生体適合材料
【解決手段】繊維状組織スキャフォールドであって、スキャフォールドの繊維はホスホン酸ポリマーを含む。繊維は、ビニルホスホン酸−アクリル酸の共ポリマーを組み込むことが好ましく、更にポリカプロラクトンを含んでよい。ホスホン酸ポリマーを含む医療用インプラントコーティング、ホスホン酸ポリマーを含む生体適合繊維、及びポリカプロラクトンとホスホン酸ポリマーを含む生体適合ポリマーが更に説明される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズ、フィルム等の形態の組織スキャフォールド(scaffold)等の生体適合材料、医療用インプラントのコーティング、組成物及び製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
合成手段によって製造される骨移植片代替物(bone graft substitutes)等の生体適合材料は、これまで以上に重要となってきている。というのも、新たな製品や方法が、急性外傷(例えば、事故による骨又は歯の破砕)から慢性疾患(例えば、骨粗鬆症、パジェット病又は虫歯)に及ぶ経験に由来する病状を治療するために選別されているからである。
【0003】
健常者においては、急性外傷に由来する比較的深刻でない骨折は、通常、短期間で自然治癒する。さらに深刻な場合では、ある種の骨移植片又はインプラントが必要となることがある。骨欠損が非常に大きい場合、長期間に亘る臨床的問題が存在し得る。骨粗鬆症患者においては、特有の骨状態であるので、初期破砕のリスクは健常者と比較して著しく大きく、患者が自然回復する能力は大幅に低い。骨移植片代替物としての製品であって、骨折している、及び/又は間接置換術と共に適用される骨充填材を必要としている骨粗鬆症患者のために臨床上使用され得る製品が、臨床的に必要とされている。
【0004】
骨粗鬆症は骨の疾患であり、骨のミネラル密度が標準よりも低く、骨の微細構造及びたんぱく質構造が崩壊している。これは、骨芽細胞として知られる細胞による骨形成と破骨細胞として知られる細胞による骨吸収との間の恒常的な不均衡の結果である。
【0005】
骨粗鬆症は、世界中で推定7500万人が患っている慢性疾患であり、2000年には推定900万件の骨粗鬆症性骨折があった。骨粗鬆症を患っている女性の24%及び男性の33%が、股関節を骨折して1年以内に死亡している。欧州の人々が高齢化するにつれて、骨粗鬆症を患う人の数は顕著な上昇へと向かっている。この兆候は、股関節骨折だけで50年以内に倍増すると予想されることを示唆している。欧州における骨粗鬆症の直接費用の総額は、210億ポンドと推定され、2050年までに510億ポンドに増大すると予想されている。
【0006】
パジェット病(変形性骨炎)は慢性疾患であり、骨形成と骨吸収との間の不均衡に由来する点に限れば、骨粗鬆症と類似している。その結果として、2つの病気の間で患者に行われる治療には類似点がある。
【0007】
現在、骨粗鬆症患者及びパジェット病患者は、ビスフォスフォネートと呼ばれる薬物群が経口で投与されている。ビスフォスフォネートは、骨においてヒドロキシアパタイトに結合することによって作用する。その結果、薬物は破骨細胞に取り込まれ、このことが破骨細胞のアポトーシスをもたらす。残念なことに、ビスフォスフォネートが投与された患者は、非常に望ましくない副作用に悩まされることがあり、例えば、発熱やインフルエンザ様症状を示す。また、骨粗鬆症及び/又はパジェット病の患者用に設計されたインプラントは、或いは、必要とされる特定の部位に埋め込むことができるインプラントは、市販されていない。通常の患者及び骨粗鬆症の患者の双方のための骨移植片代替物は現在、ヒト/動物由来のスキャフォールド、又は合成スキャフォールドであるが、これらは生物活性及び骨誘導性を欠いている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、前述の問題の1又は複数を未然に防ぐこと、若しくは軽減すること、並びに/或いは、骨移植片代替物などの、組織の再生及び/又は修復用に設計された生体適合材料を改良することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ホスホン酸ポリマーを含む繊維状組織スキャフォールドが提供される。
【0010】
本発明の第1の態様は、組織付着及び/又は組織増殖用のスキャフォールド(即ち、二次元又は三次元の支持構造体)に関し、スキャフォールド構造体はホスホン酸ポリマーを含む。ホスホン酸ポリマーは、スキャフォールドの繊維物質に組み込まれてよく、及び/又は少なくともスキャフォールドの領域にコーティングとして与えてもよい。このため、一部若しくは全てのスキャフォールド繊維は、ホスホン酸ポリマーから形成されてよく、及び/又は、一部若しくは全てのスキャフォールド繊維は、ホスホン酸ポリマーを含むコーティングを具えてよい。例として、スキャフォールド繊維は1種若しくは複数種のホスホン酸ポリマーから形成されてよく、及び/又は、コーティングは1種若しくは複数種のホスホン酸ポリマーを組み込んでよい。更に、繊維は、1種のホスホン酸ポリマーから形成されてよく、コーティングは異なる種類のホスホン酸ポリマーを含んでよい。加えて、ホスホン酸部分(phosphonic acid moieties)が、スキャフォールド表面の化学反応によって、又は、ホスホン酸部分を具える適切な分子によるスキャフォールドの機能化(functionalisation)によって、形成されてよい。
【0011】
本明細書中で「ホスホン酸ポリマー」という場合、ホスホン酸基及び重合可能部分(例えばビニル基)を組み込んでいるモノマーの重合化によって作られるあらゆる種類のポリマーを包含しており、任意選択的に他の1種又は複数種のモノマーと組み合わされる。本明細書中で「ホスホン酸ポリマー」という場合、ホスホン酸塩のポリマーを包含することも理解できるであろう。更に、前述のポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分(phosphono moiety)又はホスフィノ部分(phosphino moiety)を含んでよい。
【0012】
骨格上にペンダント基としてリンを有するホスホン酸ポリマーを含み、それはビスフォスフォネートの活性部分に類似しているので、スキャフォールドは、骨及び歯の主要構成物質、ヒドロキシアパタイトに結合し、破骨細胞を吸収する(resorb)ことによって取り込まれる(internalised)能力を有する。本発明の第1の態様のスキャフォールドの化学分析は、実施例において詳細に記載されており、リン濃度が高い領域においてカルシウムが濃縮されることを示した。このことは、リンとカルシウムの結合が生じたことを示唆している。インビトロ研究及びインビボ研究により、スキャフォールドとの細胞の相互作用(cellular interaction)が細胞付着と細胞増殖、及び細胞外マトリックス(extracellular matrix)の形成をもたらすことが実証された。スキャフォールドの好ましい実施形態は、至る所で細胞の移動を可能とする多孔質構造を有し、このため細胞相互作用を獲得し易い(accessible)領域を更に増やしている。
【0013】
以上を考慮すると、組織工学によって作り出された(tissue engineered)本発明の第1の態様のスキャフォールドは、骨粗鬆症、パジェット病、及び/又は慢性的な歯の疾患の患者が使用して、最も必要とされている領域において骨量(bone mass)及び/又は骨ストック(bone stock)を改善するのに大いに適している。ホスホン酸ポリマー含有スキャフォールドは、ビスフォスフォネートファミリー化合物の活性部分(即ち、リン−炭素結合)のみを含んでいるので、本発明の第1の態様のスキャフォールドは非医薬的(non-pharmaceutical)製品として考えることができ、従来のビスフォスフォネート治療に現在関連している、全部とは言わなくとも一部の望ましくない副作用を除外するはずであることが理解できるであろう。
【0014】
本発明の第1の態様のスキャフォールドの更なる利点は、好ましい実施形態において、生分解可能であるので更なる侵襲的手術の必要を除外し、結果として入院費や感染の危険性を減らすことである。
【0015】
更なる利点は、スキャフォールド及び構成要素である繊維の種々の実施形態が親水性であり、このことが、より疎水性の物質と比較して、細胞接着を大いに支援するということで生じる。骨マトリックスにおいてみられる生体ポリマーとヒドロキシアパタイトとの化学反応も起こり易い。このことが更に、骨の修復と治癒を改善するであろう。
【0016】
スキャフォールドの製造に関する以下の詳解から理解できるように、本発明の別の利点は、スキャフォールドが製造される方法が比較的単純であり、例えば、UV応答性モノマー又は両性イオン化合物の使用を必要としない。
【0017】
当業者であれば、スキャフォールドは、骨及び歯以外は健康である患者の骨及び歯の修復及び再生において、より幅広い用途に適していることが理解できるであろう。例えば、骨又は歯のある種の急性外傷に悩まされている患者の治療においてである。
【0018】
本発明の好ましい第1の実施形態は、スキャフォールドの繊維がホスホン酸ポリマーから形成されている繊維状組織スキャフォールドを提供する。
【0019】
従って、好ましい第1の実施形態は、ホスホン酸ポリマーを組み込んでいる物質から構造が作り出されるスキャフォールドに関する。即ち、ホスホン酸表面コーティングをスキャフォールドに与えるためにある種の表面処理プロセスが施されている場合を除いて、ホスホン酸ポリマーは、スキャフォールド物質の一体部分を形成している。しかし、スキャフォールドは、望ましいあらゆる種類の表面コーティングが与えられてよいことが理解できるであろう。表面コーティングは、ホスホン酸ベースの化合物又はポリマーを組み込んでいるコーティングを含み、ホスホン酸ポリマーベースの繊維を組み込んでいるスキャフォールドの化学特性、生物学的特性及び/又は物理特性を修飾又は強化する。
【0020】
更に、本発明の好ましい第1の実施形態のスキャフォールドは、ホスホン酸ポリマーだけから作られた繊維を組み込んでよい。また、スキャフォールドは、異なる種類の繊維の組合せを組み込んでおり、スキャフォールドを作り上げる繊維の全部でなく一部がホスホン酸ポリマーから形成されてよい。
【0021】
好ましい第2の実施形態は、ホスホン酸ポリマーを含むコーティングがスキャフォールドの繊維に与えられている繊維状組織スキャフォールドを提供する。
【0022】
ホスホン酸ポリマー含有コーティングは、スキャフォールドを作り上げる繊維のほぼ全てに、又はその一部に付与されてよい。更に、このようなコーティングが与えられるスキャフォールドの各繊維は、コーティングによってほぼ完全に覆われてよい。また、コーティングは、各繊維の一部又はある領域にだけ付与されてよい。コーティングは、繊維の表面積の約0.00001%乃至100%、より好ましくは約0.001%乃至100%、更により好ましくは約0.1%乃至100%を覆うのがよい。更に、覆われる繊維の目的とする用途に応じて、コーティングの厚さは、1層であってよく、又は最大で何千層であってよい。
【0023】
ホスホン酸ポリマーが、好ましい第1の実施形態のようなスキャフォールド繊維の構造内に与えられるか、第2の実施形態のようなコーティングとして与えられるか、双方の組合せであるかに関わらず、ホスホン酸ポリマーの総濃度は約7w/v%乃至8w/v%よりも高いことが好ましく、及び/又は、約20w/v%を超えないことが好ましい。ホスホン酸ポリマー濃度の範囲は、約7w/v%乃至15w/v%であることが好ましい。ホスホン酸ポリマー濃度は、約10w/v%乃至18w/v%であることがより好ましく、約13w/v%乃至17w/v%であることが更により好ましく、約15w/v%であることが最も好ましい。
【0024】
本発明の好ましい第1の実施形態によるスキャフォールドの繊維へと形成される開始物質は、ホスホン酸オリゴマー、ホモポリマー若しくはヘテロポリマー(例えば、共ポリマー、ターポリマー等)であってよく、又は他の1若しくは複数のポリマーと組み合わせた、任意のホスホン酸部分の混合若しくはブレンドであってよい。ポリマーの分子量は、ポリマーの目的とする用途に応じて、(調節体(regulatory bodies)により「ポリマー」として規定される)ポリマーを形成する数モノマー単位の数百万の組合せの分子量であり得る。分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にあるのがより好ましく、約100g/mol乃至200,000g/molの範囲にあるのが最も好ましい。
【0025】
好ましい実施形態において、スキャフォールドの繊維は、ビニルホスホン酸(VPA)等のホスホン酸モノマーのホモポリマーから形成される。代わりに、スキャフォールドの繊維は、ホスホン酸モノマーに第2の種類の重合可能モノマーが共重合した共ポリマーから形成されてよい。好ましい共重合可能モノマーは、アクリル酸モノマー及びメタクリル酸(本明細書では概して「(メタ)アクリル酸という」)モノマー等の重合可能カルボン酸モノマーを含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によると、ポリマーは、ホスホノ成分及び/又はホスフィノ成分から選ばれる活性部分を組み込んでよい。ホスホノ成分又はホスフィノ成分は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸(VDPA)、ホスホノ置換したモノ又はジカルボン酸、次亜リン酸、或いは、次亜リン酸のアルカリ金属塩等の塩からなってよい。例として、ホスホノ成分は、基本的にVPA、VDPA、又はホスホノコハク酸のホモポリマーからなってよい。
【0027】
ポリマーを組み込む組成物は更に、1又は複数の追加成分を含んでよく、不飽和スルホン酸、飽和若しくは不飽和カルボン酸、不飽和アミド、第1級若しくは第2級アミン、ポリアルキレンイミン、又はアミン末端ポリアルキレングリコール等が挙げられる。例えば、ポリマー組成物は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)とビニルスルホン酸(VSA)との共ポリマー、又はビニルホスホン酸(VPA)とアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAとVSAとの共ポリマー、又はVDPAとAA、MAA若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。別の例として、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAと、VSAと、AA、MAA又はアクリルアミドの何れか1つとのターポリマーからになってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VPA若しくはVDPAと、又はVPAとVDPAの混合物と、以下の何れか1つとの反応産物からなってよい:
a.第1級アミン;
b.第2級アミン;
c.ポリエチレンイミン;
d.アミン末端ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコール(例えばジェファミン(jeffamine));及び/又は
e.次亜リン酸若しくはその塩。
【0028】
スキャフォールド用繊維を製造する際に用いる特に好ましい共ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である。
【0029】
前述のポリマー、共ポリマー又はターポリマーは何れも、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含んでよいことは理解できるであろう。
【0030】
本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、1又は複数の生体適合ポリマーから形成されるのが好ましい。スキャフォールドの繊維は、ポリカプロラクトンから作られる、又はポリカプロラクトンを含むことが好ましい。ポリカプロラクトン(ポリ−ε−カプロラクトン)は生体適合材料であり、米国食品医薬品局(FDA)によって生物医学的用途における使用が認可されている。このため、ポリカプロラクトンは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに使用するのに大いに適している。本発明によると、ポリカプロラクトンに加えて、又はポリカプロラクトンの代わりに、その他の生体適合ポリマーを用いることができ、その他の生体適合ポリマーとしては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、及び/又はポリ(メタクリル酸メチル)等が挙げられる。
【0031】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、少なくとも一部の繊維が、ポリカプロラクトン及びポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)を含むポリマー溶液から形成される繊維状組織スキャフォールドが提供される。
【0032】
本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、サブミクロンの直径の繊維を具えることが好ましい。繊維は、約10nm乃至1000nm、より好ましくは約100nm乃至500nm、更により好ましくは約200nm乃至400nmの範囲の平均直径を有してよい。直径は、約250nm乃至300nmの平均直径を有することが特に好ましい。
【0033】
スキャフォールド内の繊維は、ほとんど規則正しく配置されてよく、部分的に規則正しく配置されてよく、又は基本的に不規則に配置されてよい。繊維は、不規則に配置されることが特に好ましい。というのも、この不規則な配置が、スキャフォールドが用いられる予定の自然の生物環境の物理的構造を最も厳密に反映しているからである。
【0034】
スキャフォールドは、望ましい任意の大きさ及び形状の、三次元のビーズ物質(bead material)又はパッキング物質(packing material)の形態で与えられてよい。スキャフォールド物質は、ビーズの形態で特定の用途に利用されてよい。このビーズは、単一の大きさ及び形状を、或いは、様々な範囲の大きさ及び/又は形状を有する。比較的小さいものから比較的大きいものまで、異なる大きさの範囲を有するホスホン酸ポリマー物質のビーズを用いることが好ましいことが考えられる。というのも、ビーズは、特定の標的部位内で最も適切な充填配置を選ぶように、自身で自己組織化(self-organise)できるからである。
【0035】
代わりに、スキャフォールドは、繊維状物質の、本質的に二次元のシート又はストリップとして与えてもよい。勿論、このような「二次元の」物質でも、例えば厚さといった第三次元を有するが、この種の物質は、例えば幅及び長さといった主たる二次元を有することが理解できるであろう。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明の第1の態様に基づくスキャフォールドは、骨の又は歯の穴への挿入用のポリマーパッキング物質の形態で与えられる。パッキング物質は、体内のインプラント部位が体験する圧縮力のレベルに耐えられることが重要であることが理解できるであろう。パッキング物質は、望ましい任意の大きさ及び/又は形状であってよいが、パッキング物質はペレットの形態であることが好ましい。特定の用途において用いられるペレットは、全て同じ大きさ及び形状であってよく、或いは、標的部位の大きさ及び形状に最適な充填配置を想定可能な大きさ及び/又は形状の範囲であってよい。多孔性構造及びミクロ/マクロ構造は、特定の化学的用途に最適な構造を与えるように変えることができる。
【0037】
更に好ましい実施形態において、スキャフォールドは、ポリマーシートの形態で与えられる。このポリマーシートは、望ましい程度の可撓性を示して、埋込みの目標部位に適合できる。
【0038】
スキャフォールドは、多孔性であることが好ましい。このことは有利である。というのも、スキャフォールドの構造の全体に亘って細胞の浸潤を可能とし、非多孔性の物質と比較して、細胞増殖の表面積を顕著に増やすことができるからである。多孔性のスキャフォールドはまた、栄養物が細胞培養用培地からスキャフォールドを通って、スキャフォールドによって支持される増殖細胞にまで浸透することを促進する。加えて、スキャフォールドに多孔性構造を与えることは、特定の用途に適合するように調整できるように、スキャフォールドの種々の物理、化学及び生物学的特性を操作及び制御する手段を提供する。
【0039】
本発明のスキャフォールドのホスホン酸ベースの繊維を製造する特に好ましい方法は、適切なホスホン酸ポリマーの溶液、又は適切なホスホン酸ポリマーを含むポリマー混合物若しくはブレンドの溶液をエレクトロスピニングするものである。
【0040】
エレクトロスピニングプロセス中、ポリマーが針から一定量で供給され、電圧が印加される。電圧により、針先にテイラーコーン(Taylor cone)が形成される。静電気力がポリマー溶液の表面張力を克服すると、ポリマージェットが形成されて、接地コレクタプレートに引き付けられる。
【0041】
ポリマーの供給量は変化されてよく、形成される繊維の性質が制御され、そして紡がれている特定のポリマーの特性が考慮される。供給量は、約0.01ml/分乃至0.1ml/分であるのが好ましく、約0.05ml/分であるのがより好ましい。印加電圧は、エレクトロスピニングされる特定のポリマーの特性に応じて、及び/又は最終繊維の望ましい特性に応じて変えてよい。印加電圧は、約5kV乃至40kVとしてよく、約10kV乃至30kVであるのがより好ましく、約20kVであるのが最も好ましい。コレクタプレートから針までの間隔が更なるパラメータであって、用いるポリマーに応じて最終繊維の性質を制御するように変えてよい。針は、コレクタプレートから約10cm乃至20cm離すことができ、約15cm離すことが好ましい。
【0042】
ポリマーの非繊維状凝集体(non-fibrous agglomerations)ではなく、明確な形の(well-defined)繊維を主に含むスキャフォールドを製造するために、エレクトロスピニング溶液は、繊維を形成するように紡がれるポリマー又はポリマー混合物(ホスホン酸ポリマーを含んでも含まなくてもよい)を、少なくとも約6w/v%含むのが好ましく、約7w/v%乃至15w/v%含むのがより好ましく、約10w/v%含むのが最も好ましい。
【0043】
エレクトロスピニングされるポリマー溶液は、任意の適切な溶媒を組み込むことができる。好ましい溶媒はアセトンである。
【0044】
前述のように、本発明の第1の態様による繊維状スキャフォールドの好ましい実施形態は、ビニルホスホン酸/アクリル酸共ポリマー、及びポリカプロラクトンを含むポリマー混合物から作られる繊維を含む。この場合、以下のエレクトロスピニングパラメータを採用することが好ましい:アセトン中10w/v%ポリマー混合物(VPA濃度は約15w/v%);印加電圧20kV;ポリマー流量0.05ml/分;及び針/コレクタ間の距離15cm。
【0045】
本発明の第2の態様は、ホスホン酸ポリマーを含む生体適合繊維を提供する。
【0046】
本発明の第2の態様による生体適合繊維は、本発明の第1の態様に関して上述したように、コーティングとして、及び/又は繊維の構造内に、ホスホン酸ポリマーを組み込むことができる。従って、第2の態様による繊維は、本発明の第1の態様によるスキャフォールドにおいて用いられたホスホン酸ポリマー含有繊維について先に述べた、任意の物理、化学及び/又は生物学的特性を有してよい。
【0047】
本発明の第3の態様は、ホスホン酸ポリマーを含む医療用インプラントコーティングを提供する。
【0048】
本発明の第4の態様は、ホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられた医療用インプラントを提供する。
【0049】
第3の態様及び第4の態様のコーティングは、1種又は複数種のホスホン酸ポリマーを含むことができ、任意選択的に更に1又は複数のポリマーと組み合わせている。コーティングは、ホスホン酸ホモポリマー又はヘテロポリマーであってよく、或いは、他の1又は複数のポリマーと組み合わせた、任意のホスホン酸ポリマーの混合若しくはブレンドであってよい。ポリマーの分子量は、ポリマーの目的とする用途に応じて、(調節体により「ポリマー」として規定される)ポリマーを形成する数モノマー単位の数百万の組合せの分子量であり得る。分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にあるのがより好ましく、約100g/mol乃至200,000g/molの範囲にあるのが最も好ましい。
【0050】
好ましい実施形態において、コーティングは、ビニルホスホン酸(VPA)等のホスホン酸モノマーのホモポリマーを含む。別の実施形態において、コーティングは、重合可能カルボン酸モノマーなどの第2の種類の重合可能モノマーがホスホン酸モノマーに共重合した共ポリマーである。好ましい共重合可能モノマーの例には、(メタ)アクリル酸モノマーが含まれる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマーは、ホスホノ成分及び/又はホスフィノ成分から選ばれる活性部分を組み込んでよい。ホスホノ成分又はホスフィノ成分は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸(VDPA)、ホスホノ置換したモノ又はジカルボン酸、次亜リン酸、又は次亜リン酸のアルカリ金属塩等の塩、からなってよい。例として、ホスホノ成分は、基本的に、VPA、VDPA又はホスホノコハク酸のホモポリマーからなってよい。
【0052】
ポリマーを組み込む組成物は更に、不飽和スルホン酸、飽和若しくは不飽和カルボン酸、不飽和アミド、第1級若しくは第2級アミン、ポリアルキレンイミン、又はアミン末端ポリアルキレングリコールなどの1又は複数の追加成分を含んでよい。例えば、ポリマー組成物は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)とビニルスルホン酸(VSA)との共ポリマー、又はビニルホスホン酸(VPA)とアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAとVSAとの共ポリマー、又はVDPAとAA、MAA若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。別の例として、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAと、VSAと、AA、MAA又はアクリルアミドの何れか1つとのターポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VPA若しくはVDPAと、又はVPAとVDPAの混合物と、以下の何れか1つとの反応産物からなってよい:
a.第1級アミン;
b.第2級アミン;
c.ポリエチレンイミン;
d.アミン末端ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコール(例えばジェファミン);及び/又は
e.次亜リン酸若しくはその塩。
【0053】
コーティングに用いる特に好ましい共ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である。
【0054】
コーティングは、ホスホン酸ポリマーに加えて、ポリカプロラクトン(ポリ−ε−カプロラクトン)などの1又は複数の生体適合ポリマーを含むことが好ましい。本発明では、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(メタクリル酸メチル)等の他の生体適合ポリマーを用いることもできる。
【0055】
本発明の第3の態様及び/又は第4の態様の特に好ましい実施形態において、ポリカプロラクトン及びポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)を含む医療用インプラントコーティングが提供される。
【0056】
コーティングは、所望の任意の医療用インプラントに付与されてよいことが想定される。コーティングは、医療用インプラントの表面が、骨及び/又は歯の隣接領域(adjacent area)と接触するような用途における使用に特に適していると考えられる。従って、コーティングが付与される予定の、又付与された医療用インプラントの表面は、埋込み後に骨及び/又は歯と接触する表面であることが好ましい。医療用インプラント装置は、様々な生体適合材料から製造することができ、その一般的なものはチタンである。以下の実施例8は、ポリカプロラクトン/ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)ポリマーコーティングをチタン基板(substrate)に付与できたことを説明している。たった3日後に、インプラントのインプラント/骨接合部分において、顕著な骨芽細胞付着レベルが観察され、医療用コーティングとしての用途について、このコーティングの適合性が実証された。
【0057】
本発明の第5の態様は、ポリカプロラクトン及びホスホン酸ポリマーを含む生体適合ポリマー組成物を提供する。
【0058】
ポリマー組成物は、共重合したホスホン酸及びカプロラクトンモノマーを組み込む混合物、ブレンド、又はヘテロポリマーであって、任意選択的に更に1又は複数のモノマーを含んでよい。ポリマー組成物がホスホン酸成分及びポリカプロラクトン成分の混合物又はブレンドである場合、ホスホン酸成分はホスホン酸ホモポリマー又はヘテロポリマーであってよい。ポリマーの分子量は、ポリマーの目的とする用途に応じて、(調節体により「ポリマー」として規定される)ポリマーを形成する数モノマー単位の数百万の組合せの分子量であってよい。分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にあるのがより好ましく、約100g/mol乃至200,000g/molの範囲にあるのが最も好ましい。
【0059】
好ましい実施形態において、ポリマー組成物のホスホン酸成分は、ビニルホスホン酸(VPA)等のホスホン酸モノマーのホモポリマーを含む。別の実施形態において、ホスホン酸成分は、第2の種類の重合可能モノマーが、ホスホン酸モノマーに共重合した共ポリマーであり、第2の種類の重合可能モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸である重合可能カルボン酸モノマーなどである。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によると、ポリマーは、ホスホノ成分及び/又はホスフィノ成分から選ばれる活性部分を組み込んでよい。ホスホノ成分又はホスフィノ成分は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸(VDPA)、ホスホノ置換したモノ又はジカルボン酸、次亜リン酸、又は次亜リン酸のアルカリ金属塩等の塩、からなってよい。例として、ホスホノ成分は、基本的に、VPA、VDPA又はホスホノコハク酸のホモポリマーからなってよい。
【0061】
ポリマーを組み込む組成物は更に、不飽和スルホン酸、飽和若しくは不飽和カルボン酸、不飽和アミド、第1級若しくは第2級アミン、ポリアルキレンイミン、又はアミン末端ポリアルキレングリコールなどの1又は複数の追加成分を含んでよい。例えば、ポリマー組成物は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)とビニルスルホン酸(VSA)との共ポリマー、又はビニルホスホン酸(VPA)とアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAとVSAとの共ポリマー、又はVDPAとAA、MAA若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。別の例として、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAと、VSAと、AA、MAA又はアクリルアミドの何れか1つとのターポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VPA若しくはVDPAと、又はVPAとVDPAの混合物と、以下の何れか1つとの反応産物からなってよい:
a.第1級アミン;
b.第2級アミン;
c.ポリエチレンイミン;
d.アミン末端ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコール(例えばジェファミン);及び/又は
e.次亜リン酸若しくはその塩。
【0062】
ポリマー組成物のホスホン酸成分に用いる特に好ましい共ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である。このため、本発明の第5の態様の特に好ましい実施形態は、ポリカプロラクトンとポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)の混合物を含むポリマー組成物を提供する。
【0063】
本発明の第5の態様によるポリマー組成物は、本発明の第3の態様及び第4の態様について上述したような、医療用インプラントへのコーティングとしての用途に大いに適している。さらに、本発明の第5の態様によるポリマー組成物は、注射(injection)に適した製剤への組込みに大いに適している。このような製剤は、液体医薬組成物として、注射による投与用の滅菌溶液又は懸濁液の形態で提供されてよい。本発明による注射可能な組成物はまた、必要に応じて、結合剤、懸濁化剤及び防腐剤を含んでよいことが理解できるであろう。このような薬剤の適当な例は、当該技術の当業者によく知られている。
【0064】
本発明の第6の態様は、哺乳類の組織細胞の培養方法を提供する。この方法は、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養することを含んでおり、スキャフォールドの繊維はホスホン酸ポリマーを含んでいる。そしてこの方法は、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進することを含んでいる。
【0065】
本発明の第7の態様は、哺乳類の組織の修復又は再生方法を提供する。この方法は、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養することを含んでおり、スキャフォールドの繊維はホスホン酸ポリマーを含んでいる。そしてこの方法は、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進することと、細胞が付着したスキャフォールドを、修復又は再生が必要な哺乳類の組織の近く(adjacent to)に配置することを含んでいる。
【0066】
本発明の第8の態様は、骨粗鬆症の治療方法を提供する。この方法は、骨粗鬆症患者に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与することを含んでいる。
【0067】
本発明の第9の態様は、パジェット病の治療方法を提供する。この方法は、パジェット病患者に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与することを含んでいる。
【0068】
本発明の第10の態様は、骨部位への急性外傷の治療方法を提供する。この方法は、前記急性外傷を抱える患者の前記部位に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与することを含んでいる。
【0069】
本発明の第8、第9及び第10の態様において、組成物は、本発明の先に規定した第5の態様によるのが好ましい。更に、組成物は、骨粗鬆症、パジェット病、又は急性外傷(例えば骨又は歯の破砕)を罹っている患者体内の部位に直接的に投与されるのが好ましい。投与は、本発明の第1の態様によるスキャフォールドの、例えば、繊維状シート若しくはフィルムとしての、又はペレット、ビーズ若しくはパッキング物質としての埋込みを介するか、注射を介することができる。
【0070】
本発明の第11の態様は、ホスホン酸ポリマーを含んでおり、骨粗鬆症の治療に用いる注射可能な薬物(medicament)に関する。
【0071】
本発明の第12の態様は、ホスホン酸ポリマーを含んでおり、パジェット病の治療に用いる注射可能な薬物に関する。
【0072】
本発明の第13の態様は、ホスホン酸ポリマーを含んでおり、部位への急性外傷の治療に用いる注射可能な薬物に関する。
【0073】
本発明の第11、第12及び第13の態様に用いられる薬物は、本発明の先に規定した第5の態様による組成物であるのが好ましい。
【0074】
当業者は、前述の組成物の治療的に有効な量は、症状又は病気を治療するのに十分な量に関係することを理解するであろう。
【0075】
治療される患者はヒト又は動物であってよい。治療される骨は、患者の骨格(skeleton)の任意の骨形成部分(bone forming part)であるか、歯であってよい。
【0076】
局部的な(localised)非経口投与に適した本発明の組成物は、生理的に許容される任意の担体、賦形剤又は安定剤とホスホン酸ポリマーとを混合することによって、例えば、使用前に再構成される凍結乾燥粉末製剤及び非凍結乾燥粉末製剤、非水溶液及び水溶液、並びに半固体製剤の形態で調製されてよい。許容される担体は、賦形剤を含み、使用時の投与量及び濃度で受容者に対して毒性を有さない。許容される担体、適切な緩衝剤、酸化防止剤、毒性モディファイア(toxicity modifier)、防腐剤及び/又は陰イオン界面活性剤を含むが、これらに限られない。
【0077】
本発明による組成物は、滅菌溶液か滅菌懸濁液のバイアル、アンプル、又は予め充填されたシリンジ、或いは、局所的な非経口投与に適した他の任意の医薬的に許容される形態で提供されてよい。
【0078】
本発明の第6乃至第10の態様に用いられるスキャフォールドは、本発明の第1の態様によるスキャフォールドの好ましい実施形態において述べたあらゆる特徴を含んでよいことは理解できるであろう。更に、本発明の第6乃至第10の態様に用いられるスキャフォールドは、本発明の第2の態様による生体適合繊維を組み込んでよい。
【0079】
本発明の態様の好ましい実施形態を、以下の非限定的な例を参照して明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1aは、健康な骨の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図1bは、骨粗鬆症の骨の走査電子顕微鏡画像である。
【図2】図2aは、5%ポリカプロラクトン(PCL)含有ポリマー溶液をエレクトロスピニングすることによって形成された繊維状物質の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図2bは、10%ポリカプロラクトン(PCL)含有ポリマー溶液をエレクトロスピニングすることによって形成された繊維状物質の走査電子顕微鏡画像である。
【図3】図3aは、エネルギー分散X線(EDX)分析から作成した、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドの内部構造の色分け画像である。図3bは、図3aに示した物質に関するエネルギー分散X線(EDX)スペクトルである。
【図4】図4aは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに付着したヒト骨芽細胞の500倍に拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図4bは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに付着したヒト骨芽細胞の1000倍に拡大した走査電子顕微鏡画像である。
【図5】図5a乃至図5dは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに付着した生細胞(上側)及び死細胞(下側)の画像ペアと(図5a及び図5c)、対照として機能するポリカプロラクトン(PCL)から作った組織スキャフォールドに付着した生細胞(上側)及び死細胞(下側)の画像ペア(図5b及び図5d)である。図5a及び図5bは、2時間後に撮影した画像である。図5c及び図5dは、24時間後に撮影した画像である。
【図6】図6は、アリザリンレッド染色を用いて分析した組織スキャフォールドの写真であり、各スキャフォールドへのカルシウムイオンの結合レベルを判断できる。左側の組織スキャフォールドは、対照として機能するPCLから作られており、右側の組織スキャフォールドは、本発明の第1の態様に従った。
【図7】図7a乃至図7dは、致命的な大きさ(1.5mm直径)の欠陥を与えた後、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、顕微鏡X線コンピュータ断層撮影(micro−CT)画像(図7a及び図7c)と、ポリカプロラクトン(PCL)から作った対照組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、顕微鏡X線コンピュータ断層撮影画像である(図7b及び図7d)。図7a及び図7bは、1週間後に撮影した画像である。図7c及び図7dは、6週間後に撮影した画像である。
【図8】図8は、図7cに示す本発明の第1の態様による組織スキャフォールド、及び図7dに示すPCLから作った対照組織スキャフォールドについて観察された骨形成レベルを示すグラフである。
【図9】図9aは、致命的な大きさ(1.5mm直径)の欠陥を与えた後、ポリカプロラクトン(PCL)から作った対照組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図9bは、致命的な大きさ(1.5mm直径)の欠陥を与えた後、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、走査電子顕微鏡(SEM)画像である。これら画像は埋込み6週間後に撮影した。
【図10】図10は、本発明の第1の態様によるスキャフォールドの埋込み後の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、ヒドロキシアパタイト様形成を示している。
【図11】図11は、本発明の第2の態様によるポリマーコーティングによりコーティングしたチタン基板の表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、骨芽細胞の付着及び形成を示している。
【図12】図12は、更なる誘導体化をせずに対照として機能するPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントのFaxitronX線像(Faxitron X-ray image)である。
【図13】図13は、本発明によるスキャフォールドを与えるためにホスホン酸ポリマー組成物でコーティングしたPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントのFaxitronX線像である。
【図14】図14は、更なる誘導体化をせずに第2の対照として機能するPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントであって、ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)に浸したインプラントのFaxitronX線像である。
【図15】図15は、本発明によるスキャフォールドを与えるためにホスホン酸ポリマー組成物でコーティングしたPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントであって、ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)に浸したインプラントのFaxitronX線像である。
【図16】図16は、蛍光強度のグラフであり、異なるホスホン酸ポリマー濃度が骨芽細胞の応答に及ぼす影響を示している。
【図17】図17は、破骨細胞アポトーシスのグラフであり、Biocolor社のApopercentageキットを用いて測定している。
【図18】図18は、3つのスキャフォールドについての細胞計数のグラフであり、スキャフォールドの1つは本発明によるもの(PCL+P)であり、2つは比較用(対照及びPCL)である。
【図19】図19は、3つのスキャフォールドに付着した細胞物質の走査電子顕微鏡画像を示し、スキャフォールドの1つは本発明によるもの(PCL+P)であり、2つは比較用(対照及びPCL)である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
[実施例1]
スキャフォールド製造の最適化
種々のエレクトロスピニングパラメータを調べて、繊維状スキャフォールドを調製するのに最適なものを判断した。ここで、繊維状スキャフォールドとは、ホスホン酸ポリマー組成物でコーティングすることができ、及び/又はホスホン酸含有ポリマー組成物から製造した繊維を含むものである。ポリカプロラクトンの濃度を2%乃至20%まで変化させ、そして印可電圧を変えて、最適条件を得た。
【0082】
ポリカプロラクトン繊維をエレクトロスピニングプロセスによって製造した。アセトンを溶媒として用いて、ポリカプロラクトンペレットを、ゆっくりかき混ぜて加熱して溶解し、10w/v%濃度のポリカプロラクトンを得た。
【0083】
ポリマー溶液を10mlシリンジに入れた。10mlシリンジには直径0.8mmの尖っていない針(blunted needle)を付けた。高圧電源を針に取り付け、20kVの電圧を印加した。針先から15cmの一定の距離を置いて接地コレクタプレートを配置した。
【0084】
シリンジポンプを用いてポリカプロラクトンポリマーを針から0.05ml/分の一定割合で供給した。電圧を印加するとテイラーコーンが形成された。これによって、接地コレクタプレートに引き付けられるポリマージェットが形成された。
【0085】
走査電子顕微鏡(SEM)分析によって、PCL濃度がより低い2w/v%及び5w/v%であると、繊維状マット内にビードが生じ(図2a参照)、PCL濃度がより高い例えば10w/v%であると、平均繊維径が266nmである明確な形の繊維が生じる(図2b参照)ことが実証された。ビードになった繊維状構造(Beaded fibrous structure)は前述の用途に望ましくない。10w/v%よりもかなり高いPCL濃度、例えば15w/v%を超える濃度は、その溶液の粘度のためにエレクトロスピニングに適していない。
【0086】
以下の実施例に用いる本発明による繊維状組織スキャフォールドを、前述のように10w/v%のPCLポリマー溶液をエレクトロスピニングすることによって調製し、このPCLスキャフォールドを、脱イオン水を含む15w/v%ポリビニルホスホン酸ポリマー水溶液内に24時間浸した。生じたPCL/PVPAフィルムを48時間風乾し、その後55°Cに24時間加熱した。
【0087】
[実施例2]
スキャフォールドへのカルシウムイオン吸着
ホスホン酸ポリマーを含む本発明の第1の態様によるスキャフォールドを、カルシウム高濃度溶液に3日間浸した。3日後、エネルギー分散X線(EDX)分析によって、高リン濃度領域におけるカルシウムイオンの増加が実証された(図3a参照)。リン酸カルシウム形成は骨形成にとって極めて重要であり、2元素のインビトロ凝集はインビボ骨形成に有望である。リン及びカルシウムの存在は、図3bに示すように、EDXスペクトルにおいて確認される。また、このスペクトルによって、液体浸漬の3日後でもリンが存在していたことが確認される。
【0088】
[実施例3]
スキャフォールドでの細胞増殖
図4に示すように、ヒト骨芽細胞が、本発明の第1の態様によるスキャフォールドに付着し、増殖していることが示された。細胞は、スキャフォールドの表面上に広がっており、正常な骨芽細胞構造を示していることが観察された。
【0089】
[実施例4]
スキャフォールドでの細胞生存
生死染色(Live/dead staining)により、生細胞(図5の夫々上側の画像において見ることができる)が死細胞(図5の夫々下側の画像において見ることができる)から見分けられる。2時間後、対照スキャフォールド(純粋PCL)、及びホスホン酸ポリマーを含む本発明の第1の態様によるスキャフォールドの双方において、細胞は、予想されるように、丸みを帯びている。図5に示すように、ホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドでは生細胞がより多いように見えた。純粋PCLスキャフォールドでは生細胞がより少なく、死細胞がより多かった。24時間後、細胞は、スキャフォールドの表面の端から端に亘って広がっていることが観察され、2時間の時点と同様に、本発明の第1の態様によるホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドでは死細胞がより少なかった。
【0090】
[実施例5]
スキャフォールドのミネラル化能(Mineralising Capacity)−アリザリン染色
ヒト骨芽細胞を、2つの対照スキャフォールド(純粋PCL)、及び本発明の第1の態様による2つのスキャフォールドに播種した。3週間後、カルシウムイオンの存在を識別するためにアリザリンレッド染色を行なった。図6に示すように、ホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドは深い赤色に染色されるが、純粋PCLスキャフォールドは赤の小さい点しかないことが観察された。この結果により、本発明の第1の態様によるホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドにおいて、カルシウムアパタイトがはるかに早く形成されたことが示唆される。
【0091】
[実施例6]
スキャフォールドのミネラル化能−骨ミネラル容積
4日齢のマウス由来の頭蓋冠を無菌的に摘出し、1.5mm直径の大きさの致命的欠陥を創出した。この欠陥は、通常の状況下では治癒しない。本発明の第1の態様によるホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドをこのような欠陥に加え、対照スキャフォールド(純粋PCL)を別の欠陥に加えた。総計5対のサンプルをこのようにして試験用に用意した。培養6週間後(骨形成培地−10%FBS、100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン、0.05mMアスコルビン酸、0.1μMデキサメタゾン、10mMβ−グリセロリン酸二ナトリウム塩が、DMEMに補充されている)、顕微鏡X線コンピュータ断層撮影法(micro−CT)を用いて調べると、図7に示すように、2つのサンプル間で骨ミネラル容積に顕著な差異があった。また、処理サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)画像により、本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、対照スキャフォールドよりも欠陥部位内へのより良好な融合を示すことが実証された(図9a及び図9b参照)。
【0092】
破骨細胞は頭蓋冠にほとんど存在していないので、ホスホン酸ポリマーは骨芽細胞の活性及び破骨細胞の活性に影響を及ぼすと想定できる。5対のサンプルの骨充填パーセンテージにおける統計学的差異を図8に示す。そこから、本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、対照スキャフォールドと比較して、骨形成の有意な増加をもたらしたと結論することができる。
【0093】
生物医学的用途の使用に対する本発明の第1の態様によるスキャフォールドの適合性は更に、培養後のヒドロキシアパタイト様形成の観察によって実証された。
【0094】
[実施例7]
コーティング製剤の調製
蒸留水中ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)[Poly(VPA−co−AA)]含有10乃至15%固体ポリマー溶液を調製した。
【0095】
[実施例8]
コーティング製剤の基板への付与
チタン(Ti)基板を100°C乃至150°Cに加熱し、予熱したpoly(VPA−co−AA)のバスに浸した。その後Ti基板をバスから取り出し、水洗した。その結果、チタン基板の表面は、本発明の第2の態様の好ましい実施形態によるpoly(VPA−co−AA)のポリマーコーティングでコーティングされた。
【0096】
3日後、図11に示すように、コーティングへの骨芽細胞の顕著な付着が観察された。
【0097】
[実施例9]
皮下インプラントマウスモデル
PCLスキャフォールド及びPCL−Pスキャフォールドを、抗真菌/抗生物質(AM/BM)溶液(Sigma社、英国)を用いて、1×PBS中5×AM/BMで1時間、1×PBS中1×AM/BMで一晩滅菌し、最終的に1×PBSで24時間洗浄した。
【0098】
前述のように調製した4つのPCLスキャフォールドの第1セットを、更に修飾することなく以下に記載するように試験した(結果を図12に示す)。前述のように調製した本発明による4つのPCL−Pスキャフォールドの第1セットを、更に修飾することなく以下に記載するように試験した(結果を図13に示す)。
【0099】
前述のように調製した4つのPCLスキャフォールドの第2セットを、1mlの10% ウシ胎児血清(FCS)、アルファ最小必須培地(MEM)及び1×106ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)中で、ロトミックス(rotomix)を用いて、37°C、5%CO2平衡エアー(balanced air)のインキュベータ内で一晩インキュベートした後、以下に記載するように試験した(結果を図14に示す)。
【0100】
前述のように調製した本発明による4つのPCL−Pスキャフォールドの第2セットを、1mlの10%ウシ胎児血清(FCS)、アルファ最小必須培地(MEM)及び1×106ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)中で、ロトミックスを用いて、37°C、5%CO2平衡エアーのインキュベータ内で一晩インキュベートした後、以下に記載するように試験した(結果を図15に示す)。
【0101】
全てのインビボ研究について、雌MF−1 nu/nu免疫不全マウスをHarlan社(英国、ラフバラ)で購入し、実験前に最低1週間馴化させた。動物はいつでも、通常のマウスの食事及び水に自由に(ad libitum)アクセスできた。全ての手順は事前に倫理的承認を受けて行ない、動物(科学的処置)法(1986年)にある規則に従って実行した。
【0102】
クラス1キャビネットにおいて、マウスの体重を量り、滅菌水中フェンタニル−フルアニソン(ヒプノルム)(Janssen−Cilag社)及びミダゾラム(ヒプノベル)(Roche社)の腹腔内注射によってマウスを麻酔した。フェンタニル−フルアニソンとミダゾラムの比率は、1対1であり、1回投与量は10ml/kgであった。スカルペルNo.10を用いて脊柱の片側を縦切開した。その切開の側方に、鈍的切開により皮下袋を作出した。スキャフォールドをこの袋内にて皮下に配置し、Michel社のステープルクリップを用いて切開を接合した。群あたりn=4のスキャフォールドを個々の袋に配置した。
【0103】
実験期間は28日とした。
【0104】
実験の終わりに、高いCO2濃度にマウスを曝した後、上部頸椎の位置をトランスロケーション(translocation)した。皮下細胞/スキャフォールドインプラントを摘出し、FaxitronX線像用に処理し、ミネラル化が起こったかを評価した。
【0105】
図12乃至図15を参照すると、ホスホン酸ポリマーを含まないPCLスキャフォールド(図12及び図14)は、ミネラル化のある程度の証拠を示すが、そのミネラル化のレベルは、ホスホン酸ポリマーを含む本発明によるスキャフォールド(図13及び図15)で観察され得るレベルよりもかなり低いことが観察された。
【0106】
これらの結果は、先に記載したインビトロ細胞培養の結果を支持している。それは、ホスホン酸ポリマーの存在下でミネラル化が増したことである。本発明によるスキャフォールドによって示されたミネラル化の増加は、スキャフォールドのホスホン酸部分が骨芽細胞のミネラル化能を高めていることを示唆している。本実施例において、スキャフォールドを「骨の無い(non-bone)」領域に埋め込んだとしても、カルシウムアパタイト形成が観察されたことは留意すべきである。このことは、本発明によるスキャフォールドが骨誘導性(osteoinductive)であることを示唆している。
【0107】
[実施例10]
骨芽細胞培養
ヒト骨芽細胞(HOB)を欧州細胞カルチャーコレクション(European Collection of Cell Cultures)(英国)で購入した。細胞をダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco社、英国)内で培養した。DMEMには、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco社、英国)、抗生物質(100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン)(Gibco社、英国)、100nMデキサメタゾン(Sigma社、英国)、50μMアスコルビン酸(Sigma社、英国)、及び10mMβ−グリセロリン酸(β-glycerophosphate)(Merck Biosciences社、英国)が補充されている。
【0108】
細胞を75cm2の組織培養フラスコ内で培養した。培地を2日おきに注ぎ足した(replenish)。必要な細胞をトリプシン処理によって培養フラスコから剥がす際、トリパンブルーで細胞の数及び生存率を確認した。
【0109】
本発明によるホスホン酸含有スキャフォールドを、セルクラウンインサート(CellCrown inserts)(Scaffdex社、フィンランド)を用いて24ウェルプレートに固定し、ラミナーフローキャビネットにおいてエタノール濃度を連続的に上昇させて滅菌した。
【0110】
エタノール内での最終浸漬後、スキャフォールドを滅菌リン酸緩衝生理食塩水(Gibco社、英国)で3回洗浄し、エタノールを全く残さず除去した。細胞を数え、40,000細胞/cm2の濃度でスキャフォールド上に播種した。プレートを、通常の条件、即ち37°C、95%の湿度、5%のCO2濃度で4日目まで培養した。
【0111】
骨芽細胞の代謝活性
第1、2、3及び4日で培地を除去し、サンプルを滅菌リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、1mlの新鮮培地を100μlのアラマーブルー(AlamerBlue)溶液(5mgレザズリン塩/40mlPBS)(Sigma社、英国)と共に加えた。
【0112】
プレートを37°C、95%の湿度、5%のCO2濃度で2時間インキュベートした。2時間後、200μlの懸濁液を96ウェルプレートに移した。蛍光光度計を用いて530nmの励起及び590nmの発光で蛍光を測定した。結果を図16に示す。
【0113】
4日の培養期間を通して、蛍光が時間と共に概して増加した。このことは、代謝活性の増加を示唆している。4日を通して、15%のホスホン酸ポリマーを含むサンプルの代謝活性が最も高かった。22.5%のホスホン酸ポリマーと30%のホスホン酸ポリマーを含むサンプルについて、4日目の代謝活性に有意差は無かったが、これらの結果は4日目の15%ホスホン酸塩(phosphonate)について得られた代謝活性よりも低い。
【0114】
この段階で、これらの初期結果は、アラマーブルーアッセイにより、約15%のホスホン酸ポリマー濃度が骨芽細胞の代謝活性を高めるのに最適なレベルであることを示唆している。これらの結果はまた、ホスホン酸ポリマー濃度が約20%を超えるにつれ、細胞の代謝活性が減少し得ることを示唆しており、ホスホン酸ポリマー濃度が高すぎると、細胞を休眠状態にさせ得るか、アポトーシスへ向かわせ得ることを示唆している。
【0115】
[実施例11]
破骨細胞培養
ヒト破骨細胞前駆細胞をLonza社(英国)で購入した。30,000細胞/ウェルの濃度で、破骨細胞基礎培地中の細胞を3つのスキャフォールドに播種した。この基礎培地は、RANK−L、M−CSF、FBS、グルタミン及び抗生物質が補充されていた。用いた3つのスキャフォールドは、ガラススキャフォールド(対照)、PCL製スキャフォールド(PCL)、及びホスホン酸ポリマーをコーティングしたPCL製の本発明によるスキャフォールド(PCL+P)であった。
【0116】
4時間、6時間及び24時間でサンプルを試験した。試験には、アポパーセンテージ(apopercentage)アポトーシス検出キット(Biocolor社、英国)を用いた。結果を図17に示す。見て分かるように、本発明によるスキャフォールド(PCL+P)においては、他の2つのスキャフォールド(対照及びPCL)と比較して、アポトーシスの有意な増加があった。アポトーシスの増加は、細胞アポトーシスを引き起こす破骨細胞によるP−Cの吸収を示唆している。
【0117】
14日で細胞をサンプル表面から剥がし、血球計数器を用いて細胞を数えた。結果を図18に示す。培養14日後、本発明によるスキャフォールド(PCL+P)においては、他の2つのスキャフォールド(対照及びPCL)と比較して、細胞数の有意な減少があった。
【0118】
1日及び7日で、走査電子顕微鏡法により細胞を可視化した。得られた画像を図18に示す。1日で破骨細胞前駆体は3種のスキャフォールド全てに付着した。しかし、7日目において、本発明によるスキャフォールド(PCL+P)に細胞残滓の証拠があり、細胞はアポトーシスを受けたことを示唆している。7日目において、他の2つのスキャフォールド(対照及びPCL)には多核細胞の形成がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズ、フィルム等の形態の組織スキャフォールド(scaffold)等の生体適合材料、医療用インプラントのコーティング、組成物及び製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
合成手段によって製造される骨移植片代替物(bone graft substitutes)等の生体適合材料は、これまで以上に重要となってきている。というのも、新たな製品や方法が、急性外傷(例えば、事故による骨又は歯の破砕)から慢性疾患(例えば、骨粗鬆症、パジェット病又は虫歯)に及ぶ経験に由来する病状を治療するために選別されているからである。
【0003】
健常者においては、急性外傷に由来する比較的深刻でない骨折は、通常、短期間で自然治癒する。さらに深刻な場合では、ある種の骨移植片又はインプラントが必要となることがある。骨欠損が非常に大きい場合、長期間に亘る臨床的問題が存在し得る。骨粗鬆症患者においては、特有の骨状態であるので、初期破砕のリスクは健常者と比較して著しく大きく、患者が自然回復する能力は大幅に低い。骨移植片代替物としての製品であって、骨折している、及び/又は間接置換術と共に適用される骨充填材を必要としている骨粗鬆症患者のために臨床上使用され得る製品が、臨床的に必要とされている。
【0004】
骨粗鬆症は骨の疾患であり、骨のミネラル密度が標準よりも低く、骨の微細構造及びたんぱく質構造が崩壊している。これは、骨芽細胞として知られる細胞による骨形成と破骨細胞として知られる細胞による骨吸収との間の恒常的な不均衡の結果である。
【0005】
骨粗鬆症は、世界中で推定7500万人が患っている慢性疾患であり、2000年には推定900万件の骨粗鬆症性骨折があった。骨粗鬆症を患っている女性の24%及び男性の33%が、股関節を骨折して1年以内に死亡している。欧州の人々が高齢化するにつれて、骨粗鬆症を患う人の数は顕著な上昇へと向かっている。この兆候は、股関節骨折だけで50年以内に倍増すると予想されることを示唆している。欧州における骨粗鬆症の直接費用の総額は、210億ポンドと推定され、2050年までに510億ポンドに増大すると予想されている。
【0006】
パジェット病(変形性骨炎)は慢性疾患であり、骨形成と骨吸収との間の不均衡に由来する点に限れば、骨粗鬆症と類似している。その結果として、2つの病気の間で患者に行われる治療には類似点がある。
【0007】
現在、骨粗鬆症患者及びパジェット病患者は、ビスフォスフォネートと呼ばれる薬物群が経口で投与されている。ビスフォスフォネートは、骨においてヒドロキシアパタイトに結合することによって作用する。その結果、薬物は破骨細胞に取り込まれ、このことが破骨細胞のアポトーシスをもたらす。残念なことに、ビスフォスフォネートが投与された患者は、非常に望ましくない副作用に悩まされることがあり、例えば、発熱やインフルエンザ様症状を示す。また、骨粗鬆症及び/又はパジェット病の患者用に設計されたインプラントは、或いは、必要とされる特定の部位に埋め込むことができるインプラントは、市販されていない。通常の患者及び骨粗鬆症の患者の双方のための骨移植片代替物は現在、ヒト/動物由来のスキャフォールド、又は合成スキャフォールドであるが、これらは生物活性及び骨誘導性を欠いている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、前述の問題の1又は複数を未然に防ぐこと、若しくは軽減すること、並びに/或いは、骨移植片代替物などの、組織の再生及び/又は修復用に設計された生体適合材料を改良することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ホスホン酸ポリマーを含む繊維状組織スキャフォールドが提供される。
【0010】
本発明の第1の態様は、組織付着及び/又は組織増殖用のスキャフォールド(即ち、二次元又は三次元の支持構造体)に関し、スキャフォールド構造体はホスホン酸ポリマーを含む。ホスホン酸ポリマーは、スキャフォールドの繊維物質に組み込まれてよく、及び/又は少なくともスキャフォールドの領域にコーティングとして与えてもよい。このため、一部若しくは全てのスキャフォールド繊維は、ホスホン酸ポリマーから形成されてよく、及び/又は、一部若しくは全てのスキャフォールド繊維は、ホスホン酸ポリマーを含むコーティングを具えてよい。例として、スキャフォールド繊維は1種若しくは複数種のホスホン酸ポリマーから形成されてよく、及び/又は、コーティングは1種若しくは複数種のホスホン酸ポリマーを組み込んでよい。更に、繊維は、1種のホスホン酸ポリマーから形成されてよく、コーティングは異なる種類のホスホン酸ポリマーを含んでよい。加えて、ホスホン酸部分(phosphonic acid moieties)が、スキャフォールド表面の化学反応によって、又は、ホスホン酸部分を具える適切な分子によるスキャフォールドの機能化(functionalisation)によって、形成されてよい。
【0011】
本明細書中で「ホスホン酸ポリマー」という場合、ホスホン酸基及び重合可能部分(例えばビニル基)を組み込んでいるモノマーの重合化によって作られるあらゆる種類のポリマーを包含しており、任意選択的に他の1種又は複数種のモノマーと組み合わされる。本明細書中で「ホスホン酸ポリマー」という場合、ホスホン酸塩のポリマーを包含することも理解できるであろう。更に、前述のポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分(phosphono moiety)又はホスフィノ部分(phosphino moiety)を含んでよい。
【0012】
骨格上にペンダント基としてリンを有するホスホン酸ポリマーを含み、それはビスフォスフォネートの活性部分に類似しているので、スキャフォールドは、骨及び歯の主要構成物質、ヒドロキシアパタイトに結合し、破骨細胞を吸収する(resorb)ことによって取り込まれる(internalised)能力を有する。本発明の第1の態様のスキャフォールドの化学分析は、実施例において詳細に記載されており、リン濃度が高い領域においてカルシウムが濃縮されることを示した。このことは、リンとカルシウムの結合が生じたことを示唆している。インビトロ研究及びインビボ研究により、スキャフォールドとの細胞の相互作用(cellular interaction)が細胞付着と細胞増殖、及び細胞外マトリックス(extracellular matrix)の形成をもたらすことが実証された。スキャフォールドの好ましい実施形態は、至る所で細胞の移動を可能とする多孔質構造を有し、このため細胞相互作用を獲得し易い(accessible)領域を更に増やしている。
【0013】
以上を考慮すると、組織工学によって作り出された(tissue engineered)本発明の第1の態様のスキャフォールドは、骨粗鬆症、パジェット病、及び/又は慢性的な歯の疾患の患者が使用して、最も必要とされている領域において骨量(bone mass)及び/又は骨ストック(bone stock)を改善するのに大いに適している。ホスホン酸ポリマー含有スキャフォールドは、ビスフォスフォネートファミリー化合物の活性部分(即ち、リン−炭素結合)のみを含んでいるので、本発明の第1の態様のスキャフォールドは非医薬的(non-pharmaceutical)製品として考えることができ、従来のビスフォスフォネート治療に現在関連している、全部とは言わなくとも一部の望ましくない副作用を除外するはずであることが理解できるであろう。
【0014】
本発明の第1の態様のスキャフォールドの更なる利点は、好ましい実施形態において、生分解可能であるので更なる侵襲的手術の必要を除外し、結果として入院費や感染の危険性を減らすことである。
【0015】
更なる利点は、スキャフォールド及び構成要素である繊維の種々の実施形態が親水性であり、このことが、より疎水性の物質と比較して、細胞接着を大いに支援するということで生じる。骨マトリックスにおいてみられる生体ポリマーとヒドロキシアパタイトとの化学反応も起こり易い。このことが更に、骨の修復と治癒を改善するであろう。
【0016】
スキャフォールドの製造に関する以下の詳解から理解できるように、本発明の別の利点は、スキャフォールドが製造される方法が比較的単純であり、例えば、UV応答性モノマー又は両性イオン化合物の使用を必要としない。
【0017】
当業者であれば、スキャフォールドは、骨及び歯以外は健康である患者の骨及び歯の修復及び再生において、より幅広い用途に適していることが理解できるであろう。例えば、骨又は歯のある種の急性外傷に悩まされている患者の治療においてである。
【0018】
本発明の好ましい第1の実施形態は、スキャフォールドの繊維がホスホン酸ポリマーから形成されている繊維状組織スキャフォールドを提供する。
【0019】
従って、好ましい第1の実施形態は、ホスホン酸ポリマーを組み込んでいる物質から構造が作り出されるスキャフォールドに関する。即ち、ホスホン酸表面コーティングをスキャフォールドに与えるためにある種の表面処理プロセスが施されている場合を除いて、ホスホン酸ポリマーは、スキャフォールド物質の一体部分を形成している。しかし、スキャフォールドは、望ましいあらゆる種類の表面コーティングが与えられてよいことが理解できるであろう。表面コーティングは、ホスホン酸ベースの化合物又はポリマーを組み込んでいるコーティングを含み、ホスホン酸ポリマーベースの繊維を組み込んでいるスキャフォールドの化学特性、生物学的特性及び/又は物理特性を修飾又は強化する。
【0020】
更に、本発明の好ましい第1の実施形態のスキャフォールドは、ホスホン酸ポリマーだけから作られた繊維を組み込んでよい。また、スキャフォールドは、異なる種類の繊維の組合せを組み込んでおり、スキャフォールドを作り上げる繊維の全部でなく一部がホスホン酸ポリマーから形成されてよい。
【0021】
好ましい第2の実施形態は、ホスホン酸ポリマーを含むコーティングがスキャフォールドの繊維に与えられている繊維状組織スキャフォールドを提供する。
【0022】
ホスホン酸ポリマー含有コーティングは、スキャフォールドを作り上げる繊維のほぼ全てに、又はその一部に付与されてよい。更に、このようなコーティングが与えられるスキャフォールドの各繊維は、コーティングによってほぼ完全に覆われてよい。また、コーティングは、各繊維の一部又はある領域にだけ付与されてよい。コーティングは、繊維の表面積の約0.00001%乃至100%、より好ましくは約0.001%乃至100%、更により好ましくは約0.1%乃至100%を覆うのがよい。更に、覆われる繊維の目的とする用途に応じて、コーティングの厚さは、1層であってよく、又は最大で何千層であってよい。
【0023】
ホスホン酸ポリマーが、好ましい第1の実施形態のようなスキャフォールド繊維の構造内に与えられるか、第2の実施形態のようなコーティングとして与えられるか、双方の組合せであるかに関わらず、ホスホン酸ポリマーの総濃度は約7w/v%乃至8w/v%よりも高いことが好ましく、及び/又は、約20w/v%を超えないことが好ましい。ホスホン酸ポリマー濃度の範囲は、約7w/v%乃至15w/v%であることが好ましい。ホスホン酸ポリマー濃度は、約10w/v%乃至18w/v%であることがより好ましく、約13w/v%乃至17w/v%であることが更により好ましく、約15w/v%であることが最も好ましい。
【0024】
本発明の好ましい第1の実施形態によるスキャフォールドの繊維へと形成される開始物質は、ホスホン酸オリゴマー、ホモポリマー若しくはヘテロポリマー(例えば、共ポリマー、ターポリマー等)であってよく、又は他の1若しくは複数のポリマーと組み合わせた、任意のホスホン酸部分の混合若しくはブレンドであってよい。ポリマーの分子量は、ポリマーの目的とする用途に応じて、(調節体(regulatory bodies)により「ポリマー」として規定される)ポリマーを形成する数モノマー単位の数百万の組合せの分子量であり得る。分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にあるのがより好ましく、約100g/mol乃至200,000g/molの範囲にあるのが最も好ましい。
【0025】
好ましい実施形態において、スキャフォールドの繊維は、ビニルホスホン酸(VPA)等のホスホン酸モノマーのホモポリマーから形成される。代わりに、スキャフォールドの繊維は、ホスホン酸モノマーに第2の種類の重合可能モノマーが共重合した共ポリマーから形成されてよい。好ましい共重合可能モノマーは、アクリル酸モノマー及びメタクリル酸(本明細書では概して「(メタ)アクリル酸という」)モノマー等の重合可能カルボン酸モノマーを含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によると、ポリマーは、ホスホノ成分及び/又はホスフィノ成分から選ばれる活性部分を組み込んでよい。ホスホノ成分又はホスフィノ成分は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸(VDPA)、ホスホノ置換したモノ又はジカルボン酸、次亜リン酸、或いは、次亜リン酸のアルカリ金属塩等の塩からなってよい。例として、ホスホノ成分は、基本的にVPA、VDPA、又はホスホノコハク酸のホモポリマーからなってよい。
【0027】
ポリマーを組み込む組成物は更に、1又は複数の追加成分を含んでよく、不飽和スルホン酸、飽和若しくは不飽和カルボン酸、不飽和アミド、第1級若しくは第2級アミン、ポリアルキレンイミン、又はアミン末端ポリアルキレングリコール等が挙げられる。例えば、ポリマー組成物は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)とビニルスルホン酸(VSA)との共ポリマー、又はビニルホスホン酸(VPA)とアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAとVSAとの共ポリマー、又はVDPAとAA、MAA若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。別の例として、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAと、VSAと、AA、MAA又はアクリルアミドの何れか1つとのターポリマーからになってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VPA若しくはVDPAと、又はVPAとVDPAの混合物と、以下の何れか1つとの反応産物からなってよい:
a.第1級アミン;
b.第2級アミン;
c.ポリエチレンイミン;
d.アミン末端ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコール(例えばジェファミン(jeffamine));及び/又は
e.次亜リン酸若しくはその塩。
【0028】
スキャフォールド用繊維を製造する際に用いる特に好ましい共ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である。
【0029】
前述のポリマー、共ポリマー又はターポリマーは何れも、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含んでよいことは理解できるであろう。
【0030】
本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、1又は複数の生体適合ポリマーから形成されるのが好ましい。スキャフォールドの繊維は、ポリカプロラクトンから作られる、又はポリカプロラクトンを含むことが好ましい。ポリカプロラクトン(ポリ−ε−カプロラクトン)は生体適合材料であり、米国食品医薬品局(FDA)によって生物医学的用途における使用が認可されている。このため、ポリカプロラクトンは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに使用するのに大いに適している。本発明によると、ポリカプロラクトンに加えて、又はポリカプロラクトンの代わりに、その他の生体適合ポリマーを用いることができ、その他の生体適合ポリマーとしては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、及び/又はポリ(メタクリル酸メチル)等が挙げられる。
【0031】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、少なくとも一部の繊維が、ポリカプロラクトン及びポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)を含むポリマー溶液から形成される繊維状組織スキャフォールドが提供される。
【0032】
本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、サブミクロンの直径の繊維を具えることが好ましい。繊維は、約10nm乃至1000nm、より好ましくは約100nm乃至500nm、更により好ましくは約200nm乃至400nmの範囲の平均直径を有してよい。直径は、約250nm乃至300nmの平均直径を有することが特に好ましい。
【0033】
スキャフォールド内の繊維は、ほとんど規則正しく配置されてよく、部分的に規則正しく配置されてよく、又は基本的に不規則に配置されてよい。繊維は、不規則に配置されることが特に好ましい。というのも、この不規則な配置が、スキャフォールドが用いられる予定の自然の生物環境の物理的構造を最も厳密に反映しているからである。
【0034】
スキャフォールドは、望ましい任意の大きさ及び形状の、三次元のビーズ物質(bead material)又はパッキング物質(packing material)の形態で与えられてよい。スキャフォールド物質は、ビーズの形態で特定の用途に利用されてよい。このビーズは、単一の大きさ及び形状を、或いは、様々な範囲の大きさ及び/又は形状を有する。比較的小さいものから比較的大きいものまで、異なる大きさの範囲を有するホスホン酸ポリマー物質のビーズを用いることが好ましいことが考えられる。というのも、ビーズは、特定の標的部位内で最も適切な充填配置を選ぶように、自身で自己組織化(self-organise)できるからである。
【0035】
代わりに、スキャフォールドは、繊維状物質の、本質的に二次元のシート又はストリップとして与えてもよい。勿論、このような「二次元の」物質でも、例えば厚さといった第三次元を有するが、この種の物質は、例えば幅及び長さといった主たる二次元を有することが理解できるであろう。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明の第1の態様に基づくスキャフォールドは、骨の又は歯の穴への挿入用のポリマーパッキング物質の形態で与えられる。パッキング物質は、体内のインプラント部位が体験する圧縮力のレベルに耐えられることが重要であることが理解できるであろう。パッキング物質は、望ましい任意の大きさ及び/又は形状であってよいが、パッキング物質はペレットの形態であることが好ましい。特定の用途において用いられるペレットは、全て同じ大きさ及び形状であってよく、或いは、標的部位の大きさ及び形状に最適な充填配置を想定可能な大きさ及び/又は形状の範囲であってよい。多孔性構造及びミクロ/マクロ構造は、特定の化学的用途に最適な構造を与えるように変えることができる。
【0037】
更に好ましい実施形態において、スキャフォールドは、ポリマーシートの形態で与えられる。このポリマーシートは、望ましい程度の可撓性を示して、埋込みの目標部位に適合できる。
【0038】
スキャフォールドは、多孔性であることが好ましい。このことは有利である。というのも、スキャフォールドの構造の全体に亘って細胞の浸潤を可能とし、非多孔性の物質と比較して、細胞増殖の表面積を顕著に増やすことができるからである。多孔性のスキャフォールドはまた、栄養物が細胞培養用培地からスキャフォールドを通って、スキャフォールドによって支持される増殖細胞にまで浸透することを促進する。加えて、スキャフォールドに多孔性構造を与えることは、特定の用途に適合するように調整できるように、スキャフォールドの種々の物理、化学及び生物学的特性を操作及び制御する手段を提供する。
【0039】
本発明のスキャフォールドのホスホン酸ベースの繊維を製造する特に好ましい方法は、適切なホスホン酸ポリマーの溶液、又は適切なホスホン酸ポリマーを含むポリマー混合物若しくはブレンドの溶液をエレクトロスピニングするものである。
【0040】
エレクトロスピニングプロセス中、ポリマーが針から一定量で供給され、電圧が印加される。電圧により、針先にテイラーコーン(Taylor cone)が形成される。静電気力がポリマー溶液の表面張力を克服すると、ポリマージェットが形成されて、接地コレクタプレートに引き付けられる。
【0041】
ポリマーの供給量は変化されてよく、形成される繊維の性質が制御され、そして紡がれている特定のポリマーの特性が考慮される。供給量は、約0.01ml/分乃至0.1ml/分であるのが好ましく、約0.05ml/分であるのがより好ましい。印加電圧は、エレクトロスピニングされる特定のポリマーの特性に応じて、及び/又は最終繊維の望ましい特性に応じて変えてよい。印加電圧は、約5kV乃至40kVとしてよく、約10kV乃至30kVであるのがより好ましく、約20kVであるのが最も好ましい。コレクタプレートから針までの間隔が更なるパラメータであって、用いるポリマーに応じて最終繊維の性質を制御するように変えてよい。針は、コレクタプレートから約10cm乃至20cm離すことができ、約15cm離すことが好ましい。
【0042】
ポリマーの非繊維状凝集体(non-fibrous agglomerations)ではなく、明確な形の(well-defined)繊維を主に含むスキャフォールドを製造するために、エレクトロスピニング溶液は、繊維を形成するように紡がれるポリマー又はポリマー混合物(ホスホン酸ポリマーを含んでも含まなくてもよい)を、少なくとも約6w/v%含むのが好ましく、約7w/v%乃至15w/v%含むのがより好ましく、約10w/v%含むのが最も好ましい。
【0043】
エレクトロスピニングされるポリマー溶液は、任意の適切な溶媒を組み込むことができる。好ましい溶媒はアセトンである。
【0044】
前述のように、本発明の第1の態様による繊維状スキャフォールドの好ましい実施形態は、ビニルホスホン酸/アクリル酸共ポリマー、及びポリカプロラクトンを含むポリマー混合物から作られる繊維を含む。この場合、以下のエレクトロスピニングパラメータを採用することが好ましい:アセトン中10w/v%ポリマー混合物(VPA濃度は約15w/v%);印加電圧20kV;ポリマー流量0.05ml/分;及び針/コレクタ間の距離15cm。
【0045】
本発明の第2の態様は、ホスホン酸ポリマーを含む生体適合繊維を提供する。
【0046】
本発明の第2の態様による生体適合繊維は、本発明の第1の態様に関して上述したように、コーティングとして、及び/又は繊維の構造内に、ホスホン酸ポリマーを組み込むことができる。従って、第2の態様による繊維は、本発明の第1の態様によるスキャフォールドにおいて用いられたホスホン酸ポリマー含有繊維について先に述べた、任意の物理、化学及び/又は生物学的特性を有してよい。
【0047】
本発明の第3の態様は、ホスホン酸ポリマーを含む医療用インプラントコーティングを提供する。
【0048】
本発明の第4の態様は、ホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられた医療用インプラントを提供する。
【0049】
第3の態様及び第4の態様のコーティングは、1種又は複数種のホスホン酸ポリマーを含むことができ、任意選択的に更に1又は複数のポリマーと組み合わせている。コーティングは、ホスホン酸ホモポリマー又はヘテロポリマーであってよく、或いは、他の1又は複数のポリマーと組み合わせた、任意のホスホン酸ポリマーの混合若しくはブレンドであってよい。ポリマーの分子量は、ポリマーの目的とする用途に応じて、(調節体により「ポリマー」として規定される)ポリマーを形成する数モノマー単位の数百万の組合せの分子量であり得る。分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にあるのがより好ましく、約100g/mol乃至200,000g/molの範囲にあるのが最も好ましい。
【0050】
好ましい実施形態において、コーティングは、ビニルホスホン酸(VPA)等のホスホン酸モノマーのホモポリマーを含む。別の実施形態において、コーティングは、重合可能カルボン酸モノマーなどの第2の種類の重合可能モノマーがホスホン酸モノマーに共重合した共ポリマーである。好ましい共重合可能モノマーの例には、(メタ)アクリル酸モノマーが含まれる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマーは、ホスホノ成分及び/又はホスフィノ成分から選ばれる活性部分を組み込んでよい。ホスホノ成分又はホスフィノ成分は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸(VDPA)、ホスホノ置換したモノ又はジカルボン酸、次亜リン酸、又は次亜リン酸のアルカリ金属塩等の塩、からなってよい。例として、ホスホノ成分は、基本的に、VPA、VDPA又はホスホノコハク酸のホモポリマーからなってよい。
【0052】
ポリマーを組み込む組成物は更に、不飽和スルホン酸、飽和若しくは不飽和カルボン酸、不飽和アミド、第1級若しくは第2級アミン、ポリアルキレンイミン、又はアミン末端ポリアルキレングリコールなどの1又は複数の追加成分を含んでよい。例えば、ポリマー組成物は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)とビニルスルホン酸(VSA)との共ポリマー、又はビニルホスホン酸(VPA)とアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAとVSAとの共ポリマー、又はVDPAとAA、MAA若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。別の例として、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAと、VSAと、AA、MAA又はアクリルアミドの何れか1つとのターポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VPA若しくはVDPAと、又はVPAとVDPAの混合物と、以下の何れか1つとの反応産物からなってよい:
a.第1級アミン;
b.第2級アミン;
c.ポリエチレンイミン;
d.アミン末端ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコール(例えばジェファミン);及び/又は
e.次亜リン酸若しくはその塩。
【0053】
コーティングに用いる特に好ましい共ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である。
【0054】
コーティングは、ホスホン酸ポリマーに加えて、ポリカプロラクトン(ポリ−ε−カプロラクトン)などの1又は複数の生体適合ポリマーを含むことが好ましい。本発明では、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(メタクリル酸メチル)等の他の生体適合ポリマーを用いることもできる。
【0055】
本発明の第3の態様及び/又は第4の態様の特に好ましい実施形態において、ポリカプロラクトン及びポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)を含む医療用インプラントコーティングが提供される。
【0056】
コーティングは、所望の任意の医療用インプラントに付与されてよいことが想定される。コーティングは、医療用インプラントの表面が、骨及び/又は歯の隣接領域(adjacent area)と接触するような用途における使用に特に適していると考えられる。従って、コーティングが付与される予定の、又付与された医療用インプラントの表面は、埋込み後に骨及び/又は歯と接触する表面であることが好ましい。医療用インプラント装置は、様々な生体適合材料から製造することができ、その一般的なものはチタンである。以下の実施例8は、ポリカプロラクトン/ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)ポリマーコーティングをチタン基板(substrate)に付与できたことを説明している。たった3日後に、インプラントのインプラント/骨接合部分において、顕著な骨芽細胞付着レベルが観察され、医療用コーティングとしての用途について、このコーティングの適合性が実証された。
【0057】
本発明の第5の態様は、ポリカプロラクトン及びホスホン酸ポリマーを含む生体適合ポリマー組成物を提供する。
【0058】
ポリマー組成物は、共重合したホスホン酸及びカプロラクトンモノマーを組み込む混合物、ブレンド、又はヘテロポリマーであって、任意選択的に更に1又は複数のモノマーを含んでよい。ポリマー組成物がホスホン酸成分及びポリカプロラクトン成分の混合物又はブレンドである場合、ホスホン酸成分はホスホン酸ホモポリマー又はヘテロポリマーであってよい。ポリマーの分子量は、ポリマーの目的とする用途に応じて、(調節体により「ポリマー」として規定される)ポリマーを形成する数モノマー単位の数百万の組合せの分子量であってよい。分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にあるのがより好ましく、約100g/mol乃至200,000g/molの範囲にあるのが最も好ましい。
【0059】
好ましい実施形態において、ポリマー組成物のホスホン酸成分は、ビニルホスホン酸(VPA)等のホスホン酸モノマーのホモポリマーを含む。別の実施形態において、ホスホン酸成分は、第2の種類の重合可能モノマーが、ホスホン酸モノマーに共重合した共ポリマーであり、第2の種類の重合可能モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸である重合可能カルボン酸モノマーなどである。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によると、ポリマーは、ホスホノ成分及び/又はホスフィノ成分から選ばれる活性部分を組み込んでよい。ホスホノ成分又はホスフィノ成分は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸(VDPA)、ホスホノ置換したモノ又はジカルボン酸、次亜リン酸、又は次亜リン酸のアルカリ金属塩等の塩、からなってよい。例として、ホスホノ成分は、基本的に、VPA、VDPA又はホスホノコハク酸のホモポリマーからなってよい。
【0061】
ポリマーを組み込む組成物は更に、不飽和スルホン酸、飽和若しくは不飽和カルボン酸、不飽和アミド、第1級若しくは第2級アミン、ポリアルキレンイミン、又はアミン末端ポリアルキレングリコールなどの1又は複数の追加成分を含んでよい。例えば、ポリマー組成物は、基本的に、ビニルホスホン酸(VPA)とビニルスルホン酸(VSA)との共ポリマー、又はビニルホスホン酸(VPA)とアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAとVSAとの共ポリマー、又はVDPAとAA、MAA若しくはアクリルアミドとの共ポリマーからなってよい。別の例として、ポリマー組成物は、基本的に、VDPAと、VSAと、AA、MAA又はアクリルアミドの何れか1つとのターポリマーからなってよい。代わりに、ポリマー組成物は、基本的に、VPA若しくはVDPAと、又はVPAとVDPAの混合物と、以下の何れか1つとの反応産物からなってよい:
a.第1級アミン;
b.第2級アミン;
c.ポリエチレンイミン;
d.アミン末端ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコール(例えばジェファミン);及び/又は
e.次亜リン酸若しくはその塩。
【0062】
ポリマー組成物のホスホン酸成分に用いる特に好ましい共ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である。このため、本発明の第5の態様の特に好ましい実施形態は、ポリカプロラクトンとポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)の混合物を含むポリマー組成物を提供する。
【0063】
本発明の第5の態様によるポリマー組成物は、本発明の第3の態様及び第4の態様について上述したような、医療用インプラントへのコーティングとしての用途に大いに適している。さらに、本発明の第5の態様によるポリマー組成物は、注射(injection)に適した製剤への組込みに大いに適している。このような製剤は、液体医薬組成物として、注射による投与用の滅菌溶液又は懸濁液の形態で提供されてよい。本発明による注射可能な組成物はまた、必要に応じて、結合剤、懸濁化剤及び防腐剤を含んでよいことが理解できるであろう。このような薬剤の適当な例は、当該技術の当業者によく知られている。
【0064】
本発明の第6の態様は、哺乳類の組織細胞の培養方法を提供する。この方法は、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養することを含んでおり、スキャフォールドの繊維はホスホン酸ポリマーを含んでいる。そしてこの方法は、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進することを含んでいる。
【0065】
本発明の第7の態様は、哺乳類の組織の修復又は再生方法を提供する。この方法は、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養することを含んでおり、スキャフォールドの繊維はホスホン酸ポリマーを含んでいる。そしてこの方法は、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進することと、細胞が付着したスキャフォールドを、修復又は再生が必要な哺乳類の組織の近く(adjacent to)に配置することを含んでいる。
【0066】
本発明の第8の態様は、骨粗鬆症の治療方法を提供する。この方法は、骨粗鬆症患者に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与することを含んでいる。
【0067】
本発明の第9の態様は、パジェット病の治療方法を提供する。この方法は、パジェット病患者に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与することを含んでいる。
【0068】
本発明の第10の態様は、骨部位への急性外傷の治療方法を提供する。この方法は、前記急性外傷を抱える患者の前記部位に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与することを含んでいる。
【0069】
本発明の第8、第9及び第10の態様において、組成物は、本発明の先に規定した第5の態様によるのが好ましい。更に、組成物は、骨粗鬆症、パジェット病、又は急性外傷(例えば骨又は歯の破砕)を罹っている患者体内の部位に直接的に投与されるのが好ましい。投与は、本発明の第1の態様によるスキャフォールドの、例えば、繊維状シート若しくはフィルムとしての、又はペレット、ビーズ若しくはパッキング物質としての埋込みを介するか、注射を介することができる。
【0070】
本発明の第11の態様は、ホスホン酸ポリマーを含んでおり、骨粗鬆症の治療に用いる注射可能な薬物(medicament)に関する。
【0071】
本発明の第12の態様は、ホスホン酸ポリマーを含んでおり、パジェット病の治療に用いる注射可能な薬物に関する。
【0072】
本発明の第13の態様は、ホスホン酸ポリマーを含んでおり、部位への急性外傷の治療に用いる注射可能な薬物に関する。
【0073】
本発明の第11、第12及び第13の態様に用いられる薬物は、本発明の先に規定した第5の態様による組成物であるのが好ましい。
【0074】
当業者は、前述の組成物の治療的に有効な量は、症状又は病気を治療するのに十分な量に関係することを理解するであろう。
【0075】
治療される患者はヒト又は動物であってよい。治療される骨は、患者の骨格(skeleton)の任意の骨形成部分(bone forming part)であるか、歯であってよい。
【0076】
局部的な(localised)非経口投与に適した本発明の組成物は、生理的に許容される任意の担体、賦形剤又は安定剤とホスホン酸ポリマーとを混合することによって、例えば、使用前に再構成される凍結乾燥粉末製剤及び非凍結乾燥粉末製剤、非水溶液及び水溶液、並びに半固体製剤の形態で調製されてよい。許容される担体は、賦形剤を含み、使用時の投与量及び濃度で受容者に対して毒性を有さない。許容される担体、適切な緩衝剤、酸化防止剤、毒性モディファイア(toxicity modifier)、防腐剤及び/又は陰イオン界面活性剤を含むが、これらに限られない。
【0077】
本発明による組成物は、滅菌溶液か滅菌懸濁液のバイアル、アンプル、又は予め充填されたシリンジ、或いは、局所的な非経口投与に適した他の任意の医薬的に許容される形態で提供されてよい。
【0078】
本発明の第6乃至第10の態様に用いられるスキャフォールドは、本発明の第1の態様によるスキャフォールドの好ましい実施形態において述べたあらゆる特徴を含んでよいことは理解できるであろう。更に、本発明の第6乃至第10の態様に用いられるスキャフォールドは、本発明の第2の態様による生体適合繊維を組み込んでよい。
【0079】
本発明の態様の好ましい実施形態を、以下の非限定的な例を参照して明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1aは、健康な骨の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図1bは、骨粗鬆症の骨の走査電子顕微鏡画像である。
【図2】図2aは、5%ポリカプロラクトン(PCL)含有ポリマー溶液をエレクトロスピニングすることによって形成された繊維状物質の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図2bは、10%ポリカプロラクトン(PCL)含有ポリマー溶液をエレクトロスピニングすることによって形成された繊維状物質の走査電子顕微鏡画像である。
【図3】図3aは、エネルギー分散X線(EDX)分析から作成した、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドの内部構造の色分け画像である。図3bは、図3aに示した物質に関するエネルギー分散X線(EDX)スペクトルである。
【図4】図4aは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに付着したヒト骨芽細胞の500倍に拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図4bは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに付着したヒト骨芽細胞の1000倍に拡大した走査電子顕微鏡画像である。
【図5】図5a乃至図5dは、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドに付着した生細胞(上側)及び死細胞(下側)の画像ペアと(図5a及び図5c)、対照として機能するポリカプロラクトン(PCL)から作った組織スキャフォールドに付着した生細胞(上側)及び死細胞(下側)の画像ペア(図5b及び図5d)である。図5a及び図5bは、2時間後に撮影した画像である。図5c及び図5dは、24時間後に撮影した画像である。
【図6】図6は、アリザリンレッド染色を用いて分析した組織スキャフォールドの写真であり、各スキャフォールドへのカルシウムイオンの結合レベルを判断できる。左側の組織スキャフォールドは、対照として機能するPCLから作られており、右側の組織スキャフォールドは、本発明の第1の態様に従った。
【図7】図7a乃至図7dは、致命的な大きさ(1.5mm直径)の欠陥を与えた後、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、顕微鏡X線コンピュータ断層撮影(micro−CT)画像(図7a及び図7c)と、ポリカプロラクトン(PCL)から作った対照組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、顕微鏡X線コンピュータ断層撮影画像である(図7b及び図7d)。図7a及び図7bは、1週間後に撮影した画像である。図7c及び図7dは、6週間後に撮影した画像である。
【図8】図8は、図7cに示す本発明の第1の態様による組織スキャフォールド、及び図7dに示すPCLから作った対照組織スキャフォールドについて観察された骨形成レベルを示すグラフである。
【図9】図9aは、致命的な大きさ(1.5mm直径)の欠陥を与えた後、ポリカプロラクトン(PCL)から作った対照組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、図9bは、致命的な大きさ(1.5mm直径)の欠陥を与えた後、本発明の第1の態様による組織スキャフォールドで治療した頭蓋冠サンプルの、走査電子顕微鏡(SEM)画像である。これら画像は埋込み6週間後に撮影した。
【図10】図10は、本発明の第1の態様によるスキャフォールドの埋込み後の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、ヒドロキシアパタイト様形成を示している。
【図11】図11は、本発明の第2の態様によるポリマーコーティングによりコーティングしたチタン基板の表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、骨芽細胞の付着及び形成を示している。
【図12】図12は、更なる誘導体化をせずに対照として機能するPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントのFaxitronX線像(Faxitron X-ray image)である。
【図13】図13は、本発明によるスキャフォールドを与えるためにホスホン酸ポリマー組成物でコーティングしたPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントのFaxitronX線像である。
【図14】図14は、更なる誘導体化をせずに第2の対照として機能するPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントであって、ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)に浸したインプラントのFaxitronX線像である。
【図15】図15は、本発明によるスキャフォールドを与えるためにホスホン酸ポリマー組成物でコーティングしたPCLの繊維で作ったインビボ皮下インプラントであって、ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)に浸したインプラントのFaxitronX線像である。
【図16】図16は、蛍光強度のグラフであり、異なるホスホン酸ポリマー濃度が骨芽細胞の応答に及ぼす影響を示している。
【図17】図17は、破骨細胞アポトーシスのグラフであり、Biocolor社のApopercentageキットを用いて測定している。
【図18】図18は、3つのスキャフォールドについての細胞計数のグラフであり、スキャフォールドの1つは本発明によるもの(PCL+P)であり、2つは比較用(対照及びPCL)である。
【図19】図19は、3つのスキャフォールドに付着した細胞物質の走査電子顕微鏡画像を示し、スキャフォールドの1つは本発明によるもの(PCL+P)であり、2つは比較用(対照及びPCL)である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
[実施例1]
スキャフォールド製造の最適化
種々のエレクトロスピニングパラメータを調べて、繊維状スキャフォールドを調製するのに最適なものを判断した。ここで、繊維状スキャフォールドとは、ホスホン酸ポリマー組成物でコーティングすることができ、及び/又はホスホン酸含有ポリマー組成物から製造した繊維を含むものである。ポリカプロラクトンの濃度を2%乃至20%まで変化させ、そして印可電圧を変えて、最適条件を得た。
【0082】
ポリカプロラクトン繊維をエレクトロスピニングプロセスによって製造した。アセトンを溶媒として用いて、ポリカプロラクトンペレットを、ゆっくりかき混ぜて加熱して溶解し、10w/v%濃度のポリカプロラクトンを得た。
【0083】
ポリマー溶液を10mlシリンジに入れた。10mlシリンジには直径0.8mmの尖っていない針(blunted needle)を付けた。高圧電源を針に取り付け、20kVの電圧を印加した。針先から15cmの一定の距離を置いて接地コレクタプレートを配置した。
【0084】
シリンジポンプを用いてポリカプロラクトンポリマーを針から0.05ml/分の一定割合で供給した。電圧を印加するとテイラーコーンが形成された。これによって、接地コレクタプレートに引き付けられるポリマージェットが形成された。
【0085】
走査電子顕微鏡(SEM)分析によって、PCL濃度がより低い2w/v%及び5w/v%であると、繊維状マット内にビードが生じ(図2a参照)、PCL濃度がより高い例えば10w/v%であると、平均繊維径が266nmである明確な形の繊維が生じる(図2b参照)ことが実証された。ビードになった繊維状構造(Beaded fibrous structure)は前述の用途に望ましくない。10w/v%よりもかなり高いPCL濃度、例えば15w/v%を超える濃度は、その溶液の粘度のためにエレクトロスピニングに適していない。
【0086】
以下の実施例に用いる本発明による繊維状組織スキャフォールドを、前述のように10w/v%のPCLポリマー溶液をエレクトロスピニングすることによって調製し、このPCLスキャフォールドを、脱イオン水を含む15w/v%ポリビニルホスホン酸ポリマー水溶液内に24時間浸した。生じたPCL/PVPAフィルムを48時間風乾し、その後55°Cに24時間加熱した。
【0087】
[実施例2]
スキャフォールドへのカルシウムイオン吸着
ホスホン酸ポリマーを含む本発明の第1の態様によるスキャフォールドを、カルシウム高濃度溶液に3日間浸した。3日後、エネルギー分散X線(EDX)分析によって、高リン濃度領域におけるカルシウムイオンの増加が実証された(図3a参照)。リン酸カルシウム形成は骨形成にとって極めて重要であり、2元素のインビトロ凝集はインビボ骨形成に有望である。リン及びカルシウムの存在は、図3bに示すように、EDXスペクトルにおいて確認される。また、このスペクトルによって、液体浸漬の3日後でもリンが存在していたことが確認される。
【0088】
[実施例3]
スキャフォールドでの細胞増殖
図4に示すように、ヒト骨芽細胞が、本発明の第1の態様によるスキャフォールドに付着し、増殖していることが示された。細胞は、スキャフォールドの表面上に広がっており、正常な骨芽細胞構造を示していることが観察された。
【0089】
[実施例4]
スキャフォールドでの細胞生存
生死染色(Live/dead staining)により、生細胞(図5の夫々上側の画像において見ることができる)が死細胞(図5の夫々下側の画像において見ることができる)から見分けられる。2時間後、対照スキャフォールド(純粋PCL)、及びホスホン酸ポリマーを含む本発明の第1の態様によるスキャフォールドの双方において、細胞は、予想されるように、丸みを帯びている。図5に示すように、ホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドでは生細胞がより多いように見えた。純粋PCLスキャフォールドでは生細胞がより少なく、死細胞がより多かった。24時間後、細胞は、スキャフォールドの表面の端から端に亘って広がっていることが観察され、2時間の時点と同様に、本発明の第1の態様によるホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドでは死細胞がより少なかった。
【0090】
[実施例5]
スキャフォールドのミネラル化能(Mineralising Capacity)−アリザリン染色
ヒト骨芽細胞を、2つの対照スキャフォールド(純粋PCL)、及び本発明の第1の態様による2つのスキャフォールドに播種した。3週間後、カルシウムイオンの存在を識別するためにアリザリンレッド染色を行なった。図6に示すように、ホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドは深い赤色に染色されるが、純粋PCLスキャフォールドは赤の小さい点しかないことが観察された。この結果により、本発明の第1の態様によるホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドにおいて、カルシウムアパタイトがはるかに早く形成されたことが示唆される。
【0091】
[実施例6]
スキャフォールドのミネラル化能−骨ミネラル容積
4日齢のマウス由来の頭蓋冠を無菌的に摘出し、1.5mm直径の大きさの致命的欠陥を創出した。この欠陥は、通常の状況下では治癒しない。本発明の第1の態様によるホスホン酸ポリマーを含むスキャフォールドをこのような欠陥に加え、対照スキャフォールド(純粋PCL)を別の欠陥に加えた。総計5対のサンプルをこのようにして試験用に用意した。培養6週間後(骨形成培地−10%FBS、100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン、0.05mMアスコルビン酸、0.1μMデキサメタゾン、10mMβ−グリセロリン酸二ナトリウム塩が、DMEMに補充されている)、顕微鏡X線コンピュータ断層撮影法(micro−CT)を用いて調べると、図7に示すように、2つのサンプル間で骨ミネラル容積に顕著な差異があった。また、処理サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)画像により、本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、対照スキャフォールドよりも欠陥部位内へのより良好な融合を示すことが実証された(図9a及び図9b参照)。
【0092】
破骨細胞は頭蓋冠にほとんど存在していないので、ホスホン酸ポリマーは骨芽細胞の活性及び破骨細胞の活性に影響を及ぼすと想定できる。5対のサンプルの骨充填パーセンテージにおける統計学的差異を図8に示す。そこから、本発明の第1の態様によるスキャフォールドは、対照スキャフォールドと比較して、骨形成の有意な増加をもたらしたと結論することができる。
【0093】
生物医学的用途の使用に対する本発明の第1の態様によるスキャフォールドの適合性は更に、培養後のヒドロキシアパタイト様形成の観察によって実証された。
【0094】
[実施例7]
コーティング製剤の調製
蒸留水中ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)[Poly(VPA−co−AA)]含有10乃至15%固体ポリマー溶液を調製した。
【0095】
[実施例8]
コーティング製剤の基板への付与
チタン(Ti)基板を100°C乃至150°Cに加熱し、予熱したpoly(VPA−co−AA)のバスに浸した。その後Ti基板をバスから取り出し、水洗した。その結果、チタン基板の表面は、本発明の第2の態様の好ましい実施形態によるpoly(VPA−co−AA)のポリマーコーティングでコーティングされた。
【0096】
3日後、図11に示すように、コーティングへの骨芽細胞の顕著な付着が観察された。
【0097】
[実施例9]
皮下インプラントマウスモデル
PCLスキャフォールド及びPCL−Pスキャフォールドを、抗真菌/抗生物質(AM/BM)溶液(Sigma社、英国)を用いて、1×PBS中5×AM/BMで1時間、1×PBS中1×AM/BMで一晩滅菌し、最終的に1×PBSで24時間洗浄した。
【0098】
前述のように調製した4つのPCLスキャフォールドの第1セットを、更に修飾することなく以下に記載するように試験した(結果を図12に示す)。前述のように調製した本発明による4つのPCL−Pスキャフォールドの第1セットを、更に修飾することなく以下に記載するように試験した(結果を図13に示す)。
【0099】
前述のように調製した4つのPCLスキャフォールドの第2セットを、1mlの10% ウシ胎児血清(FCS)、アルファ最小必須培地(MEM)及び1×106ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)中で、ロトミックス(rotomix)を用いて、37°C、5%CO2平衡エアー(balanced air)のインキュベータ内で一晩インキュベートした後、以下に記載するように試験した(結果を図14に示す)。
【0100】
前述のように調製した本発明による4つのPCL−Pスキャフォールドの第2セットを、1mlの10%ウシ胎児血清(FCS)、アルファ最小必須培地(MEM)及び1×106ヒト骨髄間質細胞(HBMSC)中で、ロトミックスを用いて、37°C、5%CO2平衡エアーのインキュベータ内で一晩インキュベートした後、以下に記載するように試験した(結果を図15に示す)。
【0101】
全てのインビボ研究について、雌MF−1 nu/nu免疫不全マウスをHarlan社(英国、ラフバラ)で購入し、実験前に最低1週間馴化させた。動物はいつでも、通常のマウスの食事及び水に自由に(ad libitum)アクセスできた。全ての手順は事前に倫理的承認を受けて行ない、動物(科学的処置)法(1986年)にある規則に従って実行した。
【0102】
クラス1キャビネットにおいて、マウスの体重を量り、滅菌水中フェンタニル−フルアニソン(ヒプノルム)(Janssen−Cilag社)及びミダゾラム(ヒプノベル)(Roche社)の腹腔内注射によってマウスを麻酔した。フェンタニル−フルアニソンとミダゾラムの比率は、1対1であり、1回投与量は10ml/kgであった。スカルペルNo.10を用いて脊柱の片側を縦切開した。その切開の側方に、鈍的切開により皮下袋を作出した。スキャフォールドをこの袋内にて皮下に配置し、Michel社のステープルクリップを用いて切開を接合した。群あたりn=4のスキャフォールドを個々の袋に配置した。
【0103】
実験期間は28日とした。
【0104】
実験の終わりに、高いCO2濃度にマウスを曝した後、上部頸椎の位置をトランスロケーション(translocation)した。皮下細胞/スキャフォールドインプラントを摘出し、FaxitronX線像用に処理し、ミネラル化が起こったかを評価した。
【0105】
図12乃至図15を参照すると、ホスホン酸ポリマーを含まないPCLスキャフォールド(図12及び図14)は、ミネラル化のある程度の証拠を示すが、そのミネラル化のレベルは、ホスホン酸ポリマーを含む本発明によるスキャフォールド(図13及び図15)で観察され得るレベルよりもかなり低いことが観察された。
【0106】
これらの結果は、先に記載したインビトロ細胞培養の結果を支持している。それは、ホスホン酸ポリマーの存在下でミネラル化が増したことである。本発明によるスキャフォールドによって示されたミネラル化の増加は、スキャフォールドのホスホン酸部分が骨芽細胞のミネラル化能を高めていることを示唆している。本実施例において、スキャフォールドを「骨の無い(non-bone)」領域に埋め込んだとしても、カルシウムアパタイト形成が観察されたことは留意すべきである。このことは、本発明によるスキャフォールドが骨誘導性(osteoinductive)であることを示唆している。
【0107】
[実施例10]
骨芽細胞培養
ヒト骨芽細胞(HOB)を欧州細胞カルチャーコレクション(European Collection of Cell Cultures)(英国)で購入した。細胞をダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco社、英国)内で培養した。DMEMには、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco社、英国)、抗生物質(100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン)(Gibco社、英国)、100nMデキサメタゾン(Sigma社、英国)、50μMアスコルビン酸(Sigma社、英国)、及び10mMβ−グリセロリン酸(β-glycerophosphate)(Merck Biosciences社、英国)が補充されている。
【0108】
細胞を75cm2の組織培養フラスコ内で培養した。培地を2日おきに注ぎ足した(replenish)。必要な細胞をトリプシン処理によって培養フラスコから剥がす際、トリパンブルーで細胞の数及び生存率を確認した。
【0109】
本発明によるホスホン酸含有スキャフォールドを、セルクラウンインサート(CellCrown inserts)(Scaffdex社、フィンランド)を用いて24ウェルプレートに固定し、ラミナーフローキャビネットにおいてエタノール濃度を連続的に上昇させて滅菌した。
【0110】
エタノール内での最終浸漬後、スキャフォールドを滅菌リン酸緩衝生理食塩水(Gibco社、英国)で3回洗浄し、エタノールを全く残さず除去した。細胞を数え、40,000細胞/cm2の濃度でスキャフォールド上に播種した。プレートを、通常の条件、即ち37°C、95%の湿度、5%のCO2濃度で4日目まで培養した。
【0111】
骨芽細胞の代謝活性
第1、2、3及び4日で培地を除去し、サンプルを滅菌リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、1mlの新鮮培地を100μlのアラマーブルー(AlamerBlue)溶液(5mgレザズリン塩/40mlPBS)(Sigma社、英国)と共に加えた。
【0112】
プレートを37°C、95%の湿度、5%のCO2濃度で2時間インキュベートした。2時間後、200μlの懸濁液を96ウェルプレートに移した。蛍光光度計を用いて530nmの励起及び590nmの発光で蛍光を測定した。結果を図16に示す。
【0113】
4日の培養期間を通して、蛍光が時間と共に概して増加した。このことは、代謝活性の増加を示唆している。4日を通して、15%のホスホン酸ポリマーを含むサンプルの代謝活性が最も高かった。22.5%のホスホン酸ポリマーと30%のホスホン酸ポリマーを含むサンプルについて、4日目の代謝活性に有意差は無かったが、これらの結果は4日目の15%ホスホン酸塩(phosphonate)について得られた代謝活性よりも低い。
【0114】
この段階で、これらの初期結果は、アラマーブルーアッセイにより、約15%のホスホン酸ポリマー濃度が骨芽細胞の代謝活性を高めるのに最適なレベルであることを示唆している。これらの結果はまた、ホスホン酸ポリマー濃度が約20%を超えるにつれ、細胞の代謝活性が減少し得ることを示唆しており、ホスホン酸ポリマー濃度が高すぎると、細胞を休眠状態にさせ得るか、アポトーシスへ向かわせ得ることを示唆している。
【0115】
[実施例11]
破骨細胞培養
ヒト破骨細胞前駆細胞をLonza社(英国)で購入した。30,000細胞/ウェルの濃度で、破骨細胞基礎培地中の細胞を3つのスキャフォールドに播種した。この基礎培地は、RANK−L、M−CSF、FBS、グルタミン及び抗生物質が補充されていた。用いた3つのスキャフォールドは、ガラススキャフォールド(対照)、PCL製スキャフォールド(PCL)、及びホスホン酸ポリマーをコーティングしたPCL製の本発明によるスキャフォールド(PCL+P)であった。
【0116】
4時間、6時間及び24時間でサンプルを試験した。試験には、アポパーセンテージ(apopercentage)アポトーシス検出キット(Biocolor社、英国)を用いた。結果を図17に示す。見て分かるように、本発明によるスキャフォールド(PCL+P)においては、他の2つのスキャフォールド(対照及びPCL)と比較して、アポトーシスの有意な増加があった。アポトーシスの増加は、細胞アポトーシスを引き起こす破骨細胞によるP−Cの吸収を示唆している。
【0117】
14日で細胞をサンプル表面から剥がし、血球計数器を用いて細胞を数えた。結果を図18に示す。培養14日後、本発明によるスキャフォールド(PCL+P)においては、他の2つのスキャフォールド(対照及びPCL)と比較して、細胞数の有意な減少があった。
【0118】
1日及び7日で、走査電子顕微鏡法により細胞を可視化した。得られた画像を図18に示す。1日で破骨細胞前駆体は3種のスキャフォールド全てに付着した。しかし、7日目において、本発明によるスキャフォールド(PCL+P)に細胞残滓の証拠があり、細胞はアポトーシスを受けたことを示唆している。7日目において、他の2つのスキャフォールド(対照及びPCL)には多核細胞の形成がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のホスホン酸ポリマーを含む、繊維状組織スキャフォールド。
【請求項2】
スキャフォールドの繊維が、第1の種類のホスホン酸ポリマーから形成される、請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項3】
スキャフォールドの繊維が、前記第1の種類のホスホン酸ポリマーの溶液をエレクトロスピニングすることによって製造される、請求項2に記載のスキャフォールド。
【請求項4】
前記ホスホン酸ポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含む、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項5】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸ホモポリマー、又は、他の1種若しくは複数種のポリマーを組み込んでいるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項6】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ置換したモノカルボン酸、ホスホノ置換したジカルボン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びホスホノコハク酸からなる群から選ばれるホスホン酸ホモポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項7】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸と、カルボン酸、スルホン酸、アミド、アミン、ポリアルキレンイミン、及びアミン末端ポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1又は複数の更なるモノマーとのホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項8】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸とアクリル酸、ビニルホスホン酸とメタクリル酸、ビニルホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とメタクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とメタクリル酸、及びビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリルアミドからなる群から選ばれるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項9】
前記ホスホン酸ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項10】
ホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項1乃至9の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項11】
スキャフォールドの繊維には、第2の種類のホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられている、請求項1乃至10の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項12】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含む、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項13】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸ホモポリマー、又は,他の1種若しくは複数種のポリマーを組み込んでいるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項14】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ置換したモノカルボン酸、ホスホノ置換したジカルボン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びホスホノコハク酸からなる群から選ばれるホスホン酸ホモポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項15】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸と、カルボン酸、スルホン酸、アミド、アミン、ポリアルキレンイミン、及びアミン末端ポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1又は複数の更なるモノマーとのホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項16】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸とアクリル酸、ビニルホスホン酸とメタクリル酸、ビニルホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とメタクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とメタクリル酸、及びビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリルアミドからなる群から選ばれるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項17】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項18】
第2の種類のホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項11乃至17の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項19】
スキャフォールドの繊維内に組み込まれるホスホン酸ポリマー、及びコーティングに含まれる更なるホスホン酸ポリマーは、同じ種類のホスホン酸ポリマーである、請求項11乃至18の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項20】
スキャフォールドの繊維内に組み込まれるホスホン酸ポリマー、及びコーティングに含まれる更なるホスホン酸ポリマーは、異なる種類のホスホン酸ポリマーである、請求項11乃至18の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項21】
スキャフォールドの繊維は、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、及びポリ(メタクリル酸メチル)からなる群から選ばれる少なくとも1つの付加的な生体適合ポリマーを含む、請求項1乃至20の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項22】
スキャフォールドの繊維は、サブミクロンの平均直径を有する、請求項1乃至21の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項23】
スキャフォールドの繊維は、約10乃至1000nmの範囲の平均直径を有する、請求項1乃至21の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項24】
スキャフォールドは多孔性である、請求項1乃至23の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項25】
スキャフォールドは、約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項1乃至24の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項26】
スキャフォールドは、約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項1乃至25の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項27】
ポリマーから形成された繊維を具える繊維状組織スキャフォールドの調製方法であって、スキャフォールドの繊維が、前記ポリマーの溶液をエレクトロスピニングし、エレクトロスピニングされた繊維を、ホスホン酸ポリマーを含む組成物で処理することによって製造される方法。
【請求項28】
前記組成物は、約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物は、約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ホスホン酸ポリマーから形成された繊維を具える繊維状組織スキャフォールドの調製方法であって、スキャフォールドの繊維が、前記ホスホン酸ポリマーの溶液をエレクトロスピニングすることによって製造される方法。
【請求項31】
前記ポリマー溶液は、約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマー溶液は、約7乃至15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマー溶液は、約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマー溶液は、エレクトロスピニング用の針を通して、約0.01乃至0.1ml/分の供給量で供給される、請求項27乃至33の何れかに記載の方法。
【請求項35】
エレクトロスピニング中、約5乃至40kVの電圧が前記ポリマー溶液に印加される、請求項27乃至34の何れかに記載の方法。
【請求項36】
エレクトロスピニング用の針が、コレクタプレートから約10cm乃至20cm離される、請求項27乃至35の何れかに記載の方法。
【請求項37】
ホスホン酸ポリマーを含む、医療用インプラントコーティング。
【請求項38】
前記ホスホン酸ポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含む、請求項37に記載のコーティング。
【請求項39】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸ホモポリマー、又は,他の1種若しくは複数種のポリマーを組み込んでいるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項40】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ置換したモノカルボン酸、ホスホノ置換したジカルボン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びホスホノコハク酸からなる群から選ばれるホスホン酸ホモポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項41】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸と、カルボン酸、スルホン酸、アミド、アミン、ポリアルキレンイミン、及びアミン末端ポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1又は複数の更なるモノマーとのホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項42】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸とアクリル酸、ビニルホスホン酸とメタクリル酸、ビニルホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とメタクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とメタクリル酸、及びビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリルアミドからなる群から選ばれるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項43】
前記ホスホン酸ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である、請求項37に記載のコーティング。
【請求項44】
ホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項37乃至43の何れかに記載のコーティング。
【請求項45】
約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項37乃至44の何れかに記載のコーティング。
【請求項46】
約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項37乃至45の何れかに記載のコーティング。
【請求項47】
ホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられた、医療用インプラント。
【請求項48】
請求項37乃至46の何れかに記載のコーティングである、請求項47に記載のインプラント。
【請求項49】
少なくとも1種のホスホン酸ポリマーを含む、生体適合繊維。
【請求項50】
前記繊維は、第1の種類のホスホン酸ポリマーから形成される、請求項49に記載の繊維。
【請求項51】
前記繊維は、前記第1の種類のホスホン酸ポリマーの溶液をエレクトロスピニングすることによって製造される、請求項50に記載の繊維。
【請求項52】
スキャフォールドの繊維には、第2の種類のホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられている、請求項49乃至51の何れかに記載の繊維。
【請求項53】
ポリカプロラクトン及びホスホン酸ポリマーを含む、生体適合ポリマー組成物。
【請求項54】
ホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項53又は請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
約7乃至15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項53又は請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項53又は請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
本発明の第11の態様が、骨粗鬆症の治療に用いる注射可能な薬物に関し、ホスホン酸ポリマーを含む。
【請求項59】
ホスホン酸ポリマーを含む、パジェット病の治療に用いる注射可能な薬物。
【請求項60】
ホスホン酸ポリマーを含む、骨部位への急性外傷の治療に用いる注射可能な薬物。
【請求項61】
哺乳類の組織細胞の培養方法であって、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養する工程を含み、スキャフォールドの繊維がホスホン酸ポリマーを含み、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進する工程を含む、方法。
【請求項62】
哺乳類の組織の修復又は再生方法であって、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養する工程を含み、スキャフォールドの繊維がホスホン酸ポリマーを含み、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進する工程と、細胞が付着したスキャフォールドを、修復又は再生が必要な哺乳類の組織の近くに配置する工程を含む方法。
【請求項63】
骨粗鬆症の治療方法であって、骨粗鬆症の個体に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与する工程を含む方法。
【請求項64】
パジェット病の治療方法であって、パジェット病の個体に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与する工程を含む方法。
【請求項65】
骨部位への急性外傷の治療方法であって、前記急性外傷を抱える個体の前記部位に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与する工程を含む方法。
【請求項1】
少なくとも1種のホスホン酸ポリマーを含む、繊維状組織スキャフォールド。
【請求項2】
スキャフォールドの繊維が、第1の種類のホスホン酸ポリマーから形成される、請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項3】
スキャフォールドの繊維が、前記第1の種類のホスホン酸ポリマーの溶液をエレクトロスピニングすることによって製造される、請求項2に記載のスキャフォールド。
【請求項4】
前記ホスホン酸ポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含む、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項5】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸ホモポリマー、又は、他の1種若しくは複数種のポリマーを組み込んでいるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項6】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ置換したモノカルボン酸、ホスホノ置換したジカルボン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びホスホノコハク酸からなる群から選ばれるホスホン酸ホモポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項7】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸と、カルボン酸、スルホン酸、アミド、アミン、ポリアルキレンイミン、及びアミン末端ポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1又は複数の更なるモノマーとのホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項8】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸とアクリル酸、ビニルホスホン酸とメタクリル酸、ビニルホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とメタクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とメタクリル酸、及びビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリルアミドからなる群から選ばれるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項9】
前記ホスホン酸ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である、請求項1乃至3の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項10】
ホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項1乃至9の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項11】
スキャフォールドの繊維には、第2の種類のホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられている、請求項1乃至10の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項12】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含む、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項13】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸ホモポリマー、又は,他の1種若しくは複数種のポリマーを組み込んでいるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項14】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ置換したモノカルボン酸、ホスホノ置換したジカルボン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びホスホノコハク酸からなる群から選ばれるホスホン酸ホモポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項15】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸と、カルボン酸、スルホン酸、アミド、アミン、ポリアルキレンイミン、及びアミン末端ポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1又は複数の更なるモノマーとのホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項16】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸とアクリル酸、ビニルホスホン酸とメタクリル酸、ビニルホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とメタクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とメタクリル酸、及びビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリルアミドからなる群から選ばれるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項17】
前記第2の種類のホスホン酸ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である、請求項11に記載のスキャフォールド。
【請求項18】
第2の種類のホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項11乃至17の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項19】
スキャフォールドの繊維内に組み込まれるホスホン酸ポリマー、及びコーティングに含まれる更なるホスホン酸ポリマーは、同じ種類のホスホン酸ポリマーである、請求項11乃至18の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項20】
スキャフォールドの繊維内に組み込まれるホスホン酸ポリマー、及びコーティングに含まれる更なるホスホン酸ポリマーは、異なる種類のホスホン酸ポリマーである、請求項11乃至18の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項21】
スキャフォールドの繊維は、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、及びポリ(メタクリル酸メチル)からなる群から選ばれる少なくとも1つの付加的な生体適合ポリマーを含む、請求項1乃至20の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項22】
スキャフォールドの繊維は、サブミクロンの平均直径を有する、請求項1乃至21の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項23】
スキャフォールドの繊維は、約10乃至1000nmの範囲の平均直径を有する、請求項1乃至21の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項24】
スキャフォールドは多孔性である、請求項1乃至23の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項25】
スキャフォールドは、約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項1乃至24の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項26】
スキャフォールドは、約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項1乃至25の何れかに記載のスキャフォールド。
【請求項27】
ポリマーから形成された繊維を具える繊維状組織スキャフォールドの調製方法であって、スキャフォールドの繊維が、前記ポリマーの溶液をエレクトロスピニングし、エレクトロスピニングされた繊維を、ホスホン酸ポリマーを含む組成物で処理することによって製造される方法。
【請求項28】
前記組成物は、約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物は、約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ホスホン酸ポリマーから形成された繊維を具える繊維状組織スキャフォールドの調製方法であって、スキャフォールドの繊維が、前記ホスホン酸ポリマーの溶液をエレクトロスピニングすることによって製造される方法。
【請求項31】
前記ポリマー溶液は、約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマー溶液は、約7乃至15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマー溶液は、約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマー溶液は、エレクトロスピニング用の針を通して、約0.01乃至0.1ml/分の供給量で供給される、請求項27乃至33の何れかに記載の方法。
【請求項35】
エレクトロスピニング中、約5乃至40kVの電圧が前記ポリマー溶液に印加される、請求項27乃至34の何れかに記載の方法。
【請求項36】
エレクトロスピニング用の針が、コレクタプレートから約10cm乃至20cm離される、請求項27乃至35の何れかに記載の方法。
【請求項37】
ホスホン酸ポリマーを含む、医療用インプラントコーティング。
【請求項38】
前記ホスホン酸ポリマーは、少なくとも1つのホスホノ部分又はホスフィノ部分を含む、請求項37に記載のコーティング。
【請求項39】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸ホモポリマー、又は,他の1種若しくは複数種のポリマーを組み込んでいるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項40】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ置換したモノカルボン酸、ホスホノ置換したジカルボン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びホスホノコハク酸からなる群から選ばれるホスホン酸ホモポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項41】
前記ホスホン酸ポリマーは、ホスホン酸と、カルボン酸、スルホン酸、アミド、アミン、ポリアルキレンイミン、及びアミン末端ポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1又は複数の更なるモノマーとのホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項42】
前記ホスホン酸ポリマーは、ビニルホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸とアクリル酸、ビニルホスホン酸とメタクリル酸、ビニルホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とビニルスルホン酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とメタクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸とアクリルアミド、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリル酸、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とメタクリル酸、及びビニリデン−1,1−ジホスホン酸、ビニルスルホン酸とアクリルアミドからなる群から選ばれるホスホン酸ヘテロポリマーである、請求項37に記載のコーティング。
【請求項43】
前記ホスホン酸ポリマーは、ポリ(ビニルホスホン酸−co−アクリル酸)である、請求項37に記載のコーティング。
【請求項44】
ホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項37乃至43の何れかに記載のコーティング。
【請求項45】
約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項37乃至44の何れかに記載のコーティング。
【請求項46】
約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項37乃至45の何れかに記載のコーティング。
【請求項47】
ホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられた、医療用インプラント。
【請求項48】
請求項37乃至46の何れかに記載のコーティングである、請求項47に記載のインプラント。
【請求項49】
少なくとも1種のホスホン酸ポリマーを含む、生体適合繊維。
【請求項50】
前記繊維は、第1の種類のホスホン酸ポリマーから形成される、請求項49に記載の繊維。
【請求項51】
前記繊維は、前記第1の種類のホスホン酸ポリマーの溶液をエレクトロスピニングすることによって製造される、請求項50に記載の繊維。
【請求項52】
スキャフォールドの繊維には、第2の種類のホスホン酸ポリマーを含むコーティングが与えられている、請求項49乃至51の何れかに記載の繊維。
【請求項53】
ポリカプロラクトン及びホスホン酸ポリマーを含む、生体適合ポリマー組成物。
【請求項54】
ホスホン酸ポリマーの分子量は、約100g/mol乃至500,000g/molの範囲にある、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
約7乃至20w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項53又は請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
約7乃至15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項53又は請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
約15w/v%のホスホン酸ポリマーを含む、請求項53又は請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
本発明の第11の態様が、骨粗鬆症の治療に用いる注射可能な薬物に関し、ホスホン酸ポリマーを含む。
【請求項59】
ホスホン酸ポリマーを含む、パジェット病の治療に用いる注射可能な薬物。
【請求項60】
ホスホン酸ポリマーを含む、骨部位への急性外傷の治療に用いる注射可能な薬物。
【請求項61】
哺乳類の組織細胞の培養方法であって、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養する工程を含み、スキャフォールドの繊維がホスホン酸ポリマーを含み、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進する工程を含む、方法。
【請求項62】
哺乳類の組織の修復又は再生方法であって、哺乳類の組織細胞を繊維状組織スキャフォールド上で培養する工程を含み、スキャフォールドの繊維がホスホン酸ポリマーを含み、前記細胞を細胞培養用培地に曝して前記細胞のスキャフォールドへの付着を促進する工程と、細胞が付着したスキャフォールドを、修復又は再生が必要な哺乳類の組織の近くに配置する工程を含む方法。
【請求項63】
骨粗鬆症の治療方法であって、骨粗鬆症の個体に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与する工程を含む方法。
【請求項64】
パジェット病の治療方法であって、パジェット病の個体に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与する工程を含む方法。
【請求項65】
骨部位への急性外傷の治療方法であって、前記急性外傷を抱える個体の前記部位に、ホスホン酸ポリマーを含む組成物の治療量を投与する工程を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−501560(P2013−501560A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524271(P2012−524271)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001482
【国際公開番号】WO2011/018608
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001482
【国際公開番号】WO2011/018608
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】
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