説明

生体分子を含むサンプルの処理方法

本発明は、一般に、その後の少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルの調製方法、処理方法、または分析方法のためのサンプルの調整方法であって、以下の工程:A)少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルを準備する工程と、B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記組成物が、以下:a)ポリアミン、b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、e)カルボン酸アミン、f)無機アンモニウム塩、g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、h)核酸に結合する抗生物質、i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、および2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むことを含む方法を提供する。本発明は、特に、生体サンプルの溶解方法、生体分子の安定化方法、生体分子を含むサンプルの阻害効果を減少させる方法、および差分マスキング方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子を含むサンプルの処理方法に関する。本発明は、さらに、生体サンプルの溶解方法、核酸および/またはタンパク質の安定化方法、核酸および/またはタンパク質を含むサンプルの阻害効果を減少させる方法、核酸の差分マスキング方法、ならびに前記方法を基礎する、またはこれらの方法を取り入れた分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の遺伝的原因および機能活性を、例えば、その核酸またはタンパク質としての生体分子の研究によって決定し、説明することができることが長年にわたって知られている。これらの分子の分析により、細胞活性の起源に直接利用することができる。したがって、これらは、例えば、代謝産物の検出などの従来の間接的方法よりも優れている。これにより、以前の核酸およびタンパク質分析が広く使用されるようになった。したがって、生体分子分析は、既に多くの領域(例えば、医学的および臨床的診断、薬物の開発および評価における薬創学、食品分析および食糧生産の管理、農作物および家畜の育種における農学、環境分析、ならびに多数の研究領域)で使用されている。
【0003】
遺伝子の活性を、例えば、細胞中のRNA、特に、mRNAの分析によって直接決定することができる。最新の分子生物学的方法(例えば、リアルタイム逆転写酵素PCR(「リアルタイムRT−PCR」)または遺伝子発現チップ分析)による細胞中の転写サンプル(mRNAサンプル)の定量的分析により、例えば、誤って発現した遺伝子を認識し、それにより、例えば、代謝障害、感染症、または癌の形成を認識することができる。分生成物学的方法(例えば、PCR、RFLP、AFLP、または配列決定)による、例えば、細胞由来のDNAの分析により、例えば、遺伝的欠陥を裏付け、HLA型および他の遺伝子マーカーを決定することができる。
【0004】
ゲノムDNAおよびRNAの分析を、病原菌(ウイルス、細菌など)の直接的検出のためにも使用する。
【0005】
これは、これらの生体分子(例えば、DNA、RNA、またはタンパク質)を対応する分析方法に利用させる生体サンプル由来の生体分子の全分析方法のための条件である。細胞または生物の成分を、通常、内容物が分析媒質中に存在する(例えば、細胞または生物から分析媒質に移行する)場合に限って分析することができる。内容物が生物または細胞の内側ではなく外側に存在し、生物または細胞の内容物が分析のために自由に利用できるように、この目的のために細胞/生物を分解する。生物または生物の一部(例えば、細胞)の分解は溶解とも呼ばれ、分解された生物はライセートとも呼ばれる。
【0006】
サンプル(生物)の分解は、以下の2つの論点のために、できるだけ完全に行うべきである:(1)例えば、恐らく生物の全ての部分の内容物がサンプル中に放出されるように、生物サンプルの全領域を分解すべきである。(2)例えば、生物サンプルの分解は、内容物が分析に利用可能となる場合に限って完了する。生物を分解したが、例えば、細胞区画によって依然として覆われている場合、定量的様式で内容物を分析することができない。
【0007】
現在、いくつかの溶解方法が公知である。分析すべき内容物の清浄化は、分析に反作用する全物質から内容物を遊離するためのほとんどの溶解方法に従う。いくつかの例を以下に記載する。
【0008】
(A)界面活性剤での溶解:界面活性剤は、疎水性細胞膜を溶解し、その結果、細胞の内容物を環境に流出させる両親媒性分子である。例えば、非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤がこれに属する。界面活性剤であるtriton−X100、Nonidet−P40、ドデシル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SDS)、または陽イオン性界面活性剤(例えば、N−セチル−N,N,N−トリメチル−アンモニウムブロミド(CTAB))は、特に、生物の分解のためにされに使用されている。陽イオン性界面活性剤を使用した多くの方法が記載されており、生物の溶解および核酸(NA)の単離について特許を受けている。核酸を、例えば、その保護および清浄化のために、陽イオン性界面活性剤によって複合体化することができる。以下の米国特許および米国特許出願に記載の方法は、これらの方法の一部である:米国特許第6,602,718、米国特許第6,617,170号、米国特許第5,010,183号、米国特許第5,985,572号、米国特許第5,300,635号、米国特許第5,728,822号、ならびに米国特許出願2002/0146677A1号、米国特許出願2004/0048384A1号、米国特許出願2004/0115689A1号、米国特許出願2004/0014703号。アンモニウム塩(例えば、N−セチル−N,N,N,−トリメチル−アンモニウムブロミド(CTAB))を使用した溶解方法は、少なくとも6個のC原子のより長い炭化水素鎖を含む両親媒性アンモニウム塩を使用する。
【0009】
B)水での溶解:水での溶解時に、これらを包む細胞の半透膜の性質を使用する。これらの膜は、透水性を示すが、塩またはより大きな分子を透過させない。塩および他のより大きな分子のその内容物内の細胞が細胞内よりも塩濃度が低い液体に移動した場合、細胞内外の塩濃度が釣り合うまで、細胞は水を吸収する。細胞内液と細胞外液との間の濃度の相違が十分に大きい場合、細胞は、破裂するまで水を吸収する。
【0010】
C)有機溶媒での溶解:疎水性細胞膜を、有機溶媒によって破壊することができる。膜の脂質および膜の親油性タンパク質成分は、有機相に吸収される。細胞内容物のほとんどが親水性相または親油性相と親水性相との間の境界層に留まる。しばしば、この溶解型と共にフェノールを使用する。
【0011】
D)カオトロピック塩での溶解:カオトロピック塩は、水素結合の形成に基づいて水の構造を破壊し、その結果、膜の二重層構造をもはや維持できない。それにより、これらの膜が溶解されて溶解が起こり、それにより、細胞内容物がカオトロピック環境に流れ込む。この方法を、多数の核酸およびタンパク質の単離方法(例えば、市販のRNeasy(登録商標)、QIAamp(登録商標)、またはタンパク質清浄化のための細胞の変性分解方法)と共に使用する。
【0012】
所与の量の生体分子(DNAまたはRNAなど)の検出または単離に必要な量をさらに減少させることができるので、関連する細胞の内容物ができるだけ完全にライセートに移行した得られたライセートを使用して実施する以下の清浄化工程または検出反応が望ましい。
【0013】
生体分子(例えば、核酸およびタンパク質)の定量分析および定性分析に関して、その完全性の保存は非常に重要である。特に、DNAなどの核酸、より広い範囲では、RNAは、その天然の環境からの生体サンプルの除去後に異なる影響を受け、DNAまたはRNAが変化または分解し得る。例えば、溶解時にサンプル中で起こる剪断力の影響下でのこれらの核酸の酵素的分解またはDNAの分解が言及されている。
【0014】
核酸およびタンパク質の完全性の保存を、(A)NAまたはタンパク質の清浄、(B)脱水、(C)分解酵素からの防御、または(D)複合体化によって達成することができることが知られている。これを以下に手短に記載する。
【0015】
(A)核酸またはタンパク質の清浄化:清浄時に、核酸またはタンパク質を、生体サンプル中に含まれ、且つ核酸またはタンパク質の完全性を恒久的に損ない得る全ての物質または分子から遊離する。これらの清浄化方法は、例えば、アフィニティクロマトグラフィ、タンパク質塩析法、固相での核酸またはタンパク質の清浄化である。固相は、例えば、米国特許第5,990,301号および米国特許第6,020,186号に記載のイオン交換体であり得る。あるいは、多孔質マトリックスの使用は、例えば、米国特許第6,180,778号または米国特許第5,496,562号に記載されている。
【0016】
(B)脱水:核酸またはタンパク質の脱水により、核酸またはタンパク質を有するサンプルを水に溶解した場合に起こり得る損傷過程が遮断または防止される。これらの損傷過程は、例えば、プロテアーゼまたはヌクレアーゼによる酵素分解である。したがって、単離された核酸を、例えば、塩およびアルコールを用いた沈殿(沈殿)によって脱水することができる(Current protocols in molecular biology,e.g.p.1.6.1.Alkaline lysis Miniprep)。脱水によって生体サンプル(例えば、組織の一部または顕微鏡用切片)の分解から核酸を保護することもできる。これは、例えば、米国特許第6,528,641号に記載されている。試薬を、米国特許に記載の方法においてインタクトなサンプルに浸透させ、それにより、脱水するだけでなく、タンパク質が沈殿し(例えば、ヌクレアーゼが影響する)、タンパク質が不活性様式で脱水サンプル中に存在する。脱水剤としての硫酸アンモニウムの使用は、米国特許に特に記載されている。米国特許出願番号2002/197637号に記載のDNAの清浄化でDNAが沈殿する。この清浄化は、清浄化のためにポリアミンを使用し、このポリアミンによってDNAが濃縮され、機械的崩壊を使用して剪断によるDNAの損傷を回避する。
【0017】
(C)分解酵素からの防御:プロテアーゼおよびヌクレアーゼ(核酸を崩壊させる酵素)が特に阻害され得ることが知られている。したがって、DNアーゼIを、例えば、Mg2+またはCa2+錯化剤によって阻害することができる。RNアーゼを、例えば、特異的RNアーゼインヒビターまたは還元剤によって阻害することができる。これらのインヒビターは、米国特許第5,552,302号および米国特許第6,777,210号に記載されている。
【0018】
(D)複合体化:別の種類の清浄化によって第四級アミン塩と複合体化し、核酸防御のためのミセルが形成される。したがって、核酸の複合体化により、ヌクレアーゼから防御される。陽イオン性界面活性剤として機能する第四級アンモニウム塩を使用し、ミセルを形成する。これについて、第四級アンモニウム塩が置換基として少なくとも1つの長鎖炭素鎖を有することが必要である。米国特許第6,602,718号、米国特許第6,617,170号、米国特許第5,010,183号、米国特許第5,985,572号、米国特許第5,300,635号、米国特許第5,728,822号、米国特許出願2002/0146677A1号、米国特許出願2004/0048384Al号、米国特許出願2004/0115689号、および米国特許出願2004/0014703A1号は、これらの方法または類似の方法に属すると見なされる。
【0019】
米国特許第6,821,752号は、両親媒性アミン、すわなち、類似の様式において界面活性剤として作用する化合物の存在下でのタンパク質の清浄化および抽出を記載している。
【0020】
核酸またはタンパク質の分離または複合体化のために提供された化合物は、その後に行われる単離方法または分析方法に関してできるだけ不活性で挙動すべきである(すなわち、その後の単離または分析に不利な影響を及ぼすべきではない)という点で制限される。そうでなければ、化合物は、さらなる再生工程で脱複合体化されなければならない。
【0021】
上記技術は、生体サンプル由来の核酸およびタンパク質の十分な安定化には、通常、サンプルが分裂されるさらなる認識工程が必要であることを示す。したがって、これらのさらなる認識工程を不必要にし、できるだけ多目的に使用することができる安定化試薬を使用する安定化方法が有利である。
【0022】
核酸またはタンパク質を含むサンプルなどの生体分子の分析で起こり得るさらなる問題は、第1の生体分子型がこのようなサンプル中の第2の生体分子型によって損なわれ得るという事実である。時折、第2の生体分子型も分析すべきであり、それにより、第1または別の型の生体分子が分析時に破壊するように作用する。これを明白にするために、多くの例のうちの一例を本明細書中に記載する。サンプルは、一定の生物の細胞を含む。核酸に結合するタンパク質の存在下でのオリゴヌクレオチドによるこれらの細胞の核酸の検出は、例えば、不利な様式で影響を及ぼし得る。この例において一定のDNA種を検出すると仮定すると、DNAに結合するタンパク質は阻害物質である。別の例(例えば、DNAに結合するタンパク質の分析)では、DNAに結合するタンパク質に結合することができるDNAは、この場合では核酸が阻害物質として作用し、分析結果を歪曲し得るので、分析結果に悪影響を及ぼし得る。
【0023】
異なる生体分子間のこれらの不利な相互作用を排除するための有用な方法は、妨害を回避するために互いに影響を及ぼす生体分子を分離することである。したがって、これらの方法は、しばしば、一定の生体分子種をサンプルから除去する清浄化工程を提供する。含有する生体分子の濃度は分離方法によって変化するので、所望の生体分子が富化されるが、他の生体分子の濃度が減少する。生体分子の公知の分離方法には、以下の方法が含まれる。
(A)塩析法による生体分子の分離。塩析法を使用して、一定量の塩によってサンプルから沈殿し得る生体サンプルの一部を分離する。一方では、これらの方法を使用して、塩を使用して清浄化されるべき部分を沈殿させることができる。タンパク質の硫酸アンモニウム沈殿は、このような公知の方法である。他方では、この方法を逆方向で使用して、清浄化すべき材料を複数の夾雑分子から遊離することができるが、材料自体は沈殿しない。これの例は、DNA単離時の酢酸カリウムによるタンパク質沈殿である。
【0024】
(B)クロマトグラフィによる生体分子の分離:生体分子を、その性質によって、いくつかのクロマトグラフィ法によって清浄化および分離することができる。これらの性質は、一例を挙げると、そのサイズ、電荷、疎水性、または一定の表面またはハプテンに対する親和性を考慮することができる。クロマトグラフィを、イオン交換クロマトグラフィを例として説明する。イオン交換クロマトグラフィによって清浄化すべき一連の化学的生体分子には2つの可能性がある。単離すべき生体分子は一方でイオン交換クロマトグラフィ材料に結合するのに対して、夾雑物質は結合せず、このような様式(例えば、負電荷の核酸の清浄化のための陰イオン交換クロマトグラフィ)で単離すべき生体分子を分離することができる。他方では、夾雑物質をクロマトグラフィ材料に結合させ、単離すべき生体分子を通過させるか、洗浄緩衝液によって洗浄することもできる(例えば、負電荷の核酸の清浄化のための陽イオン交換クロマトグラフィ)。このような方法の例は、米国特許5,990,301号およびWO0248164号に記載されている。
【0025】
(C)固相での生体分子の分離:多数の表面は、所定の結合環境下で一定の生体分子に結合することができる性質を有する。これらの結合特性を、生体分子の清浄化に使用することができる。これを、本明細書中で、シリカ表面での核酸の清浄化の例を用いて説明する。シリカ表面(微粒子または膜)は、高濃度のカオトロピック塩の存在下で核酸に結合することができる。しかし、他の分子(例えば、タンパク質)はこれらの表面に結合せず、それにより分離される。核酸を、シリカ表面の洗浄後に純粋な形態で得ることができる。この例は、米国特許第5,990,301号、米国特許第6,020,186号、および米個6,180,778号に記載されている。
【0026】
(D)選択的複合体化による生体分子の分離:いくつかの分離方法は、生体分子を選択的に複合体化し、その結果、これらを、遠心分離工程または濾過工程によってサンプルの他の成分から分離することができる。これについての例は、米国特許第5,728,822号および米国特許第5,985,572号に記載されている。
【0027】
RNAを含むサンプルにおいて阻害効果を中和するための硫酸アンモニウムの使用は、米国特許出願2002/0115851号に記載されている。これらのサンプルは、精製されたRNAを含む。しかし、無機アンモニウム塩(例えば、硫酸アンモニウム)がポリメラーゼ活性(例えば、3’−5’エクソヌクレアーゼ活性)の一部を変化させ、それにより、硫酸アンモニウムの存在がその後の分析のために行われるポリメラーゼ反応に不利な影響を及ぼし得ると文献に記載されている(Tsurumi et al.,’’Functional Expression and Characterization oF the Epstein Barr virus DNA polymerase Catalytic Subunit’’,Journal of Virology,Vol 67,No.8,1993,p.4651−4658)。
【0028】
記載の方法には事前の生体分子の分離が必要であり、この分離は不利な様式で検出反応に影響を及ぼし、この影響はサンプルに由来するかサンプルに由来すると推定される。したがって、サンプルを使用して信頼できる検出反応を行うことができるような手段で、サンプル中の一定の生体分子の阻害効果を除去することができる簡潔な方法が必要である。
【0029】
核酸分離中にしばしば起こるさらなる問題は、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)がその化学的性質が非常に類似する生体分子であるという事実において見出される。したがって、しばしば、これらを互いに分離することは困難である。それにもかかわらず、複数の適用のために、DNAを含まないRNAまたはRNAを含まないDNAを産生することは最も重要である。RNA調製物中のゲノムDNAの夾雑は、例えば、RT−PCR実験において定量的に誤った結果を生じ得る。
【0030】
現在、DNAまたはDNAを個別に富化することを可能にする多数の方法が存在する。異なる方法を原理によって区別することができる。一方では、DNAまたはRNAを特異的に分解する酵素を使用することができる。これらの酵素は、ヌクレアーゼと呼ばれている。RNA分解酵素はこれらのヌクレアーゼ(RNアーゼ)に属し、DNA分解酵素はDNアーゼに属する。例えば、DNAを清浄化する場合、清浄化方法において、RNA分子を分解して小片にするRNアーゼを使用することができる。これらの方法を、一般に、例えば、プラスミドの単離またはゲノムDNAの清浄化のために使用する。あるいは、RNA調製物中のDNA夾雑物を、DNアーゼIを使用して加水分解する。この方法も一般に知られている。
他方では、RNAまたはDNAの化学的性質の相違を利用する化学的方法を使用することができる。多数の固相清浄方法がこれらに属するものと見なされる。固相は、例えば、米国特許第5,990,301号および米国特許第6,020,186号に記載のイオン交換体または米国特許第6,180,778号および米国特許第5,496,562号に記載の多孔質マトリックスであり得る。
他の清浄化方法は、RNAまたはDNAの異なる溶解挙動に関する。カオトロピック塩および酸性フェノールを含む水溶液の存在下でのRNAの清浄化は、これらに属するものと見なされ、この清浄化により、ゲノムDNAは境界相に富化され、RNAは水溶液中に残存する(Chomczynski P.& Sacchi N.,1987,Anal Biochem.1987 April;162(1):156−9,’’Single step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate phenol chloroform extraction’’)。
他の方法は、RNAまたはDNAの選択的沈殿に基づく。この例は、生体分子の阻害または生体分子の安定化のための脱複合体化と組み合わせて上に既に記載している。
【0031】
これらの方法には、異なる生体分子の相対的組成物、特に、異なる核酸またはタンパク質を所望の効果を得るために非常に変化させる分離方法も含まれる。方法の実行可能性は、分離のために使用した試薬が所望の検出反応に負の影響を及ぼすかどうかに依存し得、それにより、例えば、分析方法のための一定のサンプル調製に利用可能な試薬数は制限される。各方法のサンプルの分離工程はまた、さらなる費用に加えて夾雑リスクを有し、それにより、極度に清潔で制御された操作が必要となる。
【0032】
異なる態様によれば、生体分子を含むサンプルのサンプル調製のさらなる改良、生体分子の処理、調製、および分析方法の改良が必要である。
【発明の開示】
【0033】
本発明は、請求項1に記載のその後に続く調製、処理、または分析方法のためのサンプル調整方法、請求項2に記載の生体サンプルの溶解方法、請求項16に記載の分析方法、請求項20に記載の核酸および/またはタンパク質の安定化方法、請求項35に記載の分析方法、請求項41に記載のサンプルの阻害効果の減少方法、請求項57に記載の分析方法、請求項64に記載の選択的マスキング方法、および請求項76に記載の差分分析方法を使用してこの目的を解決する。
本発明のさらなる有利な態様、詳細、および特徴は、従属クレーム、説明、実施例、および図面によってもたらされる。
【0034】
本発明の個別の態様を記載する前に、本発明が理解されるように、以下の用語を説明する。
【0035】
生物:生物を、核酸および/またはタンパク質を含む任意の形態のケーシングと定義する。これらには、例えば、ウイルス、ファージ、細胞、細胞形式、または生物全体が含まれる。これらの生物を、生きた状態、死んだ状態、またはその静止状態で使用することができる。これらの生物は溶液またはペレットであり得るか、固相に会合するか結合することもできる。「生物」を本発明の範囲内で言及する場合、同型のいくつかの生物、異なる型のいくつかの生物であり得るか、1つの生物であり得る。生物は、始原細菌、原核生物、または真核生物で見出され得る。生物は、動物、植物、または内部共生体(例えば、ミトコンドリアまたはプラスミド)を起源とし得る。そのうちで、本発明という意味での生物は、例えば、個別の細胞、細胞アセンブリ、組織、または動物全体または生物全体、培養細胞、排泄物または分泌物(例えば、安定化および非安定化血液、血清、血漿、組織液、精子、標本、痰、唾液、涙、尿、便、毛髪または毛根、フケ、頬側標本、軟膜など)である。
【0036】
細胞物質:本発明の範囲内の細胞物質は、生物内で生じるか環境に送達され得る外因性物質の混合物(例えば、組織液、血漿、唾液、精子、分泌物など)である。細胞物質は、全ての成分(例えば、核酸、タンパク質、ならびに他のポリマーおよび代謝産物)を含む。生物のケーシングに割り当てられるべき物質(例えば、ケーシング、特に膜、キャプシド、細胞壁、細胞基質など)もこれらに属する。
【0037】
生体分子:生体分子は、検出方法(例えば、増幅)によって得られた生物またはその変換産物に由来する分子である。生体分子は、例えば、核酸もしくはタンパク質または生物由来の他の分子である。生体分子を、例えば、生物の溶解によって得ることができる。
【0038】
核酸:核酸(NA)は、本発明の範囲内で、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはペプチド核酸(PNA)が考えられる。デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)は生物中に天然に存在するが、これは生物外で発生するか、これらに付加することもできる。核酸の長さは異なり得る。核酸を、変化によって修飾することができる。例えば、核酸の1つまたは複数の核酸塩基を修飾することができる。核酸中の糖単位を、修飾するか(例えば、メトキシ基による)、例えば、PNA中でさらに置換することができる。核酸は、類似物(例えば、非プリンもしくは非ピリミジン類似物またはヌクレオチド類似物(例えば、PNA))を含み得る。DNAおよび/またはRNAは、追加物(例えば、タンパク質またはアミノ酸)を含み得る。
用語「DNA」は、本発明で理解されているように、天然型および非天然型にさらに分類することができ、それにより、天然に存在しない型(例えば、トランスフェクションまたは形質転換による)も生物に含めることができる。ゲノムDNA(gDNA)は、生物のデザインを含む配列情報を含む。本発明の全配列に対応しない部分的領域を(この配列由来の非常に小さな部分的領域も)ゲノムDNAと呼ぶ。本発明で理解されるように、ゲノムDNAはまた、その修飾形態である。用語「DNA」には、プラスミドDNAも含まれる。プラスミドDNAは、その「複製起源」を有する染色体外DNAである。本発明で理解されるように、プラスミドDNAは、その修飾形態でもある。本明細書中で理解される、用語「DNA」には、mtDNAまたはptDNAも含まれる。mtDNAまたはptDNAは、ミトコンドリアまたはプラスミド由来のゲノムDNAである。mtDNAまたはptDNAは、本明細書中で理解されるように、その修飾形態でもある。
【0039】
本明細書中で理解される、用語「RNA」には、天然型および非天然型が含まれ、それにより、非天然型を生物に含めることができる(例えば、トランスフェクションによる)。mRNA、hnRNA、およびrRNAは、巨大なRNA分子(50nt〜高kb)であり、これらを、コードされた起源由来のコピーとして産生することができる。本発明で理解されるように、mRNAまたはrRNAは、その修飾形態でもある。
tRNA、miRNA、siRNAなどは、翻訳中に有効な小さなRNA分子である。直鎖または分岐鎖の配置でのペプチド結合を介してさらなるアミノ酸に連結した各核酸(AS)をタンパク質と呼ぶ。タンパク質は、単量体、二量体、または多量体として存在することができ、それにより、ホモマーまたはヘテロマーを形成することができる。タンパク質は、天然に存在するタンパク質または合成タンパク質であり得る。タンパク質は、修飾形態で存在することができる。これらのタンパク質は、例えば、酵素、構造タンパク質、受容体、イオンチャネルおよび他の輸送体、細胞外基質タンパク質、転写調節因子、タンパク質結合核酸、ケーシングおよび保護タンパク質、貯蔵タンパク質などであり得る。
【0040】
溶解:用語「溶解」は、核酸および/またはタンパク質が生物から環境に送られる本発明の過程である。それにより、生物の構造は破壊され得る(例えば、生物のケーシングを溶解することができる)。用語「溶解」は、本発明で、生物の構造を破壊することなく、細胞物質が小開口部(例えば、孔)を介して生物から流出し得る。孔を、例えば、溶解試薬によって作製することができる。さらに、本発明の用語「溶解」は、既に構造的に破壊されているようであるか小開口部を有する生物の核酸および/またはタンパク質を、添加物の使用によって流出することができることを意味する。ライセートは、溶解によって産生される。溶解過程は、酵素的、化学的、または物理的溶解方法を使用して行うことができる。
【0041】
酵素的、化学的、または物理的溶解方法:本発明の用語「酵素的溶解方法」は、酵素を使用した生物の溶解または生体分子の放出を支持する過程である。すなわち、酵素溶解方法のための酵素は、生物の溶解または生体分子の放出を支持するという点で特徴づけられる。このような酵素は、例えば、プロテアーゼ、リゾチーム、グルカナーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、加水分解酵素、ペクチナーゼなどである。当業者は、本発明の生物の溶解または生体分子の放出を支持するさらなる酵素について理解している。これらの酵素を、生物から古典的様式またはバイオテクノロジー法によって得ることができる。これらの酵素は、遺伝的または化学的に変化した酵素および熱不安定性または熱安定性酵素である。
本発明の用語「化学的溶解方法」は、化学物質を用いて生物の溶解または生体分子の放出を支持する過程である。これらは、例えば、界面活性剤、酸、塩基、有機溶媒、カオトロピック物質などである。
本発明の用語「物理的溶解方法」は、物理的方法を用いて生物の溶解または生体分子の放出を支持する過程である。これらは、機械的および温度方法であるが、波長および圧力の相違効果に基づいた方法でもある。機械的溶解方法は、例えば、剪断または粉砕する方法(例えば、ミル、ナイフ、小カニューレ、篩、モルタル、または粒子を使用した衝撃)またはサンプルを均一にすることができる方法である。温度的溶解方法では、温度変化によって生物の溶解または生体分子の放出を引き起こす。これらは、例えば、加熱または(例えば、凝固点以下での)冷却に基づき得る。波長の効果に基づいた方法は、例えば、音波または電磁波を使用した処理である。圧力変化も溶解を支持することができる(例えば、圧潰または突然の圧力変化(例えば、フレンチプレス)の形態)。
当業者は、さらなる酵素的、化学的、または物理的溶解方法を理解しており、これらの方法を異なる組み合わせで使用することができることも公知である。
【0042】
溶解緩衝液:用語「溶解緩衝液」は、一般に、本発明の溶解のために使用される。この液体は、異なる溶解試薬の溶液であり得る。溶解緩衝液は、pHの調製のための緩衝液系を含むことができるが、含む必要はない。本発明の方法で使用される液体組成物は、例えば、「溶解緩衝液」であえる。
【0043】
反応系:本発明の反応系は、サンプル中に含まれる成分を、生物学的、化学的、または物理的反応において修飾、同定、または変化させることができる全ての形態の系と理解すべきである。反応系は、少なくとも検出可能な量の分析すべき成分(例えば、DNAおよび/またはRNA)を含む。
【0044】
差分分析:差分分析は、少なくとも2つの異なる成分(例えば、核酸DNAおよびRNA)を含み、成分のうちの少なくとも1つ(例えば、上記核酸のうちの1つ)が分析されないサンプルが使用される反応系である。
【0045】
核酸調製物またはタンパク質調製物:核酸調製物は、核酸を含むサンプルまたは核酸を含む材料の混合物の調製によって得られた核酸であり、調製は、核酸の1つまたは複数の所定の種が核酸調製物中で富化されるようにサンプルまたは材料の混合物中に含まれる異なる核酸またはタンパク質種の相対濃度が影響を受ける方法である。とりわけ、調製方法は、精製方法(例えば、シリカ膜(例えば、QIAGEN GmbH,Hilden.Germanyから入手したRneasyまたはDIAamp(登録商標))によるサンプルからの核酸の清浄化であり、それにより、調製方法の前に材料混合物のサンプルと比較した核酸に関するタンパク質濃度が顕著に減少する。類似物は、タンパク質調製に適用する。
【0046】
以下に、本発明の分析方法で使用することができる異なる核酸のハイブリッド形成または配列決定および合成方法を記載している。これらの方法は標準的な方法であり、TAAと絵羽、出願WO01/498802号または米国特許第2002/0115851号に記載されている。
【0047】
結合反応:結合反応は、少なくとも2つの結合パートナー(例えば、ハイブリッド形成における2つの核酸分子または抗体抗原相互作用における2つのタンパク質、または結合反応におけるタンパク質および核酸)が相互作用する反応である。検出反応または定量を実施するためかこれを調製するために結合反応を行う。
サンプルがプローブによって結合することができるようにサンプルをプローブに接触させる。プローブを、簡潔なプローブ検出が可能な様式で修飾することができる。これらの修飾は、例えば、フルオロフォア、放射性物質、または酵素のカップリングであり得る。
【0048】
核酸の第1の鎖は、酵素(例えば、DNAまたはRNAポリメラーゼ、リガーゼなど)によるプライマー依存性核酸合成中に形成され、標的核酸と相補的な核酸鎖である。核酸の第2の鎖は、酵素によってプライマー依存性核酸合成中に形成され、第1の鎖の配列と相補的な核酸鎖である。
【0049】
反応系で反応する(例えば、定義したプライマーまたはオリゴヌクレオチドに特異的に結合する)(すなわち、これとハイブリッド形成することができる)核酸は、標的核酸と見なされる。標的核酸は、この例では、酵素によるプライマー依存性核酸合成(例えば、DNA−またはRNA依存性DNA重合)を使用したプライマー結合後に合成されるべき核酸鎖のマトリックスとして役立ち、合成されるべき核酸鎖の配列は、標的核酸配列と相補的である。それにより、特異的結合は、標的核酸とプライマーまたはオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成部分が100%相補的であることを意味しない。有用な結果を得るために、プライマーと標的核酸との間のハイブリッド形成領域中の最大で50%までの塩基が相補的でなくてよい。プライマーと標的核酸とのハイブリッド形成部分の30%未満の塩基が相補的でない場合、良好から非常に良好までの結果を達成することができる。プライマーと標的核酸とのハイブリッド形成部分の相補性がより高いほど、プライマーはより特異的且つ有効である。
【0050】
一方では、標的配列は、プライマー結合位置を含む配列であり、他方では、プライマー結合位置の3’方向(下流)に存在する配列である。核酸配列は、プライマー依存性核酸合成時に形成され、標的配列に相補的である。
【0051】
プライマーは、核酸合成のための出発物質である。これらは、主に、1つの一本鎖核酸分子の領域に相補的であり(上記を参照のこと)、これと反応して二本鎖を形成することができる短鎖の一本鎖オリゴリボヌクレオチドまたはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。この二本鎖中の遊離3’ヒドロキシ末端は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)の基質および全一本鎖の二本鎖への重合のための出発点として役立つ。プライマーは、一般に、標的核酸に連続的に結合することができるオリゴマーの出発分子と定義される。プライマーに結合する標的核酸の配列を、プライマー結合位置と呼ぶ。それにより、プライマーはまた、これら全てがプライマー結合位と同一または類似の配列を含む場合、異なる標的核酸と結合することができる。第1プライマーまたは一次プライマー(P1)を、「アンチセンスプライマー」と定義し、第2プライマーまたは二次プライマー(P2)を「センスプライマー」と定義する。
【0052】
外側由来の反応に添加した二次プライマーP2または核酸の第1の鎖の逆折り畳みによって形成されたプライマー(いわゆる「ヘアピンループ」)のいずれかである「センスプライマー」は、二次鎖合成プライマーであると理解される。プライマー結合位置は、ハイブリッド形成によってプライマーに結合することができる標的核酸の配列である。プライマー結合位置の配列は、プライマー配列と、少なくとも30%まで、好ましくは、少なくとも50%、特に好ましくは、100%相補的である。
【0053】
プライマーのハイブリッド形成対は、プライマー標的とハイブリッド形成し、プライマー標的分子のプライマー結合位置の配列と少なくとも50%の塩基が相補的なプライマーの配列部分である。プライマー標的分子は、酵素反応に導入される核酸分子である。これは、この反応の産物ではない。
【0054】
酵素によって触媒されるプライマー依存性核酸合成(特に、DNAおよびRNA依存性)は、cDNA合成、DNA配列決定、および適用方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)/RT−PCRまたは等温増幅方法であるNASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR(自己持続配列複製;3SRに類似しているが、RNアーゼHを使用しない)、TMA(転写媒介増幅)、SDA(鎖置換増幅)、LCR(リガーゼ連鎖反応)、および関連する方法)との重要な反応である。プライマー依存性核酸合成の効率は、核酸重合酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)の活性、標的核酸、ならびにプライマーハイブリッド形成の効率および特異性に影響を受ける。以下に、プライマー依存性核酸合成過程についてのいくつかの適用例をより詳細に記載する。
【0055】
プライマー依存性核酸合成反応は、例えば、一次および二次鎖cDNA合成、DNA配列決定、プライマー結合に基づいた変異誘発過程、および他の方法で見出され得る。配列特異的に出発した核酸合成反応を、酵素(例えば、RNAまたはDNA依存性ポリメラーゼ)を使用して行い、それにより、配列特異的に開始したDNA合成反応は、以下の工程を含む。
【0056】
1.第1のプライマーP1のこれに相補的な標的核酸(RNAまたはDNA)の1つの配列への配列特異的ハイブリッド形成および2.酵素(例えば、RNA依存性またはDNA依存性DNAポリメラーゼ)を使用して伸長すべきプライマーP1の遊離3’OH末端へのデオキシリボヌクレオチドの触媒的挿入によるプライマーP1の伸長であって、ここで、標的核酸がマトリックスとして役立ち、プライマーP1が標的核酸の一定の配列に相補的であり、且つ特異的様式でこの標的配列とハイブリッド形成することができる配列の全体または少なくとも3’領域を含み、ここで、プライマーP1は標的核酸に相補的ではなく、且つ標的核酸とハイブリッド形成できない配列の5’領域を含むことができ、さらなる機能を含むことができる。合成は、標的核酸(マトリックス)の末端に達するか、末端までに妨害され得、それにより、第1の鎖の核酸合成が終了する。
3.核酸の第2の鎖合成は、第2の鎖合成プライマー(ZP)の配列特異的ハイブリッド形成によって開始される。第2の鎖合成プライマーは、反応に導入された個別のプライマーP2、標的核酸の分解産物、または核酸の第1の鎖の逆折り畳みによって形成されたプライマー(ヘアピンループ)であり得る。
4.酵素を使用して伸長されるべきZPの遊離3’−OH末端へのヌクレオチドの触媒組み込みによるZPの伸長であって、ここで、標的核酸の第1の鎖がマトリックスとして役立ち、ZPが標的核酸の一定の配列に相補的であり、且つ配列特異的様式でこれとハイブリッド形成することができる配列の全体または少なくとも3’領域を含み、ZPは標的核酸に相補的ではなく、その結果として標的核酸とハイブリッド形成することができない配列の5’領域を含むことができるか、プライマーP1と異なる配列を含むことができる。
【0057】
プライマー依存性合成反応は、配列決定と同様に重要な反応である。核酸配列決定方法は、本質的に、以前に記載されているプライマー依存性核酸合成反応下での方法に従い、工程(1)および(2)に制限される。DNA合成の場合、デオキシリボヌクレオチドとジデオキシリボヌクレオチドとの混合物を、酵素(例えば、RNAまたはDNA依存性ポリメラーゼ)による触媒的組み込みのために使用する。
【0058】
したがって、配列特異的に開始される核酸合成反応を、酵素(例えば、RNAまたはDNA依存性ポリメラーゼ)による配列決定のために行い、配列特異的に開始されるDNA配列反応は、以下の工程を含む。
1.プライマーP1のこれに相補的な標的核酸(RNAまたはDNA)の配列への配列特異的ハイブリッド形成。
2.酵素(例えば、RNA依存性またはDNA依存性DNAポリメラーゼ)によって伸長すべきプライマーP1の遊離3’OH末端へのデオキシリボヌクレオチドよびジデオキシリボヌクレオチドの触媒的導入によるプライマーP1の伸長であって、ここで、標的核酸がマトリックスとして役立ち、プライマーP1が標的核酸の一定の配列に相補的であり、且つ特異的様式でこの標的配列とハイブリッド形成することができる配列の全体または少なくとも3’領域を含み、ここで、プライマーP1は標的核酸に相補的ではなく、且つ標的核酸とハイブリッド形成できない配列の5’領域を含むことができ、さらなる機能を含むことができる。
【0059】
プライマー依存性核酸合成反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の第1および第2の鎖のDNA合成でも見出される。したがって、配列特異的に開始されるDNA合成反応を、熱安定性RNAおよび/またはDNA依存性ポリメラーゼによって行い、ここで、配列特異的に開始されるDNA配列反応は、以下の工程を含む。
1.標的核酸の最初の熱変性。
2.2つのプライマーP1およびP2のこれらに相補的な標的核酸配列への配列特異的ハイブリッド形成。
3.熱安定性RNA依存性またはDNA依存性ポリメラーゼによって伸長されるべきプライマーP1およびP2の3’−OH末端へのデオキシリボヌクレオチドの触媒組み込みによるP1およびP2の伸長であって、ここで、標的核酸がマトリックスとして役立つ。
4.工程(1)に入った後に、プライマー伸長産物の一部がプライマーP1およびP2のプライマーハイブリッド形成のためのマトリックスとして再度役立つ。
5.工程(1)〜(4)を、任意に反復することができ、したがって、所望の性質を有する核酸を合成することができ、ここで、プライマーP1およびP2が、標的核酸の一定の配列に相補的であり、且つ特異的様式でこの標的配列とハイブリッド形成することができる配列の全体または少なくとも3’領域を含み、ここで、プライマーP1およびP2は標的核酸に相補的ではなく、且つ標的核酸とハイブリッド形成できない配列の5’領域を含むことができ、さらなる機能を含むことができる。
【0060】
配列特異的に開始される核酸合成反応は、in vitro転写に基づいた等温の指数関数的核酸増幅方法(例えば、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR(自己持続配列複製;3SRに類似しているが、RNアーゼHを使用しない)、TMA(転写媒介増幅)、および類似の方法)のさらなる構成要素である。これらの方法と共に、プライマー、RNAおよびDNA依存性DNAポリメラーゼ、および適切な反応条件を使用し、ここで、指数関数的核酸増幅方法は、以下の工程を含む。
1.標的核酸、第1のプライマーP1、第2のZP、RNA依存性DNAポリメラーゼ、DNA依存性DNAポリメラーゼ、DNA依存性RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチド、およびデオキシリボヌクレオチドを含む1つの反応媒体の産生。
2.増幅サイクルを維持することができるような反応条件の設定。
3.相補的標的配列へのプライマーP1のハイブリッド形成によって標的核酸に相補的な第1の鎖の合成を行い、その後、RNAまたはDNA依存性DNAポリメラーゼを使用したデオキシリボヌクレオチドによってプライマーP1を伸長し、ここで、標的核酸は、DNAまたはRNAのいずれかであり得る。
4.第1のDNA鎖の標的核酸の酵素的、温度的、または化学的変性または分解、相補的な第1のDNA鎖へのZPのハイブリッド形成、その後のRNAまたはDNA依存性DNAポリメラーゼを使用したデオキシリボヌクレオチドによるZPの伸長によって第1のDNA鎖に相補的な第2のDNA鎖の合成を行い、ここで、プライマーP1およびZPが、標的核酸の一定の配列に相補的であり、且つ特異的様式でこの標的配列とハイブリッド形成することができる配列の3’領域を含み、ここで、プライマーP1もしくはZPの少なくとも1つまたは両プライマーは標的核酸に相補的ではなく、且つ標的核酸とハイブリッド形成できない配列の5’領域を含むことができ、DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター配列を含むことができる。
5.DNA依存性RNAポリメラーゼおよびリボヌクレオチドを使用して工程(1)〜(4)で合成したDNA分子のin vitro転写を行うことができ、ここで、生成されたin vitro転写物は、マトリックスとして再度役立ち、プライマーP1およびZPの配列特異的ハイブリッド形成下での第1および第2のDNA合成に入り、その後、in vitro転写に入る。核酸の指数関数的増殖を、この様式で行う。
【0061】
配列特異的に開始される核酸合成反応は、in vitro転写に基づいた洗浄等温核酸増幅方法のさらなる構成要素である。これらの方法を、適切な反応条件と共に配列特異的結合プライマー、RNAおよびDNA依存性DNAポリメラーゼ、およびRNAポリメラーゼを使用して行い、ここで、等温洗浄核酸増幅方法は、以下の工程を含む。
1.標的核酸、第1のプライマーP1、第2のZP、RNA依存性DNAポリメラーゼ、DNA依存性DNAポリメラーゼ、DNA依存性RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチド、およびデオキシリボヌクレオチドを含む1つの反応媒体の産生。
2.相補的標的配列へのプライマーP1のハイブリッド形成によって標的核酸に相補的な第1の鎖の合成を行い、その後、RNAまたはDNA依存性DNAポリメラーゼを使用したデオキシリボヌクレオチドによってプライマーP1を伸長し、ここで、標的核酸は、DNAまたはRNAのいずれかであり得る。
3.第1のDNA鎖からの標的核酸の酵素的、温度的、または化学的除去によって第1のDNAに相補的な第2のDNA鎖を合成し、第1の鎖の相補DNAにZPをハイブリッド形成する。核酸の第2の合成を、第2のZP(標的核酸の分解産物)の配列特異的ハイブリッド形成または第1の核酸鎖に相補的な標的核酸の第1の核酸鎖配列への第1の核酸鎖の逆折り畳みによって開始する。デオキシリボヌクレオチドによるZPの伸長は、RNAまたはDNA依存性DNAポリメラーゼを使用して継続し、ここで、プライマーP1およびZPが、標的核酸の一定の配列に相補的であり、且つ特異的様式でこの標的配列とハイブリッド形成することができる配列の3’領域を含み、ここで、プライマーP1もしくはZPの少なくとも1つまたは両プライマーは標的核酸に相補的ではなく、且つ標的核酸とハイブリッド形成できない配列の5’領域を含むことができ、DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター配列を含むことができ、それにより、DNA依存性RNAポリメラーゼおよびリボヌクレオチドを使用して工程(1)〜(3)で合成したDNA分子のin vitro転写を行うことができる。核酸の一次関数的増殖を、この様式で行う。
【0062】
鎖置換増幅(SDA):SDAは、核酸を増幅させる多数の方法の一般名である。反応は、少なくとも、増幅すべき核酸、適切な緩衝液、プライマー、dNTP、およびポリメラーゼを含む。反応により、核酸が合成され、ここで、二本鎖が遊離が遊離し、このような様式で生成された一本鎖をマトリックスとして使用することができる。ポリメラーゼ自体(元のSDA)によって遊離することができる。あるいは、ヘリカーゼ(ヘリカーゼ依存性増幅)を用いて二本鎖を遊離することができる。チャンス配列を含むプライマーを使用する場合、反応は、多置換増幅と呼ばれる。この方法は、VanNessによって開発され、プライマーが増幅すべき標的核酸の第1の鎖の分化異物に由来する(米国特許出願2003/138800号、「ニッキング剤を使用した核酸の指数関数的増幅」)。この方法は、NUGen社(USA)によって開発され、RND/DNA融合プライマーを使用する。別のSDA反応は、増幅に環状DNAを使用する(ローリングサークル増幅)。この結果、DNAが合成される。類似の方法は、RNAを増幅する(ローリング転写増幅)。
【0063】
プライマー非依存性合成反応:プライマー非依存性合成反応は、プライマーを必要としない反応である。プライマー非依存性合成反応の例は、転写反応である。転写反応によって転写物が合成され、これは、ヌクレオチド、適切な反応環境、およびRNAポリメラーゼの存在下で、RNAポリメラーゼに適切なプロモーターを含む遺伝子から開始される。これは、プライマーを使用せずに起こる。多数の転写物が遺伝子から読み取られ、合成される。
【0064】
プライマー非依存生合成反応のさらなる例は、翻訳反応である。ここに、RNA転写物を、翻訳装置と接触させる。これは、リボゾームおよびタンパク質またはポリペプチドの産生に必要な全てのさらなる成分からなる。特に、これらは、例えば、tRNA、アミノアシル−tRNA−シンテターゼなどである。転写物をこの反応溶液と接触させる場合、このプライマー非依存生合成反応を用いてタンパク質を産生することができる。
【0065】
以下に、本発明の分析方法にしたがって使用することができるさらなる反応系を記載する。
【0066】
酵素試験は、触媒的に有効な生体分子をその触媒活性を活用して測定することができる反応系である。特に、これらは、例えば、酵素(デヒドロゲナーゼ、加水分解酵素、ポリメラーゼ、ホスホリラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼなど)の試験である。
【0067】
生体分子表面の使用:これは、その表面の特定の特徴を使用した生体分子の定量、検出、富化、または検出であると理解される。特に、これらは、例えば、抗体、アプタマー、または結合パートナー、補因子、多酵素複合体のタンパク質、または核酸タンパク質相互作用の検出のためのタンパク質もしくは核酸を活用した生体分子の検出である。
【0068】
生体分子の分解:これは、生体分子の少なくとも1つの性質の破壊であると理解される。酵素は、例えば、酵素が標的分子の構造を認識する場合、生体分子のサイズのみを減少させることができる。本発明の窒素化合物もこれに寄与することができる。
【0069】
一般に、本発明は、少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルのその後に続く調製、処理、または分析方法のためのサンプルの調整方法であって、以下の工程:
A)少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記組成物が、以下:a)ポリアミン、b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、e)カルボン酸アミン、f)無機アンモニウム塩、g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、h)核酸に結合する抗生物質、i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、j)さらに誘導されたa−i群から選択される窒素化合物、および2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むことを含む方法に関する。
【0070】
したがって、サンプルは、生物または核酸および/もしくはタンパク質を含む材料の混合物であり得る。本発明の方法の全ての実施形態では、工程B)で産生された液体サンプル調製物は、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間である。
【0071】
処理方法は、サンプル中に存在する生体分子の各酵素的、化学的、または物理的変換と理解すべきである。本方法の特定の態様を、本発明のさらなる態様として特定の実施形態を参照して以下に説明する。これらの特定の実施形態は、以下に説明するように、生体サンプルの溶解方法、核酸および/またはタンパク質の安定化方法、核酸および/またはタンパク質を含むサンプルの阻害効果の減少、サンプル中の核酸の選択的マスキング方法、ならびにこれらの方法にそれぞれ基づいた分析方法に関する。
【0072】
したがって、本発明の1つの態様は、少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質をケーシング中に含む生体サンプルの溶解方法に関する。特に、生体ケーシング(例えば、膜、キャプシド、または細胞壁)をケーシングとして使用することができるが、ケーシングはこれらに限定されない。サンプルを、ライセート産生のための液体または固体の組成物と接触させ、前記組成物が、以下:a)ポリアミン、b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、e)カルボン酸アミン、f)無機アンモニウム塩、g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、h)核酸に結合する抗生物質、i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、j)さらに誘導されたa−i群から選択される窒素化合物、および2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含む。特に、「少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質をケーシング中に含む生体サンプル」は、本発明で理解される生物である。サンプルが液体または固体のいずれの組成物と接触するかどうかは、サンプルが十分な液体を含み、それにより、さらに使用するために溶解によって十分に液体のライセートが得られるかどうかに依存する。組成物は、好ましくは、液体である。したがって、窒素化合物を溶媒に溶解することができるか、懸濁様式で存在することができる。
【0073】
本発明の溶解方法を使用して、標準的な溶解方法と比較してより大量の核酸および/またはタンパク質をライセート中に移行させることが可能である。窒素化合物により、サンプル中に含まれる生物のケーシングがより有効に溶解し、それにより、より大量の細胞内容物をライセートに到達させることができると予想される。
【0074】
この方法の好ましい実施形態では、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で溶解する。少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁させるために、少なくとも1つの核酸および/またはタンパク質が沈殿しないような様式で溶解条件を選択しなければならない。本発明の用語「溶解」および「懸濁」は、少なくとも1種の核酸またはタンパク質がサンプル調製物(例えば、ライセート)の液相に残存し、それにより、対応する検出方法または分析方法によるその後に続く分析が利用可能であることを意味する。これは、検出方法または分析方法に直接移行できないが、対応する方法の工程によって最初に液相に移行させなければならないライセートの沈殿成分と対照的である。溶解されるサンプル型を、これによって考慮しなければならない。窒素化合物を含む組成物中の見込まれるさらなる構成要素もここで考慮しなければならず、場合により、一定のサンプル系および組成物系に適切な条件を、簡潔な日常的試験を用いて決定しなければならない。例えば、溶解に付随して沈殿が起こることが認められた場合にこれを行うことができる。これが真である場合、特に、沈殿が溶解/沈殿すべき核酸種および/またはタンパク質種を含む場合、初期値によって使用される分析方法および手順を使用して、その組成物の沈殿物をチェックすることができる。特に、この実施形態では、組成物中の窒素化合物の濃度を、核酸がライセート中に溶解または懸濁したままであり、それにより、窒素化合物がライセート中の核酸種および/またはタンパク質種の沈殿に影響を及ぼさないような様式で選択しなければならない。
例えば、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質がライセート中に溶解および/または懸濁したままであるという点で、ライセートを反応系における核酸種および/またはタンパク質種のその後に続く分析位に供することが可能である。分析されない他の細胞成分を溶解中に沈殿させ、それにより、液体サンプルから除去することができる。それによって、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質は、その後に続く調製方法、処理方法、または分析方法のために提供される種である。
【0075】
さらなる実施形態では、少なくとも1種の核酸の固定化のためのキャリア材料の存在下で溶解する。それにより、核酸またはタンパク質の分析で通常使用される有用なキャリア材料(例えば、マイクロアレイまたはいわゆる「ビーズ」)を使用することができる。「ビーズ」は、分子が結合することができる表面を有する微粒子である。このような表面を、例えば、対応する表面処理によって得ることができる。このような材料の例は、QIAGEN社(Hilden,Germany)から入手されるOligotex(登録商標)およびLiquichip(登録商標)である。
【0076】
本発明の方法のさらなる実施形態では、サンプルは、核酸およびタンパク質からなる群の少なくとも2種を含む。2種またはそれを超える核酸および/またはタンパク質が産生されたライセート中に含まれ、特に、これらがライセート中に溶解または懸濁されるような様式で溶解する。例えば、DNAおよびRNAなどの核酸、特に、gDNAおよびRNAを、本方法のライセート中に含めることができる。あるいは、タンパク質を、溶液/懸濁液中に選択的に保持することができる。上記のように、サンプルおよび異なる溶解試薬の型、特に、窒素化合物の使用量を考慮しなければならない。
【0077】
本発明のさらなる実施形態では、サンプルは核酸および/またはタンパク質からなる群由来の少なくとも2種を含み、サンプル調製物の生成または溶解を、いくつかの所定の核酸種および/またはタンパク質種を産生されたライセート中に溶解および/または懸濁するような様式で行う。それにより、サンプル中に含まれる核酸種または溶液中に含まれる全タンパク質種を、溶解および/または懸濁することができる。これは、例えば、ライセートからの核酸またはタンパク質の除去のために使用する場合、本質的に溶解中に沈殿が生じないことを意味する。サンプルがいくつかの種の核酸および/またはタンパク質を含む場合、これらの種のうちの2種、数種、または全種が溶解後にライセート中に溶解および/または懸濁したままであり、これらの異なる種の核酸および/またはタンパク質の相対濃度が溶解によって互いに変化せず、それにより、ライセート中のこれらの種の相対濃度がサンプル中のこの種の相対濃度に関して本質的に不変であることが特に好ましい。上記で既に開示しているように、溶解時のサンプルの型、使用可能な異なる溶解試薬、使用される窒素化合物型を考慮するために再度適用し、所与のサンプル型に適切な条件を決定するために、適切な日常的試験を行う必要がある。
【0078】
上記溶解方法により、少なくとも2種の核酸および/またはタンパク質を、ライセート中に溶解および/または懸濁する場合、その後に続く分析方法および検出方法においてこれらの種の全てを分析または検出するためにこれらの種を含むライセートを使用することが可能である。
したがって、窒素化合物は、ライセート中に所望の核酸種および/またはタンパク質種の濃度を増加させるより有効な溶解に加えて、ライセート中に溶解および/または懸濁した核酸種および/またはタンパク質種を安定化する効果も有する。さらに、ライセートにおける阻害相互作用および効果を、溶解のために使用された組成物中での窒素化合物の使用によって減少または抑制することができる。さらに、窒素化合物の使用によって、ライセート中の一定の核酸種をマスキングすることが可能であり、その結果、この核酸種は、ライセート中に含まれるさらなる種の分析方法または検出方法にいかなる不利な影響も及ぼさない。これらの特定のさらなる態様を、以下でより詳細に考察する。
【0079】
方法のさらに好ましい実施形態では、DNAおよび/またはRNAを、核酸種としてライセート中に溶解および/または懸濁する。別の実施形態では、1種または数種のタンパク質を、ライセート中に溶解および/または懸濁する。
【0080】
本発明の溶解方法のさらに好ましい実施形態では、溶解のために使用される組成物は、窒素化合物に加えて、さらなる溶解試薬(錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群由来の少なくとも1つの試薬)を含む。特に、RGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)およびEDTA(エチレンジニトリロ四酢酸)が錯化剤と見なされる。可能な界面活性剤は、特に、tritonx10(ポリエチレングリコール−tert−オクチルフェニルエーテル)、Nonidet−P40(ノニルフェニル−ポリエチレングリコール)、n−オクチルグルコシド、およびN−セチル−N,N,N−トリメチル−アンモニウムブロミドである。容積制限物質として、特に、異なる鎖長のポリエチレングリコールが見なされる。H2O、フェノール、またはその混合物を、溶媒として使用することが好ましい。錯化剤を、好ましくは、これらがそれぞれサンプル調製物中に存在するような量(例えば、ライセート中に0.1〜10mMの濃度)で使用する。溶解のために使用される組成物として液体組成物(すなわち、溶解緩衝液)を使用する場合、錯化剤は、好ましくは、0.1〜10mMの濃度でそれぞれ存在する。界面活性剤を、好ましくは、サンプル調製物中にそれぞれ存在するような量(例えば、ライセート中に0.01〜10体積%の濃度)で使用する。溶解緩衝液を使用する場合、界面活性剤は、好ましくは、溶解緩衝液の0.01〜10体積%である。容積制限試薬を、好ましくは、サンプル調製物中にそれぞれ存在するような量(例えば、ライセート中に0.01〜5体積%の濃度)で使用する。溶解緩衝液を使用する場合、好ましくは、0.01体積%と5体積%との間の容積制限試薬を含む。溶解試薬は溶液が好ましいが、例えば、固体物質の形態で別で投与することもできる。本発明のために、溶解緩衝液を、特に、溶媒としてのH2O、添加物としての少なくとも1つの上記窒素化合物、最適な錯化剤、界面活性剤、および/または容積制限物質からなる組成物として使用する。
【0081】
特に、これら全ての成分を含む溶解緩衝液を使用することができる。したがって、本発明のさらなる態様は、上記の本発明の溶解方法と組み合わせた、生体サンプルの溶解のための組成物であって、サンプルが本発明の異なる方法で使用される少なくとも1つの窒素化合物を含む組成物に関する。
機械的影響下または酵素支持の下でさらに溶解することができる。モルタル、高圧の印可、細い毛細管、およびフィルターユニットの使用が機械的支持手段として見なされる。溶解の酵素支持を、例えば、プロテアーゼ、リゾチーム、セルロース、ペクチナーゼによって支持することができ、それにより、サンプル中の生物の構造の分解がさらに支持される。
この支持によって溶解をより効率的にデザインすることができる。すなわち、ライセート中の核酸および/またはタンパク質の収量を、増加するか加速させることができる。サンプルを、溶解前に、洗浄緩衝液、特に、低張洗浄緩衝液で洗浄することがさらに可能である。
【0082】
本発明の溶解方法の好ましい実施形態では、窒素化合物の使用量を、生成されたライセート中の窒素化合物の濃度が、0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜30mM、0.001〜20mM、特に、0.001〜19mMおよび0.001〜15mMであるような様式で選択する。窒素化合物としての複素環式化合物(特に、イミダゾール)の使用時に、0.01〜20mMのイミダゾール濃度、特に好ましくは、0.01〜15mMに調整されるように、化合物の量を選択することができる。アミノ官能基を含む化合物について、通常、窒素化合物濃度をより低くでき、核酸またはタンパク質と相互作用できるアミノ官能基がより多く窒素化合物中に含まれるように適用する。
【0083】
本発明の溶解方法のさらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの核酸種は、DNA種である。本発明の溶解方法のさらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの核酸種は、RNA種である。本発明の溶解方法のさらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの生体分子種は、タンパク質種である。
【0084】
本発明の溶解方法のさらに好ましい実施形態では、窒素化合物を、以下からなる群から選択する:
a)好ましくは、2、3、4、5、または6個のアミノ基を有する開鎖および環状のポリアミンからなる群から選択されるポリアミン。用語「ポリアミン」は、本発明で、アミノ基末端を有する飽和炭素鎖を含む化合物と理解すべきである。アミノ基末端は、第一級アミノ基(H2N−)、第二級アミノ基(R1NH−)、または第三級アミノ基(R12N−)であり得、環状基の一部であり得る。残りのR1およびR2は、本明細書中で、互いに独立したC1〜C5アルキル基であり得る。アミノ基末端は、好ましくは、第一級または第二級アミノ基である。飽和炭素鎖を、第二級(−NH−)または第三級(−NR1−)、好ましくは、第二級アミノ基の数の変化によって妨害することができる。R1は、さらに、C1〜C5アルキル基であり得る。飽和炭素鎖は、例えば、開鎖、非分岐、または環状であり得る。異なるアミノ基を連結する炭素鎖または1つの炭素鎖は、好ましくは、アルキレン基(CH2n−(式中、nは、1〜6の整数、好ましくは、2または3である)である。環状炭素鎖は、純粋な炭素環および飽和窒素含有環の基(例えば、ピペリジンまたはピペラジン)であり得る。したがって、環は、4〜6個の環原子を含む。窒素含有環の基を、環中に含まれる少なくとも1つの窒素原子をアミノ基末端を有する飽和炭素鎖に置換することができる。この炭素鎖に、再度、第二級または第三級、好ましくは、第二級アミノ基を挿入することができる。炭素鎖はまた、好ましくは、アルキレン基(CH2n−(式中、nは、2〜6の整数であってよく、好ましくは、2または3である)である。2〜6個のアミノ基を有するポリアミンが好ましいにもかかわらず、ポリアミンは、より多数のアミノ基を含むこともできる。特に、用語「ポリアミン」は、高分子直鎖または分岐ポリアミン(例えば、ポリエチレンイミンまたはビニルアミン)であることも意味する。
ポリアミンとして、特に、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プトレッシン、スペルミジン、カダベリン、ジエチレントリアミン、スペルミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)−ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン、ポリ(1−ビニルピロリドン−コ−2−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、およびトリス(2−アミノエチル)アミン)などを使用することができる。2〜6個のアミノ基を有する非分岐ポリアミン、特に、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プトレッシン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、スペルミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンの使用が特に好ましく、スペルミジンの使用が特に好ましい。
b)アミノ酸、特に、α−アミノ酸。したがって、アミノ酸は、D型、L型、またはラセミ体として存在し得る。タンパク質性および非タンパク質性、特に、タンパク質性のアミノ酸を使用することができる。極性および無極性のアミノ酸を使用することができる。したがって、無極性アミノ酸は、脂肪族アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン)および芳香族アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)を含む。極性アミノ酸は、中性、塩基性、および酸性アミノ酸、または酸性アミノ酸のアミドを含み得る。中性アミノ酸を、例えば、プロリンなどのイミノ酸、水酸基を有するアミノ酸(例えば、セリンおよびトレオニン)、または硫黄含有アミノ酸(例えば、システインおよびメチオニン)から選択することができる。さらに、アミノ酸を、アルカリ性アミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、およびヒスチジン)から選択することができる。アミノ酸を、酸性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)またはそのアミド(例えば、アスパラギンまたはグルタミン)から選択することもできる。
アルギニン、プロリン、トリプトファン、およびグルタミン酸などのアミノ酸を、窒素化合物として使用することが好ましい。さらなる実施形態では、還元チオ基を含まないアミノ酸を窒素化合物として使用する。
c)5員環もしくは6員環、またはアネレーテッド(anellated)5員環を有する6員環の群から選択される複素環式化合物であって、5員環、6員環、および/またはアネレーテッド(anellated)5員環は、1〜3個の窒素原子を含む、複素環式化合物。5員環または6員環およびアネレーテッド(anellated)環は、不飽和であるか、部分的に不飽和であるか、芳香族であり得る。各環員は、環化合物中に、H、C1〜C6アルキル基、=O、−OH、=S、−SH、=NH、−NH2、アルキル−O−、アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ基からなる群から選択される置換基を含み得、ここで、これらのアルキル基(すなわち、アルキル−O−、アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ基中のアルキル基)は、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基である。環員を、F−、Cl−、Br−、またはJとさらに置換することができる。複素環式化合物は、それぞれ、5員環または6員環の基中にさらなるヘテロ原子として1つまたは複数のO原子またはS原子を含むことができる。好ましい複素環式化合物は、一般式I:
【化1】

一般式I
(式中、Xは、NHまたはSから選択され、R1、R2、およびR3は、−H、−F、−Cl、−Br、−J、−OH、−SH、−NH2、−C(=O)OH、−C(O)NH2、アルキル−O−、アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ基からなる群から互いに独立して選択され、ここで、これらのアルキル基は、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基である)の5員環の芳香族窒素化合物である。化合物イミダゾール、チアゾール、およびアミノチアゾールが特に好ましく、2−アミノチアゾールが特に好ましい。
さらに好ましい複素環式化合物は、一般式II:
【化2】

一般式II
(式中、X1は、N、O、S、およびCR4からなる群から選択され、X2は、N、O、S、およびCR5からなる群から選択され、X3は、N、O、S、およびCR6からなる群から選択され、ここで、X1基、X2基、またはX3の少なくとも1つがNを示し、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、H、C1〜C6アルキル基、−OH、−SH、−NH2、−F、−Cl、−Br、−I、アルキル−O−、アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ基からなる群から互いに独立して選択され、ここで、これらのアルキル基(すなわち、アルキル−O−、アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ基中のアルキル基)は、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基である)の6員環の芳香族化合物である。X1、X2、および/またはX3は、好ましくは、Nを示す。X1のみがNであるか、X1およびX2またはX1およびX3がNであることがさらに好ましい。R1〜R5は、好ましくは、Hおよび、C1〜C3アルキルからなる群から選択され、このましくは、Hまたはメチルである。化合物2,3−ジメチルピラジン、ピリジン、およびピリミジンが特に好ましい。
【0085】
以下の一般式IIIの化合物がさらに好ましい。
【化3】

一般式III
(式中、X1は、N、O、S、およびCR3からなる群から選択され、X2は、N、O、S、およびCR4からなる群から選択され、R1、R2、R3、およびR4は、H、C1〜C6アルキル基、−OH、−SH、−NH2、−F、−Cl、−Br、−I、アルキル−O−、アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ基からなる群から互いに独立して選択され、ここで、これらのアルキル基(すなわち、アルキル−O−、アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ基中のアルキル基)は、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基である)。X1またはX2は、好ましくは、Nを示す。さらに、X1がCR4である場合、X2はCR4であり得る。R1、CR2、CR3、およびR4は、好ましくは、Hである。
特に好ましい化合物は、インダゾールおよびベンズイミダゾールである。
核酸塩基の群から選択された複素環式化合物は、窒素化合物としてさらに好ましい。これらは、特に、化合物アデニン、シトシン、グアニン、イノシン、ヒポキサンチン、チミン、ウラシル、およびキサンチン、またはアナログまたは誘導体として核酸に構築することができる化合物を含み、ここで、これらの化合物の構造はまた、環が異なり得る。化合物アデニン、シトシン、グアニン、およびチミンは、本明細書中で特に好ましい。
化合物イミダゾールおよび2,3−ジメチルピラジン、ピリミジン、グアニン、およびグアノシンは、本発明で特に好ましい有効性を示す。
さらに、複素環式窒素化合物は、これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーである。
d)R12NR3型のアミンであって、残りのR1、R2、およびR3が、HおよびC1〜C5アルキル基からなる群から互いに独立して選択され、ここで、R1、R2、およびR3は同時にHではない。メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ(n−プロピル)アミン、ジ(イソプロピル)アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ(n−プロピル)アミン、およびトリ(イソプロピル)アミンの使用が特に好ましい。
e)構造X−C(=O)NH2を含むカルボン酸アミン。Xは、−NH2、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール、好ましくは、フェニル、またはアミノ置換アリール、H2NC(=O)−Y−からなる群から選択され、ここで、Yは、−(CH2n型のアルキレン基であってよく、ここで、nは、0〜10、好ましくは、0〜5の範囲の整数であるか、Yは、C1〜C10アルケニレン基、好ましくは、C1〜C6アルケニレン基、またはアリール基である。YがC1〜C10アルケニレン基である場合、この基は、1つまたは複数のオレフィン結合を含むことができ、ここで、オレフィン結合は、単離様式または結合様式で炭素鎖中に存在し得る。Yがアリールである場合、残りはフェニルまたはビフェニル基が特に考慮される。X−NH2は、好ましくは、−NH2または2アミノフェニルを示す。
f)硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、およびリン酸水素アンモニウムからなる群から選択される無機アンモニウム塩。
g)ベタイン、エクトイン、およびトリメチルアミンオキシドから選択されるアンモニウム基を含む分子内塩。
h)ジスタマイシン、特に、ジスタマイシンD、マイトマイシン、ノルフロキサシン、ストレプトゾシン、ドゥオカルマシン(duocarmycine)、アクチノマイシン、およびアミノグリコシド(aminoglyciside)からなる群から選択される核酸に結合する抗生物質。
i)チアゾトロプシン、トリイミダゾール、およびクロモマイシンからなる群から選択されるDNAの小さな空洞に結合する化合物。
j)さらに誘導されたa−i群から選択される窒素化合物。例えば、窒素化合物と無機または有機の残存物(糖、リン酸塩、アルコール、硫酸塩、グルタチオン、脂質など)との組み合わせによって誘導体化することができる。化合物グアノシン、アデノシン、シトシン、およびチミジンまたは抗生物質が本明細書中で特に好ましい。
【0086】
上記の好ましい窒素化合物を、以下に説明する本発明のさらなる全ての態様で使用することができる。本発明で使用される窒素化合物は、一般に、遊離形態または適切な塩形態で存在し得る。化合物を遊離化合物または塩として使用するかどうかは、化合物が液体または固体のいずれで存在するのかに依存し得る。
【0087】
1〜C6アルキル基は、本発明では、特に以下の基である:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1メチルプロピル、および/または1−エチル−2−メチル−プロピル。
【0088】
本発明のC1〜C5アルケニル基は、特に、以下の基である:エテニル(ビニル)、2−プロペニル(アリル)、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−ペンチル、3−ペンチル、4−ペンチル、1−メチル−2−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、および1−エチル−2プロペニル。
【0089】
本発明のC2〜C5アルキニル基は、特に、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、2−ブチニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、3−およびメチル−2−ブチニルである。
【0090】
溶解に使用される窒素化合物の選択を、溶解緩衝液に使用さる溶媒に合わせて調整することが好ましい。したがって、それぞれの領域中において望ましい溶媒中の化合物濃度が可能な様式で窒素化合物を溶媒に溶解できることが好ましい。
【0091】
さらなる態様では、本発明は、サンプル中の少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を検出するための分析方法であって、
A)本発明の溶解方法によるライセートの産生、
B)少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質の検出に適切な反応または反応系列でのライセートの使用
を含む、分析方法に関する。
【0092】
分析方法の検出精度を、通常の分析方法と比較して、サンプル中でより高い濃度の各核酸および/またはタンパク質が得られる溶解の改良によって改良する。
【0093】
サンプル調製物中に含まれる核酸種および/もしくはタンパク質種数の減少のためのさらなる方法工程または核酸および/もしくはタンパク質を分解する材料のサンプル調製物からの除去またはこのような材料の不活化のためのさらなる工程を行うことなく、ライセートと直接使用することが好ましい。したがって、ライセートを、いかなるさらなる再馴化工程を行うことなく反応溶液の分析または産生のために直接使用することが好ましい。
【0094】
他の場合では、物理的、化学的、または酵素的溶解のために、上記方法によって溶解を支持することができる。ライセートの加熱または均質化による物理的支持、界面活性剤の使用による化学的支持、またはプロテアーゼ(例えば、プロテアーゼK(タンパク質の場合検出されない))、リゾチーム、もしくはヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ、この場合DNAを検出できない)の使用による酵素的支持を使用した溶解方法が適切である。
【0095】
したがって、少なくとも1つの核酸の検出に適切な反応または反応系列を、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、またはオリゴヌクレオチドとプローブ、特にDNAプローブとのハイブリッド形成の群、核酸の酵素的修飾または重合、特に、配列決定反応、in−vitro転写、制限エンドヌクレアーゼ分断の群、増幅反応、特に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR(プローブに基づいた方法および配列非特異的結合検出分子(例えば、SybrGreen)に依存する方法)、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR(プローブに基づいた方法および配列非特異的結合検出分子(例えば、SybrGreen)に依存する方法)、マルチプレックスPCR、マルチプレックスRT−PCR、プローブベースの方法であるリアルタイムマルチプレックスPCR、およびリアルタイムマルチプレックスRT−PCR、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR、TMA(転写媒介増幅)、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、全トランスクリプトーム増幅、全ゲノム増幅、およびローリング転写増幅、またはループ媒介等温増幅(LAMP)の群から選択することができる。
少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な反応または反応系列を、タンパク質結合反応、特に、タンパク質認識、特に、他のタンパク質によるタンパク質の認識、タンパク質、抗体、アプタマー、リガンド、核酸(特に、ウェスタンブロッティング)、または他の物質(グルタチオンおよびNADなど)の酵素活性に基づいた反応の群から選択されるか、タンパク質の修飾またはプロセシング、特に、(脱)リン酸化、(脱)グリコシル化、およびプロテアーゼによる分断の群から選択することができる。
上記の全ての方法を、溶液、懸濁液、固相中で行うことができる。
【0096】
さらなる態様では、本発明は、核酸および/またはタンパク質を安定化する方法であって、以下の工程:
A)少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記組成物が、a)ポリアミン、b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに異なって選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、e)カルボン酸アミン、f)無機アンモニウム塩、g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、h)核酸に結合する抗生物質、i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、j)さらに誘導されたa−i群から選択される窒素化合物、および2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むこと
を含む、安定化する方法に関する。
本方法のさらなる実施形態では、好ましくは、界面活性剤およびプロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を使用して、酵素的、物理的、または化学的溶解の前、間、または後に1つまたは複数の特許請求の範囲に記載の物質によって核酸を安定化させる。したがって、濃度0.005〜10%の界面活性剤を使用する。プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)は、安定化されたサンプル中に、0.5×10-4mAU/μl〜50×10-4mAU/μlの濃度で含むことができる。
【0097】
この方法のさらなる実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ)による酵素分解後の1つまたは複数の特許請求の範囲に記載の物質によってRNAを安定化させる。したがって、DNアーゼIは、安定化されたサンプル中に、0.003U/μl〜0.5U/μlの濃度で含むことができる。
【0098】
この方法のさらなる実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、RNアーゼ、DNアーゼ、ベンゾナーゼなど)による酵素分解後の1つまたは複数の特許請求の範囲に記載の物質によってタンパク質を安定化させる。
【0099】
この方法のさらなる実施形態では、例えば、選択された1つまたはいくつかの特許請求の範囲に記載の化学物質によってサンプル中の生体分子(例えば、核酸またはタンパク質)を安定化する。例えば、アルギニン、イミダゾール、プロリン、リジン、スペルミン、スペルミジン、グルタミン酸、インダゾール、チミン、チミジン、グアニン、グアノシン、アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、硫酸アンモニウム、またはこれらの混合物から選択される物質によってサンプル中の少なくとも2種の生体分子を処理する。
【0100】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種の核酸またはタンパク質を、窒素化合物の添加前、添加中、または添加後にキャリア材料に固定化する。既に上に記載されている材料を、本発明の溶解と組み合わせてキャリア材料として使用することができる。
本発明の安定化方法の別の実施形態では、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式でサンプルを調製する。これを、特に、サンプルへの適量の窒素化合物の添加によって行うことができる。組成物の添加によって生体サンプルを溶解する場合、これに対して、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式で溶解することができる。
【0101】
生物に加えて、分解するために溶解に供するサンプルは、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を含む材料の全混合物である。これは、材料の混合物または純粋な核酸もしくはタンパク質のみであり得る。これらの材料の混合物を、例えば、核酸またはタンパク質調製物によって得ることができる。少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を固定化したキャリア材料もサンプルとして使用することができる。したがって、サンプルは、固体または溶液として存在することができるか、純粋な生物または液体培地中の生物(例えば、細胞培養物)であり得る。サンプルの組成物を、サンプル型に応じて、液体(例えば、緩衝液)としてか固体として添加することができる。少なくとも1つの液相を含むサンプル調製物は、液体サンプル調製物である。サンプル調製物を、例えば、完全に溶解することができるか、懸濁成分および固体成分を含むこともできる。細胞成分を、例えば、サンプル調製物中に懸濁するか、溶解せずに存在することができる。サンプル調製物はまた、核酸および/またはタンパク質の固定化のためのキャリア材料を含むことができる。
少なくとも1種の核酸またはタンパク質を、サンプル調製物中のこの種の成分の直接分離(窒素化合物による安定化を行うことなくこの種を崩壊または分解するであろう)が必要ないか、通常よりも後に起こり得るようにサンプル調製物中に窒素化合物またはタンパク質を添加することによって安定化することができる。サンプル調製物の連続的精製を完全に先に行い、分析方法または検出方法でサンプル調製物を直接使用することができる場合、特に好ましい。一方では、この種が安定化した様式で分析溶液中に存在し、窒素化合物を使用しない比較系よりもこの分析溶液中でその濃度が減少しないかわずかしか減少しない場合、核酸種またはタンパク質種の検出が改良されており、分析中により多数の物質を利用可能である。他方では、多大な時間を要し、高額で夾雑する傾向がある精製工程をより容易に先に行うことができる。細胞物質に加えて核酸種および/またはタンパク質種が存在するサンプル中で、これらが特に細胞ライセート中に存在する場合、おそらくさらに安定化することができるとさらに判断された。
【0102】
本発明の安定化方法の好ましい実施形態では、サンプルは、液体サンプル調製物の生成のために組成物との接触前に溶解に供し、場合により、さらなる精製工程に供する生体サンプルである。通常の溶解方法を使用して溶解することができ、さらなる精製工程は、例えば、核酸またはタンパク質調製物の調製方法または固定化方法であり得る。
【0103】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、サンプルは、少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質をケーシング、好ましくは、生体ケーシング中に含む生体サンプルであり、ここで、サンプルが液体または固体組成物と接触してライセートが産生される。サンプルはまた、生物を含み得る。好ましくは、上記の本発明の方法にしたがって、生体サンプルの溶解のためにライセートを生成する。
【0104】
本発明の方法のさらなる実施形態では、サンプルは、核酸およびタンパク質からなる群の少なくとも2種を含む。サンプル調製物をこのような様式で生成するか、産生されたサンプル調製物または産生されたライセート中に2種またはそれを超える一定の種の核酸および/またはタンパク質を溶解または懸濁するか、キャリア材料に固定化するような様式で溶解する。例えば、DNAおよびRNAなどの核酸、特に、gDNAおよびRNAを、サンプル調製物またはライセート中に溶解または懸濁することができる。あるいは、タンパク質を、選択的に溶液中に保持することができる。上記のように、サンプル調製物の生成または溶解と共に使用しなければならない条件の選択時に、サンプル調製物の生成のために使用される組成物中に含まれるサンプルおよび異なる成分の型、特に、使用される窒素化合物の量を考慮しなければならない。
【0105】
本発明の安定化方法のさらに好ましい実施形態では、サンプルは、核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2種を含み、サンプルの調製または溶解を、サンプル中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種が生成されたサンプル調製物またはライセート中にその大部分が溶解および/または懸濁または固定されるような様式で行う。好ましくは、全種は、本質的に、溶解および/または懸濁されているか、固定されている。したがって、サンプル中に含まれる全核酸種またはサンプル中に含まれる全タンパク質種のいずれかを、溶解および/または懸濁することができる。例えば、ライセートからの核酸またはタンパク質の除去のために使用する場合、これは、サンプル調製または溶解中に本質的に沈殿が起こらないことを意味する。サンプルが数種の核酸および/またはタンパク質を含む場合、窒素化合物との接触後にこれらの種の2種、数種、および全種がライセート中に溶解および/または懸濁されたままであるべきであり、これらの異なる種の核酸および/またはタンパク質の相対濃度が窒素化合物を含む組成物の添加または溶解によって互いに変化しないことが特に好ましい。すなわち、未処理サンプル中のこの種の相対濃度と比較したサンプル調製物またはライセート中のこの種の相対濃度は、本質的に変化しないままである。上記で既に開示のように、サンプルおよび場合によって使用される異なる溶解試薬の型ならびに溶解の実施時に使用される窒素化合物の型ならびに溶解中に使用される窒素化合物の型を考慮するために再度適用し、場合によって適切な日常的試験をおこなって所与のサンプル型に適切な条件を決定しなければならない。
【0106】
本発明の安定化方法のさらに好ましい実施形態では、DNAおよび/またはRNAを、サンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定する。さらにまたはあるいは、少なくとも1種のタンパク質を、サンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定することができる。
【0107】
本発明の生体サンプルの溶解方法と組み合わせて上に既に記載されているように、溶解のために使用される組成物は、さらなる溶解試薬として錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群の少なくとも1つの試薬を含み得る。機械的作用および/または酵素的様式で溶解するか、サンプルを低張洗浄緩衝液で溶解前に洗浄することもできる。したがって、溶解を、上記の物理的、化学的、または酵素的な溶解方法によって支持することができる。ライセートの加熱または均質化による物理的支持、界面活性剤の使用による化学的支持、またはプロテアーゼ(例えば、プロテアーゼK(タンパク質の場合検出されない))、リゾチーム、もしくはヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ、この場合DNAを検出できない)の使用による酵素的支持を使用した溶解方法が特に適切であることが判明した。本発明の溶解方法と組み合わせた上記の実施項目を同一の様式でここに適用する。
【0108】
本発明の安定化方法では、サンプルへの窒素化合物の添加量を、好ましくは、産生されたサンプル調製物またはライセート中の窒素化合物の濃度が0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜30mM、特に、0.001〜19mMまたは0.001〜15mMであるような様式で選択する。ポリアミン(a)を使用する場合、濃度は、好ましくは、0.001mMと15mMとの間であり、好ましくは、0.001mMと1mMとの間である。驚いたことに、これらの非常に低濃度のポリアミン、特に、スペルミジンを使用した場合でさえ、例えば、RNAの本質的な安定化が認められる。アミノ酸(b)の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001mM〜20mMの範囲、特に、1〜15mMの範囲であり得る。窒素複素環(c)の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001〜20mM、好ましくは、0.001〜15mMであり得る。カルボン酸アミン(e)の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001〜15mMであり得る。無機アンモニウム化合物を使用する場合、この濃度は、好ましくは、0.001mM〜100mM、特に好ましくは、0.001〜15mMであり得る。アンモニウム基を含む分子内塩の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001〜300mM、特に好ましくは、0.001〜200mMである。
【0109】
好ましくは、本発明の安定化方法で使用することができる窒素化合物の型に関して、本発明の溶解方法に関する上記実施項目を同一の様式で適用する。
【0110】
さらなる態様では、本発明は、サンプル中の少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を検出するための分析方法であって、
a)少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を含むサンプル調製物またはライセートを準備する工程と、前記少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を、本発明の安定化方法を使用して安定化すること、および
b)少なくとも1つの核酸および/または少なくとも1つのタンパク質の検出のための反応または反応系列でサンプル調製物またはライセートを使用する工程と
を含む、分析方法に関する。サンプル調製物中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種数の減少および/またはサンプル調製物からの核酸および/またはタンパク質を分解する物質の除去もしくは不活化のために、さらなる方法工程を行うことなくサンプル調製物またはライセートを直接使用する。
【0111】
検出すべき核酸種および/またはタンパク質種の安定化によって本方法によって改良された方法を行うことができ、これにより、検出反応物に先行するサンプル再馴化を、好ましくは、先に行うことができる。検出すべき核酸種またはタンパク質種を安定化するので、少量のサンプルを使用して検出することができる。
【0112】
対応する核酸種および/またはタンパク質種の検出のために使用した反応または反応系列の型に関して、本発明の溶解に関する上記実施項目を適用する。
【0113】
安定化に加えて、サンプル調製物またはライセートの生成時の窒素化合物の使用により、サンプル中に含まれる一定のさらなる核酸種をマスキングすることもできる。サンプルを溶解に供する場合、溶解を改良することもでき、特に、ライセート中の所望の核酸種および/またはタンパク質種の濃度を増加させることができる。安定化に加えて、場合により、サンプル中の一定の核酸種をマスキングすることができる。生成されたサンプル調製物またはライセートにおける阻害効果を、場合により、窒素化合物の使用によって減少させることもできる。
【0114】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質ならびに少なくとも1つの阻害物質を含むサンプルの阻害効果を減少させる方法を提供する。この方法は、以下の工程:
A)少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質ならびに少なくとも1つの阻害物質を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記組成物が、a)ポリアミン、b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、e)カルボン酸アミン、f)無機アンモニウム塩、g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、h)核酸に結合する抗生物質、i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、j)さらに誘導されたa−i群から選択される窒素化合物、および2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むことを含み、ここで、液体サンプル調製物中の阻害物質の阻害効果を減少させる様式で前記サンプルに添加する窒素化合物の量を選択する。
【0115】
用語「阻害物質」は、サンプル調製物またはさらなる再馴化工程によって得られたサンプルを使用して実施するその後の分析または検出方法で阻害様式にて作用する(すなわち、検出反応に不利である)全ての物質と理解すべきである。核酸が検出すべきサンプル中に存在する場合、例えば、タンパク質はこのような阻害物質であり得る。サンプル中でタンパク質を検出すべきである場合、核酸は、例えば、このような阻害物質であり得る。タンパク質と核酸との相互阻害効果は、例えば、核タンパク質複合体の形成に基づき得る。本発明の好ましい実施形態では、阻害物質は、タンパク質、特に、核酸結合タンパク質、またはタンパク質結合核酸である。
核酸種および/またはタンパク質種と阻害物質との間に相互作用が起こり、これは、サンプル調製物を使用して行った分析または検出反応に悪影響を及ぼし、ここでは阻害効果であると理解される。阻害物質の存在により、反応の結果は、阻害物質を含まない同一物質と比較して悪影響を受ける。阻害効果の減少を、例えば、本発明で使用される窒素化合物の1つを添加したサンプルを使用して行う以下の一定の核酸種またはタンパク質種の分析または検出が窒素化合物を使用しない同一のサンプルを使用して行った同一の分析または検出反応と比較して改良されたという点で決定することができる。
【0116】
生物に加えて、分解するために溶解に供するサンプルは、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を含む材料の各混合物である。これは、材料の混合物または純粋な核酸もしくはタンパク質のみであり得る。これらの材料の混合物を、例えば、核酸またはタンパク質調製物によって得ることができる。したがって、サンプルは、固体または溶液として存在することができるか、純粋な生物または液体培地中の生物(例えば、細胞培養物)であり得る。サンプルの組成物を、サンプル型に応じて、液体(例えば、緩衝液)としてか固体として添加することができる。
【0117】
本発明の好ましい実施形態では、サンプルは、液体サンプル調製物の生成のために組成物との接触前に溶解に供し、場合により、さらなる精製工程に供する生体サンプルである。通常の溶解方法を使用して溶解することができ、さらなる精製工程は、例えば、核酸またはタンパク質調製物の調製方法または固定化方法であり得る。したがって、溶解を、上記の物理的、化学的、または酵素的な溶解方法によって支持することができる。ライセートの加熱または均質化による物理的支持、界面活性剤の使用による化学的支持、またはプロテアーゼ(例えば、プロテアーゼK(タンパク質の場合検出されない))、リゾチーム、もしくはヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ、この場合DNAを検出できない)の使用による酵素的支持を使用した溶解方法が適切であることが判明した。
【0118】
この方法の実施形態では、特に好ましくは、界面活性剤およびプロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を使用して、酵素的、物理的、または化学的溶解後に選択した1つの物質によって核酸を安定化させる。したがって、例えば、濃度0.005〜10%の界面活性剤を使用する。プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)は、安定化されたサンプル中に、0.5×10-4mAU/μl〜50×10-4mAU/μlの濃度で含むことができる。
【0119】
この方法のさらなる実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ)による酵素分解後の1つまたは複数の特許請求の範囲に記載の物質によってRNAを安定化させる。したがって、DNアーゼIは、安定化されたサンプル中に、0.003U/μl〜0.5U/μlの濃度で含むことができる。
【0120】
この方法のさらなる実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、RNアーゼ、DNアーゼ、ベンゾナーゼなど)による酵素分解後の1つまたは複数の特許請求の範囲に記載の物質によってタンパク質を安定化させる。
【0121】
この方法のさらなる実施形態では、例えば、アルギニン、イミダゾール、プロリン、リジン、スペルミン、スペルミジン、グルタミン酸、インダゾール、チミン、チミジン、グアニン、グアノシン、アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、硫酸アンモニウム、またはこれらの混合物から選択される1つまたはいくつかの特許請求の範囲に記載の物質によって、サンプル中の生体分子(例えば、核酸またはタンパク質)を安定化する。
【0122】
本発明のこの態様のさらに好ましい実施形態では、少なくとも1種の核酸またはタンパク質を、窒素化合物の添加前または添加中にキャリア材料に固定化する。したがって、既に上に記載されているキャリア材料を、本発明の他の態様と組み合わせて再度使用することができる。
【0123】
本発明のこの方法のさらに好ましい実施形態では、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式でサンプルを調製する。これを、特に、サンプルへの適量の窒素化合物の添加によって行うことができる。組成物の添加によって生体サンプルを溶解する場合、これに対して、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式で溶解することができる。
【0124】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、サンプルは、少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質をケーシング(例えば、生体ケーシング)中に含む生体サンプルであり、ここで、サンプルが液体または固体組成物と接触してライセートが産生される。サンプルはまた、生物を含み得る。好ましくは、上記の本発明の方法にしたがって、生体サンプルの溶解のためにライセートを生成する。
【0125】
本発明の安定化方法において上に既に記載しているように、サンプルは、本発明の方法の好ましい実施形態では、阻害効果を減少させるための核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2種を含み、サンプル調製物の生成または溶解を、サンプル中に含まれる複数の核酸種および/またはタンパク質種がサンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定化されるような様式で行う。好ましくは、これらの種の本質的に全てを、この方法の変形形態で溶解および/または懸濁または固定化する。それにより、サンプル中に含まれる全核酸種または溶液中に含まれる全タンパク質種を、溶解および/または懸濁または固定化することができる。溶解方法の類似の実施形態と組み合わせた上記の実施項目を同一の様式でここに適用する。
【0126】
これは、例えば、ライセートからの核酸またはタンパク質の除去のために使用する場合、本質的にサンプル調製または溶解中に沈殿が生じないことを意味する。サンプルがいくつかの種の核酸および/またはタンパク質を含む場合、これらの種のうちの2種、数種、または全種が溶解後にライセート中に溶解および/または懸濁したままであり、これらの異なる種の核酸および/またはタンパク質の相対濃度が溶解によって互いに変化せず、それにより、ライセート中のこれらの種の相対濃度がサンプル中のこの種の相対濃度に関して本質的に不変であることが特に好ましい。上記で既に開示しているように、溶解時のサンプルの型、使用可能な異なる溶解試薬、使用される窒素化合物型を考慮するために再度適用し、所与のサンプル型に適切な条件を決定するために、適切な日常的試験を行う必要がある。必要に応じて、所与のサンプル型に適切な条件を決定するために、適切な日常的試験を行う必要がある。
【0127】
本発明の阻害効果を減少させる方法では、好ましい実施形態により、特に、溶解および/または懸濁したDNAおよび/またはRNAがライセート中に含まれる。さらにまたはあるいは、特に、溶解または懸濁した少なくとも1種のタンパク質をライセート中に含めることができる。
【0128】
本発明の生体サンプルの溶解方法と組み合わせて上に既に記載されているように、溶解のために使用される組成物は、さらなる溶解試薬として錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群の少なくとも1つの試薬を含み得る。機械的作用下および/または酵素的様式で溶解することもできるか、溶解前にサンプルを低張洗浄緩衝液で洗浄することができる。本発明の溶解方法と組み合わせた上記の実施項目を同一の様式でここに適用する。
【0129】
本発明の安定化方法では、サンプルへの窒素化合物の添加量を、好ましくは、産生されたサンプル調製物またはライセート中の窒素化合物の濃度が0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜50mMまたは0.001〜30mM、特に、0.001〜10mMであるような様式で選択する。ポリアミン(a)を使用する場合、濃度は、好ましくは、0.001mMと15mMとの間であり、好ましくは、0.001mMと1mMとの間である。アミノ酸(b)の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001mM〜20mMの範囲、特に、1〜15mMの範囲であり得る。窒素複素環(c)の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001〜50mM、好ましくは、0.001〜30mMであり得る。カルボン酸アミン(e)の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001〜20mMであり得る。無機アンモニウム化合物を使用する場合、この濃度は、好ましくは、0.001mM〜100mM、特に好ましくは、0.001〜50mMであり得る。核酸に結合する抗生物質の使用時に、この濃度は、好ましくは、0.001〜15mM、特に好ましくは、0.001〜1mMであり得る。
【0130】
本発明の阻害効果の減少方法の特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの核酸種は、DNA種、特に、gDNA種および/またはRNA種である。
【0131】
好ましくは、本発明の阻害効果の減少方法で使用することができる窒素化合物の型に関して、本発明の溶解方法または本発明の安定化方法に関する上記実施項目を同一の様式で適用する。
【0132】
さらなる態様では、本発明は、サンプル中の少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を検出するための分析方法であって、以下の工程:a)少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を含む本発明のサンプル調製物またはライセートを準備する工程と、本発明の阻害効果の減少方法を使用して、サンプル調製物またはライセートの少なくとも1つの阻害効果が減少すること、および
b)少なくとも1つの核酸および/または少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な反応または反応系列でサンプル調製物を使用する工程と
を含む、分析方法に関する。
【0133】
この方法により、サンプル調製物またはライセートの阻害効果の減少によって、分析すべき種の検出を改良することができ、これにより、阻害物質の分離のために検出反応物に先行するサンプル再馴化を、先に行うことができる。
【0134】
本発明のこの分析方法の好ましい実施形態では、サンプル調製物中に含まれる核酸種および/もしくはタンパク質種数の減少のためのさらなる方法工程または核酸および/もしくはタンパク質を分解する物質のサンプル調製物からの除去またはこのような材料の不活化のためのさらなる工程を行うことなく、工程b)において前記サンプル調製物またはライセートを同様に直接使用する。したがって、サンプル調製物またはライセートを、いかなるさらなる再馴化工程を行うことなく、分析に適切な反応溶液の分析または産生のために直接使用することが好ましい。
【0135】
さらなる実施形態では、溶解を、上記の物理的、化学的、または酵素的な溶解方法によって支持することができる。特に、ライセートの加熱または均質化による物理的支持、界面活性剤の使用による化学的支持、またはプロテアーゼ(例えば、プロテアーゼK(タンパク質の場合検出されない))、リゾチーム、もしくはヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ、この場合DNAを検出できない)の使用による酵素的支持を使用した溶解方法が適切であることが判明した。
【0136】
この方法の実施形態では、特に好ましくは、界面活性剤およびプロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を使用して、酵素的、物理的、または化学的溶解後に選択した1つの物質によって核酸を安定化させる。したがって、例えば、濃度0.005〜10%の界面活性剤を使用する。プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)は、安定化されたサンプル中に、0.5×10-4mAU/μl〜50×10-4mAU/μlの濃度で含むことができる。
【0137】
この方法のさらなる実施形態では、1つまたは複数の特許請求の範囲に記載の物質によって阻害効果を減少させる。核酸分解を、特に、この物質の1つによって改良することができる。したがって、DNアーゼIは、サンプル中に、0.003U/μl〜0.5U/μlの濃度でDNAを分解することができる。
【0138】
この方法のさらなる実施形態では、例えば、選択された1つまたはいくつかの特許請求の範囲に記載の化学物質によってサンプル中の生体分子(例えば、核酸またはタンパク質)を安定化する。例えば、アルギニン、イミダゾール、プロリン、リジン、スペルミン、スペルミジン、グルタミン酸、インダゾール、チミン、チミジン、グアニン、グアノシン、アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、硫酸アンモニウム、またはこれらの混合物から選択される物質によってサンプル中の少なくとも2種の生体分子を処理する。
【0139】
対応する核酸種および/またはタンパク質種の検出のために使用した反応または反応系列の型に関して、本発明の溶解に関する上記実施項目をここに適用する。
【0140】
本発明のこの分析方法の特に好ましい実施形態では、サンプル調製物またはライセートは、gDNAに加えて、RNAを含み、工程b)中の反応系列は、任意選択的に、核酸の酵素との反応を含む。これらの反応は、特に、b1)任意選択的なgDNAの酵素分解、およびそれに次ぐb2)RNA検出のためのRT−PCR、好ましくは、リアルタイムRT−PCRであり得る。あるいは、ライセートは、gDNAに加えて、RNAを含み、工程b)中の反応系列は、以下の工程を含む:b1)gDNA検出のためのPCR、好ましくは、リアルタイムRT−PCRまたはb2)RNA検出のためのRT−PCR、好ましくは、リアルタイムRT−PCR。したがって、PCRまたはRT−PCRは、任意選択的に、終点、多重、および/または実時間反応として進行する。
【0141】
本発明の方法の1つの実施形態では、分析方法を使用して、選択された核酸の第1の変換産物(例えば、RNA由来の第1のcDNA鎖)が得られる。
【0142】
上記で説明したサンプルにおける阻害効果の減少方法に関して、サンプル調製物またはライセート中に含まれる窒素化合物により、溶解をさらに改良し、一定の核酸種および/またはタンパク質種を安定化し、一定の核酸をマスキングすることもできる。
【0143】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの第1の核酸種および第1の種と異なる第2の核酸種を含むサンプル中の少なくとも1種の核酸の選択的マスキング方法に関する。この方法は、以下の工程:
A)少なくとも2つの異なる種の核酸を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記組成物が、以下:a)ポリアミン、b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、e)カルボン酸アミン、f)無機アンモニウム塩、g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、h)核酸に結合する抗生物質、i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、j)さらに誘導されたa−i群から選択される窒素化合物、および2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むことを含み、ここで、前記サンプル調製物を、前記第1および第2の核酸種を前記液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式で生成し、ここで、前記窒素化合物の量を、同一の検出方法と比較して、前記第1の核酸種を、前記窒素化合物を前記サンプルに添加しない核酸の検出方法の改善された様式で検出することができる様式で前記第2の核酸種マスキングするように選択する。
サンプル中の第2の核酸種の簡潔な差分分析が本方法によって可能である。この方法では、差分分析で分析することができないが、第2の種の検出反応を潜在的に破壊または歪曲し得る第1の核酸種を、サンプル中で体系的にマスキングすることができる。したがって、サンプル由来の第1および第2の核酸種の分離を先に行うことができる。
言い換えると、DNAおよびRNAの差分分析により、例えば、DNAまたはRNAが差分マスキングされ、その結果、マスキングされた核酸を分析内で検出することができないか低効率で検出されるか、第2の種の分析結果に悪影響を及ぼさない。
【0144】
本発明のマスキング方法の好ましい実施形態では、サンプルは、溶解の液体サンプル調製物の生成のために組成物との接触前に溶解に供し、場合により、さらなる精製工程に供する生体サンプルである。さらに好ましい実施形態では、サンプルは、核酸種をケーシング、好ましくは、生体ケーシング中に含む生体サンプルであり、ここで、サンプルが液体または固体組成物と接触してライセートが産生される。さらに好ましい実施形態では、サンプルは少なくとも2種の核酸を含み、サンプル調製物またはライセートを、いくつかの一定の種の核酸および/またはタンパク質が生成されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で生成する。サンプルが少なくとも2種の核酸を含み、サンプル調製物またはライセートをサンプル中に含まれる本質的に全てまたは複数の種の核酸がサンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁するような様式で生成することがさらに好ましい。窒素化合物を含む組成物が、さらなる溶解試薬として錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群の少なくとも1つの試薬を含むことがさらに好ましい。機械的作用下および/または酵素的様式で溶解することもできるか、溶解前にサンプルを低張洗浄緩衝液で洗浄することができる。これらの全ての好ましい実施形態に関して、本発明の溶解方法および本発明の安定化方法、または本発明の阻害効果の減少方法と組み合わせた上記の実施形態を適用する。
【0145】
本発明の選択的マスキング方法のさらに好ましい実施形態は、
a)第1の核酸種および第2の核酸種がRNA種またはPNA種であるか、
b)第1の核酸種がRNA種であり、第2の核酸種がDNA種であるか、
c)第1の核酸種がPNA種であり、第2の核酸種がDNA種またはRNA種であるか、
c)第1の核酸種および第2の核酸種がDNA種であるか、
c)第1の核酸種および第2の核酸種がRNA種であるか、
e)第1の核酸種および第2の核酸種が核酸PNAである。
【0146】
本発明の選択的マスキング方法の好ましい実施形態では、サンプル調製物またはライセートの生成における窒素化合物の量を、生成されたサンプル調製物またはライセート中の窒素化合物の濃度が、0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜30mM、特に、0.001〜19mMまたは0.001〜15mMであるような様式で選択する。好ましくは、RNAと比較したDNA(例えば、gDNA)の選択的マスキングのためのポリアミン(a)(特に、スペルミジン)の使用時の濃度は、好ましくは、0.001〜10mM、好ましくは、0.001〜1mMである。好ましくは、RNAと比較したDNA(例えば、gDNA)の選択的マスキングのためのアミノ酸(b)の使用時の濃度は、好ましくは、0.001〜50mM、特に好ましくは、0.001〜30mMである。好ましくは、RNAと比較したDNA(例えば、gDNA)のマスキングのための複素環式窒素化合物の使用時の濃度は、好ましくは、0.001〜30mM、好ましくは、0.001〜20mMである。好ましくは、RNAと比較したDNA(例えば、gDNA)のマスキングのための有機アンモニウム化合物の使用時の濃度は、好ましくは、0.001〜50mM、好ましくは、0.001〜30mMである。好ましくは、RNAと比較したDNA(例えば、gDNA)のマスキングのためのカルボン酸アミドの使用時の濃度は、好ましくは、0.001〜20mM、好ましくは、0.001〜10mMである。選択すべき濃度は、サンプル型に影響を受け得るので、場合により、同様に考慮すべきである。
【0147】
好ましくは、本発明の阻害効果の減少方法で使用することができる窒素化合物型に関して、溶解方法に関する上記の実施項目を同一の様式で適用する。
【0148】
さらなる態様では、本発明は、サンプル中の少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を検出するための分析方法であって、以下の工程:
a)少なくとも第1の核酸種および第2の核酸種を含むサンプル調製物を準備する工程と、第1の核酸種が第2の核酸種と異なること、第1の核酸種を、本発明の選択的マスキング方法を使用してマスキングすること、
b)第2の核酸種の検出に適切な反応または反応系列中でサンプル調製物またはライセートを使用する工程と
を含む、分析方法に関する。
【0149】
本発明の分析方法を、第1の核酸種の分析に悪影響を及ぼす可能性のある第2の核酸種の事前の分離を行わない選択的マスキングによって行うことができる。分析方法は、改良よび簡素化され、それにより、分析前に実施すべき複雑な分離工程を省略することができる。
【0150】
本発明の分析方法の好ましい実施形態では、サンプル調製物中に含まれる核酸種数の減少のためのさらなる方法工程および/または核酸を分解する材料のサンプル調製物からの除去、またはサンプル調製物中のこれらの物質の不活化のためのさらなる方法工程を行うことなく工程b)を行う。第2の核酸種の検出または分析に適切な反応溶液の産生のための反応または反応系列でさらなる再馴化工程を行うことなく、サンプル調製物またはライセートを直接使用する。したがって、一定の核酸種の検出のためのサンプル調製が非常に簡素化され、それにより、時間および費用の消費ならびに分析方法のエラー感受性を軽減することができる。
【0151】
対応する核酸種の検出のために使用される反応または反応系列型に関して、本発明の前述の態様(例えば、本発明の溶解)と組み合わせた上記の実施項目を同一の様式で適用する。
【0152】
差分分析方法の特に好ましい実施形態では、第2の核酸種の検出のために工程b)で使用した反応または反応系列は、PCRまたはRT−PCR、好ましくは、リアルタイムPCRまたはリアルタイムRT−PCRである。好ましくは、サンプル調製物またはライセート中の第1の核酸種はgDNAであり、第2の核酸種はRNAであり、工程b)における反応または反応系列はRT−PCR、好ましくは、リアルタイムRT−PCRである。窒素化合物は、本発明の溶解方法に関する上記のポリアミン、複素環、アミノ酸、カルボン酸アミン、およびアンモニウム化合物の群から選択され、好ましくは、化合物は、スペルミジン、硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、グリシン、2,3−ジメチルピラジン、ベンズイミダゾール、イミダゾール、アルギニン、ヒスチジン、尿素、およびジスタマイシン、特に、ジスタマイシンDからなる群から選択される。
【0153】
本発明の差分分析方法のさらに好ましい実施形態では、サンプル調製物またはライセート中の第1の核酸RNA種および第2の核酸種は、DANN、好ましくは、gDNAである。工程b)では、反応または反応系列は、RT−PCR、好ましくは、リアルタイムRT−PCRである。好ましくは、複素環、アミノ酸、およびアンモニウム化合物の群から選択される本発明の溶解方法と組み合わせた本明細書中に記載の化合物をここで使用し、この化合物は、特に、プロリン、イミダゾール、および硫酸アンモニウムからなる群から選択される。
【0154】
本発明を、以下の選択された実施例および対応する図面で詳細に説明する。実施例は、本発明を明らかにする目的を果たし、本発明を制限すると見なされない。
【0155】
さらなる態様では、本発明は、サンプル中の少なくとも1種のDNAを検出するための分析方法であって、
a)サンプル調製物またはライセートを準備する工程と、少なくとも1種のRNAを、本発明のサンプル調製物中の少なくとも1つの物質で処理すること、および
b)少なくとも1種のRNAの検出に適切な反応または反応系列でサンプル調製物を使用する工程とを含む、分析方法に関する。サンプル調製物中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種数の減少および/または核酸および/またはタンパク質を分解する物質のサンプル調製物からの除去または不活化のためのさらなる方法工程を行うことなく、サンプル調製物を、好ましくは、直接使用する。
【0156】
この方法の1つの実施形態では、少なくとも1種のRNAの処理を、1つの選択された物質(生物中にRNAが含まれる場合、特に、単細胞、細胞集合体、組織、動物または植物全体、培養細胞、排泄物または分泌物(例えば、安定化および非安定化血液、血漿、血清、組織液、精子、標本、痰、唾液、涙、尿、便、毛髪、鱗屑、細菌、ウイルスなど))によって行う。
【0157】
本発明の方法の1つの実施形態では、上記生物を、本発明の物質での処理前に洗浄液で前処理することができる。夾雑物を除去し、そして/または別の様式での本発明の物質での処理のためのサンプルを調製する洗浄液を使用することが特に好ましい。
【0158】
この方法により、検出すべきRNA種の処理によって、検出および/または反応を改良することができる。
【0159】
対応するRNA種の検出のために使用される反応または反応系列の型に関して、本発明の溶解と組み合わせた上記実施項目を適用する。
【0160】
本発明の方法のさらなる実施形態では、生物を、溶解緩衝液と、好ましくは、1〜120分間インキュベートする。本発明の方法のさらなる実施形態では、生物を、溶解緩衝液と、室温と比較して高い温度(好ましくは、30〜90℃、特に好ましくは、50〜85℃)でインキュベートする。
【0161】
この方法のさらなる実施形態では、酵素的、物理的、または化学的溶解中または溶解後に選択された物質の1つによって、特に好ましくは、界面活性剤およびプロテアーゼ(プロテイナーゼK)を使用して、少なくとも1種のRNAを処理する。したがって、例えば、濃度0.005〜10%の界面活性剤を使用する。プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を、0.5×10-4mAU/μl〜50×10-4mAU/μlの濃度で安定化サンプル中に含めることができる。
【0162】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のRNAを、エンドヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ)によるDNAの酵素分解中または酵素分解後に選択された物質の1つによって処理する。したがって、DNアーゼIを、0.003U/μl〜0.5U/μlの濃度で安定化サンプル中に含めることができる。
【0163】
本発明の方法のさらなる実施形態では、酵素処理後、温度上昇(例えば、60〜95℃)によって酵素を不活化させる。
【0164】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のRNAを、選択された物質の1つおよび物理的処理工程、特に好ましくは、剪断力、圧力差、または温度作用によって処理する。
【0165】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のRNAを、例えば、アルギニン、イミダゾール、プロリン、リジン、スペルミン、スペルミジン、グルタミン酸、インダゾール、チミン、チミジン、グアニン、グアノシン、アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、硫酸アンモニウム、またはこれらの混合物から選択される1つまたは複数の特許請求の範囲に記載の物質によってサンプル中で処理する。
【0166】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のRNAを、少なくとも1つの上記物質を含む溶液中で処理し、この溶液は、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間である。
【0167】
したがって、少なくとも1種のRNAの検出に適切な配列または配列系列を、例えば、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、核酸の重合の群、特に、増幅反応の群から選択することができる。この方法の特定の実施形態では、少なくとも1種のRNAの検出方法は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR(プローブベースの方法および配列非特異的結合分子(例えば、SybrGeen)に依存する方法)、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR(プローブに基づいた方法および配列非特異的結合検出分子(例えば、SybrGreen)に依存する方法)、マルチプレックスPCR、マルチプレックスRT−PCR、リアルタイムマルチプレックスPCRおよびリアルタイムマルチプレックスRT−PCRのプローブに基づいた方法である。記載の用語「RT−PCR」は、以下のように理解すべきである。RT−PCRの反応は、逆転写およびPCRからなり、両反応は、2つの個別の容器中で互いに独立しておこるか、1つの容器中で共に起こり得る。両反応は、1つまたは複数の酵素によって起こり得る。RT−PCRに加えて、少なくとも1種のRNAを使用して他の反応を起こすこともできる(例えば、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR、TMA(転写媒介増幅)、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、全トランスクリプトーム増幅、全ゲノム増幅、およびローリング転写増幅、またはループ媒介等温増幅(LAMP))。
【0168】
さらなる態様では、本発明は、サンプル中の少なくとも1種のDNAを検出するための分析方法であって、
a)少なくとも1種のDNAを含むサンプル調製物またはライセートを準備する工程と、少なくとも1種のDNAを、サンプル調製物中の本発明の少なくとも1つの物質で処理すること、および
b)少なくとも1種のDNAの検出に適切な反応または反応系列でサンプル調製物を使用する工程とを含む、分析方法に関する。検出反応前にサンプル調製物中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種数の減少および/または核酸および/またはタンパク質を分解する物質のサンプル調製物からの除去または不活化のためのさらなる方法工程を行うことなく、サンプル調製物を、好ましくは、直接使用する。
【0169】
この方法の1つの実施形態では、少なくとも1種のDNAの処理を、1つの選択された物質(生物中にDNAが含まれる場合、特に、単細胞、細胞集合体、組織、動物または植物全体、培養細胞、排泄物または分泌物(例えば、安定化および非安定化血液、血漿、血清、組織液、精子、標本、痰、唾液、涙、尿、便、毛髪、鱗屑、細菌、ウイルスなど))によって行う。
【0170】
本発明の方法の1つの実施形態では、上記生物を、本発明の物質での処理前に洗浄液で前処理することができる。夾雑物を除去し、そして/または別の様式での本発明の物質での処理のためのサンプルを調製する洗浄液を使用することが特に好ましい。
【0171】
この方法により、検出すべきDNA種の処理によって、検出および/または反応を改良することができる。
【0172】
対応するDNA種の検出のために使用される反応または反応系列の型に関して、本発明の溶解と組み合わせた上記実施項目を適用する。
【0173】
本発明の方法のさらなる実施形態では、生物を、溶解緩衝液と、好ましくは、1〜120分間インキュベートする。本発明の方法のさらなる実施形態では、生物を、溶解緩衝液と、室温と比較して高い温度(好ましくは、30〜100℃、特に好ましくは、50〜85℃)でインキュベートする。
【0174】
この方法のさらなる実施形態では、酵素的、物理的、または化学的溶解前、溶解中、または溶解後に選択された物質の1つによって、特に好ましくは、界面活性剤およびプロテアーゼ(プロテイナーゼK)を使用して、少なくとも1種のRNAを処理する。したがって、濃度0.005〜10%の界面活性剤を使用する。プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を、0.5×10-4mAU/μl〜50×10-4mAU/μlの濃度で安定化サンプル中に含めることができる。
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のRNAを、エンドヌクレアーゼ(例えば、RNアーゼ)によるRNAの酵素分解後に選択された物質の1つによって処理する。
【0175】
本発明の方法のさらなる実施形態では、酵素処理後、例えば、温度上昇(例えば、60〜100℃)によって酵素を不活化させる。
【0176】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のDNAを、例えば、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン、グアニン、またはこれらの混合物から選択される物質によってサンプル中で処理する。
【0177】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のDNAを、少なくとも1つの上記物質を含む溶液中で処理し、この溶液は、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間である。
【0178】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種のDNAを、選択された物質の1つおよび物理的処理工程、特に好ましくは、温度作用によって処理する。
【0179】
したがって、少なくとも1種のDNAの検出に適切な配列または配列系列を、例えば、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、核酸の重合の群、特に、増幅反応の群から選択することができる。この方法の特定の実施形態では、少なくとも1種のRNAの検出方法は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR(プローブに基づいた方法および配列非特異的結合分子(例えば、SybrGeen)に依存する方法)、マルチプレックスPCR、マルチプレックスRT−PCR、リアルタイムマルチプレックスPCRおよびリアルタイムマルチプレックスRT−PCRのプローブに基づいた方法である。PCRに加えて、少なくとも1種のDNAを使用して他の反応を起こすこともできる(例えば、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、全トランスクリプトーム増幅、全ゲノム増幅、およびローリング転写増幅、またはループ媒介等温増幅(LAMP))。
【0180】
さらなる態様では、本発明は、サンプル中の少なくとも2種の生体分子(例えば、少なくとも1種の核酸および少なくとも1種のタンパク質)を検出するための分析方法であって、
a)少なくとも2種の生体分子(例えば、少なくとも1種の核酸および少なくとも1種のタンパク質)を含むサンプル調製物またはライセートを準備する工程と、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を、本発明の少なくとも1つの物質で処理すること、および
b)少なくとも2種の生体分子(例えば、少なくとも1種の核酸および1種のタンパク質)の検出に適切な反応または反応系列でサンプル調製物を使用する工程とを含む、分析方法に関する。サンプル調製物中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種数の減少および/または核酸および/またはタンパク質を分解する物質のサンプル調製物からの除去または不活化のためのさらなる方法工程を行うことなく、サンプル調製物を、好ましくは、直接使用する。
【0181】
この方法の1つの実施形態では、核酸および/またはタンパク質の処理を、1つの選択された物質(生物中に核酸および/またはタンパク質が含まれる場合、特に、単細胞、細胞集合体、組織、動物または植物全体、培養細胞、排泄物または分泌物(例えば、安定化および非安定化血液、血漿、血清、組織液、精子、標本、痰、唾液、涙、尿、便、毛髪、鱗屑、細菌、ウイルスなど))によって行う。
【0182】
本発明の方法の1つの実施形態では、上記生物を、本発明の物質での処理前に洗浄液で前処理することができる。夾雑物を除去し、そして/または別の様式での本発明の物質での処理のためのサンプルを調製する洗浄液を使用することが特に好ましい。
【0183】
この方法により、核酸および/またはタンパク質を、処理サンプル中の処理に起因する反応において同様に検出することができる。
この方法により、RNAおよびDNA、RNAおよびタンパク質、またはDNAおよびタンパク質を、処理サンプルの処理によって検出することができる。
対応する核酸種および/またはタンパク質種の検出のために使用される反応または反応系列の型に関して、本発明の溶解と組み合わせた上記実施項目を適用する。
【0184】
処理サンプル中のRNAおよびDNAの検出のためのこの方法の1つの実施形態では、酵素的、物理的、または化学的溶解前、溶解中、または溶解後に選択された物質の1つによって、特に好ましくは、界面活性剤およびプロテアーゼ(プロテイナーゼK)を使用して、核酸を処理する。したがって、例えば、濃度0.005〜10%の界面活性剤を使用する。プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を、0.5×10-4mAU/μl〜50×10-4mAU/μlの濃度で安定化サンプル中に含めることができる。
【0185】
処理サンプル中のRNAおよびタンパク質の検出のためのこの方法の1つの実施形態では、酵素的、物理的、または化学的溶解前、溶解中、または溶解後に選択された物質の1つによって、特に好ましくは、界面活性剤および/またはDNA特異的ヌクレアーゼを使用して、核酸を処理する。したがって、例えば、DNアーゼIを、0.003U/μl〜0.5U/μlの濃度で安定化サンプル中に含めることができる。
【0186】
処理サンプル中のDNAおよびタンパク質の検出のためのこの方法の1つの実施形態では、酵素的、物理的、または化学的溶解前、溶解中、または溶解後に選択された物質の1つによって、特に好ましくは、界面活性剤および/またはRNA特異的ヌクレアーゼを使用して、核酸を処理する。
【0187】
本発明の方法のさらなる実施形態では、生物を、溶解緩衝液と、好ましくは、1〜120分間インキュベートする。本発明の方法のさらなる実施形態では、生物を、溶解緩衝液と、室温と比較して高い温度(好ましくは、30〜85℃、特に好ましくは、50〜80℃)でインキュベートする。
【0188】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも2種の生体分子を、例えば、アルギニン、プロリン、イミダゾール、またはこれらの混合物から選択される物質によってサンプル中で処理する。
【0189】
この方法のさらなる実施形態では、サンプルを、少なくとも1つの上記物質を含む溶液中で処理し、この溶液は、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間である。
【0190】
したがって、少なくとも1種の核酸の検出に適切な配列または配列系列を、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、核酸の重合、特に、増幅反応の群から選択することができる。この方法の特定の実施形態では、少なくとも1種のRNAの検出方法は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR(プローブに基づいた方法および配列非特異的結合分子(例えば、SybrGeen)に依存する方法)、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR(プローブに基づいた方法および配列非特異的結合検出分子(例えば、SybrGreen)に依存する方法)、マルチプレックスPCR、マルチプレックスRT−PCR、プローブに基づいた方法であるリアルタイムマルチプレックスPCRおよびリアルタイムマルチプレックスRT−PCRのプローブに基づいた方法である。用語「RT−PCR」は、以下に記載のように理解すべきである。RT−PCRの反応は、逆転写およびPCRからなり、両反応は、2つの個別の容器中で互いに独立しておこるか、1つの容器中で共に起こり得る。両反応は、1つまたは複数の酵素によって起こり得る。RT−PCRに加えて、少なくとも1種のRNAを使用して他の反応を起こすこともできる(例えば、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR、TMA(転写媒介増幅)、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、全トランスクリプトーム増幅、全ゲノム増幅、およびローリング転写増幅、またはループ媒介等温増幅(LAMP))。
少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な反応または反応系列は、タンパク質結合反応、特に、タンパク質認識、特に、他のタンパク質によるタンパク質の認識、タンパク質、抗体、アプタマー、リガンド、核酸(特に、ウェスタンブロッティング)、または他の物質(グルタチオンおよびNADなど)の酵素活性に基づいた反応の群から選択されるか、タンパク質の修飾またはプロセシング、特に、(脱)リン酸化、(脱)グリコシル化、およびプロテアーゼによる分断の群から選択することができる。
上記の全ての方法を、溶液、懸濁液、固相中で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0191】
以下の実施例では、特許請求の範囲に記載の本発明で定義されている窒素化合物を添加物と呼ぶ。
以下の他で記載されない限り、本実施例で以下の材料を使用した。
【0192】
親溶液
(1)500mM EGTA(pH8)
(2)500mM EDTA(pH8)
(3)TE緩衝液、10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)
(4)EPE:0.06体積%NonidetP40、1mM EDTA、1mM EGTA、0.1体積%ポリエチレングリコールMG6000(PEG)
【0193】
デバイス:
(1)ABI Prism7700(ABI,Foster City,CA,USA)(リアルタイムRT−PCR)
(2)PCR ThermoCycler(Biometra GmbH,Goettingen,Germany)
(3)DNAまたはRNA濃度の決定のための分光計(Beckman DU 7400,Beckman Coulter Inc.,Fullerton,CA USA)
(4)Agilent Bioanalyzer(Agilent,USA)(変性ゲル分析)
【0194】
細胞培養:
(I)HeLa細胞
(2)293細胞
(3)HUH7細胞
(4)NIN3T3細胞
(5)HepG2細胞
(6)MCF7細胞
【0195】
培地:
(1)D−MEM(BRL;USA)(10%FCS、1%Pen/Streptおよび/または1%の非必須アミノ酸を部分的に含む)(HeLa、HUH7、293、NIH3T3用)
(2)RPMI1640(BRL;USA)(10%FCS、1%グルタミン、および/または1%PEN/Streptを部分的に含む)(HepG2細胞用)
(3)RPMI1640(BRL;USA)(10%FCS、1%ピルビン酸ナトリウム、1%グルタミン、1%Pen/Strept、1%非必須AS、および/または0.25%ウシインシュリンを部分的に含む)(MCF7細胞用)
【0196】
キットおよび酵素:
(1)RNeasy(登録商標):QIAGEN GmbH,Hilden,GermanyのRNA調製方法
(2)RNeasy 96(登録商標):RNA QIAGEN GmbH,Hilden,GermanyのRNA調製方法
(3)Omniscript(登録商標)RT−Kit:RNAの逆転写酵素反応キット(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)
(4)Sensiscript(登録商標)RT−Kit:RNAの逆転写酵素反応キット(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)
(5)QuantiTect(登録商標)SybrGeenPCRキット:SybrGreenを使用したリアルタイムPCRキット(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)
(6)QuantiTect(登録商標)サンプルPCRキット:標識プローブを使用したリアルタイムPCRキット(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)
(7)DNアーゼI:(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)
【0197】
リアルタイムRT−PCRまたはPCRで試験した転写物およびゲノム−遺伝子座
(1)転写部物およびゲノム遺伝子座としてのβ−アクチン
(2)転写物および遺伝子座としてのGAPDH
(3)転写物としてのβ−チューブリン
【0198】
DNアーゼI消化(実施例10および11)
実施例10および11では、以下のようにDNアーゼI消化を行った。DNアーゼI消化物はライセートであり、リアルタイムPCRの前に消化した。これのために、2μlのライセートを、2単位(単位)のDNアーゼIと共に150μM CaCl2、4mM MgCl2、および50mM Tris(pH8.4)を含む20μlの適切な緩衝液中で消化した。EDTA/EGTA溶液の添加によって反応を停止させた。次いで、2μlの反応溶液を、gDNAの残存量を測定するためのリアルタイムPCRに取り掛かった。
【0199】
I.溶解
実施例1
異なる添加物の存在下での細胞の溶解
本実験を使用して、添加物の添加によってより効率的に細胞を溶解することができることを示す。これのために、細胞を、第1の実験の添加物として濃度15mMのイミダゾール水溶液を含む溶解溶液中で溶解した。第2の実験では、細胞を、イミダゾール(15mM)を添加したNonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液B中に溶解した。比較例として、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液C中に溶解した。溶解効率の決定のために、比較リアルタイムRT−PCRにおいて各細胞転写物のCT値を決定した。Ct値は、PCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。この実験では、添加物なしの溶解後のCt値と添加物イミダゾールを使用した溶解でのCt値との相違からΔCt値を計算する。負のΔCt値は、添加物を使用しない比較系と比較して改善された値を示す。正のΔCt値は、添加物を使用しない比較系と比較して、溶解効率が低いことを示す。
【0200】
実施:40000個の293細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。第1の実験では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含むが、添加物を含まない溶解緩衝液中に溶解した。第2の実験では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、EDTA、および添加物として15mMイミダゾールを含む溶解緩衝液中に溶解した。第3の実験では、細胞を、H2Oに溶解したイミダゾールを含む溶解緩衝液中に溶解した。
2μlのこの様式で得たRNAを、QIAGEN,Hilden,Germanyから入手したOmniscript(登録商標)で標準的な逆転写酵素反応に変換した。この反応の終了後、2μlのRT反応溶液を、一定の転写物の検出のために、リアルタイムRT−PCRに移した。
【0201】
結果:図1は、各実験のそれぞれ決定したΔCt値を比較した図を示す。これらの結果は、細胞RNAが、添加物としてイミダゾール含む各溶解緩衝液の存在下でΔCt値を示すことを示し、イミダゾールを含まない通常の溶解緩衝液を使用した分析よりも約1.5〜3.5Ct低かった(すなわち、より大きな負の値)。これは、溶解においてかなり向上した程度を示す。
【0202】
実施例2
添加物として異なる窒素化合物を使用したH2O中での細胞の溶解
本実施例では、異なる添加物の存在下および非存在下での水中での溶解によるRNA収率を比較した(リジン(1mM)、2,3−ジメチルピラジン(15mM)、イミダゾール(15mM)、尿素(5mM)、スペルミジン(1mM))。RNA収率の増加は、より効率の高い溶解を示す。二次的影響の可能性を排除するために、各ライセートのRNAを、溶解後にQIAGEN,Hilden,Germanyから入手したRNeasy96(登録商標)によって清浄化し、260nmでの濃度測定によって定量した。
【0203】
実施:20000個のMCF細胞を、適切な培地を含む96ウェルのマルチタイター培養ポッド中でインキュベートした。細胞を、H2Oまたは異なる添加物を含むH2Oで溶解した。ライセートを、RNeasy96(QIAGEN GmbH,Hilden,Germanyから利用可能)で清浄化し、260nmの波長で濃度測定を行った。添加物を含まないH2Oでの溶解を使用したRNAの収率を、100%に正規化した。
【0204】
結果:図2は、異なる添加物を使用してRNA収率を比較した図を示す。これらの結果から各添加物の使用によってより良好なRNA収率が得られることが示され、このことは、添加物の使用によってより効率の良い溶解が得られることを示している。
【0205】
実施例3
溶解緩衝液および異なる添加物を使用した細胞の溶解
本実施例では、異なる添加物の存在下および非存在下での溶解緩衝液を使用した溶解におけるRNA収率を比較した。RNA収率の増加は、より効率の高い溶解を示す。二次的影響の可能性を排除するために、各ライセートのRNAを、溶解後にQIAGEN,Hilden,Germanyから利用可能なRNeasy96によって清浄化し、260nmでの濃度測定によって定量した。
【0206】
実施:20000個のMCF細胞を、適切な培地を含む96ウェルのマルチタイター培養ポッド中でインキュベートする。細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液中で清浄化するか、上記試薬に加えて、アルギニン(5mM)、リジン(1mM)、2,3−ジメチルピラジン(15mM)、イミダゾール(15mM)、スペルミジン(1mM)、ピリミジン(15mM)、グアニン(15mM)を含む溶解緩衝液中に溶解する。ライセートを、RNeasy96(QIAGEN GmbH,Hilden,Germanyから利用可能)で清浄化し、その後、260nmの波長で濃度測定を行った。添加物を含まない溶解緩衝液での溶解時のRNAの収率を、100%に正規化した。
【0207】
結果:図3は、異なる実験のRNA収率を比較した図を示す。使用した全ての添加物で収率を増加することができることがこの図から認められる。添加物としてのグアニンの使用によって収率を特に多く増加させることができる(94%)。
【0208】
II.安定化
実施例4
異なる添加物による細胞ライセート中の細胞RNAの安定化
細胞を、添加物を含むか含まない溶解緩衝液中に溶解した。RNA安定化度を決定するために、細胞転写物のCT値を、比較リアルタイムRT−PCRで決定した。Ct値は、PCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。この実験では、添加物を使用した溶解サンプルのCt値と添加物を使用しない溶解サンプルのCt値との相違からΔCt値を計算する。低い(すなわち、ΔCt値がより負である)ほど、安定化効果は高くなり、これは、ライセートへの添加物の添加によって起こる。
【0209】
実施:40000個のHepG2細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。第1の実験では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含むが、添加物を含まない溶解緩衝液中に溶解した。さらなる実験では、細胞を、上記溶解試薬に加えて、添加剤として、イミダゾール(15mM)、プロリン(15mM)、グルタミン酸(15mM)、ヒスチジン(15mM)、アルギニン(5mM)、トリプトファン(15mM)、グリシン(15mM)、ピリミジン(15mM)、グアニン(15mM)、シトシン(30mM)、ベタイン(100mM)、エクトイン(200mM)、2,3−ジメチルピラジン(30mM)、2−アミノチアゾール(15mM)、インダゾール(15mM)、ベンズイミダゾール(15mM)、尿素(5mM)、または硫酸アンモニウム(130mM)を含む溶解緩衝液中に溶解した。2μlのこの様式で得たRNAを、Omniscript(登録商標)(QIAGEN,Hilden,Germany)で標準的な逆転写酵素反応に変換した。逆転写反応の終了後、2μlのRT反応溶液を、リアルタイムRT−PCRに移した。
【0210】
結果:図4は、細胞RNAの安定化をΔCt値を用いて異なる添加物によって明らかにした図を示す。図から、0.5〜8Ct領域中のΔCt値が異なる濃度の添加物の存在下で達成される。これにより、添加物を含む溶解緩衝液中のRNAの安定性を、これらに添加物を添加していない溶解緩衝液の使用と比較すると非常により高いことが明らかである。
【0211】
実施例5
添加物の存在下での細胞ライセート中の細胞RNAの安定化
添加物を含むまたは含まない溶解緩衝液中に細胞を溶解した。RNA安定化度を決定するために、比較リアルタイムRT−PCRにて細胞転写物のCT値を決定した。Ct値は、PCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。この実験では、添加物なしの溶解後のCt値と添加物イミダゾールを使用した溶解でのCt値との相違からΔCt値を計算する。低い(すなわち、ΔCt値がより負である)ほど、安定化効果は高くなり、これは、ライセートへの添加物の添加によって起こる。
【0212】
実施:40000個のHeLa細胞、HUH7細胞、29293−Zellen細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。第1の実験では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液中に溶解した。さらなる実験では、細胞を、上記溶解反応に加えて、添加物であるイミダゾール、リジン、またはスペルミンも含む溶解緩衝液中に溶解した。2μlのこの様式で得たRNAを、QIAGEN,Hilden,Germanyから入手したOmniscript(登録商標)で標準的な逆転写酵素反応に変換した。この反応の終了後、2μlのRT反応溶液を、一定の転写物の検出のためにリアルタイムRT−PCRに移した。
【0213】
結果:図5は、異なるサンプルのΔCt値を比較した図を示す。これは、添加物を含まない標準的な溶解緩衝液を使用して得られたサンプルと対照的に、異なる細胞培養物の細胞RNAサンプルが、異なる濃度の添加物の存在下で約−2〜−5.5の領域の負のCt値を示したことを示す。これは、添加物を含むサンプルのRNAの安定性が非常に改良されたことを示す。
【0214】
実施例6
添加物の存在下での細胞ライセート中の細胞RNAの安定化
細胞を、潜在的な安定化添加物を含むまたは含まない溶解緩衝液中に溶解した。RAN安定性の決定のために、変性ゲルにてRNAを分析した。しかし、RNAが細胞物質と複合体化しているので、変性ゲルでの分析が可能になるように、これを最初にRneasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)によって清浄化しなければならない。RNAの完全性を、18Sおよび28S rRNAバンドを用いて決定することができる。
【0215】
実施:40000個のHepG2細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。細胞を、以下の溶解緩衝液中にそれぞれ溶解した。
1:カラム1:Nonidet−P40、ポリエチレングリコール(PEG)、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液
2:カラム2:2mM EGTAをさらに含む1
3:カラム3:2mM EDTAをさらに含む1
4:カラム4:Nonidet−P40、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液
5:カラム5:1mMリジンをさらに含む1
6:カラム6:0.2mMスペルミンをさらに含む1
7:カラム7:10mMイミダゾールをさらに含む1
【0216】
記載の溶解緩衝液での溶解後、ライセート中に得られたRNAを、Rneasyによって清浄化し、変性ゲル(Agilent BioAnalyzer)にて分解をチェックした。
【0217】
結果:図6は、ゲル分析の結果を示す。PEGを含むか含まない簡潔な溶解緩衝液中の細胞RNAの分解(カラム1および4)が明らかに認められる。対照的に、添加剤であるリジン、スペルミジン、またはイミダゾールの存在下でのRNA(カラム5、6、および7)は、いかなる分解徴候も認められなかった。ヌクレアーゼインヒビターである高濃度のEGTaAまたはEDTAの存在下で、改良されているが十分ではない安定化が認められた(カラム2および3)。
【0218】
実施例7
室温での添加物による細胞ライセートの細胞RNAの安定化
細胞を、イミダゾールを含む溶解緩衝液中に溶解した。比較するために、細胞RNAを、Rneasyによって清浄化した。ライセートを、さらなる精製工程に供させず、それにより、依然として全RNアーゼが含まれている。添加物イミダゾールおよび場合によってサンプル中に含まれるさらなる細胞物質を用いて行ったRNAの安定化により、ライセート中のRNAの分解は、室温のインキュベーション中でさえも、ライセート中のRNAの分解は減少するか消失するはずである。
RNA安定化を決定するために、比較リアルタイムRT−PCRにて細胞転写物のCt値を決定した。Ct値は、PCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。ΔCt値を、本実施例において、差Ct−Wert(t=0)(式中、「t」は時間を意味する)およびCt値(t=x)から計算する。測定されたΔCt値が測定期間にわたって0付近に留まる場合、測定期間にわたってRNAの有意に分解されないことを示すので、これは高い安定化度を示す。
【0219】
実施:16000個の293細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。一方では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、EDTA、およびイミダゾールを含む溶解培地中に溶解し、他方では、RNeasy(登録商標)(QIAGEN,Hilden,Germany)によってRNAを調製した。ライセートまたは溶出液を、室温で最大2時間インキュベートした。2μlのインキュベートしたRNAを、異なる時間でOmniscript(登録商標)(QIAGEN,Hilden,Germany)で標準的な逆転写反応に変換した。RT反応の終了後、2μlの反応溶液を、リアルタイムPCRに移した。
【0220】
結果:図7は、インキュベーション時間に対するΔCt値の依存性を示す図を示す。ライセートから直接測定したサンプルのΔCt値およびRNeasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)を用いて清浄化したRNAのΔCt値は、0付近に留まった。これは、ライセートのRNAがRNeasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)によって清浄化されたRNA調製物に類似の安定性を有することを示す。
【0221】
実施例8
異なる細胞数を有する細胞RNAの安定化
少数の細胞を有するサンプルから得た核酸を細胞物質のみによって安定化することができる一方で、多数の細胞から得たサンプルは、場合によって細胞物質による核酸の安定化を支持するさらなる薬剤が依然として必要である。異なる細胞数の培養物由来のサンプルを使用する実験では、溶解後のRNAの安定性を、安定化添加物を使用するか使用しないで決定すべきである。
【0222】
実施:1024〜100000個の細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。実験では、このような様式で得られた細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、EDTA、および安定化添加物としてイミダゾールを含む溶解緩衝液中に溶解した。イミダゾールの添加により、既に存在する可能性のある安定性を、細胞物質によって改良すべきである。さらなる実験では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含むが、イミダゾールを含まない溶解緩衝液中に溶解した。上記の各実験で、細胞RNAを、比較のためにRNeasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)で清浄化した。それぞれ2μlのライセートまたは溶出液を、Omniscript(登録商標)(QIAGEN,Hilden,Germany)で標準的な逆転写酵素反応に変換した。RT反応の完了後、2μlの反応溶液を、リアルタイムRT−PCRに移した。
RNA安定化度を決定するために、細胞転写物のCT値を、比較リアルタイムRT−PCRで決定した。Ct値は、PCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。本実施例で、細胞数Xを用いたCT値と細胞数100000を用いたCt値との相違からΔCt値を計算する。高い安定化の測定値に到達する場合、ΔCt値は、細胞数の増加に伴って増加する。
【0223】
結果:図8は、添加物としてイミダゾールを含むライセート由来のサンプルおよび添加物を含まないサンプルのRNeasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)によって清浄化されたサンプルの細胞数に対するΔCt値の依存性を示す図を示す。RNeasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)によって清浄化したについて、ΔCt値が全細胞数範囲にわたって細胞数に対応して挙動し、すなわち、細胞数の減少に伴ってΔCt値が増加することを明確に示す。細胞をイミダゾールも含む溶解緩衝液を用いて溶解した場合、細胞数に対応したΔCt値の増加は、40000以下の細胞数のみで認められた。しかし、細胞をイミダゾールを含まない溶解緩衝液で溶解した場合、細胞集に対応するΔCt値は、6400個未満でも認められた。6400個を超えると、より高いΔCt値が測定され、6400個を超えて導入された場合、RNAの明らかな分解を示す。これは、一定の細胞数(ここでは、6400個)未満のタンパク質などの細胞物質のみによって、添加物を使用しないで十分な安定化が可能であることを示す。添加物は、この細胞数をさらに超えた安定化を補助しなければならない。
【0224】
III.阻害効果の減少
実施例9
核タンパク質由来のgDNAの検出性
細胞を、添加物を含むか含まない溶解緩衝液中に溶解した。細胞の溶解により、ここで選択した溶解条件下で核タンパク質複合体を形成することができ、その結果、ライセートから得たサンプル中でgDNAのみが不十分に検出され得る。gDNAの決定のために、比較リアルタイムRT−PCRでCT値を決定した。Ct値は、PCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。本実施例で、添加物を含む溶解後のCtと分離添加物を含まない溶解でのCt値との相違からΔCt値を計算する。ΔCt値が低いほど、gDNAの検出性がより良好になり、添加物によって核タンパク質複合体からより良好なgDNAを分離することができる。
【0225】
実施:HepG2細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。比較例として、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液Cに溶解した。さらに、細胞を、上記試薬に加えて、添加物であるアルギニン(15mM)、2,3−ジメチルピラジン(30mM)、トリプトファン(15mM)、ヒスチジン(15mM)、インダゾール(10mM)、またはイミダゾール(15mM)も所与の濃度で含むさらなる実験で溶解した。
ライセートを含む2μlの核タンパク質複合体を、それぞれ、gDNAを検出するためにリアルタイムRT−PCRに移した。
【0226】
結果:図9は、それぞれ決定した個別の実験のΔCt値を比較した図を示す。全ての添加物を使用して、添加物を含まないサンプルと比較して、負のΔCt値の増加が認められた。これらから、上記アミンによる細胞核酸タンパク質複合体からの分離後の核タンパク質によって複合体化したgDNAよりも良好に細胞gDNAを検出することができると結論づけることができる。約0.3〜3.5より良好なΔCt値を得ることができる。これは、添加物に起因する分離によるgDNAの検出性の改良(係数1.2〜10)に対応すし、これは、細胞核タンパク質複合体の脱複合体化のために添加物を使用することに依存する。
【0227】
実施例10
細胞核タンパク質複合体からのgDNAの酵素分解(DNアーゼI)の改良
細胞を、添加物を含むか含まない溶解緩衝液中に溶解した。細胞の溶解により、核タンパク質複合体形成のためにここで選択した溶解条件下で核タンパク質複合体を形成することができ、その結果、gDNAは、DNアーゼIに不十分にしか接近できない。gDNAのDNアーゼI消化は、gDNAの核タンパク質複合体からの距離の基準として役立つ。添加物によって核タンパク質からgDNAが脱複合体化する場合、gDNAは、DNアーゼIによって容易に消化されるはずである。リアルタイムアッセイを用いたgDNAの検出は、DNアーゼIによる酵素分解の決定のために役立つ。Ct値は、PCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。本実施例で、添加物を添加するがDNアーゼIを添加しないサンプル中のCt値と添加物およびDNアーゼIを添加したサンプルのCt値との相違からΔCt値を計算する。本実施例で、添加物およびDNアーゼIを添加しないサンプルのCt値とDNアーゼIを添加するが添加物を添加しないサンプルのCt値との相違からΔCt2値を計算する。本実施例で、以下の差:ΔCt1値−ΔCt2からΔCt値を計算する。ΔCt値が低い(すなわち、ΔCt値がより負である)ほど、DNアーゼIによってgDNAをより良好に分解することができ、これはgDNAのDNアーゼIへのより良い接近性の徴候である。
【0228】
実施:HepG2−Zellen HepG2細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。比較例として、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液C中に溶解した。一方では、細胞を、上記物質に加えて、以下の添加物のうちのそれぞれ1つもそれぞれ所与の濃度で含む溶解緩衝液中に溶解した:アルギニン(1mM)、2,3−ジメチルピラジン(30mM)、アミノチアゾール(15mM)、インダゾール(30mM)、ベンズイミダゾール(15mM)、イミダゾール(15mM)、トリプトファン(15mM)、ヒスチジン(15mM)、プロリン(5mM)、または硫酸アンモニウム(30mM)。その後、上記のようにDNアーゼI消化を行い、このようにして得られたそれぞれ2μlの反応溶液を、gDNAを検出するためにリアルタイムRT−PCRに移した。
【0229】
結果:図10は、異なるサンプルの異なるΔCt値を比較した図を示す。
使用した全ての添加物により、より負の値のΔCt値が得られ、これは、細胞核タンパク質複合体の細胞gDNAをDNアーゼIによって強化された上記の添加物を使用した脱複合体化によって分解することができることを示した。添加物に依存して、0.3〜10サイクルのより良好なΔCt値が得られた。これは、DNアーゼIによるgDNAの酵素分解性の改良に対応し、これは、約1.2〜約100の係数内の添加物の添加によって達成される。
【0230】
Ctの2サイクルの相違は、例えば、PCRに利用可能な出発材料(サンプル中のgDNA)の量の係数4までの変化に対応する。この様式で、係数は、gDNAの接近性の改良に相関し得る。この状況は、いかなる実験からも得られない理想的仮定値(図10.a.1および10.a.2)を用いて説明される。
【0231】
実施例11
細胞核タンパク質複合体の酵素分解(DNアーゼI)の改良の濃度依存
上記の実施例10で行った一連の実験を、添加物として異なる濃度のイミダゾールを使用する類似の様式で行った。
【0232】
実施:HepG2−Zellen 29細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。比較例として、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液C中に溶解した。その後、上記のようにDNアーゼI消化を行い、このようにして得られたそれぞれ2μlの反応溶液を、gDNAを検出するためにリアルタイムRT−PCRに移した。
【0233】
結果:図11は、ライセートに添加したイミダゾール濃度由来のΔCtの濃度依存性を示す。DNアーゼIによるgDNAの酵素分解を、20mMイミダゾールを添加した場合に係数40で改良することができる。
【0234】
実施例12:
添加物の存在下でのgDNA/RNA混合物中のgDNAのより良いDNアーゼI消化
【0235】
核酸がシリカ膜(Rneasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany))によって清浄化されたRNAとDNAとの核酸混合物で試験する場合、生体分子による阻害の減少のための添加物の使用により、DNアーゼIによる酵素分解が改良される。これのために、清浄化gDNAおよび清浄化RNAを、添加物を含むか含まない溶解緩衝液中に入れることができる。gDNAのDNアーゼIへの接近性を、DNアーゼIを用いた酵素分解によって決定し、その後、リアルタイムPCRによってgDNA成分を決定する。リアルタイムPCRでは、Ct値はPCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。本実施例で、添加物での溶解後のCt値と添加物を含まない溶解でのCt値との相違からデータCt値を計算する。
低い(すなわち、ΔCt値がより負である)ほど、酵素分解の効率が高く、gDNAのDNアーゼIへの接近性の改良をさらに示す。
【0236】
実施:RNAを、Rneasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)によって清浄化した。gDNAを、QIAamp(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)によって清浄化した。20ngのgDNAおよび20ngのRNAをサンプルと組み合わせた。
DNアーゼIによる酵素分解
150μM(最終濃度)のCaCl2を添加したQiantiTest(登録商標)リアルタイム緩衝液(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)にてライセートのDNアーゼ消化を行った。反応物は、20ng RNAおよび20ng gDNA、0.5U DNアーゼ(Ambion,USA)、プライマー、ヌクレオチド、HotstarTaqポリメラーゼ、および上記の添加物をそれぞれ含んでいた。PCRでの熱活性化によって反応を停止させた。残存gDNAの決定のために、リアルタイムPCRを行う。
【0237】
結果:図12は、それぞれ得られたΔCt値の比較を示す。図は、使用した添加物の存在下で清浄化されたgDNA/RNA混合物中のgDNAが明らかに良好な様式でDNアーゼIによって分解されたことを示す。2〜13サイクル改良されたΔCt値が認められた。これは、DNアーゼIによるgDNA分解の約4〜1000超の係数の改良(使用した添加物に依存する)に対応する。
【0238】
実施例13
細胞ライセート由来のgDNAおよびRNAの検出時の阻害効果の減少
細胞を、ジスタマイシンDを含むか含まない溶解緩衝液中に溶解した。細胞の溶解により、核タンパク質複合体が形成され、その結果、RNAは、不十分にしか検出できなかった。gDNAまたはRNAの脱複合体化のために、小さな空洞中の二本鎖に主に結合するジスタマイシンDを使用した。gDNAの決定のために、比較リアルタイムRT−PCRでCT値を決定した。比較リアルタイムRT−PCRでRNAを決定した。Ct値は、Ct値はPCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。本実施例で、添加物を使用した溶解後のCt値と添加物を使用しない溶解でのCt値との相違からΔCt値を計算する。低い(すなわち、ΔCt値がより負である)ほど、gDNAまたはRNAの検出性が良好であり、gDNAまたはRNAが添加物によって核タンパク質複合体からより良好に脱複合体化することができる。
【0239】
実施:懸濁液中で成長するHeLa細胞を、適切な培地中でインキュベートした。一方では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液中に溶解した。他方では、細胞を、上記物質に加えて、添加物として異なる濃度のジスタマイシンDも含む溶解緩衝液中に溶解した。
このようにしてそれぞれ得られた2μlのライセートを、gDNAまたはRNAを検出するためのリアルタイムPCRまたはリアルタイムRT−PCRに移した。
【0240】
結果:図13は、各実験のそれぞれ決定したΔCt値を比較した図を示す。ジスタマイシンDによる細胞核タンパク質複合体の脱複合体化後に、ジスタマイシンDを含まないサンプルよりも細胞gDNAおよびRNAを容易に検出することができることが図中に認められる。改良度は、ジスタマイシン濃度に依存する。gDNAについて、低濃度(70pM)でさえも4サイクルを超えるCtの改良を行うことができる。これは、係数10超の改良に対応する。
添加物としてのジスタマイシンの使用時のRNAの検出時のCt値の改良はここではより小さい。これは、ジスタマイシンが主にDNAに結合することに起因し得る。したがって、達成された効果は、本質的にタンパク質DNA複合体の脱複合体化に基づき、RNAは複合体内に織り込まれ、放出もされる。したがって、RNAの検出性に対する効果は、本質的に間接的である。
【0241】
実施例14
DNAの検出性に正規化したRNAに対する阻害効果の減少
細胞を、添加物を含むか含まない溶解緩衝液中に溶解した。細胞の溶解により、核タンパク質複合体が形成され、その結果、RNAは、不十分にしか検出できなかった。RNAの検出のために、CT値を比較2管(two−tube)リアルタイムRT−PCRで決定した。Ct値はPCRサイクルであり、これは、最初にPRCシグナルが検出される(すなわち、視覚可能になる)。本実施例で、添加物を使用した溶解後のCt値と添加物を使用しない溶解でのCt値との相違からΔCt値を計算する。RNAのCt値を、gDNAのCt値に対して正規化した。Ctの相違(例えば、2サイクル)は、逆転写酵素によるRNAの接近性の変化(係数4)に対応する。係数を、核タンパク質複合体由来のRNAの接近性を各添加物による核タンパク質複合体由来のgDNAの接近性と比較する様式で決定することができる。
【0242】
実施:HepG2細胞を、適切な培地中で3日間インキュベートした。一方では、細胞を、Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTAを含む溶解緩衝液中に溶解した。他方では、細胞を、上記物質に加えて、以下の添加物のうちのそれぞれ1つもそれぞれ所与の濃度で含む溶解緩衝液中に溶解した:アルギニン(1mM)、2,3−ジメチルピラジン(30mM)、アミノチアゾール(15mM)、インダゾール(30mM)、ベンズイミダゾール(15mM)、ヒスチジン(10mM)、プロリン(5mM)、トリプトファン(10mM)、インダゾール(30mM)、硫酸アンモニウム(30mM)、またはイミダゾール(15mM)。このようにして得られたそれぞれ2μlのライセートを、OmniscriptRT(登録商標)(QIAGEN,Hilden,Germany)を使用した逆転写反応で使用する。RT反応の終了後1μlの反応溶液を、それぞれ、対応するcDNAを検出するためのリアルタイムRT−PCRに移した。
【0243】
結果:図14は、細胞RNAの検出性のそれぞれの改良を比較した図を示す。図は、上記添加物による細胞核タンパク質複合体の脱複合体化後に、添加物を添加していないライセートサンプル由来のRNAよりも細胞RNAを容易に検出することができることを示す。係数2−1000による改良を、測定することができた。これは、核タンパク質複合体からのRNAの明確な脱複合体化が各添加物の使用に起因することを示す。
【0244】
IV.マスキング
実施例15
清浄化ゲノムDNAおよび清浄化RNAの混合物中のDNAの差分マスキング
マスキングしたDNAは、RNAよりも増幅がより困難なはずである。DNAおよびRNAのリアルタイムPCRまたはRT−PCRは、gDNAのマスキングのために添加物を使用する場合にRNAと比較したDNAの差分マスキングの測定を示し得る。
ΔCt値を、添加物を添加したサンプルのCt値といかなる添加物も添加していないサンプルのCt値との相違と定義する。この値が高いと、RNAと比較してDNAがマスキングされていることを示した。
【0245】
実施:ヒトgDNAおよびRNAをQIAamp(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)またはRneasy(登録商標)(QIAGEN GmbH,Hilden,Germany)によってそれぞれ清浄化し、20ngのgDNAおよび20ngのRNAをサンプルに組み合わせた。最終濃度5または20μMまでのスペルミンを、いくつかのサンプルに添加した。遠心分離後の2μlの残存物を、リアルタイムRT−PCRまたは2管リアルタイムRT−PCRに移した。
【0246】
結果:図15は、各実験のそれぞれ決定したΔCt値を比較した図を示す。20μMスペルミンの場合は両核酸(gDNAおよびRNA)がマスキングされ、5μMスペルミンを使用した場合はgDNAを選択的にマスキングすることができることが図中に認められる。5μMスペルミンを使用して、ΔCtの6サイクル置換を測定することができ、gDNAが約500の係数でマスキングされる。対照的に、RNAにはΔCt置換は認められなかった。
【0247】
実施例16
異なる添加物による細胞ライセート中のRNAマスキング
マスキングされたRNAは、同一の調製物または同一のライセート由来のgDNAよりも増幅が劣るはずである。gDNAのリアルタイムPCRに調整したマスキングされたRNAのリアルタイムRT−PCRは、RNAと比較したDNAの差分マスキング範囲を示すはずである。
ΔCt値を、本実験の添加物を使用した溶解によって得たサンプルのCt値と本発明の添加物を使用しない溶解によって得られたサンプルのCt値の相違と定義する。ΔCt値を、リアルタイムRT−PCR中でRNAによって達成されたCtに対して正規化した。
値の高さは、RNAと比較したDNAマスキングを示した。
【0248】
実施:一方では、界面活性剤含有溶解緩衝液(Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTA)を使用して、ヒトgDNAおよびRNAをHepG2から得た。他方では、gDNAの差分マスキングのための添加剤である濃度30mMの硫酸アンモニウム、グリシン、またはリン酸水素アンモニウム、濃度5mMの尿素。
RNAと比較したDNAの差分マスキングを、その後、リアルタイムPCRおよびリアルタイムRT−PCRによって決定した。
【0249】
結果:図16は、各実験のそれぞれ決定したΔCt値を比較した図を示す。上記の添加物を含む溶解緩衝液中のゲノムDNAにより、RNAのCt値に対して正規化されたより高いΔCt値が得られることが図中に認められる。これは、RNAと比較したDNAのマスキングを示す。インダゾールの場合、約7Ctのマスキングが達成され、これは、マスキングによってこの溶液中で約1/100のRNAが検出されることを示す。
【0250】
実施例17
異なる添加物による細胞ライセート中のゲノムDNAのマスキング
マスキングされたDNAは、同一の調製物由来のRNAよりも増幅が劣るはずである。gDNAのリアルタイムPCRに調整したマスキングされたRNAのリアルタイムRT−PCRは、RNAと比較してDNAの差分マスキング範囲を示すはずである。
本実験では、ΔCt値を、Ct値(DNA)とCt−Wert(RNA)との相違と定義する。負のΔCT値は、DNAと比較したRNAのマスキングを示した。
【0251】
実施:一方では、界面活性剤含有溶解緩衝液(Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTA)を使用して、ヒトgDNAおよびRNAを40,000細胞から得た。他方では、以下の添加物の1つを、RNAを差分マスキングするために所与の濃度で添加した:グルタミン酸(15mM)、アルギニン(5mM)、2,3−ジメチルピラジン(15mM)、ベンズイミダゾール(15mM)、イミダゾール(15mM)、またはヒスチジン(15mM)。濃度はそれぞれ最終濃度である。RNAと比較したDNAの差分マスキングを、その後、リアルタイムPCRおよびリアルタイムRT−PCRによって決定した。
【0252】
結果:図17は、それぞれ得たΔCt値を示す。添加物を含む溶解緩衝液中のRNAにより、負のΔCt値が得られることが図中に認められる。これは、RNAと比較したDNAのマスキングを示す。グルタミン酸およびアルギニン、2,3−ジメチルピラジンおよびイミダゾール場合、4Ctのマスキングが行われ、これは、マスキングによってこの溶液中で約1/10のDNAが検出されることを示す。
【0253】
実施例18
細胞ライセート中のゲノムDNAのマスキングの濃度依存性
マスキングされたDNAは、同一の調製物由来のRNAよりも増幅が劣るはずである。gDNAのリアルタイムPCRに調整したマスキングされたRNAのリアルタイムRT−PCRは、RNAと比較したDNAの差分マスキング範囲を示すはずである。
本実験では、ΔCt値を、Ct値(RNA)とCt値(gDNA)との相違と定義する。負のΔCT値は、DNAと比較したRNAのマスキングを示した。
【0254】
実施:一方では、界面活性剤含有溶解緩衝液(Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTA)を使用して、ヒトgDNAおよびRNAをHepG2細胞から得た。他方では、差分マスキングを行うために、添加物であるアルギニンを溶解緩衝液に異なる濃度でそれぞれ添加した。示した濃度はそれぞれライセート中のアルギニンの最終濃度である。RNAと比較したDNAの差分マスキングを、その後、リアルタイムPCRおよびリアルタイムRT−PCRによって決定した。
【0255】
結果:図18は、各実験のそれぞれ決定したΔCt値を比較した図を示す。ΔCt値が負になると、緩衝液中のアルギニンの最終濃度が高くなることが図よりわかる。これは、RNAと比較したDNAのマスキングを示す。6mMアルギニンを使用したこの一連の実験では、最大マスキングが得られた。ΔCt値の「−6」は、約1/500のgDNAの検出に対応する。
【0256】
実施例19
異なる添加物による細胞ライセート中のRNAのマスキング
マスキングされたRNAは、同一の調製物または同一のライセート由来のgDNAよりも増幅が劣るはずである。gDNAのリアルタイムPCRに調整したマスキングされたRNAの2管リアルタイムRT−PCRは、DNAと比較したRNAの差分マスキング範囲を示すはずである。
本実験では、ΔCt値を、Ct値(DNA)とCt−Wert(RNA)との相違と定義する。負のΔCT値は、DNAと比較したRNAのマスキングを示した。
【0257】
実施:一方では、界面活性剤含有溶解緩衝液(Nonidet−P40、ポリエチレングリコール、EGTA、およびEDTA)を使用して、ヒトgDNAおよびRNAをHepG2細胞から得た。他方では、RNAを差分マスキングするために、以下の添加物の1つを所与の濃度でそれぞれ添加した:プロリン(20mM)、インダゾール(20mM)、または硫酸アンモニウム(30mM)。濃度はそれぞれ最終濃度である。その後、RNAを、ライセートを使用した20μl逆転写酵素中で使用した。このようにして得た2μlの反応溶液を、リアルタイムPCRに移した。比較として、事前の転写酵素反応を行わずにリアルタイムPCRを行った。
【0258】
図19は、各実験のそれぞれ決定したΔCt値を比較した図を示す。添加物を含む溶解緩衝液中のRNAにより、負のΔCt値が得られることが図中に認められる。これは、gDNAと比較したRNAのマスキングを示す。イミダゾールの場合、ほぼ6Ctのマスキングが行われ、これは、マスキングによってこの溶液中で約1/400のRNAが検出されることを示す。
【0259】
実施例20
生体サンプルまたは生物の治療およびpH値の測定のための本発明の物質の使用
実施:一方では、界面活性剤含有溶解緩衝液を使用して、ヒトgDNAおよびRNAをHepG2細胞から得た。あるいは、a)アルギニン(5mM)、b)アルギニンおよびプロリン(それぞれ5mM)、c)イミダゾール(15mM)、またはd)グアノシン(20mM)をこの溶解緩衝液に添加した。細胞への溶液の添加後、この様式で得たライセートのpH値を決定した。
【0260】
結果:pH値を以下のように決定した。
a)アルギニン含有溶液で処理したサンプル:pH7.5〜8
b)アルギニン−プロリン含有溶液で処理したサンプル:pH7.4〜8
c)イミダゾール含有溶液で処理したサンプル:pH7.5〜8
d)グアノシン含有溶液で処理したサンプル:pH>9
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】窒素化合物(添加物)を用いるか用いないで溶解した異なるサンプルのΔCT値を比較した図である。
【図2】本発明の溶解方法の1つの実施形態で促進したRNA収率の増加を明確にするための図である。
【図3】これも本発明の溶解方法の1つの実施形態で促進したRNA収率の増加を明確にするための図である。
【図4】本発明の安定化方法の1つの実施形態の異なる添加物の安定化効果を示す図である。
【図5】本発明の安定化方法の1つの実施形態の異なる細胞培養物の安定化効果を示す図である。
【図6】異なる細胞ライセートのゲル分析の結果を示す図である。
【図7】インキュベーション時間に対するΔCT値の依存性を示す図である。
【図8】細胞数に対するΔCT値の依存性を示す図である。
【図9】阻害効果の減少のための本発明の方法の実施形態によって得られるライセート中の異なる添加物の使用によるgDNAの接近可能性の改良を示す図である。
【図10−1】阻害効果の減少のための本発明の方法の実施形態によって得られるライセート中の異なる添加物の使用によるDNアーゼIについてのgDNAの接近可能性の改良を示す図である。
【図10−2】理想的な仮説的値を用いたCt値と因子との間の関係を示す図である。
【図11】ΔCt測定値の濃度依存性を示す図である。
【図12】阻害効果の減少のための本発明の方法の実施形態における清浄化DNAの使用時のΔCt測定値を示す図である。
【図13】本発明のジスタマイシンDの存在下でのgDNAおよびRNAの接近可能性の改良を示す図である。
【図14】本発明の異なる添加物を使用して細胞ライセート中のDNAと比較したRNAの接近可能性の改良を示す図である。
【図15】ΔCt測定値を用いた異なる濃度のスペルミンを使用した本発明の細胞ライセート中のRNAと比較したgDNAの差分マスキングの効果を示す図である。
【図16】異なる添加物を使用した本発明の細胞ライセート中のgDNAの差分マスキングの効果を示す図である。
【図17】RNeasy調製物に正規化した本発明のgDNAの差分マスキングの効果を示す図である。
【図18】本発明の細胞ライセートにおけるgDNAのマスキング効果の濃度依存性を示す図である。
【図19】本発明のRNAのマスキング効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルのその後に続く調製、処理、または分析方法のためのサンプルの調製方法であって、以下の工程:
A)少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記液体サンプル調製物が、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間であること、ここで、前記組成物が、以下:
a)ポリアミン、
b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、
c)窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、
d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、
e)カルボン酸アミン、
f)無機アンモニウム塩、
g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、
h)核酸に結合する抗生物質、
i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、および
2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物
からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むこと
を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質をケーシング中に含む生体サンプルの溶解方法であって、前記サンプルをライセート産生のための液体または固体の組成物と接触させ、前記組成物が、以下:
a)ポリアミン、
b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、
c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、
d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、
e)カルボン酸アミン、
f)無機アンモニウム塩、
g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、
h)核酸に結合する抗生物質、
i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、および
2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物
からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含み、
ここで、このような様式で産生された前記液体サンプル調製物が、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間である、溶解方法。
【請求項3】
前記溶解を、少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが、核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記溶解を、いくつかの所定の種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で行う、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが、核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記溶解を、前記生体サンプル中に含まれる本質的に全種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で行う、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の核酸またはタンパク質の固定のためのキャリア材料を溶解中に前記サンプル中に添加する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の核酸、特に、DNAおよび/またはRNAが前記ライセート中に含まれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1種またはそれを超える種のタンパク質が前記ライセート中に含まれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、さらなる溶解試薬として錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群の少なくとも1つの試薬を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶解が、機械的影響下および/または酵素的様式で起こる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルを、前記溶解前に、洗浄緩衝液、特に、低張洗浄緩衝液で洗浄する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
産生された前記ライセート中の窒素化合物の濃度が、0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜30mM、特に、0.001〜19mMおよび0.001〜15mMである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの核酸種が、DNA種またはRNA種である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
a)前記ポリアミンが、2〜6個のアミノ基を有する開鎖および環状のポリアミドを含む群から選択され、
b)前記アミノ酸が、αアミノ酸、特に、タンパク新生無極性および極性αアミノ酸からなる群、特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、グリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、およびトリプトファンからなる群から選択され、
c)前記複素環式化合物が、5員環もしくは6員環、またはアネレーテッド(anellated)5員環を有する6員環の群から選択され、ここで、前記5員環、6員環、および/またはアネレーテッド(anellated)5員環が、1〜3個の窒素原子を含み、各環員が、C1〜C5アルキル基、C(O)OH、−C(O)NH2、=O、−OH、=S、−SH、=NH、−NH2、C1〜C6−アルキル−O−、C1〜C6−アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノからなる群から選択され、ここで、前記アルキル基が、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基であり、F−、Cl−、Br−、またはJを含むことができ、前記複素環が、各5員環または6員環の基中にさらなるヘテロ原子として1つまたは複数のO原子またはS原子を含むことができ、前記複素環式化合物が、好ましくは、イミダゾール、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ピリミジン、ピリジン、2,3−ジメチルピラジン、チアゾール、2−アミノチアゾール、インダゾール、およびベンズイミダゾールからなる群から選択され、
d)R12NR3型のアミンであって、残りのR1、R2、およびR3が、HおよびC1〜C3アルキル基からなる群から互いに独立して選択され、
e)前記カルボン酸アミンが、構造X−C(=O)NH2を含み、ここで、Xは、−NH2、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール、好ましくは、フェニル、またはアミノ置換アリール、H2NC(=O)−Y−からなる群から選択され、ここで、Yは、−(CH2n型のアルキレン基であってよく、ここで、nは、0〜10、好ましくは、0〜5の範囲の整数であるか、Yは、C1〜C10アルケニレン基、好ましくは、C1〜C6アルケニレン基、またはアリール基であり、ここで、Xは、好ましくは、−NH2または2−アミノフェニルであり、
f)無機アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群から選択され、
g)アンモニウム基を含む分子内塩は、ベタイン、エクトイン、およびトリメチルアミンオキシドから選択され、
h)前記核酸に結合する抗生物質は、ジスタマイシン、特に、ジスタマイシンD、マイトマイシン、ノルフロキサシン、ストレプトゾシン、ドゥオカルマシン、アクチノマイシン、およびアミノグリコシドからなる群から選択され、
i)前記DNAの小さな空洞に結合する化合物は、チアゾトロプシン、トリイミダゾール、およびクロモマイシンからなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記窒素化合物が、
a)好ましくは、2〜6個のアミノ基を有する非分岐ポリアミン、特に、スペルミジンを含む群から選択されるポリアミン、
b)極性、アルカリ性、および酸性のアミノ酸、特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、または
c)イミダゾールおよび2,3−ジメチルピラジン、ピリミジン、およびグアニンから選択される複素環式化合物
の群から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
サンプル中の少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を検出するための分析方法であって、
A)請求項1〜15に記載の溶解方法によるライセートの産生、
B)少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質の検出に適切な反応または反応系列でのライセートの使用
を含む、分析方法。
【請求項17】
サンプル調製物中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種数の減少および/またはサンプル調製物からの分解させる物質の除去もしくは不活化のための検出反応前に、さらなる方法工程を行うことなく前記ライセートを直接使用する、請求項16に記載の分析方法。
【請求項18】
少なくとも1つの核酸の検出に適切な前記反応または反応系列が、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、またはオリゴヌクレオチドとプローブとのハイブリッド形成の群、核酸の酵素的修飾または重合、特に、配列決定反応、in−vitro転写、制限エンドヌクレアーゼ分断の群、増幅反応、特に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR、TMA(転写媒介増幅)、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、およびローリング転写増幅の群から選択される、請求項16または17に記載の分析方法。
【請求項19】
少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な前記反応または反応系列が、タンパク質結合反応、特に、タンパク質認識、特に、他のタンパク質によるタンパク質の認識、タンパク質、抗体、アプタマー、リガンド、核酸(特に、ウェスタンブロッティング)、または他の物質(グルタチオンおよびNADなど)の酵素活性に基づいた反応の群から選択されるか、タンパク質の修飾またはプロセシング、特に、(脱)リン酸化、(脱)グリコシル化、およびプロテアーゼによる分断の群から選択される、請求項16または17に記載の分析方法。
【請求項20】
核酸および/またはタンパク質を安定化する方法であって、
A)少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記液体サンプル調製物が、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間であること、ここで、前記組成物が、以下:
a)ポリアミン、
b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、
c)窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、
d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、
e)カルボン酸アミン、
f)無機アンモニウム塩、
g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、
h)核酸に結合する抗生物質、
i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、および
2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物
からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むこと
を含む、安定化する方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の核酸またはタンパク質を、窒素結合前、窒素結合中、または窒素結合後にキャリア材料に固定化する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式で前記サンプル調製物を生成する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルは、液体サンプル調製物の産生のために組成物と接触させる前に溶解に供し、場合により、さらなる精製工程に供する生体サンプルである、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプルは、ケーシング中に少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を含む生体サンプルであり、前記サンプルを、液体または固体の組成物と接触させてライセートを産生する、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルは核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記サンプル調製物の生成または溶解を、いくつかの所定の種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で行う、請求項20〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記サンプルは核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記サンプル調製物の生成または溶解を、前記サンプル中に含まれる本質的に全種の核酸および/またはタンパク質をライセート中に溶解および/または懸濁または固定するような様式で行う、請求項20〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記DNAおよび/またはRNAを、前記サンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定する、請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1種のタンパク質を、前記サンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定する、請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、さらなる溶解試薬として錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群の少なくとも1つの試薬を含む、請求項20〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
記溶解が、機械的影響下および/または酵素的様式で起こる、請求項20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記サンプルを、前記溶解前に、洗浄緩衝液、好ましくは、低張洗浄緩衝液で洗浄する、請求項20〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
産生されたサンプル調製物またはライセート中の前記窒素化合物の濃度が、0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜30mM、特に、0.001〜19mMまたは0.001〜15mMである、請求項20〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
a)前記ポリアミンが、2〜6個のアミノ基を有する開鎖および環状のポリアミンを含む群から選択され、
b)前記アミノ酸が、αアミノ酸、特に、タンパク新生無極性および極性αアミノ酸からなる群、特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、グリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、およびトリプトファンからなる群から選択され、
c)前記複素環式化合物が、5員環もしくは6員環、またはアネレーテッド(anellated)5員環を有する6員環の群から選択され、ここで、前記5員環、6員環、および/またはアネレーテッド(anellated)5員環が、1〜3個の窒素原子を含み、各環員が、C1〜C5アルキル基、C(O)OH、−C(O)NH2、=O、−OH、=S、−SH、=NH、−NH2、C1〜C6−アルキル−O−、C1〜C6−アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノからなる群から選択され置換基であり、ここで、前記アルキル基が、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基であり、F−、Cl−、Br−、またはJを含むことができ、前記複素環が、各5員環または6員環の基中にさらなるヘテロ原子として1つまたは複数のO原子またはS原子を含むことができ、前記複素環式化合物が、好ましくは、イミダゾール、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ピリミジン、ピリジン、2,3−ジメチルピラジン、チアゾール、2−アミノチアゾール、インダゾール、およびベンズイミダゾールからなる群から選択され、
d)R12NR3型のアミン中の残りのR1、R2、およびR3が、HおよびC1〜C3アルキル基からなる群から互いに独立して選択され、
e)前記カルボン酸アミンが、構造X−C(=O)NH2を含み、ここで、Xは、−NH2、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール、好ましくは、フェニル、またはアミノ置換アリール、H2NC(=O)−Y−からなる群から選択され、ここで、Yは、−(CH2n型のアルキレン基であってよく、ここで、nは、0〜10、好ましくは、0〜5の範囲の整数であるか、Yは、C1〜C10アルケニレン基、好ましくは、C1〜C6アルケニレン基、またはアリール基であり、ここで、Xは、好ましくは、−NH2または2−アミノフェニルであり、
f)無機アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群から選択され、
g)アンモニウム基を含む分子内塩は、ベタイン、エクトイン、およびトリメチルアミンオキシドから選択され、
h)前記核酸に結合する抗生物質は、ジスタマイシン、特に、ジスタマイシンD、マイトマイシン、ノルフロキサシン、ストレプトゾシン、ドゥオカルマシン、アクチノマイシン、およびアミノグリコシドからなる群から選択され、
i)前記DNAの小さな空洞に結合する化合物は、チアゾトロプシン、トリイミダゾール、およびクロモマイシンからなる群から選択される、請求項20〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記窒素化合物が、
a)好ましくは、2〜6個のアミノ基を有する非分岐ポリアミン、特に、スペルミジンを含む群から選択されるポリアミン、
b)極性、アルカリ性、および酸性のアミノ酸、特に、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、
c)イミダゾールおよび2,3−ジメチルピラジン、ピリミジン、およびグアニンから選択される複素環式化合物
の群から選択される、請求項20〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
サンプル中の1種または複数の種の核酸および/またはタンパク質を検出するための分析方法であって、
a)少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を含むサンプル調製物またはライセートを準備する工程と、前記少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を、請求項20〜34のいずれか1項に記載の方法を使用して安定化すること、および
b)少なくとも1つの核酸および/または少なくとも1つのタンパク質の検出のための反応または反応系列でサンプル調製物またはライセートを使用する工程と
を含む、分析方法。
【請求項36】
サンプル調製物中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種数の減少および/またはサンプル調製物からの核酸および/またはタンパク質を分解する物質の除去もしくは不活化のために、さらなる方法工程を行うことなく前記サンプル調製物またはライセートを直接使用する、請求項35に記載の分析方法。
【請求項37】
少なくとも1つの核酸の検出に適切な前記反応または反応系列が、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、またはオリゴヌクレオチドとプローブとのハイブリッド形成の群、核酸の酵素的修飾または重合、特に、配列決定反応、in−vitro転写、制限エンドヌクレアーゼ分断の群、増幅反応、特に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR(逆転写ポリメラーゼ鎖反応)、リアルタイムRT−PCR、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR、TMA(転写媒介増幅)、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、およびローリング転写増幅の群から選択される、請求項35または36に記載の分析方法。
【請求項38】
前記サンプル調製物またはライセート中に含まれる核酸種がRNAであり、工程b)では、前記反応または反応系列は、RT−PCR、好ましくは、リアルタイムRT−PCRである、請求項35〜37のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項39】
少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な前記反応または反応系列が、タンパク質結合反応、特に、タンパク質認識、特に、他のタンパク質によるタンパク質の認識、タンパク質、抗体、アプタマー、リガンド、核酸(特に、ウェスタンブロッティング)、または他の物質(グルタチオンおよびNADなど)の酵素活性に基づいた反応の群から選択されるか、タンパク質の修飾またはプロセシング、特に、(脱)リン酸化、(脱)グリコシル化、およびプロテアーゼによる分断の群から選択される、請求項35または36に記載の分析方法。
【請求項40】
前記タンパク質を、抗体および/またはアプタマーによって認識する、請求項39に記載の分析方法。
【請求項41】
少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質ならびに少なくとも1つの阻害物質を含むサンプルの阻害効果を減少させる方法であって、以下の工程:
A)少なくとも1種の核酸および/または1種のタンパク質および少なくとも1つの阻害物質を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記液体サンプル調製物が、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間であること、ここで、前記組成物が、以下:
a)ポリアミン、
b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、
c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、
d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、
e)カルボン酸アミン、
f)無機アンモニウム塩、
g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、
h)核酸に結合する抗生物質、
i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、および
2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物
からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むこと
を含み、ここで、液体サンプル調製物中の阻害物質の阻害効果を減少させるように前記サンプルに添加する窒素化合物の量を選択する、阻害効果を減少させる方法。
【請求項42】
前記サンプルは、液体サンプル調製物の組成物との接触前に溶解に供し、場合により、さらなる精製工程に供する生体サンプルである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1種の核酸またはタンパク質を、窒素化合物の添加前または添加中にキャリア材料に固定化する、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種の核酸および/またはタンパク質を液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式で前記サンプル調製物を生成する、請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
前記サンプルは、ケーシング中に少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を含む生体サンプルであり、ライセート生成のための前記サンプルを、ライセート生成のための液体または固体の組成物と接触させる、請求項41〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記サンプルは核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記溶解を、いくつかの所定の種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で行う、請求項41または45に記載の方法。
【請求項47】
前記サンプルは核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記サンプル調製物の生成または溶解を、前記サンプル調製物またはライセート中に含まれる本質的に全種の核酸および/またはタンパク質を前記サンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定するような様式で行う、請求項41〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1種のDNAおよび/またはRNAを、前記サンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定する、請求項41または47に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1種のタンパク質を、前記サンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定する、請求項41または48に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が、さらなる溶解試薬として錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群の少なくとも1つの試薬を含む、請求項41〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記溶解が、機械的影響下または酵素的様式で起こる、請求項41〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記サンプルを、前記溶解前に、洗浄緩衝液、好ましくは、低張洗浄緩衝液で洗浄する、請求項41〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
産生されたサンプル調製物またはライセート中の前記窒素化合物の濃度が、0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜30mM、特に、0.001〜19mMまたは0.001〜15mMである、請求項41〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つの核酸種が、DNA種、特に、gDNA種および/またはRNA種である、請求項41〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
a)前記ポリアミンが、2〜6個のアミノ基を有する開鎖および環状のポリアミドを含む群から選択され、
b)前記アミノ酸が、αアミノ酸、特に、タンパク新生無極性および極性αアミノ酸からなる群、特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、グリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、およびトリプトファンからなる群から選択され、
c)前記複素環式化合物が、5員環もしくは6員環、またはアネレーテッド(anellated)5員環を有する6員環の群から選択され、ここで、前記5員環、6員環、および/またはアネレーテッド(anellated)5員環が、1〜3個の窒素原子を含み、各環員が、C1〜C5アルキル基、C(O)OH、−C(O)NH2、=O、−OH、=S、−SH、=NH、−NH2、C1〜C6−アルキル−O−、C1〜C6−アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノからなる群から選択され、ここで、前記アルキル基が、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基であり、F−、Cl−、Br−、またはJを含むことができ、前記複素環が、各5員環または6員環の基中にさらなるヘテロ原子として1つまたは複数のO原子またはS原子を含むことができ、前記複素環式化合物が、好ましくは、イミダゾール、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ピリミジン、ピリジン、2,3−ジメチルピラジン、チアゾール、2−アミノチアゾール、インダゾール、およびベンズイミダゾールからなる群から選択され、
d)R12NR3型のアミン中の残りのR1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択され、同時にHではないこと、
e)前記カルボン酸アミンが、構造X−C(=O)NH2を含み、ここで、Xは、−NH2、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール、好ましくは、フェニル、またはアミノ置換アリール、H2NC(=O)−Y−からなる群から選択され、ここで、Yは、−(CH2n型のアルキレン基であってよく、ここで、nは、0〜10、好ましくは、0〜5の範囲の整数であるか、Yは、C1〜C10アルケニレン基、好ましくは、C1〜C6アルケニレン基、またはアリール基であり、ここで、Xは、好ましくは、−NH2または2−アミノフェニルであり、
f)無機アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群から選択され、
g)アンモニウム基を含む分子内塩は、ベタイン、エクトイン、およびトリメチルアミンオキシドから選択され、
h)前記核酸に結合する抗生物質は、ジスタマイシン、特に、ジスタマイシンD、マイトマイシン、ノルフロキサシン、ストレプトゾシン、ドゥオカルマシン、アクチノマイシン、およびアミノグリコシドからなる群から選択され、
i)前記DNAの小さな空洞に結合する化合物は、チアゾトロプシン、トリイミダゾール、およびクロモマイシンからなる群から選択される、請求項41〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記窒素化合物が、
a)好ましくは、2〜6個のアミノ基を有する非分岐ポリアミン、特に、スペルミジンを含む群から選択されるポリアミン、
b)極性、アルカリ性、および酸性のアミノ酸、特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、
c)イミダゾールおよび2,3−ジメチルピラジン、ピリミジン、およびグアニンの群から選択される複素環式化合物、または
h)ジスタマイシン、特に、ジスタマイシンD、マイトマイシン、ノルフロキサシン、ストレプトゾシン、ドゥオカルマシン、アクチノマイシン、およびアミノグリコシドからなる群から選択される核酸に結合する抗生物質
の群から選択される、請求項41〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
サンプル中の1種または複数の種の核酸および/またはタンパク質を検出するための分析方法であって、
a)少なくとも1種の核酸および/または少なくとも1種のタンパク質を含むサンプル調製物またはライセートを準備する工程と、前記サンプル調製物またはライセートの阻害効果を、請求項41〜56のいずれか1項に記載の方法を使用して減少させること、
b)少なくとも1つの核酸または少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な反応または反応系列で前記サンプル調製物を使用する工程と
を含む、分析方法。
【請求項58】
サンプル調製物中に含まれる核酸種および/またはタンパク質種数の減少またはサンプル調製物からの核酸および/またはタンパク質材料の分解の不活化のために、さらなる方法工程を行うことなく前記工程b)において前記サンプル調製物またはライセートを直接使用する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
少なくとも1つの核酸または少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な前記反応または反応系列が、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、またはオリゴヌクレオチドとプローブとのハイブリッド形成の群、核酸の酵素的修飾または重合、特に、配列決定反応、in−vitro転写、制限エンドヌクレアーゼ分断の群、増幅反応、特に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR、TMA(転写媒介増幅)、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、およびローリング転写増幅の群から選択される、請求項57または58に記載の分析方法。
【請求項60】
少なくとも1つのタンパク質の検出に適切な前記反応または反応系列が、タンパク質結合反応、特に、タンパク質認識、特に、他のタンパク質によるタンパク質の認識、タンパク質、抗体、アプタマー、リガンド、核酸(特に、ウェスタンブロッティング)、または他の物質(グルタチオンおよびNADなど)の酵素活性に基づいた反応の群から選択されるか、タンパク質の修飾またはプロセシング、特に、(脱)リン酸化、(脱)グリコシル化、およびプロテアーゼによる分断の群から選択される、請求項57または58に記載の分析方法。
【請求項61】
前記サンプル調製物またはライセートが、gDNAに加えてRNAを含み、工程b)で、酵素を使用した核酸の反応系列を含む、請求項57〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記工程b)中の反応系列が、以下の工程:
b1)任意選択的なgDNAの酵素分解、およびそれに次ぐ
b2)RNA検出のための逆転写またはRT−PCR、特に、リアルタイムRT−PCR
を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記サンプル調製物またはライセートが、少なくとも1つの種のタンパク質を含み、前記工程b)中の反応または反応系列が、工程b1)少なくとも1つの抗体またはアプタマーによる結合を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1つの第1の核酸種および第1の種と異なる第2の核酸種を含むサンプル中の少なくとも1種の核酸の選択的マスキング方法であって、以下の工程:
A)少なくとも2つの異なる種の核酸を含むサンプルを準備する工程と、
B)前記サンプルを液体または固体の組成物と接触させて液体サンプル調製物を産生する工程と、ここで、前記液体サンプル調製物が、pH7.1とpH14との間、好ましくは、pH7.1とpH12との間、特に好ましくは、pH7.4とpH10との間であること、ここで、前記組成物が、以下:
a)ポリアミン、
b)アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチド、
c)これらの窒素化合物を含むホモポリマーまたはヘテロポリマーが含まれる窒素複素環化合物、
d)R12NR3型のアミンであって、R1、R2、およびR3が、H、C1〜C5アルキル基、およびアリール基からなる群から互いに独立して選択されること、ここで、R1、R2、およびR3が同時にHではないこと、
e)カルボン酸アミン、
f)無機アンモニウム塩、
g)アンモニウム基を含む分子内塩化合物、
h)核酸に結合する抗生物質、
i)DNAの小さな空洞に結合する化合物、および
2つまたはそれを超えるこれらの化合物の混合物
からなる群から選択される少なくとも1つの窒素化合物を含むこと
を含み、ここで、前記サンプル調製物を、前記第1および第2の核酸種を前記液体サンプル調製物中に溶解および/または懸濁するような様式で生成し、
ここで、前記窒素化合物の量を、同一の検出方法と比較して、前記第1の核酸種を、前記窒素化合物を前記サンプルに添加しない核酸の検出方法の改善された様式で検出することができる様式で前記第2の核酸種をマスキングするように選択する、方法。
【請求項65】
前記サンプルは、組成物との接触前に溶解に供し、場合により、さらなる精製工程に供する生体サンプルである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記サンプルは、ケーシング中に核酸種を含む生体サンプルであり、前記サンプルを、液体または固体の組成物と接触させてライセートを産生する、請求項64または65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記サンプルは核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記溶解を、いくつかの所定の種の核酸および/またはタンパク質を産生されたライセート中に溶解または懸濁するような様式で行う、請求項64または66に記載の方法。
【請求項68】
前記サンプルは核酸およびタンパク質からなる群由来の少なくとも2つの種を含み、前記溶解を、前記サンプル中に含まれる本質的に全種の核酸および/またはタンパク質をサンプル調製物またはライセート中に溶解および/または懸濁または固定するような様式で行う、請求項64〜67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
a)前記第1の核酸種がDNA種であり、前記第2の核酸種がRNA種またはPNA種であるか、
b)前記第1の核酸種がRNA種であり、前記第2の核酸種がDNA種またはPNA種であるか、
c)前記第1の核酸種がPNA種であり、前記第2の核酸種がDNA種またはRNA種であるか、
d)前記第1の核酸種および第2の核酸種がDNA種であるか、
e)前記第1の核酸種および第2の核酸種がRNA種であるか、
f)前記第1の核酸種および第2の核酸種がPNA種である、請求項64〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物が、さらなる溶解試薬として錯化剤、界面活性剤、容積制限物質、および/または溶媒の群の少なくとも1つの試薬を含む、請求項64〜69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記溶解が、機械的影響下または酵素的様式で起こる、請求項64〜70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記サンプルを、前記溶解前に、洗浄緩衝液、特に、低張洗浄緩衝液で洗浄する、請求項64〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
生成されたサンプル調製物またはライセート中の前記窒素化合物の濃度が、0.001mM〜1M、好ましくは、0.001〜100mM、特に好ましくは、0.001〜30mM、特に、0.001〜19mMまたは0.001〜15mMである、請求項64〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
a)前記ポリアミンが、2〜6個のアミノ基を有する開鎖および環状のポリアミドを含む群から選択され、
b)前記アミノ酸が、αアミノ酸、特に、タンパク新生無極性および極性αアミノ酸からなる群、特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、グリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、およびトリプトファンからなる群から選択され、
c)前記複素環式化合物が、5員環もしくは6員環、またはアネレーテッド(anellated)5員環を有する6員環の群から選択され、ここで、前記5員環、6員環、および/またはアネレーテッド(anellated)5員環が、1〜3個の窒素原子を含み、各環員が、C1〜C5アルキル基、C(O)OH、−C(O)NH2、=O、−OH、=S、−SH、=NH、−NH2、C1〜C6−アルキル−O−、C1〜C6−アルキル−S−、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノからなる群から選択され、ここで、前記アルキル基が、C1〜C5アルキル基、好ましくは、C1〜C3アルキル基であり、F−、Cl−、Br−、またはJを含むことができ、前記複素環が、各5員環または6員環の基中にさらなるヘテロ原子として1つまたは複数のO原子またはS原子を含むことができ、前記複素環式化合物が、好ましくは、イミダゾール、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ピリミジン、ピリジン、2,3−ジメチルピラジン、チアゾール、2−アミノチアゾール、インダゾール、およびベンズイミダゾールからなる群から選択され、
d)R12NR3型のアミンであって、残りのR1、R2、およびR3が、HおよびC1〜C3アルキル基からなる群から互いに独立して選択され、
e)前記カルボン酸アミンが、構造X−C(=O)NH2を含み、ここで、Xは、−NH2、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール、好ましくは、フェニル、またはアミノ置換アリール、H2NC(=O)−Y−からなる群から選択され、ここで、Yは、−(CH2n型のアルキレン基であってよく、ここで、nは、0〜10、好ましくは、0〜5の範囲の整数であるか、Yは、C1〜C10アルケニレン基、好ましくは、C1〜C6アルケニレン基、またはアリール基であり、ここで、Xは、好ましくは、−NH2または2−アミノフェニルであり、
f)無機アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群から選択され、
g)アンモニウム基を含む分子内塩は、ベタイン、エクトイン、およびトリメチルアミンオキシドから選択され、
h)前記核酸に結合する抗生物質は、ジスタマイシン、特に、ジスタマイシンD、マイトマイシン、ノルフロキサシン、ストレプトゾシン、ドゥオカルマシン、アクチノマイシン、およびアミノグリコシドからなる群から選択され、
i)前記DNAの小さな空洞に結合する化合物は、チアゾトロプシン、トリイミダゾール、およびクロモマイシンからなる群から選択される、請求項64〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記窒素化合物が、
a)好ましくは、2〜6個のアミノ基を有する非分岐ポリアミン、特に、スペルミジンを含む群から選択されるポリアミン、
b)極性、アルカリ性、および酸性のアミノ酸、特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、
c)イミダゾールおよび2,3−ジメチルピラジン、ピリミジン、およびグアニンから選択される複素環式化合物、または
h)ジスタマイシン、特に、ジスタマイシンD、マイトマイシン、ノルフロキサシン、ストレプトゾシン、ドゥオカルマシン、アクチノマイシン、およびアミノグリコシドからなる群から選択される核酸に結合する抗生物質
からなる群から選択される、請求項64〜74のいずれか1項に記載の差分分析方法。
【請求項76】
サンプル中の少なくとも1種または複数の種の核酸を検出するための差分分析方法であって、
a)少なくとも1種の核酸および第2の核酸種を含むサンプル調製物を準備する工程と、ここで、前記第1の核酸種が前記第2の核酸種と異なること、前記第1の核酸種を、請求項64〜75のいずれか1項に記載の方法を使用してマスキングすること、および
b)前記第2の核酸の検出に適切な反応または反応系列中で前記サンプル調製物またはライセートを使用する工程と
を含む、分析方法。
【請求項77】
サンプル調製物中に含まれる核酸種数の減少および/または核酸分解する材料の除去または不活化のために、さらなる方法工程を行うことなく工程b)を行う、請求項76に記載の差分分析方法。
【請求項78】
さらなる調製工程を使用することなく第2の核酸を検出するために、反応または反応系列で前記サンプル調製物またはライセートを直接使用する、請求項76または77に記載の差分分析方法。
【請求項79】
少なくとも第2の核酸の検出に適切な前記反応または反応系列が、核酸結合反応、特に、核酸ハイブリッド形成、特に、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、またはオリゴヌクレオチドとプローブとのハイブリッド形成の群、核酸の酵素的修飾または重合、特に、配列決定反応、in−vitro転写、制限エンドヌクレアーゼ分断の群、増幅反応、特に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、リアルタイムPCR、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)、リアルタイムRT−PCR、NASBA(核酸配列ベースの増幅)、3SR(配列持続自己複製)、2SR、TMA(転写媒介増幅)、MDA(多置換増幅)、ローリングサークル増幅、およびローリング転写増幅の群から選択される、請求項76〜78のいずれか1項に記載の差分分析方法。
【請求項80】
前記第2の核酸種の検出のために工程b)で使用される反応または反応系列は、PCRまたはRT−PCR、好ましくは、リアルタイムPCRまたはリアルタイムRT−PCRである、請求項76〜79のいずれか1項に記載の差分分析方法。
【請求項81】
サンプル調製物またはライセート中で、前記第1の核酸種がgDNAであり、前記第2の核酸種がRNAであり、工程b)では、前記反応または反応系列は、RT−PCR、好ましくは、リアルタイムRT−PCRである、請求項76〜80のいずれか1項に記載の差分分析方法。
【請求項82】
前記窒素化合物は、請求項63、73、および74で定義したポリアミン、複素環、アミノ酸、カルボン酸アミド、およびアンモニウム化合物の群から選択され、好ましくは、スペルミジン、硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、グリシン、2,3−ジメチルピラジン、ベンズイミダゾール、イミダゾール、アルギニン、ヒスチジン、および尿素からなる群から選択される、請求項81に記載の差分分析方法。
【請求項83】
サンプル調製物またはライセート中で、前記第1の核酸種がRNAであり、前記第2の核酸種がDNA、好ましくはgDNAであり、工程b)では、前記反応または反応系列は、PCR、好ましくは、リアルタイムPCRである、請求項76〜80のいずれか1項に記載の差分分析方法。
【請求項84】
前記窒素化合物が、請求項1、10、および11で定義した複素環、アミノ酸、およびアンモニウム化合物の群から選択され、好ましくは、プロリン、インダゾール、および硫酸アンモニウムからなる群から選択される、請求項83に記載の差分分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−537677(P2008−537677A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503434(P2008−503434)
【出願日】平成18年4月1日(2006.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002961
【国際公開番号】WO2006/103094
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】