説明

環状オレフィンおよびその製法

【課題】光学用途に好適な環状オレフィン重合体を製造することができる1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を提供する。
【解決手段】インデン含量が100乃至5,000ppmであることを特徴とする1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
αオレフィンと環状オレフィンの共重合によって得られるαオレフィン−環状オレフィン共重合体は透明性、耐熱性、防湿性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、及び種々の機械的性質にも優れ優れた合成樹脂であり、様々な分野で広く用いられている。この環状オレフィンは有機金属錯体触媒を用いて重合される。1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは従来よりインデンとシクロペンタジエンとの付加反応性生物として合成されており、得られた1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを前述のとおりポリマー原料として用いる方法がメタセシス重合として特許文献1および付加重合として特許文献2に提案されている。
【0003】
特許文献3にはインデンとシクロペンタジエンのディールスアルダー反応では、1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンのほかシクロペンタジエンの三量体等が副生するため、シクロペンタジエンの三量体の含有量を一定範囲に制御する方法が開示されている。
【0004】
ところで本発明者らの検討によれば、蒸留精製中に1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが分解し、インデンが生じることで蒸留収率が低下し、さらに重合工程においてインデンがポリマーの品質悪化要因となる改善すべき課題があることを見出した。
【特許文献1】特開平7−53680号公報
【特許文献2】特開平5−97719号公報
【特許文献3】特開2000−26331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、光学用途などの高純度を要求される樹脂の原料として有用で、かつ高収率で経済的に製造できる1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の従来技術に鑑み鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
[1]インデン含量が100乃至5,000ppmであることを特徴とする下記式(1)で表わされる1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物、
【0007】
【化1】

【0008】
〔2〕下記式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンの含有量が10ppm以下である〔1〕の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物、
【0009】
【化2】

【0010】
〔3〕シクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエン、及びインデンを混合し重合禁止剤の存在下に加熱、反応した後、蒸留により分離精製することよりなる〔1〕の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造法、
〔4〕蒸留缶底温度が150℃以下である〔3〕の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造法、
〔5〕〔1〕又は〔2〕の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を原料単量体とする環状オレフィン重合体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を重合の原料として用いると、着色を抑制することが可能となり、光学性能に優れた重合体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明について、具体例を挙げつつ詳細に説明する。
本発明に係る式(1)で表わされる1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物は、シクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエン、及びインデンのディールス−アルダー反応型の熱付加反応を行うことによって合成することができる。得られた反応混合物には、式(1)で表わされる、目的の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン以外に、未反応シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、インデン、更には式(2)で表わされる、式(1)とシクロペンタジエンの反応物である1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン、下記式(3)、(4)で表わされるシクロペンタジエン3量体三量体などが含まれている。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
式(1)の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、熱によりディールス−アルダー反応の逆反応が起こり原料のインデンとシクロペンタジエンに分解してしまい収率を下げることになる。また生成した1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンとシクロペンタジエンが更に反応することで式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンが生成する。1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンは1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンよりも高沸点であり蒸留により缶底より除去することが可能であるが、缶底に1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンが増加すると、缶底温度を上げなければならず、温度を上げると前述の逆ディールス−アルダー反応が起こり、製品中にインデンが混入することになってしまう。そのため、反応工程及び/又は精製工程を厳密に運転制御することで本発明の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を得ることができる。
【0016】
本発明で使用する原料のシクロペンタジエンは、予めジシクロペンタジエンを熱分解蒸留したものを用いることができるほか、ジシクロペンタジエンをそのまま反応器に供給し、反応器内でシクロペンタジエンに熱分解して使用することもできる。このようなジシクロペンタジエンとしては、市販のものを使用することができ、その純度は90%以上であることが望ましい。ジシクロペンタジエンの不純物は、主として下記式(5)で表わされる5−メチル−3a,4,7,7a−テトラヒドロ−1H−インデンのほか、C5乃至C6の鎖状又は環状ジオレフィンとシクロペンタジエンとの付加物からなり、これら不純物の量が多いとシクロペンタジエン三量体をはじめとする重質の副生成物が多くなるため、高純度の原料を用いることが好ましい。
【0017】
【化5】

【0018】
本発明で使用することができるインデンは純度が90%以上であることが好ましい。主な不純物としてはベンゾニトリル、ベンゾインデン、ジアルキルベンゼンなどが含まれる。
インデンとシクロペンタジエンの供給比率は、インデン/シクロペンタジエンのモル比が2乃至100、より好ましくは2乃至20である。なお、ジシクロペンタジエンを原料として用いるときはシクロペンタジエンにモル比換算する。この範囲の下限よりもインデンが少ないと式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンが生成し、高沸点であるため蒸留精製時に缶底温度が上昇することによる副反応、すなわち、式(1)の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの逆ディールス−アルダー反応によりインデンとシクロペンタジエンが生成してしまう不具合が生じる。またこの範囲を上に超えてインデンが多い場合は、蒸留精製で系外に留去するインデン量が増えてしまい好ましくない。
【0019】
インデンは、熱や光などにより変性及び/又は重合してしまう。そのため、シクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエンとインデンとの反応を行う際に重合禁止剤を加えることが好ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルクレゾール、4−メトキシフェノール、4−tert−ブチルカテコールなどのフェノール系化合物、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N−ニトロソ−N−フェニルベンゾアミン、フェノチアジンなどのアミン化合物などが好適に添加される。添加量は、反応器中に供給されるインデンに対し、10乃至10,000ppmであることが好ましく、より好ましくは50乃至5,000ppmである。また、製品である本発明の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物にも保存安定剤として同様に加えることができる。
【0020】
これら原料及び重合禁止剤を使用して1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの合成を行う。
【0021】
また、反応する際には、溶媒使用又は無溶媒のいずれでもよいが、溶媒を使用すると後段の精製工程で、溶媒蒸留のための蒸留設備などが余計に必要となるので、数百t〜数千tレベルの大量生産時には設備負荷が大きくなり経済的ではないので、その際は無溶媒の方が好ましい。
【0022】
製造方法は回分式、半流通式、流通式何れによっても製造することができるが、流通式で行うことが好ましい。反応器は完全混合型、管型、ループリアクターなどを使用することができ、反応器内は液満状態でも、気相部があっても行うことができる。反応は一段又は二段以上の多段で行うことができ、反応器を直列あるいは並列につないで使用することもできる。
【0023】
反応温度は100乃至300℃、好ましくは150乃至250℃である。特にジシクロペンタジエンを使用するときは予め熱分解蒸留したシクロペンタジエンを使用せず直接反応器にジシクロペンタジエンを導入し、反応器内で熱分解してシクロペンタジエンを生成させる必要があることから100℃以上、更に好ましくは150℃以上で行う。また反応温度が250℃を超えて高い場合は前述の式[2]で表される1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン及び/又は前述の式[3]、式[4]で表されるシクロペンタジエン三量体が生成するようになるので好ましくない。
【0024】
反応時間は回分式の場合昇温時間に時間を要するが、前述の反応温度に到達した後、0.5乃至10時間、より好ましくは1乃至5時間、更に好ましくは1乃至3時間である。反応圧力は常圧乃至10MPaG、より好ましくは常圧乃至5MPaG、更に好ましくは常圧乃至1MPaGである。
【0025】
半流通式の場合は、予め反応器に入れた原料にシクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエンとインデンを追加で連続的に供給し抜き出しは回分式で行うことができる。原料は予め混合しておいても別々に供給することもできる。また、半流通式では原料のシクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエンとインデンの比率を反応時間とともに変化させて供給することもできる。反応温度は回分式と同様に、予め定めた反応温度に到達後0.5乃至10時間、より好ましくは1乃至5時間、更に好ましくは1乃至3時間である。反応圧力は常圧乃至10MPaG、より好ましくは常圧乃至5MPaG、更に好ましくは常圧乃至1MPaGである。
【0026】
流通式では原料のシクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエンとインデンを別々にあるいは予め混合して供給することができる。流通式反応器の滞留時間は0.5乃至10時間、より好ましくは1乃至5時間、更に好ましくは1乃至3時間である。反応圧力は常圧乃至10MPaG、より好ましくは常圧乃至5MPaG、更に好ましくは常圧乃至1MPaGである。
【0027】
続いて反応器から抜き出した反応混合物を精製工程に導入する。精製法は蒸留精製が好ましい。その操作法は回分式でも連続式でも行うことができる。回分式では缶底での滞留時間が長くなるため、連続的に供給、抜き出しを行える連続式がより好ましい。回分式では軽沸分から段階的に塔頂より留去して、製品の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを留去し、製品よりも重質分は缶出液として缶底より抜き出すことになる。この際、回収したシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、インデンは再び合成原料としてそのまま、あるいは再度精留して使用することができる。回分式蒸留では還流を行いその還流比は時間とともに段階的に変化させることが好ましい。還流比は0.01乃至50で行い、時間とともに変化させる場合は還流比を段々大きくしていくことが好ましい。
【0028】
蒸留を連続的に行う場合は蒸留塔は2塔以上の多段式で行う。蒸留を2段階で行う場合には、1段目で1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンよりも軽沸分を留去し、2段目で塔頂より1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを、缶底より1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンよりも重質分を抜き出す。蒸留を3段で行う場合には1段目でシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのインデンよりも軽沸成分を留去し、2段目でインデン及び/または1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンよりも軽沸分を留去し、3段目で1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを塔頂より留去し、重質分を缶底より抜き出す。
【0029】
蒸留は減圧条件で行うことが好ましい。減圧で行うことでより低温で蒸留することが可能となる。これは目的の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが熱により逆ディールス−アルダー反応を起こし、原料のシクロペンタジエンとインデンが生成して1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの収率が低下してしまうことを抑制するためである。蒸留圧力としては0.01乃至100kPa、より好ましくは0.1乃至50kPa、更に好ましくは0.1乃至20kPaである。
【0030】
蒸留は、缶底温度30乃至150℃、好ましくは95乃至150℃で行う。温度150℃を超えて行うと蒸留中に前述の逆ディールス−アルダー反応でシクロペンタジエンとインデンが生成し、目的の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンに原料が混入して純度を下げてしまうことになる。また、95℃より低い場合は、高い真空度が必要となり、設備負荷が上がるため、数百〜数千tの大量生産時には若干難がある。蒸留塔は、充填塔、棚段塔などを用いることができるが、充填塔がより好ましい。
以上のようにして製造された本発明の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物はインデンを100乃至5,000ppm含有し、前述の式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンの含有量が10ppm以下である。
【0031】
本発明の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物は従来公知の方法でメタセシス重合又はオレフィン部位の付加重合に供することができる。メタセシス重合ではたとえば特開平9−183832号公報、特開平8−151435号公報、特開平5−043663号公報、特開平1−172422号公報、などに開示されている方法で行うことができる。
【0032】
付加重合ではオレフィン部位の単独又は低級αオレフィンとの共重合を行うことができる。付加重合の触媒としてチーグラー触媒、メタロセン触媒などを使用して行う。チーグラー触媒を用いる製造方法としてはたとえば特開平9−176396号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報に記載されているように、炭化水素溶媒に可溶なバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる方法によってエチレンなどのαオレフィンと環状オレフィンとの共重合体を合成することができる。
【0033】
また近年新たな触媒としてたとえば特開平11−315109号公報に示されるようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を触媒として、例えば特開2004−331966に示されるようにエチレンなどのαオレフィンと環状オレフィンとの共重合体を合成することができる。
【0034】
このようにして得た重合体溶液は、触媒残渣を脱灰した後、モノマー溶媒分離工程に送られ、多管式熱交換器、ホッパーまたは薄膜蒸発器などの回転式脱溶媒器等により加熱、フラッシュ、減圧吸引されて、溶媒や未反応モノマーが乾燥除去され、オレフィン系重合体が回収される。重合溶液には重合溶媒とともに、未反応モノマーが共存している。そのため、加熱して重合体と分離する場合には、モノマーの熱安定性が必要になる。本発明における環状オレフィンモノマー1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物はインデンを100乃至5,000ppm含有し、前述の式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンの含有量が10ppm以下である。インデンがこの範囲を上に超えて多く含有すると重合体からの分離が不十分になり、また過熱により黄色く着色したインデン変性物が重合体に残存し樹脂を黄色く変色させてしまい、光学材料用途として不具合が生じる。また、前述の式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンがこの範囲を上に超えて多く含有すると、高沸点化合物であるため、上述の乾燥工程において重合体からの除去が困難になり、樹脂の品質を悪化させる不具合が生じる。本発明の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物はインデンを100乃至5,000ppm含有し、前述の式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンの含有量が10ppm以下であるため、このような不具合を生じず、光学用途として優れた性能を示す樹脂原料として有用である。
【0035】
[実施例]
以下、実施例により本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定を受けるものではない。なお、実施例中において特に断らない限り「部」は「重量部」を示す。
【実施例1】
【0036】
(モノマー合成工程)
インデン(純度96.8重量%)2,369部、ジシクロペンタジエン(純度95.0%)652部(インデン/ジシクロペンタジエンモル比=4)に重合禁止剤としてN−ニトロソ−N−フェニルベンゾアミン2.3部をそれぞれ、5mオートクレーブに投入した。反応は回分式で行った。気相部を窒素で置換した後、3時間かけて180℃に昇温した。昇温後の系内圧力は0.1MPaGであった。180℃のまま3時間加熱攪拌して反応を完結させた。反応終了後の液組成はインデン/1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン/1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン=42/49/3であった。
【0037】
得られた反応液は蒸留により精製した。蒸留は回分式で行い、まず初留の留去を温度は60℃乃至110℃、圧力は0.02乃至0.03kPa、還流比は1で行った。そのまま温度を上げて目的の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを含む留分を採取した。そのとき温度は110乃至140℃、圧力は0.015乃至0.03kPa、還流比は1乃至2.5で行った。その後缶底液を抜き出し、更に1回目に採取した 1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの留分を再度蒸留した。蒸留は120乃至122℃、圧力0.015乃至0.05kPa、還流比2乃至3で行った。得られた1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物は不純物がインデン2,400ppm、1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン10ppm以下であった。
【実施例2】
【0038】
(モノマー合成工程)
インデン(純度96.8重量%)884部、ジシクロペンタジエン(純度95.0%)201部(インデン/ジシクロペンタジエンモル比=5)に重合禁止剤としてN−ニトロソ−N−フェニルベンゾアミン0.9部を混合しした溶液を調製し、2mのオートクレーブに連続的に供給した。反応器での滞留時間は3時間になるように制御した。反応温度は180℃、圧力は0.5MPaで行った。反応器出口の液組成はインデン/1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン/1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン=47/50/2であった。
【0039】
得られた反応液はそのまま蒸留塔へ導入された。蒸留操作は2段の連続蒸留で行った。1段目の運転条件は缶底温度130℃、塔頂圧力2kPa、2段目の運転条件は缶底温度143℃、塔頂圧力1kPaで行った。得られた1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物は不純物としてインデン2,000ppm、1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン10ppm以下であった。
【実施例3】
【0040】
(重合工程)
実施例2の如くして得られた1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物とエチレンの共重合を行った。容積300Lの連続重合反応器に脱水精製したシクロヘキサン130L毎時、エチルアルミニウムセスキクロライドのヘキサン溶液(80mmol/L)を27毎時mmol、バナジウム触媒としてVO(OEt)Clのヘキサン溶液(30mmol/L)をアルミニウムに対するバナジウムのモル比としてAl/V=14、エチレン0.81kg毎時、1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物9.2kg毎時、水素3.6NL毎時の条件で供給し、温度20℃、全圧0.3MPaで重合させた。重合槽からは重合溶液として、重合体と未反応モノマー、溶媒の混合物を抜き出した。この重合溶液は次に脱灰工程に導入した。
【0041】
(脱灰工程)
80℃のボイラー水及びpH調整剤として濃度が25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、重合反応を停止させるとともに、重合溶液中に残存する触媒残渣を除去(脱灰)した。
【0042】
(溶媒、モノマー分離工程)
脱灰された重合溶液を溶媒、モノマー分離工程へ送る。二重管加熱器に30kg毎時の量で供給して205℃の温度に加熱した。加熱された重合溶液はフラッシュバルブで常圧に解放され、260℃に加熱された二重管加熱器を経て、ホッパーに導いて溶媒、モノマーを加熱蒸発して重合体から分離した。重合体は3kg毎時で得られた。得られた重合体は真空ベントつき押出機(スクリュー径30φmm、かみ合い型二軸押出機、L/D=30)を用いバレル温度260℃、真空ベントの圧力0.7kPaに設定して混練、ストランドを冷却、切断することでペレットとして回収した。残存する未反応モノマーは押出機において真空ベントで低減させた。
【0043】
得られた重合体の分子量の指標である135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は0.50dl/g、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7)を用いて30℃から10℃/分で昇温し、ガラス転移点で観測される吸熱ピーク温度は145℃であった。
日本電色工業(株)製カラーメーターSQ−300Hを用いて反射光より測定した試料のb値は4.8であった。
【0044】
[比較例1]
インデン(純度96.8重量%)1,895部、ジシクロペンタジエン(純度95.0%)1,135部(インデン/ジシクロペンタジエンモル比=2)に重合禁止剤としてN−ニトロソ−N−フェニルベンゾアミン1.8部を用いる以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後の液組成はインデン/1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン/1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン=10/84/6であった。
【0045】
得られた反応液は実施例1と同様に蒸留により精製した。ただし、缶底温度は最大168℃まで上昇した。得られた1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物は不純物としてインデン21,000ppm、1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレン100ppmであった。蒸留中に1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの分解反応によりインデンが生成してしまい純度を上げることができなかった。
【0046】
次に実施例3と同様にして重合反応を行った。得られた重合体の物性は以下のとおりであった。
極限粘度[η]は0.38dl/g、ガラス転移点は141℃、b値は18.0であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を使用した重合物は着色が抑制された光学用途に好適な環状オレフィン重合体を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インデン含量が100乃至5,000ppmであることを特徴とする下記式(1)で表わされる1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物
【化1】

【請求項2】
下記式(2)で表わされる1,4,5,11−ジメタノー1,1a,4,4a,5,5a,9a,10,10a−オクタヒドロベンゾフルオレンの含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物
【化2】

【請求項3】
シクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエンとインデンとを混合し重合禁止剤の存在下に加熱、反応した後、蒸留により分離精製することよりなる請求項1に記載の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン
組成物の製造法
【請求項4】
前述の蒸留缶底温度が150℃以下である請求項3に記載の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造法
【請求項5】
請求項1又は2に記載の1,4−メタノー1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を原料単量体とする環状オレフィン重合体。

【公開番号】特開2008−37756(P2008−37756A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209858(P2006−209858)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】