説明

環状化合物の含有率が小さい水性ポリウレタン分散液

a)ジイソシアナート、b)ジオール、そのうち、b1)ジオール(b)の全量に対して10〜100mol%の、500〜5000g/molの分子量を有するジオール及びb2)ジオール(b)の全量に対して0〜90mol%の、60〜500g/molの分子量を有するジオール、c)少なくとも1個のイソシアナート基又は少なくとも1個のイソシアナート反応基を有し、更に少なくとも1個の親水基又は潜在的親水基を有し、これによりポリウレタンの水分散性をもたらす、モノマー(a)及び(b)とは異なるモノマー、d)場合により、アルコール性ヒドロキシル基、第一級又は第二級アミノ基又はイソシアナート基である反応基を有する、モノマー(a)〜(c)とは異なる更なる多価化合物、e)場合により、アルコール性ヒドロキシル基、第一級又は第二級アミノ基又はイソシアナート基である反応基を有する、モノマー(a)〜(d)とは異なる一価化合物から合成されたポリウレタンを含有する水性分散液であって、ジオールb1が、ジオールb1の100質量部に対して0.5質量部未満の環状化合物を含有することを特徴とする水性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、
a)ジイソシアナート、
b)ジオール、そのうち、
1)ジオール(b)の全量に対して10〜100mol%の、500〜5000の分子量を有するジオール及び
2)ジオール(b)の全量に対して0〜90mol%の、60〜500g/molの分子量を有するジオール、
c)少なくとも1個のイソシアナート基又はイソシアナートに対して反応性の少なくとも1個の基を有し、更に少なくとも1個の親水基又は潜在的親水基を有し、これによりポリウレタンの水分散性をもたらす、モノマー(a)及び(b)とは異なるモノマー、
d)場合により、アルコール性ヒドロキシル基、第一級又は第二級アミノ基又はイソシアナート基である反応基を有する、モノマー(a)〜(c)とは異なる更なる多価化合物、
e)場合により、アルコール性ヒドロキシル基、第一級又は第二級アミノ基又はイソシアナート基である反応基を有する、モノマー(a)〜(d)とは異なる一価化合物から合成されたポリウレタンを含有する水性分散液であって、
ジオールb1が、ジオールb1の100質量部に対して0.5質量部未満の環状化合物を含有することを特徴とする水性分散液に関する。
【0002】
更に本発明は、種々の材料からの物品をこの分散液を用いて被覆、接着及び含浸する方法、この分散液で被覆、接着及び含浸された物品、並びに本発明にかかる分散液を加水分解耐性の被覆材料として用いる使用に関する。
【0003】
ポリウレタンを含有する水性分散液(略:PUR分散液)を接着剤、特に積層接着剤(Kaschierklebstoff)、又は被覆剤、例えば織物又は皮革用被覆剤又は塗料中に結合剤として用いる使用は、公知である。
【0004】
この場合、使用される原料、特にジオールb1が、環状化合物、例えば環状エステル又は環状エーテルを含有することが欠点である。これらの環状化合物は、一般的にイソシアナート反応基を有さないので、製造後にもポリウレタン中に存在する。このポリウレタンを接着剤又は被覆剤に加工すると、これらの環状化合物が部分的にポリマー中に残留し、そしてそこで不所望な可塑作用をもたらす。他方、これらの環状化合物は、PUR分散液の使用の際に、これを用いて製造された接着剤又は被覆剤から拡散し、そして実質的にいわゆるフォギング効果(Fogging-Effect)をもたらすことがある。しばしば、環状化合物が接着剤皮膜又は被覆皮膜の界面を流れ、そしてそこでこの皮膜の基材への付着性を低下させることも生ずる。
【0005】
DE−A10324306からは、所定の条件下で蒸留により揮発性化合物から遊離したポリヒドロキシ化合物から製造されたポリウレタン分散液が、低フォギング被覆の製造に好適であることが公知である。
【0006】
これに応じて、冒頭に定義された水性分散液を見出した。本発明にかかる水性分散液は、他のモノマーの他にジイソシアナートa)から由来するポリウレタンを含有し、その際、好ましくは、慣用的にポリウレタン化学において使用されるジイソシアナートa)を使用する。
【0007】
特に、モノマー(a)としてジイソシアナートX(NCO)2を挙げることができ、ここで、Xは、炭素原子4〜12個を有する脂肪族炭化水素基、炭素原子6〜15個を有する脂環式炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基又は炭素原子7〜15個を有する芳香脂肪族炭化水素基を表す。かかるジイソシアナートの例は、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4′−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4′−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、p−キシリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、例えばトランス/トランス−異性体、シス/シス−異性体及びシス/トランス−異性体並びにこれらの化合物からなる混合物である。
【0008】
かかるジイソシアナートは、商業的に入手可能である。
【0009】
これらのイソシアナートの混合物として、特に、ジイソシアナトトルエン及びジイソシアナトジフェニルメタンのそれぞれの構造異性体の混合物が重要であり、特に、2,4−ジイソシアナトトルエン80mol%及び2,6−ジイソシアナトトルエン20mol%からなる混合物が好適である。更に、芳香族イソシアナート、例えば2,4−ジイソシアナトトルエン及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエンと、脂肪族又は脂環式のイソシアナート、例えばヘキサメチレンジイソシアナート又はIPDIとの混合物が特に有利であり、その際、脂肪族イソシアナートと芳香族イソシアナートとの好ましい混合比は4:1〜1:4である。
【0010】
ポリウレタンの合成のためには、化合物として、前記の化合物以外に、遊離イソシアナート基に加えて、キャップされた更なるイソシアナート基、例えばウレトジオン基を有するイソシアナートも使用することができる。
【0011】
良好な皮膜形成及び弾性に関して、ジオール(b)として、主として、約500〜5000、好ましくは約1000〜3000g/molの分子量を有するより高分子ジオール(b1)が挙げられる。
【0012】
ジオール(b1)は、例えばUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、p.62〜65から知られているポリエステルポリオールであってよい。二価アルコールと二価カルボン酸との反応によって得られたポリエステルポリオールを使用することが好ましい。遊離ポリカルボン酸の代わりに、相応する無水ポリカルボン酸又は低級アルコールの相応するポリカルボン酸エステル又はそれらの混合物を、ポリエステルポリオールの製造に使用することもできる。このポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族又は複素環化合物であってよく、かつ場合により例えばハロゲン原子で置換されており、かつ/又は不飽和であってよい。これらの例として、次のものを挙げることができる:スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸。一般式HOOCー(CH2yーCOOHで示され、yは、1〜20の数であり、好ましくは2〜20の偶数であるジカルボン酸が好ましく、例えば酒石酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジカルボン酸である。
【0013】
多価アルコールとして、例えばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、例えば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、更にジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコールが挙げられる。一般式HOー(CH2xーOHで示され、その式中、xは、1〜20の数、好ましくは2〜20の偶数であるアルコールが好ましい。この例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール及びドデカン−1,12−ジオールである。更に、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0014】
更に、例えばホスゲンと、ポリエステルポリオールの合成成分として上述の低分子アルコールの過剰量との反応によって得ることができるポリカーボネートジオールも挙げられる。
【0015】
ラクトンベースのポリエステルジオールも好適であり、この場合、ラクトンのホモ−又はコポリマー、好ましくは、好適な二官能性開始剤分子での末端ヒドロキシル基を有するラクトンのアダクトである。ラクトンとしては、特に一般式HO−(CH2z−COOHで示され、その式中、zは、1〜20の数であり、かつメチレン単位のH原子は、C1〜C4−アルキル基で置換されていてもよい化合物から誘導されたラクトンが挙げられる。例は、e−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、g−ブチロラクトン及び/又はメチル−e−カプロラクトン並びにそれらの混合物である。好適な開始剤成分は、例えば、ポリエステルポリオールの合成成分として上述した低分子二価アルコールである。相応のe−カプロラクトンのポリマーが特に好ましい。低級のポリエステルジオール又はポリエーテルジオールも、ラクトンポリマーの製造のための開始剤として使用されていてよい。ラクトンのポリマーの代わりに、ラクトンに相応するヒドロキシカルボン酸の相応する化学的に等価な重縮合物も、使用することができる。
【0016】
更にモノマー(b1)としては、ポリエーテルジオールが挙げられる。ポリエーテルジオールは特に、例えばBF3の存在での、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンのそれ自体との重合により、又はこれらの化合物の、場合により混合物で又は連続して、反応性水素原子を有する開始成分、例えばアルコール又はアミン、例えば水、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン又はアニリンへの付加により、得ることができる。ポリプロピレンオキシド、240〜5000及びとりわけ500〜4500の分子量のポリテトラヒドロフランが特に好ましい。
【0017】
同様に、ポリヒドロキシオレフィン、好ましくは2個の末端ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシオレフィン、例えばa,−w−ジヒドロキシポリブタジエン、a,−w−ジヒドロキシポリメタクリルエステル又はa,−w−ジヒドロキシポリアクリルエステルがモノマー(c1)として好適である。かかる化合物は、例えばEP−A0622378から知られている。更なる好適なポリオールは、ポリアセタール、ポリシロキサン及びアルキド樹脂である。
【0018】
これらのポリオールは、0.1:1〜1:9の比の混合物として使用してもよい。
【0019】
ポリウレタンの硬さ及び弾性率は、ジオール(b)として、ジオール(b1)に加えて、約60〜500、好ましくは62〜200g/molの分子量を有する低分子ジオール(b2)を更に使用する場合に高めることができる。
【0020】
ジオールb1は、0.5質量%未満、特に0.2質量%未満、殊に好ましくは0.1質量%未満の環状化合物を含有する。この環状化合物は、特に環状エステル及び環状エーテルである。これらの化合物は、ポリエステル−又はポリエーテルオールの製造の際に副生物として生ずる。この環状化合物の分子量は、一般的に500g/mol未満、特に300g/mol未満である。
【0021】
この環状化合物は、ジオールb1から、このジオールの更なる反応前に除去することができる。このために、例えばジオールを蒸留処理に供してよい。環状化合物の含有率は、ガス、例えば窒素、アルゴン、水蒸気又は二酸化炭素の導入により減らすことができる。
【0022】
好適な洗浄液体、例えば水を用いる処理によっても、この環状化合物の含有率を減少させることができる。
【0023】
モノマー(b2)としては、とりわけ、ポリエステルポリオールの製造のために挙げられた短鎖アルカンジオールの合成成分を使用し、その際、炭素原子2〜12個及び偶数の炭素原子を有する非分枝鎖状ジオール並びにペンタン−1,5−ジオール及びネオペンチルグリコールが好ましい。
【0024】
好ましくは、ジオール(b1)の割合は、ジオール(b)の全量に対して10〜100mol%であり、かつモノマー(b2)の割合は、ジオール(b)の全量に対して0〜90mol%である。特に好ましくは、ジオール(b1)とモノマー(b2)との比は、0.1:1〜5:1、特に好ましくは0.2:1〜2:1である。
【0025】
ポリウレタンの水分散性を達成するために、ポリウレタンは、成分(a)、(b)及び場合により(d)の他に、少なくとも1個のイソシアナート基又はイソシアナート基に対して反応性の少なくとも1個の基及び更に少なくとも1個の親水基又は親水基へ変換されうる1個の基を有する、成分(a)、(b)及び(d)とは異なるモノマー(c)から合成される。以下の文章において、「親水基又は潜在的親水基」という概念は、「(潜在的)親水基」と略す。(潜在的)親水基はイソシアナートと、ポリマー主鎖の合成に利用されるモノマーの官能基よりも実質的にゆっくりと反応する。
【0026】
成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の全量に対する(潜在的)親水基を有する成分の割合は、一般的に、(潜在的)親水基のモル量が、全てのモノマー(a)〜(e)の質量を基準として、30〜1000、好ましくは50〜500及び特に好ましくは80〜300mmol/kgであるように算定される。
【0027】
(潜在的)親水基は、非イオン性親水基又は好ましくは(潜在的)イオン性親水基であってよい。
【0028】
非イオン性親水基としては、特に、好ましくはエチレンオキシド繰返し単位5〜100個、特に10〜80個からなるポリエチレングリコールエーテルが挙げられる。ポリエチレンオキシド単位含有率は、全てのモノマー(a)〜(e)の質量に対して一般的に0〜10、好ましくは0〜6質量%である。
【0029】
非イオン性親水基を有する好ましいモノマーは、ポリエチレンオキシドジオール、ポリエチレンオキシドモノオール並びにポリエチレングリコールと、末端エーテル化ポリエチレングリコール基を有するジイソシアナートとからなる反応生成物である。かかるジイソシアナート並びにそれらの製造方法は、特許文献US−A3905929及びUS−A3920598に示されている。
【0030】
イオン性親水基は、とりわけ、アニオン性基、例えば、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形の、スルホナート基、カルボキシラート基及びホスファート基並びにカチオン性基、例えばアンモニウム基、特にプロトン化された第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基である。
【0031】
潜在的イオン性親水基は、とりわけ、単純な中和反応、加水分解反応又は第四級化反応により、前記のイオン性親水基へ変換されうる親水基、すなわち、例えばカルボン酸基又は第三級アミノ基である。
【0032】
(潜在的)イオン性モノマー(c)は、例えば、Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、p.311-313に、及び例えばDE−A1495745に詳しく記載されている。
【0033】
(潜在的)カチオン性モノマー(c)として、とりわけ、第三級アミノ基を有するモノマーが特に事実上重要であり、例えば:トリス−(ヒドロキシアルキル)−アミン、N,N′−ビス(ヒドロキシアルキル)−アルキルアミン、N−ヒドロキシアルキル−ジアルキルアミン、トリス−(アミノアルキル)−アミン、N,N′−ビス(アミノアルキル)−アルキルアミン、N−アミノアルキル−ジアルキルアミン、その際、これらの第三級アミンのアルキル基及びアルカンジイル単位は、互いに無関係に炭素原子1〜6個からなる。更に、好ましくは2個の末端ヒドロキシル基を有し、第三級窒素原子を有するポリエーテルが挙げられ、これらは例えば、アミン窒素に結合した2個の水素原子を有しているアミン、例えばメチルアミン、アニリン又はN,N′−ジメチルヒドラジンのアルコキシル化により、それ自体として通常の方法で得ることができる。かかるポリエーテルは、一般的に500〜6000g/molである分子量を有する。
【0034】
これらの第三級アミンは、酸、好ましくは強鉱酸、例えばリン酸、硫酸、ハロゲン化水素酸又は強有機酸を用いて、又は好適な第四級化剤、例えばハロゲン化C1〜C6−アルキル又はハロゲン化ベンジル、例えば臭化物又は塩化物との反応により、アンモニウム塩へ変換される。
【0035】
(潜在的)アニオン性基を有するモノマーとして、通常、少なくとも1個のアルコール性ヒドロキシル基又は少なくとも1個の第一級又は第二級のアミノ基を有する、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族又は芳香族のカルボン酸及びスルホン酸が挙げられる。好ましくは、ジヒドロキシアルキルカルボン酸、とりわけ3〜10個の炭素原子を有するもの、例えばUS−A3412054に記載されているものが好ましい。特に、一般式(c1
【化1】

[式中、R1及びR2は、C1〜C4−アルカンジイル単位を表し、かつR3は、C1−〜C4−アルキル単位を表す]で示される化合物、及びとりわけジメチロールプロピオン酸(DMPA)が好ましい。
【0036】
更に、相応するジヒドロキシスルホン酸及びジヒドロキシホスホン酸、例えば2,3−ジヒドロキシプロパンホスホン酸が好適である。
【0037】
それ以外には、少なくとも2個のカルボキシラート基を有し、500を上回り10000g/molまでの分子量を有するジヒドロキシル化合物が好適であり、前記化合物はDE−A3911827から知られている。これらは、重付加反応において2:1〜1.05:1のモル比でジヒドロキシル化合物と、テトラカルボン酸二無水物、例えばピロメリト酸二無水物又はシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物との反応により得ることができる。ジヒドロキシル化合物として、特に、鎖長延長剤として挙げられたモノマー(b2)並びにジオール(b1)が好適である。
【0038】
イソシアナートに対して反応性のアミノ基を有するモノマー(c)として、アミノカルボン酸、例えばリシン、β−アラニン又はDE−A2034479に挙げられた、脂肪族のジ第一級ジアミンのα,β−不飽和カルボン酸又はスルホン酸への付加物が挙げられる。
【0039】
かかる化合物は、式(I)(c2
2N−R4−NH−R5−X (c2)
[式中、R4及びR5は、互いに無関係に、C1〜C6−アルカンジイル単位であり、好ましくはエチレンであり、かつXは、COOH又はSO3Hである]に従う。
【0040】
式(c2)の特に好ましい化合物は、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンカルボン酸並びにN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸もしくは相応するアルカリ金属塩であり、その際にNaは対イオンとして特に好ましい。
【0041】
前記の脂肪族のジ第一級ジアミンの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸への付加物が更に特に好ましく、これらは例えば特許文献DE−B1954090に記載されている。
【0042】
潜在的イオン性基を有するモノマーを使用する場合は、それらのモノマーのイオン形への変換は、イソシアナート重付加の前、その間、しかしながら好ましくはその後に行うことができる、それというのも、イオン性モノマーは、反応混合物中にしばしば難溶であるに過ぎないからである。特に好ましくは、スルホナート基又はカルボキシラート基は、それらと、対イオンとしてのアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンとの塩の形で存在する。
【0043】
モノマー(a)〜(c)とは異なり、かつ場合によりポリウレタンの成分でもあるモノマー(d)は、一般的に架橋又は鎖長延長に役立つ。前記モノマーは、一般的に、二価よりも多い非フェノール性アルコール、2個以上の第一級及び/又は第三級のアミノ基を有するアミン並びに1個以上のアルコール性ヒドロキシル基に加えて1個以上の第一級及び/又は第二級のアミノ基を有する化合物である。
【0044】
特定の分枝度又は架橋度の調節に役立ちうる、2よりも大きい原子価を有するアルコールは、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン又は糖である。
【0045】
更に、ヒドロキシル基に加えてイソシアナートに対して反応性の更なる基を有するモノアルコール、例えば1個以上の第一級及び/又は第二級のアミノ基を有するモノアルコール、例えばモノエタノールアミンが挙げられる。
【0046】
2個以上の第一級及び/又は第二級のアミノ基を有するポリアミンは、とりわけ、鎖長延長もしくは架橋が水の存在で行われるべきである場合に使用される、それというのも、アミンは通例、アルコール又は水よりも迅速にイソシアナートと反応するからである。これはしばしば、架橋されたポリウレタン又は高い分子量を有するポリウレタンの水性分散液が望ましい場合に必要である。そのような場合に、イソシアナート基を有するプレポリマーが製造され、これらが迅速に水中に分散され、次いでイソシアナートに対して反応性の複数のアミノ基を有する化合物の添加により連鎖延長又は架橋されるようにして行われる。
【0047】
これに好適なアミンは、一般的に、第一級及び第二級のアミノ基の群から選択される少なくとも2個のアミノ基を有し、32〜500g/mol、好ましくは60〜300g/molの分子量範囲の多官能性アミンである。これらの例は、ジアミン、例えばジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水化物又はトリアミン、例えばジエチレントリアミン又は1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタンである。
【0048】
前記アミンは、ブロックされた形で、例えば相応するケチミン(例えばCA−A1129128を参照のこと)、ケタジン(例えばUS−A4269748を参照のこと)又はアミン塩(US−A4292226を参照のこと)の形で使用することもできる。例えばUS−A4192937において使用されるような、オキサゾリジンもキャップされたポリアミンであり、これらは、本発明にかかるポリウレタンの製造のためにプレポリマーの鎖長延長に使用されることができる。そのようなキャップされたポリアミンの使用の場合に、これらは、一般的に水の不存在下でプレポリマーと混合され、かつこれらの混合物は引き続いて、分散水又は分散水の一部と混合されるので、加水分解により相応するポリアミンが遊離される。
【0049】
好ましくは、ジアミン及びトリアミンの混合物、特に好ましくはイソホロンジアミン(IPDA)及びジエチレントリアミン(DETA)の混合物が使用される。
【0050】
前記ポリウレタンは、成分(b)及び(d)の全量に対して、モノマー(d)として、イソシアナートに対して反応性の少なくとも2個のアミノ基を有するポリアミンを好ましくは1〜30、特に好ましくは4〜25mol%含有する。
【0051】
特定の分枝度又は架橋度の調節に役立ちうる、2よりも大きい原子価を有するアルコールは、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン又は糖である。
【0052】
同じ目的のために、モノマー(d)として、二価より多いイソシアナートを使用することもできる。市販の化合物は、例えばイソシアヌレート又はヘキサメチレンジイソシアナートのビウレットである。
【0053】
場合により併用されるモノマー(e)は、モノイソシアナート、モノアルコール及びモノ第一級及びモノ第二級のアミンである。一般的に、それらの割合は、前記モノマーの全モル量に対して最大10mol%である。これらの単官能性の化合物は、通常、別の官能基、例えばオレフィン基又はカルボニル基を有し、かつポリウレタン中への、ポリウレタンの分散もしくは架橋又は別の重合類似反応を可能にする官能基の導入に役立つ。このためには、モノマー、例えばイソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート(TMI)及びアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチルアクリラート又はヒドロキシエチルメタクリラートが挙げられる。
【0054】
ポリウレタン化学の分野では、ポリウレタンの分子量が、互いに反応性のモノマーの割合並びに1分子あたりの反応性の官能基の数の算術平均の選択によりどのように調節されることができるかは、一般的に知られている。
【0055】
通常は、成分(a)〜(e)並びにそのそれぞれのモル量は、
A)イソシアナート基のモル量、及び
B)ヒドロキシル基のモル量及びイソシアナートと付加反応において反応することができる官能基のモル量の合計
の比A:Bが、0.5:1〜2:1であり、好ましくは0.8:1〜1.5、特に好ましくは0.9:1〜1.2:1になるように選択する。極めて特に好ましくは、比A:Bはできるだけ1:1に近い。
【0056】
使用されるモノマー(a)〜(e)は平均して、通常1.5〜2.5、好ましくは1.9〜2.1、特に好ましくは2.0のイソシアナート基もしくはイソシアナートと付加反応において反応することができる官能基を有する。
【0057】
本発明にかかる水性分散液中に存在するポリウレタンの製造のための成分(a)〜(e)の重付加は、好ましくは20〜180℃、好ましくは50〜150℃の反応温度で常圧下に又は自己圧下で行う。
【0058】
本発明の反応時間は、1〜20時間の範囲内、特に1.5〜10時間の範囲内である。ポリウレタン化学分野から、この反応時間は多くの反応パラメータ、例えば温度、モノマー濃度、モノマーの反応性により影響を受けることは知られている。
【0059】
重合装置としては、特に低粘度及び良好な熱放散のために溶剤を併用する場合には撹拌槽が挙げられる。
【0060】
好ましい溶剤は、水と制限無く混合可能であり、常圧で40〜100℃の沸点を有し、かつモノマーと反応しないか又はゆっくりと反応するにすぎない。
【0061】
大抵は、この分散液は以下の方法により製造する:
「アセトン法」により、水と混合可能であり、かつ常圧で100℃未満の沸点を有する溶剤中で、成分(a)〜(c)からイオン性ポリウレタンを製造する。水が連続相である分散液が形成されるまで水を添加する。
【0062】
「プレポリマー混合法」は、反応した(潜在的)イオン性ポリウレタンではなく、最初に、イソシアナート基を有するプレポリマーを製造するという点でアセトン法とは異なる。この場合、この成分は、上述の定義による比A:Bが1.0より大きく3まで、好ましくは1.05〜1.5になるように選択する。このプレポリマーは、最初に水中に分散させ、次いで場合によりそのイソシアナート基と、イソシアナートに対して反応する2個より多いアミノ基を有するアミンとの反応により架橋させるか又はイソシアナートに対して反応する2個より多いアミノ基を有するアミンを用いて鎖延長する。この鎖延長は、アミンを添加しない場合にも生ずる。この場合、イソシアナート基がアミノ基に加水分解し、これはプレポリマーの依然として残留するイソシアナート基と反応して鎖延長する。
【0063】
慣用的に、ポリウレタンの製造の際に溶剤を併用する場合には、この溶剤の大部分を分散液から、例えば減圧での蒸留により除去する。好ましくは、この分散液は、10質量%未満の溶剤含有率を有し、かつ特に好ましくは溶剤を有さない。
【0064】
この分散液は、一般的に10〜75、好ましくは20〜65質量%の固体含有率及び10〜500mPas(20℃の温度及び250s-1の剪断速度で測定)の粘度を有する。
【0065】
環状化合物の含有率が小さいジオールb1を使用することにより、このポリウレタン分散液は、ポリウレタン(固体)100質量部に対して0.5質量部未満、特に0.2質量部未満、殊に好ましくは0.1質量部未満の環状化合物の含有量を有する。
【0066】
b1もしくはポリウレタン分散液中の環状化合物の小さい含有率は、ジオールb1からその反応前に既に環状化合物を分離することにより達せられる(上記参照のこと)。
【0067】
このポリウレタン分散液は、種々の基材又は織物及び皮革用の接着剤、被覆剤、特に塗料のための結合剤として好適である。
【0068】
これらの接着剤、被覆剤又は塗料は、このポリウレタン分散液のみからなっているか又は更なる成分を含有してよい。
【0069】
これらは、市販の助剤及び添加剤、例えば発泡剤、消泡剤、乳化剤、増粘剤及びチキソトロープ剤、着色剤、例えば染料及び顔料、粘着性付与樹脂(粘着性付与剤)を含有してよい。
【0070】
本発明にかかる分散液は、一般の慣用的方法により、すなわち例えば噴霧又はナイフ塗布により物品上に皮膜の形で塗布し、この分散液を乾燥させることにより、金属、プラスチック、紙、織物、皮革又は木材製の物品の被覆に好適である。
【0071】
本発明にかかる水性分散液は、とりわけ、より大きい弾性率、より大きい破断応力、破断伸び及び改善された基材への付着性を特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ジイソシアナート、
b)ジオール、そのうち
1)ジオール(b)の全量に対して10〜100mol%の、500〜5000の分子量を有するジオール、及び
2)ジオール(b)の全量に対して0〜90mol%の、60〜500g/molの分子量を有するジオール、
c)少なくとも1個のイソシアナート基又はイソシアナート基に対して反応性の少なくとも1個の基を有し、更に少なくとも1個の親水基又は潜在的親水基を有し、これによりポリウレタンの水分散性をもたらす、モノマー(a)及び(b)とは異なるモノマー、
d)場合により、アルコール性ヒドロキシル基、第一級又は第二級アミノ基又はイソシアナート基である反応基を有する、モノマー(a)〜(c)とは異なる更なる多価化合物、及び
e)場合により、アルコール性ヒドロキシル基、第一級又は第二級アミノ基又はイソシアナート基である反応基を有する、モノマー(a)〜(d)とは異なる一価化合物から合成されたポリウレタンを含有する水性分散液であって、
ジオールb1が、ジオールb1の100質量部に対して0.5質量部未満の環状化合物を含有することを特徴とする水性分散液。
【請求項2】
ジイソシアナート(a)として、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)並びにビス(−4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)が使用される、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
少なくとも50質量%のジオール(b1)が、ポリエステルジオール又はポリテトラヒドロフランである、請求項1又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
金属、プラスチック、紙、織物、皮革又は木材製の物品を被覆する方法において、請求項1から3までの何れか1項に記載の水性分散液を皮膜の形でこれらの物品上に塗布し、そしてこの分散液を乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項5】
金属、プラスチック、紙、織物、皮革又は木材製の物品を接着する方法において、請求項1から3までの何れか1項に記載の水性分散液を皮膜の形でこれらの一方の物品上に塗布し、そしてこの皮膜の乾燥前又は乾燥後にこの物品と他方の物品とを接合させることを特徴とする方法。
【請求項6】
織物、皮革又は紙製の物品を含浸する方法において、これらの物品を請求項1から3までの何れか1項に記載の水性分散液に浸漬し、次いで乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から3までの何れか1項に記載の水性分散液を用いて被覆、接着又は含浸された物品。
【請求項8】
金属、プラスチック、紙、織物、皮革又は木材製の物品用の被覆剤としての、請求項1から3までの何れか1項に記載の水性分散液の使用。

【公表番号】特表2008−530292(P2008−530292A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554558(P2007−554558)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050812
【国際公開番号】WO2006/084881
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】