説明

環状ペプチド及びその修飾ペプチド並びにKelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質のスクリーニング方法

【課題】分子量が小さく、かつ、Nrf2とKBDを介して結合する新規環状ペプチド及びこれを用いたKeap1結合阻害物質のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】以下の一般式(I)で示されるペプチドを含む環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。Y1−Y2−Glu−Y3−Gly−Glu・・・(I)[式中、Y1は、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Y2は、アミノ酸残基を表し、Y3は、スレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチド及びその修飾ペプチド並びにKelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体は、酸化と抗酸化のバランスを調節し、細胞内酸化還元状態を一定に維持して機能している。この酸化と抗酸化のバランスが酸化方向に傾いた状態を酸化ストレスという。
【0003】
酸化ストレスは、脂質、DNA、タンパク質等の生体高分子に修飾や障害を与え、細胞機能障害や細胞死を引き起こすことが知られ、発癌、高血圧、動脈硬化、脳神経変性疾患、炎症性疾患、喘息、皮膚疾患、加齢黄斑変性、白内障といった加齢に伴う慢性疾患の発症や進行にも深く関与していると言われている。このため、酸化ストレスの防御機構は、生体にとって必須の生体防御システムであり、酸化ストレスに対する防御能力を高めることは、上記の慢性疾患の予防や治療に有用であると考えられている(非特許文献1)。
【0004】
近年、NF−E2関連因子2(NF−E2−related factor 2;以下、Nrf2と略すことがある。)が、哺乳類の酸化ストレス防御機構において中心的な役割を果たすことが明らかとなった。
【0005】
Nrf2は、親電子性物質を直接解毒する異物代謝系第2相酵素(例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、キノンオキシドレダクターゼ)や抗酸化酵素(例えば、ヘムオキシゲナーゼ、ペルオキシレドキシン)といった解毒酵素群の遺伝子発現を制御する転写因子である。Nrf2は、定常状態では、細胞内でKelch様ECH結合タンパク質1(Kelch−like ECH associated protein 1;以下、Keap1と略すことがある。)と複合体を形成して不活化状態となっており、さらにこの複合体は速やかにユビキチン化され分解されることにより負に制御されている。
【0006】
ところが、生体が親電子性物質や活性酸素種等の非特異的な酸化ストレスに暴露されると、Nrf2はKeap1から解離することにより活性化され、核へ移行することとなる。核に移行したNrf2は、抗酸化剤応答配列(antioxidant responsive element:以下、ARE)と呼ばれるプロモーター配列に結合し、上記の解毒酵素群の遺伝子の発現を誘導することによって生体異物の解毒・排泄を導き、酸化ストレスから生体を防御するために機能している(非特許文献2)。
【0007】
一方、Nrf2は、Keap1と結合するKeap1結合ドメイン(Keap1 binding domain;以下、KBDと略すことがある。)と、AREと結合するARE結合ドメインとから構成されていることが知られており、Nrf2のKBDのみからなる切断型のリコンビナントタンパク質を強制発現させた細胞では、酸化ストレスに暴露されなくても、Nrf2がKeap1と解離して酸化ストレスに対する防御機構が活性化されることが知られている(非特許文献3)。このことは、Keap1と結合し、Nrf2とKeap1との結合を阻害する物質は、Nrf2によって引き起こされる酸化ストレスの防御機構を活性化させる作用を有していることを示している。
【0008】
したがって、Keap1とNrf2との結合を阻害する物質(以下、Keap1結合阻害物質と略すことがある。)は、非特異的な酸化ストレスを与えなくても、Nrf2の転写因子活性を誘導し、細胞の酸化ストレスに対する防御機構を活性化し、酸化ストレスに起因する疾患の治療又は予防に有効な薬物になると期待されている。Keap1と結合する物質としては、Nrf2のKBDの一部のアミノ酸配列を有するペプチド(以下、Nrf2部分ペプチドと略すことがある。)及びそのホモログについての報告がある。(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Carlos Ferrariら、Biomedicine Pharmacotherapy、2003年、57巻、p.251〜260
【非特許文献2】Truyen Nguyenら、The Journal of Biological Chemistry、 2009年、284巻、20号、p.13291〜13295
【非特許文献3】Masaaki Komatsuら、Nature Cell Biology、2010年、12巻、3号、p.213〜224
【非特許文献4】Shih−Ching Loら、The EMBO Journal、2006年、25巻、15号、p.3605〜3617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、Keap1結合阻害物質を同定するためには、Nrf2とKeap1との結合阻害活性を感度よく検出するスクリーニング系を構築する必要がある。その一方で、生体内では、Nrf2はKeap1と結合して速やかに消失してしまうため、機能を保持したNrf2を単離することは困難であり、また単離された報告もない。
【0011】
また、Nrf2部分ペプチド及びそのホモログは、安定性が悪く、分子量も大きいため、蛍光偏光減少法や1分子蛍光測定法等のハイスループットスクリーニング法(以下、HTS法と略すことがある。)には不向きであり、検出感度も悪いためにKeap1結合阻害物質のスクリーニングに使用するのは困難であった。
【0012】
そこで本発明は、分子量が小さく、かつ、Nrf2とKBDを介して結合する新規環状ペプチド及びこれを用いたKeap1結合阻害物質のスクリーニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、新規な環状ペプチドがKeap1結合阻害物質のスクリーニングに適していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の一般式(I)で示されるペプチドを含む環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
Y1−Y2−Glu−Y3−Gly−Glu・・・(I)
[式中、Y1は、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Y2は、アミノ酸残基を表し、Y3は、スレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表す。]
【0015】
上記環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩は、以下の一般式(II)で示されることが好ましい。
【化1】

[式中、Xは、直接のアミド結合、アミノ酸残基又は2〜6個のアミノ酸残基からなるペプチド表し、Y1は、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Y2は、アミノ酸残基を表し、Y3は、スレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Zは、直接の共有結合、−SS−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH)CO−、−CON(CH)−、−S−、−O−、−CO−又は−NH−を表し、R1は、CONH−、NH−、又は水素原子を表し、R2は、−COOH、−CONH、又は水素原子を表し、m及びnは、それぞれ独立して、0〜4を表す。]
【0016】
また上記環状ペプチドは、一般式(II)において、Zが−SS−を表し、R1がCONH−又はNH−を表し、R2が−COOH又は−CONHを表し、かつ、m及びnが1を表すか、Zが−NHCO−を表し、mが3又は4を表し、かつ、nが2又は3を表すか、又は、Zが−CONH−を表し、mが2又は3を表し、nが3又は4を表すことが好ましい。
【0017】
さらに上記環状ペプチドは、一般式(II)において、Xが、直接のアミド結合又は2個のアミノ酸残基からなるペプチド表すか、Y2が、プロリン残基であるか、Y3が、スレオニン残基であることが好ましく、配列表の配列番号1〜4で示されるアミノ酸配列のいずれかを含むことがさらに好ましい。
【0018】
上記環状ペプチドは、酸化ストレスに影響を与える物質を評価するためのさまざまな実験系において、keap1結合阻害リガンド、すなわち、酸化ストレスを与えることなく、Nrf2とkeap1との結合を阻害するリガンドとして使用できる。特異に、生体及び細胞における酸化ストレスの防御機構を解明するためのツール、酸化ストレス応答能を測定するための検出ツール又は酸化ストレスの診断用ツールとしての使用に適している。
【0019】
また本発明は、上記の環状ペプチドの修飾ペプチドを提供する。
【0020】
上記の修飾ペプチドは、配列表の配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む環状の修飾ペプチドであることが好ましい。上記の修飾ペプチドは、keap1との結合に関与しないアミノ(N)末端又はカルボキシ(C)末端を蛍光基で修飾されていることがさらに好ましく、蛍光基が発する蛍光を指標とすることで、Kelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質のスクリーニングに好適に使用できる。
【0021】
さらに本発明は、Kelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質のスクリーニング方法であって、被験物質の存在下及び非存在下において、上記の環状の修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1とを溶液中で接触させ、この修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量を測定する測定ステップと、上記被験物質の存在下における上記修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量(B)と、上記被験物質の非存在下における上記修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量(B)とを比較する比較ステップと、上記Bが、上記Bよりも少ない場合に、上記被験物質はKelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質であると判定する判定ステップと、を備えるスクリーニング方法を提供する。
【0022】
上記スクリーニング方法における結合量の測定法としては、例えば、蛍光偏光解消法、1分子蛍光測定法、酵素免疫測定(Enzyme linked immunosolvent assay;EIA)法、表面プラズモン共鳴(Surface plazmon resonance;SPR)法、等温滴定型熱量測定(Isothermal Titration Calorimeter;ITC)法が適しており、使用する環状ペプチドは、FLAGタグやビオチンで修飾した環状ペプチドが適している。
【発明の効果】
【0023】
本発明の環状ペプチドは、keap1結合阻害化合物の同定を効率的に行うことを可能とし、酸化ストレスによって引き起こされる疾患の新規な治療薬及び予防薬のスクリーニングに使用できる。また本発明の環状ペプチドは、Nrf2及びNrf2部分ペプチドに比べて、血漿中及び肝ミクロソーム中においての安定性が高いため、未精製のkeap1含有溶液を用いた場合であっても、keap1結合阻害化合物のスクリーニングを簡便かつ高感度に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】Nrf2部分ペプチドである直鎖ペプチド1のアミノ酸配列と化学構造式を示した図である。
【図2】Nrf2部分ペプチドである直鎖ペプチド1のラマチャンドランプロットを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩は、以下の一般式(I)で示されるペプチドを含むことを特徴としている。
Y1−Y2−Glu−Y3−Gly−Glu・・・(I)
[式中、Y1は、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Y2は、アミノ酸残基を表し、Y3は、スレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表す。]
【0026】
「環状ペプチド」とは、アミノ酸がペプチド結合でつながってできるポリペプチドのN末端とC末端が、ペプチド結合又はアミノ酸残基以外の分子を介してアミド結合でつながってできる環化したポリペプチドのことをいう。環状ペプチドを構成するアミノ酸は、天然型アミノ酸のみならず、非天然型アミノ酸であってもよく、不斉中心を有するアミノ酸残の場合には、エナンチオマー、ジアステレオマー又はそれらの混合物のいずれもが含まれ得る。
【0027】
また、ポリペプチドのN末端とC末端の結合には、リンカーを介して結合させることが可能であり、この場合のリンカーには、2つ以上の官能基を有し、ペプチドのN末端又はC末端とアミド結合可能な官能基少なくとも1つ以上を有する原子団(ビルディングブロック)であれば使用できる。ビルディングブロックとしては、例えば、アミノ酸、ペプチド、ジアミン、ジカルボキシル、メルカプトカルボキシルが挙げられる。
【0028】
「薬理学的に許容される塩」としては、例えば、硫酸、塩酸、燐酸等の鉱酸との塩、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩、トリメチルアミン、メチルアミン等のアミンとの塩又はナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンとの塩が挙げられる。
【0029】
上記の環状ペプチドは、当業者であれば使用なペプチド合成の常法手段(「ペプチド合成の基礎と実験」、1985年、丸善(株)に記載の方法)で製造でき、液相合成法又は固相合成法のいずれの方法を使用しても合成できる。例えば、ペプチド自動合成装置を使用して、固相上でC末端からN末端方向に向けて順次アミド化反応によるアミノ酸の付加とN末端保護基の脱保護を繰り返して上記の一般式(I)で示されるペプチドを含むペプチドを合成し、アミノ酸側鎖の保護基の脱保護と固相からの切り出しを行った後に縮合剤を添加して分子内環化反応を行えば、上記の環状ペプチドを得ることができる。
【0030】
上記の脱保護及び固相からの切り出しに用いる試薬としては、例えば、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸−酢酸混合溶液、ピペリジン又は接触還元法が挙げられる。
【0031】
分子内環化反応としては、例えば、システイン残基とシステイン残基の間を公知の方法でS−S結合させることにより行なうことができる。具体的には、5,5’―ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)を使用したDTNB法や、銅等の金属触媒の存在下での空気酸化によって、環化することができる。
【0032】
このようにして製造された環状ペプチドは、反応終了後、ペプチドの分離精製手段、例えば、溶媒抽出、蒸留、分配、再沈殿、再結晶、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー等を組み合わせて採取すればよい。
【0033】
上記環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩は、以下の一般式(II)で示されることが好ましい。
【化2】

[式中、Xは、直接のアミド結合、アミノ酸残基又は2〜6個のアミノ酸残基からなるペプチド表し、Y1は、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Y2は、アミノ酸残基を表し、Y3は、スレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Zは、直接の共有結合、−SS−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH)CO−、−CON(CH)−、−S−、−O−、−CO−又は−NH−を表し、R1は、CONH−、NH−、又は水素原子を表し、R2は、−COOH、−CONH、又は水素原子を表し、m及びnは、それぞれ独立して、0〜4を表す。]
【0034】
9月Nrf2部分ペプチドの両末端はβシート構造を形成し、N末端とC末端のペプチド主鎖間の距離をβシート構造形成に適切な距離に保っているので、Kelch様ECH結合タンパク質1との結合するためには、一般式(II)におけるm及びnは炭素数0〜4個からなるメチレン鎖であることが好ましい。また、一般式(II)において、Y1−Y2−Glu−Y3部分はγターン構造を形成し、Gly−Glu部分はβバルシ構造を形成しており、Kelch様ECH結合タンパク質1との結合時にこれら構造を保持したままでZ部分を共有結合で結んで環状ペプチドとするには、Xは0〜6残基のアミノ酸で構成されることが好ましい。さらに、Y3のアミノ酸残基の側鎖は、グリシン残基主鎖のNH基と水素結合してβバルジ構造を安定化する効果を有するスレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基であることが好ましい。
【0035】
また上記環状ペプチドは、一般式(II)において、Zが−SS−を表し、R1がCONH−又はNH−を表し、R2が−COOH又は−CONHを表し、かつ、m及びnが1を表すか、Zが−NHCO−を表し、mが3又は4を表し、かつ、nが2又は3を表すか、又は、Zが−CONH−を表し、mが2又は3を表し、かつ、nが3又は4を表すことが好ましい。
【0036】
一般式(II)において、Zが−SS−で表され、R1がCONH−又はNH−で表され、R2が−COOH又は−CONHで表され、かつ、m及びnが1で表される環状ペプチドを合成する場合には、N末端及びC末端にシステイン残基を用い、上記の分子内環化反応によって環化することができる。また、Zが−NHCO−で表され、R1がCONH−又はNH−で表され、R2が−COOH又は−CONHで表され、mが3又は4で表され、かつ、nが2又は3で表される環状ペプチドは、N末端にリジン残基又はオルニチン残基を用い、かつ、C末端にアスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基を用いて、合成することができる。さらに、Zが−CONH−で表され、R1がCONH−又はNH−で表され、R2が−COOH又は−CONHで表され、mが2又は3で表され、かつ、nが3又は4で表される環状ペプチドは、N末端にアスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基を用い、かつC末端にリジン残基又はオルニチン残基を用いて、合成することができる。例えば、実施例3に記載した方法と同様に、これらN末端及びC末端のアミノ酸の側鎖を予め選択的に脱保護できる適切な保護基で保護しておき、他のアミノ酸側鎖の保護基が脱保護されない条件で脱保護し、脱保護された側鎖間を縮合反応させることで、環化することができる。
【0037】
さらに上記環状ペプチドは、一般式(II)において、Xが、直接のアミド結合又は2個のアミノ酸残基からなるペプチド表すか、Y2が、プロリン残基であるか、Y3が、スレオニン残基であることが好ましく、配列表の配列番号1〜4で示されるアミノ酸配列のいずれかを含むことがさらに好ましい。
【0038】
一般式(II)において、Xが直接のアミド結合又は2個のアミノ酸残基からなるペプチドであることは、ペプチドがKelch様ECH結合タンパク質1との結合時の立体構造であるγターン及びβバルジ構造を形成したときに、N末端側のメチレン鎖(CH3)mとC末端側のメチレン鎖(CH3)nが、互いに丁度向かい合う位置にくることができる点で好まししい。一般式(II)において、Y2がプロリン残基であることは、γターン形成に必要なペプチド主鎖の2面角を安定させる効果があり、特に好ましい。また、Y3のアミノ酸残基の側鎖は、Gly主鎖のNH基と水素結合してβバルジ構造を安定化する効果が高いスレオニン残基であることが特に好ましい。さらに、Y1はGlu−Y3部分のペプチド主鎖の2つのNH基と水素結合を形成できる側鎖を有するアスパラギン酸残基であることが、Kelch様ECH結合タンパク質1との結合を高める上で、好都合である。
【0039】
また本発明の修飾ペプチドは、上記の環状ペプチドが修飾されていることを特徴としており、蛍光強度を指標とするスクリーニング方法において使用する場合には、環状ペプチドを蛍光基で修飾した修飾ペプチドであることが好ましい。抗体を利用したスクリーニング方法において使用する場合には、抗体で認識されるペプチド、例えば、ヒスチジン6残基からなるペプチド(His−tag)やFLAG配列ペプチド等のスクリーニングにおいて汎用される抗体で認識される配列を有するペプチドで修飾することが好ましい。また、ビオチンとアビジンの結合を利用したスクリーニング方法において使用する場合には、ビオチンで修飾した環状ペプチドを使用することができる。さらに、本発明の環状ペプチドのN末端およびC末端は、Kelch様ECH結合タンパク質1との結合に直接関与していないため、N末端およびC末端に様々な修飾を加えても、結合活性は保持されるため、スクリーニングで使用する測定方法に応じて、環状ペプチドに修飾を加える部位としては、N末端およびC末端が特に好都合である。配列表の配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む、蛍光基でN末端を修飾した環状ペプチドは、修飾によってKelch様ECH結合タンパク質1との結合が減弱することが無く、蛍光強度を指標とするスクリーニング方法での利用に特に適している。
【0040】
「修飾ペプチド」とは、上記の環状ペプチドを構成する上記の一般式(I)で示されるペプチドを含むペプチド鎖のN末端、C末端、アミノ酸側鎖又はアミド結合している窒素原子のうちの1箇所以上が、化学結合によって修飾されている環状ペプチドを意味する。修飾で付加される化学構造には、例えば、蛍光基、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、ビオチン、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0041】
「蛍光基」とは、特定の波長領域の光を吸収し、特定の波長領域の蛍光を発する原子団を意味する。例えば、フルオロセインイソシアネート(FITC)、ローダミン等が挙げられる。以下に記載する蛍光偏光解消法や1分子蛍光測定法等を利用し、蛍光を指標としたkeap1結合阻害化合物スクリーニングで使用するには、蛍光基で修飾されていることが好ましいく、この場合には、keap1との結合に関与しないアミノ(N)末端又はカルボキシ(C)末端を蛍光基で修飾することとなる。具体的には、N末端のアミノ基を、フルオロセインイソシアネート(FITC)やカルボキシルフルオロセイン(FAM)等の蛍光基で修飾したペプチドは、蛍光を指標としたスクリーニングでの使用に適している。
【0042】
また本発明のKelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質のスクリーニング方法は、被スクリーニング物質の存在下及び非存在下において、上記の環状の修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1とを溶液中で接触させ、この修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量を測定する測定ステップと、上記被スクリーニング物質の存在下における上記修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量(A)と、上記被スクリーニング物質の非存在下における上記修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量(A)とを比較する比較ステップと、上記Aが、上記Aよりも少ない場合に、上記被スクリーニング物質はKelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質であると判定する判定ステップと、を備えることを特徴としている。
【0043】
以下に上記の環状ペプチドを用いたkeap1結合阻害化合物のスクリーニング方法について説明する。
【0044】
上記のスクリーニング方法におけるkeap1の結合阻害の測定法としては、例えば、蛍光偏光解消法、1分子蛍光測定法、酵素免疫測定(Enzyme linked immunosolvent assay;EIA)法、表面プラズモン共鳴(Surface plazmon resonance;SPR)法が挙げられ、いずれの方法も測定シグナル強度がKelch様ECH結合タンパク質1と環状ペプチドとの結合量Aに比例する方法であるため、被スクリーニング物質存在下での環状ペプチドの結合量A及び被スクリーニング物質非存在下での環状ペプチドの結合量Aの測定に好適に使用できる。
【0045】
特に、蛍光偏光解消法は、血漿中の薬物濃度を定量する蛍光偏光免疫測定法(Fluorescence Polarization Immunoassay;FPIA)でも使用される測定法で、血漿や細胞ホモジネートの上清等の夾雑物存在下でも感度よく測定できることが知られており、上記のkeap1結合阻害化合物のスクリーニングにおいて精製したkeap1を必要としない点で優れている。
また、蛍光偏光解消法は、結合物(B)と非結合物(F)との分離、いわゆるB/F分離を必要とせず、標的タンパク質及びペプチドのいずれも固相上に担持する必要がない。このため、B/F分離を必要とする放射性同位元素を用いた評価方法及びEIA法や、標的タンパク質又はペプチドのいずれかを固相上に担持する必要のあるEIA法やSPA法等の評価方法に比べて、より簡便にスクリーニングできる。
【0046】
蛍光偏光解消法のスクリーニングに使用するkeap1は、全長のkeap1の代わりに下記実施例記載のkeap1−DCと呼ばれるアミノ酸残基番号321−609からなるkeap1がNrf2と結合する領域(非特許文献3を参照)を発現し、精製して用いることができるが、未精製のkeap1を用いてもよい。さらに、keap1を発現している細胞のホモジネートの上清でもよい。例えば、培養したヒト肝がん細胞由来株化細胞Huh−7を氷冷バッファー(50mM Tris−HCl、pH7.4)にてホモジナイズした後、遠心分離(12,000×g、20分、4℃)し、回収した上清をスクリーニングに用いることができる。
【0047】
蛍光偏光解消法に用いる環状ペプチドは、蛍光基で修飾した環状ペプチドを用いる。下記実施例では、蛍光基として環状ペプチドのN末端のアミノ基に容易に修飾できるFAMを用いた。蛍光基としては、蛍光偏光解消法で一般に使用されている蛍光基、例えばFITC,ローダミン等を使用でき、プレートリーダーで測定可能な励起及び吸収波長を有するものを選択して、使用する。
【0048】
蛍光偏光解消法に用いる測定装置としては、蛍光偏光解消法測定に対応している、96穴又は386穴プレート対応の市販のプレートリーダーを用いることができる。
【0049】
被スクリーニング化合物のkeap1阻害能は、以下ようにして算出できる。
【0050】
まず、蛍光基で修飾した環状ペプチドの蛍光偏光強度(I)を測定する。次に、keap1添加時の蛍光偏光強度(Imax)を測定する。その後、被スクリーニング化合物を添加し、蛍光偏光強度(Iobs)を測定する。被スクリーニング化合物が蛍光基で修飾した環状ペプチドとkeap1との結合を阻害した割合は、被スクリーニング化合物添加によって減少した蛍光偏光強度(Imax−Iobsと被スクリーニング化合物添加前のkeap1添加によって増加した蛍光偏光強度(Imax−I)の比、すなわち(Imax−Iobs)/(Imax−I)から算出される。さらに、被スクリーニング化合物の濃度範囲を変化させて測定することで、被スクリーニング化合物のkeap1と環状ペプチドとの結合を50%阻害する濃度(IC50)を求めことができる。
【実施例】
【0051】
本発明者らは公知のNrf2部分ペプチドがkeap1結合時にγターンと呼ばれる立体構造を取っていることに着目し、本発明の環状ペプチドを設計した。一般に生理活性ペプチドはアミノ酸残基数を短くすればするほど、その生理活性が弱くなることが知られている。生理活性ペプチドを短くすると活性が弱くなる原因は、主に2つある。ひとつは、ペプチドを短くすることで生理活性発現に必要な官能基までが削られてしまうためで、もうひとつは、ペプチドが短くなることで生理活性発現に必要な立体構造を安定にとり得なくなるためである。当該Nrf2部分ペプチドも16残基から9残基に短くすると、keap1への結合親和性が著しく低下することが知られている(非特許文献4)。本発明者らは、Nrf2部分ペプチドとkeap1との複合体のX線結晶構造(非特許文献4)を詳細に解析した結果、9残基からなるペプチドの結合親和性低下がkeap1との結合に必要な官能基が削られたことに起因するのではなく、keap1結合時に取るべき立体構造であるγターンを取りにくくなったことに起因すると推定した。
【0052】
ペプチドは、残基数が短い程、合成ステップが短く、短期間かつ高収率で合成できるだけでなく、結合に直接関与しない部分がなくなることによって、標的としているタンパク質以外の物質への非特異的結合が減少させることができる利点がある。その上、ペプチダーゼ等の分解酵素によって、認識される配列が減るため、代謝や生分解に対してより安定になる。また、蛍光偏光減少法や1分子蛍光測定法等に代表される、分子の運動性の差、すなわちペプチド単独の運動性とペプチドがタンパク質に結合したときの運動性との差を検出する測定方法においては、分子量の小さいペプチド程ペプチド単独の運動性が高くなり、分子量の大きなタンパク質に結合したときの運動性との差が大きくなるため、検出感度、すなわちシグナル/ノイズ比(S/N比)が高くなる利点がある。
【0053】
さらに、一般に環状ペプチドでは、ペプチダーゼ等の分解酵素によって、認識されにくくなり、代謝や生分解に対してより安定になる。また、同じ分子量のペプチドでも、環状になることによって、さらに運動性が上がり、上述の運動性の差を検出する測定系において有利になる。
【0054】
このような利点を持たすために、Nrf2部分ペプチドよりも短い環状ペプチドの設計を試みた。上述の短くしたNrf2部分ペプチドの結合親和性低下の原因推定結果に基づき、Nrf2部分ペプチドを改変し、γターン構造をより安定化する工夫を施した。具体的には、その第1の工夫は、keap1との結合に必要な官能基及びその空間配置を損なうことなく、γターン及びそれに続くβバルジ部分のアミノ酸は置換せず、その両端のβシートを形成しているアミノ酸残基側鎖間に共有結合を導入し、環状化することによって、γターンを安定化させたことにある(図1)。第2の工夫は、Nrf2部分ペプチドの主鎖の2面角の分布図(図2)を解析し、唯一Pro残基を導入可能な位置にPro残基を導入し、主鎖2面角の回転自由度を制限し、γターンを安定化させたことである。
【0055】
ここで、Glu11とGlu14のカルボキシル基は、keap1との結合に必須であるため変換せず保存した。また、βバルジを形成しているGly13は主鎖の2面角の分布図上、Glyが特に安定に存在しうる領域にあり、βバルジ形成に有利と考え、保存した。また、Asp9の側鎖のカルボキシル基及びThr12の側鎖の水酸基は、主鎖のアミドのNH基と水素結合して、それぞれγターン及びβバルジを安定化しているため、Asp9及びThr12の位置には、側鎖に水素結合受容基である官能基、水酸基又はカルボニル基又はカルボキシル基を有するアミノ酸(Asp、Asn、Thr、Ser)があることが望ましいと考え、これらのアミノ酸に限定した。
【0056】
図1の化学構造式中、点線枠内は立体構造上、それぞれγターン、βバルジ、βシートを形成している領域を示している。
【0057】
また、図2の左上のGeneralは、Nrf2部分ペプチドの主鎖の2面角の分布を示し、線の内側はプロリン、グリシン、プロリン1残基前のアミノ酸を除く通常のアミノ酸で許容される2面角範囲を示し、内側の線内は、これらアミノ酸が安定に取りうる2面角範囲を示している。右上のPre−Prolineは、Asp10の主鎖の2面角プロットを示し、内側の線と外側の線は、それぞれプロリン残基の1残基前のアミノ酸が安定に取りうる2面角範囲及び許容範囲を示している。左下のGlycineは、Gly13の主鎖の2面角プロットを示し、内側の線と外側の線は、グリシン残基が安定に取りうる2面角範囲及び許容範囲を示している。右下のprolineは、プロリンを導入したGlu10の2面角プロットを示し、内側の線と外側の線は、プロリン残基が安定に取りうる2面角範囲及び許容範囲を示している。
【0058】
Nrf2部分ペプチドのγターン構造を安定化するこれらの工夫を加えた環状ペプチドは、残基数を短くしても結合親和性が低下することなく、驚くべきことに元の16残基のNrf2ペプチドよりも結合親和性が向上していることがわかった。のみならず、本環状ペプチドは、蛍光基で修飾しても結合親和性が減弱せず、さらに血漿中及び肝ミクロソーム中でも代謝されることなく、安定に存在することが明らかになった。
【0059】
また、当該環状ペプチドは、keap1と結合し、Nrf2とkeap1との結合を阻害する働きを有するため、実際の酸化ストレスを与えることなく、Nrf2とkeap1との結合阻害するリガンド(keap1結合阻害リガンド)として使用できる。代謝に対して安定なkeap1結合阻害リガンドは、生体及び組織及び細胞における酸化ストレス防御機構の解明のためツールとして有用であるばかりでなく、酸化ストレスに対して、生体及び組織及び細胞が、当該酸化ストレス防御機構によって対処できる能力(酸化ストレス応答能)を測定するための検出ツール及び診断ツールとしても有用である。
【0060】
そして、蛍光基で修飾した当該環状ペプチドは、被験物質のkeap1結合阻害活性を、蛍光偏光解消法測定によって、効率よく定量的にスクリーニングするためのスクリーニングツールとして有用であることが明らかになった。
【0061】
蛍光偏光解消法はハイスループットスクリーニング(HTS)に適した測定方法であり、本発明の環状ペプチドは、例えばHTSのように多数の化合物を一度にスクリーニングする際にも有効に用いることができる。本発明の環状ペプチドを用いたkeap1結合阻害化合物のスクリーニングにより、細胞の酸化ストレス防御機構を促進し、酸化ストレスによって引き起こされる疾患の治療又は予防に有効な化合物(薬物)の候補化合物を効率良く同定することができる。
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中に記載された略号は次の通りである。
Fmoc: 9−フルオレニルメトキシカルボニル
FAM: カルボキシルフルオロセイン
alko: アルコキシベンジルアルコール
OtBu: t−ブトキシカルボニル
OBzl: ベンジルエステル
Cbz: ベンジルオキシカルボニル
tBu: t−ブチル
Trt: トリフェニルメチル
TFA: トリフルオロ酢酸
TIS: トリイソプロピルシラン
DMSO: ジメチルスルホキシド
DTNB: 5,5’―ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)
TrtA−PEG: トリチルアミドメチルエステルポリエチレングリコール
なお、アミノ酸に光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
【0063】
(実施例1)Ala−Phe−Phe−Ala−Gln−Leu−Gln−Leu−Asp−Glu−Glu−Thr−Gly−Glu−Phe−Leu(直鎖ペプチド1;配列番号6で示される。)の合成:
非特許文献4に記載のNrf2のKBDの一部のアミノ酸配列を有するペプチド(Nrf2部分ペプチド)及びそのホモログのうち、Keap1との結合親和性が最も高いと報告されているAla−Phe−Phe−Ala−Gln−Leu−Gln−Leu−Asp−Glu−Glu−Thr−Gly−Glu−Phe−Leu(直鎖ペプチド1)を下記工程にて合成した。
【0064】
市販のFmoc−Leu−alko resin(渡辺化学)を用い、マルチペプチドシンセサイザーACT−396によりペプチド鎖を伸長し、Fmoc−Ala−Phe−Phe−Ala−Gln(OtBu)−Leu−Gln−Leu−Asp(OtBu)−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Thr(tBu)−Gly−Glu(OtBu)−Phe−Leu−alko resinを得た。
【0065】
次に、脱保護及びresinからの切り出しを行った。すなわち、TFA/TIS/水(95:2.5:2.5)200μLを加え2時間振盪し、その反応溶液にジエチルエーテルを加え沈殿を得、遠心分離後、上清を除く操作を繰り返して洗浄を行い、残渣を酢酸水溶液で抽出、濾過により樹脂を除いた。その後、下記の条件で分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、目的物を含む分画を集め凍結乾燥し白色粉末を得た。質量分析による(M+H)は1856.8(計算値1856.9)であった。
【0066】
分取HPLCの条件は、以下の通りである。
・カラム: Inertsil ODS−3(4.6×250mm)
・移動相: A液:0.1%TFA/水、B液:アセトニトリル
・溶出条件: A/B:95/5〜35/65への直線型濃度勾配溶出(30分)
・流速: 1.5ml/分
・溶出時間: 19.86分
【0067】
(実施例2)cyclo[−Cys−Asp−Pro−Glu−Thr−Gly−Glu−Cys−](環状ペプチド1;配列番号1)の合成:
本発明の環状ペプチド1を下記工程にて合成した。まず、市販のFmoc−Cys(Trt)−TrtA−PEG resin(渡辺化学社)を用い、マルチペプチドシンセサイザーACT−396によりペプチド鎖を伸長し、Fmoc−Cys(Trt)−Asp(OtBu)−Pro−Glu(OtBu)−Thr(tBu)−Gly−Glu(OtBu)−Cys(Trt)−TrtA−PEG resinを合成した。次に、実施例1に記載の方法で、脱保護及びresinからの切り出しを行った。得られた未精製ペプチドを、DMSO 20μLに溶解し、さらに水80μLを添加し、DTNBを用いて環化した。
【0068】
その後、下記の条件で分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、目的物を含む分画を集め凍結乾燥し白色粉末を得た。質量分析による(M+H)は897.3(計算値897.3)であった。
【0069】
分取HPLCの条件は、以下の通りである。
・カラム: Inertsil ODS−3(4.6×250mm)
・移動相: A液:0.1%TFA/水、B液:アセトニトリル
・溶出条件: A/B:95/5〜35/65への直線型濃度勾配溶出(30分)
・流速: 1.5ml/分
・溶出時間: 9.35分
【0070】
(実施例3)cyclo[−Lys−Asp−Ala−Glu−Thr−Gly−Glu−Asp−]−NH(環状ペプチド2;配列番号2で示される。)の合成
本発明の環状ペプチド2を下記工程にて合成した。まず、市販のFmoc−Asp(OBzl)−NH−alko resin(渡辺化学)を用い、マルチペプチドシンセサイザーACT−396によりペプチド鎖を伸長し、Fmoc−Lys(Cbz)−Asp(OtBu)−Ala−Glu(OtBu)−Thr(tBu)−Gly−Glu(OtBu)−Asp(OBzl)−NH−alko resinを合成した。Na/NHを加え、OBzl及びCbzのみを選択的に脱保護し、環化した。次に、実施例1に記載の方法で、脱保護及びresinからの切り出しを行った。
【0071】
その後、下記の条件で分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、目的物を含む分画を集め凍結乾燥し白色粉末を得た。質量分析による(M+H)は 871.5(計算値871.4)であった。
【0072】
分取HPLCの条件は、以下の通りである。
・カラム: Inertsil ODS−3(4.6×250mm)
・移動相: A液:0.1%TFA/水、B液:アセトニトリル
・溶出条件: A/B:95/5〜35/65へ直線型濃度勾配溶出(30分)
・流速: 1.5ml/分
・溶出時間: 6.88分
【0073】
(実施例4)cyclo[−Cys−Asn−Pro−Glu−Thr−Gly−Glu−Cys−](環状ペプチド3;配列番号3で示される。)、cyclo[−Cys−Gln−Leu−Asp−Pro−Glu−Thr−Gly−Glu−Cys−]−Leu(環状ペプチド4;配列番号4で示される。)、FAM−cyclo[−Cys−Asp−Pro−Glu−Thr−Gly−Glu−Cys−](環状ペプチド5;配列番号5)の合成:
本発明の環状ペプチド3、4及び5を下記工程にて合成した。まず、市販のFmoc−Cys(Trt)−TrtA−PEG resin(渡辺化学)、Fmoc−Leu−alko resin(渡辺化学)及びFmoc−Cys(Trt)−TrtA−PEG resin(渡辺化学)を用い、マルチペプチドシンセサイザーACT−396によりペプチド鎖を伸長し、それぞれFmoc−Cys(Trt)−Asn−Pro−Glu(OtBu)−Thr(tBu)−Gly−Glu(OtBu)−Cys(Trt)−TrtA−PEG resin、Fmoc−Cys(Trt)−Gln−Leu−Asp(OtBu)−Pro−Glu(OtBu)−Thr(tBu)−Gly−Glu(OtBu)−Cys(Trt)−Leu−alko resin、FAM−Cys(Trt)−Asp(OtBu)−Pro−Glu(OtBu)−Thr(tBu)−Gly−Glu(OtBu)−Cys(Trt)−TrtA−PEG resinを合成した。次に、実施例1に記載の方法で、脱保護及び切り出しを行った。得られた未精製ペプチドを、20μLのDMSOに溶解し、さらに水80μLを添加し、DTNBを用いて環化した。
【0074】
その後、下記の条件で分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、目的物を含む分画を集め凍結乾燥し白色粉末を得た。
【0075】
各ペプチドの分析値及び分取HPLCの条件は以下の通りである。
(1)環状ペプチド3(cyclo[−Cys−Asn−Pro−Glu−Thr−Gly−Glu−Cys−]):
a)質量分析による(M+H): 896.3(計算値896.3)
b)分取HPLC条件
・カラム: Inertsil ODS−3(4.6×250mm)
・移動相: A液:0.1%TFA/水、B液:アセトニトリル
・溶出条件: A/B:95/5〜35/65への直線型濃度勾配溶出(30分)
・流速: 1.5ml/分
・溶出時間: 8.80分
(2)環状ペプチド4(cyclo[−Cys−Gln−Leu−Asp−Pro−Glu−Thr−Gly−Glu−Cys−]−Leu):
a)質量分による(M+H): 1205.5(計算値1205.5)
b)分取HPLC条件:
・カラム: Inertsil ODS−3(4.6×250mm)
・移動相:A液: 0.1%TFA/水、B液:アセトニトリル
・溶出条件: A/B:95/5〜35/65への直線型濃度勾配溶出(30分)
・流速: 1.5ml/分
・溶出時間: 12.58分
(3)環状ペプチド5(FAM−cyclo[−Cys−Asp−Pro−Glu−Thr−Gly−Glu−Cys−]):
a)質量分析による(M+H): 1255.2(計算値1255.3)
b)分取HPLC条件
・カラム: Inertsil ODS−3(4.6×250mm)
・移動相: A液:0.1%TFA/水、B液:アセトニトリル
・溶出条件: A/B:95/5〜35/65への直線型濃度勾配溶出(30分)
・流速: 1.5ml/分
・溶出時間: 11.12分
【0076】
(実施例5)ヒトKeap1−DCタンパク質の発現及び精製
(1)ヒトKeap1−DC(アミノ酸残基番号321−609)が組み込まれた発現ベクターの作製:
ヒトKeap1−DC(アミノ酸残基番号321−609)は、下記工程にてPCR法を用いてクローニングし、発現ベクターを作製した。
ヒト肝細胞がん由来Huh7細胞から抽出した全RNAからcDNAを作製し、これを鋳型として、ヒトKeap1の塩基配列に基づき設計したプライマーを用いて、PCRを行った。なお、ヒトKeap1の塩基配列は、National Center for Biotechnology Information(NCBI;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)の受入番号NM_203500として公開されており、この塩基配列情報を用いてプライマー設計した。用いたプライマーは、フォワード側:5'−accctgcacaagcccacgc−3'(配列番号7)であり、リバース側:5'−tcaacaggtacagttctgctgg−3'(配列番号8)である。PCRで得られたDNA断片をpGEM−T(Easy)Vector(Promega社)にサブクローニングし、ポジティブクローンの塩基配列を調べ、確かにヒトKeap1−DCをコードしていることを確認した。
【0077】
その後、目的のヒトKeap1−DCの塩基配列の末端に制限酵素NdeI及びBamHI認識配列が付加されたDNA断片を取得できるように設計したプライマーを用いてPCRした。用いたプライマーは、フォワード側:5'−catatggcgcccaaggtgggccgcctg−3'(配列番号9)であり、リバース側: 5'−ggatcctcaggtgacagccacgcccaccccac−3’(配列番号10)である。PCRで得られたDNA断片をpTA2 Vectorにサブクローニングし、ヒトKeap1−DCが挿入されたhKeap1−DC/pTA2を得た。
【0078】
得られたhKeap1−DC/pTA2を、制限酵素NdeI及びBamHIで切断し、ヒトKeap1−DCを含むDNA断片をpET−15b VectorのNdeI/BamHI開裂部位に挿入し、ヒトKeap1−DCが挿入されたhKeap1−DC/pET−15bを得た。
【0079】
さらに、得られたhKeap1−DC/pET−15bを制限酵素NdeI及びBamHIで切断し、ヒトKeap1−DCを含むDNA断片をpET−19b Vector(Novagen社)のNdeI/BamHI開裂部位に挿入し、hKeap1−DC/pET−19bを得た。
【0080】
(2)ヒトKeap1−DCタンパク質発現:
hKeap1−DC/pET−19bを大腸菌BL21(DE3)(Novagen社)へ形質転換した。カルベニシリン(以下、Car;ナカライテスク社)による薬剤選別により得られた単一コロニーを10mLのLB/Car培地で37℃にて一晩培養した。翌日、この培養液2mLを100mLのPlusgrow(ナカライテスク社)/Car培地に加え、37℃にてOD600>0.5になるまで培養を行った。20℃にて30分間静置した後、終濃度0.2mmol/LとなるようIPTG(ナカライテスク社)を培地に添加し、20℃にてタンパク質誘導を一晩行った。
【0081】
(3)ヒトKeap1−DCタンパク質の精製:
上記(2)にてタンパク質誘導を行った大腸菌培養液を2等分に分け、4℃にて5,000×g、20分間遠心して大腸菌を回収した。その内の1本をBugBuster HT(Novagen社)を用いて溶菌し、4℃にて20,000×g、20分間遠心して可溶画分を回収した。終濃度10mmol/Lになるようにイミダゾール(ナカライテスク社)を添加して0.45μmのPVDFフィルター(Millipore社)でろ過した。結合バッファー(20mmol/L Phosphate buffer pH7.4(Wako社)、500mmol/L NaCl(Wako社)、10mmol/L イミダゾール)で平衡化したHisTrap HP 1mLカラム(GE healthcare社)に上記ろ液を添加した。5カラム容量の洗浄バッファー(20mmol/L Phosphate buffer pH7.4、500mmol/L NaCl、100mmol/L イミダゾール)でカラムを洗浄後、5カラム容量の溶出バッファー(20mmol/L Phosphate buffer、pH7.4、500mmol/L NaCl、1mol/Lイミダゾール)でタンパク質を溶出した。
【0082】
Amicon Ultra−15(MWCO=10,000;Millipore社)を用いてタンパク質を濃縮し、10mmol/L DTT(Wako社)を含むPBS(phosphate bufferd saline;Takara社)へのバッファー交換を行い、OD280を測定した。ヒトKeap1−DCのモル吸光係数(ε280=58,330cm−1M−1)及び分子量(34.5kDa)からタンパク濃度を算出した。得られたタンパク質は、終濃度10%になるようにグリセロール(Wako)を加え、−30℃にて保存した。
【0083】
(4)ヒトKeap1−DCタンパク質の確認:
上記(3)にて得られたタンパク質について、SDS−PAGEを行った。得られたタンパク質溶液にNuPAGE LDS Sample Buffe(Invitrogen社)及びNuPAGE Sample Reducing Agent(Invitrogen社)を加えて100℃にて5分間、タンパクを加熱変性させた。NuPAGE 4−12% Bis−Tris gel(Invitrogen社)及びNuPAGE MES SDS Running緩衝液(Invitrogen社)を用いて200V、35分間泳動した。なお、分子量マーカーにはNovex Sharp Pre−stained Protein Standard(Invitrogen社)を用いた。泳動終了後、SimplyBlue Safe Stain(Invitrogen社)を用いてゲルをCBB染色し、ヒトKeap1−DCの分子量相当位置にバンドを確認した。
【0084】
(実施例6)環状ペプチド5のKeap1結合試験:
環状ペプチド5について、蛍光偏光解消法を用い、Keap1結合試験を行った。実施例5で得られたヒトKeap1−DCタンパク質(最終濃度0、0.1、0.3、1.0、3.0、10、30、100nM)と環状ペプチド5(最終濃度3nM)を含むPBSバッファー溶液50μLを、プレートリーダー用96穴プレートに添加し、プレートシールをして室温、暗所にて1時間静置後、プレートリーダー(FLIPR TETRA;Molecular Devices社)で、蛍光偏光強度(励起波長488nm、観測波長530±15nm)を測定した。測定は2度行い、その蛍光偏光強度の平均値を算出した。
【0085】
ヒトKeap1−DCタンパク質無添加時の蛍光偏光強度の平均値から、各濃度のヒトKeap1−DCタンパク質を添加したときの蛍光偏光強度平均値を差し引くことにより、環状ペプチド5の結合濃度(B)及び非結合濃度(F)を算出した。表計算ソフトMicrosoft Excel(Microsoft社)により、算出した各濃度におけるB/F及びBをプロットし、直線回帰した直線の傾きから解離定数(Kd)を求めた。その結果、環状ペプチド5の解離定数(Kd)2.0nMであった。したがって、環状ペプチド5が、ヒトKeap1−DCタンパク質との強い結合能を有することが示された。
【0086】
(実施例7)
環状ペプチド5を用いたKeap1結合阻害物質のスクリーニング
環状ペプチド5を用いて、蛍光偏光解消法を用い、Keap1結合阻害物質のスクリーニングを行った。被験物質として、直鎖ペプチド1及び環状ペプチド1〜4を用いた。
実施例5で得られたヒトKeap1−DCタンパク質(最終濃度10nM)、環状ペプチド5(最終濃度3nM)及び被験物質(最終濃度0.3〜300nM)を含むPBSバッファー溶液12μLをプレートリーダー用384穴プレートに添加し、プレートシールをして室温、暗所にて1時間静置後、プレートリーダー(FLIPR TETRA;Molecular Devices社)で、蛍光偏光強度(励起波長488nm、観測波長530±15nm)を測定した。測定は被験物質濃度毎に2度行い、その蛍光偏光強度の平均値を算出した。被験物質無添加時の蛍光偏光強度の平均値から、被験物質添加時の蛍光偏光強度平均値を差し引くことにより、結合率を算出した。被験物質の蛍光偏光を50%阻害する被験物質の濃度(IC50)は、表計算ソフトMicrosoft Excel(Microsoft社)により、50%に最も近い点とそれを挟む2点の計3点で直線回帰することにより算出した。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
測定した環状ペプチド1〜4はすべて、Nrf2部分ペプチドである直鎖ペプチド1よりも強いKeap1結合阻害活性を有することが示された。また、環状ペプチド5が、市販のプレートリーダーを用いた簡便な測定によるKeap1結合阻害物質のスクリーニングに使用でできることが示された。
【0089】
(実施例8)血漿中安定性試験:
直鎖ペプチド1、環状ペプチド1及び4について、血漿中消失量を測定した。へパリン添加ヒト血漿をリン酸緩衝生理食塩水希釈して、10%希釈ヒト血漿を調製した。次いで、被験ペプチドの10mM DMSO溶液を10%希釈ヒト血漿に加え、被験ペプチド最終濃度20μMの試験溶液(200μL)を調製した。試験溶液を37℃で保温し、0、5、10、20、240分後にそれぞれ冷却したアセトニトリル200μLを加え反応を止めた。これを3000rpm、10分の条件で遠心分離し、得られた上清をフィルターでろ過した後、ろ液40μLを超高速液体クロマトグラフィー(Ultra Performance Liquid Chromatography;UPLC)で分析した。
【0090】
UPLCはACQUITY(登録商標)UPLC(日本ウォーターズ社)を用い、検出器には、ACQUITY(登録商標)UPLCフォトダイオードアレイ(Photodiode Array;以下、PDA)検出器2996PDA(日本ウォーターズ社)を用いた。検出波長は210〜350nmとし、分析対象物にとって最適な波長を選択した。解析ソフトはEmpower2(日本ウォーターズ社)を使用した。カラムはCAPCELL PAK C18 MGIII、5μM、2.1mm ID×50mm(資生堂社)を使用し、移動相には0.08%トリフルオロ酢酸/HOとアセトニトリルを用い、流速0.5mL/分で、4分間でアセトニトリルを直線勾配(1→60%)で増加させた。その結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
環状ペプチド1及び4の残存率は、240分後で78及び89%で、血漿中でほとんど分解されることがなかった。一方、直鎖ペプチド1の残存率は、12%であった。これらの結果から、Nrf2部分ペプチドである直鎖ペプチド1に比べて、環状ペプチド1及び4は顕著な血漿中安定性を有し、血漿中で極めて安定に存在することは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の新規環状ペプチドを使用すれば、Keap1結合阻害化合物を効率よく簡便にスクリーニングすることができ、当該スクリーニングにより得られるKeap1結合阻害化合物は、細胞の酸化ストレス防御機構を促進し、酸化ストレスによって引き起こされる疾患の治療又は予防に有効な治療薬となり得る。
【配列表フリーテキスト】
【0094】
配列番号1、3及び4:環状ペプチド
配列番号2:環状ペプチド;そのC末端は、アミド(−CONH)型で、リジン残基の側鎖のアミノ基とアスパラギン酸残基の側鎖のカルボキシル基とは、アミド結合でクロスリンクしている。
配列番号5:環状ペプチド;そのN末端は、カルボキシルフルオロセインで標識されている。
配列番号6:合成ペプチド
配列番号7〜10:PCRプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)で示されるペプチドを含む環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
Y1−Y2−Glu−Y3−Gly−Glu・・・(I)
[式中、Y1は、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Y2は、アミノ酸残基を表し、Y3は、スレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表す。]
【請求項2】
以下の一般式(II)で示される、請求項1記載の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
【化1】

[式中、Xは、直接のアミド結合、アミノ酸残基又は2〜6個のアミノ酸残基からなるペプチド表し、Y1は、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Y2は、アミノ酸残基を表し、Y3は、スレオニン残基、セリン残基、アスパラギン残基又はアスパラギン酸残基を表し、Zは、直接の共有結合、−SS−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH)CO−、−CON(CH)−、−S−、−O−、−CO−又は−NH−を表し、R1は、CONH−、NH−、又は水素原子を表し、R2は、−COOH、−CONH、又は水素原子を表し、m及びnは、それぞれ独立して、0〜4を表す。]
【請求項3】
Zは、−SS−を表し、R1は、CONH−又はNH−を表し、R2は−COOH又は−CONHを表し、m及びnは1を表す、請求項2記載の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
Zは、−NHCO−を表し、mは、3又は4を表し、nは、2又は3を表す、請求項2記載の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
Zは、−CONH−を表し、mは、2又は3を表し、nは、3又は4を表す、請求項2記載の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
Xは、直接のアミド結合又は2個のアミノ酸残基からなるペプチド表す、請求項2〜5のいずれか一項記載の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
Y2は、プロリン残基である、請求項1〜6のいずれか一項記載の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
Y3は、スレオニン残基である、請求項1〜7のいずれか一項記載の環状ペプチド又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1〜9のいずれか一項記載の環状ペプチドの修飾ペプチド。
修飾ペプチド。
【請求項10】
Kelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質のスクリーニング方法であって、
被スクリーニング物質の存在下及び非存在下において、請求項9記載の修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1とを溶液中で接触させ、前記修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量を測定する測定ステップと、
前記被スクリーニング物質の存在下における前記修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量(A)と、前記被スクリーニング物質の非存在下における前記修飾ペプチドとKelch様ECH結合タンパク質1との結合量(A)とを比較する比較ステップと、
前記Bが、前記Bよりも少ない場合に、前記被スクリーニング物質はKelch様ECH結合タンパク質1の結合阻害物質であると判定する判定ステップと、
を備えるスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−51826(P2012−51826A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194356(P2010−194356)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】