生体試料の分析方法および分析装置
【課題】生体試料の成分濃度の分析を行う自動分析装置に投入する検体の前処理を実施する装置において、マニュアル作業の低減を図り、処理能力の向上と低コスト化を達成することができる生体試料の分析装置を提供する。
【解決手段】生体試料の分析装置において、採血管101を鉛直に固定する孔311と、採血管101に光を照射する照射手段312と、照射手段312を採血管101の側面に沿って相対的に移動させる移動手段316と、採血管101の鉛直方向の上側に固定され、移動手段316による移動と同期して採血管101の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像手段324と、撮像手段324で撮像された撮像画像を取得するデータ取得手段327と、撮像画像に基づいて、層の境界位置を特定するデータ解析手段328とを備えた。
【解決手段】生体試料の分析装置において、採血管101を鉛直に固定する孔311と、採血管101に光を照射する照射手段312と、照射手段312を採血管101の側面に沿って相対的に移動させる移動手段316と、採血管101の鉛直方向の上側に固定され、移動手段316による移動と同期して採血管101の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像手段324と、撮像手段324で撮像された撮像画像を取得するデータ取得手段327と、撮像画像に基づいて、層の境界位置を特定するデータ解析手段328とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の中に採取した血液などの生体試料について、生体試料を構成する成分に対し、それぞれの残量、色、成分の分離状態等に代表されるような可視的な物理状態の自動把握と、容器、栓の形状および色の自動識別を行い、多岐の項目数と多数の試料の組み合わせからなる分析工程を管理する処理フローの最適化に貢献する情報を提供する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から生体試料を用いて成分の濃度を分析する技術が提供されてきた。この技術には、専用の容器が用意されており、患者から採取した生体試料は当容器で処理される。例えば、試料が血液の場合、採取した血液は予め分離剤が収納されている採血管に入れられ、その中で遠心分離を施すことで分析に必要な成分である血清の抽出を行っている。
【0003】
ところで、近年、血清を用いて測定できる検査項目が多様化し、同時に、自動分析装置の数も増加してきた。必然的に検体数の増加も顕著となっている。これらの状況を受け、生体試料を自動分析装置に投入する前に行う処理(前処理)や、自動分析装置への検体の搬送を自動で行う前処理システムが登場し、現在も発展を続けている。
【0004】
検査室内におけるユーザーの運用も多様化し、採血管の形状を目印にした検体の分類や、栓の色に着目した検体の分類など、採血管や栓の形状または色に意味を持たせる運用方法が見受けられるようになった。
【0005】
しかしながら、前処理の完全な自動化は実現しているわけではなく、作業者によるマニュアル作業を必要とする部分も残っている。代表例として、分析にやや不適切で自動分析装置への投入を避けたい検体のピックアップ作業が挙がる。例えば、血清の液量が少ない検体を自動分析装置で分析する場合、分注時にプローブが分離剤に支え詰まりエラーを生じる原因となるが、前処理において液量を確認する作業はマニュアル(目視確認)で行うケースが多かった。
【0006】
また、吸光度を測定原理とする自動分析装置では、溶血や混濁がある血清の分析は結果の正確性にとって致命傷となるが、これらの検体を前処理においてチェックする作業はやはりマニュアルであるケースが多かった。さらには、採血管や栓の形状や色を用いた分類作業についても、作業者の目視による寄与が大きかった。
【0007】
上述の問題を解決することが市場要求となり、例えば、特開平11−37845号公報(特許文献1)、特開2001−165752号公報(特許文献2)などに記載されたような、撮影手段の設置による液量や色の自動確認や異物の自動検出に関する技術が発明されている。
【0008】
このような発明を発端として技術の改良が進み、例えば、特許第4092312号公報(特許文献3)、特許第3778355号公報(特許文献4)、特開2006−10453号公報(特許文献5)などに記載されたような、検査現場の実情に適した運用上好ましい形に変化してきている。
【0009】
また、検体の分類作業の自動化を見据えた技術として、例えば、特開2009−204360号公報(特許文献6)などに記載されたような、試験管の形状を自動で識別する方法も考案されている。
【0010】
これらの先行技術は、可視光を用いてイメージングを行い、画像処理を施して情報を取得する内容や、赤外光・マイクロ波などの非可視域帯の波長を用いて透過量のプロファイルを解析して情報を取得する内容とに分類できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−37845号公報
【特許文献2】特開2001−165752号公報
【特許文献3】特許第4092312号公報
【特許文献4】特許第3778355号公報
【特許文献5】特開2006−10453号公報
【特許文献6】特開2009−204360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、検査室における実際の運用方法の1つに、採血管の表面に患者ID・個人情報・装置運用に必要なパラメータ、などの重要情報が記載されたバーコードラベルが貼付されるという事実がある。
【0013】
採血管種とラベルの大きさによっては、採血管の管壁の全体が被覆されるというケースもあり、実際に検査室でも頻繁に見受けられると報告されている。また、通常使用する市販の採血管には、購入時に既にラベルが貼付されていることも多く、運用の都合上、この上に幾重にも重ねてラベルを貼付するという場面も少なくない。
【0014】
確かに、上述した方法のうちの一部は、ラベル貼付の採血管に対応できるような技術内容となっている。しかしながら、先行技術が直接扱っている範囲は、無色透明な管壁を通して中身が見える領域に限られており、ラベルが管壁の全体を被覆している場面までへの適用可能性についての言及はほとんどない。
【0015】
また、ラベル貼付のない面を検索し、回転手段を用いて当面を撮像手段に向けるような解決方法も記載されているが、処理能力で毎時800テストが市場要求である現在では、毎回の回転動作はフローの遅延原因となることから現実的な実装方法とは言い難い。
【0016】
従って、上述の特許文献に記載されているような側面から光を照射する方法では、ラベルによる遮光のため、特に全面がラベルで被覆された対象に対しては有効な結果を得るのは困難である。また、従来の技術により実現している内容は、液量測定、採血管形状識別、色判定、それぞれ単独のものが多く、全てを実装するにはコスト上昇が免れなかった。
【0017】
そこで、本発明の目的は、生体試料の成分濃度の分析を行う自動分析装置に投入する検体の前処理を実施する装置において、マニュアル作業の低減を図り、処理能力の向上と低コスト化を達成することができる生体試料の分析装置を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0020】
すなわち、代表的なものの概要は、容器の側面に光を照射する照射工程と、容器と光の出力部分を相対的に移動する移動工程と、移動と同期して容器の上側から容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像工程と、撮像された撮像画像を取得するデータ取得工程と、撮像画像に基づいて、層の境界位置を特定するデータ解析工程とを含むものである。
【0021】
また、容器に収納された層を構成する生体試料の分析を行う生体試料の分析装置であって、容器の外面の全部または一部は、ラベルで被覆されており、容器を鉛直に固定する固定手段と、容器に光を照射する照射手段と、照射手段を容器の側面に沿って相対的に移動させる移動手段と、容器の鉛直方向の上側に固定され、移動手段による移動と同期して容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像された撮像画像を取得するデータ取得手段と、撮像画像に基づいて、層の境界位置を特定するデータ解析手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0023】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、従来のマニュアル作業を低減することで作業者の負担や作業に伴う感染の危険性を低減することができる。また、採血管内に存在する血清の容量に関する情報が得られることで、測定項目の優先順位付けが可能となり、この結果、検体処理フローの改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の開栓モジュール近隣に配置されたユニットの構成を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の容器と生体試料を説明するための説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の前後画像の差分の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の波長特異性を説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の層の高さを測定するための試験管の一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の通常の視野角のレンズと広い視野角のレンズの違いを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、この発明は、本実施の形態に限定するものではない。下記の実施の形態は、上述の発明における基本概念の実現に係る代表例である。
【0026】
図1および図2により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の構成について説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の全体構成を示す構成図であり、患者から採取した生体試料(血液)を前処理して、自動分析装置で分析する構成を示している。図2は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の開栓モジュール近隣に配置されたユニットの構成を示す構成図である。
【0027】
図1において、生体試料の分析装置は、搬送ライン2、投入モジュール10、遠心分離モジュール20、開栓モジュール30、バーコードなどのラベラ40、分注モジュール50、閉栓モジュール60、分類モジュール70、収納モジュール80を基本要素とする複数のモジュールからなる前処理システム1と、前処理システム1全体を制御する制御用PC91と、その先に接続された生体試料の成分を分析する自動分析装置90とから構成されている。そして、開栓モジュール30の近隣には、本実施の形態の特徴となるユニット31が配置されている。
【0028】
以下に詳しく説明するように、本実施の形態は、採血管の上部から中身を撮影する方法であるため、開栓モジュール30とセットで用いるというのが特徴の1つである。
【0029】
投入モジュール10では、検体を生体試料の分析装置内に投入し、遠心分離モジュール20では、投入された検体に対して遠心分離を行う。開栓モジュール30では、遠心分離された検体の栓を開栓し、分注モジュール50では、遠心分離された検体を、自動分析装置90などで分析するために小分けする。ラベラ40では、その小分けの容器にバーコードを貼り付ける。
【0030】
閉栓モジュール60では、検体に栓を閉栓し、収納モジュール80では、閉栓された検体を収納する。分類モジュール70では、分注された検体容器の分類を行う。
【0031】
図2において、ユニット31は、前処理システム1に設置ができ、また物理的に通信する機能が設置できる台32が必要となる。この台32の上に、主要素として、採血管101を設置する設置手段(主に容器の鉛直性を保つための孔311、採血管101の移動手段321、採血管101を掴む手段322)、照射手段312、撮像手段324を有している。
【0032】
本実施の形態では、照射手段312にはレーザー光源を用いる。このレーザー光源には、集光用のコリメートレンズ314が装着されており、調整ネジ315を通して、ある程度集光度を調整することが可能である。光313の波長は、635nmを採用した。なお、実際は、どの波長帯でも実施することは可能である。また、照射手段312の上下運動のために、移動手段316を設けている。この移動手段316は、照射手段312を掴む手段319、回転モータ320、移動経路を作る柱317、移動を媒体するベルト318からなる。回転モータ320の運動により、移動経路である柱317に沿ってベルト318が矢印316aの方向に回転し、照射手段312の上下運動が可能となる。
【0033】
撮像手段324にはCMOSカメラを用いる。大きさは採血管101の径程度のものが望ましい。採血管101の上部に撮像手段324を設置し、撮像手段324の位置を調整する手段323を設ける。
【0034】
撮像手段324には、結像レンズ325が設置され、フォーカス326を介して焦点の調整が可能である。撮像手段324の先には、画像データを取得するデータ取得手段327、画像データを解析するデータ解析手段328、結果を判定し表示する手段329、解析結果を基に検体の次の移動について、前処理システム1本体に指示を与えるフィードバック指示手段330がそれぞれ接続されている。一連の情報は制御用PC91に送られ、制御用PC91を介して前処理システム1は制御される。
【0035】
採血は専用の容器である採血管101を用いて行う。採血管101には、様々な種類が存在し、各ユーザーがそれぞれの用途に応じて使い分けを行っている。形状も多種にわたっており、径が異なるもの(例えば直径16mm、13mm)、高さが異なるもの(例えば75mm、100mm)、異なる栓102を持つものなどが混在して使用される。
【0036】
次に、図3〜図9により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置のユニット31の動作について、採血作業を規定として時系列に沿って、詳しく説明する。図3は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の容器と生体試料を説明するための説明図、図4〜図8は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図、図9は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の前後画像の差分の変化を示すグラフである。
【0037】
まず、採血管101を用いて患者血液(全血)を採取する。当採血管101は、投入モジュール10を通して前処理システム1に投入される。なお、採血と投入はユーザーのマニュアル作業で行い、以後の作業は前処理システム1による自動作業となる。
【0038】
また、搬送作業は搬送ライン2が担う。採血管101は遠心分離モジュール20に運ばれ、そこで遠心分離が行われる。採血管101には予め分離剤112が入っており、遠心分離により、相対的に比重の大きい血餅113の層と、相対的に比重が小さく、血液分析に使用する血清111の層に分離される[図3(a)]。
【0039】
なお、分析項目によっては、分離剤112のない採血もある[図3(b)]。運用上、採血管101には、バーコードラベル118が添付されている。このバーコードラベル118には、患者のID・測定項目・診断項目・個人情報・パラメータ情報などが印字されている[図3(c)]。
【0040】
採血管101の径とバーコードラベル118の大きさの関係によっては、採血管101側面の一部のみすきま120を残してほぼ全面を被覆してしまうもの[図3(d)]、全体がラベルで覆われてしまうもの、場合によっては出荷時に貼付しているラベル紙の上に重貼りされるものもあり、通常、目視などの容易に想定しうる手段では内部の様子を確認することはできない。
【0041】
次の搬送先は開栓モジュール30である。開栓の後、採血管101は、ユニット31に移動する。撮影の準備として、まず、径が調整された孔311に採血管101を置き鉛直性を保たせる。次に、照射手段312を点灯させる。照射した状態のまま、移動手段316を稼動させて、採血管101の側面を上から下に走査する。
【0042】
ここで、重要なポイントは、本実施の形態での測定で効果を得るには、採血管101の型によらず一定の大きさに集光された光313を採血管101の側面に当てることである。
【0043】
ところが、前述したように採血管101の径には違いがあるため、測定対象の採血管101によって照射手段312の先端と採血管101の側面との距離にも違いが生じる。この差を解消するために、集光度の調整を施し、どのような採血管101が乗っている場合でも、同等な光を当てることができるようにしている。
【0044】
なお、この運動は、照射手段312と採血管101側面が相対的に変化すればよく、照射手段312を動かすのではなく、例えば、採血管101の移動手段321のモータを矢印321aの方向に回転させることにより、採血管101を動かす方法でもよい。
【0045】
照射手段312を所定の速度で走査しながら、撮像手段324で採血管101の上面を連続的に撮影する。このとき、対象の採血管101の高さに適するように、フォーカス326を調整する。ここで、照射手段312の上下移動の速度をV、撮像手段324の撮像間隔をTexp、とし、以下に、5つの典型的なケースについて記述する。
(1)バーコードラベル118の被覆されていない部分の照射(図4の画像350)
照射手段312がバーコードラベル118の被覆されていない部分を照射したときに得られる画像を示している。主に照らされているのは試験管の側面であるため、試験管の上部の断面343が強く光っているのが確認できる。図4では、外形341と内径342に相当する境界を点線で示した。
(2)バーコードラベル118が被覆された部分の照射(図5の画像351)
照射手段312がバーコードラベル118の被覆された部分を照射したときに得られる画像を示している。バーコードラベル118が光を散乱させることにより、バーコードラベル118の存在する部分の管壁345が強く光っているのが確認できる。
(3)血清の照射(図6の画像352)
照射手段312が血清111を照射したときに得られる画像を示している。液体である血清111は、光を散乱させる性質と、ある程度通過させる性質を持っている。このため、血清部分は全体がおよそ均一に光って見える。先述のようにバーコードラベル118の部分も光るため、図6に示すように、採血管101の内側全体が強く光る現象が現れるのが画像352の特徴である。
(4)分離剤の照射(図7の画像353)
照射手段312が分離剤112を照射したときに得られる画像を示している。分離剤112は血清以上に光りやすい性質を有している。そのため、管壁を通過し、直接照射される光313は、分離剤112全体を光らせる。
【0046】
また、血清111と分離剤112の透過率が異なり、お互いの境界面116で光の屈折が起こることから、結果として境界面116が検出される。この典型的な様子を示すのが図7に示す画像353である。前述の図6に示す画像352と比較して、図7に示す画像353には、光が弱くなる円形の境界面116の筋が写っている。これが境界面116である。強く光る2つの層が明確に検出できる画像となっていることが特徴である。
(5)血餅の照射(図8の画像354)
照射手段312が血餅113を照射したときに得られる画像を示している。血餅は光をほとんど通さない。成分が密集していて光を内部に散乱させているためと思われる。全体が暗く写るのが、図8に示す画像354の特徴である。
【0047】
以上のように、それぞれの層で光り方に特徴を持つ。この原理を利用して、光313がどの層を照射しているか判断することができる。
【0048】
本実施の形態では、この方法を用いることにより、以下のことが可能となる。
(i)分離剤112の位置の判定により、遠心分離の実施の自動判定が可能となる。例えば、分離剤112が採血管101の最下に存在していれば遠心分離未実施、中間に存在すれば遠心分離済みと判断できる。このことにより、これまで目視で行っていた作業が低減されるだけでなく、自動判定によるスムーズな運用が可能となる。
(ii)分離剤112の有無が自動判定でき、分離剤112がない検体とある検体との混在運用が可能となる。
(iii)血清と血餅の境界の発見も容易になる。
【0049】
次に、上述した現象を応用して、各層、特に血清の容量を計測する方法について説明する。
【0050】
まず、上述したように照射手段312を所定の速度で走査しながら、撮像手段324で連続的に撮影した連続画像について交互に差分を算出する。以下、具体的に記述する。
【0051】
画像は、Texpの時間間隔で取得される。得られる画像を便宜上、I1、I2、I3、…、In、としたとき、(I2−I1)、(I3−I2)、…、(In−In−1)を順に求める。評価を行うためには当差分データを定量化する必要あるが、ここでは、全画素の二乗和を評価量Pとする。
【0052】
前述したように、得られる画像は照射している層ごとに特徴を有し、(1)同じ層を照射した場合類似した画像が得られること、および(2)照射する層が異なれば画像は異なることの2つの理由により、同じ層では評価量Pは小さく層が切り替わる境界付近では評価量Pが大きくなるということが予想される。
【0053】
この評価量を記録した一例が図9に示すグラフ360である。
【0054】
図9の縦軸362は評価量Pである差分データの全画素における二乗和、横軸361は照射手段312の移動距離である。ここで、左側は照射手段312が上にある状態、右側は照射手段312が下にある状態にそれぞれ対応する。
【0055】
なお、照射手段312の移動速度は一定Vとしたため、横軸は、変換式=(V×撮像枚数×Texp)にて容易に経過時間とすることもできる。データの例として、図9の363の例を挙げる。極大値をとるのが境界位置と推定される。
【0056】
例えば、図9に示す左から1つ目のピーク364はラベルの上端の位置を、2つ目のピーク365は血清の上端の位置を、3つ目のピーク366は血清と分離剤の境界面の位置を、4つ目のピーク367は分離剤と血餅の位置を、それぞれ表している。
【0057】
このようにPのピークの位置をさがすことで境界を見つけることができる。また、4つ得られるピークについて、各ピークに対応する画像が撮像された番号をN1、N2、N3、N4とすると、血清の高さはV×(N3−N2)×Texp(図9の368)、分離剤の高さはV×(N4−N3)×Texp(図9の369)と容易に算出できる。
【0058】
また、図4に示す画像350から、採血管101の内径342を計測し、この値と算出した高さ情報に基づいて容積を計算することも容易である。
【0059】
以後、採血管101は、分注モジュール50、閉栓モジュール60を経て収納モジュール80で保存される。なお、分注モジュール50では、自動分析装置90に必要な血清が必要量、小分けされる。この小分けの容器にID等のラベルを付すのがバーコードのラベラ40、また、投入する自動分析装置90ごとに小分けした血清を分類するのが分類モジュール70の役割である。
【0060】
ここで、図10により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の波長特異性について説明する。図10は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の波長特異性を説明するための説明図である。
【0061】
前述の図6および図7に示す画像との比較として、別の波長405nm、445nmでの撮像結果を紹介する。図10は、それぞれの波長で、血清111と分離剤112を照射したときに得られる画像を並べて示している。
【0062】
図6および図7に示す画像のように層全体が光る現象は見られない。そのため前述の識別方法を有効に活用することは困難である。そもそも層が光らない原因は、この波長帯(405nm、445nm)の光が血清111や分離剤112と光学的に干渉しにくく、光を通過させてしまうことであると考えられる。
【0063】
いずれにせよ照射する光の波長領域によって得られる結果が異なるため、本実施の形態で採用する波長帯は、検出すべき層に特異性のある波長に限定される。主に検出すべきものは血清111の層であるため、血清成分に特徴的な波長を採用するのが望ましい。
【0064】
また、波長が血清に特異的なものに限定されるという原理を応用し、種別を特定することも可能である。
【0065】
まず、血清には、血液自動分析装置におる成分分析に障害をきたす種別があることが知られている。例えば、溶血、ビリルビン、混濁、などである。これらの吸収スペクトルには特徴があり、それぞれ検出したい種別に特異的な波長帯の光を吸収する。各波長の光を個別に放出できるレーザー光源などの照射手段312を用意し、各波長を順番に血清部分に当て、特異的な波長を特定することにより、当該波長に対応するものとして種別を特定することが可能である。
【0066】
次に,図11および図12により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の層の高さを測定する別の方法について説明する。図11は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の層の高さを測定するための試験管の一例を示す図、図12は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の通常の視野角のレンズと広い視野角のレンズの違いを説明するための説明図である。
【0067】
図11に示すように、寸法キャリブレーション用目盛り131が振られたラベルなどが貼布された距離補正用採血管130などを予め測定することで、試験管の高さ方向のスケーリングを行い、これを利用して層の高さを測定することができる。
【0068】
まず、開栓された採血管101の側面のうち、採血管101の上側の領域で明らかにラベルが被覆されていない部分を照射し、この状態のまま上側から撮像する。採血管101の内部を上から撮影したときに得られる画像で示される、採血管101の高さ方向の距離と図中の二次元上の距離は線形ではない。
【0069】
層の厚みを計測するためには、高さを表す定規が必要である。ここでは、スケーリングを実施する。
【0070】
距離補正用採血管130を用意する。この距離補正用採血管130には、正確な寸法キャリブレーション用目盛り131が記されている。これを前述の撮像手段324で撮像した画像140を図11に示す。外側の斜線は試験管の淵343である。その内側に寸法キャリブレーション用目盛り131が順に写る。
【0071】
次に、血清の領域を特定する。特定には、図5〜図7の状態の画像を利用する。前述したように、図7には、血清111と分離剤112の2つの層と、両者を隔てる境界面116が写っている。特に、境界面116の部分は、光量の減少が見られるため、場所を特定することができる。
【0072】
また、図5から図6に示す画像に切り替わる部分についても同様に、境界が現れる。これらの2つの境界面から血清111の層を特定する。
【0073】
最後に、層の厚みを測定する。図11に示す画像140における寸法キャリブレーション用目盛り131と、抽出した境界面の位置を照らし合わせ、各境界の目盛り上の位置を特定する。境界間の距離が層の高さ(H)である。
【0074】
また、採血管の内径(φ)を計測し、数式π×(φ/2)×(φ/2)×Hにて容量を算出する。
【0075】
さらに、撮像手段324に視野角の広いレンズを使うことで計測精度を向上させることができる。ここでは、視野角が100度程度のレンズを例に挙げる。なお、撮像手段324の種類は、CMOSでもCCDでもよい。図12に、通常のレンズと広角のレンズから得られる画像の比較を示す。視野が広いレンズであればあるほど、画像の中心から周辺部分に向かって歪みが大きくなり、この結果、試験管の底までよく見えるようになる。
【0076】
図12に示す例では、参考までに、血餅113の大きさを示した。同じ被写体でも広視野角の方が小さく写る。
【0077】
そして、視野角が広ければ広いほど寸法キャリブレーション用目盛り131の幅は徐々に広くなる。このため、位置を特定するときの分解能が向上する。
【0078】
なお、本実施の形態では、ユニット31を開栓モジュール30の近隣に配置しているが、必ず開栓モジュール30の近隣に配置しなければならないということではなく、任意の位置に配置させ、代替手段としてユニット内部に開閉栓を行う機構を備えるという構成にしてもよい。
【0079】
また、撮像手段324としては、カラーカメラを使用してもよい。種類は、CCD、CMOSなどがある。この場合、前述のように、連続画像の差分を計算する際に、色情報を残したままにしておくとより精度が向上する。なぜならば、照射する層が切り替わる場面では、相転移的に色が変化するからである。
【0080】
また、カラーカメラを搭載した場合は、採血管101の栓の色、形状も識別するとよい。前述のように、採血管101には種類も多く、形状・栓の色による区別が行われている。カラーカメラによる識別を加えることにより、より一層、フローの最適化を図ることができる。また、同時に、血清の色情報も取得するとよい。
【0081】
また、本実施の形態のユニット31は前処理システム1本体に設置するだけの用途ではなく、自動分析装置90の投入部などへの設置も可能である。
【0082】
なお、本実施の形態のユニット31の機能は、液量測定/色判定という結果の値にバラツキが入り込みやすい分野である。そのため、自動で、定期的に既知分量・既知色の検体を測定し、測定結果が正しいか否かのチェックと、必要ならば、チェック結果に基づいて、結果を補正する機能を備えたり、その結果を表示するなどの機能も重要である。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、容器の中に採取した血液などの生体試料を分析する生体試料の分析装置に関し、生体試料を構成する成分に対し、それぞれの残量、色、成分の分離状態等に代表されるような可視的な物理状態の自動把握と、容器、栓の形状および色の自動識別を行い、多岐の項目数と多数の試料の組み合わせからなる分析工程を管理する処理フローを有するシステムや装置などに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…前処理システム、2…搬送ライン、10…投入モジュール、20…遠心分離モジュール、30…開栓モジュール、31…ユニット、32…台、40…ラベラ、50…分注モジュール、60…閉栓モジュール、70…分類モジュール、80…収納モジュール、90…自動分析装置、91…制御用PC、101…採血管、102…栓、111…血清、112…分離剤、113…血餅、114…血清の層の上面、115…メニスカス、116…血清と分離剤の境界面、117…分離剤と血餅の境界面、118…バーコードラベル、119…血清と血餅の境界面、120…すきま、130…距離補正用採血管、131…寸法キャリブレーション用目盛り、311…孔、312…照射手段、313…光、314…コリメートレンズ、315…調整ネジ、316…移動手段、317…柱、318…ベルト、319…照射手段を掴む手段、320…回転モータ、321…移動手段、322…採血管を掴む手段、323…撮像手段の位置を調整する手段、324…撮像手段、325…結像レンズ、326…フォーカス、327…画像データを取得する手段、328…画像データを解析する手段、329…結果を判定し表示する手段、330…フィードバック指示手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の中に採取した血液などの生体試料について、生体試料を構成する成分に対し、それぞれの残量、色、成分の分離状態等に代表されるような可視的な物理状態の自動把握と、容器、栓の形状および色の自動識別を行い、多岐の項目数と多数の試料の組み合わせからなる分析工程を管理する処理フローの最適化に貢献する情報を提供する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から生体試料を用いて成分の濃度を分析する技術が提供されてきた。この技術には、専用の容器が用意されており、患者から採取した生体試料は当容器で処理される。例えば、試料が血液の場合、採取した血液は予め分離剤が収納されている採血管に入れられ、その中で遠心分離を施すことで分析に必要な成分である血清の抽出を行っている。
【0003】
ところで、近年、血清を用いて測定できる検査項目が多様化し、同時に、自動分析装置の数も増加してきた。必然的に検体数の増加も顕著となっている。これらの状況を受け、生体試料を自動分析装置に投入する前に行う処理(前処理)や、自動分析装置への検体の搬送を自動で行う前処理システムが登場し、現在も発展を続けている。
【0004】
検査室内におけるユーザーの運用も多様化し、採血管の形状を目印にした検体の分類や、栓の色に着目した検体の分類など、採血管や栓の形状または色に意味を持たせる運用方法が見受けられるようになった。
【0005】
しかしながら、前処理の完全な自動化は実現しているわけではなく、作業者によるマニュアル作業を必要とする部分も残っている。代表例として、分析にやや不適切で自動分析装置への投入を避けたい検体のピックアップ作業が挙がる。例えば、血清の液量が少ない検体を自動分析装置で分析する場合、分注時にプローブが分離剤に支え詰まりエラーを生じる原因となるが、前処理において液量を確認する作業はマニュアル(目視確認)で行うケースが多かった。
【0006】
また、吸光度を測定原理とする自動分析装置では、溶血や混濁がある血清の分析は結果の正確性にとって致命傷となるが、これらの検体を前処理においてチェックする作業はやはりマニュアルであるケースが多かった。さらには、採血管や栓の形状や色を用いた分類作業についても、作業者の目視による寄与が大きかった。
【0007】
上述の問題を解決することが市場要求となり、例えば、特開平11−37845号公報(特許文献1)、特開2001−165752号公報(特許文献2)などに記載されたような、撮影手段の設置による液量や色の自動確認や異物の自動検出に関する技術が発明されている。
【0008】
このような発明を発端として技術の改良が進み、例えば、特許第4092312号公報(特許文献3)、特許第3778355号公報(特許文献4)、特開2006−10453号公報(特許文献5)などに記載されたような、検査現場の実情に適した運用上好ましい形に変化してきている。
【0009】
また、検体の分類作業の自動化を見据えた技術として、例えば、特開2009−204360号公報(特許文献6)などに記載されたような、試験管の形状を自動で識別する方法も考案されている。
【0010】
これらの先行技術は、可視光を用いてイメージングを行い、画像処理を施して情報を取得する内容や、赤外光・マイクロ波などの非可視域帯の波長を用いて透過量のプロファイルを解析して情報を取得する内容とに分類できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−37845号公報
【特許文献2】特開2001−165752号公報
【特許文献3】特許第4092312号公報
【特許文献4】特許第3778355号公報
【特許文献5】特開2006−10453号公報
【特許文献6】特開2009−204360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、検査室における実際の運用方法の1つに、採血管の表面に患者ID・個人情報・装置運用に必要なパラメータ、などの重要情報が記載されたバーコードラベルが貼付されるという事実がある。
【0013】
採血管種とラベルの大きさによっては、採血管の管壁の全体が被覆されるというケースもあり、実際に検査室でも頻繁に見受けられると報告されている。また、通常使用する市販の採血管には、購入時に既にラベルが貼付されていることも多く、運用の都合上、この上に幾重にも重ねてラベルを貼付するという場面も少なくない。
【0014】
確かに、上述した方法のうちの一部は、ラベル貼付の採血管に対応できるような技術内容となっている。しかしながら、先行技術が直接扱っている範囲は、無色透明な管壁を通して中身が見える領域に限られており、ラベルが管壁の全体を被覆している場面までへの適用可能性についての言及はほとんどない。
【0015】
また、ラベル貼付のない面を検索し、回転手段を用いて当面を撮像手段に向けるような解決方法も記載されているが、処理能力で毎時800テストが市場要求である現在では、毎回の回転動作はフローの遅延原因となることから現実的な実装方法とは言い難い。
【0016】
従って、上述の特許文献に記載されているような側面から光を照射する方法では、ラベルによる遮光のため、特に全面がラベルで被覆された対象に対しては有効な結果を得るのは困難である。また、従来の技術により実現している内容は、液量測定、採血管形状識別、色判定、それぞれ単独のものが多く、全てを実装するにはコスト上昇が免れなかった。
【0017】
そこで、本発明の目的は、生体試料の成分濃度の分析を行う自動分析装置に投入する検体の前処理を実施する装置において、マニュアル作業の低減を図り、処理能力の向上と低コスト化を達成することができる生体試料の分析装置を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0020】
すなわち、代表的なものの概要は、容器の側面に光を照射する照射工程と、容器と光の出力部分を相対的に移動する移動工程と、移動と同期して容器の上側から容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像工程と、撮像された撮像画像を取得するデータ取得工程と、撮像画像に基づいて、層の境界位置を特定するデータ解析工程とを含むものである。
【0021】
また、容器に収納された層を構成する生体試料の分析を行う生体試料の分析装置であって、容器の外面の全部または一部は、ラベルで被覆されており、容器を鉛直に固定する固定手段と、容器に光を照射する照射手段と、照射手段を容器の側面に沿って相対的に移動させる移動手段と、容器の鉛直方向の上側に固定され、移動手段による移動と同期して容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像された撮像画像を取得するデータ取得手段と、撮像画像に基づいて、層の境界位置を特定するデータ解析手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0023】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、従来のマニュアル作業を低減することで作業者の負担や作業に伴う感染の危険性を低減することができる。また、採血管内に存在する血清の容量に関する情報が得られることで、測定項目の優先順位付けが可能となり、この結果、検体処理フローの改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の開栓モジュール近隣に配置されたユニットの構成を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の容器と生体試料を説明するための説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の前後画像の差分の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の波長特異性を説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の層の高さを測定するための試験管の一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の通常の視野角のレンズと広い視野角のレンズの違いを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、この発明は、本実施の形態に限定するものではない。下記の実施の形態は、上述の発明における基本概念の実現に係る代表例である。
【0026】
図1および図2により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の構成について説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の全体構成を示す構成図であり、患者から採取した生体試料(血液)を前処理して、自動分析装置で分析する構成を示している。図2は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の開栓モジュール近隣に配置されたユニットの構成を示す構成図である。
【0027】
図1において、生体試料の分析装置は、搬送ライン2、投入モジュール10、遠心分離モジュール20、開栓モジュール30、バーコードなどのラベラ40、分注モジュール50、閉栓モジュール60、分類モジュール70、収納モジュール80を基本要素とする複数のモジュールからなる前処理システム1と、前処理システム1全体を制御する制御用PC91と、その先に接続された生体試料の成分を分析する自動分析装置90とから構成されている。そして、開栓モジュール30の近隣には、本実施の形態の特徴となるユニット31が配置されている。
【0028】
以下に詳しく説明するように、本実施の形態は、採血管の上部から中身を撮影する方法であるため、開栓モジュール30とセットで用いるというのが特徴の1つである。
【0029】
投入モジュール10では、検体を生体試料の分析装置内に投入し、遠心分離モジュール20では、投入された検体に対して遠心分離を行う。開栓モジュール30では、遠心分離された検体の栓を開栓し、分注モジュール50では、遠心分離された検体を、自動分析装置90などで分析するために小分けする。ラベラ40では、その小分けの容器にバーコードを貼り付ける。
【0030】
閉栓モジュール60では、検体に栓を閉栓し、収納モジュール80では、閉栓された検体を収納する。分類モジュール70では、分注された検体容器の分類を行う。
【0031】
図2において、ユニット31は、前処理システム1に設置ができ、また物理的に通信する機能が設置できる台32が必要となる。この台32の上に、主要素として、採血管101を設置する設置手段(主に容器の鉛直性を保つための孔311、採血管101の移動手段321、採血管101を掴む手段322)、照射手段312、撮像手段324を有している。
【0032】
本実施の形態では、照射手段312にはレーザー光源を用いる。このレーザー光源には、集光用のコリメートレンズ314が装着されており、調整ネジ315を通して、ある程度集光度を調整することが可能である。光313の波長は、635nmを採用した。なお、実際は、どの波長帯でも実施することは可能である。また、照射手段312の上下運動のために、移動手段316を設けている。この移動手段316は、照射手段312を掴む手段319、回転モータ320、移動経路を作る柱317、移動を媒体するベルト318からなる。回転モータ320の運動により、移動経路である柱317に沿ってベルト318が矢印316aの方向に回転し、照射手段312の上下運動が可能となる。
【0033】
撮像手段324にはCMOSカメラを用いる。大きさは採血管101の径程度のものが望ましい。採血管101の上部に撮像手段324を設置し、撮像手段324の位置を調整する手段323を設ける。
【0034】
撮像手段324には、結像レンズ325が設置され、フォーカス326を介して焦点の調整が可能である。撮像手段324の先には、画像データを取得するデータ取得手段327、画像データを解析するデータ解析手段328、結果を判定し表示する手段329、解析結果を基に検体の次の移動について、前処理システム1本体に指示を与えるフィードバック指示手段330がそれぞれ接続されている。一連の情報は制御用PC91に送られ、制御用PC91を介して前処理システム1は制御される。
【0035】
採血は専用の容器である採血管101を用いて行う。採血管101には、様々な種類が存在し、各ユーザーがそれぞれの用途に応じて使い分けを行っている。形状も多種にわたっており、径が異なるもの(例えば直径16mm、13mm)、高さが異なるもの(例えば75mm、100mm)、異なる栓102を持つものなどが混在して使用される。
【0036】
次に、図3〜図9により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置のユニット31の動作について、採血作業を規定として時系列に沿って、詳しく説明する。図3は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の容器と生体試料を説明するための説明図、図4〜図8は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の画像例を説明するための説明図、図9は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の前後画像の差分の変化を示すグラフである。
【0037】
まず、採血管101を用いて患者血液(全血)を採取する。当採血管101は、投入モジュール10を通して前処理システム1に投入される。なお、採血と投入はユーザーのマニュアル作業で行い、以後の作業は前処理システム1による自動作業となる。
【0038】
また、搬送作業は搬送ライン2が担う。採血管101は遠心分離モジュール20に運ばれ、そこで遠心分離が行われる。採血管101には予め分離剤112が入っており、遠心分離により、相対的に比重の大きい血餅113の層と、相対的に比重が小さく、血液分析に使用する血清111の層に分離される[図3(a)]。
【0039】
なお、分析項目によっては、分離剤112のない採血もある[図3(b)]。運用上、採血管101には、バーコードラベル118が添付されている。このバーコードラベル118には、患者のID・測定項目・診断項目・個人情報・パラメータ情報などが印字されている[図3(c)]。
【0040】
採血管101の径とバーコードラベル118の大きさの関係によっては、採血管101側面の一部のみすきま120を残してほぼ全面を被覆してしまうもの[図3(d)]、全体がラベルで覆われてしまうもの、場合によっては出荷時に貼付しているラベル紙の上に重貼りされるものもあり、通常、目視などの容易に想定しうる手段では内部の様子を確認することはできない。
【0041】
次の搬送先は開栓モジュール30である。開栓の後、採血管101は、ユニット31に移動する。撮影の準備として、まず、径が調整された孔311に採血管101を置き鉛直性を保たせる。次に、照射手段312を点灯させる。照射した状態のまま、移動手段316を稼動させて、採血管101の側面を上から下に走査する。
【0042】
ここで、重要なポイントは、本実施の形態での測定で効果を得るには、採血管101の型によらず一定の大きさに集光された光313を採血管101の側面に当てることである。
【0043】
ところが、前述したように採血管101の径には違いがあるため、測定対象の採血管101によって照射手段312の先端と採血管101の側面との距離にも違いが生じる。この差を解消するために、集光度の調整を施し、どのような採血管101が乗っている場合でも、同等な光を当てることができるようにしている。
【0044】
なお、この運動は、照射手段312と採血管101側面が相対的に変化すればよく、照射手段312を動かすのではなく、例えば、採血管101の移動手段321のモータを矢印321aの方向に回転させることにより、採血管101を動かす方法でもよい。
【0045】
照射手段312を所定の速度で走査しながら、撮像手段324で採血管101の上面を連続的に撮影する。このとき、対象の採血管101の高さに適するように、フォーカス326を調整する。ここで、照射手段312の上下移動の速度をV、撮像手段324の撮像間隔をTexp、とし、以下に、5つの典型的なケースについて記述する。
(1)バーコードラベル118の被覆されていない部分の照射(図4の画像350)
照射手段312がバーコードラベル118の被覆されていない部分を照射したときに得られる画像を示している。主に照らされているのは試験管の側面であるため、試験管の上部の断面343が強く光っているのが確認できる。図4では、外形341と内径342に相当する境界を点線で示した。
(2)バーコードラベル118が被覆された部分の照射(図5の画像351)
照射手段312がバーコードラベル118の被覆された部分を照射したときに得られる画像を示している。バーコードラベル118が光を散乱させることにより、バーコードラベル118の存在する部分の管壁345が強く光っているのが確認できる。
(3)血清の照射(図6の画像352)
照射手段312が血清111を照射したときに得られる画像を示している。液体である血清111は、光を散乱させる性質と、ある程度通過させる性質を持っている。このため、血清部分は全体がおよそ均一に光って見える。先述のようにバーコードラベル118の部分も光るため、図6に示すように、採血管101の内側全体が強く光る現象が現れるのが画像352の特徴である。
(4)分離剤の照射(図7の画像353)
照射手段312が分離剤112を照射したときに得られる画像を示している。分離剤112は血清以上に光りやすい性質を有している。そのため、管壁を通過し、直接照射される光313は、分離剤112全体を光らせる。
【0046】
また、血清111と分離剤112の透過率が異なり、お互いの境界面116で光の屈折が起こることから、結果として境界面116が検出される。この典型的な様子を示すのが図7に示す画像353である。前述の図6に示す画像352と比較して、図7に示す画像353には、光が弱くなる円形の境界面116の筋が写っている。これが境界面116である。強く光る2つの層が明確に検出できる画像となっていることが特徴である。
(5)血餅の照射(図8の画像354)
照射手段312が血餅113を照射したときに得られる画像を示している。血餅は光をほとんど通さない。成分が密集していて光を内部に散乱させているためと思われる。全体が暗く写るのが、図8に示す画像354の特徴である。
【0047】
以上のように、それぞれの層で光り方に特徴を持つ。この原理を利用して、光313がどの層を照射しているか判断することができる。
【0048】
本実施の形態では、この方法を用いることにより、以下のことが可能となる。
(i)分離剤112の位置の判定により、遠心分離の実施の自動判定が可能となる。例えば、分離剤112が採血管101の最下に存在していれば遠心分離未実施、中間に存在すれば遠心分離済みと判断できる。このことにより、これまで目視で行っていた作業が低減されるだけでなく、自動判定によるスムーズな運用が可能となる。
(ii)分離剤112の有無が自動判定でき、分離剤112がない検体とある検体との混在運用が可能となる。
(iii)血清と血餅の境界の発見も容易になる。
【0049】
次に、上述した現象を応用して、各層、特に血清の容量を計測する方法について説明する。
【0050】
まず、上述したように照射手段312を所定の速度で走査しながら、撮像手段324で連続的に撮影した連続画像について交互に差分を算出する。以下、具体的に記述する。
【0051】
画像は、Texpの時間間隔で取得される。得られる画像を便宜上、I1、I2、I3、…、In、としたとき、(I2−I1)、(I3−I2)、…、(In−In−1)を順に求める。評価を行うためには当差分データを定量化する必要あるが、ここでは、全画素の二乗和を評価量Pとする。
【0052】
前述したように、得られる画像は照射している層ごとに特徴を有し、(1)同じ層を照射した場合類似した画像が得られること、および(2)照射する層が異なれば画像は異なることの2つの理由により、同じ層では評価量Pは小さく層が切り替わる境界付近では評価量Pが大きくなるということが予想される。
【0053】
この評価量を記録した一例が図9に示すグラフ360である。
【0054】
図9の縦軸362は評価量Pである差分データの全画素における二乗和、横軸361は照射手段312の移動距離である。ここで、左側は照射手段312が上にある状態、右側は照射手段312が下にある状態にそれぞれ対応する。
【0055】
なお、照射手段312の移動速度は一定Vとしたため、横軸は、変換式=(V×撮像枚数×Texp)にて容易に経過時間とすることもできる。データの例として、図9の363の例を挙げる。極大値をとるのが境界位置と推定される。
【0056】
例えば、図9に示す左から1つ目のピーク364はラベルの上端の位置を、2つ目のピーク365は血清の上端の位置を、3つ目のピーク366は血清と分離剤の境界面の位置を、4つ目のピーク367は分離剤と血餅の位置を、それぞれ表している。
【0057】
このようにPのピークの位置をさがすことで境界を見つけることができる。また、4つ得られるピークについて、各ピークに対応する画像が撮像された番号をN1、N2、N3、N4とすると、血清の高さはV×(N3−N2)×Texp(図9の368)、分離剤の高さはV×(N4−N3)×Texp(図9の369)と容易に算出できる。
【0058】
また、図4に示す画像350から、採血管101の内径342を計測し、この値と算出した高さ情報に基づいて容積を計算することも容易である。
【0059】
以後、採血管101は、分注モジュール50、閉栓モジュール60を経て収納モジュール80で保存される。なお、分注モジュール50では、自動分析装置90に必要な血清が必要量、小分けされる。この小分けの容器にID等のラベルを付すのがバーコードのラベラ40、また、投入する自動分析装置90ごとに小分けした血清を分類するのが分類モジュール70の役割である。
【0060】
ここで、図10により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の波長特異性について説明する。図10は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の波長特異性を説明するための説明図である。
【0061】
前述の図6および図7に示す画像との比較として、別の波長405nm、445nmでの撮像結果を紹介する。図10は、それぞれの波長で、血清111と分離剤112を照射したときに得られる画像を並べて示している。
【0062】
図6および図7に示す画像のように層全体が光る現象は見られない。そのため前述の識別方法を有効に活用することは困難である。そもそも層が光らない原因は、この波長帯(405nm、445nm)の光が血清111や分離剤112と光学的に干渉しにくく、光を通過させてしまうことであると考えられる。
【0063】
いずれにせよ照射する光の波長領域によって得られる結果が異なるため、本実施の形態で採用する波長帯は、検出すべき層に特異性のある波長に限定される。主に検出すべきものは血清111の層であるため、血清成分に特徴的な波長を採用するのが望ましい。
【0064】
また、波長が血清に特異的なものに限定されるという原理を応用し、種別を特定することも可能である。
【0065】
まず、血清には、血液自動分析装置におる成分分析に障害をきたす種別があることが知られている。例えば、溶血、ビリルビン、混濁、などである。これらの吸収スペクトルには特徴があり、それぞれ検出したい種別に特異的な波長帯の光を吸収する。各波長の光を個別に放出できるレーザー光源などの照射手段312を用意し、各波長を順番に血清部分に当て、特異的な波長を特定することにより、当該波長に対応するものとして種別を特定することが可能である。
【0066】
次に,図11および図12により、本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の層の高さを測定する別の方法について説明する。図11は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の層の高さを測定するための試験管の一例を示す図、図12は本発明の一実施の形態に係る生体試料の分析装置の通常の視野角のレンズと広い視野角のレンズの違いを説明するための説明図である。
【0067】
図11に示すように、寸法キャリブレーション用目盛り131が振られたラベルなどが貼布された距離補正用採血管130などを予め測定することで、試験管の高さ方向のスケーリングを行い、これを利用して層の高さを測定することができる。
【0068】
まず、開栓された採血管101の側面のうち、採血管101の上側の領域で明らかにラベルが被覆されていない部分を照射し、この状態のまま上側から撮像する。採血管101の内部を上から撮影したときに得られる画像で示される、採血管101の高さ方向の距離と図中の二次元上の距離は線形ではない。
【0069】
層の厚みを計測するためには、高さを表す定規が必要である。ここでは、スケーリングを実施する。
【0070】
距離補正用採血管130を用意する。この距離補正用採血管130には、正確な寸法キャリブレーション用目盛り131が記されている。これを前述の撮像手段324で撮像した画像140を図11に示す。外側の斜線は試験管の淵343である。その内側に寸法キャリブレーション用目盛り131が順に写る。
【0071】
次に、血清の領域を特定する。特定には、図5〜図7の状態の画像を利用する。前述したように、図7には、血清111と分離剤112の2つの層と、両者を隔てる境界面116が写っている。特に、境界面116の部分は、光量の減少が見られるため、場所を特定することができる。
【0072】
また、図5から図6に示す画像に切り替わる部分についても同様に、境界が現れる。これらの2つの境界面から血清111の層を特定する。
【0073】
最後に、層の厚みを測定する。図11に示す画像140における寸法キャリブレーション用目盛り131と、抽出した境界面の位置を照らし合わせ、各境界の目盛り上の位置を特定する。境界間の距離が層の高さ(H)である。
【0074】
また、採血管の内径(φ)を計測し、数式π×(φ/2)×(φ/2)×Hにて容量を算出する。
【0075】
さらに、撮像手段324に視野角の広いレンズを使うことで計測精度を向上させることができる。ここでは、視野角が100度程度のレンズを例に挙げる。なお、撮像手段324の種類は、CMOSでもCCDでもよい。図12に、通常のレンズと広角のレンズから得られる画像の比較を示す。視野が広いレンズであればあるほど、画像の中心から周辺部分に向かって歪みが大きくなり、この結果、試験管の底までよく見えるようになる。
【0076】
図12に示す例では、参考までに、血餅113の大きさを示した。同じ被写体でも広視野角の方が小さく写る。
【0077】
そして、視野角が広ければ広いほど寸法キャリブレーション用目盛り131の幅は徐々に広くなる。このため、位置を特定するときの分解能が向上する。
【0078】
なお、本実施の形態では、ユニット31を開栓モジュール30の近隣に配置しているが、必ず開栓モジュール30の近隣に配置しなければならないということではなく、任意の位置に配置させ、代替手段としてユニット内部に開閉栓を行う機構を備えるという構成にしてもよい。
【0079】
また、撮像手段324としては、カラーカメラを使用してもよい。種類は、CCD、CMOSなどがある。この場合、前述のように、連続画像の差分を計算する際に、色情報を残したままにしておくとより精度が向上する。なぜならば、照射する層が切り替わる場面では、相転移的に色が変化するからである。
【0080】
また、カラーカメラを搭載した場合は、採血管101の栓の色、形状も識別するとよい。前述のように、採血管101には種類も多く、形状・栓の色による区別が行われている。カラーカメラによる識別を加えることにより、より一層、フローの最適化を図ることができる。また、同時に、血清の色情報も取得するとよい。
【0081】
また、本実施の形態のユニット31は前処理システム1本体に設置するだけの用途ではなく、自動分析装置90の投入部などへの設置も可能である。
【0082】
なお、本実施の形態のユニット31の機能は、液量測定/色判定という結果の値にバラツキが入り込みやすい分野である。そのため、自動で、定期的に既知分量・既知色の検体を測定し、測定結果が正しいか否かのチェックと、必要ならば、チェック結果に基づいて、結果を補正する機能を備えたり、その結果を表示するなどの機能も重要である。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、容器の中に採取した血液などの生体試料を分析する生体試料の分析装置に関し、生体試料を構成する成分に対し、それぞれの残量、色、成分の分離状態等に代表されるような可視的な物理状態の自動把握と、容器、栓の形状および色の自動識別を行い、多岐の項目数と多数の試料の組み合わせからなる分析工程を管理する処理フローを有するシステムや装置などに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…前処理システム、2…搬送ライン、10…投入モジュール、20…遠心分離モジュール、30…開栓モジュール、31…ユニット、32…台、40…ラベラ、50…分注モジュール、60…閉栓モジュール、70…分類モジュール、80…収納モジュール、90…自動分析装置、91…制御用PC、101…採血管、102…栓、111…血清、112…分離剤、113…血餅、114…血清の層の上面、115…メニスカス、116…血清と分離剤の境界面、117…分離剤と血餅の境界面、118…バーコードラベル、119…血清と血餅の境界面、120…すきま、130…距離補正用採血管、131…寸法キャリブレーション用目盛り、311…孔、312…照射手段、313…光、314…コリメートレンズ、315…調整ネジ、316…移動手段、317…柱、318…ベルト、319…照射手段を掴む手段、320…回転モータ、321…移動手段、322…採血管を掴む手段、323…撮像手段の位置を調整する手段、324…撮像手段、325…結像レンズ、326…フォーカス、327…画像データを取得する手段、328…画像データを解析する手段、329…結果を判定し表示する手段、330…フィードバック指示手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの容器に収納された2つ以上の種類から構成される層のうち、少なくとも1つの層に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記容器に収納され前記層を構成する生体試料の分析を行う生体試料の分析方法であって、
前記容器の外面の全部または一部がラベルで被覆されており、
照射手段により、前記容器の側面に光を照射する照射工程と、
移動手段により、前記容器と前記光の出力部分を相対的に移動する移動工程と、
撮像手段により、前記移動と同期して前記容器の上側から前記容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像工程と、
データ取得手段により、撮像された撮像画像を取得するデータ取得工程と、
データ解析手段により、前記撮像画像に基づいて、前記層の境界位置を特定するデータ解析工程とを含むことを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像工程で前記光の出力部位の移動と同期して連続的に撮像された前記撮像画像について、連続した前後の前記撮像画像の画素ごとに色値または光量の差分を算出し、前記撮像画像ごとに前記差分の経時変化を定量化し、前記経時変化の変化量が極大となる位置を境界面の位置とすることを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記撮像手段は、所定の視野と所定の歪曲率を持ち、
前記撮像工程により、予め、前記撮像手段で寸法が刻み込まれた空の前記容器を鉛直方向の上方から撮像して、前記データ取得手段により、基準画像として取得し、
前記データ解析工程は、前記撮像画像と前記基準画像に基づいて、前記層の境界位置を特定し、前記層の幅を算出することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項4】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記層に関連する特徴を抽出し、抽出した前記撮像画像の特徴から、前記照射手段が照射している層を特定することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記層が、血清、分離剤、血餅からなる3種の層のうち、少なくとも2つの層で構成されることを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項6】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器の前記光の照射を受ける面の内側とほぼ接し、かつ、円状に放射している前記光の存在を検知できる状態を、前記照射手段が血清からなる前記層の位置を照射している状態と判断することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項7】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器の内部の全領域からほぼ均一な光量が出ている状態を、前記照射手段が分離剤からなる前記層の位置を照射している状態と判断することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項8】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器に照射される前記光がほぼ検出されない状態を、前記照射手段が血餅からなる前記層の位置を照射している状態と判断することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項9】
請求項2、4または5に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記照射手段が各層を照射した時間を計測し、前記照射手段と前記容器の相対的な移動速度と前記時間に基づいて、各層の距離を特定することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項10】
請求項5に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器の断面の形状を識別し、前記特定された前記血餅と前記分離剤との境界位置および前記血清の最上面の位置と、前記識別した形状の情報に基づいて、前記血清の量を算出することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項11】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、最上部の層の色を判別することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項12】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
予め基準値を設定し、前記各層の情報に基づいて、対象の前記容器を次の作業過程に進ませるか否かを判断する結果判定工程を含むことを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項13】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、物理量が既知の前記層を所定の時間間隔ごと、または任意のタイミングに測定し、測定によって得られる前記物理量を既知の量に補正することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項14】
1つの容器に収納された2つ以上の種類から構成される層のうち、少なくとも1つの層に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記容器に収納され前記層を構成する生体試料の分析を行う生体試料の分析装置であって、
前記容器の外面の全部または一部は、ラベルで被覆されており、
前記容器を鉛直に固定する固定手段と、
前記容器に光を照射する照射手段と、
前記照射手段を前記容器の側面に沿って相対的に移動させる移動手段と、
前記容器の鉛直方向の上側に固定され、前記移動手段による移動と同期して前記容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された撮像画像を取得するデータ取得手段と、
前記撮像画像に基づいて、前記層の境界位置を特定するデータ解析手段とを備えたことを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項15】
請求項14に記載の生体試料の分析装置において、
前記データ解析手段は、前記層の色を判別し、前記層の色を定量化することを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項16】
請求項14に記載の生体試料の分析装置において、
予め基準値を設定し、前記各層の情報に基づいて、対象の前記容器を次の作業過程に進ませるか否かを判断する結果判定手段を備えたことを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項17】
請求項14に記載の生体試料の分析装置において、
前記データ解析手段は、物理量が既知の前記層を所定の時間間隔ごと、または任意のタイミングに測定し、測定によって得られる前記物理量を既知の量に補正することを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の生体試料の分析装置において、
前記容器の栓を開閉する開閉手段を備えたことを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項19】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の生体試料の分析装置において、
前記固定手段、前記照射手段、前記移動手段、および前記撮像手段は、前記生体試料の分析を行う前の前処理システムの開栓部の近隣、または前記生体試料の分析を行う自動分析装置の投入部の近隣に設置されることを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項1】
1つの容器に収納された2つ以上の種類から構成される層のうち、少なくとも1つの層に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記容器に収納され前記層を構成する生体試料の分析を行う生体試料の分析方法であって、
前記容器の外面の全部または一部がラベルで被覆されており、
照射手段により、前記容器の側面に光を照射する照射工程と、
移動手段により、前記容器と前記光の出力部分を相対的に移動する移動工程と、
撮像手段により、前記移動と同期して前記容器の上側から前記容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像工程と、
データ取得手段により、撮像された撮像画像を取得するデータ取得工程と、
データ解析手段により、前記撮像画像に基づいて、前記層の境界位置を特定するデータ解析工程とを含むことを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像工程で前記光の出力部位の移動と同期して連続的に撮像された前記撮像画像について、連続した前後の前記撮像画像の画素ごとに色値または光量の差分を算出し、前記撮像画像ごとに前記差分の経時変化を定量化し、前記経時変化の変化量が極大となる位置を境界面の位置とすることを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記撮像手段は、所定の視野と所定の歪曲率を持ち、
前記撮像工程により、予め、前記撮像手段で寸法が刻み込まれた空の前記容器を鉛直方向の上方から撮像して、前記データ取得手段により、基準画像として取得し、
前記データ解析工程は、前記撮像画像と前記基準画像に基づいて、前記層の境界位置を特定し、前記層の幅を算出することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項4】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記層に関連する特徴を抽出し、抽出した前記撮像画像の特徴から、前記照射手段が照射している層を特定することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記層が、血清、分離剤、血餅からなる3種の層のうち、少なくとも2つの層で構成されることを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項6】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器の前記光の照射を受ける面の内側とほぼ接し、かつ、円状に放射している前記光の存在を検知できる状態を、前記照射手段が血清からなる前記層の位置を照射している状態と判断することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項7】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器の内部の全領域からほぼ均一な光量が出ている状態を、前記照射手段が分離剤からなる前記層の位置を照射している状態と判断することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項8】
請求項4に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器に照射される前記光がほぼ検出されない状態を、前記照射手段が血餅からなる前記層の位置を照射している状態と判断することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項9】
請求項2、4または5に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記照射手段が各層を照射した時間を計測し、前記照射手段と前記容器の相対的な移動速度と前記時間に基づいて、各層の距離を特定することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項10】
請求項5に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、前記容器の断面の形状を識別し、前記特定された前記血餅と前記分離剤との境界位置および前記血清の最上面の位置と、前記識別した形状の情報に基づいて、前記血清の量を算出することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項11】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、前記撮像画像に基づいて、最上部の層の色を判別することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項12】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
予め基準値を設定し、前記各層の情報に基づいて、対象の前記容器を次の作業過程に進ませるか否かを判断する結果判定工程を含むことを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項13】
請求項1に記載の生体試料の分析方法において、
前記データ解析工程は、物理量が既知の前記層を所定の時間間隔ごと、または任意のタイミングに測定し、測定によって得られる前記物理量を既知の量に補正することを特徴とする生体試料の分析方法。
【請求項14】
1つの容器に収納された2つ以上の種類から構成される層のうち、少なくとも1つの層に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記容器に収納され前記層を構成する生体試料の分析を行う生体試料の分析装置であって、
前記容器の外面の全部または一部は、ラベルで被覆されており、
前記容器を鉛直に固定する固定手段と、
前記容器に光を照射する照射手段と、
前記照射手段を前記容器の側面に沿って相対的に移動させる移動手段と、
前記容器の鉛直方向の上側に固定され、前記移動手段による移動と同期して前記容器の内部を所定の時間間隔で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された撮像画像を取得するデータ取得手段と、
前記撮像画像に基づいて、前記層の境界位置を特定するデータ解析手段とを備えたことを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項15】
請求項14に記載の生体試料の分析装置において、
前記データ解析手段は、前記層の色を判別し、前記層の色を定量化することを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項16】
請求項14に記載の生体試料の分析装置において、
予め基準値を設定し、前記各層の情報に基づいて、対象の前記容器を次の作業過程に進ませるか否かを判断する結果判定手段を備えたことを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項17】
請求項14に記載の生体試料の分析装置において、
前記データ解析手段は、物理量が既知の前記層を所定の時間間隔ごと、または任意のタイミングに測定し、測定によって得られる前記物理量を既知の量に補正することを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の生体試料の分析装置において、
前記容器の栓を開閉する開閉手段を備えたことを特徴とする生体試料の分析装置。
【請求項19】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の生体試料の分析装置において、
前記固定手段、前記照射手段、前記移動手段、および前記撮像手段は、前記生体試料の分析を行う前の前処理システムの開栓部の近隣、または前記生体試料の分析を行う自動分析装置の投入部の近隣に設置されることを特徴とする生体試料の分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−252804(P2011−252804A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127002(P2010−127002)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]