説明

生物学的ペースメーカー

【課題】心臓細胞の電気的挙動を変調させるための方法及びシステムの提供。
【解決手段】好ましい方法は、インビボでKir2遺伝子の活性を抑制することで、心臓の収縮を変調させることができるポリヌクレオチド化合物又はペースメーカー機能を誘導又は変調させることが出来、且つ、胚性又は骨髄幹細胞から分化した心筋細胞に基づいた組成物を投与することを包含する。即ち、投与された組成物は生物学的ペースメーカーとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国仮出願番号第60/287,088号、2001年4月27日出願の優先権を主張するものであり、この出願は、参照することによってその全文が本明細書の一部としてとり入れられている。
(米国連邦政府の後援による研究の陳述)
本発明に対する財政的支援の一部が、国立衛生研究所による助成金No.NIHP50HL52307で米国政府によって提供された。それ故、米国政府は、本明細書に特許請求する発明において、及び発明に対して、一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般的に、心臓ペースメーカー機能を提供及び/又は調節する方法で特徴づけられる。好ましい態様において、本発明は、心室又は心房の発射数(単位時間当たりの活動電位発生頻度、以下、発射数という)を誘導又は調節する埋め込み可能な電子ペースメーカーに変わり得るもの又は補助として使用することのできる、遺伝子工学的ペースメーカーを提供する。
【背景技術】
【0003】
自然発生の細胞の電気的リズムは、心臓の自立性拍動から呼吸リズム及び睡眠覚醒周期まで多数の生物学的プロセスを支配している。
【0004】
特に哺乳類の心臓は、電気的刺激を作りだすことによって固有のリズムを維持していると理解されている。一般的に、刺激は、いわゆるペースメーカーに生じ、特定の心臓通導組織及び心筋内に伝搬する脱分極波を生成する。通常秩序立った波動は、心筋の調和した収縮を促進する。これらの収縮は身体中至るところに血液を送るエンジンである。一般的に、The Heart and Cardiovascular System. Scientific Foundations. (1986) (Fozzard, H.A. et al., eds) Raven Press, NY.を参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような事情で、心臓刺激は、認められた生理的機構によって制御されている。しかし、興奮性心臓組織の異常は心臓リズムの異常を導くという、長年にわたる認識があった。
【0006】
そのような心臓リズムの異常は、米国中に顕著なそして浸透している種々の疾病及び障害に関連している。Bosch, R. et al., (1999) in Cardiovas. Res. 44: 121及び同書引用文献を参照。例えば、徐脈性不整脈は、米国において、年間255,000以上の電子ペースメーカー埋め込みをもたらしている。
【0007】
伝統的な治療方法には、患者の心臓に対し、頻度の固定された又は可変のペーシングパルスを送る埋め込み型ペースメーカーが含まれる。しかし、そのような埋め込み型装置は、感染、出血、肺虚脱及び著しく高価という、顕著な固有のリスクを有している。
【0008】
それ故、所望の心臓収縮数(発射数)を提供する新しい方法を持つことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、ここに、ペースメーカー機能を創出し、及び/又は内因性又は誘導された心臓ペースメーカー機能の活動を変調させることができる遺伝子導入及び細胞投与法を提供する。
【0010】
本発明の方法は、内因性ペースメーカー(例えば、哺乳類の心臓の洞結節)及び/又は誘導性ペースメーカー(例えば、幹細胞又は変換された電気的静止状態の細胞から発生する生物学的ペースメーカー)の活動を創出及び/又は変調させるのに使用される。
【0011】
更に詳しくは、本発明の好ましい態様において、静止状態の心臓細胞は、インビボウイルス遺伝子導入又は変性細胞導入(例えば、分化幹細胞)によってペースメーカー細胞に変換される。
【0012】
更なる態様において、組成物が、存在する内因性又は誘導心臓ペースメーカー機能の頻度を変更する(即ち同調させる)ために患者に投与される。ポリヌクレオチド又は変性細胞は、投与するのに好ましい薬剤である。
【0013】
本発明の好ましい方法は、自発的、律動的電気活動を作り出すための、心室におけるKir2コード化カリウムチャンネルの優性ネガティブ抑制を含む。誘導されたペースメーカーの数は、β−アドレナリン作動性刺激で増加させることができる。それ故、本発明の方法により、心室筋細胞の潜在性ペースメーカー活動は、Kir2チャンネルの阻害によって解放することができる。
【0014】
好ましい方法は、インビボでKir2遺伝子の活性を抑制することができるポリヌクレオチド化合物を投与することを含む。種々の特別なアプローチが採用され得る。例えば、Kir2遺伝子の発現を抑制することができるアンチセンス化合物又はその他のポリヌクレオチド阻害剤を、哺乳類に投与することができる。遺伝子ノックアウトアプローチ、例えば、幹細胞に存在するKir2遺伝子のノックアウトもまた採用することができる。例えば、Kir2.1、Kir2.2、Kir2.3及び/又はKir2.4を含む、多くのKir2遺伝子ファミリーメンバーのいずれも抑制され得る。
【0015】
既に述べたように、変性細胞は、また、ペースメーカーを誘導又は変調させるために細胞又は患者に投与される。例えば、投与された変性細胞は、好適には、ペースメーカー機能を提供することができ、且つ、胚性又は骨髄幹細胞のような幹細胞から分化した心筋細胞である。後者は、幹細胞由来ペースメーカー細胞(自然及び/又は誘発分化による)及び/又はペースメーカー機能を提供するように変換される幹細胞由来筋細胞(例えば、心室細胞)である。
【0016】
変性細胞は、レシピエント、即ち、細胞が投与される患者から採取される。例えば、骨髄幹細胞は、患者から採取され、ペースメーカー機能を有する心筋細胞に分化される。心臓細胞、例えば洞結節細胞は、カテーテル或いは他のプロトコールによる取り出しを通じて患者から採取され、例えば本明細書に開示されるような所望のポリヌクレオチド送達システムの挿入によって変性され、その後、形質転換細胞は患者に投与される。本明細書に示されるように、投与細胞は、好ましくは投与前に、例えば、幹細胞由来心筋細胞、又は本明細書に開示されたような発現系で形質転換された心筋細胞のように、何らかの形で変性される。
【0017】
代わりの、又は補助的戦略において、過分極活性化サイクリック・ヌクレオチド・ゲート(HCN)遺伝子発現が、適切なポリヌクレオチド化合物を哺乳類に投与することによって促進される。本発明者等は、特に、HCN活性は陽性及び陰性方向の両方向に変調させることができ、例えば、それらの活性化閾値を所望のレベルにシフトすることができることを発見した。この故に、心臓ペーシング、及びそれに続く心拍数は、ヌクレオチドゲート(HCN)遺伝子発現のそのような制御によって効果的に(増加及び減少の両方に)変調できる。例えば、ペーシングは、内因性HCNチャンネル活性の阻害によって、及び/又は、内因性レベル以上に活性閾値をシフトすることによって減速させることができる(代わりに、加速は、過剰発現を経た作動チャンネル数を増加させる、及び/又は、内因性レベル以下に活性閾値をシフトすることによって、達成することができる)。同様に、二次メッセンジャーcAMPに対する天然ペースメーカーの応答も、例えば、与えられた感度の遺伝子工学処理したチャンネルを使用することによって、また、変調させることができる。
【0018】
特に好ましいのは、共発現ベクター中でKir配列に結合するHCN構築体の使用である。ベクターは、ペースメーカー活性を誘導するため、及びペースメーカー数を変調させる又は制御するために、投与することができる。特に好ましいのは、共発現ベクターにおいて、Kir2.1AAA配列とHCN構築体を結合することである。
【0019】
投与されたポリペプチドは、少なくとも一つの心臓電気的性質を好適に誘導又は変調(増加又は減少)させる。本発明の好ましい使用は、心臓電気伝導を変調させることであり、好ましくは、心臓活動電位(AP)の全て又は一部を変更することができる。その使用は、所望の治療結果を達成することを助ける。正常な電気的機能の著しい崩壊は、本発明方法により通常減少し又はしばしば回避される。
【0020】
好ましくは、本発明によるポリヌクレオチド又は変性細胞の心筋細胞への投与は、処置された心筋細胞の電気信号出力の数(心筋細胞又は心室発射数)において、識別できる相異(増加又は減少)を提供する。より詳しくは、好ましくは、投与は、処置した心筋細胞の発射数において、少なくとも約2、3、4又は5パーセントの増加又は減少、より好ましくは、少なくとも約10、15、20、25、30、40、50又は100パーセント(の増加又は減少)を提供する。処置した細胞の発射数は、標準法により、特に、以下に定義されるような、標準電気生理学的アッセーにより定量することができる。
【0021】
好ましい投与経路、ポリヌクレオチド及びアッセーは、以下の考察において提供される。一般的に、本発明の使用を助けるポリヌクレオチド発現は、少なくとも標準電気生理学的アッセーの一つから得られる記録におけるシフト(ベースラインに対する相対値として)として明らかになる。好ましくは、本発明によるポリヌクレオチドの投与は、ベースライン機能に対し相対的に少なくとも約10%まで電気的性質の増加又は減少を提供する。更に好ましくは、増加又は減少は、少なくとも約20%であり、より好ましくは、少なくとも約30%から約50%又はそれ以上である。該ベースライン機能は、例えば、本発明方法の前に特定の哺乳類で電気生理学的アッセーを実施することによって、容易に確認することができる。代わりに、関連するベースライン機能は、本命のポリヌクレオチドの代わりに対照のポリヌクレオチドを投与する、平行実験を実施することによって、定量することができる。一度、信頼できるベースライン機能が確立されれば(或いは公知のデータ源から入手できれば)、実際の実施者によるベースライン機能の定量は必ずしも必要ではない。関連性のある電気的性質の例は公知であり、限定はされないが、少なくとも、心拍数、不応性、伝達速度、焦点自動能(focal automaticity)、及び空間的励起パターンの一つを包含する。好ましくは、心拍数又は収縮数(発射数)又は脈拍数が評価される。
【0022】
心臓収縮数を変調させることにより、本発明は、広範囲の心臓に関連した疾病及び障害を治療又は予防(予防的治療)するのに使用することができる。例えば、本発明の方法は、心臓に関連した立ちくらみ、特にストークス−アダムス立ちくらみに罹患した、又は、罹り易い患者の治療に有用である。本発明の方法は、また、持続性洞徐脈、S−Aウェンケバッハ(Wenckebach)として顕著な洞房(S−A)ブロック、完全S−Aブロック又は洞停止(洞刺激が心房を活性化できない)を包含する洞結節機能の種々の異常、及び高度房室ブロックに罹患した又は罹り易い患者の治療に有用である。本発明の方法は、また、徐脈頻脈症候群、及びその他の原因の徐脈に罹患した、又は、罹り易い患者の治療に有用である。
【0023】
本発明の治療方法は、一般的に、本発明による、発射数変調組成物の有効量を哺乳類に投与することを含む。投与は、好ましくは、例えば毒性を回避するため、哺乳類の心臓組織標的領域内に限局される。そのような投与は、例えば、本明細書に開示したように、注射、カテーテルによる送達及びその他によって達成される。好ましくは、哺乳類は、先ず同定され、治療法が選択され、それから治療組成物が投与される。例えば、本明細書に開示したような疾病又は障害、例えば、心臓に関連した立ちくらみ、特にストークス・アダムス立ちくらみ;持続性洞徐脈、S−Aウェンケバッハとして顕著な洞房(S−A)ブロック、完全S−Aブロック又は洞停止のような洞結節機能の異常、及び高度房室ブロック;又は徐脈頻脈症候群又はその他徐脈に関連する状態に罹患した、又は、罹り易い哺乳類を同定することができる。
【0024】
別の態様において、本発明は、本明細書に開示した本発明の方法の一つ又はそれ以上の組合せを実施するためのキットを提供する。好ましくは、キットは、少なくとも一つの好適な心筋核酸送達システム、及び好ましくは少なくとも一つの所望のポリヌクレオチド及び/又は変性細胞組成物を包含する。好ましくは、そのポリヌクレオチドは、該システムに操作可能につながっている。即ち、ポリヌクレオチドを心臓に良好に投与することを可能にするのに充分であるように、機能的及び/又は物理的に関連している。更に好ましいキットは、哺乳類にポリヌクレオチド又は変性細胞を投与するための手段、例えば注射筒、カテーテルその他を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
上で論じたたように、本発明者等は、ここに、内因性又は誘導された心臓ペースメーカー機能の活動を、誘導及び/又は変調させる遺伝子導入及び細胞投与法を提供する。特に、本発明は、埋め込まれた電子ペースメーカーの代替及び/又は補足として遺伝子治療を用いる遺伝子工学的ペースメーカーの創出を提供する。本発明の好ましい態様において、静止状態の心筋細胞が、インビボでのウイルス遺伝子導入によってペースメーカーに変換される。それら変換された細胞の心臓収縮及び/又は電気的性質は、その後、本発明によって変調される。
【0026】
更に詳しくは、本発明の第一の態様において、本発明の方法は、心筋細胞においてペースメーカー機能(心臓収縮)を示さない心筋細胞において、そのような性質、即ち、発射数が全くないか、少しあるか、又は不適当である静止状態の心筋細胞において、ペースメーカー機能を誘導するのに使用される。好ましくは、投与により、治療された心臓細胞に自発的な反復電気信号の発生を誘導し又はもたらす、即ち、発射数が少ないか又は全くない心筋細胞(1分当たり約20、15、10、5回又はそれ以下の発射数)に対して、発射数又は電気信号出力の頻度は、好ましくは検出し得るレベルに増加し、特に投与後は、少なくとも約3、5、10、15、20又は25パーセントの発射数又は電気信号出力の増加が見られる。
【0027】
更なる態様において、本発明の方法は、心筋細胞に存在する発射数を変調させ又は「調子を合わせる」のに使用される。この態様において、過剰の心室性ペーシングは、低い頻度又は発射数に減少し、或いは低すぎる心室性ペーシングが所望のレベルになる。本発明のこの態様は、患者に対し至適心拍数を提供するための埋め込み(電子)ペースメーカー効果で達成される効果を変調させるのに特に有用である。更に、本発明は、内因性の神経又はホルモンの入力で治療される組織の反応性を維持するのに利点を有する。
【0028】
特に、本発明は、埋め込み電子ペースメーカーの効果を増強又は補足するのに使用することができる。埋め込み電子ペースメーカーを有する哺乳類は、本発明により治療され得る。即ち、ポリヌクレオチド又は変性細胞が哺乳類に投与され、埋め込まれた電子装置により提供されている心臓発射数を更に変調させる。そのような複合アプローチにより、精密で至適な発射数が達成される。更に、組成物は、哺乳類の心臓における電子ペースメーカーから離れている部位に投与することができ、例えば、組成物投与部位は、埋め込まれた電子装置から少なくとも約0.5、1、2、3、4又は5cm離れており、それによって、心臓組織の大きな領域に亘ってペースメーカーの効果を提供できる。
【0029】
本発明の方法は、治療された患者の心臓発射数を、所望の発射数値の約15又は10パーセント以内、より好ましくは約8、5、4、3又は2パーセント以内に変調させるために、好適に使用される。
【0030】
本発明の好適な方法は、コードしたポリヌクレオチド、特に、哺乳類の心臓の洞結節におけるようなペースメーカー細胞に導入されるポリヌクレオチドの投与、又は、幹細胞から創製された、又は電気的に静止化された細胞から変換されたペースメーカー細胞、或いは律動収縮又は心臓の興奮を発生するように適応された他の細胞のような、誘導し得る細胞の投与を包含する。上記で考察したように、好ましい方法は、心臓収縮(発射数)を変調させることのできる、少なくとも一つのポリヌクレオチド又は変性細胞の治療有効量を投与することを包含する。ポリヌクレオチド及び変性細胞は、また、心臓組織の標的領域内にそれらの薬剤を局所投与することが容易なため、本発明による投与に好ましい治療組成物である。
【0031】
心筋細胞の発射数を変調させるために投与される好適な組成物は、簡単な試験で容易に同定することができる。即ち、ポリヌクレオチドのような候補薬剤を心筋細胞に投与し、投与された薬剤が、例えば以下に定義されるアッセーのような標準電気生理学的アッセーにより定量された、対照の心筋細胞(薬剤で未処置の同じ細胞)に比較して、発射数が変調するかどうかを定量することができる。
【0032】
特に好ましい投与用ポリヌクレオチドは優性ネガティブ構築体である。これら構築体は、特に限定されないが、例えば、Kir2構築体、HCN構築体、変異体、断片及びこれらの組合せである。
【0033】
本発明の好適な実施態様において、優性ネガティブKir2構築体の体性遺伝子導入は、心室における自発的ペースメーカー活動を生じ、動いている心筋内に存在する休眠ペースメーカーIK1の局在的遺伝子抑制による生物学的ペースメーカーの創造をもたらす。
【0034】
例えば、Kir2優性ネガティブ構築体は、例えば、Kir2.1の孔領域のアミノ酸残基をアラニンによって置換する(GYG144−146→AAA、又はKir2.1AAA)ことによって、作ることができる。そのような優性ネガティブ構築体は、野生型Kir2.1と共発現するとき電流束を抑制することができる。4量体Kirチャンネル内に少なくとも約一つの単一変異体を取り込むことによって、機能をノックアウトするのに充分である。優性ネガティブ構築体、例えばKir2.1AAAは、2シストロンベクターにパッケージすることができ、モルモットの左心室腔に注射される。好ましくは、およそ1cmの領域のような局所領域では、心室筋細胞の少なくとも約10%が形質導入され、より好ましくは、少なくとも約20%の心室細胞が形質導入され、最も好ましくは、少なくとも約30%、40%又は50%の心室細胞が形質導入される。IK1及びカルシウム電流の測定は、後述する実施例において詳細に記載されるようにして行われる。
【0035】
形質導入された心筋細胞の上記活性は、後述する実施例に記載されるように、対照の心室細胞の自発活性と比較される。形質導入筋細胞が、例えば内因性のペースメーカー活性を有する初期胚心臓細胞又は洞結節の正常ペースメーカー細胞のような、ペースメーカー細胞で代表される自発活性を示すことが望ましい。
【0036】
別の好ましい実施態様において、本発明は、Kir2遺伝子産物の発現を阻害するアンチセンス治療分子を提供する。治療応用において、オリゴヌクレオチドが、細胞/生物に望ましくない又は有害なタンパク質の合成を防止する、特異的mRNA類のインビボでの翻訳を阻害するのに成功裏に使用された。この翻訳のオリゴヌクレオチド介在ブロックの概念は、「アンチセンス」アプローチとして知られている。機構的には、ハイブリッドオリゴヌクレオチドは、翻訳プロセスに対し物理的なブロックを創製するか、二重鎖のmRNA部分を特異的に分解する細胞酵素(RNaseH)を補充することによる効果を誘発すると考えられる。
【0037】
広範な応用に有用なことに、オリゴヌクレオチドは、好ましくは、多くの異なった要求を満足している。アンチセンス治療において、例えば、有用なオリゴヌクレオチドは、細胞膜を透過することができなければならず、細胞外、細胞内ヌクレアーゼに抵抗性を有しなければならず、そして好ましくは、RNaseHのような内因性酵素を補充する能力を有していなければならない。DNAに基づく診断及び分子生物学においては、例えば、ポリメラーゼ、キナーゼ、リガーゼ及びホスファターゼのように、天然の核酸に作用するよう進化した、広範囲の異なった酵素に対する有効な基質として作用するオリゴヌクレオチドの能力のような、その他の性質が重要である。アンチセンス治療分子として使用されるオリゴヌクレオチドは、標的mRNAに対し、その翻訳を効率的に損なう高い親和性、及びその他のタンパク質の発現の故意でない阻害を避けるための高い特異性、の両者を有することが必要である。
【0038】
特に、Kir2チャンネルを作る少なくとも約一つの成分、又はKir2チャンネルを作るのに充分な成分の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを有し、強く分極したIK1の部分的抑制又は不存在によって測定されるように、心室心筋でペースメーカー活性を解放するのに充分なKir2チャンネルを、特異的に抑制することが好ましい。
【0039】
別の投与プロトコールも採用され得る。例えば、投与されたポリヌクレオチドが、おとりとして機能し、ここで、ポリヌクレオチドは常法により標的細胞又は遺伝子に導入され、遺伝子の活性化は、例えば、転写因子がおとり分子に転換されることによって翻訳される。より詳細には、Kir2チャンネル成分の発現を効果的に阻害するために、おとりを採用することができる。本明細書で使われるように、用語「おとり分子」又は他の類似の用語は、機能的に不活性なタンパク質を、又は機能的に活性なタンパク質と拮抗し、それ故に活性タンパク質によって促進された活性を阻害するタンパク質それ自身をコードする、ポリヌクレオチドの意味を含む。Kir2おとりタンパク質は、それ故、野生型Kir2タンパク質に対する拮抗阻害剤として作用することができ、それによってKir2野生型チャンネルの形成を阻害し、内向き整流性カリウム電流(IK1)の抑制をもたらす。
【0040】
好ましくは、優性ネガティブ構築体は、耐久性がなければならない。即ち、何ヶ月、何年間もの長期間効果があり、局所特異性であり、即ち、所望の組織のみを標的にし、選択的な機構で特異的に作用し、例えば、Kir2優性ネガティブ構築体は心室心筋においてペースメーカー活性を解放するのに充分なKir2チャンネルを特異的に阻害する。
【0041】
本発明により使用される優性ネガティブ構築体の別の例は、HCN構築体、例えばHCN1構築体である。特に、そのような構築体においては、孔中の臨界残基GYGは、AAAに変換され(HCN1−AAAを創製する)、それによって正常なHCNコード化ペースメーカー電流を抑制することができる。
【0042】
更には、後述する実施例で更に詳細に示すように、ペースメーカーチャンネルにおけるGYG選択的モチーフの機能的重要性が、HCN1におけるトリプレットがアラニンと置換されることによって評価された(GYG365−367AAA)。HCN1−AAAは、機能的電流を産生しない;HCN1−AAAのWTHCN1との共発現は、通門性(定常状態活性化、活性化及び不活性化動態)又は透過性(反転電位)に影響せずに、優性ネガティブ方式における正常チャンネル活性を抑制する(WT:AAA比、4:1、3:1、2:1、1:1及び1:2、−140mVで、それぞれ電流減少、55.2±3.2、68.3±4.3、78.7±1.6、91.7±0.8、97.9±0.2%)。統計解析は、単一HCNチャンネルは、4つの単量体サブユニットから成ることを明らかにした。興味あることには、HCN1−AAAは、また、同様な効率で、優性ネガティブ方式におけるHCN2を阻害した。それ故、GYGモチーフは、HCNチャンネルに対しイオン透過の臨界決定因子であり、HCN1及びHCN2はヘテロ四量体複合体を形成するために、容易に共会合すると信じられる。
【0043】
上記に示したように、異なったHCNアイソフォームの共会合を通して、内因性HCN活性(例えば、活性化閾値及び発現電流増幅)は、双方向に変調され、それにより、上記で考察したように所望の値の好ましい範囲内で、心臓ペーシング又は発射数の効果的な変調が可能である。
【0044】
本発明は、一般的に、インビボ又はエクスビボでの心臓への使用を意図することを含む、好適なポリヌクレオチドの投与経路の一つ又は組合せに適合性がある。心臓組織は、特に遺伝子導入技術に敏感に反応する分野であるとの理解がある。Donahue, J. et al., (1998) Gene Therapy 5: 630; Donahue, J. et al., PNAS (USA) 94: 4664(心臓への迅速、効率的な遺伝子導入を開示);Akhter, S. et al., (1997), PNAS (USA) 94: 12100(心室心筋細胞への遺伝子導入を提示);及びこれらに引用された文献を参照されたい。好ましい、核酸送達方法は、米国特許第6,376,471号に開示されている。
【0045】
本発明による更なる好ましい投与経路は、心臓組織へポリヌクレオチドを導入し、それを発現させて、標準心電図(ECG)記録により定量されるように、充分検出可能な程度に心拍数を減少させることを含む。好ましくは、心拍数の減少は、ベースラインに対して少なくとも約5%である。
【0046】
本発明は、高度に柔軟性があり、好ましくは少なくとも一つの治療心臓タンパク質をコードするポリヌクレオチドの一つ又は組合せで使用することができる。
【0047】
上で論じた好ましいポリヌクレオチドに加えて、本発明による投与用の好適なポリヌクレオチドは、限定されないが、少なくとも一つのチャンネルタンパク質、ギャップ結合タンパク質、Gタンパク質サブユニット、コネキシン、或いはこれらの機能性フラグメントをコードするものを包含する。より好ましくは、Kチャンネルサブユニット、Naチャンネルサブユニット、Caチャンネルサブユニット、阻害性Gタンパク質サブユニット、又は機能性フラグメントをコードするポリヌクレオチドである。更なる好ましいポリヌクレオチドは、そのような(同じか又は異なった)タンパク質の1、2又は3つをコードするであろう。
【0048】
「フラグメント(断片)」、「機能性フラグメント」又は類似の用語は、対応する全長アミノ酸配列(又はその配列をコードするポリヌクレオチド)の機能の少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約95%を有するアミノ酸配列(又はその配列をコードするポリヌクレオチド)の部分を意味する。そのようなフラグメントの機能性を検出及び定量する方法は公知であり、本明細書に開示する標準電気生理学的アッセーを包含する。
【0049】
本発明を実施するのに適したポリヌクレオチドは、限定されないが、GenBank(National Center for Biotechnology Information (NCBI))EMBL data library, Swiss−PROT (University of Geneva, Switzerland), the PIR−International database;及びthe American Type Culture Collection (ATCC) (10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)を含む公的機関から得ることができる。一般的には、Benson, D. A. et al., (1997), Nucl. Acids Res. 25: 1 GenBankの記載を参照されたい。
【0050】
本発明で使用される、より特別なポリヌクレオチドは、GenBankからの公的情報にアクセスすることによって容易に得ることができる。例えば、一つのアプローチとして、所望のポリヌクレオチド配列がGenBankから得られる。ポリヌクレオチドそれ自体は、PCRに基づいた増幅を用いたものを含む通常のクローニング手順、及びクローニング技術の一つ又は組合せにより作ることができる。例えば、オリゴヌクレオチド配列の調製、適切なライブラリーのPCR増幅、プラスミドDNAの調製、制限酵素でのDNA開裂、DNAの連結、DNAの好適な宿主細胞への導入、細胞の培養、及びクローン化ポリヌクレオチドの単離及び精製は公知の技術である。Sambrook et al., in Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed. 1989); Ausubel et al., (1989), Current Products in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New Yorkを参照。
【0051】
以下の表1は、本発明で使用されるGenBankデータベースからの例示的なポリヌクレオチドを示したものである。
【0052】
【表1】

【0053】
本発明で使用される他のポリヌクレオチドは、以下の文献に報告されている。Wong et al., Nature 1991; 351(6321):63(本質的に活性なGi2α);De Jongh KS, et al., J. Biol. Chem. 1990, Sep. 5;265(25):14738(Na及びCaチャンネルβサブユニット);Perez-Reyes, E. et al., J. Biol. Chem. 1992, Jan 25;267(3):1792; Neuroscientist 2001 Feb;7(1):42(ナトリウムチャンネルβサブユニット情報を提供);Isom, LL. et al., Science, 1992, May 8;256(5058):839(脳ナトリウムチャンネルのβ1サブユニットを提供);及びIsom, LL. et al.,(1995), Cell 1995 Nov 3;83(3):433(脳ナトリウムチャンネルのβ2サブユニットを報告)。
【0054】
本発明で使用される更なるポリヌクレオチドは、PCT出願番号PCT/US98/23877(Marban,E.)に報告されている。
E.Marbanによる以下の文献も参照されたい。J. Gen. Physiol., 2001, Aug;118(2):171-82; Circ. Res., 2001, Jul 20;89(2):160-7; Circ. Res. 2001, Jul 20;89(2):101; Circ. Res., 2001, Jul 6;89(1):33-8; Circ. Res., 2001, Jun 22;88(12):1267-75; J. Biol. Chem., 2001, Aug 10;276(32):30423-8; Circulation., 2001, May 22;103(20):2447-52; Circulation, 2001, May 15;103(19):2361-4; Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol., 2001, Jun;280(6):H2623-30; Biochemistry, 2001, May 22;40(20):6002-8; J. Physiol., 2001, May 15;533(Pt. 1):127-33; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2001, Apr 24;98(9):5335-40; Circ. Res., 2001, Mar 30;88(6):570-7; Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol., 2001, Apr;280(4):H1882-8; and J. Mol. Cell Cardiol., 2000, Nov;32(11):1923-30.
【0055】
好適なCaチャンネルサブユニットの更なる例は、β1、又はL型Caチャンネルからのα2−δサブユニットを包含する。好ましいNaチャンネルサブユニットは、β1又はβ2である。いくつかの発明の実施態様において、以下に記載する標準電気生理学的アッセーによって定量される優性ネガティブ活性を有する、Na及びCaチャンネルサブユニットを選択することが有用である。好ましくは、その活性は、アッセーで定量される対応する標準のNa又はCaチャンネルサブユニットの活性の少なくとも約10%を抑制する。
【0056】
本発明による投与に特に適した構築体は、また、後述する実施例に開示される。
また、好ましいものとしては、ペースメーカー活性を変調させる補助戦略として阻害性Gタンパク質サブユニット(「Gαi2」)又はその機能性フラグメントが挙げられる。
【0057】
本発明は、ギャップ結合タンパク質、特に心臓機能に包含されることが知られている又は想定されているものに使用するのに広範に適している。特別な例は、コネキシン40、43、45及び機能性フラグメントを包含する。更に、予期されるのは、アッセーによって定量される優性ネガティブ活性、好ましくは、対応するコネキシン40、43又は45に関して、少なくとも約10%の抑制活性を有するコネキシンをコードするポリヌクレオチドである。コネキシンは、幹細胞又は静止状態の心臓組織で電気的結合を形成する誘導心筋細胞を誘導/誘引するのに特に有用である。
【0058】
更に考察されるのは、検出し得るサプレッサー活性を有する優性ネガティブタンパク質(ムテイン)をコードするポリヌクレオチドのような変異体である。遺伝的に優性であるコード化されたタンパク質は、一般的には、他のタンパク質、特に野生型タンパク質と結合して複合体を形成することができるタンパク質の機能を阻害する。
【0059】
本発明の更なるポリヌクレオチドは、完全ではないが本質的に全長タンパク質をコードする。タンパク質は全長配列の全ての成分を有してはいない。例えば、コードされたタンパク質は、完全又は完全に近いがしかし完全シグナル又はポリアデニル配列を欠いているコード化配列(cds)を包含する。本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチド及び特にcDNAは、少なくとも完全cdsを包含することが好ましい。好ましくは、該cdsは、約0.5と70の間、好ましくは約5と60の間、より好ましくは約15、20、25、30、35、40又は50kDの分子量を示すタンパク質をコードすることができる。その分子量は、好適なコンピューター支援プログラムによって、又はSDS−PAGE電気泳動によって容易に定量することができる。
【0060】
ポリヌクレオチド及び特に全長タンパク質をコードするcDNAは、選択された細胞、組織又は器官にあるそのタンパク質の発現を変調させる、常法の組換えアプローチによって変性させることができる。
【0061】
更に特異的には、好適なポリヌクレオチドは、コード化したタンパク質から1又はそれ以上の隣接又は非隣接アミノ酸を付加、置換又は除去することができる組換え法によって変性させることができる。一般には、実施される変性の型は、所望する発現の結果に関係する。
【0062】
例えば、イオンチャンネルのような関心のあるタンパク質をコードするcDNAポリヌクレオチドは、全長タンパク質の発現に比較して、そのタンパク質を過剰発現するように変性させることができる(即ち対照アッセー)。一般的には、変性タンパク質は、全長タンパク質に関して少なくとも10パーセント又はそれ以上の過剰発現、より好ましくは少なくとも20パーセント又はそれ以上、更により好ましくは少なくとも約30、40、50、60、70、80、100、150又は200パーセント又はそれ以上の過剰発現を対照アッセーに比較して示す。
【0063】
上記したように、ポリヌクレオチド(核酸断片)及び特にcDNAに対して更に予期される変性は、優性ネガティブタンパク質のそれである。
【0064】
一般的に、種々の優性ネガティブタンパク質は、この分野で知られた方法によって作ることができる。例えば、イオンチャンネルタンパク質は、例えば、選択された膜貫通領域を除去することによって、優性ネガティブタンパク質が容易に作られる、一つのタンパク質ファミリーとして認識されている。殆どの場合、イオンチャンネル結合複合体の機能は、優性ネガティブイオンチャンネルタンパク質の相互作用によって、実質的に減少又は除去される。
【0065】
いくつかの特別な戦略が、優性ネガティブタンパク質を作るために開発されている。そのような戦略の例としては、所望のタンパク質をコードするcDNA配列の欠失を目標とし標的とするオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0066】
優性ネガティブタンパク質の創造は、遺伝子欠失及びアンチセンスRNAのような遺伝子操作の別の従来法とは同義ではないことが強調される。「優性ネガティブ」の意味は、正に、内因性タンパク質を不活性化する能力を有する優性ネガティブタンパク質を産生する適切なDNA構築によって駆動され得る(即ち、発現され得る)「ポイゾンピル(poison pill)」と特別にに呼ばれることがある。
【0067】
例えば、一つのアプローチにおいて、一つ又はそれ以上の膜貫通領域を含むタンパク質をコードするcDNAが、少なくとも一つの、好ましくは、2、3、4、5、6又はそれ以上の膜貫通領域を除去するように変性される。好ましくは、得られた変性されたタンパク質は、少なくとも一つの別のタンパク質、及び通常は一つ以上のタンパク質と結合複合体を形成する。既述したように、変性されたタンパク質は、例えば、本明細書に記載された標準リガンド結合アッセー又は電気生理学的アッセーによってアッセーされる、結合複合体の正常の機能を阻害する。例示する結合複合体は、イオンチャンネルタンパク質複合体に生じるような電気荷電伝播に関与するものである。一般的には、優性ネガティブタンパク質は、全長タンパク質と比較して、結合複合体の活性の少なくとも10パーセント又はそれ以上の阻害、より好ましくは少なくとも20パーセント又はそれ以上、そして更により好ましくは、少なくとも約30、40、50、60、70、80又は100パーセント又はそれ以上の、結合複合体の阻害を示す。
【0068】
更なる例示として、本方法において使用される所望のタンパク質をコードするcDNAは、タンパク質の少なくとも一つのアミノ酸が欠失されるように、変性することができる。欠失したアミノ酸類は、全長タンパク質配列の長さの、本質的に約1%まで、より好ましくは少なくとも約5%、そして更により好ましくは約10、20、30、40、50、60、70、80又は95%までの連続又は非連続欠失であり得る。
【0069】
代わりに、所望のタンパク質をコードするcDNAは、コード化したタンパク質中の少なくとも一つのアミノ酸が保存又は非保存アミノ酸によって置換されるように、変性することができる。例えば、フェニルアラニンで置換されたチロシンアミノ酸は保存アミノ酸置換の例であり、これに対して、アラニンで置換されたアルギニンは非保存アミノ酸置換を示す。置換されたアミノ酸は、全長タンパク質配列の長さの、本質的に約1%まで、より好ましくは約5%、そして更に、より好ましくは約10、20、30、40、50、60、70、80又は95%まで、連続又は非連続置換であり得る。
【0070】
一般的にあまり好ましくはないが、所望のタンパク質をコードする核酸セグメントは、少なくとも一つのアミノ酸がコードされたタンパク質に加えられるように、変性することができる。アミノ酸付加は、cdsのORFを変えないことが好ましい。一般的には、約1〜50個のアミノ酸、好ましくは約1〜25個のアミノ酸、より好ましくは約2〜10個のアミノ酸が、コードされたタンパク質に加えられる。特に好ましい付加部位は、選択されたタンパク質のC−又はN−末端である。
【0071】
好ましい発明の実施は、上記のポリヌクレオチドの少なくとも一つを好適な心筋核酸送達システムを用いて投与することを包含する。一つの実施態様において、該システムは、ポリヌクレオチドに操作可能に結合した非ウイルスベクターを包含する。そのような非ウイルスベクターは、ポリヌクレオチド単独又は好適なタンパク質、多糖類又は脂質製剤との組合せを包含する。
【0072】
本明細書で使用される、用語「操作可能に結合した」は、そのように記載された成分が通常の機能を遂行出来るように設定されている、要素の配置のことを意味する。それ故、コードされた配列に操作可能に結合した制御配列は、コードされた配列の発現に影響を与えることができる。制御配列は、それが配列を指している限り、コードされた配列に隣接している必要はない。それ故、例えば、介在する非翻訳であるが転写されている配列が、プロモーター配列とコード配列の間に存在することができ、そして、プロモーター配列は、依然として、コードされた配列に「操作可能に結合している」と考えることができる。
【0073】
本明細書で使用される、用語「コードされた配列」又は特定のタンパク質を「コードする」は、適切な制御配列の制御下におかれた場合、インビトロ又はインビボで、転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コードされた配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンと3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって決定される。コード配列は、限定されないが、原核又は真核mRNAからのcDNA、原核又は真核DNAからのゲノムDNA配列、及び合成DNAまでも包含することができる。転写終結配列は、通常、コード配列に対し3’に位置している。
【0074】
本明細書で使用される、「核酸」配列は、DNA又はRNA配列をいう。この用語は、また、限定されないが、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキュエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、キュエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、2−チオシトシン及び2,6−ジアミノプリンのような、DNA及びRNAの公知の塩基類縁体のいずれかを包含する配列をいう。
【0075】
本明細書で使用される用語、「制御配列」は、レシピエント細胞におけるコードされた配列の複製、転写及び翻訳に対して集合的に与えられる、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流制御領域、複製起点、アイルス(IRES)、エンハンサー、その他を集合的にいう。選択されたコード配列が、適切な宿主細胞内で複製され、転写され、そして翻訳されることができる限り、これらの制御配列の全てが必ずしも存在する必要はない。
【0076】
本明細書で使用される、「プロモーター領域」は、普通の意味では、RNAポリメラーゼが結合し、下流(3’方向)コード配列の翻訳を開始するDNA制御配列をいう。
【0077】
特別に好適な心筋核酸システム、特にIK1のような、ある種の活性を抑制することが望ましい場合の、特別に好適な心筋核酸システムは、米国特許第6,214,620号(D. C. Johns and E. Marban)に記載され、その内容は、参照することによりその全文が本明細書の一部として取り入れられている。そのような構築は、誘導し得るプロモーターの使用によって制御される。そのようなプロモーターの例は、限定されないが、プロゲステロン、エクジソン及びグルココルチコイドのようなホルモン及びホルモン類縁体、更にテトラサイクリン、熱ショック、重金属イオン、インターフェロン及びラクトースオペロン活性化化合物によって制御されるプロモーターによって制御されるものを包含する。これらのシステムの総説は、Gingrich and Roder, 1998, Ann. Rev. Neurosci., 21, 377-405を参照されたい。非哺乳類誘導システムを使用するとき、誘導し得るプロモーター及びリガンドを誘導するためのレセプタータンパク質をコードする遺伝子が使用される。レセプタータンパク質は、一般的には誘導リガンドに結合し、誘導し得るプロモーターにおいて、直接又は間接的に転写を活性化する。
【0078】
更に好適な心筋核酸送達システムは、アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス又はセンダイウイルス−リポソーム(HVJ)複合体の少なくとも一つからの配列である、ウイルスベクターを包含する。好ましくは、ウイルスベクターは、ポリヌクレオチドに操作可能にリンクした強力な真核プロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを包含する。
【0079】
更に好ましいベクターは、ウイルスベクター、融合ベクター、化学接合体を包含する。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルス及びHIVに基づいたウイルスベクターを包含する。好ましいHIVに基づいたウイルスベクターの一つは、HIVゲノムに由来するgag及びpol遺伝子と、他のウイルスに由来するenv遺伝子の、少なくとも二つのベクターを含んでいる。DNAウイルスベクター類が好ましい。これらのベクターは、オルトポックス又はアビポックスベクターのようなポックスベクター、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクターのようなヘルペスウイルスベクター[Geller, A. I. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995); Lim, F. et al. in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England)(1995); Geller, A. I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7603 (1993); Geller, A. I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1149(1990)]]、アデノウイルスベクター[LeGal LaSalle et al., Science, 259:988(1993); Davidson, et al., Nat. Genet. 3: 219 (1993); Yang, et al., J. Virol. 69: 2004 (1995)]]及びアデノ随伴ウイルスベクター[Kaplitt, M. G. et al., Nat. Genet. 8: 148 (1994)]を包含する。
【0080】
ポックスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質に導入する。アビポックスベクターは、核酸の短期発現だけとなる。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター及び単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクターは、いくつかの発明の実施態様についての示唆になるであろう。アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターよりも短い期間(例えば約1ヶ月より短い)の発現をもたらすが、ある実施態様では、より長い発現を示す。選択された特定のウイルスは、標的細胞及び処置条件に依存する。好ましいインビボ又はエクスビボ心臓投与技術に関しては、既に記載した。
【0081】
本明細書に記載したポリヌクレオチドの操作及び取り扱いを単純化するため、核酸は、好ましくは、プロモーターに操作可能に結合したしたカセットに挿入される。プロモーターは所望の標的組織の細胞でタンパク質の発現を駆動できなければならない。適切なプロモーターの選択は、容易に達成できる。好ましくは、高発現プロモーターを使用する。好適なプロモーターの例は、763塩基対サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。ラウス肉腫ウイルス(RSV)(Davis, et al., Hum. Gene Ther. 4:151 (1993))及びMMTプロモーターも使用することができる。これら天然のプロモーターを使用して、ある種のタンパク質を発現させることができる。発現を増強するその他の要素は、エンハンサー又はtat遺伝子及びtar要素の如き高発現レベルをもたらすシステムのようなものも包含することができる。このカセットは、ベクター、例えばpUC118、pBR322のようなプラスミドベクター、又は例えば、E.coli複製起点を含む、公知のプラスミドベクターに挿入することができる。Sambrook, et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)を参照。プラスミドベクターは、また、マーカーポリペプチドが、処理している生物の代謝に悪い影響を及ぼさない限り、アンピシリン抵抗性に対するβ−ラクタマーゼ遺伝子のような選択マーカーを包含し得る。カセットは、WO95/22618に開示されているシステムのような統合的な送達システムにおいて、核酸結合部分に結合することができる。
【0082】
米国公開特許出願US20020022259A1は、また、心臓細胞において遺伝子発現を促進し、幹細胞を心筋細胞に分化するポリヌクレオチドエンハンサー要素を報告している。
【0083】
所望により、本発明のポリヌクレオチドは、陽イオン性リポソーム及びアデノウイルスベクターのようなミクロ送達システムと共に使用することができる。リポソームの調製、標的及び内容の送達についての手順のレビューは、以下を参照されたい。Mannino and Gould-Fogerite, BioTechniques, 6: 682 (1988). Felgner and Holm, Bethesda Res. Lab. Focus, 11 (2): 21 (1989) 及び Maurer, R. A., Bethesda Res. Lab. Focus, 11 (2): 25 (1989).
【0084】
複製欠失組換えアデノウイルスベクターは、公知技術に従って産生することができる。Quantin, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 2581-2584 (1992); Stratford-Perricadet, et al., J. Clin. Invest. 90: 626-630 (1992); Rosenfeld, et al., Cell, 68: 143-155 (1992)を参照。
【0085】
好ましい心筋送達システムの一つは、1又はそれ以上のポリヌクレオチド、好ましくは約一つのポリヌクレオチドを取り込む組換えウイルスベクターである。好ましくは、本発明方法において使用されるウイルスベクターは、約10〜約5×1010pfuのpfu(プラーク形成単位)を有する。ポリヌクレオチドが非ウイルスベクターと一緒に投与される実施態様において、約0.1ナノグラム〜約4,000マイクログラムの間、例えば、約1ナノグラム〜約100マイクログラムの使用がしばしば有用であろう。
【0086】
特定の心筋送達システムの選択は、処置される条件及び所望の発現の量及び長さを含む認められたパラメーターによって導かれる。ヒトへの応用が許可されたウイルスベクター、例えばアデノウイルスの使用は、特に好ましい。
【0087】
ここでの電気生理学的アッセーについてのリファランスは、心臓活動電位(AP)を測定するための従来のテストを意味する。一般的にはそのようなテストの実施に関して開示されているFogoros RN, Electrophysiologic Testing, Blackwell Science, Inc. (1999)を参照されたい。
【0088】
「標準電気生理学的アッセー」についてのここでの特定のリファランスは、以下の一般的なアッセーを意味する。
1)哺乳類の心臓を用意し(インビボ又はエクスビボで);
2)該心臓を、少なくとも一つの好適なポリヌクレオチドと、好ましくは適切な心筋核酸送達システムと組合せて、又は心筋細胞に分化した幹細胞のような本明細書に開示された変性細胞と組合わせて接触させ;
3)コードされたアミノ酸配列の発現を可能にする条件下で、ポリヌクレオチド又は変性細胞を該心臓に搬入し;
4)投与された(例えば、形質転換された)心臓の少なくとも一つの電気的性質、例えば、伝導、心室反応度、発射数及び/又は脈拍数の少なくとも一つ、好ましくは発射数又は脈拍数のベースライン値に対する変調(増加又は減少)を検出する。理解されるように、ベースライン値は、選択された特定のポリヌクレオチドに関して、しばしば変化する。発現のベースライン値又はタンパク質の定量方法は、ウエスタンブロット、定量PCR、又は阻害Gタンパク質に対するアデニル酸シクラーゼアッセー、イオンチャンネル電流に対するパッチクランプ法のような機能的アッセーを包含する。電気生理学的(EP)効果は、インビボでEPカテーテルを使用して、心拍数、伝導速度又は不応期を測定することにより定量することができる。好ましい調整の程度は、ベースライン値から、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10パーセントの差異である。より大きなベースライン値からの増加又は減少、例えば、ベースライン値に対して、少なくとも約12、15、20又は25パーセントの心拍数又はその他の測定された性質の増加又は減少も、また、達成可能である。
【0089】
本発明の特別な方法としては、上で論じた線に沿って、コードされたタンパク質を過剰発現させるのに充分なポリヌクレオチドの変性が挙げられる。更に好ましいのは、核酸が優性ネガティブ・イオンチャンネル・タンパク質を産生するように変性される方法である。イオンチャンネルタンパク質は、電位依存性イオンチャンネル(ナトリウム、カルシウム又はカリウムチャンネル)又はリガンド依存性イオンチャンネルであり得る。そのようなチャンネルタンパク質に関する更なる開示は、上記考察及び例えば米国特許第5,436,128号に見出すことができる。
【0090】
本発明の実施は、一つ又は異なった投与(送達)システムの組合せと、広範に適合する。
【0091】
特に、好適な投与経路の一つは、1又はそれ以上の適切なポリヌクレオチドを心筋に入れることを含む。代わりに、投与ステップは、ポリヌクレオチドを心臓の脈管構造中に灌流させることを包含する。所望により、更に投与ステップは、通常の手順、一般的には、遺伝子導入ベクターの投与前又は投与中に、少なくとも一つの血管透過性薬剤を投与する、通常の手順を使用する微小血管透過性増加法を包含する。特別な血管透過性薬剤の例は、1又はそれ以上の、次に示す薬剤を、好ましくは約500マイクロモル以下のカルシウムを含有する溶液と組合せて投与することを含む:サブスタンスP、ヒスタミン、アセチルコリン、アデノシンヌクレオチド、アラキドン酸、ブラジキニン、エンドセリン、エンドトキシン、インターロイキン−2、ニトログリセリン、酸化窒素、ニトロプルシッド、ロイコトリエン、酸素ラジカル、ホスホリパーゼ、血小板活性化因子、プロタミン、セロトニン、腫瘍壊死化因子、血管内皮増殖因子、血管作動性アミン又は一酸化窒素合成酵素。特別なものとしては、セロトニン、血管内皮増殖因子(VEGF)、又は透過性を増加させる機能性VEGFフラグメントがある。
【0092】
本発明による一般的な灌流プロトコールは、一般に、ポリヌクレオチドを哺乳類の心筋の少なくとも約10%まで移植するのに充分なものである。約0.5から約500mlの間の注入容量が好ましい。また、好ましくは、冠動脈血流量は、約0.5〜約500ml/分の間である。更に好ましい灌流プロトコールは、AV結節動脈を含む。形質転換された心臓細胞、一般的にはポリヌクレオチドを含む心筋細胞は、AV結節又はその近くに好適に配置される。
【0093】
形質転換心臓の変調を検出するための例示的な戦略は、例えば、上記Fogoros RNに開示されている。好ましい検出戦略は、常法の心電図(ECG)の実施である。本発明の使用による心臓の電気的性質の変性は、ECGの検査で容易に観察される。
【0094】
より一般的には、本発明は、選択された心臓組織において所望のイオンチャンネル、細胞外レセプター、又は細胞内シグナルタンパク質遺伝子を送達及び発現するのに使用することができる。特に組織の電気的性質の変性、例えば、心拍数の増加又は減少、その不応性の増加又は減少、伝導速度の増加又は減少、焦点自動性の増加又は減少、及び/又は興奮の空間的パターンの変更等に使用される。一般的な方法は、心臓の不整脈を治療するために、心筋の注射又は脈管(動脈、静脈)を通じた灌流による遺伝物質(DNA、RNA)の送達、又はウイルス(アデノウイルス、AAV、レトロウイルス、HVJ、その他の組換えウイルス)又は非ウイルスベクター(プラスミド、リポソーム、タンパク質−DNAの組合せ、脂質−DNA又は脂質−ウイルスの組合せ、その他の非ウイルスベクター)を用いて、心筋の標的部分に形質転換を促進するのに充分な別の近い物質による送達を含む。
【0095】
実例として、心臓の発射数に影響を与えるために使用することができる遺伝子は、イオンチャンネル及びポンプ(以下のαサブユニット又は補助サブユニット:カリウムチャンネル、ナトリウムチャンネル、カルシウムチャンネル、塩素チャンネル、延伸で活性化されたカチオンチャンネル、HCNチャンネル、ナトリウム−カルシウム交換体、ナトリウム−水素交換体、ナトリウム−カリウムATPアーゼ、筋小胞体カルシウムATPアーゼ)、細胞レセプター及び細胞内シグナル経路(α又はβ−アドレナリンレセプター、コリンレセプター、アデノシンレセプター、抑制性Gタンパク質αサブユニット、促進性Gタンパク質αサブユニット、Gβγサブユニット)、又はこれらのタンパク質の発現、プロセッシング又は機能プロセッシングを含む。
【0096】
上で論じたように、変性細胞は、また、細胞又は患者のペースメーカー活性を誘導又は変調させるために投与される。変性細胞の供給源は、胚性骨髄細胞のような分化した(自然に又は駆動された)幹細胞から発生した心筋細胞である。ペースメーカー機能を表す幹細胞由来心筋細胞は、標的心臓組織にカテーテル又は注射によって移植される。幹細胞由来心筋細胞を産生するのに適した方法は、米国公開特許出願US2001/0024824A1及び米国公開特許出願US2002/0022259A1に開示されている。
【0097】
同様に、未変性の心筋細胞は、先に述べたように、エクスビボにて、所望のペースメーカーを提供するようにポリヌクレオチドの発現で形質転換され、患者の標的心臓組織に、例えばカテーテル又は注射によって移植される。好適には、未変性の心筋細胞は、変性(例えば、本明細書で開示したようにポリヌクレオチド発現系で形質転換される)及び再投与後に、これら細胞の移送を容易にするために、治療を受ける患者から採収される。
【0098】
変性細胞はレシピエント、即ち、細胞が投与される患者から採収される。例えば、骨髄幹細胞は患者から採収され、ペースメーカー機能を有する心筋細胞に分化される。心臓の細胞、例えば洞結節細胞は、例えばカテーテル又はその他のプロトコールを経て除去されて患者から採収され、例えば本明細書に開示される所望のポリヌクレオチド送達システムの挿入により、変性され、そして患者に投与される。上で論じたように、本明細書で示される如く、投与された細胞は、好ましくは、投与前に幾つかの点で、例えば分化幹細胞又はポリヌクレオチド発現系での形質転換のように変性される;本明細書でいう、「変性され投与された細胞」は、幾つかの点に関して変性されていない単に移植されただけの心臓の細胞を包含しない。
【0099】
本発明による治療のための好ましい対象は、飼い慣らされた動物、例えば、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ等;齧歯類、例えば、ラット、ハムスター及びマウス;ウサギ;及び霊長類、例えば、サル、チンパンジー等である。より好ましい哺乳類は、ヒトの患者、好ましくは、例えば本明細書に開示されているような、心臓のリズム障害を有する又は有する疑いがある患者である。
【0100】
治療のための好ましい対象は、本明細書に開示されたような、以下の疾病又は障害に罹っている、又は感受性を有するもの:例えば、心臓に関連する立ちくらみ、特にストークス・アダム立ちくらみ;洞結節機能の異常、例えば、持続性の洞徐脈、ウェンケバッハS−Aとして現れる洞房(S−A)ブロック、完全S−Aブロック又は洞停止、及び高度房室ブロック;或いは徐脈頻脈症候群又はその他の徐脈関連状態、を含む。
【0101】
核酸の有効量は、特定の発現タンパク質、特定の標的となる心臓不整脈、患者及びその臨床症状、体重、年齢、性別等の関数である。
【0102】
より特異的な本発明の効果は、局所効果を伝達する能力(集中的標的遺伝子送達による)、可逆性効果(限定はされないが、野生型又は変異イオンチャンネル遺伝子を発現するテトラサイクリン誘導可能プロモータを使用するアデノ随伴ウイルスベクターを含む、公知又は新世代のベクターを包含する、誘導し得るベクターの使用による)、等級化(上記したように誘導し得るベクターの使用によるが、ここで等級化は誘導薬剤の投与量を滴定することにより達成される)、遺伝子構築物の同定に基づいた治療の特異性、遺伝子構築物の同定に基づいた内因性メカニズムによる治療作用を制御する能力(神経又はホルモン)、及び随伴する費用及び罹患率に沿った、電子ペースメーカー及びAICD類を含む埋め込み可能なハードウエアの排除を包含する。
【0103】
以下の非限定的実施例は本発明の例示である。本明細書に挙げた全ての資料は、参照することにより本明細書の一部として取り入れられている。
【実施例1】
【0104】
心室筋細胞の潜在的ペースメーカー活動に対するKir2チャンネルの阻害効果
[材料及び方法]
<優性ネガティブ効果>
K1発現に対するKir2.1AAAの優性ネガティブ効果は、Herskowitzのアプローチを使用して達成された。(例えば、Herskowitz, Nature 329, 219-22; (1987)を参照)GYGモチーフ、選択性及び孔機能に重要な役割を演じているカリウムチャンネルのH5領域における3つのアミノ酸を、Kir2.1において3つのアラニンに置換した。
【0105】
<ベクター>
増強した緑色蛍光タンパク質(EGFP、Clontech, Palo Alto, CA, USA)及びKir2.1AAAの両者をコードした、2シストロンアデノウイルスベクターを、前記のようにして、アデノウイルスシャトルベクターpAdEGI(D. C. Johns, H. B. Nuss, E. Marban, J. Biol. Chem. 272, 31598-603, (1997))及びpAdC−DBEcR(U. C. Hoppe, et al., J. Clin. Invest. 105, 1077-84 (2000))を用いて創製した。ヒトKir2.1の全長コード配列(G. F. Tomaselli, Johns Hopkins Univ.から供給された)を、pAdEGIの複数のクローニング部位にクローニングしてpAdEGI−Kir2.1を生成した。優性ネガティブ変異GYG→AAAを部位特異的突然変異誘発によりKir2.1に導入し、ベクターpAdEGI−Kir2.1AAAを創製した。アデノウイルスベクターは、記載されているようにして、精製5ウイルスDNA及びシャトルベクターDNAのCre−lox組換えにより創製した(D. C. Johns et al., J. Neurosci. 19, 1691-7 (1999))。組換え産物は、プラーク精製し、拡張し、CsCl勾配で精製し、1ml当たり1010プラーク形成単位(PFU)のオーダーに濃縮した。
【0106】
<インビボ遺伝子送達>
心臓内注射は、外側開胸後、大人のモルモット(250〜300g)の左心室腔に注射によって達成された。大動脈及び肺動脈を先ず交差クランプし、30ゲージ針を頂端に挿入し、アデノウイルス溶液の左心室洞への注射を可能とした。アデノウイルス混合物総容積220μl[3x1010PFUのAdC−DBEcR及び2x1010PFUのAdEGI(対照群)又は3x1010PFUのAdC−DBEcR及び3x1010PFUのAdEGI−Kir2.1AAA(ノックアウト群)を含む]を注射した。クランプ前40〜60秒間閉塞した大動脈及び肺動脈を解除した。この手順で、閉鎖系に対して心臓がポンピングしている間、ウイルスが冠状動脈中を循環することを可能にし、導入した細胞の広範な分布をもたらした。閉胸後、動物に非ステロイドエクジソン作用薬、GS−E([N−メトキシ−2−エチルベンゾイル)−N’−(3,5−ジメチルベンゾイル)−N’−terブチルヒドラジン];Rohm and Haas Co., Spring House, Pennsylvania, USAより供与された)40mgをDMSO90μl及びゴマ油360μに溶解して、腹腔内注射した。
【0107】
<形質導入効果>
形質導入効果は、AdCMV−βgal(160μl、2x1010pfu/ml)をLV腔に注射後48時間の、顕微鏡切片の組織学的評価によって評価した。動物を殺処分した後、心臓を切除し、PBSで完全にリンスし、横断面で切断した。切片は、記載されているようにして、2%ホルムアルデヒド/0.2%グルタルアルデヒドで固定し、1.0mg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル− −D−ガラクトシド(X−gal)を含有するPBS中で染色した(J. K. Donahue et al., Nat. Med. 6, 1395-8 (2000))。切片はパラフィンに包埋し、5μm厚に切り出し、形質導入効果の目視評価のためにX−gal溶液で染色した(J. K. Donahue et al., Nat. Med. 6, 1395-8 (2000))。この遺伝子送達法により、およそ20%の心室筋細胞がLV壁を通過して形質導入が達成された。
【0108】
注射の60〜72時間後に、モルモット左心室筋細胞をLangendorff灌流を用いて単離し、コラゲナーゼを用いて消化した(R. Mitra et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 5340-4 (1986); U. C. Hoppe et al., Circ. Res. 84, 964-72 (1999))。解離は、一般的には、60〜70%の生存心筋細胞を与えた。キセノンアークランプを使用してGFP蛍光、488/530nm(励起/照射)、を観察した。形質導入筋細胞は、エピフルオレッセンスを用いた緑蛍光によって同定された。LV腔注射アプローチを使用した形質導入及び生存単離筋細胞の収率(−20%)は、直接心筋内注射よりも高かった(U. C. Hoppe et al., J. Clin. Invest. 105, 1077-84 (2000); U. C. Hoppe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 5335-40 (2001))。
【0109】
細胞の記録は、Axopatch200B増幅器(Axon Instruments, Foster City, California, USA)で全細胞パッチクランプ法(24)、サンプリング10kHz(電流用)又は2kHz(電圧記録用)及びフィルタリング2kHzを使用して実施された。内部記録溶液で満たしたとき、ピペットは先端抵抗2〜4MΩを有した。細胞は、140mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl、10mM グルコース、1mM MgCl、10mM HEPESを含有する生理食塩水で活性を維持した。pHはNaOHで7.4に調整した。IK1記録には、CaClを100pMに減じ、CdCl(200μM)をIcaLをブロックするために加えた、そしてINaを、保持電圧−40mVを使用して、定常状態に不活性化した。バリウム(Ba2+)感受性電流としてIK1を得るため、Ba2+(500μM)添加後残存するバックグランド電流を、記録から減じた。ピペット溶液は、130mM K−グルタミン酸、19mM KCl、10mM NaHepes、2mM EGTA、5mM Mg−ATP、1mM MgCl;から成り、pHはKOHで7.2に調整された。データは、測定された液体接合部電圧(junction potential)−12mVを補正しなかった。活動電位は、0.33Hzにて簡易脱分極電流パルス(2ms、500〜800pA、110%閾値)によって開始された。活動電位持続時間(APD)は、オーバーシュートから50%又は90%再分極までの時間(それぞれ、APD50、APD90)として測定された。ICa,L記録用に、細胞は、140mM N−メチル−D−グルカニン、5mM CsCl、2mM CaCl、10mM グルコース、0.5mM MgCl、10mM HEPESを含有する生理食塩水で活性を維持した;pHはHClで7.4に調整された。ピペット溶液は、125mM CsCl、20mM TEA−Cl、2mM EGTA、4mM Mg−ATP、10mM HEPESから成り、pHはCsOHで7.3に調整された。報告したデータは、平均値±S.E.M.であり、P<0.05(t−テスト)で統計学的有意差を示した。
【0110】
全ての記録は、生理的温度(37℃)及びインビボ形質導入の60〜72時間後に行われた。アデノウイルス感染自体は、モルモット心筋細胞の電気生理を変性しないと仮定し(U. C. Hoppe et al., J. Clin. Inest. 105, 1077-84 (2000))、AdEGI−Kir2.1AAAを注射した動物(APD50=233.8±10.5ms、n=6)から単離された非形質導入(緑でない)左心室筋細胞、及びAdEGIを注射した心臓(APD50=247.6±10.3ms、n=24、P=0.52)から単離された緑細胞で行われたパッチクランプ法実験を、対照として使用した。
【0111】
<心電図>
表面ECGは、手術後直ぐ、及び既報のように心筋内注射の72時間後に記録された(U. C. Hoppe et al., J. Clin. Invest. 105, 1077-84 (2000); U. C. Hoppe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 5335-40 (2001))。モルモットを、イソフルランで鎮静し、針電極を皮下に設置した。電極の位置は、最大増幅記録を得るため至適化され、正確なQT間隔が得られた。ECGは、標準リード11、及び改良リードI及びIIIで同時に記録された。針電極の位置を、記録後モルモットの皮膚上にマークし、72時間後の位置を正確に同じにした。速度補正QT間隔(QTc)を計算した(E. Hayes et al., J. Pharmacol. Toxicol. Methods 32, 201-7 (1994))。
【0112】
<結果>
アラニンによるKir2.1の孔領域における3つの臨界残基の置換(GYG144−146→AAA、又はKir2.1AAA)は、野生型Kir2.1と共発現するとき、電流束を抑制する優性ネガティブ構築体を創製する。卵母細胞において、Kir2.1AAARNA単独の注射は電流を生じないが、野生型Kir2.1RNAと一緒に注射すると、IK1の抑制を生じる。4量体Kirチャンネル内への単一変異体サブユニットの取り込みは、ノックアウト機能には充分である。Kv1.2電流はKir2.1AAARNAと一緒に注射することによって減少しないので、優性ネガティブ効果は、カリウムチャンネルのKirファミリーに特異的である。Kir2.1AAAが、Kir2.1を安定的に発現している哺乳動物細胞株(HEK)に、一過性に発現したとき、優性ネガティブ構築体はIK1を約70%減少した。
【0113】
Kir2.1AAAを2シストロン・アデノウイルス・ベクターにパッケージし、モルモット左心室腔に注射した。この送達方法は、心室筋細胞の〜20%の形質導入を達成するのに充分であった(図1)。Kir2.1AAAでインビボ形質導入して3〜4日後に単離された筋細胞は、IK1の抑制を示した(図2B、C)が、カルシウム電流は変化せずに残存した(図2E、F)。
対照の心室筋細胞は自発活動を示さなかったが、脱分極外部刺激を与えると単一活動電位を発射した(図3A)。対照的に、Kir2.1AAA筋細胞は二つの表現型:即ち、外部刺激によって持続活動電位が惹起される安定静止電位(図3C、「長QT表現型」)、又は自発活動(図3E)のいずれかを示した。活動電位の持続は、心電図でのQT間隔を長くすることが期待される(長QT表現型)が、これに対し、自発活動は真性のペースメーカー細胞のそれに似ている;最大拡張期電位は、段階的「フェーズ4」脱分極及びゆるやかなとり込みによって開始される、反復する、通常のそして絶え間ない電気活動と共に、相対的に脱分極される(表1)。異なる表現型は、IK1密度の3つの別個の範囲に対応する(図2B、D、F、G)。それ故、Kir2.1AAA形質導入筋細胞は、特定の細胞にどれくらいのIK1抑制が起こったかに依存して、長QT表現型又はペースメーカー表現型のいずれかを示す。IK1が0.4pA/pF以下(−50mVで)に抑制された筋細胞は、全て自発APを表し、IK1が0.4pA/pFIK1以上の筋細胞は、安定した休止膜電位及び持続的活動電位を有した。
【0114】
ペースメーカー表現型の細胞は、Naチャンネルブロッカー、テトロドトキシンによって影響されなかった(図4A、B)、しかし、カルシウムチャンネルブロッカーに曝露している間、自発発射は止まった(カドミウム、図4C、D;ニフェジピン、E、F)。それ故、自発活動電位が基礎にある興奮電流は、真性のペースメーカー細胞での場合のように、カルシウムチャンネルによって実行される。同様に、Kir2.1AAA自発表現型細胞は、丁度、結節筋細胞が行うようにβアドレナリン刺激に応答し、心拍数を加速するペーシング速度を増加する(図5)。
【0115】
表2に、対照、長QT表現型Kir2.1AAA、及びペースメーカー表現型Kir2.1AAAミオサイトにおける活動電位の物性値を示す。全ての対照(n=30)及び長QT表現型Kir2.1AAA細胞(Kir2.1AAA細胞22の中の7)において、電気刺激に応答して、安定な活動電位が誘発された。ペースメーカー表現型Kir2.1AAA細胞(Kir2.1AAA細胞22の中の15)は帰属刺激無しで自発活動電位を示した。
【0116】
【表2】

【0117】
表中のAPD50及びAPD90は、APが、50%又は90%再分極にオーバーシュートする活動電位持続時間を測定したものである。
【0118】
心電図は二つの表現型を表す。図6Aは、QT間隔の持続を示す(図6A)。それにも拘わらず、動物の40%は、自発的心室病巣を示唆する変化した心臓リズムを示した(図6B)。心室起源の期外収縮は、その広い幅によって区別することができ、そして生理的洞ペースメーカーの脈拍とは無関係に、脈拍が「進行し続ける」のが見られる。正常な洞リズムにおいては、全てのP波の後は、QRS複合が続く。しかしながら、もし誘導されたペースメーカーの病巣から異所性の脈拍が生じたら、心臓全体を心室から先導することができる。実際、Kir2.1AAAで形質導入して72時間後動物5頭の内2頭において、心室自動能が発現していた。これら2頭の動物では、P波は、QRS複合群に続いていなかった;P波とQRS複合群は、独立したリズムを保持していた。RR間隔は、PP間隔より短く、心室由来のリズム(自動能のために加速された心室リズム)を表わしていた。インビボでの二つの表現型は、独特な長QT及びペースメーカー細胞性表現型によく一致した。
優性ネガティブの結果は、本明細書において使用された方法の永続性及び特異性を明らかにしている。これらの結果は、Kir2チャンネルの特異的抑制が、心室筋細胞におけるペースメーカー活動を解放するのに充分であることを明らかにしている。これらの結果は、また、ペーシングに対する重要な因子は、特定の遺伝子の存在よりも、むしろ、単に強く分極したIK1の不存在であることを明らかにしている(そのような遺伝子は、真性のペースメーカー細胞における重要な変調的役割を演じているのであろうが)。
【実施例2】
【0119】
HCN1チャンネルを非機能性にした三重変異GYG365−367AAA
<分子生物学及び異種性発現>
mHCN1及びmHCN2をpGH発現ベクターにサブクローニングした。(B. Santoro, et al., Cell, 93:717-29 (1998))。重複した突然変異プライマーにより、部位特異的突然変異誘発をPCRを用いて実施した。全ての構築について、所望の突然変異が存在することを確かめるために配列決定を行った。cRNAを、HCN1及びHCN2チャンネルのそれぞれに対してT7RNAポリメラーゼ(Promega, Madison, WI)を用いて、Nhel−及びSphl−直線化DNAから転写した。チャンネル構築物は異種性に発現し、そしてツメガエルの卵母細胞で試験した。簡潔に記載すると、IV期からVI期の卵母細胞を1%トリカイン(即ち3−アミノ安息香酸エチルエステル)中に液浸することにより麻酔した雌カエルから外科的に分離し、次いで、88mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl、及び5mM HEPES(NaOHでpH7.6に調整)を含有するOR−2中で、2mg/mlコラゲナーゼで、30〜60分消化した。単離した卵母細胞は、示したように、cRNA(1ng/nl)を注射し、96mM NaCl、2mM KCl、1.8mM CaCl、1mM MgCl、及び5mM HEPES(pH7.6に調整)、50μg/mlゲンタマイシン、5mM ピルビン酸及び0.5mM テオフィリンを補足、を含むND96溶液中に実験前1〜4日貯蔵した。10〜25ng/細胞が発現される電流の幅に直線的に比例する範囲に相当するのであるが、1細胞当たり50〜100ngの総cRNAの注射で、最大発現を達成するためには充分であることが見出された。
【0120】
<電気生理>
2電極の電圧固定法の記録を室温(23〜25℃)で、WarnerOC−725C増幅器(Hamden, CT)を用いて実施した。寒天を詰めた電極(TW120F−6;World Precision Instruments)を、SutterP−87水平引き手で引き、3MのKClを充填し、最終先端抵抗2〜4Maを有していた。記録槽溶液は、96mM KCl、2mM NaCl、10mM HEPES、及び2mM MgCl、(KOHでpH7.5に調整)を含んでいた。電流は10kHzでディジタル化し、1〜2kHzで低域フィルターした(−3dB)。電流記録の入手及び解析は、特注のソフトウエアを用いて行った。
【0121】
<実験プロトコール及びデータ解析>
定常状態の電流・電圧(I−V)の関係は、保持電位−30mVから10mVずつの増分で、−150から0mVの範囲に亘る3秒パルスの最後に測定したHCN1電流をプロットすることによって定量された。HCNチャンネル活性化の電圧依存性は、記録された最大末尾電流(tail current)に標準化した先行する3秒テストパルスの関数として、−140mVにパルス化した後、直ちに測定した末尾電流をプロットすることによって評価した。データは、非線形最小二乗法でMarquardt−Levenbergアルゴリズムを用いて、Bolzman関数に当てはめた:
m = 1/{1+exp[(Vt−1/2)/k]}
ここで、Vは試験電位、V1/2は関係の中点、及びk=RT/zFは傾斜係数である。
【0122】
反転電位(Erev)に関しては、3秒プレパルスを−140(図11B参照)又は20mVのいずれかで先行し、−100から+40mVまでの範囲の試験電圧の群(family)に進めた後、直ちに末尾電流を記録した。二つのプレパルス電位から得た末尾電流の差を試験電位に対しプロットし、線形回帰に合わせてErevを得た。電流動態に関しては、巨視的電流及び末尾電流を単一指数関数にそれぞれ合わせて、活性化(τact)及び不活性化(τdeact)に対する時定数を評価した。
【0123】
データは、平均±SEMで示す。統計的有意差は、Studentの不対t−検定を用いて決定し、p<0.05で有意水準を表した。
【0124】
チャンネル機能における三重HCN1変異体GYG365−367AAA(HCN1−AAA)の効果を、個々に発現するWT及び変異体チャンネル構築物により評価した。図8は、WTHCN1cRNAを注射した卵母細胞の過分極が、電位−40mV以下に達して時間依存性内向き電流を引き出し、それが〜500ms後に定常状態電流幅に達したことを示す。電流は、漸進性の過分極を有する幅で増加した。対照的に、注射しない卵母細胞及びHCN1AAAを注射した卵母細胞は、測定し得る電流を生じなかった、このことは三重アラニン置換は、HCN1を完全に非機能性にしたことを示している。
【0125】
<HCN1AAAが優性ネガティブ様式でWTHCN1の正常活性を抑制する>
前の研究では、正常及び欠失サブユニットを多重結合の複合体を形成するように共組み立てするとき、優性ネガティブ様式でチャンネル活性を無能化することができる多くのイオンチャンネル変異体を同定した。R. Li et al., J. Physiol, 533:127-33 (2001); J. Seharaseyon, J. Mol. Cell Cardiol. 32:1923-30 (2000); MT Perez-Garcia, J. Neurosci., 20: 5689-95 (2000); J. Seharseyon et al., J. Biol. Chem., 75: 17561-5 (2000); UC Hoppe et al., J. Clin. Invest. 105: 1077-84 (2000); MJ Lalli et al., Pflugers Arch. 436: 957-61 (1998); DC John et al., J. Biol. Chem. 272: 31598-603 (1997). HCN1−AAAは、WTHCN1サブユニットと結合するとき、優性ネガティブ効果を発揮することが予期された。図9は、50nlWTHCN1及び50nlHCN1−AAAcRNA(濃度=1ng/nl)と共注射された卵母細胞は、同じインキュベーション時間の後−149mVで測定すると、WTHCN1cRNAのみ50nl注射した細胞よりも電流が85.2±1.9%(n=8)少なく発現されることを示している(p<0.01;図9B)。そのような定量的相異は、それらの対応する定常状態電流−電圧関係により示されたように、HCN1チャンネルの殆どの活動範囲を通して存在していた(図9C)。これらの観察は、HCN1−AAAが、同じ数の機能性サブユニットの存在にも拘わらず、優性ネガティブ様式でWTHCN1チャンネルの正常活動を抑制することができることを明らかにしている(以前のKチャンネルの研究において普通であったのと等しいRNA安定性と翻訳効率を仮定した場合、Hille B. Ion channels of Excitable Membranes, 3rd Ed., Sunderland, Massachusetts, USA. Sinauer Associates, Inc. 2001; R. MacKinnon Nature, 1991; 350:232-5)。対照的に、50nlWTHCN1cRNAと等量のdHOの共注射は、50nlWTHCN1単独の注射と差がない大きさの電流が得られた(p>0.05)。このことは、HCN1−AAAで観察された優性ネガティブ抑制効果は、機械感受性効果のような非特異的機構によるものではないことを示唆している。本発明者等は、また、注射される総cRNAを一定に保ちつつ(25ngを発現の飽和を防止するために使用した)WTHCN1:HCN1−AAA及びWTHCN2:HCN1−AAAの比率を変化した効果を研究した。優性ネガティブ機構から予測されたように、電流抑制はHCN1−AAAの増加に比例して増加した(WTHCN1:HCN1−AAAがそれぞれ、4:1、3:1、2:1、1:1及び1:2の比率に対して、55.2±3.2、68.3±4.3、78.7±1.6、91.7±0.8、97.9±0.2%の電流減少が見られた;図10)。
【0126】
<優性ネガティブ構築体HCN1−AAA及びWTHCN1の共発現は、正常通門及び透過性を変更しなかった>
電流振幅に対する優性ネガティブ抑制効果に加えて、通門及び透過性に対するHCN1−AAAとWTHCN1の共発現の効果を調べた。図11Aは、WTHCN1単独の定常状態活動曲線から誘導された中点及び傾斜係数(V1/2=−76.7±0.8mV;k=13.3±0.6mV;n=15)及び、HCN1−AAAで抑制後(比率=1:1、V1/2=−77.0±1.7mV;k=12.3±1.0mV;n=12)のそれらの両者は同じである(p>0.05)ことを示している。末尾電流−電圧関係も、また、全細胞電流はHCN1−AAAによって抑制されるが、反転電位は変化しない(WTHCN1単独=−4.5±1.4mV、n=8;WT+AAA=−5.25±0.8mV、n=5;p>0.05;図11B、C)ことを示唆している。同様に、電流活性化(τact)及び不活化(τdeact)時定数(その分布は、対応する定常状態活性化曲線から誘導されたのと比較して中点を有するベル型であった)も、また、研究した電圧範囲全体に亘ってHCN1−AAA抑制後不変であった(p>0.05;図11D)。本発明者等の観察では、非抑制電流は正常通門及び透過性の表現型を表したことを示唆している。
【0127】
<HCN1AAAは、通門及び透過性を変えずにWTHCN2電流を抑制した>
もし異なったHCNイソフォームがヘテロメリックチャンネル複合体(heteromeric channel complexes)を形成するように共組み立てすることができれば、HCN1−AAAも、また、本発明者等のWTHCN1での観察に類似した優性ネガティブ様式において、WTHCN2の活性を抑制する筈である。図12は、これがその場合であることを示している。50nlWTHCN2及び50nlHCN1−AAAcRNAを共注射した卵母細胞から記録した電流は、50nlWTHCN2単独又は50nlWTHCN2+50nldHOを、同じインキュベーション時間の後に注射した卵母細胞において発現された電流より有意に小さかった(図12A−C)。事実、HCN1−AAAによる抑制の程度は、研究した全ての他の比率について、WTHCN1及びHCN2の両者に対して類似していた(図10;注射した総cRNA=25ng)。これらを併せて考えると、これらの結果は、二つのアイソマーが、等しい効率で共組立てすることができたことを示唆している。HCN1に類似して、非抑制HCN2電流の定常状態活性化パラメーター、反転電位、及び通門動態は、HCN1−AAA共発現によって変化しなかった(p>0.05;図12D−F)。
【0128】
<遺伝子工学処理したHCN1チャンネルは、陽性及び陰性方向に移動したチャンネル活性を表す>
タンパク質工学によってHCNチャンネル通門性質の変調を行った。図13A及びBは、荷電中和置換したE235Aは、定常状態チャンネル活性化において有意な脱分極移動(V1/2=−59.2±1.5mV;n=7;p<0.05)及び傾斜係数における有意でない変化(k=12.3±0.9mV、n=7;p>0.05)を生じた。残基235の静電的役割と整合して、荷電復帰突然変異(charge- reversed mutation)E235Rは、より陽性側に定常状態活動曲線を移動した(56.4±0.5mV、n=3;p<0.05)。傾斜係数(7.9±0.8mV、n=3;p>0.05)もP0,min(17.0%±1.9%、n=3;p>0.05)もE235R(p>0.05;図13A及びC)により影響されなかった。本発明者等は、次に、位置253におけるS4セリン変異体が、複数の置換によってHCN1チャンネルの特色ある活性化プロフィールの基礎になっているのかどうかを調べた(図8)。S253をアラニン(即ちS253A)で置換すると、活性化及び不活性化の両者を遅くするが、定常状態活性化関係及び通門動態の電圧依存性において、平行した過分極移動を生じた(図13D)。しかしながら、S253Aは、P0,minを変えなかった。S253K及びS253Eの反対の荷電にも拘わらず、両置換体は、定常状態I−V関係を同じ過分極方向に移動させた。これらを総合すると、このことは、HCNチャンネル活性の活性化閾値(図13)及び内因的に発現された電流幅(図8〜12)が、変調し得ることを示している。
【0129】
本発明は、好ましい実施態様に関して詳細に記載されている。しかしながら、当業者が本開示を考察して、本発明の精神及び範囲内で、変形及び改良を行い得ることは認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】遺伝子転移効力の評価。AdCMV−galをLV腔へ注射して48時間後の左心室(LV)の顕微鏡切片のX−gal染色を形質導入効力の評価に使用した。形質導入細胞(青に染色)はLV壁を通して観察した。この遺伝子送達法は、明らかな細胞損傷なしに心室筋細胞の20%の形質導入を達成した。
【図2−1】Ik1抑制の特異性。(A、B、C)Ik1の平均電流密度は、対照細胞に比較して、Kir2.1AAA形質導入細胞(n=9)において有意に減少した(n=7、P<0.0001)。(D、E、F)更に、この結果は、主に変調する機能性Kir2.1チャンネル数の特異的効果の故に、L型カルシウム電流が、非形質導入細胞(−4.5±0.2pA/pF、n=6)に比べて、Kir2.1−AAA形質導入心筋(−4.2±0.9pA/pF、n=4)においては変えられなかったことを示す。
【図2−2】Ik1抑制の特異性。(A、B、C)Ik1の平均電流密度は、対照細胞に比較して、Kir2.1AAA形質導入細胞(n=9)において有意に減少した(n=7、P<0.0001)。(D、E、F)更に、この結果は、主に変調する機能性Kir2.1チャンネル数の特異的効果の故に、L型カルシウム電流が、非形質導入細胞(−4.5±0.2pA/pF、n=6)に比べて、Kir2.1−AAA形質導入心筋(−4.2±0.9pA/pF、n=4)においては変えられなかったことを示す。
【図3−1】活動電位表現型はIk1密度によって決定される。(A)安定APが、強いIk1(B、−50mVで記録)で対照心室筋細胞における脱分極した外部刺激により誘発された。中程度に抑制されたIk1(D)を有するKir2.1AAA形質導入筋細胞、長QT表現型を有するAPが誘発された。自発AP(E)が、著しく抑制されたIk1密度(F)を有するKir2.1AAA細胞において観察された。3つの別個のIk1密度(G)の範囲が認められた。Ik1が0.4pA/pF以下に抑制された筋細胞は、ペースメーカー表現型を示した。
【図3−2】活動電位表現型はIk1密度によって決定される。(A)安定APが、強いIk1(B、−50mVで記録)で対照心室筋細胞における脱分極した外部刺激により誘発された。中程度に抑制されたIk1(D)を有するKir2.1AAA形質導入筋細胞、長QT表現型を有するAPが誘発された。自発AP(E)が、著しく抑制されたIk1密度(F)を有するKir2.1AAA細胞において観察された。3つの別個のIk1密度(G)の範囲が認められた。Ik1が0.4pA/pF以下に抑制された筋細胞は、ペースメーカー表現型を示した。
【図3−3】活動電位表現型はIk1密度によって決定される。(A)安定APが、強いIk1(B、−50mVで記録)で対照心室筋細胞における脱分極した外部刺激により誘発された。中程度に抑制されたIk1(D)を有するKir2.1AAA形質導入筋細胞、長QT表現型を有するAPが誘発された。自発AP(E)が、著しく抑制されたIk1密度(F)を有するKir2.1AAA細胞において観察された。3つの別個のIk1密度(G)の範囲が認められた。Ik1が0.4pA/pF以下に抑制された筋細胞は、ペースメーカー表現型を示した。
【図3−4】活動電位表現型はIk1密度によって決定される。(A)安定APが、強いIk1(B、−50mVで記録)で対照心室筋細胞における脱分極した外部刺激により誘発された。中程度に抑制されたIk1(D)を有するKir2.1AAA形質導入筋細胞、長QT表現型を有するAPが誘発された。自発AP(E)が、著しく抑制されたIk1密度(F)を有するKir2.1AAA細胞において観察された。3つの別個のIk1密度(G)の範囲が認められた。Ik1が0.4pA/pF以下に抑制された筋細胞は、ペースメーカー表現型を示した。
【図4−1】カルシウム電流は、自発APの基礎にある興奮電流である。ペースメーカー表現型を有するKir2.1AAA形質導入細胞は、Naチャンネルブロッカー、テトロドトキシンによって影響されなかった(10μM、A、B)が、自発発射は、カルシウムチャンネルブロッカーに曝露中は停止した(カドミウム200μM、C、D;ニフェジピン10μM、E、F)。
【図4−2】カルシウム電流は、自発APの基礎にある興奮電流である。ペースメーカー表現型を有するKir2.1AAA形質導入細胞は、Naチャンネルブロッカー、テトロドトキシンによって影響されなかった(10μM、A、B)が、自発発射は、カルシウムチャンネルブロッカーに曝露中は停止した(カドミウム200μM、C、D;ニフェジピン10μM、E、F)。
【図4−3】カルシウム電流は、自発APの基礎にある興奮電流である。ペースメーカー表現型を有するKir2.1AAA形質導入細胞は、Naチャンネルブロッカー、テトロドトキシンによって影響されなかった(10μM、A、B)が、自発発射は、カルシウムチャンネルブロッカーに曝露中は停止した(カドミウム200μM、C、D;ニフェジピン10μM、E、F)。
【図5】イソプレテレノール(1μM)の適用は、ペースメーカー活性を表す4つのKir2.1AAA形質導入細胞において、自発APの頻度を増加した(A、B)。平均周期長は、イソプレテレノール曝露中に、ベースラインでの435±27msから351±18ms(n=4)に減少した(P<0.01)(C)。
【図6】遺伝子送達前後の心電図。(A)動物5頭中3頭で、QT間隔が、Kir2.1AAAの遺伝子導入後72時間延長された。(B)動物5頭中2頭で、心室リズムが促進された。融合拍動であるVと記されたQRS群を除いて、P波(青A及び矢印)及び広いQRS群(赤V及び矢印)はそれら独自のリズムへ向かって進行した。この動物のベースラインECG記録は、正常な洞リズムであった(図示していないがパネルAに類似)。
【図7】HCNコード化ペースメーカーチャンネルの推定される膜貫通トポロジーを示す。中央のパネル:HCN1チャンネルの単量体サブユニットの6つの膜貫通セグメント(S1〜S6)を示す。GYGの印のモチーフのおよその所在位置を強調して示す。サイクリックヌクレオチド結合領域(CNBD)はC−末端領域にある。一番上のパネル:種々のHCNのS5−S6Pループ及び脱分極活性化Kチャンネルの上昇リムの配列比較。GYGトリプレット(強調した)は、稀な場合、例えばHERGKチャンネル(この中央の位置はチロシンの代わりに保存された変異フェニルアラニンによって占められている)を除いて、知られている全てのK選択的チャンネルで保存されている。一番下のパネル:HCNイソフォーム1−4のS3−S4リンカー及びS4のアミノ酸配列を、過分極活性化されたウニ精子チャンネル(SPH1)、植物Arabidopsis thaliana(KAT1)からクローニングされた過分極活性化Kチャンネル、及び脱分極活性化シェーカー(Shaker)及びHERGKチャンネルと比較したものである。HCNチャンネルのS4は、6番目の位置を除いて(ここでは、カチオン性残基の代わりに中性のセリンが見出される)二つの疎水性アミノ酸によって、互いに規則的に間隔をとった9アミノ酸を含有している。SPIHとKAT1チャンネルは、HCNチャンネルと比較してS4セグメントには一つの少ない塩基性残基を有しているが、S4を二つの部分に分けるセリンをここでも有している。このS4セリンは、Kvチャンネルには見られず、そしてそれは、HCN電圧検出モチーフを二つの領域に分割し、ユニークな過分極活性化HCNチャンネル開口の役割を持っていると仮定されている。
【図8−1】HCN1において、GYGトリプレットをアラニンで置換した(GYG365−367AAA)場合の、HCN1電流に対する効果を示す。A)WTHCN1及びHCN−AAAcRNAを注射した卵母細胞、又は、注射しない卵母細胞から記録された全細胞の電流の代表的な追跡。電流を取り出すために使われた電気生理のプロトコールは本文に示す。10mVの増分で、0から−150mVまでの範囲で、3秒の電気パルス群を、保持電位−30mVから卵母細胞に適用した。末尾電流は−140mVで記録した。過分極活性化時間依存性電流は、WTHCN1を注射した卵母細胞には明らかであるが、同じプロトコールを使用したHCN1−AAA注射細胞及び非注射細胞からは、測定し得る電流は見られなかった。B)WTHCN1−AAA及びHCN1−AAAを注射した(図で、それぞれ、実線の四角及び三角)、及び非注射(図で、白丸)の卵母細胞の定常状態での電流−電圧の関係。データは平均±SEMで示す。
【図8−2】HCN1において、GYGトリプレットをアラニンで置換した(GYG365−367AAA)場合の、HCN1電流に対する効果を示す。A)WTHCN1及びHCN−AAAcRNAを注射した卵母細胞、又は、注射しない卵母細胞から記録された全細胞の電流の代表的な追跡。電流を取り出すために使われた電気生理のプロトコールは本文に示す。10mVの増分で、0から−150mVまでの範囲で、3秒の電気パルス群を、保持電位−30mVから卵母細胞に適用した。末尾電流は−140mVで記録した。過分極活性化時間依存性電流は、WTHCN1を注射した卵母細胞には明らかであるが、同じプロトコールを使用したHCN1−AAA注射細胞及び非注射細胞からは、測定し得る電流は見られなかった。B)WTHCN1−AAA及びHCN1−AAAを注射した(図で、それぞれ、実線の四角及び三角)、及び非注射(図で、白丸)の卵母細胞の定常状態での電流−電圧の関係。データは平均±SEMで示す。
【図9−1】HCN1AAAは、優性ネガティブ様式でWTHCN1の正常活性を抑制する。A)50nlWTHCN1、50nlWTHCN1+50nldHO、及び50nlWTHCN1+50nlHCN1−AAAcRNA(濃度:1ng/nl)を注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。図8と同じ電圧プロトコールを使用した。WTHCN1とHCN1−AAAの共注射が、有意に正常チャンネル活性を抑制した。WTHCN1末尾電流(図において、四角で囲んである)は、D)で拡大して示してある。B)各群の平均電流を拡大して要約した棒グラフ。各群は:A)50nlWTHCN単独の保持電位に標準化した−30mVの保持電位から−140mVまで、3秒のパルスの最後に測定。p<0.01。C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。D)−140mVにおけるWTHCN1の末尾電流。単一指数関数にこれらの電流を合わせると、活性化に対する時間係数の推定が可能である(図11Dを参照)。
【図9−2】HCN1AAAは、優性ネガティブ様式でWTHCN1の正常活性を抑制する。A)50nlWTHCN1、50nlWTHCN1+50nldHO、及び50nlWTHCN1+50nlHCN1−AAAcRNA(濃度:1ng/nl)を注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。図8と同じ電圧プロトコールを使用した。WTHCN1とHCN1−AAAの共注射が、有意に正常チャンネル活性を抑制した。WTHCN1末尾電流(図において、四角で囲んである)は、D)で拡大して示してある。B)各群の平均電流を拡大して要約した棒グラフ。各群は:A)50nlWTHCN単独の保持電位に標準化した−30mVの保持電位から−140mVまで、3秒のパルスの最後に測定。p<0.01。C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。D)−140mVにおけるWTHCN1の末尾電流。単一指数関数にこれらの電流を合わせると、活性化に対する時間係数の推定が可能である(図11Dを参照)。
【図9−3】HCN1AAAは、優性ネガティブ様式でWTHCN1の正常活性を抑制する。A)50nlWTHCN1、50nlWTHCN1+50nldHO、及び50nlWTHCN1+50nlHCN1−AAAcRNA(濃度:1ng/nl)を注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。図8と同じ電圧プロトコールを使用した。WTHCN1とHCN1−AAAの共注射が、有意に正常チャンネル活性を抑制した。WTHCN1末尾電流(図において、四角で囲んである)は、D)で拡大して示してある。B)各群の平均電流を拡大して要約した棒グラフ。各群は:A)50nlWTHCN単独の保持電位に標準化した−30mVの保持電位から−140mVまで、3秒のパルスの最後に測定。p<0.01。C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。D)−140mVにおけるWTHCN1の末尾電流。単一指数関数にこれらの電流を合わせると、活性化に対する時間係数の推定が可能である(図11Dを参照)。
【図9−4】HCN1AAAは、優性ネガティブ様式でWTHCN1の正常活性を抑制する。A)50nlWTHCN1、50nlWTHCN1+50nldHO、及び50nlWTHCN1+50nlHCN1−AAAcRNA(濃度:1ng/nl)を注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。図8と同じ電圧プロトコールを使用した。WTHCN1とHCN1−AAAの共注射が、有意に正常チャンネル活性を抑制した。WTHCN1末尾電流(図において、四角で囲んである)は、D)で拡大して示してある。B)各群の平均電流を拡大して要約した棒グラフ。各群は:A)50nlWTHCN単独の保持電位に標準化した−30mVの保持電位から−140mVまで、3秒のパルスの最後に測定。p<0.01。C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。D)−140mVにおけるWTHCN1の末尾電流。単一指数関数にこれらの電流を合わせると、活性化に対する時間係数の推定が可能である(図11Dを参照)。
【図10】WTHCN1及び2に対する、WT:AAAの比率を変えた、HCN1−AAAの優性ネガティブ効果を示す。 HCN1−AAAによるWTHCN1及びHCN2の電流抑制を、注射したcRNAのWT:AAA比率に対してプロットした。HCN1及びHCN2の両者の抑制は、WT:AAA比の減少と共に増加した。破線は、指示したように、HCN単量体の二量体化、三量体化、四量体化、及び五量体化から統計的に予測される抑制−比関係を示す。データは、また、内因性HCNチャンネル活性が、本明細書に開示された、AAA構築体によって変調することができることを示している。
【図11−1】HCN1−AAAの優性ネガティブ抑制効果は、HCN1チャンネルの通門及び透過性を変えなかったことを示す。 A)WTHCN1単独、及びHCN1AAAによって抑制された後の、定常状態での活性化曲線(比=1:1)。末尾電流は、図9Aと同じプロトコールを使用し−140mVにパルスした後、直ちに測定し、記録された最大の末尾に対して標準化し、そして予め測定したプレパルス(prepulse)電位に対してプロットした。中点も傾斜係数も二つの群の間に差はなかった。
【図11−2】B)−140mVへの3秒のプレパルスの後に、10mVずつの漸増で−100から+40mVまでの段階的膜電位による末尾電流−電圧関係を得るために使用した電気生理プロトコール。1ng/nlWTHCN1cRNAの50nlを注射した卵母細胞から記録された末尾電流の代表的群(family)のみを示す。これらの電流の単一指数関数とあわせて、不活性化(τdeact)の時間係数を推定することが可能になる。
【図11−3】C)WTHCN1単独注射又はWTHCN1及びHCN1−AAA(比率=1:1)を共注射した卵母細胞から測定される、末尾電流−電圧関係。全細胞電流は、HCN1−AAAによって抑制されたが、反転電位は変化しなかった。
【図11−4】D)WTHCN1単独(黒塗り印)又はWTHCN1及びHCN1−AAA(白抜き印)の両者(1:1)の共注射によって誘導された電流のτact(四角)及びτdeact(丸)の要約。iの分布は、対応する定常状態活性化曲線から誘導された図と類似して、中点を有するベル型であった。発現された電流の通門動態は、HCN1−AAA注射によって変わらなかった。
【図12−1】HCN2チャンネルに対するHCN1−AAAの効果を示す。(A)50nlWTHCN2、50nlWTHCN2+50nldHO、及び50nlWTHCN2+50nlHCN1−AAAcRNAを注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。HCN1−AAAは、また、WTHCN2の活性を抑制した。(B)投与されたcRNAのWTHCN2:HCN1−AAA比に対してプロットされたHCN1−AAAによるWTHCN2の−140mVにおける電流抑制。(C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。単独で発現したWTHCN2及びHCN1−AAAとの共発現(比=1:1)の、定常状態活性化(D)、反転電位(E)、及び活性化及び不活性化動態(F)は同じであった(p>0.05)。
【図12−2】HCN2チャンネルに対するHCN1−AAAの効果を示す。(A)50nlWTHCN2、50nlWTHCN2+50nldHO、及び50nlWTHCN2+50nlHCN1−AAAcRNAを注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。HCN1−AAAは、また、WTHCN2の活性を抑制した。(B)投与されたcRNAのWTHCN2:HCN1−AAA比に対してプロットされたHCN1−AAAによるWTHCN2の−140mVにおける電流抑制。(C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。単独で発現したWTHCN2及びHCN1−AAAとの共発現(比=1:1)の、定常状態活性化(D)、反転電位(E)、及び活性化及び不活性化動態(F)は同じであった(p>0.05)。
【図12−3】HCN2チャンネルに対するHCN1−AAAの効果を示す。(A)50nlWTHCN2、50nlWTHCN2+50nldHO、及び50nlWTHCN2+50nlHCN1−AAAcRNAを注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。HCN1−AAAは、また、WTHCN2の活性を抑制した。(B)投与されたcRNAのWTHCN2:HCN1−AAA比に対してプロットされたHCN1−AAAによるWTHCN2の−140mVにおける電流抑制。(C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。単独で発現したWTHCN2及びHCN1−AAAとの共発現(比=1:1)の、定常状態活性化(D)、反転電位(E)、及び活性化及び不活性化動態(F)は同じであった(p>0.05)。
【図12−4】HCN2チャンネルに対するHCN1−AAAの効果を示す。(A)50nlWTHCN2、50nlWTHCN2+50nldHO、及び50nlWTHCN2+50nlHCN1−AAAcRNAを注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。HCN1−AAAは、また、WTHCN2の活性を抑制した。(B)投与されたcRNAのWTHCN2:HCN1−AAA比に対してプロットされたHCN1−AAAによるWTHCN2の−140mVにおける電流抑制。(C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。単独で発現したWTHCN2及びHCN1−AAAとの共発現(比=1:1)の、定常状態活性化(D)、反転電位(E)、及び活性化及び不活性化動態(F)は同じであった(p>0.05)。
【図12−5】HCN2チャンネルに対するHCN1−AAAの効果を示す。(A)50nlWTHCN2、50nlWTHCN2+50nldHO、及び50nlWTHCN2+50nlHCN1−AAAcRNAを注射した卵母細胞から記録した、代表的電流の追跡。HCN1−AAAは、また、WTHCN2の活性を抑制した。(B)投与されたcRNAのWTHCN2:HCN1−AAA比に対してプロットされたHCN1−AAAによるWTHCN2の−140mVにおける電流抑制。(C)A)からの同じ群の定常状態での電流−電圧関係。単独で発現したWTHCN2及びHCN1−AAAとの共発現(比=1:1)の、定常状態活性化(D)、反転電位(E)、及び活性化及び不活性化動態(F)は同じであった(p>0.05)。
【図13−1】HCN1活性化通門に対するE235突然変異体の効果を示す。A)図8における電圧プロトコールを使用して引き出した、E235A及びE235RHCN1チャンネルを通る電流の代表的記録。B)WT及びE235Aの定常状態活性化曲線。E235Aの活性化曲線は、プラス側に移動する。C)WT及びE235Rの定常状態活性化曲線。E235Rの活性化曲線は、E235Aよりもよりプラス側に移動する、このことは+1に比較して+2の実効電荷変化のより大きな効果を示す。D)WT、S253A、S253K及びS253Eチャンネルの定常状態活性化曲線。保存的なS−to−A突然変異体は、活性の移動を示すが、保持された傾斜係数及びP0,minを有する。これらの置換の反対の荷電にも拘わらず、S253K及びS253Eについての活性化曲線は、よりマイナス側に移動する。これらを総合すると、このことは、HCNチャンネル活性の活性閾値(図13)が、内因性発現電流幅と同じく変調できることを示している(図8−12)。
【図13−2】HCN1活性化通門に対するE235突然変異体の効果を示す。A)図8における電圧プロトコールを使用して引き出した、E235A及びE235RHCN1チャンネルを通る電流の代表的記録。B)WT及びE235Aの定常状態活性化曲線。E235Aの活性化曲線は、プラス側に移動する。C)WT及びE235Rの定常状態活性化曲線。E235Rの活性化曲線は、E235Aよりもよりプラス側に移動する、このことは+1に比較して+2の実効電荷変化のより大きな効果を示す。D)WT、S253A、S253K及びS253Eチャンネルの定常状態活性化曲線。保存的なS−to−A突然変異体は、活性の移動を示すが、保持された傾斜係数及びP0,minを有する。これらの置換の反対の荷電にも拘わらず、S253K及びS253Eについての活性化曲線は、よりマイナス側に移動する。これらを総合すると、このことは、HCNチャンネル活性の活性閾値(図13)が、内因性発現電流幅と同じく変調できることを示している(図8−12)。
【図13−3】HCN1活性化通門に対するE235突然変異体の効果を示す。A)図8における電圧プロトコールを使用して引き出した、E235A及びE235RHCN1チャンネルを通る電流の代表的記録。B)WT及びE235Aの定常状態活性化曲線。E235Aの活性化曲線は、プラス側に移動する。C)WT及びE235Rの定常状態活性化曲線。E235Rの活性化曲線は、E235Aよりもよりプラス側に移動する、このことは+1に比較して+2の実効電荷変化のより大きな効果を示す。D)WT、S253A、S253K及びS253Eチャンネルの定常状態活性化曲線。保存的なS−to−A突然変異体は、活性の移動を示すが、保持された傾斜係数及びP0,minを有する。これらの置換の反対の荷電にも拘わらず、S253K及びS253Eについての活性化曲線は、よりマイナス側に移動する。これらを総合すると、このことは、HCNチャンネル活性の活性閾値(図13)が、内因性発現電流幅と同じく変調できることを示している(図8−12)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓収縮機能又は心臓電気活動を調節させる方法であって、ポリヌクレオチド又は変性細胞を静止状態の心筋細胞に投与し、それによって投与後の心筋細胞が自発的な反復電気信号を発生する、ことを含んでなる該方法。
【請求項2】
投与後のポリヌクレオチドの発現が、細胞の電気信号出力の頻度において少なくとも約10パーセントの変化を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリヌクレオチドが優性ネガティブ構築体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
形質導入した心筋細胞が自発的、律動的な電気活動を生み出す、請求項1〜3の何れか一つに記載の方法。
【請求項5】
投与後のポリヌクレオチドの発現が、誘導し得るプロモーターによって駆動される、請求項1〜4の何れか一つに記載の方法。
【請求項6】
静止状態の心筋細胞が同定され、選択され、その後にポリヌクレオチドが投与される、請求項1〜5の何れか一つに記載の方法。
【請求項7】
心臓収縮機能を調節する方法であって、ポリヌクレオチド又は変性細胞を、不適切な頻度で電気信号を発生している心筋細胞に投与し、それによって、投与後の該心筋細胞が、投与前の細胞の電気信号頻度とは異なる、所望の増加又は減少した頻度で電気信号を発生する、ことを含んでなる該方法。
【請求項8】
投与後のポリヌクレオチドの発現が、細胞の電気信号出力の頻度において少なくとも約10パーセントの変化を提供するものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリヌクレオチドが優性ネガティブ構築体である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
投与後のポリヌクレオチドの発現が、誘導し得るプロモーターによって駆動される、請求項7〜9の何れか一つに記載の方法。
【請求項11】
変性細胞が幹細胞である、請求項1〜10の何れか一つに記載の方法。
【請求項12】
細胞が体細胞である、請求項1〜10の何れか一つに記載の方法。
【請求項13】
心筋細胞が同定され、電気信号の活動又は頻度に基づいて選択され、その後にポリヌクレオチドが投与される、請求項1〜12の何れか一つに記載の方法。
【請求項14】
望ましくない心臓収縮又は心臓電気活動に罹患した、又は、罹り易い哺乳類を治療する方法であって、ポリヌクレオチド又は変性細胞を含む組成物の有効量を哺乳類に投与し、投与によって哺乳類の心臓収縮活動又は心臓電気活動が調節される、ことを含んでなる該方法。
【請求項15】
組成物が、哺乳類の心臓細胞の電気信号出力の頻度において少なくとも約10パーセントの変化を提供するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、哺乳類のHCNチャンネルを変調させることができるものである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
投与される組成物がポリヌクレオチドを含んでなるものである、請求項14〜16の何れか一つに記載の方法。
【請求項18】
投与される組成物が優性ネガティブ構築体を含んでなるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
投与後のポリペプチドの発現が、誘導し得るプロモーターによって駆動される、請求項17〜19の何れか一つに記載の方法。
【請求項20】
組成物が変性細胞を含んでなるものである、請求項14〜16の何れか一つに記載の方法。
【請求項21】
哺乳類が埋め込みペースメーカーを有し、組成物の投与が、埋め込みペースメーカーと共同して心臓収縮回数を変調させる、請求項14〜20の何れか一つに記載の方法。
【請求項22】
望ましくない心臓収縮に罹患した哺乳類が同定され、選択され、そして組成物が投与される、請求項14〜21の何れか一つに記載の方法。
【請求項23】
心臓に関連する立ちくらみ、異常な洞結節機能、房室ブロック又は徐脈頻脈症候群に罹患した、又は、罹り易い哺乳類を治療する方法であって、ポリヌクレオチド又は変性細胞を含む組成物の有効量を哺乳類に投与し、投与によって哺乳類の心臓収縮活動が調節される、ことを含む該方法。
【請求項24】
組成物の投与が、哺乳類の心臓細胞の電気信号出力の頻度において少なくとも約10パーセントの変化を提供する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、哺乳類のHCNチャンネルを変調させることができるものである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
投与される組成物がポリヌクレオチドを含んでなるものである、請求項23〜25の何れか一つに記載の方法。
【請求項27】
投与される組成物が優性ネガティブ構築体を含んでなるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
投与後のポリペプチドの発現が、誘導し得るプロモーターによって駆動される、請求項25〜27の何れか一つに記載の方法。
【請求項29】
哺乳類が埋め込みペースメーカーを有し、組成物の投与が、埋め込みペースメーカーと共同して心臓収縮回数を変調させる、請求項23〜28の何れか一つに記載の方法。
【請求項30】
障害に罹患した哺乳類が同定され、選択され、そして組成物が投与される、請求項23〜29の何れか一つに記載の方法。
【請求項31】
Kチャンネルサブユニット、Naチャンネルサブユニット、Caチャンネルサブユニット、抑制性Gタンパク質サブユニット、コネキシン、又はこれらの機能性フラグメントをコードするポリヌクレオチドが哺乳類にさらに投与される、請求項23〜30の何れか一つに記載の方法。
【請求項32】
Caチャンネルサブユニットが、L型Caチャンネルからのβ1又はα2−δサブユニットである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
Naチャンネルサブユニットがβ1又はβ2である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
抑制性Gタンパク質サブユニットがGαi2又はその機能性フラグメントである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
投与ステップが組成物を心筋に注射することを含む、請求項1〜34の何れか一つに記載の方法。
【請求項36】
投与ステップが組成物を心臓血管系に潅流することを含む、請求項1〜35の何れか一つに記載の方法。
【請求項37】
哺乳類がヒトである、請求項1〜36の何れか一つに記載の方法。
【請求項38】
望ましくない心臓収縮又は心臓電気活動に罹患した、又は、罹り易い哺乳類を治療する方法であって、ポリヌクレオチド又は変性細胞を含む組成物の有効量を哺乳類に投与し、該哺乳類が埋め込み型電子ペースメーカーを装着していて、該投与が電子ペースメーカーによって提供される心臓収縮活動又は心臓電気活動を改変する、ことを含む方法。
【請求項39】
組成物が、埋め込まれたペースメーカーとは異なる部位の心臓組織に投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
優性ネガティブ構築体であるポリヌクレオチドが投与される、請求項38又は39に記載の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【公開番号】特開2009−148572(P2009−148572A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328114(P2008−328114)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2002−584777(P2002−584777)の分割
【原出願日】平成14年4月29日(2002.4.29)
【出願人】(503079387)ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】