説明

生物学的反応成分を有する潜伏反応性ポリマー

【課題】ポリマー主鎖、1以上のペンデント光反応成分、及び2以上のペンデント生物活性基を有する多2官能価試薬の提供。
【解決手段】試薬は活性化し生物材料を形成でき、または前もって形成された生物材料の表面と接触させ、活性化してコーティングを形成することができる。ペンデント生物活性基は、特異的分子または細胞のバルク材料またはコーティング済み表面への接着を促進することで機能する。生物活性基は、蛋白、ペプチド、炭水化物、核酸、及び分子または細胞の特異的かつ相補的部分に非共有結合できる他の分子を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
一つの観点では、本発明は生物材料表面を変化させ、または新規生物材料の製造に利用できる試薬に関する。別の観点では、本発明は所望の生物活性機能を提供する様に準備、または変更された表面を有する生物材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生物材料は長い間in vitro 及びin vivo 適用に利用するための生物医療用具の製造に利用されている。これら用具の製造には、セラミック、金属、ポリマーおよびその組合せを含む各種生物材料が使用できる。歴史的には、生物材料が不活性、低毒性、及び所望する用具に成形される能力等の基本特性の好適な組合せを提供する時、これら生物材料は生物医療用具製造への利用に好適であると考えられた(Hanker, J.S.及びB.L. Giammara, Science 242:885-892,1988 )。
【0003】
最近の更なる進歩の結果、例えば周囲の組織または液体とより良い界面の様な、各種所望の特性を有する表面を持った用具が提供できるようになった。例えば、用具表面への特定細胞または分子の結合を促進する方法が開発されている。例えば、用具表面に各種分子または細胞を引きつけ、そして/または結合することができる生物活性基を提供することができる。この様な生物活性基の例には、抗体へ結合する場合の抗原、細胞表面受容体に結合する場合のリガンド、及び酵素に結合する場合の酵素基質が含まれる。
【0004】
これら生物活性基は、様々な方法で生物材料の表面に提供されている。方法の一つでは、製造後生物材料それ自体が所望の生物活性基を用具表面に提示する分子より製造することができる。しかし、所望の生物活性基は通常疎水性であり、そして大部分の金属、または疎水性の高分子生物材料に、これら生物材料の構造の健全性を破壊することなく有効濃度で取り込ませることはできない。
別の方法には、例えば医療用具に成形した後、その生物材料表面に生物活性基を付加する方法がある。このような生物活性基は往々にして吸着により付加できる。しかし一般に吸着で付加された基は、高レベルあるいは長時間表面に保持できない。
【0005】
表面上へのこれら生物活性基の保持は、これら基を表面に共有結合することで改善できる。例えば、米国特許第4,722,906 号、第4,979,959 号、第4,973,493号及び第5,263,992 号は光活性基及び化学結合成分を介して生物材料表面に共有結合された生体適合作用物質を有する装置に関する。米国特許第5,258,041 号及び第5,217,492 号は、長鎖型化学スペーサーを利用した生体分子の表面への結合に関する。米国特許第5,002,582 号及び第5,263,992 号は、光反応成分を介して所望の特性を提供する高分子成分が表面に共有結合されたポリマー表面の調整と利用に関する。具体的には、ポリマー自体が所望の特性を有しており、好適な実施態様では他の(例えば生物活性な)基を実質的に有していない。
【0006】
さらに光化学を利用し、生物医療用具の表面を変更、例えば人工血管をコーティングする例もある(Kito,Hら、ASAIO Journal 39:M506-M511, 1993. 参照。及びClapper,D.L.ら、Trans.Soc.Biomat, 16:42,1993参照)。
CholskisとSeftonはポリビニルアルコール(PVA )主鎖及びヘパリン生物反応基を有するポリマーを合成した。該ポリマーは非潜伏化学反応によりポリエチレン製チューブに結合され、得られた表面は一連のin vitro及びin vivo アッセイにより血栓抵抗性が評価された。いずれの理由がにより、CholakisとSeftonにより調整された高分子中のヘパリンは有効な活性を提供しなかった(Cholarkis,C.H とM.V.Sefton, J. Biomed. Mater. Res. 23:339-415,1989. Cholakis, C.H.,J.Biomed.Mater.Res. 23:417-441, 1989)。最終的にKinoshita らは、後にポリアクリル酸主鎖上のカルボキシル成分に結合されるヘパリン分子を持った多孔性ポリエチレン上に、ポリアクリル酸主鎖を生じせしめる反応化学の利用を開示している(Kinoshita,Y ら、Biomaterials 14:209-215,1993参照)。
【0007】
一般に、上記の状態で得られるコーティングは、短鎖スペーサー法により生物材料表面に生物活性基を共有結合させる形で提供される。この方法は、短鎖スペーサーの利用が好ましく、生物活性基の大きさがスペーサー自体の大きさに比して極めて大きいコラーゲンやフィブロネクチンといった高分子量生物活性基では良好に作用する。
しかし上記の方法は、Kinoshita らの例を除き低分子量生物活性基のコーティングには最適ではない。Kinoshita は、収率および再現性に大きく影響する面倒な多段階工程ではあるが、低分子量分子がコーティングできることを示した。
【0008】
低分子量の生物活性基は通常より大きな分子(例えばフィブロネクチン由来の細胞結合ペプチド)に由来する小部域の形、または通常自由に拡散してその効果を生ずる小分子(例えば抗体または成長因子)として提供される。短いスペーサーはこれら小生物活性基の運動の自由を過度に制限することはないが、次に固定されるとその活性が障害されることが示されている。生物活性基の運動の自由度を改善する形で、生物材料表面の生物活性基、特に性分資料基の濃度を改良するための方法、及び成分が求められているのは明らかである。
【発明の概要】
【0009】
発明の要約
本発明は、1以上のペンデント(pendent)光反応成分及び1以上、好ましくは2以上のペンデント生物反応基を有するポリマー型主鎖を含む”多2官能価”を提供することにより、上記の求めに答えるものである。試薬は生物活性基と光反応成分の両方を最適密度で有する高分子量ポリマー主鎖、好ましくは直鎖型を含む。試薬は1以上の光反応基を介し、有効濃度の生物活性基を生物材料表面に結合せしめる。次に、主鎖は十分な長さのスペーサー機能を提供し、例えば(上記の様に)単位スペーサーを利用した他例に比べより自由な運動を生物活性基を提供する。
【0010】
追加の利点として、本試薬はポリマー主鎖及び生物材料表面内及び/または間に分子間−及び分子内−共有結合を形成せしめ、これによりコーティング密度、運動自由度、粘着性及び安定性といった特性の最適かつ制御可能な状態を提供する。
生物材料表面の変更への利用に加え、本発明の試薬は別の利益も提供する。光反応成分は、個々のポリマー分子を近接するポリマー分子と効果的に結合(例えば架橋)せしめる。この架橋特性により、in vitroまたはin vivo に於いてポリマーより生物材料表面上に薄いコーティングを生じせしめ、さらに/または独立フィルム及びバルク材料を生じせしめる。
【0011】
本発明はまた多2官能価試薬を合成し、さらに生物材料の表面の様なコート表面を提供する方法、またはこの様な生物材料より製造された生物医療用具を開示する。コートされた表面は、所望の特性または属性を用具に提供するため、それに結合された多2官能価試薬の分子を有する。
多2官能価試薬を表面に結合し、ペンデント生物活性基がその所望の機能を維持する形で引き抜き可能な水素原子を提供するために、光反応成分を活性化することができる。試薬は、試薬を表面に適用し、その光反応基の1以上が活性化されコーティングを形成する”1段階”法により表面に結合されることが好ましい。これに対し、”2段階”法ではポリマー主鎖を光化学法により固定化する第1段階、及び1以上の生物活性基を固定化された主鎖に結合する(例えば熱化学的に)第2段階を含むだろう。
【0012】
本発明の好ましい多2官能価試薬は、既存生物材料の表面のコート及び/または、例えばバルク材料の形成による新規生物材料の生成に利用できる。いずれの場合も、これらは用具表面に共有結合生物活性基を提供することで医療用具の表面特性を改良することができる。次に、好適な生物活性基は、これら基と接触する様になる分子または細胞の特異的相補部分に非共有結合し、または作用して機能する。
【0013】
好適実施態様では、本発明の多2官能価試薬はポリマー主鎖、1以上の光反応成分及び2以上の生物活性基を有する様に合成される。本発明のポリマー分子は、形成済み生物材料表面または本発明の別のポリマー分子と接触させられる。光反応成分は、外部刺激を受けて活性化され、活性種を形成し、試薬分子及び生物材料表面または別の試薬分子いずれかとの間に共有結合を形成する。例えば、生物材料は好適な試薬を含む液体により湿潤(典型的には0.1 −5分間)され、続いて光に暴露され(典型的には0.1 〜2分)共有結合を形成することができる。
【0014】
好適な生物活性基は、特異的分子または細胞の表面への付加を促進し、機能する。好適な生物活性基には、蛋白、ペプチド、炭水化物、核酸及び、分子または細胞の特異的及び相補的部分と非共有結合性に結合できるその他の分子が含まれるが、もとよりこれに限定されない。これら特異的結合の例には、リガンドに対する細胞表面受容体の結合、抗体に対する抗原の結合、酵素に対する酵素基質の結合が含まれる。好ましくは、ポリマー主鎖は、ビニルポリマーの様な付加型ポリマーから成る群より選択された合成ポリマー主鎖を含む。より好ましくは、各光基は可逆的に光活性化可能なケトンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好適な実施の形態の説明
本書に使用される次の用語及び語は下記の意味を有する:
”生物材料”は水性系に本質的に不溶性であり、例えば組織、細胞、または生物分子を含むin vivo またはin vitroの水性系の様な、生物分子を含む液と接触する1以上の表面を提供する材料を意味し;
”用具”は生物材料より製造される機能性物体を意味し;
”コーティング”は、名詞として用いられる場合には生物材料表面上の1以上のポリマー層を意味し、具体的には本発明の多官能価試薬の活性化により生物材料表面上の1以上の固定化層を意味し;
”多2官能価試薬”は、本発明の試薬と関連し用いられる場合には1以上の光活性成分及び2以上の生物活基が共有結合されるポリマー主鎖を含む分子を意味し;
【0016】
”光活性成分”は、特異的適用外部エネルギー源に反応して活性種を形成し、近接する分子または生物材料表面と共有結合を生じる化学基を意味し;
”生物活性基”は、結合活性または酵素(触媒)活性の様な所望の特異的生物活性を有する分子を意味し、”ポリマー主鎖”は、天然ポリマー、または例えば付加重合反応あるいは縮合重合反応により生じる合成ポリマーを意味する;
本発明の好適な試薬は、主鎖として機能する合成ポリマー、活性化され表面または近接したポリマー分子に共有結合を提供する1以上のペンデント光活性成分、及び2以上のペンデント低分子量生物学活性成分(生物活性基)を含む。
【0017】
主鎖:ポリマー主鎖は合成物または天然物のいずれでも良く、好ましくは付加重合または縮合重合により得られるオリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含むグループより選択される合成ポリマーである。多糖類及びポリペプチドの様な天然型ポリマーも良好に利用できる。好適な主鎖は生物学的に不活性であり、記載の方法による使用に不適または有害な生物学的機能を提供しない。
【0018】
この様なポリマー主鎖は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド及びメタクリルアミドが重合したアクリル;ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールの様なビニル;ポリカプロラクタムの様なナイロン;ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド及びポリヘキサメトキシレンドデカンジアミドの誘導体;及びポリウレタン;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド及びポリブチレンオキサイドの様なポリエーテル;及びポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリアンヒドライド及びポリオルトエーテルの様な生体分解性ポリマー含む。
【0019】
ポリマー主鎖は、1以上の光反応成分と2以上の生物活性基を有することができる主鎖を提供する様に選択される。更にポリマー主鎖は、表面及び各種光反応成分ならびに生物活性基との間にスペーサーを提供する様にも選択される。この様にして、試薬は表面または近接する試薬分子に結合され、最適活性を表すのに十分な運動自由度を持った生物活性基を提供する。ポリマー主鎖は水溶性であることが好ましく、特にポリアクリルアミド及びポリビニルピロリドンが好ましいポリマーである。
【0020】
光反応成分:本発明の多2官能価試薬はポリマー主鎖に共有結合した、1以上のペンデント潜伏反応(好ましくは光反応)成分を有する。光反応成分はここに定義され、好適な成分は十分に安定であり、その特性を維持する条件下において保存される。ここに参照され、取り込まれる米国特許第5,002,582 号を参照せよ。様々な電磁波スペクトル域に反応する潜伏反応性成分が選択できるが、スペクトルの紫外及び可視域に反応(本発明に於いて”光活性化”と称する)するものが特に好ましい。
【0021】
光反応成分は、加えられた特異的な外部刺激に反応し活性種を生じ、例えば同一または異なる分子により提供される近接化学構造と共有結合する。光反応成分とは、保存条件下に於いては共有結合を変化せず維持するが、外部エネルギー源により活性化されると他分子との間に共有結合を形成する分子内の原子群である。
光反応成分は外部電子、電磁波あるいは運動(熱)エネルギーを吸収してフリーラジカルとして活性種、具体的にはニトレン、カルベンおよび励起状態のケトンを生成する。光反応成分は電磁スペクトルの多様な領域に反応する様に選択され、例えばスペクトルの紫外および可視域に対し反応する光反応成分が好ましく、本発明に於いてはしばしば”光化学”成分と称される。
【0022】
アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロンおよびアントロン様複素環(即ち、10位にN、OまたはSを有する様なアントロンの複素環式類似体)またはその置換型(例えば環置換型)誘導体の様な光反応アリールケトンが特に好適である。この様なケトンの官能基は本発明記載の活性化/不活性化/再活性化サイクルを容易に実施できることから好適である。ベンゾフェノンは、三重項状態にシステム間移行する一重項状態を初期形成する光化学励起が可能であることから、特に好適な光活性化成分である。励起三重項状態は水素原子の引き抜くことで(例えば支持体表面より)炭素−水素結合を挿入することができ、ラジカル対を形成する。
【0023】
反応性結合(例えば、炭素−水素)が結合に利用できない場合、紫外線により誘導されたベンゾフェノン基励起は可逆的であることから、エネルギー源を除去することで分子は基底状態のエネルギーレベルに戻る。ベンゾフェノンやアセトフェノンの様な光活性化可能なアリールケトンは、これらの基が水中に於いて複数回の再活性化の対象となること、従って高いコーティング効率を提供することから、特に重要である。即ち、光活性化アリールケトンは特に好ましい。
【0024】
アザイドは潜伏反応性成分の好適クラスを形成し、そしてフェニルアザイドのようなアリールアザイド(C6R5N3)、特にベンゾイルアザイド及びp−メチルベンゾイルアザイドの様なアシルアザイド、エチルアザイドフォルメートの様なアザイドフォルメート(-O-CO-N3)、フェニルアザイドフォルメート、ベンゼンスルフォニルアザイドの様なスルフォニルアザイド(-SO2-N3)、及びジフェニルフォスフォリルアザイドやジエチルフォスフォリルアザイドの様なフォスフォリルアザイド(RO)2PON3 を含む。
【0025】
ジアゾ化合物は別のクラスの光反応成分を形成し、そしてジアゾメタン及びジフェニルジアゾメタンの様なジアゾアルカン(-CHN2)、ジアゾアセトフェノン及び1−トリフロロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノンの様なジアゾケトン(-CO-CHN2)、t−ブチルジアゾアセテート及びフェニルジアゾアセテートの様なジアゾアセテート(-O-CO-CHN2)、及びt−ブチルアルファジアゾアセトアセテートの様なベータ−ケト−アルファ−ジアゾアセテート(-CO-CN2-CO-O-)を含む。その他の光反応成分には、アゾビスイソブチロニトリルの様な脂肪族アゾ化合物、3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリンの様なジアジリン(-CHN2)、ケテンおよびジフェニルケテンの様なケテン類(-CH=C=O)が含まれる。
光反応成分の活性化により、光反応基の残基を介した共有結合によりコーティング接着分子は相互、または材料表面に共有結合される。代表的な光反応基、およびその活性化残基を以下に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
生物活性基:本発明の典型的な低分子量生物活性基は、生理学的環境に於いて特定の生物医療用具の機能または性能を向上または変更する為のものである。特に好ましい実施態様に於いては、生物活性基は細胞接着因子、成長因子、抗血栓因子、結合受容体、リガンド、酵素、抗生物質及び核酸を含むグループより選択される。本発明の試薬は、少なくとも1のペンデント生物活性基を含む。しかし現時点に於いては、試薬分子当たり複数のこれら基存在することがこれら試薬の利用を促進する傾向にあることから、2以上のペンデント生物活性基を利用することが好ましい。
【0028】
好ましい細胞接着因子には、接着ペプチド(以下に定義される)、ならびに天然状態において基質、または近接細胞と堅牢に結合でき、特異的細胞表面受容体に結合し、そして細胞を基質または近接細胞に機械的に接着することができる巨大蛋白または糖蛋白(典型的には100 〜1000キロダルトンの大きさ)が含まれる。天然に生成する接着因子は元来大分子量蛋白であり、その分子量は100,000 ダルトン以上である。
【0029】
接着因子は特異的細胞表面受容体と結合し、そして機械的に細胞を基質(以下”基質接着分子”と称する)または近接細胞(以下”細胞−細胞接着分子”と称する)に機械的に接着させる[Alberts, Bら、Molecular Biology of the Cell,2nd ed, Grarland Publ., Inc., New York(1989)]。細胞接着の促進に加え、各タイプの接着因子は細胞運動および分化を含む他の細胞反応も促進できる。本発明に好適な接着因子には、蛋白であるラミニン(laminin) 、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチン(vitronectin) 、テナスシン(tenascin)、フィブリノーゲン、トロンボプラスチン、オステオポンチン(osteopontin) 、フォンフィルブランド(von willibrand)因子および骨シアロ蛋白の様な基質接着分子が含まれむ。その他の好適な接着因子には、N−カドヘリン(N-cadherin)およびP−カドヘリンの様な細胞−細胞接着分子(”カドヘリン類”)が含まれる。
【0030】
本発明に有用な典型的な接着因子は、天然の接着因子の特異的ドメインの生物活性を有するアミノ酸配列またはその機能類似体を含み、その接着ペプチドの長さは典型的には約3ないし約20アミノ酸である。天然の細胞接着因子は、典型的には細胞表面受容体と結合し、親分子の細胞接着、運動および分化活性を生成するドメインを1以上含む。これらドメインは特異的アミノ酸配列を含み、その内の幾つかは合成され細胞の接着、伸展および/または増殖を促進することが報告されている。これらドメインおよびこれらドメインの機能的類似体は”接着ペプチド”と称される。
【0031】
フィブロネクチン由来の接着ペプチドの例には、RGD (arg-gly-asp )[Kleinman, H.K,ら、Vitamins and Hormones 47:161-186,1993 ]、REDV(arg-glu-asp-val )[Hubbell, J.A.,ら、Ann.N.Y. Acad.Sci.665:253-258, 1992 ]、及びC/H-V(WQPPRARIまたはtrp-gln-pro-pro-arg-ala-arg-ile )[Mooradian,D.L.,ら、Invest.Ophth. & Vis.Sci.34:153-164,1993 ]が含まれるが、もとよりこれに限定されない。
【0032】
ラミニン由来の接着ペプチドの例には、YIGSR (tyr-ile-gly-ser-arg )およびSIKVAV(ser-ile-lys-val-ala-val )[Kleinman, H.K,ら、Vitamins and Hormones 47:161-186,1993 ]及びF-9 (RYVVLPRPVCFEKGMNYTVRまたはarg-tyr-val-val-leu-pro-arg-pro-val-cys-phe-glu-lys-gly-met-asn-tyr-thr-val-arg )[Charonis,A.S.,ら、J.Cell Biol.107:1253-1260, 1988 ]が含まれるが、もとよりこれに限定されない。
【0033】
IV型コラーゲン由来の接着ペプチドの例には、HEP-III (GEFYFDLRLKGDK またはgly-glu-phe-tyr-phe-asp-leu-arg-leu-lys-gly-asp-lys )[Koliakos,G.G,ら、VJ.Biol.Chem. 264:2313-2323,1989]が含まれる。本発明に使用する接着ペプチドは、そのアミノ酸配列が約3から約30アミノ酸残基数であることが望ましい。好ましくは、接着ペプチドはそのアミノ酸配列が約15アミノ酸残基数より多くない。
本発明の他の望ましい生物活性基は、繊維芽細胞成長因子、上皮成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、血管内皮成長因子、骨形態形成蛋白及び他の骨成長因子、神経成長因子等の成長因子を含む。
【0034】
本発明のさらに別の望ましい生物活性基は、血液接触用具上での血栓形成または蓄積を阻害する抗血栓作用物質を含む。望ましい抗血栓作用物質にはヘパリン、ヒルジン(トロンビンの様な凝固カスケード蛋白を阻害する)およびリシンが含まれる。その他の望ましい抗血栓作用物質としては、PGI2、PGE1およびPGD2の様な血小板の接着および活性化を阻害するプロスタグランジンが含まれる。さらに別の望ましい抗血栓作用物質にはストレプトキナーゼ、ウロキナーゼおよびプラスミノーゲン活性化因子の様なフィブリン凝塊を分解するフィブリン溶解性酵素が含まれる。その他の望ましい生物活性基は、プラスミノーゲンに特異的に結合し、続いてフィブリン凝塊を分解するリシンを含む。
【0035】
本発明の他の望ましい生物活性基は、抗体および抗原の様な結合受容体を含む。生物材料表面上に存在する抗体は、固定抗体と接触する水性溶媒の特異抗原に結合し、これを除く。同様に、生物材料表面上に存在する抗原は、固定抗体に接触する水性溶媒中の抗体に結合し、これを除く。
その他の望ましい生物活性基は、受容体およびそれに対応するリガンドを含む。例えば、アビジンとストレプトアビジンは特異的にビオチンに結合し、アビジンとストレプトアビジンは受容体に、そしてビオチンがリガンドとなる。同様に、繊維芽細胞成長因子及び血管内皮成長因子は高親和性にヘパリンと結合し、形質転換成長因子ベータおよびある種の骨形態形成蛋白はIV型コラーゲンに結合する。さらにプロテインA及びプロテインGの様な細菌由来の免疫グロブリン特異結合蛋白およびその合成類似体も含まれる。
【0036】
本発明のさらに別の望ましい生物活性基には、固定酵素に接触する水性溶媒中に存在する基質分子と結合し、さらに特異的変化を触媒する。他の望ましい生物活性基は、相補的核酸配列に選択的に結合する核酸配列(例えばDNA 、RNA およびcDNA)を含む。特異的核酸配列でコートされた表面は、試験サンプル中の相補的核酸配列の存在を特定する診断アッセイに利用される。
【0037】
本発明のさらに別の望ましい生物活性基は、生物材料表面上の微生物の増殖を阻害する抗生物質を含む。特定の望ましい抗生物質は、細菌上の特異的成分に結合することで細菌の増殖を阻害する。特に望ましいクラスの抗生物質は、少なくともその一部に特異的な相補的リガンド−受容体結合を含まないメカニズムにより原形質膜の透過性を変更することで細菌の増殖を阻害すると考えられる抗生物質ペプチドである[Zazloff, M., Curr.Opinion Immunol, 4:3-7,1992 ]。
【0038】
生物材料:好適な生物材料は、付加または縮合重合により得られるオリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含む合成ポリマーより形成されるものを含む。好適な付加ポリマーの例には、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、メタアクリルアミド及びアクリルアミドより重合された様なアクリル;エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルピロリドンおよびビニルイデンジフロライドの様なビニルを含むが、もとよりこれに限定されない。
【0039】
縮合ポリマーの例には、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミドおよびポリヘキサメチレンドデカンジアミドの様なナイロンが含まれ、さらにポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリ(エチレンt−フタレン)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ピリジメチルシロキサンおよびポリエーテルエーテルケトンも含まれるが、もとよりこれに限定されない。
ある種の天然物質も好適は生物材料であり、これには骨、軟骨、皮膚および歯の様なヒト組織;及び木、セルロース、圧縮炭素およびゴムの様なその他の有機材料が含まれる。
【0040】
その他の好適な生物材料は、光基が共有結合できる引き抜き可能な水素を持たない基質より構成される。この様な分類の生物材料の一つは、生物材料表面に結合し光基による結合にとって好適な基質を提供する好適なプライマーコーティングを適用することにより、光化学を介したコーティングに好適に作ることができる。このグループの亜群には、その表面に酸化物基を持ち、さらに酸化物基に結合して引き抜き可能な水素を提供するプライマーコーティングを付加することにより、光化学を介した結合に好適に作製された金属およびセラミクスを含む。
【0041】
該金属にはチタン、ステンレス鋼およびコバルトクロムが含まれるが、これに限定されるものではない。該セラミクスには窒化ケイ素、カーバイドケイ素、ジルコニウムおよびアルミナ、ならびにガラス、ケイ素及びサファイアが含まれるが、これに限定されるものではない。金属及びセラミクスに好適なクラスのプライマーには、酸化物表面に結合して炭化水素基を提供する有機ケイ素試薬を含む(Brzoska, J.B.,ら、Langmuir 10:4367-4373,1994)。研究者らは−SiH基が光基の結合に好適な別の基であることも発見している。
【0042】
有機プライマーを必要とする生物材料の第2分類は、金、銀、銅及び白金を含む貴金属である。貴金属に高親和性を持つ官能基には-CN、-SHおよび-NH2 が含まれ、これら官能基を有する有機試薬を用いてこれら金属上に有機単層を適用する(Grabar,K.C.,ら、Anal.Chem, 67:735-743,1995)。
引き抜き可能な水素を持たない生物材料の別の分類は繊維状または多孔性材料である。本発明のポリマーは、孔を満たす共有結合架橋されたポリマー網を形成し、または各繊維の周囲に薄層を形成するため物理的に捕捉される。拡張したポリテトラフルオロエチレンがこの類の生物材料である。
【0043】
生物材料を利用し、本発明の多2官能価試薬を利用する生物活性基によりコーティングできる多くの用具が製造できる。インプラント用具は、好適な用具の一般的な分類の一つであり、これには移植体、ステント、カテーテル、弁、人工心臓および心臓補助用具の様な血管用用具;関節インプラント、骨折治療用具及び人工腱の様な整形外科用具;歯科用インプラト及び骨折治療装置の様な歯科用具;レンズおよび緑内障治療ドレインシャントの様な眼科用具;およびその他のカテーテル、合成補綴材および人工臓器が含まれるが、もとよりこれに限定されるものではない。その他の好適な生物材料用具には、透析チューブとメンブレン、血液酸素発生装置用チューブおよびメンブレン、血液バッグ、縫合糸、メンブレン、細胞培養装置、クロマトグラフィー支持物質、バイオセンサー等が含まれる。
【0044】
試薬の調整:本発明分野の当業者は、本発明の試薬が通常の技術および材料をりようし調整できることを認識するだろう。好適な方法では、ポリマー主鎖はアクリルアミドまたはN−ビニルピロリドンのような基本モノマーを、ペンデント光反応性かつ/または熱化学的反応性な基を有するモノマーと共重合することで調整される。続いて該共重合により調整されたポリマーを、熱化学的活性基を介した反応により生物活性分子と共に誘導化する。このような結合の例は、ポリマー主鎖上のN−オキシスクシンイミド(NOS)エステルと生物活性分子上のアミン基との間の反応である。
【0045】
別の好適方法には、所望の生物活性基ならびにビニル基の様な重合可能な官能基を含むモノマーの調整がある。この様なモノマーは、続いて光反応基およびアクリルアミドまたはN−ビニルピロリドンと共重合することができる。
潜伏反応性(latent reactire)ペプチドポリマーの合成への利用に好適な方法には、各ペプチド(ペプチドモノマー)を含むN−置換型メタクリルアミドモノマー及び置換型ベンゾフェノン(4−ベンゾイル安息香酸、BBA )を含むメタクリルアミドモノマーの合成がある。ペプチドモノマーは、各ペプチドのスルフヒドリル成分をN−[3−(6−マレイミジルヘキサナミド)プロピル]メタクリルアミド(MalMAm)のマレイミド成分と反応させ、調整する。次に、各ペプチドモノマーをアクリルアミドとBBA(BBA−APMA)と共重合し、最終の潜伏反応性ペプチドポリマーを生成する。
【0046】
各種パラメータをコントロールして、希望するポリマー主鎖、光反応性成分および生物活性基比率(moles または重量に基づく)を持つ試薬を提供できる。例えば、主鎖自体は典型的には、光反応基当たり約40から約400 個の間の炭素原子、好ましくは約60から約300 個の間の炭素原子を提供する。
【0047】
生物活性基に関しては、主鎖の長さは生物活性基の長さ、及び所望するコーティング密度といった要因に依存し変更することができる。例えば相対的に小さい生物活性基(分子量が3000未満)の場合、ポリマー主鎖は典型的には生物活性基当たり約5ないし約200 個の炭素原子、好ましくは10ないし100 個の炭素原子の範囲にある。分子量が約3000から50,000の範囲の分子量を持つ、より大きな生物活性基の場合、好適な主鎖は生物活性基の間に平均して約10から約5000個の炭素原子を、好ましくは約50から1000個の炭素原子を提供する。いずれの場合も、当業者は本明細書により、生物活性基密度と運動自由度の最適な組合せを提供するに好適な条件を決定できるだろう。
【0048】
コーティング法:当業者公知の技術(例えば浸漬、スプレー、ブラッシング)により本発明の試薬を生物活性表面にコートすることができる。好適な実施態様では、最初に多2官能価試薬を合成し、続いて事前に形成しておいた生物材料と接触させる(即ち、十分に近接させ結合する)。外部刺激(例えば、好適な光源に暴露する)により光反応基を活性化し、遊離状態の活性種を形成せしめ、試薬と他の多2官能価試薬分子または生物材料表面との間に共有結合を生成する。光活性型結合化学が発明のポリマーを性靴材料表面に結合せしめ、生物活性基を付加する追加工程を必要としないことから、ここでは本コーティング法を”1段階コーティング法”と称する。好ましく使用される外部刺激は電磁波照射であり、さらに紫外、可視または赤外域の電磁波スペクトルの照射が好ましい。
【0049】
光活性化される発明のポリマーはまた、例えば大きさが50−350nm である特徴を持ったコーティングパターンの生成に報告されている技術を利用して生物成分を生物材料の表面上にパターンを描き固定化することにも利用できる(Matsuda, T. 及びT.Sugawara, J. Biomed. Mater. Res. 29:749-756(1995) )。例えば、内皮細胞の接着と増殖を阻害する親水性パターンを1)潜伏反応性親水性ポリマーを合成し、2)潜伏反応性ポリマーを組織培養ポリスチレン製プレートに付加し、3)パターンの光マスクを通してポリマーに光照射し、そして4)適当な溶媒により線上し固定化されていないポリマーを除き、作ることができる。
【0050】
このような方法を利用し、本発明のポリマーを特異的生物材料のパターンを固定することができる。例えば、特異的結合分子(例えば抗体、抗原/ハプテン、核酸プローブ等)のマイクロアレーを光学、電気化学、または半導体センセー表面に固定し、単独分析体に対し同時多分析アッセイ能または多感度域アッセイを提供することができる。パターン化固定はさらに多段階微量アッセイシステム内の液流路に沿って連続処理/反応工程が生起する”チップ検査(Laboratory on a chip)”の開発にとっても有益な手段である。細胞接着因子、例えば神経細胞の電極への接着を促進する因子のパターン化により、1)新世代超高感度バイオセンサー、および2)患者神経系により直接制御される人工四肢の開発が可能になるだろう。
【0051】
本発明の試薬は、形成済み生物材料と共有結合でき、表面コーティングに利用できる。本試薬分子はまた近接分子にも共有結合でき、フィルムまたはバルクの生物材料が形成できる。光反応成分を介した結合により生じる表面コーティング、フィルム、バルク生物材料は、得られた生物材料の表面に有益な密度の生物活性基を提供する。
【0052】
用具の利用:本発明の生物活性ポリマーは既存生物材料の表面の変更、または新規生物材料の生成に利用される。得られた生物材料を含む生物活性用具は様々なin vitroおよびin vivo 応用に利用される。例えば、生物成分として細胞接着基または増殖因子を持つ生物活性用具は、in vitro細胞培養用具上の細胞接着及び/または増殖を促進し、人工血管、整形外科用インプラント、歯科用インプラント、角膜レンズ及び胸部インプラントの様なインプラント用具の組織適合性を向上させる。抗血栓因子を生物成分として有する生物医療用具は、カテーテル、心臓弁、血管ステント、人工血管、移植用ステント、人工心臓および血液酸素供給装置といった血液接触用具表面の血栓を防止する。
【0053】
生物成分として受容体またはリガンドを有するレジンまたはメンブレンは、広範囲の生物分子のアフィニティー精製に利用できる。例えば、ヘパリン(抗血栓成分でもある)は、幾つかの凝固因子、蛋白分解酵素阻害剤、リポ蛋白、成長因子、脂質分解酵素、細胞外マトリックス蛋白およびウイルスコート蛋白の特異的結合および精製に利用される。ブドウ球菌プロテインAは特異的に免疫グロブリンに結合し、抗体の精製に極めて有用であることが証明されている。
【0054】
ストレプトアビジンはビオチンと極めて高い親和性で特異的に結合する蛋白である。ストレプトアビジンとビオチンは診断アッセイの二次的結合ペアーとして極めて有用な試薬のペアーである。固定化されたストレプトアビジンを利用することで、高いシグナル増幅、感度増幅および迅速試験性能が得られる。
【0055】
抗体または抗原でコートされた表面を有する生物医療用具は、結合特異性に依存した、相補的な抗原または抗体を高感度に検出するための診断試験に利用できる。抗体または抗原はメンブレン、プラスチック製チューブ、マイクロプレートのウエルまたは固相バイオセンサー用具上に固定できる。固定された抗体は、各種生物医薬品の精製にも重要である。遺伝子工学技術による細菌または真菌内に生成された蛋白は、固定された抗体によりアフィニティー精製できる。凝固因子VIII(抗血友病因子)の様な血液分画もまた固定された抗体で生成される。
【0056】
核酸配列でコートされた表面を持つ生物医療用具は、相補的核酸配列を選択的に結合するのに利用できる。この様な用具は試験サンプル中の相補的核酸配列の存在を同定する診断アッセイに利用できる。生物成分の様な酵素がコートされた表面を持つ用具は、合成工程(例えばキラール医薬品の製造)または分解/転換工程(例えば高フルクトースコーンシロップを製造するための澱粉の分解、およびグルコースのフルクトースへの変換)を触媒する、広い範囲の酵素反応器に利用できる。
【0057】
コートされた抗生物質は用具表面上での細菌増殖を阻害するのに利用できる。この様な抗菌表面は、幾つかのタイプのカテーテル(血管内、腹膜、血液透析、水頭症および泌尿器)、動脈静脈シャント、心臓弁、人工血管、気管切開チューブ、整形外科用および陰茎用インプラントを含むインプラント用具に伴う感染率を減少できる。幾つかのin vitro用具はまた、例えば生物フィルム形成の阻害による様な利益を、これら表面から得ることができる。これらにはコンタクトレンズ、食料の包装、テーブルの表面、その他食物を取り扱う表面及び空気フィルターが含まれる。
【実施例】
【0058】
以下、限定されない実施例を参照し、本発明をさらに説明する。本発明の範囲より逸脱することなく、記載された実施態様に多くの変更が可能であることは当業者には明らかであろう。特記ない限り、パーセントは全て重量による。
【0059】
実施例1ペプチドポリマー
A.4−ベンゾイルベンゾイルクロライド(BBA-Cl)の合成
4−ベンゾイル安息香酸(BBA )、200,0g(0.884moles)を乾燥した2リットルの丸底フラスコに加え、さらに273ml の塩化チオニルを加えた。続いてジメチルフォルムアミド(DMF )684 μl を加え、混合液を3−4時間還流した。冷却後、過剰の塩化チオニルを水アスピレーター圧のロータリーエパボレーターで除いた。残存する塩化チオニルは、3×100ml のトルエンを用い、繰り返し蒸発し除いた。次に最終産物を5:1 のヘキサン:トルエンより再結晶化し、典型的なBBA-Clの収率は>90%、融点は92〜94℃であった。
【0060】
B.N-[3-(4-ベンゾイルベンツアミド)プロピル]メタクリルアミド(BBA-APMA)の合成
Estaman Kodak 社、Rochester,N.Y.製N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸(APMA-HCl、120g、0.672moles)をオーバーヘッドスターラーを装備した乾燥した2リッターの3つ口丸底フラスコに入れた。阻害剤としてフェノチアジン23〜25mgを加え、さらに800ml のクロロフォルムを加えた。懸濁液を氷槽内で10℃以下に冷却し、172.5gのBBA-Clを固形物として加えた。
【0061】
50mlのクロロフォルム中のトリエチルアミン207ml (1.485moles)を1〜1.5時間かけて滴下し加えた。氷槽を除き、室温にて2.5 時間攪拌し続けた。次に産物を0.3NのHCl600mlと、2×300ml の0.07N のHCl で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、減圧下にクロロフォルムを除き、重合阻止を目的として再結晶毎に23〜25mgのフェノチアジンを用い、トルエン:クロロフォルム4:1 から産物を2度再結晶した。BBA-APMAの典型的な収率は90%で、融点は147 〜151 ℃であった。
【0062】
C.N-[3-(6-マレイミドヘキサンアミド)プロピル]メタクリルアミド (Mal-MAm )の合成
オーバーヘッドスターラーと乾燥チューブを装着した3リットルの3つ口フラスコ中で6−アミノヘキサン酸(100.0g、0.762moles)を300ml の酢酸を溶解し、6−マレイミドヘキサン酸を調整した。無水マレイン酸、78.5g (0.801moles)を200ml の酢酸に溶解し、6−アミノヘキサン酸液に加えた。混合液を1時間、加熱または煮沸水槽中で攪拌すると白色の固形物が生じた。室温に一晩冷却した後、固形物を濾過して集め、2×50mlのヘキサンで濯いだ。典型的な(Z)−4−オキソ−5−アザ−2−ウンデセンディオイック酸の収量は90〜95%で、融点は160 〜165 ℃であった。
【0063】
(Z)-4-オキソ-5-アザ-2-ウンデセンディック酸、150.0g(0.654moles)、無水酢酸68ml(73.5g 、0.721moles)及びフェノチアジン500mg をオーバーヘッドスターラーを装備した2リッターの3つ口丸底フラスコに加えた。トリエチルアミン(TEA )91ml(0.653moles)及びテトラヒドロフラン(THF )600ml を加え、混合液を攪拌しながら加熱し還流した。合計4時間還流した後、暗色の混合液を<60℃まで冷却し、3リットルの水に12N のHCl を250ml 加えた液に注ぎ入れた。
【0064】
この混合液を室温で3時間攪拌した後、濾過パッド(Celite545 、J.T.Baker社、Jackson 、TN)で濾過し固形物を除いた。濾液を4×500ml のクロロフォルムで抽出し、一つにまとめた抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥した。重合を阻止するために15mgのフェノチアジンを加えた後、減圧し溶媒を除いた。6−マレイミドヘキサン酸をヘキサン:クロロホルム2:1 より再結晶化し、典型的な収率55-60 %、融点81-85 ℃を得た。
【0065】
1.0g(4.73mmoles)の6−マレイミドヘキサン酸及び0.572g(4.97mmoles)のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS )を10mlの乾燥ジオキサンに溶解し、さらに1.07g (5.21mmoles)の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC )を加えて、6−マレイミドヘキサン酸のN−オキシスクシンイミドエステル(NOS)を調整した。反応混合液は一晩、室温で攪拌した。副産物の1,3−ジシクロヘキシル尿素は濾過して除き、濾過ケーキを3×10mlのジオキサンで濯いだ。フェノチアジン(0.2mg )を加えてから溶液を減圧し、蒸発した。得られた固形物をヘキサンで抽出し過剰のDCC を除き、さらに精製することなく本産物を用いた。
【0066】
414mg (1.34mmoles)のN-スクシンイミジル6-マレイミドヘキサノン酸、200mg (1.12mmoles)のN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸を10mlのクロロフォルムで希釈し、続いて153 μl(1.10mmoles)のTEA を室温下、1時間かけて加えた。混合液を室温で一晩攪拌した。蒸発して産物を分離し、さらに99:1、続いて97:3のクロロフォルム:メタノール勾配によるシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにて精製した。分画を集め、10mgのp−メトキシフェノールを加え、溶媒を蒸発して261mg の産物を得た。サンプルのマススペクトラムはM+=335 (10.7%)を、さらにNMR はマレイミド(6.6ppm)及びアリルメチル(2.00ppm )のプロトンピークを示した。
【0067】
D.ペプチドモノマーの合成
5種類のペプチドを生物成分として用いた。各ペプチド成分は標準的な固相合成法により合成され、その一般名、代表的な引用文献、それが同定される親蛋白及び使用した特異配列を下記に示す(アミノ酸を表す標準的な一文字名称を使用し示した)。
【0068】
【表2】

【0069】
各ペプチド配列に関し、下線を付していない配列部分は、親蛋白内に存在する天然配列を示す。下線を付した配列部分は、特異的官能基を提供するために加えたアミノ酸配列を示す。リジン残基(K)は、還元メチル化による放射線標識に利用される一級アミン(イプシロンアミノ基)を提供するために加えられた。システイン残基(C)は、その後重合されペプチドポリマーを生成するモノマー上に存在するマレイミド基への各ペプチドの結合に利用されるスルフヒドリル基を提供するために付加された。
【0070】
C/H-IIはその天然配列中に十分なリジン残基を含んでおり、さらにリジン残基を加える必要はなかった;同様にF-9 はその天然配列の一部としてシステイン残基を含み、システイン残基を追加する必要はなかった。Mal-MAm の大部分をMal-MAm クロロフォルム保存液より取り出し、反応バイアル中に入れ、窒素流下に乾燥し、ジメチルスルホキシド(DMSO)に再溶解した。等量の各ペプチドを脱気した50mM酢酸緩衝液(pH5 )中に溶解し、反応バイアルに入れ、混合液を60-90分間、室温にて攪拌した。
【0071】
【表3】

【0072】
E.ペプチドモノマー(ぺプチドポリマー)を用いた光反応ポリアクリルアミドの合成
BBA-APMAをDMSO中に10mM/ml の濃度に溶解し、アクリルアミドを水に100mg/mlの濃度に溶解した。ペプチドモノマーは合成後に精製せず、上記の如くDMSOを含む酢酸緩衝液中に溶解したままとした。次に、適当なmoles 量のBBA-APMAモノマーとアクリルアミドを各反応バイアルに加えた。各混合液を15分間、水吸引により脱気した。過硫酸アンモニウム(10%保存水溶液)及びN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED )を加え(下記の量)重合を触媒した。各混合液を再度脱気し、密封されたデシケーター内で一晩、室温にて反応させた。得られた各ペプチドコポリマーを水に対し、4℃で透析(Spectrum Medical Insustries社, Houstonm TX 、製Spectra/Por50,000MWCO 透析チューブを使用)し、未重合反応物を除き、凍結乾燥した。
次表に、各共重合時に加えた各反応物の量を示す。
【0073】
【表4】

【0074】
凍結乾燥後の各ペプチドポリマーの回収量はRGD が72mg、F-9 が135mg 、C/H-IIが100mg 、C/H-V が15.2mg、HEP-III が17.8mgであった。
【0075】
F.生物材料へのペプチドポリマーの結合
3種類の生物材料:ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)およびシリコンゴム(SR)を使用した。分割型96- ウエルプレートサイズのポリスチレンストリップ(Immulon I Removawell Strips, Dynatech Laboratories, Inc製、Chanilly、VA)を用い、放射標識実験に於ける各ペプチドポリマーの固定化レベルを決定した。24- 及び48- ウエルPS培養プレート(未滅菌、非プラズマ処理)はCorning Costar社(Cambridge 、MA)より得、細胞増殖生物活性アッセイに使用した。フラット PU シート(Pellethane 55-D )およびフラットSRシートはそれぞれSpecialty Silicone Fabricators社(Paso Robles, CA)より得、それそれ96、48および24ウエル型培養プレートのウエル内側に適合する直径6,10および15mmの円盤に打ち抜いた。この円盤は放射標識アッセイおよび生物活性アッセイの両方に利用した。
【0076】
ペプチド(ペプチドポリマーまたはペプチド試薬コントロール)を生物材料に適用するために、光照射し潜伏反応基を活性化する前に生物材料上でペプチドを乾燥させるか否かが主要な差である2種類の方法を用いた。乾燥固定法では、照射前にペプチドを50%(v/v )イソプロパノール(IPA )水溶液に希釈し、以下示す如くに生物材料に付加し、乾燥した。湿潤固定法では、照射前にペプチドを水に希釈し、以下示す如くに生物材料に付加し、乾燥させた。
【0077】
各固定法では、ペプチド成分の最終付加濃度は50μg/mlであり、各タイプの培養プレートのウエル当たりの付加量は次の通りであった:96- ウエルプレート、50μl/ウエル、48- ウエルプレート、100 μl/ウエル、24- ウエルプレート、200 μl/ウエル。上記の如く、コーティング及び評価することを目的に、PU及びSRの円盤をプレートの底部に置いた。サンプルは、ヘラウスバルブ(W.C.HeraeusGmbH, Hanau, Federal Republic of Germany) が組み込まれたDymax lamp( モデル番号PC-2、Dymax 社、Torrington,CT )により光照射を受け、各ポリマー内に存在する光基は活性化され、生物材料と共有結合した。照射時間は強度1-2mW/cm2、波長域330 〜340nm で1-2 分間であった。光照射を受けないペプチドポリマー及びペプチド試薬コントロールを用い吸収コントロールも設定した。
【0078】
光固定または吸着のいずれかに続き、旋回シェーカー(〜150 〜200rpm)上でペプチドポリマー及びペプチド試薬コントロールを良く洗い、基質に強固に結合していないペプチドを除いた。洗浄工程には;1)1%Tween20 界面活性剤含有リン酸緩衝液生理食塩水(PBS )、pH7.3 の3回交換による一晩洗浄、2)70%(vol/vol )エタノール水溶液による30分洗浄/滅菌工程、及び3)滅菌PBS による4回洗浄が含まれる。
【0079】
G.生物材料上のペプチドの固定化レベルの定量
還元メチル化により2種類のペプチドポリマー(RGD ポリマー及びF-9 ポリマー)ならびにそれぞれのペプチド試薬コントロールをトリチウムで放射線標識し、これを用いて各生物材料上に固定化された各ペプチドのレベルを決定した。ペプチド試薬コントロールはポリマー内に取り込まれず、RGD (配列GRGDSPKKC )及びF-9 を含んでいた。4種類のトリチウム標識されたペプチドはそれぞれ[3H]-RGDポリマー、[3H]-F-9ポリマー、[3H]-RGD試薬コントロール、[3H]-F-9試薬コントロールと称した。各トリチウム標識ペプチドは、ここに記載された乾燥固定法及び洗浄法により各種生物材料(PS分離型ストリップ、PUの6mm 円盤またはSRの6mm 円盤)上にコーティングされた。
【0080】
洗浄工程後、PS分離型ストリップは個々のウエルに分離し、シンチレーションバイアル内に入れ(1ウエル/バイアル)、THF に溶解してAquasol-2Fluor(DuPont NEN, Boston, MA)にて測定し、dpm's/サンプルを決定した。PU円盤はTHF内にスエリングし、Aquasol-2 にて測定した。SR円盤はSoluene-350 組織溶解剤中に溶解し、Hionic Fluor(いずれもPackard Instrument社, Meriden, CT )で測定した。生物材料を液体シンチレーション分光光度計にて測定した後、各トリチウム標識試薬の既知比放射活性から各ペプチドについて最終付加密度(ng/cm2)を計算した。付加密度の結果の要約を下表に示す。各値は3回以上の測定の平均値である。固定化とは光照射サンプルを意味する。吸着とは非光照射サンプルを意味する。ND= 測定せず。
【0081】
【表5】

【0082】
いずれの場合も、固定化ペプチドポリマー(即ち、光照射を受けたポリマーコーティング)が最大付加密度を示した。ペプチドポリマーの付加密度はまた生物材料にも依存しており、PSおよびSRへのペプチドポリマーの残留レベルが最も高く、PUへの残留レベルが最も低かった。それぞれのケースに於いて、光固定されたペプチドポリマーの残留レベルは吸着によるペプチドポリマーに比べ1.5 ないし9倍大きく、吸着ペプチド試薬コントロールに比べると4.5-ないし39倍高かった。
【0083】
H.固定化ペプチドの細胞接着活性
ウシの肺動脈内皮細胞(CPAE)はATCC(米国タイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection), Rockwille, MD)より得て、ATCCの指示に従い培養した。接着アッセイは48- ウエルPS培養プレートで実施した。PU及びSRを評価する場合、各材料の円盤(コーティングの有り、または無し)を培養プレートのウエルの底に入れた。PSを評価する場合、ウエルの底はコーティングされた。各アッセイ毎に、未コーティングおよびペプチドコーティング済み生物材料(PS、PU及びSR)に、2mg/mlのウシ血清アルブミン(V 型分画BSA 、Sigma Chemical社、St.Louis、MO)を含む無血清培地中の細胞をウエル当たり50,000個播いた。
【0084】
細胞は2時間各生物材料に接着させた。続いて、未接着細胞を吸引して除き、ウエルを2回ハンクス液(Celox Corp., Hopkins,MN)で洗浄した。最後に、生細胞が存在すると黄色のテトラゾリウム塩から不溶性の紫色のホルマザンに変換する代謝色素、MTT [3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド]を含む培養培地を加え、接着細胞を定量した。MTT を含む培養培地内で2時間反応した後、培地を除き、生細胞内に蓄積したフォルマザンを可溶化し(酸性イソプロパノールにて)、分光光度計で570nm の吸光を測定した。フォルマザンの吸収はウエル内の接着生細胞の数と直接相関する。
【0085】
下表に固定化ペプチドポリマーと吸着パプチド試薬コントロールを比較した、細胞接着アッセイの結果をまとめた。いずれの場合も、ペプチドコートされた生物材料に接着した細胞の相対数(MTT 色素により決定)を無コーティング(UC)生物材料に接着した細胞数で除し、相対細胞接着スコアを得た。各値は、各3または4重測定した実験1ないし4回の平均値である。ペプチドは本書記載の湿潤固定法によりPS上に固定化され、ペプチドは乾燥固定法によりSR及びPU上に固定化された。固定ペプチドポリマーは、光照射ペプチドポリマーを表す。吸着ペプチド試薬は非光照射ペプチド試薬を表す。ND= 未測定。
【0086】
【表6】

【0087】
これらの結果は、光固定ペプチドポリマーが3種類全ての生物材料に対する細胞接着を促進することを示している。最大の改善は3種類全ての生物材料上にRGD ポリマーを光固定した場合と、F-9 ポリマーをPS上に光固定した場合(4.3 ないし10倍の改善)であり、最も改善が小さい例はPU上へのF-9 ポリマーとSR及びPU上へのC/H-V ポリマーの光固定(1.3 ないし1.9 倍)であった。光固定ペプチドと吸着ペプチド試薬コントロールを比較した場合、いずれについても細胞接着はペプチドポリマーに対する方が大きかった。
【0088】
I.固定ペプチドの細胞増殖活性
増殖アッセイは24ウエルPS培養プレートで行った。PU及びSRを評価する場合には、各材料(コーティング有り無しで)の円盤を培養プレートの底に置き実施した。PSを評価する場合、ウエルの底がコーティングされた。各アッセイについて、コーティング無しとペプチドをコートした生物材料(PS、PU及びSR)に、ウエル当たり1500個のCPAE細胞を播いて、4ないし7日間in vitroにて増殖させた。続いて、培地を吸引し、細胞増殖をMTT 色素を用いて定量した。
【0089】
次表に結果をまとめ、コーティングしていない基質、吸着ペプチド及びペプチドポリマー上での細胞増殖を比較した。接着アッセイと同様に、各ペプチドでコーティングされた生物材料上で増殖する細胞の相対数を、コーティングしていない(UC) 生物材料上で増殖した細胞数で除し、相対細胞増殖スコアを得た。各値は、1ないし4回の実験の平均値であり、各実験は3または4重測定で行った。評価対象のペプチドは全て、本書に記載した乾燥固定法を用い固定した。固定ペプチドポリマーは光照射ペプチドポリマーを表す。吸着ペプチド試薬は非光照射ポリペプチド試薬を表す。ND= 未測定。
【0090】
【表7】

【0091】
上記の表に示したペプチドに加え、C/H-II及びHEP-III に関しPS上の増殖について調べた。これら2種類のペプチドの場合、吸着ペプチド上の増殖は未コーティングPSに比べ1.0 及び1.1 倍であり、ペプチドポリマー上の増殖は未コーティングPSに比べ10.5および13倍であった。これら2種類のペプチド(ポリマー及び試薬コントロール)は、湿潤固定法により固定された。C/H-II及びHEP-III の結果は、1および2回の実験の平均であり、各実験について4重測定した。
【0092】
これら増殖アッセイより、PS上に光固定されたペプチドポリマー5種類全てが増殖を、未コーティングPS上の増殖に比べ10.5ないし17.5倍促進した。また、3種類のペプチドポリマーがPU上の細胞増殖を3.9 ないし9.4 倍促進した。SR上では細胞増殖の改善は極僅かであった。
【0093】
実施例2ヒルジンポリマー
A.N-スクシンイミジル6-(4-ベンゾイルベンズアミド)ヘキサノエート(BBA-EAC-NOS )の合成
実施例1記載の如く調整されたBBA-Cl(30.00g、0.123moles)を450ml のトルエンに溶解した。一定量(16.1g 、0.123moles)の6−アミノヘキサン酸(本書ではあるいはε−アミノカプロン酸とも称され、あるいはEAC と略記される)を375ml の1規定NaOHに溶解し、この溶液を塩酸溶液に加えた。混合液を45分間、室温激しく攪拌し乳液を得た。本産物を1規定HClを用いて酸性化し、3×450ml のエチルアセテートにて抽出した。一つにした抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過、減圧下に蒸発した。トルエン:エチルアセテートより6-(4-ベンゾイルベンズアミド)ヘキサン酸を再結晶化し、融点106-109 ℃の産物36.65gを得た。
【0094】
6-(4-ベンゾイルベンズアミド)ヘキサン酸(25g、73.7mmoles)を乾燥したフラスコに入れ、500ml の乾燥した1,4-ジオキサンに溶解した。NHS(15.5g、0.135moles)を加え、フラスコを乾燥窒素雰囲気下、氷槽上で冷却した。次にDCC(27.81g、0.135moles)のジオキサン液15mlを加え、混合液を一晩攪拌した。濾過して1,3-ジシクロヘキシル尿素を除き、減圧し溶媒を除き、エタノールより2回産物を再結晶化し、融点121〜123 ℃の白色固形物、23.65gを得た。
【0095】
B.ヒルジンリガンドを含む光反応ポリアクリルアミド(ヒルジンポリマー)の合成
112mg(0.629mmoles )のAPMA-HCl、358mg (0.818mmoles )のBBA-EAC-NOS及び80mg(104 μl、0.692mmoles)のTEMEDを22mlのDMSO中に反応し、メタクリルオイル-EAC-BBAを調整した。混合液を4.5 時間攪拌した。次に、この混合液に4.20gm(59.1mmoles)のアクリルアミド、532mg (3.15mmole)のN−アクリルオキシスクシンイミド(Estaman Kodak, Rochester, N.Y.)および64mg(0.39mmoles)の2,2'- アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、NOS ポリマーを調整した。混合液をヘリウムでスパージし、50℃で一晩反応した。得られたポリマー液の一部(10ml)を10mlのDMSOで希釈し、激しく攪拌しているアセトン(200ml )中にゆっくり加えポリマーを沈殿させた。ポリマーを集め、アセトンで洗浄し不純物を除き、真空下に乾燥した。合計1.47g を回収した。
【0096】
純度90%以上、活性値16,500±2000ATU/mgの組み換え体ヒルジンはTransgene Laboratories(Strasbourg, France)より得た。(ATU の定義は下記参照)ヒルジンはトロンビンに結合し、その蛋白分解活性を阻害する抗血栓剤である。ヒルジン(10.5mg、1.52μmole)を0.1Mの炭酸緩衝液中1ml に溶解した。NOS ポリマー(上記の如く調整)をDMSO中に4mg/mlになる様溶解した。続いて、2mg のNOS ポリマーをヒルジン液に加え、一晩混合した。反応混合液の半量をSpectra/Pro 50,000MWCOチューブに入れ水に対し透析した後、凍結乾燥した。5.0mg のヒルジン及びヒルジン1モル当たり0.2 モルのBBA を含む合計5.9mg のヒルジンポリマーを回収した。ヒルジンはBCA蛋白アッセイキット(Pierce Chemical Company, Rockford, IL より購入) を用い測定し、BBA 含有量は分光光度計により決定した。
【0097】
コントロールポリマー(”エナンチオマーポリマー”)は、NOS ポリマーにヒルジンの代わりにエタノールアミンを加え調整した。得られたエタノールアミンポリマーは電荷を持たず、ヒルジンの代わりにエタノールアミンを含む同様のポリマーとトロンビンとの結合を比較したコントロール実験に利用した。
【0098】
C.溶液中のヒルジン及びヒルジンポリマーの活性のアッセイ
ヒルジン及びヒルジンポリマーの特異活性は、Transgene 社より提供された標準的な方法により決定し、ヒルジン1mg当たりの抗血栓単位(ATU )で表した。1ATU は、トロンビン1NIH 単位の蛋白分解活性を阻害するのに必要なヒルジン量である。これらアッセイでは、ヒルジンまたはヒルジンポリマーの希釈系列と既知量のウシトロンビン(175-350NIH単位/mg 、Sigma Chemical社製、St.Louis.MO )を前反応させ、発色基質、ChromozymTH (Boehringer Mannheim Corp, Indianapolis,IN 社製) を用い残存トロンビン活性を決定した。ヒルジンポリマーに取り込まれる前後のヒルジンの特異活性は、それぞれ11,710及び10,204ATU/mgであった。従って、生成されたポリマー内に取り込まれたヒルジンの活性減少は13%にすぎなかった。
【0099】
D.生物材料へのヒルジンポリマー及びエタノールアミンポリマーの結合
3種類の生物材料のフラットシートを利用した:1)ポリエチレン(PE、米国国立保健研究所、Bethesda、MD提供の一次参照材料)、2)SR(Dow Corning 社製、Midland 、MI、医療等級SILASTICR)及び3)PU(ThermoCardiosystems 、Woburn,MA 社製、TecoflexR)。各生物材料のサンプルは直径6mm の円盤、または1×1cmの正方形にカットされた。コーティング前に表面汚染を除くため、PU及びPEサンプルはIPA に短時間浸し、SRは1時間ヘキサンで抽出してから一晩乾燥した。さらに、SRサンプルはヒルジンポリマーまたはエタノールアミンポリマーを適用する直前にアルゴンプラズマで処理(3分、250 ワット、250mtorr)した。
【0100】
ヒルジンポリマーを水;IPA75:25(v/v )中に1 〜25μg/mlになる様希釈し、各生物材料サンプルの上記洗浄または抽出した側に加えた。加えられたヒルジンポリマー液を乾燥させ、次にDymax ランプで光照射した。コーティング作業後に残っていた緩く接着したヒルジンポリマーを除くため、各サンプルを3回15分間洗浄し、続いて一晩1%のTween20 のPBS 液に浸した。次に脱イオン水中でサンプルを濯ぎTween20 を除いた。
【0101】
3種類のコントロールサンプルも同時に調整した:1)ヒルジンポリマーを付加しない未コーティングコントロール、2)ヒルジンポリマーを付加したが、光照射を行わなかったサンプル、及び3)エタノールアミンポリマーでコーティングしたSRサンプル。後者のコントロールについては、エタノールアミンポリマー(本書記載の如く調整した)を脱イオン水中に1または5μg/200 μl に希釈した。次に、各保存液の一部200 μl をSRの1cm 2サンプルの一面に加え、乾燥させ、光活性化し、ヒルジンポリマーに関する本書記載の如くにTween20/PBS および脱イオン水で洗浄した。
【0102】
E.生物材料上のヒルジン負荷量の測定
ヒルジンを還元メチル化により放射線標識し、本書記載の如くにしてヒルジンポリマーに取り込ませ、本書記載の3種類の生物材料それぞれの上に固定されたヒルジンポリマー量の測定に用いた。残存トリチウム量を測定するため、サンプルをTHF に溶解し、Aquasol 内に希釈、Packard1900CA 液体シンチレーションカウンターにて測定した。下表に示した結果は、ヒルジンポリマー残留量は添加量に比例すること、そして光活性化を行わない場合の残留量に比べ光活性化後の残留量は2.3 から66倍高いことを示している。各結果は4回測定の平均値である。N.A.= アッセイせず。
【0103】
【表8】

【0104】
F.生物材料上のヒルジンポリマーコーティング活性のアッセイ
トリチウムで標識されていないヒルジンポリマーを、本書記載に従い各生物材料上にコーティングした。次にトリチウム標識されたトロンビン(3H-Thr )を加え、その結合を測定し固定されたヒルジンポリマーの活性を定量した。3H-Thr は還元メチル化法によりヒトトロンビン(4000NIH 単位/mg蛋白、Sigma Chemical 社製)を標識し調整した。各コーティング済みサンプルを2μg/mlの3H-Thr を含むトリス緩衝液(0.05M Tris-HCl, 0.1M NaCl, 0.1% PEG3350, pH8.5)内で1時間反応し、トロンビンを含まない同一緩衝液で濯ぎ結合していないトロンビンを除いた。次いでサンプルをTHF に溶解し、Aquasol 中に希釈、測定した。
【0105】
下表に示した結果より、ヒルジンコーティングされた生物材料に保持されたトロンビン量は固定ヒルジン量に比例することが示された。各結果は4回測定の平均値である。SR+EP1及びSR+EP5 は、それぞれ1.0 及び5μg/cm2のエタノールアミンポリマーでコーティングされたSRサンプルであることを示す。N.A.はアッセイしなかったことを示す。コントロール実験は、トロンビンを未コーティング生物材料に加え実施したが、未コーティングのPE、PU及びSRに結合したトロンビン量はそれぞれ0.01、0.012 および0.006 μg/cm2であった。未コーティングPE及びPUと、25μg/cm2 のヒルジンポリマーでコーティングされた同一生物材料へのトロンビン結合の比較から、後者がそれぞれ200 倍及び23倍高いトロンビン結合が示された。最後に、エタノールアミンポリマーでコーティングされたSRの結果から、ヒルジン成分がとトロンビン結合に必須であることが示された。
【0106】
【表9】

【0107】
実施例3ヘパリンポリマー
A.N−スクシンイミジル6−マレイミドヘキサノエートの合成
6−マレイミドヘキサン酸20.0g(94.7mmole)を100ml のクロロフォルムに溶解し、続いて60.1g (0.473mol)の塩化オキサリルを加えた。次に得られた溶液を2時間、室温で攪拌した。過剰の塩化オキサリルを減圧下に除き、得られた酸性塩化物を4×25mlのクロロフォルムと共沸し過剰の塩化オキサリルを除いた。酸性塩化物を100ml のクロロフォルムに溶解し、続いて12.0g (0.104moles)のNHS を加え、11.48g(0.113mol)のTEA をゆっくり加えた。混合液を室温で一晩攪拌した。反応混合液を4×100ml の水で洗浄した後、硫酸ナトリウム上でクロロフォルム液を乾燥した。溶媒の除去により、24.0g の産物を得、収率は82%であった。NMR 分光計分析結果は所望物質と一致し、更に精製することなく使用した。
【0108】
B.ヒドラジドリガンド含有光反応ポリアクリルアミド(ヒドラジドポリマー)の合成
アクリルアミド8.339g(0.117mol)を112ml のTHF に溶解した後、0.241g(1.50mmol) のAIBN、0.112ml(0.74mmol)のTEMED 、1.284g(3.70mmol)のBBA-APMA(本書記載に従い調整)及び0.377g(1.2mmol )のN−スクシンイミジル6−マレイミドヘキサノエート(本書記載に従い調整)を加えた。溶液にヘリウムを4分間スパージして脱酸素し、さらにアルゴンガスを4分間スパージした。次に密封容器を一晩、55℃で加熱し、完全に重合した。沈殿したポリマーを濾過して分離し、100ml のTHF と30分間攪拌し、線上した。最終産物を濾過して回収し、真空オーブン内で乾燥し、収率96%、9.64g の固形物を得た。
【0109】
上記ポリマー(1.0g)を50mlの0.05M リン酸緩衝液、pH8 に溶解し、その溶液を50mlの0.05M リン酸緩衝液、pH8 中に0.696g(5.89mmol)のシュウ酸ヒドラジンを含む第2液に加えた。混合した溶液は一晩、室温で攪拌した。産物を分子量カットオフ6000〜8000の透析チューブを用い、脱イオン水に対し透析した。2日間に6回水を交換した後、凍結乾燥してポリマーを分離し、850mg の産物を得た。このポリマーについてヒドラジド基分析を行った結果、ポリマーのNH2/gは0.0656mmolで、理論値の55%であった。
C.ヘパリンリガンドを含む光反応ポリアクリルアミド(ヘパリンポリマー)の合成
ヘパリン中のウロン酸残基を適当に過ヨウ素酸塩で酸化された場合、アルデヒド官能基が生ずるが、ヘパリン活性は十分残ることが知られている。152 単位/mgの活性を持つ未漂白ヘパリン(Celsus Laboratories, Cincinnati, OH)を250mg/mlの0.1Mアセテート緩衝液(pH5.5 )に溶解し、20mg/ml の過ヨウ素ナトリウムで30分間酸化し、遊離アルデヒド基を生成した。残存する過ヨウ素酸塩は、過剰のエチレングリコールを加え不活性化した。次に、エチレングリコールと低分子量の反応産物を一晩、4°にて、分子量カットオフ6,000 のSpectra/Por 透析チューブ(Spectrum Medical Industries)を用い、0,1Mのアセテート緩衝液(pH5.5 )に対し透析し除いた。酸化ヘパリンの残留活性はは95単位/mg であった。
【0110】
酸化ヘパリン濃度を0.1Mアセテート緩衝液中(pH5.5 )15mg/ml に調整し、等量の20mg/ml のフォトポリヒドラジド水溶液を室温で一晩反応させた。さらに精製することなくヘパリンポリマーを用い、生物材料をコーティングした。
ヘパリンは本書記載の如くに合成され、孔サイズ0.45mmの再生セルロール(RC)メンブレン上に固定された。直径1インチのRCメンブレンをヘパリンポリマーと15分間反応させ、風乾し、続いて両面、45秒づつ光照射した。円盤をまず10%PBS で洗い、続いてPBS 中にて未結合のヘパリンポリマーを除去した。
【0111】
E.ヘパリンコートされたメンブレンによるトロンビン阻害の評価
ヘパリンの抗血栓活性は、それが持つ凝固カスケードへの関わりが知られているプロテアーゼであるトロンビンの阻害に依存している。ヘパリンはまず抗トロンビンIII(ATIII )に結合し、トロンビン活性を阻害する。次にヘパリン/ATIII 複合体はトロンビンに結合してこれを不活性化し、その後ヘパリンは放出され別のATIII に結合できる。固定されたヘパリンによるトロンビンの阻害のアッセイは、トロンビン及び既報の方法による発色性ペプチド基質の切断を測定することで実施される。
【0112】
各アッセイは、0.85mgのBSA (Sigma Chemical社)、10mUのヒトトロンビン(Sigma Chemical社)、100mU/mlのATIII (Baxter Biotech, Chicago, IL )及び0.17μmoleの発色性トロンビン基質S-2238(Kabi Pharmacia, Franklin, OH) を含む1ml のPBS 中で実施した。このアッセイ液に未コーティングあるいはヘパリンコーティングしたメンブレン(メンブレン上のヘパリン活性を測定する)あるいは標準濃度のヘパリン(ヘパリン含有量に対する吸光度の標準曲線を作製する)を加えた。加えたヘパリン量は、2.5 ないし25mUの範囲である。37℃で2時間反応させた後、トロンビンによるS-2238の分解により生じた、405nm の吸光として測定される発色を分光光度計を用いて読みとった。
【0113】
吸光度はトロンビンの活性に直接相関し、従って溶液中ヘパリンまたは基質表面上に固定されたヘパリンにより誘導されたATIII 活性化量に逆相関していた。表面に結合したヘパリンの活性は、メンブレン作用時に生じた吸光度値と、既知量のヘパリン添加時に生じた吸光度値を比較し計算された。
次に本アッセイを用いてコーティング済及び未コーティングRCメンブレン上に存在するヘパリン活性を調べた。コーティング済みメンブレンのヘパリン活性は255mU/平方cmであり、一方未コーティングの活性は<0.1mU/平方cmであった。
【0114】
実施例4リシンポリマー
A.N-α-[6-(マレイミド)ヘキサノイル]リシンの合成
6−マレイミドヘキサン酸2.24g (10.6mmol)(実施例1記載の如くに調整)を10.76g(84.8mmol)の塩化オキサリルに溶解し、ニート液として4時間、室温で攪拌した。次に過剰の塩化オキサリルを減圧して除き、得られた酸性塩化物を25mlの塩化メチレンに溶解した。この液を、3.60g (10.6mmol)のN-ε-t-BOC リシンt−ブチルエステル塩酸(Bachem California )を含む25mlの塩化メチレンと3.21g(31.7mmol)のTEA の液に、攪拌しながら加えた。
【0115】
得られた混合液をさらに窒素下で一晩攪拌した。その後、混合液を水で処理し、有機層を分離、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を除き、産物を0-5 %メタノールのクロロフォルム溶媒勾配を用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーのカラムにかけ精製した。所望分画を集め、溶媒を蒸発して5.20g の産物(収率98%)を得た。NMR 分光計の分析の結果は所望産物と合致した。
保護されたアミノ酸誘導体0.566g(1.14mmol)を5ml のトリフルオロ酢酸中に攪拌して溶解した。4時間、室温で攪拌した後、溶媒を減圧下に除いた。得られた油をエーテルと共に粉砕し、残存トリフルオロ酢酸を除き、収率98%で373mgの産物を得た。NMR 分光計の分析結果は所望産物と一致した。
【0116】
B.ε−アミノリシンリガンドを含む光活性ポリアクリルアミド(リシンポリマー)の合成
アクリルアミド(0.22g 、3.10mmol)、BBA-APMA(0.014g、0.039mmol )及びN-α-[6-(マレイミド)ヘキサノイル]リシン(0.266g、0.784mmol ;本書記載の如く調整)を7.3ml の乾燥DMSOに溶解した。重合を開始させるため、8mg (0.047mmol )のAIBNおよび0.4 μl のTEMED を加え、続いて窒素を吹き込み全ての酸素を除いた。次に混合液を55℃で16時間加熱し、続いて減圧下にDMSOを蒸発させた。産物をDI水に溶解し、カットオフ分子量(MWCO)が6-8Kのチューブを用いてDI水に対し3日間透析した。得られた液を凍結乾燥した結果、160mg の産物を得た。
【0117】
C.ポリウレタン(PU)上へのリシンポリマーコーティングの生成
PUシートを1×1cm片に切り、IPA で洗浄し、乾燥させた。PU上でのリシンポリマー液の湿潤を向上するため、PU片をアルゴンプラズマ、250 ワット、0.25torrで1分間処理した。次にPU片をリシンポリマー液(本書記載の如くに調整、1mg/ml)に5分間浸し、風乾、30秒間光照射した。次にサンプルを一晩洗浄(1%Tween20 を含むpH7.4 のリン酸干渉生理食塩水を3回交換)し、未結合のリシンポリマーを除いた。コーティングされたPU片は、試験まで0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS 中に保存した。
【0118】
D.リシンポリマーコーティングの定量
リシンポリマー(上記の如くに調整)を、還元メチル化法により放射線標識し、ポリウレタン上に固定されたレベルの定量に用いた。照射有り無しの条件でPU片上にトリチウム標識リシンポリマーをコーティングし、固定されたリシンポリマーの密度を決定した。洗浄作業後、サンプルをSoluene-350 に溶解し、Hionic fluorで測定した(それぞれPackard Instrument社、Meriden 、CT)。下表は固定化レベル(±)をμg/cm2およびnmole/cm2で表している。各レベルは4重測定の平均値である。結果は光照射後の固定レベルが1,51μg/cm2であり、単層コーティングを生成するに十分以上の値であり、吸着コントロールで保持されたポリマーの3.8 倍であることを示す。
【0119】
【表10】

【0120】
E.リシンコーティングポリウレタンによるプラスミノーゲン結合の評価
シラン誘導ガラスにリシンが共有結合することが報告されており、さらに得られたリシン誘導化ガラスは、リシンが十分な蛋白分解活性を保持したままプラスミノーゲン結合を促進すると報告されている。この様な表面については、血液接触時の血栓形成に対する抵抗性向上が期待される。従来の研究で用いられたコーティング化学は、短いスペーサーを利用しており、表面はガラスに限定されていたが、光活性リシンポリマーは広い範囲の生物材料に高密度に適用できる。
【0121】
リシンポリマー中のリシン成分はα−アミノ基を介してポリマー主鎖に結合され、ε−アミノ基は自由にプラスミノーゲンと結合する。従ってリシンポリマーでコーティングされたPUは、血液よりプラスミノーゲンを可逆的に結合し、結合したプラスミノーゲンがフィブリンを分解するタンパク質分解活性を示し、コーティング表面上でのフィブリン塊の形成を阻止することで血栓形成を阻害することが期待される。
【0122】
実施例5プロスタグランジンポリマー
A.一級アミンリガンドを含む光活性ポリアクリルアミド(アミンポリマー)の合成
アクリルアミド(7.46g 、105.1mmoles )、APMA-HCl(2.14g 、11.9mmoles)及びBBA-APMA(0.837g、2.39mmoles)の170ml のDMSO液を調整した。この液にAIBN(0.246g、1.50mmoles)及びTEMED (0.131g、1.13mmoles)を加えた。次にこの液にヘリウムガスを10分間吹き込み脱酸素し、密封し、55℃のオーブン内に18時間放置して重合を完成させた。
【0123】
ポリマー液を水で希釈し、12,000〜14,000MWCO透析チューブを用いて脱イオン水に対し透析し、溶媒、未反応モノマーならびに低分子量オリゴマーを除いた。最終産物は凍結乾燥して分離され、光基は265nm のUV吸光度より決定される。ポリマーのアミン含有量は、トリニトロベンゼンスルフォネート(TNBS)法を用いて決定される。光基及びアミン負荷量は、重合に用いるモノマー量を調整することで変えることができる。
【0124】
B.プロスタグランジンE1リガンドを含む光反応ポリアクリルアミド(プロスタグランジンE1ポリマー)の合成
プロスタグランジンE1(Sigma Chemical社)(30mg、0.0846mmole )を含む5ml の乾燥1,4-ジオキサン液を調整し、この液にNHS (10.7mg、0.0931mmole )およびDCC (26.2mg、0.127mmole)を加えた。混合液を一晩、室温で攪拌し、副産物である1,3-ジシクロヘキシル尿素(DCU )が形成された。固形物を濾過して除き、濾過ケーキを1,4-ジオキサンで濯いだ。溶液を減圧下して除き、得られた産物を乾燥条件下に保存し、精製せずに使用した。
【0125】
アミンポリマー(上記の如く合成)を10mg/ml の濃度にDMSO中に溶解し、続いてアミンポリマー液のアミン含有量に対し1.5 当量のNOS-誘導プロスタグランジンE1を加えた。5当量のトリエチルアミンを加え、反応の触媒を助けた。一晩反応させた後、ポリマー液を12,000〜14,000MWCOの透析チューブを用いて脱イオン水に対し透析し、過剰の低分子量反応物を除いた。産物は透析乾燥し単離した。
【0126】
C.カルバサイクリンリガンドを含む光反応ポリアクリルアミド(カルバシリンポリマー)の合成
カルバサイクリン(Sigma Chemical社)(5mg 、0.0143mmole )を含む2ml の乾燥1,4-ジオキサン液を調整し、この液にNHS (1.8mg 、0.0157mmole )およびDCC (4.4mg 、0.0215mmole )を加えた。混合液を一晩、室温で攪拌すると、副産物であるDCU が形成された。固形物を濾過して除き、濾過ケーキを1,4-ジオキサンで濯いだ。溶液を減圧下して除き、得られた産物を乾燥条件下に保存し、精製せずに使用した。
【0127】
アミンポリマー(上記の如く合成)を10mg/ml の濃度にDMSO中に溶解し、続いてアミンポリマー液のアミン含有量に対し1.5 当量のNOS 誘導したカルバサイクリンを加えた。5当量のTEA を加え、反応の触媒を助けた。一晩反応させた後、ポリマー液を12,000-14,000MWCO の透析チューブを用いて脱イオン水に対し透析し、過剰の低分子量反応物を除いた。産物は透析乾燥し単離した。
【0128】
D.プロスタグランジンポリマーコーティング
各プロスタグランジンポリマー(上記の如く調整)を50%(v/v )IPA 水溶液中に5mg/mlになる様希釈し、生物材料サンプル(ポリウレタン、シリコンゴムおよびポリエチレン)に加えた。各ポリマーに加えるプロスタグランジン含有ポリマー液の量は、各生物材料の表面を覆うに正に十分な量である(約100ml/cm2)。ポリマー液は各サンプル上で乾燥させ、その後各サンプルに1〜2分間光照射した。
プロスタグランジンE1及び下ルバサイクリン(プロスタグランジンI2;PGI2の安定類似体)は共に、血小板活性化及び血栓形成を阻害することが知られている。従って、プロスタグランジンコーティングにより、生物材料上での血小板の活性化及び血栓形成が阻害されると期待される。
【0129】
実施例6プロテインAポリマー
A.N−スクシンイミジル6−メタクリルアミドヘキサノエート(MAm-EAC-NOS )の合成
ε−アミノカプロン酸(EAC )2,00g (15.25mmol )を乾燥した丸底フラスコに入れ、続いて2.58g (16.73mmol )も無水メタクリル酸を加えた。得られた混合液を室温にて4時間攪拌し、続いてヘキサンと共に粉砕した。ヘキサンを移し、産物を更に2回粉砕し、アクリル化産物3.03g を得た(収率>99%)。
【0130】
追加精製なしに、産物を50mlのクロロフォルムに溶解し、さらに1.922g(16.7mmol)のNHS および6.26g (30.3mmol)のDCC を加えた。混合液を、湿気を防ぎながら一晩、室温にて攪拌した。生じた固形物を濾過して除き、濾過ケーキをクロロフォルムで濯いだ。溶媒は、重合を阻害するために5ppmのヒドロキノンのモノメチルエーテルと共に減圧して除いた。残査4.50g を45mlの乾燥THF に再溶解し、溶液は追加精製なしに用いた。
【0131】
B.プロテインAリガンド含有光活性ポリアクリルアミド(プロテインAポリマーの合成
潜伏反応性NOS ポリマーを調整するために、アクリルアミド(1.0gm、14.1mmole )を15mlの乾燥THF に溶解した。この液に44mg(0.149mmole)のMAm-EAC-NOS (本書記載の如くに合成した)及び158mg(0.45mmole )のBBA-APMA(実施例1記載の如くに合成した)を加えた。この液を窒素ガスにて泡立て、55℃、18時間反応し重合した。濾過により不溶性ポリマーを集め、続いて乾燥DMSOに溶解した。攪拌しているエタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、続いて濾過により収集し、使用時まで保管するために乾燥した。回収産物は0.906gm であった。
【0132】
プロテインAを潜伏反応NOS ポリマーに結合するため、組み換え体ブドウ球菌プロテインA(Calibochem-Novabiochem Corp., San Diego, CA)を10mg/ml の濃度に0.1M炭酸緩衝液、pH9 中に溶解した。潜伏反応性NOS ポリマーを100mg/mlの濃度に50mMリン酸緩衝液、pH6.8 に溶解した。続いて、200 μl (20mg)のNOSOポリマーを1ml(10mg)のプロテインA液に加え、混合液を一晩、4℃で反応した。標準的なナトリウムドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による試験から、得られたプロテインAポリマー中に加えたプロテインAの80%以上が取り込まれていることが示された。プロテインAポリマー液は、追加精製なしに生物材料のコーティングに使用した。
【0133】
C.生物材料上へのプロテインAポリマーコーティングの生成
次にプロテインAポリマーを、2種類のメンブレン、孔サイズ0.2mm のポリスルフォン)PSO )メンブレン(Gelman Sciences, Ann Arbor社, MI製HT-200メンブレン)および孔サイズ0.45mm(Sartorius, Edgewood, NY 製no.SM18606)再生セルロース(RC)メンブレンに光結合した。各メンブレンは直径1mm の円盤に形成された。プロテインAポリマー添加前に、各メンブレンをまずイソプロパノール:0.1 規定HCl1:1で洗浄し、続いて水で洗浄した。
【0134】
次にプロテインAポリマー(推定濃度8.67mg/ml )を各メンブレンに加え(4〜6円盤当たりポリマー1ml )、一晩、4℃で反応させた。続いて、円盤をポリマー液より取り出し、風乾、温度コントロール(10℃)されたチャンバー内で両面を1分間光照射した。光照射は本書記載のDymax ランプにより行った。
次にメンブレンを洗浄し、未結合のプロテインAを除いた。洗浄は、コーティングされた円盤をメンブレンホルダー(MAC-25ホルダー、Amicon, Beverly, MA)に、各ホルダー当たり2-4 枚のメンブレンを入れ行った。続いてメンブレンを1)0.1Mグリシンの2%酢酸液10ml、2)10×PBS 、10mlおよび3)30mlのPBSで順次洗浄した。続いて、使用するまで洗浄したメンブレンは0.05%のアジ化ナトリウムを含むPBS 中に保存した。
【0135】
D.生物材料上のプロテインAポリマーコーティングの活性評価
プロテインAは、免疫グロブリンG(IgG )分子のFc域に特異的に結合する細菌由来蛋白である。各種メンブレン上のプロテインAコーティングの活性は、加えたIgG による結合を調べる評価した。未コーティングメンブレンをコントロールとした。本アッセイでは2ml のウサギ血清をPBS で1:5 に希釈し、2-3ml/分の速度でコーティングメンブレンを灌流した。続いてメンブレンをPBS で洗浄し、未結合のIgG を除いた。次に結合したIgG を0.1Mグリシンの2%酢酸液で溶出した。
【0136】
溶出液の280nm 吸光度を測定し、1.4ml/cm-mg の吸光係数(ε280)を用いて溶出IgG のmgを計算し、溶出IgG 量を決定した。さらに還元SDS PAGE分析によりプロテインAでコーティングされた各種メンブレンより溶出されたIgG の純度について検定した。プロテインAポリマーによりコーティングされた生物材料では、溶出蛋白は90%以上がIgG の軽鎖および重鎖であった。逆に、未コーティングコントロールより溶出された主要な蛋白はアルブミンであった。
各種(PSO またはRC)円盤について、3枚をMAC-25ホルダーに入れ、本法を用いて評価した。下表に各種メンブレンより溶出されたIgG の平均量を示す;値は、3枚のPSO 円盤に関する10回測定(10サイクル)の平均値、及び3枚のRC電番に関する3回測定(3サイクル)の平均値である。
【0137】
【表11】

【0138】
これらの結果は、各種コーティングメンブレンは、対応する未コーティングコントロールに比べて34-64 倍のIgG を結合することを示している。さらに血清付加とIgG 溶出を10回繰り返した後もIgG 溶出が減少しないことから、ポリマー中のプロテインAは安定した立体構造を有し、頑強に結合している。
【0139】
実施例7IgG ポリマー
A.N−オキシスクシンイミドリガンドを含む光反応ポリアクリルアミド(NOS ポリマー)の合成
アクリルアミド、3.897g(0.0548mol )を53mlのTHF に溶解し、続いて0.115g(0.70mmol)のAIBN、0.053ml のTEMED 、0.204g(0.58mmol)のBBA-APMA(実施例1記載の如くに調整)及び0.899g(2.9mmol )のN−スクシンイミジル6−マレイミドヘキサノエート(実施例3記載の如くに調整)を加えた。この溶液にヘリウムを4分間、続いてアルゴンを4分間吹き込み脱酸素した。続いて密封容器を一晩、55℃で加熱し重合を完成させた。沈殿したポリマーを濾過により単離し、30分間100ml のTHF 中に攪拌し、洗浄した。最終産物を濾過により回収し、真空オーブン中で乾燥、収率94%、4.688gの固形物を得た。
【0140】
B.IgG リガンドを含む光反応ポリアクリルアミドの合成と固定
IgG 分子は特異抗原に結合する抗体分子の一分類である。トリチウム標識したウサギ抗グルコース酸化酵素IgG を用いることで、トリチウム標識体をIgG の固定化レベルの定量に利用することができ、グルコース酸化酵素の結合を調べ、IgG活性をアッセイすることができた。NOS ポリマー(50mg)(本書記載の如くに調整)を100mg の[3H]IgG (100ml の.1M 炭酸ナトリウム液、pH9 )に加え、一晩4℃で反応した。IgG ポリマーは、追加精製なしに使用した。
【0141】
ポリエステルメンブレン(Pall社製造のAccuwick)を6mm 円盤に切断し、IgGのポリマーの一部4 μl を19μの円盤それぞれにスポットした。3枚の円盤は光照射または洗浄せずままにコントロールとした。8枚の円盤には1分間の光照射を行い、さらに8枚の円盤は光照射せずに置いた。後者の8枚の光照射円盤及び8枚の非光照射円盤を、1%ラクトース、1%BSA 及び0.1 %Brij35を含む25mMのビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(BIS-TRIS)、pH7.2 により洗浄した。
【0142】
IgG ポリマーの固定レベルを定量化するために、3枚のコントロール(未コーティング、未洗浄)円盤及び光照射円盤及び非光照射状態の円盤各3枚をSoluene (0.5ml )に溶解し、5ml のHionic Fluor内で測定した。結果は下表に報告した。コントロール(未コーティング、未洗浄)と光照射(洗浄)の比較より、加えられたIgG ポリマーの75%が光照射後保持されていることが示された。これに対し非光照射サンプルでは、加えられたIgG ポリマーの12.5%のみが保持された。
【0143】
【表12】

【0144】
固定されたIgG の活性を定量するために、残りの5枚の光照射円盤および5枚の非光照射円盤を0.1mg/mlのグルコース酸化酵素のPBS 液中で1時間反応し、TNT (0.05M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、0.15M NaCl, 0.05%Tween-20)で5回洗浄した。次に各ディスクを96ウエル型マイクロタイタープレートのウエルに移し、200 μl の3,3',5,5'-テトラメチルベンジチジン(TMB )発色混合液(Kirkegaard&Perry Laboratoriesl 社製TMB 試薬、100 μl及び0.2Mリン酸ナトリウム液、pH5.5 、100 μl、グルコース10mg及び西洋ワサビパーオキシダーゼ4μg )を加え、20分間放置し発色させた。次に一部(100 μl )を別のマイクロタイタープレートに移し、655nm の吸光度を測定した。光照射サンプルと非光照射サンプルとの比較より、光照射サンプルでは61%以上の活性が発現していることが示された。
【0145】
実施例8ストレプトアビジンポリマー
A.ストレプトアビジンリガンドを含む光活性ポリアクリルアミドの合成
ストレプトアビジン(InFerGene Company, Benicia, CA)をNOS ポリマー(実施例6記載の如く調整)に結合した。ストレプトアビジン(15mg)を1.5ml の0.1M炭酸緩衝液(pH9.0 )に溶解した。NOS ポリマーを調整し、5mM の酢酸緩衝液(pH5.0 )に最終濃度を100mg/mlになるよう溶解した。NOS ポリマー液(0.3ml)をストレプトアビジン液(1.5ml )に加え、混合液を一晩、4℃にて攪拌した。得られたストレプトアビジンポリマーは、追加の精製および確認試験無しに使用した。
【0146】
B.表面上でのストレプトアビジンコーティング生成
硬質ガラス製ロッド(直径3mm ×長さ3cm )を、1:1 (v/v )のアセトンの0.1 規定HCl 液内、30分間超音波をかけ、洗浄し、水、アセトン中で濯ぎ、100 ℃にて1時間乾燥、冷却後、使用するまで乾燥し保存した。ビス(トリメトキシルエチル)ベンゼン(United Chemical Technologies, Inc., Bristol, PA 製)をアセトン中に10%(v/v )に希釈した。ロッドをシラン試薬に30秒間浸け、風乾し、水に30秒間浸し、取り出してから100 ℃で15分間キュアし、アセトンで濯いだ。
【0147】
有機シランでプライムしたガラスロッドをストレプトアビジンポリマー液に30秒間浸した。ガラスロッドを液より取り出し、風乾、30秒間Dymax ランプで光照射した。吸着コントロールは、光照射しない以外同様の方法にて調整した。両コーティングタイプロッドを0.05%Tween20 を含むPBS で洗浄し、非吸着ストレプトアビジンポリマーを除いた。
【0148】
C.固定ストレプトアビジンポリマーの評価
ストレプトアビジンは、ビオチンをそのリガンドとして強固に結合する受容体である。ストレプトアビジンポリマーコーティングの活性は、加えたビオチン誘導化西洋わさびパーオキシダーゼ(ビオチン-HRP、Peirce Chemical 社、Rockford、IL製)の結合を定量し、求めた。ガラスロッドを1時間、9μg/mlのビオチン-HRP液内で反応した。
【0149】
非誘導型HRP (9μg/ml添加)の結合を調べ、ガラスロッドへのHRP の非特異的結合のコントロールとした。次にロッドを0.05%Tween20 を含むPBS で洗浄して非結合のHRP を除き、TMB パーオキシダーゼ基質システム(Kirkegaard and Perry Laboratory, Inc., Gaithersburg, MD )を用い結合HRP の相対活性を評価した。HRP はTMB の酸化を触媒し、405nm の分光光度計測により定量される色を生じる。結果はそれぞれ3重測定の平均値である。
【0150】
【表13】

【0151】
結果は予想した傾向を示しており、ロッドを光固定ストレプトアビジンポリマー(共有結合ストレプトアビジンポリマー)によりコーティングし、これにビオチン-HRPを加えた時、最大のパーオキシダーゼ活性が観察された。吸着(非光照射ストレプトアビジンポリマーの生成するパーオキシダーゼ活性は3.5 倍低く、ストレプトアビジン及び/またはビオチンを欠いた残りのケースは殆どパーオキシダーゼ活性を有していなかった。
【0152】
実施例9ビオチンポリマー
光活性アミンポリマー(80mg)(実施例5の如く合成した)を2ml のDMSOに溶解した。このポリマー液に40mgのビオチンアミドカプロン酸3−スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma Chemical社)及び0.05mlのトリエチルアミンを加えた。溶液を2時間、室温で混合し、次に脱イオン水に対し透析し、ポリマーと結合していないビオチンを除いた。
ビオチンポリマーの液(1.0mg/ml脱イオン水溶液)をポリスチレン製マイクロタイタープレートのウエルに加え、1時間反応し、その後プレートに1-2 分間光照射した。次にプレートを脱イオン水で洗浄し、未結合のビオチンポリマーを除いた。
【0153】
ビオチンはストレプトアビジンを受容体として結合するリガンドである。ポリスチレン製マイクロタイタープレートをビオチンポリマーでコーティングし、ストレプトアビジンの結合を調べることで活性を評価した。ストレプトアビジン液を、ビオチンポリマーでコーティングされたプレートに加え、脱イオン水で洗浄し未結合ストレプトアビジンを除いた。ビオチン-HRPを加え残留ストレプトアビジンを定量し、HRP 活性を評価した。
【0154】
実施例10マガイニンポリマー
A.マガイニンペプチドモノマーの合成
本実施例ではマガイニン- 2を使用し、BSI についてはBachem社(Torrance、CA)により特別に合成され、ペプチドのカルボキシル末端にシステインが付加された。得られたマガイニンの配列はGIGKFLHSAK KFGKAFBGEI MNSCであった。実施例1記載の如く、下線を付したC(C)は非天然アミノ酸で、スルフヒドリル基を介し結合できる様加えられた。
【0155】
マガイニン(2.36μmole)を0.5ml の脱気水に溶解した。この液に2.36μmoleのMal-MAm (20μl のクロロフォルムに溶解)及び0.5ml のエタノールを加えた。90分間、室温で攪拌し反応した後、液を窒素下に乾燥させ、1ml の水に再懸濁した。MicroBCAアッセイ(Pierce Chemical Company, Rockford, IL 社製キット)により決定したところ、回収されたマガイニンモノマー液には5.5mg/mlのマガイニン成分が含まれてた。
【0156】
B.マガイニンリガンド含有光活性アクリルアミド(マガイニンポリマー)の合成
BBA-APMAを濃度10mg/ml になるようDMSO中に溶解し、アクリルアミドを濃度100mg/mlになるよう水に溶解した。合成後、マガイニンモノマー(220 μl の水の中0.48μmole)は精製しなかった。適当量のBBA-APMA(44μl のTHF 中0.25μmol )及びアクリルアミド(120 μl の水の中6.9 μmol )を反応バイアルに入れた。更に300 μl のTHF を加え、混合液を15分間水道吸引して脱気した。
【0157】
過硫酸アンモニウム(10%保存水溶液6.8 μl )及びTEMED (1.5 μl)を加え、重合を触媒した。混合液を再度脱気し、密封したデシケーター内で一晩、室温にて反応した。得られたマガイニンポリマーを4℃で水に対し透析し(Spectra/Por50,000MWCO 透析チューブ:Spectrum社、Houston 、TX)、取り込まれなかった反応物を除いてから凍結乾燥した。メタクリルオイルマガイニンの合成に用いた1.2mg のマガイニンペプチドの内0.35mgが可溶化マガイニンポリマー中に存在した。
【0158】
C.固定マガイニンポリマーの評価
マガイニンは元来アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の皮膚より分離された陽イオン性ペプチド抗生物質である。それは広範囲の病原菌に対し活性であり、病原菌表面に作用する。マガイニンポリマーの活性は、細菌の増殖阻害に必要なマガイニンポリマーの最小阻止濃度(MIC )を決定する標準液アッセイ法により評価した。マガイニンポリマーのMIC は大腸菌(Escherichia coli)(ATCC No.25922 )及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(ATCC No.12228 )に対しては50μg/mlであったが、天然の単量体マガイニン(マガイニンモノマーまたはマガイニンポリマーのいずれにも取り込まれない)の大腸菌に対するMIC は6.25〜12.5μg/mlであり、表皮ブドウ球菌に対するMIC は25μg/mlであった。
【0159】
マガイニンポリマーを50%(v/v)IPA 水溶液中に250 μg/mlまで希釈し、生物材料サンプルに加えた(PU、SRおよびPE)。各ポリマーには、各生物材料の表面を過不足無く覆うの容積のマガイニンポリマーが加えられた(約100 μl/cm2)。ポリマー液をサンプル表面上で乾燥させ、その後各サンプルに1〜2分間光照射した。コーティングされたサンプルは0.1 規定のHCl で洗浄し、さらにPBS で洗浄した。
【0160】
固定されたマガイニンポリマーの抗細菌活性は遠心分離アッセイにより測定した。生物材料シートを直径1.5cm の円盤に切り出し、マガイニンポリマーでコーティングし、24ウエル型培養プレートの各ウエル内に入れた。細菌(大腸菌及び表皮ブドウ球菌)をPBS 中に200-400 コロニー形成単位/mlで懸濁した。細菌懸濁液の一部1ml をマガイニンコーティングされた生物材料が入ったウエルに加え、プレートを3500×g、4℃で20分間遠心分離し、細胞をコーティング生物材料円盤上に沈殿させた。次にこの円盤をトリプシン大豆寒天(TSA )細菌培養プレートに入れ、TSA の薄層を重層した。一晩37℃で培養した後、円盤上で増殖した細菌コロニーの数を測定した。マガイニンポリマーコーティングは細菌の増殖を阻止し、非コーティングコントロールに比べ増殖する細菌のコロニー数は少ないと考えられた。
【0161】
実施例11β−ガラクトシダーゼポリマー
A.β−ガラクトシダーゼを含む光反応ポリアクリルアミド(β−ガラクトシダーゼポリマー)の合成
NOS ポリマー(実施例6の如くに調整)50mg/ml 、及びβ−ガラクトシダーゼ(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN )6.4mg/mlを含む、0.1M炭酸ナトリウム液、pH9 の混合体を調整した。混合液を室温で1時間反応させ、一晩4℃に保存した。得られたβ−ガラクトシダーゼポリマー液は、精製せず架橋フィルム生成に使用した。
【0162】
B.架橋フィルム生成
フィルムは、β−ガラクトシダーゼポリマー液(本書記載の如く合成)の一部40mlをテフロン(登録商標)ブロック上に置き、各液を乾燥させ生成した。得られたフィルムに上記同様に0.5 または4分間光照射した。
【0163】
C.フィルム集結度のアッセイ
フィルム集結度は、PBS 液内におかれた後もフィルムがその形状を維持するか否か決定し、アッセイした。0.5 分間光照射されたフィルムは生理食塩水暴露で溶解した;4分間光照射したフィルムはその形状を維持した。これらの結果は、BBA 基の光活性化により本発明のポリマー分子に共有結合の架橋が生成されたことを示す。
【0164】
架橋されたβ−ガラクトシダーゼポリマーを1ml のPBS で3回洗浄し、取り込まれなかった酵素を除いた。最後の洗浄液(0.2ml )及び回収したフィルムそれぞれの酵素活性を、1mg/mlのo−ニトロフェノール−β−D−ガラクトピラノシド(o-NPG )(Pierce、Rockford、ILより入手)水溶液を用い、”ウォ−シントン酵素マニュアル(Worthington Enzyme Manual )”(Worthington Biochemical Corp., Freehold, NJ,1977)に記載の方法を利用し分析した。最終洗浄液はβ−ガラクトシダーゼ活性を示さなかったが、フィルムは黄色のニトロフェノール産物を生じた。この結果は、本発明のポリマーを架橋し不溶性生物材料を形成した後もβ−ガラクトシダーゼ成分が活性を持つことを示した。
【0165】
実施例12DNA ポリマー
主要組織適合性複合体のH-2Kb遺伝子のエクソン1に由来する配列を持つモデルオリゴデオキシヌクレオチドプローブ(オリゴDNA )を合成し、捕捉プローブとして使用した。オリゴDNA 捕捉プローブの配列は5'-GTCTGAGTCG GAGCCAGGGC GGCCGCCAAC AGCAGGAGCA-3'で、5'末端に一級アミンで終止する脂肪族C12 スペーサーを付し合成された。オリゴDNA 捕捉プローブ(80μg 、または6nmole)は、C12スペーサーの末端アミノ基を介し、50mMリン酸緩衝液(pH8.5 、1mM EDTA、最終容積0.24ml)中の160 μg の本書記載のNOS と室温で2.5 時間結合した。得られたDNA ポリマーは追加精製または検査することなく使用した。
【0166】
DNA-ポリマーをウエル当たり10pmole (0.1ml 液中)、マイクロタイタープレートのウエル(ポリプロピレンプレート、Cornign Costar社、Cambridge 、MA)に加え、10〜30分間反応した。300nm 以下の波長の光を除去するフィルターを使用した以外は本書記載と同様にして、Dymax ランプを利用しDNA ポリマー液を含むプレートに光照射した。コントロールでは、オリゴDNA 捕捉プローブ(50mMリン酸緩衝液、pH8.5 、1mM EDTA、0.1ml 中に10pmole )をウエルに加え2.5 時間吸着させるが、光照射は行わなかった。プレートを0.05%Tween20 のPBS 液を含むリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、未結合のDNA-ポリマーまたはコントロールのオリゴDNA 捕捉プローブを除いた。
【0167】
本書記載の捕捉プローブに相補的配列を持つ検出プローブを、5'末端にビオチンを付し合成し、固定されたDNA ポリマーの活性評価に用いた。検出プローブの配列は、5'-CCGTGCACGCT GCTCCTGCTG TTGGCGGCCG CCCTGGCTCC GACTCAGAC-3'である。H-2Kb遺伝子のエクソン2由来の非相補的配列を含み、5'末端にビオチン成分持つコントロールの検出用プローブも合成した。
【0168】
各検出プローブの結合は、続いてストレプトアビジン−西洋わさびパーオキシダーゼ標識体(SA-HRP、Pierce社製、Rockford、IL)を加え、結合したHRP の活性を測定し、アッセイした。本アッセイでは、コーティングしたプレートはハイブリダイゼーション緩衝液(0.75M NaCl, 0.075Mクエン酸、pH7.0 、0.1 %ラウロイルサルコシン、1%カゼイン及び0.02%ナトリウムドデシル硫酸)で55℃、30分間ブロックされた。相補的及び非相補的検出プローブをウエル当たり、0.1ml のハイブリダイゼーション緩衝液当たり50fmole 加え、1時間、55℃で反応した。次にプレートを0.1 %SDS を含む0.3MのNaCl、0.03M の酢酸、pH7.0 で5分間、55℃にて洗浄した。SA-HRPを0.5 μg/ml加え、30分間、37℃で反応した。
【0169】
次にプレートを0.05%Tween20 のPBS 液で洗浄し、続いてパーオキシダーゼの基質(Kirkergarrd & Perry Laboratories, Gaithersburg, MD社製TMB Microwell Peroxdase substrate system)を加え、マイクロプレートリーダー(モデル3550、Bio-Rad Labs, Cambridge, MA )にて655nm の吸光度を測定した。ポリプロピレンプレートは不透明であるため、反応後の基質液はポリスチレンプレートに移し、吸光度を測定した。光固定DNA-ポリマーでコーティングされた、またはオリゴDNA 捕捉プローブを吸着させたポリプロピレン製マイクロウエル(n=3 )のハイブリダイゼーションシグナル(A655)。
【0170】
【表14】

【0171】
上記の表の結果は、光固定したDNA-ポリマーまたは吸着オリゴDNA 捕捉プローブ(n=3 )でコーティングしたポリプロピレンマイクロウエルのハイブリダイゼーションシグナルを示す。これら結果は、光固定DNA ポリマーは吸着コントロールに比べ32倍相補的検出プローブを結合し、いずれのコーティングも非相補的プローブは結合しないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)好適なエネルギー源への暴露により活性化することができる1以上のペンデント光反応成分、及び(b)相補基と特異的に非共有結合的相互作用が可能な2以上のペンデント生物反応基を含み、光反応成分の活性化によりバルク物質または表面コーティングを形成することにより、前記相補基の牽引を促進すことができる多2官能価試薬。
【請求項2】
生物材料表面上にコーティングを形成するために、前記光反応成分を活性化して該試薬分子と生物材料表面間に分子間共有結合を形成することができる請求項1の多2官能価試薬。
【請求項3】
バルク材料を形成するために、光反応成分を活性して近接する該試薬分子間に分子間共有結合を形成することができる請求項1の多2官能価試薬。
【請求項4】
前記生物活性基が相補的分子または細胞受容体との特異的結合に関与する請求項1の多2官能価試薬。
【請求項5】
前記生物活性基がそれぞれ独立に、分子または細胞の特異的部位及び相補的部位と非共有結合できる蛋白、ペプチド、アミノ酸、炭水化物及び核酸から成る群より選択される請求項4の多2官能価試薬。
【請求項6】
前記生物活性基がそれぞれ既知のまたは同定可能な相補的結合パートナーを有し、かつそれぞれが独立に抗血栓作用物質、細胞接着因子、受容体、リガンド、成長因子、抗生物質、酵素及び核酸から成る群より選択される、請求項1の多2官能価試薬。
【請求項7】
前記生物活性基が、ヘパリン、ヒルジン、リシン、プロスタグランジン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ及びプラスミノーゲン活性化因子から成る群より選択される抗血栓作用物質を含む、請求項6の多2官能価試薬。
【請求項8】
前記生物活性基が、表面接着分子及び細胞−細胞接着分子から成る群より選択される細胞接着因子を含む、請求項6の多2官能価試薬。
【請求項9】
前記生物活性基が、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチン、テナスシン、フィブリノーゲン、トロンボスポンジン、オステオポンチン、フォンウイルブランド因子及び骨シアロ蛋白、及びその活性ドメインから成る群より選択される表面接着分子を含む、請求項8の多2官能価試薬。
【請求項10】
前記生物活性基が、N−カドヘリン及びP−カドヘリン、及びそれらの活性ドメインから成る群より選択される細胞−細胞接着分子を含む、請求項8の多2官能価試薬。
【請求項11】
前記生物活性基が、繊維芽細胞成長因子、上皮成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、血管内皮成長因子、骨形態形成蛋白及び他の骨成長因子、並びに神経成長因子から成る群より選択される成長因子を含む、請求項6の多2官能価試薬。
【請求項12】
前記生物活性基が、抗体、抗原、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ヘパリン、IV型コラーゲン、プロテインA及びプロテインGから成る群より選択されるリガンドまたは受容体を含む、請求項6の多2官能価試薬。
【請求項13】
前記生物活性基が、抗生物質ペプチドから成る群より選択される抗生物質を含む、請求項6の多2官能価試薬。
【請求項14】
前記生物活性基が、酵素を含む請求項6の多2官能価試薬。
【請求項15】
前記生物活性基が、相補的核酸配列と選択的に結合できる核酸配列を含む、請求項6の多2官能価試薬。
【請求項16】
主鎖がビニルポリマーの様な付加型ポリマーから成る群より選択される合成ポリマーを含む、請求項1の多2官能価試薬。
【請求項17】
前記各光基がそれぞれ光活性化可能なケトンを含む、請求項1の多2官能価試薬。
【請求項18】
(a)光活性化可能なケトンの形の1以上のペンデント光反応成分、及び(b)蛋白、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、核酸、及び分子または細胞の特異的及び相補的部分と非共有結合できる他の分子から成る群より選択される2以上のペンデント生物活性基、を有する合成ポリマー主鎖を含む多2官能価試薬。
【請求項19】
(a)(i)好適なエネルギー源に暴露することにより活性化できる1以上の光反応成分、及び(ii)相補的な基と特異的、非共有結合できる2以上のペンデント生物活性基を有するポリマー主鎖を含む多2官能価試薬を提供する工程;(b)表面を試薬と接触させる工程;並びに(c)試薬分子をそれ試薬自体に、及び/または表面と架橋するために光反応成分を活性化する工程;
を含んで成る生物材料表面をコーティングする方法。
【請求項20】
スプレー、浸漬またはブラッシングにより試薬を表面にコーティングする、請求項19の方法。
【請求項21】
(a)(i)好適なエネルギー源に暴露することにより活性化できる1以上の光反応成分、及び(ii)相補的な基と特異的、非共有結合できる2以上のペンデント生物活性基を有するポリマー主鎖を含む多2官能価試薬を提供する工程;及び(b)バルク生物材料を形成するために試薬を活性化する工程;
を含むバルク生物材料を形成する方法。
【請求項22】
(a)好適なエネルギー源への暴露により活性化できる1以の光反応成分、及び(b)相補的な基と特異的、非共有結合できる2以上のペンデント生物活性基、を有するポリマー主鎖を当初より含む活性化された多2官能価試薬の結合した残基を有するコーティングされた生物材料表面。
【請求項23】
(a)好適なエネルギー源への暴露により活性化できる1以上の光反応成分、及び(b)相補的な基と特異的、非共有結合できる2以上のペンデント生物活性基、を有するポリマー主鎖を当初より含む活性化された多2官能価の結合した残基を含むバルク材料。

【公開番号】特開2012−63361(P2012−63361A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−252803(P2011−252803)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【分割の表示】特願2000−509453(P2000−509453)の分割
【原出願日】平成10年8月11日(1998.8.11)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】