説明

生体認証装置、生体認証方法およびプログラム

【課題】照合すべきテンプレートの個数をより絞り込むことが可能な生体認証装置、生体認証方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る生体認証装置は、指部位の静脈を含む画像から静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出部と、抽出された静脈画像を複数の部分領域に分割する静脈画像分割部と、分割された部分領域それぞれについて、静脈に対応する画素の個数をカウントする静脈画素カウント部と、部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、静脈画像における静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成するベクトル生成部と、予め登録されている静脈分布ベクトルである登録静脈分布ベクトルに基づいて、生成された静脈分布ベクトルを認証する認証部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置、生体認証方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体認証を用いた個人識別技術(バイオメトリックス)の導入が開始されている。生体認証を用いた個人識別技術(以下、生体認証と称する。)では、認証に用いる生体認証用データを予めテンプレートとして登録しておき、認証時には、予め登録されているテンプレートと、認証時に生成された生体認証用データとの照合が行われる。
【0003】
かかる生体認証の一つに、指の内部に存在する静脈の走行パターンを利用した指静脈認証がある。指の内部に存在する血管(静脈)の量は、人によって異なるものであり、また、同じ人であっても、指が異なれば、この血管量も異なってくる。そのため、以下の特許文献1では、指全体に存在する血管量を考慮して、個人を識別する技術について検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−187520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、指の内部に存在する血管(静脈)は、同じ指であっても、指の部分によって、血管量の多少があるものである。しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、ある指の全体での血管量に着目しているため、照合すべきテンプレートの絞り込みが十分に行われない可能性があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、照合すべきテンプレートの個数を、より絞り込むことが可能な、生体認証装置、生体認証方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、指部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された指部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出部と、前記静脈画像抽出部によって抽出された前記静脈画像を複数の部分領域に分割する静脈画像分割部と、前記静脈画像分割部によって分割された前記部分領域それぞれについて、前記静脈に対応する画素の個数をカウントする静脈画素カウント部と、前記静脈画素カウント部による前記部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、前記静脈画像における前記静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成するベクトル生成部と、予め登録されている静脈分布ベクトルである登録静脈分布ベクトルに基づいて、前記ベクトル生成部により生成された前記静脈分布ベクトルを認証する認証部と、を備える生体認証装置が提供される。
【0008】
前記認証部は、前記ベクトル生成部によって生成された前記静脈分布ベクトルまたは前記登録静脈分布ベクトルのいずれか一方を所定の要素数ずつシフトさせながら、他方との類似度を算出することが好ましい。
【0009】
前記生体認証装置は、前記静脈画像抽出部により抽出された前記静脈画像に対して平行移動処理および回転処理の少なくともいずれか一方を行って前記静脈画像を補正する画像補正部を更に備えてもよく、前記画像補正部は、補正前の前記静脈画像に対して主成分分析を行い、第1主成分の方向が前記静脈画像の長手方向の辺に対して平行となるように前記補正前の静脈画像を回転し、前記補正前の静脈画像について、静脈の位置に対応する画素の分布の重心を算出し、当該重心が前記静脈画像の中心位置と一致するように前記補正前の静脈画像を平行移動してもよい。
【0010】
前記静脈画像分割部は、前記静脈画像のうち、当該静脈画像の中心位置を含む所定の領域を、複数の部分領域に分割してもよい。
【0011】
前記ベクトル生成部は、前記静脈画像の隅に位置する前記部分領域から順に前記カウント結果を配列してもよい。
【0012】
前記ベクトル生成部は、前記静脈画像の中心位置を含む前記部分領域から順に前記カウント結果を配列してもよい。
【0013】
前記認証部は、静脈画像の中心位置を含む部分領域に対応する前記静脈分布ベクトルの要素を基準として認証処理を行ってもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、指部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された指部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出するステップと、抽出された前記静脈画像を、複数の部分領域に分割するステップと、生成された前記部分領域それぞれについて、前記静脈に対応する画素の個数をカウントするステップと、前記部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、前記静脈画像における前記静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成するステップと、予め登録されている静脈分布ベクトルである登録静脈分布ベクトルに基づいて、前記ベクトルを生成するステップにて生成された前記静脈分布ベクトルを認証するステップと、を含む生体認証方法が提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、コンピュータに、指部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された指部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出機能と、前記静脈画像抽出機能によって抽出された前記静脈画像を複数の部分領域に分割する静脈画像分割機能と、前記静脈画像分割機能によって分割された前記部分領域それぞれについて、前記静脈に対応する画素の個数をカウントする静脈画素カウント機能と、前記静脈画素カウント機能による前記部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、前記静脈画像における前記静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成するベクトル生成機能と、予め登録されている静脈分布ベクトルである登録静脈分布ベクトルに基づいて、前記ベクトル生成機能により生成された前記静脈分布ベクトルを認証する認証機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、指内部に存在する静脈の部分的な分布に着目した静脈分布ベクトルを利用することにより、照合すべきテンプレートの個数を、より絞り込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生体認証装置の構成を示したブロック図である。
【図2】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部の構成を示したブロック図である。
【図3A】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部を説明するための説明図である。
【図3B】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部を説明するための説明図である。
【図4】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部を説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部を説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部を説明するための説明図である。
【図7】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部を説明するための説明図である。
【図8】同実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部を説明するための説明図である。
【図9】同実施形態に係る認証部で実施される静脈分布ベクトルの認証処理を説明するための説明図である。
【図10】同実施形態に係る認証部で実施される静脈分布ベクトルの認証処理を説明するための説明図である。
【図11】同実施形態に係る認証部で実施される静脈分布ベクトルの認証処理を説明するための説明図である。
【図12】同実施形態に係る認証部で実施される静脈分布ベクトルの認証処理を説明するための説明図である。
【図13】同実施形態に係る静脈分布ベクトルの登録処理の流れを示した流れ図である。
【図14】同実施形態に係る静脈分布ベクトルの認証処理の流れを示した流れ図である。
【図15】同実施形態に係る静脈分布ベクトルの算出処理の流れを示した流れ図である。
【図16】本発明の実施形態に係る生体認証装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図17】指内部の静脈の分布の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
なお、説明は、以下の順序で行うものとする。
(1)目的
(2)第1の実施形態
(2−1)生体認証装置の構成について
(2−2)生体認証方法について
(2−3)実施例
(3)本発明の実施形態に係る生体認証装置のハードウェア構成について
(4)まとめ
【0020】
(目的)
本発明の実施形態に係る生体認証装置および生体認証方法を説明するに先立ち、図17を参照しながら、本発明の目的とするところについて、簡単に説明する。図17は、指内部の静脈の分布の一例を示した説明図である。
【0021】
図17(a)および図17(b)は、指の内部に存在している静脈の走行パターンを示した指静脈画像である。図17(a)および図17(b)では、静脈に対応する部分は、黒い画素となっている。図から明らかなように、図17(a)における指静脈に対応する画素の多さと、図17(b)における指静脈に対応する画素の多さとは、ほぼ同じ量である。
【0022】
生体認証処理では、入力された生体情報を認証するために、登録されている全てのテンプレート(登録生体情報)と入力された生体情報との照合を行う。この際、指の血管量のようなメタデータを利用して、照合すべきテンプレートの個数を予め削減する処理が行われる。
【0023】
しかしながら、指全体での静脈の量に着目して、照合すべきテンプレートの個数の削減を行う生体認証処理では、図17(a)および図17(b)に示したようなテンプレートは、入力された生体情報(指静脈画像)と照合すべき候補として共に選択されてしまう。その結果、照合すべきテンプレートを十分に絞り込むことができないという事態が生じうる。
【0024】
ここで、図17(a)および図17(b)に示したような点線で、各指静脈画像を、4つの部分領域に分割した場合を考える。この際、図17(a)に示した指静脈画像は、右上および右下に位置する部分領域に多くの静脈が分布しているが、図17(b)に示した指静脈画像は、左上に位置する部分領域に多くの静脈が分布している。したがって、指静脈画像をいくつかの部分領域に分割し、各部分領域における血管の分布を考慮することによって、同じような血管量となっている指静脈画像を、更に詳細に区分することが可能となる。また、この分割数を細かくすることによって、指静脈画像の分類をより精密に行うことが可能となると推測される。
【0025】
そこで、本発明者は、鋭意検討を行った結果、指静脈画像を複数の部分領域に分割して、各部分領域における指静脈の量を表す情報を生成することで、照合すべきテンプレートの個数を十分に絞り込むことが可能となることに想到した。以下では、この照合すべきテンプレートの個数を十分に絞り込むことが可能な生体認証装置および生体認証方法について、詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
<生体認証装置の構成について>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る生体認証装置10の構成について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る生体認証装置10の構成を示したブロック図である。
【0027】
本実施形態に係る生体認証装置10は、図1に例示したように、生体撮像部101と、撮像制御部103と、静脈画像抽出部105と、静脈分布ベクトル算出部107と、生体認証部109と、記憶部115と、を主に備える。
【0028】
生体撮像部101は、指の表面(以下、体表面とも称する。)FGに対して所定の波長帯域を有する近赤外光を照射する光源部と、撮像素子およびレンズ等の光学素子から構成される光学系と、を含む。
【0029】
近赤外光は、身体組織に対して透過性が高い一方で、血液中のヘモグロビン(還元ヘモグロビン)に吸収されるという特徴を有するため、近赤外光を指や手のひらや手の甲に照射すると、指や手のひらや手の甲の内部に分布している静脈が影となって画像に現れる。画像に表れる静脈の影を、静脈パターンという。このような静脈パターンを良好に撮像するために、発光ダイオード等の光源部は、約600nm〜1300nm程度の波長、好ましくは、700nm〜900nm程度の波長を有する近赤外光を照射する。
【0030】
ここで、光源部が照射する近赤外光の波長が600nm未満または1300nm超過である場合には、血液中のヘモグロビンに吸収される割合が小さくなるため、良好な静脈パターンを得ることが困難となる。また、光源部が照射する近赤外光の波長が700nm〜900nm程度である場合には、近赤外光は、脱酸素化ヘモグロビンと酸素化ヘモグロビンの双方に対して特異的に吸収されるため、良好な静脈パターンを得ることができる。
【0031】
光源部から射出された近赤外光は、生体部位の表面に向かって伝搬し、直接光として、生体の側面などから内部に入射する。ここで、人体は良好な近赤外光の散乱体であるため、生体内に入射した直接光は四方に散乱しながら伝搬する。生体内を透過した近赤外光は、光学系を構成する光学素子に入射することとなる。
【0032】
生体撮像部101を構成する光学系は、1または複数の光学素子と、1または複数の撮像素子と、から構成される。
【0033】
人体の皮膚は、表皮層、真皮層および皮下組織層の3層構造となっていることが知られているが、静脈の存在する静脈層は、真皮層に存在している。真皮層は、指表面に対して0.1mm〜0.3mm程度の位置から2mm〜3mm程度の厚みで存在している層である。したがって、このような真皮層の存在位置(例えば、指表面から1.5mm〜2.0mm程度の位置)にレンズ等の光学素子の焦点位置を設定することで、静脈層を透過した透過光を、効率よく集光することが可能となる。
【0034】
光学素子によって集光された静脈層を透過した透過光は、CCDやCMOS等の撮像素子に結像されて、静脈撮像データとなる。生成された静脈撮像データは、後述する静脈画像抽出部105に伝送される。
【0035】
撮像制御部103は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により実現される。撮像制御部103は、光源部、光学系および撮像素子を制御して、撮像データを生成する。より詳細には、撮像制御部103は、光源部、光学系および撮像素子を制御して体表面を撮像し、撮像データを生成する。
【0036】
撮像制御部103は、撮像素子によって生成された撮像データを、後述する静脈画像抽出部105に出力させる。また、撮像制御部103は、得られた撮像データを、後述する記憶部115等に記録してもよい。また、記憶部115等への記録に際して、撮像制御部103は、生成した撮像データに撮像日や撮像時刻等を関連づけてもよい。なお、生成される撮像データは、RGB(Red−Green−Blue)信号であってもよいし、それ以外の色やグレースケール等の画像データであってもよい。
【0037】
静脈画像抽出部105は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈画像抽出部105は、生体撮像部101から伝送された撮像データのなかから、ユーザの静脈パターンを表す画像である生体情報(静脈画像)を抽出する。この静脈画像抽出部105は、例えば、画像平滑化部、輪郭抽出部、マスク画像生成部、切出部、静脈平滑化部、2値化部、太線化部、細線化部、サムネイル画像生成部といった処理部を更に有する。
【0038】
画像平滑化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像平滑化部は、生体撮像部101から伝送される静脈撮像データに対して、例えばガウシアンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈撮像データに対応する静脈画像を平滑化する。
【0039】
輪郭抽出部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。輪郭抽出部は、画像平滑化部によって平滑化された静脈画像に対して、例えばLog(Laplacian of Gaussian)フィルタと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈画像における輪郭を強調して浮き彫りにする。
【0040】
マスク画像生成部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。マスク画像生成部は、輪郭抽出部によって輪郭が強調された静脈画像から、背景部分とのコントラストを基に、指輪郭などの輪郭線を検出する。また、マスク画像生成部は、検出された輪郭線に囲まれる指領域と、それ以外の領域とを、2値で示す画像(以下、これをマスク画像とも称する。)を生成する。
【0041】
切出部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。切出部は、輪郭抽出部によって輪郭が強調された静脈画像から、マスク画像生成部によって生成されたマスク画像を用いて、指輪郭に囲まれる指領域を含む所定サイズの画像を切り出す。
【0042】
静脈平滑化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈平滑部は、切出部によって切り出された静脈画像に対して、例えばメディアンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈画像における静脈部分を平滑化する。
【0043】
2値化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。2値化部は、静脈平滑化部によって静脈部分が平滑化された静脈画像を、設定された輝度レベルを基準として、2値レベルに変換する。ここで、仮に、静脈が平滑化される前の静脈画像を2値化対象の画像とした場合、実際には一本の静脈が、2値化によって2本の静脈として分離される確率が高くなる。したがって、静脈が平滑化された静脈画像を2値化対象とすることで、実際の静脈に近似する状態での2値化が可能となる。
【0044】
太線化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。太線化部は、2値化部によって2値化された静脈画像に対して、例えばダイレーションと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈画像に含まれる静脈を太線化する。この結果、本来連結された静脈箇所であるにもかかわらず途切れていた静脈箇所が連結される。
【0045】
細線化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。細線化部は、太線化部によって静脈部分が太線化された静脈画像に対して、例えばエロージョンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈部分の静脈幅を一定とする。
【0046】
サムネイル画像生成部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。サムネイル画像生成部は、静脈幅が一定となった静脈部分と、背景部分とを2値で示す静脈画像を細線化部から取得し、この静脈画像から、縦横サイズをn分の1倍に圧縮した画像であるサムネイル画像を生成する。
【0047】
このようにして静脈画像抽出部105は、静脈幅が一定とされる静脈部分と、背景部分とを2値で示す画像を、生体画像として抽出し、生体画像のサムネイル画像を生成する。静脈画像抽出部105は、静脈撮像データから抽出した静脈画像やサムネイル画像等のメタデータを、後述する静脈分布ベクトル算出部107および生体認証部109に伝送する。また、静脈画像抽出部105は、抽出した静脈画像等を、これらの情報に固有の識別情報(例えば、識別番号等)と関連付けて、後述する記憶部115に格納してもよい。
【0048】
静脈分布ベクトル算出部107は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈分布ベクトル算出部107は、静脈画像抽出部105から伝送された静脈画像を利用して、静脈画像における静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを算出する。静脈分布ベクトル算出部107については、以下で改めて詳細に説明する。
【0049】
生体認証部109は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。生体認証部109は、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像や、静脈分布ベクトル算出部107により算出された静脈分布ベクトル等を利用して、生体認証処理を行う処理部である。この生体認証部109は、図1に示したように、登録部111と、認証部113と、を更に備える。
【0050】
登録部111は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。登録部111は、静脈分布ベクトル算出部107により算出された静脈分布ベクトル、および、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像を互いに関連付けて、登録生体情報として記憶部115等に登録する。これらの登録生体情報のうち、登録された静脈画像は、いわゆるテンプレートとして、入力された静脈画像の本認証(最終的な認証)の際に利用される。また、登録された静脈分布ベクトル(以下、登録静脈分布ベクトルとも称する。)は、本認証に先立つ予備的な認証(テンプレートの個数を絞り込むための認証)の際に利用される。
【0051】
なお、登録部111は、静脈分布ベクトルまたは静脈画像の登録の際に、これらのデータを、ビット圧縮処理等により圧縮して、記憶部115等に登録してもよい。
【0052】
認証部113は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。認証部113は、予め登録されている登録生体情報を利用して、入力された生体情報の認証を行う処理部である。より詳細には、認証部113は、静脈分布ベクトル算出部107により算出された静脈分布ベクトルを、予め登録されている登録静脈分布ベクトルに基づいて認証する。この静脈分布ベクトルの認証処理により、入力された静脈分布ベクトルに類似する登録静脈分布ベクトルが特定されることとなる。これにより、認証部113は、本認証の際に照合すべきテンプレートの個数を絞り込むことができる。その後、認証部113は、認証に成功した登録静脈分布ベクトルに関連付けられている登録静脈画像を利用して、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像の認証処理(本認証処理)を実施する。
【0053】
認証部113は、入力された生体情報と登録生体情報とが類似しているか否かを、算出した類似度に基づいて判定する。判定に用いられる類似度の例として、相互相関値および差分の総和を用いた類似度を挙げることができる。差分の総和を用いる方法の例としては、差分絶対値和(Sum of Absolute Difference:SAD)および差分自乗和(Sum of Squared Difference:SSD)がある。認証部113は、認証すべき生体情報の種類に応じて、任意の類似度を利用することが可能であるが、静脈分布ベクトルの認証には、差分の総和を用いた類似度を用いることが好ましく、テンプレートの認証には、相互相関値を用いることが好ましい。
【0054】
認証部113は、静脈分布ベクトルを認証する際、算出したSADまたはSSDの値が所定の閾値以下となっているか否かを判定し、算出した値が所定の閾値以下である場合に、認証に成功したと判断する。また、認証部113は、静脈画像を認証する際、算出した相互相関値が所定の閾値以上となっているか否かを判定し、算出した値が所定の閾値以上である場合に、認証に成功したと判断する。認証の際に参照する閾値は、任意の方法で予め設定しておくことが可能であるが、例えば、本人拒否率が1%以下となるように設定されたものであることが好ましい。
【0055】
なお、認証部113が実施する静脈分布ベクトルの認証処理については、以下で改めて詳細に説明する。
【0056】
記憶部115は、本実施形態に係る生体認証装置10が備えるストレージ装置の一例である。記憶部115には、登録部111によって、登録静脈分布ベクトルおよびテンプレートを含む登録生体情報が格納される。また、記憶部115には、生体撮像部101により生成された撮像データや、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像等が一時的に格納されてもよい。また、記憶部115には、生体情報の登録に関する履歴情報など、各種の履歴情報が記録されていてもよい。さらに、記憶部115には、本実施形態に係る生体認証装置10が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース等が、適宜記録される。この記憶部115は、生体撮像部101、撮像制御部103、静脈画像抽出部105、静脈分布ベクトル算出部107、生体認証部109、登録部111、認証部113等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
【0057】
[静脈分布ベクトル算出部の構成について]
次に、図2〜図8を参照しながら、本実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部107の構成について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部107の構成を示したブロック図である。図3A〜図8は、本実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部107を説明するための説明図である。
【0058】
本実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部107は、図2に例示したように、画像補正部121と、静脈画像分割部123と、静脈画素カウント部125と、ベクトル生成部127と、を更に備える。
【0059】
画像補正部121は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像補正部121は、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像に対して平行移動処理および回転処理の少なくともいずれか一方を行って、静脈画像を補正する。
【0060】
本実施形態に係る生体認証装置10で利用される静脈分布ベクトルは、以下で説明するように、空間領域における静脈画像について静脈パターンの分布の度合いを表すものである。そのため、同一人物の同一の指であっても、撮像時の指の位置がずれていたり角度が付いていたりすると、生成される静脈画像は異なり、結果として、算出される静脈分布ベクトルも異なるものとなる可能性がある。そこで、画像補正部121は、抽出された静脈画像について、平行移動処理や回転処理を行い、このようなズレに起因する精度の低下を防止する。
【0061】
以下では、図3Aおよび図3Bに示した静脈パターンに着目して、画像補正部121が行う補正処理の意義について具体的に説明する。図3Aおよび図3Bに示した静脈パターンは、同一人物の同一の指についての静脈パターンであるものとする。また、図3Bに示した静脈パターンは、図3Aに示した静脈パターンが左ななめ下の方向に平行移動したものであり、画像フレームの右端部に、図3Aでは現れていない静脈パターンが写っているものとする。
【0062】
以下で説明する静脈分布ベクトルの算出処理では、まず、静脈画像を複数の部分領域に分割する処理が行われる。図3Aおよび図3Bにおいて、静脈画像が、指の長さ方向(すなわち、画像フレームの縦方向)に6つに区分され、指の幅方向(すなわち、画像フレームの横方向)に4つに区分されているものとする。その結果、静脈画像は、図3Aおよび図3Bに示したように、24個の部分領域に分割されることとなる。
【0063】
また、静脈分布ベクトルの算出処理では、部分領域への分割が終了すると、各部分領域について、領域内に存在する静脈に対応する画素の個数がカウントされる。静脈分布ベクトル算出部107は、この画素のカウント結果を利用して、静脈分布ベクトルを生成する。
【0064】
ここで、図3Aおよび図3Bに示した静脈パターンを比較すると、平行移動のために、図3Aでは右端から2番目上端から1番目の部分領域に存在する静脈パターンは、図3Bでは、右端から3番目上端から1番目の部分領域と、右端から3番目上端から2番目の部分領域とにまたがって存在している。このように、本来同じである静脈パターンであっても、その静脈パターンが平行移動されてしまうと、パターンが観測される空間領域が変化してしまうために、誤差の要因となってしまう。
【0065】
同様に、本来同じである静脈パターンであっても、その静脈パターンが回転してしまうと、パターンが観測される空間領域が変化してしまうために、誤差の要因となってしまう。
【0066】
上述のような理由のため、画像補正部121は、まず、静脈画像の回転量の補正を行う。静脈画像は、複数の画素から構成されており、各画素の位置は、座標を用いて表すことが可能である。したがって、静脈画像において、静脈に対応する画素(図3A等では、黒色となっている画素)の位置は、座標で特定することができる。そこで、画像補正部121は、静脈画像中の静脈に対応する画素の座標を利用して、主成分分析(principal component analysis)を行う。この主成分分析により、画像補正部121は、図4左側の図に示したように、第1主成分の方向を特定することができる。画像補正部121は、第1主成分の方向と画像フレームの長軸方向(指の長さ方向)とが成す角を算出し、算出した角度を利用して、静脈画像を回転させる。これにより、図4右側の図に示したように、第1主成分の方向が、画像フレームの長軸方向(指の長さ方向)と平行となるように、回転補正を行うことができる。
【0067】
なお、静脈画像を回転させる角度を算出する方法は、上述のような主成分分析を用いた方法に限定されるわけではなく、その他の回転量補正方法を利用してもよい。
【0068】
次に、画像補正部121は、回転量の補正が行われた静脈画像を用いて、静脈パターンの重心を算出する。この重心の算出は、静脈に対応する画素の座標を用いて行うことが可能である。画像補正部121は、算出した重心に対応する座標と、画像フレームの中心位置に対応する座標との差を算出し、図5に例示したように、算出した重心が画像フレームの中心位置となるように、静脈画像の平行移動を行う。なお、画像フレームの中心位置は、画像フレームのサイズに基づいて算出することが可能である。
【0069】
画像補正部121は、このような補正処理を行うことで、静脈パターンの第1主成分の方向が画像フレームの長軸方向と平行であり、静脈パターンの重心が画像フレームの中心に位置しているような、補正後の静脈画像を生成することができる。
【0070】
なお、画像補正部121は、回転量の補正と重心位置の補正の少なくとも一方の処理が不要である場合には、該当する補正処理を行わなくても良い。
【0071】
画像補正部121は、得られた補正後の静脈画像を、後述する静脈画像分割部123と、静脈画素カウント部125とに伝送する。また、画像補正部121は、得られた補正後の静脈画像を、記憶部115等に格納してもよい。
【0072】
なお、画像補正部121によって算出された回転量および平行移動量は、静脈分布ベクトルの算出処理だけでなく、静脈画像そのものとテンプレートとを利用した本認証の際にも利用可能である。そのため、画像補正部121は、算出した回転量および平行移動量を、生体認証部109に通知してもよい。かかる補正量を生体認証部109に通知することで、生体認証部109は、本認証を実施する際の前処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0073】
静脈画像分割部123は、画像補正部121から伝送された補正後の静脈画像を、予め設定された分割数に基づいて、複数の部分領域(以下、ブロックとも称する。)に分割する。
【0074】
例えば、静脈画像を、縦方向(指の長さ方向)にm個、横方向(指の幅方向)にn個の計mn個のブロックに分割するように設定されている場合を考える。この場合、静脈画像分割部123は、静脈画像の画素の座標を利用して、静脈画像を縦にm等分、横にn等分し、各ブロックの境界となる座標を決定する。
【0075】
また、分割数ではなく、1つのブロックの大きさ(縦p画素×横q画素)が設定されていてもよい。この場合、静脈画像分割部123は、設定されているブロックの大きさに基づいて、静脈画像の所定の位置(例えば、左上端)から、所定の大きさのブロックを切り出していく。かかる場合についても、静脈画像分割部は、各ブロックの境界となる座標を決定する。
【0076】
ここで、分割数mnや、1つのブロックの大きさ(p×q画素)といった分割パラメータは、予め任意の方法で決定することが可能である。例えば、事前に実験および解析を行って、本人拒否率(False Rejection Rate:FRR)や他人許可率(False Acceptance Rate:FAR)等の観点から、効率よく認証を行うことが可能となる分割数やブロックの大きさ等を、統計処理等を用いて決定することが可能である。
【0077】
このような静脈画像の分割処理は、実際に静脈画像を複数の画像へと分割する処理であってもよいし、静脈画像を仮想的に複数の領域に分割するための境界を決定する処理であってもよい。
【0078】
また、静脈画像分割部123は、静脈画像を、縦方向および横方向に分割しなくともよい。すなわち、静脈画像分割部123は、生体撮像部101の撮像の特徴(撮像の傾向)等に基づいて、静脈画像を縦方向のみに分割してもよいし、横方向のみに分割してもよい。
【0079】
また、先に説明したように、静脈画像の端部近傍の領域は、平行移動や回転等による影響を受けやすい領域でもある。そこで、静脈画像分割部123は、例えば図6に示したように、斜線をつけた画像フレームの端部については、分割処理の対象とせず、静脈画像の中心位置を含む領域を分割処理の対象としてもよい。これにより、平行移動や回転等の影響をより少なくした認証を行うことが可能となる。また、分割処理の対象としない領域の大きさは、生体認証装置10の特性に応じて、任意に決定することが可能である。また、図6では、処理対象としない領域を、画像フレームの各辺から所定の画素数分の範囲としているが、例えば、上下の辺から所定の画素数分の範囲だけを処理対象としない、ズレの生じる可能性がある部分を処理対象としない等、処理対象としない領域についても、任意に決定することが可能である。
【0080】
なお、静脈画像分割部123は、登録静脈分布ベクトルを生成する際の分割数と、認証時の静脈分布ベクトルを生成する際の分割数とが同じになるように、静脈画像を分割する。登録静脈分布ベクトル生成時の分割数と認証時の分割数とが異なってしまうと、以下で説明するように、生成される静脈分布ベクトルのベクトル長(要素数)が異なってしまい、正確な認証が行えなくなる可能性があるからである。
【0081】
静脈画像分割部123は、このようにして得られた分割結果を表す情報を、静脈画素カウント部125およびベクトル生成部127に伝送する。
【0082】
静脈画素カウント部125は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈画素カウント部125は、静脈画像分割部123によって分割された部分領域それぞれについて、静脈に対応する画素の個数をカウントする。
【0083】
静脈画素カウント部125は、静脈に対応する画素の個数をカウントする際に、所定の順序に則して1ブロックずつカウントしてもよく、複数のブロックを同時にカウントしてもよい。
【0084】
静脈画素カウント部125は、得られたカウント結果を、ベクトル生成部127に伝送する。この際、静脈画素カウント部125は、どのブロックに関するカウント結果であるのかを特定するための情報とともに、カウント結果を伝送することが好ましい。
【0085】
ベクトル生成部127は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。ベクトル生成部127は、静脈画素カウント部125による部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、静脈画像における静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成する。
【0086】
例えば図7に示したように、静脈画像の左上に位置するブロックから右下に位置するブロックへとカウント結果を配列するように設定されている場合、ベクトル生成部127は、該当するブロックのカウント結果を順に配列する。これにより、存在するブロック数だけ要素を有する数列が生成されることとなる。この数列は、ブロック中に存在している静脈に対応する画素の個数が、所定の順序に沿って配列しているものであるため、静脈画像における静脈の分布状況を表したものとして利用できる。
【0087】
なお、カウント結果の配置順序は適宜決定することが可能であり、図7のように左上のブロックから右下のブロックへと横方向に向かう順序でもよく、左上のブロックから右下のブロックへと縦方向に向かう順序であってもよい。また、カウント結果の配置順序は、図8に示したように、静脈画像の中心位置を含むブロックから順に、例えば渦巻き状にカウント結果を配列する順序であってもよい。図8に示したような配置順序とした場合には、静脈分布ベクトルの認証時に、静脈画像の中央位置に対応するブロックから認証が開始されることとなり、認証に要する時間を更に短縮することが可能となる可能性がある。
【0088】
ベクトル生成部127は、静脈分布ベクトルの生成が終了すると、生成したベクトルを、生体認証部109に伝送する。
【0089】
以上、本実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部107の構成について、詳細に説明した。続いて、以下では、認証部113における静脈分布ベクトルの認証処理について、詳細に説明する。
【0090】
[認証部における静脈分布ベクトルの認証処理について]
次に、図9〜図12を参照しながら、本実施形態に係る認証部113で実施される静脈分布ベクトルの認証処理について、詳細に説明する。図9〜図12は、本実施形態に係る認証部で実施される静脈分布ベクトルの認証処理を説明するための説明図である。
【0091】
認証部113により実施される静脈分布ベクトルの認証処理は、一般的な一次元ベクトル同士のマッチングと同様に行うことが可能である。ここで、静脈画像における平行移動は補正によって調整されるため、登録ユーザ本人である場合は、理論上、ベクトル同士の差分だけを計算することによって類似度がわかるはずである。しかしながら、静脈画像上でのパターン数が少ない場合、算出される重心には誤差が含まれる可能性がある。したがって、本実施形態に係る認証部113は、生成された静脈分布ベクトルまたは登録静脈分布ベクトルの一方を固定し、他方をある量だけシフトしつつ差分を計算する。これにより、認証部113は、認証処理に利用する適切な類似度を特定することが可能となる。
以下、シフト処理を利用したベクトル同士の類似度算出方法について説明する。
【0092】
登録静脈分布ベクトルをS、生成された静脈分布ベクトルをSとし、ベクトルサイズ(ベクトルに含まれる要素数)をlとする。また、ベクトル同士に最大lSmax分のシフトが存在しうるものとする。この場合において、認証部113は、生成された静脈分布ベクトルの認証時に、以下の式101で表されるスコアsを算出する。ここで、下記式101において、S(r,p)は、登録静脈分布ベクトルSのp番目の要素を表し、S(i,p)は、生成された静脈分布ベクトルSのp番目の要素を表す。
【0093】
【数1】

・・・(式101)

【0094】
なお、上記式101では、登録静脈分布ベクトルは固定し、生成された静脈分布ベクトルをシフトしていく場合についてのスコアsの算出方法が示されている。生成された静脈分布ベクトルを固定し、登録静脈分布ベクトルをシフトしていく場合には、上記式101において、rと表記されている箇所をiと読み替え、iと表記されている箇所をrと読み替えれば良い。
【0095】
上記式101が意味するところは、認証部113は、登録静脈分布ベクトルSrを固定したまま、静脈分布ベクトルSiを1要素ずつシフトさせ、シフト毎に、2つのベクトルの差分絶対値和を計算し、その中から最小のものをスコアsとするということである。
【0096】
このスコアsは、式101から明らかなように、登録静脈分布ベクトルと生成された静脈分布ベクトルが類似すればするほど、値は0に近づくこととなる。したがって、認証部113は、算出したスコアsが所定の閾値以下となった場合に、登録静脈分布ベクトルが生成された静脈分布ベクトルに類似している、すなわち、静脈分布ベクトルの認証に成功したと判断する。
【0097】
例えば図9に示した例は、図9(a)がシフト量−4、図9(b)がシフト量0、図9(c)がシフト量+4の場合であるが、これらの図から明らかなように、算出されるスコアsは、図9(a)の場合が最小となる。したがって、認証部113は、図9(a)〜(c)に示した3つの状態の中では、図9(a)の状態が2つのベクトルが最も類似した状態であると判断する。
【0098】
認証部113は、上記のように、登録静脈分布ベクトルまたは生成された静脈分布ベクトルの何れか一方を固定し他方をシフトさせながら、類似度を算出していく。このため、平行移動や回転などの影響で、画像補正部121が補正しきれない部分が静脈画像に存在したとしても、補正しきれない部分による誤差を抑制し、認証精度を確保することができる。
【0099】
また、この静脈分布ベクトルの認証処理は、いわゆるメタデータ認証処理であって、テンプレートを利用した本認証処理に先立って、照合すべきテンプレートの個数を絞り込むために行われるものである。指のそれぞれの部位における静脈の分布状況を表した静脈分布ベクトルは、数字が配列した一次元ベクトルであるため、2つの静脈分布ベクトルの比較は、一次元ベクトルの比較という、簡便に行うことが可能な検証方法で、容易に比較することが可能である。また、静脈分布ベクトル自体が、ユーザの分類を精度良く行うことができる指標であるため、かかる静脈分布ベクトルを利用することで、効率よく照合すべきテンプレートの個数を絞り込むことができる。
【0100】
なお、上記式101においては、シフト量は1要素となっているが、シフト量は、かかる値に限られるわけではない。例えば図10に示したように、静脈分布ベクトルが、左上隅のブロックから横方向に右下隅のブロックへとカウント結果を配列したものである場合を考える。この際、シフト量を4とすると、認証部113は、最初に左上隅のブロックに対応するカウント結果の照合を行い、続いて、左から1番目上から2番目のブロックに対応するカウント結果の照合を行うこととなる。これは、図10に示したように、照合開始位置を1段ずつ下方にずらしていくことを意味する。認証部113は、このようなシフト量を選択することで、生体撮像部101の設置状況等により縦方向のズレが生じやすい環境下において、縦方向のズレに着目した認証を行うことが可能となる。
【0101】
同様に、図11に示した例では、静脈分布ベクトルが、左上隅のブロックから下方向に右下隅のブロックへとカウント結果を配列したものである場合を図示している。この際、シフト量を6とすると、認証部113は、最初に左上隅のブロックに対応するカウント結果の照合を行い、続いて、左から2番目上から1番目のブロックに対応するカウント結果の照合を行うこととなる。これは、図11に示したように、照合開始位置を1列ずつ右側にずらしていくことを意味する。認証部113は、このようなシフト量を選択することで、生体撮像部101の設置状況等により横方向のズレが生じやすい環境下において、横方向のズレに着目した認証を行うことが可能となる。
【0102】
なお、図9〜図11に示した例では、認証部113は、静脈分布ベクトルの一番目の要素から照合を開始する場合について示したが、かかる場合に限定されるわけではない。例えば図12に示したように、認証部113は、静脈画像の中心(すなわち、静脈パターンの重心)を含むブロックのカウント結果が記載されている要素を特定し、この重心を含むブロックから照合を開始してもよい。かかるブロックから照合を開始することで、認証に要する時間を更に短縮することが可能となる可能性がある。
【0103】
なお、認証部113は、上述のような静脈分布ベクトルの認証処理に先立ち、生成された静脈分布ベクトルおよび登録静脈分布ベクトルの各要素の和を算出して、要素の総和同士を比較してもよい。静脈分布ベクトルに含まれる要素の総和は、指全体での静脈に対応する画素の総数を意味するものである。したがって、認証部113は、かかる総和の比較を行うことで、指全体での静脈量が異なるベクトル自体の比較を省略することが可能となる。
【0104】
また、認証部113は、生成された静脈分布ベクトルと登録静脈分布ベクトルとの差分を利用して、この差分の分散を更に算出してもよい。かかる分散を解析することで、本来類似している2つの静脈分布ベクトルが平行移動等によって差分が存在しているものなのか、元来全く違うベクトルであるのかを判定することが可能となる。
【0105】
以上、本実施形態に係る生体認証装置10の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0106】
なお、上述のような本実施形態に係る生体認証装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0107】
また、本実施形態に係る生体認証装置10において、当該生体認証装置10が生体撮像部101および撮像制御部103を有している場合について説明した。しかしながら、生体認証装置10は、生体撮像部101および撮像制御部103を有しておらず、外部に設けられた生体撮像装置によって撮像された生体撮像データを取得して、この生体撮像データを認証する装置であってもよい。また、生体認証装置10が有する静脈分布ベクトル算出部107は、画像補正部121を備えていることが好ましいが、静脈分布ベクトル算出部107は、画像補正部121を備えていなくてもよい。
【0108】
<生体認証方法について>
続いて、図13〜図15を参照しながら、本実施形態に係る生体認証装置10で実施される生体認証方法について、その流れを説明する。図13は、本実施形態に係る生体認証装置10で実施される静脈分布ベクトルの登録処理を説明するための流れ図である。図14は、本実施形態に係る生体認証装置10で実施される静脈分布ベクトルの認証処理を説明するための流れ図である。図15は、本実施形態に係る生体認証装置10で実施される静脈分布ベクトルの算出処理を説明するための流れ図である。
【0109】
[静脈分布ベクトルの登録処理について]
まず、図13を参照しながら、静脈分布ベクトルの登録処理の流れについて、簡単に説明する。
【0110】
なお、以下の説明に先立ち、生体認証装置10は、自装置内に設けられた生体撮像部101、または、外部に設けられた生体撮像装置から、指を撮像した撮像データを取得しているものとする。
【0111】
生体認証装置10の静脈画像抽出部105は、取得した撮像データに対応する撮像画像から、静脈パターンを表す静脈画像を抽出する(ステップS11)。静脈画像抽出部105は、抽出した静脈画像を、静脈分布ベクトル算出部107および生体認証部109の登録部111に出力する。
【0112】
静脈分布ベクトル算出部107は、取得した静脈画像を利用して、静脈画像における静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを算出する(ステップS13)。静脈分布ベクトル算出部107は、静脈分布ベクトルの算出が終了すると、算出した静脈分布ベクトルを、生体認証部109の登録部111に出力する。
【0113】
生体認証部109の登録部111は、静脈分布ベクトル算出部107が算出した静脈分布ベクトルを、登録静脈分布ベクトルとして記憶部115等に登録する(ステップS15)。この際、登録部111は、登録する静脈分布ベクトルを、テンプレートとして登録する静脈画像と互いに関連付ける。また、登録部111は、静脈分布ベクトルを登録する際に、静脈分布ベクトルを所定の方法で圧縮してもよい。
【0114】
本実施形態に係る生体認証装置10は、かかる流れで処理を行うことで、静脈分布ベクトルを登録静脈分布ベクトルとして登録することができる。
【0115】
[静脈分布ベクトルの認証処理について]
次に、図14を参照しながら、静脈分布ベクトルの認証処理の流れについて、簡単に説明する。
【0116】
なお、以下の説明に先立ち、生体認証装置10は、自装置内に設けられた生体撮像部101、または、外部に設けられた生体撮像装置から、指を撮像した撮像データを取得しているものとする。
【0117】
生体認証装置10の静脈画像抽出部105は、取得した撮像データに対応する撮像画像から、静脈パターンを表す静脈画像を抽出する(ステップS21)。静脈画像抽出部105は、抽出した静脈画像を、静脈分布ベクトル算出部107および生体認証部109の認証部113に出力する。
【0118】
静脈分布ベクトル算出部107は、取得した静脈画像を利用して、静脈画像における静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを算出する(ステップS23)。静脈分布ベクトル算出部107は、静脈分布ベクトルの算出が終了すると、算出した静脈分布ベクトルを、生体認証部109の認証部113に出力する。
【0119】
生体認証部109の認証部113は、まず、記憶部115等に格納されている登録静脈分布ベクトルを取得する(ステップS25)。次に、認証部113は、取得した登録静脈分布ベクトルそれぞれについて、算出した静脈分布ベクトルとの比較を行う(ステップS27)。この比較は、先に説明した式101等に基づいて算出されたスコアsを用いて行われ、スコアsが所定の閾値以下である場合に、登録静脈分布ベクトルは、算出された静脈分布ベクトルと類似していると判断する。
【0120】
認証部113は、静脈分布ベクトルの比較が終了すると、算出された静脈分布ベクトルと類似していると判断された登録静脈分布ベクトルに関連付けられているテンプレートを取得する。その後、認証部113は、取得したテンプレートと静脈画像抽出部105から通知された静脈画像との認証(すなわち、本認証処理)を開始する。なお、本認証処理に先立ち、更なるメタデータ認証やサムネイル画像を用いた認証処理が行われても良い。
【0121】
本実施形態に係る生体認証装置10は、かかる流れで処理を行うことで、静脈分布ベクトルの認証を行うことができ、本認証処理で用いられるテンプレートを絞り込むことができる。
【0122】
[静脈分布ベクトルの算出処理について]
続いて、図15を参照しながら、静脈分布ベクトル算出部107により実施される静脈分布ベクトルの算出処理の流れについて、説明する。
【0123】
静脈画像抽出部105から静脈画像が入力されると、静脈分布ベクトル算出部107の画像補正部121は、まず、静脈画像に対して主成分分析を実施する。これにより画像補正部121は、静脈画像の第1主成分を決定する(ステップS101)。
【0124】
次に、画像補正部121は、決定した第1主成分の方向が、画像フレームの縦方向と平行となるとように、画像を回転させる(ステップS103)。これにより、画像補正部121は、静脈画像の回転補正を行うことができる。
【0125】
続いて、画像補正部121は、回転補正が終了した静脈画像について、静脈分布(静脈に対応する画素の分布)の重心位置を算出する(ステップS105)。
【0126】
次に、画像補正部121は、算出した重心位置が画像フレームの中心と一致するように、回転補正後の静脈画像を平行移動させる(ステップS107)。これにより、画像補正部121は、静脈パターンを、画像フレームの中心に平行移動することができる。
【0127】
画像補正部121は、これらの補正が終了すると、補正の終了した静脈画像を、静脈画像分割部123および静脈画素カウント部125に出力する。
【0128】
続いて、静脈画像分割部123は、補正の終了した静脈画像を、複数のブロックに分割する(ステップS109)。分割処理が終了すると、静脈画像分割部123は、分割結果を表す情報を、静脈画素カウント部125およびベクトル生成部127に出力する。
【0129】
次に、静脈画素カウント部125は、補正の終了した静脈画像と、分割結果を表す情報とを利用して、各ブロックについて、静脈に対応する画素数をカウントする(ステップS111)。カウントが終了すると、静脈画素カウント部125は、カウント結果を表す情報を、ベクトル生成部127に出力する。
【0130】
ベクトル生成部127は、カウント結果を表す情報を取得すると、カウント結果を所定の順序で配列して、静脈分布ベクトルとする(ステップS113)。ベクトル生成部127は、生成した静脈分布ベクトルを、生体認証部109へと出力する。
【0131】
本実施形態に係る静脈分布ベクトル算出部107は、かかる流れで処理を行うことで、静脈分布ベクトルを算出することができる。
【0132】
<実施例>
続いて、本実施形態に係る静脈分布ベクトルを用いたメタデータ認証の実施結果について、説明する。
【0133】
検証のために利用した指静脈データベースに、合計482本の指をサンプルとして登録した。各指について、3枚の静脈画像が存在しており、各指について、3つの静脈分布ベクトル(すなわち、各静脈画像について1つの静脈分布ベクトル)を登録した。
【0134】
また、登録が完了した後、「ある一定時間が経過する毎に入力」という条件のもとで、各指について5回ずつ入力を実施し、指ごとに、5本の静脈分布ベクトルを生成させた。
【0135】
よって、この検証実験では、482本×5回=2410個の入力データと、482本×3個=1446個の登録静脈分布ベクトルとの比較を行うこととなった。
【0136】
各入力に対して、3回分の比較処理が、「本人認証」に対応する。したがって、合計で、2410×3=7230回の本人認証結果が存在することとなる。
【0137】
また、各入力に対して、1446−3=1443回分の比較処理が「他人認証」に対応する。したがって、合計で、2410×1443=3477630回の他人認証結果が存在することとなる。
【0138】
本人認証結果が99%以上の場合に認証が成功したとみなされる閾値を設定し、設定した閾値により他人認証の何割が拒否されるかを、結果として出力した。
【0139】
なお、本検証実験において、静脈画像のサイズは、120×60ピクセルであり、この静脈画像を15×15ピクセルの部分領域に分割して、静脈分布ベクトルを算出した。
【0140】
この検証処理を、以下の5種類のアルゴリズムそれぞれに対して実施した。
【0141】
1)指全体の静脈量をメタデータとするアルゴリズム(従来の方法)
2)静脈分布ベクトルを用いるアルゴリズム(画像補正・シフトによる比較なし)
3)画像補正および静脈分布ベクトルを用いるアルゴリズム(シフトによる比較なし)
4)静脈分布ベクトルおよびシフトによる比較を実施するアルゴリズム(画像補正なし)
5)画像補正、静脈分布ベクトルおよびシフトによる比較を実施するアルゴリズム
【0142】
この5種類のアルゴリズムそれぞれについて、得られた他人拒否率を、以下の表1に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
表1において、アルゴリズム1が、従来の方法に該当し、アルゴリズム2〜5が、本実施形態に係る静脈分布ベクトルを利用した方法である。表1の結果から明らかなように、静脈分布ベクトルを考慮するだけ(アルゴリズム2)で、従来の方法に比べて約20%程度多く、他人の登録データを拒否できることがわかった。
【0145】
また、アルゴリズム2と、アルゴリズム3または4とを比較すると明らかなように、画像補正またはシフトによる比較を更に適用することで、アルゴリズム2に比べて更に10%程度多く、他人の登録データを拒否できることがわかった。
【0146】
また、アルゴリズム5の結果から明らかなように、画像補正およびシフトによる比較を実施することで、約81%の他人の登録データを拒否できることがわかった。
【0147】
この結果からも明らかなように、本実施形態に係る生体認証方法は、メタデータ認証として非常に良い精度を有しており、効果的であることがわかる。
【0148】
(ハードウェア構成について)
次に、図16を参照しながら、本発明の実施形態に係る生体認証装置10のハードウェア構成について、詳細に説明する。図16は、本発明の実施形態に係る生体認証装置10のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0149】
生体認証装置10は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、生体認証装置10は、更に、ホストバス907、ブリッジ909、外部バス911、インターフェース913、センサ914、入力装置915、出力装置917、ストレージ装置919、ドライブ921、接続ポート923および通信装置925を備える。
【0150】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919、またはリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、生体認証装置10内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。
【0151】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。
【0152】
センサ914は、例えば、ユーザに固有の生体情報、または、かかる生体情報を取得するために用いられる各種情報を検出する検出手段である。このセンサ914として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の各種の撮像素子を挙げることができる。また、センサ914は、生体部位を撮像するために用いられるレンズ等の光学系や光源等を更に有していてもよい。また、センサ914は、音声等を取得するためのマイクロフォン等であってもよい。なお、センサ914は、上述のもの以外にも、温度計、照度計、湿度計、速度計、加速度計などの様々な測定機器を備えていてもよい。
【0153】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、生体認証装置10の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器929であってもよい。さらに、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。生体認証装置10のユーザは、この入力装置915を操作することにより、生体認証装置10に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0154】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置917は、例えば、生体認証装置10が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、生体認証装置10が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0155】
ストレージ装置919は、生体認証装置10の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種データなどを格納する。
【0156】
ドライブ921は、記録媒体用リーダライタであり、生体認証装置10に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体927は、例えば、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体927は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体927は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0157】
接続ポート923は、機器を生体認証装置10に直接接続するためのポートである。接続ポート923の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート923の別の例として、RS−232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、生体認証装置10は、外部接続機器929から直接各種データを取得したり、外部接続機器929に各種データを提供したりする。
【0158】
通信装置925は、例えば、通信網931に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置925は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置925に接続される通信網931は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
【0159】
以上、本発明の実施形態に係る生体認証装置10の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0160】
(まとめ)
以上説明したように、本発明の実施形態に係る生体認証装置および生体認証方法では、静脈画像における静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成し、この静脈分布ベクトルをメタデータ認証として利用することで、本認証処理時に照合すべきテンプレートの個数を、十分に絞り込むことが可能となる。その結果、本実施形態に係る生体認証方法を適用することで、静脈画像とテンプレートとのパターンマッチングという、処理に要するリソースや時間が多くなる本認証処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0161】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0162】
10 生体認証装置
101 生体撮像部
103 撮像制御部
105 静脈画像抽出部
107 静脈分布ベクトル算出部
109 生体認証部
111 登録部
113 認証部
115 記憶部
121 画像補正部
123 静脈画像分割部
125 静脈画素カウント部
127 ベクトル生成部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
指部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された指部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出部と、
前記静脈画像抽出部によって抽出された前記静脈画像を複数の部分領域に分割する静脈画像分割部と、
前記静脈画像分割部によって分割された前記部分領域それぞれについて、前記静脈に対応する画素の個数をカウントする静脈画素カウント部と、
前記静脈画素カウント部による前記部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、前記静脈画像における前記静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成するベクトル生成部と、
予め登録されている静脈分布ベクトルである登録静脈分布ベクトルに基づいて、前記ベクトル生成部により生成された前記静脈分布ベクトルを認証する認証部と、
を備える、生体認証装置。
【請求項2】
前記認証部は、前記ベクトル生成部によって生成された前記静脈分布ベクトルまたは前記登録静脈分布ベクトルのいずれか一方を所定の要素数ずつシフトさせながら、他方との類似度を算出する、請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記生体認証装置は、
前記静脈画像抽出部により抽出された前記静脈画像に対して平行移動処理および回転処理の少なくともいずれか一方を行って前記静脈画像を補正する画像補正部を更に備え、
前記画像補正部は、
補正前の前記静脈画像に対して主成分分析を行い、第1主成分の方向が前記静脈画像の長手方向の辺に対して平行となるように前記補正前の静脈画像を回転し、
前記補正前の静脈画像について、静脈の位置に対応する画素の分布の重心を算出し、当該重心が前記静脈画像の中心位置と一致するように前記補正前の静脈画像を平行移動する、請求項2に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記静脈画像分割部は、前記静脈画像のうち、当該静脈画像の中心位置を含む所定の領域を、複数の部分領域に分割する、請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記ベクトル生成部は、前記静脈画像の隅に位置する前記部分領域から順に前記カウント結果を配列する、請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記ベクトル生成部は、前記静脈画像の中心位置を含む前記部分領域から順に前記カウント結果を配列する、請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記認証部は、静脈画像の中心位置を含む部分領域に対応する前記静脈分布ベクトルの要素を基準として認証処理を行う、請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項8】
指部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された指部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出するステップと、
抽出された前記静脈画像を、複数の部分領域に分割するステップと、
生成された前記部分領域それぞれについて、前記静脈に対応する画素の個数をカウントするステップと、
前記部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、前記静脈画像における前記静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成するステップと、
予め登録されている静脈分布ベクトルである登録静脈分布ベクトルに基づいて、前記ベクトルを生成するステップにて生成された前記静脈分布ベクトルを認証するステップと、
を含む、生体認証方法。
【請求項9】
コンピュータに、
指部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された指部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出機能と、
前記静脈画像抽出機能によって抽出された前記静脈画像を複数の部分領域に分割する静脈画像分割機能と、
前記静脈画像分割機能によって分割された前記部分領域それぞれについて、前記静脈に対応する画素の個数をカウントする静脈画素カウント機能と、
前記静脈画素カウント機能による前記部分領域それぞれのカウント結果を所定の順序で配列して、前記静脈画像における前記静脈の分布の度合いを表す数列である静脈分布ベクトルを生成するベクトル生成機能と、
予め登録されている静脈分布ベクトルである登録静脈分布ベクトルに基づいて、前記ベクトル生成機能により生成された前記静脈分布ベクトルを認証する認証機能と、
を実現させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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