説明

生体動態測定装置

【課題】従来の監視システムでは、外部との送受信を行うアンテナ部もICタグ(RFID)に含まれていることから、アンテナの大きさには限度があり、そのため、外部との通信可能な範囲も限られるため、通信距離を長く(広く)取ることが出来ない。
【解決手段】アンテナをICタグ内に搭載せず、ワンタッチ式バンドに実装することで、アンテナを大きく取ることが出来、その結果、少ない消費電力で送受信が可能であり、かつICタグにアンテナが搭載されているものに比べ、通信距離を長く(広く)取ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児やお年寄り、寝たきり患者の健康管理/監視ができる生体動態測定装置に関し、特に、予め所定時間の体温トレンドを記憶しておき、モニタする時は、測定部と本体部が分離され、体温及び体動・体位情報、発汗情報が無線で所定間隔で送信される生体動態測定装置に関する。また、必要に応じて、測定部により所定時間の体温測定値を記憶し、記憶された体温値を読取り、表示するようにした生体動態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報、行動情報を計測し、乳幼児の状態を推定し、乳幼児の異変に対して適切な対応がとれるようにする監視システムが提案されている(特許文献1:特開2004−181218号公報)。しかしながら、感染症等によるに急な体温変化が健常時とどのように異なるか判断するようなものではない。これを改善するシステムとして、生体信号の緊急度を判断し、アラームを発生させるシステムが提案されている(特許文献2:特許3661686号公報)。他にも体温について、大きな閾値40℃、34℃を設定し、それと比較することで、トレンド変化によりアラームを発生させるシステムが提案されている(特許文献3: 特開2007−229076号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−181218号公報
【特許文献2】特許3661686号公報
【特許文献3】特開2007−229076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の監視システムでは、外部との送受信を行うアンテナ部もICタグ(RFID)に含まれていることから、アンテナの大きさには限度があり、そのため、外部との通信可能な範囲も限られるため、通信距離を長く(広く)取ることが出来ないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、アンテナをICタグ内に搭載せず、ワンタッチ式バンドに実装することで、アンテナを大きく取ることが出来、その結果、少ない消費電力で送受信が可能であり、かつICタグにアンテナが搭載されているものに比べ、通信距離を長く(広く)取ることが可能であることを見出し本発明に至った。さらに、本発明によると、大きなアンテナと、小さな消費電力であるため、アンテナ及びICタグの発熱を、従来に比べ、低減できる効果を見出せた。
【0006】
上記の課題は以下の(1)から(8)の本発明により解決される。
【0007】
(1)ワンタッチ式係止部を有するバンドと、該バンドの内側に設けられた半導体温度センサと体動検出手段と湿度センサを含むRFIDと、該バンドに実装された所定以上の大きさのアンテナからなる生体動態測定部と、該半導体温度センサで測定された体温と該体動検出手段で測定された体動情報と該湿度センサで測定された発汗情報を無線で読取る読取部と、該体温と該体動情報と該発汗情報を表示する表示部を備えた本体部と、からなることを特徴とする生体動態測定装置である。このように、アンテナをICタグ(RFID)内に搭載せず、バンドに実装することで、アンテナを大きくとることが出来、結果、少ない消費電力で送受信が可能であり、かつICタグにアンテナが搭載されているものに比べ、通信距離を長く(広く)取ることが可能である。さらに、大きなアンテナと、小さな消費電力であるため、アンテナ及びICタグの発熱を、従来に比べ、低減できた。
【0008】
(2)前記ワンタッチ式係止部は、雄型面ファスナと雌型面ファスナであることを特徴とする上記(1)記載の生体動態測定装置である。このように、ワンタッチ式係止部が雄型面ファスナと雌型面ファスナであることで、装着を容易にするだけでなく、装着を確実なものにすることができる。
【0009】
(3)前記ワンタッチ式係止部は、バックルであることを特徴とする上記(1)記載の生体動態測定装置である。このように、ワンタッチ式係止部がバックルであることで、装着を容易にするだけでなく、装着を確実なものにすることができる。
【0010】
(4)前記体動検出手段は加速度センサであることを特徴とする上記(1)から(3)の何れかに記載の生体動態測定装置である。 このように、体動検出手段に加速度センサを用いることで、小型化・ICタグとの一体化が可能である。
【0011】
(5)前記バンドは可撓性を有するバンドであることを特徴とする上記(1)から(4)の何れかに記載の生体動態測定装置である。このように、バンドが可撓性を有するバンドであることで、装着を容易にするだけでなく、バンドの測定部位への密着性も向上することができる。
【0012】
(6)前記バンドは前記RFIDと前記アンテナの少なくとも一つと取外可能であることを特徴とする上記(1)から(5)の何れかに記載の生体動態測定装置である。このように、RFID(ICタグ)とアンテナを、バンドから取外可能にすることで、バンドの交換や、RFID(ICタグ)やアンテナの変更が可能である。
【0013】
(7)前記バンドは扇形状であることを特徴とする上記(1)から(6)の何れかに記載の生体動態測定装置である。このように、バンドが扇形状であることで、装着を容易にするだけでなく、バンドの測定部位への密着性も向上することができる。
【0014】
(8)前記RFIDはバンドギャップ電圧回路を含むことを特徴とする上記(1)から(7)の何れかに記載の生体動態測定装置である。このように、RFIDがバンドギャップ電圧回路を含むことで、従来の温度センサ(例えば、サーミスタ)に比べ、より高精度な体温計測が可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バンドにアンテナを大きく取ることが出来るので、消費電力が小さく、通信距離が比較的長くなり、また、消費電力が小さく、アンテナが大きいことから、アンテナ及びICタグの発熱を抑えることができ、さらに、構造が簡単で装着/取り外しが容易で、体温及び体動・体位情報、発汗情報を間歇的に測定でき、乳幼児やお年寄り、寝たきり患者の急な体温変化や異変にも介護者が速やかに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体動態測定部100と、乳幼児Pに装着した状 態の生体動態測定部100を示す図である。
【図2】アンテナ220とICタグ210とを備える生体動態測定部100の機能構 成を示すブロック図である。
【図3】本体部300の機能構成を示すブロック図である。
【図4】生体動態測定装置における体温測定処理の流れを示す図である。
【図5】半導体温度センサの特性を示す図である。
【図6】センサ部211の回路構成を示す図である。
【図7】回路部212の回路構成を示す図である。
【図8】信号処理部304における体温データ算出処理の内容を説明するための図で ある。
【図9】本発明の別の実施形態に係る生体動態測定部100を示す図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係る生体動態測定部100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1)
【0018】
図1は、本発明の一実施例を示し、乳幼児Pに装着した状態の生体動態測定部100を示している。なお、生体動態測定装置における動態というのは、体温と体動・体位情報、並びに発汗情報の変動のことを指している。図1に示す生体動態測定部100及び図3に示す本体部300により健康管理/監視ができる生体動態測定装置を構成している。病院等でも同様の携帯端末または据置型の端末を用いて乳幼児健康管理/監視装置が適用できる。図2は、アンテナ部220及び温度センサと体動検出手段(加速度センサ)と湿度センサを有するICタグ(RFID)210を備えた生体動態測定部100のブロック図である。本願発明は、実施例の乳幼児健康管理/監視装置に限られるものでなく、お年寄りや寝たきり患者の健康管理/監視装置など適宜変更が可能である。また、図3に示すように、本体部300に備えた外部通信部314から専用LAN、電話回線、インターネット等の情報通信ネットワーク(不図示)を介して、病院、主治医等のサイトと双方向の情報通信可能としてもよい。
【0019】
<生体動態測定装置(生体動態測定部100と本体部300)の具体的構成>
被検者である乳幼児Pは、ベッド上にオムツ(パンツ)Qをはいて横臥、仰臥等の状態でいる。乳幼児Pに対して、測定部位に装着できるバンド200と、温度センサと体動検出手段206と湿度センサ207を有するICタグ210とアンテナ220とからなる生体動態測定部100を身体の適所、この場合大腿部に装着して乳幼児Pの体温測定などを行なう。
【0020】
バンド200は、可撓性を有するバンドであり、可撓性を有する部位は肌と接触するので、絹、綿、麻、ナイロン、ポリエステルといった繊維や、人工皮革、不織布など衣類の素材に成り得る素材であることが好ましい。また、バンド200は、片面に雄型面ファスナ230が、もう一方の面に雌型面ファスナ240を有しており、雄型面ファスナ230と雌型面ファスナ240とを接着することで、バンド200は測定部位に巻きつけられる。つまり、雄型面ファスナ230と雌型面ファスナ240がワンタッチ式係止部の機能を果たしている。さらに、生体動態測定部100を広げるとバンド200が扇形状であることにより、上腕部や大腿部のように、テーパ形状である部位に対し、バンドを巻きつけたときの装着性が向上する。他にも、雄型面ファスナ230に摘み部やスリットなどを設け(不図示)、脱着を容易にしても良く、或いは雌型面ファスナ240のファスナ面を広く取ることで、バンドの巻く調節幅を大きく取れるようにしても良い。また、生体動態測定部100には温度センサ(感温部204)と体動検出手段206(加速度センサ)と湿度センサ207を有するICタグ210をバンド200の内側に設けてあり、アンテナ220も同様に設けてある。しかし、アンテナ220は、バンド内部に組み込まれていても、バンドの外側に設けていてもかまわない。また、ICタグ210の測定部位に対する接触をより確実にするため、バンド200の内側に有する測定部位との接触面は凸部を形成している。このとき、該接触面は、剛体であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのプラスチック材や、セラミックス、ステンレスなどの金属類が好ましい。上述の通り、バンド200の材料や形状などは、実施例に限られるものではなく、上腕部や大腿部など測定部位によって、適宜変更が可能である。
【0021】
本体部300には、体温や体動・体位情報、発汗情報などを表示する表示部313、ブザー等の報知手段316、無線によるICタグ読取部310、入力部315、記憶部312、マイクロコンピュータなどのコントロール部(CPU)311、i−モードによるインターネット等の情報通信ネットワーク(不図示)を介して通信を行なう外部通信部314を備えている。なお、コントロール部311は、コントロール部311により実行され、本体部全体の制御プログラムや各種データを記憶するROMと、ワークエリアとして各種データを一時的に記憶するRAMを備えている。
【0022】
また、予防接種(インフルエンザ、おたふくかぜ、ポリオ、百日咳、風疹、麻疹、結核等の予防接種)の情報、過去の投薬データ(薬剤名、投与量、投与日時などの情報:アレルギー反応を回避した投薬を行なうために必要)も、入力部315で入力し、記憶、表示できるようになっている。また、入力部315で入力項目を適宜選択して、体温、体重(投与量の決定に必要)、血圧、脈拍、血糖値等を入力し、記憶、表示できるようになっている。こうすることで、母子健康手帳としての機能を果たすことも可能である。また、病院等で使用する温度センサを有するICタグ210は、同時に体温情報の読取りが可能になる、アンチコリージョン型のICタグを用いることが好ましい。なお、本体部300の具体的な機能構成については、後述する。
【0023】
病院などにおいては、管理サイト/医療サイトを設け、サーバー(データ処理装置)を設置し、乳幼児PのIDと関連付けして、脈拍、呼吸、血圧、体温、体動、発汗、血中酸素飽和度、血糖等の生体情報のリアルタイムの測定データの収集、集計、データ分析等を行うようにしてもよい。こうすることで、感染症等による急激な体温の上昇、うつ伏せ寝、嘔吐等による窒息等での呼吸停止などに対しても異常をいち早く把握できる。また、担当医の机上にも管理パソコン等を設置し、担当医が随時、被検者(例えば乳幼児P)の身体状態を把握、監視するとともに、緊急時の被検者異常通報を受けたり、電話器により適宜看護婦の待機部屋に指示を出したり、ハンディ・ナースコールで連絡したりすることができるようにしてもよい。また、時計部(不図示)は電波受信により時刻補正ができる、電波時計機能を設けておくと時刻調整の必要がなくなり都合がよい。
【0024】
<生体動態測定部の機能構成>
次に、生体動態測定部100の機能構成について説明する。図2は、アンテナ220とICタグ(RFID)210とを備える生体動態測定部100の機能構成を示す図である。
【0025】
図2において、202は無線インターフェイスであり、整流回路や昇圧回路等を備える。無線インターフェイス202では、アンテナ220において生じた交流電圧を、所定の直流電圧に変換し、記憶部203及びマイクロコンピュータなどのコントロール部(CPU)205に供給する。なお、コントロール部205は、コントロール部205により実行され、生体動態測定部全体の制御プログラムや各種データを記憶するROMと、ワークエリアとして各種データを一時的に記憶するRAMを備えている。また、コントロール部205において取得された電圧データを各種情報とともに、所定形式のデータとして、アンテナ220を介して本体部300に送信する。
【0026】
203は記憶部であり、後述する感温部204の校正データや、ICタグ210固有の識別情報等を記憶する。そのため、体温情報も記憶部203に備えたEEPROMに記憶できるので、別のベッドや別の部屋に乳幼児Pを移し換えても継続して体温情報を記憶できる。このとき、体動・体位情報と発汗情報も体温情報と同様に記憶部203に備えたEEPROMに記憶させてもよい。また、間違った乳幼児P'(不図示)の情報を取得しないようにアンチコリージョン型とし、アンテナ220から出力される信号を暗号化処理可能にしてセキュリティ機能を持たせることもできる。
【0027】
204は感温部であり、温度センサを備えるセンサ部211と、センサ部211の出力を処理する回路部212とを備える。温度センサには半導体温度センサを用い、温度変化に対してほぼリニアにアナログ出力し、小型化・ICタグとの一体化が可能で、35〜42℃の間で温度分解能が0.01℃である。例えばC−MOS温度センサが好ましく用いられる。なお、センサ部211及び回路部212の回路構成の詳細は、後述する。
【0028】
206は体動検出手段であり、体動・体位情報を測定する体動検出手段206として、MEMS型の3軸加速度センサを用いることが好ましい。MEMS型の3軸加速度センサには、検知機構の違いで、ピエゾ抵抗型、静電容量型、熱検知型の3種類に分かれるが、どの検知機構を用いても構わない。また、体動検出手段206には、MEMS型の3軸加速度センサの他にも、体動・体位情報を得られれば良いので、3軸方向に3つ備えた傾斜センサやジャイロスコープを用いても良い。体動検出手段206で検出した体動・体位情報を、本体部300の表示部313で表示することで、体温情報との相関だけでなく、体温情報からでは確認できなかった、寝返りや咳による体動などが確認できるようになる。
【0029】
207は湿度センサであり、発汗情報を測定する湿度センサ207として、MEMS型の湿度センサを用いることが好ましく、高分子膜湿度センサやセラミック湿度センサ等が挙げられる。高分子膜湿度センサのなかでは、セルロース系の親水性高分子を乾湿材料が、吸着する水分に応じて静電容量が変化する性質を利用した、静電容量型の高分子膜湿度センサがさらに好ましく、またセラミック湿度センサのなかでは、MgCr−TiO系セラミックス、TiO−V系セラミックス等がさらに好ましい。
【0030】
体動検出手段206で検出した体動・体位情報と湿度センサ207で検出した発汗情報を、本体部300の表示部313で表示することで、体温情報と体動・体位情報、発汗情報の3種の相関だけでなく、体温情報だけでは確認できなかった、寝返りや咳による体動や、熱が下がる前の発汗(快復する予兆)、体調不良による発汗などが確認できるようになる。
【0031】
ICタグ210は、幅Wが5mm×5mm、厚さTが1.5mm程度の大きさである。なお、ICタグ210は、生体を通過可能な周波数の電磁波での通信(送受信)可能なものであれば、どのような周波数でもよいが、好ましくは13.56MHzの電磁波で送信可能になっている。
【0032】
また、アンテナ220は、バンド200に実装されるため、ICタグ内に組み込まれたアンテナに比べ、大きくとることが可能であるため、アンテナの形状は何でも良いが、円形、正方形、長方形などの形状をしていることが好ましい。さらに好ましくは、円形状の場合、直径Dが20mm〜40mm、厚さTが1mm程度の大きさであり、直方形の場合、長軸方向の長さをL1、短軸方向の長さをL2としたとき、L1が20mm、L2が40mm、厚さTが1mm程度の大きさである。なお、バンドを交換したいときや水気などでバンドの汚れを取り除きたいとき、またはICタグやアンテナを他のバンドへ入れ替え可能なように、バンド200に対して、ICタグ210とアンテナ220は、取り外し可能であってもかまわない。
【0033】
<本体部の機能構成>
次に、本体部300の機能構成について説明する。図3は、本体部300の機能構成を示す図である。
【0034】
図3において、310はICタグ読取部であり、アンテナ301、無線インターフェイス302、信号変換部303、信号処理部304と、を備える。
【0035】
アンテナ301は、生体動態測定部100のアンテナ220との間で磁気結合することで、ICタグ210に電源を供給したり、ICタグ210よりデータを受信したりする。
【0036】
無線インターフェイス302は、アンテナ301を介してICタグ210に電源を供給するために、アンテナ301に印加する電圧を制御したり、アンテナ301を介してICタグ210より受信したデータを信号変換部303に送信したりする。
【0037】
信号変換部303では、無線インターフェイス302より送信されたデータをデジタルデータに変換し、信号処理部304に送信する。
【0038】
信号処理部304では、信号変換部303より受信したデジタルデータを処理し、体温を算出する。具体的には、受信したデジタルデータに含まれる、電圧データと校正データとに基づいて体温データを算出する。また、算出した体温データを、受信したデジタルデータに含まれる識別情報とともにコントロール部311に送信する。
【0039】
コントロール部311では、無線インターフェイス302、信号変換部303、信号処理部304の動作を制御する。また、信号処理部304から送信された体温データを、識別情報とともに記憶部312に収納したり、表示部313に表示したりする。更に、記憶部312に収納された体温データを、識別情報とともに外部通信部314を介して、他の情報処理装置(外部通信部314を介して有線接続された他の情報処理装置)に送信したりする。他にも、体温測定における設定の指示入力を行なったり、条件を選択したりする入力部315と、ブザー、バイブレータ、光などで体温情報の異常や、測定終了などを知らせる報知手段316とを備えている。
【0040】
<体温情報に基づく通常の健康管理/監視機能>
次に体温情報に基づく通常の健康管理/監視機能について説明する。本願発明は、ここで説明する実施例に限られるものでなく適宜変更が可能である。
【0041】
乳幼児Pに感温部204(温度センサ)と体動検出手段206と湿度センサ207を有するICタグ(RFID)210を含む生体動態測定部100を、上述したように、乳幼児Pに対して、ICタグ210が接触するようにバンド200に設けたりして腕や大腿部など身体の適所に装着する。測定開始の時間のカウントを開始するか、入力部315などで測定開始時刻設定(時間設定)指示入力を行なうことにより、測定を開始する。体温情報は、入力部315で予め設定入力された時間条件、例えば感温部204を有するICタグ(RFID)210を含む生体動態測定部100を乳幼児Pに装着して測定開始指示入力を行なった時点、所定の温度上昇が確認できた時点等を基点として、例えば5分後にICタグ(RFID)210に対してICタグ読取部310から所定の周波数、例えば13.56MHzの電磁波を送信(この場合、送受信距離は、1cm〜10cm程度)し、その信号と同期して得られる温度センサの体温情報を読取る。次に、測定されたこれらの体温情報は、記憶部312に記憶される。この体温情報は閾値と比較される。例えば、体温の場合、上限値が37.5℃、下限値が35.5℃としている。この上限値/下限値は、前述した所定期間の体温トレンド情報に基づいたり、参考したりして使用者(母親、保護者等)が任意に設定入力し、また変更可能になっている。体温情報が異常(測定中の異常も含む)と判断されると、報知手段316によりアラームを発生させる。また、測定終了するとブザー、バイブレータ、光などの報知手段316により報知する。異常がある場合(例えば発熱時の基礎体温)は「発熱」と表示部313に表示させ、入力部315でその旨のメモ入力し、記憶部312に記憶させる。異常の場合、必要に応じてリセットし、測定開始のステップに戻り、再度体温測定を行なう。異常が無い場合は、測定された体温を記憶し、表示部313に表示させた後、動作を終了する。体温表示は、表示部313に測定年月日時とともに行なうことが好ましい。また、発熱時には、体温のトレンドの表示と同時に、本体部300と接続端子(外部通信部314)で接続したパルスオキシメータで測定した測定中の脈拍、血中酸素飽和度(SPO2)等と投薬データを入力し、重ねて表示すると、インフルエンザ、RS(Respiratory Syncytial)ウイルス等の感染症等による呼吸器系疾患が容易に把握できる。
【0042】
記憶部312に記憶された、体温、メモ入力、体重、身長等の情報は、表示部313に所定期間、例えば30日分表示される。特に、体重、身長の情報は標準値、下限値、上限値と比較して表示可能にしている。このため、成長度合いが一瞥でき、母子健康手帳としての機能も果たす。また、体動・体位情報及び発汗情報も体温情報などと同様に記憶部312に記憶され、表示部313に所定期間、例えば30日分表示されてもよい。それにより、体動・体位情報の場合、咳による発熱の予兆があったことや衰弱していく様子、また発汗情報の場合、発汗による体調不良の予兆や発汗による解熱の(快復していく)様子など、体温情報だけでは確認できなかったことが体動・体位情報や発汗情報に表れているため、確認することができる。
【0043】
このような情報は、乳幼児PのIDとともに、健康関連サービス業者のサーバーや主治医などの医療サイトのサーバーへ暗号化してインターネット、専用LAN等により送信し、必要に応じて主治医のコメント等のアドバイスを受けるようにすることができる。また、外部通信部314からUSBスティックにこれらの情報をダウンロードしてUSBスティックを主治医に持参するようにしてもよい。
【0044】
<生体動態測定装置における体温測定処理の流れ>
次に、生体動態測定装置における体温測定処理の流れについて説明する。図4は、生体動態測定装置における体温測定処理の流れを示す図である。
【0045】
図4に示すように、本体部300が起動した後に、本体部300を、生体動態測定部100の近傍に近づけると、所定の周波数、例えば13.56MHzの電磁波により、アンテナ301とアンテナ220との磁気結合により、本体部300から生体動態測定部100に対して電源が供給される。
【0046】
電源が供給された生体動態測定部100では、ICタグ210が起動し、生体動態測定部100が体温測定の精度に影響を与える状態になっているか否かを判定する。生体動態測定部100が体温測定の精度に影響を与える状態になっていると判定された場合には、ICタグ210では、以降の処理は行わない。この場合、本体部300では、電源供給を行ってから一定時間内に生体動態測定部100よりデータ送信がないと判断し、表示処理として表示部313にエラー表示を行う。このとき、エラー表示だけでなく、アラーム等の報知手段316により報知してもよい。
【0047】
一方、生体動態測定部100が体温測定の精度に影響を与える状態になっていないと判定された場合には、ICタグ210では処理を開始する。
【0048】
具体的には、予め設定された判定レンジ(詳細は後述)に切り替えた後、センサ部211内の半導体温度センサに電流を流し、バンドギャップ電圧を検出する。
【0049】
更に、回路部212が当該検出されたバンドギャップ電圧を処理し、コントロール部205では、電圧データを取得する。
【0050】
取得された電圧データは、記憶部203に記憶された校正データ及び識別情報とともに、本体部300に送信される。
【0051】
本体部300では、表示処理として生体動態測定部100より送信された電圧データ及び校正データに基づいて体温データを算出する。更に、算出された体温データを、識別情報と対応付けて記憶部312に記憶するとともに表示部313に表示する。なお、上述した「生体動態測定部100が体温測定の精度に影響を与える状態」とは、この場合、ICタグ210やアンテナ220の発熱により、体温測定の精度に影響を与える可能性が高い状態を指している。
【0052】
<半導体温度センサの説明>
次に、センサ部211に適応される一般的な半導体温度センサについて説明する。図5は、半導体温度センサの特性を示す図である。本実施形態において、センサ部211に適応される半導体温度センサは、P型半導体とN型半導体とが結合して構成され、直流電流を流した場合に温度に相関して結合部(ジャンクション)に生じる電圧(バンドギャップ電圧Vb)を検出するものである(図5の(a))。
【0053】
なお、半導体温度センサの場合、図5の(b)に示すように、バンドギャップ電圧Vbと温度とは、概ね−40℃〜+150℃の広範囲において線形性を有している。また、半導体温度センサは、サーミスタと比較して、経時変化に強く、かつノイズの影響を受けにくいといった利点も有している。
【0054】
<センサ部の回路構成>
次に、センサ部211の回路構成について説明する。図6は、図5の(a)に示す半導体温度センサを用いて構成されたセンサ部211の回路構成を示す図である。
【0055】
図6において、601は定電流回路であり、コントロール部205より供給される電流Vccに基づいて、各半導体温度センサに流す電流が均一になるように調整する。
【0056】
602は半導体温度センサであり、定電流回路601の下流側において、定電流回路601に対して直列に接続されている。なお、半導体温度センサ602は定電流回路601に対して複数接続されており、それぞれの半導体温度センサは、互いに並列接続される。
【0057】
このように、複数の半導体温度センサを並列接続したのは、半導体温度センサの個体差の影響を排除するためである。より高精度な体温測定を実現するためには、半導体温度センサの個体差の影響も無視することができず、センサ部211では、複数の半導体温度センサを並列に接続し平均値をとることで、個体差の影響を排除することとしている。
【0058】
このため、センサ部211からは、各半導体温度センサより出力された電圧Vb1、Vb2、・・・Vbnの平均値Vb_avgが出力される。
【0059】
なお、各半導体温度センサに電流を流すのは1回に限られず、複数回流すように構成してもよい。その場合、センサ部211からは、平均値Vb_avgが複数回出力されることとなる。
【0060】
<回路部の回路構成>
次に、回路部212の回路構成について説明する。図7は、回路部212の回路構成を示す図である。
【0061】
図7に示すように、回路部212は、比較・増幅器711とアナログスイッチ712とを介してA/Dコンバータ701に接続される系と、比較・増幅器721とアナログスイッチ722とを介してA/Dコンバータ701に接続される系の2系統から構成される。
【0062】
前者の系(第1の系)は、センサ部211より出力された電圧Vb_avgを、−40℃〜+150℃の測定レンジでA/Dコンバータ701に入力する。一方、後者の系(第2の系)は、センサ部211より出力された電圧Vb_avgを、20℃〜50℃の測定レンジでA/Dコンバータ701に出力する。
【0063】
第1の系を用いて出力するか、第2の系を用いて出力するかは(つまり、測定レンジは)、制御回路702からの信号に基づいてアナログスイッチ712、722を切り替えることにより制御される。より高精度な体温測定を行う場合には、第2の系が選択されることとなる。
【0064】
A/Dコンバータ701に入力された電圧Vb_avgは、A/Dコンバータ701においてA/D変換され、デジタルデータとして制御回路702に入力される。
【0065】
制御回路702に入力されたデジタルデータは、無線インターフェイス202に送信される。
【0066】
なお、センサ部211より電圧Vb_avgが複数回出力される場合にあっては、それぞれのデジタルデータをメモリ703に一時的に格納し、制御回路702において、メモリ703に格納された全てのデジタルデータの平均値を算出した後に、無線インターフェイス202に送信するようにしてもよい。
【0067】
<本体部における体温データ算出処理>
次に、本体部300の信号処理部304において体温データを算出するための処理について説明する。図8は、信号処理部304において体温データを算出するための処理の内容を説明するための図である。
【0068】
信号処理部304では、基準となる半導体温度センサにおける、電圧データと体温データとの対応関係を示すグラフ(関数)を、校正データに基づいて補正した後に、受信した電圧データを代入することにより、体温データを導出する。
【0069】
図8(a)は、1種類の温度に対応する1種類の校正データを受信した場合における補正処理を示す図である。図8(a)に示すように、1種類の温度に対応する1種類の校正データを受信した場合には、基準となる半導体温度センサにおける、電圧データと体温データとの対応関数のオフセット値を調整する。具体的には、グラフ801を全体として矢印方向に平行移動させ、グラフ802を得る。
【0070】
信号処理部304では、生体動態測定部100より受信した電圧データを、当該平行移動後のグラフ802に代入することで、体温データを導出する。
【0071】
図8(b)は、2種類の温度に対応する2種類の校正データを受信した場合における補正処理を示す図である。図8(b)に示すように、2種類の温度に対応する2種類の校正データを受信した場合には、当該2点を通る直線803を算出し、これを半導体温度センサにおける電圧データと体温データとの対応関係を示すグラフとする。
【0072】
信号処理部304では、生体動態測定部100より受信した電圧データを、当該算出された直線803に代入することで、体温データを導出する。
【0073】
図8(c)は、3種類以上の温度に対応する3種類以上の校正データを受信した場合における補正処理を示す図である。図8(c)に示すように、3種類以上の温度に対応する3種類以上の校正データを受信した場合には、当該3点以上の点に基づいて、最小2乗法により回帰直線804を算出し、これを半導体温度センサにおける電圧データと体温データとの対応関係を示すグラフとする。
【0074】
信号処理部304では、生体動態測定部100より受信した電圧データを、当該算出された回帰直線804に代入することで、体温データを算出する。
【0075】
以上の説明から明らかなように、本実施形態にかかる生体動態測定部100では、アンテナを備えるバンド型の生体動態測定部100として、半導体温度センサを適応する構成とした。
【0076】
また、半導体温度センサの適用にあたり、
・半導体温度センサの個体差の影響を排除するため、センサ部において、複数の半導体温度センサを並列に接続する構成とした。
・測定誤差を排除するため、1回の体温測定に際して、センサ部に対して複数回電流を流し、その平均値を出力する構成とした。
・ICタグの個体差の影響を排除するため、ICタグ内の記憶部にICタグごとに校正データを記憶しておき、本体部により電圧データを送信する際に、合わせて校正データを送信する構成とした。
【0077】
この結果、高精度な体温計測を実現することが可能となった。
【0078】
<本発明の別の実施形態に係る生体動態測定部100>
(実施例2)
【0079】
図9は、本発明の別の実施形態に係る生体動態測定部100を示す図である。測定部位に装着できるバンド200と、温度センサを有するICタグ210とアンテナ220とからなる生体動態測定部100を身体の適所に装着して体温測定を行なう。
【0080】
バンド200は、可撓性を有するバンドであり、可撓性を有する部位は肌と接触するので、絹、綿、麻、ナイロン、ポリエステルといった繊維や、人工皮革、不織布など衣類の素材に成り得る素材であることが好ましい。また、バンド200はバックル250を有しており、バックル250により、ウエストポーチやシートベルトなどのベルト調整と同様に、バンド200の長さを調整できる。図10に示すように、バックル250を係止することで、バンド200は測定部位に巻きつけられる。つまり、バックル250がワンタッチ式係止部の機能を果たしている。また、バックル250は、ワンタッチ式であり、係止を確実にするものであれば、形状・材質などは何でも構わないが、剛体であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのプラスチック材や、セラミックス、ステンレスなどの金属類が好ましい。
【0081】
以上のような、実施形態でもアンテナを大きく取ることが出来、その結果、少ない消費電力で送受信が可能であり、かつICタグにアンテナが搭載されているものに比べ、通信距離を長く(広く)取ることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
100 生体動態測定部
200 バンド
202 無線インナーフェイス
203 記憶部
204 感温部
205 コントロール部
206 体動検出手段
207 湿度センサ
210 ICタグ(RFID)
211 センサ部
212 回路部
220 アンテナ
230 雄型面ファスナ
240 雌型面ファスナ
250 バックル
300 本体部
301 アンテナ
302 無線インターフェイス
303 信号変換部
304 信号処理部
310 ICタグ読取部
311 コントロール部
312 記憶部
313 表示部
314 外部通信部
315 入力部
316 報知手段
601 定電流回路
602 半導体温度センサ
701 A/Dコンバータ
702 制御回路
703 メモリ
711、721 比較/増幅器
712、722 アナログスイッチ
P 乳幼児
Q オムツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワンタッチ式係止部を有するバンドと、該バンドの内側に設けられた半導体温度センサと体動検出手段と湿度センサを含むRFIDと、該バンドに実装された所定以上の大きさのアンテナからなる生体動態測定部と、
該半導体温度センサで測定された体温と該体動検出手段で測定された体動情報と該湿度センサで測定された発汗情報を無線で読取る読取部と、該体温と該体動情報と該発汗情報を表示する表示部を備えた本体部と、からなることを特徴とする生体動態測定装置。
【請求項2】
前記ワンタッチ式係止部は、雄型面ファスナと雌型面ファスナであることを特徴とする請求項1記載の生体動態測定装置。
【請求項3】
前記ワンタッチ式係止部は、バックルであることを特徴とする請求項1記載の生体動態測定装置。
【請求項4】
前記体動検出手段は加速度センサであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の生体動態測定装置。
【請求項5】
前記バンドは、可撓性を有するバンドであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の生体動態測定装置。
【請求項6】
前記バンドは前記RFIDと前記アンテナの少なくとも一つと取外可能であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の生体動態測定装置。
【請求項7】
前記バンドは扇形状であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の生体動態測定装置。
【請求項8】
前記RFIDはバンドギャップ電圧回路を含むことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の生体動態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−194133(P2010−194133A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43257(P2009−43257)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】