説明

生物侵食性の内部人工器官

ステントは、第1の生物侵食性金属組成物で形成された第1の管状要素と、第2の生物侵食性金属組成物で形成された第2の管状要素とを備えている。第1および第2の管状要素は同心的に配置構成され、かつ第1および第2の生物侵食性金属組成物は異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部人工器官、特にステントに関する。
【背景技術】
【0002】
身体には、動脈、その他の血管、およびその他の体内管のような様々な通路が含まれている。これらの通路は、時には閉塞したり脆弱化したりするようになる。例えば、通路は腫瘍によって閉塞する場合もあるし、プラークによって狭窄する場合もあり、または動脈瘤によって脆弱化することもありうる。これが生じた場合、医療用内部人工器官を用いて、通路を再開もしくは補強することも可能であるし、または該内部人工器官で通路を置換することもできる。内部人工器官は一般に、体内の管腔内に留置される管状部材である。内部人工器官の例には、ステント、カバー付きステント、およびステントグラフトが挙げられる。
【0003】
内部人工器官は、所望の部位へ運搬される際に、圧縮サイズまたは縮小サイズの形態の内部人工器官を支持するカテーテルによって身体内部へと送達可能である。該部位に到着すると、内部人工器官は、例えば管腔の壁面と接触できるように、拡張される。
【0004】
拡張機構には、内部人工器官を強制的に径方向に拡張させることが挙げられる。例えば、拡張機構には、バルーン拡張型の内部人工器官を支持するバルーンを担持しているカテーテルを挙げることができる。バルーンを膨張させて変形させ、拡張した内部人工器官を、管腔壁に接触した所定位置に固定することができる。その後バルーンを収縮させ、カテーテルを抜去することができる。
【0005】
別の送達技法では、内部人工器官は、例えば弾性により、または材料の相転移により、可逆的に圧縮および拡張させることが可能な弾性材料から形成される。体内への導入中は、内部人工器官は圧縮状態で拘束される。所望の移植部位に到着すると、例えば外側シースのような拘束用デバイスを引き戻して、内部人工器官が自身の内的な弾性復元力によって自己拡張できるようにすることにより、拘束が解除される。
【0006】
移植された内部人工器官が通路内において時間とともに侵食されることが望ましい場合がある。例えば、完全に侵食性の内部人工器官は恒久的な物として体内に残存することはないが、このことは通路が本来の状態に回復するのを支援することができる。侵食性の内部人工器官は、例えばポリ乳酸のようなポリマー材料から、またはマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)もしくはこれらの合金のような金属材料から、形成可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができる内部人工器官を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある態様では、本発明は、第1の生物侵食性金属組成物で形成された第1の管状要素と、第2の生物侵食性金属組成物で形成された第2の管状要素とを含むステントを特徴とする。第1および第2の管状要素は同心的に配置構成される。第1および第2の生物侵食性金属組成物は異なっている。
【0009】
ある態様では、本発明は、共拡張するように配置構成された第1の管状要素と第2の要素とを備えたステントを特徴とする。第1の管状要素は第1の生物侵食性金属組成物で形成され、第2の要素は第2の生物侵食性金属組成物で形成される。第1および第2の生物侵食性金属組成物は異なる侵食速度を有し、流電結合を低減するために該2つの要素の少なくとも一部分の間に保護コーティングを有する。
【0010】
ある態様では、本発明は、第1の生物侵食性金属組成物で形成された第1の管状要素と、第2の生物分解性金属組成物で形成された第2の管状要素とを含むステントを特徴とする。第1および第2の管状要素は同心的に配置構成され、かつ第1および第2の生物侵食性金属組成物は異なっている。
【0011】
ある態様では、本発明は、共拡張するように配置構成された第1の管状要素および第2の要素を備えたステントを特徴とする。第1の管状要素は第1の生物侵食性金属組成物で形成される。第2の要素は第2の生物侵食性金属組成物で形成される。第1および第2の生物侵食性金属組成物は異なる侵食速度を有し、流電結合を低減するためにこれら2つの要素の少なくとも一部分の間に保護コーティングを有する。
【0012】
実施形態は、次の事項のうち1つ以上を備えることができる。第1および第2の金属は直接接触していない。第1および第2の金属はほぼ非導電性の材料によって隔てられている。非導電性の材料はポリマーまたはセラミックスである。セラミックスは、酸化物、フッ化物または窒化物から選択される。非導電性の材料は、第1の管状要素の径方向に内側に配置構成される第2の管状要素上のコーティングである。第1の金属組成物は第2の金属組成物より高い侵食速度を有する。第1の金属組成物は第2の金属組成物より高い弾性収縮力を有する。第1の金属組成物はマグネシウムまたはマグネシウム合金であり、第2の金属組成物は鉄または鉄合金である。第1の管状部材は第1のパターンの壁開口部を備え、第2の管状部材は第2のパターンの壁開口部を備えている。第1および第2のパターンは異なっている。一方の管状部材の管状壁開口部は、他方の管状部材によって部分的に閉塞される。第1および第2の管状部材の厚さは約125マイクロメートル以下である。第2の管状部材は第1の管状部材よりも長い。第1の管状部材の端部は第2の管状部材を越えて伸びる。第1の管状部材の端部は治療薬を含んでいる。第2の要素は、第1の管状要素と同軸上に配置構成される。第1の要素は円弧形状の要素である。複数の円弧形状の要素が第1の管状部材に沿って軸方向に配置構成される。円弧形状の要素は、第1の管状部材の径方向に外側に配置構成される。
【0013】
実施形態は、次の利点のうち1つ以上を備えていてもよい。ステントは、有利な機械的性質、生物分解性、薬物送達特性、またはMRI/蛍光透視法上の特性のうち少なくともいずれかを備えている。実施形態では、生物分解性の異なる金属が選択された配置構成に組み合わされてステントシステムを提供する。例えば、急速に侵食されるがより高弾性の金属、例えばマグネシウムの第1の部材が、緩慢に侵食されるがより強固かつ放射線不透過性の高い金属、例えば鉄の第2の金属部材と組み合わされる。ステントは、当初は血管内に展開配置されて管腔の開通性を維持するために十分な径方向の強度を有し、次いで所望の期間にわたり制御された方式で侵食される。部材の厚さ、パターンおよび配置方向は治療上の利点を提供するために選択される。例えば、両方の部材が、一方または他方の金属が単独で使用される場合よりも薄い場合がある。より高弾性の金属で形成される部材は、弾性収縮力を制限するためにより強度の高い部材に支持される場合がある。より緩慢に侵食される金属で形成される部材は、該部材が所望の時間内にほぼ完全に侵食されるように、より薄い場合がある。内部人工器官は、低い血栓形成性および高い初期強度を有することができる。内部人工器官が移植された管腔の再狭窄は低減され得る。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の説明において述べる。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、該説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】虚脱状態における内部人工器官の送達を例証する縦断面図。
【図1B】虚脱状態における内部人工器官の拡張を例証する縦断面図。
【図1C】虚脱状態における内部人工器官の展開配置を例証する縦断面図。
【図2A】ステントの実施形態を示す斜視図。
【図2B】図2Aのステントを示す立体分解図。
【図3】図2Aのステントの一部分を通る断面図。
【図4】ステントの機能を時間の関数として例証するグラフ。
【図5】ステントの実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1A〜1Cを参照すると、ステント20は、カテーテル14の先端近くに担持されたバルーン12を覆って配置され、バルーンおよびステントを担持した部分が閉塞18の領域に到達するまで管腔16を通って導入される(図1A)。次いで、バルーン12を膨張させることでステント20が径方向に拡張され、管壁に押し付けられる結果、閉塞18が圧縮され、閉塞を取り囲んでいる管壁は径方向に広がる(図1B)。その後、バルーンから圧力が解放され、カテーテルが管から抜去される(図1C)。
【0017】
図2Aおよび2Bを参照すると、拡張可能なステント20は、軸の周囲に配置構成され、かつ異なる生物侵食性金属組成物で形成された2つの同軸に配置構成された管状部材21、21’で形成された、管状のステント本体を有する。例えば、一方の部材、例えば外側部材21はマグネシウムのような迅速に侵食される金属で作製され、他方はより緩慢に侵食される金属、例えば鉄で作製される。
【0018】
図3を参照すると、管状部材21,21’が重なり合っている図2Aの線3−3に沿った断面図が提供されている。部材21’は、任意選択のコーティング27、例えば部材21,21’の間の直接接触を防止することによって流電結合を低減するためのセラミックスまたはポリマーの絶縁コーティングを備えている。
【0019】
これらの管状部材は、合わせると、ステント本体に全体厚Tを提供し、各々は厚さT1,をそれぞれ有している。コーティングは厚さTを有する。管状部材はそれぞれ、バンド22,22’の形態を有しうる複数のストラットと、隣接するバンドの間を伸びて該バンドを接続する複数のコネクタ24,24’とによって画成される。使用時には、バンド22,22’は、当初の小さな直径から大きな直径へと拡張されて、ステント20を管の側壁に対して接触させることによって管の開通性を維持することができる。コネクタ24,24’は、ステント20に、該ステントが管の形状に順応することを可能にする可撓性および追従性を提供する。ステント本体20、バンド22およびコネクタ24は、管腔側表面(luminal surface)26、管腔外側表面(abluminal surface)28、および側壁表面29を有する。実施形態では、バンドまたはコネクタのうち少なくともいずれか一方は幅Wを有する。コーティング27は、部材22’の上に追加として存在してもよいし、または代替物として存在してもよく、かつ、他の表面すなわち側壁表面または管腔外側表面もしくは管腔側表面のうち少なくともいずれか一方、のうち1つ以上を同様に覆うことができる。
【0020】
図4を参照すると、部材21,21’の組成、寸法、および設計はステントの性能を増強するように選択される。図示されるグラフは、各々がマグネシウムおよび鉄で形成された2つの管状部材の組み合わせを備えたステントの性能を、いずれか一方の金属で作製された単一のモノステント管状部材と比較している。各金属の特性は、ステントに有利な特性を提供するために組み合わせて利用可能である。マグネシウムの腐食は急速すぎる場合があり、鉄については緩慢すぎる場合がある。マグネシウムはさらに、それほど放射線不透過性ではなく、より大きな収縮力(recoil)を有する。2つの管状部材を使用すると、モノステントについて通常なされるよりも、どちらの管状部材もより薄く、かつセルパターンを低密度にすることが可能である。鉄はマグネシウムより強固であり、したがって例えば、マグネシウムのストラットの大きさTを縮小する、すなわち150マイクロメートルから100未満にすることができる。初期の半径方向力の一部はマグネシウムステントによって供給されるが、このことは、鉄部材のパターンをモノステントよりも低密度とし、かつこの設計利点を使用してより薄い鉄ストラットを作製することを可能にする。より薄いストラットはより速く腐食し、鉄の欠点に対処することになる。より強度の低い鉄部材の使用によって、ステント留置された血管はその本来の可撓性により迅速に復帰する。マグネシウムの収縮力は、鉄の外側にマグネシウム部材を配置することにより緩和することができる。鉄のストラットの厚さ、Tは、例えば約50マイクロメートル、例えば30マイクロメートル以下または5〜10マイクロメートルもしくはそれ以上のうち少なくともいずれかであってよい。マグネシウムの放射線不透過性は比較的低いが、放射線不透過性は鉄によって増強される。同様に、モノステントよりも少ない鉄を用いて、MRI視認性が増強されることになる。さらに、いずれの元素(マグネシウムおよび鉄)も移植される質量を考えれば全身では無毒であるが、両元素とも個別の生物学的除去経路を有し、したがって、これらの元素を組み合わせて使用することにより各元素の総量が低減される。薬物コーティングが、例えば、より速く侵食されるマグネシウム上に提供されて、マグネシウムが鉄の内部ステントより長く存続するようになされてもよい。薬物コーティングがステントの基端部および先端部にのみ存在して、血管内において先端側および基端側への薬物放出が行われてもよい。マグネシウムと鉄との間の直接接触は流電結合をもたらすと思われるため、この2つの金属の間に保護コーティングが施される。例えば、マグネシウム部材の提供はMgFコーティングを含んでもよく、これはマグネシウムステントにおける腐食の開始を遅延させることにより二重の機能を果たすと思われる。その他の保護コーティングにはポリマーまたはセラミックス、例えば金属酸化物または窒化物が挙げられる。管状部材は同一の広がりを有してもよいし、部分的に同一の広がりを有してもよい。例えば、第1の管状部材が第2の管状部材を越えて先端側および基端側の両方へ伸びるように、第1の部材が他方より長くてもよい。第1および第2の管状部材は、第1の部材が第2の部材を越えて基端側へ伸び、かつ第2の部材が第1の部材を越えて先端側へ伸びるように、軸に沿っていてもよい。
(他の実施形態)
図5を参照すると、別の実施形態において、ステント40は、管状部材52と、管状の本体に沿って、リングまたは部分的リングのような一連の別々の円弧形状の要素54とを備えている。部材52および要素54は異なる生物侵食性金属組成物で形成される。要素54は、管状本体に摩擦嵌合されてもよいし、例えばポリマー、接着剤などを使用して、管状本体に固着されてもよい。該要素は図のように個別であってもよいし、接続されてもよい。要素は管状本体の外側にあっても内側にあってもよく、また両側にあってもよい。要素は、例えば分岐部の近くでの治療を容易にするために、間隔を置いて配置可能である。例えば、分岐部に隣接したステント部分にはそのような要素がなくてもよく、このことにより分岐部への血流が容易になり、かつより急速な侵食が促進されて、これがさらに血流を増強する。
【0021】
管状部材は好ましくは個別の要素として形成され、そのような要素は、摩擦によりともに保持されてもよいし、生物学的に安定もしくは生物侵食性の材料、例えば金属もしくはポリマーによって固着されてもよく、または機械的なインターロック装置によって固着されてもよい。例えば、管状部材の一方または両方に、例えばレーザー切断によって、他方の部材の周囲で湾曲して2つの部材を合わせ保持するフィンガーまたはタブが形成されてもよい。部材の一方または両方の壁厚がテーパ状をなしていてもよい。例えば、一方の管状部材は基端側から先端側へ40マイクロメートルから80マイクロメートルへとテーパ状をなす壁厚を有し、他方の部材は基端側から先端側へ80マイクロメートルから40マイクロメートルへとテーパ状をなしてもよい。テーパ状部は、管材を研磨し、次いでその管材を成形してステントにすることにより、作製されてもよい。
【0022】
管状部材は、上述のように管腔内に同時に展開配置されてもよいし、順次展開配置されてもよい。順次の展開配置では、第1の部材が治療部位において拡張され、次に第2の部材が第1の部材の内側で拡張される。これらの部材は、個別のバルーン付きカテーテル上で送達されてもよいし、または長さに沿って2つのバルーンを備えた単一のカテーテル上で送達されてもよい。第1のバルーンが拡張されて第1の管状部材を拡張させた後、カテーテルは第2の管状部材を第1の管状部材の内側に導くために前進(または後退)せしめられ、第2のバルーンが拡張されて第2の管状部材を第1の管状部材と係合するように拡張させる。
【0023】
ステントは、該ステントまたはその一部が患者(例えばヒト患者)に導入された後に大幅な質量もしくは密度の低下または化学変換を示す場合、生物侵食性である。質量の低下は、例えばステントを形成する材料の溶解またはステントの断片化のうち少なくともいずれかにより生じうる。化学変換には、酸化/還元反応、加水分解反応、置換反応、もしくは付加反応のうち少なくともいずれか、またはステントもしくはその一部が作られる材料のその他の化学反応が挙げられる。侵食は、ステントと身体環境、例えばステントが移植される身体そのものまたは体液、との化学的相互作用または生物学的相互作用のうち少なくともいずれかの結果となりうる。侵食はまた、例えば反応速度を増大させるために、ステントに対して化学反応物またはエネルギーのような誘発的な影響力を適用することによって誘発されてもよい。例えば、ステントまたはその一部が、活性金属、例えばマグネシウムもしくは鉄またはその合金であってかつ水との反応により侵食されて対応する金属酸化物および水素気体を生じうる活性金属から形成されてもよいし;ステントまたはその一部が、水との加水分解によって侵食されうる生物侵食性ポリマーまたは生物侵食性ポリマーのブレンドから形成されてもよい。ステントの断片化は、例えば、ステントのある領域が他の領域より急速に侵食される際に生じる。侵食の速い領域は、内部人工器官の本体全体にわたり急速に侵食されることにより弱体化し、侵食の遅い領域から分裂する。
【0024】
侵食は、治療上の利点を提供することができる時間枠の中で望ましい程度まで生じることが好ましい。例えば、ステントは、一定期間後であって管腔壁の支持または薬物送達のようなステントの機能がもはや必要でないかまたは望ましくないときに、大幅な質量低下を示してもよい。ある用途においては、ステントは、約1日以上、約60日以上、約180日以上、約600日以上、もしくは約1000日以下の移植期間の後に、約10パーセント以上、例えば約50パーセント以上の質量低下を示す。侵食速度は、侵食速度を低下させるか増大させるかのいずれかによりステントが所望の順序で侵食されるのを可能にするように調整可能である。例えば、領域は、該領域の化学反応性の増強により、例えばステントの一部を銀コーティングで被覆してステントの他の部分の露出した被覆されていない鉄表面とともに流電結合を作成することにより、侵食速度を増大させるように処置されてもよい。別例として、領域は、例えばコーティングの使用により、侵食速度を低下させるように処置されてもよい。
【0025】
コーティングは、所望の機能を提供するようにステントの表面を覆って堆積または付与されうる。そのようなコーティングの例には、結合層、生体適合性の外側コーティング、放射線不透過性の金属もしくは合金、または薬物溶出層のうち少なくともいずれかが挙げられる。ステントには、少なくとも1つの放出可能な治療薬、薬物、または薬学的に活性な化合物であって、再狭窄を抑制するためのもの(例えばパクリタキセル)、または、疼痛、ステントの被膜形成、もしくは治療される管腔の硬化もしくは壊死を、治療もしくは抑制するためのものが組み込まれてもよい。治療薬は、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、または細胞であってよい。治療薬は非イオン性であってもよいし、アニオン性および/またはカチオン性の性質であってもよい。適切な治療薬、薬物または薬学的に活性な化合物の例には、米国特許第5,674,242号明細書、米国特許出願公開第2003‐0003220号明細書、米国特許出願公開第2005‐0251249号明細書、および米国特許出願公開第2003‐0185895号明細書に記載されているように、抗血栓形成剤、酸化防止剤、抗炎症剤、麻酔薬、抗凝血剤、および抗生物質が挙げられる。代表的な手法は、治療薬、薬物、または薬学的に活性な化合物を、ステントに担持されたポリマーコーティング中に分散させる。該治療薬、薬物、または薬学的に活性な化合物は、ステントの表面上にプラズマイオン注入法によって生成された細孔内に直接組み込まれることによって、余分なコーティング材の使用を省くこともできる。
【0026】
いくつかの実施形態では、ステントは、1つ以上の生物侵食性金属、例えばマグネシウム、亜鉛、鉄、またはこれらの合金などを含むことができる。ステントは生物侵食性材料および非生物侵食性材料を含むことができる。ステントは、生物侵食性金属、ポリマー材料、またはセラミックスを含む表面を有することができる。ステントは、生物侵食性金属の酸化物を含む表面を有することができる。生物侵食性合金の例には、マグネシウム合金であって、重量比で、50〜98%のマグネシウム、0〜40%のリチウム、0〜1%の鉄および5%未満の他の金属もしくは希土類を有するもの;または79〜97%のマグネシウム、2〜5%のアルミニウム、0〜12%のリチウムおよび1〜4%の希土類(例えばセリウム、ランタン、ネオジムもしくはプラセオジムのうち少なくともいずれか)を有するもの;または85〜91%のマグネシウム、6〜12%のリチウム、2%のアルミニウムおよび1%の希土類を有するもの;または86〜97%のマグネシウム、0〜8%のリチウム、2〜4%のアルミニウムおよび1〜2%の希土類を有するもの;または8.5〜9.5%のアルミニウム、0.15%〜0.4%のマンガン、0.45〜0.9%の亜鉛および残りがマグネシウムであるもの;または4.5〜5.3%のアルミニウム、0.28%〜0.5%のマンガンおよび残りがマグネシウムであるもの;または55〜65%のマグネシウム、30〜40%のリチウムおよび0〜5%の他の金属もしくは希土類のうち少なくともいずれかを有するもの、も含まれる。生物侵食性のマグネシウム合金は、AZ91D、AM50A、およびAE42という名称で入手も可能である。他の生物侵食性合金は、ボルツ(Bolz)の米国特許第6,287,332号明細書(例えば亜鉛‐チタン合金およびナトリウム‐マグネシウム合金);ヒューブライン(Heublein)の米国特許出願公開第2002−0000406号明細書;ならびにPark,Science and Technology of Advanced Materials,2,73−78(2001)に記載されている。特に、パーク(Park)は、Mg‐X‐Ca合金、例えばMg‐Al‐Si‐Ca合金、Mg‐Zn‐Ca合金について述べている。生物侵食性ポリマーの例には、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸、ポリ乳酸‐ポリエチレンオキシドコポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ無水物、ポリリン酸エステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ‐L‐ラクチド、ポリ‐D‐ラクチド、ポリグリコリド、ポリ(アルファヒドロキシ酸)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
ステントは、非生物侵食性の(生物侵食性ではない)材料を含むこともできる。生物侵食性と非生物侵食性とを組み合わせる理由は、生物侵食性材料の侵食後、身体内に残されるのは非生物侵食性の部材であり、このような部材は、通常のワンピース型の、例えばステンレス鋼を材料とするステントよりも、高い可撓性を有し得ることである。このことはさらに、ステント全体を構築するには機械的な観点からあまり適切でないと思われる、チタンまたはタンタル合金のようないくつかのステント材料の使用も可能にする。
【0028】
適切な非生物侵食性材料の例には、ステンレス鋼、白金補強ステンレス鋼、チタン、タンタル、コバルト‐クロム合金、ニッケル‐チタン合金、貴金属およびこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、ステント20は生物侵食性部分および非生物侵食性部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、非生物侵食性または生物学的に安定な金属は、生物侵食性ステントのX線視認度を増強するために使用可能である。ステントの、生物侵食性のステント主構造が、1つ以上の生物学的に安定なマーカー区域と組み合わされてもよい。生物学的に安定なマーカー区域は、例えば、金、白金またはその他の原子量の大きい元素を含むことができる。生物学的に安定なマーカー区域は、高い視認性およびX線不透過性を提供し、また同様に構造上の目的を提供することができる。セラミックス、金属およびポリマーのようなコーティングは、PVD、ゾルゲル法などのような堆積技術によって形成可能である。適切な技術は、米国特許出願公開第2008‐0294236号明細書;米国特許出願公開第2008‐0294246号明細書;米国特許出願公開第2010‐0057188号明細書;および米国特許出願公開第2009‐0319032号明細書に記載されている。
【0029】
ステントは、任意の所望の形状および大きさを有し得る(例えば浅大腿動脈ステント、冠動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、胃腸用ステント、泌尿器科用ステント、および神経科用ステント)。用途に応じて、ステントは約1mm〜約46mmの拡張径を有する。例えば、冠動脈ステントは約2mm〜約6mmの拡張径を有することが可能であり;末梢用ステントは約5mm〜約24mmの拡張径を有することが可能であり;胃腸用または泌尿器科用のうち少なくともいずれかであるステントは、約6mm〜約30mmの拡張径を有することが可能であり;神経科用ステントは約1mm〜約12mmの拡張径を有することが可能であり;腹部大動脈瘤ステントおよび胸部大動脈瘤ステントは、約20mm〜約46mmの拡張径を有することが可能である。ステントは、自己拡張式、バルーン拡張式、または自己拡張式とバルーン拡張式との組み合わせ(例えば米国特許第5,366,504号明細書に記載されているようなもの)であってよい。ステントは任意の適切な横断面、例えば円形および非円形(例えば、正方形、六角形または八角形のような多角形)の断面を有することができる。重なり合ったステント配置構成は、米国特許出願公開第2005‐0278017号明細書に記載されている。
【0030】
ステントはカテーテル送達システムを使用して実装可能である。カテーテルシステムについては、例えばワング(Wang)の米国特許第5,195,969号明細書;ハムリン(Hamlin)の米国特許第5,270,086号明細書;およびレーダー‐ディヴェンス(Raeder−Devens)の米国特許第6,726,712号明細書に記載されている。ステントおよびステント送達システムの市販の例には、米国ミネソタ州メープル・グローブ所在のボストン・サイエンティフィック・シメッド(Boston Scientific Scimed)から入手可能なRadius(登録商標)、Symbiot(登録商標)またはSentinol(登録商標)システムが挙げられる。
【0031】
ステントはカバー付きステントまたはステントグラフトの一部であってもよい。例えば、ステントは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE、ポリエチレン、ウレタン、またはポリプロピレンで作製された、生体適合性の非多孔性または半多孔性ポリマーマトリクスを含んでもよいし、または該マトリクスに添着されてもよい。血管腔に加えて、ステントは非血管の管腔用に構成されてもよい。例えば、食道または前立腺において使用するために構成されてもよい。他の管腔には、胆汁の管腔、肝臓の管腔、膵臓の管腔、尿道の管腔および尿管の管腔が挙げられる。
【0032】
本明細書中で引用された、すべての参照文献、例えば特許出願、出版物、および特許文献は、参照によりその全体が組み込まれる。
さらに一層の実施形態は添付の特許請求の範囲にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントであって、
第1の生物侵食性金属組成物で形成された第1の管状要素と、第2の生物侵食性金属組成物で形成された第2の管状要素とからなり、第1および第2の管状要素は同心的に配置構成されることと、
第1および第2の生物侵食性金属組成物は異なっていることとを特徴とする、ステント。
【請求項2】
第1および第2の金属は直接接触していない、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
第1および第2の金属は非導電性の材料によって隔てられている、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
非導電性の材料はポリマーまたはセラミックスであり、セラミックスは、酸化物、フッ化物、または窒化物から選択される、請求項3に記載のステント。
【請求項5】
非導電性の材料は、第1の管状要素の径方向に内側に配置構成された第2の管状要素上のコーティングである、請求項3に記載のステント。
【請求項6】
第1の生物侵食性金属組成物は第2の生物侵食性金属組成物より高い侵食速度を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
第1の生物侵食性金属組成物は第2の生物侵食性金属組成物より高い弾性収縮力を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
第1の生物侵食性金属組成物はマグネシウムまたはマグネシウム合金であり、第2の生物侵食性金属組成物は鉄または鉄合金である、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
第1の管状要素は第1のパターンの壁開口部を備え、第2の管状要素は第2のパターンの壁開口部を備えている、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
第1および第2のパターンは異なっている、請求項9に記載のステント。
【請求項11】
一方の管状要素の管状壁開口部は、他方の管状要素によって部分的に閉塞される、請求項9に記載のステント。
【請求項12】
第1および第2の管状要素の厚さは約125マイクロメートル以下である、請求項1に記載のステント。
【請求項13】
第2の管状要素は第1の管状要素よりも長い、請求項1に記載のステント。
【請求項14】
第1の管状要素の端部は第2の管状要素を越えて伸びる、請求項13に記載のステント。
【請求項15】
第1の管状要素の端部は治療薬を含んでいる、請求項14に記載のステント。
【請求項16】
ステントであって、
共拡張するように配置構成された第1の管状要素および第2の要素とからなり、
第1の管状要素は第1の生物侵食性金属組成物で形成されることと、
第2の要素は第2の生物侵食性金属組成物で形成されることと、
第1および第2の生物侵食性金属組成物は異なる侵食速度を有し、かつ流電結合を低減するために2つの要素の少なくとも一部分の間に保護コーティングを有することとを特徴とする、ステント。
【請求項17】
第2の要素は第1の管状要素と同軸上に配置構成される、請求項16に記載のステント。
【請求項18】
第1の管状要素は円弧形状の要素である、請求項17に記載のステント。
【請求項19】
第1の管状要素に沿って軸方向に配置構成された複数の円弧形状の要素を備えている、請求項18に記載のステント。
【請求項20】
円弧形状の要素は、第1の管状要素の径方向に外側に配置構成される、請求項18に記載のステント。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−526609(P2012−526609A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510852(P2012−510852)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/033648
【国際公開番号】WO2010/132244
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】