説明

生物学的試料の粉砕装置

試料を含むチューブを支持するためのターンテーブルと、ターンテーブルをターンテーブルの軸上に位置する回転軸の回りで振動運動をさせる手段を含む生物学的試料を粉砕する装置であって、チューブ冷却手段が、装置のある部分によって運搬され、ターンテーブルによって運搬されるチューブが振動する領域を含む冷却領域を画定するために前記ターンテーブルを取り囲むことを特徴とする装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的試料を粉砕する装置に関し、その装置は、試料を含むチューブを支持するターンテーブルと、ターンテーブルをターンテーブルの軸に位置する回転軸の回りを振動運動をさせる手段を含んでいる。
【0002】
そのような装置は、特に、WO−A−2004/012851公報及びFR−A−2872233公報に記載され、チューブ運搬用ターンテーブルを支持し中央に位置させるために、一つが別の一つの内部に配置される同軸ベアリングを含んでおり、ベアリングは装置の弾性ぶら下がり部分及びターンテーブルを運搬する駆動シャフトの間に配置されている。
【0003】
ターンテーブルは、駆動シャフトの回りで回転しないように固定されており、試料を含むチューブは高周波数の曲線往復運動をし、チューブが含む試料は、例えばガラス又はセラミックで形成され試料と共にチューブ中に含まれるマイクロビーズによって、粉砕され一様化される。
【0004】
そのタイプの粉砕は非常に有効であり非常に高速であるが、チューブ中の試料の温度が著しく上昇するという短所を持つという難点がある。粉砕をする前に試料を含むチューブを冷却する時でさえ、粉砕の終了時における試料の温度は60℃から70℃のオーダーの値に達する又はこのような値を超えることがあり得て、このような値では試料のある特性は、不可逆に変更されてしまう。このことは、例えば、蛋白質に適用してみると、蛋白質の活性度は蛋白質列とその三次元構造との両方によって決定され、構造は加熱によって壊される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特定の目的は、この問題に対する単純で効果的で十分な解決方法を与えることである。
【0006】
この目的のために、本発明は、試料を含むチューブを支持するためのターンテーブルと、ターンテーブルをターンテーブルの軸上に位置する回転軸の回りで振動運動をさせる手段を含む生物学的試料を粉砕する装置であって、チューブ冷却手段が、装置のある部分によって運搬され、ターンテーブルによって運搬されるチューブが振動する領域を含む冷却領域を画定するために前記ターンテーブルを取り囲むこと、を特徴とする装置を提供する。
【0007】
冷却手段は、固定されていても可動であってもよく、冷却手段は、試料に含まれる蛋白質の三次元構造は損なわないために、試料を粉砕の最後において零度より数度高い温度に保持するように機能する。
【0008】
本発明の好適な実施形態では、冷却手段は、冷却領域を画定し、それを装置のある部分上に保持する又は固着させる手段を含む略碗形状の円筒壁を含む。
【0009】
円筒壁を装置内に装着されているとき、それはチューブの温度より十分低い温度、例えば零度以下の温度にあって、ターンデーブルによって運搬されるチューブによって放出される熱を吸収し得るが、この吸収によって粉砕の終了時にチューブに含まれる試料は、例えば約4℃に保たれる。
【0010】
変形例としては、円筒壁が冷却流体の移送又は循環させる手段を備えていてもよい。
【0011】
特に、壁は、窒素などの極低温気体を循環させるための導管と、冷却気体の噴流によってチューブを局所的に冷却させることを可能にする噴射ノズルを備えていても良い。
【0012】
他の変形例としては、円筒壁はペルチェ効果によって低温を生成する熱電冷却手段を備えていても良い。
【0013】
好適には、本発明の冷却手段は加熱された気体を吸い出し、それはターンテーブルによって運搬されるチューブが振動する領域を含む冷却領域に位置している。
【0014】
前記領域に存在する気体を連続的又は不連続的な吸引することで、チューブと所望の低温に保つ点において性能が改善される。
【0015】
本発明の装置はまた、共通の台座上に位置する複数のチューブを同時に持ち上げるための自動多重クランプ型のアクセサリを含み、前記複数のチューブは運搬され、装置のターンテーブルに備えられた収納部に同時に配置され、チューブはスナップ締めによって自動的に持ち上げられ、チューブはアクセサリに備えられた制御部材が一段階動作を実行することによって配置される。
【0016】
重要なことは、粉砕の前に部分的にも再び熱を帯びてしまうことを避けるために、粉砕の前に冷却されたチューブを、出来るだけ短時間のうちに装置のターンテーブル上に置くことである。
【0017】
本発明のアクセサリは、ターンテーブルに置かれる全てのチューブ(例えば、24個のチューブ)が同時に持ち上げることを可能とし、それらを同時にターンテーブルの収納部に配置させることを可能にする。
【0018】
好適な実施形態では、アクセサリは、把持するためにチューブの頂上端を覆うように構成され、チューブの端部に備えられクランプするよう構成された複数のスナップ締め手段を備える円状のカバーを、例えば、押し釦又は四分の一回転釦によって形成され、チューブの端を外す弾性スナップ締め手段の全てを同時に動作させるにように構成された制御部材と共に含んでいる。
【0019】
このアクセサリは本発明の装置の利用を大いに促進させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、添付の図面を参照しながら例として挙げられた以下の記載を読むことで、良く理解できるし、本発明の他の詳細、特徴、及び利点がより明確に明らかされるだろう。
【0021】
本発明の粉砕装置は、概略的に図1及び2に示したように、FR−A−2872233公報に記載された型のものであり、主にその縁で試料チューブ12を運搬し、シャフト14の端に備えられ、偏心ドライブ18を介して電気モータ16によってシャフトの軸上に位置する回転軸の回りで振幅運動するように駆動されるターンテーブル10を含んでいる。
【0022】
一つが別のものの内部に重ねられる同軸ベアリングのシステムの手段により、装置の弾性ぶら下がり部分20の上に支持されその中央に配置されるシャフト14は、FR−A−2872233公報の記載のように、シャフト14を支え、軸回りに重なる二つのボールベアリングの内部で回転するころがり玉軸受けを含んでいる。
【0023】
図1に示すように、装置はさらに、静止ボディ24に固定され、チューブに含まれている試料を粉砕するために使用している間にターンテーブル10を覆うピボットカバー22を含んでいる。ロック手段26は、試料が粉砕されている間、カバー22を図1に示す位置に保持することを可能とする。
【0024】
そのような粉砕の間、ターンテーブル10は、シャフト14の軸に関して回転しないようになっており、チューブ12は図2の矢印で示したように、曲線往復運動を行うように駆動される。
【0025】
チューブ12に含まれる試料が、チューブに含まれるガラス、セラミック、又は他の適当な物質からなるマイクロビーズによって粉砕される間に、高温に上昇しないようにするために、本発明は冷却手段30をチューブ12がその中で振動する領域の周りに配置するが、その冷却手段は碗型の形状で、装置の弾性ぶら下がり部分20の上に配置され固定され得る台座34に支持される円筒壁32を含む。
【0026】
台座34は、壁32によって画定される空間及び空気排気手段が装備される空間に連通し、特に一端が台座34の内部に通じ、反対側の端が排気手段に連通すよう構成されている吸入導管36を含むチャンバをも含んでいる。
【0027】
第一の実施形態では、冷却手段30は好適には比較的高い熱慣性を有し、図2に示すように、装置の部分20上の粉砕装置の内部に配置した後と一連の試料の粉砕を開始する直前の間に、例えば、−60℃から−100℃のオーダーの低温に何かしらの手段で持って行くことができる。
【0028】
壁32は、ターンテーブル10に固定されるチューブ12が振動する全ての領域に冷気を放射し、粉砕が終わるまで、試料の温度を例えば約4℃の値に保持することが可能にしている。
【0029】
壁32の内部に含まれる空気は、試料が粉砕されている間に、徐々に加熱され、試料の冷却を促進するために導管36の手段によって吸い出される。
【0030】
本実施形態では、冷却手段30は、単純かつ高速に装置の内部に配置され、装置から取り出すことができる。その目的のために、冷却手段は装置に取り付けるための、高速ネジ止め、バヨネット、スナップ締め及び他のタイプの固定手段を備え得る。
【0031】
本発明の別の実施形態では、冷却手段の壁32は、冷却流体の循環の導管または経路38を備え、壁32の温度を、例えば、−60℃から−100℃の領域にある所望の低い値に保つことができる。冷却流体は窒素などの極低温気体であり、経路38は冷却気体をチューブに対して噴射するノズル39を備え得る。
【0032】
この場合、冷却手段30は装置のぶら下がり部分20に取り外し不可能に固定され、ただ試料を粉砕する動作のためだけに冷却流体を供給することが可能である。
【0033】
別の実施形態では、冷却手段の壁32は、ペルチェ効果によって低温を生成する熱電素子を備えている。
【0034】
この場合、冷却手段30は装置のぶら下がり部分20に恒久的に固定され、その熱電素子には試料を粉砕する動作の間、電気エネルギーが供給される。
【0035】
図3の実施形態の変形例では、カバーが機能する位置に下ろされロック手段26により固定されると、チューブの冷却手段30は装置のカバー22の内部、そのカバーのほぼ中心部に固着される。
【0036】
この位置では、鐘132の底辺の縁は、装置の弾性ぶら下がり部分20に接している。
【0037】
鐘132はシリンダ型の二重壁を含んでいる。その二重壁によって画定される環状ギャップ134は、カバー22の後方部に備えられる、冷却空気の移送及び循環のための手段136に接続されている。鐘132の内部壁は、試料が粉砕されている間、チューブ12が所望の温度に保持されることを可能とする、複数の冷却気体の出力孔138を含んでいる。
【0038】
鐘132の内部の空気は、チューブ12と接触しているため熱を帯び、カバー及び鐘の中央のぶら下がり部分に形成された導管140を介してカバーの外部に排出される。
【0039】
例えば、手段136によって送られる冷却空気は−50℃の温度であり、鐘132の内部の温度は、動作中はおよそ−20℃である。
【0040】
装置のターンテーブル10にある数のサンプルチューブ12、例えば、ある装置の実施形態では24本のチューブ、を置こうとするときには、チューブ12をターンテーブル10上に非常に素早く置くことができれば好都合である。
【0041】
そのために、本発明は、試料のチューブを把持して図6に示すような台座上に配置することができるようにする、図4及び5に示すようなアクセサリを提供する。
【0042】
例えば、その台座40は、シリンダ形状に形成され、粉砕装置のターンテーブル10と同数の試料のチューブの収納部42を含む。
【0043】
台座40の収納部42は、装置10内のチューブ12の収納部と同様の構造で設けられ、ターンテーブル10上のチューブの収納部によって形成される円と同じ直径を有する円上に配置される。
【0044】
これらの収納部42は、チューブ12の長さより短い深さを有し、図4及び5に示すアクセサリ44の手段によって容易に把持されるようにチューブの頂点端が収納部42から十分に突出している。
【0045】
このアクセサリは主に、幾つかの、弾性スナップ締めによってチューブの頂上端を把持する手段48を含む環状のカバー46を含んでいる。
【0046】
これら把持手段48は、例えば、押し釦のような共通の制御機構50に接続され、カバー46の中央の取手52によって運搬される。
【0047】
アクセサリの動作を概略的に図7a、図7b、及び図7cによって示す。
【0048】
図7aは、その手段48によるチューブ12の把握を示している。
【0049】
このためには、アクセサリ44を台座40上の収納部42に置かれているチューブ12の上に配置し、その後チューブまでアクセサリ44を降下させ、把持手段48をチューブのキャップ54に嵌合させるだけで十分である。
【0050】
引き続き下方向に押すと、図7bに示すように、弾性把持手段48はチューブのキャップ54の下で係合する。
【0051】
そして、アクセサリ44を持ち上げ台座40からチューブ12を引き抜き、粉砕装置のターンテーブル10の収納部に揃うように配置すれば十分である。
【0052】
チューブ12が収納部に係合されたら、取手52の押し釦50に押圧を加え、弾性把持手段48から分離することによって全てのチューブ12を解放する。
【0053】
このためには押し釦50は、図7cに示すように、弾性把持手段48によって運搬されるときに、弾性的に下方向に押して離すためのチューブのキャップ54を押し出す手段56と関わり得る。
【0054】
変形例では、他の手段、例えば、全体の四分の一周だけ回転するようなハンドル、または他の適切な手段が使用され得る。
【0055】
台座40及びアクセサリ44は、試料のチューブ12を冷たい場所、例えば、0℃の温度又はそれよりも非常にわずかに高い温度に備蓄し、全てのチューブ12を、周囲の環境によって温められるほどの時間を経過しない、数秒のうちにターンテーブル10上の収納部に配置させることができる。
【0056】
アクセサリ44は、チューブ12を装置のターンテーブル10上に配置するために、オペレータが一つ一つ手でそれらを運搬する手間を無くす。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の装置の軸方向の断面の概略図である。
【図2】大きなスケールで図1の装置のある部分を示す概略図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図4】チューブ持ち上げアクセサリの断面の概略図である。
【図5】チューブ持ち上げアクセサリの斜視図である。
【図6】チューブサポートの斜視概略図である。
【図7a】チューブ持ち上げアクセサリの動作を示す概略図である。
【図7b】チューブ持ち上げアクセサリの動作を示す概略図である。
【図7c】チューブ持ち上げアクセサリの動作を示す概略図である。
【符号の説明】
【0058】
10ターンテーブル
12チューブ
14シャフト
16電気モータ
18偏心ドライブ
20ぶら下がり部分
22ピボットカバー
24静止ボディ
26ロック手段
30冷却手段
32円筒壁
34台座
36吸入導管
38導管(経路)
39ノズル
40台座
42収納部
46環状のカバー
48把持する手段
50制御機構
52取手
54キャップ
56押し出す手段
132鐘
134環状ギャップ
136移送及び循環のための手段
138出力孔
140導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を含むチューブ(12)を支持するためのターンテーブル(10)と、ターンテーブルをターンテーブルの軸上に位置する回転軸に関して振動運動をさせる手段(16、18)と、を含む生物学的試料を粉砕する装置であって、チューブ冷却手段(30、132)が装置のある部分(20、22)によって運搬され、ターンテーブルを取り囲んでターンテーブルによって運搬されるチューブ(12)が振動する領域を含む冷却領域を画定すること、を特徴とする装置。
【請求項2】
冷却手段(30、132)は冷却領域を画定し、それを装置の静止部分又は移動部分(20、22)上に位置させる又は固着させることを可能とする手段(34)を含む略碗又は鐘の形状の円筒壁(32、132)を含むこと、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記円筒壁(32、132)は、チューブによって放出された熱を吸収するために、チューブの温度より低い温度、例えば0℃より低いこと、を特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
円筒壁は冷却流体を移送又は循環させる手段(38、136)を含むこと、を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の装置。
【請求項5】
循環手段(38)は冷気をチューブに向けて噴出するためのノズル(39)が備えられた、を特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
円筒壁(32)は熱電冷却手段を含むことを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の装置。
【請求項7】
冷却手段(30)は冷却手段内部に存在する加熱された気体を吸い出す手段(36)を含む、請求項2乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
冷却手段(30)は装置の静止部分(20)上に固定される又は着脱可能な仕方で装着されること、を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
冷却手段は、装置の閉鎖可能なカバー(22)の内部に固定された鐘(132)と、鐘の内部に冷気を移送する手段とを含むこと、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
鐘は二重壁であり、その内部壁は冷気排出穴(138)を含むこと、を特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
空気排気経路(140)が鐘及びカバーの頂上中央部分に形成されること、を特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
装置は、複数のチューブを運搬し、装置のターンテーブル(10)上に備えられた収納部にチューブを同時に置くために、サポート(40)上に配置された複数のチューブ(12)を同時に持ち上げる自動多重クランプ型のアクセサリ(44)を含み、チューブは弾性スナップ締めによって自動的に持ち上げられ、前記アクセサリ(8)に備えられた制御部材(50)が一段階動作を実行することによって配置されること、を特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
アクセサリは、把持するためにチューブの頂上端を覆い、チューブの端部に係合しクランプするよう構成された複数の弾性スナップ締め手段を備える輪状のカバー(46)と、例えば、押し釦又は四分の一回転釦によって形成され、カバー(46)に配置され、チューブ(12)の端から外すために弾性スナップ締め手段(48)の全てに作用するにように構成された制御部材(50)を含むこと、を特徴とする請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【公表番号】特表2009−540853(P2009−540853A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517327(P2009−517327)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001094
【国際公開番号】WO2008/000962
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(505040202)ベルタン・テクノロジーズ (9)
【氏名又は名称原語表記】BERTIN TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】