説明

環状オレフィン系樹脂フィルム

【課題】吸湿性や透湿性に優れ、温湿度変化による光学特性の変化が小さい、ReとRthを高度にコントロールした環状オレフィン系樹脂フィルムを提供すること。さらにはこのように優れた環状オレフィン系樹脂フィルムを用いた、優れた偏光板および液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】Rth(λ)を低減させる有機化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルム(上記Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(nm)を表す。)、該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂フィルム、および環状オレフィン系樹脂フィルムの添加剤、並びに該環状オレフィン系樹脂フィルムを含む偏光板または液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は通常、ヨウ素、もしくは二色性染料をポリビニルアルコールに配向吸着させた偏光子の両側に、保護フィルムとして、セルローストリアセテートを主成分とするフィルム貼り合わせて製造されている。セルローストリアセテートは、強靭性、難燃性、光学的等方性が高い(レターデーションが低い)などの特徴があり、上述の偏光板用保護フィルムとして広く使用されている。
液晶表示装置は、偏光板と液晶セルから構成されている。現在、液晶表示装置の主流であるTNモードのTFT液晶表示装置においては、特許文献1に記載のように、光学補償シートを偏光板と液晶セルの間に挿入することにより、表示品位の高い液晶表示装置が実現されている。
しかし、セルローストリアセテートは水分の吸収や透過が多く、そのため光学補償性能が変化したり、偏光子が劣化したりしやすいという問題点があった。またTN液晶表示装置では電源オン後経時に、セルローストリアセテートフィルムに応力や熱が生じてパネル周辺にしわ寄せがゆき、画面4辺に光漏れを生じたり、またVAモード液晶表示装置では電源オン後経時に、積層するフィルムの弾性力の違いなどからそりが発生して4隅に光漏れを生じたりする問題があった。
【0003】
一方、環状オレフィン系フィルムはセルローストリアセテートフィルムの吸湿性や透湿性を改良でき、環境温湿度変化に対する光学特性変化が小さいフィルムとして注目され、熱溶融製膜および溶液製膜による偏光板用および液晶表示装置用フィルムとしての開発が行われている。特許文献2には環状オレフィン系開環重合体よりなる光学フィルムが、特許文献3には環状オレフィン系付加重合体よりなる光学フィルムが開示されている。さらに特許文献4〜6には、光学特性の温湿度依存性が小さい位相差フィルムの開発が開示されている。
【特許文献1】特開平8−50206号公報
【特許文献2】特開2005−43740号公報
【特許文献3】特開2002−114827号公報
【特許文献4】特開2003−212927号公報
【特許文献5】特開2004−126026号公報
【特許文献6】国際公開第2004/049011号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶表示装置等に用いる、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、またはプラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルムとしては、意図するフィルムの面内レターデーション(Re)や厚さ方向レターデーション(Rth)の光学特性をそれぞれ高度にコントロールすることで、色味やコントラストなどの特性を改善したフィルムが強く要望されている。
【0005】
環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸することにより、延伸方向の主屈折率が大きくなることを利用してレターデーションをコントロールすることは知られているものの、延伸によるレターデーションのコントロールはReとRthをそれぞれ独立にコントロールできる方法ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、吸湿性や透湿性に優れ、温湿度変化による光学特性の変化が小さい、ReとRthを自由にコントロールした環状オレフィン系樹脂フィルムを提供することである。さらにはこのように優れた環状オレフィン系樹脂フィルムを用いた、優れた偏光板および液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、環状オレフィン系樹脂と一般式(1)〜(15)で表される化合物を少なくとも1つ含有させることにより、環状オレフィン系樹脂フィルムの位相差をコントロールできることを見出した。これにより従来の延伸によるレターデーションのコントロールと組み合わせることで、所望のReとRthをそれぞれ自由にコントロールした環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。更に上記化合物の添加量をコントロールすることで、所望のReとRthの環状オレフィン系樹脂フィルムを製作する際の延伸倍率と延伸処方の選択に高い自由度が付与できる。即ち、面内方向に高度に均一な環状オレフィン系樹脂フィルムが得られる延伸と光学特性のコントロールの両立が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。更に驚くべきことに、これらの化合物が環状オレフィン系樹脂フィルムの弾性率を上昇させることによりフィルム搬送時におけるいわゆるツレ/シワの発生を低減する効果があることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の構成からなる、新規な環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法等であり、これにより上記の目標が達成される。
【0009】
1.Rth(λ)を低減させる有機化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルム。(上記Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(nm)を表す。)
2.Rth(λ)およびRe(λ)を低減させる有機化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルム。(上記Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(nm)を表し、Re(λ)は波長λnmにおける正面方向のレターデーション値(nm)を表す。)
3.Rth(λ)単独、又はRth(λ)及びRe(λ)の双方を低減させる有機化合物として下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする上記1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ独立に5ないし6員環を表す。XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、またはP=Oを表す。)
4.上記一般式(1)が下記一般式(2)で表されることを特徴とする上記3に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、X2はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、又はNを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R11、R12、R13、R14およびR15よりなる群より選ばれた1つの基と、R21、R22、R23、R24およびR25よりなる群から選ばれた1つの基とが、単結合または2価の連結基で結合していても良い。)
5.下記一般式(3)で表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜20質量%含むことを特徴とする上記1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に炭素数が1〜20の脂肪族基、5ないし6員環を表し、炭化水素環でもへテロ環でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。)
6.下記一般式(4)で表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜20質量%含むことを特徴とする上記1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R21、R22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Xは下記の連結基群1から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。連結基群1は単結合、−O−、−CO−、−NR24−、アルキレン基またはアリーレン基を表す。R24は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)
7.下記一般式(5)〜一般式(15)のいずれかで表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜20質量%含むことを特徴とする上記1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【0018】
【化5】

【0019】
(一般式(5)および(6)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子または−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Y21およびY22はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す。)
【0020】
【化6】

【0021】
(一般式(7)〜(15)において、Y31〜Y70はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、炭素数が1ないし20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1ないし20のアミド基、炭素数が1ないし20のカルバモイル基またはヒドロキシ基を表し、V31〜V43はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし20の脂肪族基を表す。L31〜L80はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31〜L80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。)
8.前記環状オレフィン系樹脂が、下記[A−1]、[A−2]および[A−3]からなる群より選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン系樹脂を含有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
[A−1]少なくとも1種以上の下記一般式(16)で表される繰り返し単位、および少なくとも1種以上の下記一般式(17)で表される繰り返し単位を含む付加共重合体、
[A−2]下記一般式(17)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体、および、
[A−3]下記一般式(18)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む開環(共)重合体。
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X11およびY11はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR51、−(CH2nOCOR52、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2nCN、−(CH2nCONR5354、−(CH2nNR5354、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX11とY11から構成された(−CO)2Oあるいは(−CO)2NR55を表す。なお、R51、R52、R53、R54、およびR55は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR56p3-pを表し、(R56は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR56または−OR56を表し、pは0〜3の整数を表す)、nは0〜10の整数を表す。)
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、mは0〜4の整数を表す。R43およびR44はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X12およびY12はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR51、−(CH2)nOCOR52、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2nCN、−(CH2nCONR5354、−(CH2nNR5354、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX12とY12から構成された(−CO)2Oあるいは(−CO)2NR55を表す。なお、R51、R52、R53、R54、およびR55は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR56p3-pを表し、(R56は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR56または−OR56を表し、pは0〜3の整数を表す)、nは0〜10の整数を表す。)
【0026】
【化9】

【0027】
(式中、mは0〜4の整数を表す。R45およびR46はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X13およびY13はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR51、−(CH2nOCOR52、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2nCONR5354、−(CH2nNR5354、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX13とY13から構成された(−CO)2Oあるいは(−CO)2NR55を表す。なお、R51、R52、R53、R54、およびR55は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR56p3-pを表し、(R56は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR56または−OR56を表し、pは0〜3の整数を表す)、nは0〜10の整数を表す。)
9.前記環状オレフィン系樹脂フィルム面内の遅相軸の平均的な方向が、フィルム幅手方向に対して±2.0°以内であり、その標準偏差が0.8以内であることを特徴とする上記1から8のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
10.偏光子と、その両側に配置された2枚の保護膜からなる偏光板において、前記保護膜のうち少なくとも1枚が、上記1〜9のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする偏光板。
11.上記1〜9のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、上記10に記載の偏光板の少なくともいずれか一方を有することを特徴とする液晶表示装置。
12.液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板が上記10に記載の偏光板であることを特徴とするIPS、OCB、TN、またはVAモード液晶表示装置。
13.上記10に記載の偏光板をバックライト側に用いたことを特徴とするVAモード液晶表示装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、ReとRthをそれぞれ精密にコントロールでき、フィルム面内方向に高度に均一な光学特性を持ち、吸湿性や透湿性に優れ、温湿度変化による光学特性の変化が小さく、長尺ロール製造時のツレ/シワ耐性に優れ、意図せぬ光学ムラの発生を低減した環状オレフィン系樹脂フィルムを提供することができる。特にフィルムの延伸にともなって発生する、フィルム面内での光学ムラを著しく改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
(光学特性を調整する化合物)
まず本発明の目的とする効果を発揮する本発明に特徴的な光学特性を調整する化合物について説明する。本発明においては、ReとRthに係る光学特性のそれぞれ又は一方を調整する化合物であれば用いることができるが、特に一般式(1)で表される化合物を用いることが発明の効果を顕著に発揮させて好ましいので、はじめに一般式(1)で表される化合物を詳細に説明する。
【0031】
【化10】

【0032】
(式中、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ独立に5ないし6員環を表し、炭化水素環でもへテロ環でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、またはP=Oを表す。)
【0033】
炭化水素環として、好ましくは置換または無置換のシクロヘキサン環、置換または無置換のシクロペンタン環、芳香族炭化水素環であり、より好ましくは芳香族炭化水素環である。
【0034】
へテロ環として、好ましくは、5ないし6員環の、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む環である。へテロ環として、より好ましくは、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。
【0035】
1、Q2およびQ3は好ましくは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環である。
【0036】
芳香族炭化水素環として好ましくは好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0037】
芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環及びキノリン環である。
【0038】
1、Q2およびQ3はより好ましくは芳香族炭化水素環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0039】
またQ1、Q2およびQ3は置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが挙げられる。
【0040】
XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、またはP=Oを表し、Xは好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、またはNであり、更に好ましくはC−RまたはNであり、特に好ましくはC−Rである。
【0041】
一般式(1)は好ましくは下記一般式(2)で表される化合物である。
【0042】
【化11】

【0043】
(式中、X2はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)又はN、P、またはP=Oを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。 R11、R12、R13、R14、およびR15よりなる群より選ばれた1つの基と、R21、R22、R23、R24、およびR25よりなる群から選ばれた1つの基とは、単結合または2価の連結基(炭素数1〜10のアルキレン基など)を介して結合し環状構造を形成しても良い。)
【0044】
2として好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、N、またはP=Oであり、更に好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
【0045】
11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立に、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基またはアルコキシ基である。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。その場合の置換基としては、次に述べる置換基Tが挙げられる。
【0046】
以下に前述の置換基Tについて説明する。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの各基が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどの各基が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどの各基が挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどの各基が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどの各基が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどの各基が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、
【0047】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどの各基が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどの各基が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどの各基が挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0048】
一般式(2)で表される化合物中の、R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35よりなる群より選ばれた1つの基、および別の一般式(2)で表される化合物中の、R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35よりなる群より選ばれた1つの基とが、単結合または2価の基(炭素数1〜10のアルキレン基など)により結合されてなる1分子中にX2を2個有する化合物もまた本発明で使用できる。
【0049】
また、一般式(2)において、R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35の置換基として、下記の一般式(19)で示される構造も採りうる。
【0050】
【化12】

【0051】
(式中、X2はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)またはNを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24およびR25が置換基を表す場合、それらの置換基は一般式(2)のR11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24およびR25が表す置換基と同義である。
【0052】
本発明一般式(1)または(2)で表される化合物は単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の割合で併用してもよい。単独で用いる場合も2種類以上の化合物を併用する場合のいずれにおいても、本発明一般式(1)または(2)で表される化合物の総添加量は環状オレフィン系樹脂に対して0.01〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜25質量%、更に好ましくは0.5〜22質量%、特に好ましくは1.0〜20質量%である。
【0053】
以下に一般式(1)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
次に本発明一般式(3)で表される化合物について詳細に説明する。
【0060】
【化18】

【0061】
一般式(3)において、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に、炭素数が1〜20の脂肪族基、5ないし6員環を表し、炭化水素環でもへテロ環でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0062】
11、R12およびR13について詳しく説明する。R11、R12およびR13が脂肪族基である場合、好ましくは炭素数が1〜20、さらに好ましくは炭素数が1〜16、特に好ましくは、炭素数が1〜12である脂肪族基である。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。例として、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどが挙げられる。
11、R12およびR13で表される脂肪族基は置換されていてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
これらの基はさらに組み合わされて複合置換基を形成してもよく、このような置換基の例としては、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、エトキシカルボニルエチル基などを挙げることができる。また、R11、R12およびR13は置換基としてリン酸エステル基を含有することもでき、一般式(3)の化合物は同一分子中に複数のリン酸エステル基を有することも可能である。
【0063】
11、R12およびR13が5ないし6員環である場合、好ましくは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環である。
芳香族炭化水素環として好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環及びキノリン環である。
11、R12およびR13はより好ましくは芳香族炭化水素環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0064】
以下に一般式(3)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0065】
【化19】

【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
【化22】

【0069】
次いで、本発明一般式(4)で表される化合物について詳細に説明する。
【0070】
【化23】

【0071】
上記一般式(4)において、R21、R22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、イソアミル)であることが好ましく、R21、R22およびR23の少なくとも1つ以上が炭素原子数1〜3のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが特に好ましい。Xは、単結合、−O−、−CO−、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜3のもの、例えばメチレン、エチレン、プロピレン)またはアリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜12のもの。例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが好ましく、−O−、アルキレン基またはアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが特に好ましい。Yは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数2〜25、より好ましくは2〜20のもの。例えば、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、ジシクロヘキシル、アダマンチル)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜18のもの。例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル)またはアラルキル基(好ましくは炭素原子数7〜30、より好ましくは7〜20のもの。例えば、ベンジル、クレジル、t-ブチルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル)であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であることが特に好ましい。−X−Yの組み合わせとしては、−X−Yの総炭素数が0〜40であることが好ましく、1〜30であることがさらに好ましく、1〜25であることが最も好ましい。
【0072】
以下に一般式(4)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0073】
【化24】

【0074】
【化25】

【0075】
本発明一般式(3)または(4)で表される化合物は単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の割合で併用してもよい。単独で用いる場合も2種類以上の化合物を併用する場合のいずれにおいても、本発明一般式(3)または(4)で表される化合物の総添加量は環状オレフィン系樹脂に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜18質量%、更に好ましくは1.0〜15質量%である。
【0076】
次いで、本発明一般式(5)および(6)で表される化合物について詳細に説明する。
【0077】
【化26】

【0078】
一般式(5)および(6)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良く、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。Zを含んで構成される5または6員環の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、テトラヒドロ−2−フラノン、テトラヒドロ−2−ピロン、4−ブタンラクタム、6−ヘキサノラクタムなどを挙げることができる。
また、Zを含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、Zの隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
【0079】
25は水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であるアルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)を表す。R25で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどを挙げることができる。R25で表されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては前記のR11〜R13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0080】
21およびY22はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが例示できる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが例示できる。
【0081】
アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが例示できる。
【0082】
カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが例示できる。Y21およびY22は互いに連結して環を形成してもよい。Y21およびY22はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11〜R13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0083】
次いで、本発明一般式(7)〜(15)で表される化合物について詳細に説明する。
一般式(7)〜(15)において、Y31〜Y70はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルバモイル基またはヒドロキシ基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニルなど、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0084】
アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが挙げられる。カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが挙げられる。
31〜Y70はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11〜R13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0085】
31〜V43はそれぞれ独立に水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基を表す。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。V31〜V43はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11〜R13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0086】
31〜L80はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31〜L80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。L31〜L77の好ましい例としては、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、メチルエチレン、エチルエチレンなど)、環式の2価の基(例えば、cis−1,4−シクロヘキシレン、trans−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロペンチリデンなど)、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、スルホン、スルホキシド、スルフィド、スルホンアミド、ウレイレン、チオウレイレンなどを挙げることができる。これらの2価の基は互いに結合して二価の複合基を形成してもよく、複合置換基の例としては、−(CH2)2O(CH2)2−、−(CH2)2O(CH2)2O(CH2)−、−(CH2)2S(CH2)2−、−(CH2)2O2C(CH2)2−などを挙げることができる。L31〜L80は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前記のR11〜R13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0087】
一般式(7)〜(15)においてY31〜Y70、V31〜V43およびL31〜L80の組み合わせにより形成される化合物の好ましい例としては、クエン酸エステル(例えば、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、O−アセチルクエン酸トリ(エチルオキシカルボニルメチレン)エステルなど)、オレイン酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸フェニル、オレイン酸シクロヘキシル、オレイン酸オクチルなど)、リシノール酸エステル(例えばリシノール酸メチルアセチルなど)、セバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジブチルなど)、グリセリンのカルボン酸エステル(例えば、トリアセチン、トリブチリンなど)、グリコール酸エステル(例えば、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなど)、ペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラブチレートなど)、ジペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサブチレート、ジペンタエリスリトールテトラアセテートなど)、トリメチロールプロパンのカルボン酸エステル類(トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパンジアセテートモノプロピオネート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、トリメチロールプロパントリブチレート、トリメチロールプロパントリピバロエート、トリメチロールプロパントリ(t−ブチルアセテート)、トリメチロールプロパンジ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンテトラ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンジアセテートモノオクタネート、トリメチロールプロパントリオクタネート、トリメチロールプロパントリ(シクロヘキサンカルボキシレート)など)、特開平11−246704公報に記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報に記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報に記載のクエン酸エステル類、ピロリドンカルボン酸エステル類(2−ピロリドン−5−カルボン酸メチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸エチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸ブチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸2−エチルヘキシル)、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルなど)、キシリトールカルボン酸エステル(キシリトールペンタアセテート、キシリトールテトラアセテート、キシリトールペンタプロピオネートなど)などが挙げられる。
【0088】
以下に一般式(5)〜(15)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0089】
【化27】

【0090】
【化28】

【0091】
【化29】

【0092】
【化30】

【0093】
【化31】

【0094】
本発明一般式(5)〜(15)で表される化合物は単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の割合で併用してもよい。単独で用いる場合も2種類以上の化合物を併用する場合のいずれにおいても、本発明一般式(5)〜(15)で表される化合物の総添加量は環状オレフィン系樹脂に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜18質量%、更に好ましくは1.0〜15質量%である。
【0095】
(環状オレフィン系樹脂)
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムに使用する環状オレフィン系樹脂とは、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂のことを表す。環状オレフィン構造を有する重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は下記一般式(4)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状オレフィン系樹脂および必要に応じ、一般式(3)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状オレフィン樹脂である。また、一般式(5)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も好適に使用することができる。
【0096】
【化32】

【0097】
【化33】

【0098】
【化34】

【0099】
一般式(3)、(4)および(5)において、mは0〜4の整数を表す。R41〜R46は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X11〜X13及びY11〜Y13は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR51、−(CH2nOCOR52、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2nCN、−(CH2nCONR5354、−(CH2nNR5354、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX11とY11、X12とY12、あるいはX13とY13から構成された(−CO)2Oあるいは(−CO)2NR55を表す。なお、R51、R52、R53、R54、及びR55は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR56p3-pを表し、(R56は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR56または−OR56を表し、pは0〜3の整数を表す)、nは0〜10の整数を表す。
【0100】
11〜X13及びY11〜Y13の全部または一部の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくし、面内レターデーション(Re)の発現性を大きくすることが出来る。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
【0101】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号公報、特表2002−504184号公報、米国特許出願公開第2004/229157号明細書あるいは国際公開第2004/070463号パンフレット等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg135℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007(Tg80℃)、同6013(Tg140℃)、同6015(Tg160℃)などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000(Tg330℃)が発売されている。
【0102】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等の各公報に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R45〜R46は水素原子又は−CH3が好ましく、X13、及びY13は水素原子、Cl、−COOCH3、−CH2OCOCH3が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)750R、1020R、1600、ゼオネックス(Zeonex)250あるいは280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0103】
(添加剤)
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物およびフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は環状オレフィン系樹脂溶液(ドープ)作製工程において何れの段階で添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、環状オレフィン系樹脂フィルムが多層構成で形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
【0104】
(劣化防止剤)
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物およびフィルムには、公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、フェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、リン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加することが好ましい。
【0105】
(紫外線吸収剤)
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物およびフィルムには、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂に対して質量割合で1ppm〜100000ppmが好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0106】
(マット剤微粒子)
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムには、傷が付いたり搬送性が悪化したりすることを防止するために有機及び/又は無機物質のマット剤微粒子を含有させ、いわゆるマット化することが好ましい。
【0107】
環状オレフィン系樹脂フィルムが粗い表面になりすぎず、ヘイズを低く抑え、透明性を保つためには、マット剤の平均粒径や含有量は以下のような範囲が好適となる。
【0108】
本発明中に記載されるマット剤の平均粒径とは、フィルム中またはフィルム面上に存在するマット剤の平均サイズのことであり、マット剤が凝集体であるか非凝集体であるかを問わず、この粒径はフィルム表面および切片のSEM撮影およびTEM撮影によって得た粒子100個の粒径の平均から求めることができる。
【0109】
本発明に使用するマット剤は、好ましくは平均粒径0.1μm〜3.0μmの無機化合物微粒子またはポリマー微粒子であり、より好ましくは0.15μm〜2.0μm、さらに好ましくは0.2μm〜1.0μmである。
【0110】
本発明に記載のマット剤平均粒径は、凝集性の微粒子であれば、凝集体の平均大きさ(平均二次粒径)を意味し、溶液流延製膜法で製造するのであれば後述する分散処方によって、分散液中の粒子サイズとしてコントロールすることができる。非凝集性の微粒子であれば、一粒子のサイズを測定した平均値を意味する。
【0111】
本発明に使用するマット剤は、凝集性の微粒子であれば、平均一次粒径0.05μm〜0.5μmの微粒子が好ましく、より好ましくは0.08μm〜0.3μm、さらに好ましくは0.1μm〜0.25μmである。
【0112】
ポリマー微粒子はポリマー種を選択することにより、所望の屈折率を得ることが可能であり好ましい。更にポリマー微粒子は環状オレフィン樹脂との相溶性が高く、ポリマー微粒子を用いてフィルムを製膜したときのヘイズ・屈折・散乱を低く抑えることができるため、ポリマー微粒子をマット剤として使用する際は、無機微粒子をマット剤として使用するよりも、サイズの大きいグレードを選択し、マット化効果を高めることが可能である。
【0113】
また、含有量は例えば、球形、不定形、無機微粒子、ポリマーのマット剤を問わず、0.03〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.6質量%であり、更に好ましくは0.08〜0.4質量%である。
【0114】
本発明におけるマット剤を含有した環状オレフィン系樹脂フィルムの好ましいヘイズの範囲は4.0%以下であり、2.0%以下が更に好ましく、1.0%以下が特に好ましい。ヘイズ値は、試料40mm×80nmを25℃、60%RHでヘイズメーター例えばHGM−2DP、スガ試験機を用いてJIS K−6714にしたがって測定できる。
【0115】
本発明におけるマット剤を含有した環状オレフィン系樹脂フィルムの好ましい静摩擦係数は0.8以下であり、0.5以下が特に好ましい。
【0116】
環状オレフィン系樹脂フィルムの静摩擦係数の値は、7.5×10cm(小試料)、10×20cm(大試料)の2種類のサイズのサンプルを準備した後、テンシロン(引っ張り試験機)に設置された台に大試料をセットし、その上に小試料を載せて、さらに小試料に200gの荷重をかけ、小試料をテンシロンで引っ張り、小試料が滑り出した荷重(f)を測定し、μ=f/200の式から計算で求めることができる。
【0117】
使用されるマット剤の組成においては特に制限はなく、これらのマット剤は2種以上まぜて用いることもできる。本発明のマット剤の無機化合物には、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、などの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動濾過、風力分級など)することによっても得られる。本発明のマット剤の無機化合物には、メチル基や水酸基で表面を修飾した無機化合物も含まれる。
【0118】
又、高分子化合物(ポリマー微粒子)ではポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等があり、またそれらの粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。
【0119】
また以下に述べるような単量体化合物の1種又は2種以上の重合体である高分子化合物を種々の手段によって粒子としたものであってもよい。高分子化合物の単量体化合物について具体的に示すと、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸ジエステル、クロトン酸エステル、マレイン酸ジエステル、フタル酸ジエステル類が挙げられエステル残基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、2−クロロエチル、シアノエチル、2−アセトキシエチル、ジメチルアミノエチル、ベンジル、シクロヘキシル、フルフリル、フェニル、2−ヒドロキシエチル、2−エトキシエチル、グリシジル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数9)などが挙げられる。
【0120】
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなどが挙げられる。またオレフィン類の例としては、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等を挙げることができる。
【0121】
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられる。
【0122】
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなど;メタクリルアミド類、例えば、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、など;アリル化合物、例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、ラウリン酸アリル、安息香酸アリルなど;ビニルエーテル類、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;ビニルケトン類、例えば、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトンなど;ビニル異節環化合物、例えば、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルトリアゾール、N−ビニルピロリドンなど;不飽和ニトリル類、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;多官能性モノマー、例えば、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレートなど。
【0123】
更に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキル(例えば、イタコン酸モノエチル、など);マレイン酸モノアルキル(例えば、マレイン酸モノメチルなど;スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸など);メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸など);アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸など);メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸など);アクリロイルオキシアルキルホスフェート(例えば、アクリロイルオキシエチルホスフェートなど);が挙げられる。これらの酸はアルカリ金属(例えば、Na、Kなど)またはアンモニウムイオンの塩であってもよい。さらにその他のモノマー化合物としては、米国特許第3,459,790号、同第3,438,708号、同第3,554,987号、同第4,215,195号、同第4,247,673号、特開昭57−205735号公報明細書等に記載されている架橋性モノマーを用いることができ好ましい。このような架橋性モノマーの例としては、具体的にはN−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−(2−アセトアセトキシエトキシ)エチル)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0124】
これらの単量体化合物は単独で重合した重合体の粒子にして用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて重合した共重合体の粒子にして用いてもよい。これらのモノマー化合物のうち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、スチレン類、オレフィン類が好ましく用いられる。また、本発明には特開昭62−14647号、同62−17744号、同62−17743号に記載されているようなフッ素原子あるいはシリコン原子を有する粒子を用いてもよい。
【0125】
これらの中で好ましく用いられる粒子組成としてポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸(95/5、モル比)、ポリ(スチレン/スチレンスルホン酸(95/5、モル比)、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸(50/40/10、モル比)、シリカなどを挙げることができる。
【0126】
また、本発明のマット剤としては特開昭64−77052号、ヨーロッパ特許307855号に記載の反応性(特にゼラチン)基を有する粒子を使用することもできる。さらには、アルカリ性、又は酸性で溶解するような基を多量含有させることもできる。
【0127】
次にマット剤のフィルムへの組み込み方法としては、特に限定はないがポリマーとマット剤の入った溶液を流延し製膜する方法と、製膜したフィルムにマット剤分散液を塗布する方法が挙げられる。この中でもポリマーとマット剤の入った溶液を流延し製膜する方法が、コストの点より好ましい。ポリマーとしては、環状オレフィン系樹脂そのものを用いてもよいし、その他のポリマーを用いてもよい。
ポリマーとマット剤の入った溶液を流延し製膜する方法の場合、ポリマー溶液を調整する際にマット剤を分散しても良いし、ポリマー溶液を流延する直前にマット剤の分散液を添加してもよい。マット剤をポリマー溶液に分散するには、分散助剤として界面活性剤あるいはポリマーを少量添加してもよい。又、上記方法の他にマット剤層を製膜後塗設してもよい。この場合、マット剤層の形成にはバインダーを用いることが好ましい。本発明のマット剤を含有する層のバインダーとしては特に限定されず親油性バインダーでもよく又親水性バインダーでもよい。親油性バインダーとしては公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂およびこれらの混合物を使用することができる。上記樹脂のTgは80℃〜400℃が好ましく、120℃〜350℃がより好ましい。上記樹脂の質量平均分子量は1万〜100万が好ましく、1万〜50万がより好ましい。
【0128】
上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸および/またはアクリル酸との共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート樹脂などのセルロース誘導体、環状オレフィン系樹脂樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ブタジエンアクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0129】
マット剤を塗布によって、環状オレフィン系樹脂フィルムに組み込む場合には、従来公知の塗布方法[例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター、ブレードコーター等]が好ましく利用できる。塗布層を担持する支持体の変形、塗布液の変質等が生じない温度で行うためには、温度10℃〜100℃の範囲で塗布することが好ましく、20℃〜80℃が更に好ましい。また、塗布速度は塗布液の粘度や塗布温度により適宜調整して決定するが、10m/分〜100m/分で行われるのが好ましく、20m/分〜80m/分が更に好ましい。
【0130】
上記のマット剤を含む塗布層は、これを適当な有機溶剤に溶解した塗布液を、環状オレフィン系樹脂フィルムに塗布し、乾燥することにより形成することができる。また、マット剤は、塗布液中に分散物の形で添加することもできる。使用される溶剤としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸、蟻酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸などのメチル、エチル、プロピル、ブチルエステルなど)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンなど)が好ましい。
【0131】
上記の塗設にあたっては,皮膜形成能のあるバインダーと共に用いることもできる。このようなポリマーとしては,公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応性樹脂、およびこれらの混合物、ゼラチンなどの親水性バインダーを使用することができる。
【0132】
上記のポリマーとマット剤の入った溶液を流延して製膜する方法および製膜したフィルムにマット剤分散液を塗布する方法の両方の方法においても、製造する環状オレフィン系樹脂フィルム中及び/又はフィルム面上に有されるマット剤微粒子の平均粒径は、凝集性のマット剤であればマット剤微粒子の平均一次粒径、マット剤微粒子の添加量、分散する溶媒の種類、分散する溶媒の添加量、分散方法、分散機の種類、分散機の大きさ、分散時間、分散機が分散液に与える単位時間あたりのエネルギー、ミキシング方法、バインダーの種類、バインダーの添加量、添加の順序および分散液仕込み量などの従来から知られている分散条件を変化させることによりコントロールすることができる。
【0133】
非凝集性のマット剤を用いる場合においても、凝集性のマット剤と同じく上記の分散条件をコントロールすることで、予期せぬ凝集を防ぐことが好ましい。
【0134】
本発明に使用するマット剤は、上記の分散処方を用いて、フィルムに含有される該微粒子の平均粒径r(μm)が0.1μm〜3.0μmとなるように分散することが好ましく、より好ましくは0.15μm〜2.0μm、更に好ましくは0.2μm〜1.0μmである。
【0135】
(剥離促進剤)
環状オレフィン系樹脂フィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。
【0136】
剥離剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
【0137】
(環状オレフィン系樹脂フィルムの製膜)
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの製膜法には、例えば熱溶融製膜の方法と溶液製膜の方法があり、いずれも適応可能である。まず溶液製膜方法について記述する。
【0138】
(有機溶剤)
次に、本発明の溶液製膜の際に環状オレフィン系樹脂が溶解される有機溶剤について記述する。本発明においては、環状オレフィン系樹脂が溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、使用できる有機溶剤は特に限定されない。本発明で用いられる有機溶剤は、例えばジクロロメタン、クロロホルムの如き塩素系溶剤、炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶剤が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素類の例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12の環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン、デカリン及びその誘導体が挙げられる。炭素原子数が3〜12の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶剤の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤の好ましい沸点は35℃以上且つ200℃以下である。本発明に使用される溶剤は、乾燥性、粘度等の溶液物性調節のために2種以上の溶剤を混合して用いることができ、更に、混合溶媒で環状オレフィン系樹脂が溶解する限りは、貧溶媒を添加することも可能である。
【0139】
好ましい貧溶媒は使用するポリマー種により適宜選択することができる。良溶媒として塩素系有機溶剤を使用する場合は、アルコール類を好適に使用することができる。アルコール類としては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。また、アルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。貧溶媒の中でも特に1価のアルコール類は、剥離抵抗低減効果があり、好ましく使用することができる。選択する良溶剤によって特に好ましいアルコール類は変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数が1〜6の1価アルコールが更に好ましく、炭素数1〜4のアルコールが特に好ましく使用することができる。環状オレフィン系樹脂溶液を作製する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールあるいはブタノールから選ばれる1種以上のアルコール類を貧溶媒にする組み合わせである。
【0140】
(ドープ調製)
次に本発明に係る環状オレフィン系樹脂溶液(ドープとも呼ぶ)の調製については、室温攪拌溶解による方法、室温で攪拌してポリマーを膨潤させた後−20℃から−100℃まで冷却し再度20から100℃に加熱して溶解する冷却溶解法、密閉容器中で主溶剤の沸点以上の温度にして溶解する高温溶解方法、さらには溶剤の臨界点まで高温高圧にして溶解する方法などがある。溶解性のよいポリマーは室温溶解が好ましいが、溶解性の悪いポリマーは密閉容器中で加熱溶解することが好ましい。溶解性がさほど悪くないポリマーの場合はできるだけ低い温度を選ぶ方が、工程的には容易になる。
【0141】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂溶液の粘度は25℃で1〜500Pa・sの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5〜200Pa・sの範囲である。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。
【0142】
環状オレフィン系樹脂溶液は、使用する溶剤を適宜選択することにより、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れた環状オレフィン系樹脂溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶剤を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶剤をフラッシュ蒸発させるとともに、溶剤蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
【0143】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。環状オレフィン系樹脂溶液の濾過には好ましくは絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましく用いられる。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.6MPa以下、より好ましくは1.3MPa以下、更には1.0MPa以下、特に好ましくは0.6MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、またセラミックス、金属等も好ましく用いられる。
環状オレフィン系樹脂溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常5Pa・s〜1000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、15Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、30Pa・s〜200Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜35℃である。
【0144】
(溶液製膜)
環状オレフィン系樹脂溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供するのと同様の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が好ましく用いられる。以下に好ましい溶液流延製膜方法について述べるが、これに限定されるものではない。
溶解機(釜)から調製されたドープ(環状オレフィン系樹脂溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、テンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
まず、調製した環状オレフィン系樹脂溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法により環状オレフィン系樹脂フィルムを作製される際に、ドープは無端金属支持体上、例えば金属ドラムまたは金属支持体(バンドあるいはベルト)上に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを形成することが好ましい。流延前のドープは、環状オレフィン系樹脂量が10〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。
さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平3−193316号、特開平5−086212号、特開昭62−037113号、特開平2−276607号、特開昭55−014201号、特開平2−111511号、および特開平2−208650号の各公報に記載のセルロースアシレート製膜技術を本発明では応用できる。
【0146】
本発明における流延製膜速度は生産性と面状の良化のため、20m/分以上で製膜されることが好ましく、25m/分以上であることが更に好ましく、30m/分以上であることが特に好ましい。
【0147】
(共流延)
環状オレフィン系樹脂溶液を、例えば金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数の環状オレフィン系樹脂溶液を流延してもよい。
【0148】
複数の環状オレフィン系樹脂溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から環状オレフィン系樹脂を含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながら(逐次積層共流延)フィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。
【0149】
また、2つの流延口から環状オレフィン系樹脂溶液を流延(同時積層共流延)することによってもフィルム化することでもよい。
【0150】
また、高粘度環状オレフィン系樹脂溶液の流れを低粘度の環状オレフィン系樹脂溶液で包み込み、その高、低粘度の環状オレフィン系樹脂溶液を同時に押出す流延方法でもよい。更にまた、外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することでもよい。
【0151】
流延する環状オレフィン系樹脂溶液は同一の溶液でもよいし、異なる環状オレフィン系樹脂溶液でもよく特に限定されない。複数の環状オレフィン系樹脂層に機能を持たせるために、その機能に応じた環状オレフィン系樹脂溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらに環状オレフィン系樹脂溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、マット剤層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0152】
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の劣化防止剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なる環状オレフィン系樹脂溶液を共流延して、積層構造の環状オレフィン系樹脂フィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成の環状オレフィン系樹脂フィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。劣化防止剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。また、コア層とスキン層で劣化防止剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の劣化防止剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。また、流延時の環状オレフィン系樹脂を含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0153】
環状オレフィン系樹脂フィルムの重層流延製膜には、同時積層共流延法、逐次積層共流延法のいずれの方法を用いてもよい。しかし一般的に、フィルムの平面性維持の容易さ、工程の単純性および生産性の高さから同時積層共流延法で製蔵することが更に好ましい。
【0154】
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶剤の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が好適に用いられる。本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられる環状オレフィン系樹脂溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0155】
(乾燥)
環状オレフィン系樹脂フィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(例えばドラム或いはバンド)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはバンドの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をバンドやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはバンドを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶剤の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶剤の内の最も沸点の低い溶剤の沸点より1〜10度低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0156】
(剥離)
生乾きのフィルムを金属支持体から剥離するとき、剥離抵抗(剥離荷重)が大きいと、製膜方向にフィルムが不規則に伸ばされて光学的な異方性ムラを生じることがある。特に剥離荷重が大きいときは、製膜方向に段状に伸ばされたところと伸ばされていないところが交互に生じて、レターデーションに分布を生じる。液晶表示装置に装填すると線状あるいは帯状にムラが見えるようになる。このような問題を発生させないためには、フィルムの剥離荷重をフィルム剥離幅1cmあたり0.25N以下にすることが好ましい。剥離荷重を小さくする方法としては、前述のように剥離剤を添加する方法と、使用する溶剤組成の選択による方法がある。
【0157】
剥離時の好ましい残留揮発分濃度は5〜60質量%である。10〜50質量%が更に好ましく、20〜40質量%が特に好ましい。高揮発分で剥離すると乾燥速度が稼げて、生産性が向上して好ましい。一方、高揮発分ではフィルムの強度や弾性が小さく、剥離力に負けて切断したり伸びたりしてしまう。また剥離後の自己保持力が乏しく、変形、しわ、クニックを生じやすくなる。またレターデーションに分布を生じる原因になる。
【0158】
(延伸処理)
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸処理する場合は、剥離のすぐ後の未だフィルム中に溶剤が十分に残留している状態で行うことが好ましい。一般的な延伸の目的は、(1)しわや変形のない平面性に優れ、面内方向のレターデーションの均一なフィルムを得るため及び/又は、(2)フィルムの面内レターデーションを大きくするために行う。
【0159】
本発明の製造方法における延伸においては、延伸開始時の生乾きのフィルム中の好ましい残留揮発分濃度は15〜60質量%であり、20〜50質量%が更に好ましく、25〜40質量%が特に好ましい。延伸は0.5〜300%で行うのが好ましく、1〜200%で行うのがより好ましく、1〜100%で行うのがさらに好ましい。ただし環状オレフィン系樹脂フィルムは延伸による光学異方性の発現性が大きいことから実用上の観点からは延伸倍率は1〜30%が好ましく、3〜25%が更に好ましく、5〜20%が特に好ましい。剛直でなく、しなやかであるために、フィルム面内方向に均一な延伸を与えることができるだけでなく、膜中の環状オレフィン分子の配向緩和が進むために面内方向のレターデーションの分布にバラツキが小さくなる点で、残留溶剤量は15質量%以上であることが好ましい。一方、フィルムの強度や弾性が大きく、意図せぬ切断や伸びが生じにくく、面内方向のレターデーションの分布にバラツキを生じにくい点で、残留溶剤量は60質量%以下が好ましい。さらにはこの条件では自己保持力が十分で、変形、しわ、クニックを生じにくく、光学フィルムとして有用である利点がある。
【0160】
フィルムの延伸は、フィルム搬送方向に対して縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次二軸延伸でもよいが、光学特性発現性と均一コントロールの面で、同時あるいは逐次二軸延伸が好ましい。VA液晶セルやOCB液晶セル用位相差フィルムの複屈折は、幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向(横方向)により多く延伸することが好ましい。
【0161】
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法における延伸においては、延伸後にフィルムを緩和させ、延伸フィルムを収縮させることが好ましい。
【0162】
緩和工程では、例えば横延伸された熱可塑性樹脂フィルムを所定時間、所定温度に保持して、延伸フィルムを収縮させることが好ましい。緩和率は20%以内が好ましく、15%以内がより好ましく、10%以内が特に好ましい。緩和率が高すぎると、搬送中のフィルムが弛むことにより、走行性が悪化しハンドリングが悪くなるだけでなく、搬送テンションのバラツキにより、光学特性バラツキが大きくなる。保持温度が低すぎると延伸過程での分子配向が凍結されてレターデーション値を均一化することが困難になるため、100℃以上で保持することが好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。保持時間は、10〜300秒が好ましく、30秒〜180秒がさらに好ましい。保持時間が短すぎると応力緩和効果が小さくレターデーション値を均一化することができず、長すぎるとフィルム厚み方向のレターデーション値のバラツキが増加する。
【0163】
(後乾燥)
環状オレフィン系樹脂フィルムは延伸後更に乾燥し、残留揮発分を2%以下にして巻き取るのが好ましい。巻き取る前にフィルムの両端にナーリングを施すことが好ましい。ナーリングの幅は3mm〜50mm、より好ましくは5mm〜30mm、高さは1〜50μmであり、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
【0164】
本発明の出来上がり(乾燥後)の環状オレフィン系樹脂フィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常20から500μmの範囲であり、30〜150μmの範囲が好ましく、特に液晶表示装置用には40〜110μmであることが好ましい。
フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られた環状オレフィン系樹脂フィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mm、より好ましくは5m〜30mm、高さは0.5〜500μmであり、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。全幅のRe値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
【0165】
(環状オレフィン系樹脂フィルムの厚さ)
本発明の出来上がり(乾燥後)の環状オレフィン系樹脂フィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5μm〜500μmの範囲であり、30μm〜150μmの範囲が好ましく、特に液晶表示装置用には40μm〜110μmであることが好ましい。
フィルム厚さの調製は、所望の厚さおよび本発明に厚さ分布になるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られた環状オレフィン系樹脂フィルムの幅は0.5μm〜3mが好ましく、より好ましくは0.6μm〜2.5m、さらに好ましくは0.8μm〜2.2mである。長さは1ロールあたり100m〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500m〜7000mであり、さらに好ましくは1000m〜6000mである。全幅のRe値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
【0166】
(環状オレフィン系樹脂フィルムの光学特性)
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの好ましい光学特性は、フィルムの用途により異なる。偏光板保護フィルム用途の場合は、面内レターデーション(Re)は5nm以下が好ましく、3nm以下が更に好ましい。厚さ方向レターデーション(Rth)も50nm以下が好ましく、35nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましい。
環状オレフィン系樹脂フィルムを光学補償フィルム(位相差フィルム)として使用する場合は、位相差フィルムの種類によってReやRthの範囲は異なり、多様なニーズがあるが、Reは0nm以上100nm以下、Rthは40nm以上400nm以下であることが好ましい。TNモードならReは0nm以上20nm以下、Rthは40nm以上80nm以下、VAモードならReは20nm以上80nm以下、Rthは80nm以上400nm以下がより好ましく、特にVAモードで好ましい範囲は、Reは30nm以上75nm以下、Rthは120nm以上250nm以下であり、一枚の位相差膜で補償する場合は、Reは50nm以上75nm以下、Rthは180nm以上250nm以下、2枚の位相差膜で補償する場合は、Reは30nm以上50nm以下、Rthは80nm以上140nm以下であることがVAモードの補償膜の場合、黒表示時のカラーシフト、コントラストの視野角依存性の点でより好ましい態様である。
【0167】
(環状オレフィン系樹脂フィルムのレターデーション、Re、Rth)
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムは使用するポリマー構造、添加剤の種類及び添加量、延伸倍率、剥離時の残留揮発分などの工程条件を適宜調節することで所望の光学特性を実現することができる。例えば剥離時の残留揮発分を40〜85質量%内で調節することにより厚さ方向のレターデーションRthを180〜300nmに幅広く制御することも可能である。一般に剥離時の残留揮発分が多いほど、Rthは小さくなり、剥離時の残留揮発分が少ないほどRthは大きくなる。例えば金属支持体上での乾燥時間を短くし、剥離時残留揮発分を多くすることで、面配向を緩和させてRthを低くすることが自在にでき、工程条件を調節することにより様々な用途に応じた様々なレターデーションを発現することが可能である。
【0168】
(偏光板)
次いで、本発明の偏光板について説明する。
本発明の偏光板は、偏光子と、その両側に配置された2枚の保護膜からなる偏光板において、前記保護膜のうちの少なくとも1枚が上述の本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする。偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された2枚の透明保護膜を有する。両方または一方の保護膜として、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムを用いる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルム等を用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムを偏光板保護膜として用いる場合、フィルムは後述の如き表面処理を行い、しかる後にフィルム処理面と偏光子とを接着剤を用いて貼り合わせる。使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス、ゼラチン等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0169】
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板の評価を行なったところ、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じることがわかった。この場合、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られないことになる。したがって、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
【0170】
偏光板の単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTの測定にはUV3100PC((株)島津製作所製)のような分光光度計を用いることができる。測定では、380nm〜780nmの範囲で測定し、単板、平行、直交透過率ともに、10回測定の平均値を用いることができる。
【0171】
(環状オレフィン系樹脂フィルムの表面処理)
本発明では、偏光子と保護フィルムとの接着性を改良するため、環状オレフィン系樹脂保護フィルムの表面を表面処理することが好ましい。表面処理については、接着性を改善できる限りいかなる方法を利用してもよいが、好ましい表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理及び火炎処理が挙げられる。ここでいうグロー放電処理とは、低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。本発明では大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。その他、グロー放電処理の詳細については、米国特許第3462335号、米国特許第3761299号、米国特許第4072769号及び英国特許第891469号の各明細書に記載されている。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエステル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内に発生する気体種のみにした特表昭59−556430号公報に記載された方法も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、フィルムの表面温度を80℃以上180℃以下にして放電処理を行う特公昭60−16614号公報に記載された方法も適用できる。
【0172】
グロー放電処理時の真空度は0.5〜3000Paが好ましく、より好ましくは2〜300Paである。また、電圧は500〜5000Vの間が好ましく、より好ましくは500〜3000Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MHz、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、0.01KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2が好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2である。
【0173】
本発明では、表面処理として紫外線照射法を行うことも好ましい。例えば、特公昭43−2603号、特公昭43−2604号、特公昭45−3828号の各公報に記載の処理方法によって行うことができる。水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源は保護フィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体の性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、及び低圧水銀ランプを使用する事も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほど熱可塑性飽和脂環式構造含有重合体樹脂フィルムと偏光子との接着力は向上するが、光量の増加に伴い該フィルムが着色し、また脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
【0174】
さらに、本発明では表面処理としてコロナ放電処理を行うことも好ましい。例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5〜40KV、より好ましくは10〜30KVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1〜10mm、より好ましくは1.0〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.3〜0.4KV・A・分/m2、より好ましくは0.34〜0.38KV・A・分/m2である。
【0175】
本発明では、表面処理として火炎処理を行うことも好ましい。用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。
なぜなら、火炎処理による表面処理の効果は活性な酸素を含むプラズマによってもたらされると考えられるからであり、火炎の重要な性質であるプラズマの活性(温度)と酸素がどれだけ多くあるかがポイントである。このポイントの支配因子はガス/酸素比であり、過不足なく反応する場合にエネルギー密度が最も高くなりプラズマの活性が高くなる。具体的には、天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行うとよい。またバーナーの内炎の先端とフィルムの距離は3〜7cm、より好ましくは4〜6cmにするとよい。バーナーのノズル形状は、フリンバーナー社(米国)のリボン式、ワイズ社(米国)の多穴式、エアロジェン(英国)のリボン式、春日電機(日本)の千鳥型多穴式、小池酸素(日本)の千鳥型多穴式が好ましい。火炎処理にフィルムを支えるバックアップロールは中空型ロールであり、冷却水を通して水冷し、常に20〜50℃の一定温度で処理するのがよい。
【0176】
表面処理の程度については、表面処理の種類、環状オレフィン系樹脂の種類によって好ましい範囲も異なるが、表面処理の結果、表面処理を施された保護フィルムの表面の純水との接触角が、50°未満となるのが好ましい。前記接触角は、25°以上45°未満であるのがより好ましい。保護フィルム表面の純水との接触角が上記範囲にあると、保護フィルムと偏光膜との接着強度が良好となる。
【0177】
(接着剤)
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、表面処理された環状オレフィン系樹脂からなる保護フィルムとを貼合する際には、水溶性ポリマーを含有する接着剤を用いることが好ましい。
前記接着剤に好ましく使用される水溶性ポリマーとしては、N−ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド、ビニルイミダゾールなどエチレン性不飽和モノマーを構成要素として有する単独重合体もしくは共重合体、またポリオキシエチレン、ボリオキシプロピレン、ポリ−2−メチルオキサゾリン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースゼラチン、などが挙げられる。本発明では、この中でもPVA及びゼラチンが好ましい。
【0178】
本発明においてPVAを接着剤として用いる場合には、さらに架橋剤を併用することが好ましい。PVAを接着剤に使用する場合に好ましく併用される架橋剤は、ホウ酸、多価アルデヒド、多官能イソシナネート化合物、多官能エポキシ化合物等が挙げられるが、本発明ではホウ酸が特に好ましい。
【0179】
上述の架橋剤を併用する場合の架橋剤の好ましい添加量は、接着剤中の水溶性ポリマーに対し、0.1質量%以上、40質量%未満であり、さらに好ましくは、0.5質量%以上、30質量%未満である。保護フィルムもしくは偏光子の少なくとも一方の表面に接着剤を塗布して、接着剤層を形成して、貼合するのが好ましく、保護フィルムの表面処理面に接着剤を塗布して、接着剤層を形成し、偏光子の表面に貼合するのが好ましい。
【0180】
(反射防止層)
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層または透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。
【0181】
光散乱層にはマット粒子が分散しているのが好ましい。光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えていてもよく、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0182】
反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値(比)が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
【0183】
低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0184】
(反射防止層の他の層)
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0185】
(液晶表示装置)
次いで、本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明の環状オレフィン系樹脂フィルム、上述の本発明の偏光板のうち少なくとも1枚を有することを特徴とする。
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルム、該フィルムからなる位相差フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、ECB(Electrically Controled Birefringence)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、IPSモード、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
【0186】
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0187】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置である。OCBモードの液晶セルは、米国特許第4583825号、米国特許第5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いという利点がある。
【0188】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板からなる。液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。本発明の透過型液晶表示装置の1つの態様では、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、1枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置する。
【0189】
本発明の透過型液晶表示装置の別の態様では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の透明保護膜として、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)透明保護膜のみに上記の位相差フィルムを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)2枚の透明保護膜に、上記の位相差フィルムを用いてもよい。一方の偏光板のみに上記位相差フィルムを使用する場合は、液晶セルのバックライト側偏光板の液晶セル側保護膜として使用するのが特に好ましい。液晶セルへの張り合わせは、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムはVAセル側にすることが好ましい。保護膜は通常のセルレートアシレートフィルムでも良い。たとえば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト(株)製40μm)、KC5UX(コニカオプト(株)製60μm)、TD80(富士写真フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
OCBモードの液晶表示装置やTN液晶表示装置では、視野角拡大のために光学補償フィルムが使用される。OCBセル用光学補償フィルムは光学一軸あるいは二軸性フィルムの上にディスコティック液晶をハイブリッド配向させて固定した光学異方性層を設けたものが用いられる。TNセル用光学補償フィルムは光学等方性あるいは厚さ方向に光学軸を有するフィルムの上にディスコティック液晶をハイブリッド配向させて固定した光学異方性層を設けたものが用いられる。本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムは上記OCBセル用光学補償フィルムやTNセル用光学補償フィルム作成に有用である。
【実施例】
【0191】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0192】
[実施例1]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、製膜用ドープを調製した。
【0193】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 317質量部
メタノール 27.6質量部
化合物D−7 (東京化成工業(株)製) 10.0質量部
【0194】
上記ドープをバンド流延機にて流延した。残留溶剤量約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて延伸率13%まで拡幅した後、延伸率が10%となるように140℃で60秒間緩和させ、乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し、1440mm幅の環状オレフィン系樹脂フィルムF−1を得た。フィルムF−1の膜厚は80μmであった。
[実施例2]
製膜用ドープの組成を下記とした以外は実施例1と同様にして、環状オレフィン系樹脂フィルムF−2を得た。フィルムF−2の膜厚は80μmであった。
【0195】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 317質量部
メタノール 27.6質量部
化合物E−1 (東京化成工業(株)製) 10.0質量部
【0196】
[実施例3]
製膜用ドープの組成を下記とした以外は実施例1と同様にして、環状オレフィン系樹脂フィルムF−3を得た。フィルムF−3の膜厚は80μmであった。
【0197】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 317質量部
メタノール 27.6質量部
トリフェニルフォスフェート(TPP) 10.0質量部
【0198】
[実施例4]
製膜用ドープの組成を下記とした以外は実施例1と同様にして、環状オレフィン系樹脂フィルムF−4を得た。フィルムF−4の膜厚は80μmであった。
【0199】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 317質量部
メタノール 27.6質量部
PL−1 10.0質量部
【0200】
[実施例5]
製膜用ドープの組成を下記とした以外は実施例1と同様にして、環状オレフィン系樹脂フィルムF−5を得た。フィルムF−5の膜厚は80μmであった。
【0201】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 317質量部
メタノール 27.6質量部
C−426 10.0質量部
【0202】
[比較例1]
製膜用ドープの組成を下記とした以外は実施例1と同様にして、環状オレフィン系樹脂フィルムF−11を得た。フィルムF−11の膜厚は80μmであった。
【0203】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 326質量部
メタノール 28.4質量部
【0204】
[比較例2]
比較例1において、テンターを用いて幅方向に拡幅しないように保持しながら熱風を当てて乾燥し、それ以外は比較例1と同様して、環状オレフィン系樹脂フィルムF−12を得た。フィルムF−12の膜厚は80μmであった。
【0205】
[Re、Rthの測定]
自動複屈折測定装置(KOBRA 21ADH、王子計測器(株)製)を用いて測定した。平均屈折率の仮定値はカタログ値を用いた。
【0206】
[フィルムの遅相軸の方向バラツキの評価]
フィルムの遅相軸の方向と延伸方向のなす角度は自動複屈折測定装置(KOBRA 21ADH、王子計測器(株)製)を用いて測定した。各々の測定は1440mm幅の環状オレフィン系樹脂フィルム内の、幅方向に15cm間隔で10点行い、平均的な方向を求めた。10点の遅相軸の方向が平均的な遅相軸方向となす角度については標準偏差も求めた。平均的な方向が延伸方向から±2.0°以内かつその標準偏差が0.8以下であるものを○、それ以外を×とした。
【0207】
[弾性率の測定]
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルム試料10mm×150mmを25℃、60%RHで2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ−R2(東洋精機製))により弾性率を測定した。測定条件はチャック間距離100mm、温度25℃、延伸速度10mm/分であった。
【0208】
【表1】

【0209】
表1に示した結果より、本発明の化合物の添加により、従来からの延伸による光学特性コントロールに比べ、光学特性のより高い自由度のコントロールが可能であるため、液晶ディスプレイに用いる位相差フィルムとして好ましい光学特性を自由に達成することできる。
【0210】
更に表1に示した結果より、本発明の化合物の添加により、Reおよび/またはRthの低減が可能なため、所望の光学特性に対する延伸倍率設定自由度が高くなる。これにより本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムは、フィルム面内方向に均一な延伸条件を選択可能であり、フィルムの遅相軸の方向と延伸方向のなす角度とその標準偏差が小さく光学フィルムとして好ましい環状オレフィン系樹脂フィルムであることがわかる。
【0211】
更に表1に示した結果より、本発明の化合物を添加することにより、環状オレフィン系樹脂フィルムの弾性率が上昇することがわかる。
【0212】
[実施例6]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、製膜用ドープを調製した。
【0213】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 299質量部
メタノール 26.0質量部
化合物D−7 (東京化成工業(株)製) 30.0質量部
【0214】
上記ドープをバンド流延機にて流延した。残留溶剤量約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて延伸率8%まで拡幅した後、延伸率が5%となるように140℃で60秒間緩和させ、乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し、1440mm幅の環状オレフィン系樹脂フィルムF−6を得た。フィルムF−6の膜厚は80μmであった。
【0215】
[比較例3]
製膜用ドープの組成を下記とした以外は実施例7と同様にして、環状オレフィン系樹脂フィルムF−13を得た。フィルムF−13の膜厚は80μmであった。
【0216】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 326質量部
メタノール 28.4質量部
【0217】
[実施例7]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、製膜用ドープを調製した。
【0218】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 308質量部
メタノール 26.8質量部
化合物D−7 (東京化成工業(株)製) 20.0質量部
【0219】
上記ドープをバンド流延機にて流延した。残留溶剤量約20質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて延伸率16%まで拡幅した後、延伸率が13%となるように140℃で60秒間緩和させ、乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し、1440mm幅の環状オレフィン系樹脂フィルムF−7を得た。フィルムF−7の膜厚は45μmであった。
【0220】
[比較例4]
製膜用ドープの組成を下記とした以外は実施例7と同様にして、環状オレフィン系樹脂フィルムF−14を得た。フィルムF−14の膜厚は45μmであった。
【0221】
Appear3000 (Ferrania製) 100質量部
ジクロロメタン 326質量部
メタノール 28.4質量部
【0222】
【表2】

【0223】
表2に示した結果より、本発明の化合物の添加、膜厚制御および延伸による光学特性の発現を組み合わせることで、これまでにない自由な光学特性のコントロールを実現できることがわかる。
【0224】
[実施例8]
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
実施例1で作製した環状オレフィン系樹脂フィルム(F−1)にグロー放電処理(周波数3000Hz、4200Vの高周波数電圧を上下電極間に引加、20秒処理)を行い、その後ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、下記のように偏光子の片側に貼り付けた。更に市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥し、偏光板Aを作製した。
偏光膜の透過軸と環状オレフィン系樹脂フィルム(F−1)の遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
【0225】
(VA液晶セルの作製)
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。この垂直配向型液晶セルの上側(観察者側)には市販品のスーパーハイコントラスト品(株式会社サンリッツ社製HLC2−5618)を粘着剤を介して貼り付けた。液晶セルの下側(バックライト側)には作製した偏光板Aを粘着剤を介して貼り付けた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない範囲)を測定した結果、左右共に80度以上の良好な視野角であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rth(λ)を低減させる有機化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルム。(上記Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(nm)を表す。)
【請求項2】
Rth(λ)およびRe(λ)を低減させる有機化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルム。(上記Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(nm)を表し、Re(λ)は波長λnmにおける正面方向のレターデーション値(nm)を表す。)
【請求項3】
Rth(λ)単独、又はRth(λ)及びRe(λ)の双方を低減させる有機化合物として下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【化1】

(式中、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ独立に5ないし6員環を表す。XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、またはP=Oを表す。)
【請求項4】
上記一般式(1)が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項3に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【化2】

(式中、X2はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、又はNを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R11、R12、R13、R14およびR15よりなる群より選ばれた1つの基と、R21、R22、R23、R24およびR25よりなる群から選ばれた1つの基とが、単結合または2価の連結基で結合していても良い。)
【請求項5】
下記一般式(3)で表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜20質量%含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【化3】

(式中、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に炭素数が1〜20の脂肪族基、5ないし6員環を表し、炭化水素環でもへテロ環でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。)
【請求項6】
下記一般式(4)で表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜20質量%含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【化4】

(式中、R21、R22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Xは下記の連結基群1から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。連結基群1は単結合、−O−、−CO−、−NR24−、アルキレン基またはアリーレン基を表す。R24は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)
【請求項7】
下記一般式(5)〜一般式(15)のいずれかで表される化合物を少なくとも1種、環状オレフィン系樹脂固形分に対して0.01〜20質量%含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【化5】

(一般式(5)および(6)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子または−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Y21およびY22はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す。)
【化6】

(一般式(7)〜(15)において、Y31〜Y70はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、炭素数が1ないし20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1ないし20のアミド基、炭素数が1ないし20のカルバモイル基またはヒドロキシ基を表し、V31〜V43はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし20の脂肪族基を表す。L31〜L80はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31〜L80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。)
【請求項8】
前記環状オレフィン系樹脂が、下記[A−1]、[A−2]および[A−3]からなる群より選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
[A−1]少なくとも1種以上の下記一般式(16)で表される繰り返し単位、および少なくとも1種以上の下記一般式(17)で表される繰り返し単位を含む付加共重合体、
[A−2]下記一般式(17)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体、および、
[A−3]下記一般式(18)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む開環(共)重合体。
【化7】

(式中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X11およびY11はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR51、−(CH2nOCOR52、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2nCN、−(CH2nCONR5354、−(CH2nNR5354、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX11とY11から構成された(−CO)2Oあるいは(−CO)2NR55を表す。なお、R51、R52、R53、R54、およびR55は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR56p3-pを表し、(R56は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR56または−OR56を表し、pは0〜3の整数を表す)、nは0〜10の整数を表す。)
【化8】

(式中、mは0〜4の整数を表す。R43およびR44はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X12およびY12はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR51、−(CH2)nOCOR52、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2nCN、−(CH2nCONR5354、−(CH2nNR5354、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX12とY12から構成された(−CO)2Oあるいは(−CO)2NR55を表す。なお、R51、R52、R53、R54、およびR55は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR56p3-pを表し、(R56は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR56または−OR56を表し、pは0〜3の整数を表す)、nは0〜10の整数を表す。)
【化9】

(式中、mは0〜4の整数を表す。R45およびR46はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X13およびY13はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR51、−(CH2nOCOR52、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2nCONR5354、−(CH2nNR5354、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX13とY13から構成された(−CO)2Oあるいは(−CO)2NR55を表す。なお、R51、R52、R53、R54、およびR55は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR56p3-pを表し、(R56は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR56または−OR56を表し、pは0〜3の整数を表す)、nは0〜10の整数を表す。)
【請求項9】
前記環状オレフィン系樹脂フィルム面内の遅相軸の平均的な方向が、フィルム幅手方向に対して±2.0°以内であり、その標準偏差が0.8以内であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【請求項10】
偏光子と、その両側に配置された2枚の保護膜からなる偏光板において、前記保護膜のうち少なくとも1枚が、請求項1〜9のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、請求項10に記載の偏光板の少なくともいずれか一方を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板が請求項10に記載の偏光板であることを特徴とするIPS、OCB、TN、またはVAモード液晶表示装置。
【請求項13】
請求項10に記載の偏光板をバックライト側に用いたことを特徴とするVAモード液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−63536(P2008−63536A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245958(P2006−245958)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】