説明

生体吸収性化合物およびそれらを含む組成物

外科用接着剤またはシーラント組成物を生成するのに有用である流動性の生体吸収性化合物を提供する。本発明は、式(I):HO−R−(A)−R−OHの生体吸収性化合物を提供し、式中、Aは、1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であり;Rは各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基であってもよく;そしてxは各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2005年12月6日に出願された米国仮特許出願第60/742,941号(この開示全体が、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
背景
技術分野
本開示は、外科用接着剤またはシーラント組成物を作製するのに有用である流動性の生体吸収性化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の背景
近年では、縫合糸を接着ボンドで置き換えるかまたは強化することについて関心が増大してきている。この関心の増大の理由としては:(1)修復が達成され得る潜在的な速度;(2)結合物質が完全な閉鎖を達成する能力;(3)および組織の過剰な変形なしに結合を形成する能力、が挙げられる。
【0004】
しかし、この領域での研究によって、外科用接着剤が外科医によって受容されるためには、それらは多数の特性を保有しなければならないことが明らかになっている。それらは、高い初回タック(tack)および生きている組織に対して急速に結合する能力を示さなければならず;結合の強度は、結合の失敗より前に組織の不全を生じるように十分高くなければならない;接着剤は、架橋を、代表的には、浸透性の可塑性の架橋を形成しなければならず;そしてこの接着性の架橋および/またはその代謝産物は、局所の組織毒性または発癌性の影響を生じてはならない。
【0005】
組織の接着剤または組織のシーラントとして有用ないくつかの物質が現在利用可能である。現在利用可能な接着剤の1タイプは、シアノアクリレート接着剤である。しかし、シアノアクリレート接着剤は、それらの有用性を制限し得る、高い曲げ弾性率を有し得る。現在利用可能な組織シーラントの別のタイプは、ウシおよび/またはヒトの供給源由来の成分を利用する。例えば、フィブリン・シーラントが利用可能である。しかし、任意の天然の材料と同様、物質中の変動が観察されてもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
完全に合成の生物学的接着剤またはシーラント、すなわち、可塑性であって、生体適合性であって、かつその特性において極めて一貫性である接着剤またはシーラントを提供することが所望される。この接着剤またはシーラントは、噴霧するために十分に低粘度であることも所望される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
式(I):
HO−R−(A)−R−OH (I)
の生体吸収性化合物が提供され、
ここでAは、1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であって;Rは各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基であってもよく;そしてxは各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である。このR基は、生体吸収性モノマー、例えば、グリコリド、ラクチド、p−ジオキサノン、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、および必要に応じてその組み合わせ由来であってもよい。
【0008】
式(I)の化合物を作製する方法も考慮され、ここではジヒドロキシ化合物が、生体吸収性ポリマーと、エステル交換反応条件下で反応される。
【0009】
式Iの化合物は、以下の式(II)の化合物:
Y−R−(A)−R−Y
であって、
Yが、求電子性または求核性官能基を提供する基であり;Aが1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であり;Rが、各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基を含んでもよく;そしてxが各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である、化合物を提供するために、求電子性または求核性のいずれかの基で官能化されてもよい。この求核性官能基は、例えば、−NH、−SH、−OH、−PH、−CO−NH−NH、または必要に応じてそれらの組合せであってもよい。求核性官能基は、例えば、−CON(COCH、−COH、−CHO、−CHOCH、−N=C=O、−SO−CH=CH、−N(COCH)、−S−S−(CN)、または必要に応じてそれらの組合せであってもよい。
【0010】
ある実施形態では、式(I)の化合物は、イソシアネート基で官能化されてもよく、このようにして得られた化合物は以下の式(III):
OCN−Z−HNCOO−R−(A)−R−OOCNH−Z−NCO (III)
を有し、
ここでZは、芳香族基または脂肪族基であり;Aは約1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であり;Rは、各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基であってもよく;そしてxは各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である。
【0011】
式(II)の化合物を作製する方法も考慮され、ここでは、式(I)の化合物が、ジイソシアネートまたはスクシンイミジルエステルと反応される。このジイソシアネート化合物は、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、または脂環式ジイソシアネートであってもよい。このスクシンイミジルエステルは、例えば、スルホスクシンイミジルエステルまたはN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルであってもよい。
【0012】
別の局面では、2部分の接着システムが考慮され、これは、式(II)の官能性化合物を含む第一の組成物と、多官能性化合物を含む第二の組成物とを含む。この第一の成分の官能性化合物が、求電子基を含む場合、この第二の成分は、複数の求核基を有する化合物を含むべきである。この第一の成分の官能性化合物が、求核基を含む場合、この第二の成分は、複数の求電子基を有する化合物を含まなければならない。特に有用な実施形態では、この第一の成分が式IIIのイソシアネート官能化合物を含む場合、2部分の接着剤またはシーラントの第二の成分は、ポリアミン化合物を含む。ある実施形態では、この2部分の接着システムは噴霧可能である。
【0013】
別の局面では、本発明の開示は、式(II)の官能性化合物を含む第一の組成物を含有する第一のチャンバと、多官能性化合物を含む第二の組成物を含有する第二のチャンバと、この第一および第二の組成物を分注するための少なくとも1つの出口とを備える装置を意図する。
【0014】
別の局面では、本開示は、第一のチャンバ中で式(II)の官能性化合物を含む第一の組成物を提供する工程と、第二のチャンバ中で多官能性化合物を含む第二の組成物を提供する工程と、少なくとも1つの出口を通じて第一および第二の組成物を分注する工程とを意図する。この第一および第二の組成物は、同時に分注されても、または連続して分注されてもよい。あるいは、この第一および第二の組成物は、分注される前に混合されてもよい。ある実施形態では、2つの組成物は、噴霧によって分注されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
生体吸収性化合物が本明細書において提供される。固体になるのではなく、この化合物は、流動性であって、ある実施形態では、噴霧可能であるために十分に低粘度である。この化合物は、官能化されて、組織接着剤およびシーラントで用いられてもよい。ある実施形態では、この化合物は、2成分の組織接着剤またはシーラントのうちの1成分として用いられる。特に有用な実施形態では、この2部分の組織接着剤またはシーラントは噴霧可能である。
【0016】
本明細書に記載される生体吸収性化合物は式(I):
HO−R−(A)−R−OH (I)
を有してもよく、
ここでAは、約1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であって;Rは各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基を含み;そしてxは各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である。
【0017】
低分子量のA基および限られた数のR基は、体温でまたは体温より下の温度でこの化合物が流れるのに十分に低い化合物の粘度を保持しており、これによってこの化合物は噴霧可能な接着剤を形成するのに有用となる。本発明の化合物は、使用で遭遇する温度で流動性であり得る。例えば、流動性の組成物は、約0℃〜約40℃の温度で約1,000〜約500,000センチポイズの粘度を有してもよい。あるいは、この化合物は、使用で出会う温度で噴霧可能であり得る。例えば、噴霧可能な組成物は、約0℃〜約40℃の温度で約1,000〜約150,000センチポイズの粘度を有してもよい。
【0018】
A基が由来し得る適切なジヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコールなどを含むポリオールが挙げられる。ある実施形態では、このジヒドロキシ化合物は、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリプロピレンオキシド(「PPO」)またはポリエチレンオキシド(PEO)およびポリプロピレンオキシド(PPO)のブロックまたはコポリマーであってもよい。
【0019】
1実施形態では、ポリエチレングリコール(「PEG」)がジヒドロキシ化合物として利用されてもよい。約200〜約1000におよぶ、代表的には約400〜約900、ある実施形態では約600という分子量を有するPEGを利用することが所望され得る。PEGの混合物も用いられてもよい。適切なPEGとしては、PEG200、PEG400、PEG600およびPEG900という名称で種々の供給業者から市販されるPEGが挙げられる。
【0020】
生体吸収性R基が由来し得るモノマーとしては、例えば、グリコリド、グリコール酸、ラクチド、乳酸、ε−カプロラクトン、ジオキサノン、トリメチレンカーボネートに由来する基、およびれらの混合物が挙げられる。
【0021】
従って、ある実施形態では、本開示の生体吸収性化合物は、
HO−R−(A)−R−OH、
または
HO−R−R−(A)−R−R−OH、
または
HO−R−R−R−(A)−R−R−R−OH
という式を有してもよく、
ここで、AおよびRは上記のとおりである。
【0022】
この化合物は、従来の技術を用いて作製されてもよい。ある有用な実施形態では、この化合物は、ジヒドロキシ化合物と生体吸収性ポリマーとをエステル交換反応条件のもとで反応させることによって作製され得る。適切なエステル交換反応条件としては、ジヒドロキシ化合物と生体吸収性ポリマーとを触媒(例えば、オクタン酸スズ)の存在下で約100℃、ある実施形態では、約120℃〜約200℃〜約220℃の温度で、約1〜約50時間の期間、ある実施形態では、約10時間〜約40時間反応させる工程が挙げられる。当業者によって理解されるとおり、エステル交換反応とは、1つのアルコールのエステルと第二のアルコールとの間の反応であって、この第二のアルコールおよびあるアルコールのエステルをもとのエステルから形成するための反応である。エステル交換反応反応を通じて、生体吸収性ポリマーからの生体吸収性の連結は、ジヒドロキシ化合物に転移される。十分な反応時間および反応物の制御された化学量論を考慮すれば、得られた化合物は、ジヒドロキシ化合物の各々の側に結合された所望の数の生体吸収性連結を保有し得る。例えば、ジヒドロキシ化合物上で2倍モル当量のヒドロキシル基であるモル当量のエステル基を提供するのに十分な生体吸収性ポリマーで開始すれば、このジヒドロキシ化合物の各末端で平均して2つの生体吸収性基が得られる。
【0023】
生体吸収性の連結の分布は、出発物質の添加後の時間の関数として変化する。この分布は、この化合物の特性に顕著な影響を有する。例えば、得られた化合物の粘度は、ジヒドロキシ化合物のモル重量とこの化合物に存在する生体吸収性基の数を釣り合わせることによって調節され得る。
【0024】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、本開示に従って官能化されてもよい。この官能化された化合物は、以下の式(II):
Y−R−(A)−R−Y (II)
の化合物であってもよく、
ここでYは、求電子性または求核性の官能基を提供する基であり;Aは上記のように約1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であり;Rは、各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ上記のように吸収性モノマー由来の基を含み;そしてxは各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である。求核性官能基の例示的な例としては、限定はしないが、−NH、−SH、−OH、−PH、−CO−NH−NHなどが挙げられる。求電子性官能基の例示的な例としては、限定はしないが、−CON(COCH、−COH、−CHO、−CHOCH、−N=C=O、−SO−CH=CH、−N(COCH)、−S−S−(CN)、およびそれらの組合せかなどが挙げられる。式Iの化合物と反応してこのような官能基を得るために適切な化合物は、当業者に明らかである。
【0025】
式IIの化合物は、従来の技術を用いて調製され得る。例えば、式Iの化合物は、所望の官能基を提供する化合物と反応されてもよい。例えば、スクシンイミジル基を提供するためには、式Iの化合物は、スクシンイミジルエステル、例えば、スルホスクシンイミジルエステルまたはN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルなどと反応されてもよい。この特定の反応条件は、特定の出発物質に依存する。適切な反応条件の例としては、その開示全体が参照によって本明細書に援用される、Hermanson,Bioconjugate Techniques,609〜618頁に説明される条件が挙げられる。
【0026】
特に有用な実施形態では、イソシアネート官能基は、式Iの化合物とジイソシアネートとを反応することによって化合物上に提供され得る。ある実施形態では、この得られたイソシアネート−官能性化合物は、以下の式(III):
OCN−Z−HNCOO−R−(A)−R−OOCNH−Z−NCO (III)
の化合物であって、
Zは、芳香族基または脂肪族基であり;Aは上記のように1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であり;Rは、上記のように各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基を含み;そしてxは各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である。
【0027】
ある実施形態では、Zはトルエン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジベンジル、ナフチレン、フェニレン、キシリレン、オキシビスフェニル、テトラメチルキシリレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、リジン、メチルペンタン、トリメチルヘキサメチレン、イソホロン、シクロヘキサン、水素化キシリレン、水素化ジフェニルメタン、水素化トリメチルキシリレン、トリメチルフェニレン、およびそれらの組合せであってもよい。
【0028】
式Iの化合物との反応のために適切なイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族および脂環式のジイソシアネートが挙げられる。例としては限定はしないが、芳香族ジイソシアネート、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、またはテトラメチルキシリレンジイソシアネート;脂肪族ジイソシアネート、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;ならびに脂環式ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネート、またはBayer Material ScienceからDESMODURS(登録商標)の名称で販売される市販のイソシアネートが挙げられる。
【0029】
式Iの化合物とジイソシアネートとの反応のための方法は、当業者の範囲内である。例えば、式Iの化合物は、適切なジイソシアネートと組みわされて、約20℃〜約150℃の適切な温度まで、ある実施形態では約30℃〜約120℃まで約10分〜約24時間の間、ある実施形態では、約1時間〜約20時間加熱される。次いで、得られたジイソシアネート官能性化合物を回収して、従来の手段によって精製してもよい。
【0030】
式IIの官能性化合物は、2部分の接着剤またはシーラント組成物の第一の成分における成分として用いられてもよい。本明細書において上記される式IIの官能性化合物は、2部分の接着剤もしくはシーラントの第一の成分として単独で用いられてもよいし、または組成物中に処方されてもよい。この組成物を形成するために利用される成分の濃度は、用いられる特定の成分のタイプおよび分子量、ならびに生体適合性組成物、例えば接着剤またはシーラントの所望の最終用途の適用を含む、多数の要因に依存して変化する。一般には、この組成物は、以前に記載された式IIの官能性化合物の約25重量%〜約100重量%、、ある実施形態では、約35重量%〜約90重量%を含んでもよい。
【0031】
本開示の官能性化合物の粘度が特定の適用について高すぎるとみなされる場合、この化合物に加えて溶媒を含むエマルジョン組成物を処方してもよい。利用され得る適切な溶媒または分散剤としては、例えば、極性溶媒、例えば、水、トリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ケトン、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エチルアミルケトン、乳酸エチルなど、およびそれらの混合物が挙げられる。他の実施形態では、溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、それらの混合物などが利用されてもよい。
【0032】
用いられる溶媒の量は、使用される特定の官能性化合物およびこの組成物の意図される最終用途を含む多数の要因に依存する。一般には、溶媒は、組成物全体の約0〜約90重量%であり、ある実施形態では、組成物全体の約10〜約80重量%である。1つ以上の溶媒の用途では、約50cP〜約2000cP、ある実施形態では約100cP〜約1750cPの粘度を有するエマルジョンを生成してもよい。このようなエマルジョンは有利には、任意の適切な噴霧デバイスを用いて噴霧され得る。
【0033】
この官能性化合物がイソシアネート官能基を含み、そしてその溶媒がヒドロキシル基を含む場合、その溶媒は有利には、望ましくない事前のゲル化を回避するために使用の直前に官能性化合物と混合される。
【0034】
2部分の接着剤またはシーラントの第二の成分は、多官能性化合物を含有する組成物であってもよい。第一の成分の官能性化合物が求電子基を含む場合、この第二の成分は、複数の求核基を有する化合物を含むべきである。第一の成分の官能性化合物が求核基を含む場合、この第二の成分は、複数の求電子基を有する化合物を含むべきである。従って、ある実施形態では、この2部の噴霧可能な接着剤またはシーラントの第二の成分の多官能性化合物は、2〜約6つの求電子基、例えば、−CON(COCH、−COH、−CHO、−CHOCH、−N=C=O、−SO−CH=CH、−N(COCH)、−S−S−(CN)などを含む。他の実施形態では、2部の噴霧可能な接着剤またはシーラントの第二の成分の多官能性化合物は、約2〜約6つの求電子基、例えば、−NH、−SH、−OH、−PH、−CO−NH−NHなどを含む。
【0035】
噴霧可能な接着剤またはシーラントの第一の成分が式IIIのイソシアネート−官能化合物を含む特に有用な実施形態では、この2部の接着剤またはシーラントの第二の成分は、ポリアミン化合物を含む。適切なポリアミノ官能化合物としては、限定はしないが、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リジン、プトレシン(1,4−ジアミノブタン)、スペルミジン(N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン)、スペルミン(N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン)、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミンおよびフェンアルキレンポリアミンが挙げられる。
【0036】
別の実施形態では、この第二の成分は、JEFFAMINE(登録商標)の名称でHuntsman Performance Chemicals (Houston,TX)から市販されるポリオキシアルキレンアミンを包含するポリアミノ官能マクロマー化合物、他のアミノ官能化ポリアルキレンオキシド、リジンおよび/またはアルギニン残基を有するポリペプチドを包含するポリペプチドなど含んでもよい。
【0037】
本明細書において上記される多官能性化合物は、2部の接着剤もしくはシーラントの第二の成分として単独で用いられてもよいし、または組成物中に処方されてもよい。この組成物を形成するために利用される成分の濃度は、用いられる特定の成分のタイプおよび分子量、ならびに生体適合性組成物、例えば接着剤またはシーラントの所望の最終用途適用を含む多数の要因に依存して変化する。一般には、この多官能性化合物は、この第二の成分中に、この第二の成分の約1重量%〜約50重量%、ある実施形態では、この第二の成分の約5重量%〜約45重量%、代表的にはこの第二の成分の約10%〜約40重量%の量で存在してもよい。
【0038】
インサイチュでの組織への投与の際、本明細書において記載される第一の成分の官能性化合物は、第二の成分の多官能性化合物と反応し、これによって、架橋して優れた組織接着剤またはシーラントとして働くゲルマトリックスを形成する。正常には、この架橋反応は、約20℃〜約40℃、ある実施形態では約25℃〜約35℃におよぶ温度で、約1秒〜約20分、ある実施形態では約10秒〜約3分におよぶ期間で行われる。
【0039】
種々の任意の成分も、本開示の組成物に添加されてもよい。この任意の成分は、2部分の接着剤もしくはシーラントの第一の成分に、2部分の接着剤もしくはシーラントの第二の成分に、または2部分の接着剤もしくはシーラントの両方の成分に含まれてもよい。例えば、この開示に従う組成物は必要に応じて、1つ以上の触媒を含んでもよい。触媒の添加は、本発明の開示の組成物の硬化時間を減少し得る。利用され得る触媒としては、三級アミン触媒、四級アミン触媒などが挙げられる。
【0040】
添加されてもよい適切な三級アミン触媒としては、限定はしないが、トリエチレンジアミン、4−メチルモルホリン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]ピペラジン、3−メトキシ−N−ジメチルプロピルアミン、4−エチルモルホリン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ココモルホリン、N,N−ジメチル−N’,N’−ジメチルイソプロピル−プロピレンジアミン、N,N−ジエチル−3−ジエチルアミノプロピルアミン、およびジメチルベンジルアミンが挙げられる。
【0041】
適切な四級アミン触媒としては、例えば、低級アルキルアンモニウムハライド、およびそれらの誘導体、例えば、ヒドロキシ、クロロヒドリンおよびエポキシ置換低級アルキルトリメチルアンモニウムハライド、例えば、置換プロピルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。利用され得る四級アミンとしては、ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、クロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、およびエポキシプロピル−トリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。上記の化合物の特異的な例としては、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、および2,3−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0042】
他の実施形態では、架橋反応における使用のための触媒としては、オクタン酸スズなどが挙げられる。
【0043】
使用される触媒の量は、架橋されている化合物1kgあたり約0.5グラム〜約50グラムであってもよい。ある実施形態では、触媒の量は、架橋されている化合物1kgあたり約0.5グラム〜約10グラムであってもよい。
【0044】
本開示の組成物にまた添加され得る他の任意の成分としては、サーファクタント、抗菌剤、着色料、防腐剤、造影剤、例えば、ヨウ素、硫酸バリウム、またはフッ素、または薬剤が挙げられる。ある実施形態では、本発明の組成物は必要に応じて、1つ以上の生物活性剤を含んでもよい。本明細書において用いる場合、「生物活性剤(bioactive agent)」という用語は、広義の意味で用いられ、そして臨床用途を有する任意の物質または物質の混合物を包含する。結果として、生物活性剤は、それ自体で薬理学的な活性例えば、色素を有してもよいし有さなくてもよい。あるいは、生物活性剤は、治療効果または予防効果を提供する任意の因子、組織増殖、細胞増殖もしくは細胞分化に影響するかまたは関与する化合物、免疫応答のような生物学的な作用を誘引し得る化合物、または1つ以上の生物学的プロセスにおいて任意の他の役割を果たし得る化合物であってもよい。
【0045】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、抗菌剤、鎮痛薬、解熱剤、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓脈管薬、診断剤、交感神経模倣薬、コリン様薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗悪性腫瘍薬、免疫原、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポポリサッカライド、ポリサッカライドおよび酵素が挙げられる。生物活性剤の組合せが用いられてもよいことも考慮される。
【0046】
本発明の組成物に生物活性剤として含まれ得る適切な抗菌剤としては、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしても公知のトリクロサン、クロルヘキシジンならびに酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンおよび硫酸クロルヘキシジンを含むその塩、銀ならびに酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、プロテイン銀、およびスルファジアジン銀を含むその塩、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン、リファンピシン、バシトラシン、ネイマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン、例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシンおよびシプロフロキサシン、ペニシリン、例えば、オキサシリンおよびピプラシル、ノノキシノール9、フシジン酸、セファロスポリンおよびそれらの組合せが挙げられる。さらに、抗菌性のタンパク質およびペプチド、例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリンBが、本発明の組成物に生物活性剤として含まれてもよい。
【0047】
本発明の組成物に生物活性剤として含まれ得る他の生物活性剤としては以下が挙げられる:局所麻酔薬;非ステロイド性避妊薬;副交感神経作動薬;精神治療薬;精神安定薬;充血除去剤;催眠鎮静薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用薬;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭薬;抗パーキンソン剤、例えば、L−ドーパ;鎮痙薬;抗コリン剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心血管作動薬、例えば、冠拡張薬およびニトログリセリン;アルカロイド;鎮痛薬;麻薬、例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルフィンなど;非麻薬、例えば、サリチル酸塩、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど;オピオイドレセプターアンタゴニスト、例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン;抗癌薬;抗痙攣薬;制吐薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤、例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど;プロスタグランジンおよび細胞毒性薬;エストロゲン;抗菌薬;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン;および免疫薬。
【0048】
本発明の組成物に含まれてもよい適切な生物活性剤の他の例としては、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、アナログ、ムテインおよびその活性なフラグメント、例えば、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、(α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、制癌剤および腫瘍抑制因子、血液タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、増殖ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経成長因子、インスリン様成長因子);タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸、例えば、アンチセンス分子、DNAおよびRNA;オリゴヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0049】
天然に存在するポリマーであって、タンパク質、例えば、コラーゲンおよび種々の天然に存在するポリサッカライドの誘導体、例えば、グリコサミノグリカンを含むポリマーは、生物活性剤のような本発明の開示の組成物中に必要に応じて組み込まれてもよい。
【0050】
単一の生物活性剤が、本発明の組成物において利用されてもよいし、または別の実施形態では、生物活性剤の任意の組合せを利用して、本開示の組成物を形成してもよい。
【0051】
2部の接着剤またはシーラントの2つの成分が、組織に対して同時にまたは連続して適用される場合、それらは架橋して、優れた組織接着剤またはシーラントとして働くゲルマトリックスを形成する。正常には、架橋反応は、約20℃〜約40℃、ある実施形態では、約25℃〜約35℃におよぶ温度で、約15秒〜約20分、さらに代表的には約30秒〜約3分におよぶ期間、行われる。本開示の組成物の架橋を達成するための正確な反応条件は、化合物の官能性、官能化の程度、触媒の存在、もし存在するならば存在する特定の溶媒などを含む種々の要因に依存し得る。
【0052】
架橋された組成物は、縫合糸、ステープル、クランプなどの代わりに、またはそれらと組み合わせて医学的/外科的な立場で用いられ得る。1実施形態では、本発明の組成物は、デリケートな組織を一緒に、例えば、肺組織を、機械的ストレスを生じ得る従来のツールの代わりに、シールまたは接着するために用いられ得る。本発明の組成物はまた、組織中で空気および/または液体の漏出をシールするために、そして外科手術後の接着を妨げるために、そして組織中で間隙および/または欠損を満たすために、用いられてもよい。
【0053】
この組成物が、薬物またはタンパク質のような生物活性剤の送達を意図する場合、本開示の化合物の量は、生体吸収性組成物およびその引き続く放出において薬物またはポリマーの最初の保持を促進するように調節されてもよい。このような調節を行うための方法および手段は、当業者に容易に明白である。
【0054】
本開示の組成物は、多数の異なるヒトおよび動物の医学的適用に用いられ得、この適用としては限定はしないが、創傷(外科的切開および他の創傷を含む)の閉鎖が挙げられる。接着剤は、縫合糸、ステープル、テープおよび/またはバンテージの代わりとして、またはそれらの補助として組織を一緒に結合するために用いられてもよい。本組成物の使用によって、現在の診療の間に正常であれば必要な縫合糸の数が減じ得るかまたは実質的に減少され得、そしてその後に必要な外部のステープルおよび特定のタイプの縫合糸の除去が省略され得る。従って、本明細書に記載される組成物はデリケートな組織との使用に特に適切であり得、デリケートな組織では縫合糸、クランプまたは他の従来の組織閉鎖機構がさらなる組織損傷を生じ得る。
【0055】
2つの組織端の係合を達成するために、2つの端部を近接させて、2部分の接着剤またはシーラントの2つの成分を、組織に対してその2つの近接した端部に対して同時にまたは連続して適用する。この組成物は急速に、一般には1分未満で架橋する。従って、本開示の組成物は、創傷に供されてもよいし、そして硬化されてもよく、それによって創傷が閉じる。
【0056】
特定の区別が、科学界では「肉(flesh)」と「組織(tissue)」という用語の用法の間で導かれ得るが、この用語は、患者の処置のために医学分野内で利用されるべき本発明の生体吸収性組成物を当業者が理解する際の一般的な基層を指すものとして本明細書においては交換可能に用いられる。本明細書において用いる場合、「組織(tissue)」とは、限定はしないが、皮膚、骨、ニューロン、軸策、軟骨、血管、角膜、筋肉、筋膜、脳、前立腺、乳房、子宮内膜、肺、膵臓、小腸、血液、肝臓、精巣、卵巣、頸部、結腸、胃、食道、脾臓、リンパ節、骨髄、腎臓、末梢血、胎児組織および/または腹水を包含し得る。
【0057】
本明細書において記載される組成物はまた、シーラントとして用いられてもよい。シーラントとして用いられる場合、本開示の2部分のシーラント組成物を、外科手術において用いて、外科手術手順の間および後の両方で出血または液体の漏出を妨げるかまたは阻害するための生体吸収性の組成物を形成してもよい。これはまた、肺手術に関連する空気の漏出を妨げるために適用されてもよい。本明細書における化合物は、組織におけるなんらかの欠損を封鎖するために、そしてなんらかの液体または空気の動きを封鎖するために少なくとも十分な量で所望の領域に直接適用されてもよい。この2部分の接着剤またはシーラントはまた、血液または他の液体の漏出を縫合糸またはステープルのラインで妨げるかまたは制御するために用いられ得る。
【0058】
本発明の2部分の接着剤またはシーラントはまた、植皮片および位置調節組織皮弁(position tissue flaps)を再建手術の間に結着するために用いられてもよい。あるいは、本発明の2部分の接着剤またはシーラントは、歯周手術において組織皮弁を閉じるために用いられてもよい。
【0059】
本開示の2部分の接着剤またはシーラントの適用は、任意の従来の手段によって行われてもよい。これらとしては、滴下、ブラッシングもしくは組織表面へのこの組成物の他の直接の操作、または表面へのこの組成物の噴霧が挙げられる。開放手術では、手、鉗子などによる適用が考慮される。内視鏡手術では、この組成物は、外套針(trocar)のカニューレを通じて送達されて、そして当該分野で公知の任意のデバイスによってその部位で広げられてもよい。この2成分は、適用までまたはその直前まで別々の容器に保管されて事前に架橋が生じることを妨げられなければならないことが理解されるべきである。凍結された2つの成分を維持することも、望ましくない架橋を妨げることを補助し得る。
【0060】
ある実施形態では、この第一の成分および第二の成分は、2部分の接着剤またはシーラントのうちこの第一の成分を含有する第一のチャンバと、この第二の成分を含有する第二のチャンバと、この第一および第二の成分を分注するための少なくとも1つの出口とを備える装置から送達される。いくつかの有用な実施形態では、この第一の成分は、式IIの官能性化合物を含み、そしてこの第二の組成物は、多官能性化合物を含む。
【0061】
他の実施形態では、本発明の開示の2部分の接着剤またはシーラントが、動物の身体における欠損を満たすための間隙充填剤またはシーラントとして利用される場合特に、架橋の状態および程度をより正確に制御することが有益であり得る。例えば、動物の組織の間隙を充填するための使用の前に2部分の接着剤またはシーラントを部分的に架橋することが所望され得る。ある実施形態では、この2つの成分は、分注の前に混合され得る。このような場合、本発明の開示のこの2部分の接着剤またはシーラントを、間隙または欠損に供し、そして硬化して、それによってこの間隙または欠損を充填してもよい。
【0062】
別の実施形態では、本開示は、組織に対して医学的デバイスを接着させるための本開示の2部分の接着剤またはシーラントを用いるための方法に関する。この医学的デバイスは、インプラントを包含し得る。他の医学的デバイスとしては限定はしないが、ペースメーカー、ステント、シャントなどが挙げられる。一般には、動物組織の表面にデバイスを結合するために、本開示の組成物を、このデバイスに、組織表面に、またはその両方に適用してもよい。次いで、このデバイスおよび組織表面を、2部分の接着剤またはシーラントとそれらの間で接触させる。一旦この2部分の接着剤またはシーラントが架橋して硬化すれば、このデバイスおよび組織の表面はお互いに対して有効に結合される。
【0063】
本開示の2部分の接着剤またはシーラントはまた、外科手術後の癒着を妨げるために用いられ得る。このような適用では、本開示の2部分の接着剤またはシーラントを適用して、内部組織の表面上に層を形成するようにさせて、治癒過程の間の外科的部位で癒着の形成を妨げる。
【0064】
この2部分の接着剤またはシーラントは多数の有益な特性を有する。本開示の2部分の接着剤またはシーラントの組成物は、安全であり、組織に対して増強された接着性を保有し、生体分解性であり、増強された止血能力を有し、低コストであり、かつ調製および使用が容易である。この2部分の接着剤またはシーラントを形成するために利用される化合物の選択を変更することによって、得られたゲルの強度および弾性は、ゲル化時間と同様に制御され得る。
【0065】
本発明の2部分の接着剤またはシーラント組成物は、複雑なゲルマトリックスを生体吸収性の組成物として急速に形成し、これによって所望の位置において組織端部または移植された医学的デバイスの定常的な位置決めが確実になり、そして全体的な必要な外科的/適用時間が減少する。この得られたゲルは、ゲルマトリックス形成の際、膨潤をほとんど示さないか、または全く示さず、従って、配置された組織端部の位置の完全性および/または医学的デバイスの位置を保持する。この2部分の接着剤またはシーラントは、強力な粘着性の結合を形成する。これはすぐれた医学的能力および強度を示すが、生きた組織を結合するのに必要な能力は保持している。この強度および柔軟性によって、外科的な組織端部がずれることなくある程度の組織の動きが可能になる。
【0066】
本明細書に記載される本発明の開示の特徴を当業者がさらによく実施できるように、以下の実施例を例示のために提供しているが、本発明の開示の特徴を限定するものではない。
【実施例】
【0067】
実施例1
18%のグリコリドを含有するランダムなグリコリド/ラクチドのコポリマーの41グラムを、窒素ブラケットの下で、機械的なミキサーを装備した3つ首の250mlの丸底フラスコ中に加えて、次いでそのフラスコを油浴に入れた。その油浴の温度は155℃に設定した。このコポリマーを融解した後、59.0gのPEG400(Aldrich;Milwaukee,WI)および0.04gのオクタン酸スズ(Aldrich;Milwaukee,WI)を添加した。その反応を、155℃で24時間進行させた。この最終生成物は、10sec−1の剪断速度でBrookfieldコーン(cone)およびプレート粘度計を用いて測定した場合、25℃で82.5cpsの粘度を有した。この構造は、NMRおよびFTER(Spectra)によって、以下であることが確認された:
HO−(HC(CH)−COO−HC(CH)−COO)0.82−(CH−CH−O)−(CO−CH−OOC−CH0.18−OH。
【0068】
実施例2
18%のグリコリドを含有するランダムなグリコリド/ラクチドのコポリマーの58.16グラムを、窒素ブラケットの下で、機械的なミキサーを装備した3つ首の250mlの丸底フラスコ中に加えて、次いでそのフラスコを油浴に入れた。その油浴の温度は155℃に設定した。このコポリマーを融解した後、41.84gのPEG200(Aldrich;Milwaukee,WI)および0.04gのオクタン酸スズ(Aldrich;Milwaukee,WI)を添加した。その反応を、155℃で24時間進行させた。この最終生成物は、10sec−1の剪断速度でBrookfieldコーンおよびプレート粘度計を用いて測定した場合、25℃で1429cpsという粘度を有した。この構造は、NMRおよびFTER(Spectra)によって、以下であることが確認された:
HO−(HC(CH)−COO−HC(CH)−COO)0.82−(CH−CH−O)−(CO−CH−OOC−CH0.18−OH。
【0069】
実施例3
10%のグリコリドを含有するランダムなグリコリド/ε−カプロラクトンのコポリマーの27.54グラムを、窒素ブラケットの下で、機械的なミキサーを装備した3つ首の250mlの丸底フラスコ中に加えて、次いでそのフラスコを油浴に入れた。その油浴の温度は155℃に設定した。このコポリマーを融解した後、72.46gのPEG600(Aldrich)および0.04gのオクタン酸スズ(Aldrich;Milwaukee,WI)を添加した。その反応を、155℃で24時間進行させた。この最終生成物は、10sec−1の剪断速度でBrookfieldコーンおよびプレート粘度計を用いて測定した場合、25℃で2415〜2374cpsにおよぶ粘度を有した。この構造は、NMRおよびFTER(Spectra)によって、以下であることが確認された:
HO−(CH−COO)0.90−(CH−CH−O)−(CO−CH−OOC−CH0.10−OH。
【0070】
実施例4
18%のグリコリドを含有するランダムなグリコリド/ラクチドのコポリマーの10グラムを、窒素ブラケットの下で、丸底フラスコ中に加えた。ここに、24.85gのヘキサメチレンジイソシアネート(Aldrich;Milwaukee,WI)を、室温で攪拌しながら添加した。その反応混合物を、120℃まで加熱し、その反応は24時間継続させた。この生成物を回収し、そして未反応の物質を石油エーテル中に抽出した。過剰の溶媒をデカントした後、その沈殿物を減圧下で乾燥した。得られた生成物は、10sec−1の剪断速度でBrookfieldコーンおよびプレート粘度計を用いて測定した場合、25℃で110cpsという粘度を有した。このイソシアネート含量は、オートタイトレーター(autotitorator)の使用を適合させるためにASTMD2572−91の改変を用いて、Schott Geraete GmbH,Mainz,Germanyによって製造されたTitroLine Alpha Autotitratorでの滴定によって測定した場合25.2%であった。
【0071】
実施例5
実施例2由来の生成物の10グラムを、窒素ブラケットの下で、丸底フラスコ中に加えた。ここに、35.6gのヘキサメチレンジイソシアネート(Aldrich;Milwaukee,WI)を、磁気スターラーを用いて室温で攪拌しながら添加した。その反応混合物を、120℃まで加熱し、そしてその反応は24時間継続させた。この生成物を回収し、そして未反応の物質を石油エーテル中に抽出した。過剰の溶媒をデカントした後、その沈殿物を減圧下で乾燥した。得られた生成物は、10sec−1の剪断速度でBrookfieldコーンおよびプレート粘度計を用いて測定した場合、25℃で477.7cpsという粘度を有した。このイソシアネート含量は、17.6%であった。
【0072】
実施例6
実施例3由来の生成物の10グラムを、窒素ブラケットの下で、丸底フラスコ中に加えた。ここに、29.4gのヘキサメチレンジイソシアネート(Aldrich;Milwaukee,WI)を、磁気スターラーを用いて室温で攪拌しながら添加した。その反応混合物を、120℃まで加熱し、そしてその反応は24時間継続させた。この生成物を回収し、そして未反応の物質を石油エーテル中に抽出した。過剰の溶媒をデカントした後、その沈殿物を減圧下で乾燥した。得られた生成物は、10sec−1の剪断速度でBrookfieldコーンおよびプレート粘度計を用いて測定した場合、25℃で255cpsという粘度を有した。このイソシアネート含量は、16.6%であった。
【0073】
種々の改変が本明細書に開示される実施形態に対してなされ得るということが理解される。従って、上記の説明は、限定と解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例証である。当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲および趣旨内の他の改変を想定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
HO−R−(A)−R−OH
の化合物であって、Aが、約1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であって;Rが各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基を含み;そしてxが各々の出現において同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である、化合物。
【請求項2】
Aがポリアルキレンオキシドに由来する基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、約200、約400、約600および約900からなる群より選択される分子量を有するポリエチレングリコール化合物由来の基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1つ以上のR基が、グリコリド、ラクチド、p−ジオキサノン、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物に由来する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
少なくとも1つのR基がグリコリド由来であり、かつ少なくとも1つの他のR基がε−カプロラクトン由来である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
以下:
HO−R−(A)−R−OH、
HO−R−R−(A)−R−R−OH、および
HO−R−R−R−(A)−R−R−R−OH、
からなる群より選択される式を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物とジイソシアネートとを反応させる工程を包含する、方法。
【請求項8】
前記ジイソシアネートが、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記ジイソシアネートが、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、および2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネートからなる群より選択される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物とスルホスクシンイミジルエステルおよびN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルからなる群より選択されるスクシンイミジルエステルとを反応させる工程を包含する、方法。
【請求項11】
ジヒドロキシ化合物と生体吸収性ポリマーとをエステル交換反応条件下で反応させる工程を包含する、請求項1に記載の化合物を作製する方法。
【請求項12】
前記生体吸収性ポリマーが、グリコリド、ラクチド、p−ジオキサノン、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の成分に由来する反復単位を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式:
OCN−Z−HNCOO−R−(A)−R−OOCNH−Z−NCO
の化合物であって、
Zが、芳香族基または脂肪族基であり;Aが約1000未満の分子量を有するポリアルキレンオキシド由来の基であり;Rが、各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基を含み;そしてxが各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である、化合物。
【請求項14】
請求項13に記載の化合物であって、Zがトルエン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジベンジル、ナフチレン、フェニレン、キシリレン、オキシビスフェニル、テトラメチルキシリレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、リジン、メチルペンタン、トリメチルヘキサメチレン、イソホロン、シクロヘキサン、水素化キシリレン、水素化ジフェニルメタン、水素化トリメチルキシリレン、トリメチルフェニレン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、化合物。
【請求項15】
Aが、約200、約400、約600および約900からなる群より選択される分子量を有するポリエチレングリコール由来の基である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
1つ以上のR基が、グリコリド、ラクチド、p−ジオキサノン、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物に由来する、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
式:
Y−R−(A)−R−Y (II)
の化合物であって、
Yが、求電子性または求核性の官能基を提供する基であり;Aが約1000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物由来の基であり;Rが、各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ吸収性モノマー由来の基を含み;そしてxが各々の出現で同じであっても異なってもよく、かつ0または1であり、ただしこれは少なくとも2つのR基が存在するという条件下である、化合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物であって、Yが、−NH、−SH、−OH、−PH、−CO−NH−NH、−CON(COCH、−COH、−CHO、−CHOCH、−N=C=O、−SO−CH=CH、−N(COCH)、−S−S−(CN)、およびそれらの組合せからなる群より選択される基を含む、化合物。
【請求項19】
Yがイソシアネートを含む、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
請求項17に記載の化合物を含む第一の組成物と、多官能性化合物を含む第二の組成物とを含む、2部分の接着システム。
【請求項21】
請求項17に記載の化合物を含む第一の組成物と、ポリアミン化合物を含む第二の組成物とを含む、2部分の接着システム。
【請求項22】
少なくとも2つのチャンバおよび少なくとも1つの出口を有する分注デバイスを提供する工程と;
該分注デバイスの第一のチャンバに請求項17に記載の化合物を含む第一の組成物を提供する工程と;
該分注デバイスの第二のチャンバに多官能性化合物を含む第二の組成物を提供する工程と;
該分注デバイスの該少なくとも1つの出口を通じて該第一および第二の組成物を分注する工程と;
を包含する、方法。
【請求項23】
前記第二の組成物がポリアミン化合物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
分注の前に前記第一および第二の組成物を混合する工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2009−523179(P2009−523179A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544475(P2008−544475)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/046556
【国際公開番号】WO2007/067624
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】