説明

環状アザシラ化合物

Si−Si又はSi−Nの単結合によって結合されている一般式(I)=SiY2、及び(II)=NR3の単位4〜10個から構成されている環状アザシラ化合物であって、前記式中、Yは−NR12、水素、及びハロゲンから選択されており、R1及びR2は水素、及び1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択されており、R3は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、ただし環中で一般式(I)の単位の少なくとも2つはSi−Si単結合で相互に結合されており、基Yの最大35mol%が水素であり、基Yの最大15mol%がハロゲンである、前記環状アザシラ化合物、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Si−Si又はSi−Nの単結合によって結合されている4個〜10個の単位から構成されている環状アザシラ化合物、及びその製造に関する。
【0002】
アミノシラン化合物は、Si−N層及びSi−O層の製造にとって非常に興味深い。このためアミノ置換されたモノシランが既に調査されており、また幾つかのジシランは良好な特性を示す。この点では、ケイ素含分が高い化合物に対する興味が存在する。特に興味深いのは、まだ記載されていない、Si原子が隣接するためケイ素含分が高い環状化合物である。
【0003】
US 3565934はアミノシランの熱分解を記載しており、ここでは1,3−ジアザ−ジシラ−シクロブタンが生じる。この反応は、塩化アミン基により促進される。アンモニウム塩により、アミノシランからアミンが脱離する。
【0004】
WO 2004/044958には、アミノクロロシランからt−ブチルリチウムを用いて、1,3−ジアザ−ジシラ−シクロブタンを製造することが記載されている。
【0005】
本発明の対象は、Si−Si又はSi−Nの単結合によって結合されている一般式(I)及び(II)
=SiY2 (I)
=NR3 (II)
[式中、
Yは−NR12、水素、及びハロゲンから選択されており、
1及びR2は水素、及び1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択されており、
3は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
ただし環中で一般式(I)の単位の少なくとも2つはSi−Si単結合で相互に結合されており、
基Yの最大35mol%が水素であり、
基Yの最大15mol%がハロゲンである]
の単位4個〜10個から構成されている環状アザシラ化合物である。
【0006】
環状アザシラ化合物は蒸発させることができ、それゆえSi−N層及びSi−O層の製造に優れて適している。
【0007】
1、R2、及びR3は好適には、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アリールアルキル基であり、好ましくはアルキル基である。基R1、R2、及びR3は好ましくは、1〜12個、とりわけ1〜6個の炭素原子を有する。特に好ましい基R1、R2、及びR3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はt−ペンチル基、及びフェニル基である。
【0008】
一般式(I)中で、基Yのうち好適には最高20mol%、特に好ましくは最高10mol%が水素であり、とりわけ基Yは水素ではない。Yがハロゲンであれば、臭素とヨウ素、とりわけ塩素が好ましい。
【0009】
一般式(I)中で、基Yのうち好適には最高1mol%、特に好ましくは最高0.1mol%、とりわけ最高0.01mol%がハロゲンであり、とりわけ好ましくは基Yはハロゲンではない。
【0010】
Yは好適には、基NHR2である。R2は好適には、R3と同じ意味である。
【0011】
環状アザシラ化合物は好適には、一般式(I)及び(II)の単位4個、6個、又は10個から構成されている。環状アザシラ化合物は特に好適には、一般式(I)の単位3個又は4個と、一般式(II)の単位1個又は2個から構成されている。
【0012】
特に好ましい環状アザシラ化合物は、1−アザ−2,3,4−トリシラ−シクロブタン、とりわけ1−アルキル−2,2,3,3,4,4−ヘキサキスアルキルアミノ−1−アザ−2,3,4−トリシラ−シクロブタン、及び、1,4−ジアザ−2,3,5,6−テトラシラ−シクロヘキサン、とりわけ1,4−ジアルキルー2,2,3,3,5,5,6,6−オクタキスアルキルアミノ−1,4−ジアザ−2,3,5,6−テトラシラ−シクロヘキサンである。
【0013】
環状アザシラ化合物は、一般式(III)
Y(SiY2mSiY3 (III)
の直鎖状オリゴシランと、一般式(IV)
X(H2NR3) (IV)
のアミン塩との反応によって製造でき、
前記式中、
Xはハロゲン原子であり、
mの値は1、2、又は3であり、
3及びYは、前述の意味を有する。
【0014】
環の大きさを制御するため、一般式(III)のオリゴシランと、一般式(IV)のアミン塩との使用比を選択する。
【0015】
Xは好適には、塩素原子である。
【0016】
一般式(IV)のアミン塩は好適には、一般式(III)の直鎖状オリゴシランに対して過剰量で使用する。
【0017】
反応の際に好適には、一般式(IV)のアミン塩が、一般式(III)の直鎖状オリゴシランに対して少なくとも0.1質量%、特に好適には少なくとも1質量%存在する。
【0018】
反応の温度は好適には、少なくとも20℃、特に好適には少なくとも50℃、及び好適には最高200℃、特に好適には最高150℃である。温度の上限は好ましくは、使用する化合物の沸点に応じて調整する。
【0019】
本方法は溶剤中、とりわけ非極性溶剤中で行うことができる。好ましいのは、炭化水素基、及びハロゲン化炭化水素基である。好ましいのは、沸点若しくは沸点範囲が、1barで最大150℃の溶剤混合物である。このような溶剤の例は、3〜10個の炭素原子を有するアルカン、6〜12個の炭素原子を有する芳香族化合物、1〜3個の炭素原子を有するハロゲン化アルカン、及びこれらの混合物である。好ましい例は、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、及びキシレン、並びにこれらの異性体混合物である。
【0020】
反応の進行は、遊離アミンの形成を伴うことがある。
【0021】
環状アザシラ化合物はまた、一般式(III)
Y(SiY2mSiY3 (III)
の直鎖状オリゴシランを加熱することによっても製造でき、
前記式中、
mの値は1、2、又は3であり、
Yは、前述の意味を有する。
【0022】
一般式(III)の直鎖状オリゴシランは、この製造方法で不均化(disproportionieren)できる。
【0023】
反応の温度は好適には、少なくとも80℃、特に好適には少なくとも120℃、及び好適には最高250℃、特に好適には最高200℃である。温度の上限は好ましくは、使用する化合物の沸点に応じて調整する。
【0024】
反応は好適には、ルイス塩基の存在下で行う。塩基の例は、水酸化物、例えばアルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物、とりわけLiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2、アンモニア、アミン、アミド、例えばナトリウムアミドとカリウムアミド、シラジド、例えばリチウムシラジド、水素化物、例えばナトリウム水素化物、カリウム水素化物、及びカルシウム水素化物、アルコレート、例えばイソプロピレート、エタノレート、及びメタノレートである。好ましい塩基はアミン、とりわけ第一級及び第二級アミン、及びシラジド、例えばリチウムシラジドである。
【0025】
反応の際に好適には、塩基が、一般式(III)の直鎖状オリゴシランに対して少なくとも0.1質量%、特に好適には少なくとも1質量%存在する。
【0026】
特別な実施態様では、反応の際に生じるアミンが触媒として作用する。アミンは好適には、反応混合物からの漏出が防止される。これは好適には、圧力の上昇により起こる。
【0027】
本方法は溶剤中、とりわけ非極性溶剤中で行うことができる。好ましいのは前述の溶剤であり、より高沸点性の溶剤も好ましい。
【0028】
前記式の全ての前記の記号は、それらの意味を、それぞれ互いに無関係に有する。
【0029】
下記の実施例では、その都度特に記載のない限り、全ての量と%の記載は質量に対するものであり、全ての圧力は1bar(絶対圧)であり、全ての温度は20℃である。
【0030】
実施例1:1,4−ジエチル−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタキスエチルアミノ−1,4−ジアザ−2,3,5,6−テトラシラ−シクロヘキサンの製造
純度98%のヘキサキスエチルアミノ−ジシラン38gを、エチルアミンヒドロクロリド1.3質量%と混合し、7時間還流で加熱した。温度はすぐに135℃に上がり、数分後には115℃に下がった。1,4−ジエチル−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタキスエチルアミノ−1,4−ジアザ−2,3,5,6−テトラシラ−シクロヘキサンが9g生成した。
【0031】
エチルアミンヒドロクロリドを7質量%使用した場合、同じ反応条件下でヘキサキスエチルアミノジシラン40gから、1,4−ジエチル−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタキスエチルアミノ−1,4−ジアザ−2,3,5,6−テトラシラ−シクロヘキサンが18g生成した。
【0032】
実施例2:1−エチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサキスエチルアミノ−1−アザ−2,3,4−トリシラ−シクロブタンの製造
ヘキサキスエチルアミノジシラン40gを、還流冷却器を有するガラスフラスコ中、窒素流下150℃で加熱すると、35時間後に、テトラキスエチルアミノシラン25gと、1−エチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサキスエチルアミノ−1−アザ−2,3,4−トリシラ−シクロブタン2gとの混合物が生成した。1,4−ジエチル−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタキスエチルアミノ−1,4−ジアザ−2,3,5,6−テトラシラ−シクロヘキサンは、痕跡量でのみ検出可能であった。実施例1とは異なり、温度は150℃で一定に保った。
【0033】
実施例3:1−エチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサキスエチルアミノ−1−アザ−2,3,4−トリシラ−シクロブタンの製造
両端が耐圧にネジ止めされた鋼管に、ヘキサキスエチルアミノジシラン4gを入れた。この管は5日間、150℃に加熱した。未分解の出発生成物の他に、オクタキスエチルアミノ−トリシラン4質量%と、1−エチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサキスエチルアミノ−1−アザ−2,3,4−トリシラ−シクロブタン11質量%が発見された。この試料はエチルアミンを9質量%含んでいた。実施例1及び2とは異なり、エチルアミンは漏出しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si−Si又はSi−Nの単結合によって結合されている一般式(I)及び(II)
=SiY2 (I)
=NR3 (II)
[式中、
Yは−NR12、水素、及びハロゲンから選択されており、
1及びR2は水素、及び1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択されており、
3は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
ただし環中で一般式(I)の単位の少なくとも2つはSi−Si単結合で相互に結合されており、
基Yの最大35mol%が水素であり、
基Yの最大15mol%がハロゲンである]
の単位4〜10個から構成されている環状アザシラ化合物。
【請求項2】
1、R2、及びR3がアルキル基である、請求項1に記載の環状アザシラ化合物。
【請求項3】
Yが基−NHR2である、請求項1又は2に記載の環状アザシラ化合物。
【請求項4】
1−アザ−2,3,4−トリシラ−シクロブタン、及び1,4−ジアザ−2,3,5,6−テトラシラ−シクロヘキサンから選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の環状アザシラ化合物。
【請求項5】
Si−Si又はSi−Nの単結合によって結合されている一般式(I)及び(II)
=SiY2 (I)
=NR3 (II)
[式中、
Yは−NR12、水素、及びハロゲンから選択されており、
1及びR2は水素、及び1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択されており、
3は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
ただし環中で一般式(I)の単位の少なくとも2つはSi−Si単結合で相互に結合されており、
基Yの最大35mol%が水素であり、
基Yの最大15mol%がハロゲンである]
の単位4〜10個から構成されている環状アザシラ化合物の製造方法であって、
一般式(III)
Y(SiY2mSiY3 (III)
の直鎖状オリゴシランを、一般式(IV)
X(H2NR3) (IV)
のアミン塩と反応させる、
[式中、
Xはハロゲン原子であり、
mの値は1、2、又は3であり、
3及びYは、上記意味を有する]
前記製造方法。
【請求項6】
Xが塩素原子である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Si−Si又はSi−Nの単結合によって結合されている一般式(I)及び(II)
=SiY2 (I)
=NR3 (II)
[式中、
Yは−NR12、水素、及びハロゲンから選択されており、
1及びR2は水素、及び1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択されており、
3は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
ただし環中で一般式(I)の単位の少なくとも2つはSi−Si単結合で相互に結合されており、
基Yの最大35mol%が水素であり、
基Yの最大15mol%がハロゲンである]
の単位4〜10個から構成されている環状アザシラ化合物の製造方法であって、
一般式(III)
Y(SiY2mSiY3 (III)
[式中、
mの値は1、2、又は3であり、
Yは上記意味を有する]
の直鎖状オリゴシランを加熱する、前記製造方法。
【請求項8】
前記反応の温度が少なくとも80℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塩基の存在下で反応を行う、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基がアミンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
溶剤を使用する、請求項5から10までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−518666(P2012−518666A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551456(P2011−551456)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051799
【国際公開番号】WO2010/097303
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】