説明

生物工学によって作られた組織コンストラクトならびにそれを生成および使用するための方法

生物工学によって作られたコンストラクトは、外因性マトリクス構成要素またはネットワークサポートまたは足場部材を必要とせずに、内因的に産生される細胞外マトリクス構成要素を合成および分泌するように誘導された培養された細胞から形成される。本発明の生物工学によって作られたコンストラクトは複数の細胞型により生成させることができ、これらは全て細胞外マトリクスの産生に寄与することができる。さらに、またはその代わりに複数の細胞型の1つは、内因的に産生された細胞外マトリクス構成要素を介して体内のある部位に送達させることができ、様々な治療効果が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年5月24日に出願された米国特許仮出願第61/347,725号、2010年2月12日に出願された米国特許仮出願第61/337,938号、および2010年1月14日に出願された米国特許仮出願第61/295,073号に対し優先権の恩典を主張し、これらの各々の内容は全て、明確に参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
骨、軟骨、腱、靱帯、筋肉、脂肪、および骨髄基質は、間葉組織(すなわち、間葉幹細胞から分化する組織)の例である。
【0003】
間葉組織は、手術中に損傷される可能性があり、または遺伝的障害または環境変動から発症する可能性がある。
【0004】
したがって、患部または損傷組織を修復するための新規療法が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
特定の治療的使用のために最適化された形態の、細胞外マトリクス(ECM)を含む生物工学によって作られたコンストラクトが、本明細書で特徴付けられる。一定のコンストラクトは、培養された間葉幹細胞(MSC)により産生される細胞外マトリクスから構成される。一定のコンストラクトはまた、マトリクスを生成する細胞を含む。一定のコンストラクトでは、細胞は失活されている。他のコンストラクトでは、細胞外マトリクスを産生する細胞が除去され、脱細胞コンストラクトが生成される。
【0006】
一定のコンストラクトは、少なくとも約30μmの厚さを有する。一定のコンストラクトは、10〜100μmの範囲の平均直径を有する細孔を含む。一定のコンストラクトは、少なくとも0.4ニュートンの平均Fmaxを有する。一定のコンストラクトは、少なくとも0.4メガパスカルの最大抗張力(UTS)を有する。一定のコンストラクトは初期長の少なくとも0.4倍の塑性変形許容範囲を有する。
【0007】
コンストラクト中のECMはさらに処理されてもよく(例えば、脱水、架橋、収縮、微粒子化、滅菌される、など)または、さらに治療製品を調製するための他の生物活性物質または支持材料(例えば、絹、接着剤、など)と組み合わされてもよい。
【0008】
さらに生物工学によって作られたコンストラクトを製造および改良するための方法、例えばコンストラクトの厚さ、細孔サイズ、および組成を制御する方法が特徴付けられる。
【0009】
本明細書で記載される、生物工学によって作られたコンストラクトは、被験体に投与することができ、例えば、慢性または急性創傷の治療のために軟部組織の活力、増殖および/または修復が増強される。
【0010】
他の特徴および利点が下記詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第5日と第12日の間(A)または第12日と第18日の間(B)のMSCによる細胞外マトリクス形成速度の経時的分析を示す。n=9(1群あたり3つの独立コンストラクト、1コンストラクトあたり3測定)。傾向線および傾き方程式が示される。
【図2】増加させたTGF−α濃度の機能として、生物工学によって作られたコンストラクトの増加する厚さの間の相関を示す。TGF−αなし:0ng/mL;1.5x:30ng/mL TGF−α;5x:100ng/mL TGF−α;および10x:200ng/mL TGF−α。n=9(1群あたり3つの独立コンストラクト、1コンストラクトあたり3測定)、1.5xおよび10x(n=6(1群あたり2つの独立コンストラクト、1コンストラクトあたり3測定))を除く。
【図3】20ng/mL TGF−αの一定量を有する、増加させたプロスタグランジン2(PGE2)濃度の機能として、生物工学によって作られたコンストラクトの減少する厚さの間の相関を示す。PGE2なし:0ng/mL;5x:19ng/mL PGE2;10x:38ng/mL PGE2;および50x:190ng/mL PGE2。n=9(1群あたり3つの独立コンストラクト、1コンストラクトあたり3測定)。
【図4】異なる細胞型(HDF:新生児ヒト皮膚線維芽細胞;HUCPVC:ヒト臍帯血管周囲細胞;BM−MSC:間葉幹細胞由来の骨髄;およびPre−Adipo:前脂肪細胞)のMSCに由来する生物工学によって作られたコンストラクトの各々における細胞播種密度、および、増加させたTGF−α濃度の機能として、生物工学によって作られたコンストラクトの増加する厚さの間の相関を示す。実施例1で記載される細胞培養用合成培地が使用され(例えば、200ng/mL TGF−α)、播種密度は、75mmインサートあたり、30x106細胞であり、これは、24mmインサートあたり9.6x106細胞に等しい。マトリクス厚さ測定値は、培養中18日後に固定した、ヘマトキシリンおよびエオシ染色された切片から収集した。バー(平均±S.D、n=12)は、4つの別の位置で画像化されたn=3独立コンストラクトの平均の厚さを表す。
【図5】培養下18日後の、異なる細胞型(HDF:新生児ヒト皮膚線維芽細胞;HUCPVC:ヒト臍帯血管周囲細胞;BM−MSC:間葉幹細胞由来の骨髄;およびPre−Adipo:前脂肪細胞)のMSCに由来する生物工学によって作られたコンストラクトの代表的なヘマトキシリンおよびエオシン染色(A)、マッソントリクローム/ゴールドナー(MTG)染色(B)、およびSEM切片(B)を示す。実施例1で記載され合成培地が使用され(例えば、200ng/mL TGF−α)、播種密度は、75mmインサートあたり、30x106細胞であり、これは、24mmインサートあたり9.6x106細胞に等しい。画像は、20x倍率で、獲得した。
【図6】培養下18日後の、異なる細胞型(HDF−02:新生児ヒト皮膚線維芽細胞;HUC−02:ヒト臍帯血管周囲細胞;MSC−02:間葉幹細胞由来の骨髄;およびPAD−02:前脂肪細胞)のMSCに由来する生物工学によって作られたコンストラクトの代表的なFmax(A)、最大抗張力(UTS)(B)、および弾性率特性(C)を示す。実施例1で記載される合成培地が使用され(例えば、200ng/mL TGF−α)、播種密度は、75mmインサートあたり、30x106細胞であり、これは、24mmインサートあたり9.6x106細胞に等しい。バー(平均±S.D、n=9)は、それぞれ3回試験された3つの独立したコンストラクトの平均Fmax、UTS、弾性率を示す。
【図7】HUCPVC由来およびHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクト間の細胞外マトリクスおよび接着成分(A;17の上方制御された遺伝子 HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対しHUCPVC由来では>2倍)および増殖因子(B;8つの上方制御された遺伝子 HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対しHUCPVC由来では>2倍)における差の概要を示す。
【図8−1】A:CBA分析による、様々なMSC由来およびHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトにより生成された条件培地内でのIL−6の経時比較の結果を示す。平均および標準偏差は、n=3条件培地試料の平均から計算される。
【図8−2】B:CBA分析による、様々なMSC由来およびHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトにより生成された条件培地内でのIL−8の経時比較の結果を示す。平均および標準偏差は、n=3条件培地試料の平均から計算される。
【図8−3】C:CBA分析による、様々なMSC由来およびHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトにより生成された条件培地内でのVEGFレベルの経時比較の結果を示す。平均および標準偏差は、n=3条件培地試料の平均から計算される。
【図8−4】D:ELISA分析から得られるHAレベルの定量が示される。
【図9】細胞移動アッセイの結果を示す。間接的2−D移動分析は様々な実施形態から収集された条件培地の機能として閉鎖指数を比較する。HDF−02およびHUCPVC VCT−02ユニットから第5日および第18日に収集された条件培地中で培養されたケラチノサイトに対しアッセイが実施される。図は、条件培地における24時間の誘導後に酸性フクシン染料で染色したケラチノサイトの代表的な明視野画像、ならびにHUCPVC VCT−02第5日条件培地試料における最大閉鎖を示す閉鎖指数のグラフ表示から構成される。
【図10−1】MSC由来(HUC−02)およびHDF由来(HDF−02)の生物工学によって作られたコンストラクトおよびそれから単離された細胞に対し実施された多系列電位分析の結果を示す。Aは、骨形成誘導培地を使用し、骨形成遺伝子のパネルを用い、誘導した、生物工学によって作られたコンストラクト内の細胞に由来する遺伝子発現データを示す。
【図10−2】MSC由来(HUC−02)およびHDF由来(HDF−02)の生物工学によって作られたコンストラクトおよびそれから単離された細胞に対し実施された多系列電位分析の結果を示す。Bは、骨形成誘導培地を使用し、骨形成遺伝子のパネルを用い、誘導した、生物工学によって作られたコンストラクトから単離された細胞に由来する遺伝子発現データを示す。
【図10−3】MSC由来(HUC−02)およびHDF由来(HDF−02)の生物工学によって作られたコンストラクトおよびそれから単離された細胞に対し実施された多系列電位分析の結果を示す。Cは脂肪生成誘導培地を使用して誘導した、生物工学によって作られたコンストラクト内の細胞に由来するオイルレッドO染色結果を示す。
【図11−1】ヌードマウスへの1週間の皮下移植後の、100%MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクト(A)、50%HUCPVC−50%HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクト(B)から得られるα−平滑筋アクチン(αSMA)染色の代表的な組織学的切片および定量化を示す。黒い領域は、αSMAに対するポジティブ染色を示す。1群あたり、総計2匹の動物(n=2)が分析に使用された。αSMAポジティブ血管の数は、顕微鏡上で40x対物レンズを使用して、手作業で計数された。ポジティブ血管の数を、その後、移植領域に対し正規化させた。
【図11−2】ヌードマウスへの1週間の皮下移植後の、10%HUCPVC−90%HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクト(C)、100%HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクト(D)から得られるα−平滑筋アクチン(αSMA)染色の代表的な組織学的切片および定量化を示す。黒い領域は、αSMAに対するポジティブ染色を示す。1群あたり、総計2匹の動物(n=2)が分析に使用された。αSMAポジティブ血管の数は、顕微鏡上で40x対物レンズを使用して、手作業で計数された。ポジティブ血管の数を、その後、移植領域に対し正規化させた。
【図11−3】αSMAポジティブ染色により決定された、移植領域内での血管定量化を示す。1群あたり、総計2匹の動物(n=2)が分析に使用された。αSMAポジティブ血管の数は、顕微鏡上で40x対物レンズを使用して、手作業で計数された。ポジティブ血管の数を、その後、移植領域に対し正規化させた。
【図12】培養直後にホルマリン固定された生物工学によって作られたコンストラクトの独立した組織画像を示す。
【図13】ホルマリン固定前に制御された収縮を受けることができた生物工学によって作られたコンストラクトの独立した組織画像を示す。
【図14−1】生物工学によって作られたコンストラクトの細胞外マトリクス内の細孔サイズを制御する結果を示す。Aは、異なる平均細孔直径特性による生物工学によって作られたコンストラクトの異なる使用を示す。Bは、制御収縮され、−40℃の最終凍結温度で、1分につき0.1℃の速度で凍結乾燥された、架橋されていないか、または、EDCと架橋され、あるいはDHT方法を用いて架橋された、生物工学によって作られたコンストラクトからの平均細孔直径の定量分析および標準偏差を示す。
【図14−2】生物工学によって作られたコンストラクトの細胞外マトリクス内の細孔サイズを制御する結果を示す。Dは、0.5℃/分の速度で−10℃の最終凍結温度まで傾斜させた生物工学によって作られたコンストラクトの代表的な組織切片を示す。Eは、制御収縮され、その後、空気乾燥され(上パネル)、または−40℃の最終凍結温度で凍結乾燥された(下パネル)、生物工学によって作られたコンストラクトの代表的な組織切片を示す。Fは、自然に細孔を有するMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトを示し、Gは、そのような平均細孔直径は、凍結乾燥に増加させることができることを示す。
【図15−1】合成培地にbFGFを補充することから得られた、生物工学によって作られたコンストラクトの生物物理特性への効果を示す。Aは、bFGF補充は、生物工学によって作られたコンストラクトの厚さを減少させることを示す。Bは、bFGF補充が増加すると、サブタイプのコラーゲン蓄積が減少した、bFGF用量反応分析の結果を示す。
【図15−2】合成培地にbFGFを補充することから得られた、生物工学によって作られたコンストラクトの生物物理特性への効果を示す。Cは、総コラーゲンに対する酸およびペプシン可溶性コラーゲン(黒)の両方および他のコラーゲン(グレー)の相対レベルを示す。蓄積された硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG;D)およびヒアルロン酸(HA;E)はbFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトでは、対照に対し、より低いレベルとなった。
【図16】多孔性絹足場を通って移動し、絹足場全体に均一に配置されたヒト皮膚線維芽細胞を示す。
【図17】インビトロでの失活させたヒト皮膚線維芽細胞およびその対応する細胞外マトリクスを有する多孔性絹足場上の染色されたヒト臍帯静脈内皮細胞を示す。絹足場実施形態上での染色されたHUVECの整列を調べることにより、インビトロ血管新生アッセイが開発された。HUVECは絹足場上で11日間培養され、蛍光画像が獲得された。HUVEC整列は、絹足場(図17A)またはマトリクス培地中で予め馴化させた絹足場(図17B)上で視認できないが、生ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を有する絹足場(図17C)および失活させたHDFを有する絹足場(図17D)においては顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
規定された厚さ、細孔サイズ、および組成を有する細胞外マトリクス(ECM)を含む、生物工学によって作られたコンストラクトが本明細書で特徴付けられる。ECMは、特定の細胞から分泌されることが知られており、主に、線維性タンパク質、多糖、および他の微量成分から構成される。その構成要素としては、構造要素、例えばコラーゲンおよびエラスチン、接着タンパク質、例えば糖タンパク質、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、トロンボスポンジンIおよびテネイシン、ならびにプロテオグリカン、例えばデコリン、バイグリカン、コンドロイチン硫酸およびヘパリン硫酸およびグリコサミノグリカン(GAG)、例えばヒアルロン酸(HA)が挙げられる。
【0013】
異なるECMは、異なる細胞により産生させることができる。線維芽細胞細胞と比べて、例えば、MSCは、多孔性ECMを産生することが見いだされている。加えて血管新生に関連する特定のタンパク質(例えば、VEGFα、VEGFC、PDGFβ、PECAM1、CDH5、ANGPT1、MMP2、TIMP1、TIMP3)、ならびに特定の増殖因子および接着タンパク質、例えばヒアルロナン、ヘパリン、IL−6、IL−8、ビトロネクチン(VTN)、コロニー刺激因子3(CSF−3)、NCAM1、およびC
XCL1は、線維芽細胞よりもMSCにより産生されるECM中でより多量に産生されるように思われる(例えば、図7を参照されたい)。
【0014】
線維芽細胞により産生される顕著な主細胞外マトリクス構成要素は、線維性コラーゲン、特にI型コラーゲンである。しかしながら、細胞はまた、他の線維性および非線維性コラーゲン、例えばII、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIX型コラーゲン、などを産生する。
【0015】
これらのECM構成要素の階層ネットワークは、細胞が生存し、適正に機能することができる自然環境を提供する。本明細書で記載される細胞培養条件および後培養法は、規定された生物物理特性を有する、生物工学によって作られたコンストラクトを生成するように細胞外マトリクスを合成し、分泌することができる細胞型に適用することことができる。
【0016】
I.生物工学によって作られたコンストラクトの厚さの制御
ECMの厚さはインビボでの特定の使用ために最適化させることができる。例えば、生物工学によって作られたコンストラクトの厚さが厚いほど、身体的撹拌を経験する体内の部位(例えば、膝)に対し、またはコンストラクトが長期間インビボで持続することが望まれる任意の適用に対し、有用となり得る。
【0017】
ECMのバルク厚さは、物理的損傷、例えば断裂または亀裂に抵抗性がある粘着性組織様特性を付与する。適切なECMは、ある厚さを有するべきであり、それは、少なくとも約30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、220μm、240μm、260μm、280μm、300μm、320μm、340μm、360μm、380μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm以上の厚さであり、そのような厚さが有用である試験または臨床適用において使用するのに好適である。
【0018】
a.間葉幹細胞(MSC)由来の生物工学によって作られたコンストラクト
間葉幹細胞(MSC;また、間葉前駆細胞としても知られている)は、培養下で拡大し、間葉組織細胞、例えば骨、軟骨、腱、靱帯、筋肉、脂肪、および骨髄基質に分化することができる細胞である。MSCは、正常な培養条件下で細胞外マトリクス構成要素を非効率的に合成、分泌、および/または組織化する(すなわち、内在性細胞外マトリクス産生)。しかしながら、さらに本明細書で記載される培養条件下では、効率的に分泌される細胞外マトリクス内にそれ自体を含むことができ、外因性マトリクス構成要素を有さない(すなわち、マトリクス構成要素は、培養された細胞により産生されないが、他の手段により導入される)。
【0019】
MSCは、多くの起源から入手することができ、例えば、骨髄、臍帯、胎盤、羊膜および他の結合組織(例えば、筋肉、脂肪、骨、腱および軟骨)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、臍帯MSCは臍帯血、臍帯静脈内皮下層、およびワルトン膠様質から単離することができる。MCSはさらに、3つの領域から単離することができる:血管周囲ゾーン(臍帯血管周囲細胞またはUCPVC)、脈管間ゾーン、胎盤、羊膜、およびサブ羊膜(Troyer and Weiss、2007)。また、骨髄由来MSCは、骨髄から収集することができ、非造血性、多分化能細胞を含み、造血幹細胞拡大を支持し、様々な結合組織に分化することができる。
【0020】
ヒト細胞、他の哺乳類種、例えば、限定はされないが、ウマ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、または齧歯類(例えば、マウスまたはラット)に由来するものを使用することができる。細胞は、初代細胞として関連組織から、より好ましくは、ウイルスおよび細菌汚染に対しスクリーニングされ、純度に対し試験された、確立された細胞ストックまたはバンクから連続継代培養または継代培養されたものから誘導してもよい。加えて、自然発症的に、化学的にまたはウイルス的にトランスフェクトされた細胞または組換え細胞もしくは遺伝子操作細胞もまた、本発明において使用することができる。また、細胞は組換えまたは遺伝子操作することができる。例えば、細胞は、連続する時間の間、または必要に応じ、被験体内に存在する状態のために生物学的に、化学的に、または熱的にシグナル伝達された時に、組換え細胞産物、例えば増殖因子、ホルモン、ペプチドまたはタンパク質を産生し、被験体に送達するように操作することができる。長期または短期遺伝子産物発現が操作され得る。培養された組織コンストラクトが被験体に移植されまたは適用され、治療製品が、被験体へ長期間送達される場合、長期発現が望ましい。逆に、創傷が治癒した時点で、培養された組織コンストラクトからの遺伝子産物がもはや必要なく、またはその部位ではもはや要求されない場合、短期発現が望ましい。細胞はまた、遺伝子操作され、タンパク質または異なる型の細胞外マトリクス構成要素を発現することができ、これらは「正常」であるが、高レベルで発現され、または何らかの方法で修飾され、細胞外マトリクスおよび生細胞を含む生物工学によって作られた複合体が製造され、これは創傷治癒の改善、新血管新生の促進または誘導、あるいは瘢痕またはケロイド形成の最小化にとって治療的に有利である。
【0021】
効率的に細胞外マトリクスを所望の厚さまで分泌させるために、MSCは、何日または何週間か(例えば、18、19、20、21、22、23、24、25以上の日数)の間、規定されていない培地または合成培地中で培養させることができる。ヒト由来細胞を含むが、化学的に規定されていない、または非ヒト生物学的構成要素または細胞を含まない化学的に規定された系が使用され得る。培養物は、インキュベータ中で維持され、よく知られた環境変数による細胞の培養に対し、制御された温度、湿度、およびガス混合物の十分な環境条件が確保される。例えば、インキュベータは約34℃〜約38℃(例えば、37±1°C)の間、雰囲気は、約5−10±1%CO2の間、相対湿度(Rh)は約80
−90%の間とすることができる。また、細胞は、低酸素条件下で培養させることができる。細胞は、給餌、播種、または他の細胞操作中に周囲室温、空気および湿度に一時的に暴露され得る。
【0022】
細胞型に関係なく、培地は、通常他の成分がさらに補充された栄養ベースから構成される。栄養ベースは、一般的に、グルコース、無機塩、エネルギー源、アミノ酸、およびビタミンのような栄養分を供給するものであり、動物細胞培養の分野においてよく知られている。例としては、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM);基礎培地(MEM);M199;RPMI1640;イスコフ改変ダルベッコ培地(EDMEM)が挙げられるが、これらに限定されない。基礎培地(MEM)およびM199は、リン脂質前駆体および非必須アミノ酸の追加の補充を要求する。追加のアミノ酸、核酸、酵素補因子、リン脂質前駆体、および無機塩を供給する市販のビタミンに富む混合物はHam’sF−12、Ham’sF−10、NCTC109、およびNCTC135を含む。そのような培地の混合物、例えば、それぞれ3対1比〜1対3比の間のDMEMおよびHam’sF−12の混合物も使用することができる。
【0023】
MSCおよび追加の細胞型、例えば線維芽細胞または上皮細胞のための培地処方および培地補充物の追加の投与は、当技術分野においてよく知られた細胞培養方法に従い選択することができる(例えば、Parenteauへの米国特許第5,712,163号、PCT公開番号第WO95/31473号、PCT公開番号第WO00/29553号、PCT公開番号第WO2009/070720号、Ham and McKeehan, Methods in Enzymol
ogy, 58:44-93 (1979)、Bottenstein et al. , Meth. Enzym, 58:94-109 (1979)を参照されたい、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。例えば、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、細胞によるマトリクス合成および堆積を促進する作用物質が補充された培地中で培養させることができる。未決定の動物器官または組織抽出物、例えば血清、下垂体抽出物、視床下部抽出物、胎盤抽出物、または胚抽出物またはフィーダー細胞に分泌されたタンパク質および因子を含まない合成培地を使用することができる。そのような培地は、外来動物または異種間ウイルス汚染および感染の危険を減少させるために、未決定の構成要素および非ヒト動物起源に由来する生物学的構成要素を含まないものとすることができる。合成または組換え機能等価物は、そのような動物器官または組織抽出物の使用に取って代わることができる。
【0024】
トランスフォーミング増殖因子α(TGF−α)は、マクロファージ、脳細胞、およびケラチノサイトにおいて産生され、上皮発生を誘導するが、本明細書では、MSCを刺激して、相当な程度まで細胞外マトリクス構成要素を合成、分泌、組織化することが見いだされている。TGF−αはEGFと30%構造的相同性を共有し、同じ表面結合受容体部位に競合する小(約50残基)タンパク質である。これは、創傷治癒に関係し、特定の細胞において表現型変化を促進する。TGF−αまたは長鎖TGF−αは培地に約0.0005μg/mL〜約0.30μg/mL、約0.0050μg/mL〜約0.03μg/mL、または約0.01μg/mL〜約0.02μg/mLの範囲で補充させることができる。いくつかの実施形態では、補充されたTGFαの量は、10ng/mL、20ng/mL、30ng/mL、40ng/mL、50ng/mL、60ng/mL、70ng/mL、80ng/mL、90ng/mL、100ng/mL、120ng/mL、130ng/mL、140ng/mL、150ng/mL、160ng/mL、170ng/mL、180ng/mL、190ng/mL、200ng/mL以上である。
【0025】
対照的に、プロスタグランジンE2(PGE2)は、プロスタグランジンEシンターゼのプロスタグランジンH2(PGH2)に対する作用により生成され、本明細書では、比較的高用量で存在する場合、MSCが、細胞外マトリクスを合成し、分泌し、組織化するのを阻止することが見いだされている。よって、PGE2(例えば、16,16PGE2形態)補充は、細胞外マトリクスの厚さを調節するために使用することができ、約0.000038μg/mL〜約0.760μg/mL、約0.00038μg/mL〜約0.076μg/mL、または約0.038μg/mLの範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、補充されたPGE2の量は、10ng/mL、20ng/mL、30ng/m
L、40ng/mL、50ng/mL、60ng/mL、70ng/mL、80ng/mL、90ng/mL、100ng/mL、120ng/mL、130ng/mL、140ng/mL、150ng/mL、160ng/mL、170ng/mL、180ng/mL、190ng/mL、20030ng/mL以上である。
【0026】
同様に、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、本明細書では、細胞、例えば線維芽細胞が細胞外マトリクス構成要素を合成し、分泌し、組織化するのを阻止することが見いだされている。特に、ペプシン可溶性コラーゲン、硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)およびヒアルロン酸(A)は、bFGFレベルが増加するにつれ減少し、各構成要素は、対照に対し5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%以上だけ減少させることができる。細胞外マトリクス構成要素組成のそのような差によりさらに、空気乾燥時の粉末形態が得られ、凍結乾燥された場合、容易に粉砕される粉末が得られる。そのような粉末化形態は、粘度が減少され、そのため、それらは23、24、25、26、27、28、29、30以下のゲージを有するシリンジ針を通過することができる。よって、約10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、7
5ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mL、100ng/mL以上のbFGF補充は、細胞外マトリクスの厚さおよび組成を調節するために使用されることができる。
【0027】
アスコルベートまたは誘導体(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、またはそのより化学的に安定な誘導体の1つ、例えばL−アスコルビン酸ホスフェートマグネシウム塩n−水和物)は、プロリンヒドロキシル化を促進する補充物、および堆積コラーゲン分子への可溶性前駆体であるプロコラーゲンの分泌を促進する補充物として使用することができる。アスコルベートはまた、I型およびIII型コラーゲン合成を上方制御する。
【0028】
インスリンは、グルコースおよびアミノ酸の取り込みを促進し、複数の継代にわたる長期利益を提供する補充物として使用することができる。インスリンまたはインスリン様増殖因子(IGF)の補充は長期培養のために必要であり、というのも、グルコースおよびアミノ酸を取り込む細胞の能力が最終的に枯渇し、細胞表現型が低下する可能性があるからである。インスリンは、いずれかの動物、例えばウシ、ヒト起源から、または組換え手段によりヒト組換えインスリンとして誘導することができる。そのため、ヒトインスリンは、非ヒト生物学的起源に由来しない化学的に規定された構成要素として適任である。インスリン補充は、連続培養に妥当であり、培地に広範囲の濃度で提供される。好ましい濃度範囲は、約0.1μg/ml〜約500μg/ml、約5μg/ml〜約400μg/ml、および約375μg/mlである。例えばIGF−1 IGF−2などのインスリン様増殖因子の補充のための適切な濃度は、当業者により培養のために選択された細胞型に対し容易に決定することができる。
【0029】
トランスフェリンは、鉄輸送を調節するための補充物として使用することができる。鉄は、血清中で見いだされる必須微量元素であるが、トランスフェリンにより捕捉されない場合、大量にあると毒性となり得る。トランスフェリンは、約0.05〜約50μg/mlの濃度範囲または約5μg/mlで補充させることができる。
【0030】
トリヨードチロニン(T3)は、細胞代謝を調節するための補充物として使用することができ、約0〜約400ρM、約2〜約200ρMの濃度範囲、または約20ρMで補充させることができる。
【0031】
リン脂質である、エタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンのいずれかまたは両方は、特に無血清培地中で培養する場合、脂肪酸産生を促進するための補充物として使用することができる。エタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンは、約10-6〜約10-2Mの濃度範囲または約1x10-4Mで補充させることができる。
【0032】
亜セレン酸は、無血清培地中に微量元素を提供するための補充物として使用することができる。亜セレン酸は、約10-9M〜約10-7Mの濃度範囲または約5.3x10-8Mで提供することができる。
【0033】
アミノ酸の補充は、タンパク質のこれらの構成単位を合成する細胞の要求を回避することにより、細胞エネルギーを保存することができる。例えば、プロリンおよびグリシン、ならびにプロリンのヒドロキシル化形態、ヒドロキシプロリンの添加は、コラーゲンの構造を構成する塩基性アミノ酸である。加えて、アミノ酸L−グルタミンは、いくつかの栄養ベース中に存在し、そして、存在しないか不十分な量で存在する場合添加することができる。L−グルタミンはまた、商標GlutaMAX−1(商標)(Gibco BRL、Grand Island、NY)下で販売されている安定な形態で提供することがで
きる。GlutaMAX−1(商標)はL−アラニル−L−グルタミンの安定なジペプチド形態であり、L−グルタミンと同じ意味で使用することができ、L−グルタミンの代わりとして等モル濃度で提供される。ジペプチドは、L−グルタミンに、培地でのL−グルタミンの有効濃度における不確かさにつながる可能性がある、貯蔵中およびインキュベーション中の経時的な分解に対する安定性を提供する。典型的には、基本培地は約1mM〜約6mM、より好ましくは約2mM〜約5mM、もっとも好ましくは4mMのL−グルタミンまたはGlutaMAX−1(商標)が補充される。
【0034】
特定の培養結果のために、追加の補充物、例えば1つ以上のプロスタグランジン、トランスフォーミング増殖因子(例えばトランスフォーミング増殖因子αまたはβ)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、またはマンノース−6−リン酸(M6P)、またはそれらの組み合わせもまた、添加することができる。例えば、TGF−β1およびTPAはそれぞれ、コラーゲン合成を上方制御することが知られている(Raghow et al., J. Clin. Invest.,79:1285-1288 (1987) and Pardes et al., J. Invest. Derm., 100:549 (1993))。
【0035】
加えて、上皮増殖因子(EGF)は、細胞スケールアップおよび播種を介する培養物を確立するのを助けるための補充物として使用することができる。天然型または組換え型のEGFを使用することができる。非ヒト生物学的構成要素を含まない皮膚等価物を作製する場合、天然または組換えのEGFのヒト型が、培地で使用するのに好ましい。EGFは任意的な構成要素であり、約1〜15ng/mLまたは約5〜10ng/mLの濃度で提供することができる。
【0036】
ヒドロコルチゾンは、ケラチノサイト表現型を促進し、よって、分化した特性、例えばインボルクリンおよびケラチノサイトトランスグルタミナーゼ量を増強させるための補充物として使用することができる(Rubin et al., J. Cell Physiol., 138:208-214 (1986))。そのため、ヒドロコルチゾンは、これらの特性が有利である場合、例えば、ケラチノサイトシートグラフトまたは皮膚コンストラクトの形成において望ましい添加物である。ヒドロコルチゾンは、約0.01μg/ml〜約4.0μg/mlまたは約0.4μg/ml〜16μg/mlの濃度範囲で提供することができる。
【0037】
ケラチノサイト増殖因子(KGF)は、表皮化を支持するための補充物として、約0.001μg/mL〜約0.150μg/mL、約0.0025μg/mL〜約0.100μg/mL、約0.005μg/mL〜約0.015μg/mL、または5μg/mLの範囲で使用することができる。
【0038】
マンノース−6−リン酸(M6P)は、表皮化を支持するための補充物として、約0.0005mg/mL〜約0.0500mg/mLで使用することができる。
【0039】
中性ポリマは、試料間のコラーゲン処理および堆積の一貫性を増強させるための補充物として使用することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)は、培養された細胞により産生された可溶性前駆体プロコラーゲンのマトリクス−堆積コラーゲン形態へのインビトロ処理を促進することが知られている。約1000〜約4000MW(分子量)、約3400〜約3700MWの範囲内の、約5%w/v以下、約0.01%w/v〜約0.5%w/v、約0.025%w/v〜約0.2%w/v、または約0.05%w/vの組織培養グレードPEG。好ましくは30,000−40,000MWの範囲の他の培養グレード中性ポリマ、例えばデキストラン、好ましくはデキストランT−40、またはポリビニルピロリドン(PVP)もまた、約5%w/v以下、約0.01%w/v〜約0.5%w/v、約0.025%w/v〜約0.2%w/v、または約0.05%w/vの濃度で使用することができる。コラーゲン処理および堆積を増強する他の細胞培養グ
レードおよび細胞適合性作用物質は、当業者によく知られている。
【0040】
b.培養基材および/または灌流
規定された直径を有する多孔性膜(すなわち、カルチャーインサート)上への細胞の播種は、細胞外マトリクスが産生される速度を増強させることにより、生物工学によって作られたコンストラクトの厚さを増強させることができ、というのも、これは、培地の栄養分への表面積暴露を最大にするからである。細孔は、膜の上面および底面の両方を介して連絡し、発達中の組織コンストラクトへの培地の両側接触または培地下方のみからの接触を可能にする。培地はまた、形成中の培養された組織コンストラクトの底面のみと接触することができ、そのため、培養された皮膚コンストラクトの開発の場合のように、上面は空気に暴露させることができる。典型的には、膜は、ベース、例えば蓋で覆うことができるペトリまたは培養皿内に挿入され、これと結合するチューブ部材またはフレームワークの一端に固定される。これらの型の培養容器が使用される場合、組織コンストラクトは、膜の1つの表面(例えば、最上の上方接面)上で産生され、培養物は上面および底面の両方で細胞培地と接触する。細孔サイズは、膜を通って細胞を増殖させないようにするのに十分小さいが、培養培地に含まれる栄養分の、例えば、毛管作用による生物工学によって作られたコンストラクトの底面への自由な通行を可能にするのに十分大きいものである。例えば、細孔サイズは、約7μm未満、約0.1μm〜約7μm、約0.2μm〜約6μm、または約0.4μm〜約5μmの直径とすることができる。最大細孔サイズは、細胞サイズだけでなく、細胞のその形状を変化させ、膜を通過する能力に依存する。組織様コンストラクトは、表面に付着するが、基材を組み込み、または包むことはせず、そのため、これは、最小の力による剥皮などによりそれから除去可能であることが重要である。形成された組織コンストラクトのサイズおよび形状は、容器表面またはその上で増殖される膜のサイズにより示される。基材は円形、四角、長方形、または角度のあるものとすることができ、または角丸角度を有する形状、もしくは不規則形状とすることができる。基材はまた平らであり、あるいは、創傷と接するように、または天然組織の物理的構造を模倣するように成形されたコンストラクトを生成するための型として、曲線をつけて作られ得る。増殖基材のより大きな表面積を占めるために、比例的により多くの細胞が、表面に播種され、細胞を十分浸し、栄養供与するためにより大きな体積の培地が必要とされる。生物工学に基づく組織コンストラクトが最終的に形成されると、膜基材からの剥皮により除去される。基材は、表面エネルギーを上昇させることにより基材の接着特性を改善するために、細胞播種前に前処理することができる。前処理としては、COOHおよび長いNH2処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
培養基材を灌流して、生物工学によって作られた層に対し機械力を働かせ、インビボにおける機械力を模倣すると、さらに、生物工学によって作られたコンストラクトの厚さおよび強度が増強し得る。灌流手段は、当技術分野においてよく知られており、マグネチックスターラーバーまたは培養膜を含む基材担体の下にある、またはこれに隣接する電動羽根車を用いた培地の撹拌;培養皿またはチャンバ内またはこれを介する培地のポンピング;振盪または回転プラットフォーム上での培養皿の静かなかき混ぜ;または回転培養ビンが使用される場合の回転が挙げられるが、これらに限定されない。他の機械力は、培養中に多孔性膜をパルシングさせ、屈曲させ、うねらせ、または伸縮させることにより働かせることができる。
【0042】
培養中、細胞は、内在性マトリクス分子を分泌し、分泌されたマトリクス分子を組織化し、三次元組織様構造を形成させるが、生物工学によって作られたコンストラクトを収縮させ、培養基材から剥皮させる有意の収縮力を示さない。細胞が増殖することができる好適な細胞増殖表面は、細胞が付着することができ、生物工学によって作られたコンストラクトを形成するためのアンカー手段を提供する、任意の生物学的に適合可能な材料とすることができる。材料、例えばガラス;ステンレス鋼;ポリマ、例えばポリカーボネート、
ポリ(エーテルスルホン)(PES)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサン、フルオロポリマ、およびフッ素化エチレンプロピレン;ケイ素基材、例えば石英ガラス、ポリシリコン、またはケイ素結晶は細胞増殖表面として使用することができる。細胞増殖表面材料は、化学的に処理し、修飾させることができ、静電的に帯電させることができ、または生物製剤、例えばポリ−l−リシンまたはペプチドでコートさせることができる。静電的に帯電された表面が得られる化学処理の一例は、COOHおよび長いNH2である。ペプチドコーティングの一例は、RGDペプチドである。
細胞増殖表面は、マトリクス産生細胞の付着を支援する合成またはヒト形態の細胞外マトリクスにより処理することができ、そのため、細胞は、付着、配向、および生物学的合図のための細胞増殖表面を持った自然の接触面を有する。合成またはヒト形態の細胞外マトリクスが、この態様で使用される場合、一時的であり、というのも、培養の時間に伴い、細胞により置換されるからである。合成またはヒト形態の細胞外マトリクスは、細胞増殖表面上に堆積されると、表面全体に分散されたマトリクス分子〜分子厚さ、またはnm〜μmの厚さの連続薄膜の範囲となる。
【0043】
天然および合成形態のフィブロネクチンは、培養基材へのコーティングを提供するために使用することができる。使用することができるフィブロネクチン形態としては、下記が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトフィブロネクチン、ヒト血漿由来フィブロネクチン、組換えフィブロネクチン、または合成形態、例えば、天然ヒトフィブロネクチンの一部に由来する、およびそれから合成された反復ペプチド配列であるProNectin。天然の、細胞培養により生成生された、または組換えコラーゲンのコーティングは、基材に提供することができる。
【0044】
培養された、生物工学によって作られたコンストラクトは、形成および完全性のために、合成または生体吸収性部材、例えばメッシュ部材に依存しない; しかしながら、そのような部材を使用することはできる。メッシュ部材は、織物、編物、またはフェルト様材料とすることができる。メッシュ部材が使用される系では、細胞は、メッシュ部材上で培養され、どちらかの側、メッシュの隙間内で増殖し、メッシュを培養された組織コンストラクト内に包み、組み入れる。そのようなメッシュを組み入れる方法により形成されたコンストラクトは、物理的サポートのために、および嵩のためにそれに依存する。
【0045】
絹足場は、構造サポートを提供することができ、不法な宿主免疫応答が最小であり、または有さない。多孔性絹フィブロイン足場の多孔度は、約10μm〜約150μm、30μm〜約45μm、50μm〜100μm、または80μm〜150μmの直径の範囲とすることができる。
【0046】
絹足場の平均細孔直径は、溶媒パーセンテージを変化させることにより制御することができる。絹繊維は、有機溶媒、例えばエタノールまたはDMSOと混合することができる。有機溶媒の量を増加させることにより、絹足場の細孔サイズは、所望の多孔度レベルに基づき、選択的に減少させることができる。例えば、4%絹を1%エタノールに溶解すると、50−100μmの平均細孔直径を有する絹足場が得られる。増強された線維芽細胞浸潤のためには、およびコンストラクトのインビボでのより速い血管新生を可能にするためには50〜100μmの細孔サイズが望ましい。3%絹を0.5%エタノールに溶解することにより、より大きな絹足場平均細孔直径(例えば、約80−150μm)が達成され得る。約80−150μmの平均細孔直径を有する絹足場が、より重度の火傷創傷ではのぞましく、というのは、より大きな細孔により、創傷滲出液が創傷床から除去され得るからである。
【0047】
絹フィブロインは天然または組換え起源のいずれか由来とすることができる。絹フィブロインの好ましい天然起源は、Bombyx Moriカイコ繭の練り絹繊維由来である
。絹フィブロインの溶液は、水混和性有機溶媒、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノールからなる群より選択されるアルコール;またはジメチルスルホキシド(DMSO)またはアセトンと混合される。絹フィブロイン溶液はその後、鋳造され、またはモールドに注ぎ入れられ、あるいは直接、膜および多孔性絹フィブロイン足場の平面上方及び下方の両方の培養培地の両側接触を提供する多孔性/透過性培養膜を組み込むカルチャーインサートとされる。溶液は、その後、ある期間凍結され、その後、解凍され、すすがれ、溶媒残留物が除去される。多孔性絹フィブロイン足場はその後、オートクレーブ処理され、γ線照射され、またはe−ビーム滅菌され、滅菌多孔性絹フィブロイン足場が生成される。滅菌後、多孔絹フィブロイン足場は、本明細書で採用される方法を使用して培養された細胞のための培養基材として使用することができる。多孔性絹フィブロイン足場上で細胞を培養した後、細胞はまた、本明細書で採用される方法を使用して失活させることができる。他の特徴を多孔性絹フィブロイン足場コンストラクト、例えばシリコーン層に追加することができる。
【0048】
絹足場は、創傷治癒を増強させるのに有用な物質で調節することができる。例えば、湿性または乾性絹足場は、1つ以上のタンパク質を含む溶液と、5−10分間インキュベートすることができ、よって、吸着される最終タンパク質量は、1μg〜1mgの範囲となる。絹足場ならびに部分的に凍結乾燥(例えば、3時間0℃での凍結乾燥)され、タンパク質溶液とのインキュベーション前に−20℃で凍結された絹足場を含む、生物工学によって作られたコンストラクトは、吸着されたタンパク質の量を最大化させると考えられる。細胞培養での使用前に絹足場をオートクレーブ処理しても、インビボ分解が増強され、持続性が減少すると考えられる。
【0049】
c.細胞播種
超集密度(すなわち、100%集密度を超える)での播種は、細胞増殖相を迂回することにより細胞外マトリクス形成速度を増加させる。よって、細胞は100%コンフルエンスから約900%コンフルエンスまで、例えば約300%〜約600%コンフルエンスの範囲の超コンフルエンスで直接播種することができ、すぐに細胞外マトリクスが産生される。超集密度はまた、細胞播種密度/培養表面積により達成することができ、例えば、1x105、2x105、3x105、4x105、5x105、6x105、7x105、8x
105、9x105、1x106以上の細胞/cm2とすることができる。例えば、44cm2の概算培養表面積を有する75mm直径インサートを使用することができる。超コンフ
ルエントな数の細胞(例えば、3x106細胞)をそのようなインサート上で播種すると
、約6.8x105細胞/cm2の初期播種密度が得られる。およそ7.5x106細胞を
、10cmx10cm長方形インサート上に播種し、約7.5x105細胞/cm2の初期播種密度を生成させることができる。
【0050】
また、細胞はサブコンフルエンスで播種し、増殖させ、その後、細胞外マトリクスを産生し、組織化するように刺激することができる。サブコンフルエントな細胞密度は、約1x105細胞/cm2〜約6.8x105細胞/cm2、約3x105細胞/cm2〜約6.8x105細胞/cm2、または約6.8x105細胞/cm2(表面の1平方センチメートル面積あたりの細胞)を播種することにより達成することができる。
【0051】
d.制御された収縮
生物工学によって作られたコンストラクトの厚さは、これを培養基材から放出させると増強させることができ、よって拘束なしで収縮させることができる。そのような「制御された収縮」または「無拘束収縮」は、実時間でモニタすることができ、所望の量の収縮および厚さが起きた時に停止させることができる。生物工学によって作られたコンストラクト中の生細胞は、内在性細胞外マトリクスへ生物工学によって作られたコンストラクトの培養基材への接着により軽減される収縮力を及ぼす。無拘束収縮工程では、細胞により付
与されるこれらの収縮力が、活用され、培養後に無拘束収縮を受けていない、同様に調製されたコンストラクトに比べ、コンストラクトの物理的強度および厚さが増加する。制御された収縮は、生物工学によって作られたコンストラクトを培養基材から放出させることにより、例えば物理的手段、例えば基材からの剥皮またはリフティング、基材からの振盪、または基材の屈曲により誘導することができる。生物工学によって作られたコンストラクトの放出はまた、とりわけ、熱応答性基材が使用される場合、培養温度を変化させることにより、または化学的手段を使用することにより達成することができる。
【0052】
制御された収縮は、時間により、コンストラクトの増加した厚さにより、直径の減少または幅および長さの減少により測定される、表面積の減少により測定することができる。細胞によるマトリクスの収縮は、内在性マトリクスの繊維を組織化すると考えられ、そのため、マトリクスの全体強度(例えば、縫合保持強度)を増加させるが、マトリクスがゆがみ、歪曲し、しわができ、またはその構成においておよその平面性を失うほどではない。言い換えれば、マトリクスの平面性は保たれるが、全体の表面積が減少し、厚さが増加する。無拘束収縮が、生物工学によって作られた厚さの全体の増加により測定される場合、厚さ増加のパーセンテージまたは実際に増加した厚さ測定値が使用される。無拘束収縮が表面積の減少により測定される場合、表面積の減少のパーセンテージまたは1つ以上の次元の減少の実際の測定値が使用される。収縮は、組織マトリクスの表面積の減少のパーセンテージ、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%以上または間の任意の範囲を測定することにより測定することができる。適切な場合、さらに本明細書で記載されるように、細胞を失活させることにより、収縮は中止させることができる。
【0053】
e.ハイブリッドの生物工学によって作られたコンストラクト
MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトはさらに、細胞外マトリクスを合成し、分泌し、組織化し、細胞外マトリクスの厚さを増強させることができる追加の細胞型を含むことができる。そのような細胞型は、線維芽細胞、ストローマ細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞および間葉起源の他の結合組織細胞とすることができる。線維芽細胞は、多くの起源、例えば限定されないが、新生児雄包皮、真皮、腱、肺、臍帯、軟骨、尿道、角膜実質、口腔粘膜、および腸に由来することができる。2つ以上の起源に由来する正常な細胞のキメラ混合物、例えば自己および同種細胞のキメラ混合物;正常および遺伝子組換えまたはトランスフェクトされた細胞の混合物;異なる組織または器官型に由来する細胞の混合物;または2つ以上の種または組織起源の細胞の混合物は使用することができる。
【0054】
少なくとも1つの追加の細胞型は、層状および混合形態で添加することができる。層状の生物工学によって作られたコンストラクトでは、第1の細胞型が細胞培養基材上に播種され、第2の細胞型がその後、第1の細胞層上に播種される。混合コンストラクトは、治療効果に対する所望のコンストラクト特質に少なくとも一部は基づく少なくとも2つの細胞型の初期播種率を変動させることにより生成させることができる。例えば、MSCは第1の細胞型とすることができ、初期細胞播種混合物の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%以上を占めることができる。線維芽細胞、例えば新生児線維芽細胞、皮膚線維芽細胞、乳頭線維芽細胞、網状線維芽細胞、またはそれらの組み合わせは第2の細胞型とすることができ、残りの初期細胞播種混合物を占める。初期播種時の総細胞集団は1.0x105〜1.0x106/cm2とすることができ
る。
【0055】
混合により生成される生物工学によって作られたコンストラクトでは、初期播種密度はまた、播種時の細胞数に基づき決定することができ、要求される総細胞量は、下記に従い、播種時にわかる:aX+bY=Z;式中、X=Y=Zかつa+b=1、しかしb>0お
よびa<1である。例えば、要求される細胞播種密度はZであり、Z=2.1x105
胞/cm2(およそ)であり、aXおよびbYはそれぞれ、Zにより表される播種される
領域の1平方センチメートルあたりの細胞の総数における線維芽細胞および間葉前駆細胞の数を表す。よって、線維芽細胞およびMSCがそれぞれ、播種される総細胞の50%を占める場合、式は下記として表される:aX+bY=Z細胞/cm2、式中(0.5)(
2.1x105細胞)+(0.5)(2.1x105細胞)=2.1x105総細胞/cm2。この式を解くと、少なくとも2つの細胞型の両方の初期播種密度が決定される:1.05x105線維芽細胞+1.05x105間葉前駆細胞=2.1x105総細胞/cm2。この播種式が採用される場合、下記を使用することができる:a=0およびb=1;a=0.1およびb=0.9;a=0.2およびb=0.8;a=0.3およびb=0.7;a=0.5およびb=0.5;a=0.8およびb=0.2。
【0056】
また、ハイブリッドの生物工学によって作られたコンストラクトは、線維芽細胞およびMSCにより産生させることができ、ここでXは一定であり(すなわち、線維芽細胞の数は一定に保たれる)、総細胞量中の線維芽細胞の総数は下記に従い、播種時にわかっている:aX+bY=Z;式中X=Y、a=1、b>0かつb<1、およびZ=総細胞量の計算された播種密度である。例えば、X=2.1x105線維芽細胞であり、50%MSC
が播種時に要求される場合、式は下記として表される:aX+bY=Z、式中(1)(2.1x105細胞)+(0.5)(2.1x105細胞)=Z総細胞/cm2。この式を解
くと、少なくとも2つの細胞型の両方の初期播種密度が決定される:2.1x105線維
芽細胞+1.05x105間葉前駆細胞=3.15x105総細胞/cm2。この播種式が
採用される場合、下記を使用することができる:a=1およびb=2;a=1およびb=1;a=1およびb=0.9;a=1およびb=0.8;a=1およびb=0.7;a=1およびb=0.5;a=1およびb=0.2。
【0057】
II.生物工学によって作られたコンストラクト細孔サイズの制御
あるコンストラクトは構造が多孔性であってもよい。多孔度は、画像の総表面積に対する組織像中の細孔に起因する表面積によって測定され得る。あるコンストラクトは、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%以上の多孔度を有することができる。
【0058】
生物工学によって作られたコンストラクトの細胞外マトリクス内の平均細孔サイズは、多孔性細胞外マトリクスを形成し、および/または細孔サイズを調節するように操作することができる。架橋の型および/または程度を組み合わせて、規定された平均細孔サイズを選択および制御することができ、インビボ持続および/または細胞浸潤の異なる速度を有するコンストラクトが得られ、治療的使用に対する個々の必要性に応じた適用性のための「急速生体再構築可能な」〜「中程度生体再構築可能な」〜「長期生体再構築可能な」生物工学によって作られたコンストラクトにおよぶ。加えて細胞浸潤、例えば望ましくない宿主細胞型の防止または阻止が有用な場合、より小さな細孔サイズを操作してバリア機能を増強させることができる。
【0059】
平均細孔サイズ(直径)は、フリーズドライとしても知られている凍結乾燥が起こる最終温度を変化させることにより操作することができる。このプロセスでは、生物工学によって作られたコンストラクトは、生物工学によって作られたコンストラクトの水溶性の側面が凍結状態を達成するように凍結され、その後、生物工学によって作られたコンストラクトは、真空に供せられ、凍結水(氷)がコンストラクトから除去される。凍結乾燥は、マトリクス内で形成する氷結晶を除去することにより細孔構造を生成させ、開き、凍結温度は得られる平均細孔サイズを決定する。よって、より冷たい凍結温度で凍結乾燥を実施すると、より小さな細孔サイズが生成され、一方、より温かい凍結温度で凍結乾燥を実施すると、より大きな細孔サイズが生成される。よって、1つの実施形態では、温度は−1
00℃〜0℃の範囲とすることができ、平均細孔サイズは、凍結温度を温かくするにつれ、5未満から10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100ミクロン(μm)以上のサイズとなる。1つの実施形態では、5、10、15、20、25、または30μm未満のサイズまたはその間の任意の範囲の平均細孔サイズが、−40℃の凍結温度で生成され得る。別の実施形態では、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μm以上のサイズまたはその間の任意の範囲の平均細孔サイズが−10℃の凍結温度で生成され得る。その凍結温度への到達に向けての速度を減少させると、細孔サイズの均一性を増加させることができる。よって、10、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.3、0.1℃以下/分またはその間の任意の範囲だけ凍結までの速度を減少させると、コンストラクト中の細孔の均一性が増加する。
【0060】
III.生物工学によって作られたコンストラクト組成の制御
本発明の生物工学によって作られたコンストラクトの細胞外マトリクスは、創傷を治療し、治癒させるのに有用な構成要素を含む。
【0061】
a.失活させた生物工学によって作られたコンストラクト
本発明の生物工学によって作られたコンストラクトは、被験体を治療する際のそれらの最終用途によって、失活させ、細胞を除去せずに終結させることができ、および/または脱細胞させ、細胞を除去することができる。失活または脱細胞は、カルチャーインサートの膜上で、または生物工学によって作られたコンストラクトがカルチャーインサートから除去された後に起こり得る。
【0062】
生物工学によって作られたコンストラクトは多くの方法で失活させることができる。生物工学によって作られたコンストラクトにおいて細胞を失活させるための1つの方法は、コンストラクト中の全てのまたは実質的に全ての水分を物理的手段を用いて除去するものである。水分を除去する手段としては、空気中での、凍結による、またはフリーズドライによる脱水が挙げられる。空気乾燥によりコンストラクトを脱水するために、培地が、生物工学によって作られたコンストラクトが作成された容器から取り出され、生物工学によって作られたコンストラクトが、細胞を死なすのに十分な時間、単に脱水される。脱水条件は、温度および相対湿度の観点から変動する。脱水温度は、生物工学によって作られたコンストラクトにおける凍結温度超〜コラーゲンの変性温度の範囲、例えば、約0℃〜約60℃または周囲室温(例えば、約18℃〜約22℃)とすることができる(示差走査熱量測定、または「DSC」によって測定される)。約0%〜約60%の範囲のようなより低い相対湿度値が好ましい;しかしながら、室内湿度に相当する相対湿度、約10%Rh〜約40%Rhもまた好ましい。脱水が周囲室温および湿度での空気乾燥により実施される場合、生物工学によって作られたコンストラクトは、約10%〜約40%w/wの水分、またはそれ以下を有するであろう。また、生物工学によって作られたコンストラクトは、フレーズドライ(すなわち、凍結乾燥)させることができ、この場合、コンストラクトは凍結され、その後、真空環境におかれ、水分が除去される。例えば、生物工学によって作られたコンストラクトは培養物からそのまま取り出し、凍結させ(例えば、−80℃〜0℃またはその間の任意の範囲の温度で)、一晩中、例えば約1〜約15時間、またはそれ以上凍結乾燥させることができる。また、生物工学によって作られたコンストラクトは、最初に約8時間空気乾燥させ、その後、凍結させ、凍結乾燥させることができる。周囲条件で乾燥させた後、またはフリーズドライにより、生物工学によって作られたコンストラクトは、失活させられるが、失活した細胞および細胞残遺物を依然として保持する。凍結乾燥はまた、周囲条件での脱水で得られるものとは異なる品質を付与することができる。そのような品質は、1つの実施形態では、より大きな多孔性および開口線維性マトリクス構造を示す。
【0063】
生物工学によって作られたコンストラクトにおける細胞を失活させるために、化学的手段もまた使用することができる。細胞を浸透圧的に終結するための水を使用することができる。生物工学によって作られたコンストラクトは、低浸透圧性膨潤を可能にし、細胞を溶解させるのに十分な時間、滅菌純水に浸漬させることができる。細胞溶解後、生物工学によって作られたコンストラクトは、失活させられるが、失活した細胞および細胞残遺物を依然として保持する。水が使用される場合、他の物質、例えば過酢酸または過酸化水素、または塩、またはそれらの組み合わせと混合することができる。例えば、水中約0.05%〜約3%v/vの過酢酸の失活溶液を使用することができる。この失活剤はまた、緩衝化させることができ、または高い塩濃度を含むことができ、細胞が終結された場合に、生物工学によって作られたコンストラクトの過剰な膨潤が阻止される。また、有機溶媒および有機溶媒溶液は、本発明において失活剤として使用することができる。有機溶媒は生物工学によって作られたコンストラクト中の水に取って代わり、生物工学によって作られたコンストラクト中の細胞を終結させ、よって失活させることができる。水を除去するために使用される有機溶媒は、コンストラクトから除去された場合に残留物を残さないものとすることができ、例えば、アルコール(例えば、エチルアルコール、メチルアルコールおよびイソプロピルアルコール)およびアセトンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、生物工学によって作られたコンストラクトは、滅菌エチルアルコール中に、生物工学によって作られたコンストラクト中の水に取って代わり、細胞を失活させるのに十分な時間浸漬させることができる。エチルアルコールは、生物工学によって作られたコンストラクト中に吸収されたエチルアルコールを蒸発させるのに十分な時間、空気に暴露する前に除去することができる。溶媒の蒸発後、コンストラクトは失活した細胞および細胞残遺物を保持し、脱水される。
【0064】
細胞を失活させる他の手段としては、生物工学によって作られたコンストラクトを紫外線またはγ線照射に供することが挙げられる。これらの手段は水による低浸透圧性膨潤、または他の化学的失活手段と共に、または空気および凍結と共に実施することができる。
【0065】
b.脱細胞させた生物工学によって作られたコンストラクト
脱細胞により、生物工学によって作られたコンストラクトの内在性細胞外マトリクス構成要素を生成させる細胞外マトリクス産生細胞が完成コンストラクトから除去される。脱細胞のための1つの方法は、一連の化学処理内での浸漬または静かなかき混ぜを使用し、細胞、細胞残遺物、および残留細胞DNAおよびRNAを除去する。他の非コラーゲンおよび非エラスチン細胞外マトリクス構成要素、例えば、ECM中に存在する糖タンパク質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、脂質、および他の非コラーゲンタンパク質はまた、脱細胞するために使用される薬剤および方法を用いて除去または減少させることができる。例えば、生物工学によって作られたコンストラクトは、好ましくは細胞−マトリクスの膨潤を制御可能に制限するように生理学的にアルカリの有効量のキレート化剤と接触させることにより最初に処理することができる。キレート化剤は、二価カチオン濃度を減少させることにより、細胞、細胞片および基底膜構造のマトリクスからの除去を増強する。アルカリ処理は、糖タンパク質およびグリコサミノグリカンをコラーゲン組織から解離させ、脂質をけん化することができる。使用することができる当技術分野で知られているキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレンビス(オキシエチレニトリロ)四酢酸(EGTAが挙げられるが、これらに限定されない。EDTAは、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウムCa(OH)2、炭酸ナトリ
ウムまたは過酸化ナトリウムを添加することにより、よりアルカリ性とすることができる。EDTAまたはEGTA濃度は、約1〜約200mM、約50〜約150mM、または約100mMとすることができる。NaOH濃度は約0.001〜約1M、約0.001〜約0.10M、または約0.01M(例えば、水中100mMEDTA/10mMNaOH)とすることができる。キレート溶液のpHを有効塩基性pH範囲内とする他のアル
カリまたは塩基性剤は、当業者によって決定することができる。塩基性キレート溶液の最終pHは、約8〜約12または約11.1〜約11.8とすべきである。
【0066】
生物工学によって作られたコンストラクトはその後、任意に塩を含む有効量の酸性溶液と接触させることができる。酸処理は、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、非コラーゲンタンパク質、および核酸の除去を増強させることができる。塩処理は、酸処理中のコラーゲンマトリクスの膨潤を制御し、いくつかの糖タンパク質およびプロテオグリカンのコラーゲンマトリクスからの除去を増強させることができる。当技術分野で知られている酸溶液は使用することができ、例えば、塩酸(HCl)、酢酸(CH3COOH)および
硫酸(H2SO4)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、塩酸(HCl)は、約0.5〜約2M、約0.75〜約1.25M、または約1Mの濃度で使用することができる。酸/塩溶液の最終pHは、約0〜約1、約0〜0.75、または約0.1〜約0.5であるべきである。塩酸および他の強酸が、核酸分子を分解するには最も効果的であり、より弱い酸は、より効果的ではない。使用することができる塩は、好ましくは無機塩であり、例えば、塩化物塩、例として、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、および塩化カリウム(KCl)が挙げられるが、これらに限定されない。例
えば、塩化物塩は、約0.1〜約2M、約0.75〜約1.25M、および約1M(例えば、水中2M HCl/1M NaCl)の濃度で使用することができる。
【0067】
生物工学によって作られたコンストラクトはその後、好ましくは約生理的pHに緩衝化された有効量の塩溶液と接触させることができる。緩衝化された塩溶液は、材料を中和しながら、膨潤を減少させる。使用することができる塩は、好ましくは無機塩であり、例えば、塩化物塩、例として、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2
、および塩化カリウム(KCl);および窒素塩、例えば硫酸アンモニウム(NH3SO4)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、塩化物塩は、約0.1〜約2M、約0.75〜約1.25M、または約1Mの濃度で使用することができる。緩衝化剤は当技術分野で知られており、例えば、リン酸塩およびホウ酸塩溶液が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)を使用することができ、この場合、リン酸塩は、約0.001〜約0.02Mの濃度および約0.07〜約0.3Mの塩濃度対塩溶液(例えば、1M塩化ナトリウム(NaCl)/10mMリン酸緩衝食塩水(PBS))である。pHは、約5〜約9、約7〜約8、または約7.4〜約7.6であるべきである。化学洗浄処理後、生物工学によって作られたコンストラクトはその後、化学洗浄剤なしで、有効量のリンス剤と接触させることによりすすぐことができる。薬剤、例えば水、等張食塩水溶液(例えば、PBS)および生理的pH緩衝溶液を、生物工学によって作られたコンストラクトと、洗浄剤を除去するのに十分な時間接触させることができる。生物工学によって作られたコンストラクトをアルカリキレート化剤と接触させるおよび生物工学によって作られたコンストラクトを塩を含む酸溶液と接触させる洗浄工程は、どちらの順でも実施することができ、実質的に同じ洗浄効果が達成される。
【0068】
c.多層のおよび/または架橋された、生物工学によって作られたコンストラクト
ECMは架橋剤を使用して架橋させることができ、生体中に移植またはグラフトさせた場合に、生体再構築速度が制御され、その持続性が増加する。これは、架橋させることができ、単層コンストラクトとして使用することができ、または異なる型のコンストラクトを作成するように組み合わされ、操作することができる。架橋は、生物工学によって作られたシートを、またはその一部を共に結合することができる。
【0069】
いくつかの生物工学によって作られたコンストラクトは、2つ以上の重ね合わせECMシートを有し、これらは共に結合され、フラットシートコンストラクトを形成する。本明細書では、「結合されたコラーゲン層」は、自己積層および/または化学結合によって、層が互いに重ね合わせさられ、一緒に十分保持されるように処理された、同じまたは異な
る起源またはプロファイルの2つ以上の生物工学によって作られたシートから構成されることを意味する。例えば、生物工学によって作られたコンストラクトは任意の数の層、例えば2〜20の層または2〜10の層を含むことができ、層の数は、コンストラクトの最終使用目的に必要とされる強度および嵩に依存する。また、重ね合わせ配列の最終的なサイズは、マトリクスシートのサイズにより制限され得るので、層は、コラージュ配列でずらして配置することができ、いずれの個々のマトリクスシートの寸法よりも大きな表面積を有するが、配列領域を横切る連続層を有しないシートコンストラクトが形成される。
【0070】
マトリクスシートの、多層の生物工学によって作られたコンストラクトを形成するために、第1の滅菌剛性支持部材、例えばポリカーボネートの剛性シートを築くことができる。マトリクスシートが依然として水和状態にない場合、例えば失活または脱細胞プロセスの実施後、水溶液、例えば水またはリン酸緩衝食塩水中で水和される。マトリクスシートは滅菌吸収布で拭き取ることができ、過剰の水が材料から吸収される。第1のマトリクスシートを、ポリカーボネートシート上に置き、手作業でポリカーボネートシートになでつけ、全ての気泡、しわ、およびひだを除去することができる。第2のマトリクスシートを第1のシート上面に置き、再び、手作業で、全ての気泡、しわ、およびひだを除去することができる。この積層は、特定の適用のために所望の数の層が得られるまで反復させることができる。
【0071】
所望の数のマトリクスシートの積層後、これらは共に脱水させることができる。脱水は、水が隣接するマトリクスシートの繊維間から除去された場合、細胞外マトリクス構成要素、例えばコラーゲン繊維を層内で一緒にすることができる。層は、第1の支持部材上にむき出しで、または第1の支持部材と第2の支持部材、例えば第2のポリカーボネートシートの間で脱水させ、乾燥前上面層上に配置され第1の支持部材に固定されたることができ、全ての層が、平面配列で一緒に、加圧あり、またはなしで維持される。脱水を促進するために、支持部材は多孔性とすることができ、空気および水分が脱水層を通過することができる。層は空気中で、真空で、または化学的手段により、例えばアセトンもしくはアルコール、例としてエチルアルコールもしくはイソプロピルアルコールにより乾燥させることができる。空気乾燥による脱水は、室内湿度、約0%Rh〜約60%Rh、またはそれ以下;あるいは約10%〜約40%w/w水分、またはそれ以下まで実施することができる。脱水は、重ね合わせマトリクス層を曲げて、少なくとも約1時間から、最大24時間まで周囲室温、およそ20℃で、室内湿度で、層流キャビネットの滅菌気流に直面させることにより容易に実施することができる。真空または化学的手段により実施される脱水は、層を空気乾燥により達成されるものより低い水分レベルまで脱水するであろう。
【0072】
任意的な工程では、脱水された層は再水和され、あるいはその代わりに、再水和され、再び脱水される。上記のように、脱水は、隣接するマトリクス層の細胞外マトリクス構成要素を一緒にし、それらの層を一緒に架橋させると、構成要素間で化学結合が形成され、層が結合される。層を再水和させるために、それらは、多孔性支持部材から一緒に剥離され、再水和剤水溶液、好ましくは水中で、再水和剤水溶液を含む容器に少なくとも約10〜約15分間、約4℃〜約20℃の温度でそれらを移すことにより再水和され、層が、分離または層間剥離なしで再水和される。マトリクス層はその後、層状マトリクスシートを、架橋剤、好ましくはマトリクス層の生体再構築性を保存する化学架橋剤と接触させることにより一緒に架橋される。
【0073】
架橋は、強度および耐久性をコンストラクトに提供し、その取扱特性を改善する。当技術分野で知られている様々な型の架橋剤、例えば、カルボジイミド、ゲニピン、トランスグルタミナーゼ、リボースおよび他の糖、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、酸化剤、紫外(UV)光およびデヒドロサーマル(DHT)法が使用することができる。化学的架橋剤に加えて、層は、生体適合性フィブリン系のりまたは医療グレード接着剤、例
えばポリウレタン、酢酸ビニルまたはポリエポキシを用いて一緒に結合させることができる。1つの生体適合性接着剤は絹フィブロインであり、これは、メチルアルコールを用いて活性化される組織マトリクスの隣接する層間結合領域に配置される4−8%絹フィブロイン溶液である。生体適合性のりまたは接着剤使用して、架橋された、または架橋されていない層、あるいは両方を一緒に結合させることができる。
【0074】
1つの適切な架橋剤は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)である。スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドはStaros, J.V. , Biochem. 21、3950-3955, 1982により記載されるようにEDC架橋剤に添加することがで
きる。最も好ましい方法では、EDCは水中、約0.1mM〜約100mM、約1.0mM〜約10mM、または約1.0mMの濃度で可溶化される。水に加えて、リン酸緩衝食塩水または(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)(MES)緩衝液が、EDCを溶解するために使用することができる。他の薬剤、例えばアセトンまたはアルコールを水中99%v/v、典型的には50%まで、溶液に添加することができ、架橋がより均一で効率的に起こる。これらの薬剤は、水を層から除去し、マトリクス繊維を一緒にし、それらの繊維間の架橋を促進する。架橋剤中の水に対するこれらの薬剤の比は、架橋を調節するために使用することができる。EDC架橋溶液は、EDCとしての使用の直前に調製され、というのも、時間と共にその活性を喪失するからである。架橋剤をマトリクス層に接触させるために、水和され、結合されたマトリクス層は容器、例えば浅皿に移され、架橋剤がしずかに皿にデカントされ、マトリクス層が被覆され自由に動き、気泡がマトリクス層下、または間に存在しないことが確保される。容器は被覆され、マトリクス層は、約4〜約24時間、または8〜約16時間、約4℃〜約20℃の温度で架橋される。架橋は、温度によって調節することができ、そのため、より低い温度では、反応が減速されるので、架橋はより効果的となる。対照的に、より高い温度では、EDCがより不安定となるので、架橋はより効果的でなくなる。
【0075】
架橋後、架橋剤はデカントされ、廃棄され、架橋された多層マトリクスコンストラクトを、リンス剤(例えば、水)と接触させることにより、例えば、架橋された多層マトリクスコンストラクトを3度等体積の滅菌水と、各すすぎに対し1分〜45分のどこからでも接触させることにより、すすぎ、残留架橋剤を除去させる。
【0076】
また、生物工学によって作られたコンストラクトは、デヒドロサーマル(DHT)架橋法を用いて架橋させることができ、これは、移植片が真空下で制御された熱に暴露された場合(典型的には24時間までの120℃乾燥加熱)、縮合反応を介してタンパク質繊維上の隣接するカルボキシとアミノ基の間で共有結合を形成させる。この処理では、水分子が個々の繊維から追い出され、コラーゲン鎖中のアミノ酸の分子位置に複雑な変化が起き、酸化的損傷の可能性に至る。DHTは、一定の再生医療適用では化学的架橋よりも有利となる可能性があり、というのは、このプロセスは、潜在的に細胞傷害性または炎症性の化学薬品を、患者の免疫応答を刺激するであろう治療的使用のための移植片に導入しないからである。
【0077】
DHTは、高い強度をコラーゲンマトリクスに提供する(約50MPa)可能性を有するが、コラーゲン繊維内でのアミノ酸の分子の再配置のために、コラーゲン繊維を部分的に変性させることが知られている。材料中で形成される架橋の数が大きくなるほど、材料が消化酵素に暴露された場合に、典型的にはより大きな耐久性が与えられるであろう。しかしながら、一定のタンパク質酵素は、タンパク質が変性されない限り、およびされるまで、コラーゲン繊維の三重らせんドメイン内の露出させることができない、特定の標的部位でのみ切断することも知られている。コラーゲン移植可能物の架橋中に起こる変性レベルは、患者体内への移植時の、非特異的プロテアーゼによるマトリクスの急速分解の可能性を回避するために、最小に抑えることができる。コラーゲンマトリクスにおけるDHT
架橋のレベルは、典型的にはコラーゲン繊維の縮み温度、機械的荷重または酵素消化(例えば、コラゲナーゼ、トリプシン、など)に対する感受性により測定される。コラーゲンの乾燥および熱処理の効果はまた、脱水が起きた時の繊維中のコラーゲン分子の軸方向充填の変化を観察するX線回折を用いて観察することができる。層状のおよび/または架橋された生物工学によって作られたコンストラクトは、よく知られた技術(例えば、Parenteauへの米国特許第5,712,163号、PCT公開番号第WO95/31473号、PCT公開番号第WO00/29553号、およびPCT公開番号第WO2009/070720号を参照されたい)に基づき、多くの形状因子例えば管状コンストラクトに成形することができる。
【0078】
d.併用製品
他の材料をECMに追加してもよく、インビボで投与された場合、生理活性または機能がさらに増強される。
【0079】
例えば、抗菌剤、薬物、増殖因子、サイトカイン、遺伝子材料および培養された細胞が、生物工学によって作られたコンストラクト、その中の層、および/または足場内に、または上に組み込まれ得る。
【0080】
生物工学によって作られたコンストラクトがその使用において、循環系におけるように、血液と接触する場合、これらは、ヘパリンをコンストラクトに、コンストラクトの表面全てにまたは平面シートコンストラクトの一面だけに、あるいは管状コンストラクトの管腔側または反管腔側のいずれかに適用することにより、非血栓形成性とすることができる。ヘパリンはコンストラクトに、様々なよく知られた技術により適用することができる。説明のために、ヘパリンは、コンストラクトに、下記3つの様式で適用することができる。第1に、ルーメンを垂直に充填し、プロステーシスを溶液に浸漬し、その後空気乾燥させることにより、ベンザルコニウムヘパリン(BA−Hep)イソプロピルアルコール溶液をプロステーシスに適用する。この手順はコラーゲンをイオン結合されたBA−Hep複合体で処理する。第2にEDCを使用して、ヘパリンを活性化させ、ヘパリンをコラーゲン繊維に共有結合させることができる。第3に、EDCを使用して、コラーゲンを活性化し、その後プロタミンをコラーゲンに共有結合させ、その後ヘパリンをプロタミンにイオン結合させることができる。
【0081】
合成材料を、生物工学によって作られたコンストラクトの少なくとも1つの表面に配置させることができる。合成材料はシート形態であり、生物工学によって作られたコンストラクト上に重ね合わせるまたはずらして配置させることができ、生物工学によって作られた層上で合成層が形成される。1つのクラスの合成材料、好ましくは生物学的に適合可能な合成材料はポリマを含む。そのようなポリマとしては下記が挙げられるが、これらに限定されない:ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)またはシリコーン、ポリ(エチレン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ酸無水物、およびポリオルトエステルまたは、開発することができ、生物学的に適合可能である任意の他の同様の合成ポリマ。「生物学的に適合可能な、合成ポリマ」という用語はまた、コポリマおよびブレンド、ならびに前記の一緒の、または一般的に任意の他のポリマとの任意の他の組み合わせを含む。これらのポリマの使用は、所定の適用および要求される仕様に依存する。例えば、生物学的に適合可能な合成材料はまた、生分解性とすることができ、そのため、被験体の体内に移植されると、時間の経過に伴い生分解する。生物工学によって作られたコンストラクト上に配置されると、組み合わせコンストラクトは生分解性層および生体
再構築可能層を含む。これらのポリマおよびポリマ型のより詳細な記述は、Brannon-Peppas, Lisa, "Polymers in Controlled Drug Delivery," Medical Plastics and Biomaterials, November 1997において説明され、これは本明細書で完全に説明されるかのように、参照により組み込まれる。
【0082】
バッキング層として使用することができる別の合成材料の例は、シリコーンである。多孔性もしくは微孔性膜または無孔性フィルムの形態のシリコーン層がマトリクスコンストラクトに適用され、付着される。創傷治癒において使用される場合、シリコーン層を使用して、皮膚創傷に対してマトリクスコンストラクトを取扱い、操作し、創傷周囲を密閉し、マトリクスコンストラクトを包み込み、創傷を治療することができる。シリコーンはまた、水分バリアを形成し、創傷を乾燥させないようにする。治癒した創傷組織がうまく形成した後、典型的には約21日に、シリコーンを治癒した、または治癒している創傷の縁から、ピンセットを用いて注意深くはぎ取る。
【0083】
タンパク質もまた、生物工学によって作られたコンストラクトに添加することができる。有用な細胞外マトリクスタンパク質の例としては、コラーゲン、フィブリン、エラスチン、ラミニン、およびフィブロネクチン、プロテオグリカンが挙げられるが、これらに限定されない。フィブリノーゲンは、トロンビンと併用されると、フィブリンを形成する。ヒアルロナン(ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩とも呼ばれる)は、結合、上皮、および神経組織全体に広く分散された非硫酸化グリコサミノグリカンである。これは、細胞外マトリクスの主構成要素の1つであり、細胞増殖および移動に著しく寄与し、術後癒着を減少させるために使用される。天然の、これらのタンパク質のそれぞれの複数の型、ならびに遺伝子工学により合成的に操作または生成され得る、またはされた型が存在する。コラーゲンは多くの形態および型で生じる。「タンパク質」という用語はさらに、断片、類似体、保存的アミノ酸置換、および各指名されたタンパク質に関し非自然的に起こるアミノ酸との置換を含むが、これらに限定されない。「残基」という用語は、アミド結合によりタンパク質に組み込まれるアミノ酸(DもしくはL)またはアミノ酸模倣物を示す。そのようなものとして、アミノ酸は天然に生じるアミノ酸とすることができ、または別に限定されない限り、天然に生じるアミノ酸に類似する様式で機能する天然アミノ酸の周知の類似体(すなわち、アミノ酸模倣物)を含むことができる。さらに、アミド結合模倣物は、当業者によく知られたペプチドバックボーン修飾を含む。例えば、ペプチドは、細胞効果(例えば、絹足場へのヒト皮膚線維芽細胞浸潤および宿主細胞、例えば上皮細胞を動員する能力の改善)を増強させるために使用することができる。そのようなペプチドは、RGD、Gofoger、ラミニン1−10、およびプロネクチンとすることができる。より具体的には、ラミニン5およびラミニン10は、上皮細胞浸潤/移動を増加させるように特にうまく機能する。ペプチドもまた、内皮細胞移動を増強させるために使用することができる。より特定的には、ペプチド、例えばトロンビンおよびフィブリノーゲンは、特に新血管新生から恩恵を受けている徴候に対し、内皮細胞移動を増強させることができる。
【0084】
細胞接着分子はまた、足場組成物を局所組織部位に付着させ、生物工学によって作られたコンストラクトの拡散を防止するために、ポリママトリクス内にまたは上に組み込ませることができる。そのような分子はマトリクスの重合前に、またはマトリクスの重合後にポリママトリクス中に組み込まれる。細胞接着分子の例としては、ペプチド、タンパク質および多糖、例えばフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、トロンボスポンジン1、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、アグリカン、アグリン、骨シアロタンパク質、軟骨マトリクスタンパク質、フィブリノーゲン、フィブリン、フィビュリン、ムチン、エンタクチン、オステオポンチン、プラスミノーゲン、レストリクチン、セルグリシン、SPARC/オステオネクチン、バーシカン、フォンビルブランド因子、多糖ヘパリン硫酸、コネキシン、コラーゲン、RGD(Arg−Gly−Asp)およびYIGSR(T
yr−Ile−Gly−Ser−Arg)ペプチドおよび環状ペプチド、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒアルロン酸(HA)、コンドロイチン−6−硫酸、インテグリンリガンド、セレクチン、カドヘリンおよび免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、神経細胞接着分子(NCAM)、細胞間接着分子(ICAM)、血管細胞接着分子(VCAM−1)、血小板−内皮細胞接着分子(PECAM−1)、L1、およびCHL1が挙げられる。
ECMタンパク質およびペプチドならびに細胞機能における役割
タンパク質 配列 SEQ.ID No: 役割
フィブロネクチン RGDS 接着
LDV 接着
REDV 接着
ビトロネクチン RGDV 接着
ラミニン A LRGDN 接着
IKVAV 神経突起伸展
ラミニン B1 YIGSR 細胞の接着、
67kDラミニン受容体を介する
PDSGR 接着
ラミニン B2 RNIAEIIKDA 神経突起伸展
コラーゲン 1 RGDT ほとんどの細胞の接着
DGEA 血小板および他の細胞の接着
トロンボスポンジン RGD ほとんどの細胞の接着
VTXG 血小板の接着
【0085】
好適な細胞接着分子の追加の例を下記に示す。
細胞外マトリクスタンパク質由来のプロテオグリカン結合に特異的なアミノ酸 配列
配列 SEQ.ID.NO. タンパク質
XBBXBX* コンセンサス配列
PRRARV フィブロネクチン
YEKPGSPPREVVPRPRPGV フィブロネクチン
RPSLAKKQRFRHRNRKGYRSQRGHSRGR ビトロネクチン
rIQNLLKITNLRIKFVK ラミニン
【0086】
特に好ましい細胞接着分子は、細胞付着リガンドとして知られており、様々な天然細胞外マトリクス分子において見いだされるアミノ酸配列アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)を含むペプチドまたは環状ペプチドである。そのような修飾を有するポリママトリクスは、足場に細胞接着特性を提供し、哺乳類細胞系の長期生存を持続させ、ならびに細胞増殖を支持する。
【0087】
増殖因子もまた、生物工学によって作られたコンストラクト中におよび/または足場構造上に導入させることができる。そのような物質としては、BMP、骨形成タンパク質;ECM、細胞外マトリクスタンパク質またはその断片;EGF、上皮増殖因子;FGF−2、線維芽細胞増殖因子2;NGF、神経増殖因子;PDGF、血小板由来増殖因子;PIGF、胎盤増殖因子;TGF、トランスフォーミング増殖因子、VEGF、血管内皮増殖因子、MCP1、およびIL4が挙げられる。細胞−細胞接着分子(カドヘリン、インテグリン、ALCAM、NCAM、プロテアーゼ、Notchリガンド)は任意に足場組成物に添加される。例示的な増殖因子およびリガンドは、下記表で提供される。
【表1】

【表2】

【表3】

rH、組換えヒト
【表4】

*配列は、1文字アミノ酸コードで与えられる。MMP、マトリクスメタロプロテイナー
ゼ。
【0088】
インビボでの血管形成を増強させるために、失活させた、生物工学によって作られたコンストラクトをタンパク質、例えば血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子/散乱因子(HGF/SF)、インスリン様増殖因子(IGF)、血管内皮増殖因子(VEGFおよび他の種類の血管新生促進因子中に浸漬させることができる。1つの態様では、50μgの組換えヒトPDGF−BB粉末を、0.5mlの4mM HCl中で再構成させ、その後、追加の0.5mlリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加した。得られた1mL溶液を使用して、失活させた、生物工学によって作られたコンストラクトを浸漬させ、その後、ヌードマウスおよび正常マウス内に全層創傷に移植した。加えて、50μgの組換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を、1mLのPBS中で再構成させた。生物工学によって作られたコンストラクトを、1mL bFGF溶液中に5分間浸漬させ、その後、ヌードマウスおよび正常マウス内に全層創傷に移植した。別の実施形態では、50μgの組換えヒトPDGF−BBを0.5mlの4mM HCL中で再構成させ、その後、0.5mLのPBS−再構成組換えヒトbFGFと混合させた。生物工学によって作られたコンストラクトを、得られた1mL溶液中に5分間浸漬させ、その後、ヌードマウスおよび正常マウスに全層創傷に移植した。別の実施形態では、生物工学によって作られるコンストラクトを、実施例12のように生成させる。培養時間の過程にわたって複数のフィードのいずれかに由来する条件培地を収集することができる。特に、条件培地は第11日後に収集され、濃縮された(例えば、100倍)。失活させた、本発明の生物工学によって作られたコンストラクトをその後、移植直前に濃縮条件培地に浸漬させた。
【0089】
補充物もまた、所望の細胞外マトリクス特質を選択的に増強させるために、および/ま
たは所望のインビボの結果を達成するために合成培地に導入してもよい。合成培地は下記を含む:
【表5】

【0090】
生物工学によって作られたコンストラクト中のヒアルロン酸(HA)量を増加させ、インビボでの新規血管形成を増強させるために、合成培地に2x長TGFα(40ng/mL)を補充することができる。さらに、合成培地はさらに、25ng/mlのPDGFを第5日に、25ng/mlのbFGFを第10日に、25ng/mlの肝細胞増殖因子(HGF)を第15日に補充することができる。また、合成培地は、2x長TGFα(40ng/mL)、25ng/mlのbFGFを第5日に、25ng/mlのPDGFを第10日に、および25ng/mlのbFGFを第15日に補充される。さらなる別の合成培地処方は2x長TGFα(40ng/mL)、25ng/mlのpDGFを第5日、25ng/mlのbFGFを第10日、および25ng/mlのHGFを第15である。
【0091】
また、本発明の生物工学によって作られたコンストラクトは、10x長TGFα(200ng/mL)を含むように合成培地に補充することにより増加させた量の硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)を含むように生成させることができる。より特定的には、合成培地に10x長TGFα(200ng/mL)および1XTGFα(20ng/mL)を補充することにより生成させた、生物工学によって作られたコンストラクトを比較した場合、およそ1100μgのsGAG/コンストラクトが10x長TGFα(200ng/mL)が補充された培地により生成された、生物工学によって作られたコンストラクトで観察され、対照的に、1XTGFα(20ng/mL)が補充された培地で生成された、生物工学によって作られたコンストラクトでは、600μgのsGAG/コンストラクトが観察された。本明細書で開示される培地補充物の変化は、本発明の範囲から逸脱することなく、HDFが播種された、または播種されていない絹足場を処理するために使用することができることが、認識されるべきである。
【0092】
生物工学によって作られたコンストラクトは、表面修飾により処理することができ、接着性または組織付着特性が増強される。接着「手段」を提供する表面修飾は、頂端、基底、または両方の対向する表面上に含ませることができ、これは、患者の組織および器官にインビボで密接に適用された場合、コンストラクトの結合を増加させるように機能する。接着増強「手段」は下記のいずれかの1つ以上とすることができる:(a)複数の自己組織化微細構造および/または生物工学によって作られた表面上へ成形された、およびそこ
から突出するナノ構造の組み入れ;(b)生物工学によって作られた表面上に結合され、被覆されまたは直接適用された、追加された生体適合性および生分解性接着材料、例えばフィルム、ゲル、ヒドロゲル、液体、またはのり;あるいは、(c)生物工学によって作られた表面上にオーバーレイされ、またはスピニングされたエレクトロスピニングされた粘着性繊維マトリクス。
【0093】
接着増強手段は、1つの外表面(1つの好ましい製造設計によって基底または頂端のいずれか)に限定することができる。この接着性コンストラクトは、器官修復、バルキング、強化または再構成のために使用することができる。接着性コンストラクトは創傷に隣接する周囲組織に接着することを意味せず、
治癒の必要のある器官の表面に直接接着することのみを意味する。しかしながら、基底および頂端表面両方が、接着増強手段を含むことができ、これは、組成物の対象とする治療的使用(例えば、意図的に内部組織または器官を互いにぴったりと近接させて保持するため、または、患者の組織を外因性の移植可能な治療装置またはセンサの表面にぴったりと接着させるため)によって、各表面上で同じかまたは異なる手段である。
【0094】
自己組織化ミクロ−および/またはナノ構造を含むように製造されるかまたは、生体適合性および生分解性接着材料を含むように製造されるかに関係なく、様々な実施形態を生成させるために一定の製造方法を使用することができる。例えば、移植片の形状は、その対象とする治療的使用によって円形、卵形、楕円形、三角形、または様々なサイズの長方形および正方形であるパッチとすることができる(例えば、骨または他の器官に巻くため、組成物がその幅よりも実質的に大きな長さを有するテープフォーマットと類似する一定の適用では、例えば、長く、狭い長方形であり、一方、他の使用は、例えば、ヘルニア修復のために、より正方形様のパッチが要求する可能性がある。移植片はさらに、外科医により、必要に応じて、患者の欠損の特定のサイズおよび形状に一致するように整えられる。さらに、テープまたはパッチは、細菌感染を阻止するために1つ以上の薬物、例えばコロイド銀または微生物毒素、および手術後出血を阻止するための1対上の薬物、例えばフィブリノーゲンまたはトロンビンを含むことができる。さらなる実施形態では、コンストラクトは、γ線照射、マイトマイシン−Cによる処理、または当技術分野で知られている任意の他の手段により、出荷前に有糸分裂的に不活性化させることができ、これにより、ドナー細胞は、それらの生物学的治癒因子を分泌し続けることができるが、患者宿主におけるそれらの長期生着が防止される。接着物品の少なくとも一部は、ASTM標準D4501、D4541、またはD6862−04に従い測定される場合、およそ0.05ニュートン/平方センチメートルの投影面積以上の接着剤強度を有することができる。
【0095】
接着手段はバイオリアクターシステムのカルチャーインサート膜の修飾された細孔表面を模倣する細胞およびそれらの分泌された細胞外マトリクスにより形成された線維芽細胞および/または間前駆細胞ユニットを用いて生成された生物工学によって作られたコンストラクトの基底表面上に成形される複数の自己組織化微細構造を含む。本質的には、プレーティングシステム表面は、多くの操作された空洞または空隙構造を含むマイクロモールドとして作用し、ここで、細胞は培養するとこれらの空隙内に定着し、その後、タンパク質、脂質、GAGおよび他のマトリクス因子を分泌し、これらの空隙を満たし、よって、生物工学によって作られたコンストラクトの基底表面の全てまたは一部を被覆する突起または組織「グリッパー」を生成し、これらは、生物工学によって作られたコンストラクトのバイオリアクターからの除去時に、プレーティング表面のナノスケール組織分布に対し鏡像で形成される。プレーティング表面の微細加工された組織分布は、当技術分野で知られている様々な技術、例えば、限定はされないされないが、リソグラフィー、ナノドローイング、マイクロエッチング、およびフォトリソグラフィー、続いてエッチングまたはナノ成形を用いて形成することができる。突起は様々な形状およびサイズ、例えば、円錐、スパイク、円筒、角柱、錐体、多角形、パターニングされた溝、吸着カップ、またはヤモ
リの足蹠上で見られるナノスケール剛毛およびスパチュラ組織分布を模倣する形状で形成させることができる。突起は、生物工学によって作られたコンストラクト基底または頂端表面の主突起から延在する第2、第3または追加の組の突起を含むことができる。突起は、生物工学によって作られたコンストラクトの固有の特徴であり、表面上でその形状およびサイズを均一にすることができ、または使用目的および要求される接着性レベルによって、形状およびサイズの組み合わせで配列させることができる。突起は、表面上で様々なパターンおよび様々な密度で配列させることができる。突起密度、または単位面積あたりの突起の数は、およそ10突起/cm2〜およそ1x1010突起/cm2の範囲である。突起は、テープまたはパッチの対象とする適用によって、あるパターンで配列させることができ、または規則的に、不規則に、もしくはランダムに配列させることができる。いくつかの実施形態では突起は、およそ1,000μm未満の平均高さを有する。突起は、およそ0.2μm〜およそ150μmの平均高さを有することができる。突起はおよそ0.05μm〜およそ150μmの平均先端幅を有することができる。突起は、およそ0.05μm〜およそ150μmの平均基底幅を有することができる。突起は、およそ0.2μm〜およそ500μmの平均中心間ピッチを有することができる。突起は、およそ0.1:1〜およそ500:1の平均高さ対基底幅比を有することができる。突起はおよそ1000:1〜およそ0.1:1の平均基底幅対先端幅比を有することができる。いくつかの実施形態では、自己組織化された突起は、外科医によって適用されると、患者の組織を貫通することができる。
【0096】
また、接着増強手段は、細胞の初期プレーティング前にバイオリアクターの表面に適用される、または、培養が完了した後、最終パッケージング前(すなわち、液体増殖培地除去後であるが、ユニットの出荷前)に、自己組織化された、生物工学によって作られたコンストラクトの表面に直接適用される接着剤材料である。本発明で有用な接着剤に対する重要な特徴は、生分解性、生体適合性、屈曲性、弾性、組織表面への強い結合が形成できる(湿ったまたは湿性環境においてさえ)ことを含む。接着材料は、細胞マトリクスコンストラクトの表面と化学結合、例えば、共有結合またはファンデルワールス、静電、または水素相互作用を介する非共有結合を形成することができなければならない。接着材料は、コンストラクトの表面に、噴霧、ローリングまたは浸漬のいずれかにより追加することができる。当技術分野で知られている様々な接着材料が、接着表面を形成するために使用でき、例えば、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。接着表面において使用するための他の材料としては、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、ポリ(グリセロールセバケートアクリレート)(PGSA)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシブチラート(PHB)、リン酸エステルポリアミン、ポリウレタン、パリレン−C、ケラチン、カーボンナノチューブ、ポリ(無水物)、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ヒアルロン酸、デキストラン、コラーゲン、キチン、キトサン、絹フィブロイン、グリコサミノグリカン、フィブリン、フィブリノーゲンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
接着増強手段はまた、培養が完了した後、最終パッケージング前(すなわち、液体増殖培地除去後であるが、ユニットの出荷前)に、自己組織化されたコンストラクトの表面上に直接エレクトロスピニングされた固有の接着特性を有するナノファイバーまたはマイクロファイバーから製造することができる。エレクトロスピニングされたナノファイバーまたはマイクロファイバーは、コラーゲン、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、およびそれらの組み合わせとすることができるが、これらに限定されない。
【0098】
e.メッシュ状の生物工学によって作られたコンストラクト
生物工学によって作られたコンストラクトはまた、創傷ケアの必要のある被験体にグラフトする前にメッシュ状にすることができる。創傷治癒で使用される場合、メッシュ化は創傷床への適合性を改善し、グラフトの真下から創傷滲出液を排出するための手段を提供する。「メッシュ化」という用語は、機械的方法として規定され、これにより組織は、スリットが開けられ、ネット様配列が形成される。メッシュ化コンストラクトは、皮膚を伸展させることにより拡張させることができ、よって、スリットが開口し、その後、創傷床に適用される。拡張されたメッシュ化コンストラクトは、創傷領域に、最大被覆を提供する。また、メッシュ化コンストラクトは、拡張なしで、単に拡張されていないスリットの配列を有するシートとして提供することができる。メッシュ化コンストラクトは単独で、または身体の別の領域に由来する被験体自体の皮膚と共に適用することができる。コンストラクトはまた、穿孔または開窓および他の手段により提供される細孔を有することができる。開窓は、レーザ、パンチ、小刀、針またはピンを用いて手作業で適用することができる。生物工学によって作られたコンストラクトにはまた、コンストラクトの両方の面間で連絡する穴を設けることができる。穴は、規則または不規則パターンで導入された穿孔である。小刀または針を用いて、手作業で組織をスコア化または穿孔することができる。
【0099】
f.最後に滅菌された、生物工学によって作られたコンストラクト
コンストラクトは、当技術分野で知られている手段を用いて最後に滅菌することができる。滅菌のための好ましい方法は、米国特許第5,460,962号(その開示は本明細書に組み込まれる)による、コンストラクトを滅菌0.1%過酢酸(PA)処理に接触させ、十分な量の10N水酸化ナトリウム(NaOH)で中和させるものである。除染は振盪機プラットフォーム上の容器、例えば1L Nalge容器中、16−20時間の間(例えば、18時間)実施される。コンストラクトはその後、3体積の滅菌水に、各すすぎにつき10分間接触させることによりすすぐことができる。コンストラクトはγ線照射により滅菌することができる。コンストラクトは、γ線照射に好適な材料製の容器中にパッケージさせ、真空シーラーを用いて密閉することができ、これを15.0〜40.0kGyの間のγ線照射のために気密バッグに入れた。γ線照射は著しく、しかし、有害ではなく、コンストラクト分解への感受性、ヤング率および縮み温度を減少させる。γ線照射後の機械的特性は、依然として適用範囲での使用には十分であり、γ線は移植可能な医療装置の分野で広く使用されるので、滅菌に好ましい手段である。
【0100】
V.治療法および医学的用途
生物工学によって作られたコンストラクトは、細胞を有するかまたは有さないが、被験体に、例えば、損傷または罹患器官または組織を治療するために、器官または組織を修復するために、および/またはその対象とする機能性を回復させるために送達させることができる。本発明の生物工学によって作られたコンストラクトは、被験体内に治療的有効量で移植された場合、部位に応じた組織修復および再生を誘導する特性を有する。治療的有効量のコンストラクトは、被験体に1つ以上の投与または適用で提供することができる。間葉前駆細胞の分化能力のために、これらの多分化能細胞集団の含有は、骨、軟骨、腱、靱帯、筋肉、および皮膚の治癒速度および品質を改善するであろう)。生物工学によって作られたコンストラクトは、その移植部位に対し適切であるように治療される組織または器官に隣接して、または接触して移植された場合、血管新生性、抗炎症性、骨形成、脂肪生成または線維形成性、またはそれらの組み合わせとなる。
【0101】
本発明の生物工学によって作られたコンストラクトは、血管新生特性を有し、これは、それらが、新規血管の増殖を誘導することを意味し、これは創傷治癒および皮膚創傷の肉芽組織の形成および生物工学によって作られたコンストラクトの他の外科的適用にとって重要である。血管新生は、例えば、標準組織学技術により(例えば、αSMA染色により)または本明細書で開示される他のアッセイ法により検出される。
【0102】
本発明の生物工学によって作られたコンストラクトは、移植された場合抗炎症性特性を有し、これは、宿主炎症性細胞浸潤が最小に抑えられ、よって、宿主細胞はむしろ、コンストラクトの生体再構築および宿主組織の修復のために、移植された生物工学によって作られたコンストラクト中に移動することを意味する。宿主組織から、移植された、生物工学によって作られたコンストラクトへの宿主細胞移動は、再生治癒反応の一部となるであろう。組織学的技術を使用して、炎症性細胞浸潤および宿主細胞移動の程度を決定することができる。本発明の生物工学によって作られたコンストラクトはまた、骨形成特性を有し、これは、新しい骨形成が、治療部位で起こることを意味する。骨形成は、新規結合および骨化組織の検出、より高い細胞活性検出ならびに新しく形成された組織の代謝回転により測定される。標準組織学技術および他の技術は、治療部位での細胞効果ならびに骨密度および骨表面積を測定するために使用することができる。生物工学によって作られたコンストラクトは治療部位に移植された場合、脂肪生成となり、新しい脂肪(脂肪性)組織を形成する。生物工学によって作られたコンストラクトの線維形成性特性は、治療部位で移植された場合に実現され得る。本発明の生物工学によって作られたコンストラクトは、様々なヒトおよび非ヒト(すなわち、獣医学)治療適用のために使用することができる。
【0103】
本発明は、手術創傷;火傷創傷;慢性創傷;糖尿病性下肢潰瘍;静脈性潰瘍;褥瘡(陰圧創傷閉鎖法ありまたはなし);動脈性潰瘍;トンネリング創傷、例えば慢性創傷空洞から離れてトンネリングするもの;洞(例えば、毛巣、術後離開)およびフィステル(例えば、肛門、腸管皮膚、膀胱膣瘻、口腔上顎洞瘻、気管支胸膜)を治療するために、本発明の生物工学によって作られたコンストラクトを使用して、創傷治癒の必要のある被験体を治療するための医学的用途および方法を含む。
【0104】
治療の必要な被験体を治療するための他の医学的用途および方法としては、心臓適用、口腔の硬性および軟部組織への適用(例えば、後退した歯肉組織の治療、骨欠損または劣化した骨を修復するための誘導骨再生、誘導組織再生および口腔の結合組織の修復)が挙げられる。
【0105】
生物工学によって作られたコンストラクトを使用するための追加の医学的用途および治療法としては、化粧用途、例えば皮膚軟部組織フィラー(例えば、美容術のための輪郭矯正)、乳房再建用途(例えば、増大、リフト、および/または乳房固定術)および神経学的用途、例えば硬膜修復パッチまたは末梢神経修復のためのグラフト、神経束のためのラップまたは誘導神経再生のためのチューブがあげられる。
【0106】
生物工学によって作られたコンストラクトのさらなる使用としては、一定の外科的手順のための密閉および強度能力を改善するための縫合線または開放創傷への適用が挙げられるが、これらに限定されず、この場合、空気または体液の漏れが被験体の健康に有害であり、合併症、例えば感染、膿瘍形成、または内出血を防止するための追加の是正外科的手順が要求される(例えば、胃バイパス;人工肛門造設術;胃および大腸および小腸切除術;血管グラフト;血管移植片;冠動脈バイパスグラフト;腹壁形成術;腹部手術(例えば、開腹手術);帝王切開;気管切開創;カテーテル埋込創;心膜、胸膜、および硬膜外傷の密閉);器官の破裂を治癒または防止するための予防治療としての適用(例えば、不安定プラーク安定化;腹部大動脈瘤/動脈瘤破裂;胃または小腸潰瘍穿孔;クローン病;炎症性腸疾患);細胞増殖修復のために充填が必要な「穴」(例えば、尿失禁;鼻または中隔修復;肛門フィステル;造孔術;筋肉断裂;軟骨断裂;関節コーティング材料;軟部組織および筋肉壁ヘルニア修復)。
【0107】
生物工学によって作られたコンストラクトのさらに別の用途としては、骨グラフトおよび修復(例えば、複雑骨折;骨切断;人工骨膜;肢および付属器切断のための断端カバーリング;足および足首融合);心血管組織修復および再生(心筋梗塞後;うっ血性心不全
);心筋虚血;脳卒中;末梢動脈疾患;ニューロパチー;冠動脈疾患);神経修復用途;肝臓再生用途(線維症;急性、亜急性および慢性肝炎;肝硬変;劇症肝不全;葉移植後の外表面のカバーリング);急性腎不全中の腎臓再生用途;手術創傷閉鎖;腹部手術癒着防止;心血管、唾液管、または胆管ステントカバーリングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
生物工学によって作られたコンストラクトは、損傷または罹患組織と接触させることにより、組織空間内の空隙を充填することにより、または被験体の組織が存在しない、またはもはや存在しない場所に配置することにより、治療部位に適用、または移植することができる。生物工学によって作られたコンストラクトの適用または移植は、器官の表面への直接加圧タッチにより、器官の周囲の包み込みにより、または外科的接着剤、縫合糸またはステープルを用いた治療部位への付着により達成することができる。生物工学によって作られたコンストラクトはまた、治療部位に平面シートとして送達され、ローリングされ、詰められ、または注入され得る。生物工学によって作られたコンストラクトは、外科的開口手順中に相互操作可能に、経皮的に、または腹腔境下で、コンストラクトをカニューレを通して欠損部へバイパスすることにより送達させることができる。送達様式に関係なく、装置は、局所的に、修復構成単位および細胞シグナル伝達化合物を関連する生理的濃度で送達させることにより再生治癒過程を刺激するように機能し、細胞が分泌されたサイトカイン、ECMタンパク質、グリコサミノグリカン、脂質、マトリクス再組織化酵素、および創傷した器官の要求を満たすようにまたは宿主の内在性再生細胞を局所的に動員するように機能するように組織化させることができるコラーゲン材料の複雑な配列と共に含まれる。また、生物工学によって作られたコンストラクトは、局所細胞に基づく遺伝子治療を治療の必要な被験体の一定の器官に送達させるように機能する遺伝子組換え細胞を組み込む。コンストラクトはまた、治療の必要な被験体への治療薬の内部、局所、持続性、徐放性送達のための小分子治療薬、生物学的治療薬または医薬品のための薬物送達ビヒクルとして機能するように薬物を組み込むことができる。
【0109】
下記実施例は、本発明の実施をよりよく説明するために提供され、本発明の範囲を制限すると決して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変が、本明細書で記載される方法に対しなされ得るおとを認識するであろう。
【0110】
実施例
実施例1:間葉幹細胞(MSC)により生成される、生物工学によって作られたコンストラクト
間葉幹細胞により合成され、構築される細胞外マトリクスの層を生成するための条件下で増殖される間葉幹細胞を含む、生物工学によって作られたコンストラクトの作成は、ヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)を使用して例示される。具体的には、当業者はこれまでMSCに細胞外マトリクス構成要素を任意の相当の厚さまで合成し、構築させるための予備条件を規定することができなかった。HUCPVCを播種する前に、培養インサートを約5μg/cm2のヒト血漿由来フィブロネクチンでコートした。生物工学によって
作られたコンストラクトは、最初に3x106HUCPVC/24mmインサートを播種
することにより生成させた。インサート内に多孔性膜を有するカルチャーインサート上に細胞を播種した後、細胞を培養下18日間、下記合成培地において第5、8、12、および15日に新たな培地と交換しながら維持した:
【表6】

【0111】
得られた生物工学によって作られたコンストラクトは、少なくとも30μmの厚さの細胞外マトリクスを生成する。細胞外マトリクス形成の経時的分析を実施し、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトの厚さを培養時間の長さと相関させた。図1Aおよび1Bは、生物工学によって作られたコンストラクトの厚さにおける最大増加は、12日の培養により達成することができることを証明する。
【0112】
間葉幹細胞による効率的な細胞外マトリクス合成および構築に寄与する因子をさらに規定するために、TGF−αおよびプロスタグランジン2の役割を評価した。図2は3x106 HUCPVC/24mmインサートを18日間培養した後、培地中の増加させたT
GF−α濃度の関数としての、増加した生物工学によって作られたコンストラクトの厚さの間の相関を示す。図3は、3x106 HUCPVC/24mmインサートを18日間
培養した後、培地中の増加させたプロスタグランジン2濃度の関数としての減少した、生物工学によって作られたコンストラクトの厚さの間の相関を示す。したがって、間葉幹細胞により合成され、構築された細胞外マトリクスの量は、培地構成要素を基本に調節することができ、特に、得られた生物工学によって作られたコンストラクトの相当の厚さが達成され得る。加えて、培地補充は、増加させた播種密度(例えば、3x106〜10x1
6細胞以上/24mmインサートを含む超コンフルエントな密度)と協同することがで
き、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクト、例えばHUCPVCに由来するもの、骨髄由来のMSC、および前脂肪細胞において、さらに厚い細胞外マトリクスが生成される(図4)。特定の実施形態では、超コンフルエントな細胞播種が、30x106細胞/75mmインサートを用いて実施されたが、これは、9.6x106細胞/24mmインサートに等しい。
【0113】
実施例2:間葉幹細胞(MSC)により生成される生物工学によって作られたコンストラクトの生物物理特性
著しい厚さを有する生物工学によって作られたコンストラクトを生成させるための、間葉幹細胞による相当の量の、合成され、構築された細胞外マトリクスの生成に加えて、そのような生物工学によって作られたコンストラクトは、それらを他の細胞型により形成された細胞外マトリクスから識別する追加の生物物理特性を有する。
【0114】
実施例1で規定される方法および培地に従い、超集密度で播種され、18日間培養され
たMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、同様に培養されたHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクト(20ng/mL TGFαを使用することを除く)とは、コラーゲン配列および全体のマトリクス形態において著しい差異を示した。特に、細胞外マトリクスは細孔を含み、より密度が低く、コラーゲン束の凝集物を含む(図5A−5B)。よって、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、組織切片の総面積に対する組織切片中の細孔により表されるパーセンテージ面積として表すことができる多孔度を有する。そのような多孔性細胞外マトリクスは多くの創傷治癒徴候に対し望ましい。というのも、創傷中にグラフトされると、宿主細胞および血管新生関連分子のより大きな移動および浸潤が可能になるからである。しかしながら、そのような多孔性細胞外マトリクスはまた、医師が生物工学によって作られたコンストラクトを最小の困難性で適用することができるように機械的完全性を維持しなければならない。したがって、いくつかの機械的特性を評価するために、MSC由来およびHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトの機械的検査が実施された。具体的には、Fmax(Max負荷/Max力としても知られており、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10N)は、破れるまで材料に適用することができる最大負荷である。最終的な引張強度(UTSとしても知られている、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50N/cm2)は、破裂前に試料により維持される最大圧力負荷であ
る。弾性率(伸長としても知られる、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9変位/初期長)は、材料は負荷が除去されると最初の状態に戻る線形領域内の材料の剛性の測定値である。図6A−6Cは、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、より多くの多孔性細胞外マトリクスを有するにも関わらず、HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトと同様の機械的完全性を有し、HUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、最も類似する機械的完全性および厚さプロファイルを有することを示す。
【0115】
多孔性細胞外マトリクスを有し、強い機械的特性を備える生物工学によって作られたコンストラクトはさらに、創傷治癒を促進する送達部位での増殖因子の拡散を可能にすることにより、創傷を治療するために有用である。MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトと他の細胞型を用いて生成させたものとの間で存在する細胞外マトリクス構成要素、接着成分、および/または増殖因子の差を特徴づけるために、定量的PCR(qPCR)アッセイが、超集密度で播種され、18日間培養された(実施例1で規定された方法および培地に従う)MSC由来から単離されたcDNA、または超集密度で播種され、18日間培養された(実施例1で規定された方法および培地に従い、培地に、20ng/mL長TGF−αが補充されたことを除き)皮膚線維芽細胞(HDF)−由来の生物工学によって作られたコンストラクトを用いて実施された。実時間PCRプライマーは、製造者のプロトコルに従う、ヒトECMおよび接着分子アレイ(SuperArray PAHS−013A)およびヒト増殖因子アレイ(SuperArray PAHS−041A)由来である。図7は、MSC由来とHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトの間の増殖因子の差異をまとめたものである。例えば、HUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクトにおける増加したコラーゲン発現は、図5で見られるコラーゲン束化特性と一致する。CXCL6、走化性分子;KDR、VEGF誘導増殖、移動、管状形態形成、および内皮出芽の指標;およびラミニンα5(LAMA5)、胚細胞組織化の指標の発現の増加もまた、HUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクトにおいて観察された。これらの結果は、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトを用いて達成された細胞外マトリクスの相当の厚さに加えて、そのようなコンストラクトはまた、創傷環境を治療するのに有用な遺伝子の上方制御、例えば治癒速度および血管新生の促進を表すことを示す(図7)。
【0116】
加えて、Becton Dickinson製のサイトメトリビーズアレイシステム(CBA)を使用する、IL−6、IL−8、およびVEGFレベルを検出するためのタン
パク質に基づくアッセイを、製造者プロトコルに従い、(実施例1で規定された方法および培地に従い)超集密度で播種し、18日間培養させたMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトまたは(培地に20ng/mL 長TGFαを補充したことを除き、実施例1で規定された方法および培地に従い)超集密度で播種し、18日間培養させたヒト皮膚線維芽細胞(HDF)由来の生物工学によって作られたコンストラクトを使用して実施した。図8A−8Cは、MSC由来およびHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトにより生成された、条件培地内でのIL−6、IL−8、およびVEGFレベルの経時比較を示す。MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトにおけるIL−6発現は、培養時間経過中早期にピークとなり、HUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクトの培養の第5日にHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトのものの、9倍超となった(図8A)。免疫応答におけるその役割の他に、IL−6はまた、骨芽細胞により分泌され、破骨細胞形成が促進される。IL−8発現はまた、HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対し、培養の長さ全体にわたり、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトにおいて著しく過発現された(図8B)。免疫応答におけるその役割の他に、IL−8はまた、CXCR1およびCXCRのような受容体への結合を介して強力な血管新生因子として上皮細胞により分泌される。同様に、VEGFは別の強力な血管新生因子であり、培養の初期相中に、HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対し、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトにおいて著しく過発現される(図8C)。培地中の検出可能なVEGFレベルの降下は、HUCPVCおよび他のMSCによる高レベルのKDR発現によるものであり、これは、VEGFに対する受容体であり、生物工学によって作られたコンストラクト内にその分子を隔離し、そのため、培地中での検出を防止すると考えられる。加えて、CSF−3およびビトロネクチンは、HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対し、HUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクトにおいて上方制御される。ELISAアッセイをさらに、HDF由来およびMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトを培養する条件培地試料に対し、実施例1の方法に従い(すなわち、両方の条件に対し10xTGF−α)実施し、5および18日後のヒアルロナン(HA)生成量を定量した。図8Dは、HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトの培地中のHAレベルは、第5日に4,664ng/mLから、第18日に4,085ng/mLまで減少し、HUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクトの培地中のHAレベルは、第5日に4,333ng/mLから第18日に5,615ng/mLまで増加したことを示す。加えて、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対し、38倍多くのビトロネクチン、21倍多くのCSF−3、15倍多くのNCAM1、および4倍多くのCXCL1を示した。
【0117】
最後に、実施例1で規定された方法および培地に従い、超集密度で播種され、18日間培養されたMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、培地に20ng/mL超TGFαを補充したことを除き、同一の条件下で培養されたHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対し、細胞が、移動する能力を増加させる構成要素を有する条件培地を生じさせた(図9)。
【0118】
実施例3:間葉幹細胞(MSC)により生成された生物工学によって作られたコンストラクトの多分化能特性
MSCにより生成された生物工学によって作られたコンストラクトから、ならびに天然の生物工学によって作られたコンストラクトの環境内のMSCから単離された細胞の多分化能特性を決定するためにアッセイを実施した。MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトを実施例1で規定された方法および培地に従い、超集密度で播種し、18日間培養させた。第18日に、生物工学によって作られたコンストラクトを、コラゲナーゼで消化させ、多分化能アッセイのために細胞収率および細胞消化を決定するか、あるい
は誘導培地で直接培養させた。細胞および生物工学によって作られたコンストラクトの非誘導MSC対照群を、誘導細胞および生物工学によって作られたコンストラクト群の各々に対し維持し、この場合、10%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたαMEM培地が誘導培地の代わりに使用された。培地交換は2〜3日毎に起こった。加えて、細胞および生物工学によって作られたコンストラクトのHDF由来対照群は、誘導細胞および生物工学によって作られたコンストラクト群のそれぞれに対し、維持させた。
【0119】
骨形成誘導アッセイでは、生物工学によって作られたコンストラクトを骨形成誘導培地で直接培養させ、コラゲナーゼ消化から得られた細胞を、20,000細胞/cm2で、
12−ウェルプレートにおいて骨形成誘導のために播種した。実施例1で示される限定培地を、培養18日に、下記骨形成誘導培地と置換した:10-3Mデキサメタゾン(DEX)、1M β−グリセロリン酸(BGP)、および50mg/mLアスコルビン酸(AA)が補充された完全DMEM基本培地。骨形成誘導培養が数日間行われ、その後、Runx2(骨芽細胞分化の後期で発現される転写因子)、ALP、およびオステオカルシン(OC)の遺伝子発現を、生物工学によって作られたコンストラクトまたは培養された細胞から単離したRNAを用いて分析した。誘導されていないMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトに対し、誘導されたMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトで、ALPの発現の8倍増加が観察された(図10A)。加えて、骨形成誘導培地において誘導された、単離されたMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクト細胞において、骨形成誘導培地で誘導されていないそのような細胞に対し、Runx2の発現の11倍増加が観察された(図10B)。このように、無傷の生物工学によって作られたコンストラクト内のまたはそのようなコンストラクトから単離されたMSCは、環境シグナリングキューに基づく骨形成系統に向かって誘導させることができる。
【0120】
脂肪生成誘導アッセイでは、生物工学によって作られたコンストラクトを脂肪生成誘導培地で直接培養させ、コラゲナーゼ消化から得られた細胞を、20,000細胞/cm2
で、12−ウェルプレートにおいて脂肪生成誘導のために播種した。実施例1で示される限定培地を、培養18日に、下記脂肪生成誘導培地と置換した:10-3Mデキサメタゾン(DEX)、10mg/mLインスリン、および0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)が補充された完全DMEM基本培地。骨形成誘導培養は数日間行われ、その後、標準オイルレッド−O染色を用いて生物工学によって作られたコンストラクトまたは培養された細胞に由来する中性トリグリセリドおよび脂質を分析した。脂肪生成誘導培地で誘導された、単離されたMSC由来の生物工学によって作られたコンストラクト細胞のみが、脂肪生成誘導培地で誘導されなかったそのような細胞に対し、著しく多くのポジティブ染色された細胞を有することが観察された(図10C)。このように、無傷の生物工学によって作られたコンストラクト内のまたはそのようなコンストラクトから単離されたMSCは、環境シグナリングキューに基づく脂肪生成系統に向かって誘導させることができる。
【0121】
このように、無傷の生物工学によって作られたコンストラクト内の、またはそれから誘導されたMSCは、環境シグナリングキューに基づくいくつかの細胞系統に向かって誘導することができるが、亜集団は幹様能力を維持する。
【0122】
実施例4:間葉幹細胞(MSC)により生成された生物工学によって作られたコンストラクトのインビボ血管新生特性
この研究の目的は実施例1の方法により生成させた生物工学によって作られたコンストラクトをヌードマウスにグラフトさせ、皮下に移植された場合のインビボでのそれらの応答を分析することであった。より特定的には、α−平滑筋アクチン(αSMA)染色を使用し、定性的および定量的にマウス体内のコンストラクト内での血管新生を分析した。ユニットを、8週齢の雌スイスヌードマウスにおける皮下移植モデルにグラフトさせた。
【0123】
様々な生物工学によって作られたコンストラクトの皮下移植1週間後に、下記表に列挙
される各群から5匹の動物を屠殺した:
【表7】

【0124】
移植領域を除去し、組織学的検査のために処理した。特に、各群n=2動物に由来する組織切片を、αSMAで染色した。図11A−11Dは、それぞれ、100%HUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクト、50%HUCPVC−50%HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクト、10%HUCPVC−90%HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクト、および100%HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトから得られたαSMA染色切片からの代表的な切片を示す。生物工学によって作られたコンストラクトは全て、100%HDF由来のコンストラクトが、20ng/mL TGF−αと共に培養されたことを除き、実施例1で記載されるように生成させた。図11Aにおける生物工学によって作られたコンストラクトは、図11B−11Dのコンストラクトに比べ、移植領域内でより顕著な数のαSMAポジティブ染色を有すると考えられる。αSMA染色は、新規に形成された血管と特異的に関連し、これは、図11Aにおいて、40x倍率で明確に見られる。αSMAの定量は、100%HUCPVC生成の生物工学によって作られたコンストラクトは、他の群と関連する移植領域内でより多くの数の血管を有することを明らかにした(図11D)。理論に縛られることは望まないが、HUCPVCは、サイトカイン/増殖因子、例えば実施例2および3においてパラクリン様式でマウス内皮細胞を動員するように作用することが上記で記載されるものを分泌することができ、これはその後、新規血管を形成する。加えて、HUCPVCにより生成されるマトリクスおよびその関連組織は、移植領域への細胞動員および浸潤のためにより好適な一時的なマトリクスを提供することができ、他の群に対し、1週間でより高い血管形成が見られる。さらに、標準血管新生アッセイを実施し、さらにHUCPVC由来の生物工学によって作られたコンストラクトの、血管新生促進能力の増加を確認することができ、例えば、コンストラクトの、内皮細胞から細管を形成し、および/または維持するための能力をアッセイするもの(例えば、Milliporeからの血管新生管形成アッセイ)および血管新生バイオマーカーの遺伝子発現分析(例えば、Q−Plexからの血管新生ELISAアッセイおよび、R&D Systemsからの血管新生プロテオームプロファイラーアレイアッセイ)である。
【0125】
実施例5:生物工学によって作られたコンストラクトの制御収縮
生物工学によって作られたコンストラクトを、5μm細孔を含む血漿処理された(CO
OH)PES膜を有する75mm膜インサート上にヒト新生児包皮線維芽細胞を播種することにより生成させた。初期細胞播種密度は3000万細胞/膜インサートとした。細胞を合成培地(未決定の非ヒト構成要素を含まない)中に懸濁させ、20mlの懸濁液をインサート上に直接播種し、培養リザーバ中110mlの培地とし、細胞の両側栄養補給を可能とした。培地は下記を含んだ:DMEM、2mML−グルタミンのベース3:1混合物(Invitrogen Inc.)、4mM GlutaMAX(Gibco BRL、grand Island、NY)および下記添加物:5ng/mlヒト組換え上皮増殖因子(Upstate Biotechnology、Lake Placid、NY)、1x10-4Mエタノールアミン(Fluka、Ronkonkoma、NY cat.#02400 ACSグレード)、1x10-4M o−ホスホリル−エタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/mlトランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pMトリヨードチロニン(Sigma、St.Louis、MO)、および6.78ng/mlセレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、50ng/ml L−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA、Inc.)、0.2ug/ml L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1ug/mlグリシン(Sigma、St.Louis、MO)、20ng/ml TGF−α(すなわち、1xTGF−α)および10nM PGE2。細胞をこのように、18日間培養
させ、その後、生物工学によって作られたコンストラクトを収集した。いくつかの実施形態では、2xTGF−α以上が好ましい。いくつかの生物工学によって作られたコンストラクトを、すぐに組織学分析のためにホルマリン固定し、自然収縮を防止し(図12)、一方、残りの生物工学によって作られたコンストラクトは、下記でさらに記載されるように、制御収縮させた。
【0126】
具体的には、滅菌ピンセットを使用して、生物工学によって作られたコンストラクトをTranswell膜から脱離させ、培養皿内で浮遊させた。強い機械的特性を依然として保持する多孔性の生物工学によって作られたコンストラクトを生成させるために、生物工学によって作られたコンストラクトを、浮遊コンストラクトをインキュベータに戻し、生物工学によって作られたコンストラクトを2時間自然収縮させることにより制御された様式で収縮させた。2時間後、培地を除去し、RODI水中ですすぎ、組織学分析のためにホルマリン固定させた(図13)。制御された収縮を受けた生物工学によって作られたコンストラクト(図12)は、平均の生物工学によって作られたコンストラクトの厚さ(例えば、400−800μmの平均厚さ対200−300μmの平均厚さ)において制御収縮を受けていないものに対し、約2倍の増加を示す(図13)。
【0127】
別の実施形態では、2時間の浮遊インキュベーション後、生物工学によって作られたコンストラクトをその後、1mM EDC溶液に、4℃で一晩中浸漬させたが、コンストラクトはまた、本発明の範囲から逸脱せずに、培養皿中、0.2mM EDC、0.5mM
EDC、5mM EDC、または10mM EDCに浸漬させることができる。EDC架橋後、コンストラクトを逆浸透圧脱イオン(RODI)水で3回すすぎ、排出し、平たくおいた。RODI水ですすいだ後、生物工学によって作られたコンストラクトを室温(約20℃)から0.5℃/分の速度で2時間、−40℃の最終凍結温度に到達するまで、冷却させた。生物工学によって作られたコンストラクトが−40℃の温度に到達した後、生物工学によって作られたコンストラクトを−40℃で少なくとも2時間アニールさせた。生物工学によって作られたコンストラクトを全てその後、凍結乾燥装置内の200mTorrより低い真空環境に供し、24時間0℃で処理した。凍結サイクルは、適切に可能にされた凍結乾燥装置内で、または任意のフリーザー、例えば制御速度フリーザー内で、実施することができることが認識されるべきである。生物工学によって作られたコンストラクトは、本発明の範囲から逸脱することなく、0mTorr〜350mTorrの真空環境に供することができることがさらに認識されるべきである。別の実施形態では、コン
ストラクトを、凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)を受けることなく、EDC架橋後に8時間空気乾燥させた。
【0128】
別の実施形態では、2時間の浮遊インキュベーション後、培地を除去し、生物工学によって作られたコンストラクトをコンストラクトがもはやピンク色を有しなくなるまで、MES緩衝液ですすいだ。コンストラクトをその後、逆浸透圧脱イオン(RODI)水に約1時間浸漬させ、その後、排出し、平たくおいた。RODI水ですすいだ後、生物工学によって作られたコンストラクトを室温(約20℃)から0.5℃/分の速度で2時間、−40℃の最終凍結温度に到達するまで、冷却させた。生物工学によって作られたコンストラクトが−40℃の温度に到達した後、生物工学によって作られたコンストラクトを−40℃で2時間アニールさせた。コンストラクトを全てその後、凍結乾燥装置内の200mTorrより低い真空環境に、24時間0℃で供した。生物工学によって作られたコンストラクトをその後、真空オーブンに24時間100℃で入れ、生物工学によって作られたコンストラクトにおいてデヒドロサーマル架橋(DHT)を形成させた。いくつかの実施形態では、凍結乾燥は、架橋工程なしが好ましい。
【0129】
実施例6:生物工学によって作られたコンストラクトはインビボ骨形成およびバリア機能を有する
陰性対照(コンストラクトなし)および陽性対照(Bioguideの25x25mm標準生体吸収性バリア膜、これは、Osteohealth、One Luitpold
Drive、P.O. Box 9001、Shirley、NY11967製のブタIおよびIII型コラーゲン膜を含む)に加えて、実施例5の方法を用いて生成されるもの(すなわち、EDC架橋した、DHT架橋した、および架橋されていない生物工学によって作られたコンストラクト、この実施例では「試験コンストラクト」と総称される)としての生物工学によって作られたコンストラクトが、Gottingenミニブタの顎の4つの象限の各々(上顎右、上顎左、下顎右および下顎左)に移植された。
【0130】
具体的には、4匹の雄成体ミニブタを、研究の間を通して、22+/−2℃の温度で別々の部屋で共に収容した。各ブタを、8時間麻酔し、その間、全ての骨欠損を調製し、治療した。各コンストラクトを適用するための外科的手順は、およそ2時間要した。1)全層歯肉弁の上昇、2)マルチブレードブールを用いた歯根の分離、および3)Orban小刀を用いた歯周靱帯の切除後に、第2及び第4の小臼歯を抽出した。抽出前に、歯を取り囲む歯槽骨の頬側プレートを、円形ブールを用いて様々な点で貫通させ、カーバイド亀裂ブールを用いて、円形ブール穴を連結させることにより切断した。頬側プレートを骨チゼルおよび骨はさみを用いて外科的に除去し、骨欠損を生成させた(それぞれ1.2cm2)。全てのコンストラクトは、25x25mm切片であり、ランダムに選択された4つ
の上顎および4つの下顎部位に配置され、欠損の近心、遠位および頂端境界を2−3mmだけ延長させた。結紮糸を使用して、コンストラクト境界を周囲の宿主歯肉軟部組織に結合させた。全ての外科的処置は、無菌条件で、LASC獣医学サービスにより提供される全身麻酔および気管内挿管を使用して実施した。
【0131】
4、8、および12週後、指定された動物を屠殺し、試験/対照部位を隣接する骨と一緒にブロック切片で回収し、10%ホルマリン溶液中で固定した。各群のブロック切片の半分を、脱灰剤を用いて脱灰させた。脱灰および脱水後、ブロックをパラフィンに浸漬させ、その後、5μm切片を切断し、ヘマトキシリンエオシンで光学顕微鏡法のために、炎症性浸潤の細胞組成物の同定ならびに病理組織および組織形態検査のために染色した。切片をまた、マッソントリクロームで染色し、新規コラーゲン堆積および新規骨形成を検出した。ブロック切片の他の半分を覆っている軟部組織をこすり取った後4%ホルマリン溶液で固定し、上昇するグレードのアルコール中で脱水し、新しい骨およびコラーゲン堆積物の評価のためのトルイジンブルーを用いた将来の染色のためにメチルメタクリレート中
に埋め込んだ。歯槽骨構造および新たに形成された組織組成物を欠損処理後、定量マイクロコンピュータトモグラフィー(MicroCT)を用いて検査した。マイクロCTスキャンを、Boston大学整形外科および発達生体力学研究所、機械工学科に配置されているScancoマイクロCT80システム(Scanco Medical、Bassersdorf、Switzerland)を用いて実施した。走査直前に、4匹のミニブタの顎を保存から取り出し、室温にキャリブレーションさせた。
【0132】
試験コンストラクトで処理した試験部位はより高い細胞活性および新規に形成された組織、すなわち、結合および類骨組織)の代謝回転を示した。8週に、健康な結合組織および高度に組織化された新たに形成された類骨組織は欠損領域を充填し、頬側の骨の輪郭はほとんど完全に再形成された。12週に、試験コンストラクトで処理した試験部位は、ほとんど完全な治癒を示し、新しい骨形成部は古い骨とうまくつながり、いくつかの切片は、骨表面でのいくらかの破骨細胞による連続治癒を示し、骨代謝回転が示された。
【0133】
実施例7:生物工学によって作られたコンストラクトの細孔サイズの制御
本発明の生物工学によって作られたコンストラクトの細胞外マトリクス内の平均細孔サイズは、高密度または多孔性細胞外マトリクスを形成するように操作することができる。架橋の型および/または程度を組み合わせると、規定された平均細孔サイズを選択し、制御することができ、インビボ持続性および/または細胞浸潤の異なる速度を有するコンストラクト、治療的使用への適合された適用性に対し、「急速生体再構築可能」〜「適度に生体再構築可能」〜「長期生体再構築可能」な生物工学によって作られたコンストラクトが得られる(図14A)。実施例5の方法に従い生成されたHDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトを、培養下18日後分析し、細孔サイズおよび分布特性を決定した。図13は、凍結乾燥されていないそのような生物工学によって作られたコンストラクトは、本質的には細孔を有さないことを示す。しかしながら、生物工学によって作られたコンストラクトをさらに、制御された収縮、凍結乾燥に供し、架橋されないか、EDCにより架橋され、または実施例5の方法に従いDHT法を用いて架橋させた。Scandium(登録商標)画像分析プログラム(Olympus)の魔法の杖ツールを使用して、代表的な組織切片について細孔の長さおよび面積を統計学的に分析した。細孔は正円ではないので、細孔直径は、ある細孔の測定された面積が、円に由来することを仮定して、逆算した。1群につき2つの組織像を使用し、測定値を生成させた。図14Bは、−40℃の最終凍結温度まで、0.5℃/分で傾斜させると、15〜20μmの間の平均細孔サイズが得られることを示す。加えて、図14Cはさらに、平均細孔サイズは、架橋状態に関係なく最終凍結温度により決定されることを示す。対照的に、図14Dは、生物工学によって作られたコンストラクトを、−10℃の最終凍結温度(−40℃より温かい凍結温度である)まで0.5℃/分の速度で傾斜させると、少なくとも50μm(例えば、30μm〜100μmの範囲)の平均細孔サイズが得られたことを示す。図14Eは平均細孔サイズは、制御された収縮に依存しないことをさらに示す。具体的には、実施例5の方法に従い生成され、制御された収縮後単純に空気乾燥された、HDF由来の生物工学によって作られたコンストラクトは、非常に小さな細孔(あれば)を有する高密度マトリクスを生成した。対照的に、図14Bに示されるもののように処理された、生物工学によって作られたコンストラクトは、15〜20μmの平均細孔サイズを生成した。同様に、実施例1の方法に従い生成された、MSC由来の生物工学によって作られたコンストラクトの平均細孔サイズ(図14F)は、制御収縮、すすぎ、室温から−20℃への凍結、および凍結乾燥で増加させることができる(図14G)。
【0134】
実施例8:生物工学によって作られたコンストラクトの厚さおよびECM組成の制御
20ng/mLTGFαを使用したことを除き、実施例1の方法に従い、HDFを超集密度(すなわち、30x106細胞/75mmインサート)で播種し、18日間培養させ
た。ヘパリンもまた、培地に5μg/mLで補充した。得られた生物工学によって作られ
たコンストラクトに対する塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;Peprotech Inc.)の効果を試験するために、初期播種時または培養下5日後に、bFGFを補充し、培地中で維持した。図15Aは合成培地に20ng/mL bFGFを補充すると生物工学によって作られたコンストラクトの厚さが著しく減少し、対照に比べ、ピンセットで取り扱うと、より簡単に引き裂き可能となることを示す。ヘパリン補充は、生物工学によって作られたコンストラクトの厚さに何の効果もなかった。2ng/mLのbFGFを用いて生成された、生物工学によって作られたコンストラクトは、未処理対照と同様の厚さを有した。
【0135】
bFGF補充した、生物工学によって作られたコンストラクトは薄くなるほど、細胞外マトリクスが含むマトリクスタンパク質、グリコサミノグリカン、または両方が少なくなることを示した。図15Bは、コラーゲン蓄積がbFGF補充の増加に伴い減少するというbFGF用量反応分析を示す。コラーゲン集団が細胞外マトリクス生成中に連続して形成するので(すなわち、可逆的に架橋された酸可溶性コラーゲン、その後、不可逆的に架橋され、ペプシンで架橋を切断することにより単離されなければならないペプシンコラーゲン、および高度に架橋され、酸にもペプシンにも可溶性ではないSDS可溶性コラーゲン)、これらのコラーゲン集団の各々は、対照およびbFGF補充した生物工学によって作られたコンストラクトから、標準技術を使用して抽出された。bFGF補充した、生物工学によって作られたコンストラクト中の総コラーゲン蓄積は、対照に比べ低く、ペプシン可溶性コラーゲンの蓄積には、とりわけ著しい欠損がある(図15B)。ヘパリン単独では、コラーゲン蓄積に何の影響も有さなかった。
【0136】
図15Bで分析された、生物工学によって作られたコンストラクトに対しSircolコラーゲンアッセイを用いて、酸およびペプシン可溶性コラーゲン量を独立してアッセイし、定量した。SDS−可溶性コラーゲンは三重らせんではないので、Sircolアッセイは、このクラスのコラーゲンを検出しない。図15Cは、総コラーゲンおよび他のコラーゲン(グレー)に対する酸およびペプシン可溶性コラーゲン(黒)の両方の相対レベルを示す。20ng/mLまたは100ng/mL bFGFが補充された、生物工学によって作られたコンストラクト中の酸およびペプシン可溶性コラーゲンの合わせた量は、対照の量のそれぞれ、20%および35%であった。
【0137】
示差走査熱量測定(DSC)をその後実施し、bFGF補充した、生物工学によって作られたコンストラク中の、対照に対する、タンパク質架橋の総数を決定した。bFGFが播種時または培養下5日後に補充された、生物工学によって作られたコンストラクトにおけるピーク面積は、ヘパリンが単独で補充された対照に比べ、減少し、または0となり、bFGF補充された生物工学によって作られたコンストラクトでは架橋はより少ないことが示された。
【0138】
コラーゲン量の変化に加えて、結合性増殖因子に関与し、ECM水和の調節を助ける硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)、ならびにヒアルロン酸(HA)は、bFGF補充された生物工学によって作られたコンストラクトでは、対照に比べ、より少ないレベルで蓄積された(図15Dおよび15E)。組織染色アッセイは独立して、bFGF補充された生物工学によって作られたコンストラクトはより密度が低く、より少ないsGAGを含み(アルシアンブルー染色)、より少ない弾性繊維を含む(ヴァンギーソン染色)ことを確認した。
【0139】
細胞外マトリクス組成の変化は、脱水した場合に、bFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトを粉末にし、そのようなコンストラクトは、粉砕により、容易に微粒子化することができることが示される。20ng/mLを使用して生成された、生物工学によって作られたコンストラクトは、温度制御凍結乾燥機内で凍結乾燥されると
粉砕し、凍結乾燥中に粉砕したが、断片は対照ユニットと同じくらい柔軟なままであった。しかしながら、断片もまた、対照ユニットよりも厚くなく、著しくより多孔性であった。凍結乾燥直前に、bFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトを−80℃フリーザー内に2時間入れた。bFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトは、本発明の範囲から逸脱することなく、−10℃〜−80℃の温度範囲のフリーザー内で1時間〜3日まで維持することができることが認識されるべきである。また、bFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトは、培養物から取り出して、直接凍結乾燥機に入れることができる。全てのbFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトをその後、凍結乾燥装置内の200mTorrより低い真空環境に供し、24時間0℃で処理した。生物工学によって作られたコンストラクトを、本発明の範囲から逸脱することなく0mTorr〜350mTorrの間の真空環境に供することができることが認識されるべきである。別の実施形態では、bFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトを、凍結乾燥機での処理の代わりに、一晩中室温で空気乾燥させることができる。
【0140】
空気乾燥された粉末または凍結乾燥された、bFGF補充された、生物工学によって作られたコンストラクトを、対照と共に、室温ですり鉢とすりこぎ、またはコンストラクトが液体窒素中で凍結されたままとされる組織ミルのいずれかを使用して粉砕により微粒子化した。同様の量の粉砕コンストラクトを微量遠心機管内のリン酸緩衝食塩水(PBS)中で10分間再水和させ、その後流体コンシステンシーを観察した。再水和させた、bFGF補充されたコンストラクトは対照試料よりも、著しく粘性が低く、より自由に浮遊した。これは、再水和された、bFGF補充されたコンストラクトのシリンジ針を通過する能力の増強につながる(すなわち、それらは23ゲージおよび27ゲージを通過することができるが、30ゲージ針は通過できず、一方、対照は、そのようなゲージのシリンジ針のいずれも通過することができない)。1000x倍率の走査型電子顕微鏡観察では、粉砕させたbFGF補充されたコンストラクト中の粒子は、対照とサイズは同様であることが決定されたので、対照粒子の粘度が、シリンジ針を通る通過を妨害すると考えられる。さらに、より微細な、またはより一貫性のある粒子サイズが、より微細な組織ミルを使用して達成することができ、そのため、再水和された、bFGF補充されたコンストラクトは、さらにより微細なゲージのシリンジ針を通過することができると考えられる。
【0141】
実施例9:生物工学によって作られたコンストラクトと共に使用するための多孔性絹足場
多孔性の絹に基づく足場をBombyx moriカイコ繭の練り絹繊維から作製した。絹繊維を、室内条件下で撹拌しながら、9M LiBr溶液に6−10wt%濃度で6−10時間溶解した。溶液を水に対して、セルロース透析膜を使用して3日間、10時間毎に水を換えて透析した。フィブロイン水溶液をセルロース透析膜中で溶液を放置することにより濃縮した。不溶性部分を、遠心分離により20,000rpmで30分間、除去した。絹溶液の最終濃度は約7.5−8%であった。
【0142】
絹ストック溶液をその後使用して、6%〜8%の濃度を有する絹希釈標準溶液を調製した。希釈標準溶液を使用して、多孔性絹足場を製造した。希釈標準溶液を最初に、1−6%エタノール溶液と様々な体積比で混合し、最終絹濃度3%〜5%およびエタノール最終濃度0.5%〜2%とした。混合物をその後、ペトリ皿に注ぎ入れ、−20℃フリーザーに、少なくとも10時間入れた。10時間経過後、絹溶液を室温に置き、解凍させ、多孔性絹足場を得た。解凍させた絹足場をその後、RODI水で3日間すすぎ、溶媒残留物を除去した。すすぎ後、最上薄層を足場の表面から除去することができる。絹足場は、最終足場をオートクレーブ処理する、または、滅菌濾過エタノール溶液と混合されたオートクレーブ処理された絹溶液を使用する、または滅菌濾過エタノール溶液と混合された滅菌濾過絹溶液を使用することにより、滅菌することができる。
【0143】
インビボでの血管形成を増強させるために、多孔性絹足場を、タンパク質、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子/散乱因子(HGF/SF)、インスリン様増殖因子(IGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)および他の種類の血管新生促進因子中に浸漬させることができる。1つの態様では、50μgの組換えヒトPDGF−BB粉末を0.5ml 4mM HCl中で再構成し、その後、追加の0.5mlリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加した。得られた1mL溶液を使用して、6x6mm絹足場を浸漬させ、その後、ヌードマウスおよび正常マウス内の全層創傷に移植した。加えて、50μgの組換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を1mLのPBS中で再構成した。6x6mm多孔性足場を1mLのbFGF溶液中に5分間浸漬させ、その後、ヌードマウスおよび正常マウス内の全層創傷に移植した。また、50μgの組換えヒトPDGF−BBを0.5mlの4mM HCL中で再構成し、その後、0.5mLのPBS−再構成組換えヒトbFGFと混合した。多孔性絹足場を得られた1mL溶液に5分間浸漬させ、その後、ヌードマウスおよび正常マウス上の全層創傷に移植した。加えて、絹足場を、細胞と共に、25ng/mlのPDGFが第5日に、25ng/mlのbFGFが第10日に、25ng/mlの肝細胞増殖因子(HGF)が第15日に補充された合成培地で培養することができる。また、合成培地は、25ng/mlのbFGFが第5日に、25ng/mlのPDGFが第10に、25ng/mlのbFGFが第15日に、または25ng/mlのpDGFが第5日に、25ng/mlのbFGFが第10日に、および25ng/mlのHGFが第15に補充される。また、実施例10の第11日に生物工学によって作られたコンストラクトに適用される条件培地は、濃縮することができ(例えば、100倍)および絹足場は条件培地に浸漬させることができる。
【0144】
1つの実施形態では、ヒト皮膚線維芽細胞を多孔性絹足場上に播種した。具体的には、ヒト皮膚線維芽細胞を最初に、約30x106で播種し、合成培地で11日間培養した。
また、HDFは、絹足場の上に約5x106の初期播種密度で播種することができること
が認識されるべきである。合成培地は下記を含んだ:DMEM、Hams F−12培地のベース3:1混合物(Quality Biologics、Gaithersburg、MD)、4mM GlutaMAX(Gibco BRL、grand Island、NY)および下記添加物:5ng/mlのヒト組換え上皮増殖因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、1x10-4Mのエタノールアミン(Fluka、Ronkonkoma、NY cat.#02400 ACSグレード)、1x10-4Mのo−ホスホリル−エタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5ug/mlトランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、13.5pg/mLのトリヨードチロニン(Sigma、St.Louis、MO)、および6.78ng/mlのセレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、50ng/mlのL−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA、Inc.)、0.2ug/mlのL−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1ug/mlのグリシン(Sigma、St.Louis、MO)、20ng/mlのTGF−αおよび10nMのPGE2。図16で示されるようにヒト皮膚線維芽細胞は、絹足場を通って移動す
ることができ、絹シート全体に均一に配置される。
【0145】
多孔性絹足場上で培養された、得られた生物工学によって作られたコンストラクトに所望の特性を入れるように操作するためにいくつかの変更が可能である。
【0146】
別の実施形態では、培養されたHDFを有する絹足場を、培養されたHDFを含む絹足場をWFI水ですすぐことにより失活させた。増強された血管新生応答を要求する徴候では、絹足場は50−100μmの平均細孔直径を有し、HDFが播種され、得られたWFI水で失活させた生物工学によって作られたコンストラクトは、有効な治療であることが
示されている。より具体的には、図17(d)は、インビトロで失活させた線維芽細胞を有する絹足場上の染色されたヒト臍帯静脈内皮細胞を示す。染色された内皮細胞は絹足場上に整列された細管を形成し、失活させた線維芽細胞を有する絹足場は、効果的な内皮細胞の付着および持続を可能にすることが示される。
【0147】
別の実施形態では、多孔性絹足場および失活させたHDFを含む、生物工学によって作られたコンストラクトはその後、EDCと架橋され、増強されたインビボ持続性(例えば、火傷創傷床において)を有する、生物工学によって作られた組織コンストラクトが製造された。
【0148】
絹足場はまた、有用な分子で含浸させることができる。絹足場を、内在性の生物工学によって作られた組織コンストラクトから前に収集した(培養後)前条件合成培地に浸し、絹足場を増強させた。より具体的には、約3000万のヒト皮膚線維芽細胞を、0.4μm多孔性膜上で培養させ、合成培地で11日間培養させた。合成培地は下記を含んだ:DMEM、Hams F−12培地のベース3:1混合物(Quality Biologics、Gaithersburg、MD)、4mM GlutaMAX(Gibco BRL、grand Island、NY)および下記添加物:5ng/mlヒト組換え上皮増殖因子(Upstate Biotechnology、Lake Placid、NY)、1x10-4Mのエタノールアミン(Fluka、Ronkonkoma、NY
cat.#02400 ACSグレード)、1x10-4Mのo−ホスホリル−エタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5ug/mlのトランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、13.5pMのトリヨードチロニン(Sigma、St.Louis、MO)、および6.78ng/mlのセレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、50ng/mlのL−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA、Inc.)、0.2ug/mlのL−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1ug/mlのグリシン(Sigma、St.Louis、MO)、20ng/mlのTGF−αおよび10nMのPGE2。11日の培養後、条件培地を収集し、絹足場
を条件培地に12時間浸漬させた。
【0149】
シリコーンバッキングもまた、絹足場の1つまたは両側に適用することができ、感染を防止しながら、ガス状分子、例えば酸素の輸送を可能にするバリアとして機能する。例えば、失活させたヒト皮膚線維芽細胞を有する絹足場をシリコーンコーティングで処理した。シリコーンの重合中に、モノマー濃度対架橋剤濃度比をを変化させることによりシリコーンコーティングを最適化した。モノマー対架橋剤の比は、約5対1〜約20対1の範囲とすることができる。湿性絹スポンジでは、最適モノマー対架橋剤比は約5対1である。加えて、生成させた、生物工学によって作られたコンストラクトはそれ自体、その後シリコーンバッキングでコートすることができる。
【0150】
上皮細胞移動の増強は、絹足場をリン酸緩衝食塩水およびラミニン5の溶液に約1時間浴することにより達成することができる。絹足場の多孔度プロファイルによって、足場をラミニン5溶液に最大4時間まで浸すことができる。結合されたラミニン5を有する絹足場は、上皮細胞移動を増強させるためにインビボで使用することができる。
【0151】
実施例10:HDFおよびMSCの層状コンストラクト
ヒト新生児包皮線維芽細胞(Organogenesis、Inc.Canton、MAで創出)を、5x105細胞/162cm2組織培養処理フラスコ(Costar Corp.、Cambridge、MA、cat#3150)で播種し、培地中で増殖させた。増殖培地は、下記から構成した:10%新生仔ウシ血清(NBCS)(HyClone
Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mMのL−グ
ルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(高グルコース処方、Lグルタミンなし、BioWhittaker、Walkersville、MD)。細胞を、インキュベータ内、37±1℃で、10±1%CO2の雰囲気を用いて維持した。培地を新たに調製した培地
と、2〜3日毎に交換した。8日培養後、細胞はコンフルエンスまで増殖し、すなわち、細胞は組織培養フラスコの底に沿って充填単層を形成し、培地を培養フラスコから吸引した。単層をすすぐために、滅菌濾過リン酸緩衝食塩水を各培養フラスコの底に添加し、その後、フラスコから吸引した。5mLのトリプシン−ベルセングルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を各フラスコに添加し、静かに振動させ、確実に単層を完全に被覆させることにより、細胞をフラスコから放出させた。培養物をインキュベータに戻した。細胞が放出されるとすぐに、5mlのSBTI(大豆トリプシン阻害剤)を各フラスコに添加し、懸濁液と混合し、トリプシン−ベルセンの作用を中止させた。細胞懸濁液をフラスコから除去し、滅菌円錐遠心管間で均一に分割した。細胞を遠心分離により、およそ800−1000xgで5分間収集した。
【0152】
細胞を、新しい培地を使用して再懸濁させ、3.0x106細胞/mlの濃度とし、6
−ウェルトレイ内の0.4μm細孔サイズ、24mm直径の組織培養処理インサート(TRANSWELL(登録商標)、Corning Costar)上に、1.0x106
細胞/インサートの密度で、播種した。75mmインサートが使用される場合、10x106細胞の細胞播種密度が使用されるべきであることが認識されるべきである。24mm
直径インサートが使用される場合、約1x106細胞/24mmインサートが使用される
べきである。HUCPVCの量が、線維芽細胞の量のパーセンテージとして懸濁液に添加されたことが、認識されるべきである。例えば、50%HUCPVCを含む層状24mmコンストラクトを製造するために、5x105HUCPVCを、多孔性膜上に前に播種さ
れた1.0x106ヒト新生児包皮線維芽細胞上に播種させた。線維芽細およびHUCP
VCをどちらも3mlのマトリクス生成培地中に浸し、これは下記を含む:
【表8】

【0153】
細胞をインキュベータ中、37±1℃で、10±1%CO2の雰囲気を用いて維持し、
マトリクス生成培地で11日間、培地を周期的に、3−4日毎に交換して、培養した。
【0154】
当技術分野で知られている手順に従い、ホルマリン固定された試料をパラフィン中に埋め込み、5μm切片をパンチし、その後、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)を用いて染色した。H&E染色されたスライドを使用して、厚さ測定を実施し、10mm/100μmレチクルを用いてロードさせた10X接眼レンズを使用して、10の顕微鏡視野をランダムに選んだ。
【0155】
実施例11:HDFおよびMSCを混合することによる生物工学によって作られたコンストラクトの生成
線維芽細胞およびHUCPVC−産生細胞外マトリクス層を有するコンストラクトを完全合成培地系において形成させた。1x105ヒト新生児皮膚線維芽細胞を、混合細胞集
団中で9x105間葉前駆細胞と共に、24mmカルチャーインサート上に播種した。線
維芽細胞の初期播種密度は約1x105〜約9x105の範囲とすることができ、間葉前駆細胞の初期播種密度は、約1x105〜約9x105の範囲とすることができ、本発明の範囲内であることが認識されるべきである。HUCPVCは、継代2で得られ、継代7まで拡張され、その後初めて、カルチャーインサート上に播種された。細胞の多分化能が保存される限り、HUCPVCは任意の他の継代数で使用することができることが認識されるべきである。
【0156】
マトリクス生成合成培地は下記を含んだ:
【表9】

【0157】
線維芽細胞および間葉前駆細胞を、マトリクス生成培地で11日間、培地を周期的に、3−4日毎に交換して、培養し、内因的に産生された細胞外マトリクスを得た。
【0158】
実施例12:生物工学によって作られたコンストラクト上での上皮層の生成
ヒト上皮前駆細胞(HEP’s;ケラチノサイト)を実施例1−8のいずれか1つに記載される生物工学によって作られたコンストラクト上に播種する。HEP’sを、生物工学によって作られたコンストラクトが約11間培養された後、播種した。約3.5x105−1.2x106細胞/コンストラクトの播種密度が好ましいが、しかしながら、本発明によれば、他の初期播種密度もまた企図される。第11日に、HEP’sを有する皮膚コンストラクトを、大体下記を含む培地で処理する:
【表10】

【0159】
第13日に、HEP’sの分化を、下記を含む分化培地を用いることにより誘導する:
【表11】

【0160】
第15日に、培地処方を変更し、大体下記を含む培地中で発達中の上皮層の角化を誘導する:
【表12】

【0161】
角化培地を2−3日毎に交換する。生物工学によって作られたコンストラクトを22日〜35日成熟させ、維持し、維持培地で養い、2−3日毎に下記を含む新たな維持培地と交換する:
【表13】

【0162】
生物工学によって作られたコンストラクトが完全に形成された場合、培養された、生物工学によって作られたコンストラクトは、生物工学によって作られたコンストラクト上に配置された分化した上皮層を有する、内因的に産生された細胞外マトリクスタンパク質、線維芽細胞および/または間葉前駆細胞の混合された生物工学によって作られた層を示す。
【0163】
実施例13:細胞浸潤を改善するための、生物工学によって作られた組織コンストラクトのエッチング
生物工学によって作られた組織コンストラクトは、内因的に産生された組織コンストラクト上の細孔の深いネットワーク内で、細胞付着および細胞浸潤を増強させるために修飾することができる。そのような内因的に産生されたコンストラクトは、最初に約3000万のヒト皮膚線維芽細胞を0.4μm多孔性膜上に播種することにより生成され、合成培地中で11日間培養され得る。合成培地は下記を含む:DMEM、Hams F−12培地のベース3:1混合物(Quality Biologics、Gaithersburg、MD)、4mM GlutaMAX(Gibco BRL、grand Island、NY)および下記添加物:5ng/mlヒト組換え上皮増殖因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、1x10-4Mのエタノールアミン(Fluka、Ronkonkoma、NY cat. #02400 ACSグレード)、1x10-4Mのo−ホスホリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5ug/mlのトランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pMのトリヨードチロニン(Sigma、St.Louis、MO)、および6.78ng/mlのセレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、50ng/mlのL−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA,Inc.)、0.2ug/mlのL−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1ug/mlのグリシン(Sigma、St.Louis、MO)、20ng/mlのTGF−αおよび10nMのPGE2。11日の培養後、生物工学によって作られた組織コンストラクトの表面をエッチ
し、細胞片を除去する。これは、1%酢酸の溶液を適用し、コラーゲンの薄層を生物工学によって作られたコンストラクトの上面から除去することにより実施することができる。エッチングにより、細胞浸潤が改善され、これは火傷の徴候において有利となり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外マトリクスの層を生成する条件下で増殖される間葉幹細胞を含み、前記間葉幹細胞により合成および構築される、生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項2】
前記間葉幹細胞は、骨髄、臍帯、胎盤、羊膜、筋肉、脂肪、骨、腱または軟骨に由来する、請求項1記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項3】
前記間葉幹細胞は、臍帯間葉幹細胞である、請求項1または2に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項4】
前記臍帯間葉幹細胞は、臍帯血、臍帯静脈内皮下層、またはワルトン膠様質から単離される、請求項3記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項5】
前記臍帯間葉幹細胞はヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)である、請求項3記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項6】
前記間葉幹細胞はヒト間葉幹細胞はである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項7】
前記間葉幹細胞はトランスフェクトされた細胞、組換え細胞、または遺伝子操作細胞である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項8】
間葉幹細胞ではない細胞をさらに含み、任意に非間葉幹細胞は線維芽細胞である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項9】
前記線維芽細胞は、新生児雄包皮、真皮、腱、肺、尿道、臍帯、角膜実質、口腔粘膜、および腸からなる群より選択される組織に由来する、請求項8記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項10】
前記線維芽細胞は、ヒト線維芽細胞である、請求項8または9に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項11】
前記間葉幹細胞および線維芽細胞は混合される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項12】
前記間葉幹細胞および線維芽細胞は、少なくとも2つの別々の層中に存在する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項13】
前記細胞外マトリクスは少なくとも60μmの厚さである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項14】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、10μm〜150μmの範囲の直径の細孔を有し、任意に前記細孔は50μm〜100μmまたは80μm〜100μmの範囲にある、請求項1〜13のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項15】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、少なくとも0.4ニュートンの平均Fmaxを有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項16】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、少なくとも0.4メガパスカルの最大抗張力(UTS)を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項17】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、初期長の少なくとも0.4倍の塑性変形許容範囲を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項18】
前記生物工学によって作られたコンストラクトの前記細胞は失活される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項19】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは脱細胞される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項20】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは脱水される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項21】
前記細胞外マトリクスは架橋剤によって架橋される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項22】
前記架橋剤は、カルボジイミド、ゲニピン、トランスグルタミナーゼ、リボースおよび他の糖類、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、酸化剤および紫外(UV)光からなる群より選択される、請求項21記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項23】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、ヒアルロナン、CSF−3、ビトロネクチン、ヘパリン、NCAM1、CXCL1、IL−6、IL−8、VEGFA、VEGFC、PDGFβ、PECAM1、CDH5、ANGPT1、MMP2、TIMP1、およびTIMP3のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項24】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、抗菌剤、医薬品薬物、増殖因子、サイトカイン、ペプチド、またはタンパク質をさらに含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項25】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、前記生物工学によって作られたコンストラクトを培養基材から放出させることにより、少なくとも50%の表面積の減少まで収縮される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項26】
多孔性絹フィブロイン足場をさらに含み、前記細胞外マトリクスの層を生成する条件下で増殖された前記間葉幹細胞が、前記多孔性絹フィブロイン足場上で培養される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項27】
前記多孔性絹フィブロイン足場は、10μm〜150μmの範囲の直径の細孔を有する、請求項26記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項28】
前記多孔性絹フィブロイン足場は2つの側を有し、少なくとも1つの側がシリコーンでコートされる、請求項26または27に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項29】
前記多孔性絹フィブロイン足場は、抗菌剤、医薬品薬物、増殖因子、サイトカイン、ペプチド、またはタンパク質をさらに含む、請求項26〜28のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項30】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、接着増強手段をさらに含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項31】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは最後に滅菌される、請求項1〜30のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の少なくとも2つの生物工学によって作られたコンストラクトは一緒に結合される、多層の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項33】
前記結合された生物工学によって作られたコンストラクトは、架橋剤によって架橋される、請求項32記載の多層の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項34】
増加された平均細孔サイズを有する細胞外マトリクスを有する生物工学によって作られたコンストラクトを生成させるための方法であって、方法は:
a)細胞外マトリクス構成要素を培養容器内で合成することができる細胞を播種すること;
b)前記細胞を培養し、細胞外マトリクス構成要素を合成させ、分泌させ、組織化させること;
c)少なくとも得られた細胞外マトリクス構成要素を凍結乾燥させること、
を含み、凍結乾燥は、前記細胞外マトリクス構成要素を最終凍結温度まで凍結させ、その後、前記細胞外マトリクス構成要素を乾燥させることを含み、よって、増加した平均細孔サイズを有する細胞外マトリクスを有する生物工学によって作られた細胞外マトリクスコンストラクトが生成される、方法。
【請求項35】
前記多孔性細胞外のマトリクスの平均細孔サイズは、前記最終凍結温度を増加させることにより増加される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記生物工学によって作られたコンストラクトの平均細孔サイズは、前記最終凍結温度が約−40℃から約−10℃まで増加するにつれ、少なくとも10μmから少なくとも50μmまで増加する、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞外マトリクス産生細胞は、新生児雄包皮、真皮、腱、肺、臍帯、軟骨、尿道、角膜実質、口腔粘膜、腸、骨髄、胎盤、羊膜、筋肉、脂肪、または骨に由来する、請求項34〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞外マトリクス産生細胞は、ヒト皮膚線維芽細胞またはヒト臍帯血管周囲細胞である、請求項34〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞外マトリクス産生細胞は、トランスフェクトされた細胞、組換え細胞、または遺伝子操作細胞である、請求項34〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、前記細胞外マトリクス産生細胞型に加えて、少なくとも1つの細胞型を含む、請求項34〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの追加の細胞型は、線維芽細胞、ストローマ細胞、および間葉幹細胞からなる群より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記細胞外マトリクス産生細胞および少なくとも1つの追加の細胞型は混合される、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞外マトリクス産生細胞および少なくとも1つの追加の細胞型は、少なくとも2つの別々の層に存在する、請求項40〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
各細胞型の前記細胞は1x105細胞/cm2〜6.6x105細胞/cm2の結合密度で播種される、請求項34〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
各細胞型の前記細胞は100%コンフルエンスを超える結合密度で播種される、請求項34〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞外マトリクスは、凍結乾燥前に少なくとも60μmの厚さである、請求項34〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記生物工学によって作られたコンストラクトの前記細胞は、凍結乾燥前に、失活され、または脱細胞される、請求項34〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
約−40℃の最終凍結温度は、少なくとも10μmの平均細孔サイズを生成するために到達される、請求項34〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
約−10℃の最終凍結温度は、少なくとも30μmの平均細孔サイズを生成するために到達される、請求項34〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記生物工学によって作られたコンストラクトの前記細胞外マトリクスは、架橋剤によって架橋される、請求項34〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記架橋剤は、カルボジイミド、ゲニピン、トランスグルタミナーゼ、リボースおよび他の糖類、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、酸化剤、デヒドロサーマル(DHT)、および紫外(UV)光からなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項52】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、凍結乾燥前に、前記生物工学によって作られたコンストラクトを培養基材から放出させることにより、少なくとも50%の表面積の減少まで収縮される、請求項34〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞外マトリクス産生細胞を多孔性絹フィブロイン足場上で培養することをさらに含む、請求項34〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記前記多孔性絹フィブロイン足場は、10μm〜150μmの範囲の直径の細孔を有する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記多孔性絹フィブロイン足場は2つの側を有し、少なくとも1つの側がシリコーンでコートされる、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記多孔性絹フィブロイン足場は、抗菌剤、医薬品薬物、増殖因子、サイトカイン、ペプチド、またはタンパク質をさらに含む、請求項53〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
少なくとも2つの生物工学によって作られたコンストラクトは一緒に結合される、請求項34〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記結合は接着増強手段を介して、または架橋剤による架橋により起こる、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、凍結乾燥後に最後に滅菌される、請求項34〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞は、合成培地で培養される、請求項34〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記合成培地は、未決定の動物器官または組織抽出物を含まない、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記合成培地はTGF−αを含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
前記細胞は、多孔性膜上で培養される、請求項34〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記多孔性膜は、6μm未満のサイズである細孔を含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
最終凍結温度に到達する速度は、平均細孔サイズの均一性を増加させるために減少される、請求項34〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
最終凍結温度に到達する速度は、0.1℃〜0.5℃/分である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
細胞外マトリクス産生細胞;
前記細胞外マトリクス産生細胞により産生される内在性細胞外マトリクス;
を含み、
前記細胞外マトリクス産生細胞は失活される、生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項68】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、10μm〜150μmの範囲の直径の細孔を有し、任意に前記細孔は50μm〜100μmまたは80μm〜100μmの範囲にある、請求項67記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項69】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは、合成培地で培養された細胞により形成される、請求項67〜68のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項70】
前記合成培地はTGF−αを含む、請求項69記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項71】
前記合成培地は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)をさらに含む、請求項69〜70のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項72】
前記生物工学によって作られたコンストラクトの細胞外マトリクスは架橋剤によって架橋される、請求項67〜71のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンスト
ラクト。
【請求項73】
前記架橋剤は、カルボジイミド、ゲニピン、トランスグルタミナーゼ、リボースおよび他の糖類、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、酸化剤、デヒドロサーマル(DHT)、および紫外(UV)光からなる群より選択される、請求項72記載の生物工学によって作られたコンストラクト。
【請求項74】
前記生物工学によって作られたコンストラクトは粉末形態である、請求項67〜73のいずれか一項に記載の生物工学によって作られたコンストラクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−517292(P2013−517292A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549128(P2012−549128)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/021362
【国際公開番号】WO2011/088365
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(398054362)オーガノジェネシス・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】ORGANOGENESIS INC.
【Fターム(参考)】