説明

生物化学反応用装置及び生物化学反応方法

【課題】液残りや逆流を解消でき、確実に送液することのできる生物化学反応用装置及び生物化学反応方法を提供する。
【解決手段】生物化学反応用装置100は、基板1と、基板1に重ねて設けられた弾性体2との間に、溶液X,Yが収容される複数の室21〜24及び複数の室21〜24を連結する流路25を有するカートリッジ3と、弾性体2の表面に接触しながら回転移動することにより、弾性体2に外力を加えて流路25又は室21〜24あるいは両者を部分的に変形させ、流路2又は室21〜24にある溶液X,Yを移動させるローラ4とを備える。ローラ4のローラ軸41に直交する断面形状が、少なくとも三つ以上の角部431〜434を有し、各角部431〜434同士の間の各辺の長さnがともに等しい形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液の合成や溶解、検出、分離などを、決められたプロトコルに従って個人差がなく低価格で容易に行うことのできる生物化学反応用装置及び生物化学反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液の合成や溶解、検出、分離などの処理においては、通常、試験管やビーカー、ピペットなどが利用されていた。例えば、物質Aと物質Bを試験管あるいはビーカーなどに採取しておき、これを他の試験管あるいはビーカーなどの容器に注入し、混合・攪拌などして物質Cを作る。このようにして合成された物質Cについては、例えば発光、発熱、呈色、比色などの観察が行われる。あるいは、混合した物質をろ過あるいは遠心分離などして、目的の物質を分離抽出することもある。
【0003】
また、溶解の処理、例えば有機溶剤で溶かすなどの処理においても試験管あるいはビーカーなどのガラス器具を用いて行っており、検出処理の場合も同様に、被試験物質と試薬を容器に入れてその反応結果を観察している。
このような用途に使用される化学反応用カートリッジとして、例えば、弾性体の裏面に表面側に窪んだ複数の室と、これら複数の室を繋ぐ流路が形成され、弾性体の裏面に、室及び流路を密閉するように基板を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。この化学反応用カートリッジにおいては、予め室内にサンプルや試薬などの溶液を注入しておき、弾性体の表面側からローラを押し付けることにより、流路又は反応室あるいは両者が部分的に変形して、その流路又は反応室内にある溶液が移動し、これによって溶液の混合や試薬の添加などを行う。
【特許文献1】特開2005−037368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような化学反応用カートリッジにおいて、使用するローラは、断面形状が円形である。そのため、円形の直径の大きさによって弾性体で構成された反応室を加圧し過ぎたり、あるいは、加圧不足によって反応室内の溶液を確実に移動させることができず液残りや逆流を起こす可能性がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、液残りや逆流を解消でき、確実に送液することのできる生物化学反応用装置及び生物化学反応方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、流体の化学的な反応を行うために用いられる生物化学反応用装置であって、
容器の少なくとも一部が弾性体で構成され、前記容器の内部に流体が収容される複数の室及び複数の室を連結する流路を有するカートリッジと、
前記弾性体の表面に接触しながら回転移動することにより、前記弾性体に外力を加えて変形させ、流路又は室にある流体を移動させるローラとを備え、
前記ローラのローラ軸に直交する断面形状が、少なくとも三つ以上の角部を有し、各角部同士の間の各辺の長さがともに等しい形状であることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の生物化学反応用装置において、
前記ローラの断面形状が正方形であることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の生物化学反応用装置において、
前記ローラの断面形状がルーローの多角形であることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生物化学反応用装置において、
前記複数の室は、前記ローラの移動方向における長さがそれぞれ等しく、かつ、前記ローラの各辺の長さと等しく、
前記移動方向において互いに隣接する室同士の間隔が、前記ローラの各辺の長さの整数倍であることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載の生物化学反応用装置において、
複数のローラが、各ローラ軸がローラの移動方向に対して直交する方向に沿うように設けられており、
前記複数のローラのうち一のローラと、このローラによって押圧される前記複数の室のうち一の室とは、前記直交方向における長さが等しく、かつ、前記移動方向に対して互いに平行に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、容器の少なくとも一部が弾性体で構成され、前記容器の内部に流体が収容される複数の室及び複数の室を連結する流路を有するカートリッジを使用して、前記流体の化学的な反応を行う生物化学反応方法であって、
ローラ軸に直交する断面形状が、少なくも三つ以上の角部を有し、各角部同士の間の各辺の長さがともに等しい形状であるローラを、前記弾性体の表面に接触させながら回転移動させることにより、前記弾性体に外力を加えて変形させ、流路又は室にある流体を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ローラが弾性体の表面を接触しながら回転移動することにより、ローラの角部同士の間で弾性体の表面に面接触して弾性体を押し潰すとともに、角部によって強固に押圧することができる。これによって、液残りや弾性体のよれが生じることなく確実に送液することができる。また、ローラの角部が弾性体の表面に接触した状態では、角部に応力集中が生じるため、強い封止が可能となり、溶液の逆流を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第一及び第二の実施の形態について説明する。
[第一の実施の形態]
図1(a)は、カートリッジ3の斜視図、(b)は、カートリッジ3の上面図、(c)は、切断線Z−Zに沿って切断した際の矢視断面図、図2は、ローラ4の動作状態を示しており、切断線Z−Zに沿って切断した際の矢視断面図である。
生物化学反応用装置100は、基板1上に弾性体2が重ねて設けられ、基板1と弾性体2との間に溶液(流体)が収容される複数の室21〜24及びこれら室21〜24を連結する流路25が形成されてなるカートリッジ3と、弾性体2の上面に接触しながら移動することにより、弾性体2に外力を加えて流路25又は室21〜24あるいは両者を部分的に変形させ、流路25又は室21〜24にある溶液を移動させるローラ4とを備えている。なお、基板1と弾性体2とによって容器が構成されている。
【0013】
基板1は、硬質な材料からなり、位置決め及び形状維持のための長尺な平板状をなしている。
弾性体2は、気密状で弾力性のあるゴムなどの少なくとも一部に弾性体を含む材料からなり、基板1と同様の大きさで長尺な平板状をなしている。なお、弾性体2は、ゴム以外にも粘弾性体や塑性体を使用することができる。弾性体2の基板1との接触面である下面には、それぞれ上面側に凹んだ溶液用の複数の室(以下、室21,22と言う)と、反応部用の室(以下、反応室23と言う)と、廃液収容用の室(以下、廃液収容室24と言う)と、室21,22、反応室23及び廃液収容室24にそれぞれ繋がる流路25が形成されている。室21,22、反応室23及び廃液収容室24は、いずれも平面視四角形で四隅が丸みをなした形状である。また、反応室23内の反応剤液は、シリンジ等により弾性体2側から抽出(吸出)可能である。
そして、弾性体2の下面で、室21,22、反応室23、廃液収容室24及び流路25を除く接着領域26が、基板1の上面に接着されている。これによって室21,22、反応室23、廃液収容室24及び流路25が弾性体2と基板1とにより密閉されて、溶液Xの外部漏れが防止される構造となっている。
【0014】
ローラ4は、ローラ軸41に直交する方向に切断した断面形状が四つの角部431〜434を有する正方形(四辺の長さが等しい)をなした四角柱である。このローラ軸41は、ローラ4の断面重心に位置している。ローラ4は、弾性体2の上面で弾性体2の長手方向に移動自在とされており、ローラ4のローラ軸41方向に平行な四つの側面421〜424が弾性体2の上面に接触するようになっている。ローラ4の上方には、ローラ4を弾性体2の上面で移動自在に支持するレール部51(図3参照)がカートリッジ3の長手方向に延在して設けられている。レール部51には、レール部51に沿って移動自在なガイド部52が設けられ、ガイド部52には、上下に伸縮自在なバネ5の上端部が固定され、バネ5の下端部にローラ4のローラ軸41が固定されている。このようにしてバネ5によりローラ軸41の上下方向の自由度を持たせている。そして、ガイド部52がレール部51に沿って水平移動することにより、ガイド部52の移動に伴ってローラ4が弾性体2の上面を一定加圧により接触しながら回転移動できる構造となっている。
【0015】
図3(a)〜(d)は、ローラ4の動作状態を模式的に示した側面図である。図2及び図3中、符号31は、室21内の溶液Xによって弾性体2の上面が隆起している状態を表している。図3(a)では、弾性体2の上面左端部にローラ4が位置し、ローラ4の四つの側面421〜424のうちの一つの側面421全面及び角部431,434が弾性体2の上面に接触して室21又はその一部を押し潰している。この状態から、ガイド部52をレール部51の左側からレール部51に沿って右側に移動させることにより、ローラ4がその角部431を中心として回転する。このとき、図3(b)に示すように、バネ5が収縮することにより、角部431に応力が集中し弾性体2の上面が加圧される。その結果、角部431が逆止弁となって室21内に収容されている溶液Xの逆流が防止される。
さらに、ローラ4の角部431を中心として回転することにより(図3(c)参照)、角部432が弾性体2の上面に接触してバネ5が伸長することにより、ローラ4の側面422全面及び角部431,432によって弾性体2の上面が押圧されて室21が押し潰される(図3(d)参照)。このようにしてローラ2を右方向へ回転移動することにより、室21に収容されている溶液Xが右方向へと押し出される。
【0016】
次に、カートリッジ3における溶液移送の動作について説明する。図4(a)〜(c)は、ローラ4の動作状態を模式的に示した上面図である。
まず、カートリッジ3に形成された室21と室22に予め溶液Xと溶液Yをそれぞれ注入しておく。注入は、図1(c)に示すように弾性体2に直接注射針61を突き刺して注射器6により室21及び室22内に注入する。弾性体2が弾性材料で形成されているので、注射針61を抜くと針穴は自然に塞がる。なお、完全に密閉するためには溶液注入後に針穴を接着剤などで埋めるか、あるいは加熱溶解で封止することが好ましい。
【0017】
溶液X,Yを注入後、ガイド部52をレール部51の左側からレール部51に沿って右側に移動させることにより、図4(a)に示すローラ4を位置Iのところから右方向へ回転移動させる。これによって、室21に収容されている溶液Xが右方向へ押し出される。押し出された溶液Xは流路25を通って反応部室23へ送り込まれる。室21に入っていた空気は廃液収容室24へ送り出される。
そして、図4(b)に示すように位置IIのところまでローラ4を回転移動させると、次に室22内の溶液Yの送り出しが始まる。溶液Yは流路25を通って反応部室23へ押し出され、このとき流路25の途中もローラ4の角部431〜434により押し潰されてこれが逆止弁となって溶液Yの室21への逆流が防止される。また、余分な溶液は廃液収容室24へ排出される。
【0018】
図4(c)に示すようにローラ4が位置IIIまで移動すると、反応部室23には溶液Xと溶液Yとが入り、溶液Xと溶液Yとが混合して反応する。ここで言う反応とは、例えば、混合、合成、溶解、分離などである。
【0019】
このようなカートリッジ3は小型、軽量、低価格に作製でき、密閉状のカートリッジ3内で物質の混合や合成、溶解、分離、検出などの処理のプロトコルを個人差なく容易に行うことができる。
また、カートリッジ3は密閉型で使い捨てでき、ウイルスや劇薬も安全に取り扱うことができる。例えば、工場排水や選鉱排水、及びこれらが流入する河川などの中に存在するシアンの検出に係る処理(中和、蒸留、分散、混合、非色検出などの一連の処理)あるいは血流や患部からのDNA、蛋白の抽出などをこのカートリッジ3内で安全かつ確実に行うことができる。
【0020】
以上のように、ローラ4のローラ軸41に直交する方向における断面形状が、四つの角部431〜434を有する正方形であるので、ローラ4が弾性体2の上面を接触しながら回転移動することにより、ローラ4の四つの側面421〜424のうち一つの側面421が弾性体2の上面に接触した状態では、例えば円形状のローラの場合に比して、その側面421全面が弾性体2の上面に確実に接触して押圧するとともに、接触した側面421の両側角部431,432で強固に押圧することができる。このようにして弾性体2の上面をローラ4が転がる動作ではなく、面を押し付ける動作となるため、室21,22、反応部室23及び廃液収容室24を構成する弾性体2がよれることがない。また、よれの隙間に溶液が入り込むことによる液残りも生じない。その結果、確実に送液することができる。また、ローラ4の回転により一つの角部431が弾性体2の上面に接触した状態では、角部431に応力集中が生じるため、強い封止が可能となり、溶液の逆流を防止することができる。
特に、ローラ4の断面形状を正方形とすることにより、一つの側面421が弾性体2の上面に接触した状態では、面接触することから、円形状のローラに比して、ローラ4がぐらつくことなく位置決めされる。この点においても、逆流の防止及び確実な送液につながる。
【0021】
[第二の実施の形態]
図5(a),(b)は、ローラ4Aの動作状態を模式的に示した図である。図5中、符号31Aは、室内の溶液によって弾性体2Aの上面が隆起している状態を表している
本実施の形態は、上記第一の実施の形態と異なり、カートリッジ3A側にバネ72,72による上下方向の自由度を持たせた場合である。なお、カートリッジ3A及びローラ4Aは第一の実施の形態のカートリッジ3及びローラ4と同様のものであるため、同様の構成部分については同様の数字に英字Aを付してその説明を省略する。
図5に示すように、カートリッジ3Aが平板状の支持台7の下面に取り付けられており、支持台7の下面でその左右両端部には、それぞれ下方に延在して支持台7を支持する支持棒71,71が、バネ72,72を介して取り付けられている。これによってローラ軸41Aはバネ72,72によって上下方向に自由度が持たされている。バネ72は、図5(a)に示す収縮した状態で自然状態とされ、ローラ4Aの移動に伴い支持棒71,71が上下に伸縮することによりローラ4Aが弾性体2Aの下面を一定加圧により接触しながら回転移動できる構造となっている。
カートリッジ3Aは、弾性体2Aを下側に向けて支持台7の下面に固定されている。
ローラ4Aは、ローラ軸41Aに直交する方向に切断した断面形状が正方形をなした四角柱である。ローラ軸41Aは、ローラ4Aの断面重心に位置している。ローラ4Aは、弾性体2Aの下面で弾性体2Aの長手方向に移動自在とされており、ローラ4Aのローラ軸41A方向に平行な四つの側面421A〜424Aが弾性体2Aの下面に接触するようになっている。
【0022】
図5(a)では、弾性体2Aの下面左端部にローラ4Aが位置し、ローラ4Aの四つの側面421A〜424Aのうちの一つの側面421A全面及び角部431A,434Aが弾性体2Aの下面に接触して室を押し潰している。この状態から、ローラ4Aのローラ軸41Aを右方向に水平移動させることにより、ローラ4Aがその角部431Aを中心として回転する。このとき、図5(b)に示すように、バネ72,72が長さdだけ伸長することにより、角部431Aに応力が集中し弾性体2Aの下面が加圧される。その結果、角部431Aが逆止弁となって室内に収容されている溶液の逆流が防止される。
さらに、ローラ4Aの角部431Aを中心として回転することにより、角部432Aが弾性体2Aの下面に接触してバネ72,72が収縮することにより、ローラ4Aの側面42A全面及び角部431A,432Aによって弾性体2Aの下面が押圧されて室が押し潰される(図示しない)。このようにしてローラ4Aを右方向へ回転移動させることにより、室に収容されている溶液が右方向へと押し出される。押し出された溶液は、第一の実施の形態と同様に、流路を通って反応部室へ送り込まれた後、各溶液が混合して反応する。
【0023】
[第三の実施の形態]
図6は、第一〜第三のローラ4B〜4Dが弾性体200の上面左端部に位置している状態を示した上面図である。
第三の実施の形態では、ローラ軸41B〜41D方向の長さm1〜m3が異なる三つのローラ4B〜4Dが、各ローラ4B〜4Dのローラ軸41B〜41Dをカートリッジ300の短手方向(ローラ4Bの移動方向に直交する方向)に沿うように一直線上に並べて設けられている。これら第一〜第三のローラ4B〜4Dは、上記第一及び第二の実施の形態のローラ4,4Aと同様に、いずれもその断面形状が正方形である(各辺の長さがnである)。また、各ローラ軸41B〜41Dは、各ローラ4B〜4Dの断面重心に位置している。そして、各ローラ4B〜4Dがカートリッジ300の長手方向に沿って回転移動することにより、弾性体200が押し潰されて各室201〜203内の溶液が流路204を介して次の室201〜203へと移動するようになっている。
【0024】
カートリッジ300には、最も長さの短い第一のローラ41Bに押圧される平面視円形状の複数の第一の室201,201と、次に長さの短い第二のローラ41Cに押圧される平面視楕円形状の複数の第二の室202,202と、最も長さの長い第三のローラ41Dに押圧される平面視楕円形状の複数の第三の室203,203と、各室201〜203同士を連結する複数の流路204,204,…とが設けられている。
第一の室201,201は、カートリッジ300の長手方向に沿って一直線上に所定間隔に配され、第二の室202,202及び第三の室203,203もそれぞれカートリッジ300の長手方向に沿って一直線上に所定間隔に配されている。第一の室201のカートリッジ300の短手方向における長さm1は、第一のローラ4Bの長さm1と等しく、第二の室202のカートリッジ300の短手方向における長さm2は、第二のローラ4Cの長さm2と等しく、第三の室203のカートリッジ300の短手方向における長さm3は、第三のローラ4Cの長さm3と等しい。第一〜第三の室201〜203のカートリッジ300の長手方向における長さnは、全て等しく、かつ、第一〜第三のローラ4B〜4Dの断面形状である正方形の一辺の長さに等しい。さらに、互いに隣接する第一の室201,201,…同士の間隔は、第一のローラ4Bの正方形の一辺の長さnの整数倍(図6では1倍)である。互いに隣接する第二の室202,202,…同士の間隔は、第二のローラ4Cの正方形の一辺の長さnの整数倍(図6では1倍又は3倍)である。互いに隣接する第三の室203,203,…同士の間隔は、第三のローラ4Dの正方形の一辺の長さnの整数倍(図6では3倍)である。
【0025】
したがって、第一〜第三のローラ4B〜4Dを同時に右方向に回転移動させることにより、始めに第一のローラ4Bが第一の室201を押圧すると同時に第二のローラ4Cが第二の室202を押圧し、次いで、第一のローラ4Bが次の第一の室201を押圧すると同時に第三のローラ4Dが第三の室203を押圧し、順次、回転移動により各室201〜203を押圧して、溶液が流路204,204,…へ押し出されていく。このとき、第一〜第三の室201〜203は、それぞれ第一〜第三のローラ4B〜4Dの大きさ(カートリッジ300の長手方向及び短手方向における長さ)と等しいので、第一の室201は第一のローラ4Bの側面全面によって、第二の室202は第二のローラ4Cの側面全面によって、第三の室203は第三のローラ4Dの側面全面によって一度に押し潰されることになる。その結果、逆流や液残りが生じることなく確実な送液が行われる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記第一〜第三の実施の形態においてローラ4,4A,4B〜4Dは、断面形状が正方形の四角柱であるとしたが、これに限らず、図7(a)の断面形状が正三角形のローラ4E、(b)の正五角形のローラ4F、(c)の正六角形のローラ4G、(d)のルーローの多角形のローラ4Hとしても良い。特に多角形とする程、円形状のローラに近い運動をするので軸変動の問題が解消されて好ましい。中でもルーローの多角形は、円形状のローラに近い運動をしながら、角部で弾性体を確実に加圧することができ、逆流の防止も効果的に行うことができる点で好ましい。
また、第一及び第二の実施の形態では室21,22、反応部室23及び廃液収容室24の平面形状を四隅が丸くなった四角形、第三の実施の形態では円形や楕円形としたが、これらに限られるものではなく、適宜変更可能であり、室の個数や室同士の間隔も変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、カートリッジ3の斜視図、(b)は、カートリッジ3の上面図、(c)は、切断線Z−Zに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図2】ローラ4の動作状態を示しており、切断線Z−Zに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、ローラ4の動作状態を模式的に示した側面図である。
【図4】(a)〜(c)は、ローラ4の動作状態を模式的に示した上面図である。
【図5】(a),(b)は、ローラ4Aの動作状態を模式的に示した図である。
【図6】第一〜第三のローラ4B〜4Dが弾性体200の上面左端部に位置している状態を示した上面図である。
【図7】(a)〜(d)は、ローラ4E〜4Hの側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 基板
2 弾性体
3 カートリッジ
4,4A,4B,4C,4D ローラ
41,41A,41B,41C,41D ローラ軸
21,22 室
23 反応部室
24 廃液収容室
25 流路
100 生物化学反応用装置
431,432,433,434 角部
X,Y 溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の化学的な反応を行うために用いられる生物化学反応用装置であって、
容器の少なくとも一部が弾性体で構成され、前記容器の内部に流体が収容される複数の室及び複数の室を連結する流路を有するカートリッジと、
前記弾性体の表面に接触しながら回転移動することにより、前記弾性体に外力を加えて変形させ、流路又は室にある流体を移動させるローラとを備え、
前記ローラのローラ軸に直交する断面形状が、少なくとも三つ以上の角部を有し、各角部同士の間の各辺の長さがともに等しい形状であることを特徴とする生物化学反応用装置。
【請求項2】
前記ローラの断面形状が正方形であることを特徴とする請求項1に記載の生物化学反応用装置。
【請求項3】
前記ローラの断面形状がルーローの多角形であることを特徴とする請求項1に記載の生物化学反応用装置。
【請求項4】
前記複数の室は、前記ローラの移動方向における長さがそれぞれ等しく、かつ、前記ローラの各辺の長さと等しく、
前記移動方向において互いに隣接する室同士の間隔が、前記ローラの各辺の長さの整数倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生物化学反応用装置。
【請求項5】
複数のローラが、各ローラ軸がローラの移動方向に対して直交する方向に沿うように設けられており、
前記複数のローラのうち一のローラと、このローラによって押圧される前記複数の室のうち一の室とは、前記直交方向における長さが等しく、かつ、前記移動方向に対して互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の生物化学反応用装置。
【請求項6】
容器の少なくとも一部が弾性体で構成され、前記容器の内部に流体が収容される複数の室及び複数の室を連結する流路を有するカートリッジを使用して、前記流体の化学的な反応を行う生物化学反応方法であって、
ローラ軸に直交する断面形状が、少なくも三つ以上の角部を有し、各角部同士の間の各辺の長さがともに等しい形状であるローラを、前記弾性体の表面に接触させながら回転移動させることにより、前記弾性体に外力を加えて変形させ、流路又は室にある流体を移動させることを特徴とする生物化学反応方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−39511(P2008−39511A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212202(P2006−212202)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】