説明

生体状態分析装置、コンピュータプログラム及び記録媒体

【課題】人に違和感を感じさせることなく、顕著な生体信号を検出可能であり、人の状態を正確に分析する。
【解決手段】エアクッションによって検出される空気圧変動の時系列信号データを2階微分する2階微分演算手段61を有し、この2階微分演算手段61により得られる2階微分波形を加工して人の状態を分析する。エアクッションから検出される空気圧変動の時系列信号データは、背部の大動脈の脈波によるものであるが、これを2階微分することにより、時系列信号データの波形の変化が強調される。2階微分して得られる時系列波形に含まれる生体状態を示す情報が、2階微分する前の時系列波形に含まれる生体状態を示す情報よりも顕著になる。従って、2階微分して得られる時系列波形を分析することにより、従来の大動脈の脈波を用いた生体状態の分析手段よりも精度の高い分析結果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号を検出して生体の状態を分析する技術に関し、特に、生体信号を非侵襲で検出可能なエアクッションを用いた生体状態分析装置、コンピュータプログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
運転中の運転者の生体状態を監視することは、近年、事故予防策として注目されている。本出願人も、例えば、特許文献1として、内部に復元力付与部材を挿入した空気袋を備え、この空気袋を例えば人の腰部に対応する部位に配置し、空気袋の空気圧変動を測定し、得られた空気圧変動の時系列データから人の生体信号を検出し、人の生体の状態を分析するシステムを開示している。また、非特許文献1及び2においても、腰腸肋筋に沿うようにエアパックセンサを配置して人の生体信号を検出する試みが報告されている。
【特許文献1】特開2007−90032号公報
【非特許文献1】「非侵襲型センサによって測定された生体ゆらぎ信号の疲労と入眠予知への応用」、落合直輝(外6名)、第39回日本人間工学会 中国・四国支部大会 講演論文集、平成18年11月25日発行、発行所:日本人間工学会 中国・四国支部事務局
【非特許文献2】「非侵襲生体信号センシング機能を有する車両用シートの試作」、前田慎一郎(外4名)、第39回日本人間工学会 中国・四国支部大会 講演論文集、平成18年11月25日発行、発行所:日本人間工学会 中国・四国支部事務局
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び非特許文献1、2によれば、腰部付近の動脈(大動脈)の脈波を検知し、得られた脈波の時系列信号データを用い、例えば、本出願人が特開2004−344612において提案した手法により入眠予兆信号を検出して生体状態を分析している。入眠予兆信号の検出は、具体的には、脈波の時系列信号データを、それぞれ、SavitzkyとGolayによる平滑化微分法により、極大値と極小値を求める。そして、5秒ごとに極大値と極小値を切り分け、それぞれの平均値を求める。求めた極大値と極小値のそれぞれの平均値の差の二乗をパワー値とし、このパワー値を5秒ごとにプロットし、パワー値の時系列波形を作る。この時系列波形からパワー値の大域的な変化を読み取るために、ある時間幅Tw(180秒)について最小二乗法でパワー値の傾きを求める。次に、オーバーラップ時間Tl(162秒)で次の時間幅Twを同様に計算して結果をプロットする。この計算(スライド計算)を順次繰り返してパワー値の傾きの時系列波形を得る。一方、脈波の時系列信号データをカオス解析して最大リアプノフ指数を求め、上記と同様に、平滑化微分によって極大値と極小値を求め、スライド計算することにより最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形を得る。
【0004】
この2つの傾き時系列波形において、パワー値の傾きの時系列波形で、パワー値の傾きの時系列波形と最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形が逆位相となっており、さらには、パワー値の傾きの時系列波形で低周波、大振幅の波形が生じている波形が入眠予兆を示す特徴的な信号であり、その後に振幅が小さくなったポイントが入眠ポイントである。
【0005】
しかしながら、上記の動脈の脈波を用いて入眠予兆信号を検出する手法と、指尖容積脈波を用いて入眠予兆信号を検出する手法とを比較すると、指尖容積脈波を用いた場合に入眠予兆信号として検出されているにも拘わらず、動脈の脈波を用いた場合にはそのタイミングにおいて入眠予兆信号を検出できていない場合、あるいは、その逆の場合があることがわかった。入眠予兆信号を確実に検出するためには、動脈の脈波による検出と指尖容積脈波による検出を併用すればよいが、指尖容積脈波は、人の指に指尖容積脈波計を装着しなければならないため、例えば、自動車の運転者の入眠予兆信号を検知しようとした場合に、日常運転において、当該運転者が指尖容積脈波計を常に装着するとは限らず、現実的ではない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、人の少なくとも腰部を含む背部に対応する部位に配置されるエアクッションによって検出される空気圧変動の時系列信号データを用いて、従来よりも人の状態を正確に分析できる生体状態分析装置、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明は、人体支持手段における、少なくとも人の腰部付近を支持する部位の表皮部材と該表皮部材の裏面側に配設されるクッション支持部材との間に組み込まれる空気袋を備えたエアクッションと、動脈の脈波に伴う前記空気袋の空気圧変動を検出するセンサとを備えてなる生体信号測定装置から、空気圧変動による前記センサの時系列信号データを受信し、該時系列信号データを加工して、前記人体支持手段により支持されている人の状態を分析する生体状態分析装置であって、
前記時系列信号データを2階微分する2階微分演算手段を有し、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形を加工して人の状態を分析することを特徴とする生体状態分析装置を提供する。
請求項2記載の本発明は、さらに、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形の各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形パワー値傾き算出手段と、
前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形から、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記2階微分波形パワー値傾き算出手段及び2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する2階微分波形入眠予兆判定手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の生体状態分析装置を提供する。
請求項3記載の本発明は、さらに、前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データの各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形パワー値傾き算出手段と、
前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データから、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記原波形パワー値傾き算出手段及び原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する原波形入眠予兆判定手段と、
前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定されたか、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定されたかを比較判断する比較判断手段と、
前記比各判断手段の比較結果に従って、覚醒されるための警告を動作させる警告制御手段と
を具備することを特徴とする請求項2記載の生体状態分析装置を提供する。
請求項4記載の本発明は、前記警告制御手段は、前記比較判断手段において、前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定された場合と、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定された場合とで、異なる種類の警告を機能させるものであることを特徴とする請求項3記載の生体状態分析装置を提供する。
請求項5記載の本発明は、人体支持手段における、少なくとも人の腰部付近を支持する部位の表皮部材と該表皮部材の裏面側に配設されるクッション支持部材との間に組み込まれる空気袋を備えたエアクッションと、動脈の脈波に伴う前記空気袋の空気圧変動を検出するセンサとを備えてなる生体信号測定装置から、空気圧変動による前記センサの時系列信号データを受信し、該時系列信号データを加工して、前記人体支持手段により支持されている人の状態を分析する生体状態分析装置に導入されるコンピュータプログラムであって、
前記時系列信号データを2階微分する2階微分演算手段を有し、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形を加工して人の状態を分析することを特徴とするコンピュータプログラムを提供する。
請求項6記載の本発明は、さらに、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形の各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形パワー値傾き算出手段と、
前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形から、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記2階微分波形パワー値傾き算出手段及び2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する2階微分波形入眠予兆判定手段と
を具備することを特徴とする請求項5記載のコンピュータプログラムを提供する。
請求項7記載の本発明は、さらに、前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データの各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形パワー値傾き算出手段と、
前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データから、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記原波形パワー値傾き算出手段及び原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する原波形入眠予兆判定手段と、
前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定されたか、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定されたかを比較判断する比較判断手段と、
前記比各判断手段の比較結果に従って、覚醒されるための警告を動作させる警告制御手段と
を具備することを特徴とする請求項6記載のコンピュータプログラムを提供する。
請求項8記載の本発明は、前記警告制御手段は、前記比較判断手段において、前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定された場合と、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定された場合とで、異なる種類の警告を機能させるものであることを特徴とする請求項7記載のコンピュータプログラムを提供する。
請求項9記載の本発明は、請求項5〜8のいずれか1に記載のコンピュータプログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、エアクッションによって検出される空気圧変動の時系列信号データを2階微分する2階微分演算手段を有し、この2階微分演算手段により得られる2階微分波形を加工して人の状態を分析する。エアクッションから検出される空気圧変動の時系列信号データは、動脈の脈波によるものであるが、これを2階微分することにより、時系列信号データの波形の変化、特に高周波成分の変化が強調される。そして、後述のように本発明者らの試験によれば、2階微分して得られる時系列波形は、高周波成分が強調されるため、末梢の脈波である指尖容積脈波の時系列波形に近似することになり、動脈の脈波を採取することによって、動脈の脈波そのものと指尖容積脈波に近似した2階微分の波形とを併用することができ、動脈の脈波のみを採取するにも拘わらず、生体状態の分析をより高い精度で行うことができる。
【0009】
また、指尖容積脈波による入眠予兆信号の検出は、動脈の脈波による入眠予兆信号よりも感度が高い。従って、指尖容積脈波に相当する2階微分して得られる動脈の脈波の時系列波形のみから入眠予兆信号が検出された場合には、入眠予兆信号と言っても、覚醒段階から睡眠段階1に至るまでのうち、より覚醒段階に近いレベルの兆候を捉えたものと考えられる。これに対し、2階微分して得られる時系列波形からだけでなく、2階微分しないデータを用いた場合にも入眠予兆信号が検出された場合には、入眠予兆信号の検出感度が相対的に劣るにも拘わらず検出されることから、覚醒段階から睡眠段階1に至るまでのうち、より睡眠段階1に近いレベルの兆候を捉えたものと考えられる。すなわち、入眠予兆信号をこのように2つの時系列波形を用いて捉えることにより、2段階の入眠予兆信号を捉えることができる。従って、警告制御手段をこの2段階の入眠予兆信号にリンクさせることにより、例えば、2階微分して得られる時系列波形のみから入眠予兆信号が検出された場合には、弱い警告を発するように制御し、2階微分しないデータを用いた場合にも入眠予兆信号が検出された場合には、強い警告を発するように制御することもできる。また、2つの入眠予兆信号の間で相対的に振幅の小さな波形が見られる場合には、睡眠段階1に至らないものの漫然とした状態が継続していることを示すため、最初の入眠予兆信号が現れた後このような小さな波形が見られた段階でも警告を発するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る生体状態分析装置60の分析対象の生体信号である背部の大動脈の脈波を採取する生体信号測定装置1を組み込んだ自動車用のシート500の外観を示した図である。この図に示したように、生体信号測定装置1は、シートバック部510に組み込まれて用いられる。本実施形態の生体状態分析装置60は、従来よりも正確に生体情報を分析できるものであるが、分析対象の生体信号自体にノイズがないほど、より正確に分析できることはもちろんである。そこで、まず、以下においては、ノイズの混入の少ない生体信号測定装置1の構成を説明する。
【0011】
生体信号測定装置1は、エアクッションユニット100と、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20と、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30とを有して構成されている。エアクッションユニット100は、収容体15と、該収容体15に収容した2つのエアクッション10を備えて構成される。各エアクッション10は、図3及び図4に示したように、表側エアクッション11と裏側エアクッション12とが積層されて構成され、収容体15の左右にそれぞれ配置される。表側エアクッション11は、3つの小空気袋111が縦方向に連接されている一方、そのそれぞれは空気の流通がないように形成されている。各小空気袋111内には、復元力付与部材としての三次元立体編物112が配置されている。
【0012】
裏側エアクッション12は、3つの小空気袋111を連接してなる表側エアクッション11の全長と同じ長さの大空気袋121とこの大空気袋121内に収容される復元力付与部材としての三次元立体編物122とを備えて構成される(図4参照)。表側エアクッション11と裏側エアクッション12とは、長手方向に沿った一方の側縁同士が接合され、接合された側縁を中心にして2つ折りにされて、相互に重ね合わせられて用いられる(図3(d)及び図4参照)。
【0013】
本実施形態では、このように表側エアクッション11と裏側エアクッション12とが相互に重ね合わせられたエアクッション10が左右に配置される。左右に配置することにより、着座者の背への当たりが左右均等になり、違和感を感じにくくなる。また、左右の表側エアクッション11,11のいずれか一方を構成するいずれかの小空気袋111にセンサ取付チューブ111aが設けられ、その内側に空気圧変動を測定するセンサ111bが固定されている。なお、センサ取付チューブ111aは密閉されている。裏側エアクッション12を構成する大空気袋121にセンサを配設することもできるが、容量の大きい空気袋に設けると、脈波による空気圧変動が吸収されてしまう場合があるため、小空気袋111に設けることが好ましい。但し、図4に示したように、予め、大空気袋121に取付チューブ121aを設けその部位にセンサを配設しておき、必要に応じて、大空気袋121の空気圧変動を測定することで、小空気袋111の測定結果の検証に利用できるようにしておいてもよい。小空気袋111は、このような生体信号による空気圧変動に敏感に反応させるために、大きさは、幅40〜100mm、長さ120〜200mmの範囲が好ましい。小空気袋111の素材は限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンエラストマー(例えば、シーダム株式会社製、品番「DUS605−CDR」)からなるシートを用いて形成することができる。センサ111bとしては、小空気袋111内の空気圧を測定できるものであればよく、例えば、コンデンサ型マイクロフォンセンサを用いることができる。
【0014】
大空気袋121の大きさ及び小空気袋111を3つ連接した場合の全体の大きさとしては、自動車のシート500のシートバック部510に用いる場合、幅40〜100mm、全長400〜600mmの範囲とすることが好ましい。長さが短い場合、シートバック部510において、着座者が、腰部付近の一部分のみに異物感を感じるため、400mm以上の長さとして、できるだけ、着座者の背全体に対応させることが好ましい。
【0015】
空気圧変動を検出するセンサ111bは、本実施形態では、着座者の左側に配置されるエアクッション10を構成する表側エアクッション11の中央の小空気袋111に設けている。この小空気袋111の位置は、着座者の腰部付近の大動脈の脈波を検知可能な領域に相当する。腰部付近の大動脈脈波を検知可能な領域は、着座者の体格により一律ではないが、身長158cmの日本人女性から身長185cmの日本人男性までの様々な体格の被験者20名で測定したところ、該小空気袋111(幅60mm、長さ160mm)をシートバック部510の中心寄りの側縁と下縁の交差部P(図2及び図3参照)が、シートクッション部520の上面からシートバック部510の表面に沿った長さL:220mm、シートバック部510の中心からの距離M:80mmとなるように設定したところ、上記全ての被験者において大動脈の脈波を検知できた。小空気袋111の大きさが、幅40〜100mm、長さ120〜200mmの範囲の場合、交差部Pの位置を、シートクッション部520の上面からシートバック部510の表面に沿った長さで150〜280mm、シートバック部510の中心から60〜120mmの範囲に設定することが好ましい。
【0016】
上記した2つのエアクッション10をシートバック部510において容易に所定の位置に設定できるようにユニット化しておくことが好ましい。従って、図2〜図4に示したような収容体15にエアクッション10を装填したエアクッションユニット100として構成とすることが好ましい。収容体15は、両側にエアクッション10を収容する袋状のエアクッション収容部151を有し、2つのエアクッション収容部151間に接続部152を有している。
【0017】
2つのエアクッション収容部151には、それぞれエアクッション10が挿入される。また、エアクッション収容部151には、エアクッション10とほぼ同じ大きさの三次元立体編物40を、エアクッション10の裏側エアクッション12の背面側に重ねて挿入することが好ましい(図3(d)参照)。三次元立体編物40を配置することにより、シートバック部510を通じて人体側に入力される振動を除振する効果がより高くなる。
【0018】
接続部152は、2つのエアクッション部151を所定間隔をおいて支持できるものであればよく、幅60〜120mm程度で形成される。接続部152も、袋状に形成し、その内部に三次元立体編物45を挿入することが好ましい(図3(d)及び図4参照)。これにより、該接続部152を通じて入力される振動も、該三次元立体編物45を挿入することにより効果的に除振できる。
【0019】
なお、上記したように、小空気袋111は、例えば、ポリウレタンエラストマー(例えば、シーダム株式会社製、品番「DUS605−CDR」)からなるシートを用いて形成されるが、裏側クッション材12を形成する大空気袋121及び収容体15も、同じ素材を用いて形成することが好ましい。また、小空気袋111、大空気袋121、エアクッション収容部151及び接続部152内に装填される各三次元立体編物は、例えば、特開2002−331603号公報に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。
【0020】
一方のグランド編地は、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成され、他方のグランド編地は、例えば、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、両者とも細目組織を採用するなど、その組み合わせも任意である。連結糸は、一方のグランド編地と他方のグランド編地とが所定の間隔を保持するように、2つのグランド編地間に編み込んだものである。このような三次元立体編物としては、例えば、以下のようなものを用いることができる。なお、各三次元立体編物は、必要に応じて複数枚積層して用いることもできる。
【0021】
(1)製品番号:49076D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・300デシテックス/288fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸と700デシテックス/192fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸との撚り糸
裏側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸と350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントとの組み合わせ
連結糸・・・・・・・・・350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
【0022】
(2)製品番号:49013D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
裏側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
連結糸・・・・・・・・・350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
【0023】
(3)製品番号:69030D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・450デシテックス/144fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
裏側のグランド編地・・・450デシテックス/144fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸と350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントとの組み合わせ
連結糸・・・・・・・・・350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
【0024】
(4)旭化成せんい(株)製の製品番号:T24053AY5−1S
【0025】
第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20と第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30とは、シートバック部510の表皮部材とエアクッション10を収容した収容体15(エアクッションユニット100)との間に配設され、2つのエアクッション10の全長に相当する長さを有し、2つのエアクッション10の頂部間の長さに相当する幅を有している。従って、長さが400〜600mm、幅が250〜350mm程度の大きさのものを用いることが好ましい。これにより、2つのエアクッション10が共に覆われるため、2つのエアクッション10の凹凸を感じにくくなる。
【0026】
第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20は、平板状に形成されたビーズ発泡体と、その外面に貼着される被覆材とから構成されている。ビーズ発泡体としては、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンのいずれか少なくとも一つを含む樹脂のビーズ法による発泡成形体が用いられる。なお、発泡倍率は任意であり限定されるものではない。被覆材は、ビーズ発泡体の外面に接着により貼着され、高い伸度と回復率を有する素材であり、好ましくは、伸度200%以上、100%伸長時の回復率が80%以上である弾性繊維不織布が用いられる。例えば、特開2007−92217号公報に開示された熱可塑性エラストマー弾性繊維が相互に溶融接着された不織布を用いることができる。具体的には、KBセーレン(株)製、商品名「エスパンシオーネ」を用いることができる。
【0027】
第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30は、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20と同様にビーズ発泡体を備えて構成されるが、その外面を覆う被覆材としては、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20において用いた弾性繊維不織布よりも伸縮性の小さい素材、例えば、熱可塑性ポリエステルからなる不織布が用いられる。具体的には、帝人(株)製のポリエチレンナフタレート(PEN)繊維(1100dtex)から形成した2軸織物(縦:20本/inch、横:20本/inch)を用いることができる。
【0028】
第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20と第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30とを積層する順序は限定されるものではないが、シートバック部510の表皮部材511に近い側に、弾性の高い第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を配設することが好ましい。また、第1及び第2のビーズ発泡樹脂弾性部材20,30を構成するビーズ発泡体は、厚さ約5〜6mm程度とし、その外面に、厚さ約1mm以下の上記した弾性繊維不織布や熱可塑性ポリエステルからなる不織布を貼着して形成される。なお、本実施形態では、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20の表皮部材511に対向する面、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30のエアクッションユニット100に対向する面に、それぞれPENフィルムなどのポリエステルフィルムを貼着している。これにより、生体信号の伝達性が向上する。
【0029】
本実施形態において人体支持手段を構成するシート500のシートバック部510は、表皮部材511と該表皮部材511の背面側に配設されるクッション支持部材512とを備えてなり、該表皮部材511とクッション支持部材512との間にエアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100)と第1及び第2のビーズ発泡樹脂弾性部材20,30が組み込まれる。この際、クッション支持部材512側にまずエアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100)が配置され、その表面側に第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30が、さらにその表面側に第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20が配置された上で、表皮部材511により被覆される。なお、クッション支持部材512は、例えば、三次元立体編物をシートバック部510の左右一対のサイドフレームの後端縁間に張って形成することもできるし、合成樹脂板から形成することもできる。表皮部材511は、例えば、三次元立体編物、合成皮革、皮革、あるいはこれらの積層体などを左右一対のサイドフレームの前縁間に張って設けることができる。
【0030】
このように、本実施形態においては、表皮部材511の裏面側に所定の大きさの第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20及び第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30が積層して配置され、さらにその後方に左右一対のエアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100)が配置される構成であるため、着座者が背にエアクッション10の凹凸を感じることなくなり、生体信号を測定するためのエアクッション10を有する構成でありながら、座り心地が向上する。
【0031】
次に、生体状態分析装置60の構成について図6に基づいて説明する。
生体状態分析装置60は、コンピュータから構成され、コンピュータプログラムとして、2階微分演算手段61、2階微分波形パワー値傾き算出手段62、2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段63、2階微分波形入眠予兆判定手段64、原波形パワー値傾き算出手段65、原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段66、原波形入眠予兆判定手段67、比較判断手段68、警告制御手段69がインストールされている。なお、コンピュータプログラムは、記録媒体へ記憶させて提供することができる。「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROMなどである。また、本発明に係るプログラムをインストールしたコンピュータから、通信回線を通じて他のコンピュータへ伝送することも可能である。また、汎用的な端末装置に対して、上記のプログラムをプリインストール、あるいはダウンロードすることで、生体状態分析装置を形成することも可能である。
【0032】
2階微分演算手段61は、生体信号測定装置1に設けられたセンサ111bの電気信号であるエアクッション10の時系列信号データの原波形を2階微分する。エアクッション10の時系列信号データの原波形を2階微分することにより得られる2階微分波形は、原波形の変化を強調できるため、原波形に含まれる生体状態を示す情報を顕著に示すことになる。
【0033】
2階微分波形パワー値傾き算出手段62は、2階微分演算手段61により得られる2階微分波形の各周期のピーク値から所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める。
【0034】
2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段63は、2階微分演算手段61により得られる2階微分波形をカオス解析し、カオス解析から得られる最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める。
【0035】
2階微分波形入眠予兆判定手段64は、2階微分波形パワー値傾き算出手段62及び2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段63により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する。より具体的には、2階微分波形パワー値の傾きの時系列波形と2階微分波形最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形が逆位相となっており、かつ、2階微分波形パワー値の傾きの時系列波形で低周波、大振幅の波形が生じている波形を入眠予兆信号と判定する。
【0036】
原波形パワー値傾き算出手段65、原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段66、及び原波形入眠予兆判定手段67は、分析対象となる時系列データが、2階微分波形ではなく、生体信号測定装置1に設けられたセンサ111bの電気信号であるエアクッション10の時系列信号データの原波形であるが、その算出方法は上記した2階微分波形パワー値傾き算出手段62、2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段63、2階微分波形入眠予兆判定手段64と全く同様である。
【0037】
比較判断手段68は、2階微分波形入眠予兆判定手段64のみにより入眠予兆信号が判定されたか、2階微分波形入眠予兆判定手段64及び原波形入眠予兆判定手段67の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定されたかを比較判断する。2階微分波形入眠予兆手段64と原波形入眠予兆判定手段67とを比較すると、前者は、生体の変化を検知する閾値が低い(感度が高い)と考えられるため、覚醒段階から睡眠段階1に至るまでのうち、より覚醒段階に近いレベルの兆候をも捉えることができるのに対し、後者は、生体の変化を検知する閾値が高い(感度が低い)と考えられるため、覚醒段階から睡眠段階1に至るまでのうち、より睡眠段階1に近いレベルの兆候しか捉えることができない。そこで、いずれによって入眠予兆信号が判定されたかを比較判断することにより、警告制御手段69による警告に役立てることができる。例えば、2階微分波形入眠予兆判定手段64のみにより入眠予兆信号が判定された場合には、コンピュータプログラムである警告制御手段69が警告装置(図示せず)に対して弱い警告を動作させる指令を発し、2階微分波形入眠予兆判定手段64及び原波形入眠予兆判定手段67の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定された場合には、強い警告を動作させる指令を発するように設定することができる。なお、警告装置は、音を発生させる装置、光を点滅させる装置、シートバック部の傾斜角度を変化させる装置など様々な装置を用いることもできる。もちろん、これらを適宜に2以上組み合わせてもよい。例えば、弱い警告の際には比較的小さな音を発し、強い警告の際には大きな音を発するようにしたり、弱い警告の際には音のみを発し、強い警告の際には音を発すると共に光も点滅させるように制御できる。
【0038】
(試験例1)
(静荷重特性)
図7に示したように、測定盤上に、エアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100)のみを単独で置いた場合(図8の「エアパック」のデータ)、エアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100)上に第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を積層した場合(図8の「A+エアパック」のデータ)、エアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100)上に第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30を積層した場合(図8の「B+エアパック」のデータ)、及び、エアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100)上に第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30を積層し、さらにその上に第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を積層した場合(図8の「A+B+エアパック」のデータ)について、センサ111bが付設された小空気袋111に対応する位置を、直径30mmの加圧板によってたわみ量1mmまで加圧して荷重−たわみ特性を測定した。エアクッション10の各空気袋111,121内に収容した三次元立体編物は、住江織物(株)製、製品番号49013Dであり、各部位の主な寸法は、図5(a),(b)に示したとおりであった。
【0039】
その結果を図8に示す。収容体15により保持されたエアクッション10が、背部の大動脈の脈波によって生じる空気圧変動は、エアクッション10を保持した収容体15のみを単独で置いた場合(図8の「エアパック」)の荷重−たわみ特性に従うことになる。従って、この荷重−たわみ特性よりもバネ定数が高くなった場合には、エアクッション10を保持した収容体15を直接表皮部材511の裏面側に配置した場合よりも大動脈の脈波の感度が鈍ることになる。そこで、各荷重−たわみ特性から得られるバネ定数を比較すると、第1又は第2のビーズ発泡樹脂弾性部材20,30のいずれかのみを、エアクッション10を保持した収容体15と積層した場合(図8の「A+エアパック」,「B+エアパック」)よりも、第1及び第2のビーズ発泡樹脂弾性部材20,30の両方を積層した場合(図8の「A+B+エアパック」)の方が、エアクッション10を保持した収容体15のみを単独で置いて測定した場合のバネ定数に近いことがわかる。従って、第1及び第2のビーズ発泡樹脂弾性部材20,30を両方とも積層して用いた場合には、これらをエアクッション10に積層しているにも拘わらず、大動脈の脈波をほとんど減衰させずに伝達できると共に、エアクッション10を単体で用いた場合のように異物感も感じることが少なくなる。
【0040】
なお、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20のみを複数枚積層した場合、あるいは、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30のみを複数枚積層した場合には、それぞれ、図8の「A+エアパック」のデータ、「B+エアパック」のデータとあまり変わらない結果となったことから、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20と第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30とはバネ定数の異なる構成とし、それらを重ね合わせることが好ましい。図8の実験結果から、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30のバネ定数が第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20のバネ定数の1.1〜1.4倍の範囲とすることが好ましい。この特性は、上記したように、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20は、相対的に伸縮性の高い弾性繊維不織布で被覆し、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30は、相対的に伸縮性の小さい不織布で被覆することにより付与される。また、エアクッション10を保持した収容体15上に第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30を積層し、さらにその上に第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を積層した場合(図8の「A+B+エアパック」)のバネ定数は、エアクッション10のみのバネ定数に相当する図8の「エアパック」で示されたバネ定数の0.8〜1.2倍の範囲となるようにすることが好ましい。
【0041】
(試験例2)
(外乱振動の影響)
図9に示したように、加振機の加振台上に、エアクッション10を保持した収容体15(試験例1のものと同じ構造、サイズ)上を載置し、そのさらに上面に、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30と第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を順に積層したもの(図9では、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30と第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を重ね合わせたものを「緩衝材」として表示)について(図8の「A+B+エアパック」と同じ形態)、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20上に2kgの重りを載せ、振幅1mmで1.0Hz〜10Hzまで、0.5Hz刻みで加振した(試験例2−A)。また、エアクッション10を保持した収容体15に代えて、小空気袋111を一つ加振台上に配置し、その上に、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30と第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を順に積層し、さらに、2kgの重りを載せて同様に加振した(比較例2−A)。なお、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20の表皮部材511に対向する面、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30のエアクッションユニット100に対向する面には、それぞれPENフィルムが貼着されている。そして、それぞれについて小空気袋111のに設けたセンサ111b(コンデンサ型マイクロフォンセンサ)の出力電圧を測定した。その結果を図10〜図14に示す。
【0042】
図10〜図14から、試験例2−Aの場合には、1.0Hz〜10Hzまでのいずれの周波数においても、出力電圧の変化がほとんどないのに対し、比較例2−Aの場合には、試験例2−Aよりも相対的に出力電圧の変化が大きい。従って、試験例2−Aの構成とすることにより、シートバック部510からの外部振動の出力電圧への影響が極めて小さくなる。その一方、第1及び第2のビーズ発泡樹脂弾性部材20,30側から入力される生体信号は、後述の試験例3のようにセンサ111bにより出力電圧の変化として捉えることができる。
【0043】
(試験例3)
(外乱振動の影響と生体信号の検出)
図15(a)に示したように、加振機の加振台上に、シートバック部510におけるクッション支持部材512に相当する三次元立体編物(3Dネット)、エアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100,試験例1のものと同じ構造、サイズ)、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20、シートバック部510における表皮部材511に相当する三次元立体編物(3Dネット)を順に積層し、その上に2kgの重りを載せ、振幅1mmで、大動脈の脈波の周波数に近い1.0Hz、1.5Hz、2.0Hzで加振した。図15(a)は、クッション支持部材512側から振動を入力するようにして、本実施形態の生体信号測定装置1をシートバック部510に実際に組み込んだ際に受ける外乱振動の影響を調べるものである。
【0044】
一方、図15(b)は、図15(a)と逆の順序で配置している。すなわち、シートバック部510における表皮部材511に相当する三次元立体編物(3Dネット)、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30、エアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100,試験例1のものと同じ構造、サイズ)、クッション支持部材512に相当する三次元立体編物(3Dネット)の順で積層している。この状態で加振することにより、表皮部材511側から入力される背部の大動脈の脈波の検出感度を調べることができる。なお、重りを2kgにしたのは、人が着座した際に、腰部からエアクッションユニット100が配設されているシートバック部510にかかる荷重が、直径98mmの面積で2kgに相当するためである。
【0045】
結果を図16〜図18に示す。図において、「エアパック外乱模擬」が図15(a)の結果であり、「エアパック生体信号模擬」が図15(b)の結果である。また、加振機の入力波形も併せて示す。これらの図から、「エアパック外乱模擬」は、振幅がほとんどない直線に近い状態であり、外乱振動はほとんど除去されることがわかる。逆に、「エアパック生体信号模擬」は、入力波形よりも増幅していることがわかる。このことから、本実施形態の構成によれば、乗車時のような外乱振動が入力される動的条件下においても、1.0Hz〜2.0Hz付近の大動脈の脈波を、外乱振動に埋もれさせることなく、確実に検出できると言える。
【0046】
(試験例4)
(生体信号の測定)
図2に示したように、シート500のシートバック部510に、上記実施形態で説明したエアクッション10を保持した収容体15(エアクッションユニット100,試験例1のものと同じ構造、サイズ)、第2のビーズ発泡樹脂弾性部材30、第1のビーズ発泡樹脂弾性部材20を順に収容した。なお、このシートバック部510に使用した表皮部材511は、三次元立体編物である(住江織物(株)製、製品番号49013D)。また、センサ111bを備えた、着座者の左側のエアクッション10を構成する中央の小空気袋111(幅60mm、長さ160mm)のシートバック部510の中心寄りの側縁と下縁の交差部Pが、シートクッション部520の上面からシートバック部510の表面に沿った長さで220mm、シートバック部510の中心から80mmとなるようにシートバック部510に組み込んだ。そして、上記小空気袋111のセンサ111bからの電気信号を測定して得られる空気圧変動をもとに人の状態を分析するコンピュータからなる生体信号分析手段60を配置し(図1参照)、50歳代の日本人男性をシート500に着座させ、腰部付近の大動脈の脈波を採取した。また、各被験者には指尖容積脈波計((株)アムコ製、フィンガークリッププローブ SR−5C)を装着して、指尖容積脈波の測定を行うと共に、簡易脳波計(フューテックエレクトロニクス(株)、FM−515A)を装着して脳波の測定も行った。また、心電計(日本光電工業(株)製心電計EGG−9122)も装着した。
【0047】
図19は、被験者の腰部付近の大動脈脈波(エアパック脈波)の原波形を示し、図20は、2階微分演算手段61により求められた2階微分波形(エアパック脈波2階微分波形)を示す。図21は、指尖容積脈波の原波形を示す。図22及び図23は、図19で示したエアパック脈波と図21で示した指尖容積脈波を部分的に拡大して示した図である。図22及び図23から、エアパック脈波は、大動脈の圧波形に含まれる切痕(拍出期の終わりに大動脈が急に閉鎖することを示す信号)を捉えていることがわかる。この切痕を捉えることができるということは、生体情報を確実に捉えていることの証左である。従って、エアパック脈波は、指尖容積脈波とほぼ同じ位相差と周期をもっている。図24(a)は、図19及び図21のエアパック脈波と指尖容積脈波の周波数解析結果であり、図24(b)は、図20のエアパック脈波2階微分波形と指尖容積脈波の周波数解析結果を示す図である。この図から、エアパック脈波及びその2階微分波形は、いずれも指尖容積脈波と同じ周波数でピークが生じていることがわかる。
【0048】
図25(a)は、原波形パワー値傾き算出手段65、原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段66により求められたエアパック脈波の原波形パワー値及び原波形最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形である。図25(b)は、2階微分波形パワー値傾き算出手段62、2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段63により求められたエアパック脈波2階微分波形の2階微分波形パワー値及び2階微分波形最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形である。図25(c)は、検証のため、指尖容積脈波から求めた指尖容積脈波のパワー値及び最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形である。
【0049】
図25(b)から、エアパック脈波2階微分波形の場合には、300秒付近において、2階微分波形パワー値の傾きの時系列波形と2階微分波形最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形が逆位相となっており、かつ、2階微分波形パワー値の傾きの時系列波形が低周波、大振幅になっていることから、この時点において最初の入眠予兆信号が現れていることがわかる。検証に用いた図25(c)の指尖容積脈波においても同様の入眠予兆信号が現れている。そして、図25(d)の脳波の分布率において、600秒〜1000秒において、α波の出現率が低下し、θ波が増加するという、覚醒段階から睡眠段階1に差しかかる状態が現れていることから、上記の300秒付近の入眠予兆信号は、この状態を予兆したものと考えられる。しかしながら、図25(a)のエアパック脈波の場合には、このような入眠予兆信号は現れていない。
【0050】
一方、1200秒〜1400秒の範囲では、エアパック脈波、エアパック脈波2階微分波形、指尖容積脈波のいずれにおいても、入眠予兆信号が出現していることがわかる。脳波分布率において、1400秒近傍でα波の低下とθ波の上昇が認められることから、その予兆を捉えたものと考えられる。
【0051】
上記試験例から、エアパック脈波2階微分波形を用いた分析を行った場合には、エアパック脈波を用いる場合よりも、指尖容積脈波を用いて分析を行った場合により近い結果が得られることがわかる。従って、エアパック脈波2階微分波形を用いることにより、自動車用のシートなどに、上記したエアクッション10を有する生体信号測定装置1を配設すれば、運転操作の妨げとなることなく、運転者の生体状態(眠気など)を、指尖容積脈波を測定して分析した場合と同様の判定を行うことができる。つまり、エアパック脈波2階微分波形は、指尖容積脈波に相当することになる。
【0052】
また、エアパック脈波を用いる場合とエアパック脈波2階微分波形を用いる場合とで上記のような差が生じることから、比較判断手段68により、いずれによって入眠予兆信号が判定されたかを判断し、上記のように、警告制御手段69による警告の制御に利用することができる。
【0053】
図26(a),(b)は、図25の3種類の各傾き時系列波形の周波数解析結果を示す。この図から、パワー値については指尖容積脈波とエアパック脈波2階微分波形はパワースペクトルが大きく、その絶対値も同一レベルである。一方、エアパック脈波はパワースペクトルが極端に小さくなる。また、指尖容積脈波とエアパック脈波2階微分波形の最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形は、同一レベルにあるが、エアパック脈波の最大リアプノフ指数は極端に高い。従って、指尖容積脈波とエアパック脈波2階微分波形は、パワー値と最大リアプノフ指数のパワースペクトルのバランスがよく、2つの拮抗する作用がスムーズに噛み合い、かつ互いにバランスしていることがわかる。一方、エアパック脈波は2つの作用が不安定であり、小さなストレスで大きな変化することになる。この差が、上述したエアパック脈波を用いた入眠予兆信号の検出とエアパック脈波2階微分波形を用いた入眠予兆信号の検出との感度に影響している。
【0054】
図27(a)〜(d)は、エアパック脈波、エアパック脈波2階微分波形、指尖容積脈波、心電計から得られた心拍数変動のウエーブレット解析を行った結果を示す。LF/HF成分は、交感神経活動の状態を示す指標であり、HF成分は、副交感神経活動の指標である。覚醒段階から睡眠段階1に移行する過程においては、LF/HF成分と比較してHF成分の変化の生理学的意義は小さいことから、LF/HF成分に注目して解析を行った。指尖容積脈波、エアパック脈波2階微分波形、心拍数変動から得られたLF/HF成分の場合には、150秒近傍で、いずれも単発的に上昇が見られる。これは、図25の傾き時系列波形における300秒近傍の入眠予兆信号が出現する前に、交感神経が活性化していることが現れたものと考えられる。さらに、心拍変動解析では、450〜900秒と1200〜1400秒でLF/HFのバーストの頻度が低下しており、これらの期間に自律神経において交感神経の活動レベルが低下していたと考えられる。これらの期間は、図25の傾き時系列波形から検知された入眠予兆信号の出現期、並びに、脳波の睡眠段階の変化の時期と一致していた。
【0055】
図28(a)は、指尖容積脈波の加速度脈波から得られた加速度脈波加齢指数(SDPTGAI)とエアパック脈波の加速度脈波から得られた加速度脈波加齢指数の時系列の値を示し、図28(b)は、指尖容積脈波の加速度脈波から得られた加速度脈波加齢指数とエアパック脈波2階微分波形の加速度脈波から得られた加速度脈波加齢指数の時系列の値を示す。SDPTGAIは器質的な血管壁硬化(生活習慣病における動脈硬化)と機能的血管壁緊張の両者の影響を受けて変化することが知られている。エアパック脈波2階微分波形から得られたSDPTGAIは、若干のバラツキはあるが、指尖容積脈波から得られたSDPTGAIに近い値を示している。一方、エアパック脈波から得られたSDPTGAIは、エアパック脈波2階微分波形の場合と比べてバラツキが大きく、エアパック脈波2階微分波形は器質的な血管壁硬化や機能的血管緊張といった血管の状態を指尖容積脈波と同様に捉えることができることがわかる。
【0056】
なお、上記実施形態においては、人体支持手段として自動車用のシートにエアクッション10、第1及び第2のビーズ発泡樹脂弾性部材20,30を組み込んでいるが、人体支持手段としては、ベッドなどの寝具、病院設備における診断用の椅子等に組み込むこともできる。また、上記実施形態では、シートバック部に組み込むエアクッションを用いて背部の大動脈の脈波を検知しているが、例えば、このエアクッションを人の手首回りに装着することにより、横骨動脈、尺骨動脈から動脈の脈波を採取することもできる。なお、このほかに動脈の脈波を採取可能な箇所としては、浅側頭動脈、頸動脈、鎖骨下動脈、上腕動脈、腹部大動脈、大腿動脈、膝窩動脈、後脛骨動脈、足背動脈などがあり、これらの脈波を採取して2階微分の手法を用いて人の状態を分析することもできる。但し、運転者の状態を分析する場合には、運転者の手、腕、首、足などを拘束することなく測定できることから、上記実施形態のように、腰部付近の大動脈の脈波を検知することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る生体状態分析装置の分析対象である生体信号測定装置をシートに組み込んだ状態で示した図である。
【図2】図2は、上記実施形態に係る生体信号測定装置をより詳細に示した図である。
【図3】図3は、エアクッションユニットを示した図であり、(a)は正面方向から見た断面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】図4は、エアクッションユニットの分解斜視図である。
【図5】図5(a),(b)は、試験例で用いたエアクッションユニットのサイズを説明するための図である。
【図6】図6は、上記実施形態の生体状態分析装置の構造を説明するための図である。
【図7】図7は、試験例1における荷重−たわみ特性の測定方法を説明するための図である。
【図8】図8は、図7の測定結果を示した図である。
【図9】図9は、試験例2の振動吸収特性の試験方法を説明するための図である。
【図10】図10(a)〜(d)は、試験例2において、1.0Hz〜2.5Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図11】図11(a)〜(d)は、試験例2において、3.0Hz〜4.5Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図12】図12(a)〜(d)は、試験例2において、5.0Hz〜6.5Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図13】図13(a)〜(d)は、試験例2において、7.0Hz〜8.5Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図14】図14(a)〜(c)は、試験例2において、9.0Hz〜10.0Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図15】図15(a),(b)は、試験例3の試験方法を説明するための図である。
【図16】図16は、試験例3において、1.0Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図17】図17は、試験例3において、1.5Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図18】図18は、試験例3において、2.0Hzで加振した際のセンサの出力を示した図である。
【図19】図19は試験例4において生体信号測定装置により採取した被験者の大動脈の脈波(エアパック脈波)の原波形を示す図である。
【図20】図20は、2階微分演算手段により求められた2階微分波形(エアパック脈波2階微分波形)を示す図である。
【図21】図21は、指尖容積脈波の原波形を示す図である。
【図22】図22は、図19及び図21で示したエアパック脈波と指尖容積脈波を部分的に拡大して示した一部を示した図である。
【図23】図23は、図19及び図21で示したエアパック脈波と指尖容積脈波を部分的に拡大して示した他の部を示した図である。
【図24】図24(a)は、図19のエアパック脈波(図中、「Air-pack」)と図21の指尖容積脈波(図中、「Plethysmogram」)の周波数解析結果であり、図24(b)は、図20のエアパック脈波2階微分波形(図中、「Air-pack(2nd differential calculus」)と図21の指尖容積脈波(図中、「Plethysmogram」)の周波数解析結果を示す図である。
【図25】図25(a)は、エアパック脈波の原波形パワー値及び原波形最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形であり、図25(b)は、エアパック脈波2階微分波形の2階微分波形パワー値及び2階微分波形最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形であり、図25(c)は、指尖容積脈波から求めた指尖容積脈波のパワー値及び最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形である。図25(d)は脳波の分布率の時系列波形を示す図である。
【図26】図26(a),(b)は、図25の3種類の各傾き時系列波形(エアパック脈波(図中、「Air-pack」)、エアパック脈波2階微分波形(図中、「Air-pack 2nd differential calculus wave」)、指尖容積脈波(図中、「Plethysmogram」)の周波数解析結果を示す図である。
【図27】図27(a)はエアパック脈波(図中、「Air-pack sensor」)、図27(b)はエアパック脈波2階微分波形(図中、「Air-pack 2nd differential calculus wave」)、図27(c)は指尖容積脈波(図中、「Plethysmogram」)、図27(d)は心電図(図中、「The electrocardiongram」)からそれぞれ得られた心拍数変動のウエーブレット解析を行った結果を示す図である。
【図28】図28(a)は、指尖容積脈波とエアパック脈波から得られた加速度脈波加齢指数(SDPTGAI)の値を示す図であり、図28(b)は、指尖容積脈波とエアパック脈波2階微分波形から得られた加速度脈波加齢指数(SDPTGAI)の値を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 生体信号測定装置
10 エアクッション
11 表側エアクッション
111 小空気袋
112 三次元立体編物
12 裏側エアクッション
121 大空気袋
122 三次元立体編物
15 収容体
100 エアクッションユニット
20 第1のビーズ発泡樹脂弾性部材
30 第2のビーズ発泡樹脂弾性部材
40,45 三次元立体編物
60 生体状態分析装置
61 2階微分演算手段
62 2階微分波形パワー値傾き算出手段
63 2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段
64 2階微分波形入眠予兆判定手段
65 原波形パワー値傾き算出手段
66 原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段
67 原波形入眠予兆判定手段
68 比較判断手段
69 警告制御手段
500 シート
510 シートバック部
511 表皮部材
512 クッション支持部材
520 シートクッション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体支持手段における、少なくとも人の腰部付近を支持する部位の表皮部材と該表皮部材の裏面側に配設されるクッション支持部材との間に組み込まれる空気袋を備えたエアクッションと、動脈の脈波に伴う前記空気袋の空気圧変動を検出するセンサとを備えてなる生体信号測定装置から、空気圧変動による前記センサの時系列信号データを受信し、該時系列信号データを加工して、前記人体支持手段により支持されている人の状態を分析する生体状態分析装置であって、
前記時系列信号データを2階微分する2階微分演算手段を有し、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形を加工して人の状態を分析することを特徴とする生体状態分析装置。
【請求項2】
さらに、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形の各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形パワー値傾き算出手段と、
前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形から、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記2階微分波形パワー値傾き算出手段及び2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する2階微分波形入眠予兆判定手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の生体状態分析装置。
【請求項3】
さらに、前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データの各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形パワー値傾き算出手段と、
前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データから、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記原波形パワー値傾き算出手段及び原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する原波形入眠予兆判定手段と、
前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定されたか、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定されたかを比較判断する比較判断手段と、
前記比各判断手段の比較結果に従って、覚醒されるための警告を動作させる警告制御手段と
を具備することを特徴とする請求項2記載の生体状態分析装置。
【請求項4】
前記警告制御手段は、前記比較判断手段において、前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定された場合と、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定された場合とで、異なる種類の警告を機能させるものであることを特徴とする請求項3記載の生体状態分析装置。
【請求項5】
人体支持手段における、少なくとも人の腰部付近を支持する部位の表皮部材と該表皮部材の裏面側に配設されるクッション支持部材との間に組み込まれる空気袋を備えたエアクッションと、動脈の脈波に伴う前記空気袋の空気圧変動を検出するセンサとを備えてなる生体信号測定装置から、空気圧変動による前記センサの時系列信号データを受信し、該時系列信号データを加工して、前記人体支持手段により支持されている人の状態を分析する生体状態分析装置に導入されるコンピュータプログラムであって、
前記時系列信号データを2階微分する2階微分演算手段を有し、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形を加工して人の状態を分析することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
さらに、前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形の各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形パワー値傾き算出手段と、
前記2階微分演算手段により得られる2階微分波形から、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記2階微分波形パワー値傾き算出手段及び2階微分波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する2階微分波形入眠予兆判定手段と
を具備することを特徴とする請求項5記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
さらに、前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データの各周期のピーク値から、所定時間範囲ごとに上限側のピーク値と下限側のピーク値との差を算出し、この差をパワー値とし、パワー値の時系列データを求めると共に、パワー値の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形パワー値傾き算出手段と、
前記エアクッションにより検出される空気圧変動の時系列信号データから、最大リアプノフ指数の時系列データを求めると共に、最大リアプノフ指数の所定時間範囲における時間軸に対する傾きを、所定回数スライド計算して求める原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段と、
前記原波形パワー値傾き算出手段及び原波形最大リアプノフ指数傾き算出手段により得られる各傾き時系列波形を重ねた際に、2つの傾き時系列波形が逆位相の関係になっている波形を入眠予兆信号と判定する原波形入眠予兆判定手段と、
前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定されたか、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定されたかを比較判断する比較判断手段と、
前記比各判断手段の比較結果に従って、覚醒されるための警告を動作させる警告制御手段と
を具備することを特徴とする請求項6記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記警告制御手段は、前記比較判断手段において、前記2階微分波形入眠予兆判定手段のみにより入眠予兆信号が判定された場合と、前記2階微分波形入眠予兆判定手段及び原波形入眠予兆判定手段の双方において同時間帯に入眠予兆信号が判定された場合とで、異なる種類の警告を機能させるものであることを特徴とする請求項7記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1に記載のコンピュータプログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−46236(P2010−46236A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212291(P2008−212291)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(594176202)株式会社デルタツーリング (111)
【Fターム(参考)】