説明

生分解性粘着剤及びこれを用いた粘着ラベル

【課題】 被着体に対して充分な初期接着力があって、貼付した後も被着体から脱落することがなく、且つ表面基材に対する密着性に優れた生分解性粘着剤及びこれを用いた粘着ラベルを提供する。
【解決手段】 乳酸を主原料として反応させた脂肪族ポリエステル樹脂(A)とロジン又はロジン誘導体(B)を含有する生分解性粘着剤であって、
前記乳酸中に含有されるL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜9であり、
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が10000〜120000であり、且つTgが−5℃〜−60℃であることを特徴とする生分解性粘着剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中に廃棄された場合に、微生物により分解可能な生分解性の粘着剤及びこれを用いた粘着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
表面基材として熱可塑性プラスチックフィルムを用いた粘着ラベルは、使用後に容器から剥がされて、あるいは容器に貼付されたままで焼却または土中に廃棄される。近年、環境保護の観点からこれらの処理については問題が発生している。焼却する場合は、二酸化炭素を発生し、地球温暖化進行のひとつの原因となる。また、発熱カロリーが高いため焼却炉が傷んだり、有毒ガスを発生する場合もある。一方、土中に廃棄する場合は、粘着ラベルの分解速度が極めて遅いために半永久的に土中に残り、ひいては土中の生態系を破壊する原因となる。さらに、廃棄量の増加に伴い処理場の確保も困難となっている。
【0003】
上記の問題を解決する手段として、生分解性粘着ラベルが提案されている。すなわち、粘着ラベルを構成する表面基材、粘着剤及び剥離シート等に、土中の微生物によって分解する材料である生分解性樹脂を用いた粘着ラベルである。
【0004】
表面基材と粘着剤が生分解性の材料である生分解性粘着ラベルとしては、種々の技術が開示されている。例えば、剥離シート、粘着剤層及び表面基材(基材フィルム)を積層してなる粘着ラベルにおいて、該粘着剤層を構成する粘着剤および表面基材が生分解性を有することを特徴とする生分解性粘着ラベルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら特許文献1においては、生分解性粘着ラベル全体の1/3以上を分解するのに12ヶ月という長時間を必要としていた。特に、粘着剤用の樹脂として天然ゴムを用いているため、粘着剤層の生分解性が遅く実用上、更に改良する必要があった。また、天然ゴム系粘着剤を使用していることから、表面基材と粘着剤との相互密着性が低いために表面基材が被着体から浮き剥がれたり、ラベル端面から粘着剤が滲みだしたり、抜き加工時に剥離シートに埋没しオートラベラー適性を損ない易い等の問題があった。
【0005】
天然ゴムに替わる生分解性の優れた粘着剤用の樹脂を用いた生分解性粘着剤に関する技術として、乳酸残基を55重量%以上含有し、L乳酸とD乳酸のモル比(L/D)が0.11〜9であり、還元粘度が0.2〜1.0dl/gの範囲にある脂肪族ポリエステル(A)と天然物系粘着付与樹脂(B)を必須成分として含有する生分解性粘着剤に関する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。当該技術では、生分解速度のみではなく、ポリ乳酸フィルム基材との密着性も改善することを目的としている。しかしながら、当該技術において使用する脂肪族ポリエステル(A)は、乳酸残基を55重量%以上含有するため、ガラス転移点(Tg)が高くなり易い。実際に特許文献2中の実施例1〜3で使用している樹脂のTgは−5℃を越えるものであり、そのような樹脂100gに対してトール油ロジン40gを添加した実施例1及び実施例3の粘着剤や、マイティエースG(ヤスハラケミカル製)を40g添加した実施例2の粘着剤は更にTgが高くなる。したがって、当該技術に開示された粘着剤は、被着体に対する接着力が低く、また、表面基材に対する密着性も十分なものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−44104(特許請求の範囲、第17段落、第42段落)
【特許文献2】特開2004−231797(特許請求の範囲、実施例1、実施例2、実施例3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、被着体に対して充分な初期接着力があって、貼付した後も被着体から脱落することがなく、且つ表面基材に対する密着性に優れた生分解性粘着剤及びこれを用いた粘着ラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究の結果、以下の生分解性粘着剤及び、これらを用いたラベルが上記課題を解決出来ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
乳酸を主原料として反応させた脂肪族ポリエステル樹脂(A)とロジン又はロジン誘導体(B)を含有する生分解性粘着剤であって、
前記乳酸中に含有されるL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜9であり、
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が10000〜120000であり、且つTgが−5℃〜−60℃であることを特徴とする生分解性粘着剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、
生分解性を有する表面基材(C)上に粘着剤の層が積層された生分解性粘着ラベルであって、
前記粘着剤が上記の生分解性粘着剤であることを特徴とする生分解性粘着ラベルを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生分解性粘着剤は、表面基材と粘着剤との密着性が高いため、表面基材と粘着剤の間にアンカーコート層やコロナ処理を必要とせず、ラベルの加工時にゼンマイ刃で打ち抜き不要部を除去する場合であっても、粘着剤が滲み出して剥離シートに喰い込んだりしたりてラベル加工適性が悪化することがない。また、初期接着力が充分なためラベルが被着体から脱落するおそれがなく、更に、本発明の生分解性粘着剤は生分解速度が早いため、短期間で分解する生分解性ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の生分解性粘着剤及びこれらを用いた生分解性ラベルについてさらに詳細に述べる。
【0012】
本発明で使用する脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、乳酸を主原料として反応させた脂肪族ポリエステル樹脂であり、原料である乳酸中に含有されるL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)は1〜9である。L−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)は1〜4であることが好ましい。L/Dが上記範囲であると有機溶媒に対するポリエステル樹脂の溶解性が良好であり、製造コスト面においても適切である。また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を製造する際に使用する全原料に対する乳酸の使用比率は、20〜60質量%であることが好ましく、20質量%以上、55質量%未満であることがより好ましい。特に、20〜50質量%であることが好ましい。乳酸の使用比率が上記範囲であると、表面基材(C)に対して優れた密着性を保持しながら、Tgが高くなることが無く、上記の範囲にすることができる。
【0013】
数平均分子量は、20000〜100000であることが好ましく、20000〜80000であることがより好ましい。数平均分子量が10000未満では粘着剤の凝集力が不足して、耐反発性が悪くなり易くなり、好ましくない。また120000を越えると樹脂の柔軟性が損なわれて、接着力が低下し易くなり、好ましくない。Tgは−10℃〜−60℃であることが好ましく、−15℃〜−60℃であることがより好ましい。
【0014】
生分解性を良好にしながらTgを上記の範囲にするために使用する乳酸以外の原料としては、カプロラクトンを使用することが好ましい。全原料に対するカプロラクトンの使用比率は40〜80質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。
【0015】
乳酸及びカプロラクトン以外にオキシ酸、コハク酸、プロピレングリコール、4−メチル−1,7−へブタンジオールまたはグリセリン等の化合物を用いる事ができる。例えば、グリコール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシ―2―メチル酪酸、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0016】
本発明で使用する脂肪族ポリエステル樹脂(A)の市販品としては、東洋紡績株式会社製ポリ乳酸樹脂溶液バイロエコールHYD−035E(不揮発分50%)がある。
【0017】
脂肪族ポリエステル(A)に配合する粘着付与剤としては、ロジン又はロジン誘導体(B)を使用する。ロジン系樹脂としては、ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等が挙げられるが、ロジンエステル系が相溶性、初期密着性向上の観点からは好ましく、相溶性の観点からは不均化ロジンエステルが特に好ましい。市販品としては、荒川化学社製、商品名「スーパーエステル L」「スーパーエステル A18」「スーパーエステル A100」等が挙げられる。
【0018】
これらの粘着付与樹脂の配合量としては該脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜5質量部である。配合量が0.5質量部以下では充分な初期密着性向上の効果が得られず、20質量部を越えると粘着剤のTgが上がり粘着性能が損なわれ易くなる。
【0019】
また上記以外の添加剤として、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、染料、老化防止剤、可塑剤等を少量添加してもなんら差し支えない。
【0020】
また耐反発性を向上させるために粘着剤凝集力を上げる目的で適宜架橋剤を選択し添加することもできる。架橋剤としては例えば一般に市販されている、多官能のイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートや2,4−/2,6トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、またはポリイソシアネート類を等を添加することができる。
【0021】
さらに粘着剤の柔軟性を付与する目的で可塑剤を添加しても良い。例えばトリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、等の脂肪族アルコール系可塑剤、アセチルクエン酸トリブチル等の脂肪族エステル系の可塑剤、エステル変性物としてエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ亜油等を適量添加しても良い。
【0022】
本発明の生分解性粘着フィルムの基材フィルムに用いる生分解性を有する表面基材(C)としては、生分解性のあるものである事以外特に限定されるものではないが、生分解速度の観点から以下に述べる樹脂、またはこれらの樹脂を用いて製膜化されたフィルムを用いる事が好ましい。例えば、微生物生産系のヒドロキシブチレート三菱ガス化学社製「ビオグリーン」、ヒドロキシブチレートとヒドロキシバリエートの共重合ポリエステル樹脂であるICI社製「バイオポール」、P&G社製「ノダックス」、化学合成系のポリ乳酸樹脂フィルムとして島津製作所製「ラクティ」、三井化学社製「レイシア」をフィルム化した東セロ(株)社製「パルグリーンLC」、ユニチカ社製「テラマック」、三菱樹脂(株)社製「エコロージュ」、中井工業(株)社製「ナチュライト」等を挙げられる。
【0023】
更に、ポリカプロラクトン系のダイセル化学社製「セルグリーン PHB05」、ポリブチレンサクシネート樹脂の例として、昭和高分子社製「ビオノーレ#1001」、三菱ガス化学社製「ユーペック」が、また、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂の例として、昭和高分子社製「ビオノーレ#3001」が挙げられる。ポリエチレンサクシネート樹脂の例としては、日本触媒社製「ルナーレSE」が挙げられる。ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)樹脂の例としてはデュポン社製商品名「バイオマックス」をフィルム化した東セロ(株)社製「パルグリーン B0」等が挙げられる。
【0024】
上記の中でも、本発明で使用する表面基材(C)としては、ポリ乳酸フィルム、ポリエチレンサクシネート樹脂フィルム、ポリブチレンサクシネート樹脂フィルム、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂フィルム等を使用することが好ましく、ポリエチレンサクシネート樹脂フィルム、ポリブチレンサクシネート樹脂フィルム又はポリブチレンサクシネートアジペート樹脂フィルムを使用することがより好ましい。
【0025】
本発明の生分解性粘着剤を表面基材(C)に積層して生分解性粘着ラベルを製造する際における表面基材(C)に対する粘着剤の塗布方法は、上記粘着剤を溶剤、例えば、酢酸エチル、トルエン等で希釈し固形分20〜60質量%の塗布液を調整する。この塗布液を直接、表面基材(C)に塗布し加熱乾燥させる。また、粘着剤面側には剥離シートを貼り合わせても良く、粘着剤塗布液を剥離シートのシリコーンコート面側に塗布する。粘着剤を乾燥した後、表面基材である生分解性を有する表面基材と貼り合わせ、粘着剤を表面基材に転写せしめても良い。粘着剤の塗布装置は、公知の塗布装置、例えば、ナイフコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ロールコーター等が挙げられる。特にコンマコーターが好ましい。本発明の生分解性粘着ラベルの粘着剤層には、剥離シートを積層することが好ましく、剥離シートとしては生分解性樹脂フィルムを用いることがさらに好ましい。例えば、脂肪族系ポリエステル樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂、脂肪族系ポリエステル樹脂と芳香族系ポリエステル樹脂の混合物が挙げられる。特に脂肪族系ポリエステル樹脂として、ポリ乳酸が好ましい。
【実施例】
【0026】
以下により具体的に実施例を示すが特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
(粘着付与剤の調整)
不均化ロジンエステルとして商品名「スーパーエステル A100」(荒川化学社製の粘着付与樹脂)に対し、トルエンを加えて固形分が完全に溶解するまで室温にて約1時間よく攪拌し、不揮発分50%の粘着付与樹脂溶液Aを調整した。
【0028】
(粘着剤の調整)
表1に示す配合割合で、粘着剤の主ポリマーベースとして東洋紡績株式会社製ポリ乳酸樹脂溶液バイロエコールHYD−035E(不揮発分50%、Tg−5℃、数平均分子量25000、(L/D)比4、D乳酸の重合比率20モル%)に対し粘着付与樹脂溶液Aを加えて完全に溶解するまでよく攪拌し、実施例1〜実施例3の生分解性粘着剤を得た。また、粘着付与樹脂溶液Aを加えない粘着剤を比較例1とした。一方社油脂工業(株)社製ゴム系粘着剤BP−809Aを用いた粘着剤を比較例2とした。
【0029】
<数平均分子量の測定法>
樹脂にテトラヒドロフラン(THF)を加え12時間放置する。その後、樹脂のTHF溶液を濾過し、濾液中に溶解している樹脂の分子量を測定する。測定はゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ(GPC)法を用い、標準ポリスチレンにより作成した検量線から分子量を計算する。
【0030】
GPC装置:東ソー(株)製 HLC−8120GPC
カラム :東ソー(株)製 TSK Guardcolumn
SuperH−HT/SK−GEL/SuperHM−M の3連結
流速:1.0ml/min(THF)
【0031】
<ガラス転移温度の測定>
測定する樹脂を乾燥後の膜厚が0.3mmとなるようにガラス板に塗工して、25℃で24時間乾燥した。その後、ガラス板から剥離し、さらに100℃で5分間乾燥したものを試料とし、直径5mm、深さ2mmのアルミニウム製円筒型セルに試料約10mmgを秤取した。これをTAインスツルメント社製DSC−2920モジュレイテッド型示差走査型熱量計を用い、窒素雰囲気下で−150℃から昇温速度20℃/分で100℃まで昇温した時の吸熱曲線を測定して求めた。具体的には、ベースラインの接線及びガラス転移による吸熱領域の急峻な下降位置の接線との交点をガラス転移点とした。
【0032】
【表1】

【0033】
( )内は樹脂固形分量を表す
【0034】
(生分解性粘着ラベルの製造1)
三菱樹脂(株)社製ポリ乳酸フィルム商品名「エコロージュSW」厚み50μmに実施例1の粘着剤を乾燥後の塗布量が20μmになるように塗工し、90℃で約2分乾燥した後、ダイレクトシリコーン塗工されたグラシン剥離紙と貼り合わせて生分解性粘着フィルムAを得た。
(生分解性粘着ラベルの製造2)
粘着剤として実施例2の粘着剤を用いた事以外は、生分解性粘着ラベルの製造1と全く同様にして生分解性粘着フィルムBを得た。
(生分解性粘着ラベルの製造3)
粘着剤として実施例3の粘着剤を用いた事以外は、生分解性粘着ラベルの製造1と全く同様にして生分解性粘着フィルムCを得た。
(生分解性粘着ラベルの製造4)
粘着剤として比較例1の粘着剤を用いた事以外は、生分解性粘着ラベルの製造1と全く同様にして生分解性粘着フィルムDを得た。
(生分解性粘着ラベルの製造5)
粘着剤として比較例2の粘着剤を用いたこと以外は、生分解性粘着ラベルの製造1と全く同様にして生分解性粘着フィルムEを得た。
(生分解性粘着ラベルの製造6)
昭和高分子社製ポリブチレンサクシネート樹脂「ビオノーレ#1001」(メルトフローレート1.5g/10分、密度1.26g/立方センチメートル、融点114℃)を押し出し機に供給して190℃で溶融させ、サーキュラダイで連続的に押し出し急冷して、60μmのフィルムを作製し、生分解性フィルムを得た。このフィルムを用いた事以外は生分解性ラベルの製造方法1と全く同様にして生分解性粘着ラベルFを得た。
【0035】
上記実施例1〜3及び比較例1,2の粘着剤について、以下のように評価した。
評価結果を表2に示す。
【0036】
(接着力測定方法)
JIS−Z−0237(2000年度版)に従って測定した。温度23℃湿度50%(RH)の環境下において、上記生分解性粘着フィルムA〜Fの1サンプル当たり幅25mm×長さ約100mmの試験片を5本切り出した。切り出した試験片を同雰囲気下で1時間以上養生した後、被着体としてSUS304に貼付し所定の時間(貼付直後と貼付1時間後)23℃×50%で放置した。そして、測定機としてエーアンドディ社製テンシロン万能試験機「RTA−100」を使用して試験片を被着体から180度方向に300mm/分の速度で剥離し、その際の応力を測定してその平均値を求めた。
【0037】
(粘着剤の基材密着性評価方法)
上記生分解性粘着フィルムA〜Fの粘着剤層面側にニチバン製セロハンテープの粘着面側を貼り合わせ指で強く圧着した後、圧着したセロテープを可能な限り勢いよく手で剥離し表面基材層からの粘着剤の脱落状態を目視観察した。評価基準は以下に従った。
○:セロハンテープ貼付面積のうち脱落面積が0〜10%未満。
△:セロハンテープ貼付面積のうち脱落面積10%以上50%未満。
×:セロハンテープ貼付面積のうち脱落面積50%以上。
【0038】
(粘着剤の生分解性の評価方法)
実施例1〜3及び比較例1,2の粘着剤をそれぞれ乾燥後の塗布量が25g/mなるように剥離紙上に塗布乾燥した後、直接塗布した剥離紙よりも剥離強度の低い剥離紙と貼り合わせて生分解性両面テープを作製する。次に質量既知のフロートガラス板に100mm×100mmの面積に切り出した生分解性両面テープを貼り付けた後に質量を測定し記録する(粘着剤の貼付質量約0.25g)。屋外コンポスト(容量100リットル)に生ゴミ5kgを入れ、その上に生分解性粘着剤を貼り付けたガラス板を置いた。更に、50mmの厚さの生ゴミを載せて1ヶ月間放置した。その後ガラス板を取り出して粘着剤が脱落しない程度に水洗し60℃で24時間乾燥後に質量を測定し、粘着剤の残存質量を求め生分解後の残存率を求めた。
【0039】
試験後の粘着剤質量/試験前の粘着剤質量×100(%)

(ラベルの生分解性の評価方法)
屋外コンポスト(容量100リットル)に生ゴミ5kgを入れ、その上に100mm四方の粘着ラベルを置いた。更に、50mmの厚さの生ゴミを載せて1ヶ月間放置し、粘着ラベルの状態を目視評価した。生分解性は以下の基準で評価した。
【0040】
○:著しく変形、白化し、形状の維持が困難である。
△:変形、白化しているが、試験前の形状を維持している。
×:変形、白化が無く、試験前の形状を維持している。
【0041】
(ラベル加工適性;粘着剤のはみ出し)
150mm幅×200mのロール状の上記生分解性粘着フィルムA〜Fを各々用意し、恩田製作所社製シール印刷機OPM−W150−3Sにて所定の形状(50mm×50mm)に平圧で抜いた後、余白部分をトリミングしながら巻き取とり、40℃の環境下に一週間保管した。次にロール品を不二レーベル製オートラベラーF208Aにセットし、ラベルを50枚/分の速度で200枚貼付した。この時にラベルが粘着剤の滲みだしにより剥離紙の裏面側に付着したり、ラベルの頭出しができず貼付に失敗したラベルの枚数をカウントとした。
【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸を主原料として反応させた脂肪族ポリエステル樹脂(A)とロジン又はロジン誘導体(B)を含有する生分解性粘着剤であって、
前記乳酸中に含有されるL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜9であり、
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が10000〜120000であり、且つTgが−5℃〜−60℃であることを特徴とする生分解性粘着剤。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)を製造する際に使用する全原料に対する前記乳酸の使用比率が、20〜60質量%である請求項1記載の生分解性粘着剤。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)を製造する際に使用する全原料に対する前記乳酸の使用比率が、20質量%以上、55質量%未満である請求項1記載の生分解性粘着剤。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)が、更にカプロラクトンを原料として反応させた樹脂であり、全原料に対する前記カプロラクトンの使用比率が40〜80質量%である請求項1、2又は3のいずれかに記載の生分解性粘着剤。
【請求項5】
生分解性を有する表面基材(C)上に粘着剤の層が積層された生分解性粘着ラベルであって、
前記粘着剤が請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の生分解性粘着剤であることを特徴とする生分解性粘着ラベル。
【請求項6】
前記表面基材(C)が、ポリエチレンサクシネート樹脂フィルム、ポリブチレンサクシネート樹脂フィルム又はポリブチレンサクシネートアジペート樹脂フィルムである請求項5記載の生分解性粘着ラベル。
【請求項7】
前記表面基材(C)が、ポリ乳酸フィルムである請求項5記載の生分解性粘着ラベル。

【公開番号】特開2006−131705(P2006−131705A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320459(P2004−320459)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】