説明

生存監視システム

【課題】稼働中の主サーバが行う処理の遅延を引き起こすことなく、主サーバの生存監視を行うことができる生存監視システムを提供する。
【解決手段】スイッチ10は、各主サーバ100a,100bから信号が送られたときに、その信号をコピーして所定のポートから第一管理サーバ20に送出する。第一管理サーバ20は、スイッチ10からそのコピーされた信号を受信したときに、その送信元である主サーバが生存していると判定し、その判定結果及びその信号を受信した日時を示す日時情報に基づいて作成される当該主サーバの生存状況を示す情報を記憶部に記憶して管理する。第一管理サーバ20は、その管理する主サーバの生存状況を示す情報に基づいて当該主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金融商品の取引所の売買システムに対して発注情報を送信する発注用サーバのように、所定の処理を求める要求信号を外部のシステムに送信するサーバについての生存状況を監視する生存監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミッションクリティカルなシステムでは、不測の事態に備えてサーバの冗長化が図られている。これにより、主サーバ(稼働中サーバ)に障害が生じたときにすぐに副サーバ(代替用サーバ)に機能を移行し、ユーザ向けのサービスを停止させないようにすることができる。このような仕組みを実現するには、各サーバの生存状況を監視しておく必要がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図9は従来の生存監視の仕組みを説明するための概略ブロック図である。この図9では、金融商品の取引所の売買システムに対して発注を行う金融機関側の発注システムに生存監視の仕組みを適用した例を示している。金融機関側の発注システムには、発注用サーバA、発注用サーバB、発注用サーバCが備えられており、ネットワークを介して取引所の売買システムに接続されている。発注用サーバA及び発注用サーバBは稼働中の主サーバである。発注用サーバA,Bはそれぞれ、取引所の売買システムに対してスイッチを介して発注情報を送信する発注処理を行う。取引所の売買システムはその発注情報を受信すると、発注情報を受け付けた旨の応答情報をスイッチを介して当該発注用サーバに送信する。また、発注用サーバCは待機中の副サーバ(代替用サーバ)である。発注用サーバA及び発注用サーバBの両方又は一方に障害が発生したときに、発注用サーバCが代わりに発注用サーバとして使用されることになる。従来、各発注用サーバの生存状況を監視するために、三台の発注用サーバA,B,Cはそれぞれ、生存監視処理として、他の発注用サーバに対し、生存を確認するための信号(生存監視信号)を定期的に送信する処理を行っている。そして、各発注用サーバA,B,Cは、その生存監視信号に対する応答信号が送られてくると、当該他の発注用サーバが生存していると判断し、一方、その応答信号が送られてこなければ、当該他の発注用サーバが生存していないと判断している。
【0004】
尚、各発注用サーバA,B,Cはそれぞれ他の発注用サーバについての生存監視処理を行うだけでなく、発注処理に利用されるネットワークの生存状況を監視する処理(ネットワーク監視処理)も行っている。このネットワーク監視処理は、発注処理に利用されるネットワークとは別系統のネットワークを用いて、サーバの生存監視処理と同様の方法で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−299369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなサーバの生存監視処理は常に行われていなければ、その効果が得られない。このため、各サーバがこの生存監視処理を行うことは、各サーバにとって負荷を生じさせるものとなる。特に、金融機関から取引所の売買システムに対して高速で発注情報を送信することが要求される発注システム等では、僅かでも主サーバの処理負担を軽減し、本来の業務処理である発注処理の遅延を避けたいという要望がある。
【0007】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、稼働中の主サーバが行う処理の遅延を引き起こすことなく、主サーバの生存監視を行うことができる生存監視システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明は、外部のシステムとネットワークを介して接続された主サーバの生存状況を監視する生存監視システムであって、主サーバと外部のシステムとの間で送信される信号を中継すると共に、主サーバから信号が送られたときに、当該主サーバから送られた信号をコピーして所定のポートから送出するポートミラーリング機能を有する中継切替手段と、中継切替手段の所定のポートから送出される主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定し、当該主サーバの代替用のサーバである副サーバに当該主サーバの代わりに稼働する旨の信号を送出する管理サーバと、を具備することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、管理サーバは、主サーバの生存監視を、例えば次のようにして行うことが望ましい。すなわち、管理サーバは、中継切替手段の所定のポートから送出される主サーバからの信号を受信したときに、当該主サーバが生存していると判定し、その判定結果及びその信号を受信した日時を示す日時情報に基づいて作成される当該主サーバの生存状況を示す情報を記憶手段に記憶して管理すると共に、その管理する主サーバの生存状況を示す情報に基づいて当該主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定する。
【0010】
本発明の生存監視システムでは、上記の構成により、主サーバに生存監視処理を行う機能を持たせず、管理サーバが主サーバに対する生存監視処理を行う。これにより、主サーバは生存監視処理を行う必要がないので、主サーバの処理負荷を軽減することができる。また、管理サーバは、中継切替手段の所定のポートから送出される主サーバからの信号を受信すると共に、主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定する。このように、管理サーバは、主サーバから外部のシステムに送信される信号を利用して主サーバの生存状況を判定することにより、主サーバに対して生存を確認するための信号を送信する必要がないので、管理サーバによる生存監視処理が主サーバと外部のシステムとの間で行われる通信に影響を与えることはない。したがって、本発明の生存監視システムによれば、主サーバの処理負担を軽減することができると共に管理サーバによる生存監視処理が主サーバと外部のシステムとの間で行われる通信に影響を与えないので、主サーバが行う処理の遅延を引き起こすことなく、主サーバに対する生存監視を行うことができる。
【0011】
また、本発明の生存監視システムにおいて、主サーバが外部のシステムに送信する信号は、所定の処理を求める要求信号と、稼働中にネットワーク上で外部のシステムとの間に確立された通信路が閉じられないように自己が生存していることを知らせるためのハートビート信号とを含むものであることが望ましい。ハートビート信号は主サーバから外部のシステムに定期的に送信されるので、このハートビート信号を利用することにより主サーバの生存状況を確実に監視することができる。
【0012】
また、本発明の生存監視システムにおいて、主サーバ及び副サーバが外部のシステムと接続されているネットワークが生存しているかどうかを監視する処理を行うネットワーク監視サーバを備えることが望ましい。これにより、主サーバや副サーバはネットワーク監視処理を行う必要がなくなるので、これらサーバの処理負荷をさらに軽減することができる。
【0013】
また、本発明の生存監視システムにおいて、管理サーバは、副サーバに対して生存を確認するための信号を定期的に送信し、その送信した生存を確認するための信号に対する応答信号が当該副サーバから送られてきたときに、当該副サーバが生存していると判定し、その送信した生存を確認するための信号に対する応答信号がその送信時から所定時間経過しても当該副サーバから送られてこないときに、当該副サーバが生存していないと判定することが望ましい。これにより、管理サーバは、主サーバだけでなく、副サーバについても生存状況を監視することができる。
【0014】
更に、本発明の生存監視システムにおいて、中継切替手段の所定のポートから送出される主サーバからの信号を受信すると共に、その受信した信号のログをログ記憶手段に記憶して管理するログ記憶サーバを備えることが望ましい。これにより、主サーバから外部のシステムに送信される信号のログをすべて記憶しておくことができるので、主サーバに不測の事態が生じたときでも、それに対処することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る生存監視システムによれば、主サーバの処理負担を軽減することができると共に管理サーバによる生存監視処理が主サーバと外部のシステムとの間で行われる通信に影響を与えないので、主サーバが行う処理の遅延を引き起こすことなく、主サーバの生存監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の第一実施形態である生存監視システムを適用した発注システムの概略ブロック図である。
【図2】図2はその発注システムの各発注用サーバの概略ブロック図である。
【図3】図3は第一実施形態の生存監視システムにおける第一管理サーバの概略ブロック図である。
【図4】図4はその生存監視システムにおいて第一管理サーバが行う処理の手順を示すためのフローチャートである。
【図5】図5は本発明の第二実施形態である生存監視システムを適用した発注システムの概略ブロック図である。
【図6】図6はその生存監視システムの第三管理サーバの概略ブロック図である。
【図7】図7はその生存監視システムを適用した発注システムにおける発注情報についてのログ収集の処理手順を示すフロー図である。
【図8】図8はその生存監視システムを適用した発注システムにおける応答情報についてのログ収集の処理手順を示すフロー図である。
【図9】図9は従来の生存監視の仕組みを説明するための概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
第一実施形態では、本発明の生存監視システムを、高速情報処理システムの一つである、金融商品の取引所の売買システムに対して発注処理を行う金融機関側の発注システムに適用した場合について説明する。図1は本発明の第一実施形態である生存監視システムを適用した発注システムの概略ブロック図である。
【0019】
図1に示す発注システムは、二台の主サーバ100a,100bと、二台の副サーバ100c,100dとを備える。これらのサーバ100a,100b,100c,100dはネットワークを介して取引所の売買システム200に接続されている。主サーバ100a,100bは現在稼動しているサーバであり、副サーバ100c,100dは、主サーバ100a,100bと同等の機能を有し、主サーバ100a,100bに障害が発生したときに、主サーバ100a,100bに代えて使用される、代替用のサーバである。主サーバ100a,100bに障害が発生した場合には、その主サーバの代わりに副サーバ100c,100dのいずれか又は両方が稼働することになる。特に、第一実施形態では、副サーバ100cを、主サーバ100aに対する代替用サーバとして用い、副サーバ100dを、主サーバ100bに対する代替用サーバとして用いることにする。尚、以下では、主サーバと副サーバとをまとめて「発注用サーバ」とも称する。
【0020】
各発注用サーバ100a,100b,100c,100dは、ある会社の株を所定数買い付けるのに、どのようなアルゴリズムを組んで発注するかを決めるサーバである。この発注用サーバ100a,100b,100c,100dは、金融機関が所有するものであるが、発注処理を高速で行うために、取引所のデータセンター内に設置されている。
【0021】
取引所の売買システム(外部のシステム)200は、金融商品の取引所(例えば、東京証券取引所)に設けられている。この取引所の売買システム200は、取引所で取り扱う金融商品に係る取引を制御するシステムである。なお、以下では株式証券取引を例として説明するが、本発明の適用範囲は株式証券取引に限られるものではない。発注用サーバから発注情報(要求信号)を受信すると、取引所の売買システム200は、その注文を処理すると共に、発注情報を受け付けた旨の応答情報(応答信号)を当該発注用サーバに送出する。尚、この取引所の売買システム200は公知のものであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0022】
各主サーバ100a,100bは、取引所の売買システム200に各種の信号を送信する。具体的に、各主サーバ100a,100bは、本来の業務処理である発注処理を行うことにより作成した発注情報(要求信号)をネットワークを介して取引所の売買システム200に送信する。ここで、各主サーバ100a,100bはそれぞれ、独立に処理を行っている。このため、二台の主サーバ100a,100bは発注処理を同時並行的に行うことができる。また、各主サーバ100a,100bは、稼働中にネットワーク上で取引所の売買システム200との間に確立された通信路が閉じられないように自己が生存していることを知らせるためのハートビート信号を定期的に取引所の売買システム200に送信している。尚、各主サーバ100a,100bと取引所の売買システム200との間ではパケット通信により信号送信が行われる。
【0023】
第一実施形態の生存監視システムは、発注システムの各発注用サーバ100a,100b,100c,100dの生存状況を監視するためのものであり、図1に示すように、スイッチ10と、第一管理サーバ20と、第二管理サーバ30とを備えている。スイッチ10は、発注用サーバ100a,100b,100c,100dと取引所の売買システム200との間で送信される信号を中継するものであり、発注システムと取引所の売買システム200とを繋ぐ通信回線上に設けられている。具体的に、四台の発注用サーバ100a,100b,100c,100dはそれぞれスイッチ10に接続され、取引所の売買システム200もスイッチ10に接続されている。このスイッチ10には第一管理サーバ20も接続されている。また、第二管理サーバ30は各発注用サーバ100a,100b,100c,100dと接続されている。
【0024】
次に、発注システムの各発注用サーバ100a,100b,100c,100dの構成について説明する。図2は発注システムの各発注用サーバ100a,100b,100c,100dの概略ブロック図である。各発注用サーバ100a,100b,100c,100dは、図2に示すように、注文処理部111と、ログ制御部112と、記憶部(第一のログ記憶手段)113とを有する。
【0025】
注文処理部111は、取引所や情報ベンダー等から配信される時価情報を取得したときに、その時価情報を分析・判断し、所定のアルゴリズムを組んで、取引所に株の購入を行うための発注情報を生成して、スイッチ10に送信する。ここで、この発注情報には、各発注情報を識別するためのシリアル番号が注文処理部111によって付与される。また、注文処理部111は、発注情報をログ制御部112にも転送する機能を有する。ログ制御部112は注文処理部111から転送された発注情報を受信すると、その発注情報を発注情報のログ(履歴情報)として記憶部113に記憶する。記憶部113に記憶する発注情報のログとしては、日時情報やシリアル番号を含む発注情報のすべてを記憶してもよいし、或いは、この発注情報の一部、例えば発注情報に付与されたシリアル番号だけを記憶するようにしてもよい。当該発注用サーバに障害が発生した場合、このシリアル番号が分かれば、対応する発注情報を特定することができ、当該シリアル番号の発注情報が取引所の売買システム200に受け入れられたか否かを後に検証することができるからである。
【0026】
また、当該発注用サーバが発注情報を取引所の売買システム200に送信した後、その発注情報に対する応答情報が取引所の売買システム200から当該発注用サーバに送られてくると、注文処理部111は、その応答情報を受信し、ログ制御部112に送信する。ログ制御部112は注文処理部111から送られた応答情報を受け取ると、その応答情報を応答情報のログ(履歴情報)として記憶部113に記憶する。応答情報には取引所の売買システム200によってシリアル番号が付与されている。したがって、この応答情報についても、発注情報と同様の理由から、記憶部113に記憶する応答情報のログとして、日時情報やシリアル番号を含む応答情報のすべてを記憶しもよいし、この応答情報の一部、例えば応答情報に付与されているシリアル番号だけを記憶するようにしてもよい。
【0027】
次に、第一実施形態の生存監視システムの各構成要素(スイッチ10、第一管理サーバ20、第二管理サーバ30)について説明する。
【0028】
スイッチ(中継切替手段)10は、各主サーバ100a,100bと取引所の売買システム200との間で送信される発注情報、応答情報、ハートビート信号等を中継するものである。また、第一実施形態では、このスイッチ10として、各発注用サーバから信号が送られたときに、当該発注用サーバから送られた信号をコピーして所定のポートから送出するポートミラーリング機能を有するものを用いている。すなわち、このポートミラーリング機能というのは、スイッチ10の、あるポートを流れるパケットを、ユーザが任意に指定した他のポートにコピーする機能である。ユーザは任意にコピー元ポートとコピー先ポートを指定することができる。かかるポートの指定は、このスイッチ10を設置する際に行われる。
【0029】
具体的に、図1の例では、主サーバ100aはスイッチ10のポート「1」に接続され、主サーバ100bはスイッチ10のポート「2」に接続され、副サーバ100cはスイッチ10のポート「3」に接続され、そして、副サーバ100dはスイッチ10のポート「4」に接続されている。また、取引所の売買システム200はスイッチ10のポート「5」に接続され、第一管理サーバ20はスイッチ10のポート「6」に接続されている。この場合、スイッチ10においては、各ポート「1」〜「4」で受信する取引所の売買システム宛のパケットをコピーして、ポート「6」に送出するようにポートの指定が行われている。これにより、スイッチ10は、各発注用サーバ100a,100b,100c,100dから送られてきた取引所の売買システム宛の信号(発注情報、ハートビート信号等)をそれぞれポート「1」,「2」,「3」,「4」で受信すると、その信号を、ポート「5」を介して取引所の売買システム200に送出すると共に、その信号のコピーを作成して、ポート「6」を介して第一管理サーバ20に送出する。
【0030】
また、スイッチ10においては、ポート「5」で受信する各発注用サーバ宛のパケットをコピーして、ポート「6」に送出するようにポートの指定が行われている。これにより、スイッチ10は、取引所の売買システム200から各発注用サーバ宛の信号(応答情報等)をポート「5」で受信すると、その信号を所定のポートを介して当該発注用サーバに送出すると共に、その信号のコピーを作成して、ポート「6」を介して第一管理サーバ20に送出する。このように、第一管理サーバ20には、各発注用サーバと取引所の売買システム200との間で通信される信号のコピーがすべて送信されることになる。
【0031】
第一管理サーバ(管理サーバ)20は、四台の発注用サーバ100a,100b,100c,100dの各々が生存しているかどうかを判定する生存監視処理を行うものである。この第一管理サーバ20としては、例えば、Snifferサーバを用いることができる。図3は第一管理サーバ20の概略ブロック図である。この第一管理サーバ20は、図3に示すように、制御部21と、記憶部(記憶手段)22とを備える。第一管理サーバ20の制御部21は、主サーバ100a,100bに対しては次のような生存監視処理を行う。すなわち、制御部21は、スイッチ10のポート「6」から送出される信号を受信したときに、その信号の内容を解析することにより当該信号の送信元又は当該信号の送信先として特定されている主サーバを認識し、その認識した主サーバが生存していると判定する。当該信号の送信元として主サーバが特定されている場合には、当該信号は当該主サーバから送信されたものであるので、当該主サーバは現在、実際に稼働していると考えられるからである。また、当該信号の送信先として主サーバが特定されている場合には、当該信号は取引所の売買システム200から当該主サーバに送信された応答情報であるが、この応答情報が送信されるためには当該主サーバから発注情報が取引所の売買システム200に送信されているので、当該主サーバは現在、実際に稼働していると考えられるからである。そして、制御部21は、主サーバが生存していると判定すると、その判定結果及びその信号を受信した日時を示す日時情報に基づいて当該主サーバの生存状況を示す情報を作成し、記憶部22に記憶して管理する。
【0032】
また、制御部21は、記憶部22に記憶されている主サーバの生存状況を示す情報に基づいて当該主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないかどうかを判断する。ここで、その判断基準となる「所定時間」としては、主サーバからのハートビート信号の送信間隔よりも長い時間が設定される。例えば、この「所定時間」は5秒程度に設定することができる。特に、発注用サーバによる処理の高速化が要求されるような場合には、「所定時間」を、ハートビート信号の送信間隔よりも長いが、ハートビート信号になるべく近い時間に設定することが望ましい。したがって、制御部21は、当該主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断すると、当該主サーバから送られるはずのハートビート信号が送信されていない、したがって、当該主サーバが生存していないと判定することになる。こうして、制御部21は、当該主サーバが生存していないと判定すると、当該主サーバの代わりに稼働する旨の信号を所定の副サーバに送信する。具体的には、主サーバ100aが生存していないと判定すると、副サーバ100cに対して、主サーバ100aの代わりに主サーバとして稼働する旨の信号を送信し、主サーバ100bが生存していないと判定すると、副サーバ100dに対して、主サーバ100bの代わりに主サーバとして稼働する旨の信号を送信する。
【0033】
一方、副サーバ100c,100dは取引所の売買システム200との間で信号の送受信を行っていないので、副サーバ100c,100dに対する生存監視処理として、上記の主サーバ100a,100bに対する生存監視処理と同じ方法を適用することはできない。このため、第一管理サーバ20の制御部21は、副サーバ100c,100dの各々に対して生存を確認するための信号(生存監視信号)を定期的に送信し、その送信した生存監視信号に対する応答信号が当該副サーバから送られてきたときに、当該副サーバが生存していると判定する。一方、制御部21は、その送信した生存監視信号に対する応答信号がその送信時から所定時間経過しても当該副サーバから送られてこないときに、当該副サーバが生存していないと判定する。この判定結果は当該副サーバの生存状況を示す情報として記憶部22に記憶される。
【0034】
第二管理サーバ(ネットワーク監視サーバ)30は、主サーバ100a,100b及び副サーバ100c,100dが取引所の売買システム200と接続されているネットワークが生存しているかどうかを監視する処理を行うものである。従来は、かかるネットワーク監視処理は各発注用サーバが行っていたが、第一実施形態の生存監視システムでは、発注用サーバとは別に第二管理サーバ30を設け、この第二管理サーバ30にネットワーク監視処理を行わせることにしている。ネットワーク監視処理の具体的内容は従来と同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0035】
次に、第一実施形態の発注システムにおける発注処理の手順について説明する。ここでは、主サーバ100aが発注処理を行う場合を考える。
【0036】
金融機関では、例えば、ある顧客からA社の株価が特定の値になったときに所定株数を購入して欲しいという依頼を受けている。主サーバ100aの注文処理部111は、取引所等から提供される時価情報に基づいて、A社の株価が気配値になったと判断したときに、その会社の所定株数の株式を購入することを決定し、その株式を購入するための発注情報を生成する。そして、注文処理部111は、この生成した発注情報を取引所の売買システム200に送るために、その発注情報をスイッチ10に送信すると共に、その発注情報をログ制御部112にも転送する。
【0037】
ログ制御部112は、注文処理部111からの発注情報を受け取ると、その発注情報のログを記憶部113に記憶する。一方、発注処理部111から発注情報がポート「1」を介してスイッチ10に送られると、スイッチ10は、その送られた発注情報をポート「5」に送出して取引所の売買システム200に送ると共に、その発注情報のコピーを生成し、この生成した発注情報をポート「6」に送出する。ここで、ポート「6」から送出された発注情報は第一管理サーバ20に送られ、第一管理サーバ20はこの発注情報に基づいて主サーバに対する生存監視処理を行うことになる。このように、ログ制御部112による発注情報のログを記憶する処理と、発注情報をスイッチ10を介して取引所の売買システム200に送信する処理とは非同期で行われる。
【0038】
主サーバ100aからの発注情報を受信した取引所の売買システム200は、その発注情報に基づいて注文を処理し、また、発注情報を受け付けた旨の応答情報を当該主サーバ100aに向けて送信する。この取引所の売買システム200からの応答情報は、ポート「5」を介してスイッチ10に送られる。そして、スイッチ10は、そのポート「5」を介して送られた応答情報を主サーバ100aに向けてポート「1」から送出すると共に、その応答情報のコピーを生成し、この生成した応答情報を、ポート「6」に送出する。ここで、ポート「6」から送出された応答情報は第一管理サーバ20に送られ、第一管理サーバ20はこの応答情報に基づいて主サーバに対する生存監視処理を行うことになる。
【0039】
主サーバ100aの注文処理部111は、スイッチ10からの応答情報を受信すると、その受信した応答情報をログ制御部112に送出し、ログ制御部112はその応答情報のログを記憶部113に記憶する。
【0040】
次に、第一実施形態の生存監視システムにおいて第一管理サーバ20が行う処理の手順について説明する。図4は第一管理サーバが行う処理の手順を示すためのフローチャートである。
【0041】
第一管理サーバ20の制御部21は、図4に示すように、主サーバに対する生存監視処理と、副サーバに対する生存監視処理とを繰り返し実行する。主サーバに対する生存監視処理は、信号受信処理(S11)と、生存状況情報作成処理(S12)と、生存判定処理(S13)と、切替え処理(S14)とからなり、副サーバに対する生存監視処理は、信号送信処理(S15)と、生存判定処理(S16)とからなる。ここで、図4の処理フローでは、説明を分かりやすくするために、各処理が順に実行されるように記載しているが、実際には、制御部21にはマルチコアのCPUを採用しており、上記各処理はマルチスレッドにより同時並行的に行われる。
【0042】
まず、制御部21は信号受信処理を行う(S11)。この信号受信処理では、制御部21は、スイッチ10のポート「6」から送出される信号を受信すると、その受信した信号の内容をその受信した日時を示す日時情報とともに記憶部22に記憶する。次に、制御部21は生存状況情報作成処理を行う(S12)。この生存状況情報作成処理では、制御部21は、記憶部22に記憶されている信号の内容を解析することにより当該信号の送信元又は当該信号の送信先として特定されている主サーバを認識する。そして、その認識した主サーバが生存していると判定し、その判定結果及び当該信号の日時情報に基づいて当該主サーバの生存状況を示す情報を作成して、記憶部22に記憶する。
【0043】
次に、制御部21は生存判定処理を行う(S13)。この生存判定処理では、制御部21は、主サーバの各々について、記憶部22に記憶されている主サーバの生存状況を示す情報に基づいて当該主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないかどうかを判断する。制御部21は、当該主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断すると、当該主サーバが生存していないと判定し、その判定結果を記憶部22に記憶する。
【0044】
次に、制御部21は切替え処理を行う(S14)。この切替え処理では、制御部21は、記憶部22に主サーバが生存していない旨の判定結果が記憶されているときに、当該主サーバの代わりに稼働する旨の信号を所定の副サーバに送信する。ここで、主サーバ100aが生存していない場合には、副サーバ100cに対して、主サーバ100aの代わりに稼働する旨の信号を送信し、主サーバ100bが生存していない場合には、副サーバ100dに対して、主サーバ100bの代わりに稼働する旨の信号を送信する。副サーバは、当該主サーバの代わりに稼働する旨の信号を第一管理サーバ20から受け取ると、当該主サーバの処理を引き継いで実行することになる。こうして、当該副サーバは稼働状態になり、主サーバとして動作することになる。上述したステップS11からステップS14までの処理が、主サーバに対する生存監視処理である。
【0045】
次に、制御部21は、副サーバに対する生存監視処理を行う。まず、制御部21は、各副サーバに対して生存を確認するための生存監視信号を送信する信号送信処理を行う(S15)。そして、制御部21は、その送信した生存監視信号に対する応答信号が当該副サーバから送られてきたときに、当該副サーバが生存していると判定し、一方、その送信した生存監視信号に対する応答信号がその送信時から所定時間経過しても当該副サーバから送られてこないときに、当該副サーバが生存していないと判定する(S16)。この判定結果は当該副サーバの生存状況を示す情報として記憶部22に記憶される。ここで、副サーバが生存していないと判定したときには、制御部21は、その旨の信号を外部のサーバに送出したり、或いは警報を発したりするようにしてもよい。
【0046】
第一実施形態の生存監視システムでは、主サーバに生存監視処理を行う機能を持たせず、第一管理サーバが主サーバに対する生存監視処理を行う。これにより、主サーバは生存監視処理を行う必要がないので、主サーバの処理負荷を軽減することができる。また、第一管理サーバは、スイッチの所定のポートから送出される主サーバからの信号を受信すると共に、主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定する。このように、第一管理サーバは、主サーバから取引所の売買システムに送信される信号を利用して主サーバの生存状況を判定することにより、主サーバに対して生存を確認するための信号を送信する必要がないので、第一管理サーバによる生存監視処理が主サーバと取引所の売買システムとの間で行われる通信に影響を与えることはない。したがって、第一実施形態の生存監視システムによれば、主サーバの処理負担を軽減することができると共に第一管理サーバによる生存監視処理が主サーバと取引所の売買システムとの間で行われる通信に影響を与えないので、主サーバが行う処理の遅延を引き起こすことなく、主サーバに対する生存監視を行うことができる。
【0047】
また、主サーバから取引所の売買システムに送信される信号にはハートビート信号が含まれ、このハートビート信号は主サーバから取引所の売買システムに定期的に送信されるので、このハートビート信号を利用することにより主サーバの生存状況を確実に監視することができる。
【0048】
また、第一実施形態の生存監視システムでは、第一管理サーバは、副サーバに対して生存を確認するための生存監視信号を定期的に送信し、その送信した生存監視信号に対する応答信号が当該副サーバから送られてきたときに、当該副サーバが生存していると判定し、その送信した生存監視信号に対する応答信号がその送信時から所定時間経過しても当該副サーバから送られてこないときに、当該副サーバが生存していないと判定する。これにより、第一管理サーバは、主サーバだけでなく、副サーバについても生存状況を監視することができると共に、副サーバは生存監視処理を行う必要がなくなり、副サーバの処理負担が軽減する。
【0049】
更に、第一実施形態の生存監視システムでは、主サーバ及び副サーバが取引所の売買システムと接続されているネットワークが生存しているかどうかを監視する処理を行う第二管理サーバを備えることにより、主サーバや副サーバはネットワーク監視処理を行う必要がなくなるので、これらのサーバの処理負荷をさらに軽減することができる。
【0050】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。第二実施形態でも、第一実施形態と同様に、本発明の生存監視システムを、高速情報処理システムの一つである、金融商品の取引所の売買システムに対して発注処理を行う金融機関側の発注システムに適用した場合について説明する。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0051】
図5は本発明の第二実施形態である生存監視システムを適用した発注システムの概略ブロック図である。この図5に示す発注システムは、第一実施形態と同様に、二台の主サーバ100a,100bと、二台の副サーバ100c,100dとを備える。また、第二実施形態の生存監視システムは、発注システムの各発注用サーバ100a,100b,100c,100dの生存状況を監視するためのものであり、スイッチ10と、第一管理サーバ20と、第二管理サーバ30と、二台の第三管理サーバ(ログ記憶サーバ)40a,40bとを備えている。すなわち、第二実施形態の生存監視システムが第一実施形態のものと異なる点は、二台の第三管理サーバ40a,40bを設けた点である。その他の点については、上記第一実施形態のものと同様である。
【0052】
二台の第三管理サーバ40a,40bはそれぞれスイッチ10に接続されている。具体的に、図5の例では、第三管理サーバ40aはスイッチ10のポート「7」に接続され、第三管理サーバ40bはスイッチ10のポート「8」に接続されている。第二実施形態では、スイッチ10において、各ポート「1」,「2」,「3」,「4」で受信する取引所の売買システム宛のパケットをコピーして、ポート「6」,「7」,「8」に送出するように、ポートの指定が行われている。これにより、スイッチ10は、各発注用サーバ100a,100b,100c,100dから取引所の売買システム宛の信号(発注情報、ハートビート信号等)をそれぞれポート「1」,「2」,「3」,「4」で受信すると、その信号を、ポート「5」を介して取引所の売買システム200に送出すると共に、その信号のコピーを作成して、ポート「6」を介して第一管理サーバ20に、ポート「7」を介して第三管理サーバ40aに、そして、ポート「8」を介して第三管理サーバ40bにそれぞれ送出する。
【0053】
また、スイッチ10においては、ポート「5」で受信する各発注用サーバ宛のパケットをコピーして、ポート「6」,「7」,「8」に送出するようにポートの指定が行われている。これにより、スイッチ10は、取引所の売買システム200から各発注用サーバ宛の信号(応答情報等)をポート「5」で受信すると、その信号を所定のポートを介して当該発注用サーバに送出すると共に、その信号のコピーを作成して、ポート「6」を介して第一管理サーバ20に、ポート「7」を介して第三管理サーバ40aに、そして、ポート「8」を介して第三管理サーバ40bにそれぞれ送出する。このように、第三管理サーバ40a,40bには、第一管理サーバ20と同様に、各発注用サーバと取引所の売買システム200との間で通信される信号のコピーがすべて送信されることになる。
【0054】
次に、第三管理サーバ40a,40bについて説明する。各第三管理サーバ40a,40bは、スイッチ10の所定のポートから送出される信号を受信すると共に、その受信した信号のうち発注情報及び応答情報についてのログ(履歴情報)を収集するものである。すなわち、第二実施形態では、発注情報のログ及び応答情報のログを、各主サーバの記憶部113に記憶しておくだけでなく、第三管理サーバ40a,40bにおいても記憶して管理することにしている。ここで、二台の第三管理サーバ40a,40bを設けているのは、冗長化を図り、履歴情報の記憶に関する信頼性を高めるためである。各第三管理サーバ40a,40bとしては、例えば、Snifferサーバを用いることができる。図6は第三管理サーバ40a,40bの概略ブロック図である。各第三管理サーバ40a,40bは、図6に示すように、制御部41と、レイドコントローラ部42と、二つの記憶部(第二のログ記憶手段)43a,43bとを備える。
【0055】
制御部41は、各主サーバ100a,100bから取引所の売買システム200に送られる発注情報のコピーの記憶、及び、取引所の売買システム200から各主サーバ100a,100bに送られる応答情報のコピーの記憶を制御するものである。具体的に、制御部41は、スイッチ10の所定のポート(「7」又は「8」)から送出されるコピーされた信号を受信したときに、その信号の内容を解析する。そして、その解析の結果、今回受信した信号が発注情報であると判断すると、その発注情報とともにその発注情報を記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送り、一方、今回受信した信号が応答情報であると判断すると、その応答情報とともにその応答情報を記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送る。レイドコントローラ部42はRAIDカードであり、RAID1で使用して二つの記憶部43a,43bに同時に同じ内容の情報を書き込むものである。このレイドコントローラ部42は、制御部41から発注情報とともにその発注情報を記憶する旨の指示が送られたときに、その発注情報を発注情報のログ(履歴情報)として二つの記憶部43a,43bに記憶する処理を行い、一方、制御部41から応答情報とともにその応答情報を記憶する旨の指示が送られたときに、その応答情報を応答情報のログ(履歴情報)として二つの記憶部43a,43bに記憶する処理を行う。
【0056】
尚、第二実施形態では、二つの記憶部43a,43bに発注情報全体及び応答情報全体を履歴情報として記憶しているが、発注情報の一部及び応答情報の一部を履歴情報として記憶するようにしてもよい。この場合、例えば、制御部41は、スイッチ10から送られた信号の内容を解析し、その信号が発注情報であると判断したときに、その情報に付与されているシリアル番号を取得し、その取得したシリアル番号を発注情報のログとして記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送るようにすればよい。また、その信号が応答情報であると判断した場合には、その情報に付与されているシリアル番号を取得し、その取得したシリアル番号を応答情報のログとして記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送るようにすればよい。
【0057】
また、第二実施形態では、レイドコントローラ部42をRAID1で使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、レイドコントローラ部42をRAID0とRAID1とを組合せて構成すること等により、高信頼性を実現するとともに、高速化を図るようにしてもよい。
【0058】
第二実施形態の発注システムにおける発注処理の手順、及び、第二実施形態の生存監視システムにおける第一管理サーバ20が行う発注用サーバに対する生存監視処理の手順は、上記第一実施形態におけるものと同様である。このため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0059】
次に、第二実施形態の生存監視システムを適用した発注システムにおいて主サーバが取引所の売買システム200に送信する発注情報についてのログ収集の処理について説明する。図7は第二実施形態の生存監視システムを適用した発注システムにおける発注情報についてのログ収集の処理手順を示すフロー図である。ここでは、主サーバ100aが発注処理を行う場合を考える。
【0060】
主サーバ100aの注文処理部111は、取引所等から提供される時価情報を取得したときに、その時価情報を分析・判断し、発注を行うことを決定すると、その発注情報を生成する(S21)。そして、注文処理部111は、この生成した発注情報を取引所の売買システム200に送るために、その発注情報をスイッチ10に送信する(S22)と共に、その発注情報をログ制御部112に転送する(S23)。ログ制御部112は、発注情報を受け取ると、その発注情報を発注情報のログとして記憶部113に記憶する(S24)。このように、ステップS22の処理とステップS23及びS24の処理とは並行して行われる。したがって、主サーバ100aでは、発注情報のスイッチ10への送信処理と発注情報のログ記憶処理とは非同期で行われるので、これらの処理を同期して行う場合に比べて、主サーバ100aは発注処理を高速で行うことができる。
【0061】
ステップS22の処理により注文処理部111から発注情報がポート「1」を介してスイッチ10に送られると(S25)、スイッチ10は、その送られた発注情報をポート「5」に送出して取引所の売買システム200に送る(S26)と共に、その発注情報のコピーを三つ生成し、これら生成した発注情報をそれぞれ、ポート「6」,「7」,「8」に送出する。このうち、ポート「7」,「8」から送出された発注情報はそれぞれ、第三管理サーバ40a,40bに送られる(S27)。このように、ステップS26の処理とステップS27の処理とは並行して行われる。ここで、スイッチ20のポート「6」から送出された発注情報は第一管理サーバ20に送られ、第一管理サーバ20は、上記第一実施形態で詳しく説明したように、この発注情報に基づいて主サーバに対する生存監視処理を行うことになる。
【0062】
スイッチ10のポート「7」から送出された信号(発注情報)は第三管理サーバ40aに送られる。第三管理サーバ40aの制御部41は、その送られた信号の内容を解析し、その信号が発注情報であると判断すると、その発注情報とともにその発注情報を記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送る。そして、第三管理サーバ40aのレイドコントローラ部42は、制御部41からの指示にしたがって、その発注情報を発注情報のログとして二つの記憶部43a,43bに同時に記憶する(S28)。同様に、スイッチ10のポート「8」から送出された信号(発注情報)は第三管理サーバ40bに送られる。第三管理サーバ40bの制御部41は、その送られた信号の内容を解析し、その信号が発注情報であると判断すると、その発注情報とともにその発注情報を記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送る。そして、第三管理サーバ40bのレイドコントローラ部42は、制御部41からの指示にしたがって、その発注情報を発注情報のログとして二つの記憶部43a,43bに同時に記憶する(S29)。
【0063】
以上の処理により、主サーバ100aが生成して取引所の売買システム200に送信した発注情報については、当該主サーバ100aの記憶部113に記憶されると共に、二台の第三管理サーバ40a,40bの二つの記憶部43a,43bにも記憶される。
【0064】
次に、第二実施形態の生存監視システムを適用した発注システムにおいて取引所の売買システム200が主サーバに送信する応答情報についてのログ収集の処理について説明する。図8は第二実施形態である生存監視システムを適用した発注システムにおける応答情報についてのログ収集の処理手順を示すフロー図である。ここでは、主サーバ100aに対して応答情報を送信する場合を考える。
【0065】
主サーバ100aからの発注情報を受信した取引所の売買システム200は、その発注情報に基づいて注文を処理し、また発注情報を受け付けた旨の応答情報を当該主サーバ100aに向けて送信する。そして、その取引所の売買システム200からの応答情報は、スイッチ10に送られる(S41)。応答情報を受けたスイッチ10は、その応答情報を主サーバ100aに向けてポート「1」から送出する(S42)と共に、その応答情報をコピーして三つ生成し、これら生成した応答情報をそれぞれ、ポート「6」,「7」,「8」に送出する(S43)。このように、ステップS42の処理とステップS43の処理とは並行して行われる。ここで、スイッチ20のポート「6」から送出された応答情報は第一管理サーバ20に送られ、第一管理サーバ20は、上記第一実施形態で詳しく説明したように、この応答情報に基づいて主サーバに対する生存監視処理を行うことになる。
【0066】
ステップS42の処理によりスイッチ10のポート「1」から送出された応答情報が主サーバ100aの注文処理部111に受信されると(S44)、注文処理部111はその受信した応答情報をログ制御部112に送出する(S45)。ログ制御部112は、注文処理部111からの応答情報を受け取ると、その応答情報を応答情報のログとして記憶部113に記憶する(S46)。
【0067】
一方、ステップS43の処理によりスイッチ10のポート「7」から送出された信号(応答情報)は第三管理サーバ40aに送られる。第三管理サーバ40aの制御部41は、その送られた信号の内容を解析し、その信号が応答情報であると判断すると、その応答情報とともにその応答情報を記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送る。そして、第三管理サーバ40aのレイドコントローラ部42は、制御部41からの指示にしたがって、その応答情報を応答情報のログとして二つの記憶部43a,43bに同時に記憶する(S47)。同様に、ステップS43の処理によりスイッチ10のポート「8」から送出された信号(応答情報)は第三管理サーバ40bに送られる。第三管理サーバ40bの制御部41は、その送られた信号の内容を解析し、その信号が応答情報であると判断すると、その応答情報とともにその応答情報を記憶する旨の指示をレイドコントローラ部42に送る。そして、第三管理サーバ40bのレイドコントローラ部42は、制御部41からの指示にしたがって、その応答情報を応答情報のログとして二つの記憶部43a,43bに同時に記憶する(S48)。
【0068】
以上の処理により、取引所の売買システム200が主サーバ100aに送信した応答情報については、当該主サーバ100aの記憶部113に記憶されると共に、二台の第三管理サーバ40a,40bの二つの記憶部43a,43bにも記憶される。
【0069】
第二実施形態の生存監視システムは、上記第一実施形態の生存監視システムと同様の作用・効果を奏する。また、第二実施形態では、第三管理サーバが、スイッチの所定のポートから送出されるコピーされた信号を受信したときに、その信号のログを記憶部に記憶して管理する。このため、主サーバから取引所の売買システムに送信される発注情報のログをすべて、第三管理サーバに記憶しておくことができるので、主サーバに不測の事態が生じたときでも、それに対処することができる。
【0070】
ところで、第二実施形態によれば、本発明の生存監視システムと金融機関側の発注システムとを併せた全体を、外部のシステムにネットワークを介して信号を送信する一つの情報処理システムと捉えたとき、この情報処理システムでは、特有の作用効果が得られることが分かる。すなわち、第二実施形態の生存監視システムを適用した発注システムでは、主サーバ内において発注情報のログを記憶するのと並行して当該主サーバからスイッチに発注情報を送信し、また、スイッチから取引所の売買システムに発注情報を送出するのと並行してスイッチからコピーされた発注情報を二台の第三管理サーバに送出して発注情報のログを記憶する。これにより、主サーバは発注情報のログを記憶する処理と非同期で発注情報を取引所の売買システムに送出するので、ログの記憶処理による遅延を極力押さえて高速で発注情報の送信処理を行うことができる。しかも、主サーバだけでなく、第三管理サーバにも発注情報のログを記憶しているので、取引所の売買システムに送信される発注情報のログを確実に収集することができる。このため、例えば、主サーバが発注情報のログを記憶部に記憶する前に当該主サーバに障害が発生したとしても、取引所の売買システムに向けて送出した発注情報はスイッチを介して、二台の第三管理サーバに送られ、その二台の第三管理サーバで発注情報のログが収集されているので、後に第三管理サーバが収集したログを解析することにより、当該発注情報が取引所の売買システムに発送されたか否かを検証することができる。したがって、第二実施形態の生存監視システムを適用した発注システムによれば、高速で処理を行う必要があるアルゴリズム取引においても、高い信頼性を確保して、発注情報を高速で取引所の売買システムに送信することができる。
【0071】
また、第二実施形態の生存監視システムを適用した発注システムでは、スイッチは、取引所の売買システムから送信される応答情報を中継してその送信先である主サーバに送出すると共に、当該応答情報をコピーして第三管理サーバに送出する。そして、当該主サーバはスイッチから送出された応答情報のログを記憶し、一方、第三管理サーバも、コピーされた当該応答情報をスイッチから受信して、その受信した当該応答情報のログを記憶する。これにより、発注情報とともに応答情報をも記憶して、当該発注に関する履歴を完全に収集することができる。
【0072】
[他の実施形態]
尚、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0073】
例えば、上記の各実施形態では、スイッチが取引所の売買システムから送信される応答情報をコピーして第一管理サーバに送出する場合について説明したが、スイッチはかかる応答情報を第一管理サーバに送出しなくともよい。第一管理サーバは、主サーバから取引所の売買システムに送信される信号(発注情報、ハートビート信号)を受け取ることができれば、かかる信号に基づいて主サーバの生存監視を行うことができるからである。
【0074】
また、上記の第二実施形態では、スイッチが取引所の売買システムから送信される応答情報をコピーして第三管理サーバに送出する場合について説明したが、スイッチはかかる応答情報を第三管理サーバに送出しなくともよい。すなわち、第三管理サーバでは、主サーバが送信する発注情報のログだけを収集するようにしてもよい。発注情報のログだけを収集して記憶しておけば、主サーバの障害に対処することができるからである。
【0075】
また、上記の第二実施形態において、第三管理サーバは、例えば記憶したログを解析して必要な情報を取り出し、表示手段に表示することができるアナライザ機能を備えるものであってもよい。
【0076】
更に、上記の各実施形態では、第二管理サーバがネットワーク監視処理を行う場合について説明したが、第二管理サーバを設けず、各発注用サーバがネットワーク監視処理を行うようにしてもよい。
【0077】
上記の各実施形態では、主サーバを二台設けた場合について説明したが、主サーバは一台或いは三台以上設けるようにしてもよい。また、高速での発注処理が要求されるようなシステムにあっては、主サーバを複数台設けることが望ましい。これにより、各主サーバには同時並行的に処理を行わせることができるので、主サーバの処理を効率よく行うことができる。
【0078】
また、上記の各実施形態では、副サーバを二台設けた場合について説明したが、副サーバは一台或いは三台以上設けるようにしてもよい。特に、副サーバを複数台設けることにより、副サーバの冗長化を図ることができるので、不測の事態が生じたときでも、システムが停止してしまうのを回避し、システムの信頼性の向上を図ることができる。
【0079】
上記の第二実施形態では、第一管理サーバとは別に第三管理サーバを設けた場合について説明したが、第一管理サーバには、各発注用サーバに対する生存監視処理を行うという本来の機能を実行させるだけでなく、ログの記憶処理を行うという第三管理サーバの機能をも実行させるようにしてもよい。これにより、第三管理サーバの台数を減らすことができる。
【0080】
また、上記の第二実施形態では、第三管理サーバを二台設けた場合について説明したが、第三管理サーバは一台或いは三台以上設けるようにしてもよい。特に、第三管理サーバを複数台設けることにより、これら複数台の第三管理サーバに発注情報のログを記憶しておくことができるので、高速で発注情報を送信する際の信頼性の向上を図ることができる。また、一つの金融機関側に複数の発注システムが設けられている場合には、第三管理サーバは複数の発注システムの各々に個別に設けるのではなく、第三管理サーバを複数の発注システムで共用するようにしてもよい。
【0081】
また、上記の各実施形態では、第一管理手段が主サーバと副サーバの生存状況を監視する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一管理手段は主サーバの生存状況を監視し、副サーバの生存状況は監視しないようにしてもよい。
【0082】
更に、上記の各実施形態では、本発明の生存監視システムを、金融商品の取引所の売買システムに対して発注処理を行う金融機関側の発注システムに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外部のシステムに対して所定の処理を求める要求信号を送信する必要のある情報処理システムであれば、どのようなシステムにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明の生存監視システムでは、主サーバに生存監視処理を行う機能を持たせず、管理サーバが主サーバに対する生存監視処理を行う。これにより、主サーバは生存監視処理を行う必要がないので、主サーバの処理負荷を軽減することができる。また、管理サーバは、中継切替手段の所定のポートから送出される主サーバからの信号を受信すると共に、主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定する。このように、管理サーバは、主サーバから外部のシステムに送信される信号を利用して主サーバの生存状況を判定することにより、主サーバに対して生存を確認するための信号を送信する必要がないので、管理サーバによる生存監視処理が主サーバと外部のシステムとの間で行われる通信に影響を与えることはない。したがって、本発明の生存監視システムによれば、主サーバの処理負担を軽減することができると共に管理サーバによる生存監視処理が主サーバと外部のシステムとの間で行われる通信に影響を与えないので、主サーバが行う処理の遅延を引き起こすことなく、主サーバに対する生存監視を行うことができる。したがって、本発明は、例えば、金融商品の取引所の売買システムに対して発注処理を行う金融機関側の発注システム等に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
10 スイッチ(中継切替手段)
20 第一管理サーバ(管理サーバ)
21 制御部
22 記憶部(記憶手段)
30 第二管理サーバ(ネットワーク監視サーバ)
40a,40b 第三管理サーバ(ログ記憶サーバ)
41 制御部
42 レイドコントローラ部
43a,43b 記憶部
100a,100b 主サーバ
100c,100d 副サーバ
111 注文処理部
112 ログ制御部
113 記憶部
200 取引所の売買システム(外部のシステム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のシステムとネットワークを介して接続された主サーバの生存状況を監視する生存監視システムであって、
前記主サーバと前記外部のシステムとの間で送信される信号を中継すると共に、前記主サーバから信号が送られたときに、当該主サーバから送られた信号をコピーして所定のポートから送出するポートミラーリング機能を有する中継切替手段と、
前記中継切替手段の所定のポートから送出される前記主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定し、当該主サーバの代替用のサーバである副サーバに当該主サーバの代わりに稼働する旨の信号を送出する管理サーバと、
を具備することを特徴とする生存監視システム。
【請求項2】
前記管理サーバは、前記中継切替手段の所定のポートから送出される前記主サーバからの信号を受信したときに、当該主サーバが生存していると判定し、その判定結果及びその信号を受信した日時を示す日時情報に基づいて作成される当該主サーバの生存状況を示す情報を記憶手段に記憶して管理すると共に、その管理する前記主サーバの生存状況を示す情報に基づいて当該主サーバからの信号が前回受信したときから所定時間送られてきていないと判断したときに、当該主サーバが生存していないと判定することを特徴とする請求項1記載の生存監視システム。
【請求項3】
前記主サーバが前記外部のシステムに送信する信号は、所定の処理を求める要求信号と、稼働中に前記ネットワーク上で前記外部のシステムとの間に確立された通信路が閉じられないように自己が生存していることを知らせるためのハートビート信号とを含むものであることを特徴とする請求項1又は2記載の生存監視システム。
【請求項4】
前記主サーバ及び前記副サーバが前記外部のシステムと接続されている前記ネットワークが生存しているかどうかを監視する処理を行うネットワーク監視サーバを備えることを特徴する請求項1、2又は3記載の生存監視システム。
【請求項5】
前記管理サーバは、前記副サーバに対して生存を確認するための信号を定期的に送信し、その送信した生存を確認するための信号に対する応答信号が当該副サーバから送られてきたときに、当該副サーバが生存していると判定し、その送信した生存を確認するための信号に対する応答信号がその送信時から所定時間経過しても当該副サーバから送られてこないときに、当該副サーバが生存していないと判定することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の生存監視システム。
【請求項6】
前記中継切替手段の所定のポートから送出される前記主サーバからの信号を受信すると共に、その受信した信号のログをログ記憶手段に記憶して管理するログ記憶サーバを備えることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の生存監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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