とされる。この熱源として、電熱、天然ガス、石炭燃焼或いはその他いかなる経済的な高温燃料が含まれる。本発明は優れた生産量を産出することができる。84.5%もの生産量が既に達成されており、これは生産量71.4%のヘマタイト(FeO)2000トンに対し、銑鉄1000トンを生産する従来の溶鉱炉と比較すると非常に有利なものである。
【0030】
製錬後、塊状物が冷却されると、多孔性で低密度のスラグはほとんどの不純物を含んでおり、生産された金属鉄から簡単に取れて壊れた。金属鉄は鉄の還元に必要な理論上の化学量論量でのみ生産される。その一方、実用目的のため、或いは十分な還元を確実にするため、実際に使用される有機物物質の量は、鉄を還元するのに理論上必要な量の余剰分である。鉄鉱石は塊状物の約60重量%から90重量%であることが好ましく、最も好適なのは、塊状物の約65%から約85%である。本発明を用い、バイオマスを加えた材料を用いて酸化鉄から鉄へ実質的に完全に還元することにより、粒鉄の生産は成功する。この時酸素は、ペレット或いは他の凝集塊の約20重量%から30重量%の範囲である。本発明の使用を通じ、マグナタイト(FeO)及びヘマタイト(FeO)は還元され、金属鉄の生産が成功した。結果として得られた金属鉄の炭素含有量は約2%から約4%の間である。例えば、銑鉄生成物の鉄含有量は約4重量%までである。従来の方法で生産された銑鉄は平均して約92%から94%であって、残りは炭素及び他の不純物からなる。また本発明により作り出された銑鉄は、腐食に対して安定しており、また輸送に適しており、及び電気炉内での再溶融、或いは酸素転炉内の屑鉄の還元の両方による製鋼のための優れた供給原料である。
【0031】
工業規模において、本発明は粒状銑鉄を様々なタイプの溶鉱炉を用いて生産することを可能にする。この溶鉱炉には、回転式炉床炉、高炉或いは鋼浴製錬溶鉱炉が含まれる。電気抵抗溶鉱炉に加えて、その他のタイプの溶鉱炉が用いられる。この溶鉱炉とは例えば、誘導加熱炉がある。この誘導加熱炉内では交番磁束が用いられ、導電性物質内に、或いはとりわけアーク炉等の他の手段により熱が生産される。既知の通り、製錬操作を実行するため熱は、変換過程において還元剤として用いられる物質と分離して供給される。一方で、酸素を遊離金属に変換する還元力は炭化水素ポリマー或いは炭水化物ポリマーによりもたらされる。この炭化水素ポリマー或いは炭水化物ポリマーは、ペレット、ブリケット或いは他の凝集体を作り上げる粘性塊の一部であり、これより本発明において利用されるものである。
【0032】
本発明に先立って、製鉄産業は大量のバイオマス及び再生有機物を利用することができなかった。再生有機物とは、製錬鉄鉱石中の合成プラスチック樹脂等であって、これは本発明がこれより利用するものである。
【0033】
本発明は多数の長所及び利点を有する。還元剤は再生可能な資源に由来するものであるので、長期で見ても、この手順により大気中の二酸化炭素量が純増加することはない。還元剤はまた地元の、製鉄工場に近い場所で生産可能であり、相当な距離を輸送するよりも近い。さらに、還元剤の水素含有量は金属酸化物の還元に役立つ。雰囲気酸素と反応することによって消費されていない水素は、金属酸化物の還元に利用できる。本発明において、還元剤は熱の一次的資源ではない。上述の外部熱はいかなる方法で都合よくもたらされてもよい。これにより、燃料としての価値を考慮せずに、還元剤としての性能に完全に基づいて還元剤を選択することが可能になる。熱源は、熱の源と個別に最適化される。この熱の源は、熱効率にのみ基づいて選択されるが、酸化鉄を金属鉄に還元する能力を有するかどうかとは関係ない。これにより、本発明による手順は、還元剤及び加熱用燃料としての石炭、コークス、木炭を用いる従来の手順よりも効率的であるとわかる。
【0034】
その他の利点は、多数のバイオマス物質中に存在する接着特性に起因する。この接着特性は結合剤として作用し、バイオマス物質が処理される間、鉄鉱還元体を凝集塊として保持する。したがって、鉱石を汚染しスラグの量を増加させることになるベントナイト粘土等の非有機物結合剤を用いる必要はない。さらに、ほとんどのバイオマス物質非有機化合物の含有量は少ない。したがって、石炭或いは木炭等の高い非有機物質含有量を有する還元剤よりも、産出されるスラグの量をより低減させることができる。
【0035】
本明細書に引用された全ての引用文献は、本出願の本文内で全て複写される場合、参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【0036】
本発明は以下の実施例を参照することにより、さらなる理解が得られる。
<実施例1>
ミシガン州イシュペミングのエンパイア鉱床より採掘したマグネタイト(FeO)を含有する鉄精鉱は、25マイクロメートルの篩を通過する粒子90%で構成され、シリカ5%を含有する。この鉄精鉱をCarbondry(登録商標)木材チップからなる砕木と混合させる。この砕木は、平均長さ約1インチ及び厚さ8分の1インチで、また水分を5%含む、ノースダコタ州ビズマークのEnergy社製のものを準備した。木片はロッドミルで乾式粉砕され、4.75mmの目を有する篩を通過するようにした。少量の小麦粉も結合剤として作用させるため加えられた。これは、砕木が粘性塊に形成されるための十分な粘性を有していないためである。マグネタイト、砕木及び穀粉を計量し、水分と共にニーダーミキサで混合して僅かに湿り気を帯びさせ、混合物が塊状物になるまで混合し続けた。そして混合物はボール状に形成された。このボール状混合物は、鉄精鉱約25グラム及び砕木チップ7.5グラムからなる。また小麦粉は、マグネタイトの重量の30%の還元剤重量であった。平均約2cmの直径を有する凝集されたペレットは、次に105度で乾燥され、図1及び図2に示される如く黒鉛粘土の坩堝内に配置される。この坩堝は石油コークスからなる耐熱性の支持基盤を有する。石油コークスはペレットを保持するが、消費したり反応したりしない。凝集されたペレットは約1475度の温度で約25分間焼かれる。冷却後、得られた金属鉄は粘着性スラグから簡単に分離可能である。
【0037】
<実施例2>
金属鉄は、実施例1でなされた焼成温度が1425度及び1400度に下げられたこと以外の4つの実験におけるマグネタイトより得られた。配合飼料はマグネタイト約100グラム、砕木約30グラム及び小麦粉約2グラムで構成された。結合混合物は4つに分けられ、それぞれマグネタイト約25グラム、砕木約7.5グラム及び小麦粉約0.5グラムを含む塊状物を形成した。焼成時間が少なくとも20分の場合、優れた金属鉄物質が得られた。
【0038】
<実施例3>
第3の実施例において、配合飼料はマグナイト100グラム、砕木20グラム及び小麦粉2グラムから構成された。結合混合物は4つに分けられ、それぞれマグネタイト約25グラム、砕木約5グラム及び小麦粉約0.5グラムを含む塊状物を形成した。次に、個々のペレットは1375度から1425度の範囲の温度で焼かれた。溶鉱炉で焼成した後、優れた金属粒鉄が得られた。
実施例2及び3から得られた結果を下の表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
「開始時のペレット重量」と記した列は、個々のペレットの総重量であり、マグネタイト還元剤及び結合剤を含んだ重量である。推定鉄回収率は、主に得られた金属鉄片にのみ基づいており、スラグに含まれた金属の小さなビーズ状のものの重量は含まない。用いられた溶鉱炉内に存在するという条件下で、還元プロセスを完璧に実行するため、また金属とスラグの分離を成功させるためには、最低でも20分必要であるということが結論付けられた。
砕木を少ししか含まないナゲット(小さい塊状物)は、より多く木材を含有するように作られたペレットと比較すると、僅かな還元鉄回収率であった。これは、20%レベルは、用いられた溶鉱炉内で酸化鉄全てを金属に完全に還元するのに十分ではないということを示す。金属鉄の生産は、溶鉱炉の温度が1375度の低さである時に成功することがわかった。生産されたナゲットは、7.3g/cmの平均見掛け密度を有していた。これは現在粉末石炭及び粉末鉄粒子の混合物を用い生産される直接還元鉄よりも高密度であり、また溶鉱炉により生産される銑鉄に匹敵する。炭素含有量は約4%である。
【0041】
<実施例4>
他の実施例において、ペレットを含む塊状物は、以下の構成を用いることにより製造された。すなわち、マグネタイト50グラム、ポリプロピレンプラスチック樹脂20グラムである。混合後、混合物は電子レンジで過熱されポリプロピレンを溶融させ、それから十分に混合され、半分に分割され、そしてプレスしてそれぞれ直径約2cmの凝集粘性塊にされ、冷却し硬化された。第2の実施例において、ポリプロピレンは20グラムの小麦粉及び少量の水に置き替えられ、固い練り粉を形成した。この混合物は練られ、直径約2cmの2つのボールに形成され、そして乾燥するまで100度に加熱された。
両構成物において、凝集ペレットは以下のように処理された。黒鉛粘土の坩堝は粒状コークス(炭素)からなる耐熱性支持基盤で満たされ、図2に示す如く適所に凝集粒子を保持した。坩堝は既に1475度に加熱された電気加熱箱型炉(図1)内に配された。凝集されたペレットを含む坩堝は、20分間溶鉱炉内に置かれて取り除かれ、冷却し自然に室温に戻された。生産された金属鉄物質は高密度金属鉄(28)であった。この高密度金属鉄(28)は、元々酸化鉄内に存在した鉄の大部分を、多孔性の、低密度スラグとともに有していた。このスラグは不純物の大部分を含み、生産された金属鉄の表面から簡単にはがれた。
【0042】
<実施例5>
鉄鉱の還元は実施例2のように実施されるが、砕木の代替物を除いて、以下の還元剤が個々の物質の製造工程において用いられる。すなわち、紙の粒子、製紙用パルプ、セルロース用紙製紙工場の余剰汚泥、砕木、乾燥ビートパルプの余剰分、刈り取った草、再生或いは再生可能プラスチック樹脂物質、小麦粉、コーンミール、刻んだ藁、とうもろこしの茎、おがくず、使用済み乾燥有機性廃棄物、乾燥汚泥、泥炭、でんぷん、グルテン、リグニン、乾燥蒸留かす、そしてアルコール生成物、糖液及びスイッチグラスである。
【0043】
本明細書中において、量は割合或いは重量パーセントで示される。
本発明の様々な態様は付随する請求項の範囲内のものであり、一度上記の原理が理解されれば、通常の技術を有するものにとって容易に想到することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】溶鉱炉の垂直断面図であって、本発明に従った鉄鉱石の還元を示す図である。
【図2】図1に示す坩堝の拡大図の垂直断面図であって、溶鉱炉内の製錬前に鉄鉱石の塊状物がある様子を示した。
【図3】製錬後の典型的なペレットの様子を示す図であって、金属鉄がスラグから分離している様子を説明したものである。
【図4】ある実施形態の一例を示す縦断面図であって、工業規模における本発明の使用方法を説明したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化状態の鉄から金属鉄生成物を単一の熱処理段階を利用し直接生産する方法であって、
酸化状態の鉄粒子の源を用意する段階と、
前記物質はバイオマス物質の粒子、プラスチック樹脂物質及びそれらの混合物からなる群より選択される1以上の非炭化状態物質を有する還元剤を用意する段階と、
前記還元剤を前記酸化状態の鉄と共に配置し、結合した塊状物を形成する段階と、
前記結合した塊状物を、前記バイオマス或いは非炭化状態にある間に還元炉に配置する段階と、
前記結合した塊状物を前記還元炉内で十分に熱し、前記還元剤物質が前記酸化鉄を、前記熱せられた還元剤物質から放出された構成物質の直接作用により還元させる段階を備え、これにより金属鉄体の生成物は前記溶鉱炉内で生産されることを特徴とする酸化状態の鉄から金属鉄生成物を直接生産する方法。
【請求項2】
マグネタイト、ヘマタイト或いはリモナイトの群から選択される少なくとも1つの鉄鉱石として酸化状態の前記鉄の少なくとも一部を用意する段階を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バイオマス物質及び前記樹脂性物質は、遊離炭素をほぼ有さずに前記溶鉱炉内に配置され、前記結合された塊状物は前記還元オーブン内で十分に熱せられ酸化鉄の酸素を還元し、前記還元は前記還元炉内のバイオマス或いは樹脂性物質からの水素及び遊離炭素の振動を通じ還元剤の直接作用により行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記結合された塊状物は前記還元炉に配置される前に、分離した物体に形成され、前記分離した物体はペレット、ブリケット、小片、小塊及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記結合された塊状物を熱する前に、結合剤を前記結合された塊状物と共に混合し、前記粒子を互いに結合させることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック樹脂物質はほぼ無塩素のプラスチック樹脂としてもたらされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記結合された塊状物は、前記還元炉内で十分に熱せられた分離した物体に分割され金属鉄体及びスラグを形成し、また前記スラグを前記金属鉄体から分離することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
請求項1記載の前記方法により形成される銑鉄生成物。
【請求項9】
ペレット、ブリケット、小片、小塊及びそれらの組み合わせからなる群から選択される分離した物体に前記結合された塊状物を形成する段階と、
前記酸化状態の鉄、鉄鉱石の粒子を用意する段階と、
鉄鉱石物体及び還元剤物体を有する前記結合された塊状物は、前記還元炉で焼かれ、それにより銑鉄生成物の物体を生産し、
前記方法はさらに、前記オーブンから前記銑鉄生成物を取り出しスラグを分離する段階を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記酸化状態の鉄は微粒子型の鉄鉱石を有し、
前記結合された塊状物は1以上の選択された形状の物体内に形成され、
前記1以上の物体は耐火性物質でできた土台上の前記溶鉱炉内に支持され、前記耐火性物質は難揮発性物質を有し、及び
前記1以上の物体は前記溶鉱炉内で少なくとも約1300度の温度で焼かれ、前記物体は前記溶鉱炉から取り出した後のさらなる熱処理を必要としない場合、前記還元炉内で金属鉄物質の物体を直接形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記バイオマスが粘着特性を有するよう選択され、それにより結合剤の作用をし、前記結合された塊状物が分離した物体の形成において密着するようにさせることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記結合された塊状物は製錬溶剤を有し、該製錬溶剤はスラグ及び前記鉄の溶融特性を改善させることを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−530492(P2009−530492A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500408(P2009−500408)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/006175
【国際公開番号】WO2007/108984
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508275168)ミシガン テクノロジカル ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】