説明

生分解性シート

【課題】生分解性に加え、柔軟性や強度についても良好な特性を有し、これによって建設現場での実際の使用に耐え得る良好な生分解性シートを提供する。
【解決手段】生分解性を有する樹脂製のシートであって、厚さが50μm以上600μm以下、弾性率が200MPa以上400MPa以下、引張強度が10MPa以上、伸び率が250%以上である。この生分解性シートは、少なくとも澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとを含有してなるコンパウンドより成形されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場で使用される生分解性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築や土木に関する建設現場では、以下のような用途で汎用プラスチックシート(塩化ビニールシート、ポリエチレンシートなど)が大量に使用されている。
(1)軟弱地中に含まれる水や空気を強制的に除去し、地盤の密度・強度を増加させる地盤改良工法に用いられる気密シート。
(2)含水率が非常に高い建設現場で発生する建設排土や、海水・湖水中の浚渫土を、減容化・再利用するなどの目的で、土をシートで包み込み、脱水する際に使用される気密シート。
(3)浚渫土を砂で被覆して海底地盤を改良する際、砂が含水比の高い浚渫土に巻き込まれることを防止することを目的に設置される砂・浚渫土分離シート
(4)仮設テントなどに使用される膜シート(屋根材や減圧型を含む室内空間形成材など)
(5)アスベスト除去処理の際に使用される飛散防止用養生シート(減圧下に対応可能なシート)
【0003】
このような建築・土木用のシートでは、作業性の点から施工時には柔軟性が求められ、また、施工後においては、適度な強度・伸びなどの性能(物性)、すなわち耐久性が求められている。
ところで、これら建築・土木用シートは、使用後に除去する必要があり、したがって除去に要する手間がかかり、また、産業廃棄物の発生や、その場合の産廃処理費の発生などといった問題があった。
【0004】
このような背景から近年では、特に施工時の環境負荷低減、産業廃棄物の削減、周辺環境への影響低減などといった環境問題への配慮や、施工の効率化・省力化などを目的として、建設関連の現場では生分解性のフィルムやシートを使用した工法が強く要望されている。そして、このような要望に応えるものとして、例えば生分解性のフィルムからなるシート(養生シート)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−105776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建設現場で使用される、前記(1)〜(5)に示したような各種の用途に用いられるシート(フィルム)については、単に生分解性を備えるだけでは不十分であり、特に作業性や耐久性についてもある程度の特性を備えていることが重要であるとの認識が高まっている。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、生分解性に加え、柔軟性や強度についても良好な特性を有し、これによって建設現場での実際の使用に耐え得る良好な生分解性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生分解性シートは、生分解性を有する樹脂製のシートであって、厚さが50μm以上600μm以下、弾性率が200MPa以上、引張強度が10MPa以上、伸び率が250%以上であることを特徴とする。
【0008】
この生分解性シートによれば、生分解性を有することにより、例えば建築・土木に関する建設現場にて使用された後、土中で二酸化炭素と水とに分解し、最終的にはその形状を留めることなく散逸する。また、弾性率が200MPa以上400MPa以下の樹脂製シートであるので、良好な柔軟性を有し、手触りなどの感触も良く、したがって施工時においてこのシートの取り扱いが容易になり、作業性が良好になる。また、厚さが50μm以上600μm以下であり、引張強度が10MPa以上、伸び率が250%以上であるので、施工後、外力によってこの生分解性シートにこれを収縮する力や引っ張る力が作用しても、これら外力に対応して支障無く伸縮するので、シートとしての機能が保持され、十分な耐久性が発揮される。
【0009】
また、前記生分解性シートにおいては、前記シートが、少なくとも澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとを含有してなるコンパウンドより、押出成形加工やインフレーション成形加工などによって成形されているのが好ましい。
【0010】
また、前記生分解性シートにおいては、前記澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとが、エステル置換度1.0以上の澱粉脂肪酸エステル、あるいは前記澱粉脂肪酸エステルを主成分とする熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂として含有されて、前記コンパウンドが形成されているのが好ましい。
【0011】
また、前記生分解性シートにおいては、前記コンパウンドに柔軟化可塑剤が0.1重量部以上20.0重量部以下の範囲内で含有されており、該柔軟化可塑剤は、フタル酸系可塑剤、脂肪族二塩基エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤、ポリエステル系可塑剤のうちの一種又は二種以上の混合物からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生分解性シートによれば、生分解性を有することにより、前述したように使用後土中で分解し、散逸(消滅)するので、最終的に産業廃棄物を削減することができ、また、廃棄のための分別処理作業を省力化することができ、さらに、土中に廃棄された場合にも完全に分解するため環境への負荷を低減することができる。また、良好な柔軟性を有し、手触りなどの感触も良く、したがって施工時における取り扱いも容易になるため、作業性をより良好にすることができる。さらに、シートとしての機能を保持し、十分な耐久性を発揮するので、例えば施工後、屋外環境下にて土に接した状態で所定期間(例えば3ヶ月から6ヶ月)使用されていても、その間にシートとして要求される機能を良好に発揮するようになる。
【0013】
したがって、本発明により、強度・柔軟性についてのバランスがとれており、施工時の作業性がよく、かつ使用期間中は目的とした機能を持続し、使用後埋設された場合には土中で分解することで散逸(消滅)し、環境への負荷を十分に低減できる建築・土木用の性分解性シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の生分解性シートを詳しく説明する。
本発明の生分解性シートは、厚さが50μm以上600μm以下の樹脂製のシートであって、特にその特性(物性)として、弾性率が200MPa以上400MPa以下、引張強度が10MPa以上、伸び率が250%以上のものである。
このような物性を有する生分解性シートは、澱粉と、生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルと、を含有し、必要に応じて柔軟化可塑剤が添加されて形成されたコンパウンドより、シート状に成形されてなるものである。
【0015】
ここで、生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとしては、以下のようなものが好適に使用される。
「脂肪族ポリエステル」
PBS(ポリブチレンサクシネート)、PBSA(ポリブチレンサクシネートアジペート)、PCL(ポリカプロラクタン)、PESA(ポリエチレンサクシネートアジペート)
「芳香族脂肪族ポリエステル」
PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)、PBSAT(ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート)
【0016】
また、前記澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとしては、エステル置換度1.0以上の澱粉脂肪酸エステル、あるいはこの澱粉脂肪酸エステルを主成分とする熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂の形態で好適に用いられる。すなわち、本発明の生分解性シートは、エステル置換度1.0以上の澱粉脂肪酸エステル、あるいはこの澱粉脂肪酸エステルを主成分とする熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂に、必要に応じて柔軟化可塑剤が添加されて混合され、改質されてコンパウンドに形成された後、押出成形加工やインフレーション成形加工などによって厚さ50μm以上、600μm以下のシートに成形されたものが好ましい形態となる。
【0017】
また、生分解性シートが使用される環境が、水気の比較的少ない場所や湿気のある砂地、さらには寒冷地など特殊である場合、前記澱粉としては、未変性澱粉や軽度(置換度が一般的に0.5以下)の各種化工澱粉(修飾澱粉とも言い、エーテル化、エステル化などの変性を含む)を用いることもできる。すなわち、このように特殊な環境で用いられるものの場合、前記澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとしては、前記の未変性澱粉や軽度の各種加工澱粉(修飾澱粉)を、グリセリンやトリアセチンなどの油性可塑剤で可塑化し、その後、前記したような生分解性の脂肪酸ポリエステルあるいは生分解性の芳香族脂肪族ポリエステルとブレンドした樹脂が、好適に用いられるのである。
【0018】
そして、このような樹脂からコンパウンドが形成され、このコンパウンドが押出成形加工やインフレーション成形加工などによって厚さ50μm以上、600μm以下のシートに成形されたことにより、本発明の生分解性シートが得られる。ここで、このようにして得られる生分解性シートは、前述したように、必要に応じて柔軟化可塑剤が添加されることなどにより、弾性率が200MPa以上400MPa以下、引張強度が10MPa以上、伸び率が250%以上となるように調整されている。
【0019】
ここで、前記澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとして、具体的には、生分解性を有する熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂(例えば、日本コンスターチ株式会社製「コーンポールCPR−F」)が好適に用いられる。このような熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂を用いることにより、得られる生分解性シートは、機械的強度(引張強度、伸び率)や柔軟性(弾性率)が前記した値(範囲)となり、施工期間中での劣化が防止されて良好な耐久性を有するようになり、また施工性にも優れ、使用後の生分解性の面でも十分な機能を発揮する、バランスのとれた機能性シートとなる。
【0020】
このような熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂には、この樹脂100重量部に対して、柔軟化可塑剤が0.1重量部以上20.0重量部以下の範囲で配合(添加)・混合され、コンパウンドに形成される。柔軟化可塑剤を添加するのは、建設現場でのシートの取り扱い性を良好にすべく弾性率を低くし、これによって施工時の作業効率を向上させるためである。また、20重量部以下とするのが好ましいのは、この重量部を越えてもシート化は可能であり、短期間であれば十分使用可能であるものの、長期間の使用、あるいは高い減圧状態での使用に関しては、強度面で不具合が生じるおそれがあるからである。さらに、0.1重量部以上とするのが好ましいのは、これより少ないと、柔軟化可塑剤を添加することによる効果がほとんど得られないからである。ただし、後述するように、使用する澱粉によっては柔軟化可塑剤を添加することなく、前記の各性状(物性等)を満足する生分解性シートを得ることもできる。
【0021】
柔軟化可塑剤としては、フタル酸系可塑剤、脂肪族二塩基エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤、ポリエステル系可塑剤が好適に用いられ、これらのうちの一種、又は二種以上の混合物を用いることができる。具体的には、以下のようなものを挙げることができる。
「フタル酸系可塑剤(フタル酸エステル)」
フタル酸ジ2エチルヘキシル、フタル酸ジブチル、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど。
「脂肪族二塩基エステル系可塑剤(脂肪族二塩基酸エステル)」
アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ2エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジn−アルキルなど。
「クエン酸エステル系可塑剤(クエン酸エステル)」
アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど
「多価アルコール系可塑剤(多価アルコールエステル)」
トリアセチン、トリプロピオニンなど。
「エポキシ化植物油系可塑剤(エポキシ化植物油)」
エポキシ化大豆油・エポキシ化脂肪酸アルキルエステルなど。
「ポリエステル系可塑剤(ポリエステル)」
ポリ1,3−ブタンジオールアジペート、アジピン酸系ポリエステル商品(PN150、PN160、PN170、PN650:いずれも旭電化株式会社製)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレートなど。
【0022】
なお、前述したように本発明の生分解性シートにおいては、柔軟化可塑剤を必ずしも添加する必要はない。具体的には、澱粉の分子量が十分に低く、分子量が高い場合に比べて柔軟化され易い場合には、柔軟化可塑剤を添加しなくても、前記した200MPa以上400MPa以下の弾性率に形成することが可能になる。その場合に、更に柔軟化可塑剤を添加すると、弾性率が前記範囲から外れ、軟らかくなり過ぎてかえって取り扱いに支障をきたすおそれが生じてしまう。したがって、このように澱粉の分子量が十分に低く、柔軟化可塑剤を添加しなくても弾性率が前記の所定範囲になる場合には、柔軟化可塑剤の添加を省略することができる。
【0023】
このような生分解性シートは、特に建築や土木に関する建設現場において、以下のような用途に好適に使用される。
(1)軟弱地中に含まれる水や空気を強制的に除去し、地盤の密度・強度を増加させる地盤改良工法に用いられる気密シートとして。
(2)含水率が非常に高い建設現場で発生する建設排土や、海水・湖水中の浚渫土を、減容化・再利用するなどの目的で、土をシートで包み込み、脱水する際に使用される気密シートとして。
(3)浚渫土を砂で被覆して海底地盤を改良する際、砂が含水比の高い浚渫土に巻き込まれることを防止することを目的に設置される砂・浚渫土分離シートとして。
(4)仮設テントなどに使用される膜シート(屋根材や減圧型を含む室内空間形成材など)として。
(5)アスベスト除去処理の際に使用される飛散防止用養生シート(減圧下に対応可能なシート)として。
【0024】
そして、このような用途に用いられることにより、本実施形態の生分解性シートによれば、生分解性を有することにより、例えば建築・土木に関する建設現場にて使用した後、土中で二酸化炭素と水とに分解し、最終的にはその形状を留めることなく散逸する。したがって、最終的に産業廃棄物を削減することができ、また、廃棄のための分別処理作業を省力化することができ、さらに、土中に廃棄された場合にも完全に分解するため環境への負荷を低減することができる。
【0025】
また、弾性率が200MPa以上400MPa以下の樹脂製シートであるので、良好な柔軟性を有し、手触りなどの感触も良く、したがって施工時においてこのシートの取り扱いが容易になるため、作業性を良好にすることができる。さらに、厚さが50μm以上600μm以下であり、引張強度が10MPa以上、伸び率が250%以上であるので、施工後、外力によってこの生分解性シートにこれを収縮する力や引っ張る力が作用しても、これら外力に対応して支障無く伸縮するので、シートとしての機能が保持され、十分な耐久性が発揮される。よって、例えば施工後、屋外環境下にて土に接した状態で所定期間(例えば3ヶ月から6ヶ月)使用されていても、その間にシートとして要求される機能を良好に発揮するようになる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されないのはもちろんである。
(実施例1)
生分解性を有する熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂(日本コンスターチ株式会社製「コーンポールCPR−F」)を原料として用い、これに柔軟化可塑剤としてエポキシ化大豆油(ESO)を5重量%添加し、コンパウンドを作製した。その後、このコンパウンドからTダイ加工によって押出成形し、膜厚500μmの澱粉エステル系の生分解性シートを製造した。その際、シートの両面をコロナ処理した。
得られた生分解性シートについて、弾性率、最大点荷重、引張強度、伸び率をJISなどに規定される方法で測定した。結果を以下の表1に示す。
また、後述する比較例と比較するため、耐候性、施工後性能も評価した。得られた結果を表2に示す。
【0027】
(実施例2)
実施例1において、柔軟化可塑剤としてエポキシ化大豆油(ESO)に代えてフタル酸ジブチル(フタル酸エステル系可塑剤)を用いた。それ以外は実施例1と同じにして、生分解性シートを製造した。
得られた生分解性シートについて、弾性率、最大点荷重、引張強度、伸び率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に併記する。
【0028】
(実施例3)
実施例1において、柔軟化可塑剤としてエポキシ化大豆油(ESO)に代えてアジピン酸イソデシル(脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤)を用いた。それ以外は実施例1と同じにして、生分解性シートを製造した。
得られた生分解性シートについて、弾性率、最大点荷重、引張強度、伸び率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に併記する。
【0029】
(実施例4)
実施例1において、柔軟化可塑剤としてエポキシ化大豆油(ESO)に代えてo−アセチルクエン酸トリブチル(クエン酸エステル系可塑剤)を用いた。それ以外は実施例1と同じにして、生分解性シートを製造した。
得られた生分解性シートについて、弾性率、最大点荷重、引張強度、伸び率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に併記する。
【0030】
(実施例5)
実施例1において、柔軟化可塑剤としてエポキシ化大豆油(ESO)に代えてトリアセチン(多価アルコールエステル系可塑剤)を用いた。それ以外は実施例1と同じにして、生分解性シートを製造した。
得られた生分解性シートについて、弾性率、最大点荷重、引張強度、伸び率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に併記する。
【0031】
(実施例6)
実施例1において、柔軟化可塑剤としてエポキシ化大豆油(ESO)に代えてポリ1,3−ブタンジオールアジペート(ポリエステル系可塑剤)を用いた。それ以外は実施例1と同じにして、生分解性シートを製造した。
得られた生分解性シートについて、弾性率、最大点荷重、引張強度、伸び率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に併記する。
【0032】
(比較例)
一般的な生分解性樹脂であるポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)を用いて、それぞれ膜厚が500μmのシートを成形し、前記実施例1のシートと同様にして引張強度、伸び(伸び率)、耐候性、施工後性能、弾性率をJISなどに規定される方法で測定した。結果を以下に示す表2に併記する。
【0033】
実施例1〜実施例6で得られた生分解性シートの各物性(特性)を以下の表1に示す。
「表1」
縦 横
弾性率 最大点 引張強度 伸び率 弾性率 最大点 引張強度 伸び率
[MPa] 荷重[N] [MPa] [%] [MPa] 荷重[N] [MPa] [%]
実施例
1 325 72 13.3 590 323 69 12.7 324
2 310 68 13.8 480 315 70 13.0 290
3 320 71 14.0 500 325 72 13.5 295
4 325 65 12.5 490 330 68 12.8 300
5 340 75 11.8 430 350 77 12.5 250
6 350 77 13.6 400 330 78 14.0 250
【0034】
なお、表1中において「縦」は、試料の測定方向がシートの押出方向に沿う方向であることを示し、「横」は、試料の測定方向がシートの押出方向と直交する方向(幅方向)であることを示している。また、各シートの膜厚は全て500μmである。
表1に示したように、実施例1〜6の各シートは、いずれも本発明品として良好な物性(特性)を有していることが確認された。
【0035】
次に、実施例1の生分解性シートと比較例の生分解性シートとを比較した結果を以下の表2に示す。
「表2」
引張強度 伸び 耐候性 施工後性能 弾性率
実施例1 ○ ○ ○ ○ ○
PLA ◎ × ○ × ×
PBS ○ ○ × × ○
表2に示したように、実施例1シートは、比較例品に比べ、全ての項目においてバランスの良い性能を有していることが確認された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性を有する樹脂製のシートであって、
厚さが50μm以上600μm以下、弾性率が200MPa以上400MPa以下、引張強度が10MPa以上、伸び率が250%以上であることを特徴とする生分解性シート。
【請求項2】
前記シートが、少なくとも澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとを含有してなるコンパウンドより成形されてなることを特徴とする請求項1記載の生分解性シート。
【請求項3】
前記澱粉と生分解性を有する脂肪族ポリエステルあるいは芳香族脂肪族ポリエステルとが、エステル置換度1.0以上の澱粉脂肪酸エステル、あるいは前記澱粉脂肪酸エステルを主成分とする熱可塑性澱粉脂肪酸エステル系樹脂として含有されて、前記コンパウンドが形成されていることを特徴とする請求項2記載の生分解性シート。
【請求項4】
前記コンパウンドには柔軟化可塑剤が0.1重量部以上20.0重量部以下の範囲内で含有されており、該柔軟化可塑剤は、フタル酸系可塑剤、脂肪族二塩基エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤、ポリエステル系可塑剤のうちの一種又は二種以上の混合物からなることを特徴する請求項2又は3に記載の生分解性シート。

【公開番号】特開2007−224115(P2007−224115A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45148(P2006−45148)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(391026210)日本コーンスターチ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】