説明

生物医学的用途のための厚い発泡体及びその製造方法

組織スキャフォールド及びその他の医療機器として有用である厚い発泡体、特に成形された厚い発泡体の新規な製造方法。本発明のプロセスを用いて製造される新規の厚い発泡体もまた開示され、かかる厚い発泡体は、医療機器又は医療機器の部品として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、組織の修復及び再生の分野に関する。特に、本発明は、連続気泡を有する多孔質生体適合性発泡体、及び組織の修復及び再生でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
連続気泡を有する多孔質生体適合性発泡体は、組織の修復及び再生における使用に関して著しい潜在的可能性を有していることが認識されている。このような発泡体の潜在的用途の中には、薬物送達システム、神経再生、血管置換、及び人工骨のテンプレートがある。差し迫って重要な特異的分野としては、骨及び軟骨再生用途を目的とした生分解性微小気泡発泡体の使用、並びに臓器発生を目的とした微小気泡発泡体の使用が挙げられる。組織の修復及び再生における従来の試みでは、骨の気孔部に充填するための多孔質プラグとして、非晶質で生体適合性の発泡体を使用している。
【0003】
例えば、血管及び血球の内部成長に関しては、約10〜約200マイクロメートルの範囲の孔径を有するポリヒドロキシ酸の多孔質連続気泡発泡体があることが知られている。このような発泡体は、繊維、糸、ひも、編布地、スクリム等で補強され得る。発泡体は、様々なポリヒドロキシ酸のポリマー及びコポリマー、例えばポリ−L−ラクチド、ポリ−DL−ラクチド、ポリグリコリド、及びポリジオキサノンなどで構成され得る。組成物及び/又はミクロ構造中に1つ以上の方向を介した勾配を有する、3次元の相互接続した連続気泡多孔質発泡体も、当該分野で知られている。既知の発泡体の別の例は、次の方法で作製される3次元のラミネート状の発泡体である。まず、多孔質膜が、浸出性の塩結晶を含有するポリマー溶液を乾燥することにより調製される。次に、いくつかの膜を一体化してにラミネートすることにより3次元構造を得、次にこれらの膜を、所望の形状の輪郭を用いて切断する。しかしながら、このプロセスは非常に煩雑であり、かつ時間がかかる。
【0004】
従来の凍結乾燥は、感熱ポリマーを処理する際に多くの利点をもたらし、ポリマー発泡体の製造方法の1つである。更に、凍結乾燥は、生分解用途のための無菌処理方法に適しており、特に、薬剤、又は成長因子、タンパク質等などの生物活性剤とポリマーとを組み合わせを使用する場合に適している。従来の凍結乾燥プロセスは以下の方法で実施される。既知濃度のポリマー溶液を調製する。溶液の調製後、この溶液を成形型に注入する。次に、ポリマー溶液が入っている成形型を、冷凍工程と、その後に続く乾燥工程とを含む全凍結乾燥サイクルが行われる冷凍乾燥棚に置く。しかしながら、この技術は、約1cm未満の厚さを有し、かつ発泡体の断面に沿って均一な多孔性を有する、薄い発泡体の調製に限定されている。厚い発泡体(厚さ1cmを超える)を調製しようとする試みは、発泡体の厚さ全体に均一な多孔性及び形態を有する発泡体が製造できておらず、またこのようなプロセスは時間がかかり、1つの発泡体を処理するために3日を超える処理時間を要することが多かった。発泡体を作製するための2種類の主な伝統的手法、つまり、低温凍結乾燥法(即ち、凍結乾燥)及び塩浸出法を用いる場合、均一で多孔質な発泡体を作製することは困難である。
【0005】
従来の塩浸出プロセスは、以下の方法で行われる。ふるい分けにより塩粒子を調製する。ふるい分けにより所望のサイズの塩粒子を制御する。異なる量及び種類のポリマーを溶媒(例えば、塩化メチレン又はクロロホルム)に溶解することにより、ポリマー溶液を調製する。ふるい分けされた塩粒子をポリマー溶液に加え、分散物をゆっくりとボルテックスする。この溶液を成形型に注入する。続いて、分散物の入った成形型を圧縮装置で圧縮する。形成された試料を成形型から取り出す。試料を所望の時間(48時間)にわたって脱イオン水の中に溶解する。塩を除去した試料を、低温で所望の時間(48時間)にわたって凍結乾燥する。スキャフォールドを25℃の炉の中で1週間乾燥させて、残留溶媒を除去する。塩浸出の1つの制限は、微細孔を塩で形成するのが困難である場合が多く、細孔間の溝形成を達成して連続微小多孔性発泡体を作製するために、高い塩負荷を必要とすることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この技術分野では、均一構造を有する生分解性ポリマーから高品質の厚い発泡体を製造するための新規プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、相互接続した細孔を有し、かつ均一な形態構造を更に有する生体適合性生分解性ポリマー発泡体の製造方法が開示される。厚いポリマー発泡体は、ゲル化したポリマー溶液を凍結乾燥することにより調製される。
【0008】
本発明の別の態様は、上述プロセスにより製造される相互接続した細孔を有する厚いポリマー発泡体である。
【0009】
本発明のこれらの及び他の態様及び利点は、以下の説明及び図面により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の新規なプロセスによって製造された厚い(2.5cm)ポリマー発泡体スキャフォールドの底部断面のSEM画像。
【図2】2.5cm発泡体スキャフォールドの中央断面のSEM画像。
【図3】本発明の方法によって製造された厚い発泡体スキャフォールドの上部断面のSEM画像。
【図4】本発明のプロセスによって製造された、溝を有する厚い発泡体のSEM画像。
【図5】本発明の新規なプロセスによって製造された、溝を有する発泡体のSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0011】
相互接続した細孔を有し、かつ均一な形態構造を更に有する、生体適合性生分解性の厚い発泡体製造のために、本発明の新規な方法を開示する。相互接続した細孔という用語は、本明細書において別途詳述されない限り従来の意味を有するものと定義され、具体的には、気泡は、それらの隣接気泡と相互接続する連続気泡構造であり、気泡移動及び栄養素移動の経路を提供する。均一な形態構造という用語は、本明細書において別途詳述されない限り従来の意味を有するものと定義され、具体的には、孔径範囲は、スキャフォールドの厚さにわたって均一である。
【0012】
本発明の厚い発泡体は、本発明の新規な方法に従って、熱可逆性ポリマー溶液を提供し、この溶液を成形型に注入し、溶液がゲル化するのに十分な期間だけこの成形型を凍結乾燥機の中の予め冷却された棚の上に置き、凍結乾燥によりゲル化した熱可逆性ポリマー溶液から溶媒を除去し、それによって、厚いポリマー発泡体を提供することにより調製される。
【0013】
本発明の目的上、「厚い」は、約1cmを超えるとして定義される。
【0014】
熱可逆性ポリマー溶液は、本発明の目的上、溶液の温度に応じて液体とゲルとの間で遷移するポリマー溶液であるとして定義される。液体をゲルに変換するゲル化のプロセスは、ゲルの形成に好都合である温度低下といった温度の変化から始まる。液体からゲルへの遷移(及び逆もまた同様である)は、熱可逆性であるので、後に温度を上昇させることにより、ゲルは液体になる。ゲルは、連続液相に覆われた連続固溶体として定義される。ゲル/液体遷移温度は、ポリマー濃度及び溶媒相互作用に依存する。
【0015】
熱可逆性ポリマー溶液は、1種以上の生体適合性生分解性ポリマーを、1,4−ジオキサンなどの好適な溶液に溶解することで調製される。ポリマーは、典型的には約0.5〜約10重量パーセントの量で溶液中に存在する。別の実施形態では、ポリマーは、約2〜約6重量パーセントの量で溶液中に存在する。更に別の実施形態では、ポリマーは、約5重量パーセントの量で溶液中に存在する。溶媒を使用して作ることができる最高濃度に応じて、他の溶液中ポリマー濃度を用いてもよい。例えば1,4−ジオキサンを用いる場合、達成可能な最高濃度は、ポリマーの15重量%である。ポリマーは、ポリマーを溶解させるために十分に有効な温度、例えば、約60℃で、かき回すなどして好ましくは撹拌しながら、1,4−ジオキサンに溶解される。この溶液は、凍結乾燥のために成形型に注入される前に濾過されるのが好ましい。
【0016】
本発明の厚い発泡体の製造に有用な好適な生体適合性生分解性ポリマーの例には、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカルボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、生体分子、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーが挙げられる。本発明の目的のため、脂肪族ポリエステルには、ラクチド(乳酸、d−、1−、及びmeso−ラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、イプシロン−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、及びこれらの混合物の、ホモポリマー及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ラクチド及びグリコリドのコポリマーである。別の実施形態では、脂肪族ポリエステルは、約95:5のモル比を有するラクチド及びグリコリドのコポリマーである。
【0017】
脂肪族ポリエステルポリマーの1つの好ましい種類は、エラストマーコポリマーである。本発明の目的のため、エラストマーコポリマーは、室温で、元の長さの少なくとも約2倍に繰り返し伸びることができ、即時に応力が解放されると、およそ元の長さに戻る材料と定義される。好適な生分解性生体適合性のエラストマーとしては、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドのエラストマーコポリマー(好ましくは、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドとのモル比が、約30:70〜約70:30、好ましくは35:65〜約65:35、より好ましくは45:55〜35:65);イプシロン−カプロラクトンとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、又は乳酸コポリマーを含む)のエラストマーコポリマー(好ましくは、イプシロン−カプロラクトンとラクチドとのモル比が、約35:65〜約65:35、より好ましくは30:70〜45:55);p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)とラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、及び乳酸を含む)のエラストマーコポリマー(好ましくは、p−ジオキサノンとラクチドとのモル比が、約40:60〜約60:40);イプシロン−カプロラクトンとp−ジオキサノンのエラストマーコポリマー(好ましくは、イプシロン−カプロラクトンとp−ジオキサノンとのモル比が、約30:70〜約70:30);p−ジオキサノンと炭酸トリメチレンのエラストマーコポリマー(好ましくは、p−ジオキサノンと炭酸トリメチレンとのモル比が、約30:70〜約70:30);炭酸トリメチレンとグリコリドのエラストマーコポリマー(好ましくは、炭酸トリメチレンとグリコリドとのモル比が、約30:70〜約70:30);炭酸トリメチレンとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、又は乳酸コポリマーを含む)のエラストマーコポリマー(好ましくは、炭酸トリメチレンとラクチドとのモル比が、約30:70〜約70:30)及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ε−カプロラクトンとグリコリドのエラストマーコポリマーである。別の実施形態では、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドのエラストマーコポリマーは、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドとの約30:70〜約70:30のモル比を有する。別の実施形態では、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドのエラストマーコポリマーは、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドとの約35:65〜約65:35のモル比を有する。更に別の実施形態では、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドのエラストマーコポリマーは、イプシロン−カプロラクトンとグリコリドとの約45:55〜35:65のモル比を有する。
【0019】
ポリマー溶液が上述の通りに調製されると、溶液を、1cmを超える厚い発泡体を調製できるような寸法を有する従来の成形型に注入する。成形型に加えられる溶液の容量は、成形型のサイズ、及び発泡体の所望の厚さに応じて異なる。当業者は、1cmを超える厚い発泡体をもたらすために成形型に注入する溶液の適切な容量を、成形型のサイズに基づいて求めることができるであろう。任意に、発泡体の均一な多孔性及び形態構造に加えて、溝又は経路などの代替的な形状及び輪郭を形成して、発泡体に組み込むことができるように、溶液で充填した成形型に成形型インサートを組み込んでもよい。
【0020】
ポリマー溶液を含有する成形型は、従来の凍結乾燥機の中の予め冷却された棚の上に置かれる。棚は、例えば約10℃+/−5℃の範囲の温度といった、溶液がゲルを形成するのを効果的に早めるのに十分な温度に、予め冷却される。温度は、ポリマー濃度及び溶媒などのパラメータによって異なることを、当業者なら理解するであろう。溶液は、溶液が完全にゲル化するために十分に有効な時間、予備冷却温度で保持される。例えば、溶液は、約360分〜約1440分の間予備冷却温度で保持されてもよい。
【0021】
次に、適切な従来の凍結乾燥サイクルを用いて、ゲル化した溶液から1,4−ジオキサン溶媒を除去する。例えば、上述のゲル化工程の後、凍結乾燥サイクルは冷凍工程で開始し、その後に、溶媒を除去するために真空が適用される一次乾燥工程が続き、最後に、温度を徐々に上昇させること、及び溶媒の完全除去を確実にするために真空を増大させることを含む、複数の二次乾燥工程が実施される。代表的な凍結乾燥サイクルは、以下の実施例で詳述される。凍結乾燥サイクルが完了すると、厚い発泡体がもたらされる。厚い発泡体は、均一な多孔性及び形態構造を有する。
【0022】
加えて、固体がポリマー−溶媒系に添加されてもよい。ポリマー−溶媒系に添加される固体は、ポリマー又は溶媒に反応しないのが好ましい。好適な固体としては、組織再生又は再増殖を促進する材料、緩衝剤、補強材、又は多孔質性改質材が挙げられる。好適な固体としては、骨修復用の脱鉱物質化した骨の粒子、リン酸カルシウム粒子、又は炭酸カルシウム粒子、細孔形成用の浸出性固体、及び、補強材として溶媒系に溶解しない、又は吸収されたときに細孔を形成するための生分解性ポリマー粒子が挙げられるが、これらに限定されない。好適な浸出性固体としては、塩(即ち、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、生体適合性の単糖及び二糖(即ち、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース及びスクロース)、多糖(即ち、デンプン、アルギネート)、水溶性タンパク質(即ち、ゼラチン及びアガロース)からなる群から選択される無毒性の浸出可能な材料が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、これらの材料は全て約1mm未満の平均直径を有し、好ましくは約50〜約500ミクロンの平均直径を有する。これらの粒子は、一般に、当該粒子及びポリマー−溶媒混合物の全容量(この全容量パーセントは100重量パーセントに等しい)の約1〜約50容量パーセントを構成する。浸出可能な材料は、発泡体を浸出可能な材料と共に、粒子のほとんど全部を浸出させるのに十分であるが、発泡体を溶解又は不利益に変化させない時間で粒子を溶解する溶媒内に浸漬することにより除去され得る。好ましい抽出溶媒は水であり、蒸留した脱イオン水が最も好ましい。好ましくは、発泡体の加速した吸収が望ましい場合を除いて、発泡体の加水分解を最小限にするために低温及び/又は真空で浸出プロセスを完了した後に、発泡体を乾燥する。
【0023】
本明細書に記載のような、この均一な構造を有する本発明の厚い発泡体は、軟骨、皮膚、骨、及び維管束組織などの天然に存在する組織の構造を模倣する再生医療を応用する際に、特に有利である。例えば、(35/65)のモル比を有するポリ(イプシロン−カプロラクトン−コ−グリコリド)のエラストマーコポリマーを用いて、厚いエラストマー発泡体を調製することが可能であり、95/5のモル比を有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のコポリマーを用いて、硬質で堅い厚い発泡体調製することが可能である。(35/65)のモル比を有するポリ(イプシロン−カプロラクトン−コ−グリコリド)と、95/5のモル比を有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のコポリマーとの混合物から、厚い発泡体を調製することにより、軟骨から骨に移行するのと同様に、より軟性で海綿状の発泡体からより硬くより剛性な発泡体へと移行する発泡体を形成することができる。明らかに、同様の勾配効果を目的として、又は、異なる吸収プロファイル、ストレス応答プロファイル、又は程度の異なる弾性をもたらすために、他のポリマー混合物を使用してもよい。
【0024】
本発明の新規プロセスにより製造される本発明の新規の厚い発泡体は、このような皮膚再生及び軟骨再生用途のための組織スキャフォールドといった医療機器を調製する際に有用である。発泡体はまた、凍結乾燥工程の間に加えることができる他の機器と組み合わされて使用されてもよい。例えば、メッシュ及び不織布である。更に、本プロセスを用い、95/5 PLA/PGAなどの材料を使用して作製された発泡体は、堅くて頑丈である。本発明の厚い発泡体は、医療機器を作製するために更に加工されてもよい。厚い発泡体は、医療機器及び医療機器の部品を提供するために、機械加工若しくはレーザ切断されてもよく、又はその他の従来技術を用いて加工されてもよく、この医療機器及び医療機器の部品には、薄い発泡体シート又はフィルム;ねじ、ピン、インプラント、メッシュ状インプラント等を包含する、対称形状又は非対称形状を有する3次元構造装置;3次元非対称形状構造体、例えば、臓器再生医療用であり、骨又は軟組織などの不規則組織に適合するように輪郭決めされた不規則形状品又は不規則構造体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
下記の実施例は本発明の原理及び実践の説明のためであり、これらに限定されるものではない。本発明の範囲及び趣旨内の多くの追加の実施形態は、ひとたびこの開示の利益を得ると、当業者に明らかになるであろう。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
本実施例は、組織移植用の厚い発泡体の調製について説明する。熱可逆性ポリマー溶液を調製した。1,4−ジオキサン/(35/65ポリカプロラクトン/ポリグリコリド)(PCL/PGA)90/10重量比の溶液(Ethicon,Inc.,Somerville,NJ)を、フラスコの中に量り入れた。フラスコを水浴に入れ、70℃で5〜6時間撹拌した。次に、この溶液を、円筒濾紙(特に粗い孔のASTM 170−220タイプ(EC))を使用して濾過し、フラスコに室温で保存した。
【0027】
Kinetics熱システム(FTS Dura Freeze Dryer)(型番TD3B2T5100):Stone Ridge,NY)を用いて実験を行った。棚を12℃の温度に予め冷却した。上で調製したポリマー溶液を、11.4cm(4.5インチ)×11.4cm(4.5インチ)×6.4cm(2.5インチ)成形型に注入した(2.5cmの発泡体に対して溶液30mLを使用した)。成形型は、アルミニウムで作られてテフロンがコーティングされている矩形トラフであった。溶液で充填した成形型を、予め冷却された棚の上に置いた。表1に記載の条件を用いてサイクルを行った。
【表1】

【0028】
ゲル化工程では、棚は1440分の間12℃の温度に維持され、この間に溶液をゲル化させた。棚の温度は、冷凍工程では、冷却速度0.1℃/分で15分間−17℃に設定した。この工程の最後に、ゲル化した溶液が完全に凍結するのを確実にするために、温度を250分間−17℃に維持した。凍結サイクルの最後に、1,4−ジオキサンを昇華させるための乾燥工程を開始した。第1工程では、棚の温度を−17℃に維持したまま、133.3Pa(1000mTorr)で真空を適用した。これらの条件は600分に設定された。第4工程で二次乾燥を実施して、あらゆる残留ジオキサンを除去した。まず、2.5℃/分の加熱速度で温度を−7℃まで上昇させて300分間保持し、真空を13.3Pa(100mTorr)に設定した。次に、温度を5℃まで上昇させ、13.3Pa(100mTorr)の真空レベルで300分間保持した。第三段階では、温度を20℃まで上昇させ、100の真空レベルで150分間保持した。二次乾燥工程の最終段階では、凍結乾燥機を室温にし、13.3Pa(100mTorr)で150分間保持した。この工程の最後に、サイクルを停止し、真空状態を解除した。厚い発泡体を成形型から取り出し、試料を走査電子顕微鏡(SEM)用に提供した。図1、図2、及び図3は、厚い発泡体試料の底部断面、中央断面、及び上部断面を示している。SEM画像は、スキャフォールドの断面全体にわたって均一な多孔性が実現されたことを示した。凍結乾燥後に得られた最終厚さは約2.2cmであった。細孔構造は、その形態及び孔径の観点から見て、発泡体構造の厚さ全体にわたって均一であった。
【0029】
(実施例2)
熱可逆性ポリマー溶液を、実施例1に記載の通りに、35/65 PCL/PGA及び1,4−ジオキサンから調製した。11.4cm(4.5インチ)×11.4cm(4.5インチ)×6.4cm(2.5インチ)の成形型(テフロンでコーティングされたアルミニウム成形型)に330mLのポリマー溶液を充填して厚さ約2.5cmの発泡体を調製し、この成形型を12℃の温度まで予め冷却された冷凍乾燥棚(FTS Dura Freeze Dryer)の上に置いた。表2は凍結乾燥工程について説明している。この実験では、乾燥工程の第1工程において、棚の温度を0.1℃/分の遅い勾配速度で−17℃まで低下させた。
【表2】

【0030】
厚い乾燥した発泡体を成形型から取り外した。細孔を評価するために、この発泡体からSEM分析用の試料を切断した。上部、中央、及び底部表面のSEM画像を撮像した。この場合もやはり、SEM画像は、実施例1で調製された厚い発泡体と同様の均一な細孔形態を示した。
【0031】
(実施例3)
熱可逆性ポリマー溶液を、95/5ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLA/PGA)及び1,4−ジオキサンを使用して、実施例1の方法に従って調製した。11.4cm(4.5インチ)×11.4cm(4.5インチ)×6.4cm(2.5インチ)の成形型(テフロンでコーティングされたアルミニウム成形型)に330mLのポリマー溶液を充填して厚さ約2.5cmの発泡体を調製し、この成形型を12℃の温度まで予め冷却された冷凍乾燥棚(FTS Dura Freeze Dryer)の上に置いた。表4は凍結乾燥サイクルについて説明している。この実験では、凍結サイクルの第2工程において、棚の温度を0.1℃/分の遅い勾配速度で−17℃まで低下させた。
【表3】

【0032】
厚い乾燥した発泡体を成形型から取り外した。細孔を評価するために、SEM特性解析用の試料をこの発泡体から切断した。上部、中央、及び底部断面のSEM画像をスキャフォールド用に撮像した。この場合もやはり、発泡体形態は実施例1で調製された発泡体と同様であった。
【0033】
(実施例4)
熱可逆性ポリマー溶液を、実施例1に記載の通りに、35/65 PCL/PGA及び1,4−ジオキサンから調製した。5.1cm(2インチ)×5.1cm(2インチ)×1.9cm(3/4インチ)の成形型(テフロンでコーティングされたアルミニウム成形型)に330mLのポリマー溶液で充填して厚さ約1cmの発泡体を調製し、テフロンでコーティングされた直径1ミリメートルのピンを、アルミニウム成形型の上部に規則正しい配列(3×5)で挿入した。ピンの間のスペースは2mmであった。
【0034】
溶液で充填した成形型を、12℃の温度まで予め冷却された冷凍乾燥棚(FTS Dura Freeze Dryer)の上に置いた。表5は凍結乾燥工程サイクルについて説明している。この実験では、凍結サイクルの第2工程において、棚の温度を0.1℃/分の遅い勾配速度で−17℃まで低下させた。
【表4】

【0035】
厚くて乾燥した発泡体を成形型から取り外した。図4、図5及び図6はそれぞれ、厚い発泡体の平面図及び底面図を示している。同様に、様々な発泡体形状及び輪郭、並びに溝等を含む二次発泡体構造を形成するための成形型インサートを使用して、厚さ1cmを超える発泡体を調製してもよい。
【0036】
本発明はその詳細な実施例に関して図示及び説明が行われたが、当業者には、当該形態及び詳細における様々な変更は、本請求発明の主旨及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。
【0037】
〔実施の態様〕
(1) 厚いポリマー発泡体の製造方法であって、
生体適合性生分解性ポリマーと溶媒とを含む熱可逆性ポリマー溶液を提供する工程と、
前記溶液がゲル化するまで前記溶液を冷却する工程と、
凍結乾燥により前記溶媒を除去して、相互接続した細孔を有する厚い発泡体部材を得る工程と、を含む方法。
(2) 前記生体適合性生分解性ポリマーが、ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びこれらのポリマー混合物のホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択される脂肪族ポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記溶媒が1,4−ジオキサンである、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記溶液が、冷却の前に成形型に入れられる、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記凍結乾燥が、第1の冷凍工程と、第1の乾燥工程と、少なくとも1つの後続の追加乾燥工程とを含む、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、スクロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される浸出性固体を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記溶液が、抗感染薬、ホルモン、鎮痛薬、抗炎症薬、成長因子、化学療法薬、拒絶反応抑制薬、プロスタグランジン、RDGペプチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬(thereapeutic agent)を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記発泡体部材が、約1cmを超える厚さを有する、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記細孔が均一形態を有する、実施態様1に記載の方法。
(10) 発泡体部材であって、該発泡体部材が、
相互接続した細孔を有する発泡体部材を含み、該発泡体部材が約1cmを超える厚さを有し、該発泡体部材が、
生体適合性生分解性ポリマーと溶媒とを含む熱可逆性ポリマー溶液を提供する工程と、
前記溶液がゲル化するまで前記溶液を冷却する工程と、
凍結乾燥により前記溶媒を除去して、相互接続した細孔を有する厚い発泡体部材を得る工程と、を含むプロセスにより製造される、発泡体部材。
【0038】
(11) 前記生体適合性生分解性ポリマーが、ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びこれらのポリマー混合物のホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択される脂肪族ポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(12) 前記溶媒が1,4−ジオキサンである、実施態様10に記載の発泡体部材。
(13) 前記溶液が、冷却の前に成形型に入れられる、実施態様10に記載の発泡体部材。
(14) 前記凍結乾燥が、第1の冷凍工程と、第1の乾燥工程と、少なくとも1つの後続の追加乾燥工程とを含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(15) 前記溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、スクロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される浸出性固体を更に含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(16) 前記溶液が、抗感染薬、ホルモン、鎮痛薬、抗炎症薬、成長因子、化学療法薬、拒絶反応抑制薬、プロスタグランジン、RDGペプチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬を更に含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(17) 前記細孔が均一形態を有する、実施態様10に記載の発泡体部材。
(18) 医療機器の製造方法であって、
実施態様10に記載の発泡体部材を提供する工程と、
前記発泡体部材を医療機器に切断する工程と、を含む方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚いポリマー発泡体の製造方法であって、
生体適合性生分解性ポリマーと溶媒とを含む熱可逆性ポリマー溶液を提供する工程と、
前記溶液がゲル化するまで前記溶液を冷却する工程と、
凍結乾燥により前記溶媒を除去して、相互接続した細孔を有する厚い発泡体部材を得る工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記生体適合性生分解性ポリマーが、ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びこれらのポリマー混合物のホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択される脂肪族ポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液が、冷却の前に成形型に入れられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記凍結乾燥が、第1の冷凍工程と、第1の乾燥工程と、少なくとも1つの後続の追加乾燥工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、スクロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される浸出性固体を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が、抗感染薬、ホルモン、鎮痛薬、抗炎症薬、成長因子、化学療法薬、拒絶反応抑制薬、プロスタグランジン、RDGペプチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記発泡体部材が、約1cmを超える厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細孔が均一形態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
発泡体部材であって、該発泡体部材が、
相互接続した細孔を有する発泡体部材を含み、該発泡体部材が約1cmを超える厚さを有し、該発泡体部材が、
生体適合性生分解性ポリマーと溶媒とを含む熱可逆性ポリマー溶液を提供する工程と、
前記溶液がゲル化するまで前記溶液を冷却する工程と、
凍結乾燥により前記溶媒を除去して、相互接続した細孔を有する厚い発泡体部材を得る工程と、を含むプロセスにより製造される、発泡体部材。
【請求項11】
前記生体適合性生分解性ポリマーが、ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びこれらのポリマー混合物のホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択される脂肪族ポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項10に記載の発泡体部材。
【請求項12】
前記溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項10に記載の発泡体部材。
【請求項13】
前記溶液が、冷却の前に成形型に入れられる、請求項10に記載の発泡体部材。
【請求項14】
前記凍結乾燥が、第1の冷凍工程と、第1の乾燥工程と、少なくとも1つの後続の追加乾燥工程とを含む、請求項10に記載の発泡体部材。
【請求項15】
前記溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、スクロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される浸出性固体を更に含む、請求項10に記載の発泡体部材。
【請求項16】
前記溶液が、抗感染薬、ホルモン、鎮痛薬、抗炎症薬、成長因子、化学療法薬、拒絶反応抑制薬、プロスタグランジン、RDGペプチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬を更に含む、請求項10に記載の発泡体部材。
【請求項17】
前記細孔が均一形態を有する、請求項10に記載の発泡体部材。
【請求項18】
医療機器の製造方法であって、
請求項10に記載の発泡体部材を提供する工程と、
前記発泡体部材を医療機器に切断する工程と、を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−522871(P2012−522871A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503636(P2012−503636)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029293
【国際公開番号】WO2010/117824
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(312003931)アドバンスト・テクノロジーズ・アンド・リジェネレイティブ・メディスン・エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】Advanced Technologies And Regenerative Medicine, LLC
【Fターム(参考)】