生体識別装置、及び、生体識別方法
【課題】 撮像した画像を用いて個人の識別を行なう生体識別装置において、精度の高い識別を行なう。
【解決手段】 生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、を行なう。
【解決手段】 生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体識別装置、及び、生体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋や静脈パターン等の生体的特徴をとらえて個人の認証を行なう生体認証システムが知られている。例えば、指を撮像することで得られる指静脈画像に基づいて認証を行うシステムとして生体認証装置等が開発されている。このような生体認証装置を用いて個人の認証を行なう際には、認証の精度を高くするため、できる限りノイズの影響を除去する必要がある。例えば、指に光を照射して撮影された指静脈画像から、光を照射せずに撮影したノイズ画像を減算することで、外光によるノイズを除去して認証を行なう方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法によれば、ノイズの少ない画像を用いることよって、概ね認証精度を高くすることができる。しかし、この方法では、ノイズ画像と静脈画像の2回の撮影の間で、同一の場所に同一のノイズが発生していなければ当該ノイズを除去することはできない。つまり、撮影するたびにノイズの発生する場所が異なるようなランダム性の高いノイズについては除去することができない。そのため、撮像時において指の位置や角度がずれる等、撮像条件によってはノイズの影響を十分に排除することができず、認証の精度が悪くなる場合がある。
ここで、認証とは、登録された画像等と認証時に得られた画像等を照合することによって、認証(識別)対象者が登録者であるか否かを識別し、識別結果に基づいて、例えば電子錠等の制御対象を制御することである。したがって、認証の精度は識別の精度に依存するので、認証においては、登録時の画像と認証時の画像とで撮影された指の位置や姿勢が異なっていても高精度に識別できるようにすることが望ましい。
【0005】
本発明では、撮像した画像を用いて個人の識別を行なう生体識別装置において、精度の高い識別を行なうことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、を行なう、生体識別装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態における静脈識別装置1のブロック図である。
【図2】図2A及び図2Bは、静脈識別装置1をドアの開錠制御に用いた場合の例を示す図である。
【図3】登録動作のフローを表す図である。
【図4】特徴量抽出処理のフローを表す図である。
【図5】特徴点の一例を表す図である。
【図6】得られた輝度勾配の一例を表す図である。
【図7】輝度勾配のヒストグラムの一例を表す図である。
【図8】基準方向に座標軸を合わせたときの輝度勾配の一例を表す図である。
【図9】静脈識別で行なわれる特徴量の抽出を模式的に説明する図である。
【図10】特徴量の重み付けを行なう際のフローを表す図である。
【図11】重み付けがされた後の特徴量のリストの一例を表す図である。
【図12】識別動作のフローを表す図である。
【図13】照合処理のフローを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、を行なう、生体識別装置。
【0011】
このような生体識別装置によれば、登録動作において、演算部は、ユーザーの生体パターンを撮像部で複数回撮像して得られる複数の画像から、ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出する。そして、複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録部に登録する。特徴量は生体パターンを特徴付けるので、出現頻度が高い特徴量は、識別対象者がユーザーであれば後述する識別動作においても出現する可能性が高い、ユーザーを識別するために重要な特徴量である。そこで、出現頻度が高い特徴量ほど大きく重み付けをするように、特徴量と重みを対応付けて登録部に登録することとしている。
【0012】
一方、識別動作においては、識別対象者の特徴量を抽出する。そして、抽出した識別対象者の特徴量と、登録部に登録されているユーザーの特徴量、さらに、登録されているユーザーの特徴量に対応付けられている重みに基づいて、識別対象者が登録されているユーザーか否かの識別を行う。登録されているユーザーの特徴量の重みを考慮して、ユーザーか否かを識別するため、ユーザーを識別するための重要な特徴量が識別対象者の特徴量と照合できた場合には、識別対象者がユーザーであると識別する可能性を高くすることができる。したがって、より精度の高い識別を行なうことができる。
【0013】
かかる生体識別装置であって、前記識別動作において撮像される前記識別対象者の生体パターンよりも、前記登録動作において撮像される前記ユーザーの生体パターンの方が、撮像範囲が大きいことが望ましい。
【0014】
このような生体識別装置によれば、登録動作において、より大きな範囲で撮像された生体パターンの画像から抽出されるユーザーの特徴量の数が、識別動作において抽出される識別対象者の特徴量の数よりも多くなる可能性が高い。つまり、識別を行なう際に用いられる可能性のあるユーザーの特徴量をより多く登録しておくことができるため、照合データの母体が大きくなる。したがって、識別対象者の生体パターンから抽出される特徴量と登録されている特徴量との照合が行ないやすくなり、より精度の高い識別を行なうことができる。
【0015】
かかる生体識別装置であって、前記登録部は、前記ユーザーの特徴量を複数登録し、前記演算部は、前記識別動作において、前記識別対象者のスコアを算出し、前記識別動作において抽出された前記識別対象者の特徴量が、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量のうちのいずれかと類似する場合には、当該ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに応じて前記識別対象者のスコアを増加させ、前記識別対象者のスコアが所定の閾値よりも大きい場合に、前記識別対象者が前記ユーザーであると判断することが望ましい。
【0016】
このような生体識別装置によれば、抽出した識別対象者の特徴量と、登録部に登録されているユーザーの特徴量、さらに、登録されているユーザーの特徴量に対応付けられている重みに基づいて、識別対象者のスコアが算出される。そして、算出されたスコアが所定の基準値(閾値)よりも大きければ、識別対象者がユーザーであると識別される。スコアの算出においては、識別対象者の特徴量とユーザーの特徴量とで類似する特徴量の数が多いほど、また、類似度が高いほどスコアが加算されやすくなる。つまり、登録されているユーザーの特徴量と識別対象者の特徴量とが類似しているほど、識別対象者がユーザーであると判断される可能性が高くなる。したがって、より精度の高い識別を行なうことができる。
【0017】
かかる生体識別装置であって、前記演算部は、前記登録動作において、前記複数の画像から抽出された前記ユーザーの特徴量が互いに類似すると判断された場合に前記ユーザーの特徴量の重みを増加させ、前記類似すると判断された累積の頻度が多い特徴量ほど、前記重みを大きく増加させる、ことが望ましい。
【0018】
このような生体識別装置によれば、ユーザーの特徴量の重み付けを行なう際に、複数枚の画像から抽出されるユーザーの特徴量のうち、類似すると判断される特徴量の出現頻度が高い特徴量ほど重みが増加されやすくなる。出現頻度が高い特徴量は、データとしての信頼性が高いことを示す。すなわち、出現頻度が高い特徴量ほど重要度の高いデータとして重みが大きく登録され、出現頻度が低い特徴量と比較して識別を行なう際に与える相対的な影響が大きくなる。
これにより、識別の精度をより向上させることができる。
【0019】
かかる生体識別装置であって、前記特徴量が、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)を用いて抽出されることが望ましい。
【0020】
このような生体識別装置によれば、SIFTを用いて特徴量を抽出することにより、撮像時の位置変化、回転等に依存しにくい生体パターンの特徴量を抽出することができるようになる。したがって、生体パターンの撮像を行なう際に、撮像を行なうセンサーと被撮像対象(ユーザーまたは識別対象者の生体パターン)との位置関係が固定されていない場合であっても、生体パターンを特徴付ける特徴量を正確に抽出することが可能となり、撮像時の条件によらずに高精度な識別を行うことができる。
【0021】
また、ユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの生体パターンを特徴付ける特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記特徴量に対応付けて登録することと、識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の生体パターンを特徴付ける特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別することと、を有する生体識別方法が明らかとなる。
【0022】
また、生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作を行なう生体識別装置が明らかとなる。
【0023】
このような生体識別装置によれば、演算部は、ユーザーの生体パターンを撮像部で複数回撮像して得られる複数の画像から、ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出する。そして、複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録部に登録する。特徴量は生体パターンを特徴付けるので、出現頻度が高い特徴量は、ユーザーを識別するために重要な特徴量である。そこで、出現頻度が高い特徴量ほど大きく重み付けをするように、特徴量と重みを対応付けて登録部に登録することとしている。
【0024】
また、ユーザーの生体パターンを複数回撮像することと、撮像によって得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出することと、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録することと、を有する生体識別方法が明らかとなる。
【0025】
===実施形態===
発明を実施するための生体識別装置の形態として、静脈識別装置1を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態における静脈識別装置1のブロック図である。静脈識別装置1は、演算部10とセンサー部20と光源部30とトリガセンサー40と制御対象50とを備える。センサー部20はインターフェース28を介して演算部10に接続されており、また、光源部30はインターフェース38を介して演算部10に接続されている。また、静脈識別装置1は、インターフェース48とインターフェース58を介してトリガセンサー40と制御対象50に接続されている。
【0026】
演算部10は、演算を行うCPU(Central Processing Unit)12と記憶装置(登録部)としてのRAM(Random Access Memory)14及びEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)16を含む。CPU12は、EEPROM16に記憶されたプログラムを実行することにより静脈の識別を行う。RAM14には、静脈の識別を行う際に必要な特徴量が演算結果として登録される。そして、演算部10は、後述する登録動作と、識別動作の2つの処理を行う。
【0027】
センサー部20は、指の静脈を撮像するためのセンサーである。センサー部20は、接近した指を撮像するが、その際に露光時間を調整することができるようになっている。また、静脈識別装置1は、センサー部20として登録動作用と識別動作用との2種類のセンサーを備えていてもよい。
【0028】
光源部30は、撮像する指に所定波長の光を照らすための装置である。ここでは、近赤外線のLED(Light Emitting Diode)光源を含み、700nm〜900nmの波長帯を多く含む光を照射する。この波長帯は「生体の窓」とも呼ばれ、血液のヘモグロビンと水との両方の吸収が低くなり、生体の透過率が高くなる波長帯である。本実施形態では、指に対して700nm〜900nmの波長帯の近赤外線を照射しながら撮像を行なうことで、血液が多く存在する部分、すなわち血管の部分が影となって撮影される。したがって、当該指の内部にある静脈の形状を精度良く表わした画像を得ることが可能になる。
【0029】
トリガセンサー40は、指の接近を感知し、撮像処理を開始するためのトリガーを演算部10に送る装置である。トリガセンサー40には、例えば、静電容量センサーが用いられる。このトリガセンサー40により、後述するドアなどに静脈識別装置を設けた場合において、指をドアに近づけただけでセンサー部20が指の撮像処理を開始することができるようになる。
【0030】
制御対象50は、静脈識別装置1による識別結果に応じて制御される対象物である。例えば、制御対象50がコンピューターであるときには、静脈識別装置1による識別結果に応じて識別対象者に対してコンピューターのアクセス権を付与する。また、制御対象50がドアの電子錠である場合には、静脈識別装置1による識別結果に応じてドアの電子錠の開錠を行う。以下、制御対象50がドアの電子錠である場合について説明を行う。
【0031】
図2A及び図2Bに、静脈識別装置1をドアの開錠制御に用いた場合の例を示す。図に示されるように、静脈識別装置1はドアのドアノブ部に設けられる。静脈識別装置1の前面にはパネル状のセンサー部20が設けられ(図2Bの斜線部)、センサー部20の両側面には光源部30が設けられる(図2Bの横線部)。センサー部20は、識別対象者がドアノブ部を握った際に、ちょうど撮像対象の指が置かれるような位置に配置される。
【0032】
識別対象者がドアを開閉するために当該ドアノブ部を握ると、トリガセンサー40が指の接近を感知して当該指の静脈パターンの撮像が開始される。図2Bに示されるように、撮像時には、センサー部20の上に位置する識別対象者の指に対して光源部30から近赤外線を照射することにより、当該指の撮像対象部分について静脈パターン画像が取得される。そして、取得された静脈パターンの画像に基づいて識別対象者がユーザー(登録者)であるか否かが判断される。ユーザーであると判断される場合には、制御対象50である電子錠が開錠され、ユーザーでないと判断される場合には、電子錠が開錠されない。この識別動作の詳細については後で説明する。
【0033】
なお、識別対象者がドアの開閉を行なう場合、その都度ドアノブの握り方が変わるであろうことから、毎回センサー部20の同じ位置に同じ角度で指が置かれるとは限らない。すなわち、識別の対象として撮像される静脈パターンの位置や撮像方向はその都度変化するものと考えられる。しかし、後述するように、本実施形態では撮像時の位置や方向によらず、高い精度で識別を行なえるようになっている。
【0034】
<静脈識別装置1の基本動作>
静脈識別装置1では、あらかじめユーザー毎に静脈パターンを登録しておく「登録動作」と、その登録された静脈パターンデータに基づいて個人の識別を行なう「識別動作」とが行われる。
【0035】
生体パターンに基づく個人の識別(本実施形態では静脈パターンによる識別)を行なうためには、判断基準が必要となる。そのため、まず「登録動作」において、ユーザー毎に静脈パターンが静脈識別装置1の登録部(RAM14)に登録される(登録モードとも呼ぶ)。登録された静脈パターンは、「識別動作」において、識別対象者の静脈パターンと照合され、両パターンが一致すると判断された場合に、ユーザーと識別対象者とが同一人物であると判断される(識別モードとも呼ぶ)。
【0036】
本実施形態の静脈識別装置1では、通常は識別モードを行なう設定になっており、識別モードと登録モードとの切り替えは、ユーザーまたは識別対象者がモードを選択することによって行なわれる。
以下、各動作についてそれぞれ説明する。
【0037】
===登録動作について===
登録動作は、登録対象となるユーザーの指の静脈パターンについて、その特徴を表す「特徴量」を抽出し、ユーザー毎に登録する処理である。本実施形態における特徴量は、位置不変、及び、回転不変なものが採用される。これは、同じ人物の静脈パターンに対しては、撮像範囲が変化(位置が変化した場合)した場合でも、撮像方向が回転(回転変化)した場合でも、パターンに対して同じ位置が特定され(位置不変)、その位置周辺の局所領域の特徴を数値化した特徴量と同じ値で得られる(回転不変)という特性を有するものである。
【0038】
<登録動作の流れ>
図3に、登録動作のフローを示す。登録動作は、S101〜S106の各処理を実行することによって行なわれる。
【0039】
登録モードにおいてトリガセンサー40が指の接近を感知すると登録動作が開始され、初めに、撮像パラメータの調整が行なわれる(S101)。センサー部20から入力されてくる指(静脈)の画像をもとに、演算部10によって撮像パラメータが調整され、最も良好な画質で撮像可能なパラメータが設定される。
【0040】
パラメータの調整後、登録対象となるユーザーの静脈画像の撮像が行われる(S102)。指の静脈パターン画像を撮像するにあたり、光源部30から700nm〜900nmの波長帯を多く含む光が照射される。そして、指の静脈が撮像される。静脈画像の撮像は、静脈識別装置1のセンサー部20を用いて行うこともできるし、他の撮像可能な装置を用いて行うこともできる。
【0041】
本実施形態の登録動作では、ユーザーの静脈パターンを撮像する際に、撮像対象となる指について複数回の撮像が行なわれ、複数枚の画像が取得される。1回の撮像では、偶然にノイズが含まれた場合に、当該ノイズをノイズとして認識できない場合がある。この場合、識別時の基準となるデータが不正確なものとなり識別の精度が低下するおそれがある。そこで、複数枚の静脈画像を取得して、それぞれの画像から抽出される特徴量に重み付けをすることにより、重要な特徴量と重要ではない特徴量とを設定しておく。重要な特徴量の重みを大きくし、重要でない特徴量の重みを小さくすることで、偶然に含まれるようなノイズの影響を小さくする。詳細は後述の(S105:特徴量の重み付け)で説明する。なお、複数回の撮像は連続的に行われてもよいし、間隔を置いて行われてもよい。
【0042】
また、撮像の際には、上述の特徴量がなるべく多く含まれるように、指の撮像範囲を大きくする。さらに、識別に用いる可能性のある領域は全て撮像しておくべきであるので、後述する識別動作における撮像範囲よりも大きな撮像範囲とすることが望ましい。例えば、全ての指について全体を撮像することとしてもよいし、手のひらの領域も撮像することとしてもよい。また、左右両方の指について撮像することとしてもよい。本実施形態の登録動作では、後述する識別動作で撮像される領域よりも広い領域が撮像されることになる。そのために、登録動作において撮像を行なうセンサーと識別動作において撮像を行なうセンサーとを別個に設けておいてもよい。また、このような広い領域を撮像するにあたり、撮像する範囲全体を一括で撮像を行う必要はなく、分割して撮像することとしてもよい。
【0043】
次に、撮像された静脈画像から特徴量の抽出を行う(S103)。特徴量の抽出はS102で取得された複数の静脈画像のそれぞれについて行なわれる。そして、1つの画像について複数の特徴量が抽出される。特徴量抽出処理の詳細は後述する。
【0044】
各画像について特徴量の抽出が行なわれた後、その抽出された特徴量が適正なものであるか否かが判断される(S104)。本実施形態では、該特徴量を基準として静脈パターンについての識別が行なわれるので、識別動作において正確な識別を行なうためには十分な量(数)の特徴量が抽出されている必要がある。言い換えると、十分な数の特徴量が抽出されていなければ、識別の基準として採用することは適切でない。そこで、演算部10は、抽出された特徴量の数が所定数以上あるか否かを判断し、所定数未満である場合(S104がNo)は特徴量が不適正なものとしてS101に戻ってパラメータの調整からやり直して撮像を行なう。
【0045】
抽出された特徴量が適正なものであれば(S104がYes)、その特徴量の重み付けが行なわれる(S105)。本実施形態では、S102で複数の静脈画像が撮像されるが、その全ての画像において、同一と見なせる特徴量が抽出されるわけではない。例えば、ある画像で抽出された特徴量が、他の全ての画像において抽出されない場合、その特徴量はノイズに起因して抽出されてしまった特徴量である可能性がある。このようなデータはユーザー固有の静脈パターンによらずに発生するため、識別を行う際のデータとして有効とはいえない。一方で、全ての画像で類似の特徴量が抽出された場合、その特徴量はそのユーザーの静脈パターンを特徴付けるデータとして有効である。
【0046】
そこで、複数の画像中での出現頻度にしたがって、特徴量に重み付けを行う。つまり、特徴量毎にデータとしての重要度を設定し、上述のようなノイズに起因する特徴量が複数の特徴量全体に与える影響を相対的に小さく抑え、静脈パターンを表す特徴量の影響を大きくする。特徴量の重み付けの具体的な処理内容については後で説明する。
【0047】
最後に、S103で抽出された特徴量と、S105で該特徴量について重み付けされた値とがリスト化され、RAM14に登録される(S106)。
以上の処理により、登録動作が完了する。
【0048】
<特徴量の抽出(S103)の詳細>
特徴量抽出処理(S103)の処理内容の詳細について説明する。図4に、特徴量抽出処理(S103)のフローを示す。特徴量の抽出はS131〜S133の各処理を順次実行することにより行なわれる。
【0049】
まず、撮像した静脈画像の画像補正が行われる(S131)。ここで画像補正が行われるのは、主に次の3つの理由からである。(1)指の透過率には個人差があり、取得した画像の全体の輝度がばらつくことがある。(2)指の透過率の個人差により明暗分布が生じてしまうことがある。例えば、指の関節部は明るく画像が取得され、関節と関節との間は暗く画像が取得される。(3)静脈と表皮との間の生体組織により、光が拡散し、撮像した静脈パターンがぼやける場合がある。
【0050】
これらの課題を解決するために、フィルタ処理を行う。上記(1)の課題を解決するためには、正規化が必要であり、そのために平均値(直流成分)を除去する必要がある。また、上記(2)の課題を解決するためには、均一化が必要であり、そのために、緩やかな変動を除去する必要がある。よって、これら(1)と(2)の課題を解決するために、静脈画像に対してハイパスフィルタを適用する。
【0051】
また、上記(3)の課題を解決するためには、シャープネス処理が必要であるから、静脈画像に対してアンシャープマスクを適用し高周波成分を強調する。すなわち、これらハイパスフィルタとアンシャープマスクを統合したフィルタを作成し適用する。具体的には、2つのフィルタの周波数応答(MTF: Modulation Transfer Function)を周波数空間で積算し、これを逆フーリエ変換したフィルタを適用することになる。
【0052】
なお、撮像された画像に輝度のばらつき等がほとんど無い場合には、当該補正処理は必ずしも行われなくてもよい。
【0053】
次に、特徴点の抽出(S132)が行われる。ここで、「特徴点」とは、撮像された複数の画像の間で、静脈画像が回転したり位置が移動したりする場合でも、静脈パターンの決まった位置に出現する点のことを言う。すなわち、位置・角度がシフトしても静脈パターンに対する相対位置が変化しない点である。
【0054】
本実施形態では、前述のようにセンサーと指との位置関係は固定ではないことから、静脈パターンの特徴量を算出するために、その中心位置(基準となる位置)を求めたいという要求がある。この中心位置となる点が特徴点である。このような要求を満たす手法の一例として、本実施形態における特徴点抽出及び特徴量抽出では、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)が採用される。以下に、SIFTを用いて特徴点抽出及び特徴量抽出を行なう方法について説明する。
【0055】
特徴点の抽出(S132)の処理においては、まず、ノイズを取り除き、安定した特徴点を得るために、静脈画像にガウスフィルタを適用して平均化処理を行う。そして、ある周波数以上の成分をカットする処理を行う。また、ガウスフィルタを適用した画像の二次微分を算出し、その極値を特徴点候補とする。さらに、ノイズに由来する特徴点を取り除くために、極値の絶対値が所定の閾値以上の点を特徴点として採用する。上記において、特徴点候補を得るために二次微分を算出しているのは、均一な領域ではなく、変化があるエッジ部を画像から抽出するためである。また、撮影において斜めから光源照射がなされたときにおいて、一定の傾きで変化する領域が画像に生ずることがあるが、このような領域を特徴点候補としないためである。二次微分の算出は、具体的には、ガウス導関数の畳み込み積分により行われる。
【0056】
図5は、特徴点の一例を示す図である。図5には、撮像された静脈画像を部分的に拡大した図(図の斜線部)と、その静脈の分岐点において特定された特徴点が示されている。特徴点は、輝度勾配の二次微分の極値の場所が選択されるので、輝度の変化量が大きな箇所が選択されることになる。また、二次微分の極値の場所は、一次微分の変化量が極大となる場所であるから、周囲に比べて曲率(すなわり曲がり方)が大きい点が選択される。よって、静脈の分岐点や血管内部も特徴点として選択されることになる。すなわち、静脈とそうでない場所とを分ける場所が特徴点として選択されることになる。
【0057】
次に、特徴量の抽出が行われる(S133)。特徴量の抽出は、上記の処理において得られたそれぞれの特徴点に対して以下の処理を行うことにより行われる。まず、特徴点周辺の輝度勾配を算出する。
【0058】
図6は、得られた輝度勾配の一例を示す図である。図6には、特徴点を中心とした複数のマス目(本実施形態では、8×8のマス目)が示されている。そして、各マス目における輝度勾配がベクトル量として示されている。
【0059】
次に、図6のように得られた輝度勾配についてヒストグラムを作成する。そして、最も頻度の高い方向を特徴量の基準方向とする。
【0060】
図7は、輝度勾配のヒストグラムの一例を示す図である。図7の横軸は、全方向(360度)を所定数の方向に分割した場合の各方向を表し(図7の場合は36方向に分割した場合を表す)、縦軸は各方向における輝度の大きさhを表す。すなわち、図7では、輝度勾配について36方向のヒストグラムが示されている。そして、「peak」と記載した方向の値が最も高くなっている。よって、この方向が特徴量の基準方向となる。
【0061】
次に、特徴点を中心として、前述の処理で選択された基準方向に合わせて、再度8×8のマス目を作成する。そして、この8×8のマス目を4×4のマス目に対応させ、この4×4のマス目毎の輝度勾配について、マス目ごとに8方向のベクトルに分解する。
【0062】
図8は、基準方向に座標軸を合わせたときの輝度勾配の一例を示す図である。図8の左図においては、太矢印の方向が前述の基準方向であり、基準方向に方向を合わせた8×8のマス目を再作成して、基準方向を基準として輝度勾配を求め直したものである。また、図8の右図は、この8×8のマス目を4×4のマス目に対応させ、マス目毎に輝度勾配を8方向のベクトルに分解したものである。
【0063】
ここでは、8方向のベクトルに分解しているので、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、及び、315°のそれぞれの方向について、ベクトルのスカラー量が得られる。また、4×4のマス目のそれぞれについて、これらのスカラー量が得られるため、4×4×8=128次元のスカラー量を得ることができる。本実施形態において、特徴点における特徴量は、これら複数次元のスカラー量である。
【0064】
図9に、本実施形態の静脈パターンに基づく識別で行なわれる特徴量の抽出を模式的に説明する図を示す。図9では、5回の撮像データから特徴量を抽出するものとする。
【0065】
まず、5回の撮像により、I−01〜I−05の5種類の静脈パターンの画像が得られる。そして、各画像についてS132の処理が行われ、特徴点が抽出される。図9の各静脈画像中に複数表示されている白丸が、抽出された「特徴点」である。これらの特徴点についてそれぞれS133の処理が行われ、特徴量が抽出される。例えば、画像I−01においては、U1〜Unのn個の特徴量が抽出され、画像I−02においては、V1〜Vmのm個の特徴量が抽出される。それぞれの特徴量は上述のような128次元のスカラー量で表される。そして、各画像において抽出される全ての特徴量を特徴量群と定義する。例えば、画像I−01からは、特徴量群G−01(U1〜Un)が求められ、画像I−02からは、特徴量群G−02(V1〜Vm)が求められる。このようにして、I−01〜I−05の5種類の画像について、それぞれG−01〜G−05の5種類の特徴量群が求められる。
【0066】
求められた特徴量群は、登録者のIDとセットにしてRAM14に一時的に保存される。これにより、一人の登録者(ユーザー)について複数の特徴量群のデータが得られる。
【0067】
<特徴量の重み付け(S105)の詳細>
次に、抽出された特徴量に重み付けを行なう処理の具体的内容について説明する。図10に、特徴量の重み付けを行なう際のフローを示す。特徴量の重み付けは、演算部10によってS151〜S158の各処理を実行することにより行なわれる。
【0068】
演算部10は、まず、複数の特徴量群のうち1番目の特徴量群に含まれる全ての特徴量をリスト化する(S151)。例えば、図9に示した例では、1番目の特徴量群G−01に含まれる特徴量(U1,U2,…,Un)からなるリストが作成される。なお、リスト作成段階では、U1〜Unのいずれの特徴量についても重みが1と設定される。
【0069】
リストが作成された後、次の特徴量群が選択され(S152)、当該選択された特徴量群の中からi番目(i=1,2,3…)の特徴量が選択される(S153)。例えば、上述の例の場合、2番目の特徴量群としてG−02が選択され、G−02に含まれる特徴量(V1,V2,…,Vm)の中からi番目の特徴量であるViが選択される。したがって、初めは特徴量群G−02の中から特徴量V1が選択される。
【0070】
次に、当該選択された特徴量が、S151でリスト化された特徴量のいずれかと類似するか否かが判断される(S154)。ここで、特徴量の「類似」は、例えば、比較する2つの特徴量ベクトル間におけるユークリッド距離を算出し、算出されたユークリッド距離とあらかじめ設定してある所定の閾値とを比較することによって判断することができる。これらの距離の値が所定の閾値よりも小さいことは、両者のベクトルが非常に近いことを示すので2つの特徴量は類似度が高いと判定することができる。
【0071】
例えば、S153で選択されたG−02の特徴量V1と、S151で登録されたリストに示される特徴量(U1〜Un)との間で、それぞれユークリッド距離が算出される。その中でV1とU1との間のユークリッド距離が所定の閾値よりも小さい場合、V1とU1とは類似する特徴量であると判断される。
【0072】
なお、ここでは、ユークリッド距離に基づいて類似判断を行なうこととしたが、市街地距離やマハラノビスの距離に基づいて類似判断を行なうこととしてもよい。
【0073】
類似判断の結果、両者が類似すると判断された場合(S154がYes)、演算部10は当該リストにおける特徴量の重みを増加させる(S155)。一方、両者が非類似である(類似しない)と判断された場合、すなわち算出された距離が所定の閾値以上である場合(S154がNo)、演算部10はS153において選択された特徴量を、新たにリストに追加する(S156)。
【0074】
例えば、上述の例においてG−02の特徴量V1とリスト上の特徴量U1とが類似すると判断された場合、U1について重みを1増加させる。一方、G−02の特徴量V1がリスト上の特徴量(U1〜Un)のいずれとも類似しないと判断された場合、特徴量V1が新たにリストに追加される。
【0075】
なお、S155で重みを増加させる場合に、2つの特徴量間のユークリッド距離に応じて、増加率を変更するようにしてもよい。当該ユークリッド距離が小さいということは、両特徴量ベクトル間の類似度が高いことを示している。これは、複数の画像においてきわめて類似するデータ(特徴量)が2以上存在することを意味するので、その2つの特徴量は、静脈パターンを規定する特徴量として重要度が高いデータであると考えられる。そこで、そのような重要度の高いデータについては、重みを大きくしておくことで、識別動作においてより高精度な識別を行うことが可能となる。
【0076】
その後、S152で選択された特徴量群に含まれる特徴量が順番に選択され、それぞれリストに登録されている特徴量と比較される。第i番目の特徴量ViについてS153〜S156の各処理が行なわれた後、比較するべき次の特徴量(i+1番目の特徴量Vi+1)が存在する場合は(S157がNo)、該特徴量Vi+1について上述したS153〜S156の各処理が繰り返される。一方、次の特徴量が存在しない場合は(S157がYes)、その特徴量群についての処理を終了し、S158において次の特徴量群の有無が判断される。
【0077】
次の特徴量群が存在する場合は(S158がNo)、次の特徴量群について上述したS152〜S157の各処理が繰り返される。例えば、図9でG−02に含まれる全ての特徴量についてS157までの処理が終了した場合、次の特徴量群G−03が存在するので、G−03に含まれる各特徴量について、上述と同様の処理が繰り返される。一方、次の特徴量群が存在しない場合、すなわち、特徴量群G−05までの処理が終了した場合は(S158がYes)、特徴量の重み付け処理(S105)を終了する。
【0078】
重み付け処理(S105)後の特徴量に関するデータは、識別の基準としてリスト化され、登録部(RAM14)に登録される。図11は、重み付けがされた後の特徴量のリストの一例である。当該リストにおいて、番号は特徴点を識別するために便宜的に付された番号を表す。図11では、合計でN個の特徴点がリストに追加されたことを示している。また、特徴量ベクトルは、その特徴量毎の128次元のベクトルを表している。なお、前述のS154の類似判断の結果、リストに追加される特徴量(図11においてはN個の特徴量)は全て非類似なベクトルとなっている。
【0079】
そして、1〜Nの特徴量について、それぞれ重みの大きさが設定されている。重みが大きな特徴量ほど、複数種類の静脈画像において出現頻度が高い(S154において類似すると判断された回数が多い)ことを意味している。すなわち、当該重みが大きいほど、重要なデータであるといえる。逆に、出現頻度が低い特徴量は重要なデータではない可能性が高い。例えば、出現頻度の低い特徴量は、複数回撮像される画像のうちの一回において偶然含まれてしまったノイズが検出されたものであると考えることができる。したがって、そのような出現頻度が低いデータを識別の基準として重要視しないように、重みが低く設定される。
【0080】
また、特徴量の重み付けを行なう際に重みの増加率を変更することによって、そのデータの重要度も変更することができる。例えば、上述のS155においてユーザーの特徴量について重みを増加させる際に、複数枚の画像から抽出されたユーザーの特徴量のうち、類似すると判断される特徴量の出現頻度を演算部10がカウントしておき、出現頻度に応じて重みの増加率を変更する。具体的には、類似する特徴量が出現する頻度に対してユーザーの特徴量の重みを二次関数的に増加させる等、累積の頻度が多い特徴量ほど重みの増加率を大きくするようにしてもよい。これにより、複数枚の画像から抽出されたユーザーの特徴量のうち、互いに類似する特徴量が多いほど重みがより大きくなるので、当該特徴量の重要度をより高くすることができる。
【0081】
===識別動作について===
識別動作は、登録されているユーザー毎の静脈パターンと識別対象者の静脈パターンとを照合して、登録されているいずれかのユーザーとその識別対象者とが同一人物であるか否かを判定する処理である。
【0082】
静脈識別装置1は、通常時の使用場面(ドアに施錠しているとき)においては、識別モードの状態で待機している。この状態において、トリガセンサー40が識別対象者の指が静脈識別装置1へ接近するのを検知すると、以下のような識別動作が開始される。
【0083】
<識別動作の流れ>
図12に、識別動作のフローを示す。識別動作はS501〜S509の各処理を実行することによって行なわれる。
【0084】
初めに、登録動作におけるS101と同様に、撮像パラメータの調整が行なわれる(S501)。すなわち、センサー部から入力されてくる指の静脈の画像をもとに、演算部10によって撮像パラメータが調整され、最も良好な画質で撮像可能なパラメータが設定される。
【0085】
撮像パラメータの調整後、識別対象者指の静脈画像の撮像が行われる(S502)。静脈画像の撮像は、識別対象者がドア(図2参照)を開こうとしてドアノブを握ったタイミングで行なわれる。このとき、光源部30から700nm〜900nmの波長帯を多く含む近赤外線を照射しながらセンサー部20を用いて1回の撮像が行なわれる。
【0086】
また、撮像される指の範囲は、登録動作時よりも狭くすることができる。通常の場合、指の静脈パターンの一部分を撮像しただけでも、個人の識別を行なう際に必要な数の特徴量を抽出することが可能だからである。登録動作において、指全体等の大きな撮像範囲で静脈パターンを撮像し、その指全体分の特徴量が抽出されているため、識別動作においてそのうちの一部(例えば30個)の特徴量を照合するだけで、識別の精度を確保することができる。
【0087】
次に、撮像された識別対象者の静脈画像から特徴量の抽出が行われる(S503)。特徴量の抽出は登録動作時(S103)と同様にして行なうことができ、1つの静脈画像から複数の特徴量が抽出される。例えば、識別対象者の静脈パターンを表す特徴量としてW1〜Wpが抽出されたとすると、H−01(W1〜Wp)が識別対象者を表す特徴量群としてRAM14に一時的に保存される。
【0088】
抽出された特徴量群が適正なものであれば、すなわち、識別を行なうのに十分な数の特徴量を抽出することができていれば(S504)、抽出された当該特徴量群についての照合が行なわれる(S505)。なお、S504の処理はS104と同様であるので説明を省略する。
【0089】
照合処理(S505)では、識別対象者の特徴量群に含まれる各特徴量について、登録動作において登録されたリスト(図11参照)に類似の特徴量が含まれているか否かが判定される。そして、類似の特徴量が含まれていた場合は、その特徴量に設定されている重み(図11参照)が、識別対象者のスコアとして加算される。このスコアは、識別対象者の静脈パターンと、静脈識別装置1に登録されたユーザーのうちのいずれかの静脈パターンとが類似しているほど高い値となる。
【0090】
照合処理の具体的処理方法については後で説明する。
【0091】
そして、照合処理の結果として得られた識別対象者のスコアと所定の閾値とが比較される(S506)。上述のように、スコアが高いほど、識別対象者の静脈パターンと、登録ユーザーの静脈パターンとの類似度が高いので、閾値の値を適当に設定することにより、個人の識別を精度良く行なうことができる。なお、本実施形態において、ユーザーの静脈パターンを撮像した画像から抽出される特徴量の数が多いほど、閾値の値が大きくなるようにしてもよい。例えば、(閾値)=(定数)×(ユーザーの特徴量数)とする。ユーザーの特徴量が多く抽出されるほど、該ユーザーの特徴量と識別対象者の特徴量とが類似する確率が高くなる。したがって、識別対象者のスコアも高く算出されやすくなるため、抽出された特徴量の数に応じて閾値を設定することで、より高精度な識別を行なうことが可能になる。
【0092】
演算部10は、識別対象者のスコアが所定の閾値よりも大きい場合(S506がYes)には、識別対象者と登録対象者とが一致すると判定する(S507)。一方、識別対象者のスコアが所定の閾値以下である場合(S506がNo)には、識別対象者と登録対象者とが一致しないと判定する(S508)。
【0093】
判定の結果は制御対象50に送信され(S509)、その結果に従った制御がなされる。例えば、図2Aのように制御対象50がドアの電子錠である場合には、識別対象者と登録対象者とが一致すると判定されれば開錠され、一致しないと判定されれば開錠されない。
【0094】
<照合処理(S505)の詳細>
照合処理(S505)の処理内容の詳細について説明する。図13に、照合処理のフローを示す。照合処理は、演算部10によってS551〜S555の各処理を実行することにより行なわれる。なお、以下では、特徴量抽出処理(S503)において、識別対象者の特徴量群としてH−01(W1〜Wp)が抽出されているものとして説明を行なう。
【0095】
はじめに、識別対象者の特徴量群に含まれるp個の特徴量(W1〜Wp)について、j番目(j=1,2,3…)の特徴量Wjが選択される(S551)。例えば、照合処理の開始時点では、まずW1が選択される。
【0096】
次に、前述の登録動作において登録されたリスト(図11参照)の中に、Wjと類似する特徴量があるか否かについて判断される(S552)。ここで、「類似」の判断は、前述のS154の処理と同様である。すなわち、リストに設定された或る特徴量とWjとの2つの特徴量ベクトル間におけるユークリッド距離を算出し、算出されたユークリッド距離があらかじめ設定される所定の閾値よりも小さい場合に「類似」と判断される(S552がYes)。
【0097】
選択されたWjについて、類似する特徴量がリスト上に登録されていた場合(S552がYes)は、その特徴量について設定された重みの値がWjのスコアとして加算される(S553)。例えば、j番目に選択された特徴量Wjが、図11のリストにおける3番目の特徴量(番号3の特徴量ベクトル)と類似すると判断された場合は、当該特徴量について設定された重みの値「9」がWjのスコアとして加算される。
【0098】
一方、選択されたWjについて、類似する特徴量がリスト上に見つからなかった場合(S552がNo)は、Wjのスコアは変更されない。例えば、特徴量Wjと類似する特徴量が図11のリストに無いと判断された場合は、Wjのスコアとして加算される重みの値は「0」となる。
【0099】
そして、次の特徴量(j+1番目の特徴量Wj+1)が存在する場合は(S554がNo)、該特徴量Wj+1について上述の各処理(S551〜S553)が繰り返される(S554)。次の特徴量がない場合(S554がYes)は、Wjについて加算されたスコアの合計が特徴量群H−01(W1〜Wp)のスコアとして算出され、出力される(S555)。この算出された識別対象者のスコアを用いて、識別対象者がユーザー(登録者)であるか否かが判断される。
【0100】
<まとめ>
本実施形態では、登録動作において、ユーザーの静脈パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、当該静脈パターンを特徴付ける特徴量をそれぞれ抽出する。そして、複数の画像のうちの或る画像から抽出された特徴量と、その画像とは異なる画像から抽出された特徴量とが類似するときは、該特徴量の重みを増加して、静脈識別装置1の登録部に登録しておく。
【0101】
また、識別動作において、識別対象者の静脈パターンを1回撮像して得られる画像から、当該静脈パターンを特徴付ける特徴量を抽出する。そして、登録動作において登録された特徴量と、識別対象者の特徴量とを照合することで識別対象者がユーザー(登録者)であるか否かを識別する。
【0102】
この方法によると、ノイズに起因すると考えられる特徴量は、複数の画像中で出現頻度が低くなるので、重みの値が低く設定される。逆に、静脈パターンを特徴付ける特徴量は、複数の画像中で出現頻度が高くなるので、重みの値が高く設定される。これにより、識別時においてノイズに起因する特徴量の寄与分は相対的に小さくなり、識別に有効な特徴量の寄与分は大きくなる。
【0103】
したがって、撮像した画像を用いて個人の識別を行なう識別装置を用いて、精度の高い識別を行なうことが可能となる。
【0104】
===その他の実施形態===
一実施形態としての静脈識別装置を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0105】
<生体識別装置について>
上述の実施形態において、生体識別装置の例として静脈パターンを用いて識別を行なう静脈識別装置1を挙げて説明しているが、この限りではなく、静脈パターン以外の人間の生体パターンを捉えて識別を行なう装置であってもよい。例えば、指の指紋や眼球の虹彩や顔等についての画像を用いて個人の識別を行なうことも可能である。
【0106】
<SIFT特徴量について>
上述の実施形態において、特徴点の抽出及び特徴量の抽出を行なう際の手法としてSIFT特徴量を用いた例について説明しているが、この限りではない。例えば、SURF(Speeded Up Robust Features)、GLOH(Gradient Location and Orientation Histogram)等の手法を用いることとしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 静脈識別装置、
10 演算部、12 CPU、14 RAM、16 EEPROM、
20 センサー部、
30 光源部、
40 トリガセンサー、
50 制御対象
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体識別装置、及び、生体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋や静脈パターン等の生体的特徴をとらえて個人の認証を行なう生体認証システムが知られている。例えば、指を撮像することで得られる指静脈画像に基づいて認証を行うシステムとして生体認証装置等が開発されている。このような生体認証装置を用いて個人の認証を行なう際には、認証の精度を高くするため、できる限りノイズの影響を除去する必要がある。例えば、指に光を照射して撮影された指静脈画像から、光を照射せずに撮影したノイズ画像を減算することで、外光によるノイズを除去して認証を行なう方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法によれば、ノイズの少ない画像を用いることよって、概ね認証精度を高くすることができる。しかし、この方法では、ノイズ画像と静脈画像の2回の撮影の間で、同一の場所に同一のノイズが発生していなければ当該ノイズを除去することはできない。つまり、撮影するたびにノイズの発生する場所が異なるようなランダム性の高いノイズについては除去することができない。そのため、撮像時において指の位置や角度がずれる等、撮像条件によってはノイズの影響を十分に排除することができず、認証の精度が悪くなる場合がある。
ここで、認証とは、登録された画像等と認証時に得られた画像等を照合することによって、認証(識別)対象者が登録者であるか否かを識別し、識別結果に基づいて、例えば電子錠等の制御対象を制御することである。したがって、認証の精度は識別の精度に依存するので、認証においては、登録時の画像と認証時の画像とで撮影された指の位置や姿勢が異なっていても高精度に識別できるようにすることが望ましい。
【0005】
本発明では、撮像した画像を用いて個人の識別を行なう生体識別装置において、精度の高い識別を行なうことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、を行なう、生体識別装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態における静脈識別装置1のブロック図である。
【図2】図2A及び図2Bは、静脈識別装置1をドアの開錠制御に用いた場合の例を示す図である。
【図3】登録動作のフローを表す図である。
【図4】特徴量抽出処理のフローを表す図である。
【図5】特徴点の一例を表す図である。
【図6】得られた輝度勾配の一例を表す図である。
【図7】輝度勾配のヒストグラムの一例を表す図である。
【図8】基準方向に座標軸を合わせたときの輝度勾配の一例を表す図である。
【図9】静脈識別で行なわれる特徴量の抽出を模式的に説明する図である。
【図10】特徴量の重み付けを行なう際のフローを表す図である。
【図11】重み付けがされた後の特徴量のリストの一例を表す図である。
【図12】識別動作のフローを表す図である。
【図13】照合処理のフローを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、を行なう、生体識別装置。
【0011】
このような生体識別装置によれば、登録動作において、演算部は、ユーザーの生体パターンを撮像部で複数回撮像して得られる複数の画像から、ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出する。そして、複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録部に登録する。特徴量は生体パターンを特徴付けるので、出現頻度が高い特徴量は、識別対象者がユーザーであれば後述する識別動作においても出現する可能性が高い、ユーザーを識別するために重要な特徴量である。そこで、出現頻度が高い特徴量ほど大きく重み付けをするように、特徴量と重みを対応付けて登録部に登録することとしている。
【0012】
一方、識別動作においては、識別対象者の特徴量を抽出する。そして、抽出した識別対象者の特徴量と、登録部に登録されているユーザーの特徴量、さらに、登録されているユーザーの特徴量に対応付けられている重みに基づいて、識別対象者が登録されているユーザーか否かの識別を行う。登録されているユーザーの特徴量の重みを考慮して、ユーザーか否かを識別するため、ユーザーを識別するための重要な特徴量が識別対象者の特徴量と照合できた場合には、識別対象者がユーザーであると識別する可能性を高くすることができる。したがって、より精度の高い識別を行なうことができる。
【0013】
かかる生体識別装置であって、前記識別動作において撮像される前記識別対象者の生体パターンよりも、前記登録動作において撮像される前記ユーザーの生体パターンの方が、撮像範囲が大きいことが望ましい。
【0014】
このような生体識別装置によれば、登録動作において、より大きな範囲で撮像された生体パターンの画像から抽出されるユーザーの特徴量の数が、識別動作において抽出される識別対象者の特徴量の数よりも多くなる可能性が高い。つまり、識別を行なう際に用いられる可能性のあるユーザーの特徴量をより多く登録しておくことができるため、照合データの母体が大きくなる。したがって、識別対象者の生体パターンから抽出される特徴量と登録されている特徴量との照合が行ないやすくなり、より精度の高い識別を行なうことができる。
【0015】
かかる生体識別装置であって、前記登録部は、前記ユーザーの特徴量を複数登録し、前記演算部は、前記識別動作において、前記識別対象者のスコアを算出し、前記識別動作において抽出された前記識別対象者の特徴量が、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量のうちのいずれかと類似する場合には、当該ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに応じて前記識別対象者のスコアを増加させ、前記識別対象者のスコアが所定の閾値よりも大きい場合に、前記識別対象者が前記ユーザーであると判断することが望ましい。
【0016】
このような生体識別装置によれば、抽出した識別対象者の特徴量と、登録部に登録されているユーザーの特徴量、さらに、登録されているユーザーの特徴量に対応付けられている重みに基づいて、識別対象者のスコアが算出される。そして、算出されたスコアが所定の基準値(閾値)よりも大きければ、識別対象者がユーザーであると識別される。スコアの算出においては、識別対象者の特徴量とユーザーの特徴量とで類似する特徴量の数が多いほど、また、類似度が高いほどスコアが加算されやすくなる。つまり、登録されているユーザーの特徴量と識別対象者の特徴量とが類似しているほど、識別対象者がユーザーであると判断される可能性が高くなる。したがって、より精度の高い識別を行なうことができる。
【0017】
かかる生体識別装置であって、前記演算部は、前記登録動作において、前記複数の画像から抽出された前記ユーザーの特徴量が互いに類似すると判断された場合に前記ユーザーの特徴量の重みを増加させ、前記類似すると判断された累積の頻度が多い特徴量ほど、前記重みを大きく増加させる、ことが望ましい。
【0018】
このような生体識別装置によれば、ユーザーの特徴量の重み付けを行なう際に、複数枚の画像から抽出されるユーザーの特徴量のうち、類似すると判断される特徴量の出現頻度が高い特徴量ほど重みが増加されやすくなる。出現頻度が高い特徴量は、データとしての信頼性が高いことを示す。すなわち、出現頻度が高い特徴量ほど重要度の高いデータとして重みが大きく登録され、出現頻度が低い特徴量と比較して識別を行なう際に与える相対的な影響が大きくなる。
これにより、識別の精度をより向上させることができる。
【0019】
かかる生体識別装置であって、前記特徴量が、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)を用いて抽出されることが望ましい。
【0020】
このような生体識別装置によれば、SIFTを用いて特徴量を抽出することにより、撮像時の位置変化、回転等に依存しにくい生体パターンの特徴量を抽出することができるようになる。したがって、生体パターンの撮像を行なう際に、撮像を行なうセンサーと被撮像対象(ユーザーまたは識別対象者の生体パターン)との位置関係が固定されていない場合であっても、生体パターンを特徴付ける特徴量を正確に抽出することが可能となり、撮像時の条件によらずに高精度な識別を行うことができる。
【0021】
また、ユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの生体パターンを特徴付ける特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記特徴量に対応付けて登録することと、識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、前記識別対象者の生体パターンを特徴付ける特徴量を抽出し、前記識別対象者の特徴量、並びに、登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別することと、を有する生体識別方法が明らかとなる。
【0022】
また、生体パターンを撮像する撮像部と、前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作を行なう生体識別装置が明らかとなる。
【0023】
このような生体識別装置によれば、演算部は、ユーザーの生体パターンを撮像部で複数回撮像して得られる複数の画像から、ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出する。そして、複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録部に登録する。特徴量は生体パターンを特徴付けるので、出現頻度が高い特徴量は、ユーザーを識別するために重要な特徴量である。そこで、出現頻度が高い特徴量ほど大きく重み付けをするように、特徴量と重みを対応付けて登録部に登録することとしている。
【0024】
また、ユーザーの生体パターンを複数回撮像することと、撮像によって得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出することと、前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録することと、を有する生体識別方法が明らかとなる。
【0025】
===実施形態===
発明を実施するための生体識別装置の形態として、静脈識別装置1を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態における静脈識別装置1のブロック図である。静脈識別装置1は、演算部10とセンサー部20と光源部30とトリガセンサー40と制御対象50とを備える。センサー部20はインターフェース28を介して演算部10に接続されており、また、光源部30はインターフェース38を介して演算部10に接続されている。また、静脈識別装置1は、インターフェース48とインターフェース58を介してトリガセンサー40と制御対象50に接続されている。
【0026】
演算部10は、演算を行うCPU(Central Processing Unit)12と記憶装置(登録部)としてのRAM(Random Access Memory)14及びEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)16を含む。CPU12は、EEPROM16に記憶されたプログラムを実行することにより静脈の識別を行う。RAM14には、静脈の識別を行う際に必要な特徴量が演算結果として登録される。そして、演算部10は、後述する登録動作と、識別動作の2つの処理を行う。
【0027】
センサー部20は、指の静脈を撮像するためのセンサーである。センサー部20は、接近した指を撮像するが、その際に露光時間を調整することができるようになっている。また、静脈識別装置1は、センサー部20として登録動作用と識別動作用との2種類のセンサーを備えていてもよい。
【0028】
光源部30は、撮像する指に所定波長の光を照らすための装置である。ここでは、近赤外線のLED(Light Emitting Diode)光源を含み、700nm〜900nmの波長帯を多く含む光を照射する。この波長帯は「生体の窓」とも呼ばれ、血液のヘモグロビンと水との両方の吸収が低くなり、生体の透過率が高くなる波長帯である。本実施形態では、指に対して700nm〜900nmの波長帯の近赤外線を照射しながら撮像を行なうことで、血液が多く存在する部分、すなわち血管の部分が影となって撮影される。したがって、当該指の内部にある静脈の形状を精度良く表わした画像を得ることが可能になる。
【0029】
トリガセンサー40は、指の接近を感知し、撮像処理を開始するためのトリガーを演算部10に送る装置である。トリガセンサー40には、例えば、静電容量センサーが用いられる。このトリガセンサー40により、後述するドアなどに静脈識別装置を設けた場合において、指をドアに近づけただけでセンサー部20が指の撮像処理を開始することができるようになる。
【0030】
制御対象50は、静脈識別装置1による識別結果に応じて制御される対象物である。例えば、制御対象50がコンピューターであるときには、静脈識別装置1による識別結果に応じて識別対象者に対してコンピューターのアクセス権を付与する。また、制御対象50がドアの電子錠である場合には、静脈識別装置1による識別結果に応じてドアの電子錠の開錠を行う。以下、制御対象50がドアの電子錠である場合について説明を行う。
【0031】
図2A及び図2Bに、静脈識別装置1をドアの開錠制御に用いた場合の例を示す。図に示されるように、静脈識別装置1はドアのドアノブ部に設けられる。静脈識別装置1の前面にはパネル状のセンサー部20が設けられ(図2Bの斜線部)、センサー部20の両側面には光源部30が設けられる(図2Bの横線部)。センサー部20は、識別対象者がドアノブ部を握った際に、ちょうど撮像対象の指が置かれるような位置に配置される。
【0032】
識別対象者がドアを開閉するために当該ドアノブ部を握ると、トリガセンサー40が指の接近を感知して当該指の静脈パターンの撮像が開始される。図2Bに示されるように、撮像時には、センサー部20の上に位置する識別対象者の指に対して光源部30から近赤外線を照射することにより、当該指の撮像対象部分について静脈パターン画像が取得される。そして、取得された静脈パターンの画像に基づいて識別対象者がユーザー(登録者)であるか否かが判断される。ユーザーであると判断される場合には、制御対象50である電子錠が開錠され、ユーザーでないと判断される場合には、電子錠が開錠されない。この識別動作の詳細については後で説明する。
【0033】
なお、識別対象者がドアの開閉を行なう場合、その都度ドアノブの握り方が変わるであろうことから、毎回センサー部20の同じ位置に同じ角度で指が置かれるとは限らない。すなわち、識別の対象として撮像される静脈パターンの位置や撮像方向はその都度変化するものと考えられる。しかし、後述するように、本実施形態では撮像時の位置や方向によらず、高い精度で識別を行なえるようになっている。
【0034】
<静脈識別装置1の基本動作>
静脈識別装置1では、あらかじめユーザー毎に静脈パターンを登録しておく「登録動作」と、その登録された静脈パターンデータに基づいて個人の識別を行なう「識別動作」とが行われる。
【0035】
生体パターンに基づく個人の識別(本実施形態では静脈パターンによる識別)を行なうためには、判断基準が必要となる。そのため、まず「登録動作」において、ユーザー毎に静脈パターンが静脈識別装置1の登録部(RAM14)に登録される(登録モードとも呼ぶ)。登録された静脈パターンは、「識別動作」において、識別対象者の静脈パターンと照合され、両パターンが一致すると判断された場合に、ユーザーと識別対象者とが同一人物であると判断される(識別モードとも呼ぶ)。
【0036】
本実施形態の静脈識別装置1では、通常は識別モードを行なう設定になっており、識別モードと登録モードとの切り替えは、ユーザーまたは識別対象者がモードを選択することによって行なわれる。
以下、各動作についてそれぞれ説明する。
【0037】
===登録動作について===
登録動作は、登録対象となるユーザーの指の静脈パターンについて、その特徴を表す「特徴量」を抽出し、ユーザー毎に登録する処理である。本実施形態における特徴量は、位置不変、及び、回転不変なものが採用される。これは、同じ人物の静脈パターンに対しては、撮像範囲が変化(位置が変化した場合)した場合でも、撮像方向が回転(回転変化)した場合でも、パターンに対して同じ位置が特定され(位置不変)、その位置周辺の局所領域の特徴を数値化した特徴量と同じ値で得られる(回転不変)という特性を有するものである。
【0038】
<登録動作の流れ>
図3に、登録動作のフローを示す。登録動作は、S101〜S106の各処理を実行することによって行なわれる。
【0039】
登録モードにおいてトリガセンサー40が指の接近を感知すると登録動作が開始され、初めに、撮像パラメータの調整が行なわれる(S101)。センサー部20から入力されてくる指(静脈)の画像をもとに、演算部10によって撮像パラメータが調整され、最も良好な画質で撮像可能なパラメータが設定される。
【0040】
パラメータの調整後、登録対象となるユーザーの静脈画像の撮像が行われる(S102)。指の静脈パターン画像を撮像するにあたり、光源部30から700nm〜900nmの波長帯を多く含む光が照射される。そして、指の静脈が撮像される。静脈画像の撮像は、静脈識別装置1のセンサー部20を用いて行うこともできるし、他の撮像可能な装置を用いて行うこともできる。
【0041】
本実施形態の登録動作では、ユーザーの静脈パターンを撮像する際に、撮像対象となる指について複数回の撮像が行なわれ、複数枚の画像が取得される。1回の撮像では、偶然にノイズが含まれた場合に、当該ノイズをノイズとして認識できない場合がある。この場合、識別時の基準となるデータが不正確なものとなり識別の精度が低下するおそれがある。そこで、複数枚の静脈画像を取得して、それぞれの画像から抽出される特徴量に重み付けをすることにより、重要な特徴量と重要ではない特徴量とを設定しておく。重要な特徴量の重みを大きくし、重要でない特徴量の重みを小さくすることで、偶然に含まれるようなノイズの影響を小さくする。詳細は後述の(S105:特徴量の重み付け)で説明する。なお、複数回の撮像は連続的に行われてもよいし、間隔を置いて行われてもよい。
【0042】
また、撮像の際には、上述の特徴量がなるべく多く含まれるように、指の撮像範囲を大きくする。さらに、識別に用いる可能性のある領域は全て撮像しておくべきであるので、後述する識別動作における撮像範囲よりも大きな撮像範囲とすることが望ましい。例えば、全ての指について全体を撮像することとしてもよいし、手のひらの領域も撮像することとしてもよい。また、左右両方の指について撮像することとしてもよい。本実施形態の登録動作では、後述する識別動作で撮像される領域よりも広い領域が撮像されることになる。そのために、登録動作において撮像を行なうセンサーと識別動作において撮像を行なうセンサーとを別個に設けておいてもよい。また、このような広い領域を撮像するにあたり、撮像する範囲全体を一括で撮像を行う必要はなく、分割して撮像することとしてもよい。
【0043】
次に、撮像された静脈画像から特徴量の抽出を行う(S103)。特徴量の抽出はS102で取得された複数の静脈画像のそれぞれについて行なわれる。そして、1つの画像について複数の特徴量が抽出される。特徴量抽出処理の詳細は後述する。
【0044】
各画像について特徴量の抽出が行なわれた後、その抽出された特徴量が適正なものであるか否かが判断される(S104)。本実施形態では、該特徴量を基準として静脈パターンについての識別が行なわれるので、識別動作において正確な識別を行なうためには十分な量(数)の特徴量が抽出されている必要がある。言い換えると、十分な数の特徴量が抽出されていなければ、識別の基準として採用することは適切でない。そこで、演算部10は、抽出された特徴量の数が所定数以上あるか否かを判断し、所定数未満である場合(S104がNo)は特徴量が不適正なものとしてS101に戻ってパラメータの調整からやり直して撮像を行なう。
【0045】
抽出された特徴量が適正なものであれば(S104がYes)、その特徴量の重み付けが行なわれる(S105)。本実施形態では、S102で複数の静脈画像が撮像されるが、その全ての画像において、同一と見なせる特徴量が抽出されるわけではない。例えば、ある画像で抽出された特徴量が、他の全ての画像において抽出されない場合、その特徴量はノイズに起因して抽出されてしまった特徴量である可能性がある。このようなデータはユーザー固有の静脈パターンによらずに発生するため、識別を行う際のデータとして有効とはいえない。一方で、全ての画像で類似の特徴量が抽出された場合、その特徴量はそのユーザーの静脈パターンを特徴付けるデータとして有効である。
【0046】
そこで、複数の画像中での出現頻度にしたがって、特徴量に重み付けを行う。つまり、特徴量毎にデータとしての重要度を設定し、上述のようなノイズに起因する特徴量が複数の特徴量全体に与える影響を相対的に小さく抑え、静脈パターンを表す特徴量の影響を大きくする。特徴量の重み付けの具体的な処理内容については後で説明する。
【0047】
最後に、S103で抽出された特徴量と、S105で該特徴量について重み付けされた値とがリスト化され、RAM14に登録される(S106)。
以上の処理により、登録動作が完了する。
【0048】
<特徴量の抽出(S103)の詳細>
特徴量抽出処理(S103)の処理内容の詳細について説明する。図4に、特徴量抽出処理(S103)のフローを示す。特徴量の抽出はS131〜S133の各処理を順次実行することにより行なわれる。
【0049】
まず、撮像した静脈画像の画像補正が行われる(S131)。ここで画像補正が行われるのは、主に次の3つの理由からである。(1)指の透過率には個人差があり、取得した画像の全体の輝度がばらつくことがある。(2)指の透過率の個人差により明暗分布が生じてしまうことがある。例えば、指の関節部は明るく画像が取得され、関節と関節との間は暗く画像が取得される。(3)静脈と表皮との間の生体組織により、光が拡散し、撮像した静脈パターンがぼやける場合がある。
【0050】
これらの課題を解決するために、フィルタ処理を行う。上記(1)の課題を解決するためには、正規化が必要であり、そのために平均値(直流成分)を除去する必要がある。また、上記(2)の課題を解決するためには、均一化が必要であり、そのために、緩やかな変動を除去する必要がある。よって、これら(1)と(2)の課題を解決するために、静脈画像に対してハイパスフィルタを適用する。
【0051】
また、上記(3)の課題を解決するためには、シャープネス処理が必要であるから、静脈画像に対してアンシャープマスクを適用し高周波成分を強調する。すなわち、これらハイパスフィルタとアンシャープマスクを統合したフィルタを作成し適用する。具体的には、2つのフィルタの周波数応答(MTF: Modulation Transfer Function)を周波数空間で積算し、これを逆フーリエ変換したフィルタを適用することになる。
【0052】
なお、撮像された画像に輝度のばらつき等がほとんど無い場合には、当該補正処理は必ずしも行われなくてもよい。
【0053】
次に、特徴点の抽出(S132)が行われる。ここで、「特徴点」とは、撮像された複数の画像の間で、静脈画像が回転したり位置が移動したりする場合でも、静脈パターンの決まった位置に出現する点のことを言う。すなわち、位置・角度がシフトしても静脈パターンに対する相対位置が変化しない点である。
【0054】
本実施形態では、前述のようにセンサーと指との位置関係は固定ではないことから、静脈パターンの特徴量を算出するために、その中心位置(基準となる位置)を求めたいという要求がある。この中心位置となる点が特徴点である。このような要求を満たす手法の一例として、本実施形態における特徴点抽出及び特徴量抽出では、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)が採用される。以下に、SIFTを用いて特徴点抽出及び特徴量抽出を行なう方法について説明する。
【0055】
特徴点の抽出(S132)の処理においては、まず、ノイズを取り除き、安定した特徴点を得るために、静脈画像にガウスフィルタを適用して平均化処理を行う。そして、ある周波数以上の成分をカットする処理を行う。また、ガウスフィルタを適用した画像の二次微分を算出し、その極値を特徴点候補とする。さらに、ノイズに由来する特徴点を取り除くために、極値の絶対値が所定の閾値以上の点を特徴点として採用する。上記において、特徴点候補を得るために二次微分を算出しているのは、均一な領域ではなく、変化があるエッジ部を画像から抽出するためである。また、撮影において斜めから光源照射がなされたときにおいて、一定の傾きで変化する領域が画像に生ずることがあるが、このような領域を特徴点候補としないためである。二次微分の算出は、具体的には、ガウス導関数の畳み込み積分により行われる。
【0056】
図5は、特徴点の一例を示す図である。図5には、撮像された静脈画像を部分的に拡大した図(図の斜線部)と、その静脈の分岐点において特定された特徴点が示されている。特徴点は、輝度勾配の二次微分の極値の場所が選択されるので、輝度の変化量が大きな箇所が選択されることになる。また、二次微分の極値の場所は、一次微分の変化量が極大となる場所であるから、周囲に比べて曲率(すなわり曲がり方)が大きい点が選択される。よって、静脈の分岐点や血管内部も特徴点として選択されることになる。すなわち、静脈とそうでない場所とを分ける場所が特徴点として選択されることになる。
【0057】
次に、特徴量の抽出が行われる(S133)。特徴量の抽出は、上記の処理において得られたそれぞれの特徴点に対して以下の処理を行うことにより行われる。まず、特徴点周辺の輝度勾配を算出する。
【0058】
図6は、得られた輝度勾配の一例を示す図である。図6には、特徴点を中心とした複数のマス目(本実施形態では、8×8のマス目)が示されている。そして、各マス目における輝度勾配がベクトル量として示されている。
【0059】
次に、図6のように得られた輝度勾配についてヒストグラムを作成する。そして、最も頻度の高い方向を特徴量の基準方向とする。
【0060】
図7は、輝度勾配のヒストグラムの一例を示す図である。図7の横軸は、全方向(360度)を所定数の方向に分割した場合の各方向を表し(図7の場合は36方向に分割した場合を表す)、縦軸は各方向における輝度の大きさhを表す。すなわち、図7では、輝度勾配について36方向のヒストグラムが示されている。そして、「peak」と記載した方向の値が最も高くなっている。よって、この方向が特徴量の基準方向となる。
【0061】
次に、特徴点を中心として、前述の処理で選択された基準方向に合わせて、再度8×8のマス目を作成する。そして、この8×8のマス目を4×4のマス目に対応させ、この4×4のマス目毎の輝度勾配について、マス目ごとに8方向のベクトルに分解する。
【0062】
図8は、基準方向に座標軸を合わせたときの輝度勾配の一例を示す図である。図8の左図においては、太矢印の方向が前述の基準方向であり、基準方向に方向を合わせた8×8のマス目を再作成して、基準方向を基準として輝度勾配を求め直したものである。また、図8の右図は、この8×8のマス目を4×4のマス目に対応させ、マス目毎に輝度勾配を8方向のベクトルに分解したものである。
【0063】
ここでは、8方向のベクトルに分解しているので、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、及び、315°のそれぞれの方向について、ベクトルのスカラー量が得られる。また、4×4のマス目のそれぞれについて、これらのスカラー量が得られるため、4×4×8=128次元のスカラー量を得ることができる。本実施形態において、特徴点における特徴量は、これら複数次元のスカラー量である。
【0064】
図9に、本実施形態の静脈パターンに基づく識別で行なわれる特徴量の抽出を模式的に説明する図を示す。図9では、5回の撮像データから特徴量を抽出するものとする。
【0065】
まず、5回の撮像により、I−01〜I−05の5種類の静脈パターンの画像が得られる。そして、各画像についてS132の処理が行われ、特徴点が抽出される。図9の各静脈画像中に複数表示されている白丸が、抽出された「特徴点」である。これらの特徴点についてそれぞれS133の処理が行われ、特徴量が抽出される。例えば、画像I−01においては、U1〜Unのn個の特徴量が抽出され、画像I−02においては、V1〜Vmのm個の特徴量が抽出される。それぞれの特徴量は上述のような128次元のスカラー量で表される。そして、各画像において抽出される全ての特徴量を特徴量群と定義する。例えば、画像I−01からは、特徴量群G−01(U1〜Un)が求められ、画像I−02からは、特徴量群G−02(V1〜Vm)が求められる。このようにして、I−01〜I−05の5種類の画像について、それぞれG−01〜G−05の5種類の特徴量群が求められる。
【0066】
求められた特徴量群は、登録者のIDとセットにしてRAM14に一時的に保存される。これにより、一人の登録者(ユーザー)について複数の特徴量群のデータが得られる。
【0067】
<特徴量の重み付け(S105)の詳細>
次に、抽出された特徴量に重み付けを行なう処理の具体的内容について説明する。図10に、特徴量の重み付けを行なう際のフローを示す。特徴量の重み付けは、演算部10によってS151〜S158の各処理を実行することにより行なわれる。
【0068】
演算部10は、まず、複数の特徴量群のうち1番目の特徴量群に含まれる全ての特徴量をリスト化する(S151)。例えば、図9に示した例では、1番目の特徴量群G−01に含まれる特徴量(U1,U2,…,Un)からなるリストが作成される。なお、リスト作成段階では、U1〜Unのいずれの特徴量についても重みが1と設定される。
【0069】
リストが作成された後、次の特徴量群が選択され(S152)、当該選択された特徴量群の中からi番目(i=1,2,3…)の特徴量が選択される(S153)。例えば、上述の例の場合、2番目の特徴量群としてG−02が選択され、G−02に含まれる特徴量(V1,V2,…,Vm)の中からi番目の特徴量であるViが選択される。したがって、初めは特徴量群G−02の中から特徴量V1が選択される。
【0070】
次に、当該選択された特徴量が、S151でリスト化された特徴量のいずれかと類似するか否かが判断される(S154)。ここで、特徴量の「類似」は、例えば、比較する2つの特徴量ベクトル間におけるユークリッド距離を算出し、算出されたユークリッド距離とあらかじめ設定してある所定の閾値とを比較することによって判断することができる。これらの距離の値が所定の閾値よりも小さいことは、両者のベクトルが非常に近いことを示すので2つの特徴量は類似度が高いと判定することができる。
【0071】
例えば、S153で選択されたG−02の特徴量V1と、S151で登録されたリストに示される特徴量(U1〜Un)との間で、それぞれユークリッド距離が算出される。その中でV1とU1との間のユークリッド距離が所定の閾値よりも小さい場合、V1とU1とは類似する特徴量であると判断される。
【0072】
なお、ここでは、ユークリッド距離に基づいて類似判断を行なうこととしたが、市街地距離やマハラノビスの距離に基づいて類似判断を行なうこととしてもよい。
【0073】
類似判断の結果、両者が類似すると判断された場合(S154がYes)、演算部10は当該リストにおける特徴量の重みを増加させる(S155)。一方、両者が非類似である(類似しない)と判断された場合、すなわち算出された距離が所定の閾値以上である場合(S154がNo)、演算部10はS153において選択された特徴量を、新たにリストに追加する(S156)。
【0074】
例えば、上述の例においてG−02の特徴量V1とリスト上の特徴量U1とが類似すると判断された場合、U1について重みを1増加させる。一方、G−02の特徴量V1がリスト上の特徴量(U1〜Un)のいずれとも類似しないと判断された場合、特徴量V1が新たにリストに追加される。
【0075】
なお、S155で重みを増加させる場合に、2つの特徴量間のユークリッド距離に応じて、増加率を変更するようにしてもよい。当該ユークリッド距離が小さいということは、両特徴量ベクトル間の類似度が高いことを示している。これは、複数の画像においてきわめて類似するデータ(特徴量)が2以上存在することを意味するので、その2つの特徴量は、静脈パターンを規定する特徴量として重要度が高いデータであると考えられる。そこで、そのような重要度の高いデータについては、重みを大きくしておくことで、識別動作においてより高精度な識別を行うことが可能となる。
【0076】
その後、S152で選択された特徴量群に含まれる特徴量が順番に選択され、それぞれリストに登録されている特徴量と比較される。第i番目の特徴量ViについてS153〜S156の各処理が行なわれた後、比較するべき次の特徴量(i+1番目の特徴量Vi+1)が存在する場合は(S157がNo)、該特徴量Vi+1について上述したS153〜S156の各処理が繰り返される。一方、次の特徴量が存在しない場合は(S157がYes)、その特徴量群についての処理を終了し、S158において次の特徴量群の有無が判断される。
【0077】
次の特徴量群が存在する場合は(S158がNo)、次の特徴量群について上述したS152〜S157の各処理が繰り返される。例えば、図9でG−02に含まれる全ての特徴量についてS157までの処理が終了した場合、次の特徴量群G−03が存在するので、G−03に含まれる各特徴量について、上述と同様の処理が繰り返される。一方、次の特徴量群が存在しない場合、すなわち、特徴量群G−05までの処理が終了した場合は(S158がYes)、特徴量の重み付け処理(S105)を終了する。
【0078】
重み付け処理(S105)後の特徴量に関するデータは、識別の基準としてリスト化され、登録部(RAM14)に登録される。図11は、重み付けがされた後の特徴量のリストの一例である。当該リストにおいて、番号は特徴点を識別するために便宜的に付された番号を表す。図11では、合計でN個の特徴点がリストに追加されたことを示している。また、特徴量ベクトルは、その特徴量毎の128次元のベクトルを表している。なお、前述のS154の類似判断の結果、リストに追加される特徴量(図11においてはN個の特徴量)は全て非類似なベクトルとなっている。
【0079】
そして、1〜Nの特徴量について、それぞれ重みの大きさが設定されている。重みが大きな特徴量ほど、複数種類の静脈画像において出現頻度が高い(S154において類似すると判断された回数が多い)ことを意味している。すなわち、当該重みが大きいほど、重要なデータであるといえる。逆に、出現頻度が低い特徴量は重要なデータではない可能性が高い。例えば、出現頻度の低い特徴量は、複数回撮像される画像のうちの一回において偶然含まれてしまったノイズが検出されたものであると考えることができる。したがって、そのような出現頻度が低いデータを識別の基準として重要視しないように、重みが低く設定される。
【0080】
また、特徴量の重み付けを行なう際に重みの増加率を変更することによって、そのデータの重要度も変更することができる。例えば、上述のS155においてユーザーの特徴量について重みを増加させる際に、複数枚の画像から抽出されたユーザーの特徴量のうち、類似すると判断される特徴量の出現頻度を演算部10がカウントしておき、出現頻度に応じて重みの増加率を変更する。具体的には、類似する特徴量が出現する頻度に対してユーザーの特徴量の重みを二次関数的に増加させる等、累積の頻度が多い特徴量ほど重みの増加率を大きくするようにしてもよい。これにより、複数枚の画像から抽出されたユーザーの特徴量のうち、互いに類似する特徴量が多いほど重みがより大きくなるので、当該特徴量の重要度をより高くすることができる。
【0081】
===識別動作について===
識別動作は、登録されているユーザー毎の静脈パターンと識別対象者の静脈パターンとを照合して、登録されているいずれかのユーザーとその識別対象者とが同一人物であるか否かを判定する処理である。
【0082】
静脈識別装置1は、通常時の使用場面(ドアに施錠しているとき)においては、識別モードの状態で待機している。この状態において、トリガセンサー40が識別対象者の指が静脈識別装置1へ接近するのを検知すると、以下のような識別動作が開始される。
【0083】
<識別動作の流れ>
図12に、識別動作のフローを示す。識別動作はS501〜S509の各処理を実行することによって行なわれる。
【0084】
初めに、登録動作におけるS101と同様に、撮像パラメータの調整が行なわれる(S501)。すなわち、センサー部から入力されてくる指の静脈の画像をもとに、演算部10によって撮像パラメータが調整され、最も良好な画質で撮像可能なパラメータが設定される。
【0085】
撮像パラメータの調整後、識別対象者指の静脈画像の撮像が行われる(S502)。静脈画像の撮像は、識別対象者がドア(図2参照)を開こうとしてドアノブを握ったタイミングで行なわれる。このとき、光源部30から700nm〜900nmの波長帯を多く含む近赤外線を照射しながらセンサー部20を用いて1回の撮像が行なわれる。
【0086】
また、撮像される指の範囲は、登録動作時よりも狭くすることができる。通常の場合、指の静脈パターンの一部分を撮像しただけでも、個人の識別を行なう際に必要な数の特徴量を抽出することが可能だからである。登録動作において、指全体等の大きな撮像範囲で静脈パターンを撮像し、その指全体分の特徴量が抽出されているため、識別動作においてそのうちの一部(例えば30個)の特徴量を照合するだけで、識別の精度を確保することができる。
【0087】
次に、撮像された識別対象者の静脈画像から特徴量の抽出が行われる(S503)。特徴量の抽出は登録動作時(S103)と同様にして行なうことができ、1つの静脈画像から複数の特徴量が抽出される。例えば、識別対象者の静脈パターンを表す特徴量としてW1〜Wpが抽出されたとすると、H−01(W1〜Wp)が識別対象者を表す特徴量群としてRAM14に一時的に保存される。
【0088】
抽出された特徴量群が適正なものであれば、すなわち、識別を行なうのに十分な数の特徴量を抽出することができていれば(S504)、抽出された当該特徴量群についての照合が行なわれる(S505)。なお、S504の処理はS104と同様であるので説明を省略する。
【0089】
照合処理(S505)では、識別対象者の特徴量群に含まれる各特徴量について、登録動作において登録されたリスト(図11参照)に類似の特徴量が含まれているか否かが判定される。そして、類似の特徴量が含まれていた場合は、その特徴量に設定されている重み(図11参照)が、識別対象者のスコアとして加算される。このスコアは、識別対象者の静脈パターンと、静脈識別装置1に登録されたユーザーのうちのいずれかの静脈パターンとが類似しているほど高い値となる。
【0090】
照合処理の具体的処理方法については後で説明する。
【0091】
そして、照合処理の結果として得られた識別対象者のスコアと所定の閾値とが比較される(S506)。上述のように、スコアが高いほど、識別対象者の静脈パターンと、登録ユーザーの静脈パターンとの類似度が高いので、閾値の値を適当に設定することにより、個人の識別を精度良く行なうことができる。なお、本実施形態において、ユーザーの静脈パターンを撮像した画像から抽出される特徴量の数が多いほど、閾値の値が大きくなるようにしてもよい。例えば、(閾値)=(定数)×(ユーザーの特徴量数)とする。ユーザーの特徴量が多く抽出されるほど、該ユーザーの特徴量と識別対象者の特徴量とが類似する確率が高くなる。したがって、識別対象者のスコアも高く算出されやすくなるため、抽出された特徴量の数に応じて閾値を設定することで、より高精度な識別を行なうことが可能になる。
【0092】
演算部10は、識別対象者のスコアが所定の閾値よりも大きい場合(S506がYes)には、識別対象者と登録対象者とが一致すると判定する(S507)。一方、識別対象者のスコアが所定の閾値以下である場合(S506がNo)には、識別対象者と登録対象者とが一致しないと判定する(S508)。
【0093】
判定の結果は制御対象50に送信され(S509)、その結果に従った制御がなされる。例えば、図2Aのように制御対象50がドアの電子錠である場合には、識別対象者と登録対象者とが一致すると判定されれば開錠され、一致しないと判定されれば開錠されない。
【0094】
<照合処理(S505)の詳細>
照合処理(S505)の処理内容の詳細について説明する。図13に、照合処理のフローを示す。照合処理は、演算部10によってS551〜S555の各処理を実行することにより行なわれる。なお、以下では、特徴量抽出処理(S503)において、識別対象者の特徴量群としてH−01(W1〜Wp)が抽出されているものとして説明を行なう。
【0095】
はじめに、識別対象者の特徴量群に含まれるp個の特徴量(W1〜Wp)について、j番目(j=1,2,3…)の特徴量Wjが選択される(S551)。例えば、照合処理の開始時点では、まずW1が選択される。
【0096】
次に、前述の登録動作において登録されたリスト(図11参照)の中に、Wjと類似する特徴量があるか否かについて判断される(S552)。ここで、「類似」の判断は、前述のS154の処理と同様である。すなわち、リストに設定された或る特徴量とWjとの2つの特徴量ベクトル間におけるユークリッド距離を算出し、算出されたユークリッド距離があらかじめ設定される所定の閾値よりも小さい場合に「類似」と判断される(S552がYes)。
【0097】
選択されたWjについて、類似する特徴量がリスト上に登録されていた場合(S552がYes)は、その特徴量について設定された重みの値がWjのスコアとして加算される(S553)。例えば、j番目に選択された特徴量Wjが、図11のリストにおける3番目の特徴量(番号3の特徴量ベクトル)と類似すると判断された場合は、当該特徴量について設定された重みの値「9」がWjのスコアとして加算される。
【0098】
一方、選択されたWjについて、類似する特徴量がリスト上に見つからなかった場合(S552がNo)は、Wjのスコアは変更されない。例えば、特徴量Wjと類似する特徴量が図11のリストに無いと判断された場合は、Wjのスコアとして加算される重みの値は「0」となる。
【0099】
そして、次の特徴量(j+1番目の特徴量Wj+1)が存在する場合は(S554がNo)、該特徴量Wj+1について上述の各処理(S551〜S553)が繰り返される(S554)。次の特徴量がない場合(S554がYes)は、Wjについて加算されたスコアの合計が特徴量群H−01(W1〜Wp)のスコアとして算出され、出力される(S555)。この算出された識別対象者のスコアを用いて、識別対象者がユーザー(登録者)であるか否かが判断される。
【0100】
<まとめ>
本実施形態では、登録動作において、ユーザーの静脈パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、当該静脈パターンを特徴付ける特徴量をそれぞれ抽出する。そして、複数の画像のうちの或る画像から抽出された特徴量と、その画像とは異なる画像から抽出された特徴量とが類似するときは、該特徴量の重みを増加して、静脈識別装置1の登録部に登録しておく。
【0101】
また、識別動作において、識別対象者の静脈パターンを1回撮像して得られる画像から、当該静脈パターンを特徴付ける特徴量を抽出する。そして、登録動作において登録された特徴量と、識別対象者の特徴量とを照合することで識別対象者がユーザー(登録者)であるか否かを識別する。
【0102】
この方法によると、ノイズに起因すると考えられる特徴量は、複数の画像中で出現頻度が低くなるので、重みの値が低く設定される。逆に、静脈パターンを特徴付ける特徴量は、複数の画像中で出現頻度が高くなるので、重みの値が高く設定される。これにより、識別時においてノイズに起因する特徴量の寄与分は相対的に小さくなり、識別に有効な特徴量の寄与分は大きくなる。
【0103】
したがって、撮像した画像を用いて個人の識別を行なう識別装置を用いて、精度の高い識別を行なうことが可能となる。
【0104】
===その他の実施形態===
一実施形態としての静脈識別装置を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0105】
<生体識別装置について>
上述の実施形態において、生体識別装置の例として静脈パターンを用いて識別を行なう静脈識別装置1を挙げて説明しているが、この限りではなく、静脈パターン以外の人間の生体パターンを捉えて識別を行なう装置であってもよい。例えば、指の指紋や眼球の虹彩や顔等についての画像を用いて個人の識別を行なうことも可能である。
【0106】
<SIFT特徴量について>
上述の実施形態において、特徴点の抽出及び特徴量の抽出を行なう際の手法としてSIFT特徴量を用いた例について説明しているが、この限りではない。例えば、SURF(Speeded Up Robust Features)、GLOH(Gradient Location and Orientation Histogram)等の手法を用いることとしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 静脈識別装置、
10 演算部、12 CPU、14 RAM、16 EEPROM、
20 センサー部、
30 光源部、
40 トリガセンサー、
50 制御対象
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体パターンを撮像する撮像部と、
前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、
前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、
前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、
前記識別対象者の特徴量を抽出し、
前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、
を行なう、
生体識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体識別装置であって、
前記識別動作において撮像される前記識別対象者の生体パターンよりも、前記登録動作において撮像される前記ユーザーの生体パターンの方が、撮像範囲が大きいことを特徴とする生体識別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生体識別装置であって、
前記登録部は、前記ユーザーの特徴量を複数登録し、
前記演算部は、
前記識別動作において、前記識別対象者のスコアを算出し、
前記識別動作において抽出された前記識別対象者の特徴量が、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量のうちのいずれかと類似する場合には、当該ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに応じて前記識別対象者のスコアを増加させ、
前記識別対象者のスコアが所定の閾値よりも大きい場合に、前記識別対象者が前記ユーザーであると判断することを特徴とする生体識別装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の生体識別装置であって、
前記演算部は、
前記登録動作において、前記複数の画像から抽出された前記ユーザーの特徴量が互いに類似すると判断された場合に前記ユーザーの特徴量の重みを増加させ、
前記類似すると判断された累積の頻度が多い特徴量ほど、前記重みを大きく増加させる、ことを特徴とする生体識別装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の生体識別装置であって、
前記特徴量が、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)を用いて抽出されることを特徴とする生体識別装置。
【請求項6】
ユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、
前記ユーザーの生体パターンを特徴付ける特徴量をそれぞれ抽出し、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記特徴量に対応付けて登録することと、
識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、
前記識別対象者の生体パターンを特徴付ける特徴量を抽出し、
前記識別対象者の特徴量、並びに、登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別することと、
を有する生体識別方法。
【請求項7】
生体パターンを撮像する撮像部と、
前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、
前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作を行なう生体識別装置。
【請求項8】
ユーザーの生体パターンを複数回撮像することと、
撮像によって得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出することと、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録することと、
を有する生体識別方法。
【請求項1】
生体パターンを撮像する撮像部と、
前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、
前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作と、
前記撮像部を用いて識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、
前記識別対象者の特徴量を抽出し、
前記識別対象者の特徴量、並びに、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別する識別動作と、
を行なう、
生体識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体識別装置であって、
前記識別動作において撮像される前記識別対象者の生体パターンよりも、前記登録動作において撮像される前記ユーザーの生体パターンの方が、撮像範囲が大きいことを特徴とする生体識別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生体識別装置であって、
前記登録部は、前記ユーザーの特徴量を複数登録し、
前記演算部は、
前記識別動作において、前記識別対象者のスコアを算出し、
前記識別動作において抽出された前記識別対象者の特徴量が、前記登録部に登録されている前記ユーザーの特徴量のうちのいずれかと類似する場合には、当該ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに応じて前記識別対象者のスコアを増加させ、
前記識別対象者のスコアが所定の閾値よりも大きい場合に、前記識別対象者が前記ユーザーであると判断することを特徴とする生体識別装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の生体識別装置であって、
前記演算部は、
前記登録動作において、前記複数の画像から抽出された前記ユーザーの特徴量が互いに類似すると判断された場合に前記ユーザーの特徴量の重みを増加させ、
前記類似すると判断された累積の頻度が多い特徴量ほど、前記重みを大きく増加させる、ことを特徴とする生体識別装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の生体識別装置であって、
前記特徴量が、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)を用いて抽出されることを特徴とする生体識別装置。
【請求項6】
ユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、
前記ユーザーの生体パターンを特徴付ける特徴量をそれぞれ抽出し、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記特徴量に対応付けて登録することと、
識別対象者の生体パターンを撮像して得られる画像から、
前記識別対象者の生体パターンを特徴付ける特徴量を抽出し、
前記識別対象者の特徴量、並びに、登録されている前記ユーザーの特徴量及び前記ユーザーの特徴量に対応付けられる重みに基づいて、前記識別対象者が前記ユーザーであるか否かを識別することと、
を有する生体識別方法。
【請求項7】
生体パターンを撮像する撮像部と、
前記生体パターンを特徴付ける複数の特徴量を登録する登録部と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記撮像部を用いてユーザーの生体パターンを複数回撮像して得られる複数の画像から、
前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出し、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて前記登録部に登録する登録動作を行なう生体識別装置。
【請求項8】
ユーザーの生体パターンを複数回撮像することと、
撮像によって得られる複数の画像から、前記ユーザーの特徴量をそれぞれ抽出することと、
前記複数の画像における出現頻度が高い特徴量ほど大きい重みを前記ユーザーの特徴量に対応付けて登録することと、
を有する生体識別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−221110(P2012−221110A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84662(P2011−84662)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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