説明

生体吸収性ポストを備えた整形外科インプラント

【課題】患者の天然骨内で十分に固定することができ、一方で、後の修正手術に関連した損傷を軽減または排除することができる整形外科インプラントを提供すること。
【解決手段】関節形成術などで骨の表面を置換するための整形外科インプラントは、準備した骨の端部に噛み合う骨接触面を含む。この骨接触面は、骨の内殖を促進する多孔質コーティングを含む。生体吸収性ポストが、骨に準備したキャビティまたは孔の中に係合するために骨接触面から延出している。ポストの生体吸収性材料は、実質的な骨の内殖が多孔質コーティング内で達成されるまで、ポストが既存の骨の中に実質的に吸収されることがないように、選択される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
本発明は、整形外科インプラントに関し、詳細には、患者の天然骨の温存に役立つ構造を有するこのようなインプラントに関する。
【0002】
ほとんどの関節形成術では、関節の1または複数の関節動作面(articulating surfaces)をプロテーゼで置換する必要がある。このようなプロテーゼは、典型的には、ステンレス鋼やチタンなどの生体適合性金属(biocompatible metal)、または、場合によってはセラミック材料などから形成される。プロテーゼすなわち整形外科インプラントは、長期にわたって相当な荷重に耐えうる十分な強度を有していなければならない。例えば、股関節インプラントは、関節の通常の動作(usage)の際には患者の体重の約2倍〜3倍の周期的な荷重に、運動の際にはさらに大きな荷重に耐え得るようになっている。したがって、整形外科インプラントは、必然的に、長期の荷重パターンに耐えうる材料から形成しなければならない。さらに、場合によっては、インプラントは、ピッチング(pitting)、かじり(galling)、または過度の磨耗が生じることなく、対向する天然または人工の噛合部品(prosthetic mating component)との間で関節運動を達成できる支持面を形成しなければならない。同様に、この要求から、整形外科インプラントに有効に使用できるタイプの材料に限定される。
【0003】
多くの場合、インプラント材料は、既存の骨内での単純な固定に幾分か適合していない。言い換えれば、既存の骨によく一体化しうる多孔質インプラントは、関節形成術の荷重支持部品を形成するのに必要な強度および耐久性を有していないであろう。たとえ骨セメント接合(bone cement interface)を用いる場合であっても、ほとんどの整形外科インプラントは、既存の骨との別の固定接合面を必要とする。したがって、多くの整形外科インプラントは、インプラントの骨に面する表面から突出したラグまたはポストに依存する。このようなラグまたはポストは、天然骨内に適切に形成された孔またはキャビティ内に埋め込まれ、骨に面した表面とともに、骨セメントまたは類似材料で固定される。
【0004】
ラグまたはポストの使用により、インプラントを十分に固定することができるが、修正手術(revision surgery)の際に大きな問題が生じる。一般に、ほとんどの関節形成術には寿命がある。人工関節部品は、時間が経つと緩むことがある。あるケースでは、患者の関節の生理的な変化により、プロテーゼがその関節にとって最適ではなくなる。別のケースでは、インプラントの周りの天然骨が、骨粗鬆症になったり、インプラントから退行したりする。場合によっては、整形外科インプラントは、転倒などの過度の荷重がかかる事故で応力破損(stress failure)を受けることもある。したがって、多くの関節形成術では、修正が必要となることがある。修正とは、初めの関節インプラントを除去して新しいインプラント部品で置換することを意味する。
【0005】
インプラントが、天然骨内へと延びるラグまたはポストを含む場合、修正手術は、一般に、ラグまたはポストを除去するために骨をより大きく切開する必要がある。このより大きな切開は、外科手術を複雑にするだけでなく、望まれるよりも多くの患者の天然骨を除去しなければならない。この余分な骨の除去により、骨がさらに損なわれ、骨の病気または異常が発症するリスクが増大したり、修正インプラントの固定に利用できる健康な骨が減少したりすることがある。さらに、このより大きな切除により、一般に、その切除した空間を満たし、求められる形状に関節部品を回復させるために、より大きな整形外科インプラントが必要になる。
【0006】
したがって、患者の天然骨内で十分に固定することができ、一方で、後の修正手術に関連した損傷を軽減または排除することができる整形外科インプラントが強く要望されている。
【0007】
〔発明の概要〕
この要望に応えるために、本発明は、準備した骨の端部(prepared end of a bone)に噛み合うように構成された骨接触面を有する本体を含む、準備した骨の端部に取り付けるための整形外科インプラントを企図する。一構造では、骨接触面は、本体が骨に噛み合わされると生体内原位置(in situ)で骨が内殖するように構成された多孔質コーティングを備えている。さらなる構造では、このインプラントは、骨接触面から延出し、準備した骨の端部に形成されたキャビティ内に延びるように構成された生体吸収性ポストを含む。したがって、ポストは、初めは準備した骨の端部へのインプラントの固定を増強する。
【0008】
ある態様では、ポストは、天然骨内へのポストの吸収速度を、多孔質コーティング内への骨の内殖の速度に関連して較正できるように選択された、吸収性材料から形成されている。言い換えれば、生体吸収性ポストは、インプラントの多孔質表面内への骨の内殖が、骨に対してインプラントを確実に固定するのに十分になるまで、残存する。
【0009】
ある構造では、このインプラントは、本体とポストとの間に、係合構造(engagement feature)を含む。一実施形態では、この係合構造は、ポストに設けられたねじ山付きステム、および、本体の骨接触面に設けられた相補的なねじ山付き構造を含む。相補的なねじ山は、インプラントのタイプによって、接触面から突出するボスの形態とするか、または本体に画定されたねじ山付き孔の形態にすることができる。ねじ山付きステムを、ポストの残りの部分と同じ生体吸収性材料から形成するのが好ましい。
【0010】
特定の実施形態の別の構造では、ポストは、細長いステム、および、準備した骨の孔からポストが抜ける(expulsion of the post)のを防止する外部構造を含む。この外部構造は、ポストの長さに沿って離間した複数のフィンを含むことができる。ある実施形態では、複数のフィンは、細長いステムの周りを連続して円周方向に延びているが、一方で、別の実施形態では、複数のフィンは、不連続であるか、または、円周セグメントの形態である。別の実施形態では、これらのフィンは、ポストの抜ける方向に面したノッチ付き表面を含む。
【0011】
本発明の構造を、広範囲の整形外科インプラントに組み込み得ることが、企図されている。本発明は、関節形成術の部品などの表面置換インプラントに特に有用である。したがって、本発明の構造を、大腿骨、上腕骨、または、脛骨表面置換プロテーゼに組み込むことができる。
【0012】
本発明の目的の1つは、起こり得る修正手術を簡易化する整形外科インプラントを提供することにある。より具体的には、インプラントの下側の余分な骨を不必要に除去することなく、修正手術で除去できるインプラントを提供することにある。
【0013】
したがって、本発明の重要な利点の1つは、後の修正手術での通常の問題を伴わずに、準備した骨表面に確実に固定できる整形外科インプラントを提供することにある。本発明の他の目的および利点は、以下の説明および添付の図面から理解されるであろう。
【0014】
〔好ましい実施形態の説明〕
本発明の原理の理解を促すために、以下に記載する明細書に説明され、かつ、図面に例示されている実施形態を参照する。したがって、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明は、例示する実施形態に対するあらゆる変更形態および改良形態を含み、本発明の属する分野の当業者が容易に想到する本発明の原理の別の利用も含むことをさらに理解されたい。
【0015】
本発明は、整形外科インプラント、特に、関節動作関節面(articulating joint surface)を置換するように構成されたインプラントを企図する。したがって、一実施形態では、図1に示されている大腿骨インプラント10は、膝関節形成術の一部として大腿骨の遠位面を置換するように構成された本体12を備えている。この本体は、既知のインプラント材料、好ましくは、ステンレス鋼またはチタン、およびこれらの合金などの金属材料から形成される。ある種のインプラントでは、本体は、生体適合性セラミックから形成することができる。本体12は、既知の方法にしたがって準備される大腿骨の遠位端部に噛み合うように構成された骨接触面14を含む。骨接触面14は、大腿骨の遠位端部内に画定された溝内に配置されるリブ16をさらに画定することもできる。
【0016】
本発明の一態様にしたがえば、接触面14は、骨の内殖を助長および/または促進するように構成された多孔質コーティング15(図10)を備えることができる。多孔質コーティングは、骨の足場材料(bony scaffolding)と一体化するため、インプラントの既存の骨に対する固定を促進する。多孔質コーティングは、インプラント本体12の骨接触面14に固定、接着、または、形成することができる任意の適当な組成物とすることができる。骨接触面は、それ自体を機械的に加工してもよく、これにより、オープンセル(open cell)の多孔質アレイ(porous array)を形成することができる。
【0017】
特定の一実施形態では、この表面14は、焼結金属合金ビーズ(コバルトクロムやチタンなど)の3次元アレイを組み込んでいる、デピュイ社(DePuy Inc.)が販売するポロコート(POROCOAT)(登録商標)多孔質コーティングなどの多孔質材料を用いて、既知の要領で、許容され得る厚みまで、コーティングすることができる。この3次元アレイは、この表面内での、および表面を通る骨の内殖を可能にする、相互に連結された間隙または細孔を提供する。細孔の平均直径が約250μmで、厚みが0.762mm〜0.889mm(0.030in〜0.035in)であるポロコート(POROCOAT)(登録商標)コーティング層が、セメントを使用しない整形外科インプラントの固定に対して、インプラントと骨との強い結合を提供することが分かった。他のタイプの適当な表面コーティングを、プラズマ溶射などによって既知の要領でインプラント本体に塗布することもできる。この表面14に用いる多孔質コーティングに、骨形成蛋白質などのある種の蛋白質、鉱質除去骨基質、および、ヒドロキシアパタイトなどを含む、骨成長助長物質または骨成長促進物質を含浸することができる。
【0018】
骨セメントを用いて、準備した大腿骨の遠位端部にインプラント10を固定する場合であっても、適切な固定には数週間必要なことが知られている。固定を促進するために、典型的には、プラグまたはポストが整形外科インプラントの骨接触面に設けられている。したがって、例示されている図1の実施形態では、ポスト20が設けられているが、従来のインプラントのポストとは異なり、このポスト20は、生体吸収性材料から形成されている。インプラント10の骨接触面14は、ポスト20を受容して確実に係合するように構成された係合ボス18を画定している。
【0019】
ここで図3を参照すると、ポスト20の一実施形態が例示されている。ポスト20は、このポストが固定される骨に応じた大きさに形成された細長いステム22を含む。具体的には、ステム22の長さおよび直径は、利用できる下側の天然骨によって決まる。ステム22は、従来の類似の整形外科インプラントに設けられるプラグまたはポストに一致する大きさに形成されることが好ましい。別法では、ステム22は、ポスト20の多孔性により、このポストと天然骨との間の有効接触面積が自然と増大するため、従来技術の典型的なポストよりも小さくすることができる。
【0020】
生体吸収性ポスト20は、例示されている実施形態では、雄ねじ山を有するように構成された固定ステム24をさらに含む。したがって、インプラント10のボス18は、ねじ山付き固定ステム24に噛み合う相補的な雌ねじを備えている。ポスト20が本体12に十分に確実に固定され、予想される関節の荷重で部品が分離しないようにする、他の形態の固定も企図される。
【0021】
ステムの先端部26は、患者の天然骨の準備した孔の中にポストを導入しやすいようにテーパ状にすることができる。テーパ状先端部26は、骨ドリルによって孔を形成する際に典型的に形成される、準備した孔のテーパ状の底部に一致するように構成するのが好ましい。
【0022】
準備した孔内へのポスト20の固定を容易にするために、ステム22には、図3に示されているように、ステムの表面から外側に突出した一連のリッジまたはフィン28を組み込むことができる。インプラント10が遠位大腿骨に固定される場合、骨に対するポスト20の抜けすなわち後退(expulsion or retrograde movement)を防止するように、準備した孔の周りの天然骨内にこれらのフィン28を埋め込むのが好ましい。一実施形態では、フィン28は、図5に示されているように、ほぼ三角形の断面を有する。しかしながら、準備した骨の中へポストを導入することができ、挿入されると骨の中で外側に向かって延びることができる他のフィンの構造も企図される。例えば、ある代替形態では、フィンは、ほぼ円盤状である。
【0023】
ポスト20は、天然骨に確実に係合してインプラント10を骨に保持するのを補助する生体吸収性材料から形成されている。ポスト材料が近接する骨内に吸収される時間は、インプラント10の骨接触面14の多孔質コーティング内に骨が内殖する速度に関連して較正される。言い換えれば、ポストは、骨の内殖が不十分な間は、残存するのが好ましい。多孔質コーティングを介して骨がインプラント10と完全に一体化したら、ポスト20によって形成される構造が必要なくなる。この時点で、ポストは、既存の天然骨内に完全に吸収されてもよい。
【0024】
一態様では、係合ステム24を含むポスト20全体が、生体吸収性材料から形成されている。したがって、ポストが既存の骨内に完全に吸収されると、骨の一部が、係合ボス18内に延びる。ボスの内部に、ボス内に新しく形成された骨の固定を促進する骨内殖コーティングを設けることができる。
【0025】
ポスト20は、整形外科固定用途で十分な強度を示すことが知られている生体吸収性材料から形成されている。例えば、適当な吸収性材料の例として、ポリα‐ヒドロキシ酸、ポリL‐乳酸(PLA)、ポリグラクチン酸(PGA:polyglactin acid)、および、これらの誘導体または複合材などの、ある種のポリマー材料を挙げることができる。ポスト材料は、骨の成長、治癒、および/または、ミネラル化を促進するために、抗生物質、成長因子、および、骨形態形成タンパク質などを含む、補助的な生理活性組成物を含浸させることができる。前述したように、生体吸収性材料の選択は、インプラント10の多孔質コーティングの骨内殖速度に関連する所望の吸収すなわち分解速度に基づいて行うのが好ましい。したがって、選択される材料は、数週間〜数ヶ月、場合によっては2年の吸収速度を有することができる。
【0026】
例示的な一実施形態では、ポスト20は、ポリジオキサノン(PDA)などの射出成形ポリマーから形成されている。PDA材料は、約210日(30週間)で完全に吸収され、約42日(6週間)で71%の強度となる。典型的な多孔質コーティング15は、12週間〜15週間で骨の内殖が実質的に完了し、約20週間で永久に固定されるであろう。ポストには、PDA成形形態の上に別の吸収層を組み込むことができる。例えば、ポリグリコール酸/ポリ乳酸(PGA/PLA)などの押出しポリマーファイバーの足場を、ポストの表面に取り付けることができる。このPGA/PLA層は、典型的に、吸収速度が格段に速く、約10週間で完全に吸収される。表面インプラントの多孔質コーティング15の骨の内殖速度に関連して大幅に短い吸収時間が望ましい場合、ポスト20自体をPGA/PLAから完全に形成することもさらに企図される。
【0027】
本発明の別の実施形態では、大腿骨表面置換インプラント10’は、図2に示されているように、骨接触面14’に2つのボス18’を組み込んでいる本体12’を含む。各ボス18’は、ポスト30などのポストを受容するように構成されている。ポスト30は、図4に示されているように、係合ステム34を備えた細長いステム32を含む。係合ステム34には、上記した図3の実施形態と同様に、相補的に構成されたボス18’に係合するねじ山、または、他の形態を組み込むことができる。前述の実施形態と同様に、ステム32の長さおよび直径は、準備した大腿骨の遠位端部の利用できる骨によって決まる。図2に例示されているように、第1のポスト30は、接触面14’の中心に位置し、一方で、第2のポスト30’は中心からずれている。第2のポスト30’は、その位置に、ポストの受容に利用できる天然骨が少ないため、中心ポスト30よりも短い。
【0028】
図4を参照すると、ポスト30は、テーパ状の先端部36、および、複数列のフィンセグメント38を含む。フィンセグメント38は、図3のポスト20の円周フィン28の代わりである。連続した円周フィン(circumferential fin)ではなく、フィンセグメントを用いることにより、準備した骨の孔の中にポスト30をより容易に導入することができる。
【0029】
ある特定の実施形態では、連続したフィン28、および、フィンセグメント38は、本質的に中実とすることができる。別法では、図5に示されているように、フィンセグメント38(および連続したフィン)には、フィンセグメントの遠位面39にノッチ40を組み込むことができる。ノッチ40は、骨をこのノッチ内に捕捉できるように、ポスト30(およびポスト20)が抜ける方向に面している。
【0030】
本発明の吸収性ポストは、準備した孔の中に導入することができ、かつ、天然骨内での抜け、すなわち、後退の動きに耐えるように構成された所与の範囲の構造とすることができる。したがって、別の実施形態では、ポスト50は、図6に示されているように、係合ステム54およびテーパ状の先端部56を備えた細長いステム52を含む。この実施形態のステム52は、先端部56に向かってテーパ状である。円周フィン58、60、および、62の列が、ステム52上に画定されている。前述の実施形態と同様に、フィン58、60、62は、骨の孔の中への導入を容易にする一方で、抜けに耐えるように構成されている。これらのフィンは、テーパ状のステム52の結果として、それぞれの連続したフィンが、後ろ側のフィンよりも小さい直径を有するようになっている。
【0031】
大腿骨表面置換インプラント10および10’を用いて説明した吸収性ポストおよび多孔質表面は、他のタイプの整形外科インプラントに組み込まれることも企図されている。したがって、図7に示されているように、股関節表面置換インプラント70は、股関節形成術の一部として準備した大腿骨の近位端部に一致するキャビティ74を画定するほぼ球状のカップ本体72を含む。カップ本体の近位内面76は、ポスト50’の係合ステム54を受容するためにほぼ中心の係合孔78を画定している。ポスト50’は、図6に示されているポスト50に類似しているが、大腿骨の髄腔内に沿って長く延びる。
【0032】
大腿骨インプラントに全体的な構成が類似した上腕骨表面置換インプラント80が図8に示されている。上腕骨インプラント80は、肩関節形成術の一部として準備した上腕骨の近位端部の周りに適合するようにほぼ球状のキャビティ84を画定するカップ本体82を含む。近位内面86は、図6の生体吸収性ポスト50の係合ステム54を受容するための係合孔88を画定している。
【0033】
同様に、図9に示されている脛骨表面置換インプラント90は、膝関節形成術のための脛骨トレー(tibial tray)として構成された本体92を含む。この本体92は、吸収性ポスト60’’の係合ステムを受容するための一対の係合孔94を画定している。ポスト60’’は、図3〜図6に示されているポスト20、30、または、60のいずれかに類似させることができることを理解されたい。
【0034】
各吸収性ポスト20、30、50に設けられた係合ステム24、34、54により、関節形成術中に特定のポストを選択できるようにすることも企図される。関節形成術の一部として、インプラントを受容するために利用できる天然骨、特に、生体吸収性ポストを受容するために準備する孔またはキャビティのために利用できる骨を評価する。孔の長さおよび直径は、利用できる骨および利用できるポストの大きさの選択に基づいて選ばれる。別法では、ポストを、準備した孔またはキャビティに合うように特別に製作することができる。
【0035】
生体吸収性ポストが選択されたら、ボス18または18’などの係合ボス、または、孔78または88などの係合孔で、インプラントに取り付ける。次に、得られるインプラントを、特定の関節形成術にしたがって準備した骨の端部に取り付ける。
【0036】
特定の整形外科表面インプラントに関連したキットを提供することも企図される。このキットは、長さ、直径、フィンの個数および形態、ならびに、材料の吸収速度が異なるポストの選択を含むことができる。表面インプラントに係合する適当なポストの選択は、インプラントを固定するために利用できる骨の性質および範囲、患者の年齢および健康状態(治癒の速度に影響を与えるため)、骨セメントなどの固定の補助形態の必要性、固定する表面インプラントのタイプ、および、インプラントに設けられる多孔質コーティングの組成によって決めることができる。
【0037】
本発明の重要な1つの利点は、図10から理解できるであろう。インプラント10’などの表面インプラントが、準備した骨Bの端部に固定されている。図面で強調されている多孔質コーティング15は、天然骨Bとインプラントの接触表面14’との間の骨の内殖の領域を示している。ポスト30’は、既存の骨の中に完全に吸収されたことを表すために破線で示されている。修正手術では、ポスト30’が存在しないため、カットラインCが、単に接触表面14’に従うのみで良いことが分かるであろう。したがって、ポスト30’の深さまで骨Bの大きな部分を除去するのではなく、インプラントの直近の骨だけを除去すればよい。初めのインプラントが除去されたら、骨の端部の準備として、新しいインプラントを受容するための最小限の調整のみが必要である。さらに、初めのインプラントを除去するための骨の適切な除去は、新しいインプラントを、主に厚みが異なるが初めのインプラントに実質的に類似させることができることを意味する。
【0038】
本発明を、図面、および前述の記載で詳細に例示し、説明してきたが、これらの図面および記載は単なる例示であり、限定と解釈すべきものではない。好適な実施形態のみを説明したが、本発明の範囲に一致する全ての変形形態、変更形態、および、他の適用例が保護されることを望むことを理解されたい。
【0039】
例えば、各インプラントの骨接触面の多孔質層には、溝、または、「ワッフル(waffling)」などの機械的な表面構造を組み込むことができる。このような表面構造を用いて、インプラントを天然骨の準備した表面に固定するための骨セメントを保持することができる。
【0040】
〔実施の態様〕
(1)準備した骨の遠位端部に取り付けるための整形外科インプラントにおいて、
本体であって、前記準備した骨の前記端部に噛み合うように構成された骨接触面を有する、本体と、
前記骨接触面に設けられた多孔質コーティングであって、前記本体が前記骨に噛み合わされると生体内原位置で骨の内殖が起こるように構成された、多孔質コーティングと、
前記骨接触面から延出したポストであって、前記準備した骨の前記端部に形成されたキャビティ内に延びるように構成され、生体吸収性材料から形成されている、ポストと、
を含む、整形外科インプラント。
(2)実施態様(1)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記本体と前記ポストとの間に設けられた、係合構造、
をさらに含む、整形外科インプラント。
(3)実施態様(2)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記係合構造は、前記ポストに設けられたねじ山付きステム、および、前記本体の前記骨接触面に設けられた相補的なねじ山付き構造を含む、整形外科インプラント。
(4)実施態様(3)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記ねじ山付きステムは、前記生体吸収性材料から形成されている、整形外科インプラント。
(5)実施態様(1)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記ポストは、細長いステム、および、前記準備した骨の孔から前記ポストが抜ける(expulsion of the post)のを防止する外部構造を含む、整形外科インプラント。
【0041】
(6)実施態様(5)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記外部構造は、複数のフィンを含む、整形外科インプラント。
(7)実施態様(6)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記複数のフィンは、前記細長いステムの周りで円周方向に延びている、整形外科インプラント。
(8)実施態様(7)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記複数のフィンは、前記細長いステムの周りを連続して延びている、整形外科インプラント。
(9)実施態様(7)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記複数のフィンは、前記ポストの抜ける方向に面したノッチ付き表面を含む、整形外科インプラント。
(10)実施態様(1)に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記生体吸収性材料は、実質的な骨の内殖が前記多孔質コーティング内で達成されるまで、前記ポストが既存の骨内に実質的に吸収されないように選択される、整形外科インプラント。
【0042】
(11)準備した骨の端部に整形外科表面インプラントを固定するためのキットにおいて、
表面インプラントであって、
前記準備した骨の前記端部に噛み合うように構成された骨接触面、
前記骨接触面に設けられた多孔質コーティングであって、前記表面インプラントが前記骨に噛み合わされると生体内原位置で骨の内殖が起こるように構成された、多孔質コーティング、および、
前記骨接触面に設けられた少なくとも1つの係合構造、
を備える、表面インプラントと、
互いに異なるように構成された複数の生体吸収性ポストであって、
各前記ポストが、前記表面インプラントの前記係合構造に係合するための噛合構造を含み、
前記表面インプラントが前記骨に噛み合わされるときに、前記少なくとも1つの係合構造のうちの対応する1つの係合構造に係合するように、前記複数のポストから1つのポストを選択することができる、
複数の生体吸収性ポストと、
を含む、キット。
(12)実施態様(11)に記載のキットにおいて、
前記複数の生体吸収性ポストは、異なる長さを有する複数のポストを含む、キット。
(13)実施態様(11)に記載のキットにおいて、
前記複数の生体吸収性ポストは、異なる直径を有する複数のポストを含む、キット。
(14)実施態様(11)に記載のキットにおいて、
前記複数の生体吸収性ポストは、異なる吸収速度を有する生体吸収性材料から形成された複数のポストを含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の生体吸収性ポストを含む、本発明の構造を組み込んでいる大腿骨表面整形外科インプラントの下方からの斜視図である。
【図2】本発明の構造にしたがった2つの生体吸収性ポストを組み込んでいる代替の大腿骨表面整形外科インプラントの下方からの斜視図である。
【図3】図1〜図2に示されているインプラントなどの整形外科インプラントとともに使用することができる、本発明の一実施形態にしたがった生体吸収性ポストの前方からの斜視図である。
【図4】図1〜図2に示されているインプラントなどの整形外科インプラントとともに使用することができる、本発明の別の実施形態にしたがった生体吸収性ポストの前方からの斜視図である。
【図5】図4に示されているポストに対するノッチ付きフィンの改良物の拡大図である。
【図6】図1および図2に示されているインプラントなどの整形外科インプラントとともに使用することができる、本発明のさらに別の実施形態にしたがった生体吸収性ポストの前方からの斜視図である。
【図7】本発明の構造にしたがった生体吸収性ポストを組み込んでいる股関節表面整形外科インプラントの部分側断面図である。
【図8】本発明の構造にしたがった生体吸収性ポストを組み込んでいる上腕骨表面整形外科インプラントの部分側断面図である。
【図9】本発明の構造にしたがった2つの生体吸収性ポストを組み込んでいる脛骨表面整形外科インプラントの下方からの斜視図である。
【図10】表面インプラントを除去するための修正手術のためのカットラインを例示する、本発明の実施形態にしたがった骨内に固定されたインプラントの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
準備した骨の遠位端部に取り付けるための整形外科インプラントにおいて、
本体であって、前記準備した骨の前記端部に噛み合うように構成された骨接触面を有する、本体と、
前記骨接触面に設けられた多孔質コーティングであって、前記本体が前記骨に噛み合わされると生体内原位置で骨の内殖が起こるように構成された、多孔質コーティングと、
前記骨接触面から延出したポストであって、前記準備した骨の前記端部に形成されたキャビティ内に延びるように構成され、生体吸収性材料から形成されている、ポストと、
を含む、整形外科インプラント。
【請求項2】
請求項1に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記本体と前記ポストとの間に設けられた、係合構造、
をさらに含む、整形外科インプラント。
【請求項3】
請求項2に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記係合構造は、前記ポストに設けられたねじ山付きステム、および、前記本体の前記骨接触面に設けられた相補的なねじ山付き構造を含む、整形外科インプラント。
【請求項4】
請求項3に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記ねじ山付きステムは、前記生体吸収性材料から形成されている、整形外科インプラント。
【請求項5】
請求項1に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記ポストは、細長いステム、および、前記準備した骨の孔から前記ポストが抜けるのを防止する外部構造を含む、整形外科インプラント。
【請求項6】
請求項5に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記外部構造は、複数のフィンを含む、整形外科インプラント。
【請求項7】
請求項6に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記複数のフィンは、前記細長いステムの周りで円周方向に延びている、整形外科インプラント。
【請求項8】
請求項7に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記複数のフィンは、前記細長いステムの周りを連続して延びている、整形外科インプラント。
【請求項9】
請求項7に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記複数のフィンは、前記ポストの抜ける方向に面したノッチ付き表面を含む、整形外科インプラント。
【請求項10】
請求項1に記載の整形外科インプラントにおいて、
前記生体吸収性材料は、実質的な骨の内殖が前記多孔質コーティング内で達成されるまで、前記ポストが既存の骨内に実質的に吸収されないように選択される、整形外科インプラント。
【請求項11】
準備した骨の端部に整形外科表面インプラントを固定するためのキットにおいて、
表面インプラントであって、
前記準備した骨の前記端部に噛み合うように構成された骨接触面、
前記骨接触面に設けられた多孔質コーティングであって、前記表面インプラントが前記骨に噛み合わされると生体内原位置で骨の内殖が起こるように構成された、多孔質コーティング、および、
前記骨接触面に設けられた少なくとも1つの係合構造、
を備える、表面インプラントと、
互いに異なるように構成された複数の生体吸収性ポストであって、
各前記ポストが、前記表面インプラントの前記係合構造に係合するための噛合構造を含み、
前記表面インプラントが前記骨に噛み合わされるときに、前記少なくとも1つの係合構造のうちの対応する1つの係合構造に係合するように、前記複数のポストから1つのポストを選択することができる、
複数の生体吸収性ポストと、
を含む、キット。
【請求項12】
請求項11に記載のキットにおいて、
前記複数の生体吸収性ポストは、異なる長さを有する複数のポストを含む、キット。
【請求項13】
請求項11に記載のキットにおいて、
前記複数の生体吸収性ポストは、異なる直径を有する複数のポストを含む、キット。
【請求項14】
請求項11に記載のキットにおいて、
前記複数の生体吸収性ポストは、異なる吸収速度を有する生体吸収性材料から形成された複数のポストを含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−29821(P2008−29821A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−157813(P2007−157813)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】