説明

生物材料を破砕するための方法及び装置

本発明は、超音波を用いて、液体とともに容器に配置された生物材料を破砕するための方法、特に、生体分子を得るための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて、液体とともに容器に配置されている生物材料を破砕するための方法、特に、生体分子を得るための方法、及び当該目的のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機若しくは無機試料物質、又は化石原料などの材料を破砕するための超音波の使用のようなこの種の方法は、従来技術から知られている。この場合、破砕は、破砕される材料の標的成分を得るために行われる。破砕は、破砕される材料の標的成分を得るために、ここでは行われる。破砕中は、開放系環境パラメータと閉鎖系環境パラメータとに区別がされる。この場合、密閉容器中における破砕(例えば、米国特許第6100084号公報(US-A-6100084)を参照)が、もっぱら関連され得る。なぜなら、それによって、特に、生物材料を破砕するために好都合である、汚染がない破砕を達成することが可能だからである。破砕される材料は、その際、容器内の液体中に配置され、それに超音波が適用される。
【0003】
密閉容器における超音波を用いた破砕の不利な点は、破砕される材料が液体中で自由に移動できることである。その結果として、材料は、超音波の焦点に位置し、破砕されるが、或いは焦点に位置しないこともある。さらに、破砕の度合いに影響を与えにくい。
【0004】
米国特許第6878540号公報(US-A-6878540)、米国特許第6881541号公報(US-A-6881541)、米国特許第6887693号公報(US-A-6887693)、及び米国特許出願公開公報第2006/0019379(US-A-20060019379)は、同様に、材料を破砕するための超音波の使用を開示する。使用は、容器の壁に直接ドッキングさせた超音波ホーンのトランスデューサーとして為される。加えて、材料のより良い破砕を達成することを意図した、容器内の液体中に加えられる小球がある。さらに、容器とトランスデューサーとの間の結合を向上させ容器への音波の伝達を最適化するために、柔軟性の壁部を有する容器を加圧することが開示されている。しかしながら、記載される方法は、複雑であり、コストが大きく、特定の条件下においてのみ達成されるものである。
【0005】
米国特許第6719449号公報(US-B-6719449)は、同様に、超音波による非接触式の処理を用いることによる、試料を破砕するための装置及び方法を開示し、この場合、集中エネルギービームが用いられる。試料ホルダーのサイズは、全内容物が焦点に位置するように、この際、選択される。したがって、微量の材料しか破砕できない。さらに、過度に超音波照射が為されないように、試料が超音波にさらされる時間をモニターしなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の不都合を可能な限り解消すること、及び破砕される材料の定義した破砕を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、生物材料は、容器中を自由に移動することが可能であること、遠心力を用いることにより生物材料は容器の所定の位置に移動されること、及び遠心の間に超音波を発生させること、超音波は濃縮点に同一である位置に集中され、超音波に起因し、かつ焦点において生じる力が遠心力とは反対に作用するという事実のおかげで、当該方法に関し、達成される。
【0008】
本発明の装置の効果は、濃縮点に実質的に対応する、容器における所定の位置に、濃縮された様式で、遠心力により、破砕される材料が存在することである。この場合、破砕される材料は、例えば、化石や生物材料のような有機及び/又は無機の試料材料であることができる。さらに、材料は、例えば組織材料の形で、一片で存在することができ、或いは複数の個々の成分からなってもよい。好ましくは、破砕される材料は、特に、細胞成分、タンパク質、脂質、炭水化物、核酸等の生体分子を得るために適当である、組織、細胞、胞子等の生物材料であることができる。
【0009】
超音波力及び遠心力の両方が、作用方向に関し、互いに対抗するように設定されるので、この効果は、材料の十分な破砕の後には、焦点に位置する破砕される材料のより小さい、不溶性の粒子に作用する遠心力の分力は減少し、まず、これらの粒子に対する超音波力の作用を減じる効果と共にこれらの断片は焦点から移動し、完全にそれを終了させることである。このように、さらに、破砕の結果とは、有利には、溶液の中に直接入った破砕された材料(好ましくは、得られるべき生体分子)だけでなく、不溶性の破砕された材料、又は溶液の中に直接入っていない破砕された材料も、破砕されていない材料から同時に分離することであり、完全な破砕を実現するのに必要となる時間を減らすという特段の結果である。破砕された材料は、好ましくは、小さい、溶解性及び/又は不溶性の破砕物の成分であり、特に好ましくは、生体分子である。
【0010】
破砕されていない、或いは破砕することができない材料(例えば、生物材料の場合には、細胞残屑など)は、その場合、遠心力によって有利に影響される様式で、沈殿物を形成し、そこに残存する。
【0011】
本発明の有利な教示によれば、遠心力の強さは、破砕されることが意図される生物材料の粒径の関数として設定される。このように、破砕プロファイルを、破砕される材料の関数、及び破砕の所望の程度の関数として設定することが可能である。
【0012】
さらなる本発明の有利な教示によれば、超音波は、容器の所定の位置の焦点の領域に好ましくは直接配置されている、超音波エミッターを用いることにより発生される。それによって直接照射を行うことができる。さらに、エミッター及び容器との間の結合は、遠心力によって向上される。
【0013】
本発明の方法のさらなる有利な設計によれば、容器及び/又は液体は冷却される。これは、特定の破砕される材料、特に生物材料の場合において、超音波によって発生する熱に起因する材料における変化を防止する。
【0014】
さらに、本発明の目的は、容器のためのレセプタクル(receptacle)、容器に遠心力をかけるための回転装置、及び容器の領域に配置された超音波エミッターを有する、本発明の方法を行うための装置によって達成される。
【0015】
本発明の装置は、簡単な方法で、機械で、本発明の方法の実施を達成する。
【0016】
本発明のさらなる有利な教示によれば、超音波エミッターが遠心力の方向に配置されることが提供される。それによって、簡単な方法で、作用する遠心力に対して超音波力を生じさせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、液体及び破砕される材料を有する容器の側面図を示す。
【図2】図2は、遠心中の図1に関する側面図を示す。
【図3】図3は、超音波を適用した場合の図2に関する側面図を示す。
【図4】図4は、破砕された材料を有する、図1に関する側面図を示す。
【図5】図5は、破砕された材料を抽出する間の図4に関する側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、例となる実施形態及び図面を用いて、より詳細に説明する。
図1は、液体及び破砕される材料を有する容器の側面図を示す。
図2は、遠心中の図1に関する側面図を示す。
図3は、超音波を適用した場合の図2に関する側面図を示す。
図4は、破砕された材料を有する、図1に関する側面図を示す。
図5は、破砕された材料を抽出する間の図4に関する側面図を示す。
図1〜5は、本発明の方法の順序を示す。
【0019】
図1には、蓋11によって密閉された容器10が示されている。液体12が容器10の中に位置し、その中に、破砕される材料14が位置する。超音波エミッター13が、容器10の壁部15上に配置されている。容器10は、図2及び3に示される通り、外側に向けられる遠心力18を発生させるために用いられる装置(不図示)に配置されている。遠心力18の効果は、破砕される材料14が壁部15上の焦点16に配置されることである。破砕される材料14は、焦点16に集まる。さらに、エミッター13によって発生される超音波もここに集まり(図3を参照)、そのようにして、破砕される材料14の破砕の程度まで、超音波力19がここで発生する。同時に、破砕することができない、或いは不溶性である、破砕される材料14の成分は、遠心力によって調節された様式で、沈殿物20に形成され、沈殿物20は、壁部15の領域において、容器10の辺縁部に、液体12中に、沈殿及び/又は主に残存する。
【0020】
図4は、破砕を行った後の容器10を示す。個々の粒子の重量の減少により、溶液の中に入った、或いは焦点16に保持されていない、破砕された材料17は、溶解した及び/又は微粒子の形状で、液体12中に配置される。沈殿物20は、壁部15又はその近傍に配置される。
【0021】
図5は、例えば、ピペットなどの抽出装置21を用いた、容器10からの、破砕された材料17の抽出を示す。
【0022】
参照番号の一覧
10 容器
11 蓋
12 液体
13 エミッター
14 破砕される材料
15 壁部
16 焦点
17 破砕された材料
18 遠心力
19 超音波力
20 破砕することができない成分の沈殿物
21 抽出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を用いることによる、生物材料を破砕するための、特に、生体分子を得るための方法であって、生物材料が液体とともに容器中に配置されており、
生物材料は、容器中を自由に移動することが可能であること、遠心力を用いることにより生物材料は容器の所定の位置に移動されること、及び遠心の間に超音波を発生させること、超音波は濃縮点と同一である位置に集中され、超音波に起因し、かつ焦点において生じる力が遠心力とは反対に作用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
遠心力の強度が、破砕されることが意図される生物材料の粒子サイズの関数として設定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
超音波は、好ましくは容器の所定の位置の焦点の領域に直接配置されている、超音波エミッターを用いることにより、発生されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
容器及び/又は液体は冷却されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
容器のためのリセプタクル、容器に遠心力をかけるための回転装置、及び容器の領域に配置された超音波エミッターを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を行うための装置。
【請求項6】
超音波エミッターが、遠心力の方向に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−522222(P2011−522222A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505519(P2011−505519)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054948
【国際公開番号】WO2009/130300
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】