説明

生分解性スカフォールド類製造用ヒドロゲルポロゲン類

封入液体を有するヒドロゲル微粒子は、多孔質スカフォールドにおいて相互接続された孔ネットワークを再生可能に形成するためのポロゲンとして使用される。1つの態様では、生分解性不飽和ポリマー、架橋剤及び生分解性ヒドロゲル微粒子を含むポロゲンは、一緒に混合されて、型中又は体腔中で多孔質スカフォールドを形成する。生分解性不飽和ポリマーの例としては、ポリ(プロピレンフマレート)及びポリ(ε−カプロラクトン−フマレート)が挙げられる。架橋剤は、フリーラジカル開始剤であってもよく、又はフリーラジカル開始剤及び付加重合可能なモノマーを包含してもよい。ヒドロゲル微粒子の例としては、未架橋又は架橋コラーゲン、未架橋又は架橋コラーゲン誘導体、及び未架橋又は架橋合成生分解性ポリマー(例えば、オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート))が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2003年8月29日に出願された米国仮特許出願第60/498,832号より優先権を主張する。
【連邦政府により後援を受けた研究に関する記述】
【0002】
本研究は、助成金番号R01−AR45871−02で国立衛生研究所により支援を受けた。
【発明の背景】
【0003】
1.発明の分野
本発明は、組織工学用途用の生分解性生体適合性スカフォールド類の合成に関し、より具体的には、生分解性スカフォールド類を製造するためのヒドロゲルポロゲン類に関する。
【0004】
2.関連技術の説明
組織工学の分野では、生分解性高分子生体材料は、機械的支持を提供するためのスカフォールド、及び新たな組織の内部成長用のマトリックスとして役立ち得る。新たな組織がスカフォールド中及び/又は上で形成するにつれ、生体材料が完全に溶解されるまで、生体材料は分解する。分解生成物は、代謝プロセスような身体の天然経路を通じて排出される。かかる生体材料の使用の一例は、一時的な骨置換として、生きている骨のすべて又は一部を置換若しくは再構成させることである。骨組織は成長して、高分子移植片の孔へ戻り、高分子移植片自体が生体(in vivo)環境中で徐々に分解されるにつれ、移植片全体を徐々に置換する。
【0005】
低侵襲性用途に関して、in situ(適所)で注入及び架橋され得る生分解性スカフォールドは、骨格損傷後の骨欠損を治療するための魅力的な候補物である。骨組織工学用途用の多孔質高分子スカフォールド類を製造するための幾つかの技術が公知であり、制御された形態及び微細構造を有する高分子スカフォールド類を製造するための大幅な進歩が、過去十年でなされている。しかしながら、線維結合、圧縮成形、押出し、凍結乾燥、相分離及び様々な固体自由形状製造方法のようなこれらの技術の多くは、注入可能な材料を用いた使用に適合的ではない。
【0006】
伝統的に、多孔質注入可能スカフォールドを製造するのに、2つの方法が使用される。第1に、ガス発泡技術は、酸(例えば、クエン酸又はL−アスコルビン酸)と塩基(例えば、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カルシウム)との間の反応に基づいており、発泡を引き起こし、且つスカフォールド内に多孔性を生じさせる二酸化炭素を生産する。このタイプの発泡技術の例は、米国特許第6,562,374号に見出すことができる。第2に、塩浸出技術は、既知のサイズの塩結晶(例えば、塩化ナトリウム)を複合スカフォールドのポリマーマトリックスと単に混合することを表す。ひとたび液体に接すると、塩結晶は浸出されて、互いに相互接続された孔の系(system)を創出する。このタイプの粒子浸出技術の例は、米国特許第6,436,426号、同第6,379,962号及び同第5,514,378号に見出すことができる。これらの2つの技術の組合せも、米国特許第6,281,256号で提案されている。
【0007】
両技術は、固有の制限を有しており、これらは、両技術が最適な多孔性形成方法としてみなされるのを妨げている。注入可能なスカフォールド用のポロゲンの選択に関する設計基準としては、ポロゲン浸出後のスカフォールドの機械的強度、浸出したポロゲンの毒性、及び注入前のポロゲン/ポリマー複合体の流動特性、並びに複合スカフォールド中のポロゲンの均一な分布が挙げられる。ポロゲンとして塩化ナトリウム塩結晶を使用することに関しては多くの問題が存在する。例えば、事前の塩浸出作業は最大多孔性(約75%)を示し、これを上回ると固体塩ポロゲン粒子は、注入中に重合スカフォールドとともに均一に流動しない。(Hedberg et al.,「注入可能な生分解性高分子複合体からの骨形成ペプチドの制御放出(Controlled Release of an Osteogenic Peptide from Injectable Biodegradable Polymeric Composites)」,J.Control.Release,84,137−150,2002を参照。)組み込むことができるポロゲン量の制限に起因して、組織内部成長を誘導するのに必要とされる高多孔性を達成し、且つ拡散限界を最小限に抑えることが困難であることが多い。さらに、ひとたびスカフォールドが注入されると、スカフォールドからのポロゲン拡散のプロセスは、スカフォールド孔が生理液で充填される前に行われる必要がある。移植片を水にさらした直後に生じる大規模な塩浸出は、移植片周辺の細胞に対して有害な影響を伴う非常に浸透性の高い環境を生じ得る。発泡技術は、塩浸出に付随する幾つかの問題に対処するが、広範囲の孔径、孔の不均一な分布、及び孔間の低い相互接続性のような新たな問題を導入する。これらの方法はともに、組織を内部成長させるために、ポロゲンがスカフォールド周辺の生理液により取って代わられなくてはならないという仮定に基づいている。
【0008】
したがって、多孔質スカフォールド類を製造するのに使用される注入可能な組成物に関して、改善されたポロゲンが必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明では、封入液体を有するヒドロゲル微粒子は、スカフォールドにおいて相互接続された孔ネットワークを再生可能に形成するためのポロゲンとして使用される。ヒドロゲル微粒子は、生分解性不飽和ポリマー及び架橋剤を含む注入可能なペーストへ組み込ませることができ、浸出ではなくて、微粒子は混合及び注入中に膨潤して、孔中に水を保持する。ポロゲンとしてのヒドロゲル微粒子の利点としては、注入中のより良好な流動特性、ポロゲン浸出工程の排除、移植片周辺の細胞に対するポロゲンの有害な影響がないこと、並びに細胞、生理活性分子又はその両方を骨修復部位でのスカフォールドの注入時にヒドロゲルポロゲンとともに負荷及び送達する能力が挙げられる。さらに、ヒドロゲル微粒子がポロゲンとして使用される場合、ヒドロゲル微粒子は、組織内部成長に許容される環境を提供する。
【0010】
一態様において、本発明は、多孔質スカフォールドを製造するための組成物を提供する。組成物は、生分解性不飽和ポリマー、架橋剤及び生分解性ヒドロゲル微粒子を含むポロゲンを包含する。好ましくは、組成物は、注入可能である。組成物又は微粒子は、1つ又はそれ以上の生理活性剤をさらに含んでもよい。任意に、生分解性不飽和ポリマーは、自己架橋性である。生分解性不飽和ポリマーの例としては、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(ε−カプロラクトン−フマレート)並びにそれらの混合物及び共重合体類が挙げられる。架橋剤は、フリーラジカル開始剤(遊離基開始剤)であってもよく、フリーラジカル開始剤及び付加重合可能なモノマーを含んでもよい。
【0011】
一態様において、ヒドロゲル微粒子は、未架橋若しくは架橋コラーゲン、未架橋若しくは架橋コラーゲン誘導体、又はそれらの混合物を含有する。別の態様において、ヒドロゲル微粒子は、未架橋又は架橋合成生分解性ポリマー(例えば、未架橋又は架橋オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート))を含有する。好ましくは、ヒドロゲル微粒子は、約20体積%〜約99体積%の含水量を有する。一態様において、ヒドロゲル微粒子は、1〜1,000マイクロメートルの範囲の直径を有する。
【0012】
別の態様において、本発明は、組織再生用のスカフォールドを提供する。スカフォールドは、本発明に係る組成物のいずれかを、腔(cavity)又は型(mold)中で架橋させることにより調製される。一態様においてヒドロゲル微粒子は、スカフォールドの49体積%を上回り、且つスカフォールドの99体積%までを構成する。ヒドロゲル微粒子は、封入水(entrapped water)を含んでもよく、スカフォールドが動物若しくはヒト身体内の腔に配置されるか、又は腔中で形成された後、生理液が封入水と置き換わる。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、組織再生用のスカフォールドを製造する方法を提供する。上記方法は、本発明に係る組成物のいずれかを、腔又は型中で架橋させる工程を有する。1つの用途において、腔は、動物又はヒト身体中に存在する。ヒドロゲル微粒子は、封入水を含んでもよく、組成物が腔中で架橋した後、生理液が封入水と置き換わる。
【0014】
したがって、本発明は、相互接続された多孔質スカフォールド類を形成するためのポロゲンとしてのヒドロゲル微粒子の使用を提供する。ポロゲンとしてのヒドロゲル微粒子の使用は、スカフォールド孔が生理液で充填されることに先立つスカフォールドからのポロゲン拡散のプロセスを必要とせずに、スカフォールド内での組織内部成長に許容された環境を提供する。
【0015】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、以下の詳細な説明、図面及び添付の特許請求の範囲を考慮してより理解されるようになるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明は、多孔質生分解性スカフォールド類の製造プロセスについて記載する。このプロセスでは、ヒドロゲル微粒子は、組織工学用途の生分解性多孔質高分子スカフォールド類を作製するためのポロゲンとして使用される。このプロセスでは、水性環境中で膨潤するが、架橋により液体として流動せず、それらの架橋分子構造に起因して規定された半固形形状を有する超吸収性半固形ヒドロゲル微粒子は、物理的にブレンドすることにより、生分解性不飽和ポリマーと混合される。次に、適当量の架橋剤を添加して、ヒドロゲル微粒子/ポリマー混合物と混合する。重合混合物は型へ移され、架橋剤の作用により架橋される。重合混合物は、任意の大きさ又は形状の骨格欠損のような体腔へ注入又は挿入することもできる。
【0017】
生分解性不飽和ポリマーが、自己架橋可能である(すなわち、ポリマーが、ポリ(ε−カプロラクトン−フマレート)のような「自己架橋性」ポリマーである)場合、架橋剤は、フリーラジカル開始剤のみを必要とする。架橋は、不飽和ポリマーの炭素−炭素二重結合へ付加して、不飽和ポリマー中で形成される他の炭素ラジカルとさらに反応する炭素ラジカルを生産するフリーラジカル開始剤により行われ得る。フリーラジカル開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、アゾビスイソブチロニトリル及びアスコルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。生分解性不飽和ポリマーが、自己架橋可能でないか、又はゆっくりと架橋する場合、架橋剤は、フリーラジカル開始剤及び付加重合可能なモノマー(例えば、1−ビニル−2−ピロリジノン、メチルメタクリレート、ポリ(プロピレンフマレート)−ジアクリレート(PPFDA)、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート(PEGDA)又はポリ(エチレングリコール)−ジメタクリレート(PEGDMA))を有していてもよい。
【0018】
1つ又はそれ以上の生理活性剤を、ヒドロゲル微粒子/ポリマー混合物に添加することもでき、ヒドロゲル微粒子中に封入させることもできる。1つ又はそれ以上の生理活性剤は、所望の生理学的影響に応じて選択される。ここで使用する「生理活性剤」は、身体中で局所的又は全身的に作用する生理学的若しくは薬理学的に活性な物質を包含するが、これらに限定されない。生理活性剤は、疾患若しくは疾病の治療、防止、診断、治癒又は緩和に使用される物質、又は身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすか、又はそれが所定の生理学的環境中に配置された後に生物学的に活性となるか、若しくはより活性となる物質である。生理活性剤としては、酵素類、有機触媒、リボザイム類、有機金属、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド類、ポリアミノ酸類、抗体、核酸、ステロイド分子、抗生物質、抗真菌剤、サイトカイン類、成長因子、炭水化物、疎油性物質(oleophobics)、脂質類、細胞外マトリックス及び/又はその個々の構成成分、医薬品並びに治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
N,N−ジメチルトルイジン又はテトラメチル−エチレンジアミンのような促進剤もまた、ヒドロゲル微粒子/ポリマー混合物へ添加することができる。リン酸三カルシウム及びヒドロキシアパタイトのような無機充填剤もまた添加することができる。各任意の添加剤の量は、最終的なスカフォールドの所望の特性に従って様々であり得る。
【0020】
ヒドロゲル微粒子/ポリマー混合物を用いて形成されるスカフォールドは、ヒドロゲルポロゲンを浸出させる必要はなく、骨格欠損に対して直接使用することができる。このプロセスでは、架橋されたヒドロゲル微粒子の液体(すなわち、水)含有量は、20体積%〜99体積%のいずれであってもよい。ヒドロゲル微粒子は、スカフォールドの49体積%を上回り、且つ最大99体積%の量のスカフォールドで負荷させることができる。ヒドロゲル微粒子は、天然及び合成ヒドロゲルから選択され得る。例えば、ヒドロゲル微粒子は、ゼラチン又はコラーゲンのような天然生分解性ポリマーに基づいてもよく、又はオリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)(OPF)のような合成生分解性ポリマーに基づくことができる。マトリックスポリマーは、不飽和炭素−炭素二重結合を含有する任意の生分解性ポリマーであり得る。非限定的な例としては、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)又はポリ(ε−カプロラクトン−フマレート)が挙げられる。スカフォールドは、移植前に型中で予め形成することができ、又はスカフォールドは、体腔中でin situにて注入及び架橋することができる。
【0021】
ゼラチンヒドロゲル微粒子の製造に関する手順の典型例は以下の通りである。蒸留脱イオン水中のブタゼラチン粉末の溶液は、混合しながら摂氏95度に加熱することにより調製する。次に、ゼラチン溶液は、様々な濃度のジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)を架橋剤として含有する鉱油へシリンジから滴下する。鉱油を、磁気攪拌機で攪拌しながら摂氏10度に冷却する。ゼラチン微粒子は、攪拌に依って形成し、冷却により物理的に、及び架橋により化学的に硬化する。微粒子を濾過して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、使用するまで摂氏−20度で保管する。水相中のゼラチン濃度及び鉱質相中のDSP濃度は、微粒子の平衡含水量を制御する。微粒子のサイズは、鉱油相へのゼラチン溶液の滴下に使用される攪拌速度及び針サイズにより制御される。コールターカウンター(Coulter counter)を使用して、微粒子のサイズ分布を決定し、それらの表面形態は、走査型電子顕微鏡を用いて検査される。含水量及び架橋の度合いは、摂氏37度でのPBS中の平衡膨潤実験により決定される。
【0022】
コラーゲンを均質化により摂氏4℃で蒸留脱イオン水中に分散すること以外はゼラチン微粒子の製造と同じ手順を使用して、コラーゲン微粒子を製造することができる。
【0023】
オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)マクロマーからの合成且つ生分解性オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)微粒子の製造に関する手順の典型例は、以下の通りである。オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)微粒子のサイズは、オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)マクロマーのポリ(エチレングリコール)の分子量、架橋の程度、及び架橋前の水相の含水量により制御することができる。過硫酸アンモニウム(APS)、テトラメチルエチレンジアミン(TMED)及びメチレンビスアクリルアミド(BISAM)が、それぞれ開始剤、促進剤及び架橋剤として使用される。水性ヒドロゲル相は、OPF1グラム、MBA0.1グラム、PBS中の0.3MのAPS0.4ml、及び0.3MのTMED0.4mlを混合することにより調製される。水相は、それぞれ1.5重量%及び0.5重量%のソルビタンモノオレエート及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含有する鉱油へ攪拌しながら滴下する。架橋反応は、攪拌しながら且つ窒素雰囲気下で20分間、摂氏40度で実施される。反応後、OPFミクロスフェア(microspheres)はヘキサンで洗浄して鉱油を除去して、残留ヘキサンを減圧下で除去し、使用するまで摂氏−20度で保管する。
【0024】
以下の手順の例により、ポロゲンとしてヒドロゲル微粒子を用いてスカフォールドを製造してもよい。スカフォールドは、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)及び架橋モノマー(例えば、1−ビニル−2−ピロリドン(NVP))をフリーラジカル重合により、ポロゲンとしてのヒドロゲル微粒子と架橋させることにより調製される。過酸化ベンゾイル及びジメチルトルイジンは、それぞれフリーラジカル開始剤及び促進剤として使用される。種々の量のヒドロゲル微粒子をPPF/NVP混合物に添加して、50体積%〜最大95体積%の量の多孔性を有するスカフォールドを製造する。まず、PPF0.71グラムをNVP0.29グラムと(PPF1グラム当たり40%NVPに相当する)、シンチレーションバイアル中で、摂氏37度で2時間混合する。次に、混合物に、ポロゲンとしてのヒドロゲル微粒子5グラムを添加する(多孔性75体積%に相当する)。次に、開始剤溶液(1−ビニル−2−ピロリドン0.25ml中の過酸化ベンゾイル50mg)0.05ml及び促進剤溶液(塩化メチレン0.98ml中のジメチルトルイジン0.02ml)0.02mlを添加して、完全に混合する。得られるペーストを5mm×18mmのTeflon(登録商標)型へ移して、手で押して、最大限に充填する。型を、摂氏40度で1時間、対流式オーブン中に置いて、架橋を促進する。架橋後、型を外気温に冷却して、スカフォールドを型から取り出して、所望の直径及び長さを有する円筒形試験品をIsomet低速のこぎりで切断する。スカフォールドは、ポロゲンを浸出させる必要はなく、又は乾燥させる必要はなく、滅菌後に直接移植することができる。
【0025】
得られるペーストを型へ移すのではなく、腔へ注入すること以外は同じ手順を用いて、注入可能なペーストを調製することができる。
【0026】
ここで使用する「生体適合性」材料とは、重篤な又は段階的に高まる応答とは対照的に、穏やかで多くの場合一過性の移植応答のみを刺激する材料である。本明細書中で使用する場合、「生分解性」材料は、正常なin vivoでの生理学的条件下で代謝又は排出され得る構成成分へ分解する材料である。「注入可能」とは、本発明者等は、共重合体がシリンジによりある部位へ送達され得ることを意味する。「自己架橋性」とは、本発明者等は、特定のくり返し基を有する第1のポリマーの官能基が、同じくり返し基を有する第2のポリマーの官能基と、第1のポリマーのくり返し基と第2のポリマーのくり返し基との間で架橋ブリッジを形成する架橋化合物なしで架橋し得ることを意味する。本明細書中で使用する場合、「コラーゲン誘導体」は、天然に存在するコラーゲンを化学的又は物理的に変化させることにより得られる物質である。例えば、1つの好ましいコラーゲン誘導体であるゼラチンは、コラーゲンを水中で沸騰させることにより得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提示されており、いかなる場合においても本発明を限定すると意図されない。
【0028】
ゼラチンミクロスフェアを、すでに開発された方法により調製した(Payne et al.,「骨形成原細胞集団用の注入可能なin situでの架橋可能な分解性高分子キャリアの開発。パート1.表面架橋されたゼラチン微粒子における骨髄間質芽細胞の封入(Development of an Injectable,In Situ Crosslinkable,Degradable Polymeric Carrier for Osteogenic Cell Populations.Part1.Encapsulation of Marrow Stromal Osteoblasts in Surface Crosslinked Gelatin Microparticles)」,Biomaterials,23,4359−4371,2002を参照)。簡潔に述べると、95℃に加熱することにより調製した蒸留脱イオン水(ddHO)中のブタゼラチン粉末の溶液を、架橋剤として様々な濃度のジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)を含有する鉱油へ滴下した。ゼラチンミクロスフェアが形成し、架橋により硬化した。微粒子を濾過して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。水相中のゼラチン濃度及び鉱質相中のDSP濃度は、微粒子の平衡含水量を制御した。攪拌速度は微粒子の大きさを制御した。微粒子のサイズ分布及びそれらの表面形態は、それぞれコールターカウンター及びSEMで決定した。含水量及び架橋度は、37℃でのPBS中の平衡膨潤実験により決定した。コラーゲンを均質化により4℃でddHO中に分散させた以外は同じ手順を使用して、コラーゲンミクロスフェアを製造した(Park et al.,「1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド架橋により修飾された多孔質コラーゲン/ヒアルロン酸スカフォールドの特性化(Characterization of porous collagen/hyaluronic acid scaffold modified by 1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide cross−linking)」,Biomaterials,23,1205−1212,2002を参照)。
【0029】
合成オリゴ(ポリ(エチレングリコール)−フマレート)(OPF)微粒子は、塩化フマリル(FC)とポリ(エチレングリコール)(PEG)との縮重合により合成した(Jo et al.,「オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)マクロマーの合成及び特性化(Synthesis and Characterization of Oligo(Poly(Ethylene Glycol)Fumarate)Macromer)」,Macromolecules,34,2839−2844,2001を参照)。以下の手順を使用して、懸濁フリーラジカル重合によりOPFマクロマーからOPF微粒子を合成した(Jabbari et al.,「生分解性オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)ヒドロゲルミクロスフェアからのプラスミドDNAの制御放出(Controlled Release of Plasmid DNA from Biodegradable Oligo(poly(ethylene glycol)fumarate) Hydrogel Microspheres)」,Proc.Ann.Meet.AIChE,abstract 305a,p.141,2002を参照)。OPF微粒子のサイズは、PEGの分子量、架橋の程度、及び水相の含水量により制御される。過硫酸アンモニウム(APS)、テトラメチルエチレンジアミン(TMED)及びメチレンビスアクリルアミド(MBA)が、それぞれ開始剤、促進剤及び架橋剤として使用された。水相を、それぞれ1.5重量%及び0.5重量%のソルビタンモノオレエート及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含有する鉱油へ攪拌しながら滴下した。架橋反応を、攪拌しながら且つ窒素雰囲気下で20分間、40℃で実施した。
【0030】
スカフォールドは、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)と、ポロゲンとしてのゼラチン、コラーゲン又はOPF微粒子とのフリーラジカル重合により調製した。過酸化ベンゾイル及びジメチルトルイジンを、それぞれフリーラジカル開始剤及び促進剤として使用した。典型的な手順では、PPF0.9グラム及び架橋剤としての1−ビニル−2−ピロリドン(NVP)0.36グラムを、80体積%の多孔性に相当するポロゲン5グラムと混合した。続いて、開始剤溶液50μl及び促進剤溶液40μlを添加した。得られたペーストを5mm×18mmのTeflon(登録商標)型へ移して、1時間架橋させた。架橋プロセスは、レオメトリーを用いて特性化した。孔構造及び孔形態は、走査型電子顕微鏡法を用いて検査した。
【0031】
結果:図1aは、平均サイズ500μm及び平衡含水量85%を有するゼラチンミクロスフェアの画像を示す。300〜700μmの範囲の直径及び含水量70〜95%を有する天然並びに合成ヒドロゲルミクロスフェアは、上記手順により合成した。分解時間は、ゼラチン及びコラーゲンに関する数日から合成OPFミクロスフェアに関する数ヶ月まで多様であり得る。80体積%のゼラチンミクロスフェアで製造されたPPF複合スカフォールドは、図1bに示される。図1cにおけるSEM顕微鏡写真は、PBS中で5日間のゼラチンミクロスフェアの分解後のPPFスカフォールドに残った孔を示す。これらの結果は、ポロゲンとしての塩結晶の制限の少なくとも1つが、相互接続された多孔質スカフォールドの製造におけるポロゲンとしてのヒドロゲルの使用により克服できることを示す。
【0032】
ある特定の実施態様を参照して、かなり詳細に本発明について記載してきたが、本発明は、説明の目的で且つ限定の目的ではなく提示してきた上述の実施態様以外により実施することができることは、当業者に理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書中に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1aは、平均サイズ500μm及び平衡含水量85%を有するゼラチンミクロスフェアを示す画像である。図1bは、80体積%のゼラチンミクロスフェアで製造されたポリ(プロピレンフマレート)複合スカフォールドを示す。図1cは、リン酸緩衝生理食塩水中で5日間のゼラチンミクロスフェアの分解後のポリ(プロピレンフマレート)スカフォールドに残った孔を示すSEM顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性不飽和ポリマー、
架橋剤、及び
生分解性ヒドロゲル微粒子を含むポロゲン、
を含むことを特徴とする多孔質スカフォールド製造用組成物。
【請求項2】
前記生分解性不飽和ポリマーが自己架橋性であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋剤がフリーラジカル開始剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋剤がフリーラジカル開始剤及び付加重合可能なモノマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロゲル微粒子がコラーゲン、コラーゲン誘導体又はそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロゲル微粒子が架橋コラーゲン、架橋コラーゲン誘導体又はそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒドロゲル微粒子が合成生分解性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ヒドロゲル微粒子が架橋合成生分解性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヒドロゲル微粒子がオリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒドロゲル微粒子が架橋オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ヒドロゲル微粒子が約20体積%〜約99体積%の含水量を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が注入可能であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記生分解性不飽和ポリマーがポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(ε−カプロラクトン−フマレート)並びにそれらの混合物及び共重合体から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記生分解性不飽和ポリマーがポリ(プロピレンフマレート)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ヒドロゲル微粒子が封入水を含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
1つ又はそれ以上の生理活性剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
酵素類、有機触媒、リボザイム類、有機金属、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド類、ポリアミノ酸類、抗体、核酸、ステロイド分子、抗生物質、抗真菌剤、サイトカイン類、成長因子、炭水化物、疎油性物質、脂質類、細胞外マトリックス及び/又はその個々の構成成分、医薬品並びに治療薬から選択される1つ又はそれ以上の生理活性剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記生分解性不飽和ポリマーが自己架橋性であり、前記架橋剤がフリーラジカル開始剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記ヒドロゲル微粒子が架橋コラーゲンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記ヒドロゲル微粒子が架橋ゼラチンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記生分解性不飽和ポリマーが自己架橋性ポリ(ε−カプロラクトン−フマレート)を含み、前記架橋剤がフリーラジカル開始剤であり、且つ前記組成物が注入可能であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記ヒドロゲル微粒子が1〜1,000マイクロメートルの範囲の直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれか1項に記載の組成物を腔又は型中で架橋することにより調製することを特徴とする、組織再生用スカフォールド。
【請求項24】
前記ヒドロゲル微粒子が前記スカフォールドの49体積%を上回り、且つ前記スカフォールドの99体積%までを構成することを特徴とする、請求項23に記載のスカフォールド。
【請求項25】
前記ヒドロゲル微粒子が封入水を含み、前記スカフォールドが動物若しくはヒト身体内の腔に配置又は形成された後、生理液が前記封入水と置き換わることを特徴とする、請求項24に記載のスカフォールド。
【請求項26】
請求項1ないし22のいずれか1項に記載の組成物を腔又は型中で架橋させることを含んでなる、組織再生用のスカフォールドの製造方法。
【請求項27】
前記腔が動物又はヒト身体内にあることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒドロゲル微粒子が封入水を含み、前記組成物が前記腔中で架橋した後、生理液が前記封入水と置き換わることを特徴とする、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−503881(P2007−503881A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524887(P2006−524887)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027926
【国際公開番号】WO2005/020849
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500480919)メイヨ フオンデーシヨン フオー メデイカル エジユケーシヨン アンド リサーチ (18)
【Fターム(参考)】