説明

生体利用性が強化されている新規セフィキシム医薬製剤

20μと120μとの間の平均粒径を有するセフィキシムを含み、セフィキシム三水和物の懸濁液との生物学的同等性を示す咀嚼錠を提供する。上記咀嚼錠を調製する方法は、所望により前記セフィキシム粒子の平均粒径が20μと120μとの間になるようにセフィキシムを微粒子化する工程と、他の賦形剤と混合する工程と、ロール圧延の工程と、細粒に粉砕する工程と、混合を行って第2混合物を形成させる工程と、第2混合物を圧縮して錠剤を形成させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セフィキシムを含む新規な医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セフィキシムは、経口投与用の半合成セファロスポリン抗生物質である。これは藤沢薬品工業株式会社によって米国特許第4409214号にて最初に開示された。これは、様々なグラム陽性生物およびグラム陰性生物によって惹起される感染症、主として、大腸菌(E.coli)およびプロテウス・ミラビリス(P.mirabilis)によって惹起される無併発性尿路感染、インフルエンザ菌(H.influenzae)、モラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis)、および化膿性レンサ球菌(S.pyogenes)によって惹起される中耳炎、ならびに、肺炎レンサ球菌S.pneumoniae)およびインフルエンザ菌(H.influenzae)によって惹起される急性気管支炎および慢性気管支炎の増悪の治療に適用される。セフィキシムは、淋菌(N.gonorrhea)によって惹起される無併発性淋疾にも適用されている。セフィキシムは、小児科での使用に最も多く処方される薬物の1つである。
【0003】
セフィキシムは、現在、多くの異なった剤形、例えば経口用懸濁液および錠剤で利用可能である。成人患者および小児科患者に、様々な製剤および様々な量のセフィキシムが、例えば、200mgおよび400mgセフィキシム三水和物を含む錠剤として、そして、100mg/5mlセフィキシム三水和物を含む経口懸濁液として提供されている。
【0004】
生体利用性の観点からは、ベータラクタム抗生物質などの難溶性薬物の投与の好ましい形態は水性懸濁液である。しかし、この形態の投与には制限が伴う。例えば、「Suprax」の製品添付書で言及されている通り、セフィキシムは、経口投与された場合、食物と共に、あるいは食物なしで投与された場合、約40%〜50%吸収される。一方、経口懸濁剤は、通常の錠剤より約25%から50%高い平均ピーク濃度を生じる。正常成人ボランティアで試験した場合、100から400mgを投与した後の時間対濃度曲線下の面積は、経口懸濁剤を用いると、通常の錠剤を用いるよりも約10%から25%大きい。したがって、投薬量強度が同じ場合、セフィキシム錠剤は、懸濁液と生物学的に同等でない。懸濁液は、セフィキシムの投与様式として、特に小児への投与の場合、一般的なものであるが、それらは、貯蔵有効期間が短いことや、用量測定が正確でないことなど、他の欠点を有する。そのような多くの薬物が苦味を有することも欠点である。容器の嵩張る性質も運搬および貯蔵の容易さを妨げることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記に詳述した懸濁液製剤の欠点をもたないセフィキシム製剤を開発する必要性が存在する。
【0006】
錠剤およびカプセル剤など、嚥下される固形剤形は、正確な用量を提供し、味の問題を回避し、さらに、より携帯しやすいものであるが、それらは、胃腸管内で崩壊しなければならず、そして薬物は、その後それが吸収可能となる前に溶解しなければならないので、吸収が懸濁液より遅い傾向があり、完全には行われないことがある。これは、前に指摘した生物学的同等性の問題へと導く。また、患者の中には、錠剤およびカプセル剤を嚥下するのが困難な患者もおり、嚥下可能であるサイズに対して、したがって、用量に対して、実際的な制限が存在する。これは、老人患者および子供に特に妥当する。
【0007】
したがって、発明者らの挑戦は、セフィキシムを含む懸濁液剤形と同様の生体利用性を有するが、懸濁液に伴う欠点をもたないであろう、セフィキシムを含む剤形を処方することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚いたことに、20μと120μとの間の平均粒径を有するセフィキシム三水和物粒子を含む医薬組成物はより優れた生体利用性を示し、セフィキシム三水和物を含む懸濁液製剤と生物学的に同等であることが見出された。したがって、本発明は、その製剤が、セフィキシム三水和物を含む既に市販されている経口懸濁剤製剤と生物学的に同等になるように、Malvern光散乱によって測定した際に20μと120μとの間の平均粒径を有するセフィキシム三水和物粒子と、医薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。本発明は、咀嚼錠基剤、甘味剤、および香料をさらに含み、セフィキシムの平均粒径が20μと120μとの間である、セフィキシムの咀嚼錠製剤を提供する。
【0009】
本発明は、20μと120μとの間の平均粒径を有するセフィキシム三水和物粒子を含む咀嚼錠を提供する。
【0010】
セフィキシムという用語は、単独で使用される場合でも三水和物を指し、これらの用語は、本発明の目的では同様の意味で使用される。
【0011】
この錠剤は、様々な強度のセフィキシム、すなわち、セフィキシム三水和物として100、150、200、および300mgのセフィキシムで提供される。
【0012】
セフィキシム粒子が20μと120μとの間の平均粒径を有することが好ましい。本明細書で使用される場合、「20μと120μとの間の平均粒径」という用語は、20μと120μとの間のd50値を有するセフィキシム粒子を意味する。dという表記法は、X%の粒子が指定された直径Dより短い直径を有することを意味するということが知られている。したがって、例えば、セフィキシムの特定の試料に関して20μのd50は、前記試料中のセフィキシム粒子の50%が20μより短い直径を有することを意味する。
【0013】
「粒子」という用語は、その粒子が単独で存在しているか、あるいは塊になっているかに関わらずに、個別の粒子を指す。したがって、セフィキシムを含む組成物は、本明細書で指定されているサイズ制限である120μよりはるかに大きな塊を含有している可能性がある。しかし、主要製剤原料、すなわち、その塊を構成するセフィキシム三水和物の平均粒径が個別に20μと120μとの間にある場合には、その塊自体が、本明細書に定義されている粒径制限を満たしているとされ、その組成物は本発明に包含される。
【0014】
セフィキシムの前記粒径制限は、当業者に知られているサイズ縮小技術、例えば、微粉化、製粉等のいずれでなされてもよい。
【0015】
望ましい剤形では、セフィキシム三水和物が、重量で錠剤の約10%から約50%までの間で存在する。
【0016】
本発明に従った咀嚼錠基剤は、当技術分野で公知のものから選択することができる。例えば、それは、キシリトール、マンニトール、およびソルビトールを含む群から選択された1つまたは複数のものである。それは、重量で錠剤の約25%から約75%までの間で存在する。
【0017】
咀嚼錠基剤となる賦形剤に加えて、本発明に従った咀嚼錠は、所望によりさらに別の賦形剤、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、および着香料を含んでもよい。
【0018】
結合剤は、重量で錠剤の1%から5%までの間で存在する。代表的な結合剤には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン等が含まれる。
【0019】
崩壊剤は、重量で錠剤の1%から17%までの間で存在する。代表的な崩壊剤には、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプンおよび乾燥デンプンなどのデンプン、クロスカルメローセナトナトリウム、ならびに、微結晶セルロース、超微粒セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース産物が含まれ、これらが単独で、あるいは混合されて使用される。
【0020】
滑沢剤は、重量で錠剤の約0.25%から約6%までの間で存在する。滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素等が含まれる。
【0021】
甘味剤は、糖などの天然甘味料、およびナトリウムサッカリンまたはアスパルテームなどの人工甘味剤の中から選択される。
【0022】
着香料には、果実香料が含まれ、それらの果実香料は天然のものでも、合成のものでもよい。
【0023】
本発明の錠剤は、従来の技法、例えば、湿式造粒法、圧縮法、または直接圧縮法で調製することができる。ある1つの方法では、微粉化セフィキシム、マンニトール、および約1/3量のステアリン酸マグネシウムを含む第1混合物から、ローラー圧延と、その後の粉砕とによって細粒を調製する。その後、この細粒を、残りの成分および残りのステアリン酸マグネシウムと混合して、第2混合物を形成させ、その後、これを錠剤に圧縮する。
【0024】
本発明を、以下の実施例で例示する。
【実施例1】
【0025】
【表1】

【0026】
簡潔な製造方法:セフィキシム(微粉、20μと120μとの間のd50)を、適切な口径の篩で篩い分けた。他の賦形剤も篩分工程に付した。部分量のステアリン酸マグネシウムと共にセフィキシムおよびマンニトールを混合し、圧縮して薄片を得た。これらの薄片を篩い分け、粉砕して細粉を得た。この細粉を他の賦形剤と混合し、滑沢剤を添加し、圧縮して錠剤を得た。
【実施例2】
【0027】
【表2】

【0028】
簡潔な製造方法:実施例1に詳述したのと同じ方法を用いた。
【実施例3】
【0029】
【表3】

【0030】
簡潔な製造方法:実施例1に詳述したのと同じ方法を用いた。
【実施例4】
【0031】
【表4】

【0032】
簡潔な製造方法:実施例1に詳述したのと同じ方法を用いた。
【実施例5】
【0033】
【表5】

【0034】
簡潔な製造方法:実施例1に詳述したのと同じ方法を用いた。
【0035】
(生物学的同等性試験)
生物学的同等性試験は、市販されている経口懸濁剤「Suprax」に対して、120μより大きな平均粒径を有するセフィキシムを含む錠剤と、実施例1で調製された20μと120μとの間の平均粒径を有するセフィキシムを含む錠剤とを使用し、6人の健常ボランティアを用いて行った。この試験では、試験産物および対照産物で得られたAUCおよびCmaxに関してモニターした。AUCは、横座標(X軸)の時間に対する、縦座標(Y軸)のセフィキシム血清中濃度のプロットに関するものである。通常、AUCの値は、集団内のすべての対象から得られた多数の値を示し、したがって、集団全体にわたって平均した平均値である。Cmaxは、時間(X軸)に対するセフィキシム血清レベル濃度(Y軸)のプロットにおける観測上の最大値であり、これも同様に平均値である。
【0036】
市販されている懸濁液製剤「Suprax」に対する、120μより大きな平均粒径を有するセフィキシムを含む咀嚼錠の生物学的同等性データを下記表1に示す。
【0037】
市販されている懸濁液製剤「Suprax」に対する、20μと120μとの間の平均粒径を有するセフィキシムを含む咀嚼錠の生物学的同等性データを下記表2に示す。
【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
上記表1のデータに見ることができるように、セフィキシムの粒径が120μより大きい場合には、懸濁液との比較における、咀嚼錠のAUCのT/R比は68%にすぎなかった。これは、懸濁液製剤と比較して、その生体利用性が約30%少ないことを示す。意外にも、これとは対照的に、20μと120μとの間の平均粒径を有するセフィキシムを含む同様の製剤は、約100%の、AUCのT/R比を与えた。これは、この場合に懸濁液製剤の生体利用性に等しい生体利用性を咀嚼錠が有したことを示す。両方のケースで得られたCmaxの評価を行った際にも、同様の傾向が見られた。
それに関して独占的権利および特権を主張する本発明の実施形態を、添付の特許請求の範囲に定義する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セフィキシムを含む医薬組成物であって、該セフィキシムが20μと120μとの間の平均粒径を有し、セフィキシム三水和物の懸濁液との生物学的同等性を示す、医薬組成物。
【請求項2】
咀嚼錠基剤を含み、医薬上許容される1つまたは複数の賦形剤を含んでいてもよい咀嚼錠である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
三水和物として、約50から約300mgまでのセフィキシムを含む、請求項2記載の咀嚼錠。
【請求項4】
セフィキシム三水和物が、錠剤の約10重量%から約50重量%までの間で存在している、請求項2記載の咀嚼錠。
【請求項5】
セフィキシム三水和物が、錠剤の約20重量%から約40重量%までの間で存在している、請求項2記載の咀嚼錠。
【請求項6】
咀嚼錠基剤が、マンニトール、キシリトール、ソルビトール等からなる群から選択された1つまたは複数の基剤である、請求項2記載の咀嚼錠。
【請求項7】
咀嚼錠基剤がマンニトールである、請求項6記載の咀嚼錠。
【請求項8】
マンニトールが、錠剤の約30重量%から約70重量%までの間で存在している、請求項7記載の咀嚼錠。
【請求項9】
マンニトールが、錠剤の約40重量%から約60重量%までの間で存在している、請求項8記載の咀嚼錠。
【請求項10】
結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、および着香料の中から選択された賦形剤をさらに含む、請求項2記載の咀嚼錠。
【請求項11】
結合剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン等からなる群から選択された1つまたは複数で存在している、請求項10記載の咀嚼錠。
【請求項12】
結合剤が錠剤の1重量%から5重量%までの間で存在している、請求項11記載の咀嚼錠。
【請求項13】
結合剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項12記載の咀嚼錠。
【請求項14】
崩壊剤が、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプンおよび乾燥デンプンなどのデンプン、クロスカルメロースナトリウム、ならびに、微結晶セルロース、超微粒セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース産物からなる群から選択された1つまたは複数で存在している、請求項10記載の咀嚼錠。
【請求項15】
崩壊剤が錠剤の1重量%から17重量%までの間で存在している、請求項14記載の咀嚼錠。
【請求項16】
崩壊剤が、クロスポビドンと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとの組合せである、請求項15記載の咀嚼錠。
【請求項17】
コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数の滑沢剤が存在している、請求項10記載の咀嚼錠。
【請求項18】
滑沢剤が錠剤の0.25重量%から6重量%までの間で存在している、請求項17記載の咀嚼錠。
【請求項19】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムとコロイド状二酸化ケイ素との組合せである、請求項19記載の咀嚼錠。
【請求項20】
甘味剤が存在し、その甘味剤が天然甘味剤または人工甘味剤である、請求項10記載の咀嚼錠。
【請求項21】
天然甘味剤がショ糖である、請求項20記載の咀嚼錠。
【請求項22】
ショ糖がシュークロースである、請求項21記載の咀嚼錠。
【請求項23】
人工甘味剤がアスパルテームである、請求項20記載の咀嚼錠。
【請求項24】
セフィキシム粒子を含む固形経口剤形を調製する方法であって、セフィキシム粒子の平均粒径が20μと120μとの間になるようにセフィキシムを微粒子化してもよい工程と、他の賦形剤と混合する工程と、ロール圧延の工程と、細粒に粉砕する工程と、混合を行って第2混合物を形成させる工程と、第2混合物を圧縮して錠剤を形成させる工程とを含む方法。
【請求項25】
固形経口剤形と懸濁液との間の生物学的同等物を得る方法であって、粒子の平均粒径が20μと120μとの間になるように、セフィキシムの粒径を小さくすることからなる方法。
【請求項26】
セフィキシムを含む医薬組成物であって、該セフィキシムが20μと120μとの間の平均粒径を有し、該組成物がセフィキシムの懸濁液のAUCおよびCmaxと実質的に同等なAUCおよびCmaxをインビボにて示す、医薬組成物。
【請求項27】
セフィキシムを含む咀嚼錠であって、該セフィキシムが20μと120μとの間の平均粒径を有し、該咀嚼錠が、セフィキシムの懸濁液のAUCおよびCmaxと実質的に同等なAUCおよびCmaxをインビボにて示し、咀嚼錠基剤と、医薬上許容される1つまたは複数の賦形剤とをさらに含む、咀嚼錠。

【公表番号】特表2007−536378(P2007−536378A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512722(P2007−512722)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/IN2004/000128
【国際公開番号】WO2005/107703
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(502425916)ルピン・リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】LUPIN LIMITED
【Fターム(参考)】