説明

環状オレフィンの付加重合用触媒、およびこれを用いた環状オレフィン付加重合体の製造方法

【課題】ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する環状オレフィンの付加重合活性に優れた環状オレフィン付加重合触媒及び環状オレフィン付加重合体の製造方法、環状オレフィン付加重合体を提供。
【解決手段】カルベン化合物を配位子とする、周期表第10族遷移金属の錯体、好ましくは一般式(1)で表されるカチオン錯体を重合触媒として用いる。


(式中、Lはカルベン化合物配位子、Lは中性の電子供与性配位子を示す。LとLは互いに結合して多座配位子を形成していてもよい。〔Yは一価のアニオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィンの付加重合用触媒、およびこれを用いた環状オレフィン付加重合体の製造方法に関する。より詳しくは、新規で、特にヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する環状オレフィンの付加重合活性に優れた環状オレフィン付加重合触媒、及び環状オレフィン付加重合体の製造方法に関する。また本発明は、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィン付加重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン、特にノルボルネンのビニル付加重合体は、耐熱性、低吸水性、電気特性に優れ、近年、電気・電子部品用途の高分子材料として注目されているが、金属その他の材料との密着性が低いという問題があった。
【0003】
密着性を高くする方法として、官能基を有するノルボルネン類を付加共重合する方法が知られている。例えば、エステル基やカルボキシル基を有するノルボルネン類を付加共重合する方法が知られている(特許文献1参照)。また、シリル基やエステル基を有するノルボルネン類を付加共重合する方法も知られている(特許文献2参照)。しかしながら、エステル基やシリル基を有する付加共重合体は密着性が十分高くない場合があり、また、カルボキシル基を有する付加共重合体は高温時の安定性が低下する傾向があった。
【0004】
一方、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有するノルボルネン類の付加共重合体は、金属その他の材料との密着性が高く、高温安定性に優れることが期待される。したがって、ヒドロキシル基またはアセチルオキシ基含有ノルボルネン類の付加共重合体が望まれていた。ヒドロキシル基を有するノルボルネン類由来の繰り返し構造単位を有するビニル付加重合体として、エチレンと5−ノルボルネン−2−オールの付加共重合体をサリチルアルジミンが配位したニッケルまたはパラジウムの錯体を用いて製造する方法が知られている(特許文献3参照)。しかしこのような錯体を用いても、環状オレフィン由来の繰り返し構造単位を多く含む重合体を得ることは困難であった。
【0005】
また、ヒドロキシル基を有するノルボルネン類を共重合できる触媒として、ルテニウムなどの周期表第8族元素の錯体が知られている(特許文献4参照)。しかしながらこの触媒を用いて得られる重合体は、開環重合体であった。
【0006】
【特許文献1】特表平11−505880号公報
【特許文献2】WO00/20472号公報
【特許文献3】特表2002−515061号公報
【特許文献4】特開2002−363263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィンを付加重合できる新規の環状オレフィン付加重合用触媒、及びこれを用いたヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する環状オレフィン付加重合体の製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、このような方法により得られる、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する新規の環状オレフィン付加重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、電子供与性のカルベン化合物、特にN−ヘテロ環カルベン化合物をパラジウムやニッケルなどの周期表第10族遷移金属に配位させた錯体の存在下でノルボルネン類を重合すると、高活性でビニル付加重合することを見出した。さらに該錯体を用いると、従来の重合触媒では重合できなかったヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基含有ノルボルネン類を効率よく重合できることを見出し、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明の第一によれば、カルベン化合物を配位子として有する、周期表第10族遷移金属、の錯体を含有する環状オレフィンの付加重合用触媒が提供される。
前記錯体は、一般式(1)で表されるカチオン錯体であることが好ましい。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、Mは第10族遷移金属原子であり、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;または、ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。ここで、RとRは互いに結合して環を形成していても良い。Lはカルベン化合物配位子、Lは中性の電子供与性配位子を示す。LとLは互いに結合して多座配位子を形成していてもよい。〔Yは一価のアニオンを表す。ここで、xは1または2であり、yは0、1または2である。
【0012】
また、前記触媒は、カルベン化合物が配位した周期表第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体と、その対アニオンの塩または有機ホウ素化合物とを、混合してなることが好ましい。
【0013】
本発明の第二によれば、前記の触媒の存在下に、環状オレフィンを付加重合する環状オレフィン付加重合体の製造方法が提供される。
前記環状オレフィンは、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する環状オレフィンを含むことが好ましい。
【0014】
本発明の第三によれば、環状オレフィン由来の繰り返し構造単位を50モル%以上含有し、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィン由来の繰り返し構造単位の含有量が1モル%以上であり、重量平均分子量が5,000〜1,000,000である環状オレフィン付加重合体が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環状オレフィンを効率よく付加重合できる重合触媒、及び環状オレフィン付加重合体の製造方法が提供される。また、環状オレフィン由来の繰り返し構造単位を50モル%以上含有し、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィン由来の繰り返し構造単位の含有量が1モル%以上であり、重量平均分子量が5,000〜1,000,000である環状オレフィン付加重合体が提供される。上記本発明の環状オレフィン付加重合体は、上記本発明の製造方法により初めて製造が可能になったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(環状オレフィンの付加重合用触媒)
本発明の環状オレフィンの付加重合用触媒は、カルベン化合物を配位子として有する、周期表第10族遷移金属の錯体を含有する。なお、本発明においては、周期表は長周期型の周期表を表す。ここで、カルベン化合物とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、式(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子を持つ化合物のことである。カルベン化合物としては、ヘテロ原子を有するものが好ましい。一般的にカルベン化合物は、反応中に生じる不安定な中間体として存在するが、ヘテロ原子を有すると比較的安定なカルベン化合物として単離することができる。ヘテロ原子を有するカルベン化合物の具体例としては、一般式(2)に示すカルベン化合物を挙げることができる。
【0017】
【化3】

【0018】
式中、QおよびQは、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびリン原子から選ばれるヘテロ原子であり、R〜Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびケイ素原子から選ばれる原子を含む官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R〜Rは、互いに結合して環を形成していても構わない。また、QおよびQとなるヘテロ原子の種類によっては、R〜Rの一部は存在しなくても良い。
上記の中でも、QおよびQが窒素原子で、かつRとRが互いに結合して環を形成している、一般式(3)で示されるN−ヘテロ環カルベン化合物が安定で好ましい。
【0019】
【化4】

【0020】
式中、RおよびRは一般式(2)と同様である。Tは2個の窒素原子を結ぶ架橋基であり、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびケイ素原子から選ばれる原子を含む官能基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。さらに、R、RおよびTは、互いに結合して環を形成していても構わない。
【0021】
特に好ましいN−ヘテロ環カルベン化合物としては、一般式(4)で示されるN,N−ジ置換イミダゾリン−2−イリデン、一般式(5)で示されるN,N−ジ置換イミダゾリジン−2−イリデンを挙げることができる。
【0022】
【化5】

【0023】
式中、RおよびRは一般式(2)と同様である。R10およびR11はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;または、ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R、R、R10およびR11は、互いに結合して環を形成していても構わない。
【0024】
【化6】

【0025】
式中、RおよびRは一般式(2)と同様である。R12〜R15はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;または、ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R、RおよびR12〜R15は、互いに結合して環を形成していても構わない。
【0026】
これ以外にも、一般式(6)で示されるN,N−ジ置換トリアゾリン−2−イリデンを挙げることができる。
【0027】
【化7】

【0028】
式中、RおよびRは一般式(2)と同様である。R16は水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、RとR16は、互いに結合して環を形成していても構わない。
【0029】
好ましいカルベン化合物の具体例としては、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロ−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラメチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、および1,3,4,5−テトラフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデンなどの一般式(4)で表される化合物;
1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、および1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリジン−2−イリデンなどの一般式(5)で表される化合物;
1,3,4−トリフェニル−2−トリアゾリン−5−イリデンなどの一般式(6)で表される化合物;
さらに、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4−チアゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、および1,3−ジメシチルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデンなどを挙げることができる。
【0030】
周期表第10族遷移金属としては、ニッケル、パラジウム、および白金等が挙げられ、ニッケルおよびパラジウムが好ましい。
本発明の重合用触媒として使用される錯体の構造は、特に限定されないが、一般式(7)で示されるカチオン錯体が好ましい。
【0031】
〔(R17(L(Lc+〔Yd− (7)
式中、Mは第10族遷移金属を示し、R17は水素原子またはアニオン性炭化水素配位子、Lはカルベン化合物配位子、Lは中性の電子供与性配位子を示す。LとLは互いに結合して多座配位子を形成していてもよい。〔Yd−はアニオンを表す。ここで、x、aおよびbは1または2であり、yは0、1または2であり、zは0または1である。cおよびdは価数を表し、c×a=d×bとなる整数である。
【0032】
ここで、「アニオン性炭化水素配位子」とは、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子で炭化水素を含む配位子である。「中性の電子供与性配位子」とは、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子をいう。
【0033】
代表的な「アニオン性炭化水素配位子」の例を挙げると、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜20のアルキル、炭素数が5〜10のシクロアルキル、直鎖状および分岐状の炭素数が2〜20のアルケニル、炭素数が6〜15のシクロアルケニル、炭素数が3〜15のπ−アリル、ならびに炭素数が6〜30のアリールが挙げられる。これらは、ハロゲン原子やヘテロ原子を有する置換基を有していても構わない。
【0034】
〔Yd−はアニオンであり、遷移金属陽イオンとイオン対を形成できる陰イオンであれば特に限定されない。
【0035】
上記一般式(7)で表されるカチオン錯体の中でも、炭素数が3〜15のπ−アリルが配位した一般式(1)で示されるカチオン錯体が特に好ましい。
【0036】
【化8】

【0037】
式中、Mは第10族遷移金属原子であり、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;または、ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。ここで、RとRは互いに結合して環を形成していても良い。Lはカルベン化合物配位子、Lは中性の電子供与性配位子を示す。LとLは互いに結合して多座配位子を形成していてもよい。〔Yは一価のアニオンを表す。ここで、xは1または2であり、yは0、1または2である。
【0038】
なお、一般式(1)において、RとRは互いに結合して環を形成していても良いが、用いる第10族遷移金属原子の種類によっては触媒の調製が困難な場合があることから、環を形成していない方が好ましい。
【0039】
好ましいπ−アリル配位子の例としては、アリル、2−クロロアリル、クロチル、1,1−ジメチルアリル、2−メチルアリル、1−フェニルアリル、2−フェニルアリル、β−ピネニルおよびシクロペンタジエニルを挙げることができるが、アリルが特に好ましい。
【0040】
中性の電子供与性配位子であるLの例としては、例えば、ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;シクロオクタジエン;水;ジクロロメタンなどの塩素化アルカン;エタノールやイソプロパノールなどのアルコール類;ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトンやシクロヘキサノンなどのケトン類;アセトニトリルやベンゾニトリルなどのニトリル類;トルエンやキシレンなどのアレーン類;トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド類;エチレンカーボネートなどの炭酸エステル;エチルアセテートなどのエステル類;を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
アニオンである〔Yは、好ましくはボレート、アルミネート、およびボレートベンゼンアニオンから選択されるが、ボレートおよびアルミネートが好ましく、ボレートが特に好ましい。なお、ボレートおよびアルミネートは、一般式(8)で表される。
【0042】
〔M(R18)(R19)(R20)(R21)〕 (8)
式中、Mはホウ素またはアルミニウムを示し、R18〜R21は互いに独立に、ハロゲン原子または、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0043】
18〜R21の好ましい具体例としては、ハロゲン原子、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜10のアルキル、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜10のアルコキシ、直鎖状および分岐状の炭素数が3〜10のハロアルケニル、直鎖状および分岐状の炭素数が3〜12のトリアルキルシロキシ、炭素数が18〜36のトリアリールシロキシ、置換および非置換の炭素数が6〜30のアリール、および置換および非置換の炭素数が6〜30のアリールオキシを挙げることができる。
【0044】
ボレートベンゼンアニオンとしては、例えば、一般式(9)で表されるものがある。
【0045】
【化9】

【0046】
式中、R22は、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコキシまたはハロゲン化アリールオキシであり、R23〜R27は互いに独立に、水素、ハロゲン原子またはハロゲン化炭化水素である。
【0047】
22の好ましい具体例としては、ハロゲン原子、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜10のハロゲン化アルキル、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜10のハロゲン化アルコキシ、炭素数が6〜30のハロゲン化アリール、ならびに炭素数が6〜30のハロゲン化アリールオキシを挙げることができる。
23〜R27は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜10のハロゲン化アルキルまたは炭素数が6〜30のハロゲン化アリールである。
【0048】
一般式(1)で示されるカチオン錯体は、(i)カルベン化合物が配位した第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体と、(ii)その対アニオンの塩または(iii)有機ホウ素化合物とを、混合して得るのが、合成が容易で好ましく、(i)と(ii)を混合して得るのが特に好ましい。
【0049】
(i)カルベン化合物が配位した第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体は、一般式(10)で示される。
【0050】
【化10】

【0051】
式中、R〜R、M、L、L、x、yは、一般式(1)と同様である。Aはアニオン性配位子で、eは1または2である。
【0052】
また、(ii)対アニオンの塩は、一般式(11)で示される。
【0053】
〔X〕f+〔Y (11)
式中、〔Yは、一般式(1)と同様である。〔X〕f+は〔Yと塩を形成しうるカチオンである。fはカチオンの価数で1または2であり、gはfに等しい。
【0054】
(i)と(ii)とを混合させて一般式(1)のカチオン錯体を生成させる反応は、下記反応式で示される。
【0055】
【化11】

【0056】
ここで、kはfに等しく、h、i、j、kは、h×e=i×g=jを満たす整数である。
【0057】
一般式(10)のアニオン性配位子Aとは、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であれば、いかなるものでもよく、一般式(7)のR17で挙げた「アニオン性炭化水素系配位子」も含まれる。好ましいアニオン性配位子の例としては、ハロゲン原子、水素原子、ナイトレート、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜20のアルキル、炭素数が6〜30のアリール、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜20のアルコキシ、炭素数が6〜30のアリールオキシ、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜20のアルコキシカルボニル、炭素数が7〜30のアリールオキシカルボニル、直鎖状および分岐状の炭素数が1〜20のアルキルスルホネート、ならびに炭素数が6〜30のアリールスルホネートが挙げられる。これらは、ハロゲン原子やヘテロ原子を有する置換基を有していても構わない。
【0058】
一般式(10)で示される(i)カルベン化合物が配位した第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体の具体的な例としては、下記のものを挙げることができる。
(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)トリフラート、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)トリフルイミド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)トリフルオロアセテート、(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(1,1−ジメチルアリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(クロチル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(メタアリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)メチル、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)フェニル、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)フェニル、および(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)フェニルなどのパラジウム錯体;
【0059】
(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ブロミド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)トリフラート、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)トリフルオロアセテート、(アリル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(1,1−ジメチルアリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(クロチル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(メタアリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)メチル、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(アリル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)フェニル、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)フェニル、(アリル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)フェニル、(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)メチル、(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)クロリド、(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(インデニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)メチル、(インデニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(インデニル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(フルオレニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)メチル、(フルオレニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、および(フルオレニル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)メチルなどのニッケル錯体;
【0060】
(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)クロリド、(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)トリフラート、(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)トリフルオロアセテート、(アリル)白金(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)白金(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)白金(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(1,1−ジメチルアリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(クロチル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(メタアリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)メチル、(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(アリル)白金(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)メチル、(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)フェニル、(アリル)白金(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)フェニル、および(アリル)白金(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)フェニルなどの白金錯体。
【0061】
上記の中でも、パラジウム錯体およびニッケル錯体が好ましい。特に好ましいパラジウム錯体としては、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)クロリドおよび(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)クロリドが挙げられる。
特に好ましいニッケル錯体としては、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ブロミド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(アリル)ニッケル(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)クロリド、(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド、(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリドおよび(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチルが挙げられる。
【0062】
一般式(11)の〔X〕f+は、カチオンである〔Yと塩を形成しうるカチオンであればいかなるものでもよいが、好ましい具体例としては、プロトン(H)、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン、および有機基含有カチオンを挙げることができる。
【0063】
一般式(11)で示される(ii)対アニオンの塩の具体的な例として、下記のものを挙げることができる。
一般式(8)で示されるアニオンの塩としては、リチウムテトラキス(2−フルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、タリウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、フェロセニウム(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス〔トリス(トリフルオロメチル)メトキシ〕ボレート、タリウムテトラキス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ボレート、トリチルテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)メトキシ〕ボレート、銀〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ボレート、リチウムビス(テトラフルオロカテコール)ボレート、〔銀(トルエン)〕ビス(テトラフルオロカテコール)ボレート、およびタリウムビス(テトラクロロカテコール)ボレートなどのボレート塩;
【0064】
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリチル(パーフルオロビフェニル)フルオロアルミネート、ナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕アルミネート、カリウム(オクチルオキシ)トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、マグネシウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、カルシウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、リチウムテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)フェニルメトキシ〕アルミネート、タリウムテトラキス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕アルミネート、トリチルテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)メトキシ〕アルミネート、銀テトラキス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕アルミネート、リチウムビス(テトラフルオロカテコール)アルミネート、およびリチウムテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)−4−イソプロピルフェニルメトキシ〕アルミネートなどのアルミネート塩を挙げることができる。
【0065】
ボレートベンゼンアニオンの塩の具体例としては、〔1,4−ジヒドロ−4−メチル−1−(ペンタフルオロフェニル)〕−2−ボリニルリチウム、〔1,4−ジヒドロ−4−メチル−1−(ペンタフルオロフェニル)〕−2−ボリニルトリフェニルメチリウム、4−(1,1−ジメチル)−1,2−ジヒドロ−1−(ペンタフルオロフェニル)−2−ボリニルリチウム、1−フルオロ−1,2−ジヒドロ−4−(ペンタフルオロフェニル)〕−2−ボリニルトリフェニルメチリウム、および1−〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕−1,2−ジヒドロ−4−(ペンタフルオロフェニル)〕−2−ボリニルリチウムなどを挙げることができる。
【0066】
上記の中でも、一般式(8)で表されるボレートおよびアルミネートの塩が好ましく、ボレートの塩が特に好ましい。特に好ましいボレートの塩は、リチウムテトラキス(2−フルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、タリウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、フェロセニウム(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、およびN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレートである。
【0067】
また、上記(iii)有機ホウ素化合物としては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、およびトリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。なお、一般式(1)においてRとRが互いに結合して環を形成しているカチオン錯体を得るには、反応収率の観点から(i)カルベン化合物が配位した第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体と、(iii)有機ホウ素化合物とを、混合して得るのが好ましい。
【0068】
(i)カルベン化合物が配位した第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体と、(ii)その対アニオンの塩または(iii)有機ホウ素化合物との、混合割合は、各種の条件により適宜に選択することができるが、通常は、モル比で(i):(ii)または(iii)が、1:0.1〜1:100、好ましくは1:0.5〜1:50、より好ましくは、1:1〜1:10である。混合時の温度は、特に限定されないが、通常−200℃〜200℃、好ましくは−150℃〜150℃、より好ましくは−100℃〜100℃の範囲である。得られる金属錯体は、単離精製したものを重合に用いてもよいし、単離精製することなく反応粗生成物をそのまま重合反応に使用することもできる。
【0069】
上記(i)と、(ii)または(iii)との混合は溶媒中で行ってもよい。溶媒は特に限定されないが、不活性であり、工業的に汎用なものが好ましい。
このような溶媒としては、具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン溶媒;などの溶媒を使用することができる。これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ハロゲン溶媒が好ましい。
【0070】
(環状オレフィン)
本発明に用いる環状オレフィンは、環構造内に二重結合を有する、置換基を有していてもよい炭化水素類であり、本発明の効果がより一層顕著に表れることからヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有することが好ましく、ヒドロキシル基を含有することが特に好ましい。具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、ヒドロキシシクロペンテン、アセチルオキシシクロペンテン、およびシクロオクテンなどの単環の環状オレフィン;ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのノルボルネン環構造を有する化合物(以下、単に「ノルボルネン類」と言う。);を挙げることができるが、特に本発明の重合触媒を用いると、ノルボルネン類を高活性で重合することができる。
ノルボルネン類は、一般式(12)で示されるものが好ましい。
【0071】
【化12】

【0072】
式中、R28〜R31は、互いに独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;ハロゲン原子もしくは前記官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R28〜R31は、互いに結合して環を形成していても構わない。mは0または1である。
【0073】
好ましいノルボルネン類は、一般式(12)のmが0であるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類およびmが1であるテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類に分類することができ、いずれも使用することができるが、重合活性に優れるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類を用いるのが特に好ましい。
【0074】
28〜R31は、具体的には、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、カルボニル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、酸無水物などの酸素原子を含む官能基;アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルなどの窒素原子を含む官能基;ヒドロキシチオ、アルコキシチオ、アリールオキシチオなどの硫黄原子を含む官能基;シリル、アルキルシリル、アリールシリル、アルコキシシリル、アリールオキシシリルなどのケイ素原子を含む官能基;を挙げることができ、さらに、これらの官能基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、およびアリールなどの炭化水素基を挙げることができる。さらに、R28〜R31は、互いに結合して環を形成していても構わない。
【0075】
本発明に用いられるノルボルネン類の具体例を以下に挙げることができる。
2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、およびジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン)などの官能基を有さないビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
【0076】
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、および9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどの官能基を有さないテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0077】
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチル、酢酸5−ノルボルネン−2−イル、酢酸2−メチル−5−ノルボルネン−2−イル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イル、およびメタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルなどのアルコキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、および4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチルなどのアルコキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0078】
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などのアルコキシカルボニル基または酸無水物基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物などのアルコキシカルボニル基または酸無水物基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0079】
5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、および5−メチル−5−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−オールなどのヒドロキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0080】
5−アセチルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−アセチルオキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(アセチルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジ(アセチルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−アセチルオキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、および5−メチル−5−(2−アセチルオキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのアセチルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
4−アセチルオキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、および4−アセチルオキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エンなどのアセチルオキシ基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0081】
5−アセチルオキシメチル−6−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのヒドロキシル基およびアセチルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
4−アセチルオキシメチル−5−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エンなどのヒドロキシル基およびアセチルオキシ基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0082】
5−ノルボルネン−2−カルバルデヒドなどのヒドロキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルバルデヒドなどのヒドロキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0083】
3−メトキシカルボニル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸などのアルコキシル基とアルコキシカルボニル基とを有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
2−アセチル−5−ノルボルネンなどのカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
9−アセチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0084】
5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、および5−ノルボルネン−2−カルボキサミドなどの窒素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボニトリル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボキサミド、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
【0085】
9−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、および4−トリメトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エンなどのケイ素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類。
【0086】
本発明の付加重合用触媒は、上記のノルボルネン類のうち、(ア)ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;、および、(イ)ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;の重合に好適に用いられ、得られる付加共重合体の他材料との密着性向上の観点からヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類およびヒドロキシルを有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類の重合に特に好適に用いられる。
【0087】
(環状オレフィン付加重合体の製造方法)
本発明の環状オレフィン付加重合体の製造方法は、前記本発明の触媒の存在下に、環状オレフィンを付加重合する。重合は溶媒存在下または溶媒非存在下に、前記本発明の重合触媒と、環状オレフィンを混合して行うことができる。
重合触媒を、(i)カルベン化合物が配位した周期表第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体と、(ii)その対アニオンの塩または(iii)有機ホウ素化合物とを、混合して得る場合には、(i)、(ii)または(iii)、および環状オレフィンの三者を混合する順序は特に限定されない。すなわち、(i)と、(ii)または(iii)の混合物を環状オレフィンに添加して混合してもよいし、環状オレフィンと(i)の混合物に、(ii)または(iii)を添加して混合してもよく、また、環状オレフィンと、(ii)または(iii)の混合物に、(i)を添加して混合してもよい。
【0088】
環状オレフィンに対する触媒の割合は、(重合触媒中の第10族遷移金属:環状オレフィン)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:200〜1,000,000、より好ましくは1:500〜1:500,000である。触媒量が多すぎると触媒除去が必要な場合にその操作が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
【0089】
本発明の製造方法において溶媒を用いる場合には、重合に影響しない溶媒であれば、その種類は特に限定されないが、工業的に汎用なものが好ましい。
このような溶媒としては、前記(i)と、(ii)または(iii)との、混合に使用可能な溶媒をいずれも使用することができる。中でも、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ハロゲン溶剤が好ましい。
【0090】
重合を溶媒中で行う場合には、環状オレフィンの濃度は、溶液中1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、5〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が1重量%以下の場合は生産性が悪く、50重量%以上の場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の取り扱いが困難となる場合がある。
【0091】
重合温度は特に制限はないが、一般には、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、1分間〜100時間で、特に制限はない。
【0092】
得られる環状オレフィン付加重合体の分子量は、環状オレフィンと触媒の比や重合温度などを変えることによって調節することができる。また、α−オレフィンやアルコールの添加によっても、重合体の分子量をコントロールすることができる。
【0093】
(環状オレフィン付加重合体)
本発明の環状オレフィン付加重合体は、環状オレフィン由来の繰り返し構造単位を50モル%以上含有し、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィン由来の繰り返し構造単位の含有量が1モル%以上であり、重量平均分子量が5,000〜1,000,000である環状オレフィン付加重合体である。なお、上記環状オレフィン付加重合体としては、他材料との密着性向上の観点から、ヒドロキシル基を有する環状オレフィン由来の繰り返し構造単位の含有量が1モル%以上である付加重合体が好ましい。
【0094】
本発明の環状オレフィン付加重合体は、前記本発明の環状オレフィン付加重合体の製造方法において、環状オレフィンとしてヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィンを用いて製造することができる。ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィンとしては、前記のヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;およびヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;が好ましい。
【0095】
本発明の環状オレフィン付加重合体は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、スチレン、ブタジエン、イソプレンなどの環状オレフィン以外の単量体由来の繰り返し単位を含んでいてもよいが、環状オレフィン由来の繰り返し構造単位は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。環状オレフィン由来の繰り返し構造単位の量がこの範囲であると、耐熱性が高くて有用である。
【0096】
本発明の環状オレフィン付加重合体は、好ましくは、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有するノルボルネン類由来の繰返し構造単位を含む付加重合体であり、特に好ましくはヒドロキシル基を有するノルボルネン類由来の繰返し構造単位を含む付加重合体である。ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有するノルボルネン類由来の繰返し構造単位は、一般式(13)で示される。
【0097】
【化13】

【0098】
式中、R32〜R35のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基、アセチルオキシ基、または、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する炭素数1〜20の炭化水素基である。該炭化水素基はヒドロキシル基およびアセチルオキシ基以外の官能基を有していてもよい。R32〜R35のうち残りは互いに独立に、水素原子;ハロゲン原子;ヒドロキシル基およびアセチルオキシ基以外の官能基;または該官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R32〜R35は、互いに結合して環を形成していても構わない。nは0または1である。
【0099】
一般式(13)で表される構造単位において、ヒドロキシル基およびアセチルオキシ基の合計数は好ましくは1〜2個であり、より好ましくは1個である。ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する炭素数1〜20の炭化水素基としては、ヒドロキシメチル、アセチルオキシメチル、ヒドロキシエチル、アセチルオキシエチル、ヒドロキシプロピル、アセチルオキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、2−アセチルオキシエトキシカルボニル、および2−ヒドロキシプロポキシカルボニルなどを挙げることができる。
【0100】
32〜R35において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、および臭素原子などが挙げられる。ヒドロキシル基およびアセチルオキシ基以外の官能基としては、アルコキシル、アリールオキシ、カルボニル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、および酸無水物基などの酸素原子を含む官能基;アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、およびアリールアミノカルボニルなどの窒素原子を含む官能基;ヒドロキシチオ、アルコキシチオ、およびアリールオキシチオなどの硫黄原子を含む官能基;シリル、アルキルシリル、アリールシリル、アルコキシシリル、およびアリールオキシシリルなどのケイ素原子を含む官能基;を挙げることができる。さらに、R32〜R35は、互いに結合して環を形成していても構わない。
【0101】
本発明の重合体の全繰り返し構造単位中の、一般式(13)で示される繰り返し構造単位は好ましくは1〜99モル%、より好ましくは1〜80モル%、さらに好ましくは1〜70モル%であり、特に好ましくは1〜40モル%である。ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有するノルボルネン類由来の繰り返し構造単位が少なすぎると他材料との密着性が劣る場合がある。また、多すぎると吸水性が高くなりすぎる場合がある。
【0102】
本発明の付加重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量がポリスチレン換算で5,000〜1,000,000、好ましくは、10,000〜800,000、より好ましくは20,000〜500,000である。分子量が低すぎると強度が弱く、分子量が高すぎると溶液粘度が高く、取り扱いが困難となる。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例、および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例および比較例中の試験および評価は以下の方法で行った。
【0104】
(1)合成した錯体化合物は、CDClを溶媒とするH−NMRおよび13C−NMRスペクトルの測定により構造を同定した。
(2)重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
(3)重合体の共重合比は、H−NMR測定により求めた。
【0105】
また、表1に記載の実施例では、環状オレフィンとして下記のものを用いた。
モノマーA:5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
モノマーB:5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
モノマーC:5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
モノマーD:5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
モノマーE:5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0106】
[合成例1:(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)クロリド錯体の合成]
アルゴン置換したシュレンク管にアリルパラジウムクロリドダイマー4.11部、および2−トリクロロメチル−1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン15.3部を入れ、蒸留したトルエン865部を加えた。80℃で2時間攪拌後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液から溶媒を減圧留去した。残渣をジエチルエーテル353部で2回洗い、減圧乾燥して錯体aを8.21部得た。
【0107】
得られた錯体aのH−NMRおよび13C−NMRのスペクトル測定により、この化合物が(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)クロリドであることを確認した。また、NMRスペクトルにおいて不純物由来のピークは見られず、得られた錯体aの純度がほぼ100%であることが確認できた。スペクトルデータを以下に示す。
【0108】
H−NMR(δppm):1.76(d、1H)、2.28(s、6H)、2.42(s、12H)、2.74(d、1H)、3.26(d、1H)、3.81(dd、1H)、3.98(m、4H)、4.78(tt、1H)、6.92(s、4H)
13C−NMR(δppm): 18.5,18.6、21.2、49.4、51.2、73.0、114.5、129.1、129.2、136.2、137.9、210.8
【0109】
[合成例2:(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド錯体の合成]
(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド(錯体b)はOrganometallics,2002年,21,5470−5472ページに記載の方法に従い、以下の手順で合成した。アルゴン置換したシュレンク管にアリルパラジウムクロリドダイマー45.0部、および1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン78.0部を入れ、蒸留したテトラヒドロフラン(THF)2670部を加えた。室温で2時間攪拌後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液から溶媒を減圧留去した。残渣をn−ヘキサン659部で2回洗い、減圧乾燥して錯体bを90部得た。
【0110】
[合成例3:(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)クロリド錯体の合成]
アルゴン置換したシュレンク管にアリルパラジウムクロリドダイマー8.42部、および1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン24.3部を入れ、蒸留したTHF889部を加えた。室温で2時間攪拌後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液から溶媒を減圧留去した。残渣をジエチルエーテル706部で2回洗い、減圧乾燥して錯体cを19.7部得た。
【0111】
得られた錯体cのH−NMRおよび13C−NMRのスペクトル測定により、この化合物が(アリル)パラジウム(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)クロリドであることを確認した。また、NMRスペクトルにおいて不純物由来のピークは見られず、得られた錯体cの純度がほぼ100%であることが確認できた。スペクトルデータを以下に示す。
【0112】
H−NMR(δppm):1.86(d、1H)、2.19(s、6H)、2.21(s、6H)、2.33(s、6H)、2.81(d、1H)、3.29(d、1H)、3.89(dd、1H)、4.85(tt、1H)、6.98(s、4H)
13C−NMR(δppm):18.3、18.3、21.3、50.8、72.6、114.6、129.1、129.2、132.8、135.9、136.0、139.8、185.5
【0113】
[合成例4:(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド錯体の合成]
アルゴン置換したシュレンク管にアリルパラジウムクロリドダイマー37.3部、および1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾリン−2−イリデン37.5部を入れ、蒸留したTHF1780部を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去後、残渣を塩化メチレン1990部に溶解した。溶液をセライトろ過し、ろ液から塩化メチレンを減圧留去後、残渣をジエチルエーテル706部で2回洗い、減圧乾燥して錯体dを40部得た。
【0114】
得られた錯体dのH−NMRおよび13C−NMRのスペクトル測定により、この化合物が(アリル)パラジウム(1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリドであることを確認した。また、NMRスペクトルにおいて不純物由来のピークは見られず、得られた錯体dの純度がほぼ100%であることが確認できた。スペクトルデータを以下に示す。
【0115】
H−NMR(δppm):1.50(s、6H)、1.59(s、6H)、2.18(s、6H)、2.33(d、1H)、3.28(d、1H)、3.34(d、1H)、4.20(d、1H)、4.93(m、1H)、5.30(m、2H)
13C−NMR(δppm):10.1、22.3、22.7、47.5、52.8、53.7、71.6、113.6、124.9、125.4、175.3
【0116】
[合成例5:(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミド錯体の合成]
アルゴン置換したシュレンク管にアリルニッケルブロミドダイマー12.9部、および1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン25.0部を入れ、蒸留したトルエン1300部を加えた。室温で2時間攪拌後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液から溶媒を減圧留去した。残渣をn−ヘキサン659部で2回洗い、減圧乾燥することで黄色の固体として錯体eを25.6部得た。
【0117】
得られた錯体eのH−NMRおよび13C−NMRのスペクトル測定により、この化合物が(アリル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)ブロミドであることを確認した。また、NMRスペクトルにおいて不純物由来のピークは見られず、得られた錯体eの純度がほぼ100%であることが確認できた。スペクトルデータを以下に示す。
【0118】
H−NMR(δppm):1.14(d、1H)、2.16(s、6H)、2.25(d、1H)、2.32(s、6H),2.36(s、6H)、2.59(d、1H)、3.26(d、1H)、4.77(tt、1H)、6.98(s、2H)、7.01(s、2H)、7.04(s、2H)
13C−NMR(δppm):18.7、18.8、21.2、46.8、68.9、107.1、123.3、129.0、129.2、135.4、135.8、138.7、183.9
【0119】
[合成例6:(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド錯体の合成]
(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)クロリド(錯体f)はJournal of Organometallic Chemistry,2000年,596,3−5ページに記載の方法に従い、以下の手順で合成した。アルゴン置換したシュレンク管にニッケロセン54.2部、および1,3−ジメシチルイミダゾリウムクロリド108部を入れ、蒸留したTHF2220部を加えた。加熱還流で2時間攪拌後、溶媒を減圧留去した。残渣を80℃のトルエン2340部に溶解し、セライトろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をn−ヘキサン989部で2回洗い、減圧乾燥して錯体fを106部得た。
【0120】
[合成例7:(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル錯体の合成]
(シクロペンタジエニル)ニッケル(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)メチル(錯体g)はJournal of Organometallic Chemistry,2000年,596,3−5ページに記載の方法に従い、以下の手順で合成した。アルゴン置換したシュレンク管に合成例6で得た錯体f80.0部を入れ、蒸留したTHF3560部を加えた。この溶液を−78℃に冷却し、メチルリチウム4.17部をジエチルエーテル137部に溶解した溶液をゆっくり添加した。反応温度をゆっくり室温に上げ、2時間攪拌し、溶媒を減圧留去した。残渣をトルエン1730部に溶解し、ガラスフィルターでろ過後、溶媒を減圧留去した。−78℃で、残渣をn−ヘキサン530部で2回洗い、減圧乾燥して錯体gを30.6部得た。
【0121】
[実施例1] 窒素置換したガラス反応器に、合成例1で得た錯体a0.91部およびナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート1.66部を入れ、続けて塩化メチレン398部を加えて室温で混合し、触媒液を調製した。
次いで窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン330部および重合溶媒として塩化メチレン4640部を仕込み、上記の触媒液を添加して重合を開始した。室温で1時間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して重合体287部を得た。得られた重合体は各種有機溶剤に不溶であった。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
[実施例2〜6] 重合条件を表1に示す条件とした他は、実施例1と同様にして重合体を得た。結果を表1に示す。
【0124】
[実施例7] 窒素置換したガラス反応器に、合成例5で得た錯体e0.50部およびナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート1.1部を入れ、続けて塩化メチレン265部を加えて室温で混合し、触媒液を調製した。
次いで窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン60部および重合溶媒としてトルエン1120部を仕込み、上記の触媒液を添加して重合を開始した。室温で1時間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して重合体59.3部を得た。得られた重合体は各種有機溶剤に不溶であった。
【0125】
[実施例8] 窒素置換したガラス反応器に、合成例2で得た錯体b0.41部およびナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート0.83部を加え、続けて塩化メチレン265部を加えて室温で混合し、触媒液を調製した。
次いで窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン120部、メタノール39.5部、および重合溶媒として塩化メチレン1060部を仕込み、上記の触媒液を添加して重合を開始した。室温で20時間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して重合体110部を得た。得られた重合体のMwは259,000、Mnは179,000であった。
【0126】
[実施例9] 重合開始時にさらに1−ヘキセン155部を仕込んで重合を行った他は、実施例1と同様にして重合体261部を得た。得られた重合体のMwは223,000、Mnは117,000であった。
【0127】
[実施例10] 重合条件を表1に示す条件とした他は、実施例1と同様にして重合体を得た。結果を表1に示す。重合体中の5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来の繰り返し構造単位の割合(ヒドロキシル基含有モノマー単位含有率)は、26モル%であった。
【0128】
[実施例11,12] 重合条件を表1に示す条件とした他は、実施例1と同様にして重合体を得た。結果を表1に示す。
【0129】
[実施例13] 重合条件を表1に示す条件とした他は、実施例1と同様にして重合体を得た。結果を表1に示す。重合体中の5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来の繰り返し構造単位の割合(ヒドロキシル基含有モノマー単位含有率)は、23モル%であった。
【0130】
[実施例14] 重合条件を表1に示す条件とした他は、実施例1と同様にして重合体を得た。結果を表1に示す。重合体中の5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来の繰り返し構造単位の割合(ヒドロキシル基含有モノマー単位含有率)は、28モル%であった。
【0131】
[実施例15] 窒素置換したガラス反応器に、合成例2で得た錯体b1.00部およびリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート1.55部を入れ、続けてトルエン433部を加えて室温で混合し、触媒液を調製した。
次いで窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン251部、5−アセチルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン174部、および重合溶媒としてトルエン3030部を仕込み、上記の触媒液を添加して重合を開始した。50℃で2時間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して重合体233部を得た。得られた重合体のMwは343,000、Mnは293,000で、重合体中のビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン/5−アセチルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン組成比は、95/5(モル/モル)であった。
【0132】
[実施例16] 窒素置換したガラス反応器に、合成例6で得た錯体f0.60部およびリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.90部を入れ、続けて室温でトルエン433部を加えて室温で混合し、触媒液を調製した。
次いで窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン238部、および重合溶媒としてトルエン1300部を仕込み50℃に加熱し、上記の触媒液を添加して重合を開始した。30分間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して重合体230部を得た。得られた重合体は各種有機溶剤に不溶であった。
【0133】
[実施例17] 窒素置換したガラス反応器に、合成例7で得た錯体g0.84部およびトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン15部を入れ、続けてトルエン433部を室温で加えて混合し、触媒液を調製した。
次いで窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン251部、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル174部、および重合溶媒としてトルエン1300部を仕込み60℃に加熱し、上記の触媒液を添加して重合を開始した。4時間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して重合体84部を得た。得られた重合体のMwは592,000、Mnは282,000で、重合体中のビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン/5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル組成比は、79/21(モル/モル)であった。
【0134】
[比較例1] 窒素置換したガラス反応器に、ニッケルアセチルアセトナート0.48部およびアルミニウム分が9.1%であるメチルアルミノキサンのトルエン溶液55.3部を入れ、続けてトルエン398部を加えて室温で混合し、触媒液を調製した。
こうして得られた触媒液を用い、重合溶媒として塩化メチレン4640部に代えてトルエン4050部を用いた他は実施例12と同様にして重合を行ったが、重合体は得られなかった。
【0135】
以上の実施例より、本発明の触媒を用いると、環状オレフィンを高活性で重合できることが分かる。また、本発明の触媒を用いることで、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する環状オレフィン由来の繰り返し構造単位を含有する付加重合体を得ることができる(実施例10〜15。これに対し、5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの単独重合が可能な触媒であるニッケルアセチルアセトナートを用いても、ヒドロキシル基を含有する環状オレフィン由来の繰り返し構造単位を含有する付加重合体を得ることはできなかった(比較例1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルベン化合物を配位子として有する、周期表第10族遷移金属の錯体、を含有する環状オレフィンの付加重合用触媒。
【請求項2】
前記錯体が、一般式(1)
【化1】

(式中、Mは第10族遷移金属原子であり、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;または、ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。ここで、RとRは互いに結合して環を形成していても良い。Lはカルベン化合物配位子、Lは中性の電子供与性配位子を示す。LとLは互いに結合して多座配位子を形成していてもよい。〔Yは一価のアニオンを表す。ここで、xは1または2であり、yは0、1または2である。)で表されるカチオン錯体である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
カルベン化合物が配位した周期表第10族遷移金属のπ−アリル中性錯体と、その対アニオンの塩または有機ホウ素化合物とを、混合してなる請求項1記載の触媒。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のいずれかの触媒の存在下に、環状オレフィンを付加重合する環状オレフィン付加重合体の製造方法。
【請求項5】
前記環状オレフィンが、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を含有する環状オレフィンを含む請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
環状オレフィン由来の繰り返し構造単位を50モル%以上含有し、ヒドロキシル基および/またはアセチルオキシ基を有する環状オレフィン由来の繰り返し構造単位の含有量が1モル%以上であり、重量平均分子量が5,000〜1,000,000である環状オレフィン付加重合体。

【公開番号】特開2006−16606(P2006−16606A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158319(P2005−158319)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】