生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具
【課題】均一性のある拡張力と、生体内管腔の湾曲した部位に対応して湾曲し、湾曲した部位に対してストレスを付与することがないステントおよび生体器官拡張器具を提供する。
【解決手段】ステント1は、複数の環状体2と、連結部3を備える。各環状体は、複数の一端側屈曲部21と複数の他端側屈曲部22とを有する。連結部3は、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部31と、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合う第2の連結線状部32とを備える。第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、環状体の一端側屈曲部21aの頂点と近接する側部と隣り合う環状体の他端側屈曲部22aの頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部に屈曲部31a,32aを有する。
【解決手段】ステント1は、複数の環状体2と、連結部3を備える。各環状体は、複数の一端側屈曲部21と複数の他端側屈曲部22とを有する。連結部3は、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部31と、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合う第2の連結線状部32とを備える。第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、環状体の一端側屈曲部21aの頂点と近接する側部と隣り合う環状体の他端側屈曲部22aの頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部に屈曲部31a,32aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体内管腔に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善に使用される生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内留置用ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するためにそこに留置する一般的には管状の医療用具である。ステントは、体外から体内に挿入するため、挿入時は直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
【0003】
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。ステントは、カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。ステントは、機能および留置方法によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、バルーン上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。
【0004】
そして、ステントは、血管等の生体内管腔の湾曲した部位に留置される場合がある。
特開平9−164209号公報(特許文献1)には、セルフエクスパンダブルステントである弯曲型スパイラルジグザグステントが開示されている。このステントは、弯曲した血管等の生体内管腔に載置する場合にも管腔壁に望ましくない応力を及ぼさないように予め弯曲されており、かつその弯曲方向を管腔の変形方向と正確に一致させるのが容易なスパイラル状のジグザグステントである。そして、弯曲型スパイラルジグザグステントは、屈曲部間の線材部11a、11bの長さが長短の繰り返しとなるようにジグザグ状に変形されスパイラル状に旋回する弾性線材11と、前記弾性線材11の屈曲部に形成された係止部13に結着された糸15とからなる。スパイラルの周期と同じ周期で前記屈曲部間の線材部長さが実質的に徐々に増減しているために、前記弾性線材11全体の包絡面が弯曲円筒状である。
また、本願出願人は、特開2009−240613号公報(特許文献2)を提案している。特許文献2のステントは、複数軸方向に配列した環状体とそれを連結する連結部3a、3bを備える。ステントは、その中心軸に対して、第1の方向には易変形性を有し、反対方向には難変形性を有する。ステントは、第1の周方向に所定長延びかつ先端開口33aを有するスリット32aとスリットの閉塞基端部を形成する易変形部36aとを有する第1の連結部3aと、第1の連結部とステントの中心軸を介して向かい合い、かつ、第1の周方向と反対方向に所定長延びかつ先端開口33bを有するスリット32bとスリットの閉塞基端部を形成する易変形部36bとを有する第2の連結部3bから構成される変形方向規制連結部を複数備える。
また、WO2009/80326(特許文献3)には、互いに隣接する波状環状体の屈曲部同士が2本の直線状の接続部により接続されたステントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−164209号公報
【特許文献2】特開2009−240613号公報
【特許文献3】WO2009/80326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のステントでは、弯曲した血管等の生体内管腔に載置する場合にも管腔壁に望ましくない応力を及ぼさないものとなっている。しかし、このステントでは、スパイラルジグザグステントであるため血管拡張力が十分なものではない。さらに、ステントの復元時の形状自体が湾曲しているため、生体内管腔の湾曲した部位に留置された後、人体の動き等により湾曲した部位が直線状に変形した場合に、抵抗となり、ステントの留置部位にストレスをかけるおそれが高い。また、特許文献2のステントでは、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲するとともに湾曲形状の逆方向への変形を確実に抑制するという点では、有効であるが、変形方向性を有している。また、特許文献3のものでも、接続部における変形性は良好なものではない。
【0007】
本発明の目的は、ステントとして全体的に十分な均一性のある拡張力を備え、かつ、湾曲した生体内管腔に留置した場合、変形方向性を有することなく、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲し、湾曲した部位に対してストレスを付与することなく追従する生体内留置用ステントおよびそれを備える生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 線状構成要素により環状に形成された複数の環状体が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部により連結された生体内留置用ステントであって、
前記各環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部とが近接するように配置されており、
前記連結部は、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部と、前記第1の連結線状部と前記ステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部とを備え、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部は、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部の頂点と近接する側部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部の頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部もしくは湾曲部を有するものである生体内留置用ステント。
【0009】
(2) 前記連結部により連結される前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部は、前記ステントの軸方向に整列しており、前記第1の連結線状部と前記第2の連結線状部は、両者間にある前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部の頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) 前記一端側屈曲部および前記他端側屈曲部は、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部より太くかつ前記環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている上記(1)または(2)に記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が近接する方向に屈曲もしくは湾曲するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(5) 前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が離間する方向に屈曲もしくは湾曲するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(6) 前記各環状体は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部とを繋ぐ複数の連接線状部を有しており、該連接線状部は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部を形成する線状構成要素より太いものとなっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(7) 前記連結部は、隣り合う環状体間に2つ以上設けられている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される上記(8)に記載のステントとを備える生体器官拡張器具。
(10) 前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) シースと、該シースの先端部内に収納された上記(10)のステントと、該シース内を摺動可能に挿通し、前記ステントを前記シースの先端より押し出すための内管とを備える生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0011】
本発明のステントは、線状構成要素により環状に形成された複数の環状体が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部により連結された生体内留置用ステントであって、各環状体は、ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部およびステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部とが近接するように配置されている。すなわち、ステント全体が、複数の環状体により構成されているため、十分な均一性のある拡張力を備える。そして、連結部は、環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部と、第1の連結線状部とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部とを備え、第1の連結線状部および第2の連結線状部は、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部の頂点と近接する側部と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部の頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部もしくは湾曲部を有するものとなっているため、変形方向性を有することなく、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲し、湾曲した部位に対してストレスを付与することなく追従する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図2】図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。
【図3】図3は、図1の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。
【図4】図4は、図2の部分拡大図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの部分拡大図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図7】図7は、図6の生体内留置用ステントの展開図である。
【図8】図8は、図6の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。
【図9】図9は、図7の部分拡大図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの部分拡大図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
【図13】図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。
【図14】図14は、図13に示した生体器官拡張器具の先端部の部分破断拡大図である。
【図15】図15は、図13に示した生体器官拡張器具に用いられている生体器官拡張器具本体の先端部の部分破断拡大図である。
【図16】図16は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の部分省略正面図である。
【図17】図17は、図16に示した生体器官拡張器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の生体内留置用ステントについて以下の好適実施例を用いて説明する。
本発明の生体内留置用ステント1は、線状構成要素により環状に形成された複数の環状体2が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部3(3a,4,4a)により連結された生体内留置用ステントである。各環状体2は、ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部21およびステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部22を有し、かつ、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部21と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部22とが近接するように配置されている。そして、連結部3(3a,4,4a)は、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部31と、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部32とを備え、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部21aの頂点と近接する側部と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部22aの頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部31a,32aもしくは湾曲部を有するものとなっている。
【0014】
この実施例のステント1は、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステント、いわゆるバルーン拡張型ステントとなっている。なお、本発明のステントは、バルーン拡張型ステントに限定されるものではない。
この実施例のステント1は、図1ないし図4に示すように、複数の環状体2を軸方向に隣り合うように配列するとともに、それぞれを接続した形態となっている。
そして、各環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部21およびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部22を有するとともに、環状に連続した無端の線状構成要素(具体的には、波線状体)により構成されている。
【0015】
そして、この実施例のステント1では、図1ないし図4に示すように環状体2は、ステントの一端側に位置する複数の一端側屈曲部21と他端側に位置する複数の他端側屈曲部22と一端側屈曲部21と他端側屈曲部22間を繋ぐ連接線状部23,24とを備える波状環状体となっている。そして、連接線状部23,24は、直線状部となっている。そして、軸方向に隣り合う環状体2は、ステントの一端側に位置する環状体2の他端側屈曲部22aと他端側に位置する環状体2の一端側屈曲部21aが近接し、かつ、向かい合うように(言い換えれば、ステントの軸方向に整列するように)配置されるとともに、連結部3により連結されている。
そして、ステント1は、図1の状態にて生体内に挿入され、ステントの内部より半径方向に広がる力が付加された時に、図3の状態を越えてさらに拡張する。そして、上記の変形時に、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、開く方向に変形するが、一端側屈曲部21(21a)と他端側屈曲部22(22a)間を繋ぐ連接線状部23,24は、実質的に変形しない。また、連結部3も実質的に変形しない。
【0016】
この実施例のステント1における環状体は、図1およびその展開図である図2に示すように、ほぼ同じピッチの複数の一端側屈曲部21と他端側屈曲部22と連接線状部23,24とを有し、環状に連続した無端の波線状体となっている。なお、各環状体における一端側屈曲部(もしくは他端側屈曲部)の数は、4〜10が好適である。そして、この実施例のステント1では、隣り合う環状体間には、2つの連結部3が設けられている。なお、本発明のステントの形態は、上述したステント1のような、複数の波線状体により構成されたもの、また、複数の波線状体の近接する屈曲部の頂点間を接合するものに限定されるものではない。
【0017】
そして、この実施例のステント1では、各連結部3は細い2本の連結線状部、すなわち、図4に示すように、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部31と、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部32とにより構成されている。また、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、ステントの他の線状構成要素(具体的には、一端側屈曲部21、他端側屈曲部22および連接線状部23,24)より易変形性を有することが好ましい。そして、この実施例のステント1では、第1の連結線状部31と第2の連結線状部32は、中央部にて両者が近接する方向に屈曲する屈曲部31a、32aを備えている。
具体的には、第1の連結線状部31は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の一方の側部)に一端を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の一方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aの頂点を結ぶ線方向に屈曲する細線状のものとなっている。特に、第1の連結線状部31は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ頂点より若干離間した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。
【0018】
第2の連結線状部32は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部31と反対方向に離間)した側部(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の他方の側部)に一端を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部31と反対方向に離間)した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の他方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aの頂点を結ぶ線方向に屈曲する細線状のものとなっている。さらに、第2の連結線状部32は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ若干離間(第1の連結線状部31と反対方向に離間)した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。そして、第2の連結線状部32は、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称の形態となっている。具体的には、この実施例のステント1では、連結部3により連結される一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aが、ステントの軸方向に整列しており(言い換えれば、向かい合っており)、第1の連結線状部31と第2の連結線状部32は、両者間にある一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aの頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている。
この実施例では、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。しかし、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32としては、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステント1では、連結部3の内部には、ステントの軸方向の中央部が窪んだ(言い換えれば、中央部が絞られた)略矩形状の開口33を有するものとなっている。
【0019】
なお、連結部としては、図5に示すようなものであってもよい。図5に示すステントの連結部3aの基本構成は、上述した連結部3と同じである。上述した実施例の連結部3では、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。この実施例の連結部3aは、第1の連結線状部31は、両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分31b,31cを備え、2つの平行線状部分31b、31c間に屈曲部31aが設けられている。同様に、第2の連結線状部32も両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分32b,32cを備え、2つの平行線状部分32b、32b間に屈曲部32aが設けられている。そして、第2の連結線状部32は、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称となっている。この実施例のステントにおいても、連結部3により連結される一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aが、ステントの軸方向に整列しており、第1の連結線状部31と第2の連結線状部32は、両者間にある一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aの頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている。また、この実施例においても屈曲部31a,32aは、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステントにおいても、連結部3aの内部には、ステントの軸方向の中央部が窪んだ(言い換えれば、中央部が絞られた)略矩形状の開口33aを有するものとなっており、かつ開口33aは、上述した開口33より大きいものとなっている。
【0020】
また、この実施例のステント1では、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32より太くかつ環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている。
具体的には、図1ないし図5に示すように、一端側屈曲部21と他端側屈曲部22間を繋ぐ連接線状部23,24に比べて、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、線幅が細いものとなっている。このため、ステント拡張時の一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の変形が容易であるとともに、連接線状部23,24により高い拡張保持力を発揮する。さらに、上述した第1の連結線状部31および第2の連結線状部32の線幅は、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)よりも細いものとなっている。このため、連結部3(第1の連結線状部31および第2の連結線状部32)は、良好な易変形性を有するものとなっており、ステント1を湾曲した生体内管腔に留置した際、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲する。また、上述したように向かい合うようにほぼ対称かつ所定距離離間した2本の細い第1の連結線状部31および第2の連結線状部32により連結部3を構成したことにより、連結部としても十分な強度を持つものとなっている。
【0021】
次に、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントについて説明する。
図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの正面図である。図7は、図6の生体内留置用ステントの展開図である。図8は、図6の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。図9は、図7の部分拡大図である。図10は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの部分拡大図である。
この実施例のステント10の基本構成は、上述したステント1と同じであり、相違点は、連結部の形態のみである。
この実施例のステント10では、各連結部4は、細い2本の連結線状部、すなわち図9に示すように、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部41と、第1の連結線状部41とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部42とにより構成されている。また、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42は、ステントの他の線状構成要素(具体的には、一端側屈曲部21、他端側屈曲部22および連接線状部23,24)より易変形性を有することが好ましい。そして、この実施例のステント10では、第1の連結線状部41と第2の連結線状部42は、中央部にて両者が離間する方向に屈曲する屈曲部41a、42aを備えている。
【0022】
具体的には、第1の連結線状部41は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の一方の側部)に一端を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の一方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aを結ぶ線より周方向に離間するように屈曲する細線状のものとなっている。特に、第1の連結線状部41は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aより離間する方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ若干離間した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。
【0023】
第2の連結線状部42は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部41と反対方向に離間)した側部に一端(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の他方の側部)を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部41と反対方向に離間)した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の他方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aを結ぶ線より周方向に離間するように屈曲する細線状のものとなっている。さらに、第2の連結線状部42は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aより離間する方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部41と反対方向に離間)した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。そして、第2の連結線状部42は、第1の連結線状部41とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称の形態となっている。具体的には、この実施例のステント10においても上述したステント1と同様に、連結部4により連結される一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aが、ステントの軸方向に整列しており、第1の連結線状部41と第2の連結線状部42は、両者間にある一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aの頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている。
この実施例では、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。しかし、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42としては、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステント10では、連結部4の内部には、ステントの軸方向の中央部が膨らんだ略矩形状の開口43を有するものとなっている。
【0024】
なお、連結部としては、図10に示すようなものであってもよい。図10に示すステントの連結部4aの基本構成は、上述した連結部4と同じである。上述した実施例の連結部4では、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。この実施例の連結部4aは、第1の連結線状部41は、両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分41b,41cを備え、2つの平行線状部分41b、41c間に屈曲部41aが設けられている。同様に、第2の連結線状部42も両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分42b,42cを備え、2つの平行線状部分42b、42b間に屈曲部42aが設けられている。そして、第2の連結線状部42は、第1の連結線状部41とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称の形状となっている。この実施例においても屈曲部41a,42aは、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステントにおいても、連結部4aの内部には、ステントの軸方向の中央部が膨らんだ略矩形状の開口43aを有するものとなっており、かつ開口43aは、上述した開口43より若干小さいものとなっている。
【0025】
また、この実施例のステント10においても、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42より太くかつ環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている。具体的には、図6ないし図10に示すように、一端側屈曲部21と他端側屈曲部22間を繋ぐ連接線状部23,24に比べて、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、線幅が細いものとなっている。このため、ステント拡張時の一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の変形が容易であるとともに、連接線状部23,24により高い拡張保持力を発揮する。さらに、上述した第1の連結線状部41および第2の連結線状部42の線幅は、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)よりも細いものとなっている。このため、連結部4(第1の連結線状部41および第2の連結線状部42)は、良好な易変形性を有するものとなっており、ステント10を湾曲した生体内管腔に留置した際、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲する。また、上述したように向かい合うようにほぼ対称かつ所定距離離間した2本の細い第1の連結線状部41および第2の連結線状部42により連結部4を構成したことにより、連結部としても十分な強度を持つものとなっている。
【0026】
また、本発明のステントとしては、図11に示すようなステント20であっても良い。図11は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
この実施例のステント20の基本構成は、上述したステント1と同じであり、相違点は、連結部の形態のみである。
このステント20では、環状体2を連結する連結部の形態が、すべて同じものではなく、パターンが異なるものとなっている。この実施例のステント20では、連結部として、上述した連結部3の形態のもの(中央部が近接するもの)と、上述した連結部4の形態のもの(中央部が離間するもの)とが用いられている。特に、このステント20では、連結部の形態が、連結部3タイプのものと連結部4タイプのものがステントの軸方向に交互となるように配置されている。より具体的には、ステント20の一端側(図11の上側)より、奇数番の連結部が、連結部3タイプ(中央部が近接するもの)となっており、偶数番の連結部が、連結部4タイプ(中央部が離間するもの)となっている。
【0027】
また、本発明のステントとしては、図12に示すようなステント30であっても良い。図12は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
この実施例のステント30の基本構成は、上述したステント1と同じであり、相違点は、連結部の形態のみである。
このステント20では、環状体2を連結する連結部の形態が、すべて同じものではなく、パターンが異なるものとなっている。この実施例のステント30では、隣り合う環状体2間に複数(具体的には、2つ)の連結部を備えている。そして、2つの連結部のうちの一方は、連結部3の形態のもの(中央部が近接するもの)となっており、他方の連結部は、連結部4の形態のもの(中央部が離間するもの)となっている。また、各連結部は、軸方向に連続しないように、配置されている。特に、この実施例のステント30では、各連結部は、螺旋状的配置となるように設けられている。
【0028】
そして、本発明のステントとしては、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するいわゆるバルーン拡張型ステントであることが好ましい。
バルーン拡張型ステントにおけるステントの形成材料は、ある程度の生体適合性を有するものが好ましい。ステントの形成材料としては、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルトクロム合金等のコバルトベース合金等が考えられる。またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
また、ステントは、面取りされていることが好ましい。ステントの面取り方法としては、ステントを最終形状に形成した後、化学研磨、電解研磨もしくは機械研磨することにより行うことができる。
【0029】
さらに、ステントの最終形状を作製した後、焼きなましすることが好ましい。焼きなましを行うことにより、ステント全体の柔軟性および可塑性が向上し、生体内管腔の湾曲した部位での留置性が良好となる。焼きなましを行わない場合に比べて、ステントを拡張した後の拡張前形状に復元しようとする力、特に、生体内管腔の湾曲した部位で拡張した時に発現する直線状に復帰しようとする力が減少し、湾曲した管腔壁に与える物理的な刺激が減少し、再狭窄の要因を減少させることができる。焼きなましは、ステント表面に酸化被膜が形成されないように、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素と水素の混合ガス)にて、900〜1200℃に加熱した後、ゆっくりと冷却することにより行うことが好ましい。
また、本発明のステントとしては、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するいわゆる自己拡張型ステントであってもよい。そして、自己拡張型ステントとしても、上述したすべての実施例のステントの形態を用いることができる。
【0030】
自己拡張型ステントの構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0031】
そして、上述したすべての実施例のステントにおいて、ステントは、非拡張時(または圧縮時)の直径が、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.4mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時(または非圧縮時)の長さは、9〜40mm程度が好適である。また、1つの環状体の長さは、0.7〜2.0mm程度が好適である。また、1つの環状体の一端側および他端側屈曲部数は、4〜15が好ましく、特に、4〜10が好ましい。また、環状体の数としては、4〜20が好適である。また、ステントの成形時(圧縮前)の直径は、1.5〜3.5mm程度が好適であり、特に、2.0〜3.0mmがより好ましい。さらに、ステントの肉厚としては、0.05〜0.15mm程度が好適であり、特に、0.08〜0.13mmが好適である。
また、ステントを構成する線状構成要素の幅は、0.04〜0.15mm程度が好適であり、特に、0.05〜0.13mmが好適である。特に、本発明のステントでは、一端側屈曲部21(21a)と他端側屈曲部22(22a)間を繋ぐ連接線状部23,24の線幅が最も太く、0.08〜0.13mmであることが好ましい。一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の線幅は、連接線状部23,24の2/3〜4/5であることが好ましい。さらに、第1の連結線状部31,41および第2の連結線状部32,42は、連接線状部23,24および一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)より細いことが好ましい。第1の連結線状部31,41および第2の連結線状部32,42の線幅は、連接線状部23,24の1/3〜2/3であることが好ましく、また、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の2/5〜4/5であることが好ましい。
また、上述したすべての実施例のステントにおいて、各環状体間の連結部の数としては、1〜4程度が好適である。連結部は、隣り合う環状体間に2つ以上設けられていることが好ましい。また、連結部は、ステントの軸方向に連続しないものであることが好ましい。
【0032】
次に、本発明の生体器官拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。図14は、図13に示した生体器官拡張器具の先端部の部分破断拡大図である。図15は、図13に示した生体器官拡張器具に用いられている生体器官拡張器具本体の先端部の部分破断拡大図である。
本発明の生体器官拡張器具100は、図13に示すように、チューブ状のシャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン103と、折り畳まれた状態のバルーン103を被包するように装着され、バルーン103の拡張により拡張されるステント1とを備える。
そして、ステント1としては、上述したステント1ならびに上述したすべての実施例のステントを用いることができる。そして、本発明の生体器官拡張器具は、血管拡張器具であることが好ましい。
この実施例の生体器官拡張器具100は、上述したステント1と、ステント1が装着されたチューブ状の生体器官拡張器具本体101とからなる。
生体器官拡張器具本体101は、チューブ状のシャフト本体部102と、シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン103とを備え、ステント1は、折り畳まれた状態のバルーン103を被包するように装着され、かつバルーン103の拡張により拡張されるものである。
ステント1としては、上述したすべての実施例のステントを用いることができる。なお、ここで使用されるステントは、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能ないわゆるバルーン拡張型ステントが用いられる。
【0033】
この実施例の生体器官拡張器具100では、図13に示すように、シャフト本体部102は、シャフト本体部102の先端にて一端が開口し、シャフト本体部102の基端にて他端が開口するガイドワイヤールーメン115を備えている。
この生体器官拡張器具本体101は、シャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に固定されたステント拡張用バルーン103とを備え、このバルーン103上にステント1が装着されている。シャフト本体部102は、内管112と外管113と分岐ハブ110とを備えている。
内管112は、図14,図15に示すように、内部にガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤールーメン115を備えるチューブ体である。内管112としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.1〜1.0mm、より好ましくは、0.3〜0.7mm、肉厚10〜250μm、より好ましくは、20〜100μmのものである。そして、内管112は、外管113の内部に挿通され、その先端部が外管113より突出している。この内管112の外面と外管113の内面によりバルーン拡張用ルーメン116が形成されており、十分な容積を有している。外管113は、図14、図15に示すように、内部に内管112を挿通し、先端が内管112の先端よりやや後退した部分に位置するチューブ体である。
外管113としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.5〜1.5mm、より好ましくは、0.7〜1.1mm、肉厚25〜200μm、より好ましくは、50〜100μmのものである。
【0034】
この実施例の生体器官拡張器具100では、外管113は、先端側外管113aと本体側外管113bにより形成され、両者が接合されている。そして、先端側外管113aは、本体側外管113bとの接合部より先端側の部分において、テーパー状に縮径し、このテーパー部より先端側が細径となっている。
先端側外管113aの細径部での外径は、0.50〜1.5mm、好ましくは0.60〜1.1mmである。また、先端側外管113aの基端部および本体側外管113bの外径は、0.75〜1.5mm、好ましくは0.9〜1.1mmである。
そして、バルーン103は、図14および図15に示すように、先端側接合部103aおよび基端側接合部103bを有し、先端側接合部103aが内管112の先端より若干基端側の位置に固定され、基端側接合部103bが外管の先端に固定されている。また、バルーン103は、基端部付近にてバルーン拡張用ルーメン116と連通している。
【0035】
内管112および外管113の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリオレフィンである。
バルーン103は、図14に示すように、折り畳み可能なものであり、拡張させない状態では、内管112の外周に折り畳まれた状態となることができるものである。バルーン103は、図15に示すように、装着されるステント1を拡張できるようにほぼ同一径の筒状部分(好ましくは、円筒部分)となった拡張可能部を有している。略円筒部分は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。そして、バルーン103は、上述のように、先端側接合部103aが内管112にまた基端側接合部103bが外管113の先端に接着剤または熱融着などにより液密に固着されている。また、このバルーン103では、拡張可能部と接合部との間がテーパー状に形成されている。
【0036】
バルーン103は、バルーン103の内面と内管112の外面との間に拡張空間103cを形成する。この拡張空間103cは、基端部ではその全周において拡張用ルーメン116と連通している。このように、バルーン103の基端は、比較的大きい容積を有する拡張用ルーメンと連通しているので、拡張用ルーメン116よりバルーン内への拡張用流体の注入が確実である。
バルーン103の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアリレーンサルファイド(例えば、ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン103は、高い強度および拡張力を有する二軸延伸されたものが好ましい。
【0037】
バルーン103の大きさとしては、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の外径が、2〜4mm、好ましくは2.5〜3.5mmであり、長さが10〜50mm、好ましくは20〜40mmである。また、先端側接合部103aの外径が、0.9〜1.5mm、好ましくは1〜1.3mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは1〜3mmである。また、基端側接合部103bの外径が、1〜1.6mm、好ましくは1.1〜1.5mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmである。
そして、この生体器官拡張器具100は、図14,図15に示すように、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の両端となる位置のシャフト本体部の外面に固定された2つのX線造影性部材117、118を備えている。なお、ステント1の中央部分の所定長両端となる位置のシャフト本体部102(この実施例では、内管112)の外面に固定された2つのX線造影性部材を備えるものとしてもよい。さらに、ステントの中央部となる位置のシャフト本体部の外面に固定された単独のX線造影性部材を設けるものとしてもよい。X線造影性部材117、118は、所定の長さを有するリング状のもの、もしくは線状体をコイル状に巻き付けたものなどが好適であり、形成材料は、例えば、金、白金、タングステンあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
【0038】
内管112と外管113との間(バルーン拡張用ルーメン116内)には、線状の剛性付与体(図示せず)が挿入されていてもよい。剛性付与体は、生体器官拡張器具100の可撓性をあまり低下させることなく、湾曲した部位での生体器官拡張器具100のシャフト本体部102の極度の折れ曲がりを防止するとともに、生体器官拡張器具100の先端部の押し込みを容易にする。剛性付与体の先端部は、他の部分より研磨などの方法により細径となっていることが好ましい。また、剛性付与体は、細径部分の先端が、外管113の先端部付近まで延びていることが好ましい。剛性付与体としては、金属線であることが好ましく、線径0.05〜1.50mm、好ましくは0.10〜1.00mmのステンレス鋼等の弾性金属、超弾性合金などであり、特に好ましくは、ばね用高張力ステンレス鋼、超弾性合金線である。
この実施例の生体器官拡張器具100では、図13に示すように、基端に分岐ハブ110が固定されている。分岐ハブ110は、ガイドワイヤールーメン115と連通しガイドワイヤーポートを形成するガイドワイヤー導入口109を有し、内管112に固着された内管ハブと、バルーン拡張用ルーメン116と連通するインジェクションポート111を有し、外管113に固着された外管ハブとからなっている。そして、外管ハブと内管ハブとは、固着されている。この分岐ハブ110の形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
なお、生体器官拡張器具の構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、生体器官拡張器具の中間部分にガイドワイヤールーメンと連通するガイドワイヤー挿入口を有するものであってもよい。
【0039】
次に、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
図16は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の部分省略正面図である。図17は、図16に示した生体器官拡張器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
この実施例の生体器官拡張器具200は、シース202と、シース202の先端部内に収納されたステント201と、シース202内を摺動可能に挿通し、ステント201をシース202の先端より放出するための内管204とを備える。
この実施例の生体器官拡張器具200では、ステント201として、円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能である上述した自己拡張型ステントが使用される。
【0040】
この実施例の生体器官拡張器具200は、図16に示すように、シース202、自己拡張型ステント203、内管204を備えている。
シース202は、図16および図17に示すように、管状体であり、先端および基端は開口している。先端開口は、ステント201を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント201の放出口として機能する。ステント201は、シース202を基端側にスライドさせることにより、この先端開口より放出され、応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。シース202の先端部は、ステント201を内部に収納するステント収納部位222となっている。また、シース202は、収納部位222より基端側に設けられた側孔221を備えている。側孔221は、ガイドワイヤーを外部に導出するためのものである。
シース202の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、シース202の内径としては、0.8〜2.5mm程度が好ましい。シース202の長さは、300〜2500mm、特に、300〜2000mm程度が好ましい。
また、シース202の基端部には、図16に示すように、シースハブ206が固定されている。シースハブ206は、シースハブ本体と、シースハブ本体内に収納され、内管204を摺動可能、かつ液密に保持する弁体(図示せず)を備えている。また、シースハブ206は、シースハブ本体の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート261を備えている。また、シースハブ206は、内管204の移動を規制する内管ロック機構を備えていることが好ましい。
【0041】
内管204は、図16および図17に示すように、シャフト状の内管本体部240と、内管本体部240の先端に設けられ、シース202の先端より突出する先端部247と、内管本体部240の基端部に固定された内管ハブ207とを備える。
先端部247は、シース202の先端より突出し、かつ、図17に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、内管204は、ステント201よりも先端側に設けられ、シースの先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。先端部247の基端は、シース202の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
また、内管204は、図17に示すように、自己拡張型ステント201を保持するための2つの突出部243,245を備えている。突出部243,245は、環状突出部であることが好ましい。内管204の先端部247の基端側には、ステント保持用突出部243が設けられている。そして、このステント保持用突出部243より所定距離基端側には、ステント押出用突出部245が設けられている。これら2つの突出部243,245間にステント201が配置される。これら突出部243,245の外径は、後述する圧縮されたステント201と当接可能な大きさとなっている。このため、ステント201は、突出部243により先端側への移動が規制され、突出部245により基端側への移動が規制される。さらに、内管204が先端側に移動すると、突出部245によりステント201は先端側に押され、シース202より排出される。さらに、ステント押出用突出部245の基端側は、図17に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部246となっていることが好ましい。同様に、ステント保持用突出部243の基端側は、図17に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部244となっていることが好ましい。このようにすることにより、内管204をシース202の先端より突出させ、ステント201をシースより放出した後に、内管204をシース202内に再収納する際に、突出部がシースの先端に引っかかることを防止する。また、突出部243,245は、X線造影性材料により別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。
【0042】
内管204は、図17に示すように、先端より少なくともシース202のステント収納部位222より基端側まで延びるルーメン241と、ステント収納部位より基端側においてルーメン241と連通する内管側孔242とを備えている。この実施例の生体器官拡張器具200では、ルーメン241は、側孔242形成部位にて終端している。ルーメン241は、生体器官拡張器具200の先端よりガイドワイヤーの一端を挿入し、内管内を部分的に挿通させた後、内管側面より外部に導出するためのものである。そして、内管側孔242は、シース側孔221より、生体器官拡張器具200の若干先端側に位置している。内管側孔242の中心は、シース側孔221の中心より、0.5〜10mm先端側となっていることが好ましい。
なお、生体器官拡張器具としては、上述のタイプのものに限定されるものではなく、上記のルーメン241は、内管の基端まで延びるものであってもよい。この場合には、シースの側孔221は不要となる。
そして、内管204は、シース202内を貫通し、シース202の基端開口より突出している。なお、内管204の基端部には、図16に示すように、内管ハブ207が固着されている。
【符号の説明】
【0043】
1、10,20,30 生体内留置用ステント
2 環状体
3,3a,4,4a 連結部
21,21a 一端側屈曲部
22,22a 他端側屈曲部
31、41 第1の連結線状部
32、42 第2の連結線状部
31a,32a,41a,42a 屈曲部
100、200 生体器官拡張器具
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体内管腔に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善に使用される生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内留置用ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するためにそこに留置する一般的には管状の医療用具である。ステントは、体外から体内に挿入するため、挿入時は直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
【0003】
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。ステントは、カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。ステントは、機能および留置方法によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、バルーン上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。
【0004】
そして、ステントは、血管等の生体内管腔の湾曲した部位に留置される場合がある。
特開平9−164209号公報(特許文献1)には、セルフエクスパンダブルステントである弯曲型スパイラルジグザグステントが開示されている。このステントは、弯曲した血管等の生体内管腔に載置する場合にも管腔壁に望ましくない応力を及ぼさないように予め弯曲されており、かつその弯曲方向を管腔の変形方向と正確に一致させるのが容易なスパイラル状のジグザグステントである。そして、弯曲型スパイラルジグザグステントは、屈曲部間の線材部11a、11bの長さが長短の繰り返しとなるようにジグザグ状に変形されスパイラル状に旋回する弾性線材11と、前記弾性線材11の屈曲部に形成された係止部13に結着された糸15とからなる。スパイラルの周期と同じ周期で前記屈曲部間の線材部長さが実質的に徐々に増減しているために、前記弾性線材11全体の包絡面が弯曲円筒状である。
また、本願出願人は、特開2009−240613号公報(特許文献2)を提案している。特許文献2のステントは、複数軸方向に配列した環状体とそれを連結する連結部3a、3bを備える。ステントは、その中心軸に対して、第1の方向には易変形性を有し、反対方向には難変形性を有する。ステントは、第1の周方向に所定長延びかつ先端開口33aを有するスリット32aとスリットの閉塞基端部を形成する易変形部36aとを有する第1の連結部3aと、第1の連結部とステントの中心軸を介して向かい合い、かつ、第1の周方向と反対方向に所定長延びかつ先端開口33bを有するスリット32bとスリットの閉塞基端部を形成する易変形部36bとを有する第2の連結部3bから構成される変形方向規制連結部を複数備える。
また、WO2009/80326(特許文献3)には、互いに隣接する波状環状体の屈曲部同士が2本の直線状の接続部により接続されたステントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−164209号公報
【特許文献2】特開2009−240613号公報
【特許文献3】WO2009/80326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のステントでは、弯曲した血管等の生体内管腔に載置する場合にも管腔壁に望ましくない応力を及ぼさないものとなっている。しかし、このステントでは、スパイラルジグザグステントであるため血管拡張力が十分なものではない。さらに、ステントの復元時の形状自体が湾曲しているため、生体内管腔の湾曲した部位に留置された後、人体の動き等により湾曲した部位が直線状に変形した場合に、抵抗となり、ステントの留置部位にストレスをかけるおそれが高い。また、特許文献2のステントでは、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲するとともに湾曲形状の逆方向への変形を確実に抑制するという点では、有効であるが、変形方向性を有している。また、特許文献3のものでも、接続部における変形性は良好なものではない。
【0007】
本発明の目的は、ステントとして全体的に十分な均一性のある拡張力を備え、かつ、湾曲した生体内管腔に留置した場合、変形方向性を有することなく、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲し、湾曲した部位に対してストレスを付与することなく追従する生体内留置用ステントおよびそれを備える生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 線状構成要素により環状に形成された複数の環状体が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部により連結された生体内留置用ステントであって、
前記各環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部とが近接するように配置されており、
前記連結部は、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部と、前記第1の連結線状部と前記ステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部とを備え、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部は、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部の頂点と近接する側部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部の頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部もしくは湾曲部を有するものである生体内留置用ステント。
【0009】
(2) 前記連結部により連結される前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部は、前記ステントの軸方向に整列しており、前記第1の連結線状部と前記第2の連結線状部は、両者間にある前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部の頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) 前記一端側屈曲部および前記他端側屈曲部は、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部より太くかつ前記環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている上記(1)または(2)に記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が近接する方向に屈曲もしくは湾曲するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(5) 前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が離間する方向に屈曲もしくは湾曲するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(6) 前記各環状体は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部とを繋ぐ複数の連接線状部を有しており、該連接線状部は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部を形成する線状構成要素より太いものとなっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(7) 前記連結部は、隣り合う環状体間に2つ以上設けられている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される上記(8)に記載のステントとを備える生体器官拡張器具。
(10) 前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) シースと、該シースの先端部内に収納された上記(10)のステントと、該シース内を摺動可能に挿通し、前記ステントを前記シースの先端より押し出すための内管とを備える生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0011】
本発明のステントは、線状構成要素により環状に形成された複数の環状体が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部により連結された生体内留置用ステントであって、各環状体は、ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部およびステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部とが近接するように配置されている。すなわち、ステント全体が、複数の環状体により構成されているため、十分な均一性のある拡張力を備える。そして、連結部は、環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部と、第1の連結線状部とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部とを備え、第1の連結線状部および第2の連結線状部は、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部の頂点と近接する側部と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部の頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部もしくは湾曲部を有するものとなっているため、変形方向性を有することなく、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲し、湾曲した部位に対してストレスを付与することなく追従する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図2】図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。
【図3】図3は、図1の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。
【図4】図4は、図2の部分拡大図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの部分拡大図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図7】図7は、図6の生体内留置用ステントの展開図である。
【図8】図8は、図6の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。
【図9】図9は、図7の部分拡大図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの部分拡大図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
【図13】図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。
【図14】図14は、図13に示した生体器官拡張器具の先端部の部分破断拡大図である。
【図15】図15は、図13に示した生体器官拡張器具に用いられている生体器官拡張器具本体の先端部の部分破断拡大図である。
【図16】図16は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の部分省略正面図である。
【図17】図17は、図16に示した生体器官拡張器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の生体内留置用ステントについて以下の好適実施例を用いて説明する。
本発明の生体内留置用ステント1は、線状構成要素により環状に形成された複数の環状体2が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部3(3a,4,4a)により連結された生体内留置用ステントである。各環状体2は、ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部21およびステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部22を有し、かつ、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部21と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部22とが近接するように配置されている。そして、連結部3(3a,4,4a)は、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部31と、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部32とを備え、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、隣り合う一方の環状体の一端側屈曲部21aの頂点と近接する側部と隣り合う他方の環状体の他端側屈曲部22aの頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部31a,32aもしくは湾曲部を有するものとなっている。
【0014】
この実施例のステント1は、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステント、いわゆるバルーン拡張型ステントとなっている。なお、本発明のステントは、バルーン拡張型ステントに限定されるものではない。
この実施例のステント1は、図1ないし図4に示すように、複数の環状体2を軸方向に隣り合うように配列するとともに、それぞれを接続した形態となっている。
そして、各環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部21およびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部22を有するとともに、環状に連続した無端の線状構成要素(具体的には、波線状体)により構成されている。
【0015】
そして、この実施例のステント1では、図1ないし図4に示すように環状体2は、ステントの一端側に位置する複数の一端側屈曲部21と他端側に位置する複数の他端側屈曲部22と一端側屈曲部21と他端側屈曲部22間を繋ぐ連接線状部23,24とを備える波状環状体となっている。そして、連接線状部23,24は、直線状部となっている。そして、軸方向に隣り合う環状体2は、ステントの一端側に位置する環状体2の他端側屈曲部22aと他端側に位置する環状体2の一端側屈曲部21aが近接し、かつ、向かい合うように(言い換えれば、ステントの軸方向に整列するように)配置されるとともに、連結部3により連結されている。
そして、ステント1は、図1の状態にて生体内に挿入され、ステントの内部より半径方向に広がる力が付加された時に、図3の状態を越えてさらに拡張する。そして、上記の変形時に、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、開く方向に変形するが、一端側屈曲部21(21a)と他端側屈曲部22(22a)間を繋ぐ連接線状部23,24は、実質的に変形しない。また、連結部3も実質的に変形しない。
【0016】
この実施例のステント1における環状体は、図1およびその展開図である図2に示すように、ほぼ同じピッチの複数の一端側屈曲部21と他端側屈曲部22と連接線状部23,24とを有し、環状に連続した無端の波線状体となっている。なお、各環状体における一端側屈曲部(もしくは他端側屈曲部)の数は、4〜10が好適である。そして、この実施例のステント1では、隣り合う環状体間には、2つの連結部3が設けられている。なお、本発明のステントの形態は、上述したステント1のような、複数の波線状体により構成されたもの、また、複数の波線状体の近接する屈曲部の頂点間を接合するものに限定されるものではない。
【0017】
そして、この実施例のステント1では、各連結部3は細い2本の連結線状部、すなわち、図4に示すように、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部31と、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部32とにより構成されている。また、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、ステントの他の線状構成要素(具体的には、一端側屈曲部21、他端側屈曲部22および連接線状部23,24)より易変形性を有することが好ましい。そして、この実施例のステント1では、第1の連結線状部31と第2の連結線状部32は、中央部にて両者が近接する方向に屈曲する屈曲部31a、32aを備えている。
具体的には、第1の連結線状部31は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の一方の側部)に一端を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の一方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aの頂点を結ぶ線方向に屈曲する細線状のものとなっている。特に、第1の連結線状部31は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ頂点より若干離間した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。
【0018】
第2の連結線状部32は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部31と反対方向に離間)した側部(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の他方の側部)に一端を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部31と反対方向に離間)した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の他方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aの頂点を結ぶ線方向に屈曲する細線状のものとなっている。さらに、第2の連結線状部32は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ若干離間(第1の連結線状部31と反対方向に離間)した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。そして、第2の連結線状部32は、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称の形態となっている。具体的には、この実施例のステント1では、連結部3により連結される一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aが、ステントの軸方向に整列しており(言い換えれば、向かい合っており)、第1の連結線状部31と第2の連結線状部32は、両者間にある一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aの頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている。
この実施例では、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。しかし、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32としては、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステント1では、連結部3の内部には、ステントの軸方向の中央部が窪んだ(言い換えれば、中央部が絞られた)略矩形状の開口33を有するものとなっている。
【0019】
なお、連結部としては、図5に示すようなものであってもよい。図5に示すステントの連結部3aの基本構成は、上述した連結部3と同じである。上述した実施例の連結部3では、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。この実施例の連結部3aは、第1の連結線状部31は、両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分31b,31cを備え、2つの平行線状部分31b、31c間に屈曲部31aが設けられている。同様に、第2の連結線状部32も両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分32b,32cを備え、2つの平行線状部分32b、32b間に屈曲部32aが設けられている。そして、第2の連結線状部32は、第1の連結線状部31とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称となっている。この実施例のステントにおいても、連結部3により連結される一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aが、ステントの軸方向に整列しており、第1の連結線状部31と第2の連結線状部32は、両者間にある一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aの頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている。また、この実施例においても屈曲部31a,32aは、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステントにおいても、連結部3aの内部には、ステントの軸方向の中央部が窪んだ(言い換えれば、中央部が絞られた)略矩形状の開口33aを有するものとなっており、かつ開口33aは、上述した開口33より大きいものとなっている。
【0020】
また、この実施例のステント1では、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、第1の連結線状部31および第2の連結線状部32より太くかつ環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている。
具体的には、図1ないし図5に示すように、一端側屈曲部21と他端側屈曲部22間を繋ぐ連接線状部23,24に比べて、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、線幅が細いものとなっている。このため、ステント拡張時の一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の変形が容易であるとともに、連接線状部23,24により高い拡張保持力を発揮する。さらに、上述した第1の連結線状部31および第2の連結線状部32の線幅は、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)よりも細いものとなっている。このため、連結部3(第1の連結線状部31および第2の連結線状部32)は、良好な易変形性を有するものとなっており、ステント1を湾曲した生体内管腔に留置した際、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲する。また、上述したように向かい合うようにほぼ対称かつ所定距離離間した2本の細い第1の連結線状部31および第2の連結線状部32により連結部3を構成したことにより、連結部としても十分な強度を持つものとなっている。
【0021】
次に、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントについて説明する。
図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの正面図である。図7は、図6の生体内留置用ステントの展開図である。図8は、図6の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。図9は、図7の部分拡大図である。図10は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの部分拡大図である。
この実施例のステント10の基本構成は、上述したステント1と同じであり、相違点は、連結部の形態のみである。
この実施例のステント10では、各連結部4は、細い2本の連結線状部、すなわち図9に示すように、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部41と、第1の連結線状部41とステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、環状体2の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部42とにより構成されている。また、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42は、ステントの他の線状構成要素(具体的には、一端側屈曲部21、他端側屈曲部22および連接線状部23,24)より易変形性を有することが好ましい。そして、この実施例のステント10では、第1の連結線状部41と第2の連結線状部42は、中央部にて両者が離間する方向に屈曲する屈曲部41a、42aを備えている。
【0022】
具体的には、第1の連結線状部41は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の一方の側部)に一端を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の一方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aを結ぶ線より周方向に離間するように屈曲する細線状のものとなっている。特に、第1の連結線状部41は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aより離間する方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ若干離間した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。
【0023】
第2の連結線状部42は、環状体2の他端側屈曲部22aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部41と反対方向に離間)した側部に一端(言い換えれば、他端側屈曲部の側部、他端側屈曲部の他方の側部)を有し、隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aの頂点に近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部41と反対方向に離間)した側部(言い換えれば、一端側屈曲部の側部、一端側屈曲部の他方の側部)に他端を有し、かつ中央部において2つの屈曲部21a,22aを結ぶ線より周方向に離間するように屈曲する細線状のものとなっている。さらに、第2の連結線状部42は、上記の一端から隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aより離間する方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる一端側部分と、この一端側部分の端部から屈曲して隣り合う環状体2の一端側屈曲部21aに近接しかつ頂点より若干離間(第1の連結線状部41と反対方向に離間)した側部方向にステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる他端側部分とを有するものとなっている。そして、第2の連結線状部42は、第1の連結線状部41とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称の形態となっている。具体的には、この実施例のステント10においても上述したステント1と同様に、連結部4により連結される一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aが、ステントの軸方向に整列しており、第1の連結線状部41と第2の連結線状部42は、両者間にある一端側屈曲部21aと他端側屈曲部22aの頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている。
この実施例では、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。しかし、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42としては、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステント10では、連結部4の内部には、ステントの軸方向の中央部が膨らんだ略矩形状の開口43を有するものとなっている。
【0024】
なお、連結部としては、図10に示すようなものであってもよい。図10に示すステントの連結部4aの基本構成は、上述した連結部4と同じである。上述した実施例の連結部4では、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42は、中央部に屈曲点を有する全体が屈曲したものとなっている。この実施例の連結部4aは、第1の連結線状部41は、両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分41b,41cを備え、2つの平行線状部分41b、41c間に屈曲部41aが設けられている。同様に、第2の連結線状部42も両端部においてステントの中心軸にほぼ平行に延びる平行線状部分42b,42cを備え、2つの平行線状部分42b、42b間に屈曲部42aが設けられている。そして、第2の連結線状部42は、第1の連結線状部41とステントの周方向に向かい合うように、かつほぼ対称の形状となっている。この実施例においても屈曲部41a,42aは、屈曲点を持たず湾曲するものまた湾曲部を有するものであってもよい。また、この実施例のステントにおいても、連結部4aの内部には、ステントの軸方向の中央部が膨らんだ略矩形状の開口43aを有するものとなっており、かつ開口43aは、上述した開口43より若干小さいものとなっている。
【0025】
また、この実施例のステント10においても、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、第1の連結線状部41および第2の連結線状部42より太くかつ環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている。具体的には、図6ないし図10に示すように、一端側屈曲部21と他端側屈曲部22間を繋ぐ連接線状部23,24に比べて、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)は、線幅が細いものとなっている。このため、ステント拡張時の一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の変形が容易であるとともに、連接線状部23,24により高い拡張保持力を発揮する。さらに、上述した第1の連結線状部41および第2の連結線状部42の線幅は、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)よりも細いものとなっている。このため、連結部4(第1の連結線状部41および第2の連結線状部42)は、良好な易変形性を有するものとなっており、ステント10を湾曲した生体内管腔に留置した際、生体内管腔の湾曲した部位の湾曲形状に対応して良好に湾曲する。また、上述したように向かい合うようにほぼ対称かつ所定距離離間した2本の細い第1の連結線状部41および第2の連結線状部42により連結部4を構成したことにより、連結部としても十分な強度を持つものとなっている。
【0026】
また、本発明のステントとしては、図11に示すようなステント20であっても良い。図11は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
この実施例のステント20の基本構成は、上述したステント1と同じであり、相違点は、連結部の形態のみである。
このステント20では、環状体2を連結する連結部の形態が、すべて同じものではなく、パターンが異なるものとなっている。この実施例のステント20では、連結部として、上述した連結部3の形態のもの(中央部が近接するもの)と、上述した連結部4の形態のもの(中央部が離間するもの)とが用いられている。特に、このステント20では、連結部の形態が、連結部3タイプのものと連結部4タイプのものがステントの軸方向に交互となるように配置されている。より具体的には、ステント20の一端側(図11の上側)より、奇数番の連結部が、連結部3タイプ(中央部が近接するもの)となっており、偶数番の連結部が、連結部4タイプ(中央部が離間するもの)となっている。
【0027】
また、本発明のステントとしては、図12に示すようなステント30であっても良い。図12は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの展開図である。
この実施例のステント30の基本構成は、上述したステント1と同じであり、相違点は、連結部の形態のみである。
このステント20では、環状体2を連結する連結部の形態が、すべて同じものではなく、パターンが異なるものとなっている。この実施例のステント30では、隣り合う環状体2間に複数(具体的には、2つ)の連結部を備えている。そして、2つの連結部のうちの一方は、連結部3の形態のもの(中央部が近接するもの)となっており、他方の連結部は、連結部4の形態のもの(中央部が離間するもの)となっている。また、各連結部は、軸方向に連続しないように、配置されている。特に、この実施例のステント30では、各連結部は、螺旋状的配置となるように設けられている。
【0028】
そして、本発明のステントとしては、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するいわゆるバルーン拡張型ステントであることが好ましい。
バルーン拡張型ステントにおけるステントの形成材料は、ある程度の生体適合性を有するものが好ましい。ステントの形成材料としては、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルトクロム合金等のコバルトベース合金等が考えられる。またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
また、ステントは、面取りされていることが好ましい。ステントの面取り方法としては、ステントを最終形状に形成した後、化学研磨、電解研磨もしくは機械研磨することにより行うことができる。
【0029】
さらに、ステントの最終形状を作製した後、焼きなましすることが好ましい。焼きなましを行うことにより、ステント全体の柔軟性および可塑性が向上し、生体内管腔の湾曲した部位での留置性が良好となる。焼きなましを行わない場合に比べて、ステントを拡張した後の拡張前形状に復元しようとする力、特に、生体内管腔の湾曲した部位で拡張した時に発現する直線状に復帰しようとする力が減少し、湾曲した管腔壁に与える物理的な刺激が減少し、再狭窄の要因を減少させることができる。焼きなましは、ステント表面に酸化被膜が形成されないように、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素と水素の混合ガス)にて、900〜1200℃に加熱した後、ゆっくりと冷却することにより行うことが好ましい。
また、本発明のステントとしては、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するいわゆる自己拡張型ステントであってもよい。そして、自己拡張型ステントとしても、上述したすべての実施例のステントの形態を用いることができる。
【0030】
自己拡張型ステントの構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0031】
そして、上述したすべての実施例のステントにおいて、ステントは、非拡張時(または圧縮時)の直径が、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.4mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時(または非圧縮時)の長さは、9〜40mm程度が好適である。また、1つの環状体の長さは、0.7〜2.0mm程度が好適である。また、1つの環状体の一端側および他端側屈曲部数は、4〜15が好ましく、特に、4〜10が好ましい。また、環状体の数としては、4〜20が好適である。また、ステントの成形時(圧縮前)の直径は、1.5〜3.5mm程度が好適であり、特に、2.0〜3.0mmがより好ましい。さらに、ステントの肉厚としては、0.05〜0.15mm程度が好適であり、特に、0.08〜0.13mmが好適である。
また、ステントを構成する線状構成要素の幅は、0.04〜0.15mm程度が好適であり、特に、0.05〜0.13mmが好適である。特に、本発明のステントでは、一端側屈曲部21(21a)と他端側屈曲部22(22a)間を繋ぐ連接線状部23,24の線幅が最も太く、0.08〜0.13mmであることが好ましい。一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の線幅は、連接線状部23,24の2/3〜4/5であることが好ましい。さらに、第1の連結線状部31,41および第2の連結線状部32,42は、連接線状部23,24および一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)より細いことが好ましい。第1の連結線状部31,41および第2の連結線状部32,42の線幅は、連接線状部23,24の1/3〜2/3であることが好ましく、また、一端側屈曲部21(21a)および他端側屈曲部22(22a)の2/5〜4/5であることが好ましい。
また、上述したすべての実施例のステントにおいて、各環状体間の連結部の数としては、1〜4程度が好適である。連結部は、隣り合う環状体間に2つ以上設けられていることが好ましい。また、連結部は、ステントの軸方向に連続しないものであることが好ましい。
【0032】
次に、本発明の生体器官拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。図14は、図13に示した生体器官拡張器具の先端部の部分破断拡大図である。図15は、図13に示した生体器官拡張器具に用いられている生体器官拡張器具本体の先端部の部分破断拡大図である。
本発明の生体器官拡張器具100は、図13に示すように、チューブ状のシャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン103と、折り畳まれた状態のバルーン103を被包するように装着され、バルーン103の拡張により拡張されるステント1とを備える。
そして、ステント1としては、上述したステント1ならびに上述したすべての実施例のステントを用いることができる。そして、本発明の生体器官拡張器具は、血管拡張器具であることが好ましい。
この実施例の生体器官拡張器具100は、上述したステント1と、ステント1が装着されたチューブ状の生体器官拡張器具本体101とからなる。
生体器官拡張器具本体101は、チューブ状のシャフト本体部102と、シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン103とを備え、ステント1は、折り畳まれた状態のバルーン103を被包するように装着され、かつバルーン103の拡張により拡張されるものである。
ステント1としては、上述したすべての実施例のステントを用いることができる。なお、ここで使用されるステントは、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能ないわゆるバルーン拡張型ステントが用いられる。
【0033】
この実施例の生体器官拡張器具100では、図13に示すように、シャフト本体部102は、シャフト本体部102の先端にて一端が開口し、シャフト本体部102の基端にて他端が開口するガイドワイヤールーメン115を備えている。
この生体器官拡張器具本体101は、シャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に固定されたステント拡張用バルーン103とを備え、このバルーン103上にステント1が装着されている。シャフト本体部102は、内管112と外管113と分岐ハブ110とを備えている。
内管112は、図14,図15に示すように、内部にガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤールーメン115を備えるチューブ体である。内管112としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.1〜1.0mm、より好ましくは、0.3〜0.7mm、肉厚10〜250μm、より好ましくは、20〜100μmのものである。そして、内管112は、外管113の内部に挿通され、その先端部が外管113より突出している。この内管112の外面と外管113の内面によりバルーン拡張用ルーメン116が形成されており、十分な容積を有している。外管113は、図14、図15に示すように、内部に内管112を挿通し、先端が内管112の先端よりやや後退した部分に位置するチューブ体である。
外管113としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.5〜1.5mm、より好ましくは、0.7〜1.1mm、肉厚25〜200μm、より好ましくは、50〜100μmのものである。
【0034】
この実施例の生体器官拡張器具100では、外管113は、先端側外管113aと本体側外管113bにより形成され、両者が接合されている。そして、先端側外管113aは、本体側外管113bとの接合部より先端側の部分において、テーパー状に縮径し、このテーパー部より先端側が細径となっている。
先端側外管113aの細径部での外径は、0.50〜1.5mm、好ましくは0.60〜1.1mmである。また、先端側外管113aの基端部および本体側外管113bの外径は、0.75〜1.5mm、好ましくは0.9〜1.1mmである。
そして、バルーン103は、図14および図15に示すように、先端側接合部103aおよび基端側接合部103bを有し、先端側接合部103aが内管112の先端より若干基端側の位置に固定され、基端側接合部103bが外管の先端に固定されている。また、バルーン103は、基端部付近にてバルーン拡張用ルーメン116と連通している。
【0035】
内管112および外管113の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリオレフィンである。
バルーン103は、図14に示すように、折り畳み可能なものであり、拡張させない状態では、内管112の外周に折り畳まれた状態となることができるものである。バルーン103は、図15に示すように、装着されるステント1を拡張できるようにほぼ同一径の筒状部分(好ましくは、円筒部分)となった拡張可能部を有している。略円筒部分は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。そして、バルーン103は、上述のように、先端側接合部103aが内管112にまた基端側接合部103bが外管113の先端に接着剤または熱融着などにより液密に固着されている。また、このバルーン103では、拡張可能部と接合部との間がテーパー状に形成されている。
【0036】
バルーン103は、バルーン103の内面と内管112の外面との間に拡張空間103cを形成する。この拡張空間103cは、基端部ではその全周において拡張用ルーメン116と連通している。このように、バルーン103の基端は、比較的大きい容積を有する拡張用ルーメンと連通しているので、拡張用ルーメン116よりバルーン内への拡張用流体の注入が確実である。
バルーン103の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアリレーンサルファイド(例えば、ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン103は、高い強度および拡張力を有する二軸延伸されたものが好ましい。
【0037】
バルーン103の大きさとしては、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の外径が、2〜4mm、好ましくは2.5〜3.5mmであり、長さが10〜50mm、好ましくは20〜40mmである。また、先端側接合部103aの外径が、0.9〜1.5mm、好ましくは1〜1.3mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは1〜3mmである。また、基端側接合部103bの外径が、1〜1.6mm、好ましくは1.1〜1.5mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmである。
そして、この生体器官拡張器具100は、図14,図15に示すように、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の両端となる位置のシャフト本体部の外面に固定された2つのX線造影性部材117、118を備えている。なお、ステント1の中央部分の所定長両端となる位置のシャフト本体部102(この実施例では、内管112)の外面に固定された2つのX線造影性部材を備えるものとしてもよい。さらに、ステントの中央部となる位置のシャフト本体部の外面に固定された単独のX線造影性部材を設けるものとしてもよい。X線造影性部材117、118は、所定の長さを有するリング状のもの、もしくは線状体をコイル状に巻き付けたものなどが好適であり、形成材料は、例えば、金、白金、タングステンあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
【0038】
内管112と外管113との間(バルーン拡張用ルーメン116内)には、線状の剛性付与体(図示せず)が挿入されていてもよい。剛性付与体は、生体器官拡張器具100の可撓性をあまり低下させることなく、湾曲した部位での生体器官拡張器具100のシャフト本体部102の極度の折れ曲がりを防止するとともに、生体器官拡張器具100の先端部の押し込みを容易にする。剛性付与体の先端部は、他の部分より研磨などの方法により細径となっていることが好ましい。また、剛性付与体は、細径部分の先端が、外管113の先端部付近まで延びていることが好ましい。剛性付与体としては、金属線であることが好ましく、線径0.05〜1.50mm、好ましくは0.10〜1.00mmのステンレス鋼等の弾性金属、超弾性合金などであり、特に好ましくは、ばね用高張力ステンレス鋼、超弾性合金線である。
この実施例の生体器官拡張器具100では、図13に示すように、基端に分岐ハブ110が固定されている。分岐ハブ110は、ガイドワイヤールーメン115と連通しガイドワイヤーポートを形成するガイドワイヤー導入口109を有し、内管112に固着された内管ハブと、バルーン拡張用ルーメン116と連通するインジェクションポート111を有し、外管113に固着された外管ハブとからなっている。そして、外管ハブと内管ハブとは、固着されている。この分岐ハブ110の形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
なお、生体器官拡張器具の構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、生体器官拡張器具の中間部分にガイドワイヤールーメンと連通するガイドワイヤー挿入口を有するものであってもよい。
【0039】
次に、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
図16は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の部分省略正面図である。図17は、図16に示した生体器官拡張器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
この実施例の生体器官拡張器具200は、シース202と、シース202の先端部内に収納されたステント201と、シース202内を摺動可能に挿通し、ステント201をシース202の先端より放出するための内管204とを備える。
この実施例の生体器官拡張器具200では、ステント201として、円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能である上述した自己拡張型ステントが使用される。
【0040】
この実施例の生体器官拡張器具200は、図16に示すように、シース202、自己拡張型ステント203、内管204を備えている。
シース202は、図16および図17に示すように、管状体であり、先端および基端は開口している。先端開口は、ステント201を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント201の放出口として機能する。ステント201は、シース202を基端側にスライドさせることにより、この先端開口より放出され、応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。シース202の先端部は、ステント201を内部に収納するステント収納部位222となっている。また、シース202は、収納部位222より基端側に設けられた側孔221を備えている。側孔221は、ガイドワイヤーを外部に導出するためのものである。
シース202の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、シース202の内径としては、0.8〜2.5mm程度が好ましい。シース202の長さは、300〜2500mm、特に、300〜2000mm程度が好ましい。
また、シース202の基端部には、図16に示すように、シースハブ206が固定されている。シースハブ206は、シースハブ本体と、シースハブ本体内に収納され、内管204を摺動可能、かつ液密に保持する弁体(図示せず)を備えている。また、シースハブ206は、シースハブ本体の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート261を備えている。また、シースハブ206は、内管204の移動を規制する内管ロック機構を備えていることが好ましい。
【0041】
内管204は、図16および図17に示すように、シャフト状の内管本体部240と、内管本体部240の先端に設けられ、シース202の先端より突出する先端部247と、内管本体部240の基端部に固定された内管ハブ207とを備える。
先端部247は、シース202の先端より突出し、かつ、図17に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、内管204は、ステント201よりも先端側に設けられ、シースの先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。先端部247の基端は、シース202の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
また、内管204は、図17に示すように、自己拡張型ステント201を保持するための2つの突出部243,245を備えている。突出部243,245は、環状突出部であることが好ましい。内管204の先端部247の基端側には、ステント保持用突出部243が設けられている。そして、このステント保持用突出部243より所定距離基端側には、ステント押出用突出部245が設けられている。これら2つの突出部243,245間にステント201が配置される。これら突出部243,245の外径は、後述する圧縮されたステント201と当接可能な大きさとなっている。このため、ステント201は、突出部243により先端側への移動が規制され、突出部245により基端側への移動が規制される。さらに、内管204が先端側に移動すると、突出部245によりステント201は先端側に押され、シース202より排出される。さらに、ステント押出用突出部245の基端側は、図17に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部246となっていることが好ましい。同様に、ステント保持用突出部243の基端側は、図17に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部244となっていることが好ましい。このようにすることにより、内管204をシース202の先端より突出させ、ステント201をシースより放出した後に、内管204をシース202内に再収納する際に、突出部がシースの先端に引っかかることを防止する。また、突出部243,245は、X線造影性材料により別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。
【0042】
内管204は、図17に示すように、先端より少なくともシース202のステント収納部位222より基端側まで延びるルーメン241と、ステント収納部位より基端側においてルーメン241と連通する内管側孔242とを備えている。この実施例の生体器官拡張器具200では、ルーメン241は、側孔242形成部位にて終端している。ルーメン241は、生体器官拡張器具200の先端よりガイドワイヤーの一端を挿入し、内管内を部分的に挿通させた後、内管側面より外部に導出するためのものである。そして、内管側孔242は、シース側孔221より、生体器官拡張器具200の若干先端側に位置している。内管側孔242の中心は、シース側孔221の中心より、0.5〜10mm先端側となっていることが好ましい。
なお、生体器官拡張器具としては、上述のタイプのものに限定されるものではなく、上記のルーメン241は、内管の基端まで延びるものであってもよい。この場合には、シースの側孔221は不要となる。
そして、内管204は、シース202内を貫通し、シース202の基端開口より突出している。なお、内管204の基端部には、図16に示すように、内管ハブ207が固着されている。
【符号の説明】
【0043】
1、10,20,30 生体内留置用ステント
2 環状体
3,3a,4,4a 連結部
21,21a 一端側屈曲部
22,22a 他端側屈曲部
31、41 第1の連結線状部
32、42 第2の連結線状部
31a,32a,41a,42a 屈曲部
100、200 生体器官拡張器具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状構成要素により環状に形成された複数の環状体が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部により連結された生体内留置用ステントであって、
前記各環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部とが近接するように配置されており、
前記連結部は、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部と、前記第1の連結線状部と前記ステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部とを備え、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部は、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部の頂点と近接する側部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部の頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部もしくは湾曲部を有するものであることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
前記連結部により連結される前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部は、前記ステントの軸方向に整列しており、前記第1の連結線状部と前記第2の連結線状部は、両者間にある前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部の頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
前記一端側屈曲部および前記他端側屈曲部は、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部より太くかつ前記環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている請求項1または2に記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が近接する方向に屈曲もしくは湾曲するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が離間する方向に屈曲もしくは湾曲するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記各環状体は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部とを繋ぐ複数の連接線状部を有しており、該連接線状部は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部を形成する線状構成要素より太いものとなっている請求項1ないし5のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記連結部は、隣り合う環状体間に2つ以上設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される請求項8に記載のステントとを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項10】
前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
シースと、該シースの先端部内に収納された請求項10のステントと、該シース内を摺動可能に挿通し、前記ステントを前記シースの先端より押し出すための内管とを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項1】
線状構成要素により環状に形成された複数の環状体が軸方向に配列されるとともに、隣り合う環状体が連結部により連結された生体内留置用ステントであって、
前記各環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部とが近接するように配置されており、
前記連結部は、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第1の連結線状部と、前記第1の連結線状部と前記ステントの周方向に向かい合うように設けられ、かつ、前記環状体の線状構成要素より細い線状構成要素にて形成された第2の連結線状部とを備え、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部は、隣り合う一方の前記環状体の前記一端側屈曲部の頂点と近接する側部と隣り合う他方の前記環状体の前記他端側屈曲部の頂点と近接する側部とを接続し、かつ中央部もしくは中央部付近に屈曲部もしくは湾曲部を有するものであることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
前記連結部により連結される前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部は、前記ステントの軸方向に整列しており、前記第1の連結線状部と前記第2の連結線状部は、両者間にある前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部の頂点を結ぶ仮想線に対して対称となっている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
前記一端側屈曲部および前記他端側屈曲部は、前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部より太くかつ前記環状体の他の部分の線状構成要素より細いものとなっている請求項1または2に記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が近接する方向に屈曲もしくは湾曲するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
前記第1の連結線状部および前記第2の連結線状部の前記屈曲部もしくは湾曲部は、両者が離間する方向に屈曲もしくは湾曲するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記各環状体は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部とを繋ぐ複数の連接線状部を有しており、該連接線状部は、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部を形成する線状構成要素より太いものとなっている請求項1ないし5のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記連結部は、隣り合う環状体間に2つ以上設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される請求項8に記載のステントとを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項10】
前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
シースと、該シースの先端部内に収納された請求項10のステントと、該シース内を摺動可能に挿通し、前記ステントを前記シースの先端より押し出すための内管とを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−34896(P2012−34896A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178666(P2010−178666)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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