説明

生体情報通信装置および生体情報監視システム

【課題】消費電力を低減できて持続時間も長くできる生体情報通信装置を提供する。
【解決手段】生体情報通信装置2は、アンテナ15と、生体センサ12と、沈水センサ11と、生体センサ12で検出した生体情報を送信する通信機150と、アンテナ整合機140と、沈水センサ11の検出結果でアンテナ整合機140を制御する制御回路13とを備える。アンテナ整合機140は、水中用整合回路142と、空中用整合回路141と、第1スイッチ143と、第2スイッチ144とを備える。制御回路13は、沈水センサ11でアンテナ15が水中に没していることが検出されると、スイッチ143,144を制御してアンテナ15および通信機150を水中用整合回路142に接続する。制御回路13は、アンテナ15が水中に没していないことが検出されると、スイッチ143,144を制御してアンテナ15および通信機150を空中用整合回路141に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報通信装置および生体情報監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心拍、脈拍などの人の生体情報を測定する携帯型の生体情報測定システムが知られている(特許文献1参照)。
この生体情報測定システムでは、送信機においては、通信環境状態(空気中か水中か)によって決定された信号送信レベルを複数の値に変更し、検出した生体情報の同一データを各信号送信レベルごとに送信、つまり同一データを複数回送信していた。
また、送信情報には、生体情報の他に、同一データであることを判別するための送信番号を付与していた。
【0003】
一方、受信機においては、受信感度を複数の値に変更して前記データを受信し、送信番号によって同一データが重複して記憶されないように制御していた。
【0004】
【特許文献1】特開2007−174636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、同一データを複数回送信、受信しているため、消費電力が増大するという問題があった。
特に、人体に装着して心拍や脈拍などを検出する携帯型の装置の場合、電池で駆動されるため、消費電力が増大すると、持続時間が短くなり、電池を頻繁に交換しなければならず、利便性が低下するという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、消費電力を低減できて持続時間も長くできる生体情報通信装置および生体情報監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンテナと、生体情報を検出する生体情報検出センサと、少なくとも前記アンテナが水中に没しているか否かを検出する沈水センサと、前記生体情報検出センサで検出した生体情報を、前記アンテナを介して送信する送信機能を有する通信機と、前記アンテナおよび通信機間に配置されるアンテナ整合機と、前記沈水センサから出力される検出結果に基づいて前記アンテナ整合機を制御する制御回路とを備え、前記アンテナ整合機は、前記アンテナが水中に没している際に用いられる水中用整合回路と、前記アンテナが空中にある際に用いられる空中用整合回路と、前記アンテナと前記各整合回路との接続状態を切り替える第1スイッチと、前記通信機と前記各整合回路との接続状態を切り替える第2スイッチとを備え、前記制御回路は、前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していることが検出された場合には、前記第1スイッチおよび第2スイッチを制御して、前記アンテナおよび前記通信機を前記水中用整合回路に接続し、前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していないことが検出された場合には、前記第1スイッチおよび第2スイッチを制御して、前記アンテナおよび前記通信機を前記空中用整合回路に接続することを特徴とする。
【0008】
本発明における生体情報は、例えば、心拍数、血圧、体温、血中酸素濃度(SpO2)、体位(姿勢)などである。また、生体情報検出センサは、人体や家畜などの監視対象に装着可能であり、かつ、水中においても前記生体情報を検出可能なセンサが用いられる。
本発明では、生体情報検出センサによって、所定の生体情報が検出される。この生体情報は、送信機能を有する通信機からアンテナを介して送信される。
この際、沈水センサによって、アンテナが水中にあるのか、水中に無いつまり空中にあるのかが検出される。
そして、制御回路は、沈水センサの検出結果に基づいて、アンテナ整合機の各スイッチを制御し、アンテナおよび通信機に接続される整合回路を切り替える。すなわち、制御回路は、アンテナが水中にある場合には、各スイッチを制御して水中用整合回路をアンテナおよび通信機に接続し、アンテナが空中にある場合には、各スイッチを制御して空中用整合回路をアンテナおよび通信機に接続する。
【0009】
このため、アンテナが水中または空中にあるためにインピーダンスが変化した場合でも、アンテナのインピーダンスに応じた整合回路が選択されるため、通信機とアンテナ間のインピーダンスの不整合が防止される。
従って、インピーダンスの不整合による放射電力の低下を防止でき、通信に必要な放射電力は不整合が発生している場合に比べて低減できる。生体情報通信装置の消費電力は、前記放射電力にほぼ比例するため、インピーダンスを整合させれば消費電力も低減できる。よって、本発明の生体情報通信装置は、消費電力を低減できるために、持続時間を長くでき、頻繁な電池交換作業などを不要にできて利便性を向上できる。
また、沈水センサの出力によって各整合回路を切り替えているので、非常に簡単な構成にでき、生体情報通信装置を小型化でき、人体に装着する場合でも、人体への負担を軽減できる。
【0010】
アンテナ整合機には、予め、空中用整合回路と水中用整合回路とが設けられ、沈水センサの検出結果に基づいて各整合回路の接続スイッチを切り替えるだけで、アンテナのインピーダンス変化に対応する整合回路を選択することができる。従って、生体情報通信装置の構成を簡易化できるとともに、その制御も沈水センサでアンテナが水中に没しているか否かを判定し、それによって各スイッチの接続を切り替えるといった非常に簡単な制御でよいため、製品コストの増加を抑えることができる。
【0011】
本発明の生体情報通信装置において、前記通信機は、送信機能に加えて、外部からの無線情報を、前記アンテナを介して受信する受信機能を備えていることが好ましい。
生体情報通信装置は、送信機能のみを備えるものでもよいが、受信機能を備えていれば、外部の監視装置からの指示などを受信して動作を制御することもできる。例えば、生体情報通信装置から送信された生体情報を外部の監視装置で分析し、その分析結果に基づいて生体情報通信装置に対して制御信号を送ることで、生体情報通信装置における生体情報の検出間隔や送信間隔を調整することもでき、効率的な生体情報の監視システムを構築することができる。
【0012】
本発明の生体情報通信装置において、前記通信機には、複数の増幅器を有し、各増幅器の接続段数が前記制御回路によって制御されて利得が切替可能な増幅回路が設けられ、前記制御回路は前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していることが検出された場合には、前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していないことが検出された場合に比べて、前記増幅回路に設けられた増幅器の接続段数を増やして増幅回路の利得を増大させることが好ましい。
【0013】
アンテナが水中に没している場合には、アンテナで送受信される無線情報も水中を通過することになる。この場合、空中に比べて水中では電波が減衰するため、無線情報の伝達距離が低下する。
従って、アンテナが水中にある場合には、空中にある場合に比べて信号を増幅することが望ましい。すなわち、水中にあるアンテナを利用して信号を送信する場合には通信機(送信機)から出力される送信信号を増幅し、水中にあるアンテナを利用して信号を受信する場合には通信機(受信機)に入力される受信信号を増幅することが望ましい。
この際、信号の増幅方法としては、高い利得(ゲイン)の増幅器に、減衰器を組み合わせた利得可変型の増幅器を利用することもできる。ただし、この場合、減衰器による電力損失があるため、消費電力が嵩むことになる。
一方、本発明のように、複数の増幅器を設け、増幅器を多段に接続できるように構成し、その接続段数を切り替えることで利得を切り替える増幅器は、減衰器による電力損失が無い分、消費電力を低減できる。
【0014】
また、前記制御回路は、前記生体情報検出センサによる生体情報の取得間隔と、前記通信機による生体情報の送信間隔とを制御可能に設けられ、前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していることが検出された場合には、前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していないことが検出された場合に比べて、前記生体情報の取得間隔および送信間隔を短くすることが好ましい。
【0015】
生体情報の監視が必要な監視対象者は、入浴中や水泳中などに状態が変化する場合が多い。従って、アンテナが水中に没している場合つまり生体情報通信装置を装着した人が、入浴等で水中にいる場合に、生体情報の取得間隔および送信間隔を短くすれば、その状態変化を迅速に検出して監視者などに通知でき、迅速な対応が可能となる。
また、常時、生体情報の取得間隔および送信間隔を短くして、状態変化を迅速に検出していると、消費電力が大幅に増大し、生体情報通信装置を電池で駆動している場合にはその電池寿命が短くなる。これに対し、本発明のように、アンテナが水中にある場合のみ、生体情報の取得間隔および送信間隔を短くし、空中にある場合には、水中にある場合に比べて生体情報の取得間隔および送信間隔を長くすれば、生体情報通信装置の平均的な消費電力を低減でき、電池寿命も延ばすことができる。
【0016】
本発明の生体情報監視システムは、前記生体情報通信装置と、前記生体情報通信装置から送信される生体情報を受信する生体情報監視装置とを備えることを特徴とする。
このような生体情報監視システムによれば、生体情報通信装置では生体情報を取得して送信でき、前記生体情報監視装置ではその生体情報を受信して監視することができる。このため、生体情報通信装置の装着者の異常等を検出して適切に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔生体情報監視システムの全体構成〕
図1は、生体情報監視システム1を示す説明図である。本実施形態の生体情報監視システム1は、入浴者の生体情報を監視するものであり、入浴者に装着する生体情報通信装置2と、生体情報通信装置2から送信される生体情報を受信して監視する生体情報監視装置3とを備えている。
【0018】
〔生体情報通信装置の構成〕
入浴者に装着される生体情報通信装置2は、図2に示すように、沈水センサ(水中検出部)11と、生体センサ12と、制御回路(Micro Controller Unit)13と、無線ユニット14と、アンテナ15と、電池16とを備えている。なお、これらは、沈水センサ11の検出端子11Aや、生体センサ12において入浴者に接触するセンサ部などを除き、外装ケース2A内に収納され、水に接触しないように防水処理されている。
【0019】
沈水センサ11は、水に接触可能な一対の検出端子11Aを備え、これらの各検出端子11Aに水が接触した際に生じる電気的な導通を検出することで、沈水センサ11を有する生体情報通信装置2すなわちアンテナ15が水中に没したか否かを検出するセンサである。
【0020】
生体センサ12は、入浴者の生体情報を検出する各種の生体情報検出センサで構成されている。生体センサ12の数および種類は、監視対象者の状態などに応じて設定される。
例えば、生体センサ12としては、光センサや心電計などを用いた心拍数の検出センサ、光センサなどを用いた血中酸素濃度(SpO2)の検出センサ、加速度センサやジャイロを用いた体位(姿勢)の検出センサ、体温センサ、血圧センサなどが利用できる。
【0021】
制御回路13は、生体センサ12からの情報(信号)を処理、加工し、無線ユニット14に出力する制御と、沈水センサ11からの情報に基づいて無線ユニット14における整合回路の切替を行う制御とを実行するものである。
さらに、本実施形態では、制御回路13は、沈水センサ11や生体センサ12からの情報の取得間隔も制御できるように構成されている。
【0022】
無線ユニット14は、図3にも示すように、アンテナ整合機140と、通信機150とを備えている。
アンテナ整合機140は、空中用整合回路141と、水中用整合回路142と、各整合回路141,142の一方を選択的にアンテナ15と接続するための第1スイッチ143と、各整合回路141,142の一方を選択的に通信機150と接続するための第2スイッチ144とを備えている。
【0023】
通信機150は、送信機151と、受信機152と、送信信号を増幅する増幅器153と、受信信号を増幅する増幅器154と、送信機151および受信機152の一方を選択的にアンテナ整合機140に接続するための第3スイッチ155とを備えている。
【0024】
無線ユニット14の各スイッチ143,144,155の切替動作は、制御回路13によって制御されている。
この際、制御回路13は、沈水センサ11からの信号に基づき、アンテナ整合機140の各スイッチ143,144の切替を制御している。
また、制御回路13は、予め設定されている通信間隔などに基づいて、生体情報を送信する時には、第3スイッチ155を送信機151側に接続し、送信時以外は第3スイッチ155を受信機152に接続している。
【0025】
アンテナ15は、入浴者に装着されるために、比較的小型に形成される外装ケース2A内に収納できるように、3〜5cm程度の大きさとされている。具体的には、アンテナ15は、3cmの折り返しダイポールアンテナで構成されている。
【0026】
〔整合回路の構成〕
本実施形態では、アンテナ15および通信機150に選択的に接続される空中用整合回路141および水中用整合回路142を設け、空中および水中におけるアンテナ15のインピーダンス変化に対応している。
この空中用整合回路141、水中用整合回路142の具体的な構成例を図4,5に示す。
なお、本例は、図4に示すように、アンテナ15として、長さL=3cmの折り返しダイポールアンテナを用い、通信周波数315MHz(波長95cm)とした場合の例である。
【0027】
この場合、生体情報通信装置2を空中で利用する場合は、通信信号の波長に対してアンテナ15が非常に小さいため、利得は得られにくい。一方、生体情報通信装置2を水中で利用する場合、つまり沈水センサ11で水中であることが検出された場合は、通信信号の波長が1/9(約10cm)になるため、折り返しダイポールの基本サイズである半波長(約5cm)に、実際のアンテナ15のサイズが近づくことになり、利得も得られる。
【0028】
このような条件において、空中用整合回路141は、図4に示すように、アンテナ15に対して直列に接続されたコンデンサ1411と、並列に接続されたコンデンサ1412とを用いている。なお、各コンデンサの容量は、例えば、コンデンサ1411が6pF、コンデンサ1412が100pF等とされている。
また、この際のアンテナ15のインピーダンスは、0.07+j76.799Ωであり、利得は−25dBiである。
【0029】
一方、水中用整合回路142は、図5に示すように、アンテナ15に対して直列に接続されたコンデンサ1421と、並列に接続されたコイル1422とを用いている。なお、例えば、コンデンサ1421の容量は12pF、コイル1422のインダクタンスは15.5nHとされている。
また、この際のアンテナ15のインピーダンスは、17.5-j34Ωであり、利得は+2dBiである。
【0030】
このため、例えば、空中用整合回路141をアンテナ15および通信機150に接続した状態のまま、生体情報通信装置2を水中に入れた場合には、整合回路141の通信機150側の端部のインピーダンスは、0.33-j4.7Ωとなり、アンテナ15側のインピーダンスとかけ離れており、損失が大きくなる。この損失分をアンテナ利得と表現すれば、−40dBiとなる。
一方、生体情報通信装置2を水中に入れた際に、水中用整合回路142に切り替えた場合に、送信電力(放射電力)が−20dBm(0.01mW)で通信品質が確保されていたとすると、空中用整合回路141に接続した状態で生体情報通信装置2を水中に入れた場合、両アンテナ利得の差は、+2dBi−(−40dBi)=42dBとなり、この42dB分の送信電力増が必要となる。
このため、送信電力としては、−20dBm+42dB=22dBm(158mW)が必要となる。
従って、生体情報通信装置2を水中で使用している場合、空中用整合回路141を用いると、送信電力としては22dBm程度となり、これは消費電力としては、300mW程度となる。一方、水中用整合回路142を用いると、送信電力としては−20dBm程度となり、消費電力としては、30mW程度となり、空中用整合回路141を用いた場合の1/10程度に低減できる。
【0031】
〔生体情報監視装置の構成〕
生体情報監視装置3は、図1に示すように、通信端末30と、監視端末40とを備えている。通信端末30と監視端末40とは、有線または無線のLAN(local area network)を介して接続されている。
通信端末30は、前記生体情報通信装置2との無線通信が可能な場所に設置される。例えば、浴室の内壁や、浴室に隣接する脱衣室などに設置される。
【0032】
通信端末30は、アンテナ31と、アンテナ31を介して信号を送受信する図示略の通信機とを備えている。そして、通信端末30は、生体情報通信装置2から送信された情報を受信して監視端末40に転送する受信処理と、監視端末40からの信号(制御信号など)を生体情報通信装置2に対して送信する送信処理とを実行可能に構成されている。
【0033】
監視端末40は、監視用コンピュータ41と、表示装置42とを備えた一般的なコンピュータシステムで構成されている。この監視端末40は、通信端末30から転送された生体情報を記録するとともに、その生体情報を所定の判定基準と比較して判定し、異常が認められる場合には、警報を発したり、担当者に通報するなどの処理を行う。
この際、監視端末40は、前記生体情報の判定基準として、空中用判定基準データと水中用判定基準データとが判定テーブルに予め記憶されている。そして、生体情報通信装置2は、生体センサ12の検出データ(生体情報)以外に、沈水センサ11の検出結果も送信するように構成され、監視端末40は、生体情報通信装置2が水中にある場合には、水中用判定基準データによって前記生体情報を判定し、生体情報通信装置2が空中にある場合には、空中用判定基準データによって前記生体情報を判定している。
【0034】
〔生体情報監視動作の説明〕
生体情報の監視対象者には生体情報通信装置2を装着しておく。この監視対象者が、例えば、洗い場などにいて湯船(水中)につかっていない場合には、生体情報通信装置2の沈水センサ11の検出結果は、水中でないつまり空中であることを示す。このため、制御回路13は、生体情報通信装置2が空中にあると判断し、スイッチ143,144を空中用整合回路141側に接続する。
一方、監視対象者が湯船につかっている場合には、生体情報通信装置2の沈水センサ11は水中であることを検出する。このため、制御回路13は、生体情報通信装置2が水中にあると判断し、スイッチ143,144を水中用整合回路142側に接続する。
【0035】
制御回路13は、所定間隔で生体センサ12による生体情報の検出処理と、無線ユニット14を用いた生体情報の送信処理とを実行する。この生体情報の検出・送信間隔は、固定されたものでもよいが、沈水センサ11の検出結果により、生体情報通信装置2が空中にある場合と、水中にある場合とで変化させても良い。通常は、水中に入っている場合のほうが、監視対象者の生体情報が変化する可能性が高いので、水中にある場合は空中にある場合に比べて前記間隔を短くする。
【0036】
そして、制御回路13は、前記生体情報の送信時には、第3スイッチ155を送信機151側に接続して、送信処理を実行する。そして、送信処理が完了すると、第3スイッチ155を受信機152側に接続し、受信状態にする。これにより、生体情報監視装置3側から制御信号などが送信された場合、その信号を受信して所定の制御を行うことができる。例えば、生体情報監視装置3は、受信した生体情報に異常がないと判定した場合には、生体情報通信装置2に対して制御信号を送信し、生体情報通信装置2における生体情報の検出間隔や送信間隔をより長くする。これにより、生体情報通信装置2を、消費電力が低減された省エネモードで作動できる。
さらに、生体情報監視装置3は、生体情報に異常があると判定した場合には、警報を発したり、介護者などに通報することで、監視対象者に対して適切な対応をとることができる。また、生体情報監視装置3は、生体情報通信装置2に対して制御信号を送信し、生体情報通信装置2における生体情報の検出間隔や送信間隔を短くする。
【0037】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)生体情報通信装置2は、沈水センサ11、空中用整合回路141および水中用整合回路142を備えているので、制御回路13は、沈水センサ11の検出結果に基づいて、整合回路141,142を選択的にアンテナ15および通信機150に接続することができる。このため、アンテナ15側および通信機150側のインピーダンスを整合でき、生体センサ12で検出した生体情報などを送信したり、通信端末30からの信号を受信する場合に、上記インピーダンスが整合されていない場合に比べて、生体情報通信装置2の消費電力を大幅に低減することができる。このため、電池16の寿命も長くでき、電池交換作業や充電作業を行う間隔を長くでき、生体情報通信装置2の利便性も向上できる。
【0038】
(2)アンテナ整合機140は、沈水センサの検出結果に基づいてスイッチ143,144を切り替えることで、空中用整合回路141または水中用整合回路142を選択できる。従って、アンテナ整合機140の構成および制御を簡易化でき、製品コストも低減できる。
【0039】
(3)制御回路13は、沈水センサ11の検出結果により、生体情報通信装置2が空中にある場合には生体情報の検出間隔や送信間隔を長くし、生体情報通信装置2が水中にある場合には生体情報の検出間隔や送信間隔を短くする制御を行える。このため、特に、監視対象者が浴槽につかっていて、生体情報が変化する可能性が高い状態の場合に、その状態変化を迅速に検出できるため、状態変化が生じた場合に迅速に対応できる。また、生体情報通信装置2が空中にある場合には、前記検出間隔や送信間隔を延長できるので、消費電力を抑制できる。
【0040】
(4)通信機150は、送信機151のほかに受信機152を備えているので、生体情報監視装置3からの制御信号を受信できる。このため、検出した生体情報に応じて、生体情報の検出間隔や送信間隔を調整でき、効率的な生体情報の監視システムを構築することができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図6を参照して説明する。
第2実施形態の生体情報通信装置2は、通信機150の構成が前記第1実施形態と相違するが、他の構成は同一であるため、説明を省略する。
第2実施形態の通信機150は、段数を切替可能な増幅回路を備えるものである。すなわち、送信機151および受信機152に直列に接続された増幅器153、154の他に、各増幅器153、154に直列に接続可能な増幅器156,157が設けられている。
【0042】
具体的には、送信機151に対して、増幅器153および増幅器156を直列に接続する状態(2段増幅状態)と、増幅器153のみを接続する状態(1段増幅状態)とに切り替えるスイッチ158が設けられている。同様に、受信機152に対して、増幅器154および増幅器157を直列に接続する状態と、増幅器154のみを接続する状態とに切り替えるスイッチ159が設けられている。
そして、制御回路13は、沈水センサ11で生体情報通信装置2つまりアンテナ15が水中にあることを検出した場合には、前記各スイッチ158,159を増幅器156,157側に接続し、送信信号や受信信号を2段の増幅器で増幅する。一方、制御回路13は、沈水センサ11で生体情報通信装置2が水中に無いことを検出した場合には、前記各スイッチ158,159を増幅器156,157側に接続しない側に切り替えて、送信信号や受信信号を1段の増幅器で増幅する。
【0043】
このような増幅器の接続段数を1段または2段に切替可能な増幅回路を備えていれば、電波が減衰する水中にアンテナ15が配置されている場合でも、前記電波の減衰を補うことができ、水中を介した無線通信をより確実に行うことができる。一方、アンテナ15が空中に配置されている場合には、1段の増幅器153,154のみで信号増幅を行い、増幅器156,157は作動されないため、無駄な電力消費を抑制できる。
このため、アンテナ整合機140における整合回路141,142の選択と、前記増幅回路の選択とを併用することで、消費電力を抑制しつつ、より確実な通信を行うことができる。
また、増幅回路として、接続される増幅器の段数を切り替える多段構成の増幅回路を用いているので、増幅器および減衰器を組み合わせた利得可変型の増幅器を利用する場合に比べて、減衰器による電力損失が無い分、消費電力を低減できる。
【0044】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図7を参照して説明する。
第1実施形態では、監視端末40において、生体情報の表示、判定、警報、通知などの処理を行っていたが、第3実施形態では、通信端末30に、これらの機能を組み込んだものである。
すなわち、第3実施形態の通信端末30は、アンテナ31を介して生体情報通信装置2と情報を送受信する通信機32と、生体情報通信装置2から送信された生体情報等を表示する表示部33と、受信した生体情報の異常を判定する判定基準データが記憶された判定テーブル34と、判定テーブル34の判定基準データに基づいて生体情報を判定する判定部35と、判定部35が生体情報に異常があると判定した際に警報を発する警報部36と、判定部35が生体情報に異常があると判定した際に予め設定された通知先に通知する通知部37とを備えている。
なお、前記判定テーブル34には、前記第1実施形態の監視端末40と同様に、空中用判定基準データと水中用基準判定データとが記憶されている。
【0045】
このような本実施形態においては、前記第1実施形態の監視端末40の機能が、通信端末30で実現され、前記第1実施形態と同様の制御を行うことができるので、監視端末40を用意する必要が無く、その分、コストを低減できる。
【0046】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、生体情報通信装置2の通信機150に、送信機151および受信機152を設けていたが、送信機151のみを設けてもよい。この場合でも、生体センサ12で検出した生体情報を生体情報通信装置2から送信することはでき、監視対象者の異常を監視することができる。また、受信機152を設けていないため、その分、通信機150の構成を簡略化でき、コストも低減できる。
但し、受信機152も備えていれば、生体情報監視装置3から制御指示によって生体情報の検出間隔や送信間隔を変更するなどの制御を行うことができる利点がある。
【0047】
また、前記実施形態では、生体情報通信装置2つまりアンテナ15が水中にあるか否かのみを検出する沈水センサ11を用いていたが、さらに、生体情報通信装置2の水深も検出可能な水深検出センサを用いてもよい。この場合、検出した水深に応じて、整合回路を切り替えたり、送信信号や受信信号の出力を変更することができ、アンテナ15が配置された状況に応じて効率的に通信できる。
【0048】
空中用整合回路141、水中用整合回路142の具体例は、前記実施形態に限定されず、アンテナ15のインピーダンスの変化に応じて、アンテナ15側および通信機150側のインピーダンスを整合できるものであればよい。
【0049】
また、本発明の生体情報通信装置2によって監視される対象者は、入浴者に限定されるものではなく、例えば、プールなどで水泳を行う人でもよい。また、監視対象は、人に限定されず、家畜や野生動物などでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態における生体情報監視システムの使用状態を示す概略図。
【図2】前記実施形態における生体情報通信装置を示す構成図。
【図3】前記実施形態における無線ユニットを示す構成図。
【図4】前記実施形態における空中用整合回路の構成を示す回路図。
【図5】前記実施形態における水中用整合回路の構成を示す回路図。
【図6】第2実施形態における無線ユニットを示す構成図。
【図7】第3実施形態における通信端末を示す構成図。
【符号の説明】
【0051】
1…生体情報監視システム、2…生体情報通信装置、3…生体情報監視装置、11…沈水センサ、12…生体センサ、13…制御回路、14…無線ユニット、15…アンテナ、16…電池、30…通信端末、31…アンテナ、40…監視端末、140…アンテナ整合機、141…空中用整合回路、142…水中用整合回路、143…第1スイッチ、144…第2スイッチ、150…通信機、151…送信機、152…受信機、153,154…増幅器、155…第3スイッチ、156,157…増幅器、158,159…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
生体情報を検出する生体情報検出センサと、
少なくとも前記アンテナが水中に没しているか否かを検出する沈水センサと、
前記生体情報検出センサで検出した生体情報を、前記アンテナを介して送信する送信機能を有する通信機と、
前記アンテナおよび通信機間に配置されるアンテナ整合機と、
前記沈水センサから出力される検出結果に基づいて前記アンテナ整合機を制御する制御回路とを備え、
前記アンテナ整合機は、
前記アンテナが水中に没している際に用いられる水中用整合回路と、
前記アンテナが空中にある際に用いられる空中用整合回路と、
前記アンテナと前記各整合回路との接続状態を切り替える第1スイッチと、
前記通信機と前記各整合回路との接続状態を切り替える第2スイッチとを備え、
前記制御回路は、
前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していることが検出された場合には、前記第1スイッチおよび第2スイッチを制御して、前記アンテナおよび前記通信機を前記水中用整合回路に接続し、
前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していないことが検出された場合には、前記第1スイッチおよび第2スイッチを制御して、前記アンテナおよび前記通信機を前記空中用整合回路に接続することを特徴とする生体情報通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体情報通信装置において、
前記通信機は、送信機能に加えて、外部からの無線情報を、前記アンテナを介して受信する受信機能を備えていることを特徴とする生体情報通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生体情報通信装置において、
前記通信機には、複数の増幅器を有し、各増幅器の接続段数が前記制御回路によって制御されて利得が切替可能な増幅回路が設けられ、
前記制御回路は
前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していることが検出された場合には、前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していないことが検出された場合に比べて、前記増幅回路に設けられた増幅器の接続段数を増やして増幅回路の利得を増大させることを特徴とする生体情報通信装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体情報通信装置において、
前記制御回路は、
前記生体情報検出センサによる生体情報の取得間隔と、前記通信機による生体情報の送信間隔とを制御可能に設けられ、
前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していることが検出された場合には、前記沈水センサで前記アンテナが水中に没していないことが検出された場合に比べて、前記生体情報の取得間隔および送信間隔を短くすることを特徴とする生体情報通信装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体情報通信装置と、
前記生体情報通信装置から送信される生体情報を受信する生体情報監視装置とを備えることを特徴とする生体情報監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−45179(P2009−45179A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212907(P2007−212907)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】