説明

生体情報生成装置

【課題】静脈パターンの検出とアルコール成分の有無の判定とを実行する装置を薄型化する。
【解決手段】撮像装置12は、受光量に応じた検出信号を生成する複数の受光素子34を基板32に形成した受光部30と、指200からの入射光を各受光素子34に対して集光する複数のレンズ44を基板42に形成した集光部40とを具備する。基板32と基板42との間には、波長λ1の検査光を指200に照射する複数の第1有機EL素子D1と、波長λ2の検査光を指200に照射する複数の第2有機EL素子D2とを含む複数の有機EL素子Dが配置される。静脈検出部74は、各第1有機EL素子D1の発光時に各受光素子34が生成する検出信号を利用して指200の静脈パターンを検出し、飲酒判定部76は、各第2有機EL素子D2の発光時に各受光素子34が生成する検出信号を利用して指200の血中のアルコール成分の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の静脈パターンの検出とアルコール成分の有無の判定とを光学的に実行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の飲酒運転を防止するために運転者の飲酒状態(血中のアルコール成分の有無)を判定する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1や特許文献2には、運転者の本人認証に使用される静脈パターンの検出と運転者の血中のアルコール成分の有無の判定とを光学的に実行し、本人認証の成功とアルコール成分の非検出とを条件として車両の始動を許可する技術が開示されている。具体的には、相異なる波長の光を照射する第1光源および第2光源と、生体から到来する光量に応じた検出信号を生成する受光素子とが設置される。第1光源の発光時の検出信号に応じて静脈パターンが検出され、第2光源の発光時の検出信号に応じて血中のアルコール成分の有無が判定される。第1光源および第2光源にはLED素子が利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−302915号公報
【特許文献2】特開2010−036799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1および特許文献2の技術では、第1光源および第2光源としてLED素子を設置する必要があるから、装置の薄型化が困難であるという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、静脈パターンの検出とアルコール成分の有無の判定とを光学的に実行する装置を薄型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の生体情報生成装置は、受光量に応じた検出信号を生成する複数の受光素子を第1基板(例えば基板32)に形成した受光部と、生体からの入射光を各受光素子に対して集光する複数のレンズを光透過性の第2基板(例えば基板42)に形成した集光部と、第1基板と第2基板との間に配置され、第1波長(例えば波長λ1)の光を生体に照射する複数の第1有機EL素子と、第1波長とは相違する第2波長(例えば波長λ2)の光を生体に照射する複数の第2有機EL素子とを含む複数の有機EL素子と、各第1有機EL素子の発光時に各受光素子が生成する検出信号を利用して生体の静脈パターンを検出する静脈検出手段(例えば静脈検出部74)と、各第2有機EL素子の発光時に各受光素子が生成する検出信号を利用して生体内部のアルコール成分の有無を判定する飲酒判定手段(例えば飲酒判定部76)とを具備する。以上の構成では、薄膜型の有機EL素子が光源として利用されるから、LED素子を光源として利用する従来の技術と比較して装置の薄型化が実現される。
【0006】
本発明の第1態様に係る生体情報生成装置は、第1基板と第2基板との間に配置された光透過性の第3基板を具備する。また、本発明の第2態様では、第2基板のうち受光部側の面上に複数の有機EL素子が形成される。第2態様では、複数の有機EL素子が複数のレンズとともに第2基板に形成されるから、第2基板とは別個の第3基板に複数の有機EL素子が形成される第1態様と比較して装置を更に薄型化することが可能である。他方、第1態様では、複数のレンズが形成される第2基板とは別個の第3基板に複数の有機EL素子が形成されるから、第2態様と比較すると、例えば複数のレンズや複数の有機EL素子を形成する方法の制約が少ないという利点がある。
【0007】
第2態様の生体情報生成装置の好適例において、複数のレンズは、第2基板のうち受光部側の面上に行列状に形成され、複数の有機EL素子の各々の発光層は、平面視で各レンズに四方を包囲された窪み部に形成される。以上の態様では、各有機EL素子の発光層が形成される空間を仕切る隔壁として複数のレンズが利用されるから、隔壁層を独立に形成する構成と比較して装置の薄型化や製造固定の簡素化が実現されるという利点がある。
【0008】
第1有機EL素子と第2有機EL素子との位置関係は任意であるが、例えば、第1方向(例えばY方向)に配列する2以上の第1有機EL素子と第1方向に配列する2以上の第2有機EL素子とを、第1方向に直交する第2方向(例えばX方向)に交互に配置した構成(例えば後述の第1実施形態)や、第1方向(例えばX方向)に延在する第1有機EL素子と第1方向に延在する第2有機EL素子とを、第1方向に直交する第2方向(例えばY方向)に交互に配置した構成(例えば後述の第3実施形態)が好適である。ただし、アルコール成分の有無の判定に必要な撮像の範囲は狭いという事情を考慮すると、生体の広範囲にわたる静脈パターンを検出する趣旨からは、複数の第1有機EL素子を静脈検出領域に配置し、静脈検出領域よりも小面積の飲酒判定領域に複数の第2有機EL素子を配置した構成(例えば第4実施形態)が好適である。
【0009】
以上の各態様の生体情報生成装置は、例えば車両の始動の許否を決定する要素として好適に採用される。例えば、静脈検出手段が検出した静脈パターンを利用した認証処理の成功と、飲酒判定手段によるアルコール成分の非検出との判定とを条件として、車両のエンジンの始動が許可される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生体情報生成装置の模式図である。
【図2】撮像装置の断面図である。
【図3】レンズと有機EL素子との関係を示す模式図である。
【図4】光源部の断面図である。
【図5】第2実施形態における撮像装置の断面図である。
【図6】第2実施形態における光源部の断面図である。
【図7】第3実施形態におけるレンズと有機EL素子との関係を示す模式図である。
【図8】第4実施形態におけるレンズと有機EL素子との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る生体情報生成装置100の模式図である。生体情報生成装置100は、利用者の指200を光学的に撮像することで指200の静脈パターンの検出と血中のアルコール成分の有無の判定とを実行し、静脈パターンを利用した本人認証の成功とアルコール成分の非検出とを条件として車両の始動を許可する飲酒運転防止装置である。生体情報生成装置100は、撮像装置12と制御装置14とを具備する。撮像装置12の表面(以下「検出面」という)16に利用者の指200が載置される。
【0012】
図2は、撮像装置12の断面図である。図2に示すように、撮像装置12は、受光部30と集光部40と光源部50とを含んで構成される。集光部40は、指200(被写体)と受光部30との間に介在し、光源部50は受光部30と集光部40との間に介在する。
【0013】
受光部30(例えばCMOSセンサーやCCDセンサー)は、平板状の基板32と複数の受光素子34とを具備する。複数の受光素子34は、基板32のうち指200側(集光部40側)の表面上に形成されて行列状に配列する。各受光素子34は、受光量に応じた検出信号を生成および出力する。
【0014】
集光部40は、基板42と複数のレンズ(マイクロレンズ)44とを含んで構成される。基板42は、光透過性の板状部材(例えばガラス基板)である。基板42のうち受光部30とは反対側の表面が検出面16に相当する。複数のレンズ44の各々は、受光部30の各受光素子34に1対1に対応するように基板42のうち受光部30側の表面に形成される。各レンズ44は、指200側からの入射光をそのレンズ44に対応する受光素子34に対して集光する凸レンズである。なお、基板42と複数のレンズ44とを一体に形成することも可能である。
【0015】
図3は、集光部40の各レンズ44の配列を示す模式図である。図3に示すように、複数のレンズ44は、相互に直交するX方向およびY方向に沿って行列状に配列する。具体的には、X方向に延在する複数の直線LX1とY方向に延在する複数の直線LY1との各交点を各レンズ44の光軸が通過するように各レンズ44は配列される。図2に示すように、各レンズ44の光軸はそのレンズ44に対応する受光素子34の中心を通過する。
【0016】
図2の光源部50は、基板52と複数の有機EL素子D(D1,D2)とを含んで構成される。基板52は、光透過性の板状部材(例えばガラス基板)である。複数の有機EL素子Dは、所定の波長の光(以下「検査光」という)を指200に照射する薄膜型の発光素子(光源)であり、図3に示すように基板52の面上にX方向およびY方向に沿って行列状に配列する。図3には、複数のレンズ44が配列する各直線LX1と交互にY方向に配列する複数の直線LX2と、X方向に延在する複数の直線LX2とY方向に延在する複数の直線LY2とが図示されている。複数の直線LX1と複数の直線LX2とはY方向に等間隔で交互に配列し、複数の直線LY1と複数の直線LY2とはX方向に等間隔で交互に配列する。複数の有機EL素子Dは、複数の直線LX2と複数の直線LY2との各交差に配置される。
【0017】
図3に示すように、複数の有機EL素子Dは、相異なる波長の検出光を照射する第1有機EL素子D1と第2有機EL素子D2とに区分される。各第1有機EL素子D1は波長λ1の検査光を出射し、各第2有機EL素子D2は波長λ2の検査光を出射する。波長λ1および波長λ2は近赤外光の波長域内の相異なる波長である。具体的には、波長λ1は、指200の静脈内の還元ヘモグロビンに吸収される数値に設定され、波長λ2は、アルコール成分に吸収される数値に設定される。複数の第1有機EL素子D1は静脈パターンの検出に使用され、複数の第2有機EL素子D2はアルコール成分の有無の判定に使用される。第1実施形態では、図3に示すように、Y方向の各直線LY2の線上に位置する各第1有機EL素子D1の配列と、Y方向の各直線LY2の線上に位置する各第2有機EL素子D2の配列とがX方向に等間隔で交互に配置される。
【0018】
図4は、光源部50の断面図である。図4に示すように、光源部50の基板52のうち集光部40とは反対側の表面上には遮光層54が形成される。遮光層54は、検査光を遮光(吸収または反射)する材料で形成された薄膜である。遮光層54の材料には、例えば光吸収材料が混入された樹脂材料、クロムや窒化チタン(TiN)等の遮光性の金属材料が好適である。遮光層54には、集光部40の各レンズ44に1対1に対応する開口部542と、各有機EL素子Dに1対1に対応する開口部544とが形成される。図2に示すように、各レンズ44の光軸はそのレンズ44に対応する開口部542の中心を通過する。したがって、各レンズ44で集光された光がそのレンズ44に対応する受光素子34以外の受光素子34に到達すること(光線クロストーク)を防止することが可能である。
【0019】
図4に示すように、遮光層54が形成された基板52の表面には各有機EL素子Dの第1電極62が形成される。第1電極62は、光透過性の導電材料(例えばITO(Indium Tin Oxide))で形成されて有機EL素子Dの陽極として機能する。第1電極62が形成された基板52の表面には光透過性の材料(例えば樹脂材料)で隔壁層56が形成される。隔壁層56は、各有機EL素子Dに対応する開口部が形成された格子状の要素である。第1電極62は隔壁層56の各開口部の内側に露出する。
【0020】
隔壁層56の各開口部の内周面で包囲されて第1電極62の表面を底面とする窪み部には各有機EL素子Dの発光層64が形成される。発光層64は、有機EL材料で形成された薄膜である。発光層64の形成には、例えば液滴吐出技術(インクジェット)等の公知の技術が任意に採用される。第1有機EL素子D1の発光の波長λ1と第2有機EL素子D2の発光の波長λ2とが相違するように第1有機EL素子D1の発光層64と第2有機EL素子D2の発光層64とは相異なる材料で形成される。なお、第1電極62と発光層64との間に正孔注入層や正孔輸送層を介挿することも可能である。
【0021】
発光層64が形成された隔壁層56の面上には各有機EL素子Dの第2電極66が形成される。第2電極66は、発光層64を被覆するように光反射性(遮光性)の材料で形成されて有機EL素子Dの陰極として機能する。第2電極66の材料には例えばクロムが好適である。なお、第2電極66と発光層64との間に電子注入層や電子輸送層を介挿することも可能である。第1電極62と第2電極66とが発光層64を挟んで対向する領域が有機EL素子D(D1,D2)として機能する。
【0022】
以上の構成において、各有機EL素子Dから出射した検査光(発光層64からの直接光や第2電極66での反射光)は、図2に矢印α1で示すように、遮光層54の開口部544を通過したうえで基板52と集光部40の基板42とを透過して指200に入射する。指200に入射した光は、内部で吸収されながら伝播したうえで指200から出射し、図2に矢印α2で示すように、検出面16から集光部40に入射するとともに各レンズ44で集光されたうえで遮光層54の開口部542を通過して受光素子34に到達する。以上の構成では、発光層64から直接的に受光素子34に向かう光が第2電極66で阻止されるから、発光層64からの出射光が直接的に受光素子34に到達する構成と比較して、コントラストが高い画像(静脈パターン)を取得できるという利点がある。
【0023】
図1の制御装置14は、指200の静脈パターンの検出とアルコール成分の有無の判定とを実行する。第1実施形態では、利用者からの指示(例えば車両のエンジンの始動の指示)を契機として、静脈パターンの検出とアルコール成分の判定とが順次に実行される。図1に示すように、発光制御部72と静脈検出部74と飲酒判定部76とを含んで構成される。例えば記憶回路(図示略)に格納されたプログラムを演算処理装置(CPU)が実行することで制御装置14の各要素が実現される。
【0024】
発光制御部72は、撮像装置12の各第1有機EL素子D1と各第2有機EL素子D2とを選択的に発光させる。具体的には、発光制御部72は、静脈パターンの検出時には各第1有機EL素子D1に波長λ1の検査光を照射させ、アルコール成分の有無の判定時には各第2有機EL素子D2に波長λ2の検査光を照射させる。
【0025】
静脈検出部74は、指200の静脈パターンを検出する。各第1有機EL素子D1が出射する波長λ1の検査光は静脈内の還元ヘモグロビンに吸収されるから、波長λ1の照射時における各受光素子34の受光量には指200の静脈パターンが反映される。そこで、静脈検出部74は、発光制御部72が各第1有機EL素子D1に波長λ1の検査光を照射させる期間内に各受光素子34が生成する検出信号を利用して指200の静脈パターンを検出する。そして、静脈検出部74は、正規の利用者が事前に登録した静脈パターンと実際に検出信号から特定された静脈パターンとを照合し、両者が合致した場合には正当な利用者と判定し(認証成功)、両者が合致しない場合には正規の利用者でないと判定する(認証失敗)。
【0026】
飲酒判定部76は、利用者の血中のアルコール成分の有無を判定する。各第2有機EL素子D2が出射する波長λ2の検査光はアルコール成分に吸収される。したがって、利用者の血液がアルコール成分を含有する場合(飲酒状態)には各受光素子34の受光量に静脈パターンが反映され、血液がアルコール成分を含有しない場合(非飲酒状態)には各受光素子34の受光量に静脈パターンは反映されない。そこで、飲酒判定部76は、発光制御部72が各第2有機EL素子D2に波長λ2の検査光を照射させる期間内に各受光素子34が生成する検出信号に応じてアルコール成分の有無を判定する。具体的には、飲酒判定部76は、波長λ2の検査光の照射時における各受光素子34の検出信号から静脈パターンが検出される場合には利用者が飲酒状態にあると判定し、静脈パターンが検出されない場合には利用者が飲酒状態にないと判定する。
【0027】
制御装置14は、静脈検出部74による認証の成功と飲酒判定部76によるアルコール成分の非検出とを条件として車両のエンジンの始動を許可する。他方、静脈検出部74による認証が失敗した場合や飲酒判定部76がアルコール成分を検出した場合にはエンジンの始動が禁止される。なお、静脈検出部74による認証の成功を条件として飲酒判定部76によるアルコール成分の有無の判定(各第2有機EL素子D2による検査光の照射)を実行することも可能である。
【0028】
以上に説明した第1実施形態では、薄膜状の発光層64を含む有機EL素子Dが検査光の光源として利用されるから、LED素子を光源として利用する特許文献1や特許文献2の技術と比較して撮像装置12の薄型化が実現されるという利点がある。また、LED素子が不要となることで部品点数が削減されるという利点もある。
【0029】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各構成において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0030】
図5は、第2実施形態における撮像装置12の断面図である。図5に示すように、第2実施形態では、集光部40の基板42のうち受光部30側の表面上に複数の有機EL素子D(D1,D2)が形成される。各有機EL素子Dは、第1実施形態と同様に平面視で行列状に配列する。
【0031】
図6は、集光部40の断面図である。図6に示すように、基板42のうち受光部30側の表面上に各有機EL素子Dの第1電極62が光透過性の導電材料で形成される。各第1電極62が形成された基板42の表面上に複数のレンズ44が形成されて行列状に配列する。
【0032】
図6に示すように、各有機EL素子Dの発光層64は、平面視で各レンズ44に四方を包囲されて第1電極62の表面を底面とする窪み部の内側に形成される。具体的には、発光層64は、第1電極62の表面から第1電極62の周囲の各レンズ44の表面上に至るように連続する。すなわち、各有機EL素子Dの発光層64が形成される空間を仕切る隔壁(第1実施形態の隔壁層56)として複数のレンズ44が利用される。発光層64の形成には、例えば液滴吐出技術等の公知の技術が任意に採用される。第1実施形態と同様に、第1有機EL素子D1の発光の波長λ1と第2有機EL素子D2の発光の波長λ2とが相違するように第1有機EL素子D1の発光層64と第2有機EL素子D2の発光層64とは相異なる材料で形成される。各有機EL素子Dの第2電極66は、各発光層64を被覆するように光反射性(遮光性)の材料で形成される。
【0033】
以上の構成において、各有機EL素子Dから出射した検査光(発光層64からの直接光や第2電極66での反射光)は、図5に矢印α1で示すように、基板42を透過して指200に入射する。指200に入射した光は、内部で吸収されながら伝播したうえで指200から出射し、図5に矢印α2で示すように、検出面16から集光部40に入射するとともに各レンズ44で集光されたうえで各第2電極66の間隙を通過して受光素子34に到達する。
【0034】
第2実施形態では、複数の有機EL素子Dが複数のレンズ44とともに集光部40の基板42に形成される。したがって、基板42とは別個の基板52に複数の有機EL素子Dを形成する第1実施形態と比較して、撮像装置12を更に薄型化することが可能である。第2実施形態では特に、各有機EL素子Dの発光層64が形成される空間を仕切る隔壁として複数のレンズ44が利用されるから、隔壁層56を独立に形成する第1実施形態と比較して、撮像装置12の薄型化や製造工程の簡素化が実現されるという利点がある。
【0035】
<C:第3実施形態>
図7は、第3実施形態における各レンズ44と各有機EL素子Dとの位置関係の模式図である。第3実施形態の各有機EL素子Dは、第1実施形態と同様に、集光部40の基板42とは別個の基板52に形成される。図7に示すように、第1有機EL素子D1および第2有機EL素子D2の各々は、直線LX2に沿ってX方向に直線状(帯状)に延在する形状に形成され、第1有機EL素子D1と第2有機EL素子D2とはY方向に等間隔で交互に配置される。第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0036】
<D:第4実施形態>
図8は、第4実施形態における各レンズ44と各有機EL素子Dとの位置関係の模式図である。第4実施形態の各有機EL素子Dは、第1実施形態と同様に、集光部40の基板42とは別個の基板52の面上に平面状に配列する。図8に示すように、基板52のうち受光部30側の表面は、静脈検出領域82と飲酒判定領域84とに区分される。飲酒判定領域84は、基板52の表面のうち検出面16に載置された指200の先端部分に対向する領域(すなわち、検出面16の周縁に近い領域)であり、静脈検出領域82は、基板52の表面のうち平面視で飲酒判定領域84以外の領域である。静脈検出領域82の面積は飲酒判定領域84の面積を上回る。
【0037】
静脈検出領域82には複数の第1有機EL素子D1が形成される。具体的には、X方向の各直線LX2に沿う直線状の第1有機EL素子D1が静脈検出領域82内に相互に間隔をあけて配置される。他方、静脈検出領域82の外側の飲酒判定領域84には複数の第2有機EL素子D2が形成される。具体的には、第1有機EL素子D1と同様に、X方向の各直線LX2に沿う直線状の第2有機EL素子D2が飲酒判定領域84内に相互に間隔をあけて配置される。
【0038】
第4実施形態では、指200の広範囲に対向する静脈検出領域82に静脈パターンの検出用の複数の第1有機EL素子D1が形成されるから、指200の広範囲にわたる静脈パターンが生成される。したがって、静脈パターンを利用した認証の精度を向上させることが可能である。なお、アルコール成分の有無の判定には指200の広範囲にわたる撮像は不要である。したがって、アルコール成分の判定用の各第2有機EL素子D2が狭い範囲(飲酒判定領域84)に形成されるとは言っても、アルコール成分の有無の判定の精度が過度に低下することはない。
【0039】
なお、第1有機EL素子D1が形成される静脈検出領域82と第2有機EL素子D2が形成される飲酒判定領域84との位置関係は任意である。例えば、静脈検出領域82を包囲するように飲酒判定領域84を形成した構成(すなわち、複数の第1有機EL素子D1を平面視で包囲するように複数の第2有機EL素子D2を形成した構成)も採用され得る。また、第3実施形態および第4実施形態では基板52に各有機EL素子Dを形成したが、第2実施形態のように複数の有機EL素子Dを各レンズ44とともに基板42に形成した場合にも、各有機EL素子Dを図7や図8の態様で配列した構成が同様に採用され得る。
【0040】
<E:変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0041】
(1)変形例1
以上の各形態では、第2有機EL素子D2の発光時における各受光素子34の検出信号に応じてアルコール成分の有無を判定したが、アルコール成分の有無の判定には公知の技術が任意に採用される。例えば以下に説明するように特許文献2の技術を利用することが可能である。
【0042】
飲酒判定部76は、各第1有機EL素子D1が波長λ1(例えば870nm)の検査光を照射したときの各受光素子34の検出信号から指200の脈波P1を検出し、各第2有機EL素子D2が波長λ2(例えば1300nm)の検査光を照射したときの各受光素子34の検出信号から指200の脈波P2を検出する。そして、飲酒判定部76は、脈波P1および脈波P2の波高比を血中のアルコール成分の濃度の指標として算定し、脈波P1と脈波P2との波高比が所定の閾値を上回る場合には飲酒状態にあると判定するとともに波高比が閾値を下回る場合には飲酒状態にないと判定する。
【0043】
以上の例示から理解されるように、飲酒判定部76は、各第2有機EL素子D2の発光時における各受光素子34の検出信号を利用してアルコール成分の有無を判定する要素として包括され、「各第2有機EL素子D2の発光時における各受光素子34の検出信号を利用して」とは、各第2有機EL素子D2の発光時における各受光素子34の検出信号のみを利用する場合のほか、各第1有機EL素子D1の発光時における検出信号と各第2有機EL素子D2の発光時における検出信号との双方を利用する場合も含意する。
【0044】
(2)変形例2
第1有機EL素子D1および第2有機EL素子D2の配置の態様は以上の例示に限定されない。例えば、第4実施形態(図8)ではX方向に延在する第1有機EL素子D1および第2有機EL素子D2を例示したが、静脈検出領域82内にX方向およびY方向に沿って複数の第1有機EL素子D1を行列状に配列するとともに飲酒判定領域84内にX方向およびY方向に沿って複数の第2有機EL素子D2を行列状に配列することも可能である。また、第1実施形態において、X方向およびY方向の各々に沿って第1有機EL素子D1と第2有機EL素子D2とを交互に配列した構成(すなわち、1個の第1有機EL素子D1に対してX方向の両側およびY方向の両側に第2有機EL素子D2が隣合う構成)も採用され得る。
【符号の説明】
【0045】
100……生体情報生成装置、12……撮像装置、14……制御装置、16……検出面、30……受光部、32,42,52……基板、34……受光素子、40……集光部、44……レンズ、50……光源部、D……有機EL素子、D1……第1有機EL素子、D2……第2有機EL素子、54……遮光層、542,544……開口部、56……隔壁層、62……第1電極、64……発光層、66……第2電極、72……発光制御部、74……静脈検出部、76……飲酒判定部、82……静脈検出領域、84……飲酒判定領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光量に応じた検出信号を生成する複数の受光素子を第1基板に形成した受光部と、
生体からの入射光を前記各受光素子に対して集光する複数のレンズを光透過性の第2基板に形成した集光部と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、第1波長の光を前記生体に照射する複数の第1有機EL素子と、前記第1波長とは相違する第2波長の光を前記生体に照射する複数の第2有機EL素子とを含む複数の有機EL素子と、
前記各第1有機EL素子の発光時に前記各受光素子が生成する検出信号を利用して前記生体の静脈パターンを検出する静脈検出手段と、
前記各第2有機EL素子の発光時に前記各受光素子が生成する検出信号を利用して前記生体内部のアルコール成分の有無を判定する飲酒判定手段と
を具備する生体情報生成装置。
【請求項2】
前記第1基板と前記第2基板との間に配置された光透過性の第3基板を具備し、
前記複数の有機EL素子は前記第3基板に形成される
請求項1の生体情報生成装置。
【請求項3】
前記複数の有機EL素子は、前記第2基板のうち前記受光部側の面上に形成される
請求項1の生体情報生成装置。
【請求項4】
前記複数のレンズは、前記第2基板のうち前記受光部側の面上に行列状に形成され、
前記複数の有機EL素子の各々の発光層は、平面視で前記各レンズに四方を包囲された窪み部に形成される
請求項1から請求項3の何れかの生体情報生成装置。
【請求項5】
第1方向に配列する2以上の前記第1有機EL素子と前記第1方向に配列する2以上の前記第2有機EL素子とが、前記第1方向に直交する第2方向に交互に配置される
請求項1から請求項4の何れかの生体情報生成装置。
【請求項6】
第1方向に延在する前記第1有機EL素子と、前記第1方向に延在する前記第2有機EL素子とが、前記第1方向に直交する第2方向に交互に配置される
請求項1から請求項4の何れかの生体情報生成装置。
【請求項7】
前記複数の第1有機EL素子および前記複数の第2有機EL素子は平面状に配列し、
前記複数の第2有機EL素子は、前記複数の第1有機EL素子が配列された静脈検出領域に対して平面視で外側に位置する飲酒判定領域に配置され、
前記静脈検出領域の面積は前記飲酒判定領域の面積を上回る
請求項1から請求項4の何れかの生体情報生成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−217570(P2012−217570A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85276(P2011−85276)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】