説明

環状アジン誘導体とその製造方法、及びそれらを構成成分とする有機電界発光素子

【課題】有機電界発光素子の低消費電力化を可能にする環状アジン誘導体と、それを電子輸送材とする長寿命を備えた有機電界発光素子の提供。
【解決手段】一般式(1)


(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される環状アジン誘導体を製造し、これを有機電界発光素子の構成成分として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(1)で表される環状アジン誘導体とその製造方法に関するものである。本発明の環状アジン誘導体は、良好な電荷輸送特性を持ち又安定な薄膜を形成することから、蛍光又は燐光有機電界発光素子の構成成分として有用であり、本発明は、これらを有機電界発光素子の有機化合物層の少なくとも一層に用いた、駆動性及び発光性に優れた高効率有機電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、発光材料を含有する発光層を、正孔輸送層と電子輸送層で挟み、さらにその外側に陽極と陰極を取付け、発光層に注入された正孔及び電子の再結合により生ずる励起子が失活する際の光の放出(蛍光又は燐光)を利用する素子であり、ディスプレー等へ応用されている。
【0003】
本発明の環状アジン誘導体は新規であり、アジン環2位のフェニル基上に、3,5−二置換フェニル基又は2,6−二置換ピリジル基を有することを特徴とすると共に、アジン環4,6位に芳香族炭化水素基を有することを特徴とする。
【0004】
最近、環状アジン類である1,3,5−トリアジン誘導体を有機電界発光素子に用いる例(例えば、特許文献1、2参照)が開示されているが、トリアジン環の2,4,6位のフェニル基上の置換基の位置は限定されておらず、アジン環2位のフェニル基上に、3,5−二置換フェニル基又は2,6−二置換ピリジル基を有する本発明の環状アジン誘導体は具体的に示されていない。
【0005】
さらに、有機電界発光素子に用いる1,3,5−トリアジン誘導体の例(例えば、特許文献3参照)が開示されているが、これらはトリアジン環2位に3,5−二置換フェニル基を有するトリアジン誘導体であり、本発明の環状アジン誘導体とは異なるものである。
【0006】
特許文献4及び5には、環状アジン類であるピリミジン誘導体を有機電界発光素子に用いた例が開示されているが、これらはピリミジン環2位のフェニル基上の置換基の置換位置が限定されておらず、本発明の環状アジン誘導体の如く、3,5−二置換フェニル基が置換したピリミジン誘導体の具体的な例は記載されていない。
【0007】
また、特許文献6の合成例4(段落0072)には、ピリミジン環2位に置換フェニル基を有するピリミジン誘導体の例示があるが、この置換フェニル基の3,5位の置換基は無置換フェニル基であり、本発明の環状アジン誘導体とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−22334号公報
【特許文献2】特開2007−137829号公報
【特許文献3】特開2008−280330号公報
【特許文献4】特開2003−45662号公報
【特許文献5】特開2004−31004号公報
【特許文献6】WO2005085387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機電界発光素子は様々な表示機器に利用されているが、電源供給に制限のある携帯機器への有機電界発光素子の利用に関しては、より低消費電力を達成することが求められている。また、同時に有機電界発光素子の商業利用を行う際には、安定した性能を得るために素子寿命をどのように伸長するかが問題となる。
【0010】
特に電子輸送材料については、素子を低電圧で駆動せしめ消費出力を低減させるための優れた電荷注入及び輸送特性と、素子の長寿命化を可能にする耐久性を併せ持った材料は、従来の化合物の中には見出すことができず、新たな材料が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アジン環2位のフェニル基上に、3,5−二置換フェニル基又は2,6−二置換ピリジル基を有する環状アジン誘導体(1)が優れた電荷注入及び輸送特性を有することを見出した。また、環状アジン誘導体(1)は、環状アジン環上に異なる2種類の置換基を持つため、分子の対称性が低く、このため高いガラス転移温度(Tg)を持つことも合わせて見出した。さらに環状アジン誘導体(1)は、真空蒸着等の一般的な方法で非晶質の薄膜形成が可能であり、またこれらを電子輸送層として用いた有機電界発光素子が、汎用の有機電界発光素子に比べて消費電力の低減、及び長寿命化が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基、又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される環状アジン誘導体に関するものである。
【0015】
また本発明は、一般式(2)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Yは、炭素原子又は窒素原子を表す。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。又、2つのRは一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。)で示される化合物と、一般式(3)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Yは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。Xは脱離基を表す。)で示される化合物とを、塩基及びパラジウム触媒の存在下にカップリング反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される環状アジン誘導体の製造方法に関するものである。
【0022】
さらに本発明は、一般式(1)
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される環状アジン誘導体を構成成分とする有機電界発光素子に関するものである。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
Arで表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ペリレニル基又はトリフェニレニル基等を挙げることができ、これらは炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい。これらのアルキル基は直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、さらにハロゲン原子等で一個以上置換されていてもよい。また、フェニル基もハロゲン原子等で一個以上置換されていてもよい。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基が好ましく、合成容易である点で、メチル基又はフェニル基で置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基がさらに好ましい。以下、具体的な例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基のほか、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2,4−ジプロピルフェニル基、3,5−ジプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジブチルフェニル基、3,5−ジブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等の置換フェニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基のほか、2−メチルビフェニル−4−イル基、3−メチルビフェニル−4−イル基、2’−メチルビフェニル−4−イル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、2,2’−ジメチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリメチルビフェニル−4−イル基、6−メチルビフェニル−3−イル基、5−メチルビフェニル−3−イル基、2’−メチルビフェニル−3−イル基、4’−メチルビフェニル−3−イル基、6,2’−ジメチルビフェニル−3−イル基、2’,4’,6’−トリメチルビフェニル−3−イル基、5−メチルビフェニル−2−イル基、6−メチルビフェニル−2−イル基、2’−メチルビフェニル−2−イル基、4’−メチルビフェニル−2−イル基、6,2’−ジメチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリメチルビフェニル−2−イル基、2−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、3−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、2’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、6−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、5−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、2’−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、5−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、6−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、2’−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、3−エチルビフェニル−4−イル基、4’−エチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリエチルビフェニル−4−イル基、6−エチルビフェニル−3−イル基、4’−エチルビフェニル−3−イル基、5−エチルビフェニル−2−イル基、4’−エチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリエチルビフェニル−2−イル基、3−プロピルビフェニル−4−イル基、4’−プロピルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリプロピルビフェニル−4−イル基、6−プロピルビフェニル−3−イル基、4’−プロピルビフェニル−3−イル基、5−プロピルビフェニル−2−イル基、4’−プロピルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリプロピルビフェニル−2−イル基、3−イソプロピルビフェニル−4−イル基、4’−イソプロピルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−4−イル基、6−イソプロピルビフェニル−3−イル基、4’−イソプロピルビフェニル−3−イル基、5−イソプロピルビフェニル−2−イル基、4’−イソプロピルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−2−イル基、3−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−ブチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリブチルビフェニル−4−イル基、6−ブチルビフェニル−3−イル基、4’−ブチルビフェニル−3−イル基、5−ブチルビフェニル−2−イル基、4’−ブチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリブチルビフェニル−2−イル基、3−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリ−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、6−tert−ブチルビフェニル−3−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−3−イル基、5−tert−ブチルビフェニル−2−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリ−tert−ブチルビフェニル−2−イル基等の置換ビフェニリル基、1,1’:4’,1”−ターフェニル−3−イル基、1,1’:4’,1”−ターフェニル−4−イル基、1,1’:3’,1”−ターフェニル−3−イル基、1,1’:3’,1”−ターフェニル−4−イル基、1,1’:3’,1”−ターフェニル−5’−イル基、1,1’:2’,1”−ターフェニル−3−イル基、1,1’:2’,1”−ターフェニル−4−イル基、1,1’:2’,1”−ターフェニル−4’−イル基等のターフェニリル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基、1,1’:4’,1”−ターフェニル−4−イル基、1,1’:2’,1”−ターフェニル−4−イル基、1,1’:3’,1”−ターフェニル−5’−イル基が好ましく、合成が容易な点でフェニル基、p−トリル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、1,1’:3’,1”−ターフェニル−5’−イル基がさらに好ましい。
【0028】
また、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよいナフチル基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基のほか、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、4−エチルナフタレン−1−イル基、4−プロピルナフタレン−1−イル基、4−ブチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、5−エチルナフタレン−1−イル基、5−プロピルナフタレン−1−イル基、5−ブチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、6−エチルナフタレン−2−イル基、6−プロピルナフタレン−2−イル基、6−ブチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基、7−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、7−エチルナフタレン−2−イル基、7−プロピルナフタレン−2−イル基、7−ブチルナフタレン−2−イル基、7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、2−フェニルナフタレン−1−イル基、3−フェニルナフタレン−1−イル基、4−フェニルナフタレン−1−イル基、5−フェニルナフタレン−1−イル基、6−フェニルナフタレン−1−イル基、7−フェニルナフタレン−1−イル基、8−フェニルナフタレン−1−イル基、1−フェニルナフタレン−2−イル基、2,4−ジフェニルナフタレン−1−イル基、4,6−ジフェニルナフタレン−1−イル基、5,7−ジフェニルナフタレン−1−イル基、1,3−ジフェニルナフタレン−2−イル基、4,7−ジフェニルナフタレン−2−イル基、5,8−ジフェニルナフタレン−2−イル基、5,6,7,8−テトラフェニルナフタレン−1−イル基、5,6,7,8−テトラフェニルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、4−フェニルナフタレン−1−イル基、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基又は7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基が好ましく、合成が容易な点で2−ナフチル基がさらに好ましい。
【0029】
炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよいアントリル基、置換されていてもよいペリレニル基及び置換されていてもよいトリフェニレニル基としては、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−ペリレニル基、2−ペリレニル基又は1−トリフェニレニル基等を挙げることができる。
【0030】
下記一般式(3a)
【0031】
【化6】

【0032】
(式中、Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Yは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される、本発明の環状アジン誘導体(1)におけるベンゼン環上の置換基の例として、次の3−1から3−19を例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
【化7】

【0034】
次に、本発明の製造方法について説明する。
【0035】
本発明の環状アジン誘導体(1)は、次の反応式で示される方法により製造することができる。
【0036】
【化8】

【0037】
(Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。又、2つのRは一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。Xは脱離基を表す。)
化合物(2)におけるB(ORとしては、B(OH)、B(OMe)、B(OPr)、B(OBu)、B(OPh)等が例示できる。又、2つのRが一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成した場合のB(ORの例としては、次の(I)から(VI)で示される基が例示でき、収率がよい点で(II)で示される基が好ましい。
【0038】
【化9】

【0039】
化合物(3)におけるXで表される脱離基は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。収率がよい点で、臭素原子が好ましい。
【0040】
化合物(3)は、例えば、Dalton Trans.,4659−4665,2007年、又は特開2002−363161号公報に開示されている方法、あるいは実験例−9又は10に示した方法を用いて製造することができる。化合物(3)の例として、次の5−1〜5−19(式中、Xは脱離基を表す。)を例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
【化10】

【0042】
「工程1」は、化合物(2)を、塩基及びパラジウム触媒の存在下に化合物(3)と反応させ、本発明の環状アジン誘導体(1)を製造する方法であり、一般的な鈴木−宮浦反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0043】
「工程1」で用いることのできるパラジウム触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等の塩を例示することができる。さらに、π−アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム等の錯化合物を例示することができる。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は収率がよい点で好ましく、入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。「工程1」で用いるパラジウム触媒の量は、いわゆる触媒量であれば特に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒と化合物(2)とのモル比は、1:50〜1:10が好ましい。
【0044】
なお、これらの第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。第三級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリス(2,5−キシリル)ホスフィン、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等を例示することができる。入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィンが好ましい。第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は、1:10〜10:1が好ましく、収率がよい点で1:2〜5:1がさらに好ましい。
【0045】
「工程1」の反応は、塩基の存在下に実施することが必須である。用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等を例示することができ、収率がよい点で炭酸ナトリウムが好ましい。塩基と化合物(2)とのモル比に特に制限はないが、1:2〜10:1が好ましく、収率がよい点で1:1〜3:1がさらに好ましい。
【0046】
「工程1」で用いる化合物(3)と化合物(2)とのモル比に特に制限はないが、1:1〜5:1が好ましく、収率がよい点で2:1〜3:1がさらに好ましい。
【0047】
「工程1」の反応は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒として、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、エタノール、メタノール又はキシレン等が例示でき、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。収率がよい点でトルエン及び水の混合溶媒を用いることが望ましい。
【0048】
本発明の環状アジン誘導体(1)は、「工程1」の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー又は昇華等で精製してもよい。
【0049】
本発明の環状アジン誘導体(1)を製造する「工程1」の原料である化合物(2)は、例えば実験例−1〜3に示したように、次の反応式で示した方法により製造することができる。
【0050】
【化11】

【0051】
(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Yは、炭素原子又は窒素原子を表す。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。又、2つのRは一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。Xは脱離基を表す。)
化合物(4)のXで表される脱離基は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。収率がよい点で、臭素原子が好ましい。
【0052】
化合物(4)は、例えば実験例−4〜8に示した方法により製造することができる。
【0053】
「工程2」は、化合物(4)を塩基及びパラジウム触媒の存在下に、ボラン化合物(6)又はジボロン化合物(7)と反応させることにより、「工程1」で用いる化合物(2)を製造する工程であり、例えば、The Journal of Organic Chemistry,60巻,7508−7510,1995年又はJournal of Organic Chemistry,65巻,164−168,2000年に開示されている反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0054】
「工程2」で用いることのできるパラジウム触媒としては、「工程1」で例示したパラジウム塩又は錯化合物と同様のものを例示することができる。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は収率がよい点で好ましく、入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体が特に好ましい。「工程2」で用いるパラジウム触媒の量は、いわゆる触媒量であれば特に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒と化合物(4)とのモル比は、1:50〜1:10が好ましい。
【0055】
なお、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。第三級ホスフィンとしては、「工程1」で例示した第三級ホスフィンを例示することができる。中でも入手容易である点で、トリフェニルホスフィンが好ましい。「工程2」で用いる第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比に特に制限はないが、1:10〜10:1が好ましく、収率がよい点で1:2〜5:1がさらに好ましい。
【0056】
「工程2」は塩基の存在下に実施することが必須である。用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等を例示することができ、収率がよい点で酢酸カリウムが望ましい。塩基と化合物(4)とのモル比に特に制限はないが、1:2〜10:1が好ましく、収率がよい点で1:1〜3:1がさらに好ましい。
【0057】
「工程2」で用いるボラン化合物(6)又はジボロン化合物(7)と化合物(4)とのモル比に特に制限はないが、1:1〜5:1が好ましく、収率がよい点で2:1〜3:1がさらに好ましい。
【0058】
「工程2」の反応は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒として、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、エタノール、メタノール又はキシレン等が例示でき、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。収率がよい点でテトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンを用いることが望ましい。
【0059】
本工程で得られた化合物(2)は、反応後単離してもよいが、単離せずに「工程1」に供してもよい。
【0060】
本発明の環状アジン誘導体(1)を構成成分とする有機電界発光素子の製造方法に特に限定はないが、真空蒸着法による成膜が可能である。真空蒸着法による成膜は、汎用の真空蒸着装置を用いることにより行うことができる。真空蒸着法で膜を形成する際の真空槽の真空度は、有機電界発光素子作製の製造タクトタイムや製造コストを考慮すると、一般的に用いられる拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ等により到達し得る1×10−2〜1×10−5Pa程度が好ましい。蒸着速度は、形成する膜の厚さによるが0.005〜1.0nm/秒が好ましい。また、本発明の環状アジン誘導体(1)は、汎用の装置を用いたスピンコート法、インクジェット法、キャスト法又はディップ法等による成膜も可能である。
【発明の効果】
【0061】
本発明の環状アジン誘導体(1)は、良好な電荷注入及び輸送特性を持つことから、蛍光又は燐光有機電界発光素子の材料として有用であり、とりわけ電子輸送材等として用いることができる。又、本発明の環状アジン誘導体(1)において、アジン環2位の3,5−二置換フェニル基と、4及び6位のArは同一となることはない。アジン環2位の3,5−二置換フェニル基とArが等しい場合には、該環状アジン誘導体の結晶性が向上し、該環状アジン誘導体を構成成分とする有機電界発光素子の長期安定性等の特性が低下する場合があるためである。従って、本発明の環状アジン誘導体(1)を構成成分として用いることで、蛍光又は燐光有機電界発光素子を低電圧で駆動せしめ消費出力を低減すること、及び該素子の寿命を伸長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】試験例−1で作製する有機電界発光素子の断面図である。
【実施例】
【0063】
以下、実験例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験例−1
【0064】
【化12】

【0065】
アルゴン気流下、4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−(3,5−ジブロモフェニル)−1,3,5−トリアジン(195mg)、ビスピナコラートジボロン(188mg)、酢酸カリウム(159mg)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(9.48mg)をテトラヒドロフラン(10mL)に懸濁し、38時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、ヘキサンで洗浄後、4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−1,3,5−トリアジンの黄色固体(収量170mg,収率75%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.43(s,18H),1.44(s,24H),7.64(d,J=8.6Hz,4H),8.52(t,J=1.2Hz,1H),8.74(d,J=8.6Hz,4H),9.23(d,J=1.2Hz,2H).
実験例−2
【0066】
【化13】

【0067】
アルゴン気流下、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジ(2−ナフチル)−1,3,5−トリアジン(1.00g)、ビスピナコラートジボロン(996mg)、酢酸カリウム(830mg)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(61.8mg)をテトラヒドロフラン(50mL)に懸濁し、41時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−4,6−ジ(2−ナフチル)−1,3,5−トリアジンの黄色固体(収量1.01g,収率87%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.37(s,24H),7.51−7.57(m,4H),7.89(brd,J=7.7Hz,2H),8.01(d,J=8.7Hz,2H),8.09(brd,J=7.7Hz,2H),8.48(t,J=1.2Hz,1H),8.85(dd,J=8.7,1.7Hz,2H),9.24(d,J=1.2Hz,2H),9.36(brs,2H).
実験例−3
【0068】
【化14】

【0069】
アルゴン気流下、2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−(3,5−ジブロモフェニル)−1,3,5−トリアジン(300mg)、ビスピナコラートジボロン(270mg)、酢酸カリウム(228mg)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(17.0mg)をジオキサン(20mL)に懸濁し、24時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、ヘキサン洗浄後、4,6−ビス(4−ビフェニリル)−2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−1,3,5−トリ環状アジンの黄色固体(収量250mg,収率72%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.45(s,24H),7.44(brt,J=7.4Hz,2H),7.54(t,J=7.4Hz,4H),7.76(d,J=7.4Hz,4H),7.87(d,J=8.5Hz,4H),8.56(t,J=1.2Hz,1H),8.93(d,J=8.5Hz,4H),9.28(d,J=1.2Hz,2H).
実験例−4
【0070】
【化15】

【0071】
3,5−ジブロモ安息香酸クロリド(5.97g)とベンゾニトリル(4.12g)をクロロホルム(50mL)に溶解し、0℃に冷却した後、5塩化アンチモン(5.98g)を滴下した。混合物を室温で10分間攪拌後、22時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルムを減圧下留去し、黄色固体を得た。
【0072】
得られた黄色固体を0℃に冷却した28%アンモニア水溶液(300mL)に加えると白色固体が生成した。室温で1時間攪拌し、ろ過後、得られた白色固体を水、メタノールで洗浄した。得られた白色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量6.32g,収率68%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.56−7.61(m,4H),7.61−7.67(m,2H),7.90(t,J=1.8Hz,1H),8.72−8.78(m,4H),8.82(d,J=1.8Hz,2H).
13C−NMR(CDCl):δ123.4,128.8,129.1,130.6,133.0,135.7,137.6,139.8,169.3,172.0.
実験例−5
【0073】
【化16】

【0074】
3,5−ジブロモ安息香酸クロリド(2.98g)と4−tert−ブチルベンゾニトリル(3.18g)をクロロホルム(30mL)に溶解し、5塩化アンチモン(2.99g)を0℃で滴下した。混合物を室温で10分間攪拌後、17時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルムを減圧下留去した。得られた固体を28%アンモニア水溶液(200mL)に0℃で加えると白色沈殿が生成した。これを室温で1時間攪拌し、ろ過後、得られた白色沈殿を水、次いでメタノールで洗浄した。得られた白色沈殿をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−(3,5−ジブロモフェニル)−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量4.46g,収率77%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.41(s,18H),7.61(d,J=8.5Hz,4H),7.88(t,J=1.8Hz,1H),8.65(d,J=8.5Hz,4H),8.80(d,J=1.8Hz,2H).
13C−NMR(CDCl):δ31.2,35.1,123.3,125.7,128.9,130.5,133.1,137.4,140.0,156.5,169.0,171.8.
実験例−6
【0075】
【化17】

【0076】
アルゴン気流下、還流管及びメカニカル撹拌機を取り付けた三口反応容器に、3,5−ジブロモ安息香酸クロリド(19.9g)と2−シアノナフタレン(20.4g)を取り、クロロベンゼン(180mL)を加えた。得られた溶液を0℃に冷却し、5塩化アンチモン(19.9g)を滴下し、室温で30分、さらに100℃で2時間撹拌した。得られた暗赤色の懸濁液を−20℃に冷却し、28%アンモニア水溶液(100mL)を加えた。乳白色懸濁液を室温で1時間撹拌した後、140℃まで加熱し、有機溶媒(70mL)と水(30mL)を留去した。反応混合物を放冷後、ろ過し、得られた固体をクロロベンゼン(100mL)に懸濁させた。懸濁液を130℃で加熱し、ろ過により不溶物を除いた。クロロベンゼン(100mL)を用いてさらに3回、同様の抽出操作を繰り返した。放冷後、ろ液を合わせ、メタノール(400mL)を加えた。析出した固体をろ取し、メタノール(30mL×2)で洗浄した後、乾燥することで、4,6−ジ(2−ナフチル)−2−(3,5−ジブロモフェニル)−1,3,5−トリアジンの白色粉末(収量7.90g、収率14%)を得た。さらに、熱時ろ過で得られた不溶物をソックスレー抽出機(溶媒:クロロホルム)で抽出することで、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジ(2−ナフチル)−1,3,5−トリアジンの白色粉末(収量5.40g,収率9.5%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.60−7.69(m,4H),7.94(s,1H),7.98(d,J=7.8Hz,2H),8.06(d,J=8.6Hz,2H),8.17(d,J=7.8Hz,2H),8.83(d,J=8.6Hz,2H),8.90(s,2H),9.34(s,2H).
実験例−7
【0077】
【化18】

【0078】
3,5−ジブロモ安息香酸クロリド(2.98g)と4−ビフェニルカルボニトリル(3.58g)をクロロホルム(40mL)に溶解し、0℃に冷却した後、5塩化アンチモン(2.99g)を滴下した。混合物を室温で10分間攪拌後、14時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルムを減圧下留去し、4,6−ビス(4−ビフェニリル)−2−(3,5−ジブロモフェニル)−1,3,5−オキサジアジン1−イウム=ヘキサクロロアンチモン酸を赤色固体として得た。
【0079】
得られた赤色固体を0℃に冷却した28%アンモニア水溶液(150mL)に加えると白色固体が生成した。これを室温で1時間攪拌し、ろ過後、得られた白色固体を水、次いでメタノールで洗浄した。白色固体を乾燥後、クロロホルム(200mL)に懸濁し、熱時ろ過した。また、ろ別した不溶成分に対しクロロホルム(150mL×3)を用いて熱時ろ過した。全てのろ液を集め、クロロホルムを減圧下留去し、得られた固体をジクロロメタン−メタノールで再結晶し、4,6−ビス(4−ビフェニリル)−2−(3,5−ジブロモフェニル)−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量5.14g,収率83%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.40−7.45(m,2H),7.49−7.54(m,4H),7.70−7.75(m,4H),7.83(d,J=8.5Hz,4H),7.91(t,J=1.8Hz,1H),8.83(d,J=8.5Hz,4H),8.85(d,J=1.8Hz,2H).
13C−NMR(CDCl):δ123.4,127.3,127.5,128.2,129.0,129.7,130.7,134.7,137.6,139.9,140.3,145.7,169.3,171.8.
実験例−8
【0080】
【化19】

【0081】
3,5−ジブロモ安息香酸クロリド(4.10g)と3−ビフェニルカルボニトリル(5.00g)をクロロホルム(100mL)にアルゴン気流下で溶解した。得られた溶液を0℃に冷却し、5塩化アンチモン(4.20g)を滴下した。混合物を室温で1時間攪拌後、12時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去し、赤色固体を得た。
【0082】
得られた赤色固体をアルゴン気流中で粉砕し、0℃に冷却した28%アンモニア水溶液に加えた。得られた懸濁液を室温でさらに1時間攪拌した。析出した固体をろ取し、水,次いでメタノールで順次洗浄した。固体を乾燥後、ソックスレー抽出機(抽出溶媒:クロロホルム)で抽出した。抽出液を放冷後、析出した固体をろ取、乾燥して4,6−ビス(3−ビフェニリル)−2−(3,5−ジブロモフェニル)−1,3,5−トリ環状アジンの白色粉末(収量2.80g,収率32%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.46(brt,J=7.4Hz,2H),7.52−7.58(m,4H),7,67(dd,J=7.8Hz,7.7Hz,2H),7.76(brd,J=7.7Hz,4H),7.86(d,J=7.7Hz,2H),7.90(brd,1H),8.72(d,J=7.8Hz,2H),8.81(d,J=1.8Hz,2H),8.95(s,2H).
13C−NMR(CDCl):δ123.4,127.4,127.7,127.8,128.1,130.7,131.7,136.2,137.7,139.7,140.7,141.9,169.4,172.0.
実験例−9
【0083】
【化20】

【0084】
アルゴン気流下、1.57M−tert−ブチルリチウムペンタン溶液(89mL)をテトラヒドロフラン(32mL)に溶解し、−78℃に冷却した。2−ブロモピリジン(10.0g)を滴下し、この混合物を1.5時間攪拌した後、ジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(42.5g)を加え、室温まで昇温した後さらに1時間攪拌した。この混合物に1,3,5−トリブロモベンゼン(10.0g)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(734mg)をテトラヒドロフラン(64mL)に懸濁したものを加え、加熱還流下で17時間攪拌した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し溶媒留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒/酢酸エチル:ヘキサン=2:8〜1:1)で精製し、目的の3,5−ジ(2−ピリジル)ブロモベンゼンの黄色固体(収量6.5g,収率66%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.22(dd,J=8.6,5.8,2H),7.77−7.80(m,4H),8.16(s,2H),8.50(t、J=1.6Hz,1H),8.66(d,J=4.8Hz,2H).
実験例−10
【0085】
【化21】

【0086】
アルゴン気流化、フェニルボロン酸(3.80g)、2−(3,5−ジブロモフェニル)ピリジン(8.15g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.20g)を、2M−炭酸ナトリウム水溶液(26mL)、エタノール(26mL)及びトルエン(52mL)の混合溶媒に懸濁し、22時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し溶媒留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒/ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製し、2−(3−ブロモビフェニル−5−イル)ピリジンの黄色液体(収量3.95g,収率43%)を得た。
【0087】
アルゴン気流化、2−(3−ブロモビフェニル−5−イル)ピリジン(3.95g)、ビスピナコラートジボロン(3.37g)、酢酸カリウム(3.26g)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(0.31g)をテトラヒドロフラン(60mL)に懸濁し、43時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、ヘキサンで洗浄後、目的の2−[3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ビフェニル−5−イル]ピリジンの黄色固体(収量1.55g,収率99%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.31(s,12H),7.16−7.20(m,1H),7.28(tt,J=7.4,1.2Hz,1H),7.36−7.39(m,1H),7.65(dd,J=8.3,1.2Hz,1H),7.70(dd,J=7.5,1.8Hz,1H),7.78(dt,J=8.0,1.0Hz,1H),8.03(dd,J=1.9,1.0Hz,1H),8.29−8.30(m,1H),8.31(t,J=1.9Hz,1H),8.65(ddd,J=4.8,1.8,0.9Hz,1H).
実験例−11
【0088】
【化22】

【0089】
アルゴン気流下、2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(1.00g)、4’−ブロモ−2,2’:6’,2”−ターピリジン(1.33g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(165mg)を、2M−炭酸ナトリウム水溶液(20mL)及びトルエン(50mL)の混合溶媒に懸濁し、45時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去した後、水を加え、析出した固体をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(展開溶媒/ヘキサン:クロロホルム=1:1〜0:1)で精製し、目的の2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量1.20g,収率88%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.29−7.34(m,4H),7.52−7.55(m,6H),7.85(ddd,J=7.8,7.8,1.8Hz,4H),8.46(t,J=1.6Hz,1H),8.66−8.69(m,8H),8.77−8.80(m,4H),8.87(s,4H),9.21(d,J=1.6Hz,2H).
実験例−12
【0090】
【化23】

【0091】
アルゴン気流下、4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−1,3,5−トリアジン(70.0mg)、4’−ブロモ−2,2’:6’,2”−ターピリジン(78.0mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(9.6mg)を、2M−炭酸ナトリウム水溶液(1mL)及びトルエン(2mL)の混合溶媒に懸濁し、66時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、目的の4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−1,3,5−トリ環状アジンの白色固体(収量49.0mg,収率53%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.30(s,18H),7.26(ddd,J=7.7,4.2,1.1Hz,4H),7.49(d,J=8.5Hz,4H),7.80(ddd,J=7.7,7.7,1.7Hz,4H),8.37(t,J=1.7Hz,1H),8.62−8.66(m,12H),8.83(s,4H),9.15(d,J=1.7Hz,2H).
13C−NMR(CDCl):δ31.3(CH×6),35.2(quart.×2),119.6(CH×4),121.5(CH×4),123.9(CH×4),125.7(CH×4),128.4(CH×2),129.1(CH×4),130.3(CH),133.5(quart.×2),136.9(CH×4),138.3(quart.),140.4(quart.×2),149.2(CH×4),150.1(quart.×2),156.1(quart.×6),156.2(quart.×4),171.2(quart.),171.8(quart.×2).
実験例−13
【0092】
【化24】

【0093】
アルゴン気流下、2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−4,6−ジ(2−ナフチル)−1,3,5−トリアジン(100mg)、4’−ブロモ−2,2’:6’,2”−ターピリジン(133mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(14.0mg)を、2M−炭酸ナトリウム水溶液(1mL)及びトルエン(4mL)の混合溶媒に懸濁し、59時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去した後、水を加え、析出した固体をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(展開溶媒/ヘキサン:クロロホルム=1:2〜0:1)で精製し、目的の2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−4,6−ジ(2−ナフチル)−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量91.0mg,収率69%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.31(ddd,J=7.6,4.8,1.2Hz,4H),7.47−7.55(m,4H),7.85(ddd,J=7.6,7.6,1.8Hz,4H),7.85−7.87(m,2H),7.97(d,J=8.5Hz,2H),8.07(d,J=7.7Hz,2H),8.48(t,J=1.7Hz,1H),8.66−8.71(m,8H),8.85(dd,J=8.5,1.7Hz,2H),8.92(s,4H),9.30(d,J=1.7Hz,2H),9.39(brs,2H).
実験例−14
【0094】
【化25】

【0095】
アルゴン気流下、4,6−ビス(3−ビフェニリル)−2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−1,3,5−トリアジン(100mg)、4’−ブロモ−2,2’:6’,2”−ターピリジン(105mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(12.9mg)を、2M−炭酸ナトリウム水溶液(1mL)及びトルエン(3mL)の混合溶媒に懸濁し、69時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去した後、水を加え、析出した固体をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、目的の4,6−ビス(3−ビフェニリル)−2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量110mg,収率85%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.26−7.32(m,10H),7.61(t,J=7.7Hz,2H),7.69(brdd,J=7.9,1.5Hz,4H),7.79(brd,J=7.4Hz,2H),7.85(ddd,J=7.6,7.6,1.8Hz,4H),8.48(t,J=1.7Hz,1H),8.64(ddd,J=4.7,1.8,0.8Hz,4H),8.68(brdt,J=7.9,1.0Hz,4H),8.77(brdt,J=6.5,1.6Hz,2H),8.90(s,4H),9.03(t,J=1.6Hz,2H),9.26(d,J=1.7Hz,2H)
13C−NMR(CDCl):δ119.5(CH×4),121.4(CH×4),123.9(CH×4),127.3(CH×4),127.5(CH×2),127.9(CH×2),128.2(CH×2),128.6(CH×2),128.9(CH×4),129.2(CH×2),130.3(CH),131.4(CH×2),136.6(quart.×2),136.9(CH×4),137.8(quart.),140.3(quart.×2),140.7(quart.×2),141.6(quart.×2),149.3(CH×4),149.9(quart.×2),156.2(quart.×4),156.2(quart.×4),171.3(quart.),171.9(quart.×2)..
実験例−15
【0096】
【化26】

【0097】
アルゴン気流下、4,6−ビス(4−ビフェニリル)−2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−1,3,5−トリアジン(100mg)、4’−ブロモ−2,2’:6’,2”−ターピリジン(105mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(12.9mg)を、2M−炭酸ナトリウム水溶液(1mL)及びトルエン(3mL)の混合溶媒に懸濁し、69時間還流した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を除去した後、水を加え、析出した固体をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、目的の4,6−ビス(4−ビフェニリル)−2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量80.0mg,収率62%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.29−7.36(m,6H),7.43(t,J=7.7Hz,4H),7.65(brd,J=7.7Hz,4H),7.76(d,J=8.5Hz,4H),7.85(ddd,J=7.6,7.6,1.8Hz,4H),8.44(t,J=1.7Hz,1H),8.67−8.71(m,8H),8.85−8.88(m,4H),8.88(s,4H),9.24(d,J=1.7Hz,2H).
実験例−16
【0098】
【化27】

【0099】
アルゴン気流下、3,5−ジ(2−ピリジル)ブロモベンゼン(3.34g)をテトラヒドロフラン(43mL)に溶解し、1.58M−ブチルリチウムヘキサン溶液(7.6mL)を−78℃で滴下した。この混合物を−78℃で15分間攪拌後、ジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(3.24g)を加え、室温まで昇温した後30分間攪拌した。この混合物に2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(2.00g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(98.9mg)を加え、加熱還流下で19時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、目的の4,6−ジフェニル−2−[3,5,3”,5”−テトラ(2−ピリジル)−1,1’;3’,1”−ターフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量2.10g,収率64%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.32(dd,J=6.2,6.1,4H),7.55−7.68(m,6H),7.85(t,J=7.7Hz,4H),8.01(5、J=8.0Hz,4H),8.33(s,1H),8.51(s,4H),8.76(s,2H),8.80(d,J=4.8,4H),8.85(d,J=8.0Hz,4H),9.14(s,2H).
実験例−17
【0100】
【化28】

【0101】
アルゴン気流下、3,5−ジ(2−ピリジル)ブロモベンゼン(3.34g)をテトラヒドロフラン(43mL)に溶解し、1.58M−ブチルリチウムヘキサン溶液(7.6mL)を−78℃で滴下した。この混合物を−78℃で15分間攪拌後、ジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(3.25g)を加え、室温まで昇温した後30分間攪拌した。この混合物に2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニルピリミジン(2.00g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(98.9mg)を加え、加熱還流下で17時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム)で精製し、目的の4,6−ジフェニル−2−[3,5,3”,5”−テトラ(2−ピリジル)−1,1’;3’,1”−ターフェニル−5’−イル]ピリミジンの白色固体(収量2.60g,収率79%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.31(dd、J=6.12,6.14Hz,4H),7.73−7.64(m,6H),7.84(t,J=7.7Hz,4H),8.00(d,J=8.0Hz,4H),8.11(s,1H),8.26(s,1H),8.36(d,J=9.6Hz,4H),8.50(s,4H),8.75(s,2H),8.79(d,J=4.0Hz,4H),9.10(s,2H).
実験例−18
【0102】
【化29】

【0103】
アルゴン気流下、2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−4,6−ジフェニルピリミジン(100mg)、4’−ブロモ−2,2’:6’,2”−ターピリジン(167mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(20.6mg)、2M−炭酸ナトリウム(0.8mL)及びトルエン(5mL)の混合溶媒に懸濁し、86時間還流した。反応混合物を放冷後、低沸点成分を減圧留去し、メタノールを加え、析出した固体をろ別し、水、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:クロロホルム=1:4)で精製し、目的の2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−4,6−ジフェニルピリミジンの白色固体(収量129mg、収率94%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.30(dd,J=7.5,2.4,1.2Hz,4H),7.48−7.54(m,6H),7.84(dd,J=8.0,7.9,1.9Hz,4H),8.05(s,1H),8.30(dd,J=7.9,1.6Hz,4H),8.35(t,J=1.7Hz,1H),8.65−8.69(m,8H),8.86(s,4H),9.16(d,J=1.7Hz,2H).
実験例−19
【0104】
【化30】

【0105】
アルゴン気流下、2−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ビフェニル−3−イル]ピリジン(542mg)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(329mg)、炭酸セシウム(494mg)、酢酸パラジウム(6.20mg)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(26.3mg)をテトラヒドロフラン(20mL)に懸濁し、48時間還流した。反応混合物を放冷後、低沸点分を減圧留去し、メタノールを加えた。析出した固体をろ別し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製し、目的の2,4−ジフェニル−6−[5’,5”’−ジ(2−ピリジル)−1,1’:3’,1”:3”,1”’:3”’,1””−キンクフェニル−5”−イル]−1,3,5−トリアジンの白色粉末(収量200mg,収率38%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.22(ddd,J=7.4,2.4,1.1Hz,2H),7.34(tt,J=7.4,1.2Hz,2H),7.42−7.54(m,10H),7.72−7.76(m,6H),7.84(dt,J=8.0,1.0Hz,2H),7.98(dt,J=1.7Hz,2H),8.17(t,J=1.8Hz,1H),8.25(t,J=1.6Hz,2H),8.30(t,J=1.6Hz,2H),8.69(ddd,J=4.8,0.90,0.88Hz,2H),8.74(dd, J=8.1,1.6Hz,4H),9.02(d,J=1.7Hz,2H).
13C−NMR(CDCl):δ121.0(CH×2),122.5(CH×2),125.3(CH×2),125.4(CH×2),127.15(CH×2),127.23(CH×2),127.6(CH×4),127.7(CH×2),128.7(CH×4),128.9(CH×4),129.2(CH×4),130.9(CH×4),132.6(CH),136.2(quart.×2),136.9(CH),137.7(quart.),140.8(quart.×2),141.0(quart.×2),142.2(quart.×2),142.60(quart.×2),142.62(quart.×2),149.9(CH),157.3(quart.×2),171.8(quart.),171.9(quart.×2).
実験例−20
【0106】
【化31】

【0107】
アルゴン気流下、2−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ビフェニル−3−イル]ピリジン(1.63g)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニルピリミジン(710mg)、炭酸セシウム(1.49g)、酢酸パラジウム(13.7mg)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(58.1mg)を1,4−ジオキサン(30mL)に懸濁し、67時間還流した。反応混合物を放冷後、低沸点分を減圧留去し、メタノールを加えた。析出した固体をろ別し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒/メタノール:クロロホルム=1:100〜1:50)で精製し、目的の4,6−ジフェニル−2−[5’,5”’−ジ(2−ピリジル)−1,1’:3’,1”:3”,1”’:3”’,1””−キンクフェニル−5”−イル]ピリミジンの白色粉末(収量975mg,収率83%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ7.30−7.33(m,2H),7.43(t,J=7.3Hz,2H),7.51−7.59(m,10H),7.83−7.84(m,6H),7.94(d,J=7.9Hz,2H),8.09−8.12(m,3H),8.19(bs,1H),8.35−8.39(m,8H),8.79(d,J=4.2Hz,2H),9.09(bs,2H).
試験例−1
基板には、2mm幅の酸化インジウム−スズ(ITO)膜がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用いた。この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。洗浄後の基板に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、断面図を図1に示すような発光面積4mm有機電界発光素子を作製した。
【0108】
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10−4Paまで減圧した。その後、図1の1で示す前記ガラス基板上に有機化合物層として、正孔注入層2、正孔輸送層3、発光層4及び電子輸送層5を順次成膜し、その後陰極層6を成膜した。正孔注入層2としては、昇華精製したフタロシアニン銅(II)を25nmの膜厚で真空蒸着した。正孔輸送層3としては、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)を45nmの膜厚で真空蒸着した。発光層4としては、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテン−1−イル)ビフェニル(DPVBi)と4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)フェニルエテン−1−イル]ビフェニル(DPAVBi)を97:3(質量%)の割合で40nmの膜厚で真空蒸着した。電子輸送層5としては、本発明の実験例−11で合成した2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンを20nmの膜厚で真空蒸着した。なお、各有機材料は抵抗加熱方式により成膜し、加熱した化合物を0.3〜0.5nm/秒の成膜速度で真空蒸着した。最後に、ITOストライプと直交するようにメタルマスクを配し、陰極層6を成膜する。陰極層6は、フッ化リチウムとアルミニウムをそれぞれ1.0nmと100nmの膜厚で真空蒸着し、2層構造とした。それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK)で測定した。さらに、この素子を酸素及び水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと前記成膜基板エポキシ型紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いた。
【0109】
作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、TOPCON社製のLUMINANCE METER(BM−9)の輝度計を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電流密度20mA/cmを流した時の電圧(V)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、電力効率(lm/W)を測定し、連続点灯時の輝度半減時間を測定した。
【0110】
作製した素子の測定値は、5.5V、2230cd/m、11.2cd/A、6.4lm/Wであった。また、この素子の輝度半減時間は、113時間であった。
試験例−2
試験例−1と同様に、図1の1で示すガラス基板上に有機化合物層として、正孔注入層2、正孔輸送層3、発光層4及び電子輸送層5を順次成膜し、その後陰極層6を成膜した有機電界発光素子を作製した。正孔注入層2としては、昇華精製したフタロシアニン銅(II)を10nmの膜厚で真空蒸着した。正孔輸送層3としては、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)を30nmの膜厚で真空蒸着した。発光層4としては、4−4’−ビス(9−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)とトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy))を94:6(質量%)の割合で30nmの膜厚で真空蒸着した。電子輸送層5としては、本発明の実験例−11で合成した2−[3,5−ビス(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4’−イル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンを50nmの膜厚で真空蒸着した。
【0111】
作製した素子の測定値は、8.4V、4030cd/m、20.2cd/A、7.5lm/Wであった。また、この素子の輝度半減時間は、82時間であった。
試験例−3
試験例−1の電子輸送層5に代えて、汎用電子輸送材料であるAlqを20nmの膜厚で真空蒸着した有機電界発光素子を試験例−1と同様に作製した。作製した素子の測定値は、7.2V、1859cd/m、9.3cd/A、4.0lm/Wであった。また、この素子の輝度半減時間は、83時間であった。
試験例−4
試験例−2の電子輸送層5に代えて、汎用電子輸送材料であるAlqを50nmの膜厚で真空蒸着した有機電界発光素子を試験例−2と同様に作製した。作製した素子の測定値は、10.4V、3450cd/m、17.3cd/A、5.2lm/Wであった。また、この素子の輝度半減時間は、108時間であった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の環状アジン誘導体(1)を用いた蛍光又は燐光有機電界発光素子は、既存材料を用いた素子に比較して、低消費電力化、長寿命化を達成できることを確認した。また、本発明の環状アジン誘導体(1)は、本実施例の電子輸送層以外にも、他の蛍光発光材料や燐光材料を用いた有機電界発光素子への適用も可能である。さらに、フラットパネルディスプレイなどの用途以外にも、低消費電力と長寿命の両立が求められる照明用途などにも有用である。
【符号の説明】
【0113】
1.ITO透明電極付きガラス基板
2.正孔注入層
3.正孔輸送層
4.発光層
5.電子輸送層
6.陰極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基、又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される環状アジン誘導体。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Yは、炭素原子又は窒素原子を表す。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。又、2つのRは一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。)で示される化合物と、一般式(3)
【化3】

(式中、Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Yは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。Xは脱離基を表す。)で示される化合物とを、塩基及びパラジウム触媒の存在下にカップリング反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化4】

(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される環状アジン誘導体の製造方法。
【請求項3】
パラジウム触媒が、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体であることを特徴とする請求項2に記載の環状アジン誘導体の製造方法。
【請求項4】
第三級ホスフィンが、トリフェニルホスフィンであることを特徴とする請求項2又は3に記載の1,3,5−トリ環状アジン誘導体の製造方法。
【請求項5】
一般式(1)
【化5】

(式中、Arは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar21及びAr22は、フェニル基又はピリジル基を表す。Y及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、Yが炭素原子である時、Ar21及びAr22は、同時にフェニル基とはなり得ない。)で示される環状アジン誘導体を構成成分とする有機電界発光素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−126851(P2011−126851A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289752(P2009−289752)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000173762)公益財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】