生物学的流体の処理装置
本発明は、少なくとも3つのチャンバを含む生物学的流体の処理装置(1)であって、前記生物学的流体を受容するために設けられる第1のチャンバ(3)と気体を受容するために設けられる第2のチャンバ(7)とが、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって互いに分離され、前記気体透過性且つ液体不透過性膜(9)が、前記第1のチャンバ(3)と前記第2のチャンバ(7)との間で気体分子を移動させるために用いられ、前記第1のチャンバ(3)と第3のチャンバ(13)とが、少なくとも1枚の液体透過性膜(15)によって互いに分離され、前記液体透過性膜(15)が、前記第1のチャンバ(3)と前記第3のチャンバ(13)との間で1以上の成分を移動させるために用いられる装置(1)に関する。前記第2のチャンバ(7)は、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって、区切られるか又は囲まれ、且つ、生物学的流体が第2のチャンバ(7)を取り囲むように、前記第1のチャンバ内に位置するか又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる。同様に、前記第3のチャンバ(13)は、少なくとも1枚の液体透過性膜(15)によって区切られるか又は囲まれ、且つ、前記生物学的流体が前記第3のチャンバ(13)を取り囲むように、前記第1のチャンバ内に位置するか又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的流体の処理装置、特に、生物学的流体の受容に適しているチャンバと、気体の受容に適している別のチャンバとを含み、前記チャンバが、気体透過性膜によって互いに分離されており、且つ前記気体透過性膜が、前記チャンバ間の気体分子の移動を可能にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1以上の気体をある媒体から別の媒体に移動させることができるのが給気装置又は脱気装置であり、1以上の気体を2つの媒体間で交換することができるのが気体交換装置である。かかる装置は、化学、バイオテクノロジー、及び医療の分野で用いられている。医療分野における重要な用途は、血液の酸素濃縮及び/又は血液からの二酸化炭素の除去である。かかる手段は、例えば、様々な種類の手術及び様々な肺疾患の治療に必須である。
【0003】
現在、末期の機能的肺疾患患者にとって長期間有効な治療法の唯一の選択肢が、肺移植である。肺の機能を永続的に肺に代わって果たすための他の医学的解決法は、存在しない。慢性肺疾患に罹患しており、且つ肺移植不適格である患者には、人工肺による補助が必要である。この例は、典型的に、数週間又は更には数ヶ月間に亘って肺機能を補助する必要がある未熟児である。また、肺移植を待っている患者にも肺補助装置が必要である。
【0004】
また、人工肺補助処置による治療を受けなければならない患者は、更に腎不全にも罹患していることが多い。肺不全を引き起こす可能性のある疾患は、大容量の輸液蘇生を必要とすることがあり、患者に大量の血液製剤が投与されることが多い。輸液により生じる物理的過負荷は、患者の症状を全体的に悪化させたり、肺水腫又は更には完全な器官不全を引き起こしたりする可能性がある。したがって、かかる患者は、更に血液透析又は血液濾過装置に接続される。しかし、これによって処理装置の配置が複雑になり、且つ患者の脈管系に大きなストレスがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、生物学的流体を処理するための改良された装置であって、化学、バイオテクノロジー、及び医療の分野で用いることができ、特に、血液における給気、脱気、又は気体交換に用いることができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1、請求項12、又は請求項32に係る装置により解決される。発明の好ましい態様を従属項に記載する。
【0007】
本発明は、少なくとも3つのチャンバを含む生物学的流体の処理装置であって、生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバと気体の受容に好適な第2のチャンバとが、少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜によって互いに分離されており、前記気体透過性且つ流体不透過性膜が、第1のチャンバと第2のチャンバとの間で気体分子を移動させる機能を有し、前記第1のチャンバと第3のチャンバとが、少なくとも1枚の液体透過性膜によって互いに分離されており、前記液体透過性膜が、第1のチャンバと第3のチャンバとの間で1以上の成分を移動させる機能を有する装置を提供する。
【0008】
それぞれの膜は、一般的に、半透過性であり、一般的に、所定の孔を有し、前記孔のサイズが、各膜の機能及び効果を決定する。換言すれば、任意の膜は、一方では多孔質膜、即ち、不連続な孔を含む膜であってもよい。他方、前記膜は、不連続な孔を有しない均質な可溶性膜であってもよく、この場合、透過物(例えば、気体)がポリマーに溶解することにより物質が確実に移動し、且つ前記ポリマーに対する可溶性が異なることにより分離が行われる。前記膜は、非多孔質透過性膜であることが好ましい。気体交換は、対流性且つ拡散性の物質移動/交換に付されてもよい。気体交換は、拡散によるものであり、膜の両側の気体濃度の差により決定されることが好ましい。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、第1のチャンバは、フローチャンバとして設計され、且つ入口及び出口を有する。また、第2のチャンバ及び第3のチャンバのうちの少なくとも1つもフローチャンバとして設計されることが好ましい。第1のチャンバは、第2のチャンバ又は第3のチャンバの流れ方向に対して反対方向又は横方向に流れることを意図し、且つそれに適していることが好ましい。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜によって、分離されるか又は前記膜に取り囲まれる。同様に、第3のチャンバは、少なくとも1枚の液体透過性膜によって、分離されるか又は前記膜に取り囲まれることが好ましい。
【0011】
それぞれのチャンバの間の膜は、あるチャンバから別のチャンバへの分子又は成分の移動又は通過が行われる分離又は接触表面を形成する。第1のチャンバと第2のチャンバとの間の少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜において、例えば、生物学的流体の給気及び/又は脱気を行うことができる。更に、第1のチャンバと第3のチャンバとを互いに分離する少なくとも1枚の液体透過性膜では、生物学的流体の更なる処理を実施することができる。生物学的流体を対象とする第1のチャンバは、第2のチャンバ及び第3のチャンバの両方との膜様分離又は接触表面を有しているので、本発明の装置を用いて、生物学的流体の2つの異なる処理を同時に実施することができる。換言すれば、本発明の装置は、生物学的流体の複数の処理を同時に行うことができる構造を提供する。本発明によれば、少なくとも1つのチャンバ、好ましくはチャンバ各々が、それぞれの膜又は膜構造を少なくとも部分的に形成する。本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバ及び第3のチャンバの各々は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、それぞれの膜によって、分離されるか又は前記膜によって取り囲まれる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバは、第1のチャンバ内に位置する、即ち、第2のチャンバは、第1のチャンバに実質的に取り囲まれる。同様に、第3のチャンバも、第1のチャンバに取り囲まれるように、第1のチャンバ内に位置することが好ましい。第2のチャンバ及び第3のチャンバを第1のチャンバ内に配置し、第1のチャンバによって取り囲むことにより、それぞれのチャンバ間の分離表面を最大化することができる。したがって、膜により形成されるそれぞれのチャンバの全体を取り囲む表面は、第1のチャンバに含まれる生物学的流体と、第2のチャンバ及び第3のチャンバとの間で、分子又は成分を移動又は通過させるよう機能することができる。
【0013】
第2のチャンバ及び第3のチャンバが、第1のチャンバ内に配置される場合、生物学的流体は、第2のチャンバ及び第3のチャンバの外側及び周囲を流れる。結果として、狭いギャップ又はチャネルを通過する間、長距離に亘って生物学的流体が加圧されてはならないように、第1のチャンバの寸法を比較的大きく作製してもよい。その手段によって、第1のチャンバ内における大幅な圧力低下を避けることができる。更に、第1のチャンバが、第2のチャンバ及び第3のチャンバに対して横方向に流れる生物学的流体を対象とし、且つそれに適している場合、第1のチャンバ内の第2のチャンバ及び第3のチャンバは、静的ミキサとして作用することができるので、生物学的流体と第2のチャンバ及び第3のチャンバとの間の交換又は移動を向上させることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜は、実質的に、特定の気体、特に、酸素及び/又は二酸化炭素を選択的に透過することができる。この実施形態は、生物学的流体(例えば、血液)への酸素供給(所謂、酸素供給装置)及び/又は生物学的流体(例えば、血液)からの二酸化炭素除去(所謂、換気装置)に特に適している。換言すれば、この膜は、第1のチャンバ内に含まれる血液に第2のチャンバから酸素を交換するのに特に適している。同時に、この膜は、血液から第2のチャンバへの二酸化炭素除去を補助するか、又は可能にすることができる。また、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜は、窒素を全く透過しなくてもよく、僅かに透過してもよい。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、第3のチャンバは、第3のチャンバへの生物学的流体由来の液体成分の移動を補助又は促進するために、第1のチャンバに比べて陰圧であることが好ましい。第1のチャンバと第3のチャンバとの間の少なくとも1枚の液体透過性膜は、濾過処理、特に、血液濾過処理に適していることが好ましい。このような場合、生物学的流体の特定の成分又は画分は、前記膜を通って移動可能であるが、他の成分又は画分は、移動不可能であるように、前記膜を選択する。換言すれば、第1のチャンバと第3のチャンバとの間に位置する流体透過性膜は、生物学的流体の所望の処理によって決定及び選択されるべきである。
【0016】
血液濾過処理では、例えば、血清(即ち、主に水)は、膜を通って血液から搾り出され、タンパク質及び血球等の大きな分子は、保持される。第3のチャンバをポンプ又は排気装置に接続して陰圧にしてもよい。それに代えて又はそれに加えて、第1のチャンバ内の生物学的流体を(例えば、軽く)加圧して、第3のチャンバへの生物学的流体由来の成分(例えば、水)の必要な移動を補助することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、第3のチャンバは、液体を受容して、第3のチャンバへの生物学的流体由来の成分の移動を補助又は促進するのに適している。第1のチャンバと第3のチャンバとの間に位置する少なくとも1枚の液体透過性膜は、透析処理、特に、血液透析処理に適していることが好ましい。この場合、第3のチャンバは、透析液の取り込みに適していることが好ましい。ここでは、液体透過性半透過性膜によって分離されている2つの液体の小分子物質の濃度が均等化されるという原理(浸透)が用いられる。膜により分離されている片側には、腎毒素、カリウム及びリン酸等の電解質、並びに尿に排泄される物質を含む血液が存在する。前記膜の反対側には、無菌溶液が存在し、前記無菌溶液の水は、逆浸透により処理されており、老廃物は含有しないが、患者の特定の要件に従って電解質を含有する。血液と透析液との間の半透過性膜は、水、電解質、及び尿に排泄される物質(例えば、尿素、尿酸)等の小分子は通過させるが、タンパク質及び血球等の大分子は保持する孔を有する。
【0018】
本発明の装置の意図する用途について、特定の気体又は特定の分子に対して適切な特異的透過性を有する膜材料を選択することは、当業者の判断の範囲内である。多くの膜材料の透過係数は、当該技術分野において公知である。本発明の装置で用いられる気体透過性且つ液体不透過性膜は、例えば、優れた気体透過性を有する入手可能な任意の材料で作製することができる。例えば、優れた気体透過性とは、特定の望ましい気体(例えば、特に、酸素又は二酸化炭素)に対する望ましい目的によって、25℃、相対湿度(RH)90%、及び材料厚み約50μmで、24atmにて、1時間当たり100mL/m2超、好ましくは1,000mL/m2超、より好ましくは5,000mL/m2超、特に好ましくは10,000mL/m2超、最も好ましくは20,000mL/m2超(即ち、圧力1barで24時間以内に20,000mL/m2超)である。更に、前記膜は、実質的に液体不透過性である、即ち、24時間、40℃、RH90%で、1,000g/m2(即ち、gH2O/m2)未満、好ましくは500g/m2未満、より好ましくは100g/m2未満、特に好ましくは10g/m2未満の水分透過性を有する。
【0019】
本発明によれば、前記膜は、有機材料又は無機材料で作製してもよく、有機材料又は無機材料を含んでもよい。無機膜材料としては、ガラス、セラミック(例えば、アルミナ、二酸化チタン、又は酸化ジルコニウム等)、金属、ケイ素、又は炭素が挙げられる。有機膜材料としては、特に、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、他のハロゲン化炭化水素、セルロース、及び環状オレフィンコポリマー(COC)等のポリマー材料が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1枚の膜は、有機材料からなるか、又は有機材料を含み、前記有機材料は、ポリマー、ポリマー複合材(即ち、異なるポリマー又はコポリマーの混合物)、又はポリマー層(即ち、ポリマー積層体)であるか、或いはこれらを含むことが好ましい。
【0020】
少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜の材料は、好ましくはポリオレフィン、より好ましくはポリメチルペンテン(PMP)である。また、少なくとも1枚の液体透過性膜の材料も、ポリオレフィンであってもよいが、ポリエチレンスルホン(PES)が好ましい。前記膜の壁厚は、例えば、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜100μmである。前記膜は、安定化のために好適な支持材を有することが好ましい。好ましい例では、少なくとも1枚の膜、好ましくは全ての膜が、支持材により安定化されている。前記膜は、多孔質発泡体、セラミック、ポリマーからなる群より選択される安定化支持層、必要に応じて、TPXの支持層を含むことが好ましい。また、前記膜は、例えば、拡散層と共に、0.1μm〜1μmの外皮又は外層を備えてもよい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、前記装置が複数の第2のチャンバを含むように、第2のチャンバは、幾つかのチャンバに分割され、前記複数の第2のチャンバは、気体の受容に好適であり、気体透過性且つ液体不透過性膜によって第1のチャンバと分離されている。前記複数の第2のチャンバは、第1のチャンバ内に位置するか、又は第1のチャンバによって実質的に取り囲まれる。第2のチャンバは、断面に1以上の連続する空隙を含む、細長く、好ましくは実質的に円筒形状の構造を有することが好ましい。前記断面を区切る第2のチャンバの壁が、気体透過性且つ液体不透過性膜を少なくとも部分的に形成する。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態では、複数の第2のチャンバは、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに離間されて配置される。更に、複数の第2のチャンバは、幾つかの層に配置してもよい。第2のチャンバは、例えば、各中空体又は各中空繊維の壁が液体透過性且つ流体不透過性膜を形成するように、中空体、好ましくは中空繊維として形成される。複数の隣接して配置される第2のチャンバ間の距離は、好ましくは50μm〜1cm、より好ましくは100μm〜1mm、特に好ましくは100μm〜500μmである。この距離は、任意に選択又は設定してもよい。
【0023】
同様に、前記装置が複数の第3のチャンバを含むように、第3のチャンバは、幾つかのチャンバに分割されてもよく、前記複数の第3のチャンバは、液体透過性膜によって第1のチャンバと分離され、生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適である。前記複数の第3のチャンバは、第1のチャンバ内に位置するか、第1のチャンバに実質的に取り囲まれる。第3のチャンバは、断面に1以上の連続する空隙を含む、細長く、好ましくは実質的に円筒形状の構造を有することが好ましい。前記断面を区切る第3のチャンバの壁が、液体透過性膜を少なくとも部分的に形成する。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態では、複数の第3のチャンバは、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに離間されて配置される。更に、前記複数の第3のチャンバは、好ましくは、幾つかの層に配置してもよい。第3のチャンバは、例えば、各中空体又は各中空繊維の壁が液体透過性膜を形成するように、中空体、好ましくは中空繊維として形成される。幾つかの隣接する第3のチャンバ間の距離は、好ましくは50μm〜1cm、より好ましくは100μm〜1mm、特に好ましくは100μm〜500μmである。第2のチャンバについて記載した通り、この距離は、任意に選択又は設定してもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバの細長いアラインメントは、第3のチャンバの細長いアラインメントに対して横方向に、好ましくは、直角に延在する。複数の第2のチャンバが何列にも隣り合って配置され、且つ全体として層を形成する場合、及び複数の第3のチャンバが何列にも隣り合って配置され、且つ全体として層を形成する場合、第2のチャンバの細長いアラインメントが、第3のチャンバの細長いアラインメントに対して横方向に、好ましくは、直角に延在するように、これら層を互いに積み重ねてもよい。
【0026】
本発明の装置における耐久性の点で重要な要素は、膜である。血液と接触する外来表面を備える器官補助システムは、現在、多様な臨床用途に利用されており、望ましくない全身性反応(例えば、炎症促進性免疫反応)が生じる場合があることが示されている。従来の血液接触表面を長期間使用すると、血漿タンパク質及び細胞が蓄積して、断面の狭化及び血栓を導く。更に、長期使用により、「新生内膜」と呼ばれる増殖性内層が形成される。特に、この現象は、例えば、人工心肺等において肺機能を補助するために用いられる酸素供給装置でみられるが、人工心臓システム、心臓補助システム、又は血液透析装置でもみられる。したがって、前記膜は、安定性/耐久性の点で様々な方法により改善されるべきであり、また改善されなければならない。本発明の実施形態では、前記膜は、プラズマ活性化により処理してもよい。
【0027】
本発明の更なる実施形態では、特に、医療において生物学的流体の処理装置を使用するために、少なくとも1枚の膜、好ましくは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜、より好ましくは、前記膜の各々に、細胞、好ましくは上皮細胞が付着してもよい。医療分野における、長期間使用できる本発明の気体交換装置(例えば、肺補助システム)では、前記膜と前記細胞とがコロニーを形成することにより耐久性が顕著に向上するが、その理由は、用いられる媒体から前記膜上への物質の非特異的蓄積が阻止又は強く阻害され、その結果、前記膜の気体透過性が、時間が経過しても全く低下しないか、又は僅かしか低下しないためである。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1枚の膜、好ましくは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜、より好ましくは、全ての膜(即ち、少なくとも1枚の液体透過性膜も)が、(多)糖(好ましくは、ヘパリン)、核酸、タンパク質(好ましくは、アルブミン)からなる群より選択される1以上の物質でコーティングされる。
【0028】
前記膜と前記細胞とのコロニー形成、又は他の物質による前記膜のコーティングについては、予め前記膜の表面を改質しておくことが有利であるか、又は更には必須である場合もある。前記膜を改質する手順は、当該技術分野において公知であり、意図する用途によって当業者が選択することができる。例えば、前記膜を物理的又は化学的に処理することにより、前記膜の疎水性/親水性/電荷密度を変化させて、接着性を高めることが必要な場合もある。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜は、一般的に、少なくとも片側が構造化(テクスチャ処理)される。前記膜の側面のうち、第1のチャンバ内の生物学的流体に面する側が構造化されることが好ましい。この状況では、並行国際特許出願PCT/EP2009/006403号明細書を参照し、その内容を参照することにより本願に援用するものとする。気体交換における構造化膜の有益な性質(例えば、流れ抵抗の低下)は、液体の場合に特に明らかである。前記膜上における構造の形状は、任意で変化させてもよい。したがって、前記膜上における構造として、例えば、生体肺の毛管構造を模倣したチャネル及び/又は分岐を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
次に、添付図面に示される特定の例示的な実施形態を用いて本発明を例証する。添付図面では、類似の機構に類似の符番を付す。
【図1】図1は、本発明の基本的な実施形態に係る装置の概略側面図の一例を示す。
【図2】図2は、図1の発明の基本的な実施形態に係る装置のX−X方向における概略断面図の一例を示す。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態に係る装置の概略等角図の一例を示す。
【図4】図4は、細胞が付着している中空繊維のDAPI染色を示す。
【図5】図5は、4頭の実験動物の動脈CO2濃度を示す。
【図6】図6は、4頭の実験動物の動脈O2濃度を示す。
【図7】図7は、4頭の実験動物の静脈CO2濃度を示す。
【図8】図8は、4頭の実験動物の静脈O2濃度を示す。
【図9】図9は、動物実験後の本発明の試作品の気体交換性能に関して、デルタO2濃度及びCO2濃度を示す。
【図10】図10は、本発明に係る試験用モジュールの平均圧力低下を示す。
【図11】図11は、細胞が付着していない本発明の試験用モジュールから得られた動物1及び動物3の血液濾液の体積を示す。
【図12】図12は、血清及び血液濾液パラメータの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び図2には、本発明の概念の簡単な実例を示す。本発明に係る装置1は、第1のチャンバ3を囲む又は部分的に画定する筐体2を含む。第1のチャンバ3は、生物学的流体(例えば、血液)の受容に好適であり、フローチャンバとして設計される。生物学的流体、即ち、血液は、筐体2の入口5を通って矢印4で示す方向に第1のチャンバ3に流れ込み、反対側の出口6を通って第1のチャンバ3から出る。筐体2は、ポリエチレン又はポリウレタン等の、生物学的流体と化学的に反応しないプラスチックで作製されることが好ましい。
【0032】
更に、装置1は、第1のチャンバ3全体に亘って延在しており、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれている管状の第2のチャンバ7を有する。第2のチャンバ7の空隙を囲む管状壁8は、比較的薄く、且つプラスチックで作製されることが好ましい。管状壁8は、管状壁8が第1のチャンバ3と第2のチャンバ7との間で気体分子を移動させられるように、管状壁8と共に気体透過性且つ液体不透過性膜9を形成する外層の支持材として機能する。換言すれば、膜9は、血液の分子成分と第2のチャンバ内に含まれる媒体とを緊密に接触させることができる分離又は接触表面を形成する。
【0033】
第2のチャンバ7は、酸素等の気体の受容に好適であり、また、フローチャンバとして設計されている。気体透過性且つ液体不透過性膜9は、酸素及び二酸化炭素を選択的に透過可能であることが好ましい。酸素は、入口11を通って矢印10で示す方向に第2のチャンバ7に流れ込み、反対側の出口12から第2のチャンバ7を出る。しかし、第2のチャンバ7を通って流れる酸素は、気体透過性且つ液体不透過性膜9を通って、第1のチャンバ3を流れる血流にも部分的に移動する。この方法で、血液の酸素濃縮が行われる。同様に、所謂、換気又は肺補助処理が膜9において行われるように、膜9を通して血液から第2のチャンバ7に二酸化炭素を移動又は除去することができる。
【0034】
圧力P2及び/又は第2のチャンバ7を通って流れる酸素流に関連する第1のチャンバ3内の圧力P1及び/又は生物学的流体流、即ち、血液流は、酸素の血液への移動及び/又は二酸化炭素の血液からの移動が望ましく行われるように、選択又は調整することができる。例えば、ポンプ(図示せず)を用いて第1のチャンバ1を通して血液を輸送してもよく、又は血液は、患者の循環系の圧力のみでも第1のチャンバを通って流れることができる。
【0035】
再度図1及び図2を参照すると、装置1は、管状の第3のチャンバ13も含み、これは、第2のチャンバのように第1のチャンバ3全体に亘って延在し、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれている。第3のチャンバ13の空隙を取り囲む管状壁14は、比較的薄く、且つプラスチックで作製されることが好ましい。第2のチャンバ7のように、壁14は、壁14と共に膜15を形成する外層の支持材として機能するが、膜15は、この場合、管状壁14が第1のチャンバ3と第3のチャンバ13との間で液体成分を移動させられるように液体透過性である。具体的には、この膜15は、生物学的流体の1以上の液体成分を除去/回収する機能を有する分離又は接触表面を形成する。
【0036】
特定の実施形態では、第3のチャンバ13は、(第1のチャンバ3に比べて)第3のチャンバ13内の圧力を僅かに陰圧にするために、吸気装置(図示せず)に接続するのに適している。この真空は、第1のチャンバ3を通って流れている血液から第3のチャンバ13への水等の液体成分の移動を補助又は促進する。このような方法で、第1のチャンバと第3のチャンバとの間に位置する流体透過性膜15は、水等の小さな分子を血液から搾り出し、タンパク質及び血球等の大きな分子を保持するフィルタとして機能する。
【0037】
別の実施形態では、第3のチャンバ13は、透析液を受容して、第3のチャンバへの生物学的流体由来の成分の移動を促進するのに適している。したがって、第3のチャンバ13もフローチャンバとして設計してもよく、ここで、透析液は、ポンプ(図示せず)の影響下で、血液に対して逆流するように入口16から第3のチャンバ13を通って出口17に移動する。既に上述した通り、ここでは、液体透過性半透過性膜によって分離されている2つの液体の小分子物質の濃度が均等化されるという原理(浸透)が適用される。血液と透析液との間の半透過性膜15は、孔を有しており、これは、水、電解質、及び尿に排泄される物質(例えば、尿素、尿酸)等の小分子は通過させるが、タンパク質及び血球等の大分子は堰止める。
【0038】
本発明の装置1は、生物学的流体(この場合、血液)の複数の同時処理を可能にする構造を有する。先ず、血液を酸素濃縮又は二酸化炭素除去処理することができる。第2に、濾過又は透析処理を用いて血液を同時に処理することができる。したがって、本発明は、肺及び腎不全に罹患している患者を、より簡単且つより効率的に処置することができる装置を提供する。更に、第2のチャンバ及び第3のチャンバは、第1のチャンバ内に配置され、且つ第1のチャンバによって実質的に取り囲まれているので、装置1は、生物学的流体とそれぞれのチャンバとの分離又は接触表面を最大化する構造を有する。したがって、膜により形成されるそれぞれの第2のチャンバ及び第3のチャンバの周囲表面全体が、第1のチャンバ内に含まれる生物学的流体と第2のチャンバ及び第3のチャンバに含まれる媒体との間で分子又は成分を移動又は通過させるよう機能する。
【0039】
次に、図3を参照して、本発明の特に好ましい実施形態を説明する。図3の概略図は、筐体2を有する本発明の装置1を示す。第1の例示的な実施形態のように、筐体2は、第1のチャンバ3を囲む又は(少なくとも部分的に)画定する。第1のチャンバ3は、生物学的流体(例えば、血液等)の受容に好適であり、且つフローチャンバとして設計される。生物学的流体、即ち、血液は、筐体2の入口5を通って矢印4で示す方向に第1のチャンバ3に流れ込み、反対側の出口6を通って第1のチャンバ3を出る。前述の通り、筐体2は、ポリエチレン又はポリウレタン等のプラスチックで作製されることが好ましい。
【0040】
図3の装置1は、複数の管状の第2のチャンバ7を有し、これは、何列にも隣り合って配置される。第2のチャンバ7は、第1のチャンバ3全体に亘って平行に延在し、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれる。この実施形態では、第2のチャンバ7の空隙を取り囲む管状壁8は、例えば、発泡TPX等のポリメチルペンテン(PMP、TPXとしても知られている)で作製される中空繊維の形態である。これら壁8とその外表面又は外層とが、第1のチャンバ3と中空繊維内に位置する第2のチャンバ7との間で気体分子を移動させる気体透過性且つ流体不透過性膜9を形成する。この場合も、膜9は、血液の分子成分と第2のチャンバ内に含まれる媒体とを緊密に接触させることができる分離又は接触表面を形成する。
【0041】
第2のチャンバ7は、酸素等の気体の受容に好適であり、また、フローチャンバとして設計される。気体透過性且つ流体不透過性膜9は、酸素及び二酸化炭素を選択的に透過可能である。酸素は、入口11を通って矢印10で示す方向に第2のチャンバ7に流れ込み、反対側の出口12を通って第2のチャンバ7を出る。前述の通り、第2のチャンバ7を通って流れている酸素の一部は、気体透過性且つ液体不透過性膜9を通過して第1のチャンバ3を通って流れている血液に入り、血液を酸素濃縮する。同様に、所謂、換気又は肺補助処理が行われるように、膜9を介して血液から第2のチャンバ7に二酸化炭素を移動又は除去する。
【0042】
隣り合って列/面に配置され、第2のチャンバ7を形成するTPX繊維は、織物技術の手法で縦糸と相互接続する。これは、繊維間の所定の距離D2で離間されている一種の繊維マット19を作製する。この繊維間の距離D2は、第1のチャンバ3を通って流れている血流が、確実にマット19を通って流れることができ、延いては、膜9の接触表面との接触を最大化することができるよう機能する。この実施形態では、個々のTPX中空繊維は、100μm〜1mm、好ましくは、200μm〜600μmの外径を有し(例えば、外径約400μm、壁厚約100μm)、且つ100μm〜500μmの距離D2で隣り合って各列又は層に配置される。この距離は、任意に選択することができる。したがって、様々なTPX繊維を並べて置いて、マット19に加工できることは明らかである。TPX中空繊維膜マット19の寸法は、例えば、約10cm×15cmである。
【0043】
TPX中空繊維をマット19に加工した後、上下に積み重ねることによりマット19を更に加工してもよい。図3では、第2の平行に延在するチャンバ7の層、即ちマット19を2つだけ示し、これらは、上下に積み重ねられる。しかし、第1のチャンバ3内において、多数のマットを上下に設けてもよいことが当業者には理解される。図3には示さないが、第2のチャンバ7を形成するTPX繊維の末端は、個々の入口11に共通の供給装置から気体、即ち、酸素が供給されるように、且つ個々の出口12が共通の出口につながるように、束にされるか又は相互接続される。これは、個々のマット19の第2のチャンバ7だけでなく、全てのマット19における全ての第2のチャンバ7にも適用されることが好ましい。同配向の繊維の所謂「相互接続」は、好ましくは、例えば、ポリウレタン等の成形又はソケッティング手順により行われる。この場合、繊維積み重ね体の外側領域において、繊維の末端を液体プラスチックで丸く成形(cast round)する。プラスチックを硬化させた後、繊維の内部が開くまで、外側から薄く切り取る。それによって、個々の繊維又はチャンバへの共通の供給装置が得られる。
【0044】
更に、図3の装置1は、複数の管状の第3のチャンバ13を有し、これは、第2のチャンバ7のように第1のチャンバ3全体に亘って平行に延在し、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれている。この実施形態では、第3のチャンバ13の空隙を囲む管状の壁14は、ポリエチレンスルホン(PES)等の中空繊維により作製される。中空繊維の壁14は、その外表面と共に液体透過性膜15を形成し、この膜15は、第1のチャンバ3と中空繊維内に位置する第3のチャンバ13との間で液体成分を移動させる。具体的に、膜15は、生物学的流体の1以上の成分を除去/回収する機能を有する分離又は接触表面を形成する。
【0045】
TPX繊維と同様に、隣り合って列又は面に配置され、且つ第3のチャンバ13を形成するPES繊維は、縦糸20により織物技術の手法で相互接続される。これにより、PES繊維間の所定の距離D3で離間されている一種の繊維マット21を作製する。このPES繊維間の距離D3は、第1のチャンバ3を通って流れている血流が、確実にマット21を通って流れ、延いては、膜15の接触表面との接触を最大化することができるよう機能することができる。図3には、第3のチャンバ13の層、即ち、マット21を2つだけ示し、これらは、積み重ね層21として示される。第2のチャンバ7と同様に、この実施形態における個々のPES繊維は、100μm〜1mm、好ましくは、200μm〜600μmの外径を有し(例えば、外径約500μm、壁厚約100μm)、100μm〜500μmの距離D3で隣り合って各列又は層に配置される。したがって、多くのPES繊維を並べて配置し、マット21に加工することができる。各PES繊維膜マット21の寸法も、約10cm×15cmとなる。液体透過性膜の孔径は、好ましくは、1μm以下、より好ましくは、0.5μm以下(例えば、最大孔径0.5μm)である。これら膜により、好ましくは、35mL/分・cm2・barの膜貫通流が生じる。
【0046】
PES中空繊維でマット21を作製した後、上下に積み重ねることによりマット21を更に加工してもよい。図3では、第3の平行に延在するチャンバ13の層、即ち、マット21を2つだけ示す。しかし、第1のチャンバ3内において、多数のかかるマット21を上下に設けてもよいことが当業者には理解されるであろう。
【0047】
第3のチャンバ13を形成するPES繊維の末端は、個々の入口16にまとめて陰圧が印加されるように、束にされるか又は相互接続される、或いは、個々の出口17が共通の排出口につながるように、共通の供給装置を介して透析液を供給してもよい。第2のチャンバ7に関連して記載されているように、同配向の繊維の所謂「相互接続」は、例えば、ポリウレタン等を用いる成形又はソケッティング手順により行われることが好ましい。これは、個々のマット21の第3のチャンバ13だけでなく、積み重ねられたマット21において第3のチャンバ全てにも適用される。
【0048】
平行に配置される第2のチャンバ7の細長いアラインメントは、平行に配置される第3のチャンバ13のアラインメントの長手方向に対して直角に延在し、層、TPX繊維及びPES繊維の各マット19、21は、比較的圧縮された配置に、この例では交互に且つ直接上下に積み重ねられる。マット19、21は、互いに接触するように、直接上下に配置されることが好ましい。図3では、層、即ち、マット19、21は、本発明を単純化して図示するために「分解立体」図で互いからの距離を離して示す。本発明の装置1における中空繊維及び層、即ちマット19、21の矩形配置は、それぞれ第2のチャンバ7及び第3のチャンバ13への接続に(即ち、それぞれ供給及び排出接続に)特に適している。換言すれば、装置1は、矩形筐体2の対側面に第2のチャンバに対する供給接続及び排出接続を設けてもよいだけでなく、筐体2の他の対側面にも第3のチャンバ13に対する供給接続及び排出接続を設けてもよい。更に、筐体2は、図3に概略的に示すように、それぞれの膜層、即ちマット19、21全体に亘って生物学的流体を直交流動させることができる。
【0049】
前述の記載の目的は、本発明の好ましい実施形態の動作を例証することであり、本発明の範囲を限定するものではない。前述の説明に基づいて、本発明の開示に包含される多くの変形が、当業者に明らかになるであろう。当業者に理解されるように、例えば、上記中空繊維のマット19、21は、常に交互に積み重ねなければならないものではない。各マット19、21のタイプは、例えば、類似する群に積み重ね、組み合わせてもよく、次いで、これらの群を後で互いに組み合わせてもよい。また、当業者に理解されるように、本発明の装置1は、生物学的流体の最大2つの処理に限定されるものではない。むしろ、本発明の装置1の構造は、複数の同時処理を可能にする。
【0050】
動物試験における実験結果
4頭の実験動物(ブタ)を用いるパイロット実験において、気体交換(O2及びCO2)及び血液透析を用いて血液を処理するために、図3に記載の実施形態に係る本発明の装置を各動物に接続し、6時間に亘って作動させた。本発明の装置は、試験用モジュール、即ち、試作品の形態であり、各動物の呼吸、血圧、及び試験用モジュールを通過する流れを持続的に制御した。30分間隔で、血清及び血液の気体を分析するために血液サンプルを採取した。試験用モジュール(即ち、試作品)を用いて6時間に亘って動物を人工的に呼吸させた。
【0051】
動物実験を実施するために、4つのモジュールのうちの2つ(即ち、動物2及び4に対するモジュール)に細胞を付着させておいた。このために、A549細胞を培地に取り、数週間に亘って培養培地で増殖させた。細胞が必要数に達した後、トリプシン処理により細胞を剥がし、40mLの媒体に入れ、試作品のPES繊維に注入した。2日間〜3日間インキュベートした後、細胞は、繊維の内側に付着した。これは、図4に示すように、DAPI色素による繊維のクリオトーム切片の核染色により実証された。細胞を付着させたモジュール及び付着させていないモジュールを通過する血液は、1分間当たり1.1リットル対1.3リットルの血液に相当しており、コロニー形成及び試作品のプレインキュベートは、それぞれ、血液の流量に顕著な影響を与えなかった。
【0052】
図5及び6から分かるように、CO2(図5)及びO2(図6)についての動脈の血液気体値は、実験期間に亘ってかなり一定の水準を示す。ブタ2では、最初の3回の測定において約22mmHgから約15mmHgにCO2濃度が低下した。試作品と接続した後の動脈のO2値は、50mmHg〜100mmHgであることが見出された。
【0053】
図7及び8から、静脈血における分圧により、試作品の気体交換性能に関する情報が得られる。静脈CO2濃度(図7)は、動脈の値よりもほんの僅かに低いことは注目に値する。一般的に、低い値は、CO2排出が比較的多く且つ一定であることを示す。静脈のO2濃度(図8)は、範囲がより広い。動物1は、最低のO2分圧(200mmHg〜330mmHg)を有していたが、一方、ブタ2及び4は、500mmHg超という比較的高いO2分圧を有していた。これは、細胞を付着させた試験用モジュールの気体移動性能がより高いことを示し、ここでは、細胞化及び血清含有培地中でのプレインキュベートの両方が、気体移動性能の向上に影響を与えている可能性がある。図9には、(01〜04として示す)各モジュールの(第2の)PMP膜を介して血液中のO2が顕著に増加することが示されている。
【0054】
血管圧により、PES膜を通過して第3のチャンバ13、即ち、中空繊維14の内腔側に血清が流れるのを観察することができた。このように、繊維は、血漿を透過可能であり、内腔側に細胞を付着させてもよいことを示すことができた。ブタ3では、ブタ1のモジュールに比べてかなり大きな圧力低下がみられたが、両方の値は、非常に低いレベルであった。したがって、モジュールの圧力低下は、許容できる範囲であった。
【0055】
図10を参照すると、PES繊維の血液透析の性能(膜15を通って第3のチャンバ13に)は、6時間の全期間に亘って一定の値を示した。図11を参照すると、個体間の差(ここでは、動物1及び動物3のモジュール間の差)が比較的大きかったことに注目すべきである。これは、一方では、血管圧の差によるものであり、それに加えて、動物の止血状況及び流体状態(状況)によるものである。
【0056】
図12から分かるように、動物1において、濾液のパラメータと血清パラメータとの差はほんの僅かである。したがって、血液透析の性能が非常に良好であると推測することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 装置
2 筐体
3 第1のチャンバ
4 矢印
5 入口
6 出口
7 第2のチャンバ
8 管状壁
9 気体透過性且つ液体不透過性膜
10 矢印
11 入口
12 出口
13 第3のチャンバ
14 管状壁
15 液体透過性膜
16 入口
17 出口
18 縦糸
19 繊維マット
20 縦糸
21 繊維マット
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的流体の処理装置、特に、生物学的流体の受容に適しているチャンバと、気体の受容に適している別のチャンバとを含み、前記チャンバが、気体透過性膜によって互いに分離されており、且つ前記気体透過性膜が、前記チャンバ間の気体分子の移動を可能にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1以上の気体をある媒体から別の媒体に移動させることができるのが給気装置又は脱気装置であり、1以上の気体を2つの媒体間で交換することができるのが気体交換装置である。かかる装置は、化学、バイオテクノロジー、及び医療の分野で用いられている。医療分野における重要な用途は、血液の酸素濃縮及び/又は血液からの二酸化炭素の除去である。かかる手段は、例えば、様々な種類の手術及び様々な肺疾患の治療に必須である。
【0003】
現在、末期の機能的肺疾患患者にとって長期間有効な治療法の唯一の選択肢が、肺移植である。肺の機能を永続的に肺に代わって果たすための他の医学的解決法は、存在しない。慢性肺疾患に罹患しており、且つ肺移植不適格である患者には、人工肺による補助が必要である。この例は、典型的に、数週間又は更には数ヶ月間に亘って肺機能を補助する必要がある未熟児である。また、肺移植を待っている患者にも肺補助装置が必要である。
【0004】
また、人工肺補助処置による治療を受けなければならない患者は、更に腎不全にも罹患していることが多い。肺不全を引き起こす可能性のある疾患は、大容量の輸液蘇生を必要とすることがあり、患者に大量の血液製剤が投与されることが多い。輸液により生じる物理的過負荷は、患者の症状を全体的に悪化させたり、肺水腫又は更には完全な器官不全を引き起こしたりする可能性がある。したがって、かかる患者は、更に血液透析又は血液濾過装置に接続される。しかし、これによって処理装置の配置が複雑になり、且つ患者の脈管系に大きなストレスがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、生物学的流体を処理するための改良された装置であって、化学、バイオテクノロジー、及び医療の分野で用いることができ、特に、血液における給気、脱気、又は気体交換に用いることができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1、請求項12、又は請求項32に係る装置により解決される。発明の好ましい態様を従属項に記載する。
【0007】
本発明は、少なくとも3つのチャンバを含む生物学的流体の処理装置であって、生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバと気体の受容に好適な第2のチャンバとが、少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜によって互いに分離されており、前記気体透過性且つ流体不透過性膜が、第1のチャンバと第2のチャンバとの間で気体分子を移動させる機能を有し、前記第1のチャンバと第3のチャンバとが、少なくとも1枚の液体透過性膜によって互いに分離されており、前記液体透過性膜が、第1のチャンバと第3のチャンバとの間で1以上の成分を移動させる機能を有する装置を提供する。
【0008】
それぞれの膜は、一般的に、半透過性であり、一般的に、所定の孔を有し、前記孔のサイズが、各膜の機能及び効果を決定する。換言すれば、任意の膜は、一方では多孔質膜、即ち、不連続な孔を含む膜であってもよい。他方、前記膜は、不連続な孔を有しない均質な可溶性膜であってもよく、この場合、透過物(例えば、気体)がポリマーに溶解することにより物質が確実に移動し、且つ前記ポリマーに対する可溶性が異なることにより分離が行われる。前記膜は、非多孔質透過性膜であることが好ましい。気体交換は、対流性且つ拡散性の物質移動/交換に付されてもよい。気体交換は、拡散によるものであり、膜の両側の気体濃度の差により決定されることが好ましい。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、第1のチャンバは、フローチャンバとして設計され、且つ入口及び出口を有する。また、第2のチャンバ及び第3のチャンバのうちの少なくとも1つもフローチャンバとして設計されることが好ましい。第1のチャンバは、第2のチャンバ又は第3のチャンバの流れ方向に対して反対方向又は横方向に流れることを意図し、且つそれに適していることが好ましい。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜によって、分離されるか又は前記膜に取り囲まれる。同様に、第3のチャンバは、少なくとも1枚の液体透過性膜によって、分離されるか又は前記膜に取り囲まれることが好ましい。
【0011】
それぞれのチャンバの間の膜は、あるチャンバから別のチャンバへの分子又は成分の移動又は通過が行われる分離又は接触表面を形成する。第1のチャンバと第2のチャンバとの間の少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜において、例えば、生物学的流体の給気及び/又は脱気を行うことができる。更に、第1のチャンバと第3のチャンバとを互いに分離する少なくとも1枚の液体透過性膜では、生物学的流体の更なる処理を実施することができる。生物学的流体を対象とする第1のチャンバは、第2のチャンバ及び第3のチャンバの両方との膜様分離又は接触表面を有しているので、本発明の装置を用いて、生物学的流体の2つの異なる処理を同時に実施することができる。換言すれば、本発明の装置は、生物学的流体の複数の処理を同時に行うことができる構造を提供する。本発明によれば、少なくとも1つのチャンバ、好ましくはチャンバ各々が、それぞれの膜又は膜構造を少なくとも部分的に形成する。本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバ及び第3のチャンバの各々は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、それぞれの膜によって、分離されるか又は前記膜によって取り囲まれる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバは、第1のチャンバ内に位置する、即ち、第2のチャンバは、第1のチャンバに実質的に取り囲まれる。同様に、第3のチャンバも、第1のチャンバに取り囲まれるように、第1のチャンバ内に位置することが好ましい。第2のチャンバ及び第3のチャンバを第1のチャンバ内に配置し、第1のチャンバによって取り囲むことにより、それぞれのチャンバ間の分離表面を最大化することができる。したがって、膜により形成されるそれぞれのチャンバの全体を取り囲む表面は、第1のチャンバに含まれる生物学的流体と、第2のチャンバ及び第3のチャンバとの間で、分子又は成分を移動又は通過させるよう機能することができる。
【0013】
第2のチャンバ及び第3のチャンバが、第1のチャンバ内に配置される場合、生物学的流体は、第2のチャンバ及び第3のチャンバの外側及び周囲を流れる。結果として、狭いギャップ又はチャネルを通過する間、長距離に亘って生物学的流体が加圧されてはならないように、第1のチャンバの寸法を比較的大きく作製してもよい。その手段によって、第1のチャンバ内における大幅な圧力低下を避けることができる。更に、第1のチャンバが、第2のチャンバ及び第3のチャンバに対して横方向に流れる生物学的流体を対象とし、且つそれに適している場合、第1のチャンバ内の第2のチャンバ及び第3のチャンバは、静的ミキサとして作用することができるので、生物学的流体と第2のチャンバ及び第3のチャンバとの間の交換又は移動を向上させることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜は、実質的に、特定の気体、特に、酸素及び/又は二酸化炭素を選択的に透過することができる。この実施形態は、生物学的流体(例えば、血液)への酸素供給(所謂、酸素供給装置)及び/又は生物学的流体(例えば、血液)からの二酸化炭素除去(所謂、換気装置)に特に適している。換言すれば、この膜は、第1のチャンバ内に含まれる血液に第2のチャンバから酸素を交換するのに特に適している。同時に、この膜は、血液から第2のチャンバへの二酸化炭素除去を補助するか、又は可能にすることができる。また、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜は、窒素を全く透過しなくてもよく、僅かに透過してもよい。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、第3のチャンバは、第3のチャンバへの生物学的流体由来の液体成分の移動を補助又は促進するために、第1のチャンバに比べて陰圧であることが好ましい。第1のチャンバと第3のチャンバとの間の少なくとも1枚の液体透過性膜は、濾過処理、特に、血液濾過処理に適していることが好ましい。このような場合、生物学的流体の特定の成分又は画分は、前記膜を通って移動可能であるが、他の成分又は画分は、移動不可能であるように、前記膜を選択する。換言すれば、第1のチャンバと第3のチャンバとの間に位置する流体透過性膜は、生物学的流体の所望の処理によって決定及び選択されるべきである。
【0016】
血液濾過処理では、例えば、血清(即ち、主に水)は、膜を通って血液から搾り出され、タンパク質及び血球等の大きな分子は、保持される。第3のチャンバをポンプ又は排気装置に接続して陰圧にしてもよい。それに代えて又はそれに加えて、第1のチャンバ内の生物学的流体を(例えば、軽く)加圧して、第3のチャンバへの生物学的流体由来の成分(例えば、水)の必要な移動を補助することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、第3のチャンバは、液体を受容して、第3のチャンバへの生物学的流体由来の成分の移動を補助又は促進するのに適している。第1のチャンバと第3のチャンバとの間に位置する少なくとも1枚の液体透過性膜は、透析処理、特に、血液透析処理に適していることが好ましい。この場合、第3のチャンバは、透析液の取り込みに適していることが好ましい。ここでは、液体透過性半透過性膜によって分離されている2つの液体の小分子物質の濃度が均等化されるという原理(浸透)が用いられる。膜により分離されている片側には、腎毒素、カリウム及びリン酸等の電解質、並びに尿に排泄される物質を含む血液が存在する。前記膜の反対側には、無菌溶液が存在し、前記無菌溶液の水は、逆浸透により処理されており、老廃物は含有しないが、患者の特定の要件に従って電解質を含有する。血液と透析液との間の半透過性膜は、水、電解質、及び尿に排泄される物質(例えば、尿素、尿酸)等の小分子は通過させるが、タンパク質及び血球等の大分子は保持する孔を有する。
【0018】
本発明の装置の意図する用途について、特定の気体又は特定の分子に対して適切な特異的透過性を有する膜材料を選択することは、当業者の判断の範囲内である。多くの膜材料の透過係数は、当該技術分野において公知である。本発明の装置で用いられる気体透過性且つ液体不透過性膜は、例えば、優れた気体透過性を有する入手可能な任意の材料で作製することができる。例えば、優れた気体透過性とは、特定の望ましい気体(例えば、特に、酸素又は二酸化炭素)に対する望ましい目的によって、25℃、相対湿度(RH)90%、及び材料厚み約50μmで、24atmにて、1時間当たり100mL/m2超、好ましくは1,000mL/m2超、より好ましくは5,000mL/m2超、特に好ましくは10,000mL/m2超、最も好ましくは20,000mL/m2超(即ち、圧力1barで24時間以内に20,000mL/m2超)である。更に、前記膜は、実質的に液体不透過性である、即ち、24時間、40℃、RH90%で、1,000g/m2(即ち、gH2O/m2)未満、好ましくは500g/m2未満、より好ましくは100g/m2未満、特に好ましくは10g/m2未満の水分透過性を有する。
【0019】
本発明によれば、前記膜は、有機材料又は無機材料で作製してもよく、有機材料又は無機材料を含んでもよい。無機膜材料としては、ガラス、セラミック(例えば、アルミナ、二酸化チタン、又は酸化ジルコニウム等)、金属、ケイ素、又は炭素が挙げられる。有機膜材料としては、特に、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、他のハロゲン化炭化水素、セルロース、及び環状オレフィンコポリマー(COC)等のポリマー材料が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1枚の膜は、有機材料からなるか、又は有機材料を含み、前記有機材料は、ポリマー、ポリマー複合材(即ち、異なるポリマー又はコポリマーの混合物)、又はポリマー層(即ち、ポリマー積層体)であるか、或いはこれらを含むことが好ましい。
【0020】
少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜の材料は、好ましくはポリオレフィン、より好ましくはポリメチルペンテン(PMP)である。また、少なくとも1枚の液体透過性膜の材料も、ポリオレフィンであってもよいが、ポリエチレンスルホン(PES)が好ましい。前記膜の壁厚は、例えば、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜100μmである。前記膜は、安定化のために好適な支持材を有することが好ましい。好ましい例では、少なくとも1枚の膜、好ましくは全ての膜が、支持材により安定化されている。前記膜は、多孔質発泡体、セラミック、ポリマーからなる群より選択される安定化支持層、必要に応じて、TPXの支持層を含むことが好ましい。また、前記膜は、例えば、拡散層と共に、0.1μm〜1μmの外皮又は外層を備えてもよい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、前記装置が複数の第2のチャンバを含むように、第2のチャンバは、幾つかのチャンバに分割され、前記複数の第2のチャンバは、気体の受容に好適であり、気体透過性且つ液体不透過性膜によって第1のチャンバと分離されている。前記複数の第2のチャンバは、第1のチャンバ内に位置するか、又は第1のチャンバによって実質的に取り囲まれる。第2のチャンバは、断面に1以上の連続する空隙を含む、細長く、好ましくは実質的に円筒形状の構造を有することが好ましい。前記断面を区切る第2のチャンバの壁が、気体透過性且つ液体不透過性膜を少なくとも部分的に形成する。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態では、複数の第2のチャンバは、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに離間されて配置される。更に、複数の第2のチャンバは、幾つかの層に配置してもよい。第2のチャンバは、例えば、各中空体又は各中空繊維の壁が液体透過性且つ流体不透過性膜を形成するように、中空体、好ましくは中空繊維として形成される。複数の隣接して配置される第2のチャンバ間の距離は、好ましくは50μm〜1cm、より好ましくは100μm〜1mm、特に好ましくは100μm〜500μmである。この距離は、任意に選択又は設定してもよい。
【0023】
同様に、前記装置が複数の第3のチャンバを含むように、第3のチャンバは、幾つかのチャンバに分割されてもよく、前記複数の第3のチャンバは、液体透過性膜によって第1のチャンバと分離され、生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適である。前記複数の第3のチャンバは、第1のチャンバ内に位置するか、第1のチャンバに実質的に取り囲まれる。第3のチャンバは、断面に1以上の連続する空隙を含む、細長く、好ましくは実質的に円筒形状の構造を有することが好ましい。前記断面を区切る第3のチャンバの壁が、液体透過性膜を少なくとも部分的に形成する。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態では、複数の第3のチャンバは、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに離間されて配置される。更に、前記複数の第3のチャンバは、好ましくは、幾つかの層に配置してもよい。第3のチャンバは、例えば、各中空体又は各中空繊維の壁が液体透過性膜を形成するように、中空体、好ましくは中空繊維として形成される。幾つかの隣接する第3のチャンバ間の距離は、好ましくは50μm〜1cm、より好ましくは100μm〜1mm、特に好ましくは100μm〜500μmである。第2のチャンバについて記載した通り、この距離は、任意に選択又は設定してもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、第2のチャンバの細長いアラインメントは、第3のチャンバの細長いアラインメントに対して横方向に、好ましくは、直角に延在する。複数の第2のチャンバが何列にも隣り合って配置され、且つ全体として層を形成する場合、及び複数の第3のチャンバが何列にも隣り合って配置され、且つ全体として層を形成する場合、第2のチャンバの細長いアラインメントが、第3のチャンバの細長いアラインメントに対して横方向に、好ましくは、直角に延在するように、これら層を互いに積み重ねてもよい。
【0026】
本発明の装置における耐久性の点で重要な要素は、膜である。血液と接触する外来表面を備える器官補助システムは、現在、多様な臨床用途に利用されており、望ましくない全身性反応(例えば、炎症促進性免疫反応)が生じる場合があることが示されている。従来の血液接触表面を長期間使用すると、血漿タンパク質及び細胞が蓄積して、断面の狭化及び血栓を導く。更に、長期使用により、「新生内膜」と呼ばれる増殖性内層が形成される。特に、この現象は、例えば、人工心肺等において肺機能を補助するために用いられる酸素供給装置でみられるが、人工心臓システム、心臓補助システム、又は血液透析装置でもみられる。したがって、前記膜は、安定性/耐久性の点で様々な方法により改善されるべきであり、また改善されなければならない。本発明の実施形態では、前記膜は、プラズマ活性化により処理してもよい。
【0027】
本発明の更なる実施形態では、特に、医療において生物学的流体の処理装置を使用するために、少なくとも1枚の膜、好ましくは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜、より好ましくは、前記膜の各々に、細胞、好ましくは上皮細胞が付着してもよい。医療分野における、長期間使用できる本発明の気体交換装置(例えば、肺補助システム)では、前記膜と前記細胞とがコロニーを形成することにより耐久性が顕著に向上するが、その理由は、用いられる媒体から前記膜上への物質の非特異的蓄積が阻止又は強く阻害され、その結果、前記膜の気体透過性が、時間が経過しても全く低下しないか、又は僅かしか低下しないためである。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1枚の膜、好ましくは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜、より好ましくは、全ての膜(即ち、少なくとも1枚の液体透過性膜も)が、(多)糖(好ましくは、ヘパリン)、核酸、タンパク質(好ましくは、アルブミン)からなる群より選択される1以上の物質でコーティングされる。
【0028】
前記膜と前記細胞とのコロニー形成、又は他の物質による前記膜のコーティングについては、予め前記膜の表面を改質しておくことが有利であるか、又は更には必須である場合もある。前記膜を改質する手順は、当該技術分野において公知であり、意図する用途によって当業者が選択することができる。例えば、前記膜を物理的又は化学的に処理することにより、前記膜の疎水性/親水性/電荷密度を変化させて、接着性を高めることが必要な場合もある。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜は、一般的に、少なくとも片側が構造化(テクスチャ処理)される。前記膜の側面のうち、第1のチャンバ内の生物学的流体に面する側が構造化されることが好ましい。この状況では、並行国際特許出願PCT/EP2009/006403号明細書を参照し、その内容を参照することにより本願に援用するものとする。気体交換における構造化膜の有益な性質(例えば、流れ抵抗の低下)は、液体の場合に特に明らかである。前記膜上における構造の形状は、任意で変化させてもよい。したがって、前記膜上における構造として、例えば、生体肺の毛管構造を模倣したチャネル及び/又は分岐を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
次に、添付図面に示される特定の例示的な実施形態を用いて本発明を例証する。添付図面では、類似の機構に類似の符番を付す。
【図1】図1は、本発明の基本的な実施形態に係る装置の概略側面図の一例を示す。
【図2】図2は、図1の発明の基本的な実施形態に係る装置のX−X方向における概略断面図の一例を示す。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態に係る装置の概略等角図の一例を示す。
【図4】図4は、細胞が付着している中空繊維のDAPI染色を示す。
【図5】図5は、4頭の実験動物の動脈CO2濃度を示す。
【図6】図6は、4頭の実験動物の動脈O2濃度を示す。
【図7】図7は、4頭の実験動物の静脈CO2濃度を示す。
【図8】図8は、4頭の実験動物の静脈O2濃度を示す。
【図9】図9は、動物実験後の本発明の試作品の気体交換性能に関して、デルタO2濃度及びCO2濃度を示す。
【図10】図10は、本発明に係る試験用モジュールの平均圧力低下を示す。
【図11】図11は、細胞が付着していない本発明の試験用モジュールから得られた動物1及び動物3の血液濾液の体積を示す。
【図12】図12は、血清及び血液濾液パラメータの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び図2には、本発明の概念の簡単な実例を示す。本発明に係る装置1は、第1のチャンバ3を囲む又は部分的に画定する筐体2を含む。第1のチャンバ3は、生物学的流体(例えば、血液)の受容に好適であり、フローチャンバとして設計される。生物学的流体、即ち、血液は、筐体2の入口5を通って矢印4で示す方向に第1のチャンバ3に流れ込み、反対側の出口6を通って第1のチャンバ3から出る。筐体2は、ポリエチレン又はポリウレタン等の、生物学的流体と化学的に反応しないプラスチックで作製されることが好ましい。
【0032】
更に、装置1は、第1のチャンバ3全体に亘って延在しており、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれている管状の第2のチャンバ7を有する。第2のチャンバ7の空隙を囲む管状壁8は、比較的薄く、且つプラスチックで作製されることが好ましい。管状壁8は、管状壁8が第1のチャンバ3と第2のチャンバ7との間で気体分子を移動させられるように、管状壁8と共に気体透過性且つ液体不透過性膜9を形成する外層の支持材として機能する。換言すれば、膜9は、血液の分子成分と第2のチャンバ内に含まれる媒体とを緊密に接触させることができる分離又は接触表面を形成する。
【0033】
第2のチャンバ7は、酸素等の気体の受容に好適であり、また、フローチャンバとして設計されている。気体透過性且つ液体不透過性膜9は、酸素及び二酸化炭素を選択的に透過可能であることが好ましい。酸素は、入口11を通って矢印10で示す方向に第2のチャンバ7に流れ込み、反対側の出口12から第2のチャンバ7を出る。しかし、第2のチャンバ7を通って流れる酸素は、気体透過性且つ液体不透過性膜9を通って、第1のチャンバ3を流れる血流にも部分的に移動する。この方法で、血液の酸素濃縮が行われる。同様に、所謂、換気又は肺補助処理が膜9において行われるように、膜9を通して血液から第2のチャンバ7に二酸化炭素を移動又は除去することができる。
【0034】
圧力P2及び/又は第2のチャンバ7を通って流れる酸素流に関連する第1のチャンバ3内の圧力P1及び/又は生物学的流体流、即ち、血液流は、酸素の血液への移動及び/又は二酸化炭素の血液からの移動が望ましく行われるように、選択又は調整することができる。例えば、ポンプ(図示せず)を用いて第1のチャンバ1を通して血液を輸送してもよく、又は血液は、患者の循環系の圧力のみでも第1のチャンバを通って流れることができる。
【0035】
再度図1及び図2を参照すると、装置1は、管状の第3のチャンバ13も含み、これは、第2のチャンバのように第1のチャンバ3全体に亘って延在し、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれている。第3のチャンバ13の空隙を取り囲む管状壁14は、比較的薄く、且つプラスチックで作製されることが好ましい。第2のチャンバ7のように、壁14は、壁14と共に膜15を形成する外層の支持材として機能するが、膜15は、この場合、管状壁14が第1のチャンバ3と第3のチャンバ13との間で液体成分を移動させられるように液体透過性である。具体的には、この膜15は、生物学的流体の1以上の液体成分を除去/回収する機能を有する分離又は接触表面を形成する。
【0036】
特定の実施形態では、第3のチャンバ13は、(第1のチャンバ3に比べて)第3のチャンバ13内の圧力を僅かに陰圧にするために、吸気装置(図示せず)に接続するのに適している。この真空は、第1のチャンバ3を通って流れている血液から第3のチャンバ13への水等の液体成分の移動を補助又は促進する。このような方法で、第1のチャンバと第3のチャンバとの間に位置する流体透過性膜15は、水等の小さな分子を血液から搾り出し、タンパク質及び血球等の大きな分子を保持するフィルタとして機能する。
【0037】
別の実施形態では、第3のチャンバ13は、透析液を受容して、第3のチャンバへの生物学的流体由来の成分の移動を促進するのに適している。したがって、第3のチャンバ13もフローチャンバとして設計してもよく、ここで、透析液は、ポンプ(図示せず)の影響下で、血液に対して逆流するように入口16から第3のチャンバ13を通って出口17に移動する。既に上述した通り、ここでは、液体透過性半透過性膜によって分離されている2つの液体の小分子物質の濃度が均等化されるという原理(浸透)が適用される。血液と透析液との間の半透過性膜15は、孔を有しており、これは、水、電解質、及び尿に排泄される物質(例えば、尿素、尿酸)等の小分子は通過させるが、タンパク質及び血球等の大分子は堰止める。
【0038】
本発明の装置1は、生物学的流体(この場合、血液)の複数の同時処理を可能にする構造を有する。先ず、血液を酸素濃縮又は二酸化炭素除去処理することができる。第2に、濾過又は透析処理を用いて血液を同時に処理することができる。したがって、本発明は、肺及び腎不全に罹患している患者を、より簡単且つより効率的に処置することができる装置を提供する。更に、第2のチャンバ及び第3のチャンバは、第1のチャンバ内に配置され、且つ第1のチャンバによって実質的に取り囲まれているので、装置1は、生物学的流体とそれぞれのチャンバとの分離又は接触表面を最大化する構造を有する。したがって、膜により形成されるそれぞれの第2のチャンバ及び第3のチャンバの周囲表面全体が、第1のチャンバ内に含まれる生物学的流体と第2のチャンバ及び第3のチャンバに含まれる媒体との間で分子又は成分を移動又は通過させるよう機能する。
【0039】
次に、図3を参照して、本発明の特に好ましい実施形態を説明する。図3の概略図は、筐体2を有する本発明の装置1を示す。第1の例示的な実施形態のように、筐体2は、第1のチャンバ3を囲む又は(少なくとも部分的に)画定する。第1のチャンバ3は、生物学的流体(例えば、血液等)の受容に好適であり、且つフローチャンバとして設計される。生物学的流体、即ち、血液は、筐体2の入口5を通って矢印4で示す方向に第1のチャンバ3に流れ込み、反対側の出口6を通って第1のチャンバ3を出る。前述の通り、筐体2は、ポリエチレン又はポリウレタン等のプラスチックで作製されることが好ましい。
【0040】
図3の装置1は、複数の管状の第2のチャンバ7を有し、これは、何列にも隣り合って配置される。第2のチャンバ7は、第1のチャンバ3全体に亘って平行に延在し、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれる。この実施形態では、第2のチャンバ7の空隙を取り囲む管状壁8は、例えば、発泡TPX等のポリメチルペンテン(PMP、TPXとしても知られている)で作製される中空繊維の形態である。これら壁8とその外表面又は外層とが、第1のチャンバ3と中空繊維内に位置する第2のチャンバ7との間で気体分子を移動させる気体透過性且つ流体不透過性膜9を形成する。この場合も、膜9は、血液の分子成分と第2のチャンバ内に含まれる媒体とを緊密に接触させることができる分離又は接触表面を形成する。
【0041】
第2のチャンバ7は、酸素等の気体の受容に好適であり、また、フローチャンバとして設計される。気体透過性且つ流体不透過性膜9は、酸素及び二酸化炭素を選択的に透過可能である。酸素は、入口11を通って矢印10で示す方向に第2のチャンバ7に流れ込み、反対側の出口12を通って第2のチャンバ7を出る。前述の通り、第2のチャンバ7を通って流れている酸素の一部は、気体透過性且つ液体不透過性膜9を通過して第1のチャンバ3を通って流れている血液に入り、血液を酸素濃縮する。同様に、所謂、換気又は肺補助処理が行われるように、膜9を介して血液から第2のチャンバ7に二酸化炭素を移動又は除去する。
【0042】
隣り合って列/面に配置され、第2のチャンバ7を形成するTPX繊維は、織物技術の手法で縦糸と相互接続する。これは、繊維間の所定の距離D2で離間されている一種の繊維マット19を作製する。この繊維間の距離D2は、第1のチャンバ3を通って流れている血流が、確実にマット19を通って流れることができ、延いては、膜9の接触表面との接触を最大化することができるよう機能する。この実施形態では、個々のTPX中空繊維は、100μm〜1mm、好ましくは、200μm〜600μmの外径を有し(例えば、外径約400μm、壁厚約100μm)、且つ100μm〜500μmの距離D2で隣り合って各列又は層に配置される。この距離は、任意に選択することができる。したがって、様々なTPX繊維を並べて置いて、マット19に加工できることは明らかである。TPX中空繊維膜マット19の寸法は、例えば、約10cm×15cmである。
【0043】
TPX中空繊維をマット19に加工した後、上下に積み重ねることによりマット19を更に加工してもよい。図3では、第2の平行に延在するチャンバ7の層、即ちマット19を2つだけ示し、これらは、上下に積み重ねられる。しかし、第1のチャンバ3内において、多数のマットを上下に設けてもよいことが当業者には理解される。図3には示さないが、第2のチャンバ7を形成するTPX繊維の末端は、個々の入口11に共通の供給装置から気体、即ち、酸素が供給されるように、且つ個々の出口12が共通の出口につながるように、束にされるか又は相互接続される。これは、個々のマット19の第2のチャンバ7だけでなく、全てのマット19における全ての第2のチャンバ7にも適用されることが好ましい。同配向の繊維の所謂「相互接続」は、好ましくは、例えば、ポリウレタン等の成形又はソケッティング手順により行われる。この場合、繊維積み重ね体の外側領域において、繊維の末端を液体プラスチックで丸く成形(cast round)する。プラスチックを硬化させた後、繊維の内部が開くまで、外側から薄く切り取る。それによって、個々の繊維又はチャンバへの共通の供給装置が得られる。
【0044】
更に、図3の装置1は、複数の管状の第3のチャンバ13を有し、これは、第2のチャンバ7のように第1のチャンバ3全体に亘って平行に延在し、且つ第1のチャンバ3によって実質的に取り囲まれている。この実施形態では、第3のチャンバ13の空隙を囲む管状の壁14は、ポリエチレンスルホン(PES)等の中空繊維により作製される。中空繊維の壁14は、その外表面と共に液体透過性膜15を形成し、この膜15は、第1のチャンバ3と中空繊維内に位置する第3のチャンバ13との間で液体成分を移動させる。具体的に、膜15は、生物学的流体の1以上の成分を除去/回収する機能を有する分離又は接触表面を形成する。
【0045】
TPX繊維と同様に、隣り合って列又は面に配置され、且つ第3のチャンバ13を形成するPES繊維は、縦糸20により織物技術の手法で相互接続される。これにより、PES繊維間の所定の距離D3で離間されている一種の繊維マット21を作製する。このPES繊維間の距離D3は、第1のチャンバ3を通って流れている血流が、確実にマット21を通って流れ、延いては、膜15の接触表面との接触を最大化することができるよう機能することができる。図3には、第3のチャンバ13の層、即ち、マット21を2つだけ示し、これらは、積み重ね層21として示される。第2のチャンバ7と同様に、この実施形態における個々のPES繊維は、100μm〜1mm、好ましくは、200μm〜600μmの外径を有し(例えば、外径約500μm、壁厚約100μm)、100μm〜500μmの距離D3で隣り合って各列又は層に配置される。したがって、多くのPES繊維を並べて配置し、マット21に加工することができる。各PES繊維膜マット21の寸法も、約10cm×15cmとなる。液体透過性膜の孔径は、好ましくは、1μm以下、より好ましくは、0.5μm以下(例えば、最大孔径0.5μm)である。これら膜により、好ましくは、35mL/分・cm2・barの膜貫通流が生じる。
【0046】
PES中空繊維でマット21を作製した後、上下に積み重ねることによりマット21を更に加工してもよい。図3では、第3の平行に延在するチャンバ13の層、即ち、マット21を2つだけ示す。しかし、第1のチャンバ3内において、多数のかかるマット21を上下に設けてもよいことが当業者には理解されるであろう。
【0047】
第3のチャンバ13を形成するPES繊維の末端は、個々の入口16にまとめて陰圧が印加されるように、束にされるか又は相互接続される、或いは、個々の出口17が共通の排出口につながるように、共通の供給装置を介して透析液を供給してもよい。第2のチャンバ7に関連して記載されているように、同配向の繊維の所謂「相互接続」は、例えば、ポリウレタン等を用いる成形又はソケッティング手順により行われることが好ましい。これは、個々のマット21の第3のチャンバ13だけでなく、積み重ねられたマット21において第3のチャンバ全てにも適用される。
【0048】
平行に配置される第2のチャンバ7の細長いアラインメントは、平行に配置される第3のチャンバ13のアラインメントの長手方向に対して直角に延在し、層、TPX繊維及びPES繊維の各マット19、21は、比較的圧縮された配置に、この例では交互に且つ直接上下に積み重ねられる。マット19、21は、互いに接触するように、直接上下に配置されることが好ましい。図3では、層、即ち、マット19、21は、本発明を単純化して図示するために「分解立体」図で互いからの距離を離して示す。本発明の装置1における中空繊維及び層、即ちマット19、21の矩形配置は、それぞれ第2のチャンバ7及び第3のチャンバ13への接続に(即ち、それぞれ供給及び排出接続に)特に適している。換言すれば、装置1は、矩形筐体2の対側面に第2のチャンバに対する供給接続及び排出接続を設けてもよいだけでなく、筐体2の他の対側面にも第3のチャンバ13に対する供給接続及び排出接続を設けてもよい。更に、筐体2は、図3に概略的に示すように、それぞれの膜層、即ちマット19、21全体に亘って生物学的流体を直交流動させることができる。
【0049】
前述の記載の目的は、本発明の好ましい実施形態の動作を例証することであり、本発明の範囲を限定するものではない。前述の説明に基づいて、本発明の開示に包含される多くの変形が、当業者に明らかになるであろう。当業者に理解されるように、例えば、上記中空繊維のマット19、21は、常に交互に積み重ねなければならないものではない。各マット19、21のタイプは、例えば、類似する群に積み重ね、組み合わせてもよく、次いで、これらの群を後で互いに組み合わせてもよい。また、当業者に理解されるように、本発明の装置1は、生物学的流体の最大2つの処理に限定されるものではない。むしろ、本発明の装置1の構造は、複数の同時処理を可能にする。
【0050】
動物試験における実験結果
4頭の実験動物(ブタ)を用いるパイロット実験において、気体交換(O2及びCO2)及び血液透析を用いて血液を処理するために、図3に記載の実施形態に係る本発明の装置を各動物に接続し、6時間に亘って作動させた。本発明の装置は、試験用モジュール、即ち、試作品の形態であり、各動物の呼吸、血圧、及び試験用モジュールを通過する流れを持続的に制御した。30分間隔で、血清及び血液の気体を分析するために血液サンプルを採取した。試験用モジュール(即ち、試作品)を用いて6時間に亘って動物を人工的に呼吸させた。
【0051】
動物実験を実施するために、4つのモジュールのうちの2つ(即ち、動物2及び4に対するモジュール)に細胞を付着させておいた。このために、A549細胞を培地に取り、数週間に亘って培養培地で増殖させた。細胞が必要数に達した後、トリプシン処理により細胞を剥がし、40mLの媒体に入れ、試作品のPES繊維に注入した。2日間〜3日間インキュベートした後、細胞は、繊維の内側に付着した。これは、図4に示すように、DAPI色素による繊維のクリオトーム切片の核染色により実証された。細胞を付着させたモジュール及び付着させていないモジュールを通過する血液は、1分間当たり1.1リットル対1.3リットルの血液に相当しており、コロニー形成及び試作品のプレインキュベートは、それぞれ、血液の流量に顕著な影響を与えなかった。
【0052】
図5及び6から分かるように、CO2(図5)及びO2(図6)についての動脈の血液気体値は、実験期間に亘ってかなり一定の水準を示す。ブタ2では、最初の3回の測定において約22mmHgから約15mmHgにCO2濃度が低下した。試作品と接続した後の動脈のO2値は、50mmHg〜100mmHgであることが見出された。
【0053】
図7及び8から、静脈血における分圧により、試作品の気体交換性能に関する情報が得られる。静脈CO2濃度(図7)は、動脈の値よりもほんの僅かに低いことは注目に値する。一般的に、低い値は、CO2排出が比較的多く且つ一定であることを示す。静脈のO2濃度(図8)は、範囲がより広い。動物1は、最低のO2分圧(200mmHg〜330mmHg)を有していたが、一方、ブタ2及び4は、500mmHg超という比較的高いO2分圧を有していた。これは、細胞を付着させた試験用モジュールの気体移動性能がより高いことを示し、ここでは、細胞化及び血清含有培地中でのプレインキュベートの両方が、気体移動性能の向上に影響を与えている可能性がある。図9には、(01〜04として示す)各モジュールの(第2の)PMP膜を介して血液中のO2が顕著に増加することが示されている。
【0054】
血管圧により、PES膜を通過して第3のチャンバ13、即ち、中空繊維14の内腔側に血清が流れるのを観察することができた。このように、繊維は、血漿を透過可能であり、内腔側に細胞を付着させてもよいことを示すことができた。ブタ3では、ブタ1のモジュールに比べてかなり大きな圧力低下がみられたが、両方の値は、非常に低いレベルであった。したがって、モジュールの圧力低下は、許容できる範囲であった。
【0055】
図10を参照すると、PES繊維の血液透析の性能(膜15を通って第3のチャンバ13に)は、6時間の全期間に亘って一定の値を示した。図11を参照すると、個体間の差(ここでは、動物1及び動物3のモジュール間の差)が比較的大きかったことに注目すべきである。これは、一方では、血管圧の差によるものであり、それに加えて、動物の止血状況及び流体状態(状況)によるものである。
【0056】
図12から分かるように、動物1において、濾液のパラメータと血清パラメータとの差はほんの僅かである。したがって、血液透析の性能が非常に良好であると推測することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 装置
2 筐体
3 第1のチャンバ
4 矢印
5 入口
6 出口
7 第2のチャンバ
8 管状壁
9 気体透過性且つ液体不透過性膜
10 矢印
11 入口
12 出口
13 第3のチャンバ
14 管状壁
15 液体透過性膜
16 入口
17 出口
18 縦糸
19 繊維マット
20 縦糸
21 繊維マット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバ(3)と、気体の受容に好適な第2のチャンバ(7)とを含み、前記第1のチャンバ(3)及び前記第2のチャンバ(7)が、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって互いに分離されており、前記生物学的流体を処理するために、気体分子が前記気体透過性且つ液体不透過性膜(9)を通って前記第1のチャンバ(3)と前記第2のチャンバ(7)との間で移動可能な生物学的流体の処理装置(1)であって、少なくとも1枚の液体透過性膜(15)によって前記第1のチャンバ(3)と分離され、且つ前記生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適な第3のチャンバ(13)を有することを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
第2のチャンバ(7)が、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって、分離されるか又は取り囲まれる請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
生物学的流体が第2のチャンバ(7)を取り囲むように、前記第2のチャンバ(7)が、第1のチャンバ内に位置するか又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
第3のチャンバ(13)が、少なくとも1枚の液体透過性膜(15)によって、分離されるか又は取り囲まれる請求項1〜3のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項5】
生物学的流体が第3のチャンバ(7)を取り囲むように、前記第3のチャンバ(13)が、第1のチャンバ(3)内に位置するか、又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる請求項1〜4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
第3のチャンバ(13)への生物学的流体由来の成分の移動を促進するために、前記第3のチャンバ(13)が、第1のチャンバ(3)に比べて陰圧であることが好適である請求項1〜5のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
第3のチャンバ(13)への生物学的流体由来の成分の移動を促進するために、前記第3のチャンバ(13)が、液体の受容に好適である請求項1〜6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
装置(1)が、複数の第2のチャンバを含むように、前記第2のチャンバ(7)が幾つかのチャンバに分割され、前記複数の第2のチャンバ(7)が、気体の受容に好適であり、気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって第1のチャンバ(3)と分離され、且つ、前記複数の第2のチャンバ(7)が、前記第1のチャンバ内に位置するか又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる請求項1〜7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
第2のチャンバ(7)が、断面に1以上の連続する空隙を含む細長く、且つ好ましくは実質的に円筒形状の構造を有し、前記断面を区切る前記第2のチャンバ(7)の壁(8)が、気体透過性且つ液体不透過性膜(9)を少なくとも部分的に形成する請求項1〜8のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
複数の第2のチャンバ(7)が、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに(D2)離間されて配置され、好ましくは、前記複数の第2のチャンバ(7)が、幾つかの層(19)に配置される請求項8又は9に記載の装置(1)。
【請求項11】
第3のチャンバ(13)が、幾つかのチャンバに分割されて、装置(1)が、複数の前記第3のチャンバ(13)を含むようにされ、前記複数の第3のチャンバ(13)が、流体透過性膜(15)によって第1のチャンバ(3)と分離され、生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適であり、且つ前記複数の第3のチャンバ(13)が、第1のチャンバ(3)内に位置するか又は前記第1のチャンバに実質的に取り囲まれる請求項1〜10のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項12】
生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバ(3)と、
気体の受容に好適な複数の第2のチャンバ(7)であって、前記生物学的流体を処理するために、前記第1のチャンバ(3)と前記第2のチャンバ(7)との間で気体透過性且つ流体不透過性膜(9)を介して気体分子が移動可能となるように、各第2のチャンバが、気体透過性且つ流体不透過性膜(9)によって区切られるか又は取り囲まれ、且つ第1のチャンバ(3)内に位置するか又は前記第1のチャンバによって実質的に取り囲まれる第2のチャンバ(7)と、
複数の第3のチャンバ(13)であって、各第3のチャンバが、流体透過性膜(15)によって区切られるか又は取り囲まれ、且つ、第1のチャンバ(3)内に位置するか又は第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれ、且つ前記生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適な第3のチャンバ(13)と
を含むことを特徴とする生物学的流体の処理装置(1)。
【請求項13】
第3のチャンバ(13)が、断面に1以上の連続する空隙を含む細長く、且つ好ましくは実質的に円筒形状の構造を有し、前記断面を区切る前記第3のチャンバ(13)の壁(14)が、少なくとも部分的に液体透過性膜(15)を形成する請求項1〜12のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項14】
複数の第3のチャンバ(13)が、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに(D3)離間されて配置され、好ましくは、前記複数の第3のチャンバ(13)が、幾つかの層(21)に配置される請求項11〜13のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項15】
中空体又は中空繊維の壁(8、14)がそれぞれの膜(9、15)を形成するように、第2のチャンバ(7)及び/又は第3のチャンバ(13)が、中空体、好ましくは中空繊維として形成される請求項1〜14のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項16】
第2のチャンバ(7)の細長いアラインメントが、第3のチャンバの細長いアラインメントに対して横方向に、好ましくは直角に延在する請求項1〜15のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項17】
第1のチャンバ(3)がフローチャンバとして形成され、第2のチャンバ(7)又は第3のチャンバ(13)とは反対方向又は横方向(4)に入口(5)から出口(6)へと流れるよう設計されている請求項1〜16のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項18】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚が、有機材料で作製されるか又は有機材料を含み、前記有機材料が、ポリマー、ポリマー複合材、又はポリマー層であることが好ましい請求項1〜17のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項19】
少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)の材料が、ポリオレフィンであり、前記ポリオレフィンが、ポリメチルペンテンであることが好ましい請求項18に記載の装置(1)。
【請求項20】
少なくとも1枚の液体透過性膜(15)の材料が、ポリエーテルスルホンである請求項18に記載の装置(1)。
【請求項21】
膜(9、15)の厚みが、10μm〜100μmである請求項1〜20のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項22】
膜(9、15)の厚みが、20μm〜50μmである請求項21に記載の装置(1)。
【請求項23】
第2のチャンバ(7)及び第3のチャンバ(13)の少なくともいずれかの各直径が、1μm〜1cmである請求項1〜22のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項24】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚、好ましくは、全ての膜が、支持材により安定化されている請求項1〜23のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項25】
少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜(9)が、特に酸素及び二酸化炭素の少なくともいずれかを選択的に透過可能である請求項1〜24のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項26】
少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜(9)が、窒素不透過性であるか又は僅かに窒素を透過可能である請求項1〜25のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項27】
少なくとも1枚の流体透過性膜が、血液透析及び血液濾過処理の少なくともいずれかに好適である請求項1〜26のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項28】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚、好ましくは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)に、細胞、好ましくは上皮細胞が付着する請求項1〜27のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項29】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚が、(多)糖(好ましくは、ヘパリン)、核酸、タンパク質(好ましくは、アルブミン)からなる群より選択される1以上の物質でコーティングされる請求項1〜28のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項30】
生物学的流体が、血液、血清、細胞懸濁液、細胞溶液、及び培養培地からなる群より選択される請求項1〜29のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれかに記載の装置(1)を2以上含む装置。
【請求項32】
少なくとも3つのチャンバを含む生物学的流体の処理装置(1)であって、前記生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバ(3)と気体の受容に好適な第2のチャンバ(7)とが、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって互いに分離され、前記気体透過性且つ液体不透過性膜(9)が、前記第1のチャンバ(3)と前記第2のチャンバ(7)との間で気体分子を移動させるのに好適であり、前記第1のチャンバ(3)と第3のチャンバ(13)とが、少なくとも1枚の流体透過性膜(15)によって互いに分離され、前記流体透過性膜(15)が、前記第1のチャンバ(3)と前記第3のチャンバ(13)との間で1以上の成分を移動させるのに好適であることを特徴とする装置(1)。
【請求項33】
人工肺又はバイオリアクタにおける請求項1〜32のいずれかに記載の装置(1)の使用。
【請求項1】
生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバ(3)と、気体の受容に好適な第2のチャンバ(7)とを含み、前記第1のチャンバ(3)及び前記第2のチャンバ(7)が、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって互いに分離されており、前記生物学的流体を処理するために、気体分子が前記気体透過性且つ液体不透過性膜(9)を通って前記第1のチャンバ(3)と前記第2のチャンバ(7)との間で移動可能な生物学的流体の処理装置(1)であって、少なくとも1枚の液体透過性膜(15)によって前記第1のチャンバ(3)と分離され、且つ前記生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適な第3のチャンバ(13)を有することを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
第2のチャンバ(7)が、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって、分離されるか又は取り囲まれる請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
生物学的流体が第2のチャンバ(7)を取り囲むように、前記第2のチャンバ(7)が、第1のチャンバ内に位置するか又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
第3のチャンバ(13)が、少なくとも1枚の液体透過性膜(15)によって、分離されるか又は取り囲まれる請求項1〜3のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項5】
生物学的流体が第3のチャンバ(7)を取り囲むように、前記第3のチャンバ(13)が、第1のチャンバ(3)内に位置するか、又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる請求項1〜4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
第3のチャンバ(13)への生物学的流体由来の成分の移動を促進するために、前記第3のチャンバ(13)が、第1のチャンバ(3)に比べて陰圧であることが好適である請求項1〜5のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
第3のチャンバ(13)への生物学的流体由来の成分の移動を促進するために、前記第3のチャンバ(13)が、液体の受容に好適である請求項1〜6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
装置(1)が、複数の第2のチャンバを含むように、前記第2のチャンバ(7)が幾つかのチャンバに分割され、前記複数の第2のチャンバ(7)が、気体の受容に好適であり、気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって第1のチャンバ(3)と分離され、且つ、前記複数の第2のチャンバ(7)が、前記第1のチャンバ内に位置するか又は前記第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれる請求項1〜7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
第2のチャンバ(7)が、断面に1以上の連続する空隙を含む細長く、且つ好ましくは実質的に円筒形状の構造を有し、前記断面を区切る前記第2のチャンバ(7)の壁(8)が、気体透過性且つ液体不透過性膜(9)を少なくとも部分的に形成する請求項1〜8のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
複数の第2のチャンバ(7)が、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに(D2)離間されて配置され、好ましくは、前記複数の第2のチャンバ(7)が、幾つかの層(19)に配置される請求項8又は9に記載の装置(1)。
【請求項11】
第3のチャンバ(13)が、幾つかのチャンバに分割されて、装置(1)が、複数の前記第3のチャンバ(13)を含むようにされ、前記複数の第3のチャンバ(13)が、流体透過性膜(15)によって第1のチャンバ(3)と分離され、生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適であり、且つ前記複数の第3のチャンバ(13)が、第1のチャンバ(3)内に位置するか又は前記第1のチャンバに実質的に取り囲まれる請求項1〜10のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項12】
生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバ(3)と、
気体の受容に好適な複数の第2のチャンバ(7)であって、前記生物学的流体を処理するために、前記第1のチャンバ(3)と前記第2のチャンバ(7)との間で気体透過性且つ流体不透過性膜(9)を介して気体分子が移動可能となるように、各第2のチャンバが、気体透過性且つ流体不透過性膜(9)によって区切られるか又は取り囲まれ、且つ第1のチャンバ(3)内に位置するか又は前記第1のチャンバによって実質的に取り囲まれる第2のチャンバ(7)と、
複数の第3のチャンバ(13)であって、各第3のチャンバが、流体透過性膜(15)によって区切られるか又は取り囲まれ、且つ、第1のチャンバ(3)内に位置するか又は第1のチャンバ(3)によって実質的に取り囲まれ、且つ前記生物学的流体の1以上の成分の除去/回収に好適な第3のチャンバ(13)と
を含むことを特徴とする生物学的流体の処理装置(1)。
【請求項13】
第3のチャンバ(13)が、断面に1以上の連続する空隙を含む細長く、且つ好ましくは実質的に円筒形状の構造を有し、前記断面を区切る前記第3のチャンバ(13)の壁(14)が、少なくとも部分的に液体透過性膜(15)を形成する請求項1〜12のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項14】
複数の第3のチャンバ(13)が、1以上の列に隣り合って、且つ好ましくは互いに(D3)離間されて配置され、好ましくは、前記複数の第3のチャンバ(13)が、幾つかの層(21)に配置される請求項11〜13のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項15】
中空体又は中空繊維の壁(8、14)がそれぞれの膜(9、15)を形成するように、第2のチャンバ(7)及び/又は第3のチャンバ(13)が、中空体、好ましくは中空繊維として形成される請求項1〜14のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項16】
第2のチャンバ(7)の細長いアラインメントが、第3のチャンバの細長いアラインメントに対して横方向に、好ましくは直角に延在する請求項1〜15のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項17】
第1のチャンバ(3)がフローチャンバとして形成され、第2のチャンバ(7)又は第3のチャンバ(13)とは反対方向又は横方向(4)に入口(5)から出口(6)へと流れるよう設計されている請求項1〜16のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項18】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚が、有機材料で作製されるか又は有機材料を含み、前記有機材料が、ポリマー、ポリマー複合材、又はポリマー層であることが好ましい請求項1〜17のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項19】
少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)の材料が、ポリオレフィンであり、前記ポリオレフィンが、ポリメチルペンテンであることが好ましい請求項18に記載の装置(1)。
【請求項20】
少なくとも1枚の液体透過性膜(15)の材料が、ポリエーテルスルホンである請求項18に記載の装置(1)。
【請求項21】
膜(9、15)の厚みが、10μm〜100μmである請求項1〜20のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項22】
膜(9、15)の厚みが、20μm〜50μmである請求項21に記載の装置(1)。
【請求項23】
第2のチャンバ(7)及び第3のチャンバ(13)の少なくともいずれかの各直径が、1μm〜1cmである請求項1〜22のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項24】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚、好ましくは、全ての膜が、支持材により安定化されている請求項1〜23のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項25】
少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜(9)が、特に酸素及び二酸化炭素の少なくともいずれかを選択的に透過可能である請求項1〜24のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項26】
少なくとも1枚の気体透過性且つ流体不透過性膜(9)が、窒素不透過性であるか又は僅かに窒素を透過可能である請求項1〜25のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項27】
少なくとも1枚の流体透過性膜が、血液透析及び血液濾過処理の少なくともいずれかに好適である請求項1〜26のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項28】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚、好ましくは、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)に、細胞、好ましくは上皮細胞が付着する請求項1〜27のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項29】
膜(9、15)のうちの少なくとも1枚が、(多)糖(好ましくは、ヘパリン)、核酸、タンパク質(好ましくは、アルブミン)からなる群より選択される1以上の物質でコーティングされる請求項1〜28のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項30】
生物学的流体が、血液、血清、細胞懸濁液、細胞溶液、及び培養培地からなる群より選択される請求項1〜29のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれかに記載の装置(1)を2以上含む装置。
【請求項32】
少なくとも3つのチャンバを含む生物学的流体の処理装置(1)であって、前記生物学的流体の受容に好適な第1のチャンバ(3)と気体の受容に好適な第2のチャンバ(7)とが、少なくとも1枚の気体透過性且つ液体不透過性膜(9)によって互いに分離され、前記気体透過性且つ液体不透過性膜(9)が、前記第1のチャンバ(3)と前記第2のチャンバ(7)との間で気体分子を移動させるのに好適であり、前記第1のチャンバ(3)と第3のチャンバ(13)とが、少なくとも1枚の流体透過性膜(15)によって互いに分離され、前記流体透過性膜(15)が、前記第1のチャンバ(3)と前記第3のチャンバ(13)との間で1以上の成分を移動させるのに好適であることを特徴とする装置(1)。
【請求項33】
人工肺又はバイオリアクタにおける請求項1〜32のいずれかに記載の装置(1)の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−517307(P2012−517307A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549481(P2011−549481)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000852
【国際公開番号】WO2010/091867
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511056769)ノヴァラング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000852
【国際公開番号】WO2010/091867
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511056769)ノヴァラング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】
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