説明

生体高分子の質量分析管理された精製のための装置および方法

試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出するための方法は、過負荷量の試料をクロマトグラフ導管110内に注入するステップと、時間で変化する組成を有する溶媒を導管110を通り流すステップとを含む。試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出するための装置は、クロマトグラフモジュールと、クロマトグラフモジュールからの溶出液の一部分を受け取るためにクロマトグラフモジュールと流体連通する質量分析モジュールと、クロマトグラフモジュールおよび質量分析モジュールと連絡する制御ユニットとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年4月22日出願の米国特許仮出願第60/674,051号の優先権および利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般にクロマトグラフに関し、より詳しくは、目的材料および副生材料のクロマトグラフベースの分離のための機器および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの科学的または工業的用途で、化合物は試験、分析または大量生産のために精製される。化合物の精製には、その他の化合物および/または不純物を含有する混合物から所望の化合物を分離することが含まれる。
【0004】
クロマトグラフは、混合物の化合物を分離するために混合物を分別する方法であり、時には精製のために使用される。例えば液体クロマトグラフでは、分離すべき多数の化合物を含有する試料が流体流(すなわち、溶媒)内に注入され、クロマトグラフカラムを通り導かれる。このカラムが、カラム内の成分種の異なる保持力に応答して、混合物をその成分種に分離する。この分離された化合物と関連する濃度ピーク値が、カラムから通常順々に現れる。
【0005】
クロマトグラフピーク値は、しばしばそれらの保持時間、すなわち、注入の時間に対するバンドの中央値が検出器を通過する時間に関連して特徴づけられる。多くの用途では、ピーク値の保持時間は、標準値または較正値を組み込んだ関連する分析に基づいて溶出する検体の同定を推定するために使用される。分離された種の存在は、紫外(UV)線を利用する屈折計または吸光光度計の使用を介してしばしば識別される。
【0006】
典型的な高速液体クロマトグラフ(high−performance liquid chromatography)(HPLC)システムは、制御される流量および組成で流体(「移動相」)を供給するためのポンプ、試料溶液を流れている移動相内に導入するためのインジェクタ、充填材料または吸着剤(「固定相」)を格納する円筒柱状容器、および移動相内の試料化合物の存在および量を記録するためのUV検出器とを含む。カラムを出る移動相内の特定の化合物の存在は、次いで溶出液の物理的または化学的特性の変化を測定することによって検出される。試料の化合物各々の存在に対応する反応ピーク値は、検出器の信号を時間に対し追跡することによって観測し記録することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
目的物精製のためには、労力、稼動時間、および他のコストを減少させるために、目的化合物を可能な限り高純度で回収し、各稼動で試料の最大可能量を分離することがしばしば望ましい。しかしながら、通常のクロマトグラフシステムは、試料負荷制限を有する。ある場合には、過負荷試料の使用は、増大する処理容積をもたらす。しかしながら、過負荷は通常、置換剤材料(displacer material)またはセグメント化されたカラムの使用によって目的化合物の抽出の複雑性を増加させる。さらに、抽出された目的物はしばしば所望に満たない純度を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は部分的に、置換分離と組み合わせたグラジェントモード(gradient mode)溶出の使用、すなわち過負荷試料状態と組み合わせた時間で変化する溶媒組成の使用によって、クロマトグラフ試料からより多くの化合物をより効率的に分離できることを実現することから生じている。いくつかの有利な実施形態も、試料置換すなわち分離置換剤材料を全く試料化合物に加えないことを利用する。その他の実施形態も、溶出化合物の良好な分離を可能にするために、溶出する試料化合物間の境界の正確な観測を可能にするための質量分析計または他の適切な検出器を利用する。本発明のいくつかの実施形態では、クロマトグラフカラムを一回通過後に、比較的高純度を有する目的化合物の効率的な収集を可能にする抽出窓を装備する。
【0009】
したがって、いくつかの実施形態では、自己置換列(self−displacement train)内の化合物間の境界は、流れている溶媒組成が組成グラジェントを有するにもかかわらず、実質的に明瞭なままである。これらの実施形態のうちのいくつかでは、溶媒は分離された化合物をカラムを通させる置換剤として作用する。したがって、いくつかの従来技術方法と対照的に、例えば分離置換剤材料、または分離可能なカラム区画、または複数カラムは、分離された目的化合物を抽出するために利用する必要はない。
【0010】
これらの実施形態のうちの多くでは、UV検出は過負荷試料状態下で化合物境界を十分に区別するためには不十分な解像度を通常有するであろう。しかしながら、これらの実施形態は、置換列内の化合物間の境界の正確な識別のために、質量分析計などの適切な分析技術を利用する。
【0011】
所望の試料化合物に対する質量スペクトルピークの開始の観測は、一例の実施形態では、目的化合物の収集を応答して開始するために使用される。同様に、所望の化合物が最早溶出していないことを示す質量スペクトルピークの終わりの検出に応答して、収集は任意選択で中止される。
【0012】
したがって、本発明の一実施形態は、複数の化合物を含む試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出するための方法を特徴とする。この方法は、過負荷量の試料をクロマトグラフ導管内に注入するステップと、時間で変化する組成を有する溶媒を導管を通り流すステップを含む。試料注入に応答して、置換列が形成され、少なくとも1つの目的化合物が複数の化合物のうちの隣接する化合物から実質的に分離される。溶媒を流すことに応答して、少なくとも1つの目的化合物が隣接する化合物から実質的に分離されたままである間に、少なくとも1つの目的化合物を含む溶出液が導管の出口オリフィスから溶出する。
【0013】
本発明の第2の実施形態は、試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出するための方法を特徴とする。この方法は、過負荷量の試料をクロマトグラフ導管内に注入するステップと、少なくとも1つの目的化合物を含む溶出液を導管の出口オリフィスから溶出させるステップと、少なくとも1つの目的化合物と隣接する化合物との間の境界を識別する質量分析データを取得するステップと、識別された境界に応答して少なくとも1つの目的化合物を収集するステップとを含む。質量分析データは、溶出液の一部分から取得される。
【0014】
本発明の別の実施形態は、試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出するための装置を特徴とする。この装置は、クロマトグラフモジュール、このクロマトグラフモジュールから溶出する溶出液の一部分を受け取るようにクロマトグラフモジュールと流体連通する質量分析モジュール、ならびにクロマトグラフモジュールおよび質量分析モジュールと連絡する制御ユニットを含む。制御ユニットは、少なくとも1つのプロセッサならびに複数の指示を記憶するための少なくとも1つの記憶装置とを含み、少なくとも1つのプロセッサによって実施されるとき、過負荷量の試料をクロマトグラフモジュールのクロマトグラフ導管内に注入するステップと、少なくとも1つの目的化合物を含む材料の溶出を起こさせるために、時間で変化する組成を有する溶媒を導管を通して流すステップと、溶出材料の一部分と関連する質量分析データに応答して、少なくとも1つの目的化合物を収集するステップの実行を行わせる。
【0015】
図面では、同様な参照記号は一般に、異なる図の最初から最後まで同じ部品を示す。同様に、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに全体的に本発明の原理を図示することに強調が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書で使用される接尾辞「マー(mer)」は、ダイマー(2量体)、トリマー(3量体)、デカマー(10量体)、30マー(30量体)等などの重合体鎖を形成するために他のメンバーと連結することができるクラスのメンバーを示す。例えば、ヌクレオチドのクラスのメンバーは、互いに接合されるときオリゴヌクレオチドを形成することができ、ペプチドのクラスのメンバーは、互いに結合しポリペプチドまたは蛋白を形成することができる。
【0017】
本明細書での語句「クロマトグラフシステム」は、化学的分離を実施するための機器を呼ぶ。これらのシステムは、通常流体を圧力下で移動させる。本発明のいくつかの実施形態では、インターフェイスを介して質量分析計と流体連通して配置されるクロマトグラフシステムモジュールを含む。これらのインターフェイスは時にはイオン形態の分離された材料を作り出しまたは維持し、通常このイオンを含有する流体の流れを大気内に置き、そこでこの流れは蒸発させられ、イオンは質量分析計のオリフィス内に受けられる。オリフィスは通常、質量分析計の低圧チャンバを大気圧のインターフェイスから分離する。
【0018】
本明細書での語句「負荷能力」は、かなりのピーク広がり(peak broadening)および/または分離された化合物の置換列の形成および/またはUV検出器の解像度の損失を引き起こすことなく、カラム内に負荷することができる試料の最大容量および/または最大質量に対する閾値を呼ぶ。本明細書での「置換列」は、カラム内に試料を過負荷することに応答して形成される物理的に分離されているが近接して間隔のあいた、またはオーバーラップする化合物の群を呼ぶ。この列内の各化合物は、試料内のその量に対応するいくらかの幅を通常有する。本明細書での「自己置換」および「試料置換」は、試料化合物をカラムを通らせるために、試料および溶媒に加えて置換剤材料を使用することなしに置換列を作り出す過負荷試料の使用を呼ぶ。以下で説明するように、本発明の様々な実施形態は、化合物の比較的良好な分離および置換列化合物境界の質量分析解像度を提供する。
【0019】
本明細書での語句「クロマトグラフのアイソクラテックモード(isocratic mode)」は、時間の関数として実質的に一定のままである溶媒組成の使用を呼ぶ。アイソクラテックモードクロマトグラフ中、固定された濃度の移動相がカラムを通り流れる間に、いくつかの試料内の検体が溶出する。
【0020】
本明細書での語句「クロマトグラフのグラジェントモード」は通常、使用者の定義したプロファイルに応答して時間の関数として変化する、流れている溶媒組成を呼ぶ。溶媒は、本明細書で移動相Aおよび移動相Bと呼ばれる例えば2つの溶液の混合物である組成を有する。
【0021】
当業者によって理解されるように、溶液濃度はモル溶液として表現することができる。「1M」溶液は、例えば1モル/リットル溶液である。同様に、「1mM」溶液は1ミリモル/リットル溶液である。
【0022】
次に図1a、図1b、および図1cを参照すると、本発明の一実施形態による、複数の化合物を含む試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出する方法が記載されている。この方法は、過負荷の使用および分離された試料の溶出を起こさせるために変化する組成を有する溶媒流の使用を含む。
【0023】
図1aは、グラジェントモードの溶媒流に応答してカラム110を通り移動する過負荷試料120を含むクロマトグラフカラム110の概略図である。このカラムは吸着剤を格納し、かつ溶出液がカラムから出る出口オリフィス111を含む。図示のように、過負荷試料は分離され、カラム120内で自己置換列を形成している。この置換列120は、目的化合物121および例えば副生品化合物である非目的化合物122、123、124を含む。
【0024】
図1bは、カラム110に沿った位置の関数として、試料の分離された化合物の方形波ゾーン濃度プロファイル、ならびに溶媒の濃度グラジェントプロファイルを定性的に示す、図1bと関連する図である。この図は、試料のより弱く保持される化合物がより強く保持される化合物によってクロマトグラフ吸着剤から置換されている、試料自己置換を示す。
【0025】
本明細書での記載を考慮すると、当業者は図示されたグラジェントプロファイルは単に定性的であることを理解するであろう。例えば、このプロファイルは、アイソクラテック溶媒流の最初の期間後直線的である(一定の割合で増加する)グラジェントを定性的に示す。しかしながら処理中の時間内の特定の時点のところで、このアイソクラテック溶媒組成は導管110を通して存在することができ、あるいは例えば、溶媒組成は、導管110を通る流量および置換列120の通過の継続時間に応じて、導管110を通してほとんど一定であることができる。
【0026】
図1cは、図1bの溶媒グラジェントプロファイルと関連する溶媒組成対時間のグラフである。図示のように、この実施形態での組成は最初はアイソクラテックであり、例えば、試料を導管120内に注入するのに使用され、かつ例えば、置換列120の形成中アイソクラテックである。その後この溶媒組成は、直線的なグラジェントを有する。一般にこの記述を通して、溶媒組成は2つ以上の溶媒組成のうちの1つの溶媒組成のパーセントで表現される。多くの溶媒の実施形態は、A相組成およびB相組成を含む。本明細書で説明されるそのような実施形態に対して、溶媒組成はB相組成で表現される。
【0027】
図1a、図1b、および図1cは、本発明の一実施形態による、複数の化合物121、122、123、124を含む試料から図1aに示す化合物121などの、少なくとも1つの目的化合物を抽出する方法を示す。この方法は、試料の過負荷量をクロマトグラフ導管110内に注入するステップと、それに応答して、少なくとも1つの目的化合物121が複数の化合物122、123、124の隣接する化合物122、123から実質的に分離される置換列120を形成するステップとを含む。この方法は、導管110を通して時間で変化する組成を有する溶媒を流すステップと、それに応答して、少なくとも1つの目的化合物121を含む溶出液が導管110の出口オリフィス111から溶出するステップも含む。この少なくとも1つの目的化合物121は、隣接する化合物122、123から実質的に分離されたままである。
【0028】
この方法は、例えば、逆相HPLCおよび/またはイオン交換HPLCを含む、任意の適切なクロマトグラフ技術を使用する。導管は、例えば所望の生産速度を支持するように選択されたサイズのクロマトグラフカラムである。次に表1を参照すると、適切なカラム寸法および質量負荷が示されている。表1は、いくつかのカラム内径(ID)に対する適切で例示的な質量負荷および溶媒流量のリストである。
【表1】

【0029】
これらの例示的な値は、本発明の用途を特定のサイズのカラムの使用および/または特定の流量の溶媒に限定するためのものではない。示されるように本方法は、いくつかの従来型の溶出クロマトグラフ精製方法と比較して、試料容積でほとんど20倍またはそれ以上の増加を可能にする。
【0030】
溶媒グラジェントは、任意の適切な溶媒グラジェントから選択することができる。例えば、例示的な一実施形態では、このグラジェントは直線であり浅い。この例では、グラジェントは、どの時点においても溶媒組成が導管の長さに沿ってほとんど一定であるように徐々に傾斜する。さらに、いくつかの実施形態では、試料をカラム内に注入し分離された化合物の置換列を形成させるために、アイソクラテック溶媒が最初に使用される。次いで時間で変化する溶媒組成がこの置換列をカラムを通り移動させ、カラム出口から溶出させるために使用される。
【0031】
いくつかの適切な溶媒およびグラジェントプロファイルが以下でより詳細に説明される。説明される溶媒は、本発明の用途をどのような特定のグラジェントプロファイルに限定するためのものではない。本発明の他の実施形態は、非直線グラジェントおよび/またはより急速に、またはより急速でなく変化する溶媒濃度グラジェントを使用する。いくつかの実施形態では、グラジェントのサイズは、隣り合うゾーン間のオーバーラップを所望の量のオーバーラップより大きくなるのを回避するように選択される。
【0032】
上記で説明した方法のいくつかの代替実施形態では、カラムは粒状吸着剤材料を含む。この吸着剤材料は、シリカまたはシリカとアルキル化合物などの共重合体の混合物などの知られた材料を含む、任意の適切な吸着剤材料から選択される。この吸着剤は例えば、グラジェント状態の下での溶媒溶出中良く分離されたままである良く分離された化合物を有する置換列の発達を支持するために選択される。
【0033】
吸着剤粒子サイズおよび/またはサイズ分布は適切に選ばれる。例えば、いくつかの実施では、粒子径は、波列内の良く分離された化合物の維持を支持するのに十分に小さいように選ばれる。いくつかの実施では、適切な粒子径は、約5μmまたはそれより小さい。
【0034】
さらに、いくつかの実施形態では、多孔質変形種のシリカまたはシリカ混合物などの多孔質吸着剤材料が有利に使用される。例えば大きな分子を含有する試料に対する適切な孔のサイズは、例えば約10nmから約30nmである。いくつかの分離に対して特定の多孔質材料が、所望の化合物拡散挙動をもたらすように選ばれる。例えばいくつかの実施形態では、多孔質吸着剤が比較的大きな目的分子に対し、より小さな分子に対する拡散係数より10から10倍小さな拡散係数を可能にするように選択される。または例えばより小さな孔サイズが、置換列内の隣接する化合物間の改善された分離を可能にするために選択される。
【0035】
代替の一実施形態では、この方法は、溶出液、例えば溶出液の迂回された部分から分光データを収集するステップを含む。この分光データは、少なくとも1つの目的化合物と隣接する化合物間の境界を識別する。この分光データは、目的化合物の収集を助けるために目的化合物の開始境界および終止境界を識別するために任意選択で使用される。
【0036】
この分光データは、過負荷された試料状態の下で適切な解像度を可能にする技術を使用して収集するのが好ましい。適切な技術の1つは、質量分析、例えばエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)である。したがって任意選択で、溶出液の小さな部分が質量分析計に迂回させられる。いくつかの実施形態では、質量分析データによって支持される収集窓の識別に応答して、1つまたは複数の目的化合物が溶出液の残りから収集される。本発明のいくつかの実施形態では、収集された目的化合物は、一回のクロマトグラフ処理ステップの後で約98%またはそれより良い純度を有する。
【0037】
様々な実施形態も、目的化合物の極めて良好な収率をもたらす。そのような実施形態は収集窓の正確な選択を可能にし、その結果、精製された化合物の効率的な収集を支持する。例えば目的化合物は、試料から約80%またはそれより良い、または90%またはそれより良い収率で抽出され得る。したがっていくつかの実施形態は、クロマトグラフモジュールの一回の処理運転後で極めて優れた収率と高い純度の両方を可能にする。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態は、合成ペプチドおよびオリゴヌクレオチドなどの目的生体高分子の精製を自動化するために利用される。精製される目的材料の所望の量に応じて、過負荷条件の下で様々なカラムサイズが使用される。
【0039】
以下に、本発明のいくつかの実施形態による、目的化合物精製のいくつかの例示的な実施例が説明される。これらの実施例は、本発明の用途を限定するためのものではない。代替の実施は、分離技術の分野の技術者には明らかであろう。以下の例示的な実施例は、以下に説明する試料、材料、および機器によって取得された。
【0040】
試料−合成25量体のホスホロチオエート(PS)オリゴヌクレオチド(マサチューセッツ州ケンブリッジのHybridon,Inc.から入手可能)および合成ペプチド(マサチューセッツ州ボストンのCell Essentialsおよびカリフォルニア州ダブリンのSynPepから入手可能)。
【0041】
溶媒−オリゴヌクレオチドに対して、pH8.3に調整された100mMヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)および8.6mMトリエチルアミン(TEA)を含む溶媒移動相A、ならびに100%メタノール(MeOH)を含む溶媒移動相B。ペプチドに対して、水中に0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む溶媒移動相A、ならびにアセトニトリル(ACN)内に0.08%TFAを含む溶媒移動相B。
【0042】
クロマトグラフ分離−2996光ダイオードアレー(PDA)検出器を装備するCAPLC分離モジュールを有するHPLC(マサチューセッツ州ミルフォードのWaters Corporationから入手可能)によってキャピラリ分離が実施された。分析用の分離は、2996PDA検出器を装備するALLIANCEバイオ分離システム(マサチューセッツ州ミルフォードのWaters Corporationから入手可能)で行われた。
【0043】
質量分析−CAPLCシステムから溶出するオリゴヌクレオチドの分析に対して、分光分析がMICROMASS LCT(商標)質量分析計(マサチューセッツ州ミルフォードのWaters Corporationから入手可能)で行われ、ALLIANCEバイオ分離システムから溶出するペプチドの分析に対してMICROMASS ZQ(商標)シングル四重極質量分析計(マサチューセッツ州ミルフォードのWaters Corporationから入手可能)で行われた。
【0044】
カラム:それぞれ1.0mm×50mmの内径および長さ寸法を有するXTERRA C18カラム、および2.5μmの吸着剤粒子サイズが、いくつかのオリゴヌクレオチドの分離のために使用された。2.1mm×150mmの内径および長さ寸法を有するATLANTIS dC18カラム、および5μmの吸着剤粒子サイズが、いくつかのペプチドの分離のために使用された。4.6mm×100mmの内径および長さ寸法を有するATLANTIS dC18カラム、および5μmの吸着剤粒子サイズが、いくつかのペプチドの予備精製のために使用された。(全てのカラムは、Waters Corporation,Milford,MAから入手可能)。
【0045】
図2aは、4つの異なる試料負荷(1μg、10μg、25μg、および100μg)に対応する、25量体PSオリゴヌクレオチドの分離から取得された4つのUVクロマトグラム(260nm波長吸収、時間および強度の座標系は任意単位)を示す。この分離は、イオン対逆相HPLCによって取得された。溶媒グラジェント条件は、以下のとおりであった。移動相Bの1分間の間の0から13%の直線グラジェントに続く、移動相Bの28分間の13から20%の直線グラジェント。カラム内径は1mm、温度は60℃、溶媒流量は23.6μL/分であった。
【0046】
図示のように、PSオリゴヌクレオチドのクロマトグラフのピークのUV検出は、特に100μg負荷のところで、増加する質量負荷によって飽和になった。例えば100μg負荷に対して、UVクロマトグラムは試料化合物の置換波が形成されているが、分離された化合物間のどこに境界が存在するのか、あるいは境界が存在するか否かが、明瞭に示されていない。
【0047】
次に図2bを参照すると、質量分析データは、化合物の良好な分離および目的化合物に対する適切な収集窓の両方の比較的明瞭な指示をもたらしている。図2bは、図2aの100μg負荷試料の3つの化合物(25量体、24量体、および23量体)に対するエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルイオンクロマトグラムを示す(参考までに、図2bは図2aからのUVクロマトグラムも含む)。このイオンクロマトグラムは、置換列がカラムから溶出するとき、数分間の時間にわたる一連の質量分析スキャンを収集することによって取得された。各スキャンは、1秒間340Daから1500Daの質量対電荷比にわたりスキャンすることによって収集された。
【0048】
図示のように、3つの化合物はわずかに異なる保持時間を有する。しかしながらこの化合物は、質量分析データによって観測できるように、過負荷試料および溶媒グラジェントの両方にもかかわらず、物理的に(かつ時間的に)良く分離されたままである。しかしながら上記で説明したように、この化合物は、UVクロマトグラムでは分離が不十分である。したがって、主要な合成不純物例えば24量体および23量体のない収集が望ましいとき、質量分析データがUV吸収データとは対照的に、例えば分離目的のための溶出する25量体化合物の正確な識別に適している。
【0049】
この実施例で示すように、いくつかの試料種類の密接に関連する化合物は、本質的に接近するUV吸収ピークを有する。ある場合には、そのような試料化合物に対して、それらの関連するUVピークは、それらの密接な接近に起因して依然としてオーバーラップして現れる比較的はっきりした境界を有するであろう。しかしながら質量分析データは、それらの質量差に応答してこれらの化合物を容易に区別する。
【0050】
したがって、いくつかの従来型の置換クロマトグラフ方法と対照的に、目的化合物はカラムから溶出させられ、別の置換剤材料の使用なしで置換列内で隣接する化合物からの良好な分離を保持する。
【0051】
図3a、3bおよび3cは、それぞれ2μg、200μg、および1000μgの試料負荷を有する合成ペプチド分離から取得されたUV吸着クロマトグラム(220nm波長)および質量スペクトルイオンクロマトグラムを示す。この試料は、1873.2Daの質量対電荷比(m/z)値(二重荷電=937.1m/z)の目的ペプチドおよびm/z=758.1Daのところに近接して溶出する合成不純物を有する、WLTGPQLADLYHSLMKのペプチド配列(NからC終端まで)を有していた。
【0052】
分離は、内径2.1mmを有するカラムを含む、上記で説明した分析分離機器によって行われた。溶媒グラジェントは以下のパラメータを有していた:移動相Bの30分間に対し18%から42%までの直線グラジェント、および0.2mL/分の流量。温度は室温であった。質量スペクトルデータは、2.2秒のスキャン時間で300Daから2500Daまでのm/z範囲をスキャンすることによって取得された。約30分の溶出時間にわたり取られた一連のスペクトルは、時間にわたり溶出する目的物および不純物の濃度と関連する図示の強度対時間曲線をもたらした。
【0053】
この実施例の2μg、200μg、および1000μgの試料負荷は、それぞれ分析注入すなわち過負荷閾値より少ない状態、半予備注入すなわち閾値に近い状態、および過負荷状態と関連する。増加する負荷と関連する減少する保持時間および増加するピーク幅は、過負荷閾値に到達し超えたときの置換列の形成を示す。
【0054】
図示のように、過負荷状態に対して、質量分析データは目的物および不純物がグラジェント溶出の下で良く分離されたままであることの明瞭な指示をもたらしている。上記で説明したこのデータは、本発明のいくつかの実施形態では、分離の目的物および/または他の化合物の収集を始動させるために応答的に使用される。例えば、図3cを再び参照すると、目的質量分析ピークの上昇する縁部は、ある場合に目的物の収集を始動させるために、かつ/または目的質量分析ピークの下降する縁部は目的物の収集を中止するために使用される。別法として、例えば、不純物ピークの観測された端部は、目的物の収集を始動させるために使用される。
【0055】
上記で説明した方法で、目的物は一回のクロマトグラフ分離プロセスの後で、例えば約95%から98%または99%またはそれ以上の純度を有して収集される。さらに本発明のいくつかの実施形態は、分光データに応答して、分離の1つまたは複数の目的化合物および/または他の化合物の自動化された収集を可能にする。
【0056】
次に図4および図5を参照して、自動化された精製システムの実施例が説明される。所望の分離化合物の収集を始動させるための質量分析データの使用による自動化の利用を介して、多数の試料が効率的に処理される。例えば、質量分析計は、試料内の目的物の期待される分子量を検出し、その期待される分子量の検出に応答して精製された目的物の収集を指示するように構成される。
【0057】
図4は、本発明の一実施形態による、精製システム400の実施形態のブロック図である。このシステムは、クロマトグラフモジュール410、質量分析計モジュール420、制御ユニット430、溶出液流量制御ユニット440、希釈剤供給部450、および収集ユニット460とを含む。
【0058】
溶出液流量制御ユニット440は、クロマトグラフ構成要素410から溶出液を受け取り、この溶出液の部分を収集モジュール460および質量分析計モジュール420に導く。溶出液流量制御ユニット440は、希釈液を質量分析計モジュール420に導かれる溶出液の部分と混合することができるように、希釈剤供給部とも流体連通している。
【0059】
クロマトグラフモジュール410は、カラムベースの機器などの知られた機器を含む、任意の適切なクロマトグラフ機器を含む。適切なカラムには、クロマトグラフ技術の技術者に知られたカラムが含まれる。カラムは、例えば金属または絶縁材料から形成することができる。適切な材料には、鋼、溶融シリカ、または裏張りされた材料などの知られた材料が含まれる。カラムは、直列および/または並列の構成で配設された2つ以上のカラムを含むことができる。例えばこのカラムは、キャピラリカラムであり、複数のキャピラリチューブを含むことができる。
【0060】
制御ユニット430は、データ通信分野で知られているものなどの有線および/または無線手段を介して、システム400の他の構成要素とデータ通信する。この制御ユニット430は、例えば質量分析計モジュール420からプロセスデータを受け取り、制御信号を他の構成要素、例えば流量制御ユニット440に供給する。制御ユニット430は、精製システム400による試料精製の自動化を支持するように構成される。様々な例示的な実施形態では、この制御ユニット430は、ソフトウエア、ファームウェア、および/または(例えば、特定用途向け集積回路などの)ハードウエアによって実施され、所望の場合、ユーザーインターフェイスを含む。制御ユニット430は記憶構成要素を含み、かつ/または記憶構成要素と通信する。
【0061】
制御ユニット430の適切な組込み物には、例えば、マイクロプロセッサなどの1つまたは複数の集積回路が含まれる。いくつかの代替実施形態では、単一の集積回路またはマイクロプロセッサは、制御ユニット430およびシステム400の他の電子部分を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のマイクロプロセッサが、制御ユニット430の機能を可能にするソフトウエアを実施する。いくつかの実施形態では、このソフトウエアは汎用機器上で、および/または本明細書で説明した機能専用の専門のプロセッサで作動するように設計される。
【0062】
システム400のいくつかの実施では、この制御ユニット430は、制御ユニット430および/またはシステム400の他の部分との相互作用を支持するためのユーザーインターフェイスを含む。例えば、このインターフェイスは、ユーザーから制御情報を受け取り、システム400に関する情報をユーザーに供給するように構成される。このユーザーインターフェイスは、例えばシステム制御パラメータを設定するため、かつ/またはユーザーに診断またはトラブルシューティング情報を供給するために使用される。一実施形態では、このユーザーインターフェイスは、システム400と作動環境現地にまたは作動環境から遠隔にのいずれかに位置するユーザーとの間のネットワーク化される通信を可能にする。いくつかの実施でのこのユーザーインターフェイスは、ソフトウエアを改変し最新のものにするために使用される。
【0063】
流量制御ユニット440は、溶出液の全部または一部分を収集モジュール460および/または質量分析計モジュール420に導くように構成される。例えば、試料の置換列の溶出中、溶出液の少部分、例えば容積で約1%が流量制御ユニット440によって質量分析計モジュール420に導かれる。次いで、質量分析がこの迂回された溶出液に対し行われ、所望の目的化合物のm/z値の検出に応答して、制御ユニット430が流量制御ユニット440に溶出液を収集モジュール460に導くように指示し、かつ/または収集モジュール460に溶出液の収集を開始するように指示する。
【0064】
本発明の一実施形態では、この制御ユニットは、実行されるとき本明細書で説明した方法のうちの任意の1つを実施させる指示を記憶させるための記憶装置を含む。例えば一実施形態では、この指示は、システム400にさらなる人間の介入なしに以下のステップを実施させる:試料の過負荷量を注入するステップ;時間で変化する組成を有する溶媒を流すステップ;および溶出液の一部分と関連する質量分析データに応答して、目的材料を収集するステップ。
【0065】
本明細書で提供される例示的な実施形態の記載を考慮すると、分離分野の技術者には、目的化合物の収集の自動制御を行うための本発明の他の実施形態に制御ユニットの様々な他の構成および実施を使用することができることは明らかであろう。
【0066】
本発明の他の実施形態によるいくつかの特定の、例示的な移動相および関連するグラジェントが本明細書で説明されているが、他の適切な移動相およびグラジェントが代替プロセスで使用される。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、移動相は質量分析とのそれらの適合性に対して選択される。いくつかの溶媒は直接的に適合性があり、質量分析に先立ち希釈を全く必要としない。その他は間接的に適合性があり、質量分析に先立っていくらかの希釈を必要とする。例えば、希釈なしでは、いくつかの溶媒は質量分析計の検出感度を減少させる。
【0067】
直接的に適合性のある溶媒の一例は、ACN中の0.08%TFAの移動相Bと組み合わされた、水中の0.1%TFAの移動相Aである。この溶媒は、例えばペプチド試料を分離するために、本発明のいくつかの実施形態で使用される。
【0068】
間接的に適合性のある溶媒の一例は、MeOHの移動相Bと組み合わされた、HFIPおよびTEAを含む移動相Aである。この場合溶出液の一部分は、質量分析に先立ち例えば10倍に希釈されるのが有利である。この溶媒は、例えばオリゴヌクレオチド試料を分離するために、本発明のいくつかの実施形態で使用される。
【0069】
希釈剤は、例えば質量分析計との改善される適合性をもたらすように選択される。知られた材料を含む任意の適切な材料を希釈剤として使用することができる。例えば、1つの希釈剤は約50%ACNおよび約50%の水を含む。より一般的には、いくつかの実施形態では、希釈剤は約20%から約50%の有機化合物および約50%の水を含む。
【0070】
次に図5を参照して、自動分析の一例が説明される。図5は、図3a、3b、および3cと関連する合成ペプチドの20mg負荷から取得されたUV吸着クロマトグラム(220nm波長、強度の単位は任意)および質量スペクトルイオンクロマトグラムを図示する。目的ペプチドに対する1つおよび試料不純物に対する2つの、質量分析によって取得された3つのクロマトグラムが示されている(強度単位は任意)。
【0071】
この分離は、内径4.6mmを有するカラム内で行われた。溶媒グラジェントは、1分間10%移動相Bのところの最初の保持を有し、その後、溶媒の移動相Bの組成が90分無処理中に10%から50%に増加させられた直線グラジェントが続いた。溶媒流量は1.0mL/分であった。このカラムは、室温で保持された。目的ペプチドに対する分別物収集は、1874.0Daの質量重量の選択されたイオン監視によって始動された。収集された部分の再注入は、最初に収集された部分は約98%の純度を有することを示し、一方、元の試料内の目的物の純度は約86%であった。
【0072】
本明細書で説明されるものの変形形態、改変形態および他の実施は、特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者は気付くであろう。例えば本発明の様々な実施形態は、限定ではなく、薬剤、抗原性薬剤、親和性標識(affinity tag)、診断薬(diagnostics)、RNAi、オリゴプローブ(oligo−probe)、およびフェニル基試料などの小さな分子量の試料を含む様々な材料の精製に適している。したがって、本発明は、前述の例示的な説明ではなく、その代わりに特許請求の範囲の趣旨および範囲によって定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1a】本発明の一実施形態による、グラジェントを有する、流れる溶媒に応答してカラムを通り移動している過負荷試料を含有するクロマトグラフカラムの概略図である。
【図1b】図1aと関連する、分離された化合物の方形波濃度プロファイルおよび溶媒グラジェントプロファイルの図である。
【図1c】図1bの溶媒グラジェントプロファイルと関連する、溶媒組成対時間のグラフである。
【図2a】本発明の一実施形態による、4つの異なる試料負荷に対応するオリゴヌクレオチド試料の分離から取得された4つのUVクロマトグラムのグラフである。
【図2b】図2aと関連する100μg試料の3つの化合物に対するUVクロマトグラムおよび質量スペクトルイオンクロマトグラムのグラフである。
【図3a】2μgの試料負荷を有する合成ペプチド分離から取得されたUV−吸着クロマトグラムおよび質量スペクトルイオンクロマトグラムのグラフである。
【図3b】200μgの試料負荷を有する合成ペプチド分離から取得されたUV−吸着クロマトグラムおよび質量スペクトルイオンクロマトグラムのグラフである。
【図3c】1000μgの試料負荷を有する合成ペプチド分離から取得されたUV−吸着クロマトグラムおよび質量スペクトルイオンクロマトグラムのグラフである。
【図4】本発明の一実施形態による、精製システムの一実施形態のブロック図である。
【図5】図3a、3b、および3cと関連する合成ペプチドの20mg負荷から取得されたUVクロマトグラムおよびマススペクトルイオンクロマトグラムのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフ導管内に過負荷量の試料を注入するステップであって、それに応答して、少なくとも1つの目的化合物が複数の化合物のうちの隣接する化合物から実質的に分離される置換列を形成させるステップと、
導管を通して、時間で変化する組成を有する溶媒を流すステップであって、それに応答して、少なくとも1つの目的化合物が実質的に隣接する化合物から分離されたままである間に、少なくとも1つの目的化合物を含む溶出液を導管の出口オリフィスから溶出させるステップとを含む、複数の化合物を含む試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出する方法。
【請求項2】
溶出液の一部分から、少なくとも1つの目的化合物と隣接する化合物との間の境界を識別する分光データを取得するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分光データを取得するステップが質量分析データを取得するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
識別された境界に応答して少なくとも1つの目的化合物を収集するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
収集された少なくとも1つの目的化合物が少なくとも約98%の純度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
収集された少なくとも1つの目的化合物が少なくとも約80%の収率を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
収集された少なくとも1つの目的化合物が少なくとも約95%の純度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
取得するステップが、少なくとも1つの目的化合物と関連する収集窓を識別するステップを含み、かつ識別された収集窓に応答して少なくとも1つの目的化合物を収集するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
溶媒を流すステップが、時間で変化する組成に少なくとも1つの第1の直線グラジェントを有するようにさせるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
溶媒を流すステップが、時間で変化する組成に直線グラジェントに続いて第2の直線グラジェントを有するようにさせるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
溶媒を流すステップが、過負荷試料を注入する間、時間で変化する組成にアイソクラテックな部分を有するようにさせるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
溶出液の一部分を質量分析計に導くステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
溶出液の一部分が溶出液の約5%未満を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
過負荷量が、約1.0mg/mmより大きな導管断面積に対する質量比に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
置換列が自己置換列である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
クロマトグラフ導管が約5μm未満のサイズを有する吸着剤粒子を格納する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
吸着剤粒子が、約10nmから約30nmの範囲内の孔サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
過負荷量が、少なくとも1つの目的化合物および隣接する化合物がUV吸収分光分析によって十分に分離することができないように、置換列内の少なくとも1つの目的化合物にUV検出器の感度を飽和させるのに少なくとも十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
溶媒が質量分析計と十分に適合性のある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
溶出液の一部分に対して質量分析を行うステップに先立ち、溶出液の一部分を希釈するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
溶媒が、水を含む第1の移動相、およびアセトニトリルを含む第2の移動相を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第1の移動相および第2の移動相の各々がトリフルオロ酢酸をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
溶媒を流すステップが、時間で変化する組成を移動相Bの約15%と約50%の間で変化させるステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
溶媒がヘキサフルオロイソプロパノールおよびトリエチルアミンを含む移動相A、およびMeOHを含む移動相Bを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
溶媒を流すステップが、時間で変化する組成を移動相Bの約0%と約25%の間で変化させるステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
試料が合成生体高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
試料がオリゴヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
試料がペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
隣接する化合物が反応副生品を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの目的化合物が隣接する化合物より親水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
過負荷量の試料を注入した後で、クロマトグラフ導管内に置換剤材料を注入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
クロマトグラフ導管内に過負荷量の試料を注入するステップであって、それに応答して、少なくとも1つの目的化合物が複数の化合物のうちの隣接する化合物から実質的に分離される置換列を形成させるステップと、
少なくとも1つの目的化合物が隣接する化合物から実質的に分離されたままである間に、少なくとも1つの目的化合物を含む溶出液を導管の出口オリフィスから溶出させるステップと、
溶出液の一部分から、少なくとも1つの目的化合物と隣接する化合物との間の境界を識別する質量分析データを取得するステップと、
識別された境界に応答して少なくとも1つの目的化合物を収集するステップとを含む、複数の化合物を含む試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出する方法。
【請求項33】
収集された少なくとも1つの目的化合物が少なくとも約98%の純度を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
クロマトグラフモジュールと、
少なくとも1つの目的材料を含む溶出液の一部分をクロマトグラフモジュールから受け取るようにクロマトグラフモジュールと流体連通する質量分析モジュールと、
少なくとも1つのプロセッサおよび複数の指示を記憶するための少なくとも1つの記憶装置を備える、クロマトグラフモジュールおよび質量分析モジュールと連絡している制御ユニットであって、少なくとも1つのプロセッサによって実施されるとき、
過負荷量の試料をクロマトグラフモジュールのクロマトグラフ導管内に注入するステップであって、それに応答して、少なくとも1つの目的化合物が複数の化合物のうちの隣接する化合物から実質的に分離される置換列を形成させるステップと、
時間で変化する組成を有する溶媒を導管を通して流すステップであって、それに応答して、少なくとも1つの目的化合物を隣接する化合物から実質的に分離されたままである間に、少なくとも1つの目的化合物を含む溶出液を導管の出口オリフィスから溶出させるステップと、
溶出液の一部分と関連する質量分析データに応答して、少なくとも1つの目的化合物を収集するステップとを実施させる制御ユニットとを備える、複数の化合物を含む試料から少なくとも1つの目的化合物を抽出する装置。
【請求項35】
溶出液の第2の部分を受け取るために、クロマトグラフモジュールと流体連通する収集ユニットをさらに含む、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
溶出液の一部分を質量分析モジュールに、かつ溶出液の第2の部分を収集モジュールに導くように、クロマトグラフモジュールと流体連通する流量制御ユニットをさらに備える、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
希釈剤を溶出液の一部分と混合させるために流量制御ユニットと流体連通する希釈剤供給部をさらに備える、請求項36に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−537153(P2008−537153A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507910(P2008−507910)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/015060
【国際公開番号】WO2006/116064
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)